(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20221220BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20221220BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 A
E02F3/43 B
(21)【出願番号】P 2018233489
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村 敦史
(72)【発明者】
【氏名】西口 晴己
(72)【発明者】
【氏名】久 隼人
(72)【発明者】
【氏名】段林 裕夢
(72)【発明者】
【氏名】寺村 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】竹原 和生
(72)【発明者】
【氏名】池上 勝博
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/198761(WO,A1)
【文献】特開2001-032331(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043270(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/004809(WO,A1)
【文献】特開2017-008719(JP,A)
【文献】特開2001-098585(JP,A)
【文献】特開2018-145684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
E02F 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体を有する車両本体と、
前記車両本体に取り付けられた作業機と、
前記作業機の動作を自動制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記走行体の走行が所定時間継続したこと、前記走行体が連続して所定距離走行したこと、前記走行体が所定の作業エリア内から前記作業エリア外へ移動したこと、の少なくともいずれか1つを条件として、前記作業機の動作の自動制御を解除する、作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記走行体の走行が中断したとき、走行が中断した時間が閾値未満であれば、前記走行体の走行が継続していると判断する、請求項
1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記自動制御は、前記作業機による作業対象の目標形状を示す設計地形に対する前記作業機の動作を制御するものである、請求項1
または請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラが前記自動制御を解除したときに前記自動制御を解除したことを報知する報知部をさらに備える、請求項1~
3のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
走行体を有する車両本体と、前記車両本体に取り付けられた作業機とを有する作業機械と、
前記作業機の動作を自動制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記走行体の走行が所定時間継続したこと、前記走行体が連続して所定距離走行したこと、前記走行体が所定の作業エリア内から前記作業エリア外へ移動したこと、の少なくともいずれか1つを条件として、前記作業機の動作の自動制御を解除する、作業機械を含むシステム。
【請求項6】
走行体を有する車両本体と、前記車両本体に取り付けられた作業機とを有する作業機械の制御方法であって、
前記走行体の走行状態を判定するステップと、
前記走行体の走行が所定時間継続したこと、前記走行体が連続して所定距離走行したこと、前記走行体が所定の作業エリア内から前記作業エリア外へ移動したこと、の少なくともいずれか1つを条件として、前記作業機の動作の自動制御を解除するステップとを備える、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械に関し、特開2017-008719号公報(特許文献1)には、油圧ショベルが旋回されながらブームが下降している場合に、掘削制限制御の解除を指示する、油圧ショベルの掘削制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機の動作を自動制御する機能を備える作業機械において、自動制御を解除するには、上記のような場合を除き、従来はオペレータの解除操作を必要とした。走行時は、作業機の動作を自動制御する必要が無いため、オペレータは、都度、解除操作を行う必要があった。
【0005】
本開示では、走行する際のオペレータの作業を省力化できる、作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、走行体を有する車両本体と、車両本体に取り付けられた作業機と、作業機の動作を自動制御するコントローラとを備える、作業機械が提供される。コントローラは、走行体の走行状態に基づいて、作業機の動作の自動制御を解除する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に従えば、作業機械を走行する際のオペレータの作業を省力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に基づく油圧ショベルの外観図である。
【
