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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】純水製造装置および純水製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20060101AFI20221220BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20221220BHJP
   B01J 49/09 20170101ALI20221220BHJP
   B01J 49/40 20170101ALI20221220BHJP
   C02F 9/02 20060101ALI20221220BHJP
   C02F 9/04 20060101ALI20221220BHJP
   C02F 9/10 20060101ALI20221220BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20221220BHJP
   C02F 9/08 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/44 H
C02F1/44 D
C02F1/42 B
B01J49/09
B01J49/40
C02F9/02
C02F9/04
C02F9/10
C02F1/28 D
C02F9/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018204822
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020069429
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】眞田 千穂
(72)【発明者】
【氏名】渡部 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】仲摩 翔太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 之重
(72)【発明者】
【氏名】笠間 修
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-240891(JP,A)
【文献】特開平09-085241(JP,A)
【文献】特開2000-051845(JP,A)
【文献】特開平04-271848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/42-1/44
B01J 39/00-49/90
C02F 9/00- 9/14
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を逆浸透膜に通水することにより透過水を得るろ過脱塩手段と、
前記透過水をイオン交換樹脂に通水し脱塩を行なう脱塩手段と、
前記イオン交換樹脂に熱水を通水する再生手段と、
を備える純水製造装置であって、
前記イオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合したものであり、
前記カチオン交換樹脂は、強酸性の交換基を有するとともに、前記アニオン交換樹脂は、弱塩基性の交換基を有し、
前記強酸性の交換基の交換容量は、前記弱塩基性の交換基の交換容量よりも小さいことを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】
原水を逆浸透膜に通水することにより透過水を得るろ過脱塩手段と、
前記透過水をイオン交換樹脂に通水し脱塩を行なう脱塩手段と、
前記イオン交換樹脂に熱水を通水する再生手段と、
を備える純水製造装置であって、
前記イオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合したものであり、
前記カチオン交換樹脂は、弱酸性の交換基を有するとともに、前記アニオン交換樹脂は、強塩基性の交換基を有し、
前記弱酸性の交換基の交換容量は、前記強塩基性の交換基の交換容量よりも大きいことを特徴とする純水製造装置。
【請求項3】
前記透過水を加熱し、前記熱水とする第1の加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の純水製造装置。
【請求項4】
原水の加熱を行なう第2の加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の純水製造装置。
【請求項5】
前記第2の加熱手段と前記ろ過脱塩手段の間に、活性炭により不純物を除去する活性炭処理手段をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の純水製造装置。
【請求項6】
前記脱塩手段および前記再生手段は、前記イオン交換樹脂を充填し、双方の処理を行なう1つの充填槽であることを特徴とする請求項1または2に記載の純水製造装置。
【請求項7】
前記透過水の導電率は、50μS/cm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の純水製造装置。
【請求項8】
原水を逆浸透膜に通水することにより透過水を得るろ過脱塩工程と、
純水を製造するときに、イオン交換樹脂に前記透過水を通水し脱塩を行なう脱塩工程と、
前記イオン交換樹脂を再生するときに、当該イオン交換樹脂に熱水を通水する再生工程と、
を含む純水製造方法であって、
前記イオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合したものであり、
前記カチオン交換樹脂は、強酸性の交換基を有するとともに、前記アニオン交換樹脂は、弱塩基性の交換基を有し、
前記強酸性の交換基の交換容量は、前記弱塩基性の交換基の交換容量よりも小さいことを特徴とする純水製造方法。
【請求項9】
原水を逆浸透膜に通水することにより透過水を得るろ過脱塩工程と、
純水を製造するときに、イオン交換樹脂に前記透過水を通水し脱塩を行なう脱塩工程と、
