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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】複合管
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/11 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
F16L11/11
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018522439
(86)(22)【出願日】2017-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2017020339
(87)【国際公開番号】W WO2017213007
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2016115523
(32)【優先日】2016-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三觜 浩平
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-057790(JP,A)
【文献】特開平09-210291(JP,A)
【文献】特開2004-044780(JP,A)
【文献】実開昭60-010984(JP,U)
【文献】特開平03-292487(JP,A)
【文献】実開平03-091596(JP,U)
【文献】特開2010-210041(JP,A)
【文献】特開2004-322583(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04128654(DE,A1)
【文献】登録実用新案第3183804(JP,U)
【文献】特開2012-104727(JP,A)
【文献】特開2008-175270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の管体と、
管状とされて前記管体の外周を覆い、径方向外側へ凸となる環状の山部と、軸方向の長さが前記山部よりも短く径方向外側が凹となる環状の谷部とが、前記管体の軸方向に交互に形成されて蛇腹状とされ、前記管体の外周にガイドされつつ前記軸方向に短縮可能な被覆層と、
前記管体と前記被覆層との間に配置され、シート状とされて前記管体の外表面と全面的に接触し、弾性変形可能な発泡部材で形成され、前記谷部と前記管体との間に圧縮されつつ挟持された圧縮挟持部を有し、前記被覆層と共に前記軸方向に短縮可能且つ前記管体に対して相対移動可能な中間層と、
を有し、
前記山部の前記軸方向の長さは、前記谷部の前記軸方向の長さの1.2倍以上であり、 前記被覆層は、MFRが0.25以上、0.5以下の樹脂性である、
複合管。
【請求項2】
前記被覆層の前記山部の厚みは前記谷部の厚みよりも薄い、請求項1に記載の複合管。
【請求項3】
前記被覆層の厚みは、0.1mm以上0.4mm以下である、請求項1又は請求項2に記載の複合管。
【請求項4】
前記山部と前記谷部の外表面での半径差は、前記被覆層の厚みの平均の800%以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の複合管。
【請求項5】
前記中間層は、前記山部の径方向内側と前記管体との間の山空間内に突出された凸部、を有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層構造の複合管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配管を保護するために、配管を覆う種々の管が提案されている。例えば、特開2015-48909号公報には、内部に配管材が収納される波付管が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特開2015-48909号公報の波付管は、配管材を内部に挿入する作業を行うことを前提にしたものであり、挿入されている配管材の端部を継手などと接続するために露出させることは想定されていない。したがって、波付管で覆われた配管材の端部を露出するために、軸方向に波付管を変形させることはできない。また、波付管を変形させる場合には、変形後の外観が損なわれないようにすることが求められる。