図2】実施形態に基づく油圧ショベルのシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】油圧ショベルによる整地制御について示す模式的な側面図である。
【
図4】自動制御を解除する処理を示すフローチャートである。
【
図5】表示部に表示される画像の一例を示す模式図である。
【
図6】自動制御の解除に係る通知表示を示す表示部の模式図である。
【
図7】自動制御を再開する処理を示すフローチャートである。
【
図8】自動制御の再開に係る通知表示を示す表示部の模式図である。
【
図9】第二実施形態に基づく自動制御を解除する処理を示すフローチャートである。
【
図10】第三実施形態に基づく自動制御を解除する処理を示すフローチャートである。
【
図11】油圧ショベルを含むシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
(第一実施形態)
図1は、実施形態に基づく油圧ショベル100の外観図である。
図1に示されるように、作業機械として、本例においては、主に油圧ショベル100を例に挙げて説明する。
【0011】
油圧ショベル100は、本体1と、油圧により作動する作業機2とを有している。本体1は、旋回体3と、走行体5とを有している。走行体5は、一対の履帯5Crと、走行モータ5Mとを有している。油圧ショベル100は、履帯5Crの回転により走行可能である。走行モータ5Mは、走行体5の駆動源として設けられている。走行モータ5Mは、油圧により作動する油圧モータである。なお、走行体5が車輪(タイヤ)を有していてもよい。
【0012】
旋回体3は、走行体5の上に配置され、かつ走行体5により支持されている。旋回体3は、旋回軸RXを中心として走行体5に対して旋回可能である。旋回体3は、キャブ4を有している。油圧ショベル100の乗員(オペレータ)は、このキャブ4に搭乗して、油圧ショベル100を操縦する。キャブ4には、オペレータが着座する運転席4Sが設けられている。オペレータは、キャブ4内において油圧ショベル100を操作可能である。オペレータは、キャブ4内において、作業機2の操作が可能であり、走行体5に対する旋回体3の旋回操作が可能であり、また走行体5による油圧ショベル100の走行操作が可能である。
【0013】
旋回体3は、エンジンが収容されるエンジンルーム9と、旋回体3の後部に設けられるカウンタウェイトとを有している。エンジンルーム9には、後述するエンジン31および油圧ポンプ33などが配置されている。
【0014】
旋回体3において、エンジンルーム9の前方に手すり19が設けられている。手すり19には、アンテナ21が設けられている。アンテナ21は、たとえばGNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)用のアンテナである。アンテナ21は、車幅方向に互いに離れるように旋回体3に設けられた第1アンテナ21Aおよび第2アンテナ21Bを有している。
【0015】
作業機2は、旋回体3に支持されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8とを有している。ブーム6は、旋回体3に回転可能に連結されている。アーム7はブーム6に回転可能に連結されている。バケット8は、アーム7に回転可能に連結されている。バケット8は、複数の刃を有している。バケット8の先端部を、刃先8aと称する。
【0016】
なお、バケット8は、刃を有していなくてもよい。バケット8の先端部は、ストレート形状の鋼板で形成されていてもよい。
【0017】
ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して旋回体3に連結されている。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に連結されている。バケット8は、バケットピン15を介してアーム7の先端部に連結されている。
【0018】
なお本実施形態においては、作業機2を基準として、油圧ショベル100の各部の位置関係について説明する。
【0019】
作業機2のブーム6は、旋回体3に対して、ブーム6の基端部に設けられたブームピン13を中心に回転する。旋回体3に対して回転するブーム6の特定の部分、たとえばブーム6の先端部が移動する軌跡は円弧状であり、その円弧を含む平面が特定される。油圧ショベル100を平面視した場合に、当該平面は直線として表される。この直線の延びる方向が、油圧ショベル100の本体1の前後方向、または旋回体3の前後方向であり、以下では単に前後方向ともいう。油圧ショベル100の本体1の左右方向(車幅方向)、または旋回体3の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向であり、以下では単に左右方向ともいう。車両本体の上下方向、または旋回体3の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向であり、以下では単に上下方向ともいう。
【0020】
前後方向において、油圧ショベル100の本体1から作業機2が突き出している側が前方向であり、前方向と反対方向が後方向である。前方向を視て左右方向の右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0021】
前後方向とは、キャブ4内の運転席4Sに着座したオペレータの前後方向である。運転席4Sに着座したオペレータに正対する方向が前方向であり、運転席4Sに着座したオペレータの背後方向が後方向である。左右方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの左右方向である。運転席4Sに着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。上下方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの上下方向である。運転席4Sに着座したオペレータの足元側が下側、頭上側が上側である。
