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特許7197357炭化水素中のアルキル-インジウム化合物の溶液を使用した有機金属気相堆積法
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  • 特許-炭化水素中のアルキル-インジウム化合物の溶液を使用した有機金属気相堆積法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】炭化水素中のアルキル-インジウム化合物の溶液を使用した有機金属気相堆積法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/18 20060101AFI20221220BHJP
   C07F 5/00 20060101ALI20221220BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 21/205 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
C23C16/18
C07F5/00 J
C23C16/448
H01L21/205
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018527110
(86)(22)【出願日】2016-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2016078705
(87)【国際公開番号】W WO2017089477
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-11-15
(31)【優先権主張番号】15196340.2
(32)【優先日】2015-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・コッホ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ブリエール
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-060944(JP,A)
【文献】特開2004-087585(JP,A)
【文献】特表2015-504242(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2540733(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/18
C07F 5/00
C23C 16/448
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属気相堆積法によってインジウム含有層を生成させるための方法であって、前記インジウム含有層が多層状であり、前記インジウム含有層が反応室(4)内で基材上に生成され、式InRを有するインジウム含有前駆体化合物の形態で前記インジウムがプロセスへと送達され、互いに独立した前記ラジカルRがメチル及び/又はエチルから選択され、
少なくとも1つの追加の反応性物質が、前記反応室(4)へと送達され、
前記インジウム含有前駆体化合物が、15~60重量%のインジウム含有前駆体化合物及び40~85重量%の6~8個の炭素原子を有する芳香族からなる溶液中で送達されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記有機金属気相堆積法が有機金属気相成長法である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インジウム含有前駆体化合物がトリメチルインジウムである、請求項1~2のいずれか一項以上に記載の方法。
【請求項4】
前記反応室(4)内へと導入する前に直接蒸発器(2)を使用して、前記溶液を気相へと転化させる、請求項1~のいずれか一項以上に記載の方法。
【請求項5】
前記直接蒸発器(2)が0℃~100℃の温度-好ましくは、10℃~50℃の温度-及び/又は50mbar~1200mbarの圧力を有する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応室(4)内へと導入する前に、前記溶液を前記気相へと転化させる、請求項又はの少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記直接蒸発器(2)が、前記気相とキャリアガスとが混合される混合室(2)を有する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記直接蒸発器(2)が液体流量調整器(5)、ガス流量調整器(12)、混合室(2)、及び混合弁を有し、前記気相とキャリアガスとが前記混合室(2)で混合され、前記液体流量調整器(5)及び前記ガス流量調整器(12)が前記混合室(2)の前に接続され、前記混合弁が前記液体流量調整器(5)又は前記ガス流量調整器(12)及び前記混合室(2)の間に配置される、請求項の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
有機金属気相堆積法によってインジウム含有層を生成させるための、
(a)5~60重量%の、式InRの化合物であって、Rがメチル及び/又はエチルから互いに独立して選択される化合物、及び
