(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20221220BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20221220BHJP
【FI】
F01N3/28 301V
F01N13/14
(21)【出願番号】P 2019012228
(22)【出願日】2019-01-28
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2018176491
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】柏▲瀬▼ 功二
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180354(JP,A)
【文献】特開2012-136845(JP,A)
【文献】特開2014-184832(JP,A)
【文献】特開2017-13690(JP,A)
【文献】特開2016-107959(JP,A)
【文献】特許第6391406(JP,B2)
【文献】特開2002-285835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
F01N 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動部に、エンジンと、そのエンジンのエキゾーストマニホールドに接続された排気ガス処理装置が備えられ、
前記排気ガス処理装置が、取付支持体を介して前記エンジンと一体の固定部に連結され、
前記取付支持体に、前記固定部に連結可能な取付部と、前記排気ガス処理装置を連結する連結部と、
が備えられ、
前記連結部に、前記取付部に対して脱着可能に連結される連結面部分と、前記排気ガス処理装置に対して連結固定される連結片部分と、が一連の板状体で形成された遮熱板部
が備えられ、
前記遮熱板部では、前記取付支持体に対する前記排気ガス処理装置の取り付け状態で、前記固定部と前記排気ガス処理装置との間における輻射熱の伝導を抑制する
ように前記固定部と前記排気ガス処理装置の間を遮蔽し、かつ、前記排気ガス処理装置の外周面と前記連結面部分との間に外気の流通が可能な空間が形成されている作業車。
【請求項2】
前記原動部が、走行装置に支持された機体フレームと、前記機体フレーム上の前部側に配設された運転部と、前記機体フレーム上で前記運転部の後方側に配設された荷台と、の間に設けられ、
前記排気ガス処理装置が長手方向を前後方向に沿わせて配設され、
前記空間の前後が開放されている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記原動部の前部に前記エンジンが配設され、前記エンジンの後方に変速装置が連設され、
前記排気ガス処理装置が前記エンジンから離れた後方位置で前記変速装置の上方に配置され、
前記取付支持体が前記変速装置に取り付けられている請求項1又は2記載の作業車。
【請求項4】
前記排気ガス処理装置が長手方向を前後方向に沿わせて配設され、
前記排気ガス処理装置の前端部と前記エキゾーストマニホールドが、前後方向に沿う排気導入管で接続され、
前記排気ガス処理装置の下半側に前記遮熱板部が対向する状態で、前記排気ガス処理装置の下部が、前記取付支持体に支持されている請求項1~3のいずれか一項記載の作業車。
【請求項5】
前記排気ガス処理装置が消音装置を備えたものである請求項1~4のいずれか一項記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関により構成されたエンジンと排気ガス処理装置を原動部に配設した作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車としては、下記[1]に記載の従来の技術が存在する。
[1]エンジンルーム内のエンジンの上方位置に搭載台フレームを設け、その搭載台フレームに排気ガス処理装置を支持させている。そして、搭載台フレームから斜め下方に向けて、排気ガス処理装置とエアクリーナとの間に位置する遮熱板を設けて、排気ガス処理装置からエアクリーナへの輻射熱の伝播を抑制するようにしたもの(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-177914号公報(段落番号「0047」,「0051」、
図18及び
図19参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載のものでは、排気ガス処理装置とエアクリーナとの間に遮熱板を設けているので、排気ガス処理装置からエアクリーナへの輻射熱の伝播を抑制し得る点で有用なものである。しかしながら、排気ガス処理装置を支持するための専用の搭載台フレームを備え、かつ搭載台フレームとは別に遮熱板も設けたものであるため、比較的大掛かりな構造となり易い、という問題がある。
【0005】
