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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】自動車用巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 3/00 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B60J3/00 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018151061
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020026173
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 建志
(72)【発明者】
【氏名】田代 錠二
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐二
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060415(JP,A)
【文献】実開昭52-090824(JP,U)
【文献】特開2006-205926(JP,A)
【文献】実開昭57-015716(JP,U)
【文献】特開2012-148597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンと、該スクリーンを収納方向へ付勢する巻取部と、引き出された前記スクリーンの引出端が引っ掛かるフック状の保持部であって先端部が前記スクリーンの引出側に曲がり前記スクリーンが吊り下がった状態で前記引出端を保持する保持部と、を備える自動車用巻取装置であって、
前記先端部を越えないように前記保持部に前記引出端が引っ掛かっている状態のまま操作による通気用の隙間を生じさせて該通気用の隙間を生じさせた状態を維持することが可能であって前記通気用の隙間を生じさせていない状態に戻して該状態を維持することが可能である操作構造を備える、自動車用巻取装置。
【請求項2】
スクリーンと、該スクリーンを収納方向へ付勢する巻取部と、引き出された前記スクリーンの引出端を保持する保持部と、を備える自動車用巻取装置であって、
前記保持部に前記引出端が保持されている状態のまま操作による通気用の隙間を生じさせる操作構造を備え、
本自動車用巻取装置は、前記スクリーンを引き出すための操作部を有する操作部材を前記引出端に備え、
前記操作構造は、前記操作部材において前記操作部から出た凸部と、前記保持部において前記凸部が入る溝を有する案内部と、を有し、
前記案内部は、前記保持部の外から前記凸部が前記溝に入る入口部と、前記溝に受け入れられた前記凸部が引っ掛かる第一係止部と、前記第一係止部よりも前記スクリーンの収納側の位置において前記溝内の前記凸部が引っ掛かる第二係止部と、前記第一係止部にある前記凸部が前記操作部の操作により前記第二係止部に移動する形状の連絡経路と、前記溝から前記凸部が前記保持部の外に出る出口部と、を有し、
前記保持部に前記引出端が保持されている状態のまま前記凸部が前記第一係止部から前記第二係止部に移動すると前記隙間が生じる、自動車用巻取装置。
【請求項3】
スクリーンと、該スクリーンを収納方向へ付勢する巻取部と、引き出された前記スクリーンの引出端を保持する保持部と、を備える自動車用巻取装置であって、
前記保持部に前記引出端が保持されている状態のまま操作による通気用の隙間を生じさせる操作構造を備え、
前記スクリーンは、前記巻取部に繋がっているスクリーン本体と、前記引出端に沿ったヒンジ部を中心として折曲可能に前記スクリーン本体に繋がっている延長部と、を有し、
前記操作構造は、折り曲げられた前記延長部を解放可能に保持する折曲保持構造を有し、前記保持部に前記引出端が保持されている状態のまま前記ヒンジ部から前記スクリーンの引出側に配置された前記延長部が折り曲げられる操作により前記隙間を生じさせる、自動車用巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ドア等には、防眩や車内温度上昇抑制のために遮光スクリーンで直射日光を遮ったり、車内のプライバシーを遮光スクリーンで確保したりするために、サンシェード装置が設けられることがある。自動車用ドアのサンシェード装置は、多くの場合、非使用時にドア本体内部のばね式巻取軸に遮光スクリーンを巻き取ってドア本体内部に収納している。使用時、遮光スクリーンは、巻取軸からの巻取力に逆らってウィンドウガラスに沿って上方へ引き出されて、引出端にあるガーニッシュ部がドア側のフックに引っ掛けられて使用位置に保持され、ウィンドウガラスを覆う。特許文献1には、自動車用ドアのサンシェード装置が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-2031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車内の温度が上昇した場合等、車内を換気したい場合がある。遮光スクリーンが引き出されていると、ウィンドウガラスを下げても換気が妨げられる。しかし、引出端のガーニッシュ部がドア側のフックから外されると遮光スクリーンはほぼ巻取軸に巻き取られてしまい、直射日光が車内に入ったり車内のプライバシーが確保されなかったりする。
【0005】
本発明は、スクリーンを引き出したまま換気を促進させることが可能な自動車用巻取装置を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スクリーンと、該スクリーンを収納方向へ付勢する巻取部と、引き出された前記スクリーンの引出端が引っ掛かるフック状の保持部であって先端部が前記スクリーンの引出側に曲がり前記スクリーンが吊り下がった状態で前記引出端を保持する保持部と、を備える自動車用巻取装置であって、
前記先端部を越えないように前記保持部に前記引出端が引っ掛かっている状態のまま操作による通気用の隙間を生じさせて該通気用の隙間を生じさせた状態を維持することが可能であって前記通気用の隙間を生じさせていない状態に戻して該状態を維持することが可能である操作構造を備える、態様を有する。
【0007】
また、本発明は、スクリーンと、該スクリーンを収納方向へ付勢する巻取部と、引き出された前記スクリーンの引出端を保持する保持部と、を備える自動車用巻取装置であって、
前記保持部に前記引出端が保持されている状態のまま操作による通気用の隙間を生じさせる操作構造を備え、
本自動車用巻取装置は、前記スクリーンを引き出すための操作部を有する操作部材を前記引出端に備え、
前記操作構造は、前記操作部材において前記操作部から出た凸部と、前記保持部において前記凸部が入る溝を有する案内部と、を有し、
前記案内部は、前記保持部の外から前記凸部が前記溝に入る入口部と、前記溝に受け入れられた前記凸部が引っ掛かる第一係止部と、前記第一係止部よりも前記スクリーンの収納側の位置において前記溝内の前記凸部が引っ掛かる第二係止部と、前記第一係止部にある前記凸部が前記操作部の操作により前記第二係止部に移動する形状の連絡経路と、前記溝から前記凸部が前記保持部の外に出る出口部と、を有し、
前記保持部に前記引出端が保持されている状態のまま前記凸部が前記第一係止部から前記第二係止部に移動すると前記隙間が生じる、態様を有する。
さらに、本発明は、スクリーンと、該スクリーンを収納方向へ付勢する巻取部と、引き出された前記スクリーンの引出端を保持する保持部と、を備える自動車用巻取装置であって、
前記保持部に前記引出端が保持されている状態のまま操作による通気用の隙間を生じさせる操作構造を備え、
前記スクリーンは、前記巻取部に繋がっているスクリーン本体と、前記引出端に沿ったヒンジ部を中心として折曲可能に前記スクリーン本体に繋がっている延長部と、を有し、
前記操作構造は、折り曲げられた前記延長部を解放可能に保持する折曲保持構造を有し、前記保持部に前記引出端が保持されている状態のまま前記ヒンジ部から前記スクリーンの引出側に配置された前記延長部が折り曲げられる操作により前記隙間を生じさせる、態様を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スクリーンを引き出したまま換気を促進させることが可能な自動車用巻取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】巻取装置を組み付けた自動車用ドアの例を車室側から模式的に示す図。
図2】巻取装置の例を模式的に示す図。
図3】操作構造の例を車室側から模式的に示す図。
図4】操作構造の例を模式的に示す縦断面図。
図5】スクリーンが全閉位置にある場合の操作構造の例を模式的に示す縦断面図。
図6】操作部が操作された場合の操作構造の例を模式的に示す縦断面図。