【0022】
ブーム6は、ブームピン13を中心に回転可能である。アーム7は、アームピン14を中心に回転可能である。バケット8は、バケットピン15を中心に回転可能である。アーム7およびバケット8のそれぞれは、ブーム6の先端側で移動可能な可動部材である。ブームピン13、アームピン14およびバケットピン15は、すなわち左右方向に延びている。
【0023】
作業機2は、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とを有している。ブームシリンダ10は、ブーム6を駆動する。アームシリンダ11は、アーム7を駆動する。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動する。ブームシリンダ10、アームシリンダ11、およびバケットシリンダ12のそれぞれは、作動油によって駆動される油圧シリンダである。
【0024】
バケットシリンダ12は、アーム7に取り付けられている。バケットシリンダ12が伸縮することにより、アーム7に対してバケット8が回転する。作業機2は、バケットリンクを有している。バケットリンクは、バケットシリンダ12とバケット8とを連結している。
【0025】
油圧ショベル100には、コントローラ26が搭載されている。コントローラ26の詳細は後述する。
【0026】
図2は、実施形態に基づく油圧ショベル100のシステム構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、油圧ショベル100には、制御システム200が搭載されている。
【0027】
制御システム200は、アンテナ21と、グローバル座標演算部23と、IMU(Inertial Measurement Unit)24と、操作装置25と、コントローラ26と、圧力センサ66及び圧力センサ67と、制御弁27と、方向制御弁64と、マンマシンインターフェース部32とを有している。
【0028】
コントローラ26は、メモリ261を有している。メモリ261は、油圧ショベル100の各種の動作を制御するためのプログラムを格納する。コントローラ26は、メモリ261に格納されているプログラムに基づいて、油圧ショベル100の動作を制御するための各種処理を実行する。メモリ261は、不揮発性のメモリであり、必要なデータを記憶する領域として設けられている。コントローラ26はまた、所定時間を計測するためのタイマ262を有している。
【0029】
アンテナ21は、受信した電波(GNSS電波)に応じた信号をグローバル座標演算部23に出力する。グローバル座標演算部23は、グローバル座標系におけるアンテナ21の設置位置を検出する。グローバル座標系は、作業エリアに設置した基準位置を元にした3次元座標系である。基準位置は、作業エリアに設定された基準杭の先端の位置であってもよい。
【0030】
IMU24は、旋回体3に設けられている。本例においては、IMU24は、キャブ4の下部に配置されている。旋回体3において、キャブ4の下部に高剛性のフレームが配置されている。IMU24は、そのフレーム上に配置されている。なお、IMU24は、旋回体3の旋回軸RXの側方(右側又は左側)に配置されてもよい。IMU24は、前後方向、左右方向および上下方向における旋回体3の加速度と、前後方向、左右方向および上下方向まわりの旋回体3の角速度とを計測する。
【0031】
操作装置25は、キャブ4内に配置されている。オペレータにより操作装置25が操作される。操作装置25は、油圧ショベル100(走行体5)を走行させるオペレータ操作を受け付ける。また操作装置25は、作業機2を駆動するオペレータ操作を受け付ける。操作装置25は、オペレータ操作に応じた操作信号を出力する。本例においては、操作装置25は、パイロット油圧方式の操作装置である。
【0032】
制御システム200は、油圧ポンプ33がエンジン31によって駆動され、油圧ポンプ33から吐出された作動油が、オペレータによる操作装置25の操作に対応して、方向制御弁64を介して各種の油圧アクチュエータ60に供給されるように、構成されている。油圧アクチュエータ60への油圧の供給および排出が制御されることにより、作業機2の動作、旋回体3の旋回、および走行体5の走行動作が制御される。油圧アクチュエータ60は、
図1に示されるブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12および走行モータ5Mと、図示しない旋回モータとを含んでいる。
【0033】
エンジン31は、ディーゼルエンジンである。エンジン31への燃料の噴射量がコントローラ26によって制御されることにより、エンジン31の出力が制御される。
【0034】
油圧ポンプ33は、エンジン31に連結されている。エンジン31の回転駆動力が油圧ポンプ33に伝達されることにより、油圧ポンプ33が駆動される。油圧ポンプ33は、斜板を有し、斜板の傾転角が変更されることにより吐出容量を変化させる可変容量型の油圧ポンプである。油圧ポンプ33から吐出された作動油は、減圧弁によって一定の圧力に減圧されて、方向制御弁64に供給される。
【0035】
方向制御弁64は、ロッド状のスプールを動かして作動油が流れる方向を切り換えるスプール方式の弁である。スプールが軸方向に移動することにより、油圧アクチュエータ60に対する作動油の供給量が調整される。方向制御弁64には、スプールの移動距離(スプールストローク)を検出するスプールストロークセンサ65が設けられる。スプールストロークセンサ65の検出信号は、コントローラ26に出力される。
【0036】
