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特許7197364流出セル、流出セルを含む蒸着システム、及び関連方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】流出セル、流出セルを含む蒸着システム、及び関連方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
C23C14/24 A
C23C14/24 B
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2018556901
(86)(22)【出願日】2017-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017029163
(87)【国際公開番号】W WO2017189443
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】62/349,499
(32)【優先日】2016-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/327,323
(32)【優先日】2016-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518378226
【氏名又は名称】イノベイティブ アドバンスド マテリアルズ,インク.
【氏名又は名称原語表記】INNOVATIVE ADVANCED MATERIALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】110000132
【氏名又は名称】大菅内外国特許事務所特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ドリトル,ウィリアム アラン
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/071064(WO,A1)
【文献】特開平10-154329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出セルであって、
前記流出セル内で気化又は昇華される材料をそこに収容するように構成された坩堝と、
前記坩堝から生じる気化又は昇華された材料を前記流出セルから蒸着チャンバに送出するように構成された配送管と、
前記坩堝から延び、その第1の端部において前記坩堝に物理的に結合された供給管であって、前記気化又は昇華された材料から生じる結露を捕捉し、前記結露を前記坩堝に送り返すように配置及び構成された供給管と、
前記坩堝内に収容された材料を加熱して、前記坩堝内の前記材料の気化又は昇華と、前記配送管を通じた前記気化又は昇華された材料の流れ及び前記流出セルからの送出と、を起こさせるように配置及び構成された少なくとも1つの加熱エレメントと、
アクセスポートを含む充填ロックデバイスと、
前記充填ロックデバイスと前記供給管との間の断熱器と、
を備え、
前記流出セルは、前記流出セルを前記蒸着チャンバから取り外すことなく、かつ前記流出セルを大気にさらすことなく、前記供給管及び前記坩堝が気化又は昇華されるべき前記材料で充填されることが可能なように構成され、
前記流出セルは、真空ハウジング内に密閉され、
前記第1の端部とは反対側の前記供給管の第2の端部は、前記断熱器を介してその周りの前記充填ロックデバイスに開放されている、
流出セル。
【請求項2】
前記流出セルは、前記流出セルを用いて実行される処理操作を中断することなく、及び前記坩堝から生じる前記気化又は昇華された材料が前記配送管を通って前記流出セルから送出される前記蒸着チャンバ内における真空を解除することなく、前記坩堝が気化又は昇華されるべき前記材料で充填されることが可能なように構成される、請求項1に記載の流出セル。
【請求項3】
前記少なくとも1つの加熱エレメントは、無線周波数(RF)加熱エレメントを備える、請求項1に記載の流出セル。
【請求項4】
前記坩堝は1つ以上の壁を備え、前記1つ以上の壁の各壁が0.036インチ(0.091センチメートル)以上の平均壁厚を有する、請求項1に記載の流出セル。
【請求項5】
前記1つ以上の壁の各壁が0.25インチ(0.635センチメートル)以上の平均壁厚を有する、請求項4に記載の流出セル。
【請求項6】
前記1つ以上の壁の各壁が0.50インチ(1.27センチメートル)以上の平均壁厚を有する、請求項5に記載の流出セル。
【請求項7】
前記坩堝が、TaC、グラファイトカーボン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、及びAlNを含む群から選択される材料を備える裏地を有する、請求項1に記載の流出セル。
【請求項8】
前記配送管の軸線は、前記坩堝の垂直軸に対する角度で方向付けられる、請求項1に記載の流出セル。
【請求項9】
前記配送管の前記軸線は、前記坩堝の軸線に対して約90°の角度で方向付けられる、請求項8に記載の流出セル。
【請求項10】
操作可能で前記配送管と一体のシャッタアッセンブリを更に備え、前記シャッタアッセンブリは、前記配送管から出る気化又は昇華された材料の流れを選択的に中断するように構成される、請求項1に記載の流出セル。
【請求項11】
前記シャッタアッセンブリは、前記シャッタアッセンブリの移動方向を変えることなく、前記配送管内の1つ以上の通路を選択的に開閉するように構成される、請求項10に記載の流出セル。
【請求項12】
前記シャッタアッセンブリは、回転シャッタアッセンブリを含む、請求項11に記載の流出セル。
【請求項13】
前記回転シャッタアッセンブリは、回転バルブと固定されたノズルとを含む、請求項12に記載の流出セル。
【請求項14】
前記回転バルブは第1の複数の開口部を含み、前記ノズルは第2の複数の開口部を含み、前記固定されたノズルに関連する前記回転バルブの回転軸についての単一の回転方向における前記回転バルブの連続的な回転は、前記配送管内の前記1つ以上の通路の連続的かつ反復可能な開閉を引き起こすように、前記第1及び第2の複数の開口部の連続的かつ反復可能な整列及び非整列を引き起こす、請求項13に記載の流出セル。
【請求項15】
前記回転バルブの回転を駆動する駆動機構を更に含み、
前記駆動機構は、前記配送管内の前記1つ以上の通路の開閉を0.1秒以下で引き起こすのに十分な回転速度で、前記回転バルブの回転を駆動することができる、請求項14に記載の流出セル。
【請求項16】
前記シャッタアッセンブリが、少なくとも部分的に前記配送管内に配置される、請求項10に記載の流出セル。
【請求項17】
前記配送管を通って流れ前記流出セルから送出する気化又は昇華された材料の結露を妨げるように、前記配送管に含まれる材料を加熱するように配置及び構成される少なくとも1つの付加的な加熱エレメントを更に備える、請求項1に記載の流出セル。
【請求項18】
前記供給管内に配置された1つ以上のバッフルを更に備える、請求項1に記載の流出セル。
【請求項19】
前記供給管及び前記供給管の開口部のうちの少なくとも1つが冷却される、請求項1に記載の流出セル。
【請求項20】
チャンバと、
内部に真空を確立するように前記チャンバから気体を排出するように構成される少なくとも1つの真空ポンプと、
請求項1に記載の少なくとも1つの流出セルであって、前記チャンバと動作可能に連携し、気化又は昇華された材料を前記少なくとも1つの流出セルから前記チャンバ内に選択的に取り込むように構成される流出セルと、
を備える半導体基板処理システム。
【請求項21】
流出セルであって、
前記流出セル内で気化又は昇華される材料をそこに収容するように構成された坩堝と、
前記坩堝から生じる気化又は昇華された材料を前記流出セルから真空チャンバに送出するように構成された配送管と、
前記坩堝から延び、前記気化又は昇華された材料から生じる結露を捕捉し、前記結露を前記坩堝に送り返すように配置及び構成された供給管と、
前記坩堝内に収容された材料を加熱して、前記坩堝内の前記材料の気化又は昇華と、前記配送管を通じた前記気化又は昇華された材料の流れ及び前記流出セルからの送出と、を起こさせるように配置及び構成された少なくとも1つの加熱エレメントと、
を備え、
前記流出セルは、前記流出セルを前記真空チャンバから取り外すことなく、前記坩堝が気化又は昇華されるべき前記材料で充填されることが可能なように構成されており、かつ、
操作可能で前記配送管と一体のシャッタアッセンブリを更に備え、前記シャッタアッセンブリは、前記配送管から出る気化又は昇華された材料の流れを選択的に中断するように構成され、前記シャッタアッセンブリは、前記シャッタアッセンブリの移動方向を変えることなく、前記配送管内の1つ以上の通路を選択的に開閉するように構成され、前記シャッタアッセンブリは、回転シャッタアッセンブリを含む、
流出セル。
【請求項22】
流出セルであって、
前記流出セル内で気化又は昇華される材料をそこに収容するように構成された坩堝と、
前記坩堝から生じる気化又は昇華された材料を前記流出セルから真空チャンバに送出するように構成された配送管と、
前記坩堝から延び、前記気化又は昇華された材料から生じる結露を捕捉し、前記結露を前記坩堝に送り返すように配置及び構成された供給管と、
前記坩堝内に収容された材料を加熱して、前記坩堝内の前記材料の気化又は昇華と、前記配送管を通じた前記気化又は昇華された材料の流れ及び前記流出セルからの送出と、を起こさせるように配置及び構成された少なくとも1つの加熱エレメントと、
を備え、
前記流出セルは、前記流出セルを前記真空チャンバから取り外すことなく、前記坩堝が気化又は昇華されるべき前記材料で充填されることが可能なように構成されており、かつ、
前記供給管内に配置された1つ以上のバッフルを更に備える、
流出セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願へのクロスリファレンス>
本特許出願は、2016年4月25日出願の米国仮特許出願番号62/327,323に対して優先権を主張し、また、2016年6月13日出願の米国仮特許出願番号62/349,499に対して優先権を主張する。これらの出願の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、物理蒸着システムと共に使用するための流出源、このような流出セルを含む蒸着システム、並びに、そのような流出セル及び蒸着システムを作製及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