図7】スクリーンが寸開位置にある場合の操作構造の例を模式的に示す縦断面図。
図8】スクリーン引出端からスクリーン引出側に通気用の隙間が生じる例を模式的に示す図。
図9】巻取装置を組み付けた自動車用ドアの別の例を車室側から模式的に示す図。
図10図9に示す思想において操作構造の例を模式的に示す図。
図11図9に示す巻取装置を寸開状態にした例を車室側から模式的に示す図。
図12】巻取装置を組み付けた自動車用ドアの別の例を車室側から模式的に示す図。
図13】巻取装置を組み付けた自動車用ドアの別の例を車室側から模式的に示す図。
図14】巻取装置を組み付けた自動車用ドアの別の例を車室側から模式的に示す図。
図15図14に示す思想において操作構造の例を模式的に示す図。
図16】巻取装置を組み付けた自動車用ドアの別の例を車室側から模式的に示す図。
図17図16に示す思想において全閉状態の操作構造の例を模式的に示す図。
図18図16に示す思想において寸開状態の操作構造の例を模式的に示す図。
図19図16に示す思想において寸開状態の操作構造の例を車室側から模式的に示す図。
図20】巻取装置を組み付けた自動車用ドアの別の例を車室側から模式的に示す図。
図21図20に示す巻取装置を寸開状態にした例を車室側から模式的に示す図。
図22】巻取装置を組み付けた自動車用ドアの別の例を上側から模式的に示す図。
図23】巻取装置を組み付けた自動車用ドアの別の例を車室側から模式的に示す図。
図24図23に示す思想において操作構造の例を模式的に示す斜視図。
図25図23に示す思想において操作構造の例を模式的に示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0011】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~25に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
【0012】
[態様1]
本技術の一態様に係る自動車用巻取装置1は、スクリーン10、該スクリーン10を収納方向D21へ付勢する巻取部30、引き出された前記スクリーン10の引出端20を保持する保持部50(例えば保持部50A~50F)、及び、前記保持部50に前記引出端20が保持されている状態のまま操作による通気用の隙間CL1を生じさせる操作構造ST1を備える。
上記態様では、スクリーン引出端20(スクリーン10の引出端20)が保持部50に保持されている状態のまま操作による通気用の隙間CL1が生じるので、スクリーン10が引き出された状態であり、且つ、生じた通気用の隙間CL1により換気が促進される。従って、本態様は、スクリーンを引き出したまま換気を促進させる自動車用巻取装置を提供することができる。また、生じた通気用の隙間を通して光を車外から車室に入れることも可能となる。
【0013】
ここで、スクリーンは、シェード、ブラインド、シート、等を含む概念であり、透過光の少なくとも一部を遮るものであればよく、日除け用に限定されない。スクリーンには、網目を有するスクリーン、網目の無いシート、等が含まれる。
巻取装置には、遮蔽装置やシェード装置やブラインド装置と呼ばれるものが含まれる。
保持部に引出端が保持されている状態には、一時的に引出端が保持部内を移動することも含まれる。
操作による通気用の隙間は、保持部にスクリーン引出端が保持されている状態において操作を起因として生じる隙間を意味し、操作を起因として新たに出現した隙間に限定されず、元ある隙間に操作を起因として広がった隙間を含む。詳しくは後述するが、通気用の隙間は、様々な位置に生じ得る。
操作には、操作対象の押し操作、操作対象の引っ張り操作、操作対象の曲げ操作、操作対象の回し操作、操作対象のスライド操作、等が含まれる。操作対象には、引出端に配置された操作部、引出端に配置されたガーニッシュ部、ワイヤーの長さ調整部、等が含まれる。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0014】
[態様2]
例えば、図8,11~13,23,24等に例示するように、前記操作構造ST1は、前記保持部50に前記引出端20が保持されている状態のまま操作により前記引出端20から前記スクリーン10の引出側(例えば引出方向D22の側)に前記隙間CL1を生じさせてもよい。この態様では、保持部50にスクリーン引出端20が保持されている状態のまま操作によりスクリーン引出端20からスクリーン引出側(スクリーンの引出側)に通気用の隙間CL1が生じる。従って、本態様は、スクリーンを引き出したまま換気を促進させる好適な自動車用巻取装置を提供することができる。
【0015】
[態様3]
図3~8等に例示するように、本自動車用巻取装置1は、前記スクリーン10を引き出すための操作部26を有する操作部材25を前記引出端20に備えてもよい。前記操作構造ST1は、前記操作部材25において前記操作部26から出た凸部28を有してもよい。当該操作構造ST1は、前記保持部50において前記凸部28が入る溝51aを有する案内部51を有してもよい。前記案内部51は、前記保持部50の外から前記凸部28が前記溝51aに入る入口部52aを有してもよい。当該案内部51は、前記溝51aに受け入れられた前記凸部28が引っ掛かる第一係止部52bを有してもよい。当該案内部51は、前記第一係止部52bよりも前記スクリーン10の収納側(例えば収納方向D21の側)の位置において前記溝51a内の前記凸部28が引っ掛かる第二係止部52dを有してもよい。当該案内部51は、前記第一係止部52bにある前記凸部28が前記操作部26の操作により前記第二係止部52dに移動する形状の連絡経路52cを有してもよい。当該案内部51は、前記溝51aから前記凸部28が前記保持部50の外に出る出口部52eを有してもよい。前記保持部50に前記引出端20が保持されている状態のまま前記凸部28が前記第一係止部52bから前記第二係止部52dに移動すると前記隙間CL1が生じてもよい。
【0016】
上記態様では、スクリーン引出端20の操作部材25の凸部28を保持部50の第一係止部52bに引っ掛けた状態から操作部材25の操作部26を操作すると凸部28が保持部50の第二係止部52dに引っ掛かり、これにより、スクリーン引出端20からスクリーン引出側(引出方向D22の側)に隙間CL1が生じる。従って、本態様は、スクリーンを引き出したまま換気を促進させる好適な自動車用巻取装置を提供することができる。
【0017】
[態様4]
図9~11に例示するように、前記スクリーン10は、前記巻取部30に繋がっているスクリーン本体11を有してもよい。当該スクリーン10は、前記引出端20に沿ったヒンジ部14を中心として折曲可能に前記スクリーン本体11に繋がっている延長部15を有してもよい。前記操作構造ST1は、折り曲げられた前記延長部15を解放可能に保持する折曲保持構造ST2を有してもよい。当該操作構造ST1は、前記保持部50に前記引出端20が保持されている状態のまま前記ヒンジ部14から前記スクリーン10の引出側(引出方向D22の側)に配置された前記延長部15が折り曲げられる操作により前記隙間CL1を生じさせてもよい。
上記態様では、ヒンジ部14からスクリーン引出側(引出方向D22の側)に配置されている延長部15を折り曲げると、スクリーン引出端20からスクリーン引出側(引出方向D22の側)に隙間CL1が生じ、この状態が保持される。従って、本態様は、スクリーンを引き出したまま換気を促進させる好適な自動車用巻取装置を提供することができる。
【0018】
[態様5]
図12,13に例示するように、前記操作構造ST1は、前記引出端20に取り付けられて前記保持部50に引っ掛けることが可能なワイヤーW1を有してもよい。当該操作構造ST1は、操作により前記ワイヤーW1の長さを変えて保持可能な長さ調整部ST3を有してもよい。当該操作構造ST1は、前記保持部50に引っ掛けられている前記ワイヤーW1を長くする操作により前記隙間CL1を生じさせてもよい。
上記態様では、保持部50に引っ掛けられているワイヤーW1に対して長さ調整部ST3により長くする操作を行うと、スクリーン引出端20からスクリーン10の引出側(引出方向D22の側)に隙間CL1が生じ、この状態が保持される。従って、本態様は、スクリーンを引き出したまま換気を促進させる好適な自動車用巻取装置を提供することができる。
【0019】
[態様6]
本自動車用巻取装置1は、前記引出端20を縁取るガーニッシュ部21を備えてもよい。図14~19に例示するように、前記操作構造ST1は、前記保持部50に前記引出端20が保持されている状態のまま操作により前記ガーニッシュ部21に前記隙間CL1を生じさせてもよい。
上記態様では、保持部50にスクリーン引出端20が保持されている状態のまま操作によりガーニッシュ部21に通気用の隙間CL1が生じる。従って、本態様は、スクリーンを引き出したまま換気を促進させる好適な自動車用巻取装置を提供することができる。
【0020】
[態様7]
