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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】積層シート及びその製造方法、食品容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20221220BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221220BHJP
   B29C 48/16 20190101ALI20221220BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20221220BHJP
   B29C 51/14 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/30 B
B29C48/16
B29C48/305
B29C51/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018220772
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020082531
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391011825
【氏名又は名称】中央化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】栗原 裕紀
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3215846(JP,U)
【文献】登録実用新案第3213919(JP,U)
【文献】特開2012-040868(JP,A)
【文献】特開2014-125491(JP,A)
【文献】特開2019-111785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
B32B 27/30
B29C 48/16
B29C 48/305
B29C 51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を含有する混合物から構成される芯層を備える積層シートであって、
前記混合物がタルク非含有混合物であり、
前記混合物が、前記リサイクル原料を0重量%超40重量%以下とゴムを2.0~6.0重量%含有すると共に、前記リサイクル原料とは別に配合されたポリプロピレンを40重量%超75重量%以下の範囲で含有することを特徴とする積層シート。
【請求項2】
前記ポリプロピレンをブロックポリプロピレンとすることを特徴とする請求項1記載の積層シート。
【請求項3】
前記混合物がポリエチレンを10~20重量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の積層シート。
【請求項4】
前記芯層の少なくとも片面にポリプロピレン系樹脂で構成される表層が形成されていることを特徴とする請求項1~の何れかに記載の積層シート。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の積層シートの製造方法であって、
少なくとも、メタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を0重量%超40重量%以下とゴムを2.0~6.0重量%含有すると共に、前記リサイクル原料とは別に配合されるポリプロピレンを40重量%超70重量%以下の割合で供給して、180~270℃の温度範囲で加熱、混錬し、芯層形成用の混合物の溶融樹脂を形成する工程を備えることを特徴とする積層シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1~4の何れかに記載の積層シートを熱成型して形成されていることを特徴とする食品容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル原料を含有する芯層を備える積層シート及びその製造方法、積層シートで形成される食品容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リサイクル原料を含有する芯層を備える積層シートとして特許文献1の積層シートがある。
【0003】