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して成されたものであり、被覆層を変形させて内側の管体の端部を露出させつつ、外観の低下を抑制することの可能な複合管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様の複合管は、管状の管体と、管状とされて前記管体の外周を覆い、径方向外側へ凸となる環状の山部と、軸方向の長さが前記山部よりも短く径方向外側が凹となる環状の谷部とが、前記管体の軸方向に交互に形成されて蛇腹状とされ、前記管体の外周にガイドされつつ前記軸方向に短縮可能な被覆層と、を有している。
【0006】
本発明の第1の態様の複合管は、管体の外周を覆う被覆層が蛇腹状とされている。この被覆層は、管体の外周にガイドされつつ軸方向に短縮が可能とされている。被覆層の径方向外側へ凹となる環状の谷部は、軸方向の長さが径方向外側へ凸となる環状の山部よりも短い。したがって、被覆層に対して、軸方向に被覆層を短縮させる方向へ力を作用させた場合、まず山部が径方向外側へ膨出するように変形し、続いて、隣り合う山部同士が近づくように、山部と谷部における変曲部分が変形する。これにより、蛇腹状の被覆層を容易に変形させて、管体の端部を露出させることができる。また、被覆層の屈曲角度や厚みに多少のバラツキがあっても、谷部が径方向外側へ膨出したり、隣り合う山部同士が近づかないで歪んだ変形状態となったりすることを抑制でき、短縮させた被覆層の外観の低下を抑制することができる。
【0007】
本発明の第1の態様の複合管は、前記山部の前記軸方向の長さは、前記谷部の前記軸方向の長さの1.2倍以上であり、前記被覆層は、MFRが0.25以上、0.5以下の樹脂性である。
【0008】
このように、山部の軸方向の長さを、谷部の軸方向の長さの1.2倍以上にすることにより、軸方向に被覆層を短縮させる方向へ力を作用させたときに、容易に山部を径方向外側へ膨出するように変形させることができる。
【0009】
本発明の第3の態様の複合管は、前記被覆層の前記山部の厚みは前記谷部の厚みよりも薄い。
【0010】
このように、山部の厚みを谷部の厚みよりも薄くすることにより、軸方向に被覆層を短縮させる方向へ力を作用させたときに、容易に山部を径方向外側へ膨出するように変形させることができる。
【0011】
本発明の第4の態様の複合管は、前記被覆層の厚みは、0.1mm以上0.4mm以下である。
【0012】
被覆層を軸方向に容易に短縮させるために、被覆層の厚みは、0.1mm以上0.4mm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の第5の態様の複合管は、前記山部と前記谷部の外表面での半径差は、前記被覆層の厚みの平均の800%以下である。
【0014】
山部と谷部の外表面での半径差が大きければ、山部の軸方向に沿った部分が変形しなくても、短縮のときに谷部が径方向外側へ膨出したり、隣り合う山部同士が近づかないで歪んだ変形状態となったりしにくい。山部と谷部の外表面での半径差が、被覆層の厚みの平均の800%以下となる場合に、上記の変形状態となることを抑制するために、山部の軸方向の長さを谷部の軸方向の長さよりも長くすることが、効果的であり、600%以下である場合に更に効果的である。
【0015】
本発明の第の態様の複合管は、前記管体と前記被覆層との間に配置され、前記被覆層と共に前記軸方向に短縮可能且つ前記管体に対して相対移動可能な中間層を備えている。
【0016】
このように、中間層を備えることにより、管体の外周と被覆層の内周とが接着して、相対移動しにくくなることを抑制できる。
【0017】
本発明の第1の態様の複合管は、前記中間層はシート状とされ、前記管体の外表面と全面的に接触し、弾性変形可能な発泡部材で形成され、前記谷部と前記管体との間に圧縮されつつ挟持された圧縮挟持部を有すること、を特徴とする。
【0018】
シート状の中間層を管体の外表面と全面的に接触させることにより、中間層と管体との接触面積が広くなる。したがって、被覆層を中間層と共に短縮させて管体の端部を露出させた後、摩擦力により短縮状態を保持しやすい。
【0019】
本発明の第8の態様の複合管は、前記中間層は、前記谷部と前記管体との間に圧縮されつつ挟持された圧縮挟持部と、前記山部の径方向内側と前記管体との間の山空間内に突出された凸部と、を有する。
【0020】
