(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】コンパクトなガス分析装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/78 20060101AFI20221220BHJP
G01N 30/46 20060101ALI20221220BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20221220BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G01N30/78
G01N30/46 A
G01N30/88 C
G01N33/497 A
(21)【出願番号】P 2018564249
(86)(22)【出願日】2017-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2017064210
(87)【国際公開番号】W WO2017216079
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-05-21
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ナイセン タマラ マセア エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ウェダ ヨハネス
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-153075(JP,A)
【文献】特開2009-036739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0298990(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0005300(US,A1)
【文献】特開2011-112603(JP,A)
【文献】特開平06-058919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0063865(US,A1)
【文献】特開2010-271241(JP,A)
【文献】特開2009-008402(JP,A)
【文献】特開2005-221341(JP,A)
【文献】特開2002-181799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
G01N 33/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスサンプルを受けるガス注入口と、
前記ガス注入口に接続され、それぞれ第1及び第2の分子選択性特性を
持つ第1及び第2のガス分離器に前記ガスサンプルをガイドする流路であって、前記第1及び第2の分子選択性特性が異なる、当該流路と、
前記第1及び第2のガス分離器からの出力に対してそれぞれ第1及び第2の応答を生成するセンサを
各々が有する
第1及び第2の検出器と、
前記第1及び第2のガス分離器と直列に置かれる第3のガス分離器であり、前記流路は、前記第1のガス分離器と前記第2のガス分離器と前記第3のガス分離器との間に直列流路を有する、第3のガス分離器と、
前記第2のガス分離器と前記第3のガス分離器との間の前記直列流路内に配置された弁と、
前記第1及び第2の検出器からの前記第1及び第2の応答に応じて、出力データを生成する通信モジュールであり、前記第1の検出器が、前記第1のガス分離器からの出力に対して応答を生成する、通信モジュールと、
前記第1のガス分離器からの出力に応答して、前記第3のガス分離器に対するガスの流れを選択的に提供する又は提供しないように、前記第1の検出器からの前記応答に応じて、前記弁を開く又は閉じるように配される制御ユニットと
を有する、ガス分析装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の
ガス分離器が、それぞれ異なる範囲の分子を好むように異なる分子選択性特性を有する、請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のガス分離器が、それぞれ第1及び第2のガスクロマトグラフィカラムを有する、請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のガスクロマトグラフィカラムが、化学的表面、直径、表面の厚さ、及び長さの少なくとも1つに関する異なる分子選択性特性を持つ、請求項3に記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記第3のガス分離器からの出力に対して第
