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  • 特許-認知機能改善剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】認知機能改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20221220BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20221220BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20221220BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/175
A61K31/198
A61K31/353
A61P25/28
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018229275
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020089318
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓮村 卓広
(72)【発明者】
【氏名】陳 シュ
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 慶彦
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0001032(KR,A)
【文献】特開平05-344852(JP,A)
【文献】特表2003-519192(JP,A)
【文献】特開2012-246294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテキン類及びオルニチンを有効成分とし、カテキン類とオルニチンとの質量比が1:0.1~10である、認知能改善剤。
【請求項2】
カテキン類及びオルニチンを有効成分とし、カテキン類とオルニチンとの質量比が1:0.1~10である、認知機能改善用食品。
【請求項3】
認知機能の改善がアンモニアの過剰蓄積を伴う認知能低下の改善である、請求項1記載の剤又は請求項2記載の食品。
【請求項4】
認知機能の改善がアルツハイマー型認知症に伴う認知能低下の改善である、請求項1若しくは3記載の剤、又は請求項2若しくは3記載の食品。
【請求項5】
カテキン類及びオルニチンを有効成分とし、カテキン類とオルニチンとの質量比が1:0.1~10である、アルツハイマー病の予防又は改善剤。
【請求項6】
カテキン類及びオルニチンを有効成分とし、カテキン類とオルニチンとの質量比が1:0.1~10である、アルツハイマー病の予防又は改善用食品。
【請求項7】
前記カテキン類が、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、及びエピガロカテキンガレートからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~のいずれか1項記載の剤又は食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、総人口に対する高齢者の比率が上昇し、加齢に伴う記憶、学習能力の低下や、さらには疾病としての認知症の増加が問題になっている。認知症の原因疾患としては、アルツハイマー病に代表される神経変性疾患、脳梗塞や脳出血等による脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷、感染症、代謝性疾患等が挙げられる。特に、高齢化の進展に伴って患者数が著しく増加しているのはアルツハイマー病である。アルツハイマー病は、急激な短期の記銘力、記憶力の低下、人格障害等を引き起こすことから、介護の面から社会問題になっている。
【0003】
アルツハイマー病は、認知症の中でも最も多いタイプで、認知低下及び壊滅的な神経変性によって特徴付けられる。アルツハイマー病の予防及び/又は治療には様々な要因が関与する可能性がある。現在広く認識されている、β-アミロイドペプチド(Aβ)の細胞外蓄積及びタウの細胞内蓄積がアルツハイマー病の病因であるという仮説は有力であるが、Aβ又はタウを標的とした薬物療法は成功しておらず、アルツハイマー病の臨床的に有効な唯一の薬物療法は、コリン作動性経路を標的とする薬物である。
【0004】
体内のアンモニアは、肝臓の尿素回路により無毒な尿素へと変換され、尿中に排出される。アルギニン、オルニチン及びシトルリンは、アンモニアを無毒な尿素に変換する肝臓の尿素回路に関与している。尿素回路に関与するアミノ酸であるオルニチン、シトルリン又はアルギニンにより血中アンモニアの上昇が抑制されることが報告されている(特許文献1、2、及び非特許文献1)。