(b)40~95重量%の、~8個の炭素原子を有する芳香族、からなる溶液の使用であって、
前記インジウム含有層が多層状である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属気相堆積法によりインジウム含有層を生成する方法に関し、インジウム含有層は反応室内の基材上に生成し、インジウム含有前駆体化合物は溶液中で送達される。本発明は、更に溶液、このような溶液の使用、及び本方法を実行する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機金属気相堆積法、及び特に有機金属気相成長法は、金属又は金属化合物の薄膜を基材上に生成するための重要な方法である。本方法は、特に半導体産業において使用される。本プロセスにおいては、所望により追加の反応性化合物と組み合わされて有機金属化合物が加工室内へと導入され、減圧下又は標準圧力下にて、加熱された基材の表面上で反応が生じ、層の堆積をもたらす。これらの方法は1970年代及び1980年代に開発され、かつ当時から継続的な改良を受けてきた。従って、今日では、基材上における多数の半導体結晶、非晶質層、及び金属化合物の堆積が可能である。例えば、「Handbook of Thin Film Deposition-Processes and Technologies」2nd Edition 2001,editor:Krishna Sesha,Chapter 4,pp.151~203において、考察が見てとれる。
【0003】
インジウム層の生成に関しては、前駆体化合物として、通常インジウム-アルキル化合物が使用される。先行技術では、多くの場合、固体トリメチルインジウムが使用され、固体状態では、これは適切な蒸気圧を有し、また半導体層においていずれの不純物又は不必要なドーピングをも生成してしまうことが殆んどない。固体トリメチルインジウムは、多くの場合、本目的のために、ステンレス鋼シリンダ内で提供される。これらは、少なくとも1つのガス導入口及びガス放出口を装備する。不活性キャリアガス(主として水素又は窒素)はガス導入口を介して導入され、かつシリンダ内で固体TMIと接触し、また従ってキャリアガスが濃縮される。ガス放出口に到達する気相中のTMIの質量スループットは、とりわけキャリアガス流量、TMIの温度、及び圧力に依存する。
【0004】
このような方法は多数の問題を伴う。トリメチルインジウムは、88℃の融点を伴う固体である。TMIは自然発火性であり、これは、室温にて、また周囲空気にて、酸素と激しく反応するということを意味する。TMIを取り扱うにあたって、特に液相では、TMIと共に空気を密閉容器へと導入することが爆発をもたらし得る故に、問題がある。これは、プロセス最中のTMIの取り扱いだけではなく、製造、輸送、保管、装置の充填、計測又はプロセス残留物の除去及び廃棄をもまた、妨げる。
【0005】
別の欠点は、蒸気相へと変化する単位時間当たりの固体インジウム化合物の量が少なく、かつ随意に増大し得ないということである。従って、気相堆積法によるインジウム含有層の製造における成長率は、非常に限定されている。
【0006】
追加の欠点は、固体の前駆体化合物から放出されるガス状インジウムの量を測定すること及び持続的に調節することが困難である、ということである。例えば、放出率は、蒸発プロセスの間に変化する表面積に依存する。
【0007】
固体TMIを用いた方法では、低充填量では気相の最適かつ均一な飽和がもはや達成され得ない故に、全てのTMIを使用することができるわけではないこともまた、不都合である。別の欠点は、本方法では、TMIが燃え尽きた後、TMIを含有する通常ステンレス鋼シリンダである容器を空にして複雑な中間工程にて再充填し、インジウムの均一な導入を保証しなければならない、ということである。これは、全体として既知の方法が複雑であり、かつ比較的長時間を要することを意味する。
【0008】
このような問題を解決するために、Fanninらは1994年に、TMIを懸濁液からプロセスへと導入すること(「Constant indium delivery from trimethylindium-hexadecane slurry」;1994,J.Electron.Mat.,23,2,pages 93 to 96)を提言している。ここで、著者は、固体TMIが懸濁液としてN,N-ジメチルドデシルアミンにて供給される方法を記載している。懸濁液はバブラー内で蒸発して、キャリアガスと混合される。しかし、アミン化合物又はその分解生成物が気相に入り、かつ処理室において、ドーピング又はコーティングの汚染をもたらすことがある望ましくない副反応が引き起こされる場合がある故に、このようなヘテロ有機化合物の使用には問題がある。TMIが固体を伴う錯体を形成する故に、これは全く正しい見方である。更に、固体TMIの取り扱いの問題は、このような懸濁液を用いても解決されない。
【0009】
あるいは、著者は、高沸点化合物、即ち、ヘキサデカンにて懸濁液の形態で固体TMIを供給することを提言している。ここでまた、ガス状TMI及びヘキサデカンを放出するために、バブラーが使用される。これは、自然発火性の固体TMIの取り扱いにおける基本的問題さえ、解決しない。更に、バブラーなどの特別装置及び比較的高温が必要とされるが故に、このような高沸点液体の蒸発における電力消費は比較的高い、ということが一般には不利である。TMI及びヘキサデカンが存在し、かつ異なる相にて燃え尽きる故に、長時間にわたるTMIの持続的放出が可能とならず、また固体から放出されるガス状インジウムの量が少ない。従って、全体として、自然発火性TMIの取り扱いにおける問題は、最大でも部分的にしか解決されない。