このように、中間層に圧縮挟持部を設けることにより、圧縮挟持部で中間層が被覆層に密着される。また、中間層に山空間内へ突出された凸部を設けることにより、凸部が隣り合う谷部の側壁間に係合される。したがって、被覆層を軸方向に短縮させた場合に、中間層が被覆層の動きに追従しやすくなり、容易に中間層を被覆層と共に短縮させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被覆層を変形させて内側の管体の端部を露出させつつ、外観の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る複合管を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る複合管を示す縦断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る複合管の縦断面一部拡大図である。
図4】本発明の複合管の製造工程を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る複合管の管体の端部が露出された状態を示す縦断面図である。
図6図3の縦断面部分において、被覆層及び中間層が短縮変形される過程を示す図である。
図7図3の縦断面部分において、被覆層及び中間層が短縮変形された状態を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る複合管の管体の端部が露出された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図1に示されるように、本実施形態に係る複合管10は、管体12、中間層14、及び被覆層20、を備えている。
【0024】
管体12は、管状とされた樹脂管であり、ポリオレフィン、ポリブテン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等を材料とすることができる。
【0025】
被覆層20は、管状とされ、管体12及び中間層14の外周を覆っている。中間層14は、管体12と被覆層20の間に配置されている。被覆層20は、樹脂性であり、ポリオレフィン、ポリブテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、塩化ビニル等を材料とすることができるが、低密度ポリエチレンがより好適に用いられる。また、使用する樹脂のMFR(Melt Flaw Rate)は、0.25以上、0.5以下であることが好ましい。MFRを0.25以上にすることにより、発泡樹脂で形成される中間層14の気泡に被覆層20の樹脂が入り込みやすくなり、後述する中間層14の圧縮挟持部14Aと被覆層20の谷部24との接着度を高めることができる。また、被覆層20のMFRが0.5以下であることで、被覆層形成用の樹脂組成物を溶融させた際の流動性が適度な範囲に調整され、この溶融物が分割された金型(例えば後述する波付け金型36)の合わせ部分に流れ込むことが抑制され、被覆層20の径方向外側におけるバリが抑制される。そのため、管体12の端部を露出させる為に被覆層20を短縮させてずらそうとする動作に対し、バリが障害となることが抑制され、伸縮容易性(めくり性)により優れる。また、被覆層20の径方向外側に発生したバリを除去する工程が省略され、複合管の製造が煩雑となることが抑制される。
【0026】
図2にも示されるように、被覆層20は、蛇腹状とされており、径方向外側へ凸となる環状の山部22と、径方向外側が凹となる環状の谷部24とが、管体12の軸方向Sに交互に連続して形成されている。山部22は、谷部24よりも径方向Rの外側に配置されている。図3に示されるように、被覆層20の蛇腹状の最も径方向外側の部分を外側壁22A、最も径方向内側の部分を内側壁24Aとすると、径方向における外側壁22Aと内側壁24Aの中間部Mを境界として、径方向外側を山部22とし、径方向内側を谷部24とする。中間部Mは、外側壁22Aの外側面と内側壁24Aの内側面から等距離にある部分とする。なお、外側壁22Aの外側面と内側壁24Aの内側面の位置は、軸方向の位置によって多少異なることがあるため、中間部Mは、外側壁22Aの外側面と内側壁24Aの内側面の平均位置からの等距離とする。
【0027】
山部22は、軸方向Sに延びる外側壁22Aと、外側壁22Aの両端から径方向Rに沿って延びる側壁22Bを有している。外側壁22Aと側壁22Bの間には、外屈曲部22Cが形成されている。谷部24は、軸方向Sに延びる内側壁24Aと、内側壁24Aの両端から径方向Rに延びる側壁24Bを有している。内側壁24Aと側壁24Bの間には、内屈曲部24Cが形成されている。
