(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】外部バルブを有する灌流バルーン
(51)【国際特許分類】
A61M 39/24 20060101AFI20221220BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20221220BHJP
【FI】
A61M39/24
A61M25/10 510
(21)【出願番号】P 2018546421
(86)(22)【出願日】2017-02-28
(86)【国際出願番号】 US2017019872
(87)【国際公開番号】W WO2017151574
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-27
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス,ギャレット
(72)【発明者】
【氏名】ヘッジ,アナント
(72)【発明者】
【氏名】クルニアワン,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】モル,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】ラドチョンスキ,サミュエル
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】安井 寿儀
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-509218(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0228093(US,A1)
【文献】特表2008-504067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置であって、
膨張可能な灌流バルーンであって、該灌流バルーンが膨張状態にある状態で、前記管内の前記流体の流れを許容するための複数の入口を有する内部通路を備える灌流バルーンと、
前記通路内での前記流体の流れを制御するために前記バルーンに関連付けられたバルブであって、前記通路内での前記流体の流れを制御するために前記通路への前記複数の入口を選択的に覆うためのバルブと
を備え、
前記バルブは、略円形
の断面を有する
単一のセグメントとしての折り畳み可能なチューブを備える
装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記チューブは、前記バルーンの近位端部分のところに位置する
装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記バルーンは、略テーパ状の部分を備え、
前記チューブは、前記略テーパ状の部分に沿って延在する
装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、
前記バルーンは、単一の断面において複数のセルを備え、
前記バルーンは、前記セルを覆うための被覆を備え、
前記チューブは、前記被覆の延長部である
装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
前記セルの各々は、前記バルーンを支持するシャフトの膨張内腔に連通するテーパ状端部を備え、
前記チューブは、前記テーパ状端部の上に位置する
装置。
【請求項6】
血液の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置であって、
膨張可能な灌流バルーンであって、該灌流バルーンが膨張状態にある状態で、前記管内の前記血液の流れを許容するための内部通路を境界付ける複数のセルを有する灌流バルーンと、
前記通路内での前記血液の流れを制御するために前記バルーンの近位端に関連付けられたバルブであって、複数の細長いフラップを有するバルブと
を備え、
前記フラップの各々は、前記通路内での前記血液の流れを制御するために前記通路への入口を選択的に覆うために設けられ、
前記フラップの各々は、固定された近位端を備え、
前記フラップの各々は、コネクタによって前記バルーンに接続される遠位端を備える
装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、
前記バルーンは、略テーパ状の部分を備え、
前記フラップは、前記略テーパ状の部分に沿って延在する
装置。
【請求項8】
請求項6に記載の装置であって、
前記フラップは、遠位端よりも前記固定された近位端のところで狭い
