(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】カードリーダ
(51)【国際特許分類】
G06K 7/00 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G06K7/00 008
(21)【出願番号】P 2019009164
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】永井 芳浩
(72)【発明者】
【氏名】猪木 洋樹
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-128272(JP,A)
【文献】特開2009-111993(JP,A)
【文献】特開2006-339467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔によりなる開口部を備えた筐体と、
前記筐体に内包され、電磁的に情報が記録されたカードが備える情報を非接触にて読み取るカード読み取り機能を備えた制御回路と、
前記制御回路と電気的に接続して、前記開口部を通じて前記筐体外へ音が出るように前記筐体の中に設けられたスピーカーと、
前記開口部を覆う状態で前記筐体の外面に貼付けられたシートとを備え、
前記シートは、前記開口部より大きく形成されているとともに、前記筐体の外面に沿って延びる状態で端縁部において前記筐体に接着され、
前記シートと前記筐体との接触面は、前記筐体に接着された前記端縁部を含む接着部分と、前記接着部分と前記開口部との間に設けられた、所定の幅の非接着部とを含んでなることを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
請求項1記載のカードリーダにおいて、
前記貫通孔は、上下方向に延びる複数のスリットによって形成され、
前記複数のスリットは、水平方向に所定の間隔で並ぶように設けられていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項3】
請求項1記載のカードリーダにおいて、
前記シートを防水シートにより構成したことを特徴とするカードリーダ。
【請求項4】
請求項1記載のカードリーダにおいて、
前記シートを内包して前記筐体に組付けられるカバーを更に備え、
前記カバーには、前記カードの情報を読み取らせる際の操作位置を表示したことを特徴とするカードリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーの音が出る開口部を覆うシートを備えたカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば扉の施錠、解錠を行うためにカードリーダを使用することがある。この種のカードリーダが屋外に設置される場合には、雨水がカードリーダ内に浸入することを防ぐために、シール部材やシール剤などを用いて防水が図られる。近年のカードリーダは、内部のスピーカーの音を通すために開口部が形成されることがある。この開口部は、シール部材やシール剤で防水をすることができない。
【0003】
音を通すための穴の防水を行うためには、例えば特許文献1に記載されているような防水構造を採ることが考えられる。
特許文献1に開示されている防水構造は、音を通すための穴が形成された筐体に、この穴が覆われるようにシートを貼付けることによって構成されている。このシートは、空気は通すが水は通さないもので、たるんだ状態で穴の開口縁部に貼付けられている。このシートにたるみが付与されている理由は、シートがたるまずにシートに張力が掛かっていると、シートに音が伝播されることによってシートが共振し、音割れが生じるなど、音の歪みが大きくなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている防水構造では、シートをたるんだ状態で筐体に貼付ける必要があるために、シートの貼付工程が煩雑になるという問題があった。このため、この防水構造をカードリーダに採用すると、カードリーダの生産性が低くなる。
【0006】
本発明の目的は、音が通る開口部をシートで覆うにあたって、シートをたるませなくてもこのシートが共振することを抑えることが可能で、生産性が高いカードリーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係るカードリーダは、貫通孔によりなる開口部を備えた筐体と、前記筐体に内包され、電磁的に情報が記録されたカードが備える情報を非接触にて読み取るカード読み取り機能を備えた制御回路と、前記制御回路と電気的に接続して、前記開口部を通じて前記筐体外へ音が出るように前記筐体の中に設けられたスピーカーと、前記開口部を覆う状態で前記筐体の外面に貼付けられたシートとを備え、前記シートは、前記開口部より大きく形成されているとともに、前記筐体の外面に沿って延びる状態で端縁部において前記筐体に接着され、前記シートと前記筐体との接触面は、前記筐体に接着された前記端縁部を含む接着部分と、前記接着部分と前記開口部との間に設けられた、所定の幅の非接着部とを含んでなるものである。