物理蒸着は、蒸着チャンバ内の基板上に蒸着されるべき成分又は分子が気化又は昇華プロセスを介して供給される、周知の蒸着プロセスである。物理的に異なるプロセスではあるが、「気化」及び「昇華」という用語は、本明細書では互換的に使用され、蒸着される材料に対してのみ依存する。蒸着チャンバは、封入され、一般的には真空下にある。言い換えれば、少なくとも或る測定可能な量の気体が蒸着チャンバ内から除去される。蒸着チャンバは、一般的にはスチール、アルミニウム、他の金属又はガラスから形成され、外部領域、一般的には空気と、気体が部分的に除去される内部領域との間の、物理的境界を定める。
【0004】
気体が絶対零ケルビン以上の温度にあるとき、気体の各分子又は原子は、(1/2)mv2 で定義される特定の運動エネルギーを有する。ここで、mは気体粒子(原子又は分子)の質量であり、vは粒子速度である。これらのエネルギー粒子がチャンバ壁と衝突すると、それらはチャンバ壁に力を加える。チャンバ壁に加えられるこの力は、圧力として明確に現れ、しばしば、当業者に一般的に知られている他の単位の中で、ポンド/平方インチ(psi)、パスカル、又はトルのような単位で表現されることが多い。加えられる力の量は、チャンバの面積、発生する衝突の数、従って、気体の密度及び運動エネルギーに依存する。
【0005】
チャンバの外側の圧力が真空チャンバの内部の圧力と異なるシステムを考慮すると、正味の力がチャンバ壁に作用する。チャンバの外側の圧力がチャンバの内部の圧力よりも小さい場合、チャンバを膨張させ又は破裂させようとさえする力が働く。この場合、チャンバは圧力チャンバと呼ばれる。チャンバの内部の圧力がチャンバの外側の圧力よりも小さい場合、チャンバを圧縮し又は押しつぶそうとさえする傾向のある正味の力が働く。この場合、チャンバはしばしば真空チャンバと呼ばれ、チャンバに加えられる力に耐えるようにしっかりと構築されなければならない。ここから先、省略して、「チャンバ」は、「真空チャンバ」又は「チャンバ」として参照される。
【0006】
半導体、光学コーティング、工具被膜、及び様々な生物医学的用途などの多くの用途において、製品の加工は、これらに限定されないが、薄膜蒸着、エッチング及びアニーリングを含む。それゆえ、チャンバを排気するだけでなく、既知の気体の制御された流れを真空チャンバに導くことが好ましい。この気体は、蒸着、エッチング、アニーリングにおいて使用され、又は一般に真空環境で製造される製品を処理するために使用される製品を、提供することができる。真空は、プラズマ処理のような真空なしには不可能な処理手段を提供することができ、又は気体が流れて処理中の製品に供給されるように、単に圧力差を供給することができるかもしれない。或いは、真空は、生成物の汚染を防止し、又は望ましくない化学又は熱反応を防止するために、環境(background)の望ましくない不純物濃度を減少させる手段を提供することができる。当業者であれば、製品を処理するために真空を使用する多数の理由があることを認識しており、これらは例として挙げたものであり、全網羅的であることを意図するものではない。
【0007】
概して、チャンバ内の気体粒子の全てを除去することは不可能であるので、一般的に海面における大気圧(1気圧は760トルに等しい)に対して測定される真空チャンバ圧力を規定する、測定可能な量の残留気体が存在する。圧力が~<760トルから~1×10-3トルであるように気体が除去されるとき、その真空は「中程度の真空」と言われる。圧力が~1×10-3トルから~1×10-8トルの範囲に更に減少させられるとき、その真空は「高真空」又は「HV」と呼ばれる。圧力が更に~1×10-8トル未満に減少させられると、その真空は「超高真空」又は「UHV」と呼ばれる。
【0008】
チャンバの幾何学的サイズは、そのチャンバが、真空チャンバ、管、オリフィス(開口部)、又はその他の任意の密閉容積であるかどうかにかかわらず、気体がシステムを通ってどのように流れるかという、一定の重要な特徴を規定する。従って、全ての密閉容積は単に「チャンバ」と呼ばれる。気体が十分に低い圧力にあるとき、粒子は頻繁に互いに衝突することはない。粒子が互いに衝突するまでに粒子が移動する平均距離は、当業者には、(衝突間の)「平均自由行程」として一般的に知られている。チャンバ壁が平均自由行程(λ)よりも短い距離によって隔たれている場合、チャンバ壁との衝突は、気体及びチャンバ壁への及びそこからの運動量移動によって気体流の抵抗を決定する際に、粒子間の衝突を圧倒する。この気体流のモードは、「分子流」と呼ばれる。
【0009】
気体の平均自由行程がチャンバ壁の寸法よりも小さい場合には、粒子間衝突が、粒子から粒子への運動量移動によって、気体流への抵抗を支配する。この気体流のモードは「粘性流」として知られており、それは、チャンバ壁からのより小さなインピーダンス効果によって、粒子が減速するように振る舞って他の粒子を四散させる、流体のように振る舞う。
【0010】
気体は、真空システムを通って移動する際に、ある流れのモードから他の別の流れのモードへと切り替わることができる。例えば、気体は、小さな管(真空チャンバの一つの形態)に供給することができ、その圧力及び管の寸法は、その気体が粘性流モードにあることを規定する。その後、その気体がより大きなチャンバに注入されるようにすることができ、その圧力及びチャンバの寸法は、気体が分子流モードにあることを規定する。当業者に「クヌーセン数」([K])として知られている、平均自由行程のチャンバ主寸法に対する比によって定義される無次元量は、気体がどのモードにあるかを規定する。クヌーセン数が約1より大きい場合、気体は分子流の振る舞いに向かう傾向があり、一方、クヌーセン数が約1未満であると、気体は粘性流に向かう傾向がある。当業者は、粘性流対分子流を規定する明確な境界が存在しないことを認識しており、従って、クヌーセン数が約1であるときに、「混合流」と定義される領域が、流れ特性の過渡状態を定義するためにしばしば使用される。
【0011】
多くの場合、真空器具の処理速度は、分子流束Jに関連する「気体スループット」([Q])によって部分的に決定される。スループットは、システムを通る総質量流量の尺度である。従って、より高い質量流量は、より多くの気体種がチャンバに入ることに等しい。蒸着システムにおいて、蒸着速度従って処理スループットを増加させるために、より高いQ又はJが望ましい。スループットQは、トルリットル/秒、標準(大気圧)立方センチメートル/秒、標準リットル/秒、又は当業者に知られている他の単位の慣用的な単位で与えられる。分子流束Jは、原子数/(cm2 -秒)又はグラム/(cm2 -秒)の何れかの単位で与えられる。ある場合には、このスループットは、チャンバが動作することが意図される所定の圧力で規定され、他の場合には、それは大気圧(標準圧力)に比例して規定される。
【0012】
チャンバ圧力及び気体スループットは、チャンバコンダクタンスCによって関係づけられる。チャンバ、管、又はオリフィスのコンダクタンスは、気体の流れに対する逆抵抗の尺度であり、多くの場合、リットル/秒(L/S)の単位である。その結果、分子流領域では、コンダクタンスは、粒子間の衝突で流れを制限するように作用し気体流の制限にほとんど影響を及ぼさないチャンバの寸法によってのみ規定される。同様に、気体圧が衝突の数ひいては気体流に対するインピーダンスを決定するということを考慮すると、粘性流領域におけるチャンバのコンダクタンスは気体の圧力に依存する。一般に、Q、Cと圧力Pとの間の関係は、(1)式である。
【数1】
ここで、Cは、分子流に対しては、チャンバ寸法に依存する定数であり、粘性流に対しては、チャンバ寸法及び圧力に依存する変数である。粘性流に対するより正確な式は、コンダクタンスの圧力依存性を考慮に入れ、(2)式で示される。
【数2】
ここで、(真空チャンバ内又は真空をチャンバに供給するポンプ内において、)Pupは上流流(気体流の流出源)の圧力であり、Pdownは気体流の下流の圧力である。上流圧力と下流圧力との間の差は、多くの場合、下流圧力を無視できるほど大きい。従って、(2)式は、C=F/(2×Paverage )~F/(2×Pup)とすることによって、(1)式に簡略化することができる。
【0013】
真空は、真空チャンバから気体を除去して真空を生成するために、ある種のポンプを必要とする。チャンバへの気体の流れは、真空ポンプが気体を連続的に除去しない限り、圧力上昇をもたらす。従って、全ての真空システムは、少なくとも1台、しばしば2台以上の真空ポンプを含む。真空ポンプの性能は、ポンピング速度Sとして知られている量によって記述され、チャンバコンダクタンスの単位と同一の単位を有する。従って、ポンプのポンピング速度は、粘性流領域における圧力に依存し、分子流領域における圧力とは無関係である。ポンピング速度とチャンバコンダクタンスが同じ単位を有するので、(1)式及び(2)式のコンダクタンスCを実効コンダクタンスCeff で置き換えることにより、それぞれの組合せ効果を、(3)式で記述することができる。
【数3】
同様に、大小複数の(n個の)チャンバ並びに1台のポンプが、一連の気体の流れの配置で接続されている場合、実効コンダクタンスは(4)式によって求められる。
【数4】
【0014】
高いポンピング速度を有するポンプが様々な寸法の一連のチャンバに接続されるとき、最も低いコンダクタンスのチャンバ即ち最小の特性寸法を有するチャンバが全体のコンダクタンスを決定し、従って、システムのスループット及び圧力を決定する。従って、高速ポンプが小さな開口部(制限されたコンダクタンス)を介して真空チャンバに接続される場合、その開口部は全体のコンダクタンスを制限し、従って、スループット及び達成可能な圧力を制限する。この機能は、本開示の実施形態を理解する上で重要であることを示しており、(3)式及び(4)式におけるポンピング速度Sを無視でき、結果として、システムの流束スループットは流出源(即ち、本明細書に記載されるような流出セル)の圧力及び配送システムの結合されたコンダクタンスによって決定できることにつながる。
【0015】