装置。
【請求項9】
請求項6に記載の装置であって、
さらに、前記複数のフラップを覆うためのシースを備える
装置。
【請求項10】
流体の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置であって、
膨張可能な灌流バルーンであって、該灌流バルーンが膨張状態にある状態で、前記管内の前記流体の流れを許容するための内部通路を有する膨張可能な灌流バルーンと、
前記通路内での前記流体の流れを制御するために前記バルーンに関連付けられたバルブであって、縮んで、前記通路への、または、前記通路からの流体の流れを制限するように構成されるとともに、拡張して、前記通路への、または、前記通路からの流体の流れを許容するように構成された、前記バルーンを覆う螺旋状被覆を有するバルブと
を備える装置。
【請求項11】
請求項
10に記載の装置であって、
前記螺旋状被覆は、前記バルーンの上に螺旋状に巻かれる細長い材料片を備える
装置。
【請求項12】
請求項
10に記載の装置であって、
前記螺旋状被覆は、螺旋状の切り欠きが形成された円錐台形状の材料を備える
装置。
【請求項13】
請求項
10に記載の装置であって、
前記バルーンは、略テーパ状の部分を備え、
前記螺旋状被覆は、前記略テーパ状の部分に沿って延在する
装置。
【請求項14】
請求項
10に記載の装置であって、
前記バルーンは、単一の断面において複数のセルを備え、
前記バルーンは、前記セルを覆うための被覆を備え、
前記螺旋状被覆は、前記被覆の延長部である
装置。
【請求項15】
請求項
14に記載の装置であって、
前記セルの各々は、前記バルーンを支持するシャフトの膨張内腔に連通するテーパ状端部を備え、
前記螺旋状被覆は、前記テーパ状端部の上に位置する
装置。
【請求項16】
請求項
14に記載の装置であって、
前記螺旋状被覆は、前記バルーンの近位端部分のところに位置する
装置。
【請求項17】
流体の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置であって、
膨張可能な灌流バルーンであって、該灌流バルーンが膨張状態にある状態で、前記管内の前記流体の流れを許容するための内部通路を有する膨張可能な灌流バルーンを備え、
前記バルーンは、単一の断面において複数のセルを備え、
前記バルーンは、前記セルを少なくとも部分的に覆うための被覆を備え、
前記装置は、さらに、前記通路内での前記流体の流れを制御するために前記バルーンに関連付けられたバルブであって、前記通路の外部に配置され、前記被覆とは別体のバルブを備え、
前記バルブは、前記バルーンのテーパ状の部分を覆う螺旋状被覆を備える
装置。
【請求項18】
請求項
17に記載の装置であって、
前記
螺旋状被覆は、選択的に開いて、前記通路への、または、前記通路からの流体の流れを可能にするための複数の開口を備える
装置。
【請求項19】
請求項
17に記載の装置であって、
前記被覆は、非柔軟性被覆である
装置。
【請求項20】
請求項1に記載の装置であって、
さらに、前記バルブを少なくとも部分的に覆うためのシースを備える
装置。
【請求項21】
請求項
10に記載の装置であって、
さらに、前記バルブを少なくとも部分的に覆うためのシースを備える
装置。
【請求項22】
請求項
14に記載の装置であって、
さらに、前記バルブを少なくとも部分的に覆うためのシースを備える
装置。
【請求項23】
請求項
17に記載の装置であって、
さらに、前記バルブを少なくとも部分的に覆うためのシースを備える
装置。
【請求項24】
請求項
18に記載の装置であって、
さらに、前記バルブを少なくとも部分的に覆うためのシースを備える
装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]本明細書に記載される全ての公表文献および特許出願は、各公表文献または特許出願が参照によって組み入れられるように具体的かつ個別的に表示されるかのように同程度に参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
[0002]バルーンなどの拡張可能なデバイスが医療処置において広く使用されている。バルーンの場合、それは、典型的にはカテーテルの端部で、バルーンが対象領域に到達するまで体内に挿入される。バルーンに圧力を加えることによって、バルーンが膨張される。使用方法の1つのバリエーションでは、バルーンは、膨張するときに、体内に空間を作り出す。
【0003】