特許文献1の積層シートは、ポリスチレン系樹脂発泡シートにポリオレフィン系樹脂フィルムが積層接着されてなる多層発泡シート由来のリサイクル原料を用いて製造された積層シートであり、リサイクル原料と新たに配合されるポリオレフィン系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーを含む混合物から構成される芯層と、芯層の両面に共押出により積層接着されたポリオレフィン系樹脂から構成される表層を備え、リサイクル原料はスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を含むものとされている。そして、芯層の混合物中のリサイクル原料と新たに配合されるポリオレフィン系樹脂との重量比は100:5~100:100に設定され、リサイクル原料とスチレン系熱可塑性エラストマーとの重量比は100:1~100:30に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3213919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の積層シートは、芯層の混合物中のリサイクル原料が、新たに配合されるポリオレフィン系樹脂に対して同量以上配合されるため、積層シートの物性の不安定性が高くなる、積層シートの均一性が低下すると共に、多く配合されるリサイクル原料のメタクリル酸に起因する臭気による不具合が発生するリスクがある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、製造原料の有効利用を図れるリサイクル原料を含有する芯層を備える積層シートにおいて、積層シートの物性の安定性、積層シートの均一性に優れると共に、積層シートからリサイクル原料に起因する臭気が発生することを抑制できる積層シート及びその製造方法、積層シートで形成される食品容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積層シートは、メタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を含有する混合物から構成される芯層を備える積層シートであって、前記混合物が、前記リサイクル原料を0重量%超40重量%以下とゴムを2.0~6.0重量%含有すると共に、前記リサイクル原料とは別に配合されたポリプロピレンを40重量%超75重量%以下の範囲で含有することを特徴とする。
これによれば、芯層の混合物中でリサイクル原料の同量を超えて別途に新たなポリプロピレンが配合されているため、リサイクル原料を含有する芯層を備える積層シートの物性の安定性、積層シートの均一性を高めることができると共に、リサイクル原料に含有されているメタクリル酸の使用量を極力少なくし、積層シートから臭気が発生することを抑制することができる。また、既存のメタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を含有する混合物から構成される芯層を備える積層シートよりも、芯層に含有されるポリプロピレンの量が多いことから、芯層にまで油が浸み込んだ場合にも耐油性を発揮でき、全体的な積層シートの耐油性を非常に高めることができる。さらに、混合物全体をゴムで柔らかくして積層シートを割れにくくすることができる。
【0008】
本発明の積層シートは、前記ポリプロピレンをブロックポリプロピレンとすることを特徴とする。
これによれば、ポリプロピレンとしてゴム成分の多いブロックポリプロピレンを用いることにより、高価なゴムの使用量を低減し、積層シートの製造コストを低減することができる。また、ゴム成分の多いブロックポリプロピレンを用いて、混合物のゴムの含有量を2.0~6.0重量%と少なくすることにより、積層シートの剛性、耐衝撃性を高めることができると共に、積層シートの端材を再度リサイクル原料に用いて多重リサイクルの芯層を備える多重リサイクル積層シートを形成する際に、多重リサイクル積層シートやその芯層の所要の剛性、耐衝撃性を確保することができ、積層シートの多重リサイクルによる形成を可能にすることができる。
【0009】
すなわち、ブロックポリプロピレンを用いる本発明の設計思想は、ゴム成分の多い(耐衝撃性の高い)ブロックポリプロピレンを多く配合することにより、新たに添加するゴム量を低減することができる。その結果、シート剛性の低下を抑制しつつ衝撃強度を向上させることができる。
また、一般的に多重リサイクルする過程において、リサイクル原料に含まれるスチレン-ブタジエン系熱可塑性エラストマー(SBS)や水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)のゴム成分は劣化してしまい、期待される柔軟性を付与する機能が喪失するとともに、ゴム成分を起因とする異物(ゲル)がシート外観を損なわせるといった不具合を生じることが懸念される。しかしながら、ブロックポリプロピレンを用いる本発明の配合によれば、新たに添加するゴム量が少ないので、多重リサイクする過程においても、こういった不具合を回避することができる。さらに、この配合によれば、シート剛性に余裕があるので、劣化した分のゴムを新規で追加することが可能であり、多重リサイクルした場合でも実用に耐えうるシートを提供することができる。
【0010】
本発明の積層シートは、前記混合物がポリエチレンを10~20重量%含有することを特徴とする。
これによれば、積層シートの成形時にドローダウンが発生することを抑制、防止し、生産性、加工性を高めることができる。
【0011】
本発明の積層シートは、前記混合物がタルク非含有混合物であることを特徴とする。
これによれば、タルクの凝集塊の発生を無くし、タルク凝集塊が積層シートに異物として混入して、積層シートやその成形品の外観を低下させることを防止することができる。
