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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】配線・配管材支持具
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/137 20060101AFI20221220BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20221220BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
F16L3/137
H02G3/30
F16B2/08 U
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018240400
(22)【出願日】2018-12-23
(65)【公開番号】P2020101240
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太郎
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250258(JP,A)
【文献】実開平03-112104(JP,U)
【文献】特開平11-166668(JP,A)
【文献】特開2016-052211(JP,A)
【文献】実開昭58-002482(JP,U)
【文献】実開平03-038409(JP,U)
【文献】特表2014-532152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/137
H02G 3/30
F16B 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物への固定部と、該固定部から延設され、上面側に配線・配管材を載置する載置面が形成された、前記配線・配管材を下方から支持する支持腕と、からなる本体と、
前記本体から延設され、前記支持腕に載置された前記配線・配管材を該支持腕とともに取り囲む帯板状のバンド部と、
を有する配線・配管材支持具であって、
前記本体には、前記バンド部が挿通される挿通空間及び挿通された該バンド部の外面に形成された被係止部に係止して該バンド部がその基端側に抜け出すのを規制する係止爪と、前記支持腕上の前記配線・配管材を取り囲むとともに前記挿通空間を通過した前記バンド部の先端側が掛け止めされる被掛止部と、が設けられ、
前記バンド部の先端側に、前記被掛止部に掛け止め可能な掛止部が設けられ
前記支持腕には、反載置面方向に向けて立設する補強壁部が設けられ、
前記被掛止部は、前記補強壁部の先端縁に凹設形成されており、
前記バンド部の掛止部は該バンド部の幅方向両側に突出した一対の棒状部で形成されて、該バンド部の先端はT字状を成し、
前記補強壁部は、前記バンド部の幅より大きい間隔をあけて一対設けられ、前記各補強壁部に、前記バンド部の掛止部の一対の棒状部がそれぞれ嵌着可能な前記被掛止部が設けられていることを特徴とする配線・配管材支持具。
【請求項2】
構造物への固定部と、該固定部から延設され、上面側に配線・配管材を載置する載置面が形成された、前記配線・配管材を下方から支持する支持腕と、からなる本体と、
前記本体から延設され、前記支持腕に載置された前記配線・配管材を該支持腕とともに取り囲む帯板状のバンド部と、
を有する配線・配管材支持具であって、
前記本体には、前記バンド部が挿通される挿通空間及び挿通された該バンド部の外面に形成された被係止部に係止して該バンド部がその基端側に抜け出すのを規制する係止爪と、前記支持腕上の前記配線・配管材を取り囲むとともに前記挿通空間を通過した前記バンド部の先端側が掛け止めされる被掛止部と、が設けられ、
前記バンド部の先端側に、前記被掛止部に掛け止め可能な掛止部が設けられ
前記本体の被掛止部は、前記バンド部における前記本体の挿通空間から突出した先端側の長さに応じて掛け止め位置を変更できるように複数設けられていることを特徴とする配線・配管材支持具。
【請求項3】
前記本体の被掛止部は、前記支持腕における反載置面側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の配線・配管材支持具。
【請求項4】
前記支持腕には、反載置面方向に向けて立設する補強壁部が設けられ、
前記被掛止部は、前記補強壁部の先端縁に凹設形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の配線・配管材支持具。
【請求項5】
前記バンド部の掛止部は該バンド部の幅方向両側に突出した一対の棒状部で形成されて、該バンド部の先端はT字状を成し、