[0003]バルーンは、心臓に関連する弁で使用することができ、それには、大動脈弁バルーン形成術(BAV)(原らの「経皮バルーン大動脈弁形成術再検討:再生時間?」発行2007;115:e334-8)中や経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)中が含まれる。そのような処置のために、膨張されるバルーンは、継続的な血流または灌流を可能にするように設計され得る。しかしながら、バルーンが膨張されたとき、心臓弁は必ず一時的に無効化される。これは、血流の阻害(望ましくない逆流を作り出すことによるものが含まれる)につながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]したがって、処置中に、特に処置の結果または別の結果として無効化される弁を含む処置に関連して使用されるときに、流体の流れを調節するのに使用可能な灌流バルーンを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]開示される実施形態の技術的効果は、灌流バルーンの外部において弁での流れの調節を達成することを含むと捉えることができる。これは、バルブを開ける際に流体の流れを向上させ、バルブを閉じる際に流れの閉鎖を向上させ、および/または、バルーンを製造するためのより簡単な方法を作り出す(特に、バルーンのまわりに非コンプライアントシェルを備える場合)。一実施形態では、例えば通路への複数の入口を同時に閉塞させ、また、閉塞解除することによって、通路全体を通る流れを調節して灌流を可能にするために、単一のバルブが使用され得る。
【0006】
[0006]本開示の一態様によれば、流体の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置が提供される。この装置は、膨張可能な灌流バルーンを備えている。灌流バルーンは、灌流バルーンが膨張状態にある状態で管内における流体の流れを許容するための複数の入口を有する内部通路を備えている。通路内での流体の流れを制御するために、バルブがバルーンに関連付けられる。このバルブは、通路中での流体の流れを制御するために、通路への入口を選択的に覆うためのものである。このため、バルブは、流体が内部通路内へ流れることを可能にするための、入口から離間した第1の状態または位置と、通路への流体の流れを制限するための、第1の状態または位置よりも入口に近い第2の状態または位置と、を備えている。
【0007】
[0007]一実施形態では、バルブはチューブを備えている。このチューブは、略円形の連続的な断面を有していてもよい。バルーンは、略テーパ状の部分を備えていてもよく、チューブは、略テーパ状の部分に沿って延在する。バルーンは、単一の断面において複数のセルを備えていてもよく、また、これらのセルを覆うための被覆を備えていてもよい。チューブは、被覆の延長部であってもよい。各セルは、バルーンを支持するシャフトの膨張内腔に連通するネック部を備えており、チューブは、ネック部の上にあってもよい。チューブは、バルーンの近位端部分のところに位置していてもよい。
【0008】
[0008]本開示のさらなる態様によれば、流体の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置が提供される。この装置は、膨張可能な灌流バルーンを備えている。灌流バルーンは、灌流バルーンが膨張状態にある状態で管内における流体の流れを許容するための内部通路を備えている。通路内での流体の流れを制御するために、バルーンに関連付けられたバルブが設けられる。このバルブは、入口を覆うための複数の細長いフラップを備えている。
【0009】
[0009]一実施形態では、フラップは、通路への入口を選択的に覆って通路内での流体の流れを制御するために、近位端のところ(すなわち、バルーンを支持するシャフトに対応する端部のところ)に固定される。固定された近位端は、バルーンに接続され、フラップの各々は、バルーンに接続されない遠位端を備えている。バルーンは、略テーパ状の部分を備えていてもよく、フラップは、略テーパ状の部分に沿って延在していてもよい。フラップは、それぞれ、テザーによってバルーンに接続された遠位端を備えていてもよい。フラップは、固定された近位端のところが遠位端よりも狭くてもよい。例えばチューブの延長部、複数のフラップなどの本明細書で開示される任意のバルブを覆うためにシースが設けられてもよい。
【0010】