図20~22に例示するように、前記操作構造ST1は、前記引出端20を縁取る変形可能なガーニッシュ部21であって第一の曲げ状態B1と第二の曲げ状態B2とを保持可能なガーニッシュ部21を有してもよい。当該操作構造ST1は、前記保持部50に前記引出端20が保持されている状態のまま前記第一の曲げ状態B1から前記第二の曲げ状態B2に変更する操作により前記隙間CL1を生じさせてもよい。
上記態様では、第一の曲げ状態B1のガーニッシュ部21を第二の曲げ状態B2に変更する操作を行うと、通気用の隙間CL1が生じ、この状態が保持される。従って、本態様は、スクリーンを引き出したまま換気を促進させる好適な自動車用巻取装置を提供することができる。
【0021】
[態様8]
本技術の別の態様に係る自動車用巻取装置1は、図8,11~13,23,24等に例示するように、スクリーン10、該スクリーン10を収納方向D21へ付勢する巻取部30、引き出された前記スクリーン10の引出端20を保持する保持部50、及び、前記保持部50に前記引出端20が保持されている状態のまま操作により前記引出端20から前記スクリーン10の引出側(引出方向D22の側)に隙間CL1を生じさせる操作構造ST1を備える。
上記態様では、スクリーン引出端20が保持部50に保持されている状態のまま操作によりスクリーン引出端20からスクリーン引出側(引出方向D22の側)に隙間CL1が生じるので、スクリーン10が引き出された状態であり、且つ、生じた隙間CL1により換気が促進される。従って、本態様も、スクリーンを引き出したまま換気を促進させる自動車用巻取装置を提供することができる。また、生じた隙間を通して光を車外から車室に入れることも可能となる。
ここで、操作による隙間は、保持部にスクリーン引出端が保持されている状態において操作を起因として生じる隙間を意味し、操作を起因として新たに出現した隙間に限定されず、元ある隙間に操作を起因として広がった隙間を含む。
【0022】
(2)巻取装置の具体例:
図1は、自動車用巻取装置1としてサンシェード装置が組み付けられた自動車100の室内を模式的に例示している。尚、FRONT、REAR、UP、DOWNは、それぞれ、前、後、上、下を示す。図1に示す自動車100は、道路上で使用されるように設計及び装備された路上走行自動車とされ、前席及び後席を囲む車室C1が形成された乗用自動車とされている。車室C1の側面部には、ドア102及びピラー103が配置されている。図1に示すドア102は後席のサイドドアであるが、巻取装置1を組み付けるためのドアは、前席のサイドドア、バックドア(tailgate)、等でもよい。ドア102には、図示されないドアパネル、ドアトリム105、ドアウィンドウ106、等が設けられている。ドアパネルは、鋼板製といった金属製の車体パネルの一種である。トリム105は、車体パネルの車室C1側に装着される内装材であり、熱可塑性樹脂といった樹脂材料を射出成形等により成形した成形品、樹脂材料の内装基材に不織布、織物、編物、といった表皮材を積層したもの、等を用いることができる。ドアウィンドウ106には、ウィンドウガラス107が開閉可能に設置されている。ウィンドウガラス107は、下降させる操作が昇降スイッチ108に行われると下降し、上昇させる操作が昇降スイッチ108に行われると上昇する。ウィンドウガラス107が完全に上昇した状態は全閉状態であり、この状態からウィンドウガラス107が少し下降すると図1に示すようにドアウィンドウ106の上部が少し開放される。ウィンドウガラス107が完全に下降した状態は、全開状態である。
【0023】
図1に示す巻取装置1はドアトリム105の車外面に取り付けられ、スクリーン10の収納方向D21が略下方であり、スクリーン10の引出方向D22が略上方である。収納方向D21と引出方向D22とは、互いに反対の方向である。巻取部30から引き出されたスクリーン10の引出端20を保持部50に保持させると、図1に二点鎖線で示すようにドアウィンドウ106がスクリーン10でほぼ覆われた状態となる。これにより、巻取装置1は、乗員の防眩や車室C1の温度上昇抑制のために太陽光を遮ったり、プライバシーの保護や駐車時の防犯のために車外からの視認性を低下させたりする。尚、図1には、保持部50の例として図3~8に示す保持部50Aが示されている。
詳しくは後述するが、巻取装置1は、保持部50にスクリーン引出端20が保持されている状態のまま操作による通気用の隙間を生じさせる操作構造を備えている。本具体例は、通気用の隙間を生じさせるために巻取装置を電動式にする必要が無いので、スクリーンの電動手段を設ける必要が無く、巻取装置のコストアップを抑制することができる。
【0024】
図2は、巻取装置1を模式的に例示し、巻取部30の要部を拡大した縦断面図も示している。尚、符号AX1は筒状の回転軸本体31の回転軸を示し、符号D1は回転軸本体31の軸方向を示し、符号D2はガーニッシュ部21の長手方向を示し、符号D2aは長手方向D2の一方側(図2の左側)を示し、符号D2bは長手方向D2の他方側(図2の右側)を示している。
【0025】
スクリーン10は、遮蔽シート、ブラインドシート、等とも呼ばれ、透過光の少なくとも一部を遮る。スクリーン10のスクリーン本体11は、回転軸本体31の外周面上に巻取可能な柔軟性を有する薄い材料で形成され、例えば、遮光性50~90%程度で可撓性を有する軟質材料を所要の形状に裁断することにより形成される。スクリーン本体11は、網目を有する材料でもよいし、網目の無いシート状材料でもよく、ポリエステル織物といった布、樹脂材料を用いたレザー、樹脂材料を成形したシート、ジャージ素材といった伸縮性素材、織物、等を用いることができる。また、スクリーン本体11は、半透明シート、紫外線を遮断する透明シート、等でもよい。紫外線等も、透過光に含まれる。スクリーン本体11の一端12は、両面テープといった固定手段で回転軸本体31の外周面に留められている。スクリーン本体11の先端縁(他端13)には、スクリーン引出端20を縁取るため、スクリーン本体11よりも硬質、且つ、肉厚のガーニッシュ部21が形成されている。
【0026】
スクリーン引出端20にあるガーニッシュ部21には、長手方向D2の中間部に操作部材25が配置されている。例えば、巻取部30に巻き取られているスクリーン10の引出端20にある操作部材25を手で持つ等して巻取部30から引き出し、ドア102の上部の車室C1側に固定された保持部50に操作部材25を引っ掛けると、ドアウィンドウ106がスクリーン10でほぼ覆われる。また、保持部50に引っ掛かっている操作部材25を手で持つ等して保持部50から外すと、巻取部30にスクリーン10を巻き取らせることができる。操作部材25には、サーモポリオレフィン(TPO)の射出成形品といった樹脂成形品等を用いることができる。
【0027】
ガーニッシュ部21を別部材としてスクリーン本体11に取り付ける場合、ガーニッシュ部21には、筒状の部材、棒状の部材、板状の部材、等を用いることができ、合成樹脂の射出成形品といった成形品等を用いることができる。また、ガーニッシュ部21は、スクリーン本体11の先端縁(他端13)を袋状に形成して中に芯材を挿入した構造等でもよい。
【0028】
図2に示す巻取部30は、回転軸本体31、支軸部33、軸受け部32、コイルばね36(付勢部35)、を有し、ばね36の付勢力によりスクリーン10を巻取可能である。コイルばねは、コイルスプリング、つる巻きばね、等とも呼ばれる。
回転軸本体31は、両端が開口した長尺な部材であり、トリム105とハーフケース40との間で長手方向(軸方向D1)に沿った回転軸AX1を中心として回転可能に配置され、外周面上にスクリーン本体11を巻取可能である。尚、回転軸本体31は、バレル部材等とも呼ばれる。スクリーン本体11を外周面上に巻き取るための部材は、円筒状といった筒状でもよいし、円柱状といった棒状でもよい。回転軸本体31の材質には、アルミニウムといった金属、熱可塑性樹脂といった合成樹脂、等を用いることができる。回転軸本体31の回転軸本体の大きさは、特に限定されず、例えば、内径を4~20mm程度、外径を6~30mm程度とすることができる。
【0029】
支軸部33は、回転軸本体31の一端31aに取り付けられた部材であり、ケース40の長手方向(軸方向D1)における一方の壁部41の軸受け部41aに挿入され、壁部41に対して回転可能に支持されている。支軸部33は、回転軸本体31に対して回転しないように嵌め込まれている。軸受け部32は、回転軸本体31の他端31bに取り付けられた部材であり、ケース40の長手方向(軸方向D1)における他方の壁部42に固定され、外側に回転軸本体31が回転可能に嵌められている。回転軸本体31の開口に挿入された部分の軸受け部32には、ばね36の一端が固定されている。ばね36の他端は、掛止部31cに固定されている。この掛止部31cは、回転軸本体31に挿入されて回転軸本体31に対して回転しない部材であり、回転軸本体31に対して軸方向D1へは移動してもよい。ばね36は、スクリーン10を収納方向D21へ付勢する。通常、付勢部35を有する巻取部30は、ケース40にスクリーン10が収納されてもスクリーン10に巻取方向への付勢力を加える状態でケース40に取り付けられる。