なお、本例においては、油圧アクチュエータ60を作動するために、その油圧アクチュエータ60に供給される油は作動油と称される。また、方向制御弁64を作動するためにその方向制御弁64に供給される油はパイロット油と称される。また、パイロット油の圧力はパイロット油圧とも称される。
【0037】
作動油及びパイロット油は、同一の油圧ポンプから送出されてもよい。例えば、油圧ポンプ33から送出された作動油の一部が減圧弁で減圧され、その減圧された作動油がパイロット油として使用されてもよい。また、作動油を送出する油圧ポンプ33(メイン油圧ポンプ)とは別に、パイロット油を送出する油圧ポンプ(パイロット油圧ポンプ)が設けられてもよい。
【0038】
操作装置25は、第1走行レバー251と、第2走行レバー252と、作業機レバー253とを有している。第1走行レバー251および第2走行レバー252は、たとえば運転席4Sの前方に配置されている。作業機レバー253は、たとえば運転席4Sの側方に配置されている。
【0039】
一対の走行レバー251,252は、油圧ショベル100(走行体5)の走行を操作するために、オペレータによって操作される部材である。作業機レバー253は、作業機2、すなわちブーム6、アーム7およびバケット8の動作を操作するために、オペレータによって操作される部材である。
【0040】
油圧ポンプから送出され、減圧弁によって減圧されたパイロット油が、操作装置25に供給される。操作装置25の操作量に基づいて、パイロット油圧が調整される。
【0041】
操作装置25と方向制御弁64とは、パイロット油路450を介して接続されている。パイロット油は、パイロット油路450を介して方向制御弁64に供給される。パイロット油路450には、制御弁27、圧力センサ66、および圧力センサ67が配置されている。
【0042】
制御弁27は、コントローラ26からの制御信号(EPC電流)に基づいて、パイロット油圧を調整する。制御弁27は、電磁比例制御弁であり、コントローラ26からの制御信号に基づいて制御される。制御弁27は、方向制御弁64の一対の受圧室の各々に供給されるパイロット油のパイロット油圧を調整して、方向制御弁64を介して油圧アクチュエータ60に供給される作動油の供給量を調整可能である。
【0043】
圧力センサ66及び圧力センサ67は、パイロット油圧を検出する。圧力センサ66は、操作装置25と制御弁27との間のパイロット油路450に配置されている。圧力センサ66は、制御弁27によって調整される前のパイロット油圧を検出する。圧力センサ67は、制御弁27と方向制御弁64との間のパイロット油路450に配置されている。圧力センサ67は、制御弁27によって調整されたパイロット油圧を検出する。圧力センサ66及び圧力センサ67の検出結果は、コントローラ26に出力される。
【0044】
第1走行レバー251が操作されると、その操作量に対応したパイロット油圧が方向制御弁64に供給される。右側の走行モータ5Mに供給される作動油の流れ方向および流量が、方向制御弁64によって調整される。これにより、右側の走行モータ5Mへの作動油の供給が制御され、右走行装置の出力が制御される。
【0045】
第2走行レバー252が操作されると、その操作量に対応したパイロット油圧が方向制御弁64に供給される。左側の走行モータ5Mに供給される作動油の流れ方向および流量が、方向制御弁64によって調整される。これにより、左側の走行モータ5Mへの作動油の供給が制御され、左走行装置の出力が制御される。
【0046】
第1走行レバー251の操作方向に応じて、右側の走行モータ5Mの回転方向が切り換えられる。第2走行レバー252の操作方向に応じて、左側の走行モータ5Mの回転方向が切り換えられる。左右の走行モータ5Mを同方向に回転させることによって油圧ショベル100を前進または後進させることができ、左右の走行モータ5Mを逆方向に回転させることによって油圧ショベル100を超信地旋回させることが可能である。
【0047】
以上のように、オペレータは、第1走行レバー251および第2走行レバー252を操作することによって、油圧ショベル100の走行動作を制御することができる。
【0048】
作業機レバー253が操作されると、その操作内容に対応したパイロット油圧が方向制御弁64に供給される。これにより、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、および旋回モータに供給される作動油の流れ方向および流量が調整され、作業機2の動作および旋回体3の旋回動作が制御される。
【0049】
マンマシンインターフェース部32は、入力部321と表示部(モニタ)322とを有している。本例においては、入力部321は、表示部322の周囲に配置される操作ボタンを有している。なお、入力部321はタッチパネルを有していてもよい。マンマシンインターフェース部32を、マルチモニタとも称する。
【0050】
入力部321は、オペレータによって操作される。入力部321の操作により生成された指令信号は、コントローラ26に出力される。表示部322は、基本情報として燃料残量および冷却水温度等を表示する。
【0051】
以上の構成を備えている油圧ショベル100を用いた整地作業における、作業機2の自動制御について、以下説明する。
図3は、油圧ショベル100による整地制御について示す模式的な側面図である。
図3には、油圧ショベル100と、作業機2による作業対象の現況地形Cと、設計地形Dとが図示されている。設計地形Dは、コントローラ26のメモリ261に予め保存されている施工設計データに従った、作業機2による作業対象の目標形状である。
図3に示される設計地形Dは、法面である。
図3に示される設計地形Dは、平坦な形状を有している。
【0052】