[00010]本開示のさらなる態様は、流体の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置に関する。この装置は、膨張可能な灌流バルーンを備えている。灌流バルーンは、灌流バルーンが膨張状態にある状態で管内における流体の流れを許容するための内部通路を備えている。通路内での流体の流れを制御するために、バルブがバルーンに関連付けられる。このバルブは、縮んで、通路への、または、通路からの流体の流れを制限するとともに、拡張して、通路への、または、通路からの流体の流れを許容するように構成された螺旋状被覆を備えている。
【0011】
[00011]一実施形態では、螺旋状被覆は、バルーンのまわりに螺旋状に巻かれた細長い一片の材料を備えている。螺旋状被覆は、螺旋状の切り欠きを有する円錐台を有する材料を備えている。バルーンは、略テーパ状の部分を備えていてもよく、螺旋状被覆は、略テーパ状の部分に沿って延在する。
【0012】
[00012]バルーンは、単一の断面において複数のセルを備えていてもよく、また、これらのセルを覆うための被覆を備えていてもよい。螺旋状被覆は、被覆の延長部であってもよい。各セルは、バルーンを支持するシャフトの膨張内腔に連通するネック部を備えていてもよく、この場合、螺旋状被覆は、ネック部の上にある。螺旋状被覆は、バルーンの近位端部分のところに位置していてもよい。
【0013】
[00013]本開示のさらなる態様は、流体の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置に関する。この装置は、膨張可能な灌流バルーンを備えている。灌流バルーンは、灌流バルーンが膨張状態にある状態で管内における流体の流れを許容するための内部通路を備えている。バルーンは、単一の断面において複数のセルを備えており、また、これらのセルを少なくとも部分的に覆うための被覆を備えている。バルーンに関連付けられたバルブが、通路内での流体の流れを制御するためにあり、このバルブは、通路の外部に配置され、被覆とは別体である。これは、非コンプライアントであってもよい。
【0014】
[00014]一実施形態では、バルブは、略円錐台形状を有する材料であって、バルーンのテーパ状の部分に沿って延在する材料を備えている。この材料は、通路へ、または、通路から流体が流れることを可能にするために、複数の開口(例えば、スリットなど)を備えている。この開口は、フラップによって覆われてもよい。バルブは、バルーンのテーパ状の部分に沿って延在する螺旋状被覆を備えていてもよい。バルブは、通路への入口を選択的に覆って、通路内での流体の流れを制御するために、複数の細長いフラップを備えていてもよい。フラップは、固定された近位端を有している。上述したように、任意の実施形態が、バルブを少なくとも部分的に覆うシースを備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】[00015]拡張状態にある膨張可能なデバイスの斜視図である。
【
図2】[00016]拡張状態にある膨張可能なデバイスの斜視図であり、外側被覆すなわちシェルを備えている。
【
図3】[00017]バルブを形成する延長された被覆すなわちシェルを備える膨張可能なデバイスの斜視図である。
【
図4】[00018]
図3の線4-4に沿った断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを許容するための第1の位置にある。
【
図5】[00019]
図4のデバイスの側断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを制限するための第2の位置にある。
【
図6】[00020]さらなる実施形態のバルブを備える膨張可能なデバイスの斜視図である。
【
図7】[00021]
図6の線7-7に沿った断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを制限するための第1の位置にある。
【
図8】[00022]
図7のデバイスの側断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを許容するための第2の位置にある。
【
図9】[00023]さらなる実施形態のバルブを備える膨張可能なデバイスの斜視図である。
【
図10】[00024]
図9の線10-10に沿った断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを制限するための第1の位置にある。
【
図11】[00025]
図9のデバイスの側断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを許容するための第2の位置にある。
【
