(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ヌクレアーゼを使用するヒト神経幹細胞のゲノム編集
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20221220BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221220BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221220BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20221220BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20221220BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221220BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20221220BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20221220BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221220BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221220BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20221220BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221220BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221220BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20221220BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20221220BHJP
C07K 14/565 20060101ALN20221220BHJP
C07K 14/485 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/12
C12N5/10
C12N15/09 110
C12N9/16 Z
A61K35/30
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/28
A61P27/02
A61P9/10
A61P9/00
A61P29/00
C12N15/11 Z
C07K14/47
C07K14/565
C07K14/485
(21)【出願番号】P 2018554450
(86)(22)【出願日】2017-04-13
(86)【国際出願番号】 US2017027504
(87)【国際公開番号】W WO2017180926
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-04-02
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518361675
【氏名又は名称】ボコ シリコン バレー, インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ポーテウス, マシュー エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】キルドベック, エリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】デバー, ダニエル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】クラーク, ジョセフ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ツカモト, アン
(72)【発明者】
【氏名】ウチダ, ノブコ
【審査官】新留 豊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/073867(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/188056(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0280222(US,A1)
【文献】国際公開第2015/057976(WO,A1)
【文献】特表2016-504026(JP,A)
【文献】特表2015-523856(JP,A)
【文献】PLOS ONE,2015年,Vol.10, No.1,e0116032
【文献】Development,2017年,Vol.144,p.635-648
【文献】NATURE METHODS,2011年,Vol.8, No.10,p.861-869,DOI:10.1038/NMETH.1674
【文献】SCIENCE,2013年,Vol.339,p.823-826
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12N 5/10
C12N 9/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、
(a)(i)導入遺伝子を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子座の2つの非重複相同部分を含む2つの
ポリヌクレオチ
ドであって、前記導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置する
ポリヌクレオチ
ドを含むドナー鋳型と、
(b)前記セーフハーバー遺伝子座に二本鎖切断を作製して前記セーフハーバー遺伝子座中への前記導入遺伝子の挿入を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたは前記DNAヌクレアーゼをコードする
ポリヌクレオチ
ドと
を単離されたヒト神経幹細胞中に導入することであって、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成すること
を含
み、
前記セーフハーバー遺伝子座が、IL2RγまたはHBB遺伝子を含む、
方法。
【請求項2】
前記DNAヌクレアーゼが、CRISPR関連タンパク質(Cas)ポリペプチド、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、これらのバリアント、これらの断片、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単離されたヒト神経幹細胞が初代神経幹細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記単離されたヒト神経幹細胞が、体性幹細胞もしくは多能性幹細胞に由来するか、または体細胞集団からのダイレクトリプログラミングによって誘導される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記導入遺伝子が、中枢神経系の遺伝的障害に関連するタンパク質をコードする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質が、GALC(クラッベ病)、ABCD1(副腎白質ジストロフィー)、GFAP(アレキサンダー病)、CYP27A1(脳腱黄色腫症)、ARSA(異染性白質ジストロフィー)、PLP1(ペリツェウス・メルツバッハー病)、ASPA(カナバン病)、EIF-2B(白質の消失を伴う白質脳症)、PHYH(レフサム病1型)、PEX7(レフサム病2型)、PPT1(乳児性神経セロイドリポフスチン症(NCL))、TPP1(遅発型小児性NCL)、CLN3(若年性NCL)、CLN6(成人NCL)、CLN5(フィンランド遅発型小児性バリアントNCL)、CLN6(遅発型小児性バリアントNCL)、MSFD8(セロイドリポフスチン症、神経性、7)、CLN8(セロイドリポフスチン症、神経性、8)、CTSD(セロイドリポフスチン症、神経性、10)、UBE3A(アンジェルマン症候群)、POLG(アルパース病)、TAZ(バース症候群)、GLA(ファブリー病)、SLC20A2(ファール症候群)、PDE(網膜色素変性症)、SMN1(脊髄性筋萎縮症)、IKBKAP(家族性自律神経失調症)、MeCP2(レット症候群)、CACNA1C(チモシー症候群)、ATXN3(マチャド・ジョセフ病)、およびRPE65(レーバー先天性黒内障)からなる群から選択される遺伝子によってコードされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質が、前記遺伝子改変されたヒト神経幹細胞によって分泌される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記導入遺伝子が、神経保護または神経再生タンパク質、そのバリアント、その断片、またはそのペプチド模倣体をコードする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記神経保護または神経再生タンパク質が、脳由来神経栄養因子(BDNF)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、インスリン様成長因子2(IGF-2)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-2(NT-2)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)、ニューロトロフィン-6、保存ドーパミン神経栄養因子(CDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン-β(IFN-β)、腫瘍壊死因子-α(TNFα)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ニュールツリン、パーセフィン、アルテミン、ニューロペプチドY(NPY)、エフリン、セマフォリン、その他の神経新生因子、その他の神経栄養因子、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記神経保護または神経再生タンパク質が分泌タンパク質である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ドナー鋳型が異種プロモーターを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ドナー鋳型の前記異種プロモーターが、誘導性プロモーターまたは細胞特異的プロモーターを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記DNAヌクレアーゼをコードする前記
ポリヌクレオチ
ドがRNAを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
DNAターゲティングRNA、トランケート型DNAターゲティングRNA、または前記DNAターゲティングRNAもしくは前記トランケート型DNAターゲティングRNAをコードする
ポリヌクレオチ
ドを前記ヒト神経幹細胞中に導入することをさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記DNAヌクレアーゼが、Casポリペプチドまたは前記Casポリペプチドをコードする
ポリヌクレオチ
ドを含み、前記DNAターゲティングRNAが、前記セーフハーバー遺伝子座の一部分に相補的な第1の
ポリヌクレオチ
ドおよび前記Casポリペプチドと相互作用する第2の
ポリヌクレオチ
ドを含む、単一ガイドRNA(sgRNA)またはトランケート型sgRNAを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記Casポリペプチドが、Cas9ポリペプチド、そのバリアント、またはその断片を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Casポリペプチドのバリアントが、高忠実度のまたは特異性が増進したCas9ポリペプチドのバリアントを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記sgRNAまたはトランケート型sgRNAが1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、リボース基、リン酸基、核酸塩基、またはこれらの組合せにおける修飾を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記リボース基における前記修飾が、前記リボース基の2’位における修飾を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記リボース基の2’位における前記修飾が、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-デオキシ、2’-O-(2-メトキシエチル)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記リン酸基における前記修飾がホスホロチオエート修飾を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、2’-O-メチルヌクレオチド(M)、2’-O-メチル、3’-ホスホロチオエートヌクレオチド(MS)、2’-O-メチル、3’-チオPACEヌクレオチド(MSP)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の
ポリヌクレオチ
ド中のヌクレオチドの少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれより多くが修飾ヌクレオチドであり、かつ/または前記第2の
ポリヌクレオチ
ド中のヌクレオチドの少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれより多くが修飾ヌクレオチドである、請求項18から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の
ポリヌクレオチ
ド中のヌクレオチドの約10%から約30%が修飾ヌクレオチドであり、かつ/または前記第2の
ポリヌクレオチ
ド中のヌクレオチドの約1%から約10%が修飾ヌクレオチドである、請求項18から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記セーフハーバー遺伝子座が、IL2R
γ遺伝子を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
導入することがエレクトロポレーションを含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ドナー鋳型が選択マーカーをさらに含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記選択マーカーが、中枢神経系の細胞では発現されないマーカーを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記選択マーカーが細胞表面タンパク質である、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞表面タンパク質が、CD1、CD2、CD4、CD8α、CD10、CD19、CD20、これらのバリアント、これらの断片、これらの誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記遺伝子改変されたヒト神経幹細胞による前記選択マーカーの発現に基づいて前記遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を精製することをさらに含む、請求項28から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記精製された遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を増殖させることをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1から33のいずれか一項に記載の方法によって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞。
【請求項35】
請求項34に記載の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項36】
それを必要とするヒト対象における神経変性疾患または神経学的損傷を予防または治療するための、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記医薬組成物が、白質ジストロフィー、神経セロイドリポフスチン症、加齢黄斑変性、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、および網膜変性疾患からなる群から選択される神経変性疾患の治療用である、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記医薬組成物が、クラッベ病、ペリツェウス・メルツバッハー病、副腎脊髄ニューロパチー、アレキサンダー病、脳腱黄色腫症、異染性白質ジストロフィー、カナバン病、白質の消失を伴う白質脳症、副腎白質ジストロフィー、レフサム病、およびゼノベファントーシスからなる群から選択される白質ジストロフィーの治療用である、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記医薬組成物が、脊髄損傷、外傷性脳損傷、中枢神経系(CNS)の急性炎症、CNSの慢性炎症、虚血、および卒中からなる群から選択される神経学的損傷の治療用である、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記遺伝子改変されたヒト神経幹細胞が前記対象に対して自己である、請求項36から39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記遺伝子改変されたヒト神経幹細胞が前記対象に対して同種である、請求項36から39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記医薬組成物が、注射または外科的移植によって投与されることを特徴とする、請求項36から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
(a)(i)導入遺伝子を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子座の2つの非重複相同部分を含む2つの
ポリヌクレオチ
ドであって、前記導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置する
ポリヌクレオチ
ドを含むドナー鋳型と、
(b)DNAヌクレアーゼまたは前記DNAヌクレアーゼをコードする
ポリヌクレオチ
ドと、
(c)単離されたヒト神経幹細胞と
を含
み、
前記セーフハーバー遺伝子座が、IL2RγまたはHBB遺伝子を含む、
キット。
【請求項44】
前記DNAヌクレアーゼが、CRISPR関連タンパク質(Cas)ポリペプチド、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、これらのバリアント、これらの断片、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
前記単離されたヒト神経幹細胞が初代神経幹細胞を含む、請求項43または44に記載のキット。
【請求項46】
前記単離されたヒト神経幹細胞が、体性幹細胞もしくは多能性幹細胞に由来するか、または体細胞集団からのダイレクトリプログラミングによって誘導される、請求項43または44に記載のキット。
【請求項47】
前記導入遺伝子が、中枢神経系の遺伝的障害に関連するタンパク質をコードする、請求項43から46のいずれか一項に記載のキット。
【請求項48】
前記導入遺伝子が、神経保護または神経再生タンパク質、そのバリアント、その断片、またはそのペプチド模倣体をコードする遺伝子を含む、請求項43から46のいずれか一項に記載のキット。
【請求項49】
前記DNAヌクレアーゼをコードする前記
ポリヌクレオチ
ドがRNAを含む、請求項43から48のいずれか一項に記載のキット。
【請求項50】
DNAターゲティングRNA、トランケート型DNAターゲティングRNA、または前記DNAターゲティングRNAもしくは前記トランケート型DNAターゲティングRNAをコードする
ポリヌクレオチ
ドをさらに含む、請求項43から49のいずれか一項に記載のキット。
【請求項51】
前記DNAヌクレアーゼが、Casポリペプチドまたは前記Casポリペプチドをコードする
ポリヌクレオチ
ドを含み、前記DNAターゲティングRNAが、前記セーフハーバー遺伝子座の一部分に相補的な第1の
ポリヌクレオチ
ドおよび前記Casポリペプチドと相互作用する第2の
ポリヌクレオチ
ドを含む、一本鎖ガイドRNA(sgRNA)またはトランケート型sgRNAを含む、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
前記Casポリペプチドが、Cas9ポリペプチド、そのバリアント、またはその断片を含む、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記Casポリペプチドのバリアントが、高忠実度のまたは特異性が増進したCas9ポリペプチドのバリアントを含む、請求項52に記載のキット。
【請求項54】
前記sgRNAまたはトランケート型sgRNAが1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含む、請求項51から53のいずれか一項に記載のキット。
【請求項55】
前記1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、2’-O-メチルヌクレオチド(M)、2’-O-メチル、3’-ホスホロチオエートヌクレオチド(MS)、2’-O-メチル、3’-チオPACEヌクレオチド(MSP)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
前記セーフハーバー遺伝子座が、IL2R
γ遺伝子を含む、請求項43から55のいずれか一項に記載のキット。
【請求項57】
前記ドナー鋳型が選択マーカーをさらに含む、請求項43から56のいずれか一項に記載のキット。
【請求項58】
遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成するための説明書をさらに含む、請求項43から57のいずれか一項に記載のキット。
【請求項59】
導入遺伝子を含む導入遺伝子カセットを含む遺伝子改変されたヒト神経幹細胞であって、前記導入遺伝子カセットがセーフハーバー遺伝子座内に位置
し、前記セーフハーバー遺伝子座が、IL2RγまたはHBB遺伝子を含む、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞。
【請求項60】
潜在的な治療用分子を同定または開発する方法における、請求項34もしくは59に記載の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞、または請求項1から33のいずれか一項に記載の方法によって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞の使用。
【請求項61】
前記潜在的な治療用分子が、ヒト神経幹細胞および/またはヒト神経幹細胞の分化した子孫の増殖および/または生存能力を促進する分子である、請求項60に記載の使用。
【請求項62】
研究における、請求項34もしくは59に記載の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞、または請求項1から33のいずれか一項に記載の方法によって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞の使用。
【請求項63】
前記セーフハーバー遺伝子座が、IL2Rγ遺伝子を含む、請求項34もしくは59に記載の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年4月14日に出願された米国仮特許出願番号第62/322,652号に基づく優先権の利益を主張しており、その内容は、その全体が参考として本明細書中に本明細書によって援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、遺伝子改変された神経幹細胞を生成するための方法に関する。
【0003】
連邦政府によって支援された研究および開発の下でなされた発明に対する権利に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所によって授与された認可番号R01 AI120766およびR01 AI097320の下、政府支援でなされた。政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
操作されたヌクレアーゼを用いたゲノム編集は、本質的にあらゆる目的のゲノム配列を改変するための画期的な技術である(Porteusら、Nature Biotechnology 23巻、967~973頁(2005年))。この技術は、操作されたヌクレアーゼを利用して部位特異的二本鎖切断(DSB)を生成し、それに続いて内因性の細胞修復機構によってDSBが回復される。結果的に、突然変異を起こさせる非相同末端結合(NHEJ)を通じて特定部位を突然変異させるか(これは切断の部位に挿入または欠失(in/del)を作製する)、または、外因的に導入されたドナー鋳型を使用する相同組換え(HR)を通じてゲノム配列を精密に変更するかのいずれかを行い得る(Hendelら、Trends in Biotechnology 33巻、132~140頁(2015年))。
【0005】
このプラットフォームへの最近の大きな追加は、RNAガイド化ヌクレアーゼ(Cas)および短鎖ガイドRNA(sgRNA)からなる、クラスターを形成し規則正しい間隔を持つパリンドロームリピート(clustered regularly interspaced palindromic repeat;CRISPR)/Casシステムである(Jinekら、Science 337巻、816~821頁(2012年);Maliら、Science 339巻、823~826頁(2013年);Congら、Science 339巻、819~823頁(2013年);Hsuら、Cell 157巻、1262~1278頁(2014年))。ガイドRNAは、CRISPR RNA(CrRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)と称される2つのRNAから構成され、これらは、通常、キメラの単一ガイドRNA(sgRNA)に融合される。ゲノム編集用のsgRNAは、100ヌクレオチド(nt)からなることがあり、そしてその5’末端の20ntが、ワトソン・クリック型塩基対形成により標的DNA配列にハイブリダイズし、Casエンドヌクレアーゼをガイドして標的ゲノムDNAを開裂させ得る。
【0006】
残念なことに、CRISPR/Casシステムやその他のヌクレアーゼ媒介性の技術を使用するゲノム編集は、特にヒト神経幹細胞などの初代細胞において依然として非効率的である。そのため、ヒト神経幹細胞などの初代細胞を遺伝子改変するために使用できるゲノム編集に基づく組成物および方法が当該技術分野において依然として必要とされている。本発明は、この必要性を満たし、かつ追加の利点も提供する。
神経幹細胞は、例えば、米国出願公開第2001/0044122号、同第2003/0109039号、同第2004/0137535号、米国特許第7037719号、およびUchidaら、Proc Natl Acad Sci USA、2000年、97巻(26号):14720~14725頁において議論されている。
本明細書中で参照する全ての刊行物、特許、特許出願、および特許出願公開の開示は、本明細書中で参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国出願公開第2001/0044122号明細書
【文献】米国出願公開第2003/0109039号明細書
【文献】米国出願公開第2004/0137535号明細書
【文献】米国特許第7037719号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Porteusら、Nature Biotechnology 23巻、967~973頁(2005年)
【文献】Hendelら、Trends in Biotechnology 33巻、132~140頁(2015年)
【文献】Jinekら、Science 337巻、816~821頁(2012年)
【文献】Maliら、Science 339巻、823~826頁(2013年)
【文献】Congら、Science 339巻、819~823頁(2013年)
【文献】Hsuら、Cell 157巻、1262~1278頁(2014年)
【文献】Uchidaら、Proc Natl Acad Sci USA、2000年、97巻(26号):14720~14725頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の簡単な要旨
本発明は、遺伝子改変された(すなわち、ゲノム編集された)ヒト神経幹細胞を生成する方法であって、(a)(i)導入遺伝子(例えば、異種プロモーターなどのプロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、
【0010】
(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列とを単離されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法を提供する。
【0011】
本発明は、本発明の方法によって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞も提供する。本発明はまた、(i)セーフハーバー遺伝子内に位置する、導入遺伝子(例えば、異種プロモーターなどのプロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセットを含む、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞も提供する。本発明の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供される。
【0012】
本発明は、それを必要とするヒト対象における神経変性疾患または神経学的損傷を予防または治療するための方法であって、神経変性疾患または神経学的損傷の1つまたは複数の症状を予防または軽減するために、有効量の本発明の医薬組成物をヒト対象に投与することを含む方法も提供する。
【0013】
(a)(i)導入遺伝子(例えば、異種プロモーターなどのプロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)DNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列と、(c)単離されたヒト神経幹細胞とを含むキットも本発明によって提供される。
【0014】
本発明は、潜在的な治療用分子を同定または開発する方法における、本発明の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞または本発明の方法によって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞の使用も提供する。これは、小分子または生物学的分子をスクリーニングして、ヒト神経幹細胞またはそれらの分化した子孫に作用する潜在的な治療用分子を同定することを伴い得る。本発明の一実施形態では、潜在的な治療用分子は、ヒト神経幹細胞および/またはヒト神経幹細胞の分化した子孫の増殖および/または生存能力を促進する分子である。
【0015】
本発明は、研究における、本発明の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞または本発明の方法によって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞の使用も提供する。研究用途としては、神経幹細胞の基礎生物学の基本的な生物学的研究および潜在的な療法を対象とする応用研究が挙げられる。
【0016】
本発明のその他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明および図面から当業者に明らかとなる。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、
(a)(i)導入遺伝子を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子座の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、前記導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、
(b)前記セーフハーバー遺伝子座に二本鎖切断を作製して前記セーフハーバー遺伝子座中への前記導入遺伝子の挿入を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたは前記DNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列と
を単離されたヒト神経幹細胞中に導入することであって、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成すること
を含む方法。
(項目2)
前記DNAヌクレアーゼが、CRISPR関連タンパク質(Cas)ポリペプチド、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、これらのバリアント、これらの断片、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記単離されたヒト神経幹細胞が初代神経幹細胞を含む、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記単離されたヒト神経幹細胞が、体性幹細胞もしくは多能性幹細胞に由来するか、または体細胞集団からのダイレクトリプログラミングによって誘導される、項目1または2に記載の方法。
(項目5)
前記導入遺伝子が、中枢神経系の遺伝的障害に関連するタンパク質をコードする、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記タンパク質が、GALC(クラッベ病)、ABCD1(副腎白質ジストロフィー)、GFAP(アレキサンダー病)、CYP27A1(脳腱黄色腫症)、ARSA(異染性白質ジストロフィー)、PLP1(ペリツェウス・メルツバッハー病)、ASPA(カナバン病)、EIF-2B(白質の消失を伴う白質脳症)、PHYH(レフサム病1型)、PEX7(レフサム病2型)、PPT1(乳児性神経セロイドリポフスチン症(NCL))、TPP1(遅発型小児性NCL)、CLN3(若年性NCL)、CLN6(成人NCL)、CLN5(フィンランド遅発型小児性バリアントNCL)、CLN6(遅発型小児性バリアントNCL)、MSFD8(セロイドリポフスチン症、神経性、7)、CLN8(セロイドリポフスチン症、神経性、8)、CTSD(セロイドリポフスチン症、神経性、10)、UBE3A(アンジェルマン症候群)、POLG(アルパース病)、TAZ(バース症候群)、GLA(ファブリー病)、SLC20A2(ファール症候群)、PDE(網膜色素変性症)、SMN1(脊髄性筋萎縮症)、IKBKAP(家族性自律神経失調症)、MeCP2(レット症候群)、CACNA1C(チモシー症候群)、ATXN3(マチャド・ジョセフ病)、およびRPE65(レーバー先天性黒内障)からなる群から選択される遺伝子によってコードされる、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記タンパク質が、前記遺伝子改変されたヒト神経幹細胞によって分泌される、項目5または6に記載の方法。
(項目8)
前記導入遺伝子が、神経保護または神経再生タンパク質、そのバリアント、その断片、またはそのペプチド模倣体をコードする、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記神経保護または神経再生タンパク質が、脳由来神経栄養因子(BDNF)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、インスリン様成長因子2(IGF-2)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-2(NT-2)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)、ニューロトロフィン-6、保存ドーパミン神経栄養因子(CDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン-β(IFN-β)、腫瘍壊死因子-α(TNFα)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ニュールツリン、パーセフィン、アルテミン、ニューロペプチドY(NPY)、エフリン、セマフォリン、その他の神経新生因子、その他の神経栄養因子、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記神経保護または神経再生タンパク質が分泌タンパク質である、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記ドナー鋳型が異種プロモーターを含む、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記ドナー鋳型の前記異種プロモーターが、誘導性プロモーターまたは細胞特異的プロモーターを含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記DNAヌクレアーゼをコードする前記ヌクレオチド配列がRNAを含む、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
DNAターゲティングRNA、トランケート型DNAターゲティングRNA、または前記DNAターゲティングRNAもしくは前記トランケート型DNAターゲティングRNAをコードするヌクレオチド配列を前記ヒト神経幹細胞中に導入することをさらに含む、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記DNAヌクレアーゼが、Casポリペプチドまたは前記Casポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、前記DNAターゲティングRNAが、前記セーフハーバー遺伝子座の一部分に相補的な第1のヌクレオチド配列および前記Casポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列を含む、単一ガイドRNA(sgRNA)またはトランケート型sgRNAを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記Casポリペプチドが、Cas9ポリペプチド、そのバリアント、またはその断片を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記Casポリペプチドのバリアントが、高忠実度のまたは特異性が増進したCas9ポリペプチドのバリアントを含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記sgRNAまたはトランケート型sgRNAが1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含む、項目15から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、リボース基、リン酸基、核酸塩基、またはこれらの組合せにおける修飾を含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記リボース基における前記修飾が、前記リボース基の2’位における修飾を含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記リボース基の2’位における前記修飾が、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-デオキシ、2’-O-(2-メトキシエチル)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記リン酸基における前記修飾がホスホロチオエート修飾を含む、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、2’-O-メチルヌクレオチド(M)、2’-O-メチル、3’-ホスホロチオエートヌクレオチド(MS)、2’-O-メチル、3’-チオPACEヌクレオチド(MSP)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目24)