前記イオン交換樹脂を再生するときに、当該イオン交換樹脂に熱水を通水する再生工程と、
を含む純水製造方法であって、
前記イオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合したものであり、
前記カチオン交換樹脂は、弱酸性の交換基を有するとともに、前記アニオン交換樹脂は、強塩基性の交換基を有し、
前記弱酸性の交換基の交換容量は、前記強塩基性の交換基の交換容量よりも大きいことを特徴とする純水製造方法。
【請求項10】
前記イオン交換樹脂を再生するときに、前記透過水を加熱し、前記熱水とする加熱工程をさらに含むことを特徴とする請求項8または9に記載の純水製造方法。
【請求項11】
原水の加温を行なう加温工程をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の純水製造方法。
【請求項12】
前記加温工程と前記ろ過脱塩工程の間に、活性炭により不純物を除去する活性炭処理工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水の製造装置等に関し、より詳しくは、医薬品精製水等の純水を製造する純水製造装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医薬品の製造を行なうには、医薬品精製水を用いることが決められている。この医薬品精製水は、EDI(Electrodeionization:連続電気再生式純水装置)ユニットを用いて製造されることがある。また、医薬品精製水は、イオン交換樹脂を内部に充填したイオン交換樹脂装置により脱塩することで製造されることがある。
【0003】
特許文献1には、電気脱イオン装置は、陰極と陽極との間に、複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを配列して脱塩室と濃縮室とを形成してなり、脱塩室及び/又は濃縮室に、微細状のイオン交換体を保持する連続気泡構造の発泡体が充填されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-284488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、EDIユニットを用いる場合、電力消費量が多大となり、純水を製造する際の費用が上昇しやすい。また、EDIユニットは、内部構造が複雑であり、設備導入やメンテナンスを行なう際に、多額の費用を要する。一方、イオン交換樹脂装置の場合、イオン交換樹脂の再生を行なう際に、通常は、薬剤を使用する必要がある。しかし、純水が医薬品精製水である場合、薬剤の混入を避ける必要がある。そのため、再生を行なわずに、イオン交換樹脂を全て交換することがあり、この場合も純水を製造する際の費用が上昇しやすい。
本発明の目的は、複雑な構造を有さず、純水を製造する際の費用が低廉となりやすい純水製造装置等を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして本発明によれば、原水を逆浸透膜に通水することにより透過水を得るろ過脱塩手段と、透過水をイオン交換樹脂に通水し脱塩を行なう脱塩手段と、イオン交換樹脂に熱水を通水する再生手段と、を備える純水製造装置が提供される。
【0007】
ここで、イオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合したものであり、カチオン交換樹脂が強酸性の交換基を有するか、およびアニオン交換樹脂が強塩基性の交換基を有するか、の少なくとも一方であるようにすることが好ましい。この場合、脱塩性を、より高くすることができる。
また、カチオン交換樹脂は、強酸性の交換基を有するとともに、アニオン交換樹脂は、弱塩基性の交換基を有し、強酸性の交換基の交換容量は、弱塩基性の交換基の交換容量よりも小さいようにすることが好ましい。この場合、イオン交換樹脂の再生の効率をより向上させることができる。
さらに、カチオン交換樹脂は、弱酸性の交換基を有するとともに、アニオン交換樹脂は、強塩基性の交換基を有し、弱酸性の交換基の交換容量は、強塩基性の交換基の交換容量よりも大きいようにすることが好ましい。この場合、イオン交換樹脂の再生の効率をより向上させることができる。
また、透過水を加熱し、熱水とする第1の加熱手段をさらに備えるようにすることが好ましい。この場合、第1の加熱手段による熱水により、イオン交換樹脂の再生を行なうことができる。
そして、原水の加熱を行なう第2の加熱手段をさらに備えるようにすることが好ましい。この場合、原水を、後段の装置の性能を向上させる温度にすることができるとともに、後段の装置や配管の熱殺菌を行なうことができる。
また、第2の加熱手段とろ過脱塩手段の間に、活性炭により不純物を除去する活性炭処理手段をさらに備えるようにすることが好ましい。この場合、原水に含まれる不純物を除去することができる。
さらに、脱塩手段および再生手段は、イオン交換樹脂を充填し、双方の処理を行なう1つの充填槽であるようにすることが好ましい。この場合、イオン交換樹脂の再生の処理を、より簡単に行なうことができる。
またさらに、透過水の導電率は、50μS/cm以下であるようにすることが好ましい。この場合、この範囲を超えると、効率的にイオン交換樹脂の再生が行われない。
【0008】
さらに、本発明によれば、原水を逆浸透膜に通水することにより透過水を得るろ過脱塩工程と、純水を製造するときに、イオン交換樹脂に透過水を通水し脱塩を行なう脱塩工程と、イオン交換樹脂を再生するときに、イオン交換樹脂に熱水を通水する再生工程と、を含む純水製造方法が提供される。
【0009】
ここで、イオン交換樹脂を再生するときに、透過水を加熱し、熱水とする加熱工程をさらに含むようにすることが好ましい。この場合、イオン交換樹脂を再生するときに必要な熱水を製造することができる。
また、原水の加温を行なう加温工程をさらに備えるようにすることが好ましい。この場合、原水を、後段の装置の性能を向上させる温度にすることができる