図12】[00026]さらなる実施形態のバルブを備える膨張可能なデバイスの斜視図である。
【
図13】[00027]
図12の線13-13に沿った断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを許容するための第1の位置にある。
【
図14】[00028]
図13のデバイスの側断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを制限するための第2の位置にある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[00029]開示される本発明は、本質的に灌流バルーンの範疇に入る膨張可能なデバイスに関する。本発明の新規の特徴は、後で記載される特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の原理が使用される例示的な実施形態を説明する次の詳細な説明と、添付図面と、を参照することによって、本発明の特徴および利点がより良好に理解されるであろう。
【0017】
[00030]
図1は、膨張可能なデバイス10を示している。デバイス10は、処置に関して使用準備ができた膨張状態にある灌流バルーン12を備えている(ただし、このバルーンは、通常、選択された治療領域(例えば、大動脈弁)まで血管系を通って移送する目的で折り畳まれている)。膨張状態を見れば、デバイス10のバルーン12は、バルーンの少なくとも単一の断面において複数の膨張可能なセル12a(8つが図示されているが、任意の数が設けられ得る)を有していてもよいことを理解することができる。
図2に示されるように、保持部(例えば、セルまたはジャケットを形成するチューブ状の可撓性シースまたは被覆18)が、図示される実施形態では略環状の形態でセル12aを保持するために、セル12aの中央部分の上に設けられてもよく、また、狭窄バルブ等と接触するときにセルを保護するようにも機能してもよい。被覆18は、セル12aが完全に膨張された後にさらなる拡張を防止するために、非コンプライアントであってもよい。
【0018】
[00031]セル12aは、個々の、すなわち、離散的な個別に膨張可能なバルーンであってもよい。各セル12aは、上述のようにネック部12bを介して、また、遠位端のところのネック部12cを介して、分離した膨張内腔を有しており、これは、バルーン12の略テーパ状の部分を形成する。セル12aは、遠位先端のところ(例えば、各ネック部12cの遠位端のところ)でシールされていてもよく、あるいは、単一のバルーンの一部分であってもよい。後者は、中央軸線Xに沿って延在する通路Pをセル12aに形成させる態様で折り畳まれた、セグメント化された細長い構造によって達成され得る。バルーン12が完全に膨張されたときであっても、流体(例えば、血液)が中央軸線Xに沿って流れ続けることができる(これは、単一の膨張内腔によって行われてもよく、あるいは、各バルーンは、それ自体の膨張内腔を有していてもよい)。このタイプのバルーンの完全な説明は、国際特許出願公開WO2012099979で見つけることができる。ただし、他の形態の灌流バルーンも使用され得る(例えば、チューブ状のバルーン、流体の流れが膨張中に生じることを可能にする目的で周囲(たとえば、螺旋状)チャネルを有するもの、または、これらの技術の任意の組み合わせなど)。
【0019】
[00032]任意の場合において、デバイス10は、中央軸線Xに沿って延在する内腔Lを有する内側シャフトすなわちチューブ14を備えていてもよい。内側チューブ14は、デバイスを治療場所へ案内するためのガイドワイヤを受け入れるように構成されていてもよい。内側チューブ14は、カテーテルシャフトすなわちチューブ16の一部分を形成してもよく、チューブ16は、内側チューブ14が位置決めされる内腔Nを備えている。次いで、灌流バルーン12は、例えば、通路Pへの入口を形成する近位ネック部12bのところ、または、その近傍で、カテーテルシャフト16に取り付けられ、カテーテルシャフト16によって支持されてもよい。通路Pは、内腔Nを通る膨張流体を受け入れてもよい。
【0020】
[00033]本開示の一態様によれば、バルーン12は、通路Pを通る流体の流れを選択的に調節するように構成される。開示される一実施形態では、これは、バルーン12の外部の(すなわち、通路P内に位置していないか、あるいは、ネック部12b,12cとシャフトすなわちチューブ14との間の内部空間内に位置していない)バルブ20を使用して達成される。バルブ20は、受動的な態様(例えば、被覆18の延長部18a)で選択的に動作する。延長部18aは、例えば、単一の延長部が通路への複数の入口を塞ぐように、非作動時(