前記補強壁部は、前記バンド部の幅より大きい間隔をあけて一対設けられ、前記各補強壁部に、前記バンド部の掛止部の一対の棒状部がそれぞれ嵌着可能な前記被掛止部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の配線・配管材支持具。
【請求項6】
前記バンド部は、前記本体の固定部側を基端として延設され、
前記本体の挿通空間は、前記支持腕の先端側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の配線・配管材支持具。
【請求項7】
前記バンド部の被係止部は、前記支持腕の載置面と対面する側と反対側の面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の配線・配管材支持具。
【請求項8】
前記本体の固定部は、天井壁面にビスあるいは鋲で固定可能であり、
前記支持腕の先端は、固定した前記天井壁面との間に前記配線・配管材を通過可能とする隙間を形成した立ち壁を備え、
前記本体の係止爪は、前記立ち壁の基端側に設けられ、
前記バンド部は、自然状態で、前記天井壁面に沿うとともに前記基端から前記立ち壁の先端を越える長さに形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の配線・配管材支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井等の壁面や吊りボルトなどの構造物に固定されて配線・配管材を支持する配線・配管材支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーブルや配水管等の配線・配管材は、建物の壁面や天井から吊り下げられた吊りボルト等の構造物に支持具を固定し、この支持具に支持されることにより配線、配管されている。この種の支持具として、例えば特許文献1、2に記載のものが知られている。これらの支持具は、構造物に固定される固定部と配線・配管材を支持する本体とを備え、本体に一体または別体に設けた結束部あるいは結束部材としての帯板状のバンドで配線・配管材を包囲結束することにより配線・配管材を支持している。ここで、バンドは、基端が本体に設けられていて、配線・配管材を包囲した後、先端が本体の挿通部内に挿通され係止されることにより配線・配管材を結束している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-60086号公報
【文献】特開2016-52211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バンドは、配線・配管材を結束後に先端側に余長が生じるが、従来の支持具は、結束後のバンドの余長はそのまま垂直下方に垂れ下がった状態におかれる。このため、配線・配管材の支持箇所において見栄えが良くなかった。特に、バンドは、通常、結束時の作業性や支持される配線・配管材の数に余裕をもたせて長さを設定するから、結束後、相当長さの余長が生じるため、見栄えを著しく損ねることも多かった。
【0005】
そこで、本発明は、配線・配管材を結束後に生じるバンドの余長の垂れ下がりにより見栄えが低下するのを防止できる配線・配管材支持具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1及び請求項2の配線・配管材支持具は、構造物への固定部と、該固定部から延設され、上面側に配線・配管材を載置する載置面が形成された、前記配線・配管材を下方から支持する支持腕と、からなる本体と、前記本体から延設され、前記支持腕に載置された前記配線・配管材を該支持腕とともに取り囲む帯板状のバンド部と、を有するものであって、前記本体には、前記バンド部が挿通される挿通空間及び挿通された該バンド部の外面に形成された被係止部に係止して該バンド部がその基端側に抜け出すのを規制する係止爪と、前記支持腕上の前記配線・配管材を取り囲むとともに前記挿通空間を通過した前記バンド部の先端側が掛け止めされる被掛止部と、が設けられ、前記バンド部の先端側に、前記被掛止部に掛け止め可能な掛止部が設けられている。
そして、請求項1の配線・配管材支持具は、特に、前記支持腕には、反載置面方向に向けて立設する補強壁部が設けられ、前記被掛止部は、前記補強壁部の先端縁に凹設形成されており、前記バンド部の掛止部は該バンド部の幅方向両側に突出した一対の棒状部で形成されて、該バンド部の先端はT字状を成し、前記補強壁部は、前記バンド部の幅より大きい間隔をあけて一対設けられ、前記各補強壁部に、前記バンド部の掛止部の一対の棒状部がそれぞれ嵌着可能な前記被掛止部が設けられている。
また、請求項2の配線・配管材支持具は、特に、前記本体の被掛止部が、前記バンド部における前記本体の挿通空間から突出した先端側の長さに応じて掛け止め位置を変更できるように複数設けられている。