分子流の条件下では、気体分子は互いに相互作用しにくいので、コンダクタンスは圧力とは無関係である。円形オリフィス(開口部の直径より実質的に小さい厚さを有する開口部を持った穴)は、(5)式のコンダクタンスを有する。
【数5】
管のコンダクタンスは、(6)式となる。
【数6】
ここで、Dはcmでのオリフィス/管の内径、Lはcmでの管の長さ、Pはトルでの圧力である。この分子流の場合、コンダクタンスCは圧力に依存しないことに注意する。管に対する粘性流の場合、コンダクタンスCは(7)式により与えられる。
【数7】
粘性流領域では、気体流を特徴付ける、より正確な手段は、単純にQ=Ceff Pではなく(8)式である。
【数8】
ここで、Pupstreamはオリフィスの上流の圧力であり、Pdownstreamはオリフィスの下流の圧力であり、Fは(9)式の関係によりコンダクタンスCに関係する。
【数9】
粘性流の管に対するCとFの間の関係は、次のように証明できる。
【数10】
【0016】
(5)式から(7)式において、寸法がcm、圧力がトルで表され、上記コンダクタンスの式のそれぞれの前因子が単位変換を示している場合、全てのコンダクタンスはL/秒で測定される。非円形のアパーチャ及び管は、当該技術分野において周知の類似の表現を有するが、あまり一般的ではない。
【0017】
管及びオリフィスの開口部の面積寸法は、コンダクタンスに影響を及ぼす。従って、(1)式により説明されるような高質量流に対しては、コンダクタンスを最大にする、大きな直径の管及びオリフィスを有することが望ましい。
【0018】
本開示の実施形態は、従来の坩堝(るつぼ)及び流出セルの設計よりも実質的に大きな機械的負荷を支えるように設計されたいくつかの強固な機械的接続を利用し、また(場合によっては)これらの接続は加熱により液化して気化した材料を逃させないように液密であることが要求されるため、「仮想リーク」を発生させることなく、真空中で厚く重い部品を接合する手段が必要となり得る。仮想リークは、低コンダクタンス経路を介して真空に接続された容積中の閉じ込められた気体(液体ではない)のポケットである。このような経路は、しばしば、小さな又は高度に収縮した開口部又は糸のような細長い経路である。仮想リークを回避するための当該技術分野における周知の方法は、代替の気体経路又はジョイントの雌ネジのスロッティング(溝加工)を提供するように、隠しタップ穴に使用される中央がボーリングされたボルト及びネジを含み、それは気体が逃げるためのより直接的な(より真っ直ぐでより短い)経路を与える。残念ながら、雌ネジのスロッティングは閉じ込められた気体を逃がせるようにするために必要だが、それはまた液体気化材料がそのスロットを通して「吸い上げられ」ジョイントを逃げる可能性もある。
【0019】
当該技術分野において周知のように、MBEシステムは、真空チャンバ内に構成された気化(又は昇華)材料で満たされた1つ又は複数の加熱された坩堝から成り、その気化材料を基板に向けて固体膜として凝縮されるようにする。機械的シャッタは、一般的には、坩堝の外側に配置され、気化材料の流束を基板上に蒸着させなかったりさせたりする。坩堝は、一般的には、熱分解窒化ホウ素(PBN)若しくは他の好適な高純度の熱透過材料若しくは場合によっては熱不透過性耐熱金属、アルミナのような酸化物、酸化ベリリウム、又はグラファイトでよく作られている薄壁材料(一般的には約0.035インチまでの厚さ)であるように設計される。一般的に、坩堝は取外し及び取替えが可能で交換できるようになっており、従って、材料が特定されるものではない。様々な蒸着速度を達成するために気化流束を調整するか、又は気化材料を特定の流束比で混合して複合薄膜を生成することが望ましいので、ほとんどの場合、MBE坩堝は、熱質量を最小限に抑え、よって温度を変化させる従って所望の気化流束を変化させる応答時間を最大にさせるように、薄い。
【0020】
いずれの薄膜蒸着システムにおいても、しかし特にMBEにおいて、上部の蒸着速度は、流出セルからの吐出の開始によって制限される。吐出は、加熱された融成物中で生まれる対流(時に不正確には「沸騰」と呼ばれる)から生じ得て、それは温度が上昇すると強烈度を増し、その結果として、基板に到達し、そして、いくつかの用途ではそれらの識別形状のためにしばしば「楕円形の欠陥」と記載される、金属液滴から、乾いて化学的に反応した液滴合金にまでわたる欠陥を招く可能性がある、液滴の遊離を招く。気化したものが坩堝の壁面に結露して集積すると、流出源からの吐出はより低温でも発生することがある。溶融物の上の坩堝の壁が溶融物自体ほど熱くないため、上記集積はPBNのような熱透過材料を使用すると増悪し、壁面上の液滴の結露を促進する。これらの結露した液滴は、そのセル外の溶融して「飛び散った」液体に逆戻りする可能性がある。当技術分野で知られているこれらのメカニズム又は他の同様のメカニズムの何れかが、蒸着膜に欠陥を含み得る流出源の吐出をもたらす可能性がある。中速度での蒸着では、材料の結露を防止するために坩堝のオリフィス又は「ホットリップ」設計におけるようなリップを加熱することによって、又はくぼみ型の坩堝形状を使用することによって、吐出欠陥生成が低減されてきた。これらの設計は、非効率的な熱吸収と、標準的な開放セル設計と比較して吐出の控えめな減少のみを提供する溶融領域と比較して、限定された温度差とに悩まされている。
【0021】
「キャンペーン長」は、MBE又はPVDシステムを、そのシステムを保守のために最も多くの場合には材料の再充填のために開く必要があるまでに、成長のために使用することができる時間である。ほとんど全ての現在使用されている流出セルは、材料が充填されるのと同じ開口を介して材料が気化される、単一開口設計を用いている。これは、消費された材料を再充填するために、流出セルをシステムから取り外すことを必要とする。約100兆個の半導体原子中の1つの不純物が「不純」とみなされる半導体材料の蒸着などの高純度を必要とするプロセスでは、大気中に存在するH2O、CO、O2、CO2、及びその他の汚染気体によるこの真空破壊とそれに続くシステム汚染は、高価で時間がかかる「事後保守クリーンアップ」サイクルが費やされることをもたらす。しばしば、不純物を様々なポンプに押し出すために、システム全体が250℃の高温で数日間焼成される。これは、MBEプロセスの主要な工業的限界の1つと考えられ、多くの製造業者がMBEの代わりに競争技術を選択する主な理由である。そこを通して材料を気化させるのと同じ開口部を通して材料を充填しない少数の流出源を選択した場合、材料を充填するための真空破壊が依然として必要とされる設計であり、キャンペーン長が同様に制限される結果となる。
【0022】
対象基板上の蒸着膜の均一性は、その膜の厚さ又はそのように構成されている場合には合金の原子組成の、基板上の位置の関数としての統計的及び幾何学的変動である。MBEシステムなどのPVDシステムは、或るケースでは厚さ及び組成の標準偏差が1%以下である、非常に均一な膜を生成することが知られている。流出セル軸への角度に対比した流束分布について、概してパワー(そのパワーは一般的には~3未満である)がコサイン形状に追従すると仮定すると、MBEシステムにおける高い均一性は、流出源から基板までの距離を図1A及び図1Bに示されるようにほぼフラットな流束分布を得るのに十分大きな距離にまで増やすことにより得られる。しかし、基板に到達する流束は、Lssを基板と流出源との間隔として、1/Lss 2の倍率で減少するため、この一般的なやり方はまた蒸着速度を大幅に低下させる。正の抜き勾配を有する坩堝(Positive draft crucibles)は、均一性を改善するために使用されてきた。しかし、これらは、垂直な壁の坩堝と比較して縮小された容量を有し、「枯渇効果」として知られている周知の長期間の流束不安定性を示し、たとえ一定の温度であっても、その材料が枯渇するにつれて、気化する材料の表面積が変化し、時間の経過と共に流束を変化させる。正の抜き勾配(円錐形)で囲まれた壁であろうと垂直に囲まれた壁であろうと、全ての開放端を有する坩堝は、枯渇効果によるある程度の長期間の流束不安定性を示し、外部シャッタの開閉時に短期間の流束不安定性を生じやすい。これらの短期的な外部シャッタ流束過渡応答は、部分的に熱反射をしているシャッタが流出セルの開口部からはずされたときにおいて、流出セルの過渡的な冷却又は加熱に起因することが知られており、従って、そのことが、そのセルからのより多くの(開放シャッタ時)又はより少ない(閉鎖シャッタ時)熱損失を起こさせる。その熱損失は、より多くの(開放シャッタ時)又はより少ない(閉鎖シャッタ時)電力を抵抗性フィラメントに印加して所望の一定温度に戻す動作をする、比例積分微分(PID)制御システムによって駆動される過渡変動により、補償される。
【0023】
圧力Pを有する蒸気又は気体を含み、断面積Aに制限され十分に薄い開口部(オリフィス)を通って真空内に進む、流出セルを出る流れは、(10)式で与えられることが知られている。
【数11】
ここで、開口部は、開口部の幅よりもはるかに薄い厚さを有することにより、オリフィスとして分類されるのに十分に薄く、J=流れ、m=気化種のkG単位の分子質量、k=ボルツマン定数、T=セル内の絶対温度、P=(11)式の法則によって関係付けられる、温度Tに関連するセル内の圧力である。
【数12】
Yは気化された材料の特性定数であり、Eは気化又は昇華プロセスに関連する活性化エネルギーである。
【0024】
オリフィスからの距離、Lssにおける真空中への分子の正確な流束は、多くの変数の複雑な関数であるが、当該技術分野では知られている。これらの変数のいくつかは、J、オリフィスサイズ、A、オリフィス形状、更には、分子ビームが真空中に進み基板位置ポイントLssまで伸びて焦点を合わせたときに変化する局部圧力(Pは位置zの関数であり、0≦z≦Lss)、を含む。
【0025】
従って、ランバートの近似は有用であり、(12)式のように、オリフィスからの距離Lssに位置する基板上の入射流束Fはオリフィスからの距離Lssの2乗で減少する。
【数13】
ここで、Hは比例係数である。
【0026】
この流束を生成する既知の方法は、一般的には、気化される材料を含む坩堝、坩堝に熱を加えるためのフィラメントヒータ、及びビーム遮断機構(シャッタ又はバルブ)を含む。坩堝は、様々な材料から作ることができるが、気化される元原料と化学的に反応せず、及び望ましくない汚染気体のアウトガスを最小限にする能力のために選択される。坩堝は、多くの場合、1つの開放端を有する容器であるが、場合によっては、セルから出る流束を圧縮し又は成形するように設計された、ノズル又はオリフィスを有する密閉容器である。