制御システム200は、設計地形Dに対する作業機2の動作を制御する。制御システム200は、作業機2を用いる掘削処理の制御を実行する。本例においては、掘削処理の制御は、整地制御を有している。整地制御は、設計地形に沿ってバケット8を移動させることによりバケット8に接する土砂を掻き均し、設計地形に対応する面を作る整地作業を自動制御することを意味し、制限掘削制御とも称される。
【0053】
整地制御は、オペレータによるアーム7の操作があり、バケット8の刃先8aと設計地形Dとの距離および刃先8aの速度が基準内である場合に、実行される。コントローラ26は、施工設計データと作業機2の現在位置情報とに基づいて、整地制御を実行する。
【0054】
作業機2を操作するオペレータは、アーム7を本体1へ引き寄せる操作を行なう。設計地形Dが平坦面の場合、バケット8の刃先8aは円弧状の軌跡を描いて移動するため、オペレータの操作に従って作業機2を動作させるとバケット8の刃先8aが設計地形Dよりも下方に移動して掘りすぎてしまう場合があり、この場合に、コントローラ26からブーム6を強制的に上昇させる指令が出力される。コントローラ26は、バケット8の刃先8aが設計地形Dよりも下に移動しそうなときに、設計地形Dよりもバケット8の刃先8aが下がらないように、ブーム6を自動で上げる制御をする。
【0055】
図3中の矢印に示される通り、バケット8の刃先8aが設計地形Dに沿って移動するように作業機2を動作させることで、バケット8の刃先8aによって法面の現況地形Cが均され、設計地形Dへの整地が行なわれる。
【0056】
作業機2を用いる掘削処理の制御は、上述した整地制御のほか、作業機2(たとえば刃先8aなどのバケット8の一部分)が設計地形Dに接する位置で作業機2の動作を自動停止させる停止制御を含んでもよい。作業機2の自動制御は、上述したようなオペレータによる手動操作と合わせて行なわれる半自動制御であってもよい。または作業機2の自動制御は、オペレータによる手動操作無しで行なわれる完全自動制御であってもよい。
【0057】
次に、走行体5の走行状態に基づいて作業機2の動作の自動制御を解除する制御について説明する。
図4は、自動制御を解除する処理を示すフローチャートである。
【0058】
図4に示されるように、ステップS1において、作業機2の動作の自動制御が有効であるか否かの判断が行なわれる。作業機2の動作の自動制御の有効化は、オペレータの操作によって行なわれる。オペレータは、
図2に示されるマンマシンインターフェース部32の入力部321を操作することにより、作業機2の動作の自動制御を有効化することができ、または自動制御を無効化して作業機2を手動で動作させることができる。
【0059】
オペレータによる入力部321の操作は、マンマシンインターフェース部32からコントローラ26に出力される。コントローラ26は、オペレータによる入力部321の操作に基づいて、作業機2の動作の自動制御が有効であるか否かを判断する。
【0060】
作業機2の自動制御が有効であると判断された場合(ステップS1においてYES)、次にステップS2において、走行時間が初期化される。コントローラ26は、走行体5が走行を継続している時間T1を設定する。コントローラ26は、タイマ262から現在時刻を読み出し、その読み出した時刻においてT1=0と設定する。コントローラ26は、T1=0と設定した時刻を、メモリ261に記録する。
【0061】
次にステップS3において、走行判定が行なわれる。コントローラ26は、第1走行レバー251と方向制御弁64との間の圧力センサ66、および第2走行レバー252と方向制御弁64との間の圧力センサ66による、パイロット油圧の検出結果に基づいて、走行体5が走行状態にあるか否かを判断する。より具体的には、圧力センサ66によって所定の閾値以上のパイロット油圧が検出されたとき、第1走行レバー251および第2走行レバー252の一方または両方をオペレータが操作していると判断され、走行体5を走行させる操作が行なわれていると判断される。
【0062】
本明細書において、走行状態とは、オペレータが走行体5(油圧ショベル100)を走行させる操作が行なわれている状態をいう。第1走行レバー251および第2走行レバー252の少なくともいずれか一方がオペレータの操作によって中立位置から移動しており中立位置以外の位置に配置されている状態が、走行状態である。第1走行レバー251および第2走行レバー252の両方が中立位置に配置されている状態は、走行状態ではない。
【0063】
なお、走行体5の停止中にオペレータが走行レバーを操作してから作動油の流れが発生して実際に走行体5が走行を開始するまでには、若干のタイムラグがある。走行状態とは走行体5が実際に走行している状態をいうのではなく、走行状態であっても実際には走行体5が走行していない場合もある点、留意すべきである。
【0064】
ステップS3の判断において、走行体5が走行状態にないと判断された場合(ステップS3においてNO)、ステップS1の判断に戻る。
【0065】
ステップS3の判断において、走行体5が走行状態にあると判断された場合(ステップS3においてYES)、ステップS4に進み、走行体5の走行が中断しているか否かの判断が行なわれる。コントローラ26は、上述した圧力センサ66によるパイロット油圧の検出結果に基づいて、オペレータによる走行体5を走行させる操作が中断しているか否かを判断する。パイロット油圧が所定の閾値未満であれば、第1走行レバー251および第2走行レバー252の両方が中立位置にあり、オペレータは第1走行レバー251および第2走行レバー252をいずれも操作していないことになる。コントローラ26は、圧力センサ66によって検出されるパイロット油圧が所定の閾値未満である状態を、走行中断と判断する。
【0066】