【0030】
尚、付勢部は、回転軸本体31の内周側に配置される以外にも、回転軸本体の外周側、回転軸本体の長手方向における端部の外側、等に配置されてもよい。付勢部は、回転軸本体31から独立したユニットでもよく、回転軸本体に挿入される内ばねユニットでもよいし、回転軸本体の外側に取り付けられる外ばねユニットでもよい。付勢部は、渦巻きばね、エラストマーやゴムといった弾性部材、等でもよい。
【0031】
図2に示すハーフケース40は、スクリーン本体11を引き出すための引出口40aを有し、トリム105と車体パネルとの間でねじといった締結手段でトリム105に固定される。ケース40とトリム105との間には、巻取部30が収容される。ケース40は、巻取装置1のハウジング部分の一部を構成する半割体であって、スクリーン10等の構成部品が予め組み付けられてユニット化されてもよい。ケース40には、合成樹脂の射出成形品といった成形品等を用いることができる。
【0032】
図3~8は、保持部50Aにスクリーン引出端20が保持されている状態のまま操作による通気用の隙間CL1を生じさせる操作構造ST1を模式的に例示している。図3は、保持部50Aから引出端20が外れている状態において操作構造ST1の車室C1側を模式的に例示している。図4は、図3の左側から操作構造ST1を一部断面視して模式的に例示している。図5は、スクリーン10が全閉位置P1にある場合の操作構造ST1を一部断面視して模式的に例示している。図5には、凸部28が案内部51において入口部52aから第一係止部52bに移動する様子を矢印で示している。図6は、操作部26が押し操作された場合の操作構造ST1を一部断面視して模式的に例示している。図7は、スクリーン10が寸開位置P2にある場合の操作構造ST1を一部断面視して模式的に例示している。図7には、凸部28が案内部51において第一係止部52bから第二係止部52dに移動する様子を矢印で示している。図8は、保持部50Aに引出端20が保持されている状態のままスクリーン引出端20から引出方向D22の側に押し操作による通気用の隙間CL1が生じる様子を模式的に例示している。
図3~8に示す操作構造ST1は、操作部材25の凸部28、及び、保持部50Aの案内部51を有している。
【0033】
図3等に示すガーニッシュ部21は、長手方向D2における中間位置に収納方向D21へ向かって凹んだ切欠部21a、及び、長手方向D2に沿った貫通穴21bを有している。切欠部21aには、貫通穴21bが現れている。貫通穴21bには長手方向D2に沿った芯材22が通っており、切欠部21aには芯材22が現れている。芯材22は、切欠部21aにおいて操作部材25の貫通穴27aを通り抜けている。
ガーニッシュ部21は、スクリーン本体11の引出側の端部を折り返して袋状にした部位でもよいし、スクリーン本体11の引出側の端部に接合された別部材でもよい。スクリーン本体11と別部材の接合には、熱可塑性樹脂製の別部材を用いた超音波溶着や熱溶着といった溶着、接着剤による接着、等を用いることができる。
【0034】
操作部材25は、操作部26、脚部27、一対の凸部28、及び、突っ張り部29を有している。操作部26は、スクリーン10を引き出して保持部50Aに保持させるための部位であり、図8に示すように全閉位置P1のスクリーン10を寸開位置P2に変えるために収納方向D21側へ押し操作される部位である。図4等に示すように、操作部26は、操作部材25において凸部28の付け根部分28aから車室C1側へ延出し、先端部が収納方向D21側へ曲がっている。脚部27は、操作部材25において凸部28の付け根部分から収納方向D21へ延出し、先端部に貫通穴27aが形成されている。一対の凸部28は、付け根部分28aから互いに離隔しながらスクリーン引出側へ突出し、先端部28bが離隔方向へ曲がっている。凸部28、特に先端部28bは、保持部50Aの溝51aに入って案内される形状である。突っ張り部29は、付け根部分28aから操作部26とは反対の方向へ延出し、各凸部28が溝51aの第一係止部52bにある場合に先端部が保持部50Aの壁部50cに突き当たって操作部材25の姿勢を安定させる。
【0035】
保持部50Aは、操作部材25における各凸部28を案内するための案内部51を有している。案内部51は、ドア102の上部の車室C1側に固定された背面部材50b、及び、一対の側面部材50aを有している。各側面部材50aは、背面部材50bの前後の縁部から車室C1側へ延出し、互いに対向する面に案内部51が配置されている。背面部材50bは、背面部材50b同士の間において車室C1側へ出た壁部50cを有している。
【0036】
各案内部51は、入口部52a、第一係止部52b、第二係止部52d、連絡経路52c、及び、出口部52eを有している。入口部52aは、案内部51において、保持部50Aの外から凸部28が溝51aに入る部位であり、車室C1に向かって開口している部位である。第一係止部52bは、案内部51において、溝51aに受け入れられた凸部28が引っ掛かる部位であり、入口部52aよりも収納方向D21の側の位置において収納方向D21の側へ凹んだ部位である。第二係止部52dは、案内部51において、第一係止部52bよりも収納方向D21の側の位置において溝51a内の凸部28が引っ掛かる部位であり、収納方向D21の側へ凹んだ部位である。連絡経路52cは、第一係止部52bにある凸部28が操作部26の押し操作により第二係止部52dに移動する形状であり、移動する凸部28が途中で止まらないように滑らかな曲線形状である。出口部52eは、溝51aから凸部28が保持部50Aの外に出る部位であり、車室C1に向かって開口している部位である。
【0037】
尚、ガーニッシュ部21を形成するための別部材、操作部材25、及び、保持部50Aには、合成樹脂の射出成形品といった成形品を用いることができる。前述の合成樹脂には、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリエチレン(PE)樹脂といったポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂といったポリエステル樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、等を用いることができ、補強用繊維等といった添加材が添加されてもよい。
【0038】
次に、図1~8を参照して、スクリーン10の操作方法の具体例を説明する。
スクリーン本体11が巻取部30に巻き取られて収納されている状態において、ユーザーは、スクリーン引出端20にある操作部26を手で摘まんでスクリーン10を引き出すことができる。ユーザーが操作部材25の凸部28を保持部50Aの入口部52aに入れると、巻取部30からの引っ張り力により凸部28が溝51aに沿って移動し、図5に示すように第一係止部52bに引っ掛かる。これにより、図5に示すようにスクリーン10が全閉位置P1に保持され、ドアウィンドウ106がほぼ覆われる。
【0039】
スクリーン10が全閉位置P1において保持部50Aに保持されている状態において、ユーザーは、図6に示すように操作部26を押し操作することができる。すると、保持部50Aの壁部50cに突き当たっている突っ張り部29が支点となって凸部28が第一係止部52bから連絡経路52cに移動する。これを契機として、巻取部30からの引っ張り力により凸部28が連絡経路52cに沿って移動し、図7に示すように第二係止部52dに引っ掛かる。これにより、スクリーン10が寸開位置P2において保持部50Aに保持され、図8に示すようにスクリーン引出端20から引出方向D22の側に通気用の隙間CL1が生じる。そこで、昇降スイッチ108によりウィンドウガラス107を下降させると、スクリーン10が引き出された状態のまま隙間CL1を通して車室C1を換気することができる。
【0040】
スクリーン10が寸開位置P2において保持部50Aに保持されている状態において、ユーザーは、操作部26を手で摘まんで凸部28を第二係止部52dから出口部52eへ移動させて保持部50Aの外に出すことできる。その後は、巻取部30からの引っ張り力によりスクリーン本体11が巻取部30に巻き取られて収納され、ドアウィンドウ106がほぼ完全に開放される。
【0041】