【0010】
ドイツ特許第10,2013,225,632(A1)号は、高温で反応し、かつ炭素を有する生成物のドーピングを引き起こす追加の炭化水素が処理室内へと導入される、有機金属気相堆積法のための方法を記載している。必要とされる炭化水素の遊離メチルラジカルへの分解を達成するために、1000℃以上かつ1200℃までの高い反応温度が必要とされる。類似の方法が、米国特許第6,284,042(B1)号に記載されている。同様にこの明細書によれば、有機金属化合物とは別に炭化水素が添加され、その後反応室内で高温にて化学反応が起こり、炭化水素の分解と共に炭素を有する生成物のドーピングがもたらされる。
全体として、上述した欠点を克服する、有機金属気相堆積法によるインジウム含有層の、改良された生成方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】ドイツ特許第10,2013,225,632(A1)号
【文献】米国特許第6,284,042(B1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した欠点を克服する方法、手段、適用、及び装置を提供する目的に基づく。本プロセスでは、より容易で、プロセスに一層有用、かつ一層効率的である有機金属気相堆積法(特に有機金属成長法)によるインジウム含有層の生成方法が、提供されなければならない。固体トリメチルインジウムの取り扱いに伴うリスクを減少させる、又は避けるべきである。本プロセス内に導入するインジウムは、取扱い及び計量が容易でなければばらない。本方法は、気相及び反応室におけるインジウム又はインジウム含有前駆体化合物の高濃度及び高質量スループットを調節することを、可能にしなければならない。本方法は、使用する材料及び生産活動並びに電力消費に関して効率的でなければならない。本プロセスでは、あらゆる不要なドーパント又は不純物を含有しない高純度のインジウム含有連結半導体層が生成されなければならない。本方法は、より良好な出発物質の利用もまた可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、本発明が基づく目的は、本特許請求の範囲による方法、解決法、適用、及び装置により解決される。
本発明の主題は、有機金属気相堆積法によりインジウム含有層を生成するための方法であり、ここでインジウム含有層が反応室内で基材上に生成され、インジウム含有層が式InRを有するインジウム含有前駆体化合物の形態でプロセスへと送達され、互いに独立したラジカルRが1~6個の炭素原子を有するアルキルラジカルから選択され、溶媒を含有する溶液内でインジウム含有前駆体化合物の送達が生じることを特徴とし、またインジウム含有前駆体化合物がその中に溶解し、溶媒が1~8個の炭素原子を有する少なくとも1つの炭化水素を有する。
【0014】
有機金属気相堆積法(MOCVD、「有機金属化学気相蒸着法」)は、化学気相蒸着(CVD)法に分類されるコーティング法であり、これは、基材上における固体層の堆積が、有機金属前駆体化合物(前駆体)を使用した化学気相から生じる方法である。驚くべきことに、インジウム含有前駆体化合物が上記のような溶剤と組み合わされて使用される場合に、従来の堆積層と比較して、より多い量の炭素又は酸素の統合(ドーピング)がない、と結論付けられた。
【0015】
好ましい実施形態では、有機金属気相堆積法は有機金属気相成長法(MOVPE、「organo-metallic vapor phase epitmetal organic vapor phase epitaxy」を意味し、OMVPEとも称される)である。基材上の任意の堆積がMOCVDを用いて可能であるのに対して、MOVPEは結晶の配向成長法であり、また従って、結晶基材上における結晶成長に関する。本方法、特にMOVPEは、とりわけ半導体材料の堆積のために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の方法を実施するための装置の例を概略的に示す。
図2図2は、Nd-YAGレーザを用いた刺激手段による層のフォトルミネッセンス特性の測定法の構成を示す。
図3図3は、液体Inを使用して得られた試料(27030、上記の太く黒い実線)、純粋なトリメチルインジウムを用いた比較例としての比較試料(27026、細く黒い実線)、及び2つの参照試料(小点線又は点線で示す参照1及び参照2)の、フォトルミネッセンススペクトルを示す。
図4図4は、インジウム源として液体Inを使用することにより得られた試料の、SIMS測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によれば、溶媒中のアルキル-インジウム化合物(前駆体化合物)の溶液が使用される。ここで、通常使用される用語「溶液」とは、前駆体化合物が実際に溶媒中に溶解しており、単に懸濁しているのではないことを意味する。それについて、少なくとも初めは、及び本プロセスへの導入の際並びに/又は気相へと転化する前では、溶液は液体形態にて存在する。プロセスの間、溶液は気相へと転化し、これは反応室への導入前又は導入最中に生じ得る。溶液に関しては、インジウム含有前駆体化合物及び溶媒から構成されることが特に好ましい。