アンモニアは、脳機能に対する毒性が実証されているヒト組織の代謝の正常な最終産物であり、例えば、肝機能低下による血中アンモニア上昇が脳機能を低下することは、肝性脳症として知られている。また、従来から、血中アンモニアレベルとアルツハイマー病との間の関連性が様々提唱・示唆されており(非特許文献2-6)、最近、アンモニア曝露の持続時間及び大きさに依存して、脳アンモニアの上昇は、記憶機能障害、認知及び空間学習を含むアルツハイマー病に共通する典型的な神経学的症状を引き起こすこと、病態生理学的には、ミトコンドリア機能障害、細胞グルコース代謝の崩壊、神経伝達の低下及び炎症反応が起こることが報告され、慢性的に上昇したアンモニアレベルがアルツハイマー病の発症に関連するとの従来の推定が妥当であることが報告されている(非特許文献7)。
【0005】
非特許文献7においては、アルツハイマー病の脳とアンモニアの関係について以下のように考察されている。脳では、正常又は高アンモニア性状態のいずれかにおいて、グルタミン合成酵素(1-グルタミン酸:アンモニアリガーゼ(ADP形成;EC6.3.1.2))(GS)によるグルタミンのATP依存性形成の経路は、主にアンモニア除去に使用される。アルツハイマー病の脳において、皮質におけるAβ及び老人斑(SP)の細胞外沈着密度は、Aβの神経毒性を増強するだけでなく、それと相互作用することによってGSの酸化的構造変化を誘発する。これは、アストロサイトのGS活性の喪失を引き起こし、脳のアンモニアクリアランス機構(グルタメート-グルタミンサイクル)及びアストロサイトの障害を誘発する。
すなわち、非特許文献7においては、アルツハイマー病の脳におけるAβ及び老人斑(SP)の細胞外沈着は、それ自体が神経障害を引き起こすだけでなく、脳のアンモニアクリアランス能力も低下させ、認知機能低下を引き起こすことが示され、アルツハイマー病におけるアンモニア低減の重要性が提案されている。
【0006】
さらに、非特許文献7においては、大量の乳酸菌を含む食事がアルツハイマー病の治療に効果があることが記載され、その機序は、乳酸菌により消化管からのアンモニア産生又は吸収が抑制され、血中アンモニア濃度の低下をもたらしたためと考察されている。
したがって、末梢に作用して血中アンモニア濃度を低下させることがアルツハイマー病の治療に効果があると考えられる。
【0007】
一方、緑茶等に含まれているカテキン類については、種々の薬理作用が報告され、認知機能改善効果があることも報告されている(特許文献3)。しかしながら、オルニチンと組み合わせた場合の作用効果は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-132174号公報
【文献】国際公開第2009/048148号
【文献】特表2009-539991号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Takeda et al., J. Nutr. Sci. Vitaminol., 2011, 57:246-250
【文献】Fisman M. et.al., J. Am. Geriatr. Soc., 1989, 37, 1102-1102
【文献】Fisman M. et.al., AM. J. PSYCHIATRY, 1985, 142, 71-73
【文献】Hoyer S., ADV. EXP. MED. BIOL., 1994, 368, 197-205
【文献】Seiler N., Neurochem. Int., 2002, 41, 189-207
【文献】Seiler N., Neurochem Res., 1993, 18, 235-245
【文献】Jin Y.Y. et.al., Nutrients, 2018, 10, 564
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、記憶、学習能力等の脳機能の改善に有効な認知機能改善剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、カテキン類とオルニチンとを併用することにより、カテキン類単独又はオルニチン単独の場合と比べて、肝細胞におけるアンモニア代謝が顕著に向上することを見出し、これが認知機能の改善に有用であることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下を提供する。
1)カテキン類及びオルニチンを有効成分とする認知能改善剤。
2)カテキン類及びオルニチンを有効成分とする認知機能改善用食品。
3)カテキン類及びオルニチンを有効成分とするアルツハイマー病の予防又は改善剤。
4)カテキン類及びオルニチンを有効成分とするアルツハイマー病の予防又は改善用食品。
【発明の効果】
【0013】