さらに、加温工程とろ過脱塩工程の間に、活性炭により不純物を除去する活性炭処理工程をさらに備えるようにすることが好ましい。この場合、原水に含まれる不純物を除去することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複雑な構造を有さず、純水を製造する際の費用が低廉となりやすい純水製造装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態が適用される精製水製造ユニットについて説明した図である。
図2】医薬品精製水を製造するときの精製水製造ユニットの動作について説明したフローチャートである。
図3】イオン交換樹脂を再生するときの精製水製造ユニットの動作について説明したフローチャートである。
図4】活性炭塔から脱気装置までの装置を熱殺菌するときの精製水製造ユニットの動作について説明したフローチャートである。
図5】イオン交換装置から限外ろ過装置までの装置を熱殺菌するときの精製水製造ユニット1の動作について説明したフローチャートである。
図6】実施例1の結果について示した図である。
図7】実施例2の結果について示した図である。
図8】実施例3の結果について示した図である。
図9】実施例4の結果について示した図である。
図10】実施例5の結果について示した図である。
図11】実施例6の結果について示した図である。
図12】実施例7の結果について示した図である。
図13】実施例8の結果について示した図である。
図14】実施例9の結果について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
以下、図面に基づき、本実施の形態が適用される医薬品精製水製造装置について説明を行なう。
【0013】
<精製水製造ユニット1の全体説明>
図1は、本実施の形態が適用される精製水製造ユニット1について説明した図である。
図示する精製水製造ユニット1は、純水製造装置の一例である。本実施の形態の精製水製造ユニット1は、原水を精製し、医薬品精製水とする装置である。
【0014】
本実施の形態では、原水は、例えば、日本薬局方の医薬品各条で規定されている常水である。この常水は、水道法第4条に基づく水質基準に適合することが求められている。より具体的には、水質基準として、平成15年厚生労働省令第101号により50項目が定められている。また、この基準と併せてアンモニウムが、「0.05mg/L以下」の規格に適合することが求められる。なお、原水は、これに限られるものではなく、工業用水などであってもよい。
【0015】
常水としては、例えば、水道水や消毒処理を施した井水が用いられる。そのため常水には、消毒のために使用された塩素剤に起因する遊離塩素が含まれるのが通常である。塩素剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が用いられる。そして、これに起因する遊離塩素としては、次亜塩素酸(HOCl)、次亜塩素酸イオン(OCl)等が挙げられる。
【0016】
本実施の形態で医薬品精製水は、製薬用の水であり、日本薬局方の医薬品各条で規定されている精製水である。この精製水は、全有機体炭素量(TOC:Total Organic Carbon)が、500μg/L(ppb)以下であるとともに、導電率(25℃)が1.3μS/cm以下である基準を満たす水であることが必要である。精製水は、原薬の製造、製剤における溶解剤、製薬機器の洗浄、試薬試液の調整、医療器具の洗浄、コンタクトレンズの洗浄剤保存剤の調整等の用途に用いられる。
【0017】
図示するように精製水製造ユニット1は、原水を貯留する原水タンク10と、原水の温度を調整する加温装置20と、原水に含まれる遊離塩素を除去する活性炭塔30と、活性炭塔30を通過した原水から固形分を除去する保安フィルタ40と、原水を精製するRO(Reverse Osmosis Membrane:逆浸透膜)装置50と、脱気処理を行なう脱気装置60と、脱気後の水を熱水とする加熱器70と、イオン交換樹脂により脱塩を行なうイオン交換装置80と、固形物を除去する限外ろ過装置90と、精製された後の医薬品精製水を貯留する貯留タンク100と、精製水製造ユニット1全体を制御する制御ユニット110とを備える。
【0018】
原水タンク10、加温装置20、活性炭塔30、保安フィルタ40、RO装置50、脱気装置60、加熱器70、イオン交換装置80、限外ろ過装置90、および貯留タンク100は、ステンレスや樹脂等からなる配管H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9により直列に接続される。また、配管H6、配管H8、配管H9には、これらの配管から分岐するブロー配管B1、B2、B3が、それぞれ配される。詳しくは、後述するが、ブロー配管B1、B2、B3は、各装置や配管の熱殺菌を行なう際に、熱殺菌に使用した熱水をブローして廃棄するために設けられる。ブロー配管B1、B2、B3には、図示しないバルブが設けられ、このバルブを開くことでブロー配管B1、B2、B3から、熱水をブローすることができる。また、貯留タンク100から医薬品精製水を供給するポンプP2が設けられる。
【0019】
原水として水道水を用いる場合、水道水は、所定の水圧を既に有しており、この水圧を利用して、原水は、まず原水タンク10に入る。また、原水が、所定の水圧を有しない場合は、別途ポンプ等を用意して、原水を原水タンク10に入れる。
【0020】
原水タンク10は、原水を一時的に貯留する。そしてポンプP1を駆動することで原水タンク10から後段の装置に原水を送出する。
【0021】
加温装置20は、原水の加熱を行なう第2の加熱手段の一例であり、例えば、熱交換器を備える装置である。そして熱交換器に、例えば、蒸気を供給することで、原水との間で熱交換を行ない、原水を加温する。原水の温度は、例えば、10℃である。加温装置20では、通常の運転時においては、原水を例えば、25℃まで加温して、後述するRO装置50の逆浸透膜(RO膜)などの性能を向上させる。
【0022】
また、加温装置20を使用することで、これより後段の装置や配管の熱殺菌を行なうことができる。この際、加温装置20は、原水を例えば、85℃に加温し熱水として供給する。これにより、装置や配管を熱殺菌する。なお、原水タンク10内の原水には、遊離塩素が原水タンク10では除去されず残存するため、原水タンク10の殺菌の必要はない。対して、詳しくは後述するが、活性炭塔30では遊離塩素が除去されるため、加温装置20の後段の装置や配管は、定期的に殺菌する必要が生じる。