【0027】
大部分の流出セルは、その流出セルを出る流束の分子ビームの経路に配置され、坩堝の外側に取り付けられたブレードから構成される、機械的シャッタを使用する。これらの外付けシャッタは、配送された流束を減少させるが、飛散又はチャンバの脱着が生じる、より高い圧力では、この流束の減少は、閉鎖位置にあるときに~10倍にすぎない。このブレードは、W、Ta、Mo、PBN、グラファイト、又は気化材料との反応が十分に制限された他の任意の材料から作製され、一般的には、加熱されず、シャッタ上で堆積された材料の厚さが連続的に増加する結果をもたらすものである。その堆積された材料は、シャッタ作動の問題(緩慢な又はロックされた動作)を引き起こすような厚さまで蓄積することがあり、また、そのシャッタを取り囲む低温表面にも接触して、そのシャッタとその低温表面との間にシャッタ作動を妨げる「凝固材料溶着」を形成する可能性がある。そのブレードは、一般的には、直線的な後退/挿入機構、又は実質的に360°未満、一般的には90°から180°までの円弧経路に沿った回転動作を介して、作動される。開かれたシャッタを閉じるには、その開く過程の間にそれが移動した経路をシャッタが逆に辿る必要があり、これは遅くて多くの場合やっかいなプロセスである。
【0028】
同様に、まれな数の流出セルでは、プランジャースタイルのバルブが使用されて、分子流束を遮断しそして元に戻すために、流出セル坩堝の円筒管に栓をしそして開く。このような設計は、材料の蓄積を最小限に抑え、バルブ/シャッタを通過する「漏れ」流束の量を低下させる、より確実な閉鎖を提供する、加熱されたバルブ本体を可能にする。しかし、これらのプランジャーバルブの流束調整方式でさえも、同じ経路を逆方向に辿る必要があり、その結果、外部シャッタ構成と同様に流束調整が遅くなる。分子流束遮断のこれらの方法は、ビームを時折単に開始及び停止させるように設計されており、迅速で頻繁なシャッタ/バルブ動作が必要とされる場合には難を生むことが、MBE分野では知られている。迅速な流束調整を必要とする方法としては、超格子として知られている薄い交互組成の多層の成長、又は、例えば「Systems and Methods For Growing a Non-Phase Separated Group-III Nitride Semiconductor Alloy」という名称の米国特許第9,142,413号に開示されているような、金属変調エピタキシ(MME:Metal-Modulated Epitaxy)プロセスに見られる、金属の速いパルスを供給して表面転移を増加させる場合を含む。従って、外部取付けされた「ブレードスタイル」シャッタ及び内部取付けされた「プランジャースタイルバルブ」のどちらも、急速なパルス変調流束の成長が要求される場合に望ましい、所要作動速度を供給することができない。シャッタ/バルブシステムのこれらの時間的制約は、蒸着速度が増加するにつれて悪化する。例えば、MMEの場合、シャッタ作動は、約~1-2μm/時の成長速度に対しては2秒毎でよいが、約~10-50μm/時の成長速度に対しては、0.1から0.2秒ごとに頻度が上昇する。
【0029】
MBEシステムを使用する主な理由の一つは、望ましくない不純物の混入を最小限に抑えるために、超高真空の環境を維持することである。ほとんどの場合、これらの不純物は、望ましくない酸素及び炭素気体の形態にあり、主としてこれらの望ましくない汚染気体のほぼ無限の供給源として作用する加熱金属から生じる。非常に低い基本圧力が日々達成されることを保証するように、保守及び操作の手順に細心の注意が払われる。例えば、III族窒化物材料を成長させるために使用される市販のMBEシステムは、(イオンゲージ圧力センサによって読み取ることができるものの下限近くの)~6-8×10-11トルの基本圧力で各動作日を開始することができる。しかし、流出セル又は基板ヒータの何れかがアイドル値(約200℃)から動作温度に上昇するとすぐに、システムの基本圧力はこの静止値から10-9トルの高さに(瞬間的には更に高く)上昇することがある。
【0030】
MBEは、一般的には金属Ta、W、又はジルコニア安定化Ptから作られた抵抗性金属フィラメント及び基板ホルダによって加熱された、流出セルを使用して実行される。これらの抵抗性金属フィラメント、その抵抗性金属フィラメントを保持するセラミック部品、及び熱を反射し流出セル又は基板ヒータから逃げる熱量を最小限に抑えるために使用される金属の気体トラップロールは、しかしながら、気化流束中に不純物を導入することになる可能性がある。金属は炭素及び酸素含有気体の無限の供給源であり、CO、CO、及びO気体、並びに他の望ましくない元素を排出する傾向があり、それらはポンプで排気される必要があり、又はそれらは成長する膜内に取り込まれるだろう。更に、基板ヒータ及び流出セルは、成長基材への直接経路内にある。従って、飛散した又は放出された気体に有用な全ての精巧な低温シールド及びゲッタリングポンプは、成長基材に遭遇する前にこれらの気体濃度を低下させる効果がほとんどない。
【発明の概要】
【0031】
いくつかの実施形態において、本開示は、次のような流出セルを含む。それは、気化又は昇華されるべき材料を収容するための坩堝と、その坩堝から生じる気化又は昇華された材料をチャンバ内に配送するように構成された配送管と、その坩堝から延びた供給管と、その供給管が気化又は昇華された材料から生じる結露(凝縮液)を捕捉しその結露を上記坩堝に戻すように配置され構成されることと、その材料の気化又は昇華、及びその気化又は昇華された材料の上記配送管を通る流れ、及びその流出セルから外部への出力を起こさせるように、その坩堝内の材料を加熱するように配置され構成される少なくとも1つの加熱エレメントと、を含む。上記流出セルは、プロセス(処理用の)真空チャンバから流出セルを取り外すことなく、上記坩堝が気化又は昇華されるべき材料で充填されることが可能なように構成されている。
【0032】
更に別の実施形態では、本開示は、1つ以上のそのような流出セルを含む半導体基板処理システムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】流出セルの中心から半径方向の距離及び基板の関数として流出セルによって与えられる、流出セルと基板との間の第1の間隔の距離に対する流束分布を示すグラフである。
図1B】流出セルの中心から半径方向の距離及び基板の関数として流出セルによって与えられる、流出セルと基板との間の第2の間隔の距離に対する流束分布を示すグラフである。
図2A】その流出セルが用いられるシステムから切り離され、外部真空チャンバ容器無しの組立状態における、本開示の流出セルの一実施形態の斜視図である。
図2B図2Aに示される流出セルの分解斜視図である。
図3A】真空チャンバに取り付けられた外部真空チャンバ容器とともに採用されるようにすることができる、図2A及び図2Bの流出セルの側面図である。
図3B】真空チャンバに取り付けられた外部真空チャンバ容器と、図2A及び図2Bの流出セルの別の実施形態の側面図である。
図4】組み立てられた状態の図2A及び図2Bの流出セルの断面側面図である。
図5A図2A図2B、及び図4の流出セルの供給管及び(供給管内に配置されることのできる)複数のバッフルの分解斜視図である。
図5B図5Aに示されるバッフルのうちの1つの上面斜視図である。
図5C図5Aに示されたバッフルのうちの1つの底面斜視図である。
図6A図2A図2B、及び図4の流出セルのRFコイルアセンブリの斜視図である。
図6B図6Aに示されるRFコイルアセンブリの拡大された部分上面斜視図である。
図6C図6A及び図6Bに示されるRFコイルアセンブリの下部の部分側面図である。
図7A図2A図2B、及び図4の流出セルの坩堝20に取り付けられて示される図2A図2B、及び図4の流出セルの配送管及び関連するコンポーネントを示す斜視図であり、流出セルの他のコンポーネントは省略されている。
図7B図7Aに示される流出セルの様々なコンポーネントの分解図である。
図8A】本開示の流出セルの実施形態に従って使用され得る構成における坩堝及び配送管を示す、簡略化され模式的に示された断面側面図である。
図8B】本開示の流出セルの実施形態に従って使用され得る別の構成における坩堝及び配送管を示す、簡略化され模式的に示された断面側面図である。
図9A】流出セルの他のコンポーネントから分離して示される、図2A図2B、及び図4の流出セルの配送管及び関連するコンポーネントを示す斜視図である。
図9B図9Aに示される流出セルの様々なコンポーネントの分解図である。
図10A図2A図2B、及び図4の流出セルのシャッタアッセンブリ、ガイド管、及びノズルの斜視図である。
図10B図10Aに示されるシャッタアッセンブリ、ガイド管、及びノズルの拡大された部分斜視図である。
図10C図10Bとは異なる視点から取得された、図10Aに示されるシャッタアッセンブリ、ガイド管、及びノズルの拡大された部分斜視図である。
図11A図2A図2B、及び図4の流出セルのシャッタアッセンブリ及びノズルの分解斜視図である。
図11B】組み立てられた状態で示された図11Aのシャッタアッセンブリ及びノズルの斜視図である。
図11C図11Aのものであるが図11Aとは異なる視点から取得されたシャッタアッセンブリ及びノズルの別の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書に含まれる図は、特定の流出セル又は半導体基板処理システムの実際の図であることを意味するものではなく、本開示の実施形態を説明するために採用される理想化された表現にすぎない。図面間で共通の要素及び機能は同じ数字で表した記号を保持することができる。
【0035】