本発明の認知機能改善剤は、体内のアンモニア代謝を促進し、脳の記憶、学習能力等の認知機能の低下を伴う障害、例えばアルツハイマー病を効果的に予防又は改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】カテキン類及びオルニチンが肝細胞のアンモニア代謝に及ぼす影響。横軸は肝細胞培養培地、縦軸は該培地中のアンモニア濃度を表す。データは平均値±SE(n=3)、*p<0.05(Dunnett test, vs. 対照群)。
図2】カテキン類及びオルニチンが血中アンモニア濃度に及ぼす影響。A:1回目(試験素材摂取なし)の血中アンモニア濃度、B:2回目(試験素材摂取後)の血中アンモニア濃度。データは平均値±SE(各群n=15)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、「非治療的」とは、医療行為を含まない、すなわち人間を手術、治治療又は診断する方法を含まない、より具体的には医師、又は医療従事者もしくは医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
【0016】
本明細書において、「予防」とは、個体における疾患もしくは状態の発症の防止、抑制又は遅延、あるいは個体の疾患もしくは状態の発症の危険性を低下させることをいう。また本明細書において、「改善」とは、疾患もしくは状態の好転、疾患もしくは状態の悪化の防止、抑制又は遅延、あるいは疾患もしくは状態の進行の逆転、防止、抑制又は遅延をいう。
【0017】
本明細書において、「カテキン類」とは、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)、及びエピガロカテキンガレート(EGCg)からなる群より選択される少なくとも1種を意味する。
【0018】
カテキン類は、Camellia属、例えばC. sinensis var. sinensis、C. sinensis var. assamica、やぶきた種、又はそれらの雑種から得られる葉から製造された茶葉から、水又は熱水、場合によってはこれに抽出助剤を添加したもので抽出することができる。当該茶葉には、(1)煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜入り茶等の緑茶;(2)総称して烏龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶などの半発酵茶;(3)紅茶と呼ばれるダージリン、ウバ、キーマン等の発酵茶の茶葉が含まれる。当該茶葉からのカテキン類の抽出は、撹拌抽出などの通常の方法により行うことができる。抽出用の水又は熱水には、予めアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。必要に応じて、抽出には、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。
【0019】
あるいは、カテキン類を茶葉から直接抽出するかわりに、茶抽出物の濃縮物又は精製物が使用されてもよい。茶抽出物の濃縮物とは、例えば茶葉から熱水もしくは水溶性有機溶剤により抽出された抽出物を濃縮したものであり、茶抽出物の精製物とは、例えば当該抽出物を溶剤やカラム等を用いて精製したものである。当該茶抽出物の濃縮物又は精製物の例としては、特開昭59-219384号、特開平4-20589号、特開平5-260907号、特開平5-306279号等に詳細に例示されている方法で調製したものが挙げられる。茶抽出物、及びその濃縮物又は精製物は市販品を使用してもよく、その例としては、三井農林(株)「ポリフェノン」、(株)伊藤園「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」、サントリー(株)「サンウーロン」等が挙げられる。茶抽出物の濃縮物又は精製物の形態としては、固体、液体、スラリー、ならびにそれらを水、炭酸水又は通常の手順で抽出された茶類抽出液等に溶解又は希釈したものが挙げられるが、特に限定されない。
【0020】
さらに、本発明におけるカテキン類は、茶葉以外の他の原料起源、例えばブドウ及びその加工品(ワイン、ジュース類等)又はカカオ豆及びその加工品に由来するもの、あるいは化学合成品であってもよい。
【0021】
本発明のカテキン類は、好ましくは茶抽出物の濃縮物又は精製物の形態で使用され、より好ましくは緑茶抽出物の濃縮物又は精製物の形態で使用される。
【0022】
本発明において、オルニチンは、遊離体又はその塩の形態で使用することができる。オルニチンは、L-体、D-体、DL-体、及びそれらの混合物のいずれであってもよいが、好ましくはL-体である。
【0023】