【0007】
請求項3の配線・配管材支持具は、特に、前記本体の被掛止部が、前記支持腕における反載置面側に形成されている。
請求項4の配線・配管材支持具は、特に、前記支持腕に、反載置面方向に向けて立設する補強壁部が設けられ、前記被掛止部は、前記補強壁部の先端縁に凹設形成されている。
請求項5の配線・配管材支持具は、特に、前記バンド部の掛止部は該バンド部の幅方向両側に突出した一対の棒状部で形成されて、該バンド部の先端はT字状を成し、前記補強壁部は、前記バンド部の幅より大きい間隔をあけて一対設けられ、前記各補強壁部に、前記バンド部の掛止部の一対の棒状部がそれぞれ嵌着可能な前記被掛止部が設けられている
【0008】
請求項6の配線・配管材支持具は、特に、前記バンド部が、前記本体の固定部側を基端として延設され、前記本体の挿通空間は、前記支持腕の先端側に設けられている。
請求項7の配線・配管材支持具は、特に、前記バンド部の被係止部は、前記支持腕の載置面と対面する側と反対側の面に形成されている。
請求項8の配線・配管材支持具は、特に、前記本体の固定部は、天井壁面にビスあるいは鋲で固定可能であり、前記支持腕の先端は、固定した前記天井壁面との間に前記配線・配管材を通過可能とする隙間を形成した立ち壁を備え、前記本体の係止爪は、前記立ち壁の基端側に設けられ、前記バンド部は、自然状態で、前記天井壁面に沿うとともに前記基端から前記立ち壁の先端を越える長さに形成されている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1及び請求項2の発明は、支持腕上の配線・配管材を取り囲むとともに挿通空間を通過したバンド部の先端側の掛止部は本体の被掛止部に掛け止めされるので、配線・配管材を結束後のバンド部の余長が下方に垂れ下がるのが防止され、配線・配管材の支持箇所における見栄えが向上する。
加えて、請求項2の発明は、被掛止部が複数設けられているので、掛止部をバンド部の余長に応じて選択して被掛止部に掛け止めすることができる。
【0010】
請求項3の発明は、本体の被掛止部が、支持腕における反載置面側に形成されているので、配線・配管材の載置の邪魔になるのが防止される。
請求項4の発明は、支持腕に補強壁部が設けられ、被掛止部は、補強壁部の先端縁に凹設形成されているから、支持腕を補強できるとともに、バンド部の掛止部を掛け止めることもできる。
請求項5の発明は、バンド部の掛止部は、バンド部の幅方向両側に突出した一対の棒状部で形成されてバンド部の先端がT字状を成すので、バンド部を補強壁部間によじれることなく配置可能であるとともに、掛止部を被掛止部に整然と安定して掛け止めることができる
【0011】
請求項6の発明は、バンド部は、本体の固定部側を基端として延設され、本体の挿通空間は、支持腕の先端側に設けられているので、バンド部が長くても支持腕は一定長さのものとすることができ、本体を小型化できる。また、支持具を天井壁面に固定する場合に、固定部が邪魔にならず配線・配管材をバンド部の長手方向に挿入して支持腕上に容易に配置収容することができる。
請求項7の発明は、バンド部の被係止部が、支持腕の載置面と対面する側と反対側の面に形成されているので、本体の係止爪が前述の立ち壁の基端に設けられている場合には、バンド部は、配線・配管材を包囲するように屈曲して掛け止めされることにより生じる弾性的な反力により、係止爪に押し付けられ、緩まない。
請求項8の発明は、バンド部が天井壁面に沿うとともに基端側から立ち壁の先端を越える長さに形成されているので、配線・配管材を立ち壁と天井壁面との隙間を通過させて支持腕上に載置し収容する際に、バンド部が隙間に介在することから、配線・配管材が直接天井壁面と当接するのが回避され、配線・配管材が天井壁面に擦れて傷付くのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の配線・配管材支持具を示し、(a)は斜め上方から見た斜視図、(b)は斜め下方から見た斜視図である。
図2図1の配線・配管材支持具を背面側から見た斜視図である。
図3図1の配線・配管材支持具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は底面図である。
図4図3(a)のA-A切断線による断面図である。
図5図1の配線・配管材支持具を天井壁面に固定してケーブルを支持する方法を説明する断面図である。
図6図1の配線・配管材支持具でケーブルを複数支持した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。本実施形態では、配線・配管材支持具は、天井壁面に固定されて配線・配管材を支持するものを示す。また、支持される配線・配管材として、3心の偏平形状のケーブルを例示する。なお、以下においては、図3(b)における上下方向を実施品の上下方向として説明する。