【0018】
本発明によれば、使用するインジウム含有前駆体化合物は、式InRのアルキル-インジウム化合物である。ラジカルRは、1~6個の炭素原子-特に1~3個の炭素原子を有するアルキルラジカル、特に、メチル及び/又はエチルから、互いに独立して選択される。例えば、前駆体化合物は、トリメチルインジウム、トリエチルインジウム、又はエチルジメチルインジウムから選択される。このようなアルキル-インジウム化合物の混合物を使用してもよい。
【0019】
好ましい実施形態では、前駆体化合物はトリメチルインジウム(TMI)である。先行技術によれば、トリメチルインジウムは、有機金属気相堆積法又は有機金属気相成長法により、主としてインジウム含有層を生成するために使用される。TMIは、136℃の融点を有する白色固体である。
【0020】
溶媒は、1~8個の炭素原子を有する少なくとも1つの炭化水素を含有する。好ましくは、溶媒は、1~8個の炭素原子を有する少なくとも1つの炭化水素からなる。通常の専門用語によれば、炭化水素は、排他的に炭素及び水素からなる有機化合物である。特に好ましくは、溶媒は1~8個の炭素原子を有する炭化水素からなる。炭化水素は、アルカン、芳香族、又はアルケンであってよい。これらは、非環式又は環式炭化水素であってよい。アルカン又はアルケンは、直鎖又は分岐鎖であってよい。
【0021】
好ましい実施形態では、溶媒は、5~8個の炭素原子を有する炭化水素からなり、これは、好ましくはアルカン又は芳香族である。このような炭化水素は、通常、アルキル-インジウム化合物類よりも、わずかに低い沸点を有する。これらの炭化水素は比較的高い蒸気圧を有し、また従って、非常に低いエネルギー消費にて蒸発し得る。なお、沸点は、アルキル-インジウム化合物の沸点からは離れておらず、均一かつ完全な溶液の蒸発に好都合である。
【0022】
好ましい実施形態では、溶媒は、少なくとも1つのアルカンを有する。特に好ましくは、溶媒は、アルカン又はアルカンの混合物である。この場合、アルカンは、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、又はオクタンから選択されてよい。アルカンは、好ましくは直鎖又は分岐鎖である。アルカンは、それらが比較的不活性である故に、本発明による溶媒として特に好適である。その結果、比較的高い反応温度であるにもかかわらず、例えば、分解及び堆積する層への炭素の導入をもたらし得る、溶媒との望ましくない反応が、気相において生じない。
【0023】
特に好ましくは、溶媒は5~8個の炭素原子を有するアルカンであり、従ってペンタン、ヘキサン、ヘプタン若しくはオクタン、又はこれらの混合物から選択される。本プロセスでは、いかなる任意の異性体を使用してもよく、例えば、n-ペンタン、イソペンタン若しくはネオペンタン、又はn-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン若しくは2,3-ジメチルブタンを使用してもよい。類似的には、ヘプタン異性体又はオクタン異性体の、考えられる全ての混合物を使用してもよい。ペンタンの使用が特に好ましい。
【0024】
好ましい実施形態では、溶媒は少なくとも1つの芳香族を有する。特に好ましくは、溶媒は、芳香族又は芳香族の混合物である。例えば、芳香族は、1つ若しくは2つのメチル基又はエチル基で置換されたベンゼンの誘導体であってよい。芳香族は、好ましくはトルエン、キシレン、及びベンゼンから選択される。アルキル-インジウム化合物が、特に芳香族中で容易に可溶性である故に、芳香族が特に好ましい。このような低分子量芳香族は比較的不活性でもあり、またアルキル-インジウム化合物のようなものよりもわずかに低いだけの沸点を有する。好ましくは、トルエンが溶媒として使用される。トルエンにおけるTMIの溶解度は、50重量%以下である。従って、高濃度の溶液を用いて、特に効率的に本方法を実施することができ、また副反応を減少させることができる。
【0025】
特に好ましくは、溶媒は、6~8個の炭素原子を有する芳香族-特に、トルエン、キシレン、又はベンゼンである。このような芳香族は、特に大量にTMIを溶解することができる。それらは、TMIの沸点よりもわずかに低い沸点をもまた有する。
【0026】
溶液は、好ましくは共沸混合物である。それらがトリメチルインジウムを含む共沸混合物を形成する故に、アルカンもまた溶媒として好ましい。共沸混合物が蒸発する間、構成成分の均一性及び比較的高い濃度を気相にて達成することができる。
【0027】
このような場合、アルキル-インジウム化合物よりもより高い蒸気圧を溶媒が有することが、好ましい。このような場合の溶媒の沸点は、少なくとも10℃、少なくとも30℃、又は少なくとも50℃の差にて、アルキル-インジウム化合物の沸点以下であってよい。好ましくは、沸点は離れすぎていず-好ましくは100℃以下、又は70℃以下の差-これにより、効率的な同時蒸発が生じ得る。好ましくは、溶媒の沸点とアルキルインジウム化合物の沸点との差は、10℃~100℃-特に15℃~70℃-である。約134℃沸点を有するTMIを使用する場合、溶媒は約0℃~約120℃の範囲の沸点を有することが好ましい。
【0028】