オルニチンの塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が挙げられる。当該酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、及び酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α-ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩が挙げられる。当該金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。当該アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられる。当該有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩が挙げられる。当該アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩が挙げられる。このうち、ナトリウム塩、又は塩酸塩が好ましい例として挙げられる。
【0024】
当該オルニチンの遊離体又はそれらの塩は、それらを含む動植物から単離精製する方法、化学合成、発酵生産等により得ることができる。あるいは市販品を購入してもよい。
【0025】
後述する実施例に示すとおり、カテキン類及びオルニチンを併用することにより、カテキン類又はオルニチンを単独で使用する場合と比べて、顕著に高いアンモニア代謝促進作用が達成される。前述の如く、高濃度のアンモニアが血中に蓄積し、その一部が脳内に移行することで様々な神経症状が引き起こされる。例えば、アンモニア曝露の持続時間及び大きさに依存して、脳アンモニアの上昇は、記憶機能障害、認知及び空間学習を含むアルツハイマー病に共通する典型的な神経学的症状を引き起こすこと、血中アンモニア濃度を低下することによりアルツハイマー病の治療に効果があることが報告されている(前記非特許文献7)。
【0026】
したがって、優れたアンモニア代謝促進作用を有するカテキン類及びオルニチンの組み合わせは、認知機能改善剤(好ましくは、アンモニアの過剰蓄積を伴う認知機能低下の改善剤、アルツハイマー型認知症による認知能低下の改善剤)、更にはアルツハイマー病の予防又は改善剤(以下、「認知機能改善剤等」とも称する)となり得、また当該認知機能改善剤等を製造するために使用できる。
【0027】
また、カテキン類及びオルニチンの組み合わせは、認知機能改善(好ましくは、アンモニアの過剰蓄積を伴う認知機能低下の改善、アルツハイマー型認知症による認知能低下の改善)、アルツハイマー病の予防又は改善のために使用することができる。ここで、当該使用は、ヒト若しくは非ヒト動物への投与、又はそれらに由来する検体における使用であり得、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。ここで、非ヒト動物としては、非ヒト哺乳動物、両生類、及び軟骨魚類が挙げられ、非ヒト哺乳動物としては、例えば類人猿、その他霊長類、マウス、ラット、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ハムスター、及びコンパニオン動物等が挙げられる。
本発明のカテキン類及びオルニチンの組み合わせを適用する対象としては、好ましくはアンモニア代謝が低下しているヒト、認知機能が低下しているヒト、アルツハイマー病の予防又は改善を望むヒト等が挙げられる。
【0028】
なお、本発明において、カテキン類及びオルニチンの組み合わせは、それらが生体内で協働できる限りにおいて、両成分が同時に投与されてもよく、又は各成分が別個に投与されてもよい。
【0029】
本発明において、「認知機能」とは、記憶、学習、思考、注意又は知覚、言語、時空間認識、見当識、その他抽象的事象の認知又は総合判断能力、及び実行能力などが挙げられ、好ましくは記憶又は学習能力、総合判断能力、及び実行能力が挙げられる。
「認知機能の改善」とは、認知機能の維持・向上、認知機能の低下に伴う各種症状(認知機能障害)の緩和・治癒を意味する。
したがって、本発明の認知機能改善剤は、認知機能障害を呈する疾患又は状態の予防又は改善用として有用である。斯かる認知機能障害を呈する疾患又は状態としては、例えば、認知症(例、老人性認知症、アルツハイマー病、脳血管性認知症、外傷後認知症の他、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、正常圧脳水腫、髄膜炎、パーキンソン病等の種々の疾患により生じる認知症)、非認知症性の認知障害(例、軽度認知障害(MCI))、記憶又は学習障害(例、脳発達障害に伴う記憶及び学習障害)等が挙げられるが、好ましくは、アルツハイマー病、又はアルツハイマー型認知症である。
【0030】
本発明の認知機能改善剤等は、認知機能の改善(好ましくは、アンモニアの過剰蓄積を伴う認知機能低下の改善、アルツハイマー型認知症による認知能低下の改善)、又はアルツハイマー病の予防又は改善効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品、食品となり、また当該医薬品、医薬部外品、食品に配合して使用される素材又は製剤となり得る。