図3および
図4)に第1の位置または状態において通路Pを通る流れを許容するように構成される。第2の位置または状態では、延長部18aによって形成されたバルブ20は、通路Pの入口(すなわち、セル12aのネック部12b同士の間の空間)を覆って、それを実質的に塞ぎ(
図5の延長部18’に留意のこと)、ひいては、作動時に流体が流れることを妨害または防止してもよい(これは、循環によって生じる対応する管内の流体の流れの結果として受動的に達成されてもよい)。このようにして、バルブは、(例えば、大動脈弁を含む空間において、)バルーン12が膨張されているときに通路Pを通る流体の流れを繰り返し的かつ規則的に制限または許容してもよく、したがって、さもなければ無効化されるバルブの機能を再現する。したがって、延長部18(これは、通路Pへの1つ以上の入口を覆うにもかかわらず、本実施形態では単一の要素であってもよい)は、デバイス10を使用した処置中に一方向弁機能を提供する。
【0021】
[00034]延長部18aは、略チューブ状形状を有する柔軟材料から形成されていてもよく、また、略円形の断面を有していてもよい。延長部18aを形成する材料は、連続的であってもよいが、バルブ機能を達成するために、2つ以上のセグメントで設けられてもよい(例えば、二尖弁を模した2つのセグメント、三尖弁を模した3つのセグメントなど)。延長部18aは、被覆18を有する単一構造を形成してもよいが、(被覆と並んで、または、その上または下の層として)バルーン12に取り付けられる別体構造であってもよい。延長部18aの長さは、折り畳まれたときに通路Pへの入口のための適切な被覆を提供するように選択されてもよい。これは、勿論、バルーン12のサイズおよび形状に依存するであろう。
【0022】
[00035]バルブ18を形成する材料には、オプションとして、バルーン12がつぶれるときの優先的な折り畳み、および、その後の拡張が容易になる特性が付与されてもよい。これは、例えば、厚みが異なる材料を使用して、材料を何らかの方法で折り畳ませるリビングのヒンジまたは類似の構造を作り出すことによって達成されてもよい。弁体の材料には、所望のバルブ機能を達成するために、意図する態様でバルブ18が確実に拡張するか、または、つぶれるように、優先的な態様で折り畳みおよび折り畳み解除を生じさせる折り畳み線、プリーツまたは支持体が設けられてもよい。
【0023】
[00036]上述したように、外部バルブ20は、バルーン12の中央部分のまわりに、ジャケットすなわち被覆18とは別体の構造として設けられてもよい。一例として、
図6~8を参照する。これらの図は、バルブ20が、通路Pへの入口を塞ぐための複数の構成部品(例えば、フラップ22)を備えている実施形態を示している。フラップ22は、例えばフラップの近位端(バルーン12の近位端に対応し、シャフト16への接続部を含む)のところに固定することによって、バルーン12(例えば、ネック部12b)またはシャフト16に部分的に取り付けられてもよいが、遠位端(バルーンの遠位端に対応し、例えば、先端を含む)のところに取り付けられてなくてもよい。この状況は、フラップ22がバルーン12の遠位端のところに位置する場合には逆にしてもよく、あるいは、フラップは、遠位端のところに同様に配置されてもよい。
【0024】
[00037]したがって、
図7と
図8とを比較することによって理解され得るように、フラップ22は、非作動状態において通路Pへの入口を覆ってもよく、次いで、作動して(
図8の22’)、流体が通路を通って流れることを可能にし、それによって、一方向弁を形成してもよい。フラップ22のうちの1つ以上が折り重なるか転倒することを防止するために、1つ以上のコネクタ(例えば、テザー(単数または複数)24)が設けられてもよい。テザー24は、バルブ20が開いているときに流体の流れを大きく妨げることを避けるために(これは、遠位端を例えばネック部12b、または、バルーン12の他の部分に取り付けることによっても達成され得る)薄い柔軟な構造(例えば、ワイヤ、ファイバ、リボンなど)であってもよい。
【0025】
[00038]収縮されるときにバルーン12を引き出す目的でフラップ22の捕捉または保持を補助するために、オプションのシース26が設けられてもよい。そのようなシース26は、バルブ20およびバルーン12を引き出すこと、および/または、バルブ機能が確実に制御または調節されることを含む、開示される実施形態とは別のもの(例えば、延長部18aまたは後述する実施形態)に関連しても使用され得る。