【0028】
被覆層20の山部22の径方向内側には、径方向内側に凹の山空間23が形成されている。山空間23には、後述する中間層14の凸部14Bが挿入されている。
【0029】
山部22の軸方向Sの長さL1は、谷部24の軸方向Sの長さL2よりも長く設定されている。長さL1は、後述する短縮変形時の外側壁22Aの変形しやすさを確保するため、長さL2の1.2倍以上であることが好ましい。なお、長さL2は、0.8mm以上であることが好ましい。長さL2が0.8mm未満では、谷部24の幅が小さすぎて、被覆層20を製造するために、押出後、金型で凹凸をつける時に金型の谷部24に対応する部分が細く壊れやすくなり、成形が難しいからである。また、長さL1は、長さL2の5倍以下であることが好ましい。長さL1を長さL2の5倍以下にすることにより、複合官10の可撓性を保つことができる。また、長さL1が長すぎると、複合管10を敷設する際に、地面との接触面積が大きくなって施工しにくくなるためである。
なお、図3に示されるように、長さL1は、中間部Mと被覆層20とが交差する部分において、被覆層20の軸方向S外側間の距離(被覆層20の外側へ露出している部分間の距離)であり、長さL2は、中間部Mと被覆層20とが交差する部分にいて、被覆層20の軸方向S外側間の距離(被覆層20の中間層14側を向く内側部分間の距離)である。
【0030】
被覆層20の厚みは、被覆層20を短縮させるために、最も薄い部分で0.1mm以上、最も厚い部分で0.4mm以下であることが好ましい。外側壁22Aの厚みH1は、内側壁24Aの厚みH2よりも薄くなっている。厚みH1は、後述する短縮変形時の外側壁22Aの変形しやすさを確保するため、厚みH2の0.9倍以下であることが好ましい。
【0031】
山部22と谷部24の外表面での半径差ΔRは、被覆層20の厚みの平均の800%以下である。半径差ΔRが大きければ、山部22の軸方向Sに沿った部分が変形しなくても、短縮のときに谷部24が径方向外側へ膨出したり、隣り合う山部22同士が近づかないで歪んだ変形状態となったりしにくい。半径差ΔRが、被覆層20の厚みの平均の800%以下となる場合に、上記の変形状態となることを抑制するために、山部22の軸方向Sの長さを谷部24の軸方向の長さよりも長くすることが、効果的である。なお、600%以下である場合に、より効果的である。
【0032】
中間層14は、シート状とされ、管体12と被覆層20との間に配置されている。中間層14の内周面は平坦状とされ、管体12の外周に全面的に接触しつつ、管体12の外周を覆っている。なお、ここでの「全面的に接触」とは、全ての部分がぴったりと密着している必要はなく、実質的に全面が接触していることを意味する。したがって、シート状の中間層14の継ぎ目部分が一部離間していたり、管体12と被覆層20との間でシワになった部分が一部離間していたりする場合を含んでいる。
【0033】
中間層14としては、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエンゴム及びこれらの樹脂の混合物を用いることができるが、ポリウレタンがより好ましい。中間層14は、例えば、管体12の外周長と略等しい長さの幅を有するように帯状に形成されたシート状の発泡部材を管体12の周囲に巻き付けながら、被覆層20となる樹脂をその外周に供給して成形することにより構成することができる。本実施形態では、弾性変形可能な発泡部材を中間層14として用いる。
【0034】
中間層14には、谷部24の内側壁24Aと管体12との間に圧縮されつつ挟持された圧縮挟持部14Aが形成されている。中間層14の厚みは、自然状態(圧縮や引っ張りなどの力が作用していない状態)で、管体12の外周と内側壁24Aの径方向内側面との差よりも厚くなっている。圧縮挟持部14Aでは、圧縮により、中間層14は、自然状態の厚みより薄くなっている。中間層14の隣り合う圧縮挟持部14A同士の間には、凸部14Bが形成されている。凸部14Bは、圧縮挟持部14Aよりも大径とされ、山空間23内へ突出されている。山空間23内において、凸部14Bの頂部(最も径方向外側部分)と外側壁22Aとは離間している。中間層14は、圧縮挟持部14Aと凸部14Bとが軸方向Sに交互に連続して形成され、外周面が波状となっている。
【0035】