なお、当該食品には、認知機能の改善(好ましくは、アンモニアの過剰蓄積を伴う認知機能低下の改善、アルツハイマー型認知症による認知能低下の改善)、又はアルツハイマー病の予防又は改善効果をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した食品、機能性表示食品、特定保健用食品、病者用食品、サプリメントが包含される。
該医薬品、医薬部外品、食品は、カテキン類及びオルニチンを含む1つの組成物として提供されてもよく、又は、カテキン類又はオルニチンをそれぞれ含む組成物の組み合わせとして提供されてもよい。
【0031】
本発明の認知機能改善剤等を医薬品(医薬部外品を含む)として用いる場合、当該医薬品は任意の投与形態で投与され得る。投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与又は注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤等による非経口投与が挙げられるが、好ましい形態は経口投与である。
このような種々の剤型の医薬製剤は、本発明のカテキン類及びオルニチンと他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜組み合わせて調製することができる。
【0032】
本発明の認知機能改善剤等を食品として用いる場合、当該食品の形態は、パン類、ケーキ類、麺類、菓子類、ゼリー類、冷凍食品、アイスクリーム類、乳製品、飲料などの各種食品組成物の他、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、シロップ等)が挙げられる。
種々の形態の食品は、本発明のカテキン類及びオルニチンと他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて調製することができる。
【0033】
当該医薬品(医薬部外品も含む)中におけるカテキン類の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、かつ好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。さらに、当該含有量の例として、0.1~20質量%、0.1~10質量%、0.1~5質量%、1~20質量%、1~10質量%、1~5質量%、3~20質量%、3~10質量%、及び3~5質量%が挙げられる。
【0034】
当該医薬品(医薬部外品も含む)中におけるオルニチンの含有量は、特に限定されないが、オルニチン遊離体換算で、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは9質量%以上であり、かつ好ましくは60質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。さらに、当該含有量の例として、0.3~60質量%、0.3~30質量%、0.3~20質量%、0.3~15質量%、3~60質量%、3~30質量%、3~20質量%、3~15質量%、5~60質量%、5~30質量%、5~20質量%、5~15質量%、9~60質量%、9~30質量%、9~20質量%、及び9~15質量%が挙げられる。
【0035】
当該医薬品(医薬部外品も含む)においては、上記に挙げたカテキン類の濃度(0.1~20質量%、0.1~10質量%、0.1~5質量%、1~20質量%、1~10質量%、1~5質量%、3~20質量%、3~10質量%、及び3~5質量%)のいずれかと、上記に挙げたオルニチン濃度(0.3~60質量%、0.3~30質量%、0.3~20質量%、0.3~15質量%、3~60質量%、3~30質量%、3~20質量%、3~15質量%、5~60質量%、5~30質量%、5~20質量%、5~15質量%、9~60質量%、9~30質量%、9~20質量%、及び9~15質量%)のいずれかを、任意に組み合わせることができる。
【0036】
当該食品中におけるカテキン類の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、かつ好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。さらに、当該含有量の例として、0.05~10質量%、0.05~5質量%、0.05~1質量%、0.1~10質量%、0.1~5質量%、0.1~1質量%、1~10質量%、及び1~5質量%が挙げられる。
【0037】
当該食品中におけるオルニチンの含有量は、特に限定されないが、オルニチン遊離体換算で、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、かつ好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。さらに、当該含有量の例として、0.15~30質量%、0.15~20質量%、0.15~15質量%、0.15~5質量%、0.15~3質量%、0.3~30質量%、0.3~20質量%、0.3~15質量%、0.3~5質量%、0.3~3質量%、3~30質量%、3~20質量%、3~15質量%、3~5質量%、5~30質量%、5~20質量%、及び5~15質量%が挙げられる。