前述の炭化水素の混合物を使用してもよい。例えば、5~8個の炭化水素を有する、前述のアルカン及び/又は芳香族の混合物を使用してもよい。炭化水素を使用する技術的理由、即ち、例えば、20重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下のその他の炭化水素がわずかに混入する理由が、また有利であり得る。
【0029】
特に1~4個の炭素原子を有する短鎖炭化水素を使用する場合、それをプロセスへと導入する前に溶液を冷却しなければならない場合がある。このことが追加の冷却エネルギーを必要とする故に、このような実施形態の好ましさは幾分劣る。
【0030】
好ましくは、溶液中における前駆体化合物の含有率は、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、又は15重量%以下である。好ましくは、溶液は、60重量%以下又は55重量%以下の前駆体化合物を溶解形態にて含有する。好ましい実施形態では、溶液中における前駆体化合物の含有率は、5~60重量%、好ましくは、15~55重量%である。本発明によれば、前駆体化合物は完全に溶解されなければならない。これは、たとえ前駆体化合物のわずかな一部のみが非溶解形態にて存在するとしても、気相組成物は悪影響を受けて変化し得、また連続処理において導管及び処理装置が閉塞する場合がある、という点で有利である。本発明による溶液を用いて、固体アルキル-インジウム化合物により先行技術による問題を回避することができる。
【0031】
有機金属気相堆積法、また特に有機金属気相成長法のための方法では、反応室内でインジウム含有層の生成が生じる。コーティングされるべき基材はその内部に配置され、かつ高温へと加熱される。インジウム含有前駆体化合物を含むガスフロー及び通常キャリアガスは反応室内へと導入され、気相での前駆体化合物が最初に分解され、かつ遊離基が基材へと付着する。熱的に活性化されて、遊離基は、インジウム原子が好適な位置にて層に組み込まれるまで基材上で一定の運動自由度を有する。有機ラジカルは元素状水素で不飽和化され、かつ安定した揮発性有機化合物形態が形成される。この残留ガスは反応室から排出される。この程度までは、本発明による装置は既知の装置に対応する。反応室内へと導入する前に、溶液を気相へと転化させることが好ましい。好ましさが幾分劣る実施形態では、反応室内へと導入されるまで溶液が蒸発しない、ということもまた考えられる。
【0032】
溶液の気相への移行は、好ましくは、反応室内での反応に先立って、処理工程にて生じる。好ましくは、気相へと移行させるために蒸発器が使用される。蒸発器では、十分な熱エネルギーが溶液へと供給されて蒸発を引き起こす。反応室(4)内へと導入する前に、直接蒸発器(2)を使用して、溶液を気相へと転化させることが好ましい。
【0033】
好ましい実施形態では、蒸発器は直接蒸発器である。蒸発器に入った時に、溶液は直接蒸発器において直ちに、また完全に蒸発する。本プロセスでは、圧力、温度、及び質量流量は、導入後に溶液が直ちに気相へと転化するように設定される。溶液はまた、直接蒸発器内の液体リザーバには集積されない。他方では、バブラーを使用する先行技術に従って液体リザーバから蒸発が生じ、バブラーにて処理条件(圧力、温度、液体表面積)により蒸発した液体の量が調節される。
【0034】
直接蒸発器では、溶液は通常、加熱した混合弁にて、LFC(液体流量コントローラ)を使用して、追加の不活性キャリアガスと共に蒸発される。直接蒸発器は加熱装置を有する。本方法では、蒸発の間に発生する気化冷却を補うように熱エネルギーが供給される。直接蒸発器の簡潔な設計は、とりわけ、反応器近くへの取り付けを可能にする。その結果、更なる工程無しに高温を確立することができ、低蒸気圧を有する前駆体化合物であっても気相へと効率的に転化し、かつ処理室内へと導入される。直接蒸発器は当技術分野において既知であり、また購入可能である。例えば、CEMシステム(Bronkhorst AG,スイス)、又はDirectVapor製品(Sempa Systems GmbH,ドイツ)を使用してよい。
【0035】
好ましくは、直接蒸発器は0℃~100℃の温度-特に、10℃~50℃の温度-及び/又は50mbar~1800mbarの圧力を有する。本プロセスでは、温度及び圧力は互いに調節され、これにより、溶液の完全な蒸発が生じて気相を維持する。特に、プロセス条件が調整され、これにより、残留する液体残留物又は固体残留物無しに、迅速な蒸発が発生する。
【0036】
直接蒸発器はノズルを有してよい。直接蒸発器は、直接噴射器(直接液体噴射式、DJI)であってよい。ノズルを有する直接蒸発器は、液体の気相への持続的、効果的な転化を可能にする。
【0037】
プロセスにおける質量スループット速度の制御は、好ましくは、流量調整器及び/又はフローバルブを使用して行われる。制御は、好ましくは電子的である。
【0038】
直接的に蒸発させる溶液の量は、好ましくは、液体流量調整器を使用して調節及び監視される。特に好ましくは、液体流量調整器は直接蒸発器の一部である。このような調整器は、特に直接蒸発器に関連する簡潔な形態では、反応室における要求に対応して、質量スループット速度の最適な制御を可能にする。
【0039】
好ましくは、蒸発した溶液は、反応室内へと導入される前に、キャリアガスと混合される。キャリアガスは、移送の維持に役に立ち、かつ凝結作用を防止する。従って、キャリアガスは、好ましくは非反応性であり、かつプロセスにおいて不活性である。窒素、水素、又は不活性ガスなどの通常のキャリアガスを、本プロセスにて使用してよい。
【0040】