図8等に示したように、凸部28と案内部51を有する操作構造ST1は、保持部50Aにスクリーン引出端20が保持されている状態のまま操作部26の押し操作により凸部28が第一係止部52bから前記第二係止部52dに移動して通気用の隙間CL1が生じる構造である。操作構造ST1があることにより、ユーザーが操作部26を押す操作を行うだけで、保持部50Aにスクリーン引出端20が保持されている状態のまま操作部26の押し操作による通気用の隙間CL1が生じる。すなわち、スクリーン10は引き出された状態であるのでスクリーン10による防眩機能や車内温度上昇抑制機能が得られ、生じた通気用の隙間CL1により換気が促進される。通気用の隙間CL1を生じさせるために、巻取装置にスクリーン10の電動手段を設ける必要が無い。従って、本具体例は、スクリーンの電動手段無しに、操作部26を押す操作を行うだけという簡単な操作で、スクリーンを引き出したまま換気を促進させることができる。また、隙間CL1を通して光を車外から車室C1に入れることも可能である。
【0042】
(3)別の具体例:
図9~11は、ガーニッシュ部21を折り曲げる操作により通気用の隙間CL1を生じさせる具体例を模式的に示している。図9は、巻取装置1としてサンシェード装置が組み付けられた自動車100の室内を模式的に例示している。図10は、折曲保持構造ST2を有する操作構造ST1を模式的に例示している。図11は、巻取装置1を寸開状態にした様子を車室C1側から模式的に例示している。尚、図1~8で示した具体例と同じ構成要素については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。図12以降に示す具体例も、同様である。
図9~11に示すスクリーン10は、巻取部30に繋がっているスクリーン本体11、及び、引出端20に沿ったヒンジ部14を中心として折曲可能にスクリーン本体11に繋がっている延長部15を有している。図9~11に示す操作構造ST1は、折り曲げられた延長部15を解放可能に保持する折曲保持構造ST2を有している。
【0043】
本具体例の保持部50Bは、フック状であり、取り付けられたドア102から車室C1の方へ突出して先端部が引出方向D22の側に折れ曲がっている。保持部50Bに引っ掛けられる操作部材25は、フック状の保持部50Bを通すための貫通穴25aを有し、スクリーン本体11の引出側の端部におけるドアウィンドウ106側の面に接合されている。従って、スクリーン本体11が巻取部30に巻き取られて収納されている状態において、ユーザーが操作部材25を手で持つ等してスクリーン10を引き出し、貫通穴25aにフック状の保持部50Bを通して操作部材25を保持部50Bに引っ掛けると、ドアウィンドウ106がスクリーン10でほぼ覆われる。延長部15が引出方向D22に向いている場合、巻取装置1は、図9に示すように全閉状態である。
【0044】
延長部15及びヒンジ部14は、ガーニッシュ部21に含まれ、スクリーン本体11の引出側の端部を折り返した部位でもよいし、スクリーン本体11の引出側の端部に接合された別部材でもよい。ガーニッシュ部21を合成樹脂で形成する場合、ヒンジ部14を延長部15及びスクリーン本体11よりも薄く成形したインテグラルヒンジにしてもよい。延長部15は、図10に示すようにヒンジ部14を中心として車室C1側へ回転動作可能である。従って、図10の実線部に示すようにスクリーン本体11から引出方向D22へ延びるように配置されたり、図10の二点鎖線部に示すようにスクリーン本体11の引出側の端部から収納方向D21の側へ折り返されるように配置されたりする。引出方向D22の側に向いている場合の延長部15の車室C1側の面には、折曲保持構造ST2の一部である着脱部ST2aが配置されている。着脱部ST2aは、スクリーン本体11の引出側の端部における車室C1側の面に配置された着脱部ST2bに対して着脱可能である。
【0045】
着脱部ST2a,ST2bには、面ファスナー、磁石、等を用いることができる。着脱部ST2a,ST2bに面ファスナーを用いる場合、着脱部ST2a,ST2bの内の一方に雄面ファスナーを使用し、他方に雌面ファスナーを使用すればよい。これにより、ユーザーがヒンジ部14を中心として延長部15を折り曲げると着脱部ST2aと着脱部ST2bとが係合し、延長部15の折曲状態が維持される。また、ユーザーが折曲状態の延長部15を車室C1側へ引っ張ると、着脱部ST2bから着脱部ST2aが剥がれ、ヒンジ部14の復元力により延長部15が引出方向D22の側に向く。さらに、着脱部ST2a,ST2bに磁石を用いる場合、着脱部ST2a,ST2bの内の一方にN極を表面に向けた磁石を使用し、他方にS極を表面に向けた磁石を使用すればよい。これにより、ユーザーがヒンジ部14を中心として延長部15を折り曲げると着脱部ST2aと着脱部ST2bとが互いに引き合い、延長部15の折曲状態が維持される。また、ユーザーが折曲状態の延長部15を車室C1側へ引っ張ると、着脱部ST2bから着脱部ST2aが離れ、ヒンジ部14の復元力により延長部15が引出方向D22の側に向く。
【0046】
図9に示すように巻取装置1が全閉状態である場合において、ユーザーが図10に示すように延長部15を折り曲げる操作を行うと、図11に示すようにスクリーン引出端20から引出方向D22の側に通気用の隙間CL1が生じる。また、着脱部ST2aと着脱部ST2bとがくっつくことにより、スクリーン本体11から延長部15が折り返された状態が維持される。そこで、昇降スイッチ108によりウィンドウガラス107を下降させると、スクリーン10が引き出された状態のまま隙間CL1を通して車室C1を換気することができる。
【0047】
図11に示すように巻取装置1が寸開状態である場合において、ユーザーは、保持部50Bから操作部材25を外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよいし、折曲状態の延長部15を車室C1側へ引っ張って巻取装置1を全閉状態に戻してもよい。むろん、ユーザーは、巻取装置1が全閉状態である場合において、保持部50Bから操作部材25を外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよい。
【0048】
図9~11で示したように、折曲保持構造ST2を有する操作構造ST1は、保持部50Bにスクリーン引出端20が保持されている状態のまま延長部15が折り曲げられる操作により通気用の隙間CL1を生じさせる構造である。スクリーン10は引き出された状態であるのでスクリーン10による防眩機能や車内温度上昇抑制機能が得られ、生じた通気用の隙間CL1により換気が促進される。従って、図9~11で示した具体例は、スクリーンの電動手段無しに、延長部15を折り曲げる操作を行うだけという簡単な操作で、スクリーンを引き出したまま換気を促進させることができる。また、隙間CL1を通して光を車外から車室C1に入れることも可能である。
【0049】
図12,13は、スクリーン引出端20にある変形可能なワイヤーW1の長さを変える操作により通気用の隙間CL1を生じさせる具体例を模式的に示している。図12,13に示す操作構造ST1は、スクリーン引出端20に取り付けられて一対の保持部50Cに引っ掛けることが可能なワイヤーW1、及び、回す操作によりワイヤーW1の長さを変えて保持可能な長さ調整部ST3を有している。図12,13の上部には、拡大した長さ調整部ST3を模式的に例示している。
図12,13に示すドア102の上部の車室C1側には、前後にそれぞれ保持部50Cが取り付けられている。各保持部50Cは、フック状であり、取り付けられたドア102から車室C1の方へ突出して先端部が引出方向D22の側に折れ曲がっている。各保持部50Cには、変形可能なワイヤーW1を引っ掛けることが可能である。
【0050】
図12に示すワイヤーW1の両端は、ガーニッシュ部21に取り付けられている長さ調整部ST3に接続されている。ワイヤーW1は、長さ調整部ST3を起点及び終点としてガーニッシュ部21のガイド部G1,G2に引っ掛けられたループ状である。各ガイド部G1,G2は、ガーニッシュ部21の車室C1側の面に取り付けられる別部材でもよいし、ガーニッシュ部21と分離不能に一体成形されてもよい。長さ調整部ST3は、ワイヤーW1を巻くための巻取軸ST3a、この巻取軸を回転させる操作を行うための回し操作部ST3b、巻取軸ST3aに設けられて回転方向を切替可能なラチェット機構ST3c、及び、ラチェット機構ST3cの回転方向を切り替えるためのスライダーST3dを有している。ワイヤーW1を巻く側にスライダーST3dの位置を設定すると、ワイヤーW1を巻く側に回し操作部ST3bを回し操作を行うことにより、2箇所の保持部50CにワイヤーW1が引っ掛かる範囲内で巻取軸ST3aにワイヤーW1を巻くことができる。ワイヤーW1を解く側にスライダーST3dの位置を設定すると、ワイヤーW1を解く側に回し操作部ST3bを回し操作を行うことにより、スクリーン10が寸開位置P2となる範囲内で巻取軸ST3aからワイヤーW1を解くことができる。
【0051】