【0038】
当該食品においては、上記に挙げたカテキン類の濃度(0.05~10質量%、0.05~5質量%、0.05~1質量%、0.1~10質量%、0.1~5質量%、0.1~1質量%、1~10質量%、及び1~5質量%)のいずれかと、上記に挙げたオルニチン濃度(0.15~30質量%、0.15~20質量%、0.15~15質量%、0.15~5質量%、0.15~3質量%、0.3~20質量%、0.3~30質量%、0.3~15質量%、0.3~5質量%、0.3~3質量%、3~30質量%、3~20質量%、3~15質量%、3~5質量%、5~30質量%、5~20質量%、及び5~15質量%)のいずれかを、任意に組み合わせることができる。
【0039】
また本発明において使用されるカテキン類とオルニチン(遊離体換算)との量比は、質量比で、好ましくは1:0.1~10、より好ましくは1:0.5~10、さらに好ましくは1:1~8、さらに好ましくは1:1~5、なお好ましくは1:2~4である。
【0040】
本発明においては、アンモニア代謝促進作用を有する他の素材を、カテキン類及びオルニチンと組み合わせて使用することができる。そのような他の素材の例としては、アルギニン、シトルリン及びその組み合わせが挙げられる。
【0041】
本発明において、カテキン類及びオルニチンの投与量及び投与計画は、対象の種、体重、性別、年齢、状態、又はその他の要因に従って当業者により適宜決定されればよい。限定ではないが、経口投与の場合、本発明によるカテキン類及びオルニチンの成人1人1日当たりの投与量の例は、以下のとおりである:
[カテキン類]好ましくは100~3000mg/60kg体重、より好ましくは250~2000mg/60kg体重、さらに好ましくは250~1000mg/60kg体重、さらに好ましくは250~600mg/60kg体重;
[オルニチン(遊離体換算)]好ましくは100~5000mg/60kg体重、より好ましくは250~3000mg/60kg体重、さらに好ましくは400~2000mg/60kg体重、さらに好ましくは500~2000mg/60kg体重、さらに好ましくは800~1600mg/60kg体重、別の例において、好ましくは250~800mg/60kg体重、さらに好ましくは500~800mg/60kg体重、
上記の用量を、例えば、1日1回、又は1日2回もしくは3回以上に分けて投与することが好ましい。
【0042】
本発明の認知機能改善剤等が食品として使用される場合の好ましい実施形態としては、該カテキン類及びオルニチンは、カテキン類を1~10質量%、オルニチンを5~20質量%(遊離体換算)含有し、かつカテキン類とオルニチン(遊離体換算)の質量比が1:0.5~10である組成物が挙げられる。
【0043】
本発明の認知機能改善剤等が飲料として使用される場合の好ましい実施形態としては、該カテキン類及びオルニチンは、カテキン類を0.057~0.567質量%、オルニチンを0.283~1.132質量%(遊離体換算)含有し、かつカテキン類とオルニチン(遊離体換算)の質量比が1:0.5~10である組成物が挙げられる。
【0044】
本発明の認知機能改善剤等が医薬品として使用される場合の好ましい実施形態としては、該カテキン類及びオルニチンは、カテキン類を1~10質量%、オルニチンを5~20質量%(遊離体換算)含有し、かつカテキン類とオルニチン(遊離体換算)の質量比が1:0.5~10である組成物が挙げられる。
【0045】
本発明の認知機能改善剤等の投与量の好ましい例は、成人1人1日当たりの経口投与量として、カテキン類250~1,000mg/60kg体重、かつオルニチン400~2000mg(遊離体換算)/60kg体重である。上記の用量を、例えば、1日1回、又は1日2回もしくは3回以上に分けて投与することが好ましい。
【0046】
上述した実施形態に関し、本発明においてはさらに以下の態様が開示される。
<1>カテキン類及びオルニチンを有効成分とする認知能改善剤。
<2>カテキン類及びオルニチンを有効成分とする認知機能改善用食品。
<3>認知機能の改善がアンモニアの過剰蓄積を伴う認知能低下の改善である、<1>の剤又は<2>の食品。
<4>認知機能の改善がアルツハイマー型認知症に伴う認知能低下の改善である、<1>若しくは<3>の剤、又は<2>若しくは<3>の食品。
<5>カテキン類及びオルニチンを有効成分とするアルツハイマー病の予防又は改善剤。
<6>カテキン類及びオルニチンを有効成分とするアルツハイマー病の予防又は改善用食品。
【0047】
<7>認知能改善剤を製造するための、カテキン類及びオルニチンの使用。