【0008】
本発明は、前記カードリーダにおいて、前記貫通孔は、上下方向に延びる複数のスリットによって形成され、前記複数のスリットは、水平方向に所定の間隔で並ぶように設けられていてもよい。
【0009】
本発明は、前記カードリーダにおいて、前記シートが防水シートにより構成されていてもよい。
【0010】
本発明は、前記カードリーダにおいて、前記シートを内包して前記筐体に組付けられるカバーを更に備え、前記カバーには、前記カードの情報を読み取らせる際の操作位置が表示されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるカードリーダにおいて、筐体の開口部を通って音がシートに伝播されると、このシートは、開口部から非接着部の分だけ拡げられた範囲の内側で振動する。このようなシートは、非接着部が設けられていない場合と較べると、音が伝播されたときに共振し難くなる。このため、共振に起因する音割れや音の歪みの発生を抑えながら、シートを筐体の外面に沿って延びる状態で筐体に接着することができる。したがって、シートにたるみを付与する必要がなく、シートを筐体に簡単に貼付けることができるから、生産性が高いカードリーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るカードリーダの分解斜視図である。
【
図3】防水シートが振動するときの形状を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るカードリーダの一実施の形態を
図1~
図3を参照して詳細に説明する。
図1に示すカードリーダ1は、
図1の中央部に描かれている操作部2に蓋部3を組付けて構成された筐体4と、筐体4を前方から覆うカバー5と、筐体4に内包された制御回路6やスピーカー7などを備えている。このカードリーダ1は、図示していない建物や部屋の出入管理に用いられる非接触式のものである。詳述すると、このカードリーダ1は、会社のオフィス、電算室、研究室、工場や病院などの建屋の出入口に設置され、扉の施錠、解錠並びに入退室履歴の管理などを行うために使用される。
【0014】
また、このカードリーダ1は、屋外に設置することも可能である。以下において、カードリーダ1の構成を説明するうえで方向を示すにあたっては、カードリーダ1と向き合うようにカードリーダ1を見たときの方向を用いる。すなわち、設置状態にあるカードリーダ1に向き合った状態で鉛直方向の上側をカードリーダ1の上部とするともに、鉛直方向の下側をカードリーダ1の下部とする。また、このカードリーダ1に向き合った状態で右側をカードリーダ1の右側とし、カードリーダ1に向き合った状態で左側をカードリーダ1の左側とする。
【0015】
操作部2は、筐体4の一部となるように上下方向に延びる箱状に形成されている。この操作部2の後側の開口は、
図2に示すように、蓋部3が嵌合し、この蓋部3によって閉塞されている。蓋部3には、制御回路6とスピーカー7とが筐体4の中に収容されるように取付けられている。制御回路6は、電磁的に情報が記録されたカード8(
図1参照)が備える情報を非接触にて読み取るカード読み取り機能を備えている。スピーカー7は、制御回路6に接続されている。
操作部2と蓋部3を有する筐体4は、図示していない取付構造によってカードリーダ取付用の壁9に取付けられている。この筐体4が壁9に取付けられた状態で筐体4にカバー5が取付けられる。
カバー5は、操作部2を前方と、上方と、下方と、左方と、右方とから囲む箱状に形成されており、操作部2を収容した状態で図示していない係止構造によって操作部2に着脱可能に取付けられている。カバー5には、カード8の情報を読み取らせる際の操作位置10が表示されている。
【0016】
操作部2には、スピーカー7の音を通すために貫通孔11によりなる開口部12が形成されている。スピーカー7は、開口部12を通じて筐体4外へ音が出るように筐体4の中に設けられている。貫通孔11は、操作部2の操作面2a(前面)に開口し、筐体4の内外を連通するように操作部2を貫通している。この実施の形態による貫通孔11は、上下方向に延びる複数のスリット11aによって形成されている。これらの複数のスリット11aは、壁9に沿う水平方向(左右方向)に所定の間隔で並ぶように設けられている。
【0017】
操作部2の操作面2aには、開口部12を覆う状態で防水シート13が貼付けられている。この実施の形態においては、操作面2aが本発明でいう「筐体の外面」に相当する。
防水シート13は、空気は通すが水は通さないシートである。なお、図示してはいないが、防水シート13の代わりに、空気は通すが塵や埃などを通さない防塵シートを用いることもできる。
【0018】
防水シート13は、この実施の形態では円形に形成されている。この防水シート13の端縁部(外周部)が接着剤14によって操作部2の操作面2aに接着されている。接着剤14は、両面テープや、液体のものを用いることができる。
図1は、防水シート13の端縁部からなる接着部分15(