【0014】
図1乃至図4において、本実施形態の配線・配管材支持具(以下、単に「支持具」という。)は、構造物への固定部20と、配線・配管材であるケーブル60を下方から支持する支持腕30と、からなる本体10と、本体10から延設され、支持腕30に載置されたケーブル60を支持腕30とともに取り囲む帯板状のバンド部50と、を有している。本体10には、バンド部50が挿通される挿通空間39及びバンド部50がその基端51側に抜け出すのを規制する係止爪42と、バンド部50の先端側が掛け止めされる被掛止部45と、が設けられている。バンド部50の先端側には、本体10の被掛止部45に掛け止め可能な掛止部54が設けられている。支持具1は、合成樹脂により一体に形成されている。以下、各構成部材について詳細に説明する。
【0015】
本体10の固定部20は、平板状の固定板部21と、固定板部21の一部を除く周縁から下方に垂設された周壁22からなる。固定板部21の下面側には所定高さの鋲打ち用の内側円筒23が立設され、内側円筒23の外周側にはこれより大径で高さの低い外側円筒24が内側円筒23から離間して同心に立設されている。内側円筒23は外周面に5枚のブレードが付設されている。そして、固定板部21には鋲80あるいはビスが貫通する、内側円筒23と同心の固定孔25が設けられていて、支持具1を天井壁面70にビスあるいは鋲80で固定できるようになっている。
【0016】
本体10の支持腕30は、固定部20の周壁22の下端部から水平方向に一体に延設され、更にその先端側において垂直上方、更には斜め上方に山形に立ち上がって延びている。支持腕30の水平部31の上面側にはケーブル60が載置される載置面32が形成されている。支持腕30の垂直部33と斜め上方に立ち上がった山形部34は、請求項の立ち壁を構成しており、立ち壁35は、山形部34の頂部34aと天井壁面70との間にケーブル60が通過可能な隙間36が形成されるようになっている。立ち壁35の垂直部33は、図4に示すように、その上端部33aを基部としてこれを軸に水平方向すなわち図4の左右方向に弾性的に撓み変形可能な短冊板状の弾性係止片37が一体に設けられている。弾性係止片37は、垂直壁面38から間隔をおいて平行に垂設されており、幅方向両側に垂直方向のスリット37aが形成されることによって、垂直部33の上端部33aを軸に撓み可能となっている。
【0017】
支持腕30の先端側である、水平部31と立ち壁35の弾性係止片37との間には、バンド部50が挿通される挿通空間39が形成されている。挿通空間39は、バンド部50をその幅方向から受け入れ可能とすべく側方すなわち図3(b)、図4の手前側に臨む開口40が形成されている。挿通空間39において、開口40とは反対側の空間は垂直の壁面からなる閉塞板部41で閉塞されている。
【0018】
立ち壁35の基端側35aすなわち下端側において弾性係止片37の挿通空間39側の面には挿通空間39内に突出してバンド部50がその基端51側に抜け出すのを規制する係止爪42が設けられている。係止爪42は下面が水平面を成し、弾性係止片37の幅方向全体に水平方向に形成されている。一方、支持腕30の水平部31の先端部は、弾性係止片37の平面と平行して縦壁43が設けられており、挿通空間39の幅を狭くして、挿通空間39内を挿通するバンド部50の後述する被係止部53が確実に弾性係止片37の係止爪42と当接し係止するようになっている。
【0019】
支持腕30の水平部31には、反載置面方向すなわち図3(b)、図4の下方に向けて補強壁部44が立設されている。補強壁部44は、バンド部50の幅より大きい間隔をあけて左右に一対設けられている。各補強壁部44には、バンド部50の後述する掛止部54の一対の棒状部54a,54aがそれぞれ嵌着可能な被掛止部45が設けられている。この被掛止部45は、各補強壁部44の先端縁すなわち図3(b)、図4においては下端縁を半円より僅かに大きい円弧状の窪みに凹設することにより形成されている。被掛止部45は、バンド部50における挿通空間39から突出した先端側の長さすなわち余長55の長さに応じてバンド部50の掛止部54の掛け止め位置を変更できるよう複数設けられており、本実施形態では左右一対の補強壁部44,44の長さ方向の同じ位置に等間隔で4個ずつ設けられている。
【0020】
支持腕30の載置面32においてバンド部50の基端51の近傍には、支持腕30から上方に小突起46が立設されている。この小突起46は、バンド部50を結束時に引き締めた際に、バンド部50が極度に折れ曲がるのを防止するものであるが、必ずしも要するものではない。
【0021】