走行体5の走行が中断していないと判断された場合(ステップS4においてNO)、ステップS5に進み、走行中断時間が初期化される。コントローラ26は、走行体5の走行が中断している時間T2を設定する。ステップS3において走行体5が走行状態にあると判断され、かつステップS4において走行体5の走行が中断していないと判断された場合、走行体5は走行状態を継続していることになる。この場合、コントローラ26は、タイマ262から現在時刻を読み出し、その読み出した時刻においてT2=0と設定する。コントローラ26は、T2=0と設定した時刻を、メモリ261に記録する。
【0067】
次にステップS6において、走行時間のカウントアップが行なわれる。コントローラ26は、タイマ262から現在時刻を読み出す。コントローラ26は、ステップS2でT1=0と設定した時刻からステップS6でタイマ262から読み出した時刻までの時間を、時間T1に加算して、時間T1を更新する。
【0068】
次にステップS7において、走行時間が閾値以上であるか否かの判断が行なわれる。コントローラ26は、走行体5の走行が継続している時間の閾値をメモリ261から読み出す。コントローラ26は、ステップS6において更新された時間T1と、走行時間の閾値とを比較して、時間T1が走行時間の閾値以上であるか否かを判断する。コントローラ26は、走行体5の走行が所定時間継続したか否かを判断する。
【0069】
走行体5が走行を継続している時間T1の閾値は、たとえば、2分以上5分以下であってもよい。
【0070】
ステップS7の判断において、走行体5が走行を継続している時間T1が閾値未満であると判断された場合(ステップS7においてNO)、ステップS4に戻り、走行体5の走行が中断しているか否かの判断が再度行なわれる。
【0071】
ステップS4の判断において走行体5の走行が中断していると判断された場合(ステップS4においてYES)、ステップS8に進み、走行中断時間のカウントアップが行なわれる。コントローラ26は、タイマ262から現在時刻を読み出す。時間T2は、ステップS5において初期化されている。コントローラ26は、ステップS5でT2=0と設定した時刻からステップS8でタイマ262から読み出した時刻までの時間を、時間T2に加算して、時間T2を更新する。
【0072】
次にステップS9において、走行中断時間が閾値以上であるか否かの判断が行なわれる。コントローラ26は、走行体5の走行が中断している時間の閾値をメモリ261から読み出す。コントローラ26は、ステップS8において更新された時間T2と、走行中断時間の閾値とを比較して、時間T2が走行中断時間の閾値以上であるか否かを判断する。コントローラ26は、走行体5の走行の中断が所定時間継続したか否かを判断する。
【0073】
走行体5の走行が中断している時間T2の閾値は、たとえば、0.1秒以上1秒以下であってもよい。
【0074】
走行体5の走行が中断している時間T2が閾値未満であると判断された場合(ステップS9においてNO)、ステップS7の、走行時間が閾値以上であるか否かの判断に進む。
【0075】
2度目以降のステップS6における走行時間をカウントアップする処理では、前回のステップS6の処理でタイマ262から読み出した時刻から、当該回のステップS6の処理でタイマ262から読み出した時刻までの時間を、時間T1に加算して、時間T1を更新する。
【0076】
ステップS4の判断において走行体5の走行が中断していると2回以上連続して判断された場合、2度目以降のステップS8における走行中断時間をカウントアップする処理では、前回のステップS8の処理でタイマ262から読み出した時刻から、当該回のステップS8の処理でタイマ262から読み出した時刻までの時間を、時間T2に加算して、時間T2を更新する。
【0077】
ステップS4の判断において走行体5の走行が中断していると判断され、ステップS9の判断において走行中断時間が閾値未満であると判断された後、次なるステップS4の判断において走行体5の走行が中断していない(走行体5が走行している)と判断された場合、上述したようにステップS5で走行中断時間が初期化される。コントローラ26は、走行体5の走行が中断したとき、走行が中断した時間(時間T2)が閾値未満であれば、走行体5の走行が継続していると判断する。
【0078】
ステップS7の判断において、走行体5が走行を継続している時間T1が閾値以上であると判断された場合(ステップS7においてYES)、ステップS10に進み、コントローラ26が作業機2の自動制御を解除する。これにより、作業機2の自動制御が自動的に無効化され、手動モードで作業機2が駆動されることになる。この場合、バケット8の刃先8aが設計地形Dよりも下方にある状態でアーム7の操作指令を検出しても、ブーム6を強制的に上昇させる指令信号は出力されない。
【0079】
続いてステップS11において、作業機2の動作の自動制御を解除したことがオペレータへ通知される。
【0080】
図5は、表示部322に表示される画像の一例を示す模式図である。
図5に示される表示部322には、油圧ショベル100と、作業機2による作業対象である法面とが表示されている。
図6は、自動制御の解除に係る通知表示322Aを示す表示部322の模式図である。
図6に示される表示部322には、
図5に示される表示に重畳して、通知表示322Aが表示されている。オペレータは、表示部322に表示された通知表示322Aを視認することにより、作業機2の動作の自動制御が解除されたことを認識することができる。表示部322は、コントローラ26が作業機2の自動制御を解除したときに、当該自動制御の解除をオペレータに報知する、報知部としての機能を有している。
【0081】
作業機2の自動制御の解除をオペレータへ通知する報知部は、