前記第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれより多くが修飾ヌクレオチドであり、かつ/または前記第2のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれより多くが修飾ヌクレオチドである、項目18から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの約10%から約30%が修飾ヌクレオチドであり、かつ/または前記第2のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの約1%から約10%が修飾ヌクレオチドである、項目18から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記セーフハーバー遺伝子座が、IL2Rγ、CCR5、またはHBB遺伝子を含む、項目1から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
導入することがエレクトロポレーションを含む、項目1から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記ドナー鋳型が選択マーカーをさらに含む、項目1から27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記選択マーカーが、中枢神経系の細胞では発現されないマーカーを含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記選択マーカーが細胞表面タンパク質である、項目28または29に記載の方法。
(項目31)
前記細胞表面タンパク質が、CD1、CD2、CD4、CD8α、CD10、CD19、CD20、これらのバリアント、これらの断片、これらの誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記遺伝子改変されたヒト神経幹細胞による前記選択マーカーの発現に基づいて前記遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を精製することをさらに含む、項目28から31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記精製された遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を増殖させることをさらに含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
項目1から33のいずれか一項に記載の方法によって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞。
(項目35)
項目34に記載の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
(項目36)
それを必要とするヒト対象における神経変性疾患または神経学的損傷を予防または治療する方法であって、
前記ヒト対象に有効量の項目35に記載の医薬組成物を投与すること
を含む方法。
(項目37)
白質ジストロフィー、神経セロイドリポフスチン症、加齢黄斑変性、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、および網膜変性疾患からなる群から選択される神経変性疾患の治療用である、項目36に記載の方法。
(項目38)
クラッベ病、ペリツェウス・メルツバッハー病、副腎脊髄ニューロパチー、アレキサンダー病、脳腱黄色腫症、異染性白質ジストロフィー、カナバン病、白質の消失を伴う白質脳症、副腎白質ジストロフィー、レフサム病、およびゼノベファントーシスからなる群から選択される白質ジストロフィーの治療用である、項目37に記載の方法。
(項目39)
脊髄損傷、外傷性脳損傷、中枢神経系(CNS)の急性炎症、CNSの慢性炎症、虚血、および卒中からなる群から選択される神経学的損傷の治療用である、項目36に記載の方法。
(項目40)
前記遺伝子改変されたヒト神経幹細胞が前記対象に対して自己である、項目36から39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記遺伝子改変されたヒト神経幹細胞が前記対象に対して同種である、項目36から39のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
投与することが、注射または外科的移植によって投与することを含む、項目36から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
(a)(i)導入遺伝子を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子座の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、前記導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、
(b)DNAヌクレアーゼまたは前記DNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列と、
(c)単離されたヒト神経幹細胞と
を含むキット。
(項目44)
前記DNAヌクレアーゼが、CRISPR関連タンパク質(Cas)ポリペプチド、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、これらのバリアント、これらの断片、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目43に記載のキット。
(項目45)
前記単離されたヒト神経幹細胞が初代神経幹細胞を含む、項目43または44に記載のキット。
(項目46)
前記単離されたヒト神経幹細胞が、体性幹細胞もしくは多能性幹細胞に由来するか、または体細胞集団からのダイレクトリプログラミングによって誘導される、項目43または44に記載のキット。
(項目47)
前記導入遺伝子が、中枢神経系の遺伝的障害に関連するタンパク質をコードする、項目43から46のいずれか一項に記載のキット。
(項目48)
前記導入遺伝子が、神経保護または神経再生タンパク質、そのバリアント、その断片、またはそのペプチド模倣体をコードする遺伝子を含む、項目43から46のいずれか一項に記載のキット。
(項目49)
前記DNAヌクレアーゼをコードする前記ヌクレオチド配列がRNAを含む、項目43から48のいずれか一項に記載のキット。
(項目50)
DNAターゲティングRNA、トランケート型DNAターゲティングRNA、または前記DNAターゲティングRNAもしくは前記トランケート型DNAターゲティングRNAをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、項目43から49のいずれか一項に記載のキット。
(項目51)
前記DNAヌクレアーゼが、Casポリペプチドまたは前記Casポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、前記DNAターゲティングRNAが、前記セーフハーバー遺伝子座の一部分に相補的な第1のヌクレオチド配列および前記Casポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列を含む、一本鎖ガイドRNA(sgRNA)またはトランケート型sgRNAを含む、項目50に記載のキット。
(項目52)
前記Casポリペプチドが、Cas9ポリペプチド、そのバリアント、またはその断片を含む、項目51に記載のキット。
(項目53)
前記Casポリペプチドのバリアントが、高忠実度のまたは特異性が増進したCas9ポリペプチドのバリアントを含む、項目52に記載のキット。
(項目54)
前記sgRNAまたはトランケート型sgRNAが1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含む、項目51から53のいずれか一項に記載のキット。
(項目55)
前記1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、2’-O-メチルヌクレオチド(M)、2’-O-メチル、3’-ホスホロチオエートヌクレオチド(MS)、2’-O-メチル、3’-チオPACEヌクレオチド(MSP)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目54に記載のキット。
(項目56)
前記セーフハーバー遺伝子座が、IL2Rγ、CCR5、またはHBB遺伝子を含む、項目43から55のいずれか一項に記載のキット。
(項目57)
前記ドナー鋳型が選択マーカーをさらに含む、項目43から56のいずれか一項に記載のキット。
(項目58)
遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成するための説明書をさらに含む、項目43から57のいずれか一項に記載のキット。
(項目59)
導入遺伝子を含む導入遺伝子カセットを含む遺伝子改変されたヒト神経幹細胞であって、前記導入遺伝子カセットがセーフハーバー遺伝子座内に位置する、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞。
(項目60)
潜在的な治療用分子を同定または開発する方法における、項目34もしくは59に記載の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞、または項目1から33のいずれか一項に記載の方法によって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞の使用。
(項目61)
前記潜在的な治療用分子が、ヒト神経幹細胞および/またはヒト神経幹細胞の分化した子孫の増殖および/または生存能力を促進する分子である、項目60に記載の使用。
(項目62)
研究における、項目34もしくは59に記載の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞、または項目1から33のいずれか一項に記載の方法によって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞の使用。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1Aおよび1Bは、TALENまたはCRISPRなどの操作されたヌクレアーゼを使用する相同組換えによってGFP導入遺伝子をIL2Rγ遺伝子座に挿入したことを示す。
図1AはRFLPのデータを提供する。
図1Bは、CRISPR/Cas9がIL2Rγ遺伝子座においてTALENより高い頻度の遺伝子編集を刺激することを示す。
【0018】
【
図2】
図2A~2Cは、CRISPR/Cas9およびTALENなどの操作されたヌクレアーゼを使用する神経幹細胞(NSC)中へのGFP導入遺伝子のターゲティングされた組込みを示す。
図2Aは、例示的なIL2Rγ-GFPドナー鋳型の図解を提供する。
図2Bは、ヌクレオフェクション後の長期培養におけるGFP
+細胞の安定発現を示す。
図2Cは、本明細書中に記載するゲノム編集を受けたNSCの約2~4%がGFP陽性かつCD133陽性であったことを示す。
【0019】
【
図3】
図3は、クローンに由来するGFP陽性の遺伝子改変NSC(GM-NSC)を示す。
【0020】
【
図4】
図4Aおよび4Bは、選別および増殖させたGFP
+ GM-NSCに由来するオリゴデンドロサイトを示す。
図4Aは、GFP
+ GM-NSCを示す。
図4Bは、GFPおよびミエリン塩基性タンパク質(MBP)を発現するGM-NSCに由来するオリゴデンドロサイトを示す。GM-NSCを若年shi/shi-id突然変異マウス脳の小脳に直接移植した。脳切片を移植の8週間後に処理した。より高倍率により、ヒト細胞の子孫がミエリン鞘(myelin sheat)を伴う成熟したミエリン形成オリゴデンドロサイトに分化することが明らかとなり、分化能力がゲノム編集後に維持されていることを説明する。
【0021】
【
図5】
図5は、プラスミドに基づくCRISPR/Cas9システムおよびIL2Rγ遺伝子座にターゲティングされた化学修飾したsgRNAを有するRNAに基づくシステムを使用して生成されたINDELのパーセンテージを説明する。
【0022】
【
図6】
図6A~6Cは、化学修飾したsgRNAを有するRNAに基づくシステムを使用するCRISPR/Cas9プラットフォームの送達が、IL2Rγ遺伝子座にターゲティングされたプラスミドに基づくシステムよりも多くのGFP
+ GM-NSCを生じさせたことを示す。
図6Aは、プラスミドに基づくシステムを使用して生成されたGFP
+細胞のパーセンテージを示す。
図6Bは、化学修飾したsgRNAを有するRNAに基づくシステムを使用して産生されたGFP
+細胞のパーセンテージを示す。
図6Cは、試験したシステムの比較を提供する。
【0023】
【
図7】
図7は、本明細書中に記載するゲノム編集方法の例示的な実施形態の模式図を提供する。
【0024】
【
図8】
図8は、IL2Rγ遺伝子座にターゲティングされたUbC-GalC-2A-eGFP導入遺伝子の、精製GM-NSC中での長期培養(ヌクレオフェクションから約168日後)における安定発現を示す。GM-NSCは、示したようにFACSによって富化される。
【0025】
【
図9】
図9Aおよび9Bは、セーフハーバー遺伝子IL2RγへのUbC-GalC-2A-eGFP導入遺伝子のターゲティングされた組込みを説明する。
図9Aは、例示的なIL2Rγ-UbC-GalC-2A-eGFPドナー鋳型の図解を提供する。
図9Bは、ターゲティングされた組込みの部位のPCR分析を示す。ターゲティングされた組込みについての予想されるアンプリコンの大きさは2355塩基である。
【0026】
【
図10】
図10A~10Fは、UbC-GalC-2A-eGFPターゲティング導入遺伝子を持つGM-NSCを示す。CRISPRで改変したNSCをFACS精製してGFP
+細胞を選択した(
図10A)。選別したGFP
+細胞を増殖させたところ(
図10B)、ほとんどが神経幹細胞マーカーSox2陽性であった(
図10C)。TALENで改変したNSCをFACS精製してGFP
+細胞を選択した(
図10D)。選別したGFP
+細胞を増殖させたところ、依然としてGFP
+であった(
図10D)。また、増殖したGFP
+細胞のほとんどがSox2陽性であった(
図10F)。
【0027】
【
図11】
図11A~11Eは、CD8
+GFP
+ GM-NSCの単離および精製を説明する。
図11Aは、例示的なIL2Rγ-UbC-GFP-2A-CD8ドナー鋳型の図解を提供する。
図11Bは、ヌクレオフェクション後6継代での選択前のCD8
+細胞およびGFP
+細胞のパーセンテージを示す。
図11Cは、MACS CD8選択後のCD8
+細胞およびGFP
+細胞のパーセンテージを示す。CD8
+GFP
+ GM-NSCはin vitroでオリゴデンドロサイトに分化した。
図11Dは、GM-NSC細胞由来オリゴデンドロサイトの画像を提供する。
図11Eは、神経細胞(ダブルコルチン)およびアストロサイト(GFAP)に分化の細胞のパーセンテージを提供する。
【0028】
【
図12】
図12A~12Cは、CD19
+GFP
+ GM-NSCの単離および精製を説明する。
図12Aは、例示的なIL2Rγ-GFP-2Aトランケート型CD19ドナー鋳型の図解を提供する。
図12Bは、ヌクレオフェクションから40日目のCD19選択後のGFP
+細胞のパーセンテージを示す。
図12Cは、ほとんどの細胞が選択前にCD19陰性、GFP陰性であったことを示す。
図12Dは、ほとんどの細胞がMACS CD19選択後にCD19
+およびGFP
+であったことを示す。
【0029】
【
図13-1】
図13A~13Fは、CD8
+GFP
+ GM-NSCの単離および精製を示す。
図13Aは、例示的なIL2Rγ-UbC-GFP-2A-CD8ドナー鋳型の図解を提供する。
図13Bは、選択前のCD8
+細胞およびGFP
+細胞のパーセンテージを示す。
図13Cは、選択後のCD8
+細胞およびGFP
+細胞のパーセンテージを示す。
図13Dは、MACS CD8選択カラムを通過したCD8陰性細胞およびGFP陰性細胞のパーセンテージを示す。
図13Eは、CD8選択細胞の高いパーセンテージがGFP+でもあることを示す。
図13Fは、CD8選択GM-NSCの90%がGFP
+であることを示す。
【
図13-2】
図13A~13Fは、CD8
+GFP
+ GM-NSCの単離および精製を示す。
図13Aは、例示的なIL2Rγ-UbC-GFP-2A-CD8ドナー鋳型の図解を提供する。
図13Bは、選択前のCD8
+細胞およびGFP
+細胞のパーセンテージを示す。
図13Cは、選択後のCD8
+細胞およびGFP
+細胞のパーセンテージを示す。
図13Dは、MACS CD8選択カラムを通過したCD8陰性細胞およびGFP陰性細胞のパーセンテージを示す。
図13Eは、CD8選択細胞の高いパーセンテージがGFP+でもあることを示す。
図13Fは、CD8選択GM-NSCの90%がGFP
+であることを示す。
【0030】
【
図14】
図14A~14Cは、オリゴデンドロサイト突然変異シバラーマウスへの移植後のGM-NSCの生着、遊走、およびミエリン産生オリゴデンドロサイトへの分化を示す。GFPをCD8から分離する2シストロン性IL2RG HRカセットを作製して、NSCにターゲティングした。
図14Aは、CD8マイクロビーズを用いてGM-NSCをMACS選択したことを示す。次いで、GM-NSCを8週齢の若年シバラーidマウスに移植した。脳室下帯(subventricualr zone)(SVZ)にターゲティングして細胞を両側に移植した。
図14Bは、ヒト特異的mAb SC121で染色したマウス脳の切片を示す。移植の12週後のSC121染色により、RMSにおけるGM-NSCの嗅球および白質路への広範な遊走は、脳梁、脳弓の海馬采、および小脳中のそれらを含んでいたことが実証された。
図14Cは、抗GFP抗体で染色したマウス脳の切片を示す。移植したGM-NSCは、マウス中でGFP導入遺伝子を発現し続けた。ロバストなGFP導入遺伝子の発現はSC121染色に類似する。矢状脳切片により、移植細胞はSVZ中に存在することが示される。加えて、遊走するヒト細胞は、吻側移動経路(RMS)、脳梁(corpus collusum)、および皮質において検出される。
【0031】
【
図15】
図15A~15Fは、IL2Rγ遺伝子座にターゲティングされたUbC-GalC-T2A-tCD19導入遺伝子を持つCD19
+ GM-NSCを示す。MACS CD19選択マイクロビーズを使用して、細胞表面マーカーCD19を発現するGM-NSCを精製した。プラスミドに基づくsgRNA/CRISPRヌクレアーゼを使用して生成されたGM-NSCのフローサイトメトリーを
図15A~15Cに示す(選択前-
図15A;選択後-
図15B;増殖-
図15C)。Cas9 mRNAを有するMSP sgRNAを使用して生成されたGM-NSCのフローサイトメトリーを
図15D~15Fに示す(選択前-
図15D;選択後-
図15E;増殖-
図15F)。
【0032】
【
図16】
図16は、NSC中のIL2RG遺伝子座にターゲティングするCRISPR/Cas9媒介性の相同組換え(HR)を示す。Cas9(はさみ)を使用して二本鎖切断(DSB)を作製し、かつ相同ドナー鋳型(挿入される導入遺伝子の周りにフランキングする800bpのアームを有する)を供給することによって、相同組換え(HR)のためにIL2RG遺伝子座にターゲティングした。HRにしたがって、ヒトNSCにおけるHRの効率を評価するために下流のGFPを駆動するUbCプロモーターと共にIL2RG cDNAを内因性の開始コドンにノックインする。IL2RGのエクソンを黒の四角で示す。
【0033】
【
図17A】
図17A~17Bは、NSC中のHBB遺伝子座(
図17A)およびCCR5遺伝子座(
図17B)にターゲティングするCRISPR/Cas9媒介性の相同組換え(HR)を示す。
図17Aは、Cas9(はさみ)によりエクソン1中にDSBを作製し、かつUbC-GFP相同ドナー鋳型を供給することによって、HBB遺伝子座にターゲティングしたことを示す。In(黒)-Out(赤)プライマーセットを使用するPCR(881bp)によって、組込みを有する対立遺伝子を同定した。
図17Bは、上記の通りにエクソン3においてCCR5遺伝子座にターゲティングしたことを示す。In(黒)-Out(赤)を使用してPCRによって組込み(1200bp)を受けた対立遺伝子を同定した。全てのIn-Out PCR用のローディングコントロールは、野生型CCR5対立遺伝子であった。
【
図17B】
図17A~17Bは、NSC中のHBB遺伝子座(
図17A)およびCCR5遺伝子座(
図17B)にターゲティングするCRISPR/Cas9媒介性の相同組換え(HR)を示す。
図17Aは、Cas9(はさみ)によりエクソン1中にDSBを作製し、かつUbC-GFP相同ドナー鋳型を供給することによって、HBB遺伝子座にターゲティングしたことを示す。In(黒)-Out(赤)プライマーセットを使用するPCR(881bp)によって、組込みを有する対立遺伝子を同定した。
図17Bは、上記の通りにエクソン3においてCCR5遺伝子座にターゲティングしたことを示す。In(黒)-Out(赤)を使用してPCRによって組込み(1200bp)を受けた対立遺伝子を同定した。全てのIn-Out PCR用のローディングコントロールは、野生型CCR5対立遺伝子であった。
【0034】
【
図18】
図18は、mRNAとしてのCas9および化学修飾したsgRNAが、試験した3つ全ての遺伝子座においてプラスミド送達よりも多くのINDELを誘発したことを示す。Cas9およびIL2RG、HBB、またはCCR5に特異的なsgRNAをコードする1ugのプラスミド(px330)をNSCにエレクトロポレートした。「全RNA」の実験のために、Cas9をmRNA(5ug)として送達し、かつ2’-O-メチル3’ホスホロチオエート(MS)または2’-O-メチル3’チオPACE(MSP)を含む末端化学修飾を有する遺伝子座特異的sgRNA(10ug)を送達した。培養の7日後にgDNAを回収し、PCRを実行して目的の領域を増幅し、かつTracking of Indels by Decomposition(TIDE)ソフトウェアを使用してINDELを計算した。(N=2~14)、
**p<0.01、StudentのT検定。
【0035】
【
図19】
図19は、3つ全ての遺伝子座が、CRISPR-Cas9成分のプラスミド送達または全RNA送達を使用するNSC中のHRに適していたことを示す。2ugのHRドナーまたは2ugのHRおよび遺伝子座特異的CRISPR成分のいずれかを、上記の通りにNSCにヌクレオフェクトした。遺伝子座特異的HRドナープラスミドは、HR効率を評価するために少なくとも400bpの相同フランキングUbC-GFPを有する。エピソームHRドナーが増殖の間の希釈によって失われるまで細胞を少なくとも30日間成長させて、IL2RG、HBB、およびCCR5遺伝子座中に組み込まれたカセットの安定発現を確認した。代表的なFACSプロットを示しており、これは部位特異的ヌクレアーゼを用いるHRドナーの安定な組込みを強調する。
【0036】
【
図20】
図20は、CRISPRのプラスミド送達によるNSCのIL2RG、HBB、およびCCR5遺伝子座へのターゲティングが、培養の少なくとも30日後に平均でそれぞれ2.8%、4.1%、および2.4%のGFP
+ NSCを生じたことを示す。上記の通りに実行したIL2RG、HBB、およびCCR5にターゲティングする全ての実験から得られたHR頻度。(N=3~7)、
*p<0.05、StudentのT検定。
【0037】
【
図21】
図21は、mockまたはドナーのみの試料ではPCR増幅が検出されなかったが、CRISPRおよび相同ドナーを共にNSCにエレクトロポレートした時にオンターゲットの組込みが明らかであったことを示し、意図した遺伝子座でのHRが確認される。培養の30日目に実験群からgDNAを回収し、DNAレベルでHRドナーの部位特異的組込みを評価した。In/Out PCR産物のアガロースゲル電気泳動により、部位特異的ヌクレアーゼの存在下でのHRドナーのオンターゲットの組込みが確認される。
【0038】
【
図22】
図22A~22Bは、CD8αを用いる磁気活性化細胞選別(MACS)選択によるGM-NSCの濃縮を示す。T2AペプチドモチーフによりCD8αからGFPを分離する2シストロン性IL2RG HRカセットを作製して、IL2RGがターゲティングされるNSCのロバストな磁気ビーズ濃縮を可能にした。2ugのHRドナーならびにCas9およびsgRNAをコードする1ugのプラスミドをNSCにヌクレオフェクトした。細胞を30日間成長させて、エピソームHRドナーをNSCの増殖の間に希釈して消失させた。ターゲティングから6継代目にCD8マイクロビーズ技術を使用して細胞を選択した。代表的なFACSプロット(
図22A)により、エレクトロポレーションから30日目の濃縮前(左)、および磁気活性化細胞選別(MACS)CD8マイクロビーズ技術を使用する濃縮の30日後(右)の2シストロン性GFP-T2A-CD8カセットの安定な組込みを有するNSC集団を示す。全ての細胞継代においてGFP発現を分析しながら、エレクトロポレーションから9継代にわたってGM-NSCを培養した(
図22B)。
【0039】
【
図23】
図23A~23Bは、トランケート型CD19(tCD19)を用いる磁気活性化細胞選別(MACS)選択によるGM-NSCの濃縮を示す。T2Aペプチドモチーフによりトランケート型CD19(tCD19)からGFPを分離する2シストロン性IL2RG HRカセットを作製して、IL2RGがターゲティングされるNSCのロバストな磁気ビーズ濃縮を可能にした。2ugのHRドナーならびにCas9およびsgRNAをコードする1ugのプラスミドをNSCにヌクレオフェクトした。細胞を30日間成長させて、エピソームHRドナーをNSCの増殖の間に希釈して消失させた。代表的なFACSプロット(
図23A)により、エレクトロポレーションから30日目の濃縮前の2シストロン性GFP-T2A-tCD19カセットの安定な組込みを有するNSC集団(左)、およびMACS CD19マイクロビーズ技術を使用するGM-NSCの濃縮された集団(右)を示す。GFP発現を分析しながら、9継代にわたってGM-NSCを培養した(
図23B)。
【0040】
【
図24】
図24は、MACS選択の前(ターゲティング)および後(濃縮)の、2シストロン性ドナーカセットを使用してIL2Rγ遺伝子座にターゲティングされたGM-NSCの頻度を示す。N=3。
【
図25】
図25A~25Cは、GM-NSCがそれらのNSCの特徴を維持したことを示す。2シストロン性(bicstronic)GFP-T2a-tCD19カセットを有する増殖/MACS濃縮したGM-NSCを細胞表面マーカーCD133(PE)およびCD19(APC)について染色し、CD19対GFP(
図25A)、CD19対CD133(
図25B)をFACSにより分析したか、あるいは、細胞をCD19(APC)について染色し、透過処理し、固定し、次いでSOX2(PE)について再び染色を行った(
図25C)。
【0041】
【
図26】
図26A~26Cは、GM-NSCが部位に適切な様式でin vivoで、遊走、NSCマーカー、および3系統分化能力を維持することを示す。NSCに2シストロン性IL2Rγ HRカセット(GFP-T2A-CD8)をターゲティングした後、CD8マイクロビーズを用いてMACS選択し、新生shi/shi-idまたはshi/+ヘテロ接合idマウス脳のSVZに両側にターゲティングして移植した。抗GFP(緑)および抗Sox2(赤)ヘキスト33345対比染色(青)で染色した海馬歯状回の共焦点画像(
図26A~26C)により、GM-NSCは遊走して、NSCマーカーSox2(矢印)(
図26A)、線条体の白質路の束(white tract bundle)において抗GFP(緑)、抗ヒトGFAP、SC123(赤)、およびDAPI対比染色(青)(
図26B)、嗅球において抗GFP(緑)、抗ダブルコルチン(DCX)、SC123(赤)、およびDAPI対比染色(青)(
図26C)を維持することが明らかとなる。
【0042】
【
図27】
図27A~27Cは、GM-NSCのオリゴデンドロサイト分化能力を示す。GM-NSCを若年shi/shi-id突然変異マウス脳の小脳に直接的に移植した。脳切片を移植の8週間後に処理した。移植の8週間後のヒト特異的SC121 mAbによる免疫染色により、小脳の白質路内でのGM-NSCの広範な遊走が実証された(
図27A)。抗GFPによる同胞切片の免疫ペルオキシダーゼ染色により、SC121染色と同様の導入遺伝子の発現分布が明らかとなる(
図27B)。抗GFP(緑)および抗MBP(赤)による小脳の白質路の共焦点画像により、連続的なGFP発現およびミエリン産生が実証される(
図27C)。注射部位は示した通りである。
【0043】
【
図28】
図28は、IL2Rγ遺伝子座にGALC(IL2RG cDNA-UbC-GALC-T2A-tCD19)をノックインするためのHRドナー、およびロバストなMACSに基づく濃縮を可能とするためのtCD19選択カセットの使用を示す。Cas9(はさみ)を使用して二本鎖切断(DSB)を作製し、かつ相同ドナー鋳型(挿入される導入遺伝子の周りにフランキングする800bpのアームを有する)を供給することによって、相同組換え(HR)のためにIL2Rγ遺伝子座にターゲティングした。GalC酵素の過剰発現用およびCD19 MACS選択を使用するターゲティングする細胞の濃縮用のGALC-T2A-tCD19を有するUbC駆動カセットが後続するIL2Rγ cDNAを、HRにしたがって内因性の開始コドンにノックインする。
【0044】
【
図29】
図29A~29Bは、安定に組み込まれたGALC構築物を示す。以前に記載した通り、Cas9 mRNA、MSP IL2Rγ sgRNA、およびGALC-T2A-tCD19 HRドナー構築物をNSCにヌクレオフェクトした。代表的なFACSプロットにより、tCD19
+細胞の濃縮の前(
図29A)および後(
図29B)のヌクレオフェクションから30日目のtCD19発現により測定される、安定に組み込まれたGALC構築物が強調される。
【0045】
【
図30】
図30は、IL2Rγ遺伝子座へのGALCカセットのオンターゲットの組込みを示す。エレクトロポレーションから30日目に実験群からgDNAを回収し、DNAレベルでGALCドナーの組込みを評価した。In/Out PCR産物のアガロースゲル電気泳動により、部位特異的ヌクレアーゼの存在下でのHRドナーのオンターゲットの組込みが示される。
【0046】
【
図31】
図31は、GALC NSCが機能的な酵素を過剰発現していたことを示す。GalC酵素アッセイを以下の実験群からの細胞タンパク質溶解物に対して行った:未編集NSC、クラッベ病患者の線維芽細胞、GALC GM-NSC(2つの異なる実験)。GalC酵素活性をpmol/分/mg(未編集NSCに対して正規化)として提示している。N=3、2つの独立した生物学的実験、
*p<0.05、StudentのT検定。
【0047】
【
図32】
図32A~32Bは、GALC GM-NSCがそれらのNSCの生物学的特徴を保持したことを示す。ヒト特異的mAb SC121(茶)による免疫ペルオキシダーゼ染色により、小脳の白質中でのヒト細胞の生着が検出される(
図32A)。抗MBP(茶)による同胞切片の免疫ペルオキシダーゼ染色により、移植GM-NSCの同様の分布が明らかとなる(
図32B)。
【0048】
【
図33】
図33A~33Dは、CRISPRシステムとTalenシステムとの比較を示す。ヒトIL2RG遺伝子座を認識するように設計されたCRISPR/Cas9システムまたはTALENペアのいずれかを500,000個のNSCにエレクトロポレート(プラスミド送達)した。ターゲティングの7日後にgDNAを回収し、切断部位に重複するプライマーを用いるPCRによりIL2RG対立遺伝子を増幅し、TIDEを実行してINDEL頻度を分析した(
図33A)。(N=4~7)、
*p<0.05、StudentのT検定。Cas9 mRNAおよびMSP sgRNAまたはmRNAとして送達されるTALENペアを上記の通りにNSCにエレクトロポレートした後、TIDEソフトウェアによってINDELについてIL2RG対立遺伝子を分析した(
図33B)。(N=2~5)、
*p<0.05、StudentのT検定。IL2RG相同アームを有するUbC-GFPドナー鋳型と共にIL2RG操作されたヌクレアーゼをNSCにエレクトロポレートした。ターゲティングの30日後、FACS GFP分析のために細胞を回収した(
図33C)。(N=4~6)。相同組換えにしたがってAfIII制限部位を導入する目的のIL2RG相同ドナー鋳型と共にIL2RG操作されたヌクレアーゼをNSCにエレクトロポレートした。ターゲティングの7日後にgDNAを回収した後、IL2RG対立遺伝子を増幅して1.6kbの産物を産生した。増幅した対立遺伝子をAfIIIにより消化し、PAGEゲルを実行した。HR対立遺伝子の数を以下の通りに計算した:((消化された対立遺伝子/消化された対立遺伝子)+消化されなかった対立遺伝子)。(
図33D)(N=4~6)、StudentのT検定。
【発明を実施するための形態】
【0049】
発明の詳細な説明
I.導入
本発明は、ゲノム編集技術がヒト神経幹細胞の治療的潜在能力を増進するという発見に部分的に基づく。神経幹細胞(NSC)は、一時の介在で生涯にわたる影響力を有する神経学的障害に対する満たされていない医学上の必要性のための治療的潜在能力を有する。例えば、HuCNS-SC(登録商標)細胞(StemCells,Inc.)は、高度に精製された胎児脳由来ヒト中枢神経系幹細胞集団であって、複数の作用機序を伴う生物学的なNSCの活動性を有し、大域的な遊走ならびに成熟ニューロン、アストロサイト、およびミエリン産生オリゴデンドロサイトへの部位に適切な分化を通じて神経保護、ミエリン形成、および網膜の保護を提供する。NSCは4つの第I/II相臨床試験で試験されており、安全性、ドナー細胞の生存、および/または予備的有効性について見込みのある結果が出ている。ゲノム編集技術の最近の進歩、すなわちTALENおよびCRISPR/Cas9プラットフォームは、細胞療法用の遺伝子改変(GM)細胞を製造するための機会を加速させ、それが究極的には、例えば血液脳関門を乗り越える神経保護タンパク質の小生産工場として働くことによって、NSCの治療的潜在能力を広げる。NSCおよびNSCを単離する方法は、例えば、米国特許出願公開第2001/0044122号、同第2003/0109039号、および同第2004/0137535 A1号、ならびに米国特許第7,037,719号に記載されている。
【0050】
本明細書中に記載するように、本発明者らは、相同プラスミドドナー鋳型と共に、部位特異的二本鎖切断(DSB)を誘発することによって、NSC中の例えば、CCR5、IL2Rγ、およびHBBなどの「セーフハーバー遺伝子座」にGFPカセットの相同組換え(HR)のためにターゲティングした。GM-NSCはロバストな長期間のGFP発現を示し、そして重要なことに、in-out PCRによるゲノム解析により、オンターゲットの組込みが確認された。トランケート型CD19は、90%を超えるGM-NSC集団の精製を可能とした。さらには、化学修飾したsgRNAを有する「全RNA」システムとしてCRISPRプラットフォームを送達することにより、DSBの頻度が有意に向上し、それがその後、CRISPRのプラスミド送達に対して2倍にHRターゲティング率を向上させた。最も重要なことに、オリゴデンドロサイト突然変異シバラー(shiver)マウスへのGM-NSCの移植により、GM-NSCが非遺伝子改変NSCと同等に、遊走し、かつミエリン産生オリゴデンドロサイトに分化することが示され、これはGM-NSCがそれらのNSCの特徴を保持することを説明する。これらのタンパク質は血液脳関門を越えることができないので、GM-NSCの自己複製および大域的遊走の特性は、GM-NSCがタンパク質の連続的送達用の小生産工場として働いて、治療選択肢を広げ得ることを説明する。結論として、本明細書中に記載する研究の成功は、多数の神経変性障害ならびに脳、脊髄、および眼の損傷の治療を可能とする移植可能なGM-NSCについての方法、組成物、およびキットを提供する。
【0051】
II.概論
本発明の実施には、分子生物学の分野におけるルーチン技術が利用される。本発明において使用される一般的方法を開示する基本的な教科書としては、SambrookおよびRussell、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」(第3版、2001年);Kriegler、「Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual」(1990年);および「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら編、1994年))が挙げられる。
【0052】
核酸の大きさは、キロ塩基(kb)、塩基対(bp)、またはヌクレオチド(nt)のいずれかで与える。一本鎖DNAおよび/またはRNAの大きさはヌクレオチドで与えることがある。これらは、アガロースまたはアクリルアミドゲル電気泳動、シークエンシングされた核酸、または公開されたDNA配列に由来する推定値である。タンパク質の大きさは、キロダルトン(kDa)またはアミノ酸残基数で与える。タンパク質の大きさは、ゲル電気泳動、シークエンシングされたタンパク質、誘導されたアミノ酸配列、または公開されたタンパク質配列に由来する推定値である。
【0053】
市販されていないオリゴヌクレオチドは、例えば、Van Devanterら、Nucleic Acids Res. 12巻:6159~6168頁(1984年)に記載されたような自動合成装置を使用して、BeaucageおよびCaruthers、Tetrahedron Lett. 22巻:1859~1862頁(1981年)に最初に記載された固相ホスホロアミダイトトリエステル法にしたがって、化学合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、当該技術分野で認識される任意の戦略、例えば、PearsonおよびReanier、J. Chrom. 255巻:137~149頁(1983年)に記載されるようなネイティブアクリルアミドゲル電気泳動または陰イオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して行われる。
【0054】
III.定義
別段の具体的な記載がなければ、本明細書中で使用する全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。加えて、本明細書中に記載する方法または材料に類似または同等のあらゆる方法または材料を本発明の実施において使用することができる。本発明の目的のために、以下の用語を定義する。
【0055】