次に、バンド部50は、支持腕30に載置されたケーブル60を支持腕30とともに取り囲むものであり、一定幅の帯板状に形成され、本体10の固定部20側を基端51として延設されている。バンド部50は、自然状態で、図5(a)に示すように、天井壁面70に沿うとともに、バンド部50の基端51から支持腕30の立ち壁35の先端を越える長さに形成され、少なくとも先端の掛止部54が支持腕30の被掛止部45に掛け止め可能な長さに形成されている。
【0022】
バンド部50において支持腕30の載置面32と対面する側とは反対側の面である外面52には、立ち壁35の基端側35aに設けられた係止爪42と係止する被係止部53が形成されている。一方、バンド部50において外面52の反対側面である、支持腕30の載置面32と対面する側の面は平滑面で形成されている。各被係止部53は、図4に示すように、後端側が外面52と直交する垂直面を成す断面形状一定の小突条でバンド部50の幅方向全体に形成されており、バンド部50の長手方向に一定間隔で多数形成されている。各被係止部53は、支持腕30の係止爪42と係止したとき、後端面が係止爪42の水平面と面当接し、バンド部50が基端51に抜け出すのが防止されている。
【0023】
バンド部50の先端にはその幅方向両側に突出した一対の棒状部54a,54aからなる掛止部54が設けられており、バンド部50の先端はT字状を成している。掛止部54は、断面形状一定の円形に形成され、支持腕30の円弧状の被掛止部45内に弾性的な圧入により嵌着され掛止される。これにより、バンド部50の余長55となる先端側は支持腕30に掛け止めされる。
【0024】
次に、このように構成された支持具1を使用してケーブル60を支持し天井壁面70に沿って配線する方法を図5に基づいて説明する。
まず、支持具1を天井壁面70の所定位置にあてがった後、固定部20の固定孔25に鋲80を打ち込みあるいはビス締めして、図5(a)に示すように、支持具1を天井壁面70に固定する。図5は鋲80を使用して支持具1を天井壁面70に固定した場合を示す。この場合、鋲80を固定部20の内側円筒23及び固定孔25に配置してガス銃を使用して打ち付けると、図5に示すように、打撃圧で内側円筒23は押し潰され、潰された樹脂は外側円筒24内に流れる。ここで、内側円筒23を形成したのは、打撃圧で固定孔25の部分に亀裂が入ったり破断するのを防止するためである。なお、ガス銃による鋲80打ちでなくビス締めする場合は、固定部20には単に固定孔25のみを設けてもよい。
【0025】
支持具1を天井壁面70に固定すると、図5(a)に示すように、支持腕30の立ち壁35の先端の山形部34と天井壁面70との間にはケーブル60が通過可能な隙間36が形成され、バンド部50は、自然状態で天井壁面70に沿って直線状に延び、先端は立ち壁35の先端の山形部34を越える。この後、ケーブル60を立ち壁35の山形部34と天井壁面70との隙間36から水平方向に挿入し、支持腕30の載置面32上に載置する。
【0026】
次に、バンド部50をその基端51を軸にして図5の手前側に引き出しつつ、長手方向中間部分を側方から挿通空間39の側方の開口40から挿通空間39内に挿入する。このとき、挿通空間39において開口40とは反対側の空間は閉塞板部41で閉塞され、バンド部50の掛止部54である一対の棒状部54a,54aの一方は閉塞板部41と干渉するため、バンド部50は先端側から長手方向に挿通空間39内を通過させることはできない。したがって、バンド部50は、上述のように、長手方向中間部分を側方から挿通空間39の開口40から挿通空間39内に挿入することになる。本実施形態では、このように、バンド部50を側方から開口40内に挿入して挿通空間39を通過させるようにしたことにより後述の作用を奏する。なお、一旦バンド部50の長手方向中間部分を挿通空間39の側方の開口40から挿通空間39内に挿入した後は、バンド部50の先端を下方に引張ることによりバンド部50は挿通空間39内を長手方向に移動させることができる。
【0027】
これにより、バンド部50は、支持腕30とともにケーブル60を包囲するように屈曲し、一方、バンド部50における挿通空間39を通過した余長55は、図5(b)に示すように、垂直下方に垂れ下がる。そして、バンド部50の被係止部53はいずれかの位置で挿通空間39内の係止爪42と係止する。これによって、バンド部50は、基端51側に抜け出そうとするのが規制される。
【0028】
なお、この点に関して更に述べれば、バンド部50の被係止部53は、支持腕30の載置面32と対面する側と反対側の面である外面52側に形成されている。そして、挿通空間39を通過したとき、バンド部50は、ケーブル60を包囲するように湾曲状に屈曲したことにより元の水平姿勢に戻ろうとする弾性復帰力が生じる。これによりバンド部50の外面52側に形成された被係止部53は係止爪42との当接面において強く係止爪42に押し付けられるため、係止が緩むのが防止され、安定した係止状態を維持できる。