3の応答を生成するセンサを有する第
3の検出器
を有する、請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のガス分離器からの出力に対してそれぞれ第1及び第2の応答を生成するセンサを有する1つの共通の検出器を有する、請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項7】
前記流路が、複数のガス分離器の間の直列流路を各々有する複数の並列流路を有し、前記それぞれの並列流路内の前記複数のガス分離器の各々からの出力に対して応答を生成するそれぞれの検出器を有する、請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項8】
前記流路が、複数のガス分離器の間の直列流路を各々有する複数の並列流路を有し、時間とともに分離される前記それぞれの並列流路における前記複数のガス分離器の各々からの出力に対して応答を生成する1つの共通の検出器を有する、請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載のガス分析装置を有する携帯式呼気分析装置において、前記ガス注入口が、対象からの呼気を受け、前記流路、
前記第1及び第2の検出器、及び前記通信モジュールが、1つの共通のケーシング内に配置される、携帯式呼気分析装置。
【請求項10】
対象からの呼気のサンプルの分析に対する請求項1に記載のガス分析装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、ガスの分析に関する。特に、本発明は、ガス、例えば、人からの呼気又は皮膚、尿若しくは便からのサンプルに基づくガスの医学的分析に適した方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
健康及び病気における呼気分析は、診療的な関心が大きくなっている分野である。生物学的サンプルとして息を使用することは、息収集が、安価であり、実行しやすく、非侵襲的であるので、魅力的である。揮発性有機化合物(VOC)は、皮膚、尿、便から、特に呼気を介して分泌される。肺起源の他に、VOCは、血液からも発生し、身体の至る所で生理学的、病理学的又は病原体関連の生化学的プロセスを反映する。このように、呼気分析は、体内のどこかの疾病過程の代謝フィンガープリンティングを可能にしうる。
【0003】
複数の研究が、様々な疾患を持つ患者のはっきり定義されたサブセットにおけるこれらの技術の診断将来性を示している。呼気における揮発性物質は、病気が存在する場合に変化し、特定のマーカが、特定の病気にリンクされることができる。呼気に存在する他の揮発性化合物の複雑な母材における非常に少ない量におけるこれらの特定のマーカの検出は、最先端の分析技術でさえも挑戦である。
【0004】
従来の方法は、典型的には、必要であれば濃度を増加するために事前濃縮器を用いる、分離及び検出器ステップを含む。
【0005】
最先端の呼気分析は、一方でいわゆる電子鼻であり、他方でガスクロマトグラフィ質量分析(GC-MS)システムである。電子鼻は、所定のタイプの化合物に対して異なって反応する異なる検出器のアレイを有する。前記アレイからの信号の組み合わせが、化合物のタイプの識別するように一種のフィンガープリンティング方法として使用されることができる。これらの検出器の感度及び選択性は、複雑な呼気母材において特定のマーカを識別するのに適していない。
【0006】
他方で、この目的で使用されるハイエンドGC-MSシステムは、前記母材の個別の化合物を分離するクロマトグラフィカラムと、分離された各化合物を正確に検出することができる質量分析検出器とを有し、必要とされる選択性及び特異性を与える。これらのGC-MSシステムは、非常に高価であり、大きく、動作するのに非常に熟練した技術者を必要とし、定期的な較正及び洗浄を必要とする。したがって、このようなハイエンド機器は、例えば患者に近い病院における使用に適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のこと受けて、本発明の発明者は、ガス分析に対する改良された装置及び方法が有利であることを理解している。特に、このような方法及び装置は、好ましくは、小さな装置、例えば携帯装置を用いて、依然として1以上の選択された病気の識別又は診断を可能にする特異性で、呼吸している人又は動物からの呼気の分析を可能にする。
【0008】
特に、従来技術の上述の問題又は他の問題を解決する装置及び方法を提供することが、本発明の目的と見なされてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は、