本明細書中で使用する場合、「a」、「an」、または「the」という用語は、1つのメンバーを有する態様を含むだけでなく、1つより多くのメンバーを有する態様も含む。例えば、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り、複数への言及を含む。したがって、例えば「細胞(a cell)」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「剤(the agent)」への言及は、当業者に公知の1つまたは複数の剤への言及を含むなどである。
【0056】
「ヒト神経幹細胞」という用語は、ヒト供給源から得られるか、またはヒト起源の細胞に由来する、自己複製および多系列分化の特性を有する神経系列の細胞を指す。同様に、「ヒト神経幹細胞」という用語は、自己複製および多系統分化の特性を有する精製された細胞集団を指す。神経幹細胞は、対称的または非対称的のいずれかで分裂することができる。対称分裂する場合、神経幹細胞は分裂して2つの娘神経幹細胞または分化系列が決定した2つの前駆細胞を形成するが、別段の記載がなければ、本明細書中では対称分裂は対称的な自己複製を指す。非対称分裂する場合、神経幹細胞は分裂して1つの娘神経幹細胞および分化系列が決定した1つの前駆細胞(例えば、ニューロンまたはグリア前駆細胞のいずれか)を形成する。具体的には、神経幹細胞は、ニューロン、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトという中枢神経系の3つの主要な成熟クラスの細胞を産生する能力を有する。通常、ヒト神経幹細胞は、部位特異的に生着、増殖、遊走、および/または分化する能力を持つ。ヒト神経幹細胞は、転写因子Sox1およびSox2の発現によって特徴付けることができる。加えて、ヒト神経幹細胞は、通常、特徴的な細胞表面マーカーを発現する。そのようなマーカーとしては、CD133、CD49f、CD29、およびCD15が挙げられる。したがって、ヒト神経幹細胞は、そのようなマーカーまたはそのようなメーカー(makers)の組合せ(例えば、CD133陽性CD24陰性~低発現細胞)の発現に基づいて単離することができる。原理的に、ヒト神経幹細胞に特異的に発現するあらゆるマーカー、またはヒト神経幹細胞に特徴的なマーカーのあらゆる組合せをヒト神経幹細胞の単離において使用することができる。
【0057】
ヒト神経幹細胞は、ヒトの胚、胎児、または成人の供給源に由来してもよいし、あるいは胚性幹(ES)細胞および操作された多能性幹(iPS)細胞などのその他の細胞種から公知の技術を使用して誘導されてもよい。ヒト神経幹細胞は、体細胞集団、例えば線維芽細胞からのダイレクトリプログラミングによって誘導されてもよい。一部の実施形態では、ヒト神経幹細胞は、体性幹細胞または多能性幹細胞に由来する。ヒト神経幹細胞には、胎児脊髄および胎児脳組織などのヒト中枢神経系に由来する細胞が含まれる。例えば、ヒト神経幹細胞は、Uchidaら、Proc Natl Acad Sci USA、2000年、97巻(26号):14720~14725頁に記載される方法を使用してヒト脳組織から直接単離されたヒト中枢神経系幹細胞であってもよい。
【0058】
ヒト神経幹細胞は、単層培養などの接着培養中、基質をコーティングした組織培養プレート上、懸濁培養中、またはニューロスフェアとして公知のクラスターを形成する細胞の自己接着性複合体としての、培養物であってよい。
【0059】
「初代ヒト神経幹細胞」という用語は、ヒト組織から単離されたヒト神経幹細胞、または培養物中で維持されたヒト神経幹細胞の子孫を指す。初代ヒト神経幹細胞は、通常、ヒト組織から元々単離された細胞の特徴を保持し、かつ不死化細胞株とは区別することができる。
【0060】
「ゲノム編集」という用語は、1つまたは複数のヌクレアーゼおよび/またはニッカーゼを使用して、標的DNA、例えば細胞のゲノムにおいて、DNAを挿入、置換、または除去する遺伝子操作の一種を指す。ヌクレアーゼは、ゲノム中の所望の位置に特異的二本鎖切断(DSB)を作製し、かつ細胞の内因性の機構を利用して、相同組換え修復(HDR)(例えば、相同組換え)または非相同末端結合(NHEJ)によって、誘発された切断を修復する。ニッカーゼは、ゲノム中の所望の位置に特異的一本鎖切断を作製する。非限定的な一例では、2つのニッカーゼを使用して、標的DNAの反対鎖上に2つの一本鎖切断を作製することによって平滑末端または付着末端を生成することができる。任意の好適なヌクレアーゼを細胞中に導入して、標的DNA配列のゲノム編集を誘発することができ、ヌクレアーゼとしては、CRISPR関連タンパク質(Cas)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、その他のエンドまたはエキソヌクレアーゼ、これらのバリアント、これらの断片、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、相同組換え修復(HDR)(例えば、相同組換え)による標的DNA配列(例えば、セーフハーバー遺伝子)のヌクレアーゼ媒介性のゲノム編集が、本明細書中に記載する方法にしたがって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成するために使用される。
【0061】
「DNAヌクレアーゼ」という用語は、DNAのヌクレオチドサブユニット間のホスホジエステル結合を開裂できる酵素を指し、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼであり得る。本発明によれば、DNAヌクレアーゼは、セーフハーバー遺伝子などの標的DNA配列のゲノム編集を誘発するために使用できる操作された(例えば、プログラム可能またはターゲティング可能な)DNAヌクレアーゼであり得る。以下に限定されないが、CRISPR関連タンパク質(Cas)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、その他のエンドまたはエキソヌクレアーゼ、これらのバリアント、これらの断片、およびこれらの組合せなどの任意の好適なDNAヌクレアーゼを使用することができる。
【0062】
「二本鎖切断」または「DSB」という用語は、DNA二重らせんの両方の鎖を分断または開裂することを指す。DSBは、「平滑末端」をもたらす同じ位置での両方の鎖の開裂、または、各DNA断片の末端における一本鎖DNAの領域、もしくは「付着末端」を生じるスタッガード(staggered)開裂を生じ得る。DSBは、1つまたは複数のDNAヌクレアーゼの作用に起因し得る。
【0063】
「相同組換え修復」または「HDR」という用語は、修復をガイドするための相同鋳型を使用して二本鎖DNA切断を正確かつ精密に修復する細胞中の機構を指す。最も一般的な形態のHDRは相同組換え(HR)であり、これは2つの類似または同一のDNA分子の間でヌクレオチド配列が交換される一種の遺伝子組換えである。
【0064】
「核酸」、「ヌクレオチド」、または「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖、二本鎖、または多鎖のいずれかの形態の、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、およびこれらのポリマーを指す。用語には、一本鎖、二本鎖、または多鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、あるいはプリンおよび/もしくはピリミジン塩基またはその他の天然の、化学修飾された、生化学修飾された、非天然の、合成の、もしくは誘導されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、核酸は、DNA、RNA、およびこれらのアナログの混合物を含むことができる。特に限定しない限り、用語には、参照核酸と類似の結合特性を有し、かつ天然に存在するヌクレオチドと同様に代謝される、天然ヌクレオチドの公知のアナログを含有する核酸が包含される。別段に示さない限り、特定の核酸配列は、明示的に示した配列と共に、保存的に改変されたこれらのバリアント(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、単一ヌクレオチド多型(SNP)、および相補的配列も暗黙的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res. 19巻:5081頁(1991年);Ohtsukaら、J. Biol. Chem. 260巻:2605~2608頁(1985年);およびRossoliniら、Mol. Cell. Probes 8巻:91~98頁(1994年))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によってコードされるmRNAと交換可能に使用される。
【0065】
「修飾ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」という用語は、ヌクレオシドの含窒素塩基(例えば、シトシン(C)、チミン(T)もしくはウラシル(U))、アデニン(A)、またはグアニン(G))、ヌクレオシドの糖部分(例えば、リボース、デオキシリボース、修飾リボース、修飾デオキシリボース、六員の糖アナログ、または直鎖糖アナログ)、および/またはリン酸骨格中に、またはこれらにおいて1つまたは複数の化学修飾(例えば、置換)を含有するヌクレオチドを指す。
【0066】
「遺伝子」または「ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列」という用語は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAセグメントを意味する。DNAセグメントは、遺伝子産物の転写/翻訳および転写/翻訳の調節に関与するコーディング領域の前および後の領域(リーダーおよびトレイラー)、ならびに個々のコーディングセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)を含み得る。
【0067】
「セーフハーバー遺伝子」、または本明細書中で交換可能に使用される「セーフハーバー遺伝子座」という用語は、ゲノム中に組み込まれた導入遺伝子、例えば外来DNAの発現を可能とするゲノム上の位置を指す。場合によっては、セーフハーバー遺伝子座は、近くまたは隣接する内因性遺伝子および調節エレメントなどへの最小の影響力で、組み込まれたDNAの安定発現を可能とする。場合によっては、セーフハーバー遺伝子は、神経幹細胞、その誘導体、およびこれらが分化した細胞などの様々な細胞種において、持続的な遺伝子発現を可能とし、かつ遺伝子改変のために操作されたヌクレアーゼによってターゲティングすることができる。セーフハーバー遺伝子の例としては、IL2Rγ、CCR5、およびHBB遺伝子が挙げられる。場合によっては、1つより多くのセーフハーバー遺伝子をターゲティングすることによって、遺伝子改変される細胞中に1つより多くの導入遺伝子を導入することができる。
【0068】
「導入遺伝子」という用語は、ゲノム中の外来DNAを指す。導入遺伝子は、細胞の精製用のマーカーおよび/または目的の遺伝子を含有し得る。好適なマーカーは当該技術分野で公知であり、CD8、CD19、およびトランケート型CD19などの細胞表面マーカー、ならびにGFPなどの蛍光マーカーが挙げられる。目的の遺伝子は、当業者が選択することができ、中枢神経系の障害に関連するタンパク質をコードする導入遺伝子、あるいは神経保護もしくは神経再生タンパク質、これらのバリアント、これらの断片、またはこれらのペプチド模倣体をコードする遺伝子であり得る。
【0069】
導入遺伝子カセットの文脈における「カセット」という用語は、単一エレメントとして導入することができ、かつ所望の結果を達成するために一緒に機能し得る遺伝子配列エレメントの組合せを指す。導入遺伝子カセットは、異種プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子を含み得る。例えば、発現カセットは、第2のポリヌクレオチド(例えば、コード配列)に作動可能に連結されたプロモーターを含んでよく、また、人間のマニピュレーションの結果として第2のポリヌクレオチドに対して異種であるプロモーターを含むことができる。カセットは、通常、天然には見られない組合せでポリヌクレオチドを含む。
【0070】
「作動可能に連結された」という用語は、ポリヌクレオチドコード配列およびプロモーターなどの2つまたはそれより多くの遺伝子エレメントが、プロモーターに指示されるコード配列の転写などの、エレメントの適切な生物学的機能を可能とする相対的な位置で配置されていることを指す。
【0071】
「異種プロモーター」という用語は、天然には導入遺伝子に作動可能に連結されていないプロモーターを指す。異種プロモーターは、非ヒト生物体に由来する配列、または化学合成され、任意選択で改変された、プロモーター配列であり得る。あるいは、異種プロモーターは、導入遺伝子との組合せでは天然に見られない遺伝子座由来のヒト配列であり得る。
【0072】
「誘導性プロモーター系」という用語は、導入遺伝子の発現または発現レベルを改変するために操作された的に制御できる環境要因および/または外的刺激に応答するプロモーターを指し、または、例えば外来プロモーターおよび追加のエレメント(別個のプロモーターに作動可能に連結されたトランス活性化因子など)といった、エレメントの組合せを指す。誘導性プロモーター系は、酸素レベルなどの非生物要因または化学的もしくは生物学的分子に応答し得る。一部の実施形態では、化学的もしくは生物学的分子は、ヒト中に天然には存在しない分子であり得る。
【0073】
細胞に関して「単離された」という用語は、細胞が天然に存在する環境とは異なる環境中にその細胞があることを指し、例えば、細胞が天然には多細胞生物体中に存在し、かつ細胞が多細胞生物体から除去された場合に、細胞は「単離され」ている。単離された遺伝子改変細胞は、遺伝子改変細胞の混合集団中、または遺伝子改変細胞および遺伝子改変されていない細胞を含む混合集団中に存在し得る。例えば、単離された遺伝子改変細胞は、in vitroでの遺伝子改変細胞の混合集団中、または遺伝子改変細胞および遺伝子改変されていない細胞を含む混合のin vitro集団中に存在し得る。
【0074】
「細胞特異的プロモーター」という用語は、異なる細胞種または組織種において差次的な発現を指示するプロモーターを指す。発現は存在しても存在しなくてもよく、あるいは発現はその発生または分化の状態にしたがって異なる細胞種において異なるレベルで起こり得る。例えば、プロモーターは、優先的に神経細胞中または特定の神経系列の細胞中で、導入遺伝子の発現を駆動し得る。したがって、ニューロン、アストロサイト、もしくはオリゴデンドロサイトにおいて、または特定クラスのニューロンにおいてさえ、特異的に導入遺伝子を発現させることができる。
【0075】
「導入遺伝子が中枢神経系の遺伝的障害に関連するタンパク質をコードする」という語句は、遺伝子が、その存在または非存在が中枢神経系の遺伝的障害を引き起こすまたは障害に寄与する産物をコードすることを指す。遺伝的障害は、対応する突然変異遺伝子の野生型(正常)対立遺伝子を導入遺伝子として発現することによって治療され得る常染色体劣性の遺伝的障害であり得る。遺伝的障害は突然変異遺伝子によって引き起こされることがあり、本明細書中に記載する導入遺伝子は、障害を治療するために使用され得る。「導入遺伝子が神経保護または神経再生タンパク質をコードする」という語句は、導入遺伝子が、神経系の障害の発症もしくは進行を予防するもしくは予防を助ける産物、または疾患、状態、もしくは損傷の結果として失った神経系の機能の回復もしくは部分的な回復に寄与するまたは回復もしくは部分的な回復を引き起こす産物をコードすることを指す。本明細書中に記載する疾患、障害、または状態としては、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、グリア細胞、ニューロン、運動ニューロン、介在ニューロン、網膜細胞などに影響を及ぼすものが挙げられる。そのような神経学的疾患、障害、または状態としては、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、記憶障害、癲癇、黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性)、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、網膜症、視神経症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、ミエリン疾患、多発性硬化症、卒中、脳性麻痺、ペリツェウス・メルツバッハー(Pelizaeus-Merbacher)病などの遺伝性小児白質ジストロフィー、神経セロイドリポフスチン症およびクラッベ病、異染性白質ジストロフィー、テイ・サックス病、脊髄の損傷または外傷を挙げることができる。本明細書中に記載する疾患、障害、または状態としてはまた、外傷性脳損傷、中枢神経系(CNS)の急性炎症、CNSの慢性炎症、虚血、および卒中も挙げられる。タンパク質は、GALC(クラッベ病)、ABCD1(副腎白質ジストロフィー)、GFAP(アレキサンダー病)、CYP27A1(脳腱黄色腫症(cerebrotendineous xanthomatosis))、ARSA(異染性白質ジストロフィー)、PLP1(ペリツェウス・メルツバッハー病)、ASPA(カナバン病)、EIF-2B(白質の消失を伴う白質脳症)、PHYH(レフサム病1型)、PEX7(レフサム病2型)、PPT1(乳児性神経セロイドリポフスチン症(NCL))、TPP1(遅発型小児性NCL)、CLN3(若年性NCL)、CLN6(成人NCL)、CLN5(フィンランド遅発型小児性バリアントNCL)、CLN6(遅発型小児性バリアントNCL)、MSFD8(セロイドリポフスチン症、神経性、7)、CLN8(セロイドリポフスチン症、神経性、8)、CTSD(セロイドリポフスチン症、神経性、10)、UBE3A(アンジェルマン症候群)、POLG(アルパース病)、TAZ(バース症候群)、GLA(ファブリー病)、SLC20A2(ファール症候群)、PDE(網膜色素変性症)、SMN1(脊髄性筋萎縮症)、IKBKAP(家族性自律神経失調症)、MeCP2(レット症候群)、CACNA1C(チモシー症候群)、ATXN3(マチャド・ジョセフ病)、およびRPE65(レーバー先天性黒内障)、USH2A(網膜色素変性症)、RPGR(網膜色素変性症)、RP2(網膜色素変性症)、ABCA4(シュタルガルト)、RS-1(X連鎖性網膜分離)からなる群から選択される遺伝子によってコードされるタンパク質であり得る。
【0076】
「導入遺伝子が神経保護または神経再生タンパク質をコードする」という語句は、導入遺伝子が、神経系の障害の発症もしくは進行を予防するもしくは予防を助ける産物、または疾患、状態、もしくは損傷の結果として失った神経系の機能の回復もしくは部分的な回復に寄与するまたは回復もしくは部分的な回復を引き起こす産物をコードすることを指す。ある特定の実施形態では、神経保護または神経再生タンパク質は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、インスリン様成長因子2(IGF-2)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-2(NT-2)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)、ニューロトロフィン-6、保存ドーパミン神経栄養因子(CDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン-β(IFN-β)、腫瘍壊死因子-α(TNFα)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ニュールツリン、パーセフィン、アルテミン、ニューロペプチドY(NPY)、エフリン、セマフォリン、その他の神経新生因子、その他の神経栄養因子、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0077】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために、本明細書中で交換可能に使用される。用語には、天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに加えて、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の操作された的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーが該当する。本明細書中で使用する場合、用語には、全長タンパク質などの任意の長さのアミノ酸鎖であって、アミノ酸残基が共有結合性のペプチド結合によって連結されているものが包含される。
【0078】
「バリアント」という用語は、天然に存在するものから逸脱した生物体、株、遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または特徴の形態を指す。
【0079】
「ペプチド模倣体」という用語は、ポリマーの全部または一部を構成する1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の操作された的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーを指す。ペプチド模倣体は、天然に存在するアミノ酸からなる対応するペプチドと比べて、安定性または生物学的活性などの特性が向上している場合がある。ペプチド模倣体は、例えば、1つまたは複数のD-アミノ酸を含み得る。
【0080】
「ベクター」または「組換えベクター」という用語は、宿主細胞中での特定のポリヌクレオチド配列の転写を可能とする一連の特定の核酸エレメントを有する、組換えまたは合成によって生成された核酸構築物を指す。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスゲノム、または核酸断片の一部であり得る。通常、発現ベクターは、プロモーターに作動可能に連結された、転写されるポリヌクレオチドを含む。この文脈における「作動可能に連結された」は、ポリヌクレオチドコード配列およびプロモーターなどの2つまたはそれより多くの遺伝子エレメントが、コード配列のプロモーターに指示される転写などの、エレメントの適切な生物学的機能を可能とする相対的な位置で配置されていることを意味する。「プロモーター」という用語は、核酸の転写を指示する核酸制御配列のアレイを指すために本明細書中で使用される。本明細書中で使用する場合、プロモーターは、転写の開始部位の近くにある必要な核酸配列、例えばポリメラーゼII型のプロモーターの場合にはTATAエレメントを含む。プロモーターはまた、転写の開始部位から数千塩基対も離れていることがある遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントも任意選択で含む。発現ベクター中に存在し得るその他のエレメントとしては、転写を増進するもの(例えば、エンハンサー)、および転写を終結させるもの(例えば、ターミネーター)、ならびに発現ベクターから産生される組換えタンパク質にある特定の結合親和性または抗原性を付与するものが挙げられる。
【0081】
「組換え」とは、遺伝子改変されたポリヌクレオチド、ポリペプチド、細胞、組織、または生物体を指す。例えば、組換えポリヌクレオチド(または組換えポリヌクレオチドのコピーもしくは相補体)は、周知の方法を使用してマニピュレートされているものである。第2のポリヌクレオチド(例えば、コード配列)に作動可能に連結されたプロモーターを含む組換え発現カセットは、(例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning - A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、(1989年)または「Current Protocols in Molecular Biology」1~3巻、John Wiley & Sons, Inc.(1994~1998年)に記載される方法による)人間のマニピュレーションの結果として第2のポリヌクレオチドに対して異種であるプロモーターを含み得る。組換え発現カセット(または発現ベクター)は、通常、天然には見られない組合せでポリヌクレオチドを含む。例えば、人間によってマニピュレートされた制限部位またはプラスミドベクターの配列は、プロモーターをフランキングするまたはその他の配列から分離することができる。組換えタンパク質は、組換えポリヌクレオチドから発現されたものであり、組換えの細胞、組織、および生物体は、組換え配列(ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド)を含むものである。
【0082】
「選択マーカー」という用語は、遺伝子産物であって、その遺伝子産物を発現する細胞を細胞の混合集団から単離することを可能とするものを指す。そのような単離は、選択マーカー(抗生物質抵抗性遺伝子であり得る)を発現しない細胞の選択的な殺傷を通じて達成され得る。あるいは、選択マーカーは、GFPなどの蛍光タンパク質の発現、または蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)、もしくは類似の方法による細胞の単離を可能とする細胞表面マーカーの発現の結果として、マーカーを発現する細胞の単離を可能とし得る。好適な細胞表面マーカーとしては、CD8、CD19、およびトランケート型CD19が挙げられる。好ましくは、所望の細胞を単離するために使用される細胞表面マーカーは、CD1、CD2、CD8α、CD10、CD19、またはCD20のサブユニットまたはトランケート型形態などの非シグナリング分子である。好適なマーカーおよび技術は当該技術分野で公知である。
【0083】
「検出可能なマーカー」という用語は、遺伝子産物であって、その遺伝子産物を発現する細胞の同定を可能とするものを指す。そのような同定は、例えば、蛍光タンパク質の発現または標識化抗体によって認識できる細胞表面マーカーの発現による、視覚的な同定であり得る。好適なマーカーおよび技術は当該技術分野で公知である。
【0084】
「精製マーカー」という用語は、特定の細胞種の精製を提供するマーカーを指す。したがって、精製マーカーは、上記のような選択マーカーであってもよく、それによって、例えば抗生物質選択またはFACSもしくはMACSによる、マーカーを発現する細胞の精製が可能となる。好適なマーカーおよび技術は当該技術分野で公知である。ヒト神経幹細胞を精製するためのマーカーとしては、CD133、CD49f、CD29、およびCD15が挙げられる。ヒト神経幹細胞はまた、メーカー(makers)の組合せの発現(例えば、CD133陽性CD24陰性~低発現細胞)に基づいても単離することができる。原理的に、ヒト神経幹細胞に特異的に発現するあらゆるマーカー、またはヒト神経幹細胞に特徴的なマーカーのあらゆる組合せをヒト神経幹細胞の単離において使用することができる。
【0085】
「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指すために本明細書中で交換可能に使用される。哺乳動物としては、ネズミ科動物、類人猿、ヒト、農用動物、競技動物、および愛玩動物が挙げられるが、これらに限定されない。in vivoで得られるまたはin vitroで培養される生物学的実体の組織、細胞、およびそれらの子孫もまた包含される。
【0086】
「治療する」という用語は、治療的利益および/または予防的利益が挙げられるが、これらに限定されない有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療的利益とは、治療されている1つまたは複数の疾患、状態、または症状における任意の治療上関連する向上または疾患、状態、または症状に対する任意の効果を意味する。予防的利益のために、特定の疾患、状態、もしくは症状を発症する可能性のある対象に対して、または疾患、状態、もしくは症状がまだ現れていないかもしれないが、疾患の生理学的症状の1つまたは複数を報告する対象に対して、組成物が投与され得る。
【0087】
「有効量」または「十分な量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすために十分な剤の量を指す。治療有効量は、治療されている対象および疾患状態、対象の体重および年齢、疾患状態の重篤度、投与方法など(これらは当業者によって容易に決定され得る)の1つまたは複数に応じて変化し得る。具体的な量は、選択された特定の剤、標的細胞種、対象中の標的細胞の位置、従っている投与レジメン、その他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、およびそれを運ぶ物理的送達システムの1つまたは複数に応じて変化し得る。
【0088】
「薬学的に許容される担体」という用語は、細胞、生物体、または対象に活性剤を投与することを助ける物質を指す。「薬学的に許容される担体」は、本発明の組成物中に含まれることができ、かつ患者に対して有意な有害の毒性効果を引き起こさない担体または医薬品添加物を指す。薬学的に許容される担体の非限定的な例としては、水、NaCl、生理食塩水溶液、乳酸リンゲル液、生理的スクロース(normal sucrose)、生理的グルコース、細胞培養培地などが挙げられる。その他の医薬担体が本発明において有用であることを当業者は認識するであろう。
【0089】
参照数値に関する「約」という用語は、その値に10%プラスまたはマイナスした値の範囲を含み得る。例えば、「約10」という量は、9、10、および11の参照数を含めて、9~11の量を含む。参照数値に関する「約」という用語はまた、その値に10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%プラスまたはマイナスした値の範囲も含み得る。
【0090】
IV.実施形態の詳細な説明
本明細書中および添付の特許請求の範囲中で使用される場合、単数形「a」、「or」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り、複数への言及を含む。本明細書中に記載する発明の態様および変形は、「からなる」および/または「から本質的になる」態様および変形を含むことが理解される。
【0091】
一態様では、本発明は、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、遺伝子中に二本鎖切断を作製して末端結合を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を単離されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法を提供する。
【0092】
一部の実施形態では、本発明は、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列とを単離されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法を提供する。
【0093】
一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0094】
セーフハーバー遺伝子座は、ゲノム中に組み込まれた導入遺伝子、例えば外来DNAの発現を可能とするゲノム上の位置であり得る。場合によっては、セーフハーバー遺伝子座は、近くのまたは隣接する内因性遺伝子、調節エレメントなどへの最小の影響力で、組み込まれたDNAの安定発現を可能とする。場合によっては、セーフハーバー遺伝子は、神経幹細胞、その誘導体、およびこれらが分化した細胞などの様々な細胞種において、持続的な遺伝子発現を可能とし、かつ遺伝子改変のために操作されたヌクレアーゼによってターゲティングされ得る。
【0095】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)単離されたヒト神経幹細胞を培養すること、2)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼとをコードするヌクレオチド配列を前記培養されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物を含む条件下で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日のうちの任意の期間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0096】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)ヒト神経幹細胞の集団を単離すること、2)前記単離されたヒト神経幹細胞を培養すること、3)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列とを前記培養されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物を含む条件下で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日のうちの任意の期間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0097】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列とをヒト神経幹細胞を含むヒト細胞集団中に導入すること、2)前記ヒト細胞集団からヒト神経幹細胞を単離し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、前記単離されたヒト神経幹細胞から、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物を含む条件下で培養される。一部の実施形態では、方法は、単離された遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を培養することをさらに含む。一部の実施形態では、培養期間は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入された後、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日のうちの任意の日数である。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入された後、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0098】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるRNAガイド化CRISPR/Casシステム(RNAに基づくCRISPR/Casシステムなど)とを単離されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0099】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)単離されたヒト神経幹細胞を培養すること、2)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるRNAガイド化CRISPR/Casシステム(RNAに基づくCRISPR/Casシステムなど)とを前記培養されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物を含む条件下で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日のうちの任意の期間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0100】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)ヒト神経幹細胞の集団を単離すること、2)前記単離されたヒト神経幹細胞を培養すること、3)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるRNAガイド化CRISPR/Casシステム(RNAに基づくCRISPR/Casシステムなど)とを前記培養されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物を含む条件下で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日のうちの任意の期間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0101】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるRNAガイド化CRISPR/Casシステム(RNAに基づくCRISPR/Casシステムなど)とをヒト神経幹細胞を含むヒト細胞集団中に導入すること、2)前記ヒト細胞集団からヒト神経幹細胞を単離し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、前記単離されたヒト神経幹細胞から、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物を含む条件下で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入された後、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日のうちの任意の期間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入された後、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0102】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、(ii)選択マーカーをコードする核酸、および(iii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列とを単離されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0103】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)単離されたヒト神経幹細胞を培養すること、2)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、(ii)選択マーカーをコードする核酸、および(iii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列とを前記培養されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、選択マーカーに基づいて、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、選択マーカーは細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物を含む条件下で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日のうちの任意の期間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0104】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)ヒト神経幹細胞の集団を単離すること、2)前記単離されたヒト神経幹細胞を培養すること、3)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、(ii)選択マーカーをコードする核酸、および(iii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列とを前記培養されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、選択マーカーに基づいて、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、選択マーカーは細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、細胞表面マーカーは、CD8、CD19、またはこれらのトランケート型断片からなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物を含む条件下で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