導入されるキャリアガスの量は、好ましくは、ガス流量調整器を使用して調節及び監視される。特に好ましくは、ガス流量調整器は直接蒸発器の一部である。このような調整器は、特に直接蒸発器に関連する簡潔な形態では、蒸発した溶液の質量スループット速度及び反応室における需要の観点から、キャリアガスの最適な制御を可能にする。
【0041】
蒸発した溶液は、好ましくは、混合室内でキャリアガスと混合される。混合室は、好ましくは、混合弁を有する。混合弁は、構成成分及びインジウム含有前駆体化合物の精密かつ均一な濃縮の確立を可能にする。混合室は、好ましくは、直接蒸発器の一部である。本プロセスにおける蒸発は、好ましくは、直接混合室内で生じる。これは、気相が追加の相と混合されるチャンバ内へと、溶液が直接蒸発することを意味する。
【0042】
特に好ましい実施形態では、液体スループット速度調整器を有する直接蒸発器、ガス流量調整器、混合室、及び混合弁が使用される。本実施形態では、溶液及びキャリアガスの質量スループット速度を制御するための構成要素、及び気相を混合するための構成要素は、直接蒸発器の不可欠な構成要素である。このタイプの設計は、反応室内における反応のために、溶液における簡潔、持続的、及び効率的なインジウム前駆体化合物の調製を可能にする。
【0043】
好ましくは、本発明によれば、本方法ではバブラーを使用しない。先行技術によれば、対応する方法はバブラー(蒸気圧飽和器)を使用して実行される。バブラーは、蒸発させる液体及び固体有機金属前駆体化合物を収容する容器を具備し、かつそれを通して不活性キャリアガスが通過する。このような場合の欠点は、溶媒、前駆体化合物、及び不活性キャリアガスを含有するこのような多成分系を用いると、正確かつ継続的なプロセス制御が不可能である、又は少なくとも比較的時間がかかる、ということである。他方では、本発明に従った方法を、バブラーを用いることなく直接蒸発器にて実施することができる。直接蒸発では、溶液とキャリアガスとの混合を良好に制御することができ、またバブラーを空にする又は再充填することを必要とすることなく、本方法を極めて長時間わたって持続的に実施することができる。
【0044】
処理室における条件は、好ましくは、炭素による寄生的なドーピングがない、又は基本的に寄生的なドーピングがないように、設定される。本プロセスでは、溶媒として使用される炭化水素は反応を起こさない、又はわずかに反応するのみであり、かつ生成物に悪影響を与えない。これは、処理室における温度が高すぎないように設定され、これにより、反応性ラジカルへの炭化水素の分解が起きない場合に可能である。好ましくは、反応室内での反応は、950℃未満-より好ましくは、900℃未満、又は特に800℃未満である温度にて生じる。このことは、とりわけ、インジウム含有層の堆積のためのプロセス条件が、900℃未満の堆積温度が選択されるように設定されることによって所与される。
【0045】
本方法及び処理室における条件は、気相からの液体凝結が、この気相からの液体凝結が反応室の外で実施されることとなる前には起こらないように設定される。プロセス条件、特に圧力及び温度は、溶液の蒸発後に調節され、これにより、気相は露点を超過する。所定の圧力における露点は、液体が沈殿物として気相から分離するように、限度を超えた温度でなければならない。インジウム前駆体化合物を含む反応室内の気相の温度は、好ましくは100℃を超える、より好ましくは300℃を超える、又は400℃を超える。
【0046】
反応室内の温度は、例えば、100~950℃、又は400~900℃であってよい。
【0047】
溶媒及び/又は不活性キャリアガスは、反応室から出た後に、再処理及び再利用することができる。溶媒を凝縮して分離させてよい。
【0048】
本発明によれば、インジウム含有層を基材上に生成させるための前駆体化合物を、特に均一に、また特に高い質量流量にて、有機金属気相堆積法のための反応室内へと導入することが可能である。次に、既知の方法を使用して、基材上に層を生成することができる。通常、少なくとも1つの追加の反応性物質-好ましくは、少なくとも1つの追加の前駆体化合物が、反応室内へと導入される。例えば、追加の反応性物質が導入されてよく、これにより、窒素、リン、及び/若しくはヒ素などの周期表の第5典型元素、又はアルミニウム若しくはガリウムなどの第3典型元素が適用される。生成物は多層状であってよく、及び/又はインジウム含有層は追加の元素を有してよく、従って、混晶を形成してよい、又は添加物を入れてよい。このような前駆体化合物及び方法は、当先行技術分野において既知である。例えば、この関係において、Stringfellow,Gerald B.,「Organometallic Vapor-Phase Expitary:Theory and Practice,」1989年,Academic Press出版,JSBN 10:0126738408を参照する。
【0049】
本発明による方法は、インジウム含有層を調製するために使用することができる。層は、インジウム化合物又は元素状インジウムを含有してよい。本プロセスでは、CVD(化学気相成長法)の既知の方法を使用してよく、例えば、層はITO(酸化インジウムスズ)又はJGZO(インジウムガリウム酸化亜鉛)から調製されてよい。
【0050】
好ましい実施形態、特にMOVPEの場合では、半導体結晶を生成するために本方法を使用してよい。例えば、レーザ、光検出器、太陽電池、フォトトランジスタ、光電陰極、トランジスタ、検出器、又は変調器を製造するために、本方法及び本プロセスを使用してよい。