‐ガスサンプルを受けるように構成されたガス注入口と、
‐前記ガス注入口に接続され、それぞれ第1及び第2の分子選択性特性を持つ少なくとも第1及び第2のガス分離器に前記ガスサンプルをガイドするように構成される流路であって、前記第1及び第2の分子選択性特性が異なる、当該流路と、
‐前記第1及び第2のガス分離器からの出力に対してそれぞれ第1及び第2の応答を生成するように構成されたセンサを有する少なくとも1つの検出器と、
‐前記少なくとも1つの検出器からの前記第1及び第2の応答に応答して出力データを生成するように構成された通信モジュールと、
を有するガス分析装置を提供する。
【0010】
直列及び/又は並列経路に分割された、前記流路に配置された複数のガス分離器の使用が、異なる分子選択性特性で各々調整された小型ガス分離器、例えば小型GSカラムの使用を可能にすることに本発明者が気づいたので、このようなガス分析装置は、有利である。これは、装置からの出力データが分析される場合に、結核又は肺炎のような、特に選択された病気を識別又は診断又は監視することができるコンパクトな、例えば携帯装置を可能にする。例えば、前記装置は、このような病気診断又は識別又は監視を実行するように構成されたプロセッサを有してもよく、前記通信モジュールは、この場合、このような病気の診断又は識別の結果を通信するように構成され、例えば、このような情報を他の装置、例えば、スマートフォン又はタブレット等に通信する有線若しくは無線インタフェース及び/又はディスプレイ及び/又はラウドスピーカを有する。携帯装置の場合、前記携帯装置自体は、ディスプレイを持ちうるが、代わりに又は加えて、前記装置は、患者モニタ又はベンチレータ装置上のディスプレイ等における表示のためにガス分析結果を通信してもよい。
【0011】
本発明は、必要なガス分離器(例えばGSカラム)が、各々、特定の範囲の分子を識別することができる必要があるのみであるので、これらに対して利用可能な空間が、大幅に減少されることができるという洞察に基づく。依然として、組み合わせで、前記複数のガス分離器は、1以上の選択された病気を識別する特定のバイオマーカの識別を可能にすることができる。
【0012】
例えば大きなGSカラムを使用する実験室のガス分離器と比較して、より小さなGSカラムは、前記揮発性物質をあまりよく分離しない。しかしながら、依然として別々に前記分子を検出することができるために、複数の小さなGSカラムが、分離に対して使用されることができる。関心のある分子Aが、2つの最近接分子B及びCを持つと仮定する。第1のカラムが、分子Cからではなく、分子Bから分子Aを分離するように調整され、第2のカラムが、分子Bからではなく、分子Cから分子Aを分離するように調整される場合、分子A、B及びCから個別の存在度を推定することは、依然として可能である。
【0013】
前記検出器は、好ましくは、少なくともクロマトグラフィスペクトルを提供しうる。異なる分子は、異なる時点で溶出する。異なるガス分離器に対して、溶出する分子及びこの溶出時間は、異なることができる。更に、前記検出器は、前記検出器に使用されるセンサタイプに依存して、例えば質量等に関する、前記識別された分子に関する追加の情報を与えうる。
【0014】
前記ガス分析装置は、ガス混合物を、更に分析されることができる複数の混合物に分離するのに使用されることができる。これは、例えば集中治療室における機械式ベンチレータの管の側流から直接的に呼気サンプルをサンプリングする、又は自力で呼吸することができる患者からの呼気サンプルを含むバッグからサンプリングする、臨床設定において使用されることができる。これは、ガスが特定の成分の存在について分析される必要がある他の応用において使用されることもできる。前記装置が、皮膚、尿又は便からのサンプルに基づくガスにおけるVOCを分析するのにも使用されうると理解されるべきである。更に、前記装置は、一般に非医学的応用に対してもガスを分析するのに使用されうる。
【0015】
以下に、前記第1の態様の好適な実施例又はフィーチャが、記載される。
【0016】
前記第1及び第2のガス分離器、又は2より多いガス分離器は、それぞれ第1及び第2のガスクロマトグラフィ(GC)カラムを有してもよい。特に、前記少なくとも1つの検出器は、質量分析検出器を有してもよい。他の検出器タイプが、好適であれば、使用されてもよい。更に、前記流路は、2より多い、例えば3、4、又はそれ以上、例えば5乃至10、又は10乃至20のGCカラムが、前記ガスサンプルを分析することを可能にするようにガス流を分割してもよく、これらのGCカラムは、1以上の選択された病気に対するバイオマーカとして機能する分子に関する分析を可能にするように、異なる分子選択性特性を持つように設計される。特に、前記第1及び第2のガスクロマトグラフィカラムは、化学的表面、直径、表面の厚さ、及び長さの少なくとも1つに関して異なる分子選択性特性を持ちうる。