図6に示される表示部322への通知表示322Aに限られない。油圧ショベル100は、たとえばランプなどの、オペレータに自動制御の解除を視覚的に報知する他の装置を、たとえばキャブ4内に備えていてもよい。油圧ショベル100は、報知部として、オペレータに音声で自動制御の解除を報知する聴覚化装置、たとえばブザーまたはスピーカなどを、たとえばキャブ4内に備えていてもよい。
【0082】
そして、処理を終了する(エンド)。
ステップS1の判断において作業機2の自動制御が有効でないと判断された場合(ステップS1においてNO)、自動制御が解除されることなく、そのまま処理を終了する(エンド)。ステップS9の判断において走行体5の走行が中断している時間T2が閾値以上であると判断された場合(ステップS9においてYES)には、走行体5が停止したと判断されて、自動制御が解除されることなく処理を終了する(エンド)。
【0083】
次に、
図4を参照して説明した作業機2の動作の自動制御を解除する処理の後に、作業機2の動作の自動制御を再開する制御について説明する。
図7は、自動制御を再開する処理を示すフローチャートである。
【0084】
図7に示されるように、ステップS21において、走行判定が行なわれる。この走行判定は、上述したステップS3の判断と同様に行なわれる。ステップS21の判断において走行体5が走行状態にあると判断された場合(ステップS21においてYES)、ステップS21の判断が繰り返される。ステップS21の判断で走行体5が走行状態にないと判断されても(ステップS21においてNO)、その時点では作業機2の動作の自動制御は開始されない。
【0085】
次にステップS22において、オペレータによる操作が行なわれる。オペレータは、
図2に示されるマンマシンインターフェース部32の入力部321を操作して、作業機2の動作を自動制御する設定にする。続いてステップS23において、マンマシンインターフェース部32からの出力を受けたコントローラ26は、作業機2の動作の自動制御を有効化する。
【0086】
ステップS21で走行状態がオフになっても、自動的に作業機2の動作の自動制御が有効化されるのではなく、ステップS22におけるオペレータの操作を受けて初めて、作業機2の動作の自動制御の有効化が実行される。
【0087】
続いてステップS24において、作業機2の動作の自動制御を開始したことがオペレータへ通知される。
【0088】
図8は、自動制御の再開に係る通知表示322Bを示す表示部322の模式図である。
図8に示される表示部322には、
図5に示される表示に重畳して、通知表示322Bが表示されている。オペレータは、表示部322に表示された通知表示322Bを視認することにより、作業機2の動作の自動制御が再開されたことを認識することができる。
【0089】
そして、処理を終了する(エンド)。
上述した実施形態に係る作業機械の特徴的な構成および作用効果についてまとめて説明すると、以下の通りである。なお、実施形態の構成に参照符号を付すが、これは一例である。
【0090】
油圧ショベル100は、
図2に示されるように、コントローラ26を備えている。コントローラ26は、作業機2の動作を自動制御する。コントローラ26は、
図4に示されるように、走行体5の走行状態に基づいて、作業機2の動作の自動制御を解除する。具体的には、コントローラ26は、走行体5の走行が所定時間継続したことを条件として、作業機2の動作の自動制御を解除する。
【0091】
コントローラ26が、走行体5の動作条件に基づいて、作業機2の動作の自動制御の有効状態を維持しておく必要がないと判断して、自動で作業機2の自動制御を解除する。オペレータは、作業機2の自動制御を手動で解除する操作をしなくても、走行時に作業機2を自在に操作することが可能である。したがって実施形態の構成を備える油圧ショベル100では、走行体5が走行する際のオペレータの作業が省力化されている。
【0092】
図4に示されるように、コントローラ26は、走行体5の走行が中断した時間が閾値未満であれば、走行が継続していると判断する。走行中に方向転換する場合など、走行レバーが一時的に中立位置に戻される場合があり、このような短時間の走行の中断が検出されても、実際には走行は中断しておらず走行が継続していると判断する。これにより、走行体5の走行が所定時間継続したことを、より精度よく検出することができる。
【0093】
図6に示されるように、表示部322に通知表示322Aが表示されることにより、作業機2の自動制御が解除されたことがオペレータに報知される。オペレータは、表示部322の通知表示322Aを視認することにより、自動制御が解除されたことを認識することができる。
【0094】
(第二実施形態)
図9は、第二実施形態に基づく自動制御を解除する処理を示すフローチャートである。
図9に示される第二実施形態の作業機2の自動制御を解除する処理は、
図4を参照して説明した第一実施形態と比較して、走行体5の走行状態の判断に走行時間に替えて走行距離を用いる点で異なっている。
【0095】
具体的には、ステップS1における自動制御が有効か否かの判断の後、ステップS32において、走行距離が初期化される。コントローラ26は、走行体5が連続して走行している距離TDを設定する。コントローラ26は、ステップS32の処理を実行する時点において、TD=0と設定する。
【0096】
コントローラ26は、油圧ショベル100の現在位置を検出し、この現在位置においてTD=0と設定してもよい。油圧ショベル100の現在位置は、たとえば、グローバル座標系における現時点でのアンテナ21の設置位置を検出することにより、求めることができる。またたとえば、作業現場における所定の基準位置からの距離を計測することにより、油圧ショベル100の現在位置を求めてもよい。またたとえば、カメラで油圧ショベル100を撮像した撮像画像を画像解析することにより、油圧ショベル100の現在位置を求めてもよい。カメラは、作業現場の所定地点に配置されてもよく、ドローンに搭載されてもよい。設計地形Dに対する油圧ショベル100の相対位置に基づいて、油圧ショベル100の現在位置を求めてもよい。