本開示の流出セルの実施形態は、「分子ビームエピタキシー法」(「MBE」)として知られている用途において、又はより一般的には一般に「物理蒸着」(「PVD」)として知られている薄膜及び厚膜の真空蒸着において、又は1つ以上の基板を処理するために密閉された真空チャンバが使用され、及びそ(れら)の基板の処理のためにその真空チャンバ内に気化物を供給するために流出セルが使用される任意の他の処理システムにおいて、利用されるようにすることができる。本明細書に記載された流出セルの実施形態の動作圧力範囲は、「分子流」として定義されたものよりも高い可能性があるため、その流出セルは、従来知られている流出セルと比較すると、特により高い気化圧力又は周囲圧力において、改善された適応性をもって動作することができる。従って、その流出セルは、MBEシステム以外の処理システムにおいて、採用されるようにすることができる。従来の「MBE方式」の流出源とは対照的に、本明細書に記載された流出セルの実施形態によって供給される気化流束は、主として、その流束の高速パルスのデューティサイクル及び持続時間の変動によって調整され、温度変化から生ずる流束変動にはゆっくりとだけ応答する。従って、本開示の実施形態では、より厚く、より堅牢な坩堝であって、より破損しにくいものを利用することができる。坩堝の温度はまた、流束の変動をもたらすように、変化させられるようにすることもできるが、一定の温度が望ましい場合には、より高い熱安定性を有して、遅い速度で変化させられるようにすることもできる。本明細書に記載された流出セルは、蒸着チャンバにおいて及び蒸着が中真空、高真空(HV)、又は超高真空(UHV)の圧力範囲のもとで実行される処理において、実用性を有することができる。一般に、蒸着システムの主要な望ましい機能は、高い蒸着速度、優れた均一性、広い動作圧力範囲、低い不純物混入、及び多成分膜の混成にわたる良好な制御である。これらの望ましい機能の全てに加えて、本開示は、その場での材料の再充填能力を有しながら、高い蒸着速度で、液滴の吐出を低減しかつ流束の迅速な時間応答を提供する能力を含む。更に、本明細書で開示された流出セルの実施形態は、システムを大気にさらすことなくその場で再充填することを可能にする、ユニークな「真空外」再充填設計を利用し、そのことはシステムのキャンペーン長を制限する要因の中から材料再充填を取り除く。加えて、本開示の流出セルの実施形態は、分子流束の比較的迅速な調節(例えば、流束遮断メカニズムの起動及び停止)が可能である。本明細書に記載された流出セルの実施形態は、従来知られている流出セルの設計によって引き起こされるアウトガスを低減し、その設計から認められる加熱金属の全ての不必要な加熱された系統を除去することによって、そのような有害気体の発生源を最小限に抑えることさえも又は排除することさえもできる。
【0036】
本開示による流出セルの実施形態の別の利点は、流出セルコストの低減である。具体的には、従来知られている抵抗加熱式流出セルは、抵抗加熱フィラメント及び加熱された熱反射器の形式で、高価なタンタル、白金、及び他の希少金属(レアメタル)を含む。酸化物抵抗性流出セルは、フィラメント酸化を避けるために、高価なジルコニア安定化白金又はイリジウムを使用する。本開示の流出セルの実施形態は、そのような高価な不純物気体放出金属を含まないようにすることができ、MOCVD及びSiベース半導体製造システムにおいて標準の高純度で広く入手可能な材料で形成されるようにすることができる。本開示の流出セルの実施形態は、タンタル、白金、又は他の希少金属を含むそのようないかなる抵抗加熱フィラメント又は加熱された熱反射器も含まないようにすることができる。
【0037】
図2Aは、組立状態における本開示の一実施形態による流出セルを示し、図2Bは、図2Aの流出セルのコンポーネントの分解図である。図2A及び図2Bに示されるように、上記流出セルは、厚く、機械的に頑強で、常置されている(即ち、材料交換が可能でない)坩堝20を加熱するRF誘導コイル10を含む。上記流出セルは、配合気化材料供給品と、内部オフセットバッフル31を備えた機械的支持管30とを更に含む。上記流出セルは、その配送管40の内部に組み込まれる高速360°回転シャッタアッセンブリ50及び交換可能ノズル60が嵌合された配送管40を加熱する別のRF誘導コイル11を更に含む。ガイド管70は、シャッタアッセンブリ50を機械的に支持し、それを配送管40内の中心に置く。厚壁の坩堝20は、その内部にバッフル(阻流板)31を有する供給管30から機械的に吊されている。供給管30は、蒸気を液体に結露させる相当な伝導性のある温度勾配を提供するように作用する。その液体は、バッフル31上に閉じ込められ、坩堝20内の下方に据え付けられた流出源液溜めに滴下させられて戻される。内部バッフル31を有するこの供給管30はまた、第2の開放端32を有するが、有意な量の蒸気はこの開放端32からは漏れさせない。供給管30は、断熱器90へのねじ式のコネクタ81を介して標準的な両面真空フランジ80に取り付けられる。真空フランジ80は、任意選択で、水、液体窒素(LN)、または当該技術分野でよく知られている方法による様々なよく知られている冷却液を介して、伝導熱を冷却して放散することができる。断熱器90は、任意選択で、穴あきの多孔質材料、及び/又は熱抵抗を制限するような加工物とすることができ、真空フランジ80への熱流の量を制御することができる。更に、供給管30の長さは、真空フランジ80への所望の熱伝導を達成するように調整される。このようにして、供給管30内に存在する気化物が結露して坩堝20に戻るように、供給管30の上端部が適切な温度に維持されるようにすることができる。断熱器90は、以下に説明するように、材料の再充填を助けるために、任意選択で、円錐形又は漏斗状の内部形状を有することができる。
【0038】
図3A及び図3Bに示されるように、流出セル全体は、真空チャンバ容器内に取り付けられるようにすることができる。真空容器チャンバは、任意の様々な形状を有することができる。非限定的な例として、真空容器チャンバは、図3Aに示されるような円筒形チャンバ100(例えば、管)、又は図3Bに示されるような矩形チャンバ101を含むことができる。両面真空フランジ80は、真空チャンバに取り付けられた4つの真空フランジ102a、102b、102c、102dのうちの1つと、オプションの真空ゲートバルブ103との間に結合される。この真空ゲートバルブ103は、図4を参照して以下に説明されるように、再充填チャンバから流出セルを隔離する。オプションの真空ゲートバルブ104は、気化材料が注入されるプロセス(処理用)チャンバ107から流出セルを隔離することができる。真空ゲートバルブ104は、それが存在する場合、真空フランジ108を介してプロセスチャンバ107に取り付けることができる。回転機械式フィードスルー106は、その多くは当該技術分野でよく知られているが、シャッタアッセンブリ50に接続されて、それを操作する。同様に、4つのRF真空フィードスルー105a、105b、105c、105dが備えられて、電力と、望ましくないアウトガスを最小限に抑えるためにRF誘導コイル10、11を十分に低い温度に維持するための液体冷却の、両方を供給して戻すRF誘導コイル10、11の供給及び戻し接続を確立する。
【0039】
真空チャンバは、オプションとして、気体フィードスルーを含むことができる。この気体フィードスルーは、気化材料の衝突間の平均自由行程を制御するのに役立ち、従って従来知られた流出セルには見られない気化材料の指向性を調整することができる、流出セルから発する局所的な圧力を調節する手段を提供できる。
【0040】
真空チャンバはまた、温度センサ、圧力センサなどの様々なセンサを含むことができ、オプションとして、当該技術分野で知られている方法のように、流出源の「差動的ポンピング」を可能にする付加的なポンピングポートを含むことができる。
【0041】
支持/供給管30は、バキュームバルブ103と、充填ロックチャンバと原料充填管との間の通路を開放するために上記バルブ103を開く前に、プレパージされ、加熱乾燥され、そしてそのようにして浄化されるようにすることができる独立した材料充填ロックチャンバとを介して、その場で材料を再充填するために使用することができる。一旦バルブ103が開放されると、予めアウトガスされた補充する材料が断熱器90内に充填されるようにすることができ、断熱器90はその材料を漏斗に通して供給管30及び坩堝20内に送り込む。
【0042】
上記流出セルは、例えば、ニューヨーク州プレーンビューのVeeco Instruments Inc.から市販されているGEN200 MBEシステム若しくはGEN2000 MBEシステム、又はこのベンダ又は他のベンダからの同様の「大型ポート」モデルのような、十分に大きな真空システム内に設置することができるが、流出セルの全体的なサイズは、従来知られている流出セルよりも相対的に大きく、蒸着チャンバ107内に一般的に設置される従来の流出セルとは対照的に、完全に外部の位置からの運転のために設置することができる。このようにして、上記流出セルが蒸着チャンバ107の外部に取り付けられたときに、隔離バルブ104が、オプションとして、流出セルと蒸着チャンバとの間に採用されるようにすることができる。
【0043】
図4は、図2A及び図2Bの流出セルの断面図である。流出セルは、坩堝20と、機械的支持体及び再充填供給管30と、配送管40とを含むいくつかの相互接続された厚壁管を含む。図4に示されるように及び図5Aの分解図に示されるように、並びに、図5B図5Cに示されるように、支持/供給管30の内部には、自然落下供給される材料が坩堝20の液溜めに徐々に排出されて落ちることを可能にするが、蒸気がその管の開放端32に向かって上方に流れることを制限する、いくつかのバッフル31がある。供給管30に沿って温度勾配を作り出すことによって、気化された材料の結露が発生し、結露した液体気化材料が坩堝20の液溜めに徐々に排出されて戻ることを可能とする。断熱器90(図4)は、材料の再充填を助けるための内部漏斗形状を有し、液体材料を供給管30の開放端32に導く。供給管30に入ると、液体材料は、バッフル31を通って坩堝20の液溜めに徐々に排出される。上記断熱器は、充填された材料を液化したままにすることができるように供給管30の上部で適切な温度を維持するために、機械加工され、穿孔され、又は多孔質材料製であるようにすることができる。応用装置で一般的に使用されている材料の典型的な融点は、Gaに対する~27℃から、Alに対する~660℃まで、様々な遷移金属及び鉄金属に対する相当により熱い範囲にわたる。しかし、たとえ未溶融のままの材料であっても、固体粉末を使用して原料を再充填することができる。これらの液体又は固体再充填方法のいずれも適切でない応用装置では、流出セルは、再充填手順を用いることなく、供給管30の開口部32を適切なプラグでシールして使用することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、動作中に、供給管30、坩堝20、及び配送管40を含む3つのゾーン間に、温度勾配を確立することができる。これらの領域の実際の温度は、気化及び処理条件に依存して変化し得るが、配送管40内の温度は坩堝20よりも少なくとも200℃高くてもよく、坩堝20は供給管30よりも少なくとも200℃高くてもよい。いくつかの実施形態では、坩堝20は、それぞれのRF誘導コイル加熱素子を使用して約2,200℃までの温度に加熱し、配送管40は、それぞれのRF誘導コイル加熱素子を使用して2,500℃以上の高温に加熱することができる。