【0023】
活性炭塔30は、活性炭処理手段の一例であり、内部に活性炭を充填する装置である。本実施の形態では、活性炭塔30は、加温装置20とRO装置50の間に配される。そして、原水を活性炭に通水することで、原水に含まれる不純物として遊離塩素等を除去する。活性炭塔30で使用する活性炭は、特に限定されるものではない。例えば、活性炭には、活性炭を製造するための原料により、石炭系活性炭とヤシガラ活性炭に大別されるが、何れも使用することができる。ただし、溶出するおそれが、より少ないという点で活性炭に含まれる不純物はできるだけ少ない方が好ましい。
【0024】
なお、原水に含まれる遊離塩素を除去する機能を有する装置であれば、活性炭塔30ではなく他の装置であってもよい。例えば、亜硫酸ソーダを使用して原水中の遊離塩素を還元する装置や、紫外線の照射で遊離塩素を分解する装置であってもよい。
【0025】
保安フィルタ40は、微粒子等の固形分を除去する。本実施の形態の場合、活性炭塔30で活性炭の微粒子が生じる場合がある。そして、活性炭の微粒子は、そのまま後段のRO装置50に通水したときに、逆浸透膜を閉塞させることがあるため、保安フィルタ40で予め活性炭の微粒子を除去する。
【0026】
RO装置50は、ろ過脱塩手段の一例であり、逆浸透膜(RO膜)を備える装置である。RO装置50は、原水を逆浸透膜に通水することで、原水中に含まれる不純物をろ過し、原水の精製を行ない、透過水を得る。また、逆浸透膜により、イオン交換装置80で脱塩を行なう前の粗脱塩を行なう。
逆浸透膜は、概ね1nm~2nmの大きさの孔が多数形成された膜であり、水は透過するが、イオンは透過しない性質を有する。そのため原水から不純物である塩類やイオンを除去し、精製を行なうことができる。逆浸透膜としては、例えば、ポリアミド膜が例示される。
【0027】
脱気装置60は、水中に含まれる二酸化炭素等の気体成分を除去するために設けられる。脱気装置60の内部は、ほぼ真空である減圧状態とされている。そのためここに透過水を流通させることで、透過水中に溶解した二酸化炭素を脱気させ、透過水から分離することができる。
【0028】
加熱器70は、第1の加熱手段の一例であり、イオン交換樹脂を再生するときに透過水を加熱し、熱水とする。加熱器70は、例えば、熱交換器を備える装置である。そして、熱交換器に、例えば、蒸気を供給することで、透過水との間で熱交換を行ない、透過水を加熱する。
また、加熱器70を使用することで、これより後段の装置や配管の熱殺菌を行なうことができる。この際は、加熱器70は、透過水を例えば、85℃に加温し熱水として供給する。これにより、装置や配管を熱殺菌することができる。
【0029】
イオン交換装置80は、内部にイオン交換樹脂が充填される。イオン交換装置80は、脱塩手段の一例であり、医薬品精製水を製造するときに、イオン交換樹脂に透過水を通水し脱塩を行なう。この場合、RO装置50から排出されイオン交換装置80で処理する透過水の導電率は、50μS/cm以下である。本実施の形態では、熱再生が可能なイオン交換樹脂を用いて、従来行なっていた海水のような数千ppmの原水を処理し、一部の塩類を脱塩するのではなく、このような塩類の濃度が小さい透過水を対象にして脱塩を行なう。
【0030】
イオン交換樹脂を再生する再生手段が、脱塩手段と同時に設けてもよい。具体的に、イオン交換装置80は、再生手段の一例であり、イオン交換樹脂を再生するときに、イオン交換樹脂に熱水を通水する。つまり、本実施の形態のイオン交換装置80は、医薬品精製水を製造するときに行なう脱塩処理、およびイオン交換樹脂を再生する際に行なう再生処理の双方の処理を、1つの充填槽で行なう。そのため、イオン交換樹脂を槽内から排出後、薬剤を使用してイオン交換樹脂を再生する場合に比較して、イオン交換樹脂の出し入れの作業の必要がない。よって、イオン交換樹脂の再生の処理を、より簡単に行なうことができる。ここで、1つの充填槽で脱塩と再生とを行なう場合には、イオン交換装置80は、熱水再生の脱塩ポリシャーとも呼ばれる。なお、脱塩と再生とを別々の槽で行なう場合は、イオン交換樹脂を再生する再生手段を、脱塩手段であるイオン交換装置80の直後に設けてもよい。
また、イオン交換樹脂を再生する方法として、熱水を脱塩ポリシャーに通水する方向は、下向流及び上向流のどちらでも良いが、上向流の方が好ましい。また、再生手段として、上向流で再生を行なう槽を脱塩手段の直後に設けてもよい。
【0031】
限外ろ過装置90は、純水に含まれる微細な固形物を除去するために設けられる。このために、限外ろ過装置90内部には、限外濾過膜(UF膜)が備えられている。限外濾過膜は、例えば、大きさが2nm~200nmの孔を多数設けたポリアミドやポリスルホンからなる膜であり、この膜を通過させることで、微粒子等の固形物を除去することができる。
【0032】
貯留タンク100は、限外ろ過装置90を透過して医薬品精製水となった水を貯留する。そして、医薬品精製水は、ポンプP2を駆動することで、貯留タンク100からユースポイントに送られる。
【0033】
<イオン交換装置80の説明>
次に、イオン交換装置80について、さらに詳細に説明を行なう。
本実施の形態では、イオン交換装置80に充填されたイオン交換樹脂を再生するときに、イオン交換樹脂に熱水を通水することで行なう。即ち、イオン交換樹脂を再生するときに、塩酸や水酸化ナトリウムなどの薬剤を使用しない。これにより、純水として、例えば、医薬品精製水を製造する際に、再生後のイオン交換樹脂に残留した薬剤が、製品に混入することを防止できる。
【0034】
イオン交換樹脂に熱水を通水した場合、以下に説明する熱再生(水の解離)現象が生じることで、再生を行なうことができる。この再生方法は、水の低温および高温の際における水素イオン(H)と、水酸化イオン(OH)の解離定数の差を利用する。つまり、水は、以下に示すように解離する。

O ←→ H + OH