【0097】
または、コントローラ26は、
図2に示されるIMU24の出力から走行体5の走行速度を求め、タイマ262から現在時刻を読み出し、速度と時間との乗算によって走行体5の走行距離を算出してもよい。
【0098】
ステップS5における走行中断時間を初期化する処理の後、ステップS36において、走行距離のカウントアップが行なわれる。コントローラ26は、ステップS36の処理を実行する時点での現在位置を検出し、ステップS32でD=0と設定した位置からの距離を走行距離TDに加算して、走行距離TDを更新してもよい。またはコントローラ26は、タイマ262から現在時刻を読み出し、ステップS32でTD=0と設定した時刻からタイマ262から読み出した時刻までの時間と走行体5の走行速度とを掛けることにより距離を算出し、この算出した距離を走行距離TDに加算して、走行距離TDを更新してもよい。
【0099】
続いてステップS37において、走行距離TDが閾値以上であるか否かの判断が行なわれる。コントローラ26は、走行体5が連続して走行する距離の閾値をメモリ261から読み出す。コントローラ26は、ステップS36において更新された走行距離TDと、距離の閾値とを比較して、走行距離TDが閾値以上であるか否かを判断する。コントローラ26は、走行体5が連続して所定距離走行したか否かを判断する。
【0100】
走行体5が連続して走行する距離の閾値は、たとえば、10メートル以上であってもよく、好ましくは50メートル以上であってもよい。
【0101】
ステップS37の判断において走行体5の連続走行距離が閾値未満であると判断された場合(ステップS37においてNO)、ステップS4に戻り、走行体5の走行が中断しているか否かの判断が再度行なわれる。ステップS37の判断において、走行体5の連続走行距離が閾値以上であると判断された場合(ステップS37においてYES)、ステップS10に進み、コントローラ26が作業機2の自動制御を解除する。
【0102】
(第三実施形態)
図10は、第三実施形態に基づく自動制御を解除する処理を示すフローチャートである。
図10に示される第三実施形態の作業機2の自動制御を解除する処理は、走行体5の走行状態の判断に走行体5が走行している場所を用いる点で、第一および第二実施形態とは異なっている。
【0103】
具体的には、走行時間が用いられないため、
図4に示されるステップS2の走行時間を初期化する処理、およびステップS6の走行時間をカウントアップする処理を実行する必要がない。また、走行距離が用いられないため、
図9に示されるステップS32の走行距離を初期化する処理、およびステップS36の走行距離をカウントアップする処理を実行する必要がない。
【0104】
そのため、ステップS1の判断において作業機2の動作の自動制御が有効であると判断された場合、続いてステップS3の判断が行なわれる。ステップS4の判断において走行体5の走行が中断していないと判断された場合、ステップS47に進み、走行体5が作業エリア内を走行しているか否かの判断が行なわれる。コントローラ26は、メモリ261に記録されている作業エリアと、油圧ショベル100の現在位置とを比較して、走行状態にある油圧ショベル100がどの位置を走行しているのかを判別する。
【0105】
ステップS47の判断において走行体5が作業エリア内を走行していると判断された場合(ステップS47においてYES)、ステップS4に戻り、走行体5の走行が中断しているか否かの判断が再度行なわれる。ステップS47の判断において、走行体5が作業エリア外を走行していると判断された場合(ステップS47においてNO)、ステップS10に進み、コントローラ26が作業機2の自動制御を解除する。
【0106】
これまでの実施形態の説明では、油圧ショベル100がコントローラ26を備えており、油圧ショベル100に搭載されているコントローラ26が作業機2の動作の自動制御を解除する例について説明した。作業機2の動作の自動制御を解除するコントローラは、必ずしも油圧ショベル100に搭載されていなくてもよい。
【0107】
図11は、油圧ショベル100を含むシステムの概略図である。油圧ショベル100に搭載されたコントローラ26とは別に設けられた外部のコントローラ260が、作業機2の動作の自動制御を解除する制御を実行するシステムを構成してもよい。コントローラ260は、油圧ショベル100の作業現場に配置されてもよく、油圧ショベル100の作業現場から離れた遠隔地に配置されてもよい。
【0108】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
1 本体、2 作業機、3 旋回体、4 キャブ、4S 運転席、5 走行体、5Cr 履帯、5M 走行モータ、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、8a 刃先、10 ブームシリンダ、11 アームシリンダ、12 バケットシリンダ、21 アンテナ、21A 第1アンテナ、21B 第2アンテナ、23 グローバル座標演算部、25 操作装置、26,260 コントローラ、27 制御弁、31 エンジン、32 マンマシンインターフェース部、33 油圧ポンプ、60 油圧アクチュエータ、64 方向制御弁、65 スプールストロークセンサ、66,67 圧力センサ、100 油圧ショベル、200 制御システム、251 第1走行レバー、252 第2走行レバー、253 作業機レバー、261 メモリ、262 タイマ、321 入力部、322 表示部、322A,322B 通知表示、450 パイロット油路、C 現況地形、D 設計地形、RX 旋回軸、T1,T2 時間、TD 走行距離。