【0051】
本発明の目的はまた、
(a)5~60重量%-特に、15~55重量%-の、式InRの化合物であって、Rが1~6個の炭素原子を有するアルキルラジカルから互い独立して選択され、好ましくはトリメチルインジウムである化合物、及び
(b)40~95重量%-特に45~85重量%-の、1~8個の炭素原子を有する少なくとも1つの炭化水素、からなる溶液である。
【0052】
好ましくは、溶液は、5~60重量%のトリメチルインジウム、及び1~8個の炭素原子-好ましくは、5~8個の炭素原子を有する40~95重量%のアルカン又は芳香族から構成される。好ましくは、溶液は、5~15重量%のトリメチルインジウム及び5~8個の炭素原子を有する85~95重量%のアルカン、又は15~60%のトリメチルインジウム及び6~8個の炭素原子を有する40~85重量%の芳香族から、構成される。
【0053】
好ましい溶液は、本発明に従った方法で使用可能な、上述下ものに相当する。反復を避けるため、溶液を構成すること、特にアルキル-インジウム化合物及び溶媒を構成することについては、上記の特定の説明を参照する。
【0054】
本発明の別の目的は、有機金属気相堆積法により、インジウム含有層-特に半導体層-を生成するための、本発明に従った溶液の使用である。これらのプロセスでは、本方法について前述したように、本使用が相応して生じる。反復を避けるため、本方法については上記の説明を参照する。
【0055】
本発明の別の目的は、本発明に従った方法を実施するための装置であって、
(A)溶液を送達するための液体供給ラインと、
(B)溶液を計測するための液体流量調整器と、
(C)不活性キャリアガスを送達するための手段と、
(D)キャリアガスを計測するためのガス流量調整器と、
(E)溶液を蒸発させるための加熱装置及びキャリアガスを混合するための混合室を備えた直接蒸発器と、
(F)基材上にインジウム含有層を生成させるための反応室、及び
(G)気相を反応室内へと送達するためのガス供給ラインと、を具備する装置である。
【0056】
調整器(B)及び(D)は、好ましくは、直接蒸発器の構成要素である。
【0057】
本装置の更なる設計に関して、プロセス制御についての上記の説明及び次の例を参照する。
【0058】
本発明の方法を実施するための、本発明に従った装置の例として、図1を示す。
【0059】
本発明の方法を実施するための装置の例として、概略的に図1を示す。溶液は、取入れ口1を通って本方法に導入される。本プロセスでは、C5~C8アルカン又はC6~C8芳香族にて、トリメチルインジウムの溶液(10重量%)を使用することができる。液体供給ライン6を通じて、加熱装置8及び混合室9を有する直接蒸発器2へと、溶液を導く。直接蒸発器の構成要素である、又は直接蒸発器の前に接続され得る液体流量調整器5を使用して、液体の体積を制御しかつ測定する。更に、弁3を使用して計測が実施可能である。直接蒸発器2では、温度(20℃~80℃の温度が、好ましくは設定される)及び圧力などの好適なプロセスパラメータを設定することにより、溶液は気相へと完全に転化する。本プロセスにおける蒸発は、好ましくは、直接蒸発器の不可欠な一部である混合室内で直接生じる。溶液は、入口11及びガス供給ライン16を介して導入される不活性キャリアガスと、混合室9内で混合される。キャリアガスの量は、ガス流量調整器12及び弁13により制御される。好ましくは、不可欠な構成要素として、液体流量調整器5、ガス流量調整器12、混合室9、及び混合弁13を有する、直接蒸発器2が使用される。気相は、-任意に、圧縮工程などの好適な追加のプロセス工程を通して、ガス供給ライン16を通って混合室9から反応室4へと導入される。既知の手段により、加熱した基材の表面上におけるインジウムの反応及び堆積又はインジウムの混晶への組み込みは、反応室4内で生じる。反応ガス及びキャリアガスは反応器を貫流し、またガス放出口ライン17を通して排気ガス系へと排出される。気相における追加の反応性物質は、1つ以上の追加のガス供給ライン18を通して反応室へと供給されてよく、これにより、複数の元素からコーティング又は混晶を生成する。
【0060】
本発明は、その根元的な問題を解決する。有機金属気相堆積法又は有機金属気相成長法により、インジウム含有層を継続的に生成するための、改良され、効率的、かつ比較的簡易な方法が、提案されている。溶液の使用を避けることより、固体の自然発火性アルキル-インジウム化合物の取り扱いにおけるリスクが回避される、又は明瞭に低減される。従って、アルキル-インジウム化合物の製造に関しては爆発及び発火の危険が既に低減されており、この調製、保管、及び輸送を直接、溶液にて行うことができる。計測、ユニットの充填、及びプロセスの実行においても、危険が回避される。
【0061】
低い温度の沸騰液体で溶液を使用することにより、気相でのインジウム化合物の質量流量を、顕著に増大させることが可能である。対照的に、アルキル-インジウム化合物による気相の飽和が固体の凝集状態及びバブラーの寸法により熱力学的に制限される故に、バブラー及び固体アルキル-インジウム化合物を用いる先行技術の方法では、たとえ懸濁液の形態であっても、高い質量流量を達成することができない。溶液の使用はまた、精密な計測及びプロセス要件へ導入される溶液量の柔軟で迅速な調節をも可能にする。追加の利点は、先行技術では必要とされる、自然発火性アルキル-インジウム化合物の残留物を伴う、固体シリンダの規則的な交換が必要ない、ということである。従って、本方法を長期間にわたって持続的に実施することができる。溶液の使用故に、財政上の理由及び環境的理由に関して望ましい、開始物質のプロセスへの完全な導入が発生し得る。追加の利点は、溶媒が反応せず、また従って、加工及び再利用ができることである。本方法はまた、低沸点のアルカン又は芳香族が多量に入手可能であり、また従って安価である故に、財政的に有利である。
