(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】座席装置、座席制御システム及び座席制御方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/22 20060101AFI20221220BHJP
B60N 3/06 20060101ALI20221220BHJP
A47C 7/50 20060101ALI20221220BHJP
A47C 7/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N3/06
A47C7/50 A
A47C7/00 Z
(21)【出願番号】P 2018183328
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】中山 務
(72)【発明者】
【氏名】名和 博志
(72)【発明者】
【氏名】木梨 旭
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 歩
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-020563(JP,A)
【文献】特開平06-135270(JP,A)
【文献】特開2018-025897(JP,A)
【文献】特開平08-263711(JP,A)
【文献】特開2002-007525(JP,A)
【文献】特開2012-103993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/22
B60N 3/06
A47C 7/50
A47C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の運行区間を有する移動手段に設置された座席装置であって、
利用者が着席可能に構成された座部と、背凭れと、を有し、前記背凭れは、前記背凭れが起立する位置に設定された初期姿勢から前記利用者によって設定された設定姿勢に傾動されることが可能に構成された座席と、
前記座席への利用者の着席の有無を検出する検出部と
前記座席の利用券
による利用区間の情報を含む座席利用情報に基づいて
前記利用区間が終了したと判定され、かつ、前記検出部により未着席が検出された場合に、前記座席を前記設定姿勢から前記初期姿勢に復帰させる制御部と、
を具備する座席装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の座席装置であって、
前記座席装置は、前記背凭れを前記初期
姿勢と前記
設定姿勢との間で駆動させる駆動部をさらに具備し、
前記制御部は、前記座席を前記設定姿勢から前記初期姿勢に復帰させるように前記駆動部を制御する
座席装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の座席装置であって、
前記制御部は、前記運行区間内の利用者の乗降する乗降タイミングにおいて、前記座席を前記設定姿勢から前記初期姿勢に復帰させる
座席装置。
【請求項4】
請求項
1から3のうちのいずれか一項に記載の座席装置であって、
前記座席利用情報は、前記座席の指定席券による利用区間の情報を含む
座席装置。
【請求項5】
請求項1から
4のうちいずれか一項に記載の座席装置であって、
前記座席利用情報の入力を受け付ける入力部をさらに具備する
座席装置。
【請求項6】
請求項1から
5のうちいずれか一項に記載の座席装置であって、
前記座席の利用が終了したことに基づいて生成された、前記座席を前記初期姿勢に復帰させる復帰指令を受信する受信部をさらに具備し、
前記制御部は、
前記復帰指令を受信し、かつ、前記検出部により未着席が検出された場合に、前記座席を前記設定姿勢から前記初期姿勢に復帰させる
座席装置。
【請求項7】
請求項1から
6のうちいずれか一項に記載の座席装置であって、
前記制御部は、前記座席の前記初期姿勢への復帰が通知された後に、前記座席を前記設定姿勢から前記初期姿勢に復帰させる
座席装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の座席装置であって、
前記座席の前記初期姿勢への復帰を通知する通知部
をさらに具備し、
前記制御部は、前記座席を前記初期姿勢に復帰させる前に、前記初期姿勢への復帰を通知するよう前記通知部を制御する
座席装置。
【請求項9】
所定の運行区間を有する移動手段に設置された座席装置であって、
利用者が着席可能に構成された座部と、レッグレストと、を有し、前記レッグレストは、前記レッグレストの最後方位置に設定された初期姿勢から前方に傾斜するように前記利用者によって設定された設定姿勢に傾動されることが可能に構成された座席と、
前記座席への利用者の着席の有無を検出する検出部と
前記座席の利用券
による利用区間の情報を含む座席利用情報に基づいて前記利用区間が終了したと判定され、かつ、前記検出部により未着席が検出された場合に、前記座席を前記設定姿勢から前記初期姿勢に復帰させる制御部と、
を具備する座席装置。
【請求項10】
所定の運行区間を有する移動手段に設置された座席を制御し、前記座席は、利用者が着席可能に構成された座部と、背凭れと、を有し、前記背凭れは、前記背凭れが起立する位置に設定された初期姿勢から前記利用者によって設定された設定姿勢に傾動されることが可能に構成された座席制御システムであって、
前記座席への利用者の着席の有無を検出する検出部と、
前記座席の利用券
による利用区間の情報を含む座席利用情報に基づいて、前記利用券による前記座席の利用が終了したか否か判定し、
前記利用区間が終了したと判定され、かつ、前記検出部により未着席が検出された場合に、前記座席を前記設定姿勢から前記初期姿勢に復帰させる
制御部と、
を具備する座席制御システム。
【請求項11】
所定の運行区間を有する移動手段に設置された座席を制御し、前記座席は、利用者が着席可能に構成された座部と、レッグレストと、を有し、前記レッグレストは、前記レッグレストの最後方位置に設定された初期姿勢から前方に傾斜するように前記利用者によって設定された設定姿勢に傾動されることが可能に構成された座席制御システムであって、
前記座席への利用者の着席の有無を検出する検出部と、
前記座席の利用券
による利用区間の情報を含む座席利用情報に基づいて、前記利用券による前記座席の利用が終了したか否か判定し、
前記利用区間が終了したと判定され、かつ、前記検出部により未着席が検出された場合に、前記座席を前記設定姿勢から前記初期姿勢に復帰させる
制御部と
を具備する座席制御システム。
【請求項12】
所定の運行区間を有する移動手段に設置された座席を制御する座席制御方法であって、
前記座席は、利用者が着席可能に構成された座部と、背凭れと、を有し、前記背凭れは、前記背凭れが起立する位置に設定された初期姿勢から前記利用者によって設定された設定姿勢に傾動されることが可能に構成され、
前記座席の利用券