日のうちの任意の期間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0105】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、(ii)選択マーカーをコードする核酸、および(iii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列とをヒト神経幹細胞を含むヒト細胞集団中に導入すること、2)前記ヒト細胞集団からヒト神経幹細胞を単離し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、前記単離されたヒト神経幹細胞から、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、選択マーカーに基づいて、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、選択マーカーは細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、細胞表面マーカーは、CD8、CD19、またはこれらのトランケート型断片からなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、C133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0106】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、(ii)選択マーカーをコードする核酸、および(iii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができる、RNAガイド化CRISPR/Casシステム(RNAに基づくCRISPR/Casシステムなど)とを単離されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、前記単離されたヒト神経幹細胞から、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、選択マーカーに基づいて、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、選択マーカーは細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、細胞表面マーカーは、CD8、CD19、またはこれらのトランケート型断片からなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0107】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)単離されたヒト神経幹細胞を培養すること、2)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば、異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、(ii)選択マーカーをコードする核酸、および(iii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるRNAガイド化CRISPR/Casシステム(RNAに基づくCRISPR/Casシステムなど)とを前記培養されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、前記単離されたヒト神経幹細胞から、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、精製マーカーに基づいて、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、選択マーカーは細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、細胞表面マーカーは、CD8、CD19、またはこれらのトランケート型断片からなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物を含む条件下で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日のうちの任意の期間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0108】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)ヒト神経幹細胞の集団を単離すること、2)前記単離されたヒト神経幹細胞を培養すること、3)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば、異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、(ii)選択マーカーをコードする核酸、および(iii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるRNAガイド化CRISPR/Casシステム(RNAに基づくCRISPR/Casシステムなど)とを前記培養されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、前記単離されたヒト神経幹細胞から、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、選択マーカーに基づいて、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、選択マーカーは細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、細胞表面マーカーは、CD8、CD19、またはこれらのトランケート型断片からなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物を含む条件下で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日のうちの任意の期間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0109】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)(a)(i)導入遺伝子、(ii)選択マーカーをコードする核酸、および(iii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるRNAガイド化CRISPR/Casシステム(RNAに基づくCRISPR/Casシステムなど)とをヒト神経幹細胞を含むヒト細胞集団中に導入すること、2)前記ヒト細胞集団からヒト神経幹細胞を単離し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。
【0110】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、1)(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば、異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、(ii)精製マーカーをコードする核酸、および(iii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)セーフハーバー遺伝子中に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子中への導入遺伝子の挿入を誘発することができるRNAガイド化CRISPR/Casシステム(RNAに基づくCRISPR/Casシステムなど)とをヒト神経幹細胞を含むヒト細胞集団中に導入すること、2)前記ヒト細胞集団からヒト神経幹細胞を単離し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、前記単離されたヒト神経幹細胞から、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、前記単離されたヒト神経幹細胞から、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、選択マーカーに基づいて、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離することをさらに含む。一部の実施形態では、選択マーカーは細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、細胞表面マーカーは、CD8、CD19、またはこれらのトランケート型断片からなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、CCR5、IL2Rγ、およびHBBからなる群から選択される。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座はIL2Rγである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物を含む条件下で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入された後、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日のうちの任意の期間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入された後、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0111】
一部の実施形態では、複数の導入遺伝子が複数のセーフハーバー遺伝子座に導入される。一部の実施形態では、複数の導入遺伝子が単一のセーフハーバー遺伝子座に導入される。一部の実施形態では、単一の導入遺伝子または複数の導入遺伝子が、1つまたは複数の非セーフハーバー遺伝子座に導入される。
【0112】
本明細書中に記載する導入遺伝子は、タンパク質または機能的な核酸(マイクロRNAなど)をコードすることができる。一部の実施形態では、導入遺伝子は、中枢神経系の遺伝的障害に関連するタンパク質をコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子は、GALC(クラッベ病)、ABCD1(副腎白質ジストロフィー)、GFAP(アレキサンダー病)、CYP27A1(脳腱黄色腫症)、ARSA(異染性白質ジストロフィー)、PLP1(ペリツェウス・メルツバッハー病)、ASPA(カナバン病)、EIF-2B(白質の消失を伴う白質脳症)、PHYH(レフサム病1型)、PEX7(レフサム病2型)、PPT1(乳児性神経セロイドリポフスチン症(NCL))、TPP1(遅発型小児性NCL)、CLN3(若年性NCL)、CLN6(成人NCL)、CLN5(フィンランド遅発型小児性バリアントNCL)、CLN6(遅発型小児性バリアントNCL)、MSFD8(セロイドリポフスチン症、神経性、7)、CLN8(セロイドリポフスチン症、神経性、8)、CTSD(セロイドリポフスチン症、神経性、10)、UBE3A(アンジェルマン症候群)、POLG(アルパース病)、TAZ(バース症候群)、GLA(ファブリー病)、SLC20A2(ファール症候群)、PDE(網膜色素変性症)、SMN1(脊髄性筋萎縮症)、IKBKAP(家族性自律神経失調症)、MeCP2(レット症候群)、CACNA1C(チモシー症候群)、ATXN3(マチャド・ジョセフ病)、およびRPE65(レーバー先天性黒内障)、USH2A(網膜色素変性症)、RPGR(網膜色素変性症)、RP2(網膜色素変性症)、ABCA4(シュタルガルト)、RS-1(X連鎖性網膜分離)からなる群から選択されるタンパク質をコードする。一部の実施形態では、タンパク質は、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞によって分泌される。
【0113】
一部の実施形態では、導入遺伝子は、神経保護または神経再生タンパク質、そのバリアント、その断片、またはそのペプチド模倣体をコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、インスリン様成長因子1(IGF1)、インスリン様成長因子2(IGF2)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-2(NT-2)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)、ニューロトロフィン-6、保存ドーパミン神経栄養因子(CDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン-β(IFN-β)、腫瘍壊死因子-α(TNFα)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ニュールツリン、パーセフィン、アルテミン、ニューロペプチドY(NPY)、エフリン、セマフォリン、その他の神経新生因子、その他の神経栄養因子、およびこれらの組合せからなる群から選択される神経保護または神経変性タンパク質をコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子は、神経保護または神経変性タンパク質をコードし、神経保護または神経再生タンパク質は分泌タンパク質である。一部の実施形態では、導入遺伝子はBcl-2をコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子はテロメラーゼをコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子は、生存を向上させて、または神経幹細胞を若返らせて、長期生存および/または治療用分子の発見を促進できるタンパク質をコードする。
【0114】
本明細書中に記載する導入遺伝子カセットは、導入遺伝子に作動可能に連結された、異種プロモーターなどのプロモーター配列を含む。一部の実施形態では、プロモーターおよび導入遺伝子は、同じセーフハーバー遺伝子中に位置する。一部の実施形態では、プロモーターおよび導入遺伝子は、異なるセーフハーバー遺伝子中に位置する。一部の実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは細胞特異的プロモーターである。一部の実施形態では、複数の導入遺伝子がヒト神経幹細胞中に導入される場合、導入遺伝子は1つまたは複数のプロモーターによって制御され得る。一部の実施形態では、1つまたは複数のプロモーターは、U6 RNAポリメラーゼIIIプロモーター、転写制御エレメント、エンハンサー、U6終結配列、1つまたは複数の核局在化シグナルなどであり得る。
【0115】
一部の実施形態では、本明細書中に記載する導入遺伝子カセットは、導入遺伝子が内因性プロモーターに作動可能に連結されるように、セーフハーバー遺伝子座に挿入される。
【0116】
一部の実施形態では、導入遺伝子およびDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、同時に導入される。一部の実施形態では、導入遺伝子およびDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、順次的に導入される。
【0117】
一部の実施形態では、ヌクレアーゼシステムはTALENシステムである。一部の実施形態では、TALENシステムは、プラスミドに基づくTALENを含む。一部の実施形態では、TALENシステムは、RNAに基づくTALENを含む。
【0118】
一部の実施形態では、ヌクレアーゼシステムはCRISPR/Cas9システムである。一部の実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、プラスミドに基づくCas9を含む。一部の実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、RNAに基づくCas9を含む。一部の実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、Cas9 mRNAおよびsgRNAを含む。一部の実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、タンパク質/RNA複合体、またはプラスミド/RNA複合体、またはタンパク質/プラスミド複合体を含む。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞を生成する方法であって、導入遺伝子およびDNAヌクレアーゼシステムを前記単離された神経幹細胞中に導入することを含み、導入遺伝子がセーフハーバー遺伝子座に挿入され、かつDNAヌクレアーゼシステムがCas9 mRNAおよび遺伝子座特異的sgRNAを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Cas9 mRNAは、神経幹細胞中に導入される前に修飾される。一部の実施形態では、sgRNAは、神経幹細胞中に導入される前に修飾される。
【0119】
一部の実施形態では、生じた遺伝子改変された神経幹細胞の少なくとも1%は導入遺伝子を発現する。一部の実施形態では、生じた遺伝子改変された神経幹細胞の少なくとも0.5%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%は前記導入遺伝子を発現する。
【0120】
本明細書中に記載する方法によって得られる遺伝子改変されたヒト神経幹細胞は、神経幹細胞の「幹細胞性」の維持などの、1つまたは複数の有利な特性を呈する。細胞が(時に大規模に)培養され、かつ遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を調製する方法におけるマニピュレーションの複数のステップに供されるという事実を考慮すれば、これは特に顕著である。一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞は、SOX2を発現することができる。一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞は、動物モデルの脳に移植された時に、生着または遊走することができる。一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞は、オリゴデンドロサイト、ニューロン、またはアストロサイトに分化することができる。一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞は、嗅球中の神経細胞系列に分化することができる。一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞は、長期間、ニューロン、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトの系列に分化しながら、自己複製することができる。一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代にわたって、上記特徴の少なくとも1つを有する。一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞は、上記特徴の少なくとも2つまたはそれより多くを有する。一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代にわたって、上記特徴の少なくとも2つまたはそれより多くを有する。
【0121】
一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞は、少なくとも3継代後に導入遺伝子を安定に発現することができる。一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞は、少なくとも1、2、4、5、6、または7回の細胞培養の継代にわたって、導入遺伝子を安定に発現することができる。一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞集団の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%は、導入遺伝子を発現する。
【0122】
一部の実施形態では、本明細書中に記載する方法は選択マーカーを使用する。一部の実施形態では、選択マーカーは、中枢神経系の細胞で通常発現されないタンパク質である。一部の実施形態では、選択マーカーは、細胞表面上で発現されない(例えば、GFP)。一部の実施形態では、選択マーカーは細胞表面マーカーである。
【0123】
一部の実施形態では、細胞表面マーカーは、CD8、CD19、CD20、またはこれらのトランケート型断片である。一部の実施形態では、細胞表面マーカーはCD8アルファ細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、細胞表面マーカーはCD20細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、細胞表面マーカーはトランケート型CD8細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、細胞表面マーカーはトランケート型CD19細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、細胞表面マーカーはトランケート型CD20細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞の選択を促進するために、2つまたはそれより多くの細胞表面マーカーが使用される。
【0124】
一部の実施形態では、細胞表面マーカーはケモカイン受容体である。一部の実施形態では、細胞表面マーカーはサイトカイン受容体である。一部の実施形態では、細胞表面マーカーは細胞表面酵素(イソメチプロテアーゼ(isomethy protease)、メタロプロテアーゼ、またはネプリライシンなど)およびケモカイン受容体である。
【0125】
一部の実施形態では、神経幹細胞は、(例えば、ニューロスフェアとして公知のクラスターを形成することによって、)細胞の自己接着性複合体として培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は単層培養などの接着培養で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、基質でコーティングした組織培養プレート上で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は懸濁培養で培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子、および白血病抑制因子からなる群から選択される添加物の少なくとも1つを含む条件で培養される。
【0126】
一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)を前記神経幹細胞に導入する前に、ある長さの期間(30日間など)にわたって培養される。一部の実施形態では、培養期間は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入される前に、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日である。
【0127】
一部の実施形態では、培養期間の長さは、増殖している神経幹細胞からドナー鋳型が希釈されて消失するために十分な長さである。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が前記神経幹細胞中に導入された後に、最低で約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100日の間、培養される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、ドナー鋳型および/またはDNAヌクレアーゼ(もしくはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列)が神経幹細胞中に導入された後に、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代の間、培養される。
【0128】
一部の実施形態では、神経幹細胞は、ヒトの1つまたは複数の脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、体性幹細胞もしくは多能性幹細胞に由来するか、または1つもしくは複数の体細胞集団からのダイレクトリプログラミングによって誘導される。一部の実施形態では、神経幹細胞はヒト神経幹細胞である。一部の実施形態では、神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、C133およびCD24などのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133陽性CD24陰性~低発現のヒト脳細胞に由来する。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0129】
本明細書中に記載する任意の1つまたは複数の方法によって作られた遺伝子改変された神経幹細胞もまた、本明細書中で提供される。遺伝子改変されたヒト神経幹細胞は、以下においてより詳細にさらに記載される。
【0130】
本出願の別の態様は、セーフハーバー遺伝子座に挿入された導入遺伝子を含む、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞集団を提供する。
【0131】
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞は、体性幹細胞もしくは多能性幹細胞に由来するか、または体細胞集団からのダイレクトリプログラミングによって誘導される。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、ヒトの1つまたは複数の脳に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、マーカーの組合せの発現、例えばCD133陽性CD24陰性~低発現細胞に基づいて単離される。一部の実施形態では、神経幹細胞は、CD133、CD24、CD49f、CD29、およびCD15からなる群から選択される2つまたはそれより多くのマーカーの組合せの発現に基づいて単離される。
【0132】
一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代にわたってSOX2を発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はオリゴデンドロサイトに分化することができる。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、ミエリン産生オリゴデンドロサイトに分化することができる。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はニューロンに分化することができる。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はアストロサイトに分化することができる。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、ニューロン、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトなどの2つまたはそれより多くの神経細胞種に分化することができる。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、動物モデルの脳に移植された時に生着することができる。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、動物モデルの脳に移植された時に遊走することができる。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、嗅球中の神経細胞系列に分化することができる。一部の実施形態では、生じる遺伝子改変された神経幹細胞は、長期間、ニューロン、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトの系列に分化しながら自己複製することができる。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12回の細胞培養の継代にわたって2つまたはそれより多くの上記で論じたような特徴を有し(例えば、SOX2を発現し)、かつ動物モデルの脳に移植された時に遊走もしくは生着すること、またはニューロン、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトなどの少なくとも1つの神経細胞種に分化することを含む機能の少なくとも1つを呈する。
【0133】
一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞集団の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%は導入遺伝子を発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7回の細胞培養の継代にわたって導入遺伝子を安定に発現することができる。
【0134】
一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は選択マーカーをさらに発現する。一部の実施形態では、選択マーカーは、中枢神経系の細胞で発現されないマーカーを含む。一部の実施形態では、選択マーカーは細胞表面上で発現されない(すなわち、GFP)。
【0135】
一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は選択マーカーとして使用することができる細胞表面マーカーを発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はCD8細胞表面マーカーを発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はCD8アルファ細胞表面マーカーを発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はCD19細胞表面マーカーを発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はCD20細胞表面マーカーを発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はトランケート型CD8細胞表面マーカーを発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はトランケート型CD19細胞表面マーカーを発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はトランケート型CD20細胞表面マーカーを発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は2つまたはそれより多くの細胞表面マーカーを発現する。
【0136】
一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はケモカイン受容体である細胞表面マーカーを発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞はサイトカイン受容体である細胞表面マーカーを発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、細胞表面酵素(イソメチプロテアーゼ、またはメタロプロテアーゼ、またはネプリライシンなど)およびケモカイン受容体である細胞表面マーカーを発現する。
【0137】
一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子はIL2Rγである。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子はCCR5である。一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子はHBBである。一部の実施形態では、2つまたはそれより多くのセーフハーバー遺伝子が、1つまたは複数の導入遺伝子を挿入するために使用される。一部の実施形態では、2つまたはそれより多くのセーフハーバー遺伝子は、IL2Rγ、CCR5、およびHBBからなる群から選択される。
【0138】
一部の実施形態では、導入遺伝子はプロモーター配列を含む。一部の実施形態では、導入遺伝子は異種プロモーターを含む。一部の実施形態では、異種プロモーターは導入遺伝子に作動可能に連結されている。一部の実施形態では、異種プロモーターは導入遺伝子に作動可能に連結されており、異種プロモーターおよび導入遺伝子は同じセーフハーバー遺伝子中に位置する。一部の実施形態では、異種プロモーターは導入遺伝子に作動可能に連結されており、異種プロモーターおよび導入遺伝子は異なるセーフハーバー遺伝子中に位置する。一部の実施形態では、ドナー鋳型の異種プロモーターは誘導性プロモーター系を含む。一部の実施形態では、ドナー鋳型の異種プロモーターは細胞特異的プロモーターを含む。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、1つまたは複数のプロモーターを含む1つまたは複数の導入遺伝子を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のプロモーターは、U6 RNAポリメラーゼIIIプロモーター、転写制御エレメント、エンハンサー、U6終結配列、1つまたは複数の核局在化シグナルなどであり得る。
【0139】
一部の実施形態では、本明細書中に記載する導入遺伝子カセットは、導入遺伝子が内因性プロモーターに作動可能に連結されるように、セーフハーバー遺伝子座に挿入される。
【0140】
一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は導入遺伝子を発現し、導入遺伝子は、中枢神経系の遺伝的障害に関連するタンパク質をコードする。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、GALC(クラッベ病)、ABCD1(副腎白質ジストロフィー)、GFAP(アレキサンダー病)、CYP27A1(脳腱黄色腫症)、ARSA(異染性白質ジストロフィー)、PLP1(ペリツェウス・メルツバッハー病)、ASPA(カナバン病)、EIF-2B(白質の消失を伴う白質脳症)、PHYH(レフサム病1型)、PEX7(レフサム病2型)、PPT1(乳児性神経セロイドリポフスチン症(NCL))、TPP1(遅発型小児性NCL)、CLN3(若年性NCL)、CLN6(成人NCL)、CLN5(フィンランド遅発型小児性バリアントNCL)、CLN6(遅発型小児性バリアントNCL)、MSFD8(セロイドリポフスチン症、神経性、7)、CLN8(セロイドリポフスチン症、神経性、8)、CTSD(セロイドリポフスチン症、神経性、10)、UBE3A(アンジェルマン症候群)、POLG(アルパース病)、TAZ(バース症候群)、GLA(ファブリー病)、SLC20A2(ファール症候群)、PDE(網膜色素変性症)、SMN1(脊髄性筋萎縮症)、IKBKAP(家族性自律神経失調症)、MeCP2(レット症候群)、CACNA1C(チモシー症候群)、ATXN3(マチャド・ジョセフ病)、およびRPE65(レーバー先天性黒内障)、USH2A(網膜色素変性症)、RPGR(網膜色素変性症)、RP2(網膜色素変性症)、ABCA4(シュタルガルト)、RS-1(X連鎖性網膜分離)からなる群から選択される導入遺伝子を発現する。一部の実施形態では、タンパク質は、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞によって分泌される。
【0141】
一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、神経保護または神経再生タンパク質、そのバリアント、その断片、またはそのペプチド模倣体をコードする導入遺伝子を発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、インスリン様成長因子1(IGF1)、インスリン様成長因子2(IGF2)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-2(NT-2)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)、ニューロトロフィン-6、保存ドーパミン神経栄養因子(CDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン-β(IFN-β)、腫瘍壊死因子-α(TNFα)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ニュールツリン、パーセフィン、アルテミン、ニューロペプチドY(NPY)、エフリン、セマフォリン、その他の神経新生因子、その他の神経栄養因子、およびこれらの組合せからなる群から選択される神経保護または神経変性タンパク質をコードする導入遺伝子を発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、神経保護または神経変性タンパク質をコードする導入遺伝子を発現し、神経保護または神経再生タンパク質は分泌タンパク質である。一部の実施形態では、導入遺伝子はBcl-2をコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子はテロメラーゼをコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子は、生存を向上させて、または神経幹細胞を若返らせて、長期生存および/または治療用分子の発見を促進できるタンパク質をコードする。
【0142】
一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、2つまたはそれより多くの導入遺伝子を発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、導入遺伝子から産生されるRNAを産生する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、導入遺伝子から産生されるsiRNAを産生する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、1つの導入遺伝子から産生されるRNAを産生し、かつ別の導入遺伝子をタンパク質として発現する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、1つの導入遺伝子から産生されるsiRNAを産生し、かつ別の導入遺伝子をタンパク質として発現する。
【0143】
一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、ヒト対象に投与されて、神経変性疾患または神経学的損傷の1つまたは複数の症状を予防または軽減することができる。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、ヒト対象に投与されて、神経変性疾患の1つまたは複数の症状を予防または軽減することができ、神経変性疾患は、白質ジストロフィー、神経セロイドリポフスチン症、加齢黄斑変性、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、および網膜変性疾患からなる群から選択される。
一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞は、2つまたはそれより多く(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはそれより多く)の上記で論じた特徴を有する。
【0144】
A.ヌクレアーゼ媒介性のゲノム編集