【0045】
図4を参照すると、先に述べたように、流出セルはRF誘導加熱コイルを使用することができる。図6A図6Cは、流出セルから分離したRF誘導コイルを更に示す。RF誘導コイル10及び11は、半径が異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、RF誘導コイルのそれぞれは、図4及び図6A図6Cに示されるように、内側巻線10a、11a及び外側巻線10b、11bを含むことができる。換言すれば、内側巻線10a、11aと外側巻線10b、11bとを有する各コイル10、11は、導電性材料の中空管を含むことができる。図6Bは、内側巻線10a、11aのピッチP10a、P11a、及び外側巻線10b、11bのピッチP10b、P11bを示し、ピッチは巻線中のコイルの2つの隣接する部分の間の距離として定義される。従って、各RF誘導コイル10、11は、外側らせん状巻線内に内側らせん状巻線を含むことができ、巻線内のコイルの隣接する部分が互いに接触しないように、内側巻線10a、11aはそのコイルの直径よりも大きなピッチP10a、P11aを有する。これらのピッチP10a及びP11aは、上記コイルの長さに沿って変化してもよく、より多くの加熱が望まれる場合にはより多くの電磁束を優先的に集中させるように、一端に向かってより密集していてもよい。交流電流が内側巻線10a、11aに流されると、内側巻線10aによって囲まれた空間の容積部(それは坩堝20と気化又は昇華される材料によって占有されている)、又は内側巻線11aによって囲まれた空間の容積部(これは、配送管40及び内部シャッタアッセンブリ50及びノズル60によって占有されている)に、変動磁場が発生する。上記変動磁場は、坩堝20又は配送管40内、並びに気化又は昇華される材料内、及び上記容積部内の他の材料内に電流を誘導し、上記各部はそれらの中の上記電流によって抵抗加熱される。
【0046】
内側巻線10a、11aの直径、コイルピッチP10a、P11a、及び上記巻線内の総巻数が、コイル10、11のインダクタンスを確立するために組み合わさって、経験的方法又は当該技術分野で知られている計算の何れかによって、坩堝20及び配送管40の負荷インピーダンスに整合させられるようにすることができる。
【0047】
コイル10、11を冷却して坩堝20及びそこに収容された材料から放出された熱放射を吸収するために、流出セルの動作中に水又は他の冷却液体又は流体がコイル10、11を通って流れるようにすることができる。
【0048】
更に、内側巻線10a、11aは、所与の直径及び加熱される材料に対する所望のインダクタンスのために、コイルの隣接する部分間に、明確な間隙又は空間を有するが、「戻り巻線」である外側巻線10b、11bは、コイルの隣接する部分間に隙間を有さないようにらせん状に巻かれ、コイル10、11の軸に平行な方向の上記外側巻線の壁に沿った電気的な短絡をもたらす。任意選択的に、外側巻線10b、11b内のコイルの隣接する部分間の電気的接触は、電磁誘導の処理にほとんど寄与しない堅固な外側水冷シールドを形成するために、溶接し、はんだ付けし、コイルを一緒にろう付けし又は結束することにより増強されるようにすることができる。このようにして、コイル10、11は、坩堝20及びその中の材料から放射された熱の大部分を除去して、チャンバの外部からの加熱を防止することができる、水冷された外側シェルを備えることができる。これらの熱シールド外側巻線10b、11bは、真空チャンバの熱遮蔽に有用な外側コイルを形成する。外側コイル10b、11bは、コイルの各回転が次の隣接する回転に接触し外側巻線10b、11bに沿って垂直に電気的な短絡を形成するように、コイル直径に等しいピッチP10b、P11bを有することができる。
【0049】
熱損失を増大させる多くの放射熱は坩堝20及び配送管40から発する可能性があるため、任意選択的に、外側巻線10b、11bは、熱を効率的に反射するための当該技術分野で知られている材料から作られ、その外側巻線10b、11bに溶接され、ろう付けされ、又は結束されて直接接触する、任意の数の追加された熱反射缶10c、11c又は多層金属箔によって、増強することができる。これらの材料は、スチール、Ta、Mo、Cu、Au、Ag、Ni、Al、Cr、及び/又は同じものの様々な酸化物、フッ化物、又は窒化物被覆バージョンを含む。標準的な流出セルとは異なり、上記熱遮蔽は、外側巻線10b、11bへの卓越した接触によって、低温に維持される。
【0050】
上述したように、RF誘導コイル10、11は、坩堝20及びその中に収容された材料をRF誘導加熱によって加熱するための、水/冷却剤により冷却されそして導電性のコイルを含む。この構成では、RF誘導コイル10、11は、流出セルの他の構成部品を著しく加熱することなく、坩堝20及びその中に収容されている材料及び配送管40及びその中に含まれる構成部品を効率的に加熱し、従来知られている流出セルと比較して望ましくないアウトガスを減少させる。坩堝20に含まれる材料が昇華材料(Mg、As、P等)である限定されたケースでは、流出セルがRF誘導コイル内の適所に固体材料を保持する手段を含む限り、坩堝20は省略することができる(しかし坩堝20は多くの場合依然として望ましくない漂遊気化を防止するために使用される)。全てのケースにおいて、RFエネルギーは、高純度超高密度グラファイト(又はSiC、TaC、BeO、PBN、BN、AlN、Al又は坩堝材料として一般的に使用される同様の材料のような他の適切な材料)坩堝を介して、気化材料に直接的に結合されるため、加熱されたTa(又は、W、ジルコニウムで安定化されたPtなど)フィラメントは必要ない。これらの超高密度グラファイト坩堝は、MOCVDシステムで日常的に使用されており、PBNセラミック相当品と同等かそれ以上の実績のある性能を有する最近の薄壁坩堝MBE応用製品に採用されている。しかしながら、このケースでは、坩堝20は、従来の薄壁(t≦0.035”)の交換可能な坩堝の代わりに、機械的剛直性のために厚壁(0.036”≦t≦1”)で構成される。これらのグラファイト、セラミック、金属、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、又は類似の坩堝は、特定の用途適合性(当該技術分野でよく知られている数多くある選択肢の中で、例えば、TaC、グラファイトカーボン、酸素環境に対するAl及びSiCのための窒化ケイ素又はAl)のために、様々なコーティングで覆われるようにすることができる。或いは、アウトガスがそれほど懸念されない酸化物材料の成長のケースのように、許容可能と考えられる場合、坩堝は、Ta、Mo、W、Nb、Ti、又は他の高純度の厚壁金属から作ることができる。
【0051】
RF加熱は、必要とされる空間のために、従来はMBEシステムで使用されていなかったことに留意すべきである。MBEシステムは、アウトガス不純物を捕捉するように設計された、狭い流出セル開口部を常に有していた。従って、液体窒素又は不凍液混合物で満たされたクライオパネル内の小さな開口部が使用されてきた。これらの開口部の1つにRFセルを配置する場合は、それはフィットしない可能性が高く、それはクライオシュラウドに結合して液体窒素を沸騰させる。従って、本開示による流出セルは、大口径真空蒸着若しくはMBEシステム、又は外部に取り付けられた構成で使用されるようにすることができる。その新しいRF流出セルは、その加熱された金属から、加熱された材料及び坩堝のみから、不純物をアウトガスしないので、このことが可能となる。
【0052】
図4図7A図7B図8A、及び図8Bを参照すると、流出セルはまた、配送管40も含む。配送管の軸線は、気化材料21を保持する坩堝20領域の軸に対して角度Φの方向とすることができ、RF加熱された高速回転バルブ50及び着脱可能なノズルアッセンブリ60が合わせられるようにすることができる。図7A及び図7Bは、配送管40及び関連するコンポーネントを更に示す。図8A及び図8Bを参照すると、坩堝20に対する配送管40の角度Φは、0°~約180°の間の任意の角度であり得るが、0°~135°の角度は、流出セルからの吐出が最小限になる可能性がある。0°と135°との間の角度では、管が坩堝20に収容された溶融材料21と一列に整列していないので、坩堝20内の「沸騰している」溶融液体原料21はごく少量の液滴しか配送管40内に吐出させない。図8Aは、坩堝20に対する配送管40の角度Φが約0°である(即ち、配送管40が坩堝20と平行である)実施形態を示し、図8Bは、坩堝20に対する配送管40の角度Φが約135°である実施形態を示す。他の実施形態では、配送管40は坩堝20に対して垂直であってもよい。配送管40は坩堝20内の溶融原料21との見通し線内にはないので、また、配送管40は、配送管40を坩堝20よりも高温にするように操作されるようにすることができる、それ自身の独立したRF誘導加熱源11とともに設計されているので、配送管40内に「はねる」少数の漂遊液滴が、バルブ50及びノズルアッセンブリ60を通って管を出る前に、再気化する。
【0053】
(1)式~(9)式は、任意の特定の蒸着システムにおける所望の分子流束流のための適切な複合コンダクタンスを定義することによって、坩堝20、配送管40、バルブ50、及びノズルアッセンブリ60の許容可能な寸法を定義するために、使用されるようにすることができる。従って、より短い及び/又はより広い配送管40はより多くの流束を提供し、より長い及び/又はより狭い配送管40はその流束を制限及び減少させる。同様に、(3)式及び(4)式による複合コンダクタンスは、バルブ50及びノズル60の管状及びオリフィスコンダクタンスのための、同様な関係を意味する。
【0054】