スクリーン本体11が巻取部30に巻き取られて収納されている状態において、ユーザーは、スクリーン引出端20にあるワイヤーW1を手で持ってスクリーン10を引き出すことができる。ワイヤーW1が2箇所の保持部50Cに引っ掛かる範囲内で最も短くなっている状態において、ユーザーがワイヤーW1を2箇所の保持部50Cに引っ掛けると、図12に示すようにスクリーン10が全閉位置P1に保持され、ドアウィンドウ106がほぼ覆われる。この状態において、ユーザーがワイヤーW1を解く側に回し操作部ST3bを回し操作してワイヤーW1を長くすると、スクリーン引出端20が図12に示す矢印のように収納方向D21の側へ少し移動する。これにより、スクリーン10が寸開位置P2において保持部50Aに保持され、スクリーン引出端20から引出方向D22の側に通気用の隙間CL1が生じる。
【0052】
スクリーン10が寸開位置P2に保持されている状態において、ユーザーは、ワイヤーW1を保持部50Cから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよいし、ワイヤーW1を巻く側に回し操作部ST3bを回し操作してスクリーン10を全閉位置P1に戻してもよい。むろん、ユーザーは、スクリーン10が全閉位置P1にある場合において、ワイヤーW1を保持部50Cから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよい。
【0053】
図13に示す操作構造ST1は、長さ調整部ST3の前後にそれぞれワイヤーW1を有している。前側のワイヤーW1の後端は長さ調整部ST3に接続され、前側のワイヤーW1の前端は留め部F1に留められている。後側のワイヤーW1の前端は長さ調整部ST3に接続され、後側のワイヤーW1の後端は留め部F2に留められている。前側の留め部F1と長さ調整部ST3との間に前側のワイヤーW1を引っ掛けるためのガイド部G3が配置され、後側の留め部F2と長さ調整部ST3との間に後側のワイヤーW1を引っ掛けるためのガイド部G4が配置されている。各留め部F1,F2と各ガイド部G3,G4は、ガーニッシュ部21の車室C1側の面に取り付けられる別部材でもよいし、ガーニッシュ部21と分離不能に一体成形されてもよい。図13に示す長さ調整部ST3も、巻取軸ST3a、回し操作部ST3b、ラチェット機構ST3c、及び、ラチェット機構ST3cの回転方向を切り替えるためのスライダーST3dを有している。ワイヤーW1を巻く側にスライダーST3dの位置を設定すると、ワイヤーW1を巻く側に回し操作部ST3bを回し操作を行うことにより、2箇所の保持部50CにワイヤーW1が引っ掛かる範囲内で巻取軸ST3aにワイヤーW1を巻くことができる。ワイヤーW1を解く側にスライダーST3dの位置を設定すると、ワイヤーW1を解く側に回し操作部ST3bを回し操作を行うことにより、スクリーン10が寸開位置P2となる範囲内で巻取軸ST3aからワイヤーW1を解くことができる。
【0054】
図13に示すようにスクリーン10が全閉位置P1に保持されている状態において、ユーザーがワイヤーW1を解く側に回し操作部ST3bを回し操作してワイヤーW1を長くすると、スクリーン引出端20が図13に示す矢印のように収納方向D21の側へ少し移動する。これにより、スクリーン10が寸開位置P2において保持部50Aに保持され、スクリーン引出端20から引出方向D22の側に通気用の隙間CL1が生じる。
【0055】
図12,13で示したように、ワイヤーW1と長さ調整部ST3を有する操作構造ST1は、スクリーン引出端20にあるワイヤーW1が保持部50Cに引っ掛けられて保持されている状態のままワイヤーW1を長くする回し操作により通気用の隙間CL1を生じさせる構造である。スクリーン引出端20は保持部50Cに保持されている状態であるのでスクリーン10による防眩機能や車内温度上昇抑制機能が得られ、生じた通気用の隙間CL1により換気が促進される。従って、図12,13で示した具体例は、スクリーンの電動手段無しに、回し操作部ST3bの回し操作を行うだけという簡単な操作で、スクリーンを引き出したまま換気を促進させることができる。また、隙間CL1を通して光を車外から車室C1に入れることも可能である。
尚、後で図23~25を参照して説明するが、スクリーン引出端からスクリーン引出側に通気用の隙間を生じさせる構造は、保持部に引っ掛かっている操作部材を収納方向D21へ延ばす構造等でもよい。
【0056】
図14,15は、スクリーン引出端20を縁取るガーニッシュ部21にスライド操作により通気用の隙間CL1を生じさせる具体例を模式的に示している。図14は、巻取装置1としてサンシェード装置が組み付けられた自動車100の室内を模式的に例示している。図15は、ガーニッシュ部21に組み込まれた操作構造ST1を模式的に例示している。
【0057】
図15に示すガーニッシュ部21は、ガーニッシュ本体61とスライド部材62を組み合わせることにより形成されている。ガーニッシュ本体61とスライド部材62には、合成樹脂の射出成形品といった成形品等を用いることができる。ガーニッシュ本体61は、スクリーン10の厚さ方向、すなわち、車室C1と車外とを結ぶ方向へ貫通した略長方形の開口61a,61b、及び、スライド部材62を長手方向D2へスライド可能に収容するためのスライド保持部61cを有している。複数の開口61aには、通気用の隙間CL1が生じ得る。開口61aの並びよりも後側にある開口61bには、スライド部材62の操作部62bが配置されている。スライド保持部61cは、図15の上部に示すように各開口61aを閉塞する位置と図15の下部に示すように各開口61aを開放する位置とにスライド可能にスライド部材62を保持する。スライド部材62は、スクリーン10の厚さ方向へ貫通した略長方形の開口62a、ガーニッシュ本体61の開口61bの位置に合わせられた操作部62b、及び、操作部材25を避けるための切欠部62cを有している。各開口62aは、ガーニッシュ本体61の開口61aの位置に合わせることが可能である。ユーザーは、ガーニッシュ本体61の開口61bに配置された操作部62bを手でスライド操作することができる。尚、開口61aには、通風の容易な目の粗い生地が配置されてもよい。
【0058】
本具体例の保持部50Bは、図9~11で示したようなフック状である。保持部50Bに引っ掛けられる操作部材25は、フック状の保持部50Bを通すための貫通穴25aを有し、ガーニッシュ本体61に固定されている。
【0059】
保持部50Bに操作部材25が引っ掛けられている状態において、図15の上部に示すように開口61aを閉塞する側に操作部62bがある場合、巻取装置1は全閉状態である。この場合、ユーザーが図15の下部に示すように開口61aを開放する側に操作部62bをスライド操作すると、開口61aがスライド部材62の開口62a又は切欠部62cにより開放され、ガーニッシュ部21に通気用の隙間CL1が生じる。この状態が寸開状態である。
【0060】
開口61aが開放されている状態において、ユーザーは、操作部材25を保持部50Bから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよいし、開口61aを閉塞する側に操作部62bをスライド操作して巻取装置1を全閉状態に戻してもよい。むろん、ユーザーは、巻取装置1が全閉状態である場合において、操作部材25を保持部50Bから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよい。
尚、開口61a,62aの形状は、略長方形に限定されず、円形を含む楕円形、長円形、三角形といった多角形、星形、等でもよい。
【0061】
図16~19は、スクリーン引出端20を縁取るガーニッシュ部21に開き操作により通気用の隙間CL1を生じさせる具体例を模式的に示している。図16は、巻取装置1としてサンシェード装置が組み付けられた自動車100の室内を模式的に例示している。図17は、正面ガーニッシュ部63と背面ガーニッシュ部64と通風用スクリーン65を有する操作構造ST1を巻取装置1の全閉状態において模式的に例示している。図18は、操作構造ST1を巻取装置1の寸開状態において模式的に例示している。図19は、寸開状態の操作構造ST1を車室C1側から模式的に例示している。
【0062】
図16~19に示すガーニッシュ部21は、正面ガーニッシュ部63と背面ガーニッシュ部64と通風用スクリーン65を組み合わせることにより形成されている。正面ガーニッシュ部63は、車外側において凹んでいる凹部63a、及び、凹部63aの上下にそれぞれ配置された着脱部63bを有している。背面ガーニッシュ部64は、車室C1側において凹んでいる凹部64a、及び、凹部64aの上下にそれぞれ配置された着脱部64bを有している。通風用スクリーン65は、一端65aが背面ガーニッシュ部64の凹部64aに固定され、他端65bが正面ガーニッシュ部63の凹部63aに固定され、複数の長円形の開口65cが形成されている。開口65cには、通風の容易な目の粗い生地が配置されてもよい。
尚、開口65cの形状は、長円形に限定されず、円形を含む楕円形、長方形といった多角形、星形、等でもよい。
【0063】
正面ガーニッシュ部63と背面ガーニッシュ部64とが合わせられている場合の凹部63a,64aには、通風用スクリーン65が収容されている。着脱部63b,64bには、磁石、面ファスナー、等を用いることができる。着脱部63b,64bに磁石を用いる場合、着脱部63b,64bの内の一方にN極を表面に向けた磁石を使用し、他方にS極を表面に向けた磁石を使用すればよい。これにより、ユーザーが背面ガーニッシュ部64に正面ガーニッシュ部63を合わせると着脱部63bと着脱部64bとが互いに引き合い、背面ガーニッシュ部64に対する正面ガーニッシュ部63の保持が維持される。また、ユーザーが正面ガーニッシュ部63を車室C1側ないし収納方向D21へ引っ張ると、着脱部64bから着脱部63bが離れ、正面ガーニッシュ部63が通風用スクリーン65を介して背面ガーニッシュ部64に吊り下がった状態となる。
【0064】
本具体例の保持部50Bは、図9~11で示したようなフック状である。保持部50Bに引っ掛けられる操作部材25は、フック状の保持部50Bを通すための貫通穴25aを有し、背面ガーニッシュ部64に固定されている。
【0065】
保持部50Bに操作部材25が引っ掛けられている状態において、図17に示すように正面ガーニッシュ部63が背面ガーニッシュ部64に合わせられている場合、巻取装置1は全閉状態である。この場合、ユーザーが図18,19に示すように背面ガーニッシュ部64から正面ガーニッシュ部63を引き離す開き操作を行うと、開口65cを有する通風用スクリーン65が現れてガーニッシュ部21に通気用の隙間CL1が生じる。この状態において、巻取部30からの引っ張り力により正面ガーニッシュ部63が通風用スクリーン65に吊り下がった状態となる。この状態が寸開状態である。
【0066】
通風用スクリーン65が現れている状態において、ユーザーは、操作部材25を保持部50Bから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよいし、背面ガーニッシュ部64に正面ガーニッシュ部63を合わせる閉じ操作を行って巻取装置1を全閉状態に戻してもよい。むろん、ユーザーは、巻取装置1が全閉状態である場合において、操作部材25を保持部50Bから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよい。
【0067】
図14~19で示した操作構造ST1は、保持部50Bにスクリーン引出端20が保持されている状態のまま操作によりガーニッシュ部21に隙間CL1を生じさせる構造である。スクリーン引出端20は保持部50Bに保持されている状態であるのでスクリーン10による防眩機能や車内温度上昇抑制機能が得られ、生じた通気用の隙間CL1により換気が促進される。従って、図14~19で示した具体例は、スクリーンの電動手段無しに、操作部62bのスライド操作やガーニッシュ部21の開き操作を行うだけという簡単な操作で、スクリーンを引き出したまま換気を促進させることができる。また、隙間CL1を通して光を車外から車室C1に入れることも可能である。
【0068】
図20~22は、変形可能なガーニッシュ部21の曲げ状態を変更する操作により通気用の隙間CL1を生じさせる具体例を模式的に示している。図20は、引き出されているスクリーン10の引出端20にあるガーニッシュ部21が第一の曲げ状態B1に保持されている場合の自動車100の室内を模式的に例示している。図21は、引き出されているスクリーン10の引出端20にあるガーニッシュ部21が第二の曲げ状態B2に保持されている場合の自動車100の室内を模式的に例示している。
図20,21に示すドア102の上部の車室C1側には、前後にそれぞれ保持部50Dが取り付けられている。各保持部50Dは、フック状であり、取り付けられたドア102から車室C1の方へ突出して先端部が引出方向D22の側に折れ曲がっている。各保持部50Dには、ガーニッシュ部21に固定された操作部材25を引っ掛けることが可能である。
【0069】
図20,21に示すガーニッシュ部21は、袋状に形成された本体部の中に曲げ状態B1,B2を保持可能なワイヤーW2が入った構造である。ガーニッシュ部21を別部材としてスクリーン本体11に取り付ける場合、ガーニッシュ部21には、柔軟な筒状の成形品といった柔軟な筒状部品にワイヤーW2が入った別部材を用いることができる。柔軟な部品の材料には、不織布、織布、エラストマー、等を用いることができる。また、ガーニッシュ部21は、スクリーン本体11の先端縁(他端13)を袋状に形成して中にワイヤーW2を挿入した構造等でもよい。ワイヤーW2の両端は、図20に示すように引出方向D22の側へ撓んだ第一の曲げ状態B1に保持され、且つ、図21に示すように収納方向D21の側へ撓んだ第二の曲げ状態B2に保持されるように、ガーニッシュ部21の本体部に固定されている。
尚、ガーニッシュ部21の曲げ状態が変わることから、スクリーン本体11は、ジャージ素材といった伸縮性素材が好ましい。
【0070】
スクリーン本体11が巻取部30に巻き取られて収納されている状態において、ユーザーは、操作部材25又はガーニッシュ部21を手で持ってスクリーン10を引き出すことができる。ガーニッシュ部21が第一の曲げ状態B1である場合において、ユーザーが各保持部50Dに操作部材25を引っ掛けると、図20に示すように巻取装置1が全閉状態に保持され、ドアウィンドウ106がほぼ覆われる。この状態において、ユーザーがガーニッシュ部21を手で持って第一の曲げ状態B1から前記第二の曲げ状態B2に変更する操作を行うと、図21に示すようにスクリーン引出端20から引出方向D22の側に通気用の隙間CL1が生じ、この状態が保持される。
【0071】
ガーニッシュ部21が第二の曲げ状態B2である場合において、ユーザーは、操作部材25を保持部50Dから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよいし、ガーニッシュ部21を操作して第二の曲げ状態B2から第一の曲げ状態B1に戻してもよい。むろん、ユーザーは、ガーニッシュ部21が第一の曲げ状態B1である場合において、操作部材25を保持部50Dから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよい。
尚、本具体例は、ガーニッシュ部21における第一の曲げ状態B1の形状をドアウィンドウ106の上縁部の形状に合わせることができるので、全閉状態においてドアウィンドウ106が覆われる割合が増え、巻取装置1の見た目も向上する。
【0072】
図22は、複数の曲げ状態B1,B2に保持可能なガーニッシュ部21を有する巻取装置1を組み付けたドア102を上側から模式的に例示している。図22に示すドア102の上部の車室C1側には、前後にそれぞれ保持部50Eが取り付けられている。各保持部50Eは、フック状であり、取り付けられたドア102から車室C1の方へ突出して先端部が引出方向D22の側に折れ曲がっている。各保持部50Eには、ガーニッシュ部21の前後にそれぞれ固定された操作部材25を引っ掛けることが可能である。尚、図22では、各保持部50Eに操作部材25が引っ掛けられている状態において、第二の曲げ状態B2のガーニッシュ部21が実線部に示され、第一の曲げ状態B1のガーニッシュ部21が二点鎖線部に示されている。
【0073】
図22に示すワイヤーW2の両端は、ドアウィンドウ106の側へ撓んだ第一の曲げ状態B1に保持され、且つ、車室C1の側へ撓んだ第二の曲げ状態B2に保持されるように、ガーニッシュ部21の本体部に固定されている。ガーニッシュ部21が第一の曲げ状態B1である場合において、ユーザーが各保持部50に操作部材25を引っ掛けると、巻取装置1が全閉状態に保持され、ドアウィンドウ106がほぼ覆われる。この状態において、ユーザーがガーニッシュ部21を手で引いて第一の曲げ状態B1から前記第二の曲げ状態B2に変更する操作を行うと、スクリーン引出端20からドアウィンドウ106側に通気用の隙間CL1が生じ、この状態が保持される。
【0074】
ガーニッシュ部21が第二の曲げ状態B2である場合において、ユーザーは、操作部材25を保持部50Eから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよいし、ガーニッシュ部21を操作して第二の曲げ状態B2から第一の曲げ状態B1に戻してもよい。むろん、ユーザーは、ガーニッシュ部21が第一の曲げ状態B1である場合において、操作部材25を保持部50Eから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよい。
【0075】
図20~22で示したように、曲げ状態B1,B2を保持可能なガーニッシュ部21を有する操作構造ST1は、保持部50Eにスクリーン引出端が保持されている状態のまま前記第一の曲げ状態B1から第二の曲げ状態B2に変更する操作により通気用の隙間CL1を生じさせる構造である。スクリーン引出端20は保持部50Eに保持されている状態であるのでスクリーン10による防眩機能や車内温度上昇抑制機能が得られ、生じた通気用の隙間CL1により換気が促進される。従って、図20~22で示した具体例は、スクリーンの電動手段無しに、ガーニッシュ部21の曲げ状態を変更する操作を行うだけという簡単な操作で、スクリーンを引き出したまま換気を促進させることができる。また、隙間CL1を通して光を車外から車室C1に入れることも可能である。
尚、ワイヤーW2の代わりに多関節の部材を使用することも可能である。
【0076】
図23~25は、操作部材25に含まれる操作部72のスライド操作により通気用の隙間CL1を生じさせる具体例を模式的に示している。図23は、巻取装置1としてサンシェード装置が組み付けられた自動車100の室内を模式的に例示している。図24は、スライド可能な操作部72を有する操作構造ST1を模式的に例示している。図24の左側には、操作部材25の基部71に対して操作部72が相対的に収納方向D21の側に位置する様子が示されている。図24の右側には、操作部材25の基部71に対して相対的に操作部72が引出方向D22の側に位置する様子が示されている。図25は、基部71及び操作部72を模式的に分解して例示している。図25の左上部には、操作部72の凸部72bの分解図が示されている。
【0077】
図23~25に示す操作部材25は、基部71と操作部72を有している。基部71は、ガーニッシュ部21に取り付けられている。操作部72は、基部71に対して収納方向D21及び引出方向D22へスライド可能に取り付けられている。本具体例の保持部50Fは、フック状であり、取り付けられたドア102から車室C1の方へ湾曲して先端部が引出方向D22の側に曲がっている。
【0078】
図24,25に示す基部71は、操作部72の全体を収納方向D21及び引出方向D22へスライドさせるための案内溝71aを有している。案内溝71aの両内側面には、それぞれ、操作部72の凸部72bを収納方向D21及び引出方向D22へスライド可能に挿入させる側面溝71bが形成されている。各側面溝71bは、本体部71cよりも両端部71dが広がった形状を有している。
【0079】
図24,25に示す操作部72は、引出方向D22の側に保持部50Fを通すための貫通穴72aを有し、両外側面に幅方向外側へ突出した凸部72bを有している。各凸部72bは、スリット72dを有するばね支持部72c、及び、スリット72dに挿入された一対の板ばね72eを有している。これらの板ばね72eがばね支持部72cに取り付けられた凸部72bには、基部71の側面溝71bに挿入されている状態において、比較的広い両端部71dから比較的狭い本体部71cに移動するために板ばね72eを狭くさせる力を加える必要がある。このため、各凸部72bは側面溝71bの端部71dにとどまり易く、図24の左側に示すように操作部72が基部71に対して相対的に最も収納方向D21の側の位置に保持され、図24の右側に示すように操作部72が基部71に対して相対的に最も引出方向D22の側の位置に保持される。
【0080】
操作部72が基部71に対して相対的に最も収納方向D21の側の位置にある場合において、操作部72の貫通穴72aにフック状の保持部50Fを通して操作部材25を保持部50Fに引っ掛けると、ドアウィンドウ106がスクリーン10でほぼ覆われる。この場合、図23に示すようにスクリーン10が全閉位置P1に保持され、ドアウィンドウ106がほぼ覆われる。この状態において、ユーザーは、基部71に対して操作部72を相対的に最も引出方向D22の側の位置に変える操作を行うことができる。すると、図24に示すように保持部50Fが通された貫通穴72aの位置は変わらないので、スクリーン本体11が巻取部30に若干巻き取られ、スクリーン引出端20から引出方向D22の側に通気用の隙間CL1が生じる。
【0081】
スクリーン10が寸開位置P2に保持されている状態において、ユーザーは、操作部材25を保持部50Fから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよいし、基部71に対して操作部72を相対的に最も収納方向D21の側の位置に変える操作を行ってスクリーン10を全閉位置P1に戻してもよい。むろん、ユーザーは、スクリーン10が全閉位置P1にある場合において、操作部材25を保持部50Fから外して巻取部30にスクリーン本体11を巻き取らせてもよい。
【0082】
図23~25で示したように、保持部50Fに引っ掛かっている操作部材25を収納方向D21へ延ばすことが可能な操作構造ST1は、操作部材25が保持部50Fに引っ掛けられて保持されている状態のまま操作部72のスライド操作により通気用の隙間CL1を生じさせる構造である。スクリーン引出端20は保持部50Fに保持されている状態であるのでスクリーン10による防眩機能や車内温度上昇抑制機能が得られ、生じた通気用の隙間CL1により換気が促進される。従って、図23~25で示した具体例は、スクリーンの電動手段無しに、操作部72のスライド操作を行うだけという簡単な操作で、スクリーンを引き出したまま換気を促進させることができる。また、隙間CL1を通して光を車外から車室C1に入れることも可能である。
【0083】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
サンシェード装置としての巻取装置の設置箇所は、サイドウインドウ以外にも、リヤウインドウ等でもよい。スクリーンの引出方向は、上方以外にも、下方、水平方向、等でもよい。
巻取部を設ける箇所は、ハーフケース以外にも、巻取軸のほぼ全周を囲むケースでもよいし、ドアトリムといったトリムでもよい。
【0084】
操作構造は、2段階以上の隙間CL1を生じさせてもよい。例えば、図1~8で示した案内部51に、第二係止部52dよりも収納方向D21の側の位置において溝51a内の凸部28が引っ掛かる第三係止部52d、及び、第二係止部52dにある凸部28が操作部26の操作により第三係止部に移動する形状の第二連絡経路が追加されてもよい。この場合、第一係止部52bにある凸部28が操作部26の操作により第二係止部52dに移動して隙間CL1が生じ、第二係止部52dにある凸部28が操作部26の操作により第三係止部に移動して隙間CL1が広がる。この態様は、車室C1の換気をさらに促進させることができる。図9~11で示したヒンジ部14を引出方向D22において複数の箇所に設定しても、2段階以上の隙間CL1が生じる。
【0085】
上述した具体例は、複数組み合わされてもよい。例えば、図1~8で示した操作部材25及び保持部50Bを有する巻取装置1において、スクリーン引出端20に沿ったヒンジ部14を中心として折曲可能にスクリーン本体11に繋がっている延長部15が追加されてもよい。この場合、例えば、第一係止部52bにある凸部28が操作部26の操作により第二係止部52dに移動して隙間CL1が生じ、ヒンジ部14を中心として延長部15が折り曲げられると隙間CL1が広がる。この態様も、車室C1の換気をさらに促進させることができる。
【0086】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、スクリーンを引き出したまま換気を促進させる自動車用巻取装置等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1…巻取装置、
10…スクリーン、11…スクリーン本体、14…ヒンジ部、15…延長部、
20…引出端、21…ガーニッシュ部、22…芯材、
25…操作部材、26…操作部、27…脚部、28…凸部、29…突っ張り部、
30…巻取部、31…回転軸本体、35…付勢部、36…ばね、40…ケース、
50,50A~50F…保持部、50a…側面部材、50b…背面部材、50c…壁部、
51…案内部、51a…溝、
52a…入口部、52b…第一係止部、52c…連絡経路、
52d…第二係止部、52e…出口部、
61…ガーニッシュ本体、61a,61b…開口、61c…スライド保持部、
62…スライド部材、62a…開口、62b…操作部、62c…切欠部、
63…正面ガーニッシュ部、63a…凹部、63b…着脱部、
64…背面ガーニッシュ部、64a…凹部、64b…着脱部、
65…通風用スクリーン、65c…開口、
71…基部、72…操作部、
100…自動車、102…ドア、106…ドアウィンドウ、107…ウィンドウガラス、
B1…第一の曲げ状態、B2…第二の曲げ状態、
C1…車室、
CL1…隙間、
D1…軸方向、D2…ガーニッシュ部の長手方向、
D21…収納方向、D22…引出方向、
P1…全閉位置、P2…寸開位置、
ST1…操作構造、
ST2…折曲保持構造、ST2a,ST2b…着脱部、ST3…長さ調整部、
W1,W2…ワイヤー。
図1
図2
図3
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図5
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