【0017】
前記流路は、前記第1及び第2のガス分離器の間に直列(すなわちシーケンシャルな)流路を有してもよい。好ましくは、前記流路は、前記第1及び第2のガス分離器の間に並列な流路を有する。好適な実施例において、前記流路は、2より多いガス分離器を有し、前記ガス流は、少なくとも1つの直列(すなわちシーケンシャル)流路及び少なくとも1つの並列流路の組み合わせを用いて前記2より多いガス分離器に対して分割される。特に、前記流路は、1以上のガス分離器を各々有する3つの並列流路を有してもよい。
【0018】
好適な実施例において、前記流路は、異なる分子選択性特性を持つ複数のガス分離器の第1のセットの間に少なくとも1つの直列流路を有し、前記流路は、異なる分子選択性特性を持つ複数のガス分離器の第2のセットの間に少なくとも1つの並列流路を有する。
【0019】
前記少なくとも1つの検出器は、異なる分子の1つ又は範囲を示す前記第1及び第2のガス分離器からの出力に対してそれぞれ第1及び第2の応答を生成するように構成されてもよい。特に、前記検出器は、1つの特定の分子を検出するように構成されうる。
【0020】
前記少なくとも1つの検出器は、前記第1のガス分離器からの出力に対して第1の応答を生成するように構成されたセンサを有する第1の検出器、及び前記第2のガス分離器からの出力に対して第2の応答を生成するように構成されたセンサを有する第2の検出器、すなわち前記2つのガス分離器の各々に対して別の検出器を有してもよい。代わりに、前記少なくとも1つの検出器は、前記第1及び第2のガス分離器からの出力に対してそれぞれ第1及び第2の応答を生成するように構成されたセンサを有する1つの共通の検出器を有してもよい。2より多いガス分離器を持つ実施例において、前記装置は、複数の検出器を有してもよく、一部の検出器は、複数のガス分離器に対して共通であり、他のガス分離器は、別の検出器を持つ。
【0021】
前記流路は、複数のガス分離器の間に直列流路を各々有する複数の並列流路を有してもよく、前記それぞれの並列流路における前記複数のガス分離器の各々からの出力に対して応答を生成するように構成されたそれぞれの検出器を有する。
【0022】
前記流路は、複数のガス分離器の間に直列流路を各々有する複数の並列流路を有してもよく、時間とともに分離された前記それぞれの並列流路における前記複数のガス分離器の各々からの出力に対して応答を生成するように構成された1つの共通の検出器を有する。したがって、このような検出器構成によると、直列構成における複数のガス分離器を持つ各並列流路は、検出が別の時間スロットに分離される場合に、1つの共通の検出器により検出されることができる。
【0023】
前記流路は、前記第1及び第2のガス分離器の間の直列流路と、前記直列流路内に配置された弁とを有してもよく、第1の検出器は、前記第1の分離器からの出力に対して応答を生成するように構成され、制御ユニットは、前記第1の分離器からの出力に応答して前記第2の分離器に対するガスの流れを選択的に提供する又は提供しないように、前記第1の検出器からの前記応答に応答して前記弁を開く又は閉じるように構成される。特に、第2の検出器は、前記第2の分離器からの出力に対して応答を生成するように構成されうる。
【0024】
前記第1及び第2の分離器は、それぞれ異なる範囲の分子を好むように機能する異なる化学コーティングを有してもよい。ここで、例えば1以上の特定の病気に関連するバイオマーカを識別する目的で、前記ガスサンプル内の事前選択された分子の検出を可能にするように、複数のガス分離器、例えば3乃至10の異なるガス分離器のセットに対する分子選択性を調整することが可能である。
【0025】
前記ガス分析装置は、第1及び第2の応答によって事前選択されたバイオマーカを識別し、これに応じて出力、例えば1以上の病気の識別を示す出力を生成するようにプログラムされたプロセッサを有してもよい。
【0026】
好適な実施例において、事前濃縮器は、関心のある分子の濃度を増加するように、前記流路において前記ガス分離器の上流に配置される。更に、例えば前記ガス分析装置が、人又は動物からの直接的な呼気に対して使用されるべきである場合に、除湿フィルタが、含まれてもよい。
【0027】