液体が漏れ出る可能性がある危ないジョイントのいくつかは、ジョイントを密封するために、ジョイントの外側でコーティングされるようにすることができる。例えば、坩堝20と配送管40との結合部は、任意選択の外部グラファイト状コーティング(又は上述のライナー(裏打ちの)コーティングとしての同様の種類の他の材料)を有するねじ接続を介して形成され、液密及び気密の密封を形成する。このようなジョイントは、ネジ式接続によって機械的に信頼に足り、外部コーティングを介して液密である。結合部のネジは、ネジ山に沿って又は機械結合部の底部内に閉じ込められた気体を除去するために、気体逃がし口(ネジに沿った切れ込み)及び雌受け口よりも短い雄ネジを組み込んでいる。この説明のアッセンブリは、上記ネジを介して機械的に取り付けられ、従って、より大きな機械的及び熱的負荷をサポートすることができるが、加えられた外部グラファイト(又は他の類似の)コーティングによって気体/液体の漏れに対して密封される。この漏洩防止の密封は、Φが、坩堝20と配送管40との結合部が溶融液体21と接触するようになる、0°に等しいか又は近づくときに特に必要である。
【0055】
図4に示されるように、配送管の端部は、坩堝20配送管40結合部について説明したのと同様の仕様のネジ接続を介して配送管40に取り付けられたノズル60を含む。図9A及び図9Bはまた、ノズル60を示している。ノズル60は、実際には、バルブ50内の「開口」51A、51B、51C(再び図9Bに示されるオリフィス、スロット、或いは、管)と、一列に整列したときにオリフィス又は管であるようになることができて、分子流束が流れることを可能にし、非整列となったときに上記分子流束を中断する、1つ又は複数のくびれた「開口」61を含む。上記流束中断の速度は、(13)式で定義される。
【数14】
ここで、流束速度は毎秒の流束変調の時間、Nは上記バルブ内の等しい数のオリフィス又は管を有するノズル内に配置された円形配置オリフィス又は管の数であり、rpmはバルブの回転に対する1分間当たりの回転数である。図9において、この例ではN=3である。
【0056】
このようにして、適度の200rpmのバルブ回転のために、上記流束の上記変調は、たった3つのノズル及びバルブ開口部を用いて、0.1秒で達成することができる。より高い流束速度が必要な場合は、より高いrpm、又はノズル及びバルブ内のより多くの開口部の何れかが、使用されるようにすることができる。バルブ50及びノズル60の両方の開口部の間隔及び数は、上記流束変調の速度及びデューティサイクルを調整するために、変更することができる。例えば、流束は、約0.001秒から約数秒の範囲内で配送されてもよく、又は一定の流束の供給のために開いたままとされてもよい。バルブ50とノズル60は、50%のデューティサイクルが必要とされない限り、同じ数の開口部を有する必要はない。
【0057】
図10A及び図10Bに詳細に示されるように、ノズル60上のオリフィス61の各々の形状は、一般に、配送管40の軸に対してその外側の抜き勾配61が25~45°の角度に近い正の抜き勾配である。各オリフィスの特定の形状及びテーパは、当業者には良く知られているように、より指向性があり又は拡散した分子流を生成するように調節されるようにすることができる。図9に詳細に示されるように、上記ノズルはまた、バルブ50が回転することができる回転ハブ52を含む。このハブは、内部側のノズルに対して先細となる曲線及び/又は選択的にノズル60が取り囲むための随意の円筒形ポスト52の何れかとすることができる。最後に、高密度グラファイト、TaC、SiC、AlN、又は他の材料などの、適切な摩耗適合性及び気化材料適合性コーティングが、バルブ50及びノズル60の接触面に任意に適用されるようにすることができる。
【0058】
供給源は、気化材料を含む坩堝20の温度と比較して、配送管40、ノズル60、及びバルブアッセンブリ50の温度を独立して制御可能とするように、独立して制御可能なRF誘導コイル10、11を含む。これは、結露並びにその結果としての吐出及び/又は目詰まりを防止するために、配送管40、バルブアッセンブリ50、及びノズル60を非常に高い温度で操作されるようにすることを可能にする。バルブアッセンブリ50は、取り付けられたバルブシャフトを有することができ、そして長いバルブシャフト管70に嵌合されるようにすることができる。長いバルブシャフト管70は、坩堝20の壁を貫通してねじ込まれ、前述したような漏洩防止接続を形成する。配送管40内のバルブ50からバルブシャフト管開口部70へは、漏洩防止されないが、バルブ50のシャフトと長いバルブシャフト管70とのきつい隙間と長い長さは、(1)式から(9)式により示される方法で、バルブ50シャフトとバルブシャフト管70の隙間からの気密漏洩を防止するコンダクタンスの制限(restriction)を形成することである、コンダクタンスの制限(limitation)を形成する。バルブシャフト管70はまた、バルブアッセンブリ50からノズル60への一列の整列のために、配送管40の内部に機械的中央揃え支持体71を有するようにすることもできる。任意の数Nのノズル開口61を利用することができるが、12を超えるノズル開口は、(1)式から(9)式によりノズル開口部61の直径がコンダクタンスを減少させるため、大きな原料配送管40のサイズ又は減少した流束の何れかを招く。実際には、任意のサイズの原料配送管40の直径が許容されるが、蒸着される面積以下の寸法が有益であり得る。加えて、本明細書で与えられる例は本質的に円筒形であるが、一般性を失うことなく任意の幾何学的形状が可能である。具体的には、平坦な配送管40、分子流束の輪郭をより良好に形成するように環状に同心をなしていないか又は複数のサイズ、形状、及び位置の開口部を有するノズル開口61、又は単一の坩堝20又は複数の独立に制御される坩堝20に源を発する複数の配送管40を持つ、流出セルを有することが有用であり得る。
【0059】
加えて、数ある場所の中で、坩堝、配送管、及び断熱器の温度を監視するのに有用な複数の温度センサ、熱電対、抵抗温度装置、又は類似のセンサを組み込むことができる。
【0060】
最後に、真空容器チャンバ本体上のオプションの注入気体ポートが、気化された材料の局所的な圧力を増加させ、気化された材料が活性又は不活性の何れかの性質の気体のビームによって取り囲まれる「カーテン気体」を提供するために、使用されるようにすることができる。不活性気体は、気化された材料をチャンバ内の他の反応性気体から隔離し、又は衝突間の平均自由行程(λ)を減少させることによって分子ビームの方向性を減少させるのに役立ちようにすることができる。活性気体カーテンは、気化された材料が蒸着基板に遭遇する前に望ましい気相の予備反応が起こることを可能にすることができ、又は基板上で反応する2成分蒸着のための反応気体として使用されるかもしれない。
【0061】
本開示の付加的な非限定例の実施形態は、以下に明らかにする。
【0062】
実施形態1:流出セルであって、上記流出セル内で気化又は昇華される材料をそこに収容するように構成された坩堝と、上記坩堝から生じる気化又は昇華された材料を上記流出セルからチャンバに送出するように構成された配送管と、上記坩堝内に収容された材料を加熱して、上記坩堝内の前記材料の気化又は昇華と、前記配送管を通じた上記気化又は昇華された材料の流れ及び上記流出セルからの送出と、を起こさせるように配置及び構成された少なくとも1つの無線周波数(RF)加熱エレメントと、を備える。
実施形態2:実施形態1の流出セルであって、上記坩堝は、1つ以上の壁を備え、前記1つ以上の壁の各壁が0.036インチ(0.091センチメートル)以上の平均壁厚を有する。
実施形態3:実施形態2の流出セルであって、上記1つ以上の壁の各壁が0.25インチ(0.635センチメートル)以上の平均壁厚を有する。
実施形態4:実施形態3の流出セルであって、上記1つ以上の壁の各壁が0.50インチ(1.27センチメートル)以上の平均壁厚を有する。
実施形態5:実施形態1乃至4の何れか1つの流出セルであって、上記流出セルは、プロセス(処理用)真空チャンバから原料源を除去することなく、坩堝が気化又は昇華されるべき上記材料で充填されることができるように、構成される。
実施形態6:実施形態5の流出セルであって、上記流出セルは、上記流出セルを用いて実行される処理操作を中断することなく、及び上記坩堝から生じる上記気化又は昇華された材料が上記配送管を通って上記流出セルから送出される上記チャンバ内における真空を解除することなく、上記坩堝が気化又は昇華されるべき上記材料で充填されることができるように構成される。
実施形態7:実施形態1乃至6の何れか1つの流出セルであって、上記坩堝は、グラファイト、セラミック、金属、金属炭化物、金属窒化物、及び金属ホウ化物を含む群から選択される材料を備える。
実施形態8:実施形態1乃至7の何れか1つの流出セルであって、上記坩堝は、TaC、グラファイトカーボン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、又はAlNを含む群から選択される材料を備える裏地を有する。
実施形態9:実施形態1乃至8の何れか1つの流出セルであって、上記流出セルは、どのようなタンタル又は白金の抵抗性フィラメントも含まない。
実施形態10:実施形態1乃至9の何れか1つの流出セルであって、上記配送管の軸線は、上記坩堝の垂直軸に対する角度で方向付けられる。
実施形態11:実施形態10の流出セルであって、上記配送管の軸が、上記坩堝の垂直軸に対して0°と135°の間の角度で方向付けられる。
実施形態12:実施形態11の流出セルであって、上記配送管の軸は、上記坩堝の垂直軸に対して約90°の角度で方向付けられる。
実施形態13:実施形態1乃至12の何れか1つの流出セルであって、操作可能で上記配送管と一体のシャッタアッセンブリを更に備え、このシャッタアッセンブリは、上記配送管から出る気化又は昇華された材料の流れを選択的に中断するように構成される。
実施形態14:実施形態13の流出セルであって、上記シャッタアッセンブリが、上記配送管を通る気化又は昇華された材料の流れのための1つ以上の通路を選択的に開閉するように構成される。
実施形態15:実施形態13又は14の流出セルであって、上記シャッタアッセンブリは、上記シャッタアッセンブリの移動方向を変えることなく、上記配送管内の1つ以上の通路を選択的に開閉するように構成される。
実施形態16:実施形態13乃至15の何れか1つの流出セルであって、上記シャッタアッセンブリが回転シャッタアッセンブリを備える。