中間層14を管体12と被覆層20の間から抜き出した自然状態における軸方向Sの長さは、被覆層20の軸方向Sの長さの90%以上100%以下であることが好ましい。これは、中間層14が管体12と被覆層20の間において伸張状態で保持されていると、被覆層20を短縮変形させる際に、中間層14と被覆層20との相対移動が生じやすくなり、中間層14が短縮されずに管体12の外周端部を露出できないことが生じうるからである。中間層14と被覆層20との相対移動を抑制するため、自然状態における中間層14の軸方向Sの長さは、被覆層20の軸方向の長さの90%以上100%以下とすることが好ましい。
【0036】
次に、本実施形態の複合管10の製造方法について説明する。
【0037】
複合管10の製造には、例えば、図4に示す製造装置30を用いることができる。製造装置30は、押出機32、ダイ34、波付け金型36、冷却槽38、及び引取装置39を有している。複合管10の製造工程は、図4の右側が上流側となっており、右側から左側へ向かって管体12が移動しつつ製造される。以下、この移動方向を製造方向Yとする。ダイ34、波付け金型36、冷却槽38、引取装置39は、製造方向Yに対してこの順に配置されており、押出機32は、ダイ34の上方に配置されている。
【0038】
ダイ34の上流には、不図示であるが、コイル状に巻き取られた管体12、及び、中間層14を構成する発泡部材がロール状に巻き取られたシート状部材14Sが配置されている。引取装置39により製造方向Yに引っ張られることによって、コイル状の管体12及びロール状のシート状部材14Sは、連続的に引き出される。連続的に引き出された管体12の外周面には、ダイ34の手前で、シート状部材14Sが全周にわたって巻きつけられる。なお、シート状部材14Sは、引張力を作用させないために、ダイ34の手前では、弛みをもった状態とされ、ダイ34へ挿入される。
【0039】
管体12の外周に巻き付けられたシート状部材14Sの外周には、ダイ34から溶融された樹脂材が円筒状に押し出され、樹脂層20Aが形成される。ここで使用する樹脂を、MFR0.25以上の低密度ポリエチレン(LDPE)とすることにより、樹脂材が発泡部材の気泡に入り込みやすくなり、シート状部材14Sと樹脂層20Aとの接合を行うことができる。
【0040】
管体12、シート状部材14S、樹脂層20Aで構成される管状押出体21が形成された後、ダイ34の下流側に配置された波付け金型36で波付け工程が行われる。波付け金型36の内周には、被覆層20の山部22に対応する部分に環状のキャビティ36Aが形成され、谷部24に対応する部分に環状の内側突起36Bが形成されている。各キャビティ36Aには、一端がキャビティ36Aと連通し波付け金型36を貫通した通気孔36Cが形成されている。キャビティ36A内は、通気孔36Cを介して、波付け金型36の外側から吸気が行われる。
【0041】
ダイ34の下流側で、波付け金型36は、内側突起36Bにより樹脂層20Aを押圧しつつ管状押出体21の外周を覆い、管体12と共に製造方向Yへ移動する。このとき、波付け金型36の外側から吸気を行い、キャビティ36A内を負圧にする。これにより、樹脂層20Aが径方向外側へ移動し、波付け金型36に沿った蛇腹状の被覆層20が形成される。被覆層20をMFRが0.5の低密度ポリエチレン(LDPE)とすることにより、樹脂層20Aの流動性が適度な範囲に調整され、波付け金型36の合わせ部分に流れ込むことが抑制され、被覆層20の径方向外側におけるバリが抑制される。
【0042】
このとき、シート状部材14Sは、被覆層20の山部22に対応する山空間23でキャビティ36A内へ入り込み、凸部14Bが形成される。被覆層20の谷部24の内側壁24Aに対応する部分は、被覆層20との接着が維持されると共に管体12と内側壁24Aとの間で圧縮され、圧縮挟持部14Aが形成される。
【0043】
波付け金型36で波付け工程が行われた後、被覆層20は、冷却槽38で冷却される。このようにして、複合管10が製造される。
【0044】
次に、本実施形態の複合管10の作用について説明する。
【0045】
本実施形態に係る複合管10と継手とを接続する際には、図2に示す状態の被覆層20に対し、被覆層20を軸方向Sに短縮させて管体12を露出させる方向の力を作用させる。ここで、山部22の外側壁22Aと谷部24の内側壁24Aとを比較すると、軸方向Sの長さL1はL2よりも長く、厚みH1はH2よりも薄い。したがって、外側壁22Aは内側壁24Aよりも変形しやすく、図6に示されるように、径方向外側へ膨出するように変形する。続いて、図7に示されるように、隣り合う山部22同士が近づくように、山部22の外屈曲部22Cと谷部24の内屈曲部24Cが変形する。このようにして、図5に示されるように、一端部の被覆層20は、管体12が露出される方向へ移動する。