このとき、解離定数Kwは、例えば、低温である25℃のときは、Kw=1.023×10-14である。一方、例えば、高温である75℃のときは、Kw=19.95×10-14である。つまり、温度が高いほど、平衡は、右辺側に偏るため、HやOHの生成量が、より多くなる。
【0035】
この現象をイオン交換樹脂に適用した場合、低温の水を通水することで、イオン交換樹脂に塩類を吸着させる。そして、高温状態では、解離したHやOHが増加するため、これらがイオン交換樹脂に対し、再生剤として働く。そのため高温の水(熱水)を通水することで、塩類を脱離させ、イオン交換樹脂の再生を行なうことができる。
【0036】
ここで、使用する熱水としては、イオン交換装置80に通水する際の出口温度で、50℃以上であることが好ましい。50℃未満であると、熱再生現象が生じにくく、イオン交換樹脂の再生が困難になる。また、イオン交換樹脂の再生のみならず、イオン交換装置80内部を熱殺菌する処理も併せて行なうという観点からは、熱水は、60℃以上であることが好ましい。60℃未満であると、熱殺菌を行なうことが困難になる。さらに、イオン交換樹脂の再生および熱殺菌については、温度が高い方が、効果が向上する。ただし、100℃に近くなると、水が気体となり、気泡が生じることで、イオン交換樹脂が過度に撹拌され、イオン交換樹脂の再生が困難になる。また、イオン交換樹脂の熱耐性の観点からは、温度は低い方が好ましく、具体的には、90℃以下であることが好ましい。即ち、90℃を超えると、イオン交換樹脂が溶出しやすくなる。以上のことから、熱水は、出口温度で、50℃以上100℃未満であることが好ましく、60℃以上90℃以下であることがさらに好ましく、80℃近辺(例えば、80℃±5°の温度範囲)であることが特に好ましい。なお、熱水は、イオン交換装置80に通水する際に冷却されるため、熱水の出口温度を80℃としたとき、入口温度は、例えば、85℃となる。
【0037】
本実施の形態のイオン交換装置80は、混床式のイオン交換塔である。つまり、内部に充填されるイオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合した状態となっている。イオン交換樹脂は、粒子状とすることが好ましく、例えば、円柱形状または球状等に成型されたペレットとすることができる。また、イオン交換樹脂を架橋度または多孔度で分類した場合には、ゲル型、ポーラス型、ハイポーラス型等が挙げられるが、いずれも使用可能である。
【0038】
また、本実施の形態のイオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂が強酸性の交換基を有するか、およびアニオン交換樹脂が強塩基性の交換基を有するか、の少なくとも一方であることが好ましい。つまり、カチオン交換樹脂の交換基+アニオン交換樹脂の交換基として、強酸性+強塩基性、強酸性+弱塩基性、弱酸性+強塩基性の組み合わせの何れかであることが好ましい。このとき、弱酸性+弱塩基性の組み合わせは、入らない。弱酸性+弱塩基性の組み合わせであると、透過水から中性塩を除去しにくく、他の組み合わせに対して、脱塩性が、より低くなりやすい。中性塩としては、例えば、NaCl、CaCl、NaSO等が挙げられる。従来は、熱再生が可能なイオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂の交換基+アニオン交換樹脂の交換基として、弱酸性+弱塩基性の組み合わせであった。一方、本実施の形態では、強酸性+強塩基性、強酸性+弱塩基性、弱酸性+強塩基性の組み合わせの方が好ましい点で異なる。
【0039】
強酸性の交換基としては、スルホン酸基(-SOH)が挙げられる。また、弱酸性の交換基としては、カルボキシル基(-COOH)が挙げられる。
そして、強塩基性の交換基としては、四級アンモニウム基であるトリメチルアンモニウム基をやジメチルエタノールアンモニウム基が挙げられる。さらに、弱塩基性の交換基としては、一級~三級アミノ基が挙げられる。
【0040】
また、カチオン交換樹脂の交換基+アニオン交換樹脂の交換基として、強酸性+弱塩基性の組み合わせの場合、強酸性の交換基の交換容量は、弱塩基性の交換基の交換容量よりも小さいことが好ましい。これは、強酸性の交換基の交換容量および弱塩基性の交換基の交換容量の当量比が、強酸性の交換基の交換容量:弱塩基性の交換基の交換容量=1:x(x>1)であると言い換えることもできる。
【0041】
この場合、イオン交換樹脂の再生の際に、強酸性の交換基に吸着したカチオン成分よりも、弱塩基性の交換基に吸着したアニオン成分の方が脱離しやすい。この場合、カチオンは、例えば、Na+(ナトリウムイオン)であり、アニオンは、例えば、Cl(塩素イオン)である。このとき、Clは、水中で、H(水素イオン)と共に、HCl(塩酸)となり、これが強酸性の交換基に吸着したカチオン成分を脱離させる。従って、強酸性の交換基の交換容量を、弱塩基性の交換基の交換容量よりも小さくすることで、この現象の促進を図っている。その結果、イオン交換樹脂の再生効率が向上する。
【0042】
対して、カチオン交換樹脂の交換基+アニオン交換樹脂の交換基として、弱酸性+強塩基性の組み合わせの場合、弱酸性の交換基の交換容量は、強塩基性の交換基の交換容量よりも大きいことが好ましい。これは、弱酸性の交換基の交換容量および強塩基性の交換基の交換容量の当量比が、弱酸性の交換基の交換容量:強塩基性の交換基の交換容量=1:y(y<1)であると言い換えることもできる。
【0043】
この場合、イオン交換樹脂の再生の際に、強塩基性の交換基に吸着したアニオン成分よりも、弱酸性の交換基に吸着したカチオン成分の方が脱離しやすい。この場合、例えば、カチオンが、Naだったときは、水中で、OH(水酸化イオン)と共に、NaOH(水酸化ナトリウム)となり、これが強塩基性の交換基に吸着したアニオン成分を脱離させる。そのため、弱酸性の交換基の交換容量を、強塩基性の交換基の交換容量よりも大きくすることで、この現象の促進を図り、イオン交換樹脂の再生効率を向上させる。
【0044】
<精製水製造ユニット1の動作の説明>
次に、精製水製造ユニット1の動作について説明を行なう。なお、以下に説明する精製水製造ユニット1の動作は、医薬品精製水等の純水を製造する純水製造方法であると捉えることもできる。