本発明は、操作された(例えば、プログラム可能なまたはターゲティング可能な)DNAヌクレアーゼなどのDNAヌクレアーゼを使用して、セーフハーバー遺伝子などの標的DNA配列のゲノム編集を誘発することを含む。非限定的に、CRISPR関連タンパク質(Cas)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、その他のエンドまたはエキソヌクレアーゼ、これらのバリアント、これらの断片、およびこれらの組合せなどの任意の好適なDNAヌクレアーゼを使用することができる。
【0145】
一部の実施形態では、DNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、組換え発現ベクター中に存在する。ある特定の例では、組換え発現ベクターは、ウイルス構築物、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス構築物、組換えアデノウイルス構築物、組換えレンチウイルス構築物などである。例えば、ウイルスベクターは、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、およびヒト免疫不全ウイルスなどに基づき得る。レトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳腺腫瘍ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターに基づき得る。有用な発現ベクターは当業者に公知であり、多くが市販されている。以下のベクターを真核宿主細胞用の例として提供する:pXT1、pSG5、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLSV40。しかしながら、宿主細胞に適合すれば、任意のその他のベクターを使用することができる。例えば、Cas9ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有する有用な発現ベクターが、例えば、Addgene、Life Technologies、Sigma-Aldrich、およびOrigeneから市販されている。
【0146】
使用する標的細胞/発現系に応じて、プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどを含む多数の転写および翻訳制御エレメントのうちのいずれかを発現ベクターにおいて使用することができる。有用なプロモーターは、ウイルス、または任意の生物体、例えば原核生物または真核生物に由来し得る。好適なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス長鎖末端反復(LTR)プロモーター、アデノウイルス後期主要プロモーター(Ad MLP)、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター領域(CMVIE)などのCMVプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(human U6 small nuclear promoter)(U6)、強化型U6プロモーター、ヒトH1プロモーター(H1)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0147】
他の実施形態では、DNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、RNA(例えば、mRNA)として存在する。RNAは、当業者に公知の任意の方法によって製造することができる。非限定的な例として、RNAを化学合成またはin vitroで転写することができる。ある特定の実施形態では、RNAは、Cas9ポリペプチドまたはそのバリアントなどのCasヌクレアーゼをコードするmRNAを含む。例えば、Cas9 mRNAは、Cas9のオープンリーディングフレーム(ORF)を含有する線状化プラスミドなどの鋳型DNA配列のin vitroでの転写を通じて生成することができる。Cas9 ORFは、哺乳動物の系における発現のために最適化されたコドンであり得る。一部の例では、Cas9 mRNAは、N末端および/またはC末端に核局在化シグナル(NLS)を有するCas9ポリペプチドをコードする。その他の例では、Cas9 mRNAは、C末端のHAエピトープタグをコードする。さらに他の例では、Cas9 mRNAは、キャップを付加され、ポリアデニル化され、および/または5-メチルシチジンで修飾されている。Cas9 mRNAは、例えば、TriLink BioTechnologies、Sigma-Aldrich、およびThermo Fisher Scientificから市販されている。
【0148】
1.CRISPR/Casシステム
CRISPR(クラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats))/Cas(CRISPR関連タンパク質)ヌクレアーゼシステムは、ゲノム操作のために使用できる細菌システムに基づく操作されたヌクレアーゼシステムである。これは、多くの細菌および古細菌の適応免疫応答の部分に基づく。ウイルスまたはプラスミドが細菌に侵入する時に、侵入者のDNAセグメントが「免疫」応答によってCRISPR RNA(crRNA)に変換される。次いで、crRNAは、部分的な相補性領域を通じて、tracrRNAと呼ばれる別種のRNAと会合して、Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼを「プロトスペーサー」と呼ばれる標的DNA中のcrRNAに相同な領域へとガイドする。Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼはDNAを開裂して、crRNA転写物内に含有される20ヌクレオチドのガイド配列によって特定される部位において二本鎖切断における平滑末端を生成する。Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼは、部位特異的なDNAの認識および開裂のためにcrRNAおよびtracrRNAの両方を必要とし得る。crRNAおよびtracrRNAを合わせて1つの分子(「単一ガイドRNA」または「sgRNA」)にできるように、および単一ガイドRNAのcrRNA相当部分を操作して、Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼをガイドして任意の所望の配列にターゲティングできるように、このシステムは操作されている(例えば、Jinekら(2012年)Science 337巻:816~821頁;Jinekら(2013年)eLife 2:e00471;Segal(2013年)eLife 2:e00563を参照)。したがって、CRISPR/Casシステムを操作して、細胞のゲノム中の所望の標的において二本鎖切断を作製し、かつ細胞の内因性の機構を利用して相同組換え修復(HDR)または非相同末端結合(NHEJ)によって誘発された切断を修復することができる。
【0149】
一部の実施形態では、CasヌクレアーゼはDNA開裂活性を有する。Casヌクレアーゼは、標的DNA配列中の位置において1つまたは両方の鎖の開裂を導くことができる。例えば、Casヌクレアーゼは、標的DNA配列の一本鎖を開裂する1つまたは複数の不活化触媒ドメインを有するニッカーゼであり得る。
【0150】
Casヌクレアーゼの非限定的な例としては、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても公知)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、これらのホモログ、これらのバリアント、これらの突然変異体、およびこれらの誘導体が挙げられる。3つの主要型のCasヌクレアーゼ(I型、II型、およびIII型)、ならびに5つのI型、3つのII型、および2つのIII型のタンパク質を含む10のサブタイプが存在する(例えば、HochstrasserおよびDoudna、Trends Biochem Sci、2015年:40巻(1号):58~66頁を参照)。II型Casヌクレアーゼとしては、Cas1、Cas2、Csn2、およびCas9が挙げられる。これらのCasヌクレアーゼは当業者に公知である。例えば、Streptococcus pyogenesの野生型Cas9ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えばNBCI Ref.Seq.番号NP_269215に記載されており、Streptococcus thermophilusの野生型Cas9ポリペプチドのアミノ酸配列は、例えばNBCI Ref.Seq.番号WP_011681470に記載されている。本発明において有用なCRISPR関連エンドヌクレアーゼは、例えば、米国出願公開第2014/0068797号、同第2014/0302563号、および同第2014/0356959号に開示されている。
【0151】
Casヌクレアーゼ、例えばCas9ポリペプチドは、以下に限定されないが、Veillonella atypical、Fusobacterium nucleatum、Filifactor alocis、Solobacterium moorei、Coprococcus catus、Treponema denticola、Peptoniphilus duerdenii、Catenibacterium mitsuokai、Streptococcus mutans、Listeria innocua、Staphylococcus pseudintermedius、Acidaminococcus intestine、Olsenella uli、Oenococcus kitaharae、Bifidobacterium bifidum、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus gasseri、Finegoldia magna、Mycoplasma mobile、Mycoplasma gallisepticum、Mycoplasma ovipneumoniae、Mycoplasma canis、Mycoplasma synoviae、Eubacterium rectale、Streptococcus thermophilus、Eubacterium dolichum、Lactobacillus coryniformis subsp. Torquens、Ilyobacter polytropus、Ruminococcus albus、Akkermansia muciniphila、Acidothermus cellulolyticus、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium dentium、Corynebacterium diphtheria、Elusimicrobium minutum、Nitratifractor salsuginis、Sphaerochaeta globus、Fibrobacter succinogenes subsp. Succinogenes、Bacteroides fragilis、Capnocytophaga ochracea、Rhodopseudomonas palustris、Prevotella micans、Prevotella ruminicola、Flavobacterium columnare、Aminomonas paucivorans、Rhodospirillum rubrum、Candidatus Puniceispirillum marinum、Verminephrobacter eiseniae、Ralstonia syzygii、Dinoroseobacter shibae、Azospirillum、Nitrobacter hamburgensis、Bradyrhizobium、Wolinella succinogenes、Campylobacter jejuni subsp. Jejuni、Helicobacter mustelae、Bacillus cereus、Acidovorax ebreus、Clostridium perfringens、Parvibaculum lavamentivorans、Roseburia intestinalis、Neisseria meningitidis、Pasteurella multocida subsp. Multocida、Sutterella wadsworthensis、proteobacterium、Legionella pneumophila、Parasutterella excrementihominis、Wolinella succinogenes、およびFrancisella novicidaなどの様々な細菌種に由来し得る。
【0152】
「Cas9」とは、RNAにガイドされる二本鎖DNAに結合するヌクレアーゼタンパク質またはニッカーゼタンパク質を指す。野生型Cas9ヌクレアーゼは、異なるDNA鎖を切断する2つの機能ドメイン、例えばRuvCおよびHNHを有する。Cas9は、両方の機能ドメインが活性である時に、ゲノムDNA(標的DNA)中に二本鎖切断を誘発することができる。Cas9酵素は、Corynebacter、Sutterella、Legionella、Treponema、Filifactor、Eubacterium、Streptococcus、Lactobacillus、Mycoplasma、Bacteroides、Flaviivola、Flavobacterium、Sphaerochaeta、Azospirillum、Gluconacetobacter、Neisseria、Roseburia、Parvibaculum、Staphylococcus、Nitratifractor、およびCampylobacterからなる群に属する細菌に由来するCas9タンパク質の1つまたは複数の触媒ドメインを含むことができる。一部の実施形態では、Cas9は融合タンパク質であり、例えば、2つの触媒ドメインは異なる細菌種に由来する。
【0153】
Cas9ヌクレアーゼの有用なバリアントは、RuvC-もしくはHNH-酵素またはニッカーゼなどの単一の不活性触媒ドメインを含み得る。Cas9ニッカーゼは、活性の機能ドメインを1つだけ有し、標的DNAの一鎖のみを切断することによって一本鎖切断またはニックを作製することができる。一部の実施形態では、少なくともD10A突然変異を有する変異型Cas9ヌクレアーゼはCas9ニッカーゼである。他の実施形態では、少なくともH840A突然変異を有する変異型Cas9ヌクレアーゼはCas9ニッカーゼである。Cas9ニッカーゼ中に存在する突然変異のその他の例としては、N854AおよびN863Aが挙げられるが、これらに限定されない。反対のDNA鎖にターゲティングする少なくとも2つのDNAターゲティングRNAが使用される場合、Cas9ニッカーゼを使用して二本鎖切断を導入することができる。二重ニックを誘発された二本鎖切断はNHEJまたはHDRによって修復することができる(Ranら、2013年、Cell、154巻:1380~1389頁)。この遺伝子編集戦略はHDRを選好し、オフターゲットのDNA部位におけるindel突然変異の頻度を減少させる。Cas9ヌクレアーゼまたはニッカーゼの非限定的な例は、例えば、米国特許第8,895,308号;同第8,889,418号;および同第8,865,406号、ならびに米国出願公開第2014/0356959号、同第2014/0273226号、および同第2014/0186919号に記載されている。Cas9ヌクレアーゼまたはニッカーゼは、標的細胞または標的生物体のためにコドンが最適化されている場合がある。
【0154】
一部の実施形態では、Casヌクレアーゼは、RuvC1およびHNHヌクレアーゼドメインの2つの抑制化突然変異(D10AおよびH840A)を含有するCas9ポリペプチドであってよく、これはdCas9と称される(Jinekら、Science、2012年、337巻:816~821頁;Qiら、Cell、152巻(5号):1173~1183頁)。一実施形態では、Streptococcus pyogenes由来のdCas9ポリペプチドは、D10、G12、G17、E762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、A987、または任意のこれらの組合せの位置において少なくとも1つの突然変異を含む。そのようなdCas9ポリペプチドおよびそのバリアントの説明は、例えば国際特許出願公開第WO2013/176772号に提供されている。dCas9酵素は、H840またはN863における突然変異に加えて、D10、E762、H983、またはD986における突然変異を含有し得る。一部の例では、dCas9酵素は、D10AまたはD10N突然変異を含有する。dCas9酵素は、H840A、H840Y、またはH840Nを含むこともできる。一部の実施形態では、本発明のdCas9酵素は、D10AおよびH840A;D10AおよびH840Y;D10AおよびH840N;D10NおよびH840A;D10NおよびH840Y;またはD10NおよびH840Nの置換を含む。置換は、保存的な置換であってもよいし、またはCas9ポリペプチドを酵素活性がなくかつ標的DNAに結合できるようにする非保存的な置換であってもよい。
【0155】
ゲノム編集方法のために、Casヌクレアーゼは、dCas9に連結されたIIS型制限酵素FokIの触媒ドメインを含むポリペプチドなどの、Cas9融合タンパク質であり得る。FokI-dCas9融合タンパク質(fCas9)は、2つのガイドRNAを使用して標的DNAの一本鎖に結合し、二本鎖切断を生成することができる。
【0156】
一部の実施形態では、Casヌクレアーゼは、低下したオフターゲット作用およびロバストなオンターゲットの開裂を有する、高忠実度のまたは特異性が増進したCas9ポリペプチドバリアントであり得る。オンターゲットの特異性が向上したCas9ポリペプチドのバリアントの非限定的な例としては、Slaymakerら、Science、351巻(6268号):84~8頁(2016年)に記載のSpCas9(K855A)、SpCas9(K810A/K1003A/R1060A)[eSpCas9(1.0)とも称される]、およびSpCas9(K848A/K1003A/R1060A)[eSpCas9(1.1)とも称される]バリアント、ならびに以下の突然変異:N497A、R661A、Q695A、およびQ926Aの1つ、2つ、3つ、または4つを含有する、Kleinstiverら、Nature、529巻(7587号):490~5頁(2016年)に記載のSpCas9バリアント(例えば、SpCas9-HF1は4つ全ての突然変異を含有する)が挙げられる。
【0157】
2.ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)
「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」または「ZFN」は、FokIの開裂ドメインと3つまたはそれより多くのジンクフィンガーモチーフを含有するDNA認識ドメインとの融合である。精密な配向および間隔での2つの個々のZFNのDNA中の特定の位置でのヘテロ二量体化は、DNA中の二本鎖切断に繋がる。場合によっては、ZFNは、開裂ドメインを各ジンクフィンガードメインのC末端に融合させている。2つの開裂ドメインが二量体化してDNAを開裂するのを可能にするために、2つの個々のZFNは、ある特定の距離を空けて、それらのC末端でDNAの反対の鎖に結合する。場合によっては、ジンクフィンガードメインと開裂ドメインとの間のリンカー配列は、各結合性部位の5’端が約5~7bp離れていることを必要とする。本発明において有用な例示的ZFNとしては、Urnovら、Nature Reviews Genetics、2010年、11巻:636~646頁;Gajら、Nat Methods、2012年、9巻(8号):805~7頁;米国特許第6,534,261号;同第6,607,882号;同第6,746,838号;同第6,794,136号;同第6,824,978号;同第6,866,997号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;同第7,030,215号;同第7,220,719号;同第7,241,573号;同第7,241,574号;同第7,585,849号;同第7,595,376号;同第6,903,185号;同第6,479,626号;ならびに米国出願公開第2003/0232410号および同第2009/0203140号に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
ZFNは、標的DNA中に二本鎖切断を生成して、遺伝子改変の導入を可能とするDNA切断修復を生じさせることができる。DNA切断修復は、非相同末端結合(NHEJ)または相同組換え修復(HDR)を介して起こり得る。HDRでは、標的DNAの相同アームフランキング部位を含有するドナーDNA修復鋳型が提供され得る。
【0159】
一部の実施形態では、ZFNは部位特異的な一本鎖DNA切断またはニックを誘発し、したがってHDRを生じさせる操作されたZFNであり得るジンクフィンガーニッカーゼである。ジンクフィンガーニッカーゼの説明は、例えば、Ramirezら、Nucl Acids Res、2012年、40巻(12号):5560~8頁;Kimら、Genome Res、2012年、22巻(7号):1327~33頁に見られる。
【0160】
3.TALEN
「TALEN」または「TALエフェクターヌクレアーゼ」は、DNA結合性縦列反復配列の中央ドメイン、核局在化シグナル、およびC末端の転写活性化ドメインを含有する、操作された転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼである。一部の例では、DNA結合性縦列反復配列は33~35アミノ酸の長さを含み、1つまたは複数の特定のDNA塩基対を認識できる2つの超可変のアミノ酸残基を12位および13位に含有する。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA開裂ドメインに融合することによって製造することができる。例えば、野生型または変異型のFokIエンドヌクレアーゼまたはFokIの触媒ドメインなどのヌクレアーゼにTALEタンパク質を融合させることができる。例えば、開裂の特異性または活性を向上させるFokIに対するいくつもの突然変異が、TALENにおける使用のために為されてきた。そのようなTALENを操作して、任意の所望のDNA配列に結合させることができる。
【0161】
TALENを使用して標的DNA配列中に二本鎖切断を作製し、そしてそれがNHEJまたはHDRを受けることによって、遺伝子改変を生成することができる。場合によっては、HDRを促進するために一本鎖のドナーDNA修復鋳型が提供される。
【0162】
TALENおよび遺伝子編集のためのその使用の詳細な説明は、例えば、米国特許第8,440,431号;同第8,440,432号;同第8,450,471号;同第8,586,363号;および同第8,697,853号;Scharenbergら、Curr Gene Ther、2013年、13巻(4号):291~303頁;Gajら、Nat Methods、2012年、9巻(8号):805~7頁;Beurdeleyら、Nat Commun、2013年、4巻:1762頁;ならびにJoungおよびSander、Nat Rev Mol Cell Biol、2013年、14巻(1号):49~55頁に見られる。
【0163】
4.メガヌクレアーゼ
「メガヌクレアーゼ」は、高い特異性を有し得る希少切断性(rare-cutting)エンドヌクレアーゼまたはホーミングエンドヌクレアーゼであり、少なくとも12塩基対の長さ、例えば12~40塩基対または12~60塩基対の長さに及ぶDNA標的部位を認識する。メガヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼの少なくとも1つの触媒ドメインおよび少なくとも1つのDNA結合ドメインまたは核酸標的配列を特定するタンパク質を含む任意の融合タンパク質などの、モジュール式のDNA結合性ヌクレアーゼであり得る。DNA結合ドメインは、一本鎖または二本鎖DNAを認識する少なくとも1つのモチーフを含有し得る。メガヌクレアーゼは、単量体または二量体であり得る。
【0164】
一部の例では、メガヌクレアーゼは、天然に存在するもの(天然に見られるもの)または野生型であり、その他の例では、メガヌクレアーゼは、非天然の、操作された的な、操作された、合成の、合理的に設計された、または人間が作ったものである。ある特定の実施形態では、本発明のメガヌクレアーゼとしては、I-CreIメガヌクレアーゼ、I-CeuIメガヌクレアーゼ、I-MsoIメガヌクレアーゼ、I-SceIメガヌクレアーゼ、これらのバリアント、これらの突然変異体、およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0165】
有用なメガヌクレアーゼおよび遺伝子編集におけるそれらの適用の詳細な説明は、例えば、Silvaら、Curr Gene Ther、2011年、11巻(1号):11~27頁;Zaslavoskiyら、BMC Bioinformatics、2014年、15巻:191頁;Takeuchiら、Proc Natl Acad Sci USA、2014年、111巻(11号):4061~4066頁、ならびに米国特許第7,842,489号;同第7,897,372号;同第8,021,867号;同第8,163,514号;同第8,133,697号;同第8,021,867号;同第8,119,361号;同第8,119,381号;同第8,124,36号;および同第8,129,134号に見られる。
【0166】
B.HDR用のドナー鋳型
(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば、異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)導入遺伝子カセットにフランキングし、かつDNAヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)開裂部位の両側にあるセーフハーバー遺伝子の部分に相同な2つの相同アームを含む、ドナー鋳型(例えば、組換えドナー修復鋳型)が本明細書中で提供される。ドナー鋳型は、選択マーカー、検出可能なマーカー、および/または精製マーカーをさらに含み得る。
【0167】
一部の実施形態では、相同アームは同一の長さである。他の実施形態では、相同アームは異なる長さである。相同アームは、少なくとも約10塩基対(bp)、例えば、少なくとも約10bp、15bp、20bp、25bp、30bp、35bp、45bp、55bp、65bp、75bp、85bp、95bp、100bp、150bp、200bp、250bp、300bp、350bp、400bp、450bp、500bp、550bp、600bp、650bp、700bp、750bp、800bp、850bp、900bp、950bp、1000bp、1.1キロ塩基(kb)、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kb、1.6kb、1.7kb、1.8kb、1.9kb、2.0kb、2.1kb、2.2kb、2.3kb、2.4kb、2.5kb、2.6kb、2.7kb、2.8kb、2.9kb、3.0kb、3.1kb、3.2kb、3.3kb、3.4kb、3.5kb、3.6kb、3.7kb、3.8kb、3.9kb、4.0kb、またはそれより長い場合がある。相同アームは、約10bpから約4kb、例えば、約10bpから約20bp、約10bpから約50bp、約10bpから約100bp、約10bpから約200bp、約10bpから約500bp、約10bpから約1kb、約10bpから約2kb、約10bpから約4kb、約100bpから約200bp、約100bpから約500bp、約100bpから約1kb、約100bpから約2kb、約100bpから約4kb、約500bpから約1kb、約500bpから約2kb、約500bpから約4kb、約1kbから約2kb、約1kbから約2kb、約1kbから約4kb、または約2kbから約4kbであり得る。
【0168】
ドナー鋳型は、発現ベクター中にクローニングすることができる。当業者に公知の従来のウイルスおよび非ウイルスに基づく発現ベクターを使用することができる。
【0169】
C.DNAターゲティングRNA
一部の実施形態では、本発明の方法は、ガイド核酸、例えばDNAターゲティングRNA(例えば、単一ガイドRNA(sgRNA)またはダブルガイド核酸)、またはガイド核酸(例えば、DNAターゲティングRNA)をコードするヌクレオチド配列をヒト神経幹細胞中に導入することをさらに含む。
【0170】
DNAターゲティングRNA(例えば、sgRNA)は、標的DNA内の特定の配列に相補的な第1のヌクレオチド配列(例えば、ガイド配列)、およびDNAヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)またはそのバリアントと相互作用するタンパク質結合配列を含む第2のヌクレオチド配列(例えば、スキャフォールド配列またはtracrRNA)を含み得る。DNAターゲティングRNAのガイド配列(「第1のヌクレオチド配列」)は、RNA-DNA相補的塩基対形成を使用してDNAヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)を標的DNA部位(例えば、セーフハーバー遺伝子配列)に導くことができる、約10から約2000の核酸、例えば、約10から約100の核酸、約10から約500の核酸、約10から約1000の核酸、約10から約1500の核酸、約10から約2000の核酸、約50から約100の核酸、約50から約500の核酸、約50から約1000の核酸、約50から約1500の核酸、約50から約2000の核酸、約100から約500の核酸、約100から約1000の核酸、約100から約1500の核酸、約100から約2000の核酸、約500から約1000の核酸、約500から約1500の核酸、約500から約2000の核酸、約1000から約1500の核酸、約1000から約2000の核酸、または約1500から約2000の核酸を5’末端に含み得る。一部の実施形態では、DNAターゲティングRNAのガイド配列は、RNA-DNA相補的塩基対形成を使用してDNAヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)を標的DNA部位(例えば、セーフハーバー遺伝子配列)に導くことができる約100の核酸を5’末端に含む。一部の実施形態では、ガイド配列は、RNA-DNA相補的塩基対形成を使用してDNAヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)を標的DNA部位(例えば、セーフハーバー遺伝子配列)に導くことができる20の核酸を5’末端に含む。他の実施形態では、ガイド配列は、標的DNA部位(例えば、セーフハーバー遺伝子配列)に相補的な20未満、例えば、19、18、17、16、15、またはそれ未満の核酸を含む。ガイド配列は、DNAヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)を標的DNA部位(例えば、セーフハーバー遺伝子配列)に導くことができる17の核酸を含み得る。一部の例では、ガイド配列は、ターゲティング領域の5’末端において相補性領域中に約1から約10の核酸ミスマッチを含有する。その他の例では、ガイド配列は、ターゲティング領域の3’末端において最後の約5から約12の核酸には相補性領域中にミスマッチを含有しない。
【0171】
DNAターゲティングRNAのタンパク質結合性スキャフォールド配列(「第2のヌクレオチド配列」)は、互いにハイブリダイズして二本鎖RNAデュプレックス(dsRNAデュプレックス)を形成する2つの相補的なヌクレオチドストレッチを含み得る。タンパク質結合性スキャフォールド配列は、約30の核酸から約200の核酸の間、例えば、約40の核酸から約200の核酸の間、約50の核酸から約200の核酸の間、約60の核酸から約200の核酸の間、約70の核酸から約200の核酸の間、約80の核酸から約200の核酸の間、約90の核酸から約200の核酸の間、約100の核酸から約200の核酸の間、約110の核酸から約200の核酸の間、約120の核酸から約200の核酸の間、約130の核酸から約200の核酸の間、約140の核酸から約200の核酸の間、約150の核酸から約200の核酸の間、約160の核酸から約200の核酸の間、約170の核酸から約200の核酸の間、約180の核酸から約200の核酸の間、または約190の核酸から約200の核酸の間であり得る。ある特定の態様では、タンパク質結合配列は、約30の核酸から約190の核酸の間、例えば、約30の核酸から約180の核酸の間、約30の核酸から約170の核酸の間、約30の核酸から約160の核酸の間、約30の核酸から約150の核酸の間、約30の核酸から約140の核酸の間、約30の核酸から約130の核酸の間、約30の核酸から約120の核酸の間、約30の核酸から約110の核酸の間、約30の核酸から約100の核酸の間、約30の核酸から約90の核酸の間、約30の核酸から約80の核酸の間、約30の核酸から約70の核酸の間、約30の核酸から約60の核酸の間、約30の核酸から約50の核酸の間、または約30の核酸から約40の核酸の間であり得る。
【0172】
一部の実施形態では、DNAターゲティングRNA(例えば、sgRNA)は、標的DNA配列に相補的なより短い領域(例えば、20ヌクレオチド未満の長さ)を有するガイド配列を含むそのトランケート型形態である。ある特定の例では、トランケート型DNAターゲティングRNA(例えば、sgRNA)は、オフターゲット作用を低下させることによって、DNAヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)の向上した特異性を提供する。例えば、トランケート型sgRNAは、標的DNA配列に対する17、18、または19の相補的なヌクレオチド(例えば、17~18、17~19、または18~19の相補的なヌクレオチド)を有するガイド配列を含み得る。例えば、Fuら、Nat. Biotechnol.、32巻(3号):279~284頁(2014年)を参照。
【0173】
DNAターゲティングRNAは、上記のウェブベースのソフトウェアのうちのいずれかを使用して選択することができる。非限定的な例として、DNAターゲティングRNAの選択の検討は、使用するCas9ヌクレアーゼ用のPAM配列、およびオフターゲットの改変を最小化するための戦略を含み得る。CRISPR Design Toolなどのツールは、DNAターゲティングRNAを調製するため、標的改変効率を評価するため、および/またはオフターゲット部位における開裂を評価するための配列を提供することができる。
【0174】
DNAターゲティングRNAは、当業者に公知の任意の方法によって製造することができる。一部の実施形態では、DNAターゲティングRNAをコードするヌクレオチド配列は、発現カセットまたは発現ベクター中にクローニングされる。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、PCRによって製造され、発現カセット中に含有される。例えば、DNAターゲティングRNAをコードするヌクレオチド配列をPCR増幅して、プロモーター配列(例えば、U6 RNAポリメラーゼIIIプロモーター配列)に付加することができる。他の実施形態では、DNAターゲティングRNAをコードするヌクレオチド配列は、プロモーター(例えば、U6 RNAポリメラーゼIIIプロモーター)、ならびに転写制御エレメント、エンハンサー、U6終結配列、1つまたは複数の核局在化シグナルなどを含有する発現ベクター中にクローニングされる。一部の実施形態では、発現ベクターはマルチシストロン性または2シストロン性であり、蛍光タンパク質、エピトープタグ、および/または抗生物質抵抗性マーカーをコードするヌクレオチド配列も含み得る。2シストロン性の発現ベクターのある特定の例では、例えば蛍光タンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列は、ウイルス2Aペプチドなどの自己開裂性ペプチドをコードする配列を使用して、例えば抗生物質抵抗性マーカーをコードする第2のヌクレオチド配列に連結される。口蹄疫ウイルス2A(F2A)、馬鼻炎Aウイルス2A(E2A)、豚テシオウイルス-1 2A(P2A)、およびThoseaasignaウイルス2A(T2A)などのウイルス2Aペプチドは、高い開裂効率を有し、したがって2つのタンパク質が同時ではあるが、同じRNA転写物から別々に発現されることができる。
【0175】
DNAターゲティングRNAを発現するための好適な発現ベクターは、Addgene、Sigma-Aldrich、およびLife Technologiesから市販されている。発現ベクターは、蛍光タンパク質mCherryを含むpLQ1651(Addgeneカタログ番号51024)であってよい。その他の発現ベクターの非限定的な例としては、pX330、pSpCas9、pSpCas9n、pSpCas9-2A-Puro、pSpCas9-2A-GFP、pSpCas9n-2A-Puro、GeneArt(登録商標)CRISPR Nuclease OFPベクター、およびGeneArt(登録商標)CRISPR Nuclease OFPベクターなどが挙げられる。
【0176】
ある特定の実施形態では、DNAターゲティングRNA(例えば、sgRNA)は化学合成される。DNAターゲティングRNAは、2’-O-チオノカルバメートで保護されたヌクレオシドホスホロアミダイトを使用して合成することができる。方法は、例えば、Dellingerら、J. American Chemical Society 133巻、11540~11556頁(2011年);Threlfallら、Organic & Biomolecular Chemistry 10巻、746~754頁(2012年);およびDellingerら、J. American Chemical Society 125巻、940~950頁(2003年)に記載されている。
【0177】
特定の実施形態では、DNAターゲティングRNA(例えば、sgRNA)は化学修飾される。非限定的な例として、DNAターゲティングRNAは、セーフハーバー遺伝子配列の一部分に相補的な第1のヌクレオチド配列(例えば、ガイド配列またはcrRNA)およびCasポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列(例えば、スキャフォールド配列またはtracrRNA)を含む修飾されたsgRNAである。
【0178】
いかなる特定の理論によっても縛られるものではないが、1つまたは複数の化学修飾を含有するsgRNAは、CRISPRに基づくゲノム編集、例えば相同組換えのために使用された時に、対応する非修飾のsgRNAと比べて、修飾されたsgRNAの活性、安定性、および特異性を増加させ、かつ/または毒性を減少させることができる。修飾されたsgRNAの非限定的な利点としては、標的細胞中への送達がより容易となること、安定性の増加、活性の継続時間の増加、および毒性の低下が挙げられる。CRISPR/Cas9システムの部分として本明細書中に記載する修飾されたsgRNAは、非修飾の配列同等物と比較して、より高頻度のオンターゲットゲノム編集(例えば、相同組換え)、活性および/または特異性の向上を提供する。
【0179】
ガイド配列の1つまたは複数のヌクレオチドおよび/またはスキャフォールド配列の1つまたは複数のヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドであり得る。例えば、約20ヌクレオチドの長さのガイド配列は、1つまたはそれより多く、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個の修飾ヌクレオチドを有し得る。場合によっては、ガイド配列は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれより多くの修飾ヌクレオチドを含む。その他の場合には、ガイド配列は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、19個、20個、またはそれより多くの修飾ヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドは、ガイド配列の任意の核酸位置に位置することができる。すなわち、修飾ヌクレオチドは、ガイド配列の最初および/または最後のヌクレオチドにおいてまたはその近くに、かつ/またはその間の任意の位置において、存在することができる。例えば、20ヌクレオチドの長さのガイド配列について、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、ガイド配列の核酸の1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、10位、11位、12位、13位、14位、15位、16位、17位、18位、19位、および/または20位に位置することができる。ある特定の例では、ガイド配列の約10%から約30%、例えば、約10%から約25%、約10%から約20%、約10%から約15%、約15%から約30%、約20%から約30%、または約25%から約30%は、修飾ヌクレオチドを含み得る。その他の例では、ガイド配列の約10%から約30%、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、または約30%は、修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0180】