【0026】
[00039]外部バルブ20への別のアプローチが、
図9~11を参照して例示される。この構成では、バルブ20は、螺旋状被覆28を備えている。この被覆28は、例えば近位ネック部12bに沿って近位ネック部12b上に、バルーン12のまわりに螺旋状に巻かれた細長い一片の材料であってもよく、あるいは、螺旋状に切断された略円錐台状の一片の材料であってもよい。被覆28を形成する材料は、近位端部分および遠位端部分のところでバルーン12に(接着によって直接的に、または、テザーなどのコネクタによって)接続されてもよい。近位端は、代替的に、シャフト16に接続されてもよい。この材料は、被覆18の延長部を形成してもよい。
【0027】
[00040]任意の場合において、このようにして、図示する実施形態において通路Pから近位方向への流体の流れを可能にする螺旋状被覆28の結果として、隙間または切り欠きが設けられる(
図11の28’に留意のこと)。これは、螺旋状被覆28を形成する材料が軸線方向すなわち長手方向に移動することからも生じ得る。このため、結果として生じる開口は、流体流れ方向が逆になって、反対方向への流れを防止するときに(螺旋状被覆を形成する材料を長手方向に圧縮することによることが含まれ得る)、閉じられる。このようにして、一方向弁が得られる。上述のシース(図示せず)は、コネクタまたはテザーと同様に、この構成においても使用され得る。
【0028】
[00041]さらに別の構成が
図12~14に示されている。この実施形態では、1つの円錐台状材料30が、ジャケットすなわち被覆を形成する材料とは別に、ネック部12bの上に適用される。この材料30には、材料の可動部品(例えば、フラップ30a)に関連付けられた戦略的に位置決めされる開口が設けられる。これらのフラップ30aは、流体が通路Pへ、または、通路Pから流れることを可能にするために、受動的に開いてもよく(
図12および
図13)、次いで、流れを制限するために閉じてもよい(
図14の30a’)。6つのフラップ30aが図示されているが、所定程度のバルブ機能を達成するための必要性に応じて、バルーン12のテーパ状の部分の周囲全体に沿って任意の数が設けられてもよいことが理解され得る。フラップ18a同士は、図示されるように長手方向および周方向に略整合されてもよく、あるいは、これらの方向の一方または両方において不規則に離間されてもよい。
【0029】
[00042]フラップ30aは、材料30を切断することによって形成されてもよい。材料30は、(膨張されたときにバルーン12を非コンプライアントにする態様でファイバから通常形成されるジャケットすなわち被覆18とは対照的に、)単純にヒンジから離れる態様の薄いフィルムであってもよい。したがって、フラップ30aは、流体の流れに応じて自由に開閉し、それによって、入口を実質的に塞ぎ、したがって、結果として通路Pを通る流れを調節する。フラップ30aの開閉は、任意の方向であってもよい。この構成は、魚のえらを模した態様で提供されてもよく、したがって、開口は、別体のフラップ30aによって覆われないが材料の撓みによって単純に開閉するスリットとして、単純に設けられてもよい。
【0030】
[00043]様々な材料が、上述の構造を形成するために使用され得る。それには、国際特許出願公開WO2012099979で概説されているようなものが含まれる。
【0031】
[00044]上述の説明は、本発明の概念の例示を提供することを意図しており、本発明を特定の態様または形態に限定することを意図するものではない。全ての実施形態において、バルブ20の位置および向きは経心尖処置のために逆にされてもよい(例えば、遠位位置または近位位置、あるいは、交互に対向する)。単数形として本明細書に記載された任意の要素は、複数になってもよく(すなわち、「1つ」として記載された任意のものは1つよりも多くなり得る)、複数の要素は、個別に使用されてもよい。要素、デバイス、方法またはそれらの組み合わせの単一のバリエーションの開示された特徴は、他のバリエーション、例えば、寸法、破裂圧力、形状、材料、または、それらの組み合わせに使用または適用されてもよい。族要素の任意の種要素は、当該族の任意の他の種要素の特徴または要素を有していてもよい。「略」または「実質的に」といった用語は、その値が状況に応じて(例えば、所与の条件の10%まで)変わり得ることを意味している。本発明の実施するための上述の構成、要素または完全な組立体および方法ならびにそれらの要素、ならびに、本発明の態様のバリエーションは、任意の自明な修正形態とともに、任意の組み合わせで互いに組み合わせたり修正したりすることができる。