【0045】
図2は、医薬品精製水を製造するときの精製水製造ユニット1の動作について説明したフローチャートである。
まず、原水を原水タンク10に導入し、原水タンク10で一時的に貯留する(ステップ101:原水貯留工程)。
【0046】
そして、ポンプP1を使用し、原水を後段の装置に送出する。この場合、まず加温装置20により、原水の加温を行ない、後段のRO装置50等で水処理するのに適した温度にする(ステップ102:加温工程)。この温度は、例えば、25℃である。
次に、活性炭塔30で、活性炭により原水中の不純物として遊離塩素等を除去する(ステップ103:活性炭処理工程)。さらに、原水中の微粒子等の固形分を保安フィルタ40で取り除く(ステップ104:微粒子除去工程)。
【0047】
そして、RO装置50で、原水を逆浸透膜に通水することにより透過水を得る(ステップ105:ろ過脱塩工程)。
さらに、脱気装置60により、二酸化炭素の脱気を行ない(ステップ106:脱気工程)、イオン交換装置80を使用して、イオン交換樹脂に透過水を通水し脱塩を行なう(ステップ107:脱塩工程)。なお、純水を製造する際には、加熱器70は使用せず、透過水は、加熱されずに加熱器70を通過する。
そして、限外ろ過装置90で固形分を除去し(ステップ108:固形分除去工程)、貯留タンク100に製造された医薬品精製水を貯留する(ステップ109:精製水貯留工程)。
以上の工程により、医薬品精製水の製造ができる。
【0048】
図3は、イオン交換樹脂を再生するときの精製水製造ユニット1の動作について説明したフローチャートである。
イオン交換樹脂の再生を行なうか否かを決める指標としては、導電率を用いるのが一般的である。即ち、純水の製造時のイオン交換装置80の出口水の導電率に対し、基準を設け、この基準に達したときに、イオン交換樹脂の再生を行なう。この導電率は、純水に求める品質により異なるが、例えば、1.0μS/cmである。
【0049】
図示するステップ201~ステップ206は、図2のステップ101~ステップ106と同様であるので説明を省略する。
ステップ207以降は、加熱器70により、透過水を加熱し、熱水とする(ステップ207:加熱工程)。熱水の温度は、例えば、85℃である。
次に、イオン交換装置80内のイオン交換樹脂に熱水を通水し、イオン交換樹脂を再生する(ステップ208:再生工程)。
そして、イオン交換樹脂に通水後の熱水は、ブロー配管B2から排出される(ステップ209:再生ブロー工程)。
以上の工程により、イオン交換装置80内のイオン交換樹脂の再生ができる。
【0050】
次に、熱殺菌を行なう工程について説明を行なう。純水として医薬品精製水を製造する場合、装置内の細菌の増殖を抑制するため、定期的に装置内や配管の熱殺菌を行なう必要がある。
熱殺菌は、活性炭塔30から脱気装置60までの前段側の装置を熱殺菌する場合と、イオン交換装置80から限外ろ過装置90までの後段側の装置を熱殺菌する場合の2通りがある。
【0051】
図4は、活性炭塔30から脱気装置60までの装置を熱殺菌するときの精製水製造ユニット1の動作について説明したフローチャートである。
図示するステップ301は、図2のステップ101と同様である。
ステップ302以降は、加温装置20により、原水を加熱し、熱水とする(ステップ302:原水加熱工程)。熱水の温度は、例えば、85℃である。
次に、活性炭塔30に熱水を通水し、活性炭塔30内を熱殺菌する(ステップ303:活性炭塔殺菌工程)。
【0052】
さらに、保安フィルタ40に熱水を通水し、保安フィルタ40内を熱殺菌する(ステップ304:保安フィルタ殺菌工程)。
そして、RO装置50に熱水を通水し、RO装置50内を熱殺菌し(ステップ305:RO装置殺菌工程)、さらに、脱気装置60に熱水を通水し、脱気装置60内を熱殺菌する(ステップ306:脱気装置殺菌工程)。
脱気装置60に通水後の熱水は、ブロー配管B1から排出される(ステップ307:前段殺菌ブロー工程)。
以上の工程により、活性炭塔30から脱気装置60までの前段側の装置を熱殺菌することができる。
【0053】
図5は、イオン交換装置80から限外ろ過装置90までの装置を熱殺菌するときの精製水製造ユニット1の動作について説明したフローチャートである。
図示するステップ401~ステップ407は、図3のステップ201~ステップ207と同様である。
ステップ408以降は、イオン交換装置80に熱水を通水し、イオン交換装置80内を熱殺菌する(ステップ408:イオン交換装置殺菌工程)。
次に、限外ろ過装置90に熱水を通水し、限外ろ過装置90内を熱殺菌する(ステップ409:限外ろ過装置殺菌工程)。
そして、限外ろ過装置90に通水後の熱水は、ブロー配管B3から排出される(ステップ410:後段殺菌ブロー工程)。
以上の工程により、イオン交換装置80から限外ろ過装置90までの後段側の装置を熱殺菌することができる。
【0054】
以上説明した精製水製造ユニット1によれば、純水を製造する際には、イオン交換装置80内のイオン交換樹脂に通水を行なう。そのためEDIを使用する場合に比較して、複雑な構造を有さず、設備導入やメンテナンスを行なう際の費用が低廉である。さらに、EDIに比較して、電力消費量が非常に少ない。その結果、純水を製造する際の費用が低廉となりやすい純水製造装置を提供することができる。
【0055】
また、イオン交換樹脂の再生を行なう際に、イオン交換装置80に熱水を通水すればよい。そのため、薬剤を使用してイオン交換樹脂の再生を行なう場合に比較して、再生に要する費用を低減することができる。さらに、再生に使用する薬剤の混入を防止できるため、純水として、特に医薬品精製水の製造を行なう場合に、本実施の形態の精製水製造ユニット1は有効である。さらに、従来は、医薬品精製水の製造を行なう場合は、薬剤を使用することが困難なため、再生を行なわず、イオン交換樹脂を廃棄するのが、一般的であった。本実施の形態の精製水製造ユニット1によれば、イオン交換樹脂を熱水により再生できるため、医薬品精製水を製造する際の費用が、さらに低廉となりやすい。
【0056】