ある特定の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、ガイド配列の5’末端(例えば、5’末端の末端ヌクレオチド)または5’末端の近く(例えば、5’末端の末端ヌクレオチドの1、2、3、4、または5ヌクレオチド以内)、かつ/またはガイド配列内の内部の位置に位置する。
【0181】
一部の実施形態では、修飾されたsgRNAのスキャフォールド配列は、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含有する。例えば、約80ヌクレオチドの長さのスキャフォールド配列は、1つまたはそれより多く、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、76個、77個、78個、79個、または80個の修飾ヌクレオチドを有し得る。一部の例では、スキャフォールド配列は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれより多くの修飾ヌクレオチドを含む。その他の例では、スキャフォールド配列は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、19個、20個、またはそれより多くの修飾ヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドは、スキャフォールド配列の任意の核酸位置に位置することができる。例えば、修飾ヌクレオチドは、スキャフォールド配列の最初および/または最後のヌクレオチドにおいてまたはその近くに、かつ/またはその間の任意の位置において、存在することができる。例えば、約80ヌクレオチドの長さのスキャフォールド配列について、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、配列の核酸の1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、10位、11位、12位、13位、14位、15位、16位、17位、18位、19位、20位、21位、22位、23位、24位、25位、26位、27位、28位、29位、30位、31位、32位、33位、34位、35位、36位、37位、38位、39位、40位、41位、42位、43位、44位、45位、46位、47位、48位、49位、50位、51位、52位、53位、54位、55位、56位、57位、58位、59位、60位、61位、62位、63位、64位、65位、66位、67位、68位、69位、70位、71位、72位、73位、74位、75位、76位、77位、78位、79位、および/または80位に位置することができる。一部の例では、スキャフォールド配列の約1%から約10%、例えば、約1%から約8%、約1%から約5%、約5%から約10%、または約3%から約7%は、修飾ヌクレオチドを含み得る。その他の例では、スキャフォールド配列の約1%から約10%、例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%は、修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0182】
ある特定の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、スキャフォールド配列の3’末端(例えば、3’末端の末端ヌクレオチド)または3’末端の近く(例えば、3’末端の1、2、3、4、または5ヌクレオチド以内)、かつ/またはスキャフォールド配列内の内部の位置に位置する。
【0183】
一部の実施形態では、修飾されたsgRNAは、ガイド配列の5’末端(例えば、5’末端の末端ヌクレオチド)または5’末端の近く(例えば、5’末端の末端ヌクレオチドの1、2、3、4、または5ヌクレオチド以内)で始まる1つ、2つ、または3つの連続的なまたは不連続の修飾ヌクレオチド、およびスキャフォールド配列の3’末端(例えば、3’末端の末端ヌクレオチド)または3’末端の近く(例えば、3’末端の1、2、3、4、または5ヌクレオチド以内)で始まる1つ、2つ、または3つの連続的なまたは不連続の修飾ヌクレオチドを含む。
【0184】
一部の例では、修飾されたsgRNAは、ガイド配列の5’末端(例えば、5’末端の末端ヌクレオチド)または5’末端の近く(例えば、5’末端の末端ヌクレオチドの1、2、3、4、または5ヌクレオチド以内)に1つの修飾ヌクレオチド、およびスキャフォールド配列の3’末端(例えば、3’末端の末端ヌクレオチド)または3’末端の近く(例えば、3’末端の1、2、3、4、または5ヌクレオチド以内)に1つの修飾ヌクレオチドを含む。
【0185】
その他の例では、修飾されたsgRNAは、ガイド配列の5’末端(例えば、5’末端の末端ヌクレオチド)または5’末端の近く(例えば、5’末端の末端ヌクレオチドの1、2、3、4、または5ヌクレオチド以内)で始まる2つの連続的なまたは不連続の修飾ヌクレオチド、およびスキャフォールド配列の3’末端(例えば、3’末端の末端ヌクレオチド)または3’末端の近く(例えば、3’末端の1、2、3、4、または5ヌクレオチド以内)で始まる2つの連続的なまたは不連続の修飾ヌクレオチドを含む。
【0186】
さらに別の例では、修飾されたsgRNAは、ガイド配列の5’末端(例えば、5’末端の末端ヌクレオチド)または5’末端の近く(例えば、5’末端の末端ヌクレオチドの1、2、3、4、または5ヌクレオチド以内)で始まる3つの連続的なまたは不連続の修飾ヌクレオチド、およびスキャフォールド配列の3’末端(例えば、3’末端の末端ヌクレオチド)または3’末端の近く(例えば、3’末端の1、2、3、4、または5ヌクレオチド以内)で始まる3つの連続的なまたは不連続の修飾ヌクレオチドを含む。
【0187】
特定の実施形態では、修飾されたsgRNAは、ガイド配列の5’末端に3つの連続的な修飾ヌクレオチドおよびスキャフォールド配列の3’末端に3つの連続的な修飾ヌクレオチドを含む。
【0188】
sgRNAの修飾ヌクレオチドは、リボース(例えば、糖)基、リン酸基、核酸塩基、または任意のこれらの組合せにおける修飾を含み得る。一部の実施形態では、リボース基における修飾は、リボースの2’位における修飾を含む。
【0189】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2’フルオロ-アラビノ核酸、トリシクロ-DNA(tricycle-DNA)(tc-DNA)、ペプチド核酸、シクロヘキセン核酸(CeNA)、ロックド核酸(LNA)、エチレン架橋核酸(ENA)、ホスホロジアミデートモルホリノ(phosphodiamidate morpholino)、またはこれらの組合せを含む。
【0190】
修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログは、糖および/または骨格修飾リボヌクレオチドを含む(すなわち、リン酸糖骨格への修飾を含む)ことができる。例えば、窒素または硫黄ヘテロ原子の少なくとも1つを含むように生来または天然のRNAのホスホジエステル結合を修飾することができる。一部の骨格修飾リボヌクレオチドでは、隣接するリボヌクレオチドを接続するホスホエステル基を修飾基、例えばホスホチオエート基に置換し得る。好ましい糖修飾リボヌクレオチドでは、2’部分は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはON(Rは、C1~C6アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、ハロはF、Cl、Br、またはIである)から選択される基である。
【0191】
一部の実施形態では、修飾ヌクレオチドは糖修飾を含有する。糖修飾の非限定的な例としては、2’-デオキシ-2’-フルオロ-オリゴリボヌクレオチド(2’-フルオロ-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸)、2’-デオキシ-2’-デアミンオリゴリボヌクレオチド(2'-deoxy-2'-deamine oligoribonucleotide)(2’-アミノ-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、2’-アミノ-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸)、2’-O-アルキルオリゴリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド(2’-O-メチルシチジン-5’-三リン酸、2’-メチルウリジン-5’-三リン酸)、2’-C-アルキルオリゴリボヌクレオチド、およびこれらの異性体(2’-アラシチジン-5’-三リン酸、2’-アラウリジン-5’-三リン酸)、アジド三リン酸(2’-アジド-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸、2’-アジド-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸)、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0192】
一部の実施形態では、修飾されたsgRNAは、1つまたは複数の2’-フルオロ、2’-アミノ、および/または2’-チオ修飾を含有する。一部の例では、修飾は、2’-フルオロ-シチジン、2’-フルオロ-ウリジン、2’-フルオロ-アデノシン、2’-フルオロ-グアノシン、2’-アミノ-シチジン、2’-アミノ-ウリジン、2’-アミノ-アデノシン、2’-アミノ-グアノシン、2,6-ジアミノプリン、4-チオ-ウリジン、5-アミノ-アリル-ウリジン、5-ブロモ-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、5-メチル-シチジン、リボ-チミジン、2-アミノプリン、2’-アミノ-ブチリル-ピレン-ウリジン、5-フルオロ-シチジン、および/または5-フルオロ-ウリジンである。
【0193】
哺乳動物のRNAには、96より多くの天然に存在するヌクレオシド修飾が見られる。例えば、Limbachら、Nucleic Acids Research、22巻(12号):2183~2196頁(1994年)を参照。ヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドならびにヌクレオシドの調製は、例えば、米国特許第4,373,071号、同第4,458,066号、同第4,500,707号、同第4,668,777号、同第4,973,679号、同第5,047,524号、同第5,132,418号、同第5,153,319号、同第5,262,530号、および同第5,700,642号から、当該技術分野において周知である。本明細書中に記載するような使用のために好適な多数の修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドが市販されている。ヌクレオシドは、天然に存在するヌクレオシドのアナログであってもよい。場合によっては、アナログは、ジヒドロウリジン、メチルアデノシン、メチルシチジン、メチルウリジン、メチルシュードウリジン、チオウリジン、デオキシシチジン(deoxycytodine)、およびデオキシウリジンである。
【0194】
場合によっては、本明細書中に記載する修飾されたsgRNAは、核酸塩基修飾リボヌクレオチド、すなわち天然に存在する核酸塩基の代わりに少なくとも1つの天然に存在しない核酸塩基を含有するリボヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドに組み込むことができる修飾核酸塩基の非限定的な例としては、m5C(5-メチルシチジン)、m5U(5-メチルウリジン)、m6A(N6-メチルアデノシン)、s2U(2-チオウリジン)、Um(2’-0-メチルウリジン)、m1A(1-メチルアデノシン)、m2A(2-メチルアデノシン)、Am(2-1-O-メチルアデノシン)、ms2m6A(2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン)、i6A(N6-イソペンテニルアデノシン)、ms2i6A(2-メチルチオ-N6イソペンテニルアデノシン)、io6A(N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン)、ms2io6A(2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン)、g6A(N6-グリシニルカルバモイルアデノシン)、t6A(N6-スレオニルカルバモイルアデノシン)、ms2t6A(2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン)、m6t6A(N6-メチル-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン)、hn6A(N6.-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン)、ms2hn6A(2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン)、Ar(p)(2’-O-リボシルアデノシン(リン酸))、I(イノシン)、m11(1-メチルイノシン)、m’Im(1,2’-O-ジメチルイノシン)、m3C(3-メチルシチジン)、Cm(2T-O-メチルシチジン)、s2C(2-チオシチジン)、ac4C(N4-アセチルシチジン)、f5C(5-ホルミルシチジン)(5-fonnylcytidine)、m5Cm(5,2-O-ジメチルシチジン)、ac4Cm(N4アセチル2TOメチルシチジン)、k2C(リシジン)、m1G(1-メチルグアノシン)、m2G(N2-メチルグアノシン)、m7G(7-メチルグアノシン)、Gm(2’-O-メチルグアノシン)、m22G(N2,N2-ジメチルグアノシン)、m2Gm(N2,2’-O-ジメチルグアノシン)、m22Gm(N2,N2,2’-O-トリメチルグアノシン)、Gr(p)(2’-O-リボシルグアノシン(リン酸))、yW(ワイブトシン)、o2yW(ペルオキシワイブトシン)、OHyW(ヒドロキシワイブトシン)、OHyW*(中間体ヒドロキシワイブトシン(undermodified hydroxywybutosine))、imG(ワイオシン)、mimG(メチルグアノシン)、Q(クエオシン)、oQ(エポキシクエオシン)、galQ(ガラククトシル-クエオシン)(galtactosyl-queuosine)、manQ(マンノシル-クエオシン)、preQo(7-シアノ-7-デアザグアノシン)、preQi(7-アミノメチル-7-デアザグアノシン)、G(アルカエオシン)、D(ジヒドロウリジン)、m5Um(5,2’-O-ジメチルウリジン)、s4U(4-チオウリジン)、m5s2U(5-メチル-2-チオウリジン)、s2Um(2-チオ-2’-O-メチルウリジン)、acp3U(3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン)、ho5U(5-ヒドロキシウリジン)、mo5U(5-メトキシウリジン)、cmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸)、mcmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル)、chm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン))、mchm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル)、mcm5U(5-メトキシカルボニルメチルウリジン)、mcm5Um(S-メトキシカルボニルメチル-2-O-メチルウリジン)、mcm5s2U(5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン)、nm5s2U(5-アミノメチル-2-チオウリジン)、mnm5U(5-メチルアミノメチルウリジン)、mnm5s2U(5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン)、mnm5se2U(5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン)、ncm5U(5-カルバモイルメチルウリジン)、ncm5Um(5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン)、cmnm5U(5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン)、cnmm5Um(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-L-Oメチルウリジン)、cmnm5s2U(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン)、m62A(N6,N6-ジメチルアデノシン)、Tm(2’-O-メチルイノシン)、m4C(N4-メチルシチジン)、m4Cm(N4,2-O-ジメチルシチジン)、hm5C(5-ヒドロキシメチルシチジン)、m3U(3-メチルウリジン)、cm5U(5-カルボキシメチルウリジン)、m6Am(N6,T-O-ジメチルアデノシン)、rn62Am(N6,N6,O-2-トリメチルアデノシン)、m2’7G(N2,7-ジメチルグアノシン)、m2’2’7G(N2,N2,7-トリメチルグアノシン)、m3Um(3,2T-O-ジメチルウリジン)、m5D(5-メチルジヒドロウリジン)、f5Cm(5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン)、m1Gm(1,2’-O-ジメチルグアノシン)、m’Am(1,2-0-ジメチルアデノシン)イリノメチルウリジン)、tm5s2U(S-タウリノメチル-2-チオウリジン))、imG-14(4-ジメチルグアノシン)(4-demethyl guanosine)、imG2(イソグアノシン)、またはac6A(N6-アセチルアデノシン)、ヒポキサンチン、イノシン、8-オキソ-アデニン、その7置換誘導体、ジヒドロウラシル、シュードウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-アミノウラシル、5-(C1~C6)-アルキルウラシル、5-メチルウラシル、5-(C2~C6)-アルケニルウラシル、5-(C2~C6)-アルキニルウラシル、5-(ヒドロキシメチル)ウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシシトシン、5-(C1~C6)-アルキルシトシン、5-メチルシトシン、5-(C2~C6)-アルケニルシトシン、5-(C2~C6)-アルキニルシトシン、5-クロロシトシン、5-フルオロシトシン、5-ブロモシトシン、N2-ジメチルグアニン、7-デアザグアニン、8-アザグアニン、7-デアザ-7置換グアニン、7-デアザ-7-(C2~C6)アルキニルグアニン、7-デアザ-8置換グアニン、8-ヒドロキシグアニン、6-チオグアニン、8-オキソグアニン、2-アミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、2,4-ジアミノプリン、2,6-ジアミノプリン、8-アザプリン、置換7-デアザプリン、7-デアザ-7置換プリン、7-デアザ-8置換プリン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0195】
一部の実施形態では、修飾されたsgRNAのリン酸骨格は変更されている。修飾されたsgRNAは、1つまたは複数のホスホロチオエート、ホスホルアミデート(例えば、N3’-P5’-ホスホルアミデート(NP))、2’-O-メトキシ-エチル(2’MOE)、2’-O-メチル-エチル(2’ME)、および/またはメチルホスホネート結合を含み得る。ある特定の例では、リン酸基は、ホスホチオエート、2’-O-メトキシ-エチル(2’MOE)、2’-O-メチル-エチル(2’ME)、およびN3’-P5’-ホスホルアミデート(NP)などに変更されている。
【0196】
特定の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチルヌクレオチド(M)、2’-O-メチル、3’-ホスホロチオエートヌクレオチド(MS)、2’-O-メチル、3’チオPACEヌクレオチド(MSP)、またはこれらの組合せを含む。
【0197】
一部の例では、修飾されたsgRNAは、1つまたは複数のMSヌクレオチドを含む。その他の例では、修飾されたsgRNAは、1つまたは複数のMSPヌクレオチドを含む。さらに他の例では、修飾されたsgRNAは、1つまたは複数のMSヌクレオチドおよび1つまたは複数のMSPヌクレオチドを含む。さらなる例では、修飾されたsgRNAはMヌクレオチドを含まない。ある特定の例では、修飾されたsgRNAは、1つまたは複数のMSヌクレオチドおよび/または1つまたは複数のMSPヌクレオチドを含み、1つまたは複数のMヌクレオチドをさらに含む。ある特定のその他の例では、MSヌクレオチドおよび/またはMSPヌクレオチドは、修飾されたsgRNA中に存在する唯一の修飾ヌクレオチドである。
【0198】
本明細書中に記載する修飾のいずれかを、修飾されたsgRNAのガイド配列および/またはスキャフォールド配列中に組み合わせ、組み込むことができることが留意されるべきである。
【0199】
場合によっては、修飾されたsgRNAは、ステムループ(例えば、M2ステムループ)またはテトラループなどの構造修飾も含む。
【0200】
化学修飾されたsgRNAを任意のCRISPR関連またはRNAガイド化技術と共に使用することができる。本明細書中に記載するように、修飾されたsgRNAは、任意のCas9ポリペプチド、または任意の操作されたもしくは人間により作られたCas9ポリペプチドなどのそのバリアントのためのガイドとして働くことができる。修飾されたsgRNAは、単離された細胞中またはin vivo(例えば、動物中)でDNA分子および/またはRNA分子をターゲティングすることができる。
【0201】
D.遺伝子改変された神経幹細胞を製造するための導入遺伝子カセット
遺伝子改変された神経幹細胞を製造するための導入遺伝子カセットは、本発明の任意の態様に関して本明細書中に記載する通りであってよい。カセットは、プロモーター(例えば、U6 RNAポリメラーゼIIIプロモーター)、転写制御エレメント、エンハンサー、U6終結配列、1つまたは複数の核局在化シグナルなどのうちの1つまたは複数を含有し得る。一部の実施形態では、カセットはマルチシストロン性または2シストロン性であり、また、蛍光タンパク質、エピトープタグ、および/または抗生物質抵抗性マーカーをコードするヌクレオチド配列を含み得る。2シストロン性カセットのある特定の例では、例えば蛍光タンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列は、ウイルス2Aペプチドなどの自己開裂性ペプチドをコードする配列を使用して、例えば抗生物質抵抗性マーカーをコードする第2のヌクレオチド配列に連結されている。口蹄疫ウイルス2A(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス2A(E2A)、豚テシオウイルス-1 2A(P2A)、およびThoseaasignaウイルス2A(T2A)などのウイルス2Aペプチドは、高い開裂効率を有し、したがって2つのタンパク質が同時ではあるが、同じRNA転写物から別々に発現されることができる。例示的なカセットは、GFPの発現を駆動するユビキチンCプロモーターを含有するレポーターカセットを含む。あるいは、自己開裂性の2Aペプチドによって分離された2シストロン性のカセット構築物を生成することによって、2Aペプチドの上流および下流に位置する2つの導入遺伝子の間の高い開裂効率が提供される。これらの構築物としては、(1)UbC-GFP-2A-CD8(遺伝子改変されたヒト神経幹細胞の精製用のCD8アルファ細胞表面マーカー)、(2)UbC-GFP-2A-tCD19(遺伝子改変されたヒト神経幹細胞の精製用のトランケート型細胞表面マーカー)、(3)UbC-GalC-2A-tCD19(トランケート型CD19を有するクラッベ病用の治療用酵素構築物)またはUbC-GalC-2A-eGFP、および(4)UbC-TPP1-2A-CD8(CD8アルファを有するLINCL用の治療用酵素構築物)が挙げられる。
【0202】
E.遺伝子改変された神経幹細胞を単離および精製する方法
選択マーカー、検出可能なマーカー、細胞表面マーカー、および精製マーカーは、単独でまたは組合せで、本発明の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を単離および/または精製するために使用することができる。例えば、抗生物質抵抗性因子をコードする選択マーカー遺伝子の発現は、対応する抗生物質の存在下で、遺伝子改変細胞の優先的な生存を提供する一方、培養物中に存在するその他の細胞は選択的に殺傷される。あるいは、GFPなどの蛍光タンパク質の発現または神経幹細胞で通常発現されない細胞表面マーカーの発現は、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)、または類似の方法によって、遺伝子改変された神経幹細胞が同定され、精製され、または単離されることを可能にし得る。以下の実施例において使用された好適な細胞表面マーカーは、CD8、トランケート型CD8、CD19、およびトランケート型CD19であるが、その他の細胞表面マーカーも同じ機能を遂げることができる。
【0203】
遺伝子改変細胞を単離または精製する方法は本明細書中に記載されており、また当該技術分野で公知である。具体的な実施例では、FACSまたはMACSの方法が細胞表面マーカーCD8またはCD19を発現するヒト神経幹細胞に対して使用された。
【0204】
遺伝子改変細胞を培養または増殖させる方法は当該技術分野で公知である。神経幹細胞およびそれらの子孫を培養する方法は公知であり、好適な培養培地、添加物、成長因子などが公知であり、かつ市販されている。通常、ヒト神経幹細胞は無血清条件下で維持および増殖される。1つの好適な培地は、N2添加物(GIBCO)、線維芽細胞成長因子(20ng/ml)、上皮成長因子(20ng/ml)、リンパ球阻害因子(lymphocyte inhibitory factor)(10ng/ml)、神経生存因子-1(Clonetics、San Diego)、およびN-アセチルシステイン(60μg/ml;Sigma)を含むEx Vivo 15(BioWhittaker)である。代替的な培地、添加物、および成長因子、ならびに/あるいは代替的な濃度を当業者は容易に決定することができ、それらはまた、幅広く文献に記載されている。
【0205】
一部の実施形態では、単離または精製された遺伝子改変細胞は、当業者に公知の標準的な方法にしたがってin vitroで増殖させることができる。
【0206】
F.ヌクレアーゼ媒介性のゲノム編集の成分の細胞中への導入
ポリペプチドおよび核酸を標的細胞(宿主細胞)中に導入する方法は当該技術分野で公知であり、任意の公知の方法を使用して、ヌクレアーゼまたは核酸(例えば、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列、DNAターゲティングRNA(例えば、単一ガイドRNA)、および相同組換え修復(HDR)用のドナー鋳型など)をヒト神経幹細胞中に導入することができる。好適な方法の非限定的な例としては、エレクトロポレーション(例えば、ヌクレオフェクション)、ウイルスまたはバクテリオファージの感染、トランスフェクション、コンジュゲート化、プロトプラスト融合、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性のトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性のトランスフェクション、リポソーム媒介性のトランスフェクション、粒子銃技術、リン酸カルシウム沈殿、直接的なマイクロインジェクション、ナノ粒子媒介性の核酸送達などが挙げられる。
【0207】
一部の実施形態では、DNAヌクレアーゼシステム(CRISPRまたはTALENなど)は神経幹細胞中に導入される。一部の実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、プラスミドに基づくCas9を含む。一部の実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、Cas9 mRNAおよびsgRNAを含む。一部の実施形態では、Cas9 mRNAもしくはsgRNA、またはCas9 mRNAおよびsgRNAの両方は、神経幹細胞中に導入される前に修飾される。一部の実施形態では、ヌクレアーゼシステムはTALENシステムである。一部の実施形態では、TALENシステムは、プラスミドに基づくTALENを含む。一部の実施形態では、TALENシステムは、RNAに基づくTALENを含む。
【0208】
一部の実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性のゲノム編集の成分は、送達システムを使用して標的細胞中に導入することができる。ある特定の例では、送達システムは、ヌクレアーゼ成分(ポリペプチドとして、または発現構築物によってコードされる)および1つまたは複数の核酸成分(DNAターゲティングRNAおよび/またはドナー鋳型など)を含む、ナノ粒子、マイクロ粒子(例えば、ポリマーマイクロポリマー)、リポソーム、ミセル、ビロソーム、ウイルス粒子、核酸複合体、トランスフェクション剤、エレクトロポレーション剤(例えば、NEONトランスフェクションシステムの使用)、ヌクレオフェクション剤、リポフェクション剤、および/または緩衝系を含む。例えば、成分は、カプセル化またはパッケージ化されて陽イオン性のサブミクロンのO/Wエマルションとなるように、リポフェクション剤と混合することができる。あるいは、成分は、送達システムなしで例えば水溶液として、送達することができる。
【0209】
リポソームを調製し、かつポリペプチドおよび核酸をリポソーム中にカプセル化する方法は、例えば、Methods and Protocols, Volume 1: Pharmaceutical Nanocarriers: Methods and Protocols(Weissig編)、Humana Press、2009年、およびHeyesら(2005年)J Controlled Release 107巻:276~87頁に記載されている。マイクロ粒子を調製し、かつポリペプチドおよび核酸をカプセル化する方法は、例えば、Functional Polymer Colloids and Microparticles volume 4 (Microspheres, microcapsules & liposomes)(ArshadyおよびGuyot編)、Citus Books、2002年、およびMicroparticulate Systems for the Delivery of Proteins and Vaccines(CohenおよびBernstein編)、CRC Press、1996年に記載されている。
【0210】
G.ヒト神経幹細胞
ヒト神経幹細胞は、CD133+ CD24-/lo NSCを単離するために細胞表面マーカーを使用したUchidaら、Proc Natl Acad Sci USA、2000年、97巻(26号):14720~14725頁に記載の方法を使用してヒト脳組織から直接単離された神経幹細胞であり得る。CD49f、CD29、およびCD15などのその他のマーカーを使用することもできる。ヒト神経幹細胞は、第2三半期のヒト胎児脳に由来し得る。原理的に、ヒト神経幹細胞に特異的に発現するあらゆるマーカー、またはヒト神経幹細胞に特徴的なマーカーのあらゆる組合せをヒト神経幹細胞の単離において使用することができる。
【0211】
ヒト神経幹細胞は、ヒトの胚、胎児、または成人の供給源に由来するものであってもよいし、あるいは胚性幹(ES)細胞および操作された多能性幹(iPS)細胞などのその他の細胞種から公知の技術を使用して誘導されたものであってもよい。ヒト神経幹細胞は、体細胞集団、例えば線維芽細胞からのダイレクトリプログラミングによって誘導されたものであってもよい。一部の実施形態では、ヒト神経幹細胞は、体性幹細胞または多能性幹細胞に由来する。ヒト神経幹細胞には、胎児脊髄および胎児脳組織などのヒト中枢神経系に由来する細胞が含まれる。ドナーから得られた初代神経幹細胞の使用は、CNS障害の治療に直ちに適し、患者のCNSに直接移植可能な細胞を提供するために、好ましい場合がある。
【0212】
本発明のヒト神経幹細胞は、自己または同種のヒト神経幹細胞であり得る。自己の幹細胞は治療される患者に由来し、したがって患者からの免疫応答を引き起こすことは期待されない。しかしながら、自己の幹細胞は、本発明による任意のさらなる改変に加えて、元々持っている疾患または障害を除去するために遺伝子の改変または矯正を必要とする可能性がある。対照的に、健常対象からの同種の、すなわちドナー由来の細胞は、本発明によって提供される改変以外の改変なしに、単離および精製して使用可能となり得る。そのような同種のヒト神経幹細胞は、本発明にしたがって遺伝子改変し、かつ大規模培養方法を使用して増殖させて、費用のかかる細胞の新たな誘導、改変、および増殖を個別に行うことなく既製品として使用できる、検証され、安全で、かつ一貫した製品を提供することができる。そのような同種細胞は、例えば標準的な凍結保存方法を使用して、調製しかつバンクに入れて、好適な患者が同定された時に使用可能な資源を提供することができる。
【0213】
神経幹細胞(NSC)は、胚、成体組織、胎児組織、複能性幹細胞、または胚性幹細胞(ESC)もしくは操作された多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞に直接由来し得る。場合によっては、多能性幹細胞は、野生型であるか、または遺伝子改変されているかのいずれかである。
【0214】
一部の実施形態では、NSCは、対象(例えば、ヒト対象)の神経系の組織から得られ、または組織に由来し、in vitroで培養される。神経組織は、正常または疾患のものであり得る。一部の実施形態では、神経組織は、中枢神経系の遺伝的障害を有する個体から得られる。他の実施形態では、神経組織は、神経変性疾患を有するまたは疾患を有することが疑われる個体からのものである。さらに他の実施形態では、神経組織は、神経学的損傷を有するまたは損傷を有することが疑われる個体からのものである。
【0215】
その他の場合には、本発明のNSCは、以前に培養物中で維持された対称分裂している神経幹細胞集団からのものである。
【0216】
H.CNSの遺伝的障害、神経変性疾患、または神経損傷を治療するための導入遺伝子
一部の実施形態では、ドナー鋳型の導入遺伝子は、中枢神経系の遺伝的障害に関連するタンパク質をコードする。遺伝的障害は、対応する突然変異遺伝子の野生型(正常)対立遺伝子を導入遺伝子として発現することによって治療され得る常染色体劣性の遺伝的障害であり得る。遺伝的障害は突然変異遺伝子によって引き起こされ、本明細書中に記載する導入遺伝子は、障害を治療するために使用され得る。一部の実施形態では、突然変異遺伝子を持つNSCは、導入遺伝子によって突然変異遺伝子の野生型対立遺伝子を発現するように遺伝子改変され得る。導入遺伝子は、通常、3つの分類:(1)分泌タンパク質、(2)望まれないタンパク質および/または瘢痕組織を開裂または消化する細胞表面酵素、例えばメタロエンドペプチダーゼ(例えば、ネプリライシン)、および(3)調節可能なBCL2などの細胞内タンパク質のうちの1つに属する。
【0217】
本発明での使用のための例示的な導入遺伝子としては、GALC(クラッベ病)、ABCD1(副腎白質ジストロフィー)、GFAP(アレキサンダー病)、CYP27A1(脳腱黄色腫症)、ARSA(異染性白質ジストロフィー)、PLP1(ペリツェウス・メルツバッハー病)、ASPA(カナバン病)、EIF-2B(白質の消失を伴う白質脳症)、PHYH(レフサム病1型)、PEX7(レフサム病2型)、PPT1(乳児性神経セロイドリポフスチン症(NCL))、TPP1(遅発型小児性NCL)、CLN3(若年性NCL)、CLN6(成人NCL)、CLN5(フィンランド遅発型小児性バリアントNCL)、CLN6(遅発型小児性バリアントNCL)、MSFD8(セロイドリポフスチン症、神経性、7)、CLN8(セロイドリポフスチン症、神経性、8)、CTSD(セロイドリポフスチン症、神経性、10)、UBE3A(アンジェルマン症候群)、POLG(アルパース病)、TAZ(バース症候群)、GLA(ファブリー病)、SLC20A2(ファール症候群)、PDE(網膜色素変性症)、SMN1(脊髄性筋萎縮症)、IKBKAP(家族性自律神経失調症)、MeCP2(レット症候群)、CACNA1C(チモシー症候群)、ATXN3(マチャド・ジョセフ病)、およびRPE65(レーバー先天性黒内障)、USH2A(網膜色素変性症)、RPGR(網膜色素変性症)、RP2(網膜色素変性症)、ABCA4(シュタルガルト)、RS-1(X連鎖性網膜分離)が挙げられる。一部の実施形態では、タンパク質は、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞によって分泌される。
【0218】
I.中枢神経系の遺伝子疾患、神経変性疾患、神経学的損傷、および網膜変性疾患。
本明細書中に記載する疾患、障害、および状態としては、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、グリア細胞、ニューロン、運動ニューロン、介在ニューロン、網膜細胞などに影響を及ぼすものが挙げられる。本明細書中に記載する組成物、キット、および方法を使用して治療され得るそのような神経学的な疾患、障害、および状態としては、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、記憶障害、癲癇、黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性)、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、網膜症、視神経症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、ミエリン疾患、多発性硬化症、卒中、脳性麻痺、ペリツェウス・メルツバッハー病などの遺伝性小児白質ジストロフィー、神経セロイドリポフスチン症およびクラッベ病、異染性白質ジストロフィー、テイ・サックス病、脊髄の損傷または外傷が挙げられる。本明細書中に記載する疾患、障害、および状態としてはまた、外傷性脳損傷、中枢神経系(CNS)の急性炎症、CNSの慢性炎症、虚血、および卒中が挙げられる。本明細書中に記載する疾患、障害、および状態としてはまた、網膜変性疾患が挙げられる。
【0219】
J.GM-NSCを使用するための方法
本明細書中に記載するGM-NSCは、疾患の治療のために有用である。一部の実施形態では、神経変性疾患を治療する方法であって、導入遺伝子を含む複数の遺伝子改変された神経幹細胞を対象に投与することを含み、導入遺伝子が、セーフハーバー遺伝子座(本明細書中に記載するGM-NSC細胞のいずれかなど)に挿入される、方法が提供される。
【0220】
本明細書中に記載するGM-NSCは、疾患の予防のために有用である。一部の実施形態では、神経変性疾患を予防する方法であって、導入遺伝子を含む複数の遺伝子改変された神経幹細胞を対象に投与することを含み、導入遺伝子が、セーフハーバー遺伝子座(本明細書中に記載するGM-NSC細胞のいずれかなど)に挿入される、方法が提供される。