【0012】
本発明の積層シートは、前記芯層の少なくとも片面にポリプロピレン系樹脂で構成される表層が形成されていることを特徴とする。
これによれば、プロピレンを高い重量比で含有する芯層と相性の高いポリプロピレン系樹脂の表層を接着等することにより、芯層と表層の固着強度を高めることができると共に、ポリプロピレン系樹脂の表層とプロピレンを高い重量比で含有する芯層の双方により、積層シートの耐油性をより一層高めることができる。
【0013】
本発明の積層シートの製造方法は、本発明の積層シートを製造する方法であって、少なくとも、メタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を0重量%超40重量%以下とゴムを2.0~6.0重量%含有すると共に、前記リサイクル原料とは別に配合されるポリプロピレンを40重量%超70重量%以下の割合で供給して、180~270℃の温度範囲で加熱、混錬し、芯層形成用の混合物の溶融樹脂を形成する工程を備えることを特徴とする。
これによれば、混ざりにくいメタクリル酸を含有するリサイクル原料を別に配合されるポリプロピレンを良好に混ぜ合わせ、高い均一性を有する芯層形成用の混合物の溶融樹脂を形成することができる。
【0014】
本発明の食品容器は、本発明の積層シートを熱成型して形成されていることを特徴とする。
これによれば、本発明の積層シートの効果を有する食品容器を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造原料の有効利用を図れるリサイクル原料を含有する芯層を備える積層シートにおいて、積層シートの物性の安定性、積層シートの均一性を高めることができると共に、積層シートからリサイクル原料に起因する臭気が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による実施形態の積層シートを示す部分縦断面図。
図2】実施形態の積層シートで形成された食品容器の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態の積層シート及びその製造方法、食品容器〕
本発明による実施形態の積層シート1は、図1に示す合成樹脂製の積層シート1であり、メタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を含有する混合物から構成される芯層2と、芯層2の一方の面に積層されて固着されている第1の表層3と、芯層2の他方の面に積層されて固着されている第2の表層4を備える。芯層2の層厚は100~800μmとするとよく、より好ましくは300~600μmであり、さらに好ましくは400~500μmである。第1の表層3の層厚と第2の表層4の層厚はそれぞれ1~50μmとするとよく、より好ましくは5~30μmであり、さらに好ましくは5~15μmある。
【0018】
積層シート1は、好適には食品容器の素材として用いられ、例えば図2のような食品容器10が、所定形状の金型を用いて積層シート1を熱成型して形成される。尚、第1の表層3の外側、又は第2の表層4の外側、又は第1の表層3と第2の表層4のそれぞれの外側には、模様等が施されたラミネートフィルム等を必要に応じて積層して接着してもよい。また、積層シート1の密度は、0.85~1.10g/mとするとよく、より好ましくは0.9~1.0g/mである。
【0019】
芯層2を構成する混合物は、リサイクル原料0重量%超40重量%以下とゴムを2.0~6.0重量%含有すると共に、リサイクル原料とは別に配合されたポリプロピレン40重量%超75重量%以下が、100重量%の範囲内で組み合わされて含有しているものである。混合物中のリサイクル原料の含有量は、好ましくは20~40重量%、より好ましくは20~35重量%、さらに好ましくは25~35重量%とするとよい。
【0020】
リサイクル原料は、例えばメタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート、或いはこれにポリオレフィン系樹脂フィルムが積層接着された積層シートの熱成形時等に生ずる端材を、加熱混錬して溶融樹脂とし、この溶融樹脂を押し出して冷却し、ペレット形状に裁断したものである。また、リサイクル原料には、同種のものを用いること以外に、異種の複数種を用いることも可能である。
【0021】
メタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シートは、スチレン系単量体とメタクリル酸の共重合体であるスチレン-メタクリル酸系共重合体から構成するとよい。スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンなどが挙げられる。スチレン系単量体の一部を、二成分と共重合可能な少量の他の単量体と置換することができる。共重合可能な他の単量体としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0022】