なお、以上説明した精製水製造ユニット1では、純水として医薬品精製水を製造する場合について説明したが、医薬品精製水以外の用途に使用する純水を製造する場合にも適用できるのはもちろんである。なおこの場合、装置や配管の熱殺菌が必要とされない場合がある。このとき、例えば、加温装置20は、不要になる場合がある。また、原水として水道水を使用せず、遊離塩素を除去する必要がない場合、活性炭塔30は、不要になる場合がある。さらに、活性炭塔30を必要としない場合、保安フィルタ40で活性炭の微粒子を取り除く必要がないため、保安フィルタ40は、不要になる場合がある。またさらに、原水中の二酸化炭素は、イオン交換装置80内のアニオン交換樹脂でも取り除くことができるため、アニオン交換樹脂への負担が過大にならない限り、脱気装置60は、不要になる場合がある。また、加温装置20により加熱した熱水で、イオン交換装置80内のイオン交換樹脂を再生できれば、加熱器70は、不要になる場合がある。ただし、加温装置20および加熱器70の何れか一方は、イオン交換樹脂の再生を行なうために必要となる。さらに、一連の工程の最後で固形分を取り除く必要がない場合、限外ろ過装置90は、不要になる場合がある。
【実施例
【0057】
以下、本発明を実施例を用いて、より詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、使用したイオン交換樹脂は以下の通りであり、何れも三菱ケミカル株式会社製である。

強酸性カチオン交換樹脂 :SK1B
弱酸性カチオン交換樹脂 :WK11、WK40L
強塩基性アニオン交換樹脂:SA10A
弱塩基性アニオン交換樹脂:WA20、WA30、WA21J(WA20の耐熱品)
【0058】
(実施例1)
実施例1では、水温の上昇に伴い、水中の導電率の変化を調べた。具体的には、カチオンとしてNaを吸着させたカチオン交換樹脂と、アニオンとしてClイオンを吸着させたアニオン交換樹脂とを混合したイオン交換樹脂を、10μS/cmの水中に浸漬し、水の温度と導電率との関係を調べた。なお、イオン交換樹脂であるカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂のそれぞれの交換基として、強酸性+強塩基性(SS)、強酸性+弱塩基性(SW)、弱酸性+強塩基性(WS)、弱酸性+弱塩基性(WW)の組み合わせを使用した。
【0059】
図6は、実施例1の結果について示した図である。図中、横軸は、水の温度であり、縦軸は、水の導電率を表している。
図示するように、交換基として、強酸性+強塩基性(SS)、強酸性+弱塩基性(SW)、弱酸性+強塩基性(WS)、弱酸性+弱塩基性(WW)の何れの組み合わせにおいても、水温の上昇に伴い、水の伝導率が上昇する結果となった。つまり、温度が上昇すると、イオン交換樹脂に吸着していた塩類がより多く脱離し、水中に溶出した結果、導電率が上昇したものと考えられる。この場合、カチオン交換樹脂からはNaが脱離し、アニオン交換樹脂からはClが脱離した結果、導電率が上昇している。これにより、熱水によりこれらのイオン交換樹脂の再生が可能であることがわかる。
【0060】
(実施例2)
実施例2では、水温の上昇に伴い、水中のpHの変化を調べた。具体的には、実施例1と同様の組み合わせのイオン交換樹脂を、10μS/cmの水中に浸漬し、水の温度とpHとの関係を調べた。
【0061】
図7は、実施例2の結果について示した図である。図中、横軸は、水の温度であり、縦軸は、水のpHを表している。
図示するように、交換基として、強酸性+強塩基性(SS)、強酸性+弱塩基性(SW)、弱酸性+強塩基性(WS)、弱酸性+弱塩基性(WW)の何れの組み合わせにおいても、水温の上昇に伴い、pHについては、あまり変化しない結果になった。
このとき、強酸性+強塩基性(SS)および弱酸性+弱塩基性(WW)の組み合わせでは、pHは、ほぼ中性であった。
しかし、強酸性+弱塩基性(SW)では、pHが酸性となった。これは、Clの脱離がNaの脱離より多いことを示している。即ち、強酸性カチオン交換樹脂よりも、弱塩基性アニオン交換樹脂の方が、塩類とイオン交換樹脂との結びつきが弱く、吸着していた塩類の脱離が多いことを示す。
一方、弱酸性+強塩基性(WS)では、pHがアルカリ性となった。Naの脱離がClの脱離より多いことを示している。即ち、強塩基性アニオン交換樹脂よりも、弱酸性カチオン交換樹脂の方が、塩類とイオン交換樹脂との結びつきが弱く、吸着していた塩類の脱離が多いことを示す。
【0062】
(実施例3)
実施例3では、熱脱離率を調べた。具体的には、実施例1と同様の組み合わせのイオン交換樹脂を、室温の水および80℃の熱水にそれぞれ浸漬し、Naの脱離量とClの脱離量とを調べ、これにより、熱脱離率を算出した。熱脱離率は、以下の算出式により算出を行なった。熱脱離率は、イオン交換樹脂がどの程度再生されたかを表す指標である。
【0063】
【数1】
【0064】
図8は、実施例3の結果について示した図である。図中、横軸は、イオン交換樹脂の組み合わせであり、縦軸は、熱脱離率を表している。
図示するように、交換基として、強酸性+強塩基性(SS)、強酸性+弱塩基性(SW)、弱酸性+強塩基性(WS)、弱酸性+弱塩基性(WW)の何れの組み合わせにおいても、水温が室温よりも80℃の方が脱離量が増えることを示し、熱水により再生が可能であることを示している。
【0065】
(実施例4)
実施例4では、イオン交換樹脂の溶出量を調べた。具体的には、実施例1と同様の組み合わせのイオン交換樹脂を、室温の水および80℃の熱水にそれぞれ浸漬し、TOC濃度を測定した。純水として医薬品精製水を製造する場合、イオン交換樹脂の溶出は、なるべく生じないことが好ましい。基準としては、TOC濃度が、500μg/L(ppb)以下であることが求められる。
【0066】
図9は、実施例4の結果について示した図である。図中、横軸は、イオン交換樹脂の組み合わせであり、縦軸は、TOC濃度を表している。
図示するように、交換基として、強酸性+強塩基性(SS)、強酸性+弱塩基性(SW)、弱酸性+強塩基性(WS)、弱酸性+弱塩基性(WW)の何れの組み合わせにおいても、TOC濃度については、40μg/L(ppb)以下となり、上記基準を満たしていることがわかる。