本発明は、排気ガス処理装置の支持構造の大型化を避けながら、排気ガス処理装置から他装置への熱影響を低減しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、本発明における作業車では、原動部に、エンジンと、そのエンジンのエキゾーストマニホールドに接続された排気ガス処理装置が備えられ、前記排気ガス処理装置が、取付支持体を介して前記エンジンと一体の固定部に連結され、前記取付支持体に、前記固定部に連結可能な取付部と、前記排気ガス処理装置を連結する連結部と、が備えられ、前記連結部に、前記取付部に対して脱着可能に連結される連結面部分と、前記排気ガス処理装置に対して連結固定される連結片部分と、が一連の板状体で形成された遮熱板部が備えられ、前記遮熱板部では、前記取付支持体に対する前記排気ガス処理装置の取り付け状態で、前記固定部と前記排気ガス処理装置との間における輻射熱の伝導を抑制するように前記固定部と前記排気ガス処理装置の間を遮蔽し、かつ、前記排気ガス処理装置の外周面と前記連結面部分との間に外気の流通が可能な空間が形成されている点に特徴がある。
【0007】
本発明によれば、排気ガス処理装置の取付支持体が、固定部に連結可能な取付部、及び排気ガス処理装置の連結部を備えるとともに、固定部と排気ガス処理装置との間における輻射熱の伝導を抑制する遮熱板部をも備えている。
このように排気ガス処理装置を支持するための取付支持体自身が遮熱板部を備えているので、取付支持体とは別に遮熱専用の部材を装着する必要がない。したがって、排気ガス処理装置から固定部側の他装置に対する熱影響を低減し得るものでありながらも、排気ガス処理装置の取り付け、及び他装置に対する遮熱を行うための構造を、比較的コンパクトに構成でき、また、別途、遮熱用の部材の組付け分解を行う必要もない。
これによって、取り付け及び遮熱のための構造体の大型化を回避できるとともに、組付け分解の工数を節減し得るものである。
【0008】
上記構成において、前記原動部が、走行装置に支持された機体フレームと、前記機体フレーム上の前部側に配設された運転部と、前記機体フレーム上で前記運転部の後方側に配設された荷台と、の間に設けられ、前記排気ガス処理装置が長手方向を前後方向に沿わせて配設され、前記空間の前後が開放されていると好適である。
【0009】
本構成によれば、遮熱用の部材を用いることによって、排気ガス処理装置をエンジン側の固定部から上方へ大きく離して設ける必要がなく、排気ガス処理装置を含む原動部の上下方向高さを比較的低く形成し易い。このため、機体フレーム上に荷台を備えていて、上下方向高さが低く制限された原動部を備える車両に対して適用し易いものである。
【0010】
上記構成において、前記原動部の前部に前記エンジンが配設され、前記エンジンの後方に変速装置が連設され、前記排気ガス処理装置が前記エンジンから離れた後方位置で前記変速装置の上方に配置され、前記取付支持体が前記変速装置に取り付けられていると好適である。
【0011】
本構成によれば、排気ガス処理装置がエンジンから離れた後方位置で、エンジンの後方に連設された変速装置の上方に配置されている。そして、取付支持体は変速装置に取り付けられている。
このように、排気ガス処理装置がエンジンから後方へ離れていることによりエンジンから排気ガス処理装置への熱伝達は行われ難く、排気ガス処理装置から変速装置へは、取付支持体に遮熱板部が備えられていることにより、変速装置側への熱影響は少なくて済む。
【0012】
上記構成において、前記排気ガス処理装置が長手方向を前後方向に沿わせて配設され、前記排気ガス処理装置の前端部と前記エキゾーストマニホールドが、前後方向に沿う排気導入管で接続され、前記排気ガス処理装置の下半側に前記遮熱板部が対向する状態で、前記排気ガス処理装置の下部が、前記取付支持体に支持されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、長手方向を前後方向に沿わせて配設された排気ガス処理装置の前端部とエキゾーストマニホールドが、前後方向に沿う排気導入管で接続されているので、エンジンの振動や機体の揺れ等による排気ガス処理装置の主として前後方向位置は、前後方向に沿う排気導入管自体の剛性を利用して制限し易い。そして、排気ガス処理装置の左右方向や上下方向での位置は、排気ガス処理装置の下部を支える取付支持体によって規制され、確実に支持される。
これにより、排気ガス処理装置が比較的長尺なものであっても、それに対応して取付支持体を前後方向に長く形成する必要なく、排気ガス処理装置を、前後左右及び上下方向で確実に位置規制した状態に支持し得る。
【0014】
上記構成において、前記排気ガス処理装置が消音装置を備えたものであると好適である。
【0015】
本構成によれば、消音装置を備えた排気ガス処理装置の支持を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用したユーティリティービークルの左側面図である。
【
図2】第一実施形態の原動部におけるエンジン、変速装置、及び排気ガス処理装置を示す左面図である。
【
図3】第一実施形態の原動部におけるエンジン、変速装置、及び排気ガス処理装置を示す平面図である。
【
図4】第一実施形態の原動部における変速装置、及び排気ガス処理装置を示す分解斜視図である。
【
図5】第一実施形態の取付支持体を示す斜視図である。
【
図6】第二実施形態の原動部におけるエンジン、変速装置、及び排気ガス処理装置を示す左面図である。
【
図7】第二実施形態の原動部における変速装置、及び排気ガス処理装置を示す分解斜視図である。
【
図8】第二実施形態の取付支持体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる作業車の実施形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用した作業車の作業走行時における前進側の進行方向(