こうしたスチレン-メタクリル酸系共重合体は、スチレン94~96重量%とメタクリル酸を4~6重量%含むものとすると良好である。共重合体中のメタクリル酸の量が4重量%未満であると、この原料樹脂から製造した発泡シートから二次成形して得た容器を、電子レンジ中で加熱したときの耐熱性が劣り、熱変形し易いので好ましくない。またメタクリル酸の量が6重量%より多い場合は、この原料樹脂から発泡シートを溶融押出法で製造する際に、発泡シートを押出機ダイから引取機に導く過程で発泡シートが切れ易く、発泡シートを効率的に製造することが困難になるので好ましくない。
【0023】
リサイクル原料には、スチレン-メタクリル酸共重合体を10~90重量%含有していることが好ましい。プロピレンを含有するリサイクル原料とする場合、例えばポリプロピレン重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、これらの(共)重合体中にプロピレン-エチレン共重合ゴムなどのゴム成分が分散するブロックポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂を含有するものとすることが可能である。また、リサイクル原料には、ポリプロピレンに代え、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂を含有するもの等、適用可能な範囲でポリオレフィン系樹脂を含有するものを用いることが可能である。尚、リサイクル原料には、ポリスチレン系樹脂発泡シート或いはその積層シートに含まれる顔料や染料などの着色剤、接着剤、気泡調整剤等の各種添加剤が含まれるものを用いることが可能である。
【0024】
リサイクル原料とは別に配合されたポリプロピレンは、例えばポリプロピレン重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、これらの(共)重合体中にプロピレン-エチレン共重合ゴムなどのゴム成分が分散するブロックポリプロピレン等とすることが可能であり、特にゴム成分を多く含むブロックポリプロピレンとすると好適である。
【0025】
そして、芯層2を構成する混合物の組成において、リサイクル原料由来のプロピレンとリサイクル原料とは別に配合されたポリプロピレン由来のプロピレンの合計の含有量は、40重量%超75重量%以下、好ましくは45~70重量%、より好ましくは55~70重量%とするとよい。また、芯層2を構成する混合物の組成において、スチレンの含有量は、好ましくは9~45重量%、より好ましくは15~35重量%、より一層好ましくは15~30重量%とするとよい。また、芯層2を構成する混合物の組成において、メタクリル酸の含有量は、好ましくは0.4~3.0重量%、より好ましくは0.8~2.0重量%、より一層好ましくは0.8~1.5重量%とするとよい。
【0026】
更に、芯層2を構成する混合物は、ゴムを2.0~6.0重量%含有する。ここでゴムとは、熱可塑性エラストマーに含まれるソフトセグメント(柔軟性成分)とするとよく、例えば、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、水添ハイビニルBR、水添IRのことをいう。こうしたゴムを含む化合物としては、例えば、スチレン10~70重量%を含むスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、スチレン-ブタジエン系熱可塑性エラストマー(SBS)や、スチレン-ブタジエン-ブチレン系熱可塑性エラストマー(SBBS)や、スチレン-エチレン-ブチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)といったSBR系熱可塑性エラストマーがより好ましく、前記SBR系熱可塑性エラストマーのなかでもスチレン-ブタジエン系熱可塑性エラストマー(SBS)がさらに好ましい。
【0027】
ゴムを少量含有させる場合、リサイクル原料と別に配合されるポリプロピレンをゴム成分を含むブロックポリプロピレンとするとゴム性の代替性の観点から非常に良好である。混合物中のゴムの含有量は、好ましくは2.0~4.0重量%、より好ましくは2.2~3.0重量%とするとよい。
【0028】
ここで、ブロックポリプロピレンは、ゴムを含めばよく、ゴム成分は多いほうが好ましく、所望の物性値を達成するものであれば特に制限はないが、例えばゴム成分がブロックポリプロピレン中10重量%以上含まれるものが好ましく、12重量%以上含まれることがより好ましい。こうしたブロックポリプロピレンのMFRは1.0g/10min以下とするとよく、0.8g/10min以下であることがより好ましく、0.6g/10min以下であることがより一層好ましい。また、こうしたブロックポリプロピレンのJIS K7111に準拠するシャルピー衝撃強度は15KJ/m[23℃]以上とするとよく、20KJ/m[23℃]以上であることがより好ましく、25KJ/m[23℃]以上であることがより一層好ましい。
【0029】