による利用区間の情報を含む座席利用情報に基づいて、前記利用券による前記座席の利用が終了したか否か判定し、
前記座席への利用者の着席の有無を検出し、
前記座席の利用が終了したと判定され
、かつ、前記検出部により未着席が検出された場合に、前記座席を、
前記設定姿勢から
前記初期姿勢に復帰させる
座席制御方法。
【請求項13】
所定の運行区間を有する移動手段に設置された座席を制御する座席制御方法であって、
前記座席は、利用者が着席可能に構成された座部と、レッグレストと、を有し、前記レッグレストは、前記レッグレストの最後方位置に設定された初期姿勢から前方に傾斜するように前記利用者によって設定された設定姿勢に傾動されることが可能に構成され、
前記座席の利用券
による利用区間の情報を含む座席利用情報に基づいて、前記利用券による前記座席の利用が終了したか否か判定し、
前記座席への利用者の着席の有無を検出し、
前記座席の利用が終了したと判定され
、かつ、前記検出部により未着席が検出された場合に、前記座席を、
前記設定姿勢から
前記初期姿勢に復帰させる
座席制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者によって姿勢を調整可能な座席装置、座席制御システム及び座席制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両等に装備される座席装置には、快適な乗り心地を提供するために、背凭れやレッグレストが傾く機構を備えたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、利用者(着座者)の入力操作によって、背凭れ及びレッグレストを、電動モータで前後方向へ傾斜させる構成が記載されている。同文献に記載の座席装置は、操作ボタンによる押圧操作の他、解除ペダルの踏み込みによって、反転された座席とともに、背凭れ及びレッグレストも元の初期位置に戻るように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、座席を利用した利用者が、背凭れ等を初期位置に戻さずに降車することがある。この場合、次に座席を利用する利用者が、前の利用者の使用感を感じ、不快に思うこともあった。また、全運行区間を終了した後、車内を清掃する場合に、清掃員が解除ペダル又は操作ボタン等の操作によって背凭れ等を初期位置に復帰させる手間がかかり、清掃作業の負担となっていた。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、座席利用者の快適性及び清掃時の利便性を向上させることが可能な、座席装置、座席制御システム及び座席制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る座席装置は、座席と、制御部と、を具備する。
上記座席は、初期姿勢と、利用者によって設定された設定姿勢と、の間を移行可能に構成される。
上記制御部は、上記座席の利用券の発行状況の情報を含む座席利用情報に基づいて、上記利用券による上記座席の利用が終了したと判定された場合に、上記座席を上記設定姿勢から上記初期姿勢に復帰させる。
【0008】
上記構成では、利用券による座席の利用が終了したと判定される場合に、座席が初期姿勢に復帰する。これにより、次の利用者が前の利用者の使用感を感じることなく、快適に座席を利用することができる。また、座席の清掃時にも、座席を手動で初期姿勢に復帰させる手間を省き、利便性を向上させることができる。さらに、利用者が、座席の利用中に一時離席している場合には、初期姿勢に復帰しない。したがって、利用中に座席の姿勢を再び調整する手間を省き、座席の利用者の快適性も確保できる。
【0009】
上記座席装置は、上記座席への利用者の着席を検出する検出部
をさらに具備し、
上記制御部は、上記利用券による上記座席の利用が終了したと判定され、かつ、上記検出部により未着席が検出された場合に、上記座席を上記設定姿勢から上記初期姿勢に復帰させてもよい。
これにより、利用者が座席に着席している場合に、自動的に座席が初期姿勢に復帰することを防止できる。したがって、座席の利用者の快適性を確保することができる。
【0010】
例えば、上記座席は、上記初期姿勢における初期位置から後方に傾斜した傾斜位置に傾動されることが可能に構成された背凭れを有し、
上記座席装置は、上記背凭れを上記初期位置と上記傾斜位置との間で駆動させる駆動部をさらに具備し、
上記制御部は、上記座席を上記設定姿勢から上記初期姿勢に復帰させる場合に、上記背凭れを上記傾斜位置から上記初期位置に復帰させるように上記駆動部を制御してもよい。
これにより、リクライニングされた背凭れを、座席の利用終了後に自動的に復帰させることができ、利用者の快適性及び清掃時の利便性を向上させることができる。
【0011】
上記座席装置は、所定の運行区間を有する移動手段に設置され、
上記座席利用情報は、上記座席の利用券による利用区間の情報を含み、
上記制御部は、上記利用区間が終了したと判定され、かつ、上記検出部により未着席が検出された場合に、上記座席を上記設定姿勢から上記初期姿勢に復帰させてもよい。
これにより、座席が設置された鉄道、バス、船舶等の移動手段において、座席の利用者の快適性及び清掃時の利便性を向上させることができる。
【0012】
またこの場合、上記制御部は、上記運行区間内の利用者の乗降する乗降タイミングにおいて、上記座席を上記設定姿勢から上記初期姿勢に復帰させてもよい。
これにより、利用者の座席の利用終了後、次の利用者が当該座席を利用する前に、自動的に座席を初期姿勢に復帰させることができる。
【0013】
上記座席利用情報は、上記座席の指定席券による利用区間の情報を含んでいてもよい。
これにより、座席を指定(予約)して利用している利用者の快適性を確保することができる。
【0014】
さらに、上記座席装置は、上記座席利用情報の入力を受け付ける入力部を具備してもよい。
これにより、座席装置が座席利用情報に基づく処理を行うことができる。
【0015】
また、上記座席装置は、上記座席の利用が終了したことに基づいて生成された、上記座席を上記初期姿勢に復帰させる復帰指令を受信する受信部をさらに具備し、
上記制御部は、
上記復帰指令を受信し、かつ、上記検出部により未着席が検出された場合に、上記座席を上記設定姿勢から上記初期姿勢に復帰させてもよい。
これにより、座席装置の処理負担を低減させることができる。
【0016】
また、上記制御部は、上記座席の上記初期姿勢への復帰が通知された後に、上記座席を上記設定姿勢から上記初期姿勢に復帰させてもよい。
これにより、座席の利用者やその周囲に座席の復帰を予め通知することができ、座席が自動復帰することに対する不快感や不審感を抑制できる。
【0017】
具体的に、上記座席装置は、上記座席の上記初期姿勢への復帰を通知する通知部
をさらに具備し、
上記制御部は、上記座席を上記初期姿勢に復帰させる前に、上記初期姿勢への復帰を通知するよう上記通知部を制御してもよい。
これにより、座席ごとに個別に座席の復帰を通知することができ、車内の快適性を維持することができる。
【0018】
本発明の他の形態に係る座席装置は、座席と、検出部と、制御部と、を具備する。
上記座席は、初期姿勢と、利用者によって設定された設定姿勢と、の間を移行可能に構成される。
上記検出部は、上記座席への利用者の着席を検出する。
上記制御部は、上記検出部により未着席が検出された場合に、上記座席を上記設定姿勢から上記初期姿勢に復帰させる。
【0019】
上記構成では、座席の利用終了時において自動的に座席が初期姿勢に復帰でき、次の利用者が前の利用者の使用感を感じることなく、快適に座席を利用することができる。また、座席の清掃時にも、座席を手動で初期姿勢に復帰させる手間を省き、利便性を向上させることができる。さらに、座席に利用者が着席している場合に座席が初期姿勢に復帰することを防止でき、座席の利用者の快適性を維持することができる。
【0020】
本発明の他の形態に係る座席制御システムは、座席と、制御部と、を具備する。
上記座席は、初期姿勢と、利用者によって設定された設定姿勢と、の間を移行可能に構成される。
上記制御部は、
上記座席の利用券の発行状況の情報を含む座席利用情報に基づいて、上記利用券による上記座席の利用が終了したか否か判定し、
上記座席の利用が終了したと判定された場合に、上記座席を上記設定姿勢から上記初期姿勢に復帰させる。
【0021】
本発明のさらに他の形態に係る座席制御システムは、座席と、検出部と、制御部と、を具備する。
上記座席は、初期姿勢と、利用者によって設定された設定姿勢と、の間を移行可能に構成される。
上記検出部は、上記座席への利用者の着席を検出する。
上記制御部は、
上記検出部の検出結果に基づいて、上記座席に利用者が着席しているか否かを判定し、
未着席であると判定された場合に、上記座席を上記設定姿勢から上記初期姿勢に復帰させる。
【0022】
また、本発明のさらに他の形態に係る座席制御方法は、座席の利用券の発行状況の情報を含む座席利用情報に基づいて、上記利用券による上記座席の利用が終了したか否か判定するステップを含む。
上記座席の利用が終了したと判定された場合に、上記座席が、利用者によって設定された設定姿勢から初期姿勢に復帰される。
【0023】
また、本発明のさらに他の形態に係る座席制御方法は、上記座席への利用者の着席を検出する検出部の検出結果に基づいて、上記座席に利用者が着席しているか否かを判定するステップを含む。
未着席であると判定された場合に、上記座席が、利用者によって設定された設定姿勢から初期姿勢に復帰される。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、座席利用者の快適性及び清掃時の利便性を向上させることが可能な、座席装置、座席制御システム及び座席制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る座席装置の全体を示す斜視図である。
【
図2】上記座席装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の座席管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】上記座席管理システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図5】上記座席管理システムが搭載された鉄道車両がA駅、B駅、及びC駅と運行する場合を説明する模式的な表である。
【
図6】本発明の第2の実施形態の座席管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】上記座席管理システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第3の実施形態の座席管理システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第4の実施形態の座席管理システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第5の実施形態の座席管理システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第8の実施形態の座席管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図12】本発明の第9の実施形態の座席管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図13】上記座席管理システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の第10の実施形態の座席管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図15】本発明の第11の実施形態の座席管理システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0027】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る座席装置100の全体を示す斜視図である。
図2は、座席装置100の構成を示すブロック図である。なお、各図においてX軸、Y軸及びZ軸は相互に直交する3軸方向を示しており、X軸は前後方向、Y軸は左右方向、Z軸は高さ方向にそれぞれ相当する。
【0028】
[座席装置の構成]
座席装置100は、座席10と、座席10への利用者の着席を検出する検出部20と、制御部30と、受信部40と、を備える。
座席装置100は、例えば、移動手段としての新幹線や特急電車等の鉄道車両(以下、単に車両ともいう)に設置されており、各座席10には、固有の車両番号及び座席番号が付されている。座席10は、指定席券や特急券等の利用券を購入した利用者によって利用される。
【0029】
(座席)
座席10は、車両の床面に固定された脚台F上に設置されており、利用者が一人ずつ着席可能に構成される。座席装置100は、左右方向に並んで配置された2つの座席10を有しており、二人掛けの座席として構成される。座席装置100は、一人掛けの座席で構成されてもよいし、三人掛けの座席で構成されてもよい。
【0030】
各座席10は、それぞれ、利用者が着席可能に構成された座部11と、背凭れ12と、アームレスト13と、レッグレスト14と、を有する。
背凭れ12は、座部11の後方に傾動可能に連結される。
アームレスト13は、座部11の左右両側にそれぞれ設けられたサイドアームレスト13sと、センターアームレスト13cと、を含む。センターアームレスト13cは、隣接する座席10の間に配置され、これらの座席10の利用者が共通に利用可能に構成される。
レッグレスト14は、座部11の前方に傾動可能に連結される。
【0031】
座席10は、背凭れ12とレッグレスト14を初期位置から利用者の好みの角度位置に傾斜できる。
【0032】
背凭れ12は、第1の操作部S1に対する入力操作に基づいて、初期位置から後方に傾斜した傾斜位置に傾斜させることが可能に構成される。背凭れ12の初期位置は、背凭れ12の最前方位置に設定され、典型的には、座部11の後端に対して略垂直な角度に設定される。背凭れ12の傾斜位置は、初期位置から後方にリクライニングした任意の角度位置に設定される。背凭れ12は、第1の駆動部(駆動部)D1によって、初期位置と傾斜位置との間をY軸まわりの前後方向(
図2において矢印A1方向)に駆動される。
【0033】
レッグレスト14は、第2の操作部S2に対する入力操作に基づいて、初期位置から前方に傾斜した足載位置に展開させることが可能に構成される。レッグレスト14は、第2の駆動部D2によって、初期位置と傾斜位置との間をY軸まわりの前後方向(
図2において矢印A2方向)に駆動される。
【0034】
第1の操作部S1及び第2の操作部S2は、例えばセンターアームレスト13cの両側面部に設けられた操作ボタンや、サイドアームレスト13sの上面前端部に設けられる操作レバー等で構成される。
【0035】
第1の駆動部D1及び第2の駆動部D2は、モータ等の電動アクチュエータ等をそれぞれ含む。
【0036】
さらに、座席装置100は、座席10を脚台Fに対してZ軸まわりに反転させる反転部Tを有する。反転部Tにより、座席10が、進行方向(前方)を向いた前方姿勢と、進行方向と逆方向(後方)を向いた後方姿勢と、の間で180度反転可能となる。
反転部Tは、例えば、ロックピンT1と、解除ペダルT2と、復帰機構T3と、を含む。
【0037】
ロックピンT1は、脚台Fに対して座席10を位置決めするためのロック機構を構成する。
【0038】
解除ペダルT2は、
図1に示すように、座席10の下部に設置される。解除ペダルT2は、利用者や乗務員の踏み込み操作によりロックピンT1を下方へ沈み込ませて座席10の回転規制を解除し、座席10の回転を許容して、前方姿勢と後方姿勢との間の姿勢変換を可能とする解除機構を構成する。なお、解除ペダルT2への踏み込みが解除されると、ロックピンT1は上方へ付勢され、座席10の前方姿勢位置あるいは後方姿勢位置において座席10と係合し、その位置において再び座席10を位置決めする。
【0039】
復帰機構T3は、解除ペダルT2の踏み込み時(解除機構の駆動時)に、背凭れ12及びレッグレスト14を初期位置へ復帰させるためのものである。復帰機構T3は、例えば、背凭れ12及びレッグレスト14を初期位置へ付勢する付勢部材や、当該付勢部材による背凭れ12及びレッグレスト14の復帰を規制するクラッチ等を含む。復帰機構T3は、解除ペダルT2の踏み込み時に当該クラッチを外し、上記付勢部材により背凭れ12及びレッグレスト14が収納位置へ復帰するように構成される。
【0040】
(検出部)
検出部20は、座席10の座部11へ利用者が着席したことを検出可能に構成される。検出部20は、例えば、座部11に配置された感圧センサ、機械スイッチなどの着座センサで構成されるが、これに限られず、座部11の近傍に配置された赤外線センサ、カメラ等で構成されてもよい。検出部20の検出結果(検出信号)は、制御部30へ出力される。検出対象は利用者に限られず、例えば、利用者の荷物を含んでもよい。
【0041】
(制御部)
制御部30は、典型的には、CPU、メモリ等を含むコンピュータで構成される。制御部30は、第1の操作部S1及び第2の操作部S2からの入力操作に基づいて、第1の駆動部D1及び第2の駆動部D2の駆動を制御する制御信号を生成する。
【0042】
さらに制御部30は、座席10の利用券に基づく座席10の利用が終了したと判定され、かつ、検出部20により未着席を検出した場合に、座席10を、利用者によって設定された設定姿勢から初期姿勢に復帰させる。
【0043】
本実施形態では、座席10の「初期姿勢」は、背凭れ12が初期位置にある状態をいい、座席10の「設定姿勢」は、背凭れ12が傾斜位置にある状態をいう。この場合、「制御部30が座席10を設定姿勢から初期姿勢に復帰させる」とは、傾斜位置に設定されている背凭れ12を初期位置に復帰させるように第1の駆動部D1を制御することをいう。
【0044】
(受信部)
受信部40は、座席装置100の属する車両装置300の通信部310と有線又は無線によって接続された通信装置として構成される。受信部40は、座席10を初期位置に復帰させる復帰指令を受信する。これにより、制御部30は、処理に必要な情報を座席制御システム1の管理装置200から取得することができる。
【0045】
[座席制御システムの構成]
図3は、本実施形態の座席制御システム1の構成を示すブロック図である。
座席制御システム1は、座席10を管理する管理装置200と、車両装置300と、を備える。座席制御システム1は、例えば座席10を備えた鉄道車両に搭載されており、管理装置200は運転台に、車両装置300は各車両にそれぞれ配置される。管理装置200は、車両の運行を管理する装置の一部として構成されてもよいが、単独の装置として構成されてもよい。
【0046】
車両装置300は、上述の構成をそれぞれ有する複数の座席装置100と、通信部310と、を有する。
通信部310は、管理装置200及び座席装置100と有線又は無線によってそれぞれ接続され、これらの間の情報の授受を担う。
【0047】
管理装置200は、制御部210と、通信部220と、記憶部230と、を有する。
制御部210は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等を含むコンピュータで構成される。制御部210は、メモリに記憶されたプログラム等に基づいて、所定の処理を実行する。
通信部220は、車両装置300との送受信を担う通信機器で構成される。
記憶部230は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の記憶装置で構成される。
【0048】
記憶部230は、本実施形態において、車両に設置された各座席10についての座席利用情報を記憶している。
座席利用情報は、各座席10の利用券の発行状況の情報を含む。ここでいう利用券は、車両の座席を利用するための権利を示すものであり、紙片等からなる切符の他、ICカード、携帯情報端末等に記憶された購入履歴の情報等も広く含む。
本実施形態では、座席利用情報は、各座席10の座席番号と、それに対応付けられた指定席券による利用区間の情報と、を含む。
【0049】
記憶部230は、例えば、車両の運行前又は運行中に、鉄道会社等の管理するサーバ装置C等の外部機器から、ネットワーク等を介して当該車両の各座席10についての座席利用情報を取得する。これにより、管理装置200が、運行中の車両に設置された各座席10の指定席券による利用区間の情報を利用することができる。
【0050】
制御部210は、座席利用情報に基づいて、座席10に対して背凭れ12を初期位置に自動的に復帰させるための復帰指令を生成する。これにより、利用者の入力操作によって傾斜位置に設定されていた背凭れ12が、利用者の座席の利用終了後に、後述する処理が実行されることで、自動的に初期位置に復帰される。
【0051】
[座席制御システムの動作]
図4は、背凭れ12の自動復帰処理に係る座席制御システム1の動作例を示すフローチャートである。
管理装置200の制御部210及び座席装置10の制御部30は、協働して座席制御システム1の「制御部」として機能し、本動作例の動作主体をなす。
【0052】
まず、制御部210は、利用者が乗降する乗降タイミングであるか否か判定する(S111)。乗降タイミングで背凭れ12の自動復帰処理を行うことにより、座席10の利用者が降車した直後であって、次の利用者が利用する前に、背凭れ12を復帰させることができる。
【0053】
乗降タイミングの判定は、例えば、制御部210が、停車駅への停車又は停車駅からの発車を検出して行うことができる。制御部210は、車両運行管理装置等から車速、停車駅発車後の時間及び停車駅からの走行距離等を取得することにより、これらを検出することができる。
【0054】
あるいは、乗降タイミングは、乗務員の入力操作により判定されてもよい。例えば、乗務員が、停車駅到着時に、座席10の背凭れ12が初期位置に復帰する旨をアナウンスする。アナウンス後に、乗務員が、管理装置200に接続された入力装置(図示せず)に対して、乗降タイミングを指示する入力操作を行う。制御部210は、この入力操作に基づいて乗降タイミングであると判定する。このような処理により、車両内の利用者に対して、空席となった座席10の背凭れ12が自動的に初期位置に復帰することを周知させることができる。
【0055】
乗降タイミングであると判定された場合、制御部210は、座席利用情報に基づいて、各座席10の指定席券による利用区間が、停車又は発車した駅で終了するか否か判定する(S112)。記憶部230は、予め、座席10の指定席券による利用区間を把握するための座席利用情報を、鉄道会社のサーバ装置Cから取得しているものとする。
【0056】
続いて、制御部210は、指定席券による利用区間の終了が判定された座席10の背凭れ12を初期位置に復帰させるための復帰指令を生成し、当該復帰指令を送信するように通信部220を制御する(S113)。通信部220は、復帰指令が生成された座席10の属する車両装置300に対して、復帰指令を送信する。
【0057】
各座席装置100の制御部30は、通信部310を介して復帰指令を受信する(S211)。
【0058】
続いて、制御部30は、検出部20の検出結果に基づいて、利用者が座席10の座部11に未着席であるか否か判定する(S212)。未着席であると判定された場合、制御部30は、背凭れ12を初期位置に復帰させるように第1の駆動部D1を制御する(S213)。これにより、座席10が初期姿勢に復帰する。
【0059】
このように、本実施形態では、座席10の指定席券による利用区間が終了し、かつ、実際に利用者の座席10への着席が検出できなかった場合に、背凭れ12を自動的に初期位置に復帰させる。これにより、途中駅から座席10を利用する利用者が、前の利用者の使用感を感じることなく、快適に座席10の利用を開始することができる。また、空席となった座席は自動的に初期姿勢に復帰するため、その後方の座席の利用スペースも広く確保することができる。これらにより、車内の快適性を高めることができる。
【0060】
さらに、全運行区間を運行した後、清掃員が車内清掃する際に、背凭れ12を手動で初期位置に復帰させる必要がなくなり、清掃時の利便性を高めることができる。
【0061】
また、本実施形態では、利用者が一時離席した場合や、乗り過ごした場合には、背凭れ12が自動的に復帰しないように制御される。以下、具体的に説明する。
【0062】
図5は、座席制御システム1が搭載された鉄道車両がA駅、B駅、及びC駅と停車しながら運行する場合を説明する表である。同図には、ある座席10の指定席券による利用区間及び実際の利用者の乗車区間と、この座席10の初期姿勢への復帰タイミングとを示している。
【0063】
図5の例1は、利用者がA駅からB駅までの指定席券を購入し、実際にA駅及びB駅の間乗車した例を示す。この場合、指定席券による利用区間及び乗車区間は、いずれもA駅からB駅の間である。
【0064】
管理装置200の制御部210は、B駅に停車又は発車したタイミングで、利用区間の情報に基づき座席装置100に復帰指令を送信する。復帰指令を受信した座席装置100の制御部30は、利用者の未着席を検出した場合に、背凭れ12を初期位置に復帰させる。これにより、B駅到着後には、背凭れ12が初期位置に復帰した状態となる。
【0065】
図5の例2は、利用者がA駅からB駅までの座席の指定席券を購入し、実際にはC駅まで乗り過ごした例を示す。この場合、乗車区間はA駅からC駅までであり、指定席券による利用区間はA駅からB駅までである。
【0066】
制御部210は、B駅に停車又は発車したタイミングで、指定席券による利用区間に基づき座席装置100に復帰指令を送信する。座席装置100の制御部30は、復帰指令を受信するが、検出部20は利用者の着席を検出する。これにより、制御部30は、B駅では背凭れ12を初期位置に復帰させず、例えばC駅に到着し利用者が降車した後に背凭れ12を復帰させる。
【0067】
このように、本実施形態では、指定席券による利用区間が終了したと判定されても、着席が検出された場合には背凭れ12の自動復帰が防止される。これにより、利用者が着席している間に背凭れ12が自動的に動作することが防止され、乗車中は快適な姿勢で座席10の利用を継続できる。
【0068】
なお、例2では、B駅への発車後は、検出部20が利用者の未着席(離席)を検出した場合、B駅で受信した復帰指令に基づいて、背凭れ12が自動的に復帰されてもよい。
【0069】
図5の例3では、利用者がA駅からC駅までの座席の指定席券を購入し、実際にはB駅で降りてしまった例を示す。この場合、乗車区間はA駅からB駅までであり、指定席券による利用区間はA駅からC駅までである。
【0070】
制御部210は、B駅に停車又は発車したタイミングで、座席10の指定席券による利用区間が終了していないと判定するため、B駅では復帰指令を生成しない。このため、B駅において、座席装置100の検出部20が未着席を検出し得るが、制御部30は、復帰指令を受信しないため背凭れ12を初期位置に復帰させることはない。
【0071】
その後、制御部210は、C駅に停車又は発車したタイミングで、座席10の指定席券による利用区間が終了していると判定し、復帰指令を送信する。このため、C駅到着後に、検出部20が未着席を検出し、制御部30が背凭れ12を復帰させる。
【0072】
このような処理により、利用者が指定席券による利用区間内で離席した場合であっても、背凭れ12が自動的に復帰することはない。つまり、利用者が背凭れ12を好みの傾斜位置に設定していた場合に、指定席券による利用区間内では当該姿勢が維持される。したがって、座席10が自動復帰することによる不便を抑制し、快適性及び利便性を確保できる。
【0073】
<第2の実施形態>
座席利用情報は、サーバ装置C等から取得する態様に限定されず、各座席装置100Aの入力部50によって取得されてもよい。
第2実施形態以下の説明において、上述の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
図6は、本実施形態の座席制御システム1Aの構成を示すブロック図である。
座席制御システム1Aは、管理装置200と、座席装置100Aを含む車両装置300Aと、を備える。
管理装置200のハードウェア構成は第1実施形態と同様である。
【0075】
座席装置100Aは、座席10と、座席10への着席を検出する検出部20と、制御部30と、入力部50と、を有する。
【0076】
入力部50は、利用者による座席利用情報の入力が可能に構成される。入力部50は、例えば、ICカード、携帯情報端末や切符等の利用券に記録された座席利用情報を読み取り可能な近距離無線通信機で構成される。これにより、入力部50が、利用者のICカードや携帯情報端末に記憶された、あるいは切符に印字されたバーコード等として記録された、座席10の利用券による利用区間の情報を取得することができる。入力部50は、例えば各座席10の上方の天井部分や、座席10の前方の座席の背面、センターアームレスト13cの側面等に設けられる。
【0077】
入力部50は、座席10の利用券による利用区間の情報を含む座席利用情報を取得できればよく、上記の構成に限定されない。例えば、入力部50は、利用者によって座席10の利用券による利用区間を入力可能なタッチパネルセンサ、操作ボタン等で構成されてもよい。
【0078】
[座席制御システムの動作]
図7は、第2の実施形態に係る座席制御システム1Aの動作例を示すフローチャートである。
【0079】
まず、座席装置100Aの制御部30が、座席10の利用券による利用区間の情報を含む座席利用情報を取得する(S221)。制御部30は、入力部50を介して、利用者の保持する利用券についての座席利用情報を取得する。
【0080】
続いて、制御部30は、取得された座席利用情報を送信するように、車両装置300の通信部310を制御する(S222)。
【0081】
管理装置200の制御部210は、通信部220を介して座席利用情報を受信する(S121)。
【0082】
制御部210は、座席10の利用区間が終了し得る乗降タイミングであるか否か判定する(S122)。この乗降タイミングは、第1実施形態と同様に、停車駅への停車又は停車駅からの発車の検出、あるいは乗務員の入力操作等に基づいて判定することができる。
【0083】
乗降タイミングであると判定された場合、制御部210は、座席利用情報に基づいて、各座席10の利用券による利用区間が、停車又は発車した駅で終了するか否か判定する(S223)。
【0084】
制御部210は、利用区間の終了が判定された座席10の背凭れ12を初期位置に復帰させるための復帰指令を生成し、当該復帰指令を送信するように通信部220を制御する(S223)。
【0085】
続いて、座席装置100が通信部310を介して復帰指令を受信する(S223)。そして、座席装置100の制御部30は、検出部20の検出結果に基づいて、利用者が座席10の座部11に未着席であるか否か判定する(S224)。未着席であると判定された場合、制御部30は、背凭れ12を初期位置に復帰させるように第1の駆動部D1を制御する(S225)。
【0086】
このように、本実施形態によっても、座席利用情報に基づいて、座席10の自動復帰処理を行うことができ、車内における座席10の利用者の快適性や清掃時等の利便性を向上させることができる。
【0087】
<第3の実施形態>
座席装置100Aが入力部50を有する場合、座席装置100Aの制御部30が座席10の利用券による利用区間の判定を行ってもよい。
本実施形態の座席制御システム1Aは、第2の実施形態と同様のハードウェア構成で実現することができる。
【0088】
図8は、第3の実施形態に係る座席制御システム1Aの動作例を示すフローチャートである。
【0089】
まず、第2実施形態と同様に、座席装置100の制御部30が、入力部50から座席の利用券による利用区間の情報を含む座席利用情報を受信する(S231)。
【0090】
一方、管理装置200の制御部210は、座席10の購入区間が終了し得る乗降タイミングであるか否か判定する(S131)。乗降タイミングであると判定された場合、制御部210は、乗降タイミングである旨を送信するように、通信部220を制御する(S132)。
【0091】
座席装置100の制御部30は、車両装置300の通信部310を介して、乗降タイミングである旨を受信する(S232)。制御部30は、座席利用情報に基づいて、座席10の利用券による利用区間が、停車又は発車した駅で終了するか否か判定する(S233)。
【0092】
利用区間が終了すると判定された場合、制御部30は、検出部20の検出結果に基づいて、利用者が座席10の座部11に未着席であるか否か判定する(S234)。未着席であると判定された場合、制御部30は、背凭れ12を初期位置に復帰させるように第1の駆動部D1を制御する(S235)。
【0093】
このように、本実施形態では、各座席装置100によって利用区間の判定を行うことができ、管理装置200の処理負担を低減させることができる。
【0094】
<第4の実施形態>
管理装置200が外部機器から座席利用情報を取得する場合であっても、座席装置100が座席10の利用券(指定席券)による利用区間の終了の判定を行うこともできる。
本実施形態の座席制御システム1は、第1の実施形態と同様のハードウェア構成で実現することができる。
【0095】
図9は、第4の実施形態に係る座席制御システム1の動作例を示すフローチャートである。
【0096】
まず、制御部210は、利用者が乗降する乗降タイミングであるか否か判定する(S141)。
【0097】
乗降タイミングであると判定された場合、制御部210は、乗降タイミングである旨とともに、各座席10の座席利用情報を座席装置100に送信するように、通信部220を制御する(S142)。
【0098】
座席装置100の制御部30は、車両装置300の通信部310を介して、乗降タイミングである旨と、座席10についての座席利用情報と、を受信する(S241)。
【0099】
続いて制御部30は、座席利用情報に基づいて、各座席10の指定席券による利用区間が、停車又は発車した駅で終了するか否か判定する(S242)。
【0100】
指定席券による利用区間が終了すると判定された場合、制御部30は、検出部20の検出結果に基づいて、利用者が座席10の座部11に未着席であるか否か判定する(S243)。未着席であると判定された場合、制御部30は、背凭れ12を初期位置に復帰させるように第1の駆動部D1を制御する(S244)。
【0101】
本実施形態では、各座席装置100が指定席券による利用区間の終了を判定するため、管理装置200の処理負担を軽減させることができる。
【0102】
<第5の実施形態>
第5の実施形態として、検出部20の検出結果に基づいて、管理装置200が座席10を初期姿勢に復帰させるか否か判断することもできる。
本実施形態の座席制御システム1は、第1の実施形態と同様のハードウェア構成で実現することができる。
【0103】
図10は、第5の実施形態に係る座席制御システム1の動作例を示すフローチャートである。
【0104】
まず、制御部210は、利用者が乗降する乗降タイミングであるか否か判定する(S151)。
【0105】
乗降タイミングであると判定された場合、制御部210は、座席利用情報に基づいて、各座席10の利用券による利用区間が、停車又は発車した駅で終了するか否か判定する(S152)。
【0106】
続いて、制御部210は、利用区間の終了が判定された座席10の属する座席装置100に対して、検出部20の検出結果の要求を送信するよう、通信部220を制御する(S153)。
【0107】
通信部310を介して検出部20の検出結果の要求を受信した座席装置100の制御部30は、検出部20の検出結果に基づいて、利用者が座席10の座部11に未着席であるか否か判定する(S253)。未着席であると判定された場合、制御部30は、未着席である旨の検出結果を管理装置200に送信するよう、通信部310を制御する(S254)。
【0108】
管理装置200の制御部210は、通信部220を介して未着席である旨の検出結果を受信した場合(S154)、座席10の背凭れ12を初期位置に復帰させるための復帰指令を生成し、当該復帰指令を送信するように通信部220を制御する(S155)。通信部220は、復帰指令が生成された座席10の属する車両装置300に対して復帰指令を送信する。
【0109】
座席装置100の制御部30は、復帰指令を受信した場合(S254)、背凭れ12を初期位置に復帰させるように第1の駆動部D1を制御する(S255)。
【0110】
本実施形態でも、利用者が降車後の座席10の背凭れ12を自動的に初期位置に復帰させることができ、利用者の快適性及び車内清掃時の利便性を確保することができる。
【0111】
<第6の実施形態>
以上の実施形態では、管理装置200が乗降タイミングを判定したが、各座席装置100が乗降タイミングを判定してもよい。
本実施形態の座席制御システム1は、第1の実施形態と同様のハードウェア構成で実現することができる。
【0112】
この場合は、座席装置100が、直接、又は管理装置200を介して、車両運行管理装置等から車速、停車駅発車後の時間及び停車駅からの走行距離等を取得する。座席装置100の制御部30は、これらの情報に基づいて停車駅への停車又は停車駅からの発車を検出することができる。
あるいは、座席装置100が、管理装置200等を介して乗務員による背凭れ12の復帰を指令する入力操作を検出し、これに基づいて乗降タイミングを判定することができる。
【0113】
<第7の実施形態>
本実施形態では、制御部30が、座席利用情報に基づいて、利用券に基づく座席10の利用が終了したと判定され、かつ、検出部20により未着席が検出された場合に、背凭れ12に加えて、レッグレスト14を初期位置に復帰させる。
本実施形態の座席制御システム1は、第1の実施形態と同様のハードウェア構成で実現することができる。
【0114】
本実施形態では、座席10の「初期姿勢」は、背凭れ12及びレッグレスト14の双方が初期位置にある状態をいい、座席10の「設定姿勢」は、背凭れ12及びレッグレスト14の少なくとも一方が傾斜位置にある状態をいう。この場合、「制御部30が座席10を設定姿勢から初期姿勢に復帰させる」とは、傾斜位置に設定されている背凭れ12及びレッグレスト14を初期位置に復帰させるように第1の駆動部D1及び第2の駆動部D2を制御することをいう。
【0115】
これにより、利用者によってレッグレスト14が足載可能な傾斜位置に設定されていた場合、利用者の座席利用区間等の終了後、レッグレスト14が自動的に初期位置である収納位置に復帰する。したがって、座席10の利用者の快適性及び清掃時の利便性をさらに向上させることができる。
【0116】
<第8の実施形態>
本実施形態では、制御部30が、座席利用情報に基づいて、利用券に基づく座席10の利用が終了したと判定され、かつ、検出部20により未着席が検出された場合に、背凭れ12及びレッグレスト14に加えて、反転されていた座席10を初期位置に復帰させる。
【0117】
図11は、本実施形態の座席制御システム1Bの構成を示すブロック図である。
座席制御システム1Bは、第1の実施形態と同様の管理装置200と、座席装置100Bを有する車両装置300Bと、を備える。
【0118】
座席装置100Aは、座席10と、座席10への着席を検出する検出部20と、制御部30と、の他、背凭れ12を駆動する第1の駆動部D1、レッグレスト14を駆動する第2の駆動部D2と、さらに反転機構を駆動する第3の駆動部D3と、を有する。第3の駆動部D3も、例えば電動アクチュエータ等で構成される。
【0119】
本実施形態では、座席10の「初期姿勢」は、背凭れ12及びレッグレスト14の双方が初期位置にあり、かつ、座席10が進行方向(前方)を向いた初期姿勢にある状態をいう。また座席10の「設定姿勢」は、背凭れ12が傾斜位置にある状態、レッグレスト14が傾斜位置にある状態、及び座席10が反転姿勢にある状態、のうちの少なくとも一つである状態をいう。
【0120】
この場合、「制御部30が座席10を設定姿勢から初期姿勢に復帰させる」とは、傾斜位置に設定されている背凭れ12及びレッグレスト14を初期位置に復帰させるように第1の駆動部D1及び第2の駆動部D2を制御すること、及び反転姿勢に設定されている座席10を初期姿勢に復帰させるように第3の駆動部D3を制御すること、の少なくとも一方をいう。
【0121】
これにより、座席10が利用者によって反転されていた場合にも、当該利用者の座席の利用の終了後に、自動的に座席10が反転される。したがって、後の利用者の快適性を確保し、清掃時の利便性を向上させることができる。
【0122】
<第9の実施形態>
さらに、座席装置100Cが検出部を有さず、制御部30が、座席10の利用券の発行状況の情報を含む座席利用情報に基づいて、利用券による座席10の利用が終了したと判定された場合に、座席10を設定姿勢から初期姿勢に復帰させてもよい。
【0123】
[座席制御システムの構成]
図12は、本実施形態の座席制御システム1Cの構成を示すブロック図である。
座席制御システム1Cは、管理装置200と、座席装置100Cを有する車両装置300Cと、を備える。管理装置200のハードウェア構成は、例えば第1実施形態と同様である。
【0124】
座席装置100Cは、座席10と、制御部30と、受信部40と、を有する。この他、座席装置100Cは、背凭れ12を駆動する第1の駆動部D1、レッグレスト14を駆動する第2の駆動部D2等を有している。
【0125】
[座席制御システムの動作]
図13は、第9の実施形態に係る座席制御システム1Cの動作例を示すフローチャートである。
【0126】
まず、制御部210は、利用者が乗降する乗降タイミングであるか否か判定する(S161)。乗降タイミングは、本実施形態において、停車駅到着時に、座席10が初期姿勢に復帰する旨をアナウンスした後、乗務員の入力操作により判定されてもよい。これにより、座席10が初期姿勢に復帰する旨が利用者に通知される。
【0127】
乗降タイミングであると判定された場合、制御部210は、サーバ装置等から取得された座席利用情報に基づいて、各座席10の指定席券による利用区間が、停車又は発車した駅で終了するか否か判定する(S162)。
【0128】
制御部210は、指定席券による利用区間の終了が判定された座席10を初期姿勢に復帰させるための復帰指令を生成し、当該復帰指令を送信するように通信部220を制御する(S163)。
【0129】
各座席装置100の制御部30は、通信部310を介して復帰指令を受信する(S261)。復帰指令を受信した座席装置100Cの制御部30は、座席10を初期姿勢に復帰させる(S262)。
【0130】
このように、本実施形態では、指定席券による利用区間が終了した座席10を初期姿勢に復帰させることができる。これにより、利用区間が終了した座席10やその周囲の座席の利用者の快適性を向上させるとともに、清掃時の利便性を高めることができる。さらに、座席装置100Cの装置構成を簡素化することができる。
【0131】
なお、本実施形態の他の動作例としては、第3及び第4の実施形態と同様に、座席装置100が座席10の利用券(指定席券)による利用区間の終了の判定を行ってもよい。
【0132】
<第10の実施形態>
座席装置100Dは、第9の実施形態の構成に加えて、座席10の初期姿勢への復帰を通知する通知部60を有していてもよい。
【0133】
図14は、本実施形態の座席装置100Dの構成を示す模式的な図である。
座席装置1Dは、座席10と、制御部30と、受信部40と、通知部60と、を有する。この他、座席装置100Dは、背凭れ12を駆動する第1の駆動部D1、レッグレスト14を駆動する第2の駆動部D2等を有している。
【0134】
通知部60は、例えば、各座席10に対応して設けられた警告灯、スピーカなどで構成されるが、初期姿勢への通知が可能であればこれらに限定されない。通知部60は、対応する各座席10のアームレスト13s,13c等に設けられる態様の他、各座席10の上方の天井や、前方の座席10の背凭れ12等に設けられてもよい。
【0135】
制御部30は、例えば、座席10を初期姿勢に復帰させる前に、座席10が初期姿勢に復帰する旨を通知するよう、通知部60を制御する。具体的に、通知部60が警告灯の場合は、制御部30が警告灯を点灯させる。通知部60がスピーカの場合は、制御部30が、スピーカからブザー音やアナウンスを出力させる。これにより、初期姿勢へ復帰する座席10を個別に通知することができ、座席10の利用者やその周囲に対する通知を効果的に行うことができる。また、乗務員が入力操作やアナウンス等せずとも自動的に初期姿勢への復帰が通知されるため、乗務員の負担を軽減することができる。
【0136】
<第11の実施形態>
座席装置100の制御部30は、座席10の利用券の発行状況を考慮せず、検出部20により未着席が検出された場合に、座席10を設定姿勢から初期姿勢に復帰させてもよい。本実施形態は、座席制御システム1と同様のハードウェア構成により実現することができる。
【0137】
図15は、第11の実施形態に係る座席制御システム1の動作例を示すフローチャートである。
【0138】
まず、管理装置200の制御部210が、利用者が乗降する乗降タイミングであるか否か判定する(S171)。乗降タイミングは、例えば、停車駅到着時に、その旨及び座席10が初期姿勢に復帰する旨をアナウンスした後、乗務員の入力操作に基づいて判定される。これにより、未着席の座席10が初期姿勢に復帰する旨が利用者に通知される。
【0139】
乗降タイミングであると判定された場合、制御部210は、乗降タイミングである旨を送信するように通信部220を制御する(S172)。
【0140】
各座席装置100の制御部30は、通信部310を介して乗降タイミングである旨を受信する(S271)。座席装置100の制御部30は、検出部20の検出結果に基づいて、利用者が座席10の座部11に未着席であるか否か判定する(S272)。未着席であると判定された場合、制御部30は、座席10を初期姿勢に復帰させる(S273)。
【0141】
このように、本実施形態では、未着席の状態にある座席10を初期姿勢に復帰させることができる。これにより、未着席の座席10やその周囲の座席の利用者の快適性を向上させるとともに、清掃時の利便性を高めることができる。
【0142】
また、座席装置100の制御部30は、座席10の初期姿勢への復帰が乗務員により通知された後に、座席10を設定姿勢から初期姿勢に復帰させることができる。これにより、座席10の周囲の利用者に不審感を与えることなく車内の快適性を維持できる。
【0143】
なお、本実施形態は、第10の実施形態に係る座席装置100Dを含む座席制御システムによっても実現することができる。これにより、乗務員がアナウンス等せずとも、制御部30及び通知部60によって座席10の初期姿勢への復帰が通知され、乗務員の負担が軽減される。
【0144】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば本発明の実施形態は各実施形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
【0145】
座席10の構成は上記に限定されず、利用者によって初期姿勢からの姿勢の転換が可能であればよい。例えば座席は、反転部T及びレッグレスト14の少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0146】
上記各実施形態では、座席10が鉄道車両に設置されている例を示したが、この他、バス、航空機、船舶等の所定の運行区間を有する移動手段に設置されていてもよい。
【0147】
さらに、座席が移動手段に設置されている例に限定されず、映画館、劇場等に設置されていてもよい。これによっても、例えば一公演(上映)の終了後、次の公演(上映)の前に座席を初期姿勢に自動的に復帰させることができ、座席の利用者の快適性及び清掃時の利便性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0148】
10…座席
12…背凭れ
D1…駆動部(第1の駆動部)
20…検出部
30…制御部
40…受信部
50…入力部
60…通知部
100,100A,100B,100C,100D…座席装置
1,1A,1B,1C,1D…座席制御システム
200…管理装置
210…制御部