【0221】
遺伝子改変されたヒト神経幹細胞をヒト対象中に投与して、神経変性疾患または神経学的損傷の1つまたは複数の症状を予防または軽減することができる。一部の実施形態では、生成された遺伝子改変された神経幹細胞をヒト対象に投与して、神経変性疾患の1つまたは複数の症状を予防または軽減することができ、ここで神経変性疾患は、白質ジストロフィー、神経セロイドリポフスチン症、加齢黄斑変性、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、および網膜変性疾患からなる群から選択される。
【0222】
本明細書中に記載する神経変性疾患または神経学的損傷としては、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、グリア細胞、ニューロン、運動ニューロン、介在ニューロン、網膜細胞などに影響を及ぼすものが挙げられる。そのような神経変性疾患または神経学的損傷としては、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、記憶障害、癲癇、黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性)、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、網膜症、視神経症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、ミエリン疾患、多発性硬化症、卒中、脳性麻痺、ペリツェウス・メルツバッハー病などの遺伝性小児白質ジストロフィー、神経セロイドリポフスチン症およびクラッベ病、異染性白質ジストロフィー、テイ・サックス病、脊髄の損傷または外傷が挙げられる。本明細書中に記載する神経変性疾患または神経学的損傷としてはまた、外傷性脳損傷、中枢神経系(CNS)の急性炎症、CNSの慢性炎症、虚血、および卒中が挙げられる。本明細書中に記載する神経変性疾患または神経学的損傷としてはまた、網膜変性疾患が挙げられる。
【0223】
一部の実施形態では、導入遺伝子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、インスリン様成長因子1(IGF1)、インスリン様成長因子2(IGF2)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-2(NT-2)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)、ニューロトロフィン-6、保存ドーパミン神経栄養因子(CDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン-β(IFN-β)、腫瘍壊死因子-α(TNFα)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ニュールツリン、パーセフィン、アルテミン、ニューロペプチドY(NPY)、エフリン、セマフォリン、その他の神経新生因子、その他の神経栄養因子、およびこれらの組合せからなる群から選択される神経保護または神経変性タンパク質をコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子は、神経保護または神経変性タンパク質をコードし、神経保護または神経再生タンパク質は分泌タンパク質である。一部の実施形態では、導入遺伝子はBcl-2をコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子はテロメラーゼをコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子は、生存を向上させて、または神経幹細胞を若返らせて、長期生存および/または治療用分子の発見を促進できるタンパク質をコードする。
【0224】
一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、治療または投与される同じ対象に由来する。一部の実施形態では、遺伝子改変された神経幹細胞は、別の1または複数の対象に由来する。例えば、1または複数の健常対象からの同種の、すなわちドナー由来の細胞を遺伝子改変して、患者対象に投与することができる。
【0225】
一部の実施形態では、神経変性疾患を治療する方法であって、1)複数の対象から同種のヒト神経幹細胞を単離すること、2)セーフハーバー遺伝子座に導入遺伝子を挿入することによって、単離されたヒト神経幹細胞を遺伝子改変すること、3)遺伝子改変された単離されたヒト神経幹細胞を増殖させること、4)複数の前記遺伝子改変された神経幹細胞を対象に投与することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、そのような同種のヒト神経幹細胞は、本発明にしたがって遺伝子改変し、かつ大規模培養方法を使用して増殖させて、費用のかかる細胞の新たな誘導、改変、および増殖を個別に行うことなく既製品として使用できる、検証され、安全で、かつ一貫した製品を提供することができる。一部の実施形態では、そのような同種細胞は、例えば標準的な凍結保存方法を使用して、調製しかつバンクに入れて、好適な患者が同定された時に使用可能な資源を提供することができる。
【0226】
一部の実施形態では、神経変性疾患を治療する方法であって、1)患者からヒト神経幹細胞を単離すること、2)セーフハーバー遺伝子座に導入遺伝子を挿入することによって、単離されたヒト神経幹細胞を遺伝子改変すること、3)複数の前記遺伝子改変された神経幹細胞を前記患者に投与することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、前記患者に投与する前に、遺伝子改変された単離されたヒト神経幹細胞を増殖させることをさらに含む。
【0227】
投与される遺伝子改変された神経幹細胞の数、および投与経路は、異なる疾患標的に応じて変化する。例えば、神経セロイドリポフスチン症(NCL)を治療するために、通常、5億~10億の神経幹細胞が脳(すなわち、皮質下の部位または側脳室)への直接注射で投与される。追加の詳細については、Seldenら、J Neurosurg Pediatr. 2013年6月;11巻(6号):643~52頁を参照。別の例として、ペリツェウス・メルツバッハー病(PMD)を治療するために、3億の神経幹細胞が脳への直接注射で投与される。より詳細については、Guptaら、Sci Transl Med. 2012年10月10日;4巻(155号):155ra137を参照。別の例として、NCLまたはPMDを治療するために、2000万~4000万の神経幹細胞が脊髄に直接注射される。別の例として、加齢黄斑変性を治療するために、10万~200万の神経幹細胞が網膜下注射または硝子体内注射により投与される。
【0228】
投与方法は、通常、免疫抑制対象中に本発明の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を移植することを伴う。移植された細胞、組織、または器官への免疫応答を回避するための免疫抑制は、移植外科および細胞療法の分野で周知であり、好適な剤および方法が広く利用可能である。免疫抑制薬としては、プレドニゾンおよびプレドニゾロンなどのグルココルチコイド、メトトレキサート、アザチオプリン、およびメルカプトプリンなどの細胞増殖抑制剤、抗IL-2受容体抗体バシリキシマブおよびダクリズマブなどの抗体、シクロスポリンなどのイムノフィリンに作用する薬物、ならびに、オピオイド、TNF結合性タンパク質、およびミコフェノール酸などのその他の薬物を挙げることができる。次いで、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞が、治療される疾患または状態に対して適切な部位、通常、脳または脊髄の予め定められた領域に投与される。
【0229】
本発明の神経幹細胞および医薬担体を含む医薬組成物が提供される。
【0230】
本発明の文脈において好適な薬学的に許容される担体は公知であり、細胞、生物体、または対象への活性剤の投与を助ける物質が挙げられる。「薬学的に許容される担体」は、本発明の組成物中に含まれることができ、かつ患者に対して有意な有害の毒性効果を引き起こさない担体または医薬品添加物を指す。薬学的に許容される担体の非限定的な例としては、水、NaCl、生理食塩水溶液、乳酸リンゲル液、生理的スクロース、生理的グルコース、細胞培養培地などが挙げられる。
【0231】
本発明の神経幹細胞およびそのような細胞を含む医薬組成物は、単回用量または複数回用量(例えば、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約6ヶ月、または約12ヶ月の間隔で投与される2回用量)として投与され得る。その他の好適な投与スケジュールは、医師によって決定され得る。
【0232】
潜在的な治療用分子を同定または開発するために、本明細書中に記載する方法によって製造されたGM-NSCを使用する方法も本明細書中で提供される。例えば、一部の実施形態では、GM-NSCに対して効果を有する治療用分子を同定する方法であって、GM-NSCを治療用分子と接触させること、およびGM-NSCに対する治療用分子(therapeutic moelecule)の効果を決定することを含む方法が提供される。治療用分子は、例えば、自己複製、遊走、またはミエリン形成を増進する薬物であり得る。治療用分子はまた、精神医学的または神経変性、および網膜変性を治療する薬物であり得る。治療用分子の非限定的な例としては、レチノイン酸、ブチル酸ナトリウム、アミトリプチリン、フルオキセチン、セルトラリン、カルバマゼピン、バルプロエート、KHS101、オキサジアゾール化合物、ホスホセリン、P7C3、アトルバスタチン、メトホルミンが挙げられる。方法はまた、小分子または生物学的分子をスクリーニングして、特定のシグナル経路に関与する潜在的な治療用分子を同定することも含み得る。シグナル経路の非限定的な例としては、自己複製、遊走、ミエリン形成、および分化が挙げられる。
【0233】
K.キット
本発明はまた、(a)(i)導入遺伝子(例えば、プロモーター(例えば、異種プロモーター)に作動可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセット、および(ii)セーフハーバー遺伝子の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列であって、導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置するヌクレオチド配列を含むドナー鋳型と、(b)DNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列と、(c)単離されたヒト神経幹細胞とを含むキットも提供する。単離された神経幹細胞は、CD133+ CD24-/lo NSCを単離するために細胞表面マーカーを使用したUchidaら、Proc Natl Acad Sci USA、2000年、97巻(26号):14720~14725頁に記載の方法を使用してヒト脳組織から直接単離されたNSCであり得る。
【0234】
DNAヌクレアーゼは、本発明の他の態様、すなわち本発明の方法、細胞、および/または医薬組成物に関して本明細書中に定義した通りである。
【0235】
細胞中にヌクレアーゼ媒介性のゲノム編集の成分を導入するためのエレクトロポレーション剤またはその他の剤もまた、本発明のキットに含まれ得る。好適な剤は当該技術分野で公知であり、広く市販されている。細胞への成分の送達方法(例えば、エレクトロポレーション)は本明細書中に記載されており、周知である。
【0236】
L.例示的な実施形態
本出願の一態様は、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成する方法であって、(a)(i)導入遺伝子を含む導入遺伝子カセット、および(ii)導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置する、セーフハーバー遺伝子座の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列を含む、ドナー鋳型、ならびに(b)セーフハーバー遺伝子座に二本鎖切断を作製してセーフハーバー遺伝子座への導入遺伝子の挿入を誘発できるDNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を、単離されたヒト神経幹細胞中に導入し、それによって遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成することを含む方法を提供する。
【0237】
上記の方法による一部の実施形態では、DNAヌクレアーゼは、CRISPR関連タンパク質(Cas)ポリペプチド、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、これらのバリアント、これらの断片、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0238】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、単離されたヒト神経幹細胞は初代神経幹細胞を含む。
【0239】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、単離されたヒト神経幹細胞は、体性幹細胞もしくは多能性幹細胞に由来するか、または体細胞集団からのダイレクトリプログラミングによって誘導される。
【0240】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、導入遺伝子は、中枢神経系の遺伝的障害に関連するタンパク質をコードする。一部の実施形態では、タンパク質は、GALC(クラッベ病)、ABCD1(副腎白質ジストロフィー)、GFAP(アレキサンダー病)、CYP27A1(脳腱黄色腫症)、ARSA(異染性白質ジストロフィー)、PLP1(ペリツェウス・メルツバッハー病)、ASPA(カナバン病)、EIF-2B(白質の消失を伴う白質脳症)、PHYH(レフサム病1型)、PEX7(レフサム病2型)、PPT1(乳児性神経セロイドリポフスチン症(NCL))、TPP1(遅発型小児性NCL)、CLN3(若年性NCL)、CLN6(成人NCL)、CLN5(フィンランド遅発型小児性バリアントNCL)、CLN6(遅発型小児性バリアントNCL)、MSFD8(セロイドリポフスチン症、神経性、7)、CLN8(セロイドリポフスチン症、神経性、8)、CTSD(セロイドリポフスチン症、神経性、10)、UBE3A(アンジェルマン症候群)、POLG(アルパース病)、TAZ(バース症候群)、GLA(ファブリー病)、SLC20A2(ファール症候群)、PDE(網膜色素変性症)、SMN1(脊髄性筋萎縮症)、IKBKAP(家族性自律神経失調症)、MeCP2(レット症候群)、CACNA1C(チモシー症候群)、ATXN3(マチャド・ジョセフ病)、およびRPE65(レーバー先天性黒内障)、USH2A(網膜色素変性症)、RPGR(網膜色素変性症)、RP2(網膜色素変性症)、ABCA4(シュタルガルト)、RS-1(X連鎖性網膜分離)からなる群から選択される遺伝子によってコードされる。一部の実施形態では、タンパク質は、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞によって分泌される。
【0241】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、導入遺伝子は、神経保護または神経再生タンパク質、これらのバリアント、これらの断片、またはこれらのペプチド模倣体をコードする。一部の実施形態では、神経保護または神経再生タンパク質は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、インスリン様成長因子2(IGF-2)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-2(NT-2)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)、ニューロトロフィン-6、保存ドーパミン神経栄養因子(CDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、血管内皮成長因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン-β(IFN-β)、腫瘍壊死因子-α(TNFα)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ニュールツリン、パーセフィン、アルテミン、ニューロペプチドY(NPY)、エフリン、セマフォリン、その他の神経新生因子、その他の神経栄養因子、およびこれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、神経保護または神経再生タンパク質は分泌タンパク質である。一部の実施形態では、導入遺伝子はBcl-2をコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子はテロメラーゼをコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子は、生存を向上させて、または神経幹細胞を若返らせて、長期生存および/または治療用分子の発見を促進できるタンパク質をコードする。
【0242】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、ドナー鋳型は異種プロモーターを含む。一部の実施形態では、ドナー鋳型の異種プロモーターは、誘導性プロモーターまたは細胞特異的プロモーターを含む。
【0243】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、DNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列はRNAを含む。
【0244】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、方法は、DNAターゲティングRNA、トランケート型DNAターゲティングRNA、またはDNAターゲティングRNAもしくはトランケート型DNAターゲティングRNAをコードするヌクレオチド配列をヒト神経幹細胞中に導入することをさらに含む。一部の実施形態では、DNAヌクレアーゼは、CasポリペプチドまたはCasポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、DNAターゲティングRNAは、セーフハーバー遺伝子座の一部分に相補的な第1のヌクレオチド配列およびCasポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列を含む、単一ガイドRNA(sgRNA)またはトランケート型sgRNAを含む。一部の実施形態では、Casポリペプチドは、Cas9ポリペプチド、そのバリアント、またはこれらの断片を含む。一部の実施形態では、Casポリペプチドのバリアントは、高忠実度のまたは特異性が増進されたCas9ポリペプチドのバリアントを含む。一部の実施形態では、sgRNAまたはトランケート型sgRNAは1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、リボース基、リン酸基、核酸塩基、またはこれらの組合せにおける修飾を含む。一部の実施形態では、リボース基における修飾は、リボース基の2’位における修飾を含む。一部の実施形態では、リボース基の2’位における修飾は、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-デオキシ、2’-O-(2-メトキシエチル)、およびこれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、リン酸基における修飾はホスホロチオエート修飾を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチルヌクレオチド(M)、2’-O-メチル、3’-ホスホロチオエートヌクレオチド(MS)、2’-O-メチル、3’-チオPACEヌクレオチド(MSP)、およびこれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれより多くは修飾ヌクレオチドであり、かつ/または第2のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれより多くは修飾ヌクレオチドである。一部の実施形態では、第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの約10%から約30%は修飾ヌクレオチドであり、かつ/または第2のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの約1%から約10%は修飾ヌクレオチドである。
【0245】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、IL2Rγ、CCR5、またはHBB遺伝子を含む。
【0246】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、導入することはエレクトロポレーションを含む。
【0247】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、ドナー鋳型は選択マーカーをさらに含む。一部の実施形態では、選択マーカーは、中枢神経系の細胞で発現されないマーカーを含む。一部の実施形態では、選択マーカーは細胞表面タンパク質である。一部の実施形態では、細胞表面タンパク質は、CD1、CD2、CD4、CD8α、CD10、CD19、CD20、これらのバリアント、これらの断片、これらの誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0248】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、方法は、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞による選択マーカーの発現に基づいて、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を精製することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、精製された遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を増殖させることをさらに含む。
【0249】
本出願の別の態様は、上記の方法によって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を提供する。
【0250】
本出願の別の態様は、上記の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0251】
本出願の別の態様は、それを必要とするヒト対象における神経変性疾患または神経学的損傷を予防または治療する方法であって、有効量の上記の医薬組成物をヒト対象に投与することを含む方法を提供する。
【0252】
上記のヒト対象における神経変性疾患または神経学的損傷を予防または治療する方法による一部の実施形態では、方法は、白質ジストロフィー、神経セロイドリポフスチン症、加齢黄斑変性、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、および網膜変性疾患からなる群から選択される神経変性疾患の治療用である。一部の実施形態では、方法は、クラッベ病、ペリツェウス・メルツバッハー病、副腎脊髄ニューロパチー、アレキサンダー病、脳腱黄色腫症、異染性白質ジストロフィー、カナバン病、白質の消失を伴う白質脳症、副腎白質ジストロフィー、レフサム病、およびゼノベファントーシス(xenobefantosis)からなる群から選択される白質ジストロフィーの治療用である。一部の実施形態では、方法は、脊髄損傷、外傷性脳損傷、中枢神経系(CNS)の急性炎症、CNSの慢性炎症、虚血、および卒中からなる群から選択される神経学的損傷の治療用である。
【0253】
上記のヒト対象における神経変性疾患または神経学的損傷を予防または治療する方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞は対象に対して自己である。一部の実施形態では、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞は対象に対して同種である。
【0254】
上記のヒト対象における神経変性疾患または神経学的損傷を予防または治療する方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、投与することは、注射または外科的移植によって投与することを含む。
【0255】
本出願の別の態様は、(a)(i)導入遺伝子を含む導入遺伝子カセット、および(ii)導入遺伝子カセットの5’末端および3’末端に位置する、セーフハーバー遺伝子座の2つの非重複相同部分を含む2つのヌクレオチド配列を含む、ドナー鋳型、(b)DNAヌクレアーゼまたはDNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列、および(C)単離されたヒト神経幹細胞を含む、キットを提供する。
【0256】
上記のキットによる一部の実施形態では、DNAヌクレアーゼは、CRISPR関連タンパク質(Cas)ポリペプチド、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、これらのバリアント、これらの断片、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0257】
上記のキットのいずれか1つによる一部の実施形態では、単離されたヒト神経幹細胞は初代神経幹細胞を含む。
【0258】
上記のキットのいずれか1つによる一部の実施形態では、単離されたヒト神経幹細胞は、体性幹細胞もしくは多能性幹細胞に由来するか、または体細胞集団からのダイレクトリプログラミングによって誘導される。
【0259】
上記のキットのいずれか1つによる一部の実施形態では、導入遺伝子は、中枢神経系の遺伝的障害に関連するタンパク質をコードする。一部の実施形態では、導入遺伝子は、神経保護または神経再生タンパク質、これらのバリアント、これらの断片、またはこれらのペプチド模倣体をコードする遺伝子を含む。
【0260】
上記のキットのいずれか1つによる一部の実施形態では、DNAヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列はRNAを含む。
【0261】
上記のキットのいずれか1つによる一部の実施形態では、キットは、DNAターゲティングRNA、トランケート型DNAターゲティングRNA、またはDNAターゲティングRNAもしくはトランケート型DNAターゲティングRNAをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。一部の実施形態では、DNAヌクレアーゼは、CasポリペプチドまたはCasポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、DNAターゲティングRNAは、セーフハーバー遺伝子座の一部分に相補的な第1のヌクレオチド配列およびCasポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列を含む、単一ガイドRNA(sgRNA)またはトランケート型sgRNAを含む。一部の実施形態では、Casポリペプチドは、Cas9ポリペプチド、そのバリアント、またはこれらの断片を含む。一部の実施形態では、Casポリペプチドのバリアントは、高忠実度のまたは特異性が増進したCas9ポリペプチドのバリアントを含む。一部の実施形態では、sgRNAまたはトランケート型sgRNAは1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチルヌクレオチド(M)、2’-O-メチル、3’-ホスホロチオエートヌクレオチド(MS)、2’-O-メチル、3’-チオPACEヌクレオチド(MSP)、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0262】
上記のキットのいずれか1つによる一部の実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、IL2Rγ、CCR5、またはHBB遺伝子を含む。
【0263】
上記のキットのいずれか1つによる一部の実施形態では、ドナー鋳型は選択マーカーをさらに含む。
【0264】
上記のキットのいずれか1つによる一部の実施形態では、キットは、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を生成するための説明書をさらに含む。
【0265】
本出願の別の態様は、導入遺伝子を含む導入遺伝子カセットを含む遺伝子改変されたヒト神経幹細胞であって、導入遺伝子カセットがセーフハーバー遺伝子座内に位置する、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞を提供する。
【0266】
本出願の別の態様は、潜在的な治療用分子を同定または開発する方法における、上記の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞のいずれか1つまたは上記の方法のいずれか1つによって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞の使用を提供する。一部の実施形態では、潜在的な治療用分子は、ヒト神経幹細胞および/またはヒト神経幹細胞の分化した子孫の増殖および/または生存能力を促進する分子である。
【0267】
本出願の別の態様は、研究における、上記の遺伝子改変されたヒト神経幹細胞のいずれか1つまたは上記の方法のいずれか1つによって製造された、遺伝子改変されたヒト神経幹細胞の使用を提供する。
【実施例】
【0268】
V.実施例
以下の実施例は、特許請求された発明を限定するためではなく、説明するために与えられる。
【0269】
これらの実施例は、TALENおよびCRISPR/Cas9などの操作されたヌクレアーゼを使用する遺伝子改変されたヒト神経幹細胞(GM-NSC)の生成を示す。セーフハーバー遺伝子座への相同組換えを使用して、細胞の精製用のマーカーおよび目的の遺伝子を含有する外来の導入遺伝子を神経幹細胞中に導入した。本実施例は、GM-NSCを生成するための方法および操作された細胞を精製するための方法を記載する。これらの実施例はまた、精製されたGM-NSCが、動物モデルの脳に移植された時に、生着し、遊走し、かつ神経細胞種に分化したことも示す。
【0270】
HuCNS-SC(登録商標)(ニューロスフェアとして成長させたヒト神経幹細胞)中のセーフハーバー用の相同組換え(HR)のために、3つのヒト遺伝子座を選択した。これらの遺伝子座は、TALENまたはCRISPR/Cas9システムを使用するHRのために、血液障害について大規模に特徴付けられてきた:(i)IL2RGは、重症複合免疫不全症(SCID)-X1に関与する突然変異を抱えることがあり、(ii)HBBは鎌状赤血球症およびサラセミアに関与する突然変異を抱えることがあり、また(iii)CCR5は、HIVの補助受容体をコードし、抗HIV臨床試験において治療用の遺伝子編集のための標的として現在調査されている。これらの遺伝子座は、悪影響なしでHuCNS-SC(登録商標)細胞のゲノム中への外来の導入遺伝子の安定な遺伝子発現を可能とする「セーフハーバー」として働くことができる。
【0271】
A.方法
TALEN媒介性のゲノム編集アセンブリーを構築するために、以前に記載された通りに(Millerら、Nature Biotechnology、2011年、29巻:143~148頁)Δ152 N末端ドメインおよび+63 C末端ドメインを使用してIL2RG TALENを合成し(GenScript)、記載された通りに(Hendelら、Cell Report、2014年、dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2014.02.040)FokIヌクレアーゼドメインに融合させ、pcDNA3.1(Invitrogen)中にクローニングした。
【0272】
CRISPR/Cas9媒介性のゲノム編集アセンブリーを構築するために、ヒトコドンに最適化されたSpCas9発現カセットおよびキメラsgRNAの発現を駆動するヒトU6プロモーターを含有するpx330(Addgeneプラスミド#42230)中に20bpのオリゴヌクレオチド標的配列をクローニングすることによって、sgRNA発現ベクターを構築した。CRISPR/Cas9システム用のsgRNAの合成は、Hendelら、Cell Report、2014年、dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2014.02.040に詳細に記載されている。
【0273】
ターゲティングベクターのために、K562細胞から単離されたゲノムDNAを使用する対応する遺伝子座のPCR増幅によって、相同の約2×800bpのアームを持つ3つのプラスミドターゲティングベクターを生成した。次いで、標準的なクローニング方法を使用して、pBluescript SK
+に基づく約2,900塩基対のベクター中に相同アームをクローニングした。上掲のHendelら、および追加の詳細のためにHendelら、Nature Biotechnology、2015年、33巻:985~989頁を参照。ドナー鋳型は相同アームの間に、GFPの発現を駆動するユビキチンCプロモーターを含有するレポーターカセットを含んでいた(
図2A)。あるいは、自己開裂性の2Aペプチドによって分離された2シストロン性のカセット構築物を生成することによって、2Aペプチドの上流および下流に位置する2つの導入遺伝子の間の高い開裂効率を提供した(
図8)。構築物は、(1)UbC-GFP-2A-CD8(GM-HuCNS-SC細胞の精製用のCD8アルファ細胞表面マーカー;
図11Aおよび13A)、(2)UbC-GFP-2A-tCD19(GM-HuCNS-SC細胞の精製用のトランケート型細胞表面マーカー)、(3)UbC-GalC-2A-tCD19(トランケート型CD19を有するクラッベ病用の治療用酵素構築物;
図12A)またはUbC-GalC-2A-eGFP(
図9A)、および(4)UbC-TPP1-2A-CD8(CD8アルファを有するLINCL用の治療用酵素構築物)を含んでいた。
【0274】
Uchidaら、Proc Natl Acad Sci USA、2000年、97巻(26号):14720~14725頁に記載の方法を使用して、HuCNS-SC(登録商標)細胞をヒト脳組織から直接単離した。HuCNS-SC(登録商標)細胞は非GMP条件下で生成した。N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子(20ng/ml)、および白血病抑制因子(10ng/ml)を添加したX-VIVO 15培地(Lonza)中、1×105/mlの密度で細胞を培養した。ニューロスフェアをリベラーゼまたはベンザイムで継代し(すなわち、高度に精製したコラゲナーゼ(Roche)での処理)、同じ培地中に再播種した。CD133+ CD24-/lo HuCNS-SC(登録商標)細胞を単離するために細胞表面マーカーを使用した。
【0275】
ヌクレオフェクションを使用して、単離したHuCNS-SC(登録商標)中に遺伝子ターゲティングドナー鋳型を導入した。(別段の記載がなければ、)Amaxa 4D Nucleofector(プログラムCA137)、P3 Primary Cell Nucleofector Kit(V4XP-3032)、20μLの16ウェルNucleocuvetteストリップを用い、製造者の説明書にしたがい、ヌクレオフェクション(Lonza)によって5×105個のHuCNS-SC(登録商標)細胞の単一懸濁液に1μgのTALENをコードするプラスミドおよび1~2μgのドナープラスミドをトランスフェクトした。ヌクレオフェクション後、HuCNS-SC(登録商標)細胞をフラスコに入れ、複数継代にわたって培養を続けた。場合によっては、培養したHuCNS-SC(登録商標)細胞を、上掲のUchidaらに記載のコラゲナーゼによる解離でのゲノム編集のために使用した。
【0276】
800bpの相同アームの間にAflII制限酵素部位を導入することによって、制限酵素断片長多型(RFLP)相同組換えドナーを作製した。(CMVプロモーター下の)Cas9および(U6プロモーター下の)sgRNAをpx330プラスミド構築物(1μg)中で送達した。ゴールデンゲートシステムを用いてTALENペアを構築し、プラスミド構築物(各0.5μg)を介して送達した。1μgのHRドナー鋳型または1μgのHRドナーのいずれかおよび操作されたヌクレアーゼを、500,000個の神経幹細胞にヌクレオフェクトした。細胞を7日間、培養物中で成長させた。ゲノムDNAを回収し、In-Out PCRを行った。PCR産物を単離し、AflIIで終夜消化した。消化産物を10%のPAGEゲルに流し、バンド強度を可視化した。RFLP分析により、IL2Rγ遺伝子座へのドナー鋳型のGFP導入遺伝子の挿入を確認した。
【0277】
フローサイトメトリーを使用して相同組換えをモニターした。ヌクレオフェクション後の各継代においてHuCNS-SC(登録商標)細胞を分析した。Accuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)でGFPの発現を測定した。場合によっては、各継代において導入遺伝子CD8またはCD19の発現をフローサイトメトリーによって評価した。継代においてニューロスフェアを上記の通りに解離させ、製造者の説明書にしたがって抗CD8-APCまたは抗CD19-APC(Miltneyi Biotec)を用いて単一細胞懸濁液を免疫染色した。
【0278】
GFP導入遺伝子の挿入を持つGM-HuCNS-SC細胞を精製するために、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用した。ニューロスフェアを上記の通りに解離させ、GFP+細胞をFACS Aria II(BD Bioscience)で選別した。
【0279】
磁気活性化細胞選別(MACS)によってもGM-HuCNS-SCを精製した。CD8またはCD19のいずれかの導入遺伝子の細胞表面マーカーを発現するGM-HuCNS-SC細胞を精製するために、ヒトCD8マイクロビーズまたはCD19マイクロビーズ(Milenyi Biotech)のいずれかを製造者の説明書にしたがって使用した。
【0280】
精製したGM-HuCNS-SC細胞の生着、遊走、神経保護、および網膜保護を試験するために、細胞を様々な免疫不全マウスに移植した。HuCNS-SC(登録商標)細胞の懸濁液(部位あたり1μL中に1×105個の細胞)を調製し、新生または若年シバラー免疫不全(Shi-id)マウスの脳梁、SVZ、または小脳白質の両側に移植した。
【0281】
B.IL2RG cDNA-UbC-GFPドナー鋳型
図2Aは、IL2RG遺伝子座に相同組換えされるIL2RG cDNA-UbC-GFP相同組換えドナー鋳型の模式図を示す。各フランキングアームは、IL2RG遺伝子のエクソン1の約800bpを含んでいた。HuCNS-SC(登録商標)細胞に1μgのHRドナーまたは1μgのHRドナーおよびヌクレアーゼをヌクレオフェクトした。細胞を70日間成長させ、エピソームHRドナーが増殖する細胞から希釈されて消失するまで約10日毎にFACSを行って、IL2RG遺伝子座に組み込まれたGFPカセットの安定発現を確認した。IL2RGはHuCNS-SC(登録商標)細胞中での操作されたヌクレアーゼを使用するHRのために好適な遺伝子座であることがデータにより確認される。
【0282】
CRISPR/Cas9は、IL2Rγ遺伝子座においてより高い頻度の遺伝子編集を刺激した。
図1Aおよび1Bは、CRISPR/Cas9システムおよびTALENシステムの両方が相同組換え(HR)を約1~6%の頻度で媒介したことを示す。CRISPR/Cas9システムはTALENシステムよりも2倍多くHR事象を媒介した。
【0283】