<8>認知能改善用食品を製造するための、カテキン類及びオルニチンの使用
<9>認知機能の改善がアンモニアの過剰蓄積を伴う認知能低下の改善である、<7>又は<8>の使用。
<10>認知機能の改善がアルツハイマー型認知症に伴う認知能低下の改善である、<7>~<9>いずれかの使用。
<11>アルツハイマー病の予防又は改善剤を製造するための、カテキン類及びオルニチンの使用。
<12>アルツハイマー病の予防又は改善用食品を製造するための、カテキン類及びオルニチンの使用。
【0048】
<13>認知能改善に使用するための、カテキン類及びオルニチンの組み合わせ。
<14>認知機能の改善がアンモニアの過剰蓄積を伴う認知能低下の改善である、<13>の組み合わせ。
<15>認知機能の改善がアルツハイマー型認知症に伴う認知能低下の改善である、<13>又は<14>の組み合わせ。
<16>アルツハイマー病の予防又は改善に使用するための、カテキン類及びオルニチンの組み合わせ。
【0049】
<17>認知能を改善するための、カテキン類及びオルニチンの非治療的使用。
<18>認知機能の改善がアンモニアの過剰蓄積を伴う認知能低下の改善である、<17>の使用。
<19>認知機能の改善がアルツハイマー型認知症に伴う認知能低下の改善である、<17>又は<18>の使用。
<20>アルツハイマー病を予防又は改善するための、カテキン類及びオルニチンの非治療的使用。
【0050】
<21>カテキン類及びオルニチンの有効量を、それを必要とする対象に投与する認知能改善方法。
<22>認知機能の改善がアンモニアの過剰蓄積を伴う認知能低下の改善である、<21>の方法。
<23>認知機能の改善がアルツハイマー型認知症に伴う認知能低下の改善である、<21>又は<22>の方法。
<24>カテキン類及びオルニチンの有効量を、それを必要とする対象に投与するアルツハイマー病の予防又は改善方法。
【0051】
<25><1>~<24>において、カテキン類とオルニチンとの質量比は好ましくは1:0.1~10、より好ましくは1:0.5~10、さらに好ましくは1:1~8、さらに好ましくは1:1~5、なお好ましくは1:2~4である。
<26><1>~<24>において、前記カテキン類は、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、及びエピガロカテキンガレートからなる群より選択される少なくとも1種である。
<27><2>、<3>、<4>及び<6>において、食品中におけるカテキン類の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、かつ好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であるか、又は0.05~10質量%、0.05~5質量%、0.05~1質量%、0.1~10質量%、0.1~5質量%、0.1~1質量%、1~10質量%、及び1~5質量%である。
<28><2>、<3>、<4>及び<6>において、食品中におけるオルニチンの含有量は、オルニチン遊離体換算で、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、かつ好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下であるか、又は、0.15~30質量%、0.15~20質量%、0.15~15質量%、0.15~5質量%、0.15~3質量%、0.3~30質量%、0.3~20質量%、0.3~15質量%、0.3~5質量%、0.3~3質量%、3~30質量%、3~20質量%、3~15質量%、3~5質量%、5~30質量%、5~20質量%、及び5~15質量%である。
【実施例
【0052】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
参考例1 カテキン類含有緑茶抽出物の調製
市販の緑茶抽出物(三井農林(株)「ポリフェノンHG」)1,000gを、25℃、200rpmの撹拌条件下で、95質量%エタノール水溶液9,000g中に懸濁させた。これに活性炭(クラレケミカル(株)、「クラレコールGLC」)200gと酸性白土(水澤化学(株)、「ミズカエース♯600」)500gとを投入し、約10分間撹拌を続けた。さらに25℃で30分間撹拌処理を続けた。次に、懸濁液を2号ろ紙でろ過して活性炭、酸性白土、及び沈殿物を除去した後、ろ過液を0.2μmメンブランフィルターにて再ろ過した。イオン交換水200gをろ過液に加え、40℃、3.3kPaでエタノールを留去し、減圧濃縮した。濃縮物のうち750gをステンレス容器に投入し、イオン交換水で全量を10,000gとし、5質量%重炭酸ナトリウム水溶液30gを添加してpH5.5に調整した。得られた濃縮物を含む溶液に、22℃、150rpmの撹拌条件下で、イオン交換水10.7g中にキッコーマンタンナーゼKTFH(Industrial Grade、500U/g以上)2.7gを溶解させた酵素液を添加した。30分後に反応液のpHが4.24に低下した時点で、95℃の温浴に該ステンレス容器を浸漬し、90℃10分間保持して酵素活性を完全に失活させた。次いで、反応液を25℃まで冷却した後に濃縮処理を行い、緑茶抽出物の精製物を得た。得られた精製緑茶抽出物は、(A)カテキン類の含有量が14.9量%、該カテキン類中のカテキンガレート類の割合が45.3質量%であった。