【0029】
次に、挿通空間39の下方に垂れ下がったバンド部50の余長55を支持腕30の下方に向けて屈曲させて先端の掛止部54を、図5(c)に示すように、支持腕30の補強壁部44の被掛止部45のいずれかに強制的に押し付けて嵌着し掛け止めする。このとき、バンド部50の余長55は下方に湾曲状にたるませた状態に屈曲させて掛け止めるのではなく、図5(c)に示すように、支持腕30の下部面に沿わせた状態で掛け止める。これにより、バンド部50の余長55の見栄えは向上する。図5は、1本のケーブル60が結束される場合の支持具1を示しており、バンド部50の掛止部54は支持腕30の左から2つ目の被掛止部45に掛け止めされる。
【0030】
なお、支持腕30の載置面32においてバンド部50の基端51の近傍には小突起46が立設されているので、掛止部54を被掛止部45に掛け止めしてバンド部50を引き締めた際に、バンド部50が極度に折れ曲がるのが防止される。
【0031】
このように一旦支持されたケーブル60を支持具1から取り外すには、バンド部50の掛止部54を支持腕30の被掛止部45から抜き出し、立ち壁35の弾性係止片37の下端を指で垂直壁面38側に押し付けてバンド部50の被係止部53と立ち壁35の係止爪42との係止を解除しつつ、バンド部50の長手方向中間部分を挿通空間39の側方の開口40から手前側に引き出して結束を解除し、天井壁面70と立ち壁35との隙間36を通してケーブル60を取り出せばよい。
【0032】
図6は、4本のケーブル60が結束された状態を示す。この場合、バンド部50の余長55は図5の場合に比べて短かくなり、掛止部54は支持腕30の右から1つ目の被掛止部45に掛け止めされ、バンド部50の余長55は同様に支持腕30の下部面に沿わせた状態で掛け止めされる。
【0033】
次に、本実施形態の支持具1の作用を説明する。
支持具1は、バンド部50の先端の掛止部54が支持腕30の被掛止部45に掛け止めされるので、ケーブル60を結束後のバンド部50の余長55が垂直下方に垂れ下がるのが防止され、ケーブル60の支持箇所における見栄えが向上する。
【0034】
また、被掛止部45は、支持腕30における反載置面側に形成されているので、ケーブル60の載置の邪魔にならない。
更に、被掛止部45は、補強壁部44の先端縁に形成されているから、支持腕30が補強され、バンド部50の掛止部54は安定して被掛止部45に掛け止めされる。
加えて、被掛止部45は、複数設けられているので、掛止部54をバンド部50の余長55に応じて選択して被掛止部45に掛け止めすることができ、バンド部50の余長55を支持腕30の下部面に沿わせた状態で掛け止めでき、見栄えが向上する。
【0035】
そして、本体10の挿通空間39は、側方に開口40が形成されているので、バンド部50をその幅方向から受け入れることが可能である。これにより、バンド部50をその途中で幅方向から本体10の挿通空間39内に挿通させることができるので、結束時の作業性が向上し、また、バンド部50の掛止部54は、バンド部50の幅方向両側に突出した一対の棒状部54a,54aで形成されてバンド部50の先端がT字状を成しているので、バンド部50を補強壁部44間によじれることなく配置可能であるとともに、掛止部54を被掛止部45に整然と安定して掛け止めすることができる。
【0036】
更に、バンド部50は、本体10の固定部20側を基端51として延設され、本体10の挿通空間39は、支持腕30の先端側に設けられているので、バンド部50が長くても支持腕30を一定長さとすることができ、本体10を小型化できる。また、支持具1を天井壁面70に固定する場合に、固定部20が邪魔にならずケーブル60をバンド部50の長手方向に挿入して支持腕30上に配置収容し易い。すなわち、逆に、バンド部50は、本体10の支持腕30の先端側を基端として固定部20方向に延設され、本体10の挿通空間39は、固定部20側に設けられているとすれば、成形においてバンド部50が長いとそれに応じて支持腕30も長くする必要があるため、本体10は全体として大型のものとなる。また、支持具1を天井壁面70に固定する場合に、固定部20が邪魔になり、ケーブル60を支持腕30上に配置しにくい。但し、本発明を実施する場合には、このように構成するのを妨げるものでもない。
【0037】
加えて、バンド部50は、天井壁面70に沿うとともに基端51側から立ち壁35の先端を越える長さに形成されているので、ケーブル60を支持腕30の立ち壁35と天井壁面70との隙間36を通過させて支持腕30上に載置し収容する際に、ケーブル60が天井壁面70に擦られて傷付くのが防止される。すなわち、ケーブル60と天井壁面70との間にはバンド部50が介在するため、ケーブル60が天井壁面70に直接擦れるのが防止され、かつバンド部50における支持腕30の載置面32と対向する側の面は平滑面で形成されているので、ケーブル60を隙間36から挿入し支持腕30の載置面32に載置する際にケーブル60が傷付くのが防止される。また、ケーブル60を結束した後においても、バンド部50は平滑面側がケーブル60の外面に圧接するので、ケーブル60が傷付くのが防止される。