実施形態17:実施形態16の流出セルであって、上記回転シャッタアッセンブリは、回転バルブと固定されたノズルとを含む。
実施形態18:実施形態17の流出セルであって、上記回転バルブは第1の複数の開口部を含み、上記ノズルは第2の複数の開口部を含み、上記固定されたノズルに関連する上記回転バルブの回転軸についての単一の回転方向における上記回転バルブの連続的な回転は、上記配送管内の上記1つ以上の通路の連続的かつ反復可能な開閉を引き起こすように、上記第1及び第2の複数の開口部の連続的かつ反復可能な整列及び非整列を引き起こす。
実施形態19:実施形態18の流出セルであって、上記駆動機構は、上記配送管内の上記1つ以上の通路の開閉を0.1秒以下で引き起こすのに十分な回転速度で、上記回転バルブの回転を駆動することができる。
実施形態20:実施形態13乃至19の何れか1つの流出セルであって、シャッタアッセンブリが、少なくとも部分的に配送管内に配置される。
実施形態21:実施形態1乃至20の何れか1つの流出セルであって、少なくとも1つの無線周波数(RF)加熱エレメントが、上記坩堝を取り囲むRFコイルを備える。
実施形態22:実施形態1乃至21の何れか1つの流出セルであって、上記配送管を通って流れ上記流出セルから送出する気化又は昇華された材料の結露を妨げるように、上記配送管に含まれる材料を加熱するように配置及び構成される少なくとも1つの付加的な高周波(RF)加熱エレメントを更に備える。
実施形態23:実施形態1乃至22の何れか1つの流出セルであって、上記流出セルは、抵抗加熱エレメントを含まない。
実施形態24:実施形態1乃至23の何れか1つの流出セルであって、坩堝から延びた供給管を更に備え、その供給管は上記気化又は昇華された材料から生じる結露を捕捉し、その結露を坩堝に送り返すように配置及び構成される。
実施形態25:実施形態24の流出セルであって、上記供給管は、上記坩堝に結合された端部を有する。
実施形態26:実施形態24又は実施形態25の流出セルであって、上記供給管内に配置された1つ以上のバッフルを更に備える。
実施形態27:実施形態24乃至26の何れか1つの流出セルであって、上記供給管及び供給管の開口部の少なくとも1つが冷却される。
実施形態28: 流出セルであって、上記流出セル内で気化又は昇華される材料をそこに収容するように構成された坩堝と、上記坩堝から生じる気化又は昇華された材料を上記流出セルからチャンバに送出するように構成された配送管と、上記坩堝から延び、上記気化又は昇華された材料から生じる結露を捕捉し、上記結露を上記坩堝に送り返すように配置及び構成された供給管と、上記坩堝内に収容された材料を加熱して、上記坩堝内の上記材料の気化又は昇華と、上記配送管を通じた上記気化又は昇華された材料の流れと上記流出セルからの送出と、を起こさせるように配置及び構成された少なくとも1つの加熱エレメントと、を備え、上記流出セルは、上記流出セルを上記プロセス(処理用)真空チャンバから取り外すことなく上記坩堝が気化又は昇華されるべき上記材料で充填されることが可能なように構成される。
実施形態29:実施形態28の流出セルであって、上記流出セルは、上記坩堝から生じる上記気化又は昇華された材料が上記配送管を通って上記流出セルから送出される上記チャンバ内における真空を解除することで実行される処理操作を中断することなく、、上記坩堝が気化又は昇華されるべき上記材料で充填されることが可能なように構成される。
実施形態30:実施形態28又は実施形態29の流出セルであって、上記少なくとも1つの加熱エレメントは、無線周波数(RF)加熱エレメントを備える。
実施形態31:実施形態28乃至30の何れか1つの流出セルであって、上記坩堝は1つ以上の壁を備え、上記1つ以上の壁の各壁が0.036インチ(0.091センチメートル)以上の平均壁厚を有する。
実施形態32:実施形態31の流出セルであって、上記1つ以上の壁の各壁が0.25インチ(0.635センチメートル)以上の平均壁厚を有する。
実施形態33:実施形態32の流出セルであって、上記1つ以上の壁の各壁が0.50インチ(1.27センチメートル)以上の平均壁厚を有する。
実施形態34:実施形態28乃至33の何れか1つの流出セルであって、上記流出セルは、上記坩堝から生じる上記気化又は昇華された材料が上記配送管を通って上記流出セルから送出される上記チャンバ内における真空を解除することで実行される処理操作を中断することなく、上記坩堝が気化又は昇華されるべき上記材料で充填されることが可能なように構成される。
実施形態35:実施形態28乃至34の何れか1つの流出セルであって、上記坩堝が、グラファイト、セラミック、金属、金属炭化物、金属窒化物、及び金属ホウ化物を含む群から選択される材料を備える。
実施形態36:実施形態28乃至35の何れか1つの流出セルであって、上記坩堝は、TaC、グラファイトカーボン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、及びAlNを含む群から選択される材料を備える裏地を有する。
実施形態37:実施形態28乃至36の何れか1つの流出セルであって、上記流出セルは、どのようなタンタル又は白金の抵抗性フィラメントも含まない。
実施形態38:実施形態28乃至37の何れか1つの流出セルであって、上記配送管の軸線は、上記坩堝の垂直軸に対する角度で方向付けられる。
実施形態39:実施形態38の流出セルであって、上記配送管の軸が、上記坩堝の垂直軸に対して0°と135°の間の角度で方向付けられる。
実施形態40:実施形態39の流出セルであって、上記配送管の軸は、上記坩堝の垂直軸に対して約90°の角度で方向付けられる。
実施形態41:実施形態28乃至40の何れか1つの流出セルであって、操作可能で上記配送管と一体のシャッタアッセンブリを更に備え、上記シャッタアッセンブリは、上記配送管から出る気化又は昇華された材料の流れを選択的に中断するように構成される。
実施形態42:実施形態41の流出セルであって、上記シャッタアッセンブリが、上記配送管を通る気化又は昇華された材料の流れのための1つ以上の通路を選択的に開閉するように構成される。
実施形態43:実施形態41又は実施形態42の流出セルであって、上記シャッタアッセンブリは、上記シャッタアッセンブリの移動方向を変えることなく、上記配送管内の1つ以上の通路を選択的に開閉するように構成される。
実施形態44:実施形態41乃至43の何れか1つの流出セルであって、上記シャッタアッセンブリが回転シャッタアッセンブリを備える。
実施形態45:実施形態44の流出セルであって、上記回転シャッタアッセンブリは、回転バルブと固定されたノズルとを含む。
実施形態46:実施形態45の流出セルであって、上記回転バルブは第1の複数の開口部を含み、上記ノズルは第2の複数の開口部を含み、上記固定されたノズルに関連する上記回転バルブの回転軸についての単一の回転方向における上記回転バルブの連続的な回転は、上記配送管内の上記1つ以上の通路の連続的かつ反復可能な開閉を引き起こすように、上記第1及び第2の複数の開口部の連続的かつ反復可能な整列及び非整列を引き起こす。
実施形態47:実施形態46の流出セルであって、上記駆動機構は、上記配送管内の上記1つ以上の通路の開閉を0.1秒以下で引き起こすのに十分な回転速度で、上記回転バルブの回転を駆動することができる。
実施形態48:実施形態41乃至47の何れか1つの流出セルであって、シャッタアッセンブリが、少なくとも部分的に配送管内に配置される。
実施形態49:実施形態28乃至48の何れか1つの流出セルであって、少なくとも1つの加熱エレメントが、上記坩堝を取り囲むRFコイルを備える。
実施形態50:実施形態28乃至49の何れか1つの流出セルであって、上記配送管を通って流れ上記流出セルから送出する気化又は昇華された材料の結露を妨げるように、上記配送管に含まれる材料を加熱するように配置及び構成される少なくとも1つの付加的な加熱エレメントを更に備える。
実施形態51:実施形態28乃至50の何れか1つの流出セルであって、上記流出セルは、抵抗加熱エレメントを含まない。
実施形態52:実施形態28乃至51の何れか1つの流出セルであって、上記供給管は、上記坩堝に結合された端部を有する。
実施形態53:実施形態28乃至52の何れか1つの流出セルであって、上記供給管内に配置された1つ以上のバッフルを更に備える。
実施態様54:実施形態28乃至53の何れか1つの流出セルであって、上記供給管及び供給管の開口部の少なくとも1つが冷却される。
実施形態55: チャンバと、内部に真空を確立するように上記チャンバから気体を排出するように構成される少なくとも1つの真空ポンプと、実施形態1乃至54の何れか1つに記載された少なくとも1つの流出セルであって、上記チャンバと動作可能に連携し、気化又は昇華された材料を上記少なくとも1つの流出セルから上記チャンバ内に選択的に取り込むように構成される流出セルと、を備える半導体基板処理システム。
実施形態56:実施形態55の半導体基板処理システムであって、上記半導体基板処理システムは、物理蒸着システムを含む。
実施形態57:実施形態56の半導体基板処理システムであって、上記物理蒸着システムが、分子ビームエピタキシー(MBE)システムを含む。
実施形態58:実施形態1から54の何れか1つに記載の流出セルの製造を備える方法。
実施形態59:実施形態1から54の何れか1つに記載の少なくとも1つの流出セルを使用して、気化又は昇華した材料を真空チャンバに導入することを含む、半導体基板を処理する方法。
【0063】
図面に関連して特定の例示的な実施形態を説明したが、当業者であれば、本開示に包含される実施形態は、本明細書に明示的に示され説明された実施形態に限定されないことを認識するであろう。むしろ、本明細書に記載された実施形態に対する多くの追加、削除、及び修正は、法的均等物を含む以下に請求されるような本開示によって包含される実施形態の範囲から逸脱することなくなされ得る。更に、開示された一実施形態の特徴は、開示された別の実施形態の特徴と組み合わされてもよく、それでも本発明者によって企図される開示の範囲内に含まれる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A.5C】
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C