【0067】
(実施例5)
実施例5では、熱水により再生後のイオン交換樹脂が、再び吸着能力を有するか否かを検証した。具体的には、カチオンとしてNaを吸着させたカチオン交換樹脂と、アニオンとしてClイオンを吸着させたアニオン交換樹脂とを混合したイオン交換樹脂を用意した。そして、再生前のデータとして、10μS/cmの水中に浸漬し、室温で24時間恒温震とうを行ない、導電率を測定した。また、再生後のデータとして、このイオン交換樹脂を、80℃で24時間恒温震とうを行ない、さらにその後、室温で24時間恒温震とうを行ない、導電率を測定した。
【0068】
図10は、実施例5の結果について示した図である。図中、横軸は、イオン交換樹脂の組み合わせであり、縦軸は、導電率を表している。
図示するように、交換基として、強酸性+弱塩基性(SW)、弱酸性+強塩基性(WS)、弱酸性+弱塩基性(WW)の何れの組み合わせにおいても、再生前より再生後において、導電率の低下が確認された。これにより、80℃の熱水による再生により、イオン交換樹脂に吸着していたNaやClの脱離が生じ、その結果、導電率が低下したことがわかる。そして、熱水による再生により、再び吸着能力を有するようになったことがわかる。
【0069】
(実施例6)
実施例6では、カチオン交換樹脂の交換基+アニオン交換樹脂の交換基として、強酸性+弱塩基性(SW)の組み合わせにおいて、強酸性の交換基の交換容量と、弱塩基性の交換基の交換容量との比率を変化させたときに、80℃の熱水中で脱離するイオンによる導電率の変化を測定した。
また、カチオン交換樹脂の交換基+アニオン交換樹脂の交換基として、弱酸性+強塩基性(WS)の組み合わせにおいて、弱酸性の交換基の交換容量と、強塩基性の交換基の交換容量との比率を変化させたときに、80℃の熱水中で脱離するイオンによる導電率の変化を測定した。
なおこの場合、カチオン交換樹脂の交換容量およびアニオン交換樹脂の交換容量の合計は、26meqとしている。
【0070】
図11は、実施例6の結果について示した図である。図中、横軸は、pHを表し、縦軸は、導電率を表している。
図示するように、交換基として、強酸性+弱塩基性(SW)の組み合わせでは、強酸性の交換基の交換容量が、弱塩基性の交換基の交換容量よりも小さい方が、導電率は大きい。また、交換基として、弱酸性+強塩基性(WS)の組み合わせでは、弱酸性の交換基の交換容量が、強塩基性の交換基の交換容量よりも大きい方が、導電率は大きい。
この場合、導電率が大きいほど、イオン交換樹脂から脱離する塩類の量が大きく、イオン交換樹脂の再生効率が高いことを意味する。
【0071】
(実施例7)
実施例7では、カチオン交換樹脂の交換基+アニオン交換樹脂の交換基として、強酸性+弱塩基性(SW)の組み合わせにおいて、強酸性の交換基の交換容量と、弱塩基性の交換基の交換容量との比率を変化させたときに、実施例3と同様の方法で熱脱離率を調べた。
また、カチオン交換樹脂の交換基+アニオン交換樹脂の交換基として、弱酸性+強塩基性(WS)の組み合わせにおいて、弱酸性の交換基の交換容量と、強塩基性の交換基の交換容量との比率を変化させたときに、実施例3と同様の方法で熱脱離率を調べた。
【0072】
図12は、実施例7の結果について示した図である。図中、横軸は、イオン交換樹脂の組み合わせであり、縦軸は、熱脱離率を表している。
図示するように、交換基として、強酸性+弱塩基性(SW)の組み合わせでは、強酸性の交換基の交換容量が、弱塩基性の交換基の交換容量よりも小さい方が、熱脱離率は大きい。また、交換基として、弱酸性+強塩基性(WS)の組み合わせでは、弱酸性の交換基の交換容量が、強塩基性の交換基の交換容量よりも大きい方が、熱脱離率は大きい。
この場合、熱脱離率が大きいほど、イオン交換樹脂から脱離する塩類の量が大きく、イオン交換樹脂の再生効率が高いことを意味する。
【0073】
(実施例8)
実施例8では、交換基として、強酸性+弱塩基性(SW)の組み合わせで、カラム通水試験を行なった。このとき強酸性カチオン交換樹脂として、SK1Bを57.2mL-R用い、弱塩基性アニオン交換樹脂として、WA21Jを99.8mL-R用いた。即ち、イオン交換樹脂の総量は、157mL-Rとなる。これらの交換容量の当量比は、SK1B:WA21J=1:1.5とした。そして、これらのイオン交換樹脂を、20mmφ×1000mmHのカラムに、層高500mmHで充填した。
次に、供給水として、導電率10μS/cmのRO処理水を用いて、このカラムに通水を行ない、導電率の変化を調べた。このとき、通水SV(Space Velocity)は、20h-1(≒50mL/min)とした。
【0074】
図13は、実施例8の結果について示した図である。図中、横軸は、通水倍量であり、縦軸は、導電率を表している。
本実施例では、イオン交換樹脂による処理後の水の導電率の目標を、1.0μS/cm以下とした。そして、図示するように、通水倍量が、7000BVで、1.0μS/cmとなった。
【0075】
(実施例9)
実施例9では、実施例8で使用したイオン交換樹脂を80℃の熱水で再生し、再び使用できるか否かを調べた。
【0076】
図14は、実施例9の結果について示した図である。図中、横軸は、通水倍量であり、縦軸は、導電率を表している。
図示するように、1回目の通水では、実施例8と同様に、通水倍量が、7000BVで1.0μS/cmとなった。なお、通水SVは、通水倍量が、0BV~1500BVおよび3200BV~7000BVの範囲では、20h-1とし、1500BV~3200BVの範囲では、40h-1とした。そして、通水後のイオン交換樹脂を80℃の熱水で再生し、2回目の通水を行なった。その結果、初期における水の導電率は、0.75μS/cmとなり、再生を行なえたことが確認された。そして、232BVで再び1.0μS/cmとなった。
【符号の説明】
【0077】
1…精製水製造ユニット、10…原水タンク、20…加温装置、30…活性炭塔、40…保安フィルタ、50…RO装置、60…脱気装置、70…加熱器、80…イオン交換装置、90…限外ろ過装置、100…貯留タンク、110…制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14