【0038】
ところで、上記実施形態では、バンド部50の掛止部54は、バンド部50の幅方向両側に突出した一対の棒状部54a,54aで形成され、バンド部50の先端はT字状を成し、支持腕30の被掛止部45は、補強壁部44の下端縁に凹設形成されて、掛止部54が被掛止部45に弾性的に嵌着される構造になっているが、両者の掛止手段はこの形態に限られるものではなく、例えば、両者を互いに掛合する鈎状に形成したものとし、あるいは、被掛止部を掛止孔で形成し、掛止部をこの掛止孔に掛止する鈎フックで形成したものとしてもよい。
【0039】
加えて、掛け止め手段としては、前述の掛止部54と被掛止部45との嵌着などの掛止手段の他、広義には、両面接着テープによる接着、あるいは磁石を利用した接着などの手段を採用してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、支持腕30には補強壁部44が設けられているが、補強壁部44は設けないものとしてもよい。
【0041】
そして、上記実施形態の挿通空間39は、側方に開口40が形成され、バンド部50が挿通空間39の幅方向から受け入れ可能に形成されているが、本発明を実施する場合には、これに限られるものではなく、例えば、バンド部50の掛止部を一対の棒状部54a,54aでなく先端に小孔を有するフック状のものとし、支持腕30の被掛止部は掛止部の小孔が掛け止めされる突起で形成するなどして、バンド部50の掛止部は挿通空間39をバンド部50の長手方向に通過可能なものとしてもよい。
【0042】
更に、上記実施形態の固定部20は、鋲80あるいはビスにより天井壁面70に固定しているが、接着剤による接着などの手段により固定してもよい。
【0043】
また、立ち壁35の基端側35aにはバンド部50が基端51側に抜け出すのを規制する係止爪42が設けられているが、係止爪42は立ち壁35の基端側35aと対向する水平部31の先端の縦壁43側に設けるのを妨げるものではない。
【0044】
なお、上記実施形態では、バンド部50は、自然状態で、天井壁面70に沿って水平直線状に延びるものであって、バンド部50と支持腕30の立ち壁35との間にはケーブル60をそのまま通過させることができるものであるが、成形後の収縮などにより、僅かに湾曲状に屈曲して天井壁面70から少し離間することもあり、その場合は、バンド部50を支持腕30の立ち壁35との間を押し広げるように弾性変形により変位させてケーブル60を通過させる。
【0045】
更には、成形後の状態によっては、バンド部50は、立ち壁35の先端である山形部34の頂部34aに弾性的に当接するまで湾曲することがあり、この場合は、バンド部50と立ち壁35との間は仮閉鎖され、この間にケーブル60を通過させるときは、バンド部50を弾性変形により更に大きく変位させてバンド部50と立ち壁35との間隔を押し広げることになる。
ここで、バンド部50が立ち壁35の先端に弾性的に当接するこの例、及び前述の、バンド部50が僅かに湾曲状に屈曲して天井壁面70から少し離間する例においても、バンド部50は、自然状態で、天井壁面70に沿っているといえる。
【0046】
加えて、上記実施形態の支持具1は、ケーブル60を天井壁面70に沿って支持するものを示しているが、本発明は、吊りボルトなどの構造物に取り付ける場合にも同様に適用することができる。なお、支持具1を吊りボルトに固定する場合には、例えば、図示しないが、断面円弧状に湾曲し一部が開口した一対の挟持片を開口位置を相反させて基台の上下に間隔をあけて設け、吊りボルトに直交方向からあてがってから水平方向に回動させて一対の挟持片内に吊りボルトを圧入し弾性的に挟持させて吊りボルトに固定することができる。
また、支持される部材としては、ケーブル60の他、各種の配線・配管材を支持させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 支持具 45 被掛止部
10 本体 50 バンド部
20 固定部 51 基端
30 支持腕 52 外面
32 載置面 53 被係止部
35 立ち壁 54 掛止部
35a 基端側 54a 棒状部
39 挿通空間 60 ケーブル(配線・配管材)
40 開口 70 天井壁面(構造物)
42 係止爪 80 鋲
44 補強壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6