更に、芯層2を構成する混合物は、加工性の向上の観点からは、ポリエチレンを10~20重量%含有するものとすると好ましい。このポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレンなど適宜のものとすることが可能であるが、加工性をより確実に向上する観点からは高密度ポリエチレン(HDPE)とすると良好である。
【0030】
更に、芯層2を構成する混合物は、タルク凝集塊の積層シート1への混入を防止して積層シート1やその成形品の美観を確保する観点からはタルク非含有混合物でとすることが好ましい。同様の観点から、芯層2を構成する混合物にタルクが含まれる場合でも、混合物に含まれるタルクの量は5%重量以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0031】
第1の表層3と、第2の表層4は、共押出等によって芯層2の両面に積層され、ポリオレフィン系樹脂など適用可能な適宜の材料で形成することが可能であるが、好適にはポリプロピレン系樹脂で形成すると、プロピレンの含有量が既存の芯層よりも多い芯層2との相性が高くなって好適である。このポリプロピレン系樹脂には、ポリプロピレン重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、ブロックポリプロピレンなど適宜のものを用いることが可能である。ここで、表層のポリプロピレンの含有率は90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、98重量%以上がさらに好ましい。
【0032】
また、積層シート1を製造する際には、メタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を0重量超40重量%以下とゴムを2.0~6.0重量%、リサイクル原料とは別に配合されるポリプロピレンを40重量%超75重量%以下の割合で芯層形成用押出機等に供給して、Tダイスが180~270℃、好ましくは200~255℃、より好ましくは220~240℃の温度範囲で加熱、混錬し、芯層形成用の混合物の溶融樹脂を形成する。これにより、混ざりにくいメタクリル酸を含有するリサイクル原料を別に配合されるポリプロピレンを良好に混ぜ合わせ、高い均一性を有する芯層形成用の混合物の溶融樹脂を形成することができる。また、ポリプロピレン系樹脂等を表層形成用押出機等に供給して、加熱と所要の混練を施し、表層形成用の溶融樹脂とする。
【0033】
その後、芯層形成用の混合物の溶融樹脂と、表層形成用の溶融樹脂を共押出用Tダイに供給し、共押出用Tダイで芯層形成用の混合物の溶融樹脂と表層形成用の溶融樹脂をシート状に流動させ、芯層形成用の混合物の溶融樹脂と一方の面と他方の面にそれぞれ表層が積層形成されるようにして共押出用Tダイから押出し、この押し出により積層シート1を形成する。この共押出型Tダイの吐出口の温度は例えば230℃付近に調整すると良好である。押し出された積層シート1は巻取りロールで巻き取られる。
【0034】
このように形成された積層シート1の端材は、再度リサイクル原料として使用することが可能であり、積層シート1由来のリサイクル原料を含有する混合物から構成される芯層を備える多重リサイクル積層シートを形成することができる。多重リサイクル積層シートは、例えば積層シート1由来のリサイクル原料を含有する混合物から構成される芯層を備え、その芯層の両面に第1の表層3、第2の表層4と同様の表層が積層されたものとすることが可能である。ここで、多重リサイクルとは、当該製品の端材を同製品の原料として再使用することをいう。
【0035】
多重リサイクル積層シートを製造する際には、例えば積層シート1由来のリサイクル原料を0重量%超40重量%以下、積層シート1由来のリサイクル原料とは別に配合されるポリプロピレンを40重量%超75重量%以下の割合で芯層形成用押出機等に供給して、Tダイスが180~270℃、好ましくは200~255℃、より好ましくは220~240℃の温度範囲で加熱、混錬し、芯層形成用の混合物の溶融樹脂を形成する。その他は積層シート1の製造方法と同様の工程、或いは同様の工程を有する多重リサイクル方法により、多重リサイクル積層シートを形成することができる。
【0036】
本実施形態によれば、芯層2の混合物中でリサイクル原料の同量を超えて別途に新たなポリプロピレンが配合されるため、リサイクル原料を含有する芯層2を備える積層シート1の物性の安定性、積層シート1の均一性を高めることができると共に、リサイクル原料に含有されているメタクリル酸の使用量を最大限少なくし、積層シート1から臭気が発生することを防止することができる。また、既存のメタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を含有する混合物から構成される芯層を備える積層シートよりも、芯層2に含有されるポリプロピレンの量が多いことから、芯層2にまで油が浸み込んだ場合にも耐油性を発揮でき、全体的な積層シート1の耐油性を非常に高めることができる。
【0037】