【実施例
【0062】
堆積条件
Aixtron AIX 200-GFR反応器系にて、堆積を実施した。6800mL/分の流速を有する水素(H)を、キャリアガスとして使用した。50mbarにて堆積を実施した。アルミニウム-シリコン共融混合物の融点(融点577℃)との比較に基づいて、温度を較正した。
【0063】
濃度30mol%のトルエン中のトリメチルインジウムの溶液(以下の液体とも称される)、トリメチルガリウム(DockChemicals)、及びトリメチルアルミニウム(EMF)が、III族源しての役割を果たし、tert-ブチルホスフィン(DockChemicals)が、V族源としての役割を果たした。
【0064】
異なる2つの層の型を堆積させた:
1)((AI0.3Ga0.70.5In0.5)P成長率1.53μm/hを有する二重異構造。III族前駆体に対するV族の比は96であった。堆積温度は685℃であった。このように堆積した層を、フォトルミネッセンス測定のために使用した。
2)((AI0.7Ga0.30.5In0.5)P SIMS測定のための多層構造。この関係において、III族前駆体に対するV族の比と同様に、異なる温度特性を調査した:V/III=25、50及び100、T=625、655、670、685℃。このように堆積した層を、SIMS測定(二次イオン質量分析)のために使用した。
【0065】
フォトルミネッセンス測定:
それらのフォトルミネッセンスに関して、Nd-YAGレーザを用いた刺激手段により、層を調査した。基準としてNAsP社で使用されている2つの試料が、比較としての役割を果たした。それらのフォト特性は上限及び下限として機能し、また試料の適格性を評価するために使用される。測定の構成を、図2に示す。
【0066】
層における不純物及び結晶の欠陥を、フォトルミネッセンススペクトルにて特定することができる。より広範な光電ピーク(表1におけるFWHM)又はより低い放射光強度(即ち、表1における積分強度)、より悪い層の質によって試験した。
【0067】
図3は、液体Inを使用して得られた試料(27030、上記の太く黒い実線)、純粋なトリメチルインジウムを用いた比較例としての比較試料(27026、細く黒い実線)、及び2つの参照試料(小点線又は点線で示す参照1及び参照2)の、フォトルミネッセンススペクトルを示す。
【0068】
図3及び表1から見てとれるように、液体Inから堆積された層は、その特性の観点から、2つの基準値(FWHM又は半分の幅)の間(積分強度)、又は2つの基準値(FWHM又は半分の幅)に近接して位置し、また従って、インジウム含有層のための前駆体として使用するのに好適である。
【0069】
【表1】
【0070】
SIMS測定:
二次イオン質量分析は、どれくらい多くの不純物が試料中に存在するか、という情報を提供する。
【0071】
SIMS測定のための層(層2)を、1つとしては徐々に増大する堆積用の堆積温度、及び更に、III族源に対するV族の変化する濃度比率を用いて、基材上に生じる堆積手段により生成させた。
【0072】
これは、9つの層を有する層構造が堆積され、9つの層のそれぞれが、それらの堆積温度及びIII族源に対するV族の比率において異なることを意味する。
【0073】
これらの比率を、図4のダイアグラムにおいて、図の下方列として示す(値100、50、100、50、25、100、50、25、100)。堆積温度を、図の上方列に示す。
【0074】
例えば、右手側における黒いカーブの前進は高いプラトーを有し、このプラトーが、625℃の堆積温度で、III族源に対するV族の比率によってそれぞれ独立して形成されることが見てとれる。
【0075】
酸素/炭素統合率の助けを借りて、当業者は、V族/III族源比率及び堆積温度に依存して、層の純度及び、従って、使用される前駆体に関わる説明をすることができる。
【0076】
図4は、インジウム源として液体Inを使用することにより得られた試料の、SIMS測定値を示す。層堆積のための条件を、上記に提供する。
【0077】
酸素含有量(実線)及び炭素含有量(点線)を、SIMSスペクトルにて示す。試験した層は、異なる温度(図の上部列の℃)及びIII族に対する異なるV族の比率(図の下部列)において、結果として影響を受けた。驚くべきことに、SIMS測定によって、層への炭素又は酸素の顕著な統合は観察できなかった。655℃及び比率25での炭素の統合の増大は、III族前駆体の不十分な分解に起因し得、多くの場合、トリメチルインジウムを用いた堆積で発生する観察にも起因し得る。625℃の範囲の温度における酸素の統合の増大は、V族前駆体から導入された酸素不純物に起因し得る。
【0078】
参照符号:
1 溶液入口
2 直接蒸発器
3 弁
4 反応室
5 液体流量調整器
6 液体供給ライン
8 加熱装置
9 混合室
11 キャリアガス供給
12 ガス流量調整器
13 弁
16,18 ガス導入口ライン
17 ガス放出口ライン
図1
図2
図3
図4