【0046】
このとき、中間層14は、圧縮挟持部14Aが被覆層20に密着され、凸部14Bが隣り合う谷部24の側壁24Bの間に係合し、被覆層20と共に短縮する。これにより、図8に示すように、管体12の端部を露出させることができる。
【0047】
本実施形態の複合管10によれば、上記のように、被覆層20を短縮させる際に、外側壁22Aが膨出するように変形する。したがって、被覆層20の屈曲角度や厚みに多少のバラツキがあっても、谷部24が径方向外側へ膨出したり、隣り合う山部22同士が近づかないで歪んだ変形状態となったりすることを抑制できる。これにより、短縮させた被覆層20の外観の低下を抑制することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、外側壁22Aの厚みH1を内側壁24Aの厚みH2よりも薄くしたが、厚みH1は厚みH2と同程度であってもよい。
【0049】
また、本実施形態では、外側壁22Aを軸方向Sに沿った略直線状としたが、径方向外側へ膨出する弧状としてもよい。さらに、内側壁24Aについて、径方向内側へ膨出する弧状としてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、管体12と被覆層20の間に中間層14を設けたが、中間層14はなくてもよい。本実施形態のように中間層14を設けることにより、被覆層20と管体12とが接着して互いに相対移動しにくくなることを抑制できる。また、中間層14と管体12との間の滑りにより、管体12と中間層14及び被覆層20とを相対移動させて、容易に管体12の端部を露出させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、中間層14は、管体12の外周面と全面的に接触している。したがって、管体12と中間層14及び被覆層20とを相対移動させて管体12の端部を露出させた後、管体12の外周と中間層14の内周との間の摩擦力により、中間層14及び被覆層20を、短縮された位置に容易に保持することができる。
【0052】
また、本実施形態では、中間層14の圧縮挟持部14Aが被覆層20に密着され、凸部14Bが隣り合う谷部24の側壁24Bの間に係合している。したがって、中間層14は被覆層20の動きに追従しやすくなり、中間層14が管体12の外周に置き去りになることが抑制され、容易に被覆層20と共に短縮させることができる。
【0053】
<試験例>
本発明の効果を立証するために、表1のように、山部22の軸方向Sの長さL1、及び、谷部24の軸方向Sの長さL2が異なる被覆層を形成した実施例、比較例1、2の3例について、評価した。評価は、被覆層を短縮させる時の短縮させやすさ、短縮している状態について、評価A、B、Cでランク付けした。評価Aが良好、評価Bが普通、評価Cが不良、である。使用した複合管は、L1、L2以外は共通で、外径:23.5mm、内径:20.0mm、山部22の高さ(半径差ΔR):1.75mm、山部22の外側壁22Aの厚みH1:0.25mm、内側壁24Aの厚みH2:0.37mm、被覆層の材質はMFR0.4程度の低密度ポリエチレンとした。いずれも、被覆層の短縮は、軸方向に1Nの力を加えて行った。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示されるように、実施例では、被覆層の短縮させやすさが良好であり、短縮状態も良好であった。一方、比較例1、2では、被覆層を短縮させるときに谷部24が径方向外側へ盛り上がる挙動があり、スムーズに短縮させることができなかった。また、短縮させた状態も谷部24が盛り上がり、不良であった。
【0056】
2016年+6月9日に出願された日本国特許出願2016-115523の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載されたすべての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0057】
10 複合管、 12 管体、 14 中間層、 14A 圧縮挟持部、
14B 凸部、 14S シート状部材、 20 被覆層、 22 山部、
22A 外側壁、 23 山空間、 24 谷部、 24A 内側壁、 S 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8