前記通信モジュールは、様々な形で前記ガス分析の結果を通信する有線又は無線インタフェースを有してもよい。例えば、前記装置は、付加的に又は代替的に、前記ガス分析結果を通信するディスプレイ又はオーディオを有する。前記ガス分析装置は、前記ガスサンプル内の識別された分子に応答して1以上の起こりうる病気を計算するようにプログラムされたプロセッサを有してもよく、このような1以上の病気は、前記通信モジュールを介して通信されうる。前記通信モジュールは、特定の病気に関連した化合物の量に関する値を示すデータを通信するように構成されうる。代わりに又は加えて、前記通信モジュールは、前記ガスサンプル内の識別された分子を通信するように構成されてもよく、したがって外部の更なる分析を可能にする。前記通信モジュールは、分子存在度又は病気の形式のガス分析の結果を、接続されたプラットフォーム、例えばクラウドベースのプラットフォームに通信してもよい。前記ガス分析装置は、例えば1以上のマーカ分子の測定された存在度を事前に記憶された値と比較することにより、前記装置に含まれる前記検出器からの応答に応答して分析を実行するように構成されてもよく、これに基づいて、前記通信モジュールは、例えばパーセンテージを用いて又はバイナリ若しくはトリナリ(trinary)決定出力(「信号機」)を用いて、特定の病気の可能性を示すデータを通信するように構成されてもよい。
【0028】
第2の態様において、本発明は、前記第1の態様によるガス分析装置を有する携帯呼気分析装置を提供し、前記ガス注入口は、対象から呼気を受けるように構成され、前記流路、前記少なくとも1つの検出器及び前記通信モジュールは、1つの共通ケーシング内に配置される。
【0029】
前記ガス注入口は、前記ケーシングの外部に配置されたマウスピースを有してもよく、前記対象、人又は動物が前記マウスピース内に直接的に呼吸し、したがって分析されるべきガスを提供することを可能にする。他の管フィッティングは、前記対象が接続される(集中治療室又はOR内の)機械式ベンチレータから呼気を受ける接続に対して使用されてもよい。更に、前記装置の前記ガス注入口は、分析されるべき前記ガスサンプルを持つガスバッグの取り付けに対して構成されてもよい。
【0030】
第3の態様において、本発明は、対象からの呼気のサンプルの分析に対する前記第1の態様によるガス分析装置の使用を提供する。
【0031】
第4の態様において、本発明は、対象からの呼気の分析に対する方法を提供し、前記方法は、
‐前記対象から得られた呼気のサンプルを受けるステップと、
‐それぞれ第1及び第2の分子選択性特性を持つ少なくとも第1及び第2のガス分離器に対する流路内に前記サンプルをガイドするステップであって、前記第1及び第2の分子選択性特性が異なる、ステップと、
‐前記第1及び第2のガス分離器からの出力に対するそれぞれ第1及び第2の応答を検出するステップと、
‐前記第1及び第2の応答に応答して出力データを生成するステップと、
を有する。
【0032】
一般に、本発明の様々な態様が、本発明の範囲内で可能ないかなる形でも組み合わせ及び結合されうると理解される。本発明のこれら及び他の態様、フィーチャ及び/又は利点は、以下に記載される実施例を参照して説明され、明らかになる。
【0033】
本発明の実施例は、例としてのみ、図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】各枝に対して1つの検出器を持つ複数のガス分離器の並列な枝を持つ他の実施例を示す。
【
図3】並列な枝の全てに対して1つの共通の検出器を持つ複数のガス分離器の並列な枝を持つ他の実施例を示す。
【
図4】弁を制御するように機能し、これにより流路内の下流のガス分離器を害しうる有害材料の場合にガス流の停止を可能にする中間検出器を持つ実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、呼気、又は他のソース、例えば動物又は人からの皮膚、尿、便等からのVOCのサンプルの形のガスサンプルG_Sを受けるように構成されたガス注入口を持つケーシングCSを持つ携帯式ガス分析装置を概略的な形で示す。ケーシングCSは、直列流路接続における3つのガス分離器GS1、GS2、GS3のセットに対して前記ガスサンプルをガイドするように前記ガス注入口に接続された流路FPを収容する。好適な実施例において、ガス分離器GS1、GS2、GS3は、それぞれ異なる分子選択性特性を持つ、例えば異なる化学コーティング、及び/又は特定の範囲の分子の検出を可能にするように機能する他の物理的又は化学的特性を持つガスクロマトグラフィカラム(GC)として実装される。ケーシングCSは、更に、3つ全てのガス分離器GS1、GS2、GS3に対して共通な1つの検出器DTを収容し、ガス分離器GS1、GS2、GS3からの出力を検出し、これらの出力に応答してそれぞれガス分離器GS1、GS2、GS3からの出力に対してそれぞれ第1、第2及び第3の応答を生成するように構成されたセンサを有する。検出器DTは、質量分析型の検出器のようなものでありうるが、しかしながら、複数の他の検出器、例えば金属酸化物センサ、電気化学的センサ、プラズマ放出検出器(PED)、熱伝導検出器(TCD)が、好適であれば使用されてもよい。
【0036】
ケーシングCSは、更に、外部装置、例えばコンピュータ又はスマートフォン等が前記ガスサンプルに対して実行された前記ガス分析の結果を受信することを可能にするように、例えば検出器DTからの前記応答を示す出力データO_Dの無線周波数、例えばwi-fi通信に対する通信モジュールCMを収容する。前記携帯装置は、特定の分子の1つ又はセットが前記ガスサンプル内に存在するかどうかを計算するように検出器DTからの前記応答を受信するように構成されたプロセッサを有してもよく、この結果は、この場合、例えばケーシングCSの表面上で可視であるディスプレイを有する、通信モジュールCMにより通信される。
【0037】
図2は、直列経路内に接続された複数のガス分離器GS1_1乃至GS3_nを各々持つ並列な枝を持つ流路FPを持つ実施例を概略的表現において示す。見られるように、3つのガス分離器の直列接続を各々持つ3つの並列接続が、見られるが、しかしながら、「n」は、前記ガス分析装置が、一般に、3より多い並列な枝を有しうることを示し、各枝は、直列接続において3より多いガス分離器を有してもよい。
【0038】
この実施例における前記ガス注入口は、ガスサンプルG_Sがガス分離器GS1_1乃至GS3_nにガイドされる前に関心のある分子の濃度を増加するように構成された事前濃縮器PCNに接続される。特に、ガス分離器GS1_1乃至GS3_nのコーティングは、これらが、例えばそれぞれの化学的/物理的特性を持つGSの形式で、特定の範囲の分子を好むような形で調整されうる。最後に、ガス分離器の各シリーズの出力は、別の検出器DT1、DT2、DT3により測定される。前記VOCの分離と組み合わせられた検出器DT1、DT2、DT3のセンサの特定の応答の組み合わせは、診断されるべき疾患又は病気に対する関連した分析データをフィルタリングするように入力を提供する。このような処理は、前記ガス分析装置に含まれるプロセッサPRにより実行されてもよく、前記ガス分析からの最終結果は、この場合、通信モジュールCMからの出力データO_Dとして通信される。
【0039】
図3は、ガス分離器GS1_1乃至GS3_nが、時間とともに分離された、すなわち時間t、t+1、t+n-1に検出された、単一のガス分離器GS1_1乃至GS3_nからの応答を検出する1つの共通の検出器DTに接続される、すなわちガス分離器の並列な枝の各々に対して時間的に分離する点が異なる、
図2の実施例の代替的なバージョンを示す。図示された1つの事前濃縮器PCNの代替例として、各並列流は、独自の専用事前濃縮器を有してもよい。これは、(1)前記並列な枝における前記それぞれのガス分離器(例えばカラム)に対して前記事前濃縮器の特性を調整すること、及び(2)熱脱離により前記事前濃縮器において吸着された前記VOCを連続して解放することを可能にする。連続した熱脱離は、化合物を失うことなしに、異なる流路間での検出器DTの切り替えを容易にする。
【0040】
図4は、制御ユニットC_Uにより制御される弁を持つ実施例を示す。異なる特性を持つ複数のガス分離器、例えばGCの使用は、全システムの選択制を増加する。前記GCのいくつかのコーティングは、好ましくは、標的とされるバイオマーカが、存在する残りの化合物から最適に分離されるように選択される。しかしながら、前記残りの化合物は、前記GCの感受性コーティングを潜在的に損傷する可能性がある攻撃的な分子を含むかもしれない。したがって、
図4の実施例において、ガスサンプルG_S、例えば呼気は、事前濃縮器PCNにおいて事前濃縮される。この後に、前記ガス流は、第1のガス分離器GS1を通され、このガス分離器GS1の結果は、中間検出器DT1により監視される。(保持期間、イオン強度、及び場合により質量スペクトルを含む)中間検出器DT1の結果に基づいて、制御ユニットC_Uは、ガス分離器GS2とGS3との間の前記流路内の弁を閉じる又は開く。したがって、制御ユニット(C_U)は、第1の分離器(GS1)からの出力に応答して第2の分離器(GS3)に対するガスの流れを選択的に提供する又は提供しないように、第1の検出器(DT1)からの前記応答に応答して前記弁を開く又は閉じるように構成される。これにより、クロマトグラムの関心のある部分のみが、感受性ガス分離器GS3乃至GSnにフィードされることが、保証されることができる。全ての他の化合物は、ブロックされる及び/又は外側に放出される。これは、感受性ガス分離器GS3等の寿命を延ばす。制御ユニットC_Uは、ガスが分離器GS2を通る間に前記弁の開閉に関する決定を計算してもよい。別の検出器DT2は、前記弁の下流に配置され、ガス分離器GS2、GS3及びGSnからの出力を検出するように構成される。
【0041】
上に記載され、
図4に示される制御可能な弁の概念は、攻撃的な分子によるもの以外の理由に対して適用されてもよい。一般に、1以上の弁は、前記流路における第1のガス分離器を使用して前記サンプルの最初の第1の分析により制御されうる。この最初の第1のカラム及び検出に基づいて、例えば、これは、分析されることができ、この結果に基づいて、使用されたガスサンプルが、例えば呼吸から又は尿から生じるかどうかが、決定されることができる。前記ガスサンプルが、呼吸から生じると決定された場合、前記ガスサンプルは、1以上のガス分離器を介する1つの経路Aに前記弁を介してガイドされることができ、尿から生じることが決定される場合、前記弁は、他の経路B等に前記ガスサンプルをガイドするように制御されてもよい。
【0042】
前記流路内の弁を用いる原理が、
図1乃至3の実施例に示されるように、より多くの並列及び/又は直列ガス分離器ストリームにより拡張又は結合されることができると理解される。
【0043】
図5は、対象からの呼気の分析に対する方法の実施例のステップを示す。前記方法は、例えば前記対象から得られた呼気を持つガスバッグの形で、前記対象から得られた呼気のサンプルR_EBを受けるステップを有する。前記方法は、更に、前記サンプルを第1のガス分離器G_GS1に対する流路内にガイドし、前記ガスサンプルを第2のガス分離器G_GS2にガイドするステップを有する。前記第1及び第2のガス分離器は、それぞれ第1及び第2の分子選択性特性を持つように設計され、前記第1及び第2の分子選択性特性が、異なる。次のステップは、前記第1及び第2のガス分離器からの出力に対するそれぞれ第1及び第2の応答D_MLCを検出するステップであり、好ましくは、前記第1及び第2の応答によって1以上の事前選択された分子の存在又は不在を決定する。最終的に、出力は、前記分子の決定に応答して生成及び通信されるCM_MLC。
【0044】
前記方法が、このガス分析方法によって対象からの呼気を分析する結果に基づいて病気を診断するステップを有してもよいと理解される。前記方法は、更に、特定の治療、例えば結核の医学的治療を開始するステップを有してもよい。更に、呼気VOC分析は、肺がん、乳がん、他のタイプのがん、又は呼吸器感染の監視/分析に対して使用されてもよい。また、呼気分析は、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような病気の監視、例えば治療に対する応答、増悪監視に対して適用可能でありうる。更に、呼気分析は、更に、糖尿病における血糖値の監視に対して適用されてもよい。更に、応用例は、新生児の便に基づくガス分析に基づくVOC分析からの敗血症及び壊死性腸炎に対する監視でありうる。
【0045】
要約すると、本発明は、例えば対象からの呼気の医学的分析に適したガス分析装置を提供する。ガス注入口は、流路に対するガスサンプルを受け、異なるそれぞれの分子選択性特性を持つ2より多いガス分離器、例えばガスクロマトグラフィカラムに前記ガスサンプルをガイドする。センサを各々持つ1以上の検出器は、2以上のガス分離器からの出力に対してそれぞれの応答を生成するように構成される。通信モジュールは、前記1以上の検出器からのそれぞれの応答に応答して出力データ、例えば前記ガスサンプル内の分子を示すデータを生成する。例えば、1以上のガス分離器を各々有する複数の並列経路を持つ流路が、使用されてもよい。
【0046】
本発明は、図面及び先行する記載において詳細に図示及び記載されているが、このような図示及び記載は、限定的ではなく、例示的又は典型的であると見なされるべきであり、本発明は、開示された実施例に限定されない。開示された実施例に対する他の変形例は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、請求された発明を実施する当業者により理解及び達成されることができる。請求項において、単語「有する」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載された複数のアイテムの機能を満たしてもよい。特定の方策が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又は一部として提供される光記憶媒体又は半導体媒体のような適切な媒体に記憶/分配されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介するような、他の形で分配されてもよい。請求項内の参照符号は、範囲を限定するように解釈されるべきではない。