【0054】
実施例1 カテキン類及びオルニチンが肝細胞のアンモニア代謝に及ぼす影響
肝細胞には、肝細胞培養キットP-2(HPC03P-BAL、雄性Balb/cマウス由来、24well、1×105cell/well、コスモ・バイオ株式会社)を用いた。カテキン類としては、参考例1で調製した緑茶抽出物(カテキン類14.9質量%含有)を用いた。肝細胞を、対照培地、オルニチン含有培地(1mMオルニチン塩酸塩(オルニチン換算として0.0132%)含有対照培地)、カテキン類含有培地(0.001質量%緑茶抽出物(カテキン類として0.000149質量%)含有対照培地)、又は、オルニチン及びカテキン類含有培地(1mMオルニチン塩酸塩及び0.001質量%緑茶抽出物含有対照培地)中で、37℃にて20時間培養した。対照培地には、5mM塩化アンモニウム含有DMEM培地(高グルコース、GlutaMAX添加、ペニシリン/ストレプトマイシン添加、ピルビン酸不含有、フェノールレッド不含有、グルタミン不含有、FBS不含有)を用いた。培養後の培地上清を回収し、これに含まれるアンモニアをAmmonia Assay Kit(abcam)を用いて定量した。定量値について、対照群との間での有意差検定を行った(Dunnett test,vs.対照群、n=3)。
【0055】
アンモニアの定量結果を図1に示す。対照群に対し、オルニチン塩酸塩及びカテキン類含有群において、培地中のアンモニア濃度が統計学的に有意に低減し、アンモニア代謝が促進されたことが示された。
【0056】
実施例2 カテキン類及びオルニチンがヒトの血中アンモニア濃度に及ぼす影響
1.方法
(被験者)
健康な成人男性15名(21~39歳)を被験者とした。
(実験計画)
試験では、本測定1として、被験者全員に対照飲料1本(プラセボヘルシアウォーター グレープフルーツ味 500mL:カテキン類非含有)及びプラセボサプリメント(プラセプラス(プラセボ製薬株式会社))12粒を摂取させ、その50分後、血中アンモニア濃度を測定した。
本測定1後、本測定2として15名を本測定1での血中アンモニア濃度平均値に差が無い様に5名ずつの3つ群(カテキン類単独群、オルニチン単独群、カテキン類とオルニチン併用群)に分け、本測定1から2週間以上の後、それぞれ、
カテキン類単独群には、カテキン飲料1本(ヘルシアウォーター グレープフルーツ味 500mL:花王株式会社、カテキン類540mg含有)及びプラセボサプリメント(プラセプラス(プラセボ製薬株式会社))12粒、
オルニチン単独群には、対照飲料1本(プラセボヘルシアウォーター グレープフルーツ味 500mL:カテキン類非含有)及びオルニチンサプリメント(オルニチン(協和発酵バイオ株式会社)、12粒中にオルニチン1600mg含有)12粒、
カテキン類とオルニチン併用群にはカテキン飲料1本(ヘルシアウォーター グレープフルーツ味 500mL:花王株式会社、カテキン類540mg含有)及びオルニチンサプリメント(オルニチン(協和発酵バイオ株式会社)、12粒中にオルニチン1600mg含有)12粒、
を摂取させ、その50分後、血中アンモニア濃度を測定した。
【0057】
(試験素材)
試験素材の詳細は以下のとおり:
カテキン飲料:ヘルシアウォーター グレープフルーツ味 500mL(花王株式会社)、1本あたりカテキン類540mg含有;
プラセボサプリメント:プラセプラス(プラセボ製薬株式会社)、アミノ酸不含有;
オルニチンサプリメント:オルニチン(協和発酵バイオ株式会社)、12粒中にオルニチン1600mg含有;
試験素材の提供は単盲検法により行われた。
【0058】
(血中アンモニア濃度測定)
本測定1及び2では、試験素材の摂取50分後に、各被験者の指先から採血した。採血した血液(全血)について、血中アンモニア測定装置(ポケットケムBA PA-4140、アークレイ株式会社)を用いて、血中アンモニア濃度を測定した。
2回の試験で得られた全被験者のデータを、測定間での有意差検定を行った(t-test)。
【0059】
2.結果
(血中アンモニア濃度)
結果を図2に示す。各群の本測定1の際の値をA、本測定2の際の値をBで示す。図2が示すように、カテキン類単独群(Cat)、オルニチン単独群(Orn)が、対照摂取時(本測定1)と比較し、本測定2の際に血中アンモニア濃度が低下しなかったのに対し、カテキン類とオルニチン併用群(Cat+Orn)は20%以上低下した(p<0.1)。このことから、カテキン類とオルニチンの併用摂取が、血中アンモニア濃度を低下させることが示された。
図1
図2