また、積層シート1の芯層2の混合物がゴムを2.0~6.0重量%含有すると共に、新たに配合するポリプロピレンをブロックポリプロピレンとする場合には、混合物全体をゴムで柔らかくして積層シートを割れにくくすることができる。また、ポリプロピレンとしてゴム成分の分子量が大きいブロックポリプロピレンを用いることにより、高価なゴムの使用量を低減し、積層シート1の製造コストを低減することができる。また、ゴム成分の多いブロックポリプロピレンを用いて、混合物のゴムの含有量を2.0~6.0重量%と少なくすることにより、積層シート1の剛性、耐衝撃性を高めることができると共に、積層シート1の端材を再度リサイクル原料に用いて多重リサイクルの芯層を備える多重リサイクル積層シートを形成する際に、多重リサイクル積層シートやその芯層の所要の剛性、耐衝撃性を確保することができ、積層シートの多重リサイクルによる形成を可能にすることができる。
【0038】
また、積層シート1の芯層2の混合物がポリエチレンを10~20重量%含有する場合には、積層シート1の成型時にドローダウンが発生することを抑制、防止し、生産性、加工性を高めることができる。また、積層シート1の芯層2の混合物がタルク非含有混合物である場合には、タルクの凝集塊の発生を無くし、タルク凝集塊が積層シート1に異物として混入して、積層シート1やその成型品の食品容器等の外観を低下させることを防止することができる。
【0039】
また、積層シート1の芯層2の一方の面に積層される第1の表層3と他方の面に積層される第2の表層4の双方をポリプロピレン系樹脂で構成する場合には、プロピレンを高い重量比で含有する芯層2と表層3、4の相性を高くし、芯層2と表層3、4の接着強度を高めることができると共に、ポリプロピレン系樹脂の表層3、4とプロピレンを高い重量比で含有する芯層2の双方により、積層シート1の耐油性をより一層高めることができる。
【0040】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0041】
例えば上記実施形態の積層シート1は、メタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を含有する混合物から構成される芯層2の両面に、第1の表層3と第2の表層4がそれぞれ積層されるものとしたが、芯層2の一方の面と他方の面のいずれかだけに第1の表層3或いは第2の表層4と同様の構成の表層としての無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムなどのラミネートフィルムが積層され接着されるものも本発明の積層シートに含まれる。この場合にも、表層をポリプロピレン系樹脂で構成する場合には、プロピレンを高い重量比で含有する芯層2と表層の相性を高くし、芯層2と表層の接着強度を高めることができると共に、ポリプロピレン系樹脂の表層とプロピレンを高い重量比で含有する芯層2の双方により、積層シートの耐油性をより一層高めることができる。
【0042】
また、本発明の積層シートには、メタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を含有する混合物から構成される芯層を備える適宜の積層シートが包含され、例えばメタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を含有する混合物から構成される芯層の複数層が隣接して積層接着され、又は当該複数層が別の層を介在するようにして積層、固着されるものも含まれる。更に、本発明の積層シートには、例えばメタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のリサイクル原料を含有する混合物から構成される芯層と、第1の表層3或いは第2の表層4と同様の構成の表層との間に別の層を介在するようにして積層、固着されるものも含まれる。
【0043】
〔実施例〕
次に、本発明の積層シートの実施例について説明する。
【0044】
実施形態の積層シート1と同様の三層構造を有する実施例1~8の積層シートと比較例1、2の積層シートを形成した。実施例1~8の積層シートと比較例1、2の積層シートは、芯層の一方の面と他方の面にそれぞれポリプロピレン100重量%の組成を有する表層が積層された三層構造であり、芯層の層厚は380μmで非発泡であり、一方の面の表層と他方の面の表層の層厚はそれぞれ10μmである。
【0045】
実施例1~8の積層シートと比較例1、2の積層シートの製造には、メタクリル酸を含有するポリスチレン系樹脂発泡シート由来のペレット状のリサイクル原料(組成:プロピレン13.5重量%、スチレン80.7重量%、ゴム(ブタジエン)1.9重量%、メタクリル酸3.9重量%)を用い、各実施例毎にブロックポリプロピレン、ホモポリプロピレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、スチレン-ブタジエン系熱可塑性エラストマー(SBS)の内の所要原料と、当該リサイクル原料とを所定割合の配合で芯層形成用押出機に供給して、Tダイスが220~240℃の温度範囲で加熱、混錬し、芯層形成用の混合物の溶融樹脂を形成した。この所要原料とリサイクル原料の配合比率は下記表1~表4に示される配合比率とした。その後、この芯層形成用の混合物の溶融樹脂と、別に供給される表層形成用の溶融樹脂(ポリプロピレン100重量%)を共押機に導入し、Tダイの吐出口の温度を230℃付近に調整してTダイから押出しを行い、実施例1~8の積層シートと比較例1、2の積層シートをそれぞれ形成した。ここで、ブロックポリプロピレンのMFRは0.5g/10minであり、JIS K7111に準拠するシャルピー衝撃強度は25KJ/m[23℃]であった。また、スチレン-ブタジエン系熱可塑性エラストマー(SBS)はゴムを60重量%、スチレン40重量%含むものであった。