長期間安定なGFP発現のレベル(2~4%のGFP)は、RFLP分析において決定された相同組換えのパーセンテージ(1.7~3%のHR頻度)と合致していた(
図2Bおよび2C)。CRISPR/Cas9技術を使用して遺伝子編集されたGFP
+ HuCNS-SC(登録商標)細胞の画像を
図3に提供する。
【0284】
図4Aは、IL2RG cDNA-UbC-GFPドナー鋳型を持つHuCNS-SC(登録商標)細胞が移植後にシバラーマウスの脳に生着したことを示す。
図4Bは、GFP陽性HuCNS-SC(登録商標)細胞がミエリン産生GM-オリゴデンドロサイトに成長したことを示す。
【0285】
C.RNAに基づくCRISPR/Cas9システムを使用する相同組換え頻度の増加
プラスミドに基づくCRISPR/Cas9システムを使用するHuCNS-SC(登録商標)細胞の遺伝子編集効率を、RNAに基づくCRISPR/Cas9システムを使用する場合に対して比較した。Cas9はmRNAとして送達し、5’末端および3’末端の両方の3つの末端ヌクレオチドに組み込んだ2’-O-メチル(M)、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート(MS)、または2’-O-メチル3’チオPACE(MSP)を含む化学修飾を含んでいた。HuCNS-SCにプラスミドに基づくヌクレアーゼおよびRNAに基づくヌクレアーゼをヌクレオフェクトした。培養7日後にゲノムDNAを回収し、PCRを行ってターゲティングされた領域を増幅した。
図5は、RNAに基づくCRISPR/Cas9システムがプラスミドに基づくシステムと比べてより多くの二本鎖切断(INDELS)を誘発したことを示す。
HR頻度をFACSによっても評価した。HuCNS-SC(登録商標)細胞にHRドナー単独またはHRドナーおよび操作されたヌクレアーゼ(プラスミド(
図6A)またはMS修飾RNAもしくはMSP MS修飾RNA(
図6B))をヌクレオフェクトした。細胞をFACSによって計30日間、10日毎に分析し、エピソームHRドナーを希釈により消失させた。このデータも、MSP修飾RNAに基づくCRISPR/Cas9がCas9のプラスミド送達と比べて約2倍、HR頻度を増加させたことを示す。MS修飾はINDEL効率を増加させても、HR活性は増進させなかった。
【0286】
D.IL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-GFPドナー鋳型
図7は、例示的なIL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-GFPドナー鋳型の模式図を示す。操作されたヌクレアーゼは、ドナー鋳型を介した相同組換え修復によって修復できる二本鎖切断(DSB)を誘発することができる。遺伝子座特異的な相同アーム(IL2RG特異的なフランキングアーム)を有するドナー鋳型(ユビキチンCプロモーター-ガラクトシルセラミダーゼ導入遺伝子-2A-GFP導入遺伝子)と共にヌクレアーゼを共送達することによって、ドナー鋳型をIL2RG遺伝子座に挿入することができる。
【0287】
この実験では、単離されたHuCNS-SCに1μgのIL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-GFPドナー鋳型を単独で、または1μgのIL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-GFPドナー鋳型と操作されたヌクレアーゼ(CRISPR/Cas9またはTALEN)との組合せをヌクレオフェクトした。細胞を70日間成長させ、エピソームのドナー鋳型が増殖する細胞から希釈されて消失するまで約10日毎にFACSを行い、IL2RG遺伝子座に組み込まれたGFPカセットの安定発現を確認した。細胞を56日間培養した後、選別してGFP陽性細胞を選択した。次いで、これらの細胞をさらに140日間選別した。
【0288】
図8は、精製されたGM-HuCNS-SC細胞中で導入遺伝子が安定に発現されたこと、およびGalCおよびGFPの発現が長期培養(ヌクレオフェクション後、約168日)において維持されたことを示す。エピソームHRドナー鋳型を希釈により消失させた30日の後、GFP陽性細胞の選別により、遺伝子編集されたHuCNS-SC(登録商標)細胞の純粋な集団が濃縮されたことがデータにより確認される。
【0289】
PCR分析を行って、IL2RG遺伝子座へのGalC遺伝子のターゲティングされた組込みを確認した。フォワードプライマーはGalC導入遺伝子中に置かれ、リバースプライマーは3’相同アームの外に位置し、ドナー鋳型中には存在しない。そのため、PCRではターゲティングされた組込みのみが増幅されるはずであり、2355塩基の長さの予想されたアンプリコンが生成された。単離されたHuCNS-SC細胞に1μgのIL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-GFPドナー鋳型およびTALENまたはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼのいずれかをヌクレオフェクトした。細胞を7日間培養し、ゲノムDNAを回収した。In-Out PCRを行い、PCR産物を1%アガロースゲルに流した。
図9Bにより、GalCドナーによる操作されたヌクレアーゼ媒介性の相同組換え修復が確認される。
【0290】
フローサイトメトリーによりGFP
+細胞を精製し、長期の培養/増殖(160日を超える)のために継代した。精製の際に、GFPの発現およびSox2の発現をモニターした。CRISPR/Cas9で操作された細胞について、
図10Aは、GFPの発現が増殖後に安定であったこと、および選別および増殖した細胞はSox2陽性であったことを示す。
図10Bは、TALENで操作された細胞についての類似の結果を示す。
【0291】
E.IL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-CD8ドナー鋳型およびIL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-tCD19ドナー鋳型
上記のGFP導入遺伝子をCD8またはCD19(もしくはトランケート型CD19)細胞表面マーカーのいずれかに置き換えた。例えばCD8またはCD19選択マイクロビーズを使用して、これらのマーカーを発現する細胞を選択的に精製することができる。
図11Aおよび13Aは、例示的なIL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-CD8ドナー鋳型の模式図を示す。
図12Aは、例示的なIL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-CD8ドナー鋳型の模式図を示す。
【0292】
単離されたHuCNS-SCに1μgのIL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-CD8ドナー鋳型またはIL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-tCD19ドナー鋳型、およびTALENまたはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼのいずれかをヌクレオフェクトした。
【0293】
IL2RG cDNA-UbC-GALC-2A-CD8導入遺伝子を発現する細胞のフローサイトメトリー分析を
図11B(MACS選択前)および11C(MACS選択後)に示す。GM-HuCNS-SC細胞の分化能力を評価した。in vitroでのニューロン分化アッセイのために、マイトジェン無しでBDNFおよびGDNFを添加して10日間GM-HuCNS-SC細胞を培養した。GM-HuCNS-SCは複能性であり、ニューロン(ダブルコルチン)、アストロサイト(GFAP)、およびオリゴデンドロサイト(O4、14日目;
図11D)の系列に分化することができた。
【0294】
細胞表面マーカーCD8およびGFPの発現について、IL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-CD8導入遺伝子を発現する細胞の別の集団を分析した。
図13B(MACS選択前)および13C(MACS選択後)は、選択後のCD8
+、GFP
+細胞の増加を示す。
図13Dは、CD8選択カラムを通過した細胞がCD8
-、GFP
-細胞であったことを示す。
図13Eは、CD8選択細胞の高いパーセンテージがGFP+でもあることを示す。GM-HuCNS-SC細胞を増殖させたところ、GFPはこれらの細胞中で安定であった(
図13F)。新生シバラーマウスへの移植のために単一細胞の懸濁液を調製した。移植の12週後に、マウスの脳切片を分析した。GM-HuCNS-SC細胞のロバストな生着および遊走が観察された(
図14Bおよび14C)。
【0295】
IL2RG cDNA-UbC-GALC-2A-tCD19導入遺伝子を発現する細胞のフローサイトメトリー分析を
図12C(MACS選択前)および12D(MACS選択後)に示す。精製したところ、GM-HuCNS-SC細胞は長期の培養/増殖の間、導入遺伝子の発現を保持した(
図12B)。
【0296】
F.RNAに基づくCRISPR/Cas9システムを伴うIL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-tCD19ドナー鋳型
この実験では、単離されたHuCNS-SC細胞に1μgのIL2RG cDNA-UbC-GalC-2A-tCD19ドナー鋳型およびプラスミドに基づくsgRNA/Cas9ヌクレアーゼまたはCas9 mRNAを有するMSP修飾したsgRNAのいずれかをヌクレオフェクトした。細胞表面マーカーtCD19を使用して細胞を精製し、選択した細胞をさらに増殖させた。精製戦略を使用して、CD19陽性細胞の純粋な集団を生成した。増殖後、精製された集団は細胞表面のCD19の発現を維持した。データは、プラスミドに基づくCas9を使用した場合と比べて、MSP修飾はHDR頻度を増加させたことを示す。
図15A~15Fを参照。
【0297】
G.NSCにおけるTALENまたはCRISPR/Cas9媒介性の相同組換え(HR)
最初に、IL2Rγ特異的TALENペアおよびCRISPR/Cas9システムを使用してNSC中でNSCの「セーフハーバー」遺伝子座、インターロイキン-2受容体ガンマ鎖(IL2Rγ)におけるゲノム編集効率を比較した。遺伝子付加用の神経幹細胞の細胞特異的セーフハーバーを2つの基準で分類した:1)NSCにおいて公知のまたは報告された生物学的機能がない、および2)外来プロモーターによる内因性遺伝子座での十分な遺伝子発現。これらの両方はNSCにおいてIL2Rγに当てはまる。誘発されたDSBの頻度を特徴付けるために、最適化されたIL2Rγ特異的TALENペアまたはCRISPR成分(Cas9およびsgRNA)のいずれかをコードするプラスミドをエレクトロポレートし、細胞を7日間培養し、ゲノムDNA(gDNA)を単離した後、INDEL頻度を分析した。CRISPRシステムは、TALENを使用しての5%と比較して、平均で15%のINDELを生成した(
図33A)。次に、化学修飾したsgRNA(「全RNA」)と共に、Cas9のmRNA送達に対してIL2Rγ TALENペアのmRNA送達を比較した。全RNAのCRISPRシステムを用いたNSCへのエレクトロポレーションは、TALENのmRNA送達よりも5倍多いINDELを誘発した(
図33B)。操作されたヌクレアーゼシステムの両方が(異なる頻度ではあるが)DSBを誘発したので、相同IL2Rγ cDNA-UbC-GFPドナーカセット(
図16)をコードするプラスミド、または単一のヌクレオチド変化を導入したプラスミドを用いて、HRについてNSCにターゲティングした。ターゲティングしたNSCを少なくとも30日間培養して、エピソームのドナー発現を希釈により消失させ、安定に組み込まれたカセットのHRのGFP FACS分析を可能にした。両方の操作されたヌクレアーゼプラットフォームのプラスミドに基づく送達は平均で3.5%のNSCにおいて安定なGFPの発現を媒介したが(
図33C)、CRISPRシステムの一貫性は、より多くのIL2Rγ対立遺伝子を改変した(
図33D)。これらのデータは、CRISPRシステムがTALENより優れており、したがって本明細書中に記載する残りの研究のために使用されるヌクレアーゼであることを示唆した。
【0298】
次に、CRISPRシステムが2つの他のNSCの「セーフハーバー」遺伝子座、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体5(CCR5)およびβ-グロビン(HBB)遺伝子を編集できるかどうかを試験した。これらのいずれも、ヒトの神経発生の間に機能するという報告はない(そしてそれが、それらがNSCにおいてターゲティングするために安全な遺伝子座であると本発明者らが考えた理由である)。Cas9ならびにIL2Rγ、HBB、およびCCR5に特異的なsgRNAをコードするプラスミドをNSC中にエレクトロポレートし、7日後にgDNAを抽出し、INDEL頻度について対立遺伝子を分析した。CRISPR-Cas9システムは、IL2Rγ、HBB、およびCCR5遺伝子座において、平均でそれぞれ12%、6%、および36%のINDELを誘発した(
図18)。本発明者らの以前の報告に合致して、mRNAとしてのCas9および化学修飾したsgRNAの送達は、試験した3つ全ての遺伝子座においてプラスミド送達よりも多くのINDELを誘発した(
図18)。DSBの形成が3つ全ての遺伝子座においてHRを促進したかどうかを確かめるために、GFPをコードする相同DNAドナー鋳型、およびプラスミドまたは全RNAとして送達される対応するCRISPR成分を共にNSCに共エレクトロポレートした。本発明者らの結果は、3つ全ての遺伝子座が、CRISPR-Cas9成分のプラスミドまたは全RNA送達を使用するNSCにおけるHRに適していることを示した(
図19および
図17A~17B)。CRISPRのプラスミド送達によるIL2Rγ、HBB、およびCCR5遺伝子座でのNSCへのターゲティングは、培養の少なくとも30日後に平均でそれぞれ2.8%、4.1%、および2.4%のGFP
+ NSCを生じさせた(
図20)。興味深いことに、IL2Rγ CRISPRの全RNAの送達は、プラスミド送達よりも2倍多くのGFP
+ NSCを生じさせた。HRが意図した遺伝子座で起こったかどうかを決定するために、In-Out PCR(一方のプライマーがドナー構築物の相同アームの外で結合し、他方のプライマーがドナーカセット内で結合する)によってドナー構築物のオンターゲット組込みについてgDNAを分析し、したがって、オンターゲット組込み事象のみを増幅することができる。mockまたはドナーのみの試料ではPCR増幅が検出されなかったが、CRISPRおよび相同ドナーを共にNSCに共エレクトロポレートした時にオンターゲット組込みが明らかであり、意図した遺伝子座でのHRが確認された(
図21)。Cas9は意図しないゲノム上の位置においてDSBを作製することがあるので、K562細胞中での次世代シークエンシング(NGS)によって以前にアッセイした3つの予測されるIL2Rγオフターゲット部位においてオフターゲットDSB活性を調査した。IL2Rγにおいて28%のDSB活性を検出したが、0.7%未満の開裂は調査したオフターゲット部位のいずれかで見られた(表1)。これらの研究を合わせて、CRISPR-Cas9が最小のオフターゲット開裂と共にNSCにおいて複数の「セーフハーバー」遺伝子座でオンターゲットHRを媒介できることが実証された。
【表1】
【0299】
方法
NSC(ニューロスフェアとして成長させたヒト神経幹細胞)中のセーフハーバー用の相同組換え(HR)のために、3つのヒト遺伝子座を選択した。これらの遺伝子座は、TALENまたはCRISPR/Cas9システムを使用するHRのために、血液障害について大規模に特徴付けられてきた:(i)IL2Rγは、重症複合免疫不全症(SCID)-X1に関与する突然変異を抱えることがあり、(ii)HBBは鎌状赤血球症およびサラセミアに関与する突然変異を抱えることがあり、また(iii)CCR5は、HIVの補助受容体をコードし、抗HIV臨床試験において治療用の遺伝子編集のための標的として現在調査されている。これらの遺伝子座は、悪影響なしでNSC細胞のゲノム中への外来の導入遺伝子の安定な遺伝子発現を可能とする「セーフハーバー」として働くことができる。
【0300】
TALEN媒介性のゲノム編集アセンブリーを構築するために、以前に記載された通りに(Millerら、Nature Biotechnology、2011年、29巻:143~148頁)Δ152 N末端ドメインおよび+63 C末端ドメインを使用してIL2RG TALENを合成し(GenScript)、記載された通りに(Hendelら、Cell Report、2014年、dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2014.02.040)FokIヌクレアーゼドメインに融合させ、pcDNA3.1(Invitrogen)中にクローニングした。
【0301】
CRISPR/Cas9媒介性のゲノム編集アセンブリーを構築するために、ヒトコドンに最適化されたSpCas9発現カセットおよびキメラsgRNAの発現を駆動するヒトU6プロモーターを含有するpx330(Addgeneプラスミド#42230)中に20bpのオリゴヌクレオチド標的配列をクローニングすることによって、sgRNA発現ベクターを構築した。CRISPR/Cas9システム用のsgRNAの合成は、Hendelら、Cell Report、2014年、dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2014.02.040に詳細に記載されている。
【0302】
sgRNAを化学修飾するために、Cas9をmRNAとして送達し、2’-O-メチル(M)、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート(MS)、または2’-O-メチル3’チオPACE(MSP)を含む化学修飾を5’末端および3’末端の両方の3つの末端ヌクレオチドに組み込み、したがってCRISPRシステムの「全RNA」送達を表す。
【0303】
ターゲティングベクターのために、K562細胞から単離されたゲノムDNAを使用する対応する遺伝子座のPCR増幅によって、相同の約2×800bpのアームを持つ3つのプラスミドターゲティングベクター(CCR5およびIL2RGプラスミドターゲティングベクターなど)を生成した。HBBは540bpおよび420bpの相同アームを有した。次いで、標準的なクローニング方法を使用して、pBluescript SK
+に基づく約2,900塩基対のベクター中に相同アームをクローニングした。上掲のHendelら、および追加の詳細のためにHendelら、Nature Biotechnology、2015年、33巻:985~989頁を参照。ドナー鋳型は相同アームの間に、GFPの発現を駆動するユビキチンCプロモーターを含有するレポーターカセットを含んでいた(
図2A)。あるいは、自己開裂性の2Aペプチドによって分離された2シストロン性のカセット構築物を生成することによって、2Aペプチドの上流および下流に位置する2つの導入遺伝子の間の高い開裂効率を提供した(
図8)。構築物は、(1)UbC-GFP-2A-CD8(GM-NSCの精製用のCD8アルファ細胞表面マーカー;
図11Aおよび13A)、(2)UbC-GFP-2A-tCD19(GM-NSCの精製用のトランケート型細胞表面マーカー)、(3)UbC-GalC-2A-tCD19(トランケート型CD19を有するクラッベ病用の治療用酵素構築物;
図12A)またはUbC-GalC-2A-eGFP(
図9A)、および(4)UbC-TPP1-2A-CD8(CD8アルファを有するLINCL用の治療用酵素構築物)を含んでいた。
【0304】
Uchidaら、Proc Natl Acad Sci USA、2000年、97巻(26号):14720~14725頁に記載の方法を使用して、NSCをヒト脳組織から直接単離した。NSCは非GMP条件下で生成した。N2、ヘパリン、N-アセチルシステイン、線維芽細胞成長因子2、上皮成長因子(20ng/ml)、および白血病抑制因子(10ng/ml)を添加したX-VIVO 15培地(Lonza)中、1×105/mlの密度で細胞を培養した。ニューロスフェアをリベラーゼまたはベンザイムで継代し(すなわち、高度に精製したコラゲナーゼ(Roche)での処理)、同じ培地中に再播種した。CD133+ CD24-/lo NSCを単離するために細胞表面マーカーを使用した。
【0305】
ヌクレオフェクションを使用して、単離したNSC中に遺伝子ターゲティングドナー鋳型を導入した。(別段の記載がなければ、)Amaxa 4D Nucleofector(プログラムCA137)、P3 Primary Cell Nucleofector Kit(V4XP-3032)、20μLの16ウェルNucleocuvetteストリップを用い、製造者の説明書にしたがい、ヌクレオフェクション(Lonza)によって5×105個のNSCの単一懸濁液に1μgのTALENをコードするプラスミドおよび1~2μgのドナープラスミドをトランスフェクトした。あるいは、(別段の記載がなければ、)Amaxa 4D Nucleofector(プログラムCA137)、P3 Primary Cell Nucleofector Kit(V4XP-3024)を用い、製造者の説明書にしたがって100マイクロLのNucelocuvetteによるヌクレオフェクション(Lonza)によって2.5E6 GM-NSCに5μgのTALENをコードするプラスミドおよび5~10μgのドナープラスミドをトランスフェクトした。ヌクレオフェクション後、NSCをフラスコに入れ、複数継代にわたって培養を続けた。場合によっては、培養したNSCを、上掲のUchidaらに記載のコラゲナーゼによる解離でのゲノム編集のために使用した。
【0306】
800bpの相同アームの間にAflII制限酵素部位を導入することによって、制限酵素断片長多型(RFLP)相同組換えドナーを作製した。(CMVプロモーター下の)Cas9および(U6プロモーター下の)sgRNAをpx330プラスミド構築物(1μg)中で送達した。ゴールデンゲートシステムを用いてTALENペアを構築し、プラスミド構築物(各0.5μg)を介して送達した。1μgのHRドナー鋳型または1μgのHRドナーのいずれかおよび操作されたヌクレアーゼを、500,000個の神経幹細胞にヌクレオフェクトした。細胞を7日間、培養物中で成長させた。ゲノムDNAを回収し、In-Out PCRを行った。PCR産物を単離し、AflIIで終夜消化した。消化産物を10%のPAGEゲルに流し、バンド強度を可視化した。RFLP分析により、IL2Rγ遺伝子座へのドナー鋳型のGFP導入遺伝子の挿入を確認した。切断対立遺伝子(800bp)の密度を総対立遺伝子(未改変(1.6kb)および改変)で除算することによって、改変されたIL2RG対立遺伝子の量を定量化した。
【0307】
MiSeq runsIL2RG(ON)および上位3つのin silicoで予測されたオフターゲット(OFF1~3)Cas9-sgRNAアンプリコンのためのターゲティングされたアンプリコンライブラリー生成を、以前に報告されたディープシークエンシングMiSeqの実行において利用されたシークエンシングプライマーを用いてPCR増幅した。アンプリコンをゲル精製した後、2ラウンドのPCRに供して、アダプターおよび実験を区別するための特有の8bpのバーコードを付加した。次いで、バーコード付加したアンプリコンを精製し、等モル濃度でプールした。Protein and Nucleic Acid(PAN) Stanford Core Facilityにおけるインデックス付けと共に2×200サイクルでillumina MiSeq DNAシークエンサーで、精製したライブラリーをシークエンシングした。配列をヒトゲノムに対してアライメントし、以下に記載する通りにINDELを算出した。
【0308】
in silicoで予測されたIL2RG sgRNAのオフターゲット部位のMiSeq解析
【0309】
4つのアンプリコン配列標的領域(IL2RG、OFF1~3)に対する各試料からの読取りをマッピングし、切断部位の隣にギャップを有するマッピングされた読取りの数を測定することによって、IL2RG(ON)および上位3つのin silicoで予測されたオフターゲットCas9-sgRNA部位を定量化した。具体的には、各読取りの最初の70塩基とアンプリコン配列との間の完全なマッチを見つけることによって、各読取りを最初に標的領域の1つに割り当てた。読取りの最初の70塩基対がいずれのアンプリコン配列にも完全にマッピングしない場合、読取りを破棄した。次いで、EMBOSSバージョン6.5.7.0ニードルをデフォルトのパラメーターと共に使用して、各読取りをその対応する標的アンプリコン配列とアライメントした。INDELを有する読取りの数を定量化するために、少なくとも1つの挿入または欠失(読取りまたはアンプリコンのいずれかのアライメントにおける「-」)がCRISPR切断部位(ガイドRNA配列の塩基17と18との間)の5bp上流または下流で起こっている場合、各読取りを改変されたものとマークした。所与の標的部位における全INDELパーセンテージを、エレクトロポレートしない試料におけるバックグラウンドのINDELパーセンテージを減算した、遺伝子座にマッピングされた読取りの総数に対する改変された遺伝子座にマッピングされた読取りの数として、報告した。
【0310】
H.磁気活性化細胞選別(MACS)選択による遺伝子改変されたNSCの濃縮
臨床的に妥当な移植可能な細胞数へのGM-NSCの濃縮および増殖は、それらの移植能力を大きく増加させる。1ステップの磁気活性化細胞選別(MACS)濃縮と連結させた、IL2RGでのHRの成功後のCD8のアルファ鎖(CD8α)の細胞表面マーカー発現を確立することによって、濃縮パラダイムを開発した。CD8α複合体は、細胞傷害性T細胞中で細胞間シグナルを変換するためにアルファ鎖およびベータ鎖の二量体化を必要とする。なお、CD8αが発現されて機能的であるという報告はなく、アルファ鎖単独の発現はNSCに影響を及ぼすはずであり、それによって選択導入遺伝子として単独で働くはずである。ターゲティングに成功すると、複数遺伝子のmRNAではあるがGFPおよびCD8αの2つの別個のタンパク質を発現するIL2RG HRドナー構築物(IL2RG cDNA-UbC-GFP-T2A-CD8α)を作製した。Cas9およびIL2RGに特異的なsgRNAをコードするプラスミド、および上記のCD8α HRドナーカセットをNSCにエレクトロポレートした。エレクトロポレーションの6細胞継代後に、4.67%のNSCはGFPを安定に発現しており(
図22A、左)、本発明者らがGFP構築物で見出したものと類似していた(
図19)。次いで、NSCを1ステップのCD8α磁気ビーズ濃縮プロトコールに供したところ、GFPを発現する細胞が90%を超えて生じ(
図22A、右)、また、これらの細胞は選択後の複数の継代にわたって増殖させ、かつ連続的にGFPを発現することが示され、GM-NSCの集団であることが確認された(
図22B)。
【0311】
CD8αに加えて、本発明者らのMACSに基づく濃縮プロトコールについてCD19細胞表面タンパク質も評価した。CD8複合体とは異なり、CD19は、シグナル(ref)を変換する一本鎖分子である。したがって、細胞内シグナリングドメインが除去され、したがってCD19を単独で選択の目的のために働くようにしたトランケート型のCD19細胞表面タンパク質を作製した。CD19もまた、神経発生またはグリア発生における公知の役割を持たない。したがって、IL2RG HRドナー構築物(IL2RG cDNA-UbC-GFP-T2A-tCD19)を作製し、IL2RG遺伝子座におけるHRについてNSCにターゲティングした。エレクトロポレーション後4継代目において、3.78%のNSCはGFPを安定に発現しており、次いで細胞をtCD19のMACSに基づく濃縮に供した(
図23A、左)。tCD19選択は、GM-NSCのCD8選択と同様に、90%を超えるGM-NSCの濃縮および増殖を生じた(
図22B、
図23B、および
図24)。HRを有する細胞を濃縮しているので、次に、より高い頻度のオフターゲットINDELを有するGM-NSCも選択しているかどうかを調査することを本発明者らは望んだ。IL2RG INDELの3倍の濃縮を観察したが(細胞は2×染色体の女性であるので)、オフターゲットINDELはCD8およびtCD19で選択したGM-NSCにおいて全て1%未満であった(表1)。
【0312】
GM-NSCがそれらのNSCSの特徴を維持したかどうかを決定するために、tCD19選択スキームによってIL2RGがターゲティングされたNSCを95%を超えるまで濃縮した後(
図24)、細胞表面遺伝子CD133(
図25A)、および細胞内のNSCS維持転写因子SOX2(
図25B)という2つの本質的NSCマーカーの発現を分析した。濃縮後4週間の増殖後、95%より多くのNSCがCD133/CD19/GFP/SOX2陽性であり、これはターゲティングされたニューロスフェアはNSCの能力を完全に有し得ることを強調する。これらのデータは、移植のために90%を超えるGM-NSCを濃縮、そして増殖する単純な1ステップのMACSに基づくプロトコールを詳述する。
【0313】
方法
フローサイトメトリーを使用して相同組換えをモニターした。ヌクレオフェクション後の各継代においてNSC細胞を分析した。Accuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)でGFPの発現を測定した。場合によっては、各継代において導入遺伝子CD8またはCD19の発現をフローサイトメトリーによって評価した。継代においてニューロスフェアを上記の通りに解離させ、製造者の説明書にしたがって抗CD8-APCまたは抗CD19-APC(Miltneyi Biotec)を用いて単一細胞懸濁液を免疫染色した。
【0314】
GFP導入遺伝子の挿入を持つGM-NSCを精製するために、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用した。ニューロスフェアを上記の通りに解離させ、GFP+細胞をFACS Aria II(BD Bioscience)で選別した。
【0315】
磁気活性化細胞選別(MACS)によってもGM-NSCを精製した。CD8またはCD19のいずれかの導入遺伝子の細胞表面マーカーを発現するGM-NSCを精製するために、ヒトCD8マイクロビーズまたはCD19マイクロビーズ(Milenyi Biotech)のいずれかを製造者の説明書にしたがって使用した。
【0316】
I.GM-NSCはin vivoで遊走し、ニューロン、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトに分化する
CRISPR/Cas9システムを使用してHRのためにNSCにターゲティングできることを本発明者らは示したが、GM-NSCがまだ、未編集のNSCについて以前に示されたようなそれらのNSCの生物学的活性を保持するかどうかも調査した。具体的には、GFPカセット(
図16)を用いてNSC中のIL2RG遺伝子座にターゲティングし、GM-NSCを増殖させた後、免疫不全マウスに移植した。CD8αで精製したGM-NSCを新生Shi-idマウスの脳室下帯(SVZ)の両側に移植し、12週後に同じ動物からの同胞的な前脳切片を免疫組織化学によってヒト改変細胞の生着について分析した(
図14B~14C)。ヒト特異的mAb SC121(
図14B)およびGFP(
図14C)での免疫ペルオキシダーゼ染色により、皮質、脳梁におけるGM-NSCの生着が検出され、そして重要なことに、吻側移動経路(RMS)に沿ってSVZから嗅球への細胞の遊走が示された(
図14B~14C)。導入遺伝子のGFP発現がSC121によって検出されたヒト細胞の生着に非常に類似していることを述べることは重要である。したがって、GM-NSCは、本発明者らが以前に報告した未編集のNSCと同等に、SVZ/嗅覚系において生着および遊走することができる。
【0317】
ヒトNSCの際立った機能は、長期間、ニューロン、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトの系列に分化しながら自己複製する能力である。Shi/+ヘテロ接合idマウスへの移植の24週後、GFP+細胞が海馬で検出され、GM-NSCが長期間ロバストな遊走能力を維持することを示唆した。加えて、これらの細胞の一部は、SVZの他に成体げっ歯類におけるニューロン新生部位である海馬歯状回の顆粒細胞層下部においてGM-NSCの転写因子SOX2を発現した(
図26Aの矢印)。これらのデータは、GM-NSCがニューロン新生部位に遊走し、in vivoでの増殖後にNSCの自己複製能力を維持することを示唆する。GM-NSCがin vivoでアストロサイトまたはニューロンの系列に分化できることを確認するために、アストロサイト、ニューロンのマーカーであるそれぞれグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)およびダブルコルチン(DCX)について脳切片の共焦点顕微鏡観察を行った。脳梁または線条体の白質の束において、GFAPで共染色されたGFP陽性細胞が観察された(
図26B)。さらには、GM-NSCはRMSに遊走し、嗅球においてDCX+神経細胞系列に分化し(
図26B)、GM-NSCの遊走ならびに部位に適切な様式でのアストロサイトおよびニューロンの系列への分化を明らかにした。
【0318】
以前に記載(Uchida STM)された通りにオリゴデンドロサイト突然変異シバラー免疫不全マウス(shi/shi-id)でオリゴデンドロサイトへのGM-NSCの分化能力を評価した。shi/shi-idマウスは主要塩基性タンパク質(MBP)を欠失しており、MBPに対するmAbはshi/shiマウスの脳(ref)を染色しない。移植の8週後、GM-NSCは小脳の白質路内に広範に遊走し(
図27A)、導入遺伝子GFPを発現する(
図27B)。免疫蛍光染色は、生着した白質がGFPおよびMBPの共発現を示すことを明らかにする(
図27C)。より高倍率の異なるマウス脳において、ヒトGFP+細胞はそれらの突起を伸ばし、MBP発現は突起の先端に局在しており、成熟ミエリン形成性オリゴデンドロサイト(oligodendroctyes)を示すことを観察した(
図4B)。全てを合わせると、GM-NSCは、以前に報告された未編集NSCと同等に、生着し、遊走し、自己複製し、かつ部位に適切な様式で3つのCNS系列に分化する能力を維持する。加えて、成熟ミエリン形成オリゴデンドロサイトなどのGM-NSCの子孫は、Crispr/Cas9によって媒介される導入遺伝子の発現を持続する。
【0319】
方法
精製されたGM-NSCの生着、遊走、神経保護、および網膜保護を試験するために、細胞を様々な免疫不全マウスに移植した。NSCの懸濁液(部位あたり1μL中に1×105個の細胞)を調製し、新生または若年シバラー免疫不全(Shi-id)マウスの脳梁、SVZ、または小脳白質の両側に移植した。
【0320】
J.GALCリソソーム酵素を過剰発現するNSCはin vivoで生着し、ミエリンを産生する
リソソーム貯蔵障害(LSD)は、非効率なリソソームに起因する50より多くの遺伝性の単一遺伝子代謝障害の一群である。それらのうち、グロボイド細胞白質ジストロフィー、またはクラッベ病は、ガラクトシルセラミダーゼ(GALC)を失うことによって主に中枢および末梢神経系に現れる一種のLSDであり、ミエリンを産生するオリゴデンドロサイトおよびシュワン細胞の死をそれぞれ引き起こす。欠けている酵素を送達するためにNCL患者の脳に、およびミエリン産生細胞を提供するためにペリツェウス・メルツバッハー病(PMD)患者にNSCが移植されている。GM-NSCは未編集NSCと同等にミエリンを産生することを本発明者らは示すので、GALCを過剰発現するGM-NSCは、損傷したミエリン産生細胞の「相互矯正(cross-correction)」を可能とするのに十分なGALCを産生するという点で優れており、さらにこれらの細胞は既に失われたオリゴデンドロサイトを「正常な」GALC発現オリゴデンドロサイトに置換することもできる可能性がある。したがって、IL2RG遺伝子座にGALC(IL2RG cDNA-UbC-GALC-T2A-tCD19)をノックインするためのHRドナー、そしてまたロバストなMACSに基づく濃縮を可能とするためのtCD19選択カセットを作製した(
図28)。NSCに「全RNA」IL2RG CRISPR/Cas9プラットフォームおよびGALC HRドナーをエレクトロポレートし、ターゲティングの少なくとも4継代後にエピソームドナーDNAを希釈により消失させた後で5.17%がCD19陽性NSCであった(
図29A)。これと合致して、tCD19 MACSビーズにより95%を超えるGM-NSCが濃縮され(
図29B)、「In-Out」PCRによりIL2RG遺伝子座へのGALCカセットのオンターゲット組込みが確認された(
図30)。GALC NSCが機能的な酵素を過剰発現していることを確認するために、in vitroでのGALC酵素アッセイを行った。それによれば、GM-NSCは、未編集NSCより3~5倍多くの、およびクラッベ病患者の線維芽細胞より10倍多くのGalC酵素を発現した(
図31)。次に、GALC GM-NSCがそれらのNSCSの生物学的特徴を保持しているかどうかを試験した。そのために、GALC GM-NSCを若年Shi-idマウスの小脳に移植した。免疫組織化学分析はGALC GM-NSCの生着およびミエリン産生を示した(
図32A~32B)。これらのデータは、GALC GM-NSCがそれらのNSCSの生物学的特徴を保持し、クラッベ病およびその他の脱髄性の中枢神経系障害の治療のための高い治療的可能性を有することを強く示唆する。
【0321】
方法
R&D System(https://www.rndsystems.com/products/recombinant-human-galactosylceramidase-galc-protein-cf_7310-gh)に記載の通りにGALC酵素アッセイを行った(Wiederschainら、Clin Chim Acta 1992年)。簡潔に述べれば、未編集NSC、クラッベ患者由来の線維芽細胞(GM4372線維芽細胞、GALC遺伝子中のイントロン10の中央近くで始まる30kbの欠失についてヘテロ接合、Coriell)、およびIL2RG cDNA-UbC-GALC-T2A-tCD19ドナー鋳型(Exp1)またはIL2RG cDNA-UbC-GALC-T2A-GFP(Exp2)を用いて改変した2つの異なるGE-NSCからのタンパク質抽出物。GALC酵素アッセイを行うために、細胞を回収し、PBSで1回洗浄し、かつ製造者の説明書にしたがってM-PERタンパク質抽出試薬(Thermo Scientific)で処理することによって、これらの細胞からのタンパク質抽出物を調製した。0.25~2.0mg/mlの範囲のBSA標準曲線を用いて、Bradfordアッセイキットによってタンパク質濃度を測定した(Thermo Scientific)。
【0322】
250ugまたは500ugのタンパク質抽出物(50uL)を、50mMクエン酸ナトリウム、125mM NaCl、0.1% Triton(登録商標)X-100(pH4.5)中に再懸濁した50uLの1mM 4-メチルウンベリフェリル-ベータ-D-ガラクトピラノシド基質(Sigma)とミスする(missing)ことによってGALCアッセイを行った。反応物を37℃で20分インキュベートした後、0.5Mグリシン、0.3M NaOH(pH10.0)を用いて停止させた。エンドポイントモードにおいてそれぞれ365nmおよび445nm(トップリード)の励起波長および発光波長で、Gen5ソフトウェアを用いてBioTekによってGALC酵素開裂の蛍光を測定した。GALC酵素アッセイ用の標準曲線は、直線範囲を有する反応あたり0.0375ng~1.2ngのrhGALCの範囲の組換えヒトガラクトシルセラミダーゼ(rhGALC)(R&D Systems、#7310-GH)によって確立した。3つの独立した試料を使用して全てのアッセイを三連で行った。GALC酵素活性を未編集NSCを用いて正規化した。
【0323】
理解を明確にする目的の説明および例により、上記の発明をいくらか詳細に記載してきたが、添付の請求項の範囲内である特定の変更および改変を行い得ることを当業者は理解するであろう。加えて、本明細書中で提供する各参照文献は、各参照文献が参照することにより個々に組み込まれるのと同じ程度に、参照することによってその全体が組み込まれる。