図2参照)の形状や大きさが分かり易いように、接着剤14を防水シート13や操作部2から離して描いてある。
【0019】
防水シート13の貼付けは、接着剤14が予め端縁部に貼付あるいは塗布された防水シート13を、接着剤14が操作面2aとの間に挟まれるように、操作部2の操作面2aに重ねて行う。このように防水シート13が操作面2aに重ねて貼付けられることにより、防水シート13が操作面2a(筐体の外面)に沿って延びる状態、言い換えば、たるむことなく平坦な状態となる。
【0020】
この防水シート13の外径は、複数のスリット11aからなる開口部12より大きい。このため、
図2に示すように、防水シート13の、操作部2に接着された端縁部からなる接着部分15と開口部12との間には、所定の幅の非接着部16が設けられている。すなわち、防水シート23と操作部2(筐体4)との接触面は、操作部2に接着された端縁部を含む接着部分15と、この接着部分15と開口部12との間に設けられた、所定の幅の非接着部16とを含んでいる。
【0021】
このように構成されたカードリーダ1の防水シート13は、操作部2内のスピーカー7の音が操作部2の貫通孔11を通って伝播されることにより振動し、音を筐体4の外に伝える。このとき防水シート13は、接着部分15より径方向の内側、言い換えれば、開口部12から非接着部16の分だけ径方向の外側に拡げられた範囲の内側で振動する。また、防水シート13は、スピーカー7から伝播された音の音圧で押されて伸びながら振動するようになる。ここで、この防水シート13がスピーカー7の音で振動するときの振幅を
図3を参照して説明する。
図3は、防水シート13が振動するときの断面形状を模式的に示す図で、防水シート13の変形量を見て判るように描いてある。
【0022】
防水シート13がスピーカー7の音で振動するときは、この防水シート13は最大幅A以下の振幅で振動する。最大幅Aは、この防水シート13の共振周波数をもつ限界幅B(共振により音割れが生じるような振幅)より小さい。このため、この実施の形態を採ることにより、共振が起こるまでの振幅に幅Cだけ余裕が生じ、音割れの発生を防止することができる。なお、この防水シート13は、接着部分15が貫通孔11の開口縁まで径方向の内側に狭められて非接着部16が設けられていない場合には、スピーカー7の音で振動して振幅が限界幅Dに達することがあるために、音割れが生じ易い。
【0023】
この実施の形態による防水シート13は、非接着部16が設けられていない場合と較べると、限界幅Bが最大幅Aより大きくなるために、音が伝播されたときに共振し難くなる。このため、共振に起因する音割れや音の歪みの発生を抑えながら、防水シート13を筐体4の外面に沿って延びる状態で筐体4に接着することができる。したがって、防水シート13にたるみを付与する必要がなく、防水シート13を筐体4に簡単に貼付けることができるから、生産性が高いカードリーダを提供することができる。
【0024】
この実施形態による貫通孔11は、上下方向に延びる複数のスリット11aによって形成されている。これらの複数のスリット11aは、水平方向に所定の間隔で並ぶように設けられている。このため、貫通孔11の総開口面積の設計上の自由度が高くなるから、防水シート13を共振しない大きさに形成するにあたって、音量とのバランスがとれた最適な大きさに形成することが可能になる。
【0025】
この実施の形態によるカードリーダ1は、屋外に設置されて雨に晒されることがある。このような場合、雨水の多くは、カバー5によって遮られてカードリーダ1内に浸入することはないが、一部の雨水がカバー5と壁9との間の隙間からカバー5内に浸入することがある。カバー5内に浸入した雨水の一部は、操作部2の操作面2a(前面)やその他の外面を伝って流れることがある。
操作面2aには防水シート13が貼付けられている。このため、カバー5の中に浸入した水が開口部12内に浸入するようなことがないから、防水性が高くなる。
【0026】
この実施の形態によるカバー5には、カード8の情報を読み取らせる際の操作位置10が表示されている。このため、使い勝手がよいカードリーダを提供することができる。
【0027】
(防水シートの変形例)
防水シートは
図4および
図5に示すように形成することができる。これらの図において、
図1~
図3によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
防水シート13は、他の部品との干渉を避けるために、形状や大きさを変えて形成することができる。例えば、防水シート13は、
図4に示すように正面視長方形状に形成したり、
図5に示すように、短辺が円弧となる長方形状に形成することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…カードリーダ、2…操作部、2a…操作面(筐体の外面)、4…筐体、6…制御回路、7…スピーカー、8…カード、10…操作位置、11…貫通孔、11a…スリット、12…開口部、13…防水シート(シート)、15…接着部分、16…非接着部。