【0046】
そして、実施例1~8の積層シートと比較例1、2の積層シートについて、シート物性、成型適性、積層シートから成形された容器の物性についての評価を行った(表1~表4参照)。
【0047】
シート物性におけるデュポン衝撃強度は、各実施例1~8の積層シート及び比較例1、2の積層シートから縦100mm×横50mmの試験片を作成し、JIS K7211-1に従い、この試験片についてデュポン衝撃試験機を用いて50%破壊エネルギーE50(J)を測定した。落下荷重は0.3kg、測定温度は23℃とした。
【0048】
シート物性における引張弾性率(MPa)は、各実施例1~8の積層シート及び比較例1、2の積層シートから縦140mm×横15mmの試験片を作成し、JIS K7161に従い、この試験片について引張試験機を用いて測定温度23℃、チャック間距離100mm、引張速度1mm/分における引張弾性率(MPa)を測定した。
【0049】
シート物性における臭気試験は、各実施例1~8の積層シート及び比較例1、2の積層シートについて、100mm角に裁断したシートを10g分、及び蒸留水30mlをフラスコに入れ、電子レンジで1600Wで30秒加熱し、その後栓をし、1分後に官能試験評価を実施した。臭気試験の評価は1~5の数値範囲の5段階を基本とする評価で行った。この評価では、数値の大きい方が臭気が強く、数値の小さい方が臭気が弱く、匂わないものである。
【0050】
シート物性におけるシート評価は、各実施例1~8の積層シート及び比較例1、2の積層シートに対するデュポン衝撃強度、引張強度、臭気試験の3つを総合的に比較衡量した積層シートとしての実用的な評価結果であり、◎:非常に優れる、○:良好である、△:使用可能である、×:使用不能である、の4段階で評価した。デュポン衝撃強度、引張強度、臭気試験の3つの総合的な比較衡量は、◎:実用上快適に使用できる、○:実用上問題なく使用できる、△:実用上使用できるが制限がある、×:実用上問題が発生する、のようにして行った。
【0051】
成型適性は、各実施例1~8の積層シート及び比較例1、2の積層シートについて、積層シートを製造して食品容器等の成型品を積層シートで製造するまでの工程において、積層シートの製造時に発生するドローダウンの大きさが許容範囲内であるか否かにより評価したものであり、具体的には、○:ドローダウンがほぼ発生しない、△:発生したドローダウンが許容範囲内である、×:発生したドローダウンが許容範囲外である、の3段階で評価した。
【0052】
下記表1~表4から分かるように、リサイクル原料を0重量超40重量%以下とゴムを2.0~6.0重量%含有且つリサイクル原料とは別に配合されたポリプロピレンを40重量%超75重量%以下の範囲で含有する芯層の混合物の条件を満たさない表4の比較例1(リサイクル原料が50重量%)および比較例2(ゴム未配合)の積層シートでは、衝撃強度が低く、積層シートとして必要とされる物性を充足しなかったが、実施例1~8の積層シートの強度は実用的であり、いずれも積層シートとして必要とされる物性を充足した。
【0053】
更に、実施例1~4及び6~8と実施例5から、ゴムのスチレン-ブタジエン系熱可塑性エラストマー(SBS)を含有させると共に、2.0~6.0重量%など、多すぎずに含有させる方がバランスの取れたデュポン衝撃強度と引張強度を有する積層シートが得られることが分かる。更に、実施例3と実施例8から、ホモポリプロピレンを新たに配合した場合よりもブロックポリプロピレンを配合した方が高いデュポン衝撃強度が得られることから、積層シートに新たに配合するプロピレンにはブロックポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0054】
また、実施例1~5と実施例7から、ポリエチレンを含有させないとドローダウンが発生することから、10~20重量%など、適度な範囲でポリエチレンを新たに配合する等で含有させ、積層シートを製造することが好ましい。更に、実施例1~5と実施例6から、積層シートに低密度ポリエチレン(LDPE)を含有させた場合には高密度ポリエチレン(HDPE)を含有させた場合よりもドローダウンが発生することから、このポリエチレンには高密度ポリエチレン(HDPE)を用いることが好ましい。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば食品を収容する食品容器を形成する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…積層シート 2…芯層 3…第1の表層 4…第2の表層 10…食品容器
図1
図2