図1,2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図1,2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図3における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図3における矢印L参照)が「左」である。
【0018】
〔全体構成〕
ここでは、本発明を作業車の一例であるユーテリティービークル(多目的車両に相当する)に適用した場合について説明する。
図1、
図2に示すように、ユーテリティービークルは、走行機体の骨組みを形成する機体フレーム1の前部に操向操作可能な左右一対の前車輪1F(走行装置に相当する)を備え、機体フレーム1の後部には操向不能な左右一対の後車輪1R(走行装置に相当する)が支持されている。
走行機体の前後方向での中央部で機体フレーム1の上方側には運転部10が備えられている。走行機体の後部で機体フレーム1の上方側に荷台2備え、この荷台2の下方位置に原動部3が備えられている。
【0019】
前車輪1F及び後車輪1Rには、後述する原動部3に備えたエンジン4や変速装置5から駆動力が伝達可能に構成されている。これによって、ユーテリティービークルは、四輪駆動走行式の四輪駆動車に構成され、農作業や運搬作業等の多目的の作業に使用される。
前記運転部10を取り囲む位置には、運転部10を保護するロプスフレーム11が備えられている。
【0020】
前記荷台2は、その後端寄りの位置における左右方向の横軸芯x1を中心にして前端側を上昇させることにより、積載物をダンプ式に排出できる機能を有するものであり、機体フレーム1に前記横軸心x1回りで揺動自在に支持されている。また、荷台2の前端側を昇降作動させる油圧式のアクチュエータ(図示せず)が備えられている。
【0021】
前記運転部10には、運転者が着座するための運転座席12、前車輪1Fを操向制御するステアリングホイール13、及び各種の操縦操作具が設けられている。
運転座席12に隣接して助手席が配置されている。この運転座席12の下側に相当する座席下空間には、後述するディーゼルエンジン4の冷却用ファン43で冷却される位置に配設したオイルクーラ(図示せず)や、そのオイルクーラに外気を導入するための風路、及び、及びバッテリ装置(図示せず)等が配設されている。
【0022】
〔原動部の構造〕
図2乃至
図4に示すように、原動部3には、内燃機関である水冷式のディーゼルエンジン4(以下、単にエンジンと略称する)と、このエンジン4に固定された変速装置5(エンジンと一体の固定部に相当する)と、が備えられている。エンジン4を水冷するためのラジエータ(図示せず)は、機体前部のフロントボンネット14の内部に配設されている。
上記のエンジン4及び変速装置5を含む原動部3が、機体フレーム1と、その機体フレーム上で運転部10の後方側に配設された荷台2と、の間に形成されている。
変速装置5は、ギヤ変速装置(図示せず)を内装するミッションケース50と、静油圧式無段変速装置51と、を備えている。ミッションケース50がエンジン4の後方に連結固定され、静油圧式無段変速装置51がミッションケース50の後方に連結固定されている。
【0023】
エンジン4は機体前後方向に沿うクランク軸(図外)を備えていて、エンジン本体40の前方へ突出する前部出力軸41から、ファンベルト42を介して冷却用ファン43、及びオルタネータ44に動力伝達を行うように構成されている。冷却用ファン43、は、外気を導入して前記オイルクーラ、及び後方位置するエンジン4の上部空間に滞留する熱気を後方へ送り出すとともに、送風した外気を後述する排気ガス処理装置30に接触させて空冷するためのものである。
【0024】
エンジン4の後部から後方へ延出された出力軸(図外)からは、走行系及び作業係への動力伝達が行われる。つまり、エンジン4からの出力は、図示はしないが、変速装置5における主変速装置としての静油圧式無段変速装置51で変速され、副変速装置としてのギヤ変速装置でさらに変速された後、ミッションケース50から左右両側へ突出させた後車軸52を介して左右の後車輪1R,1Rに動力伝達される。前車輪1F,1Fへは、ミッションケース50の下部から前方へ向けて延出された伝動軸53を介して動力伝達される。
【0025】
以上が、本発明にかかる共通の実施形態であり、以下に、排気ガス処理装置30の支持構造に関して、第一実施形態と第二実施形態を示す。
まず、第一実施形態について説明する。
〔第一実施形態の排気ガス処理装置〕
図2、
図3に示すように、原動部3には、エンジン4の排気ガスを浄化する排気ガス処理装置30が備えられている。この排気ガス処理装置30は、排気ガス中に含まれるカーボンを主成分とする粒子状物質を捕集して除去するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を用いて構成されている。
この排気ガス処理装置30は、捕集した粒子状物質が堆積することによる捕集機能の低下を防止するために、捕集した粒子状物質を加熱して燃焼除去する再生処理を行うように構成されている。その結果、エンジン4の回転数の高低にかかわらず、再生処理時において排出される排気ガスの温度が一般的なエンジンの排気に比べて高温になっている。
【0026】
排気ガス処理装置30は、
図2乃至
図5に示すように、取付支持体6を介して、エンジン4と一体の固定部であるところの変速装置5に取り付けられている。
取付支持体6は、排気ガス処理装置30がエンジン4から離れた後方に位置するように、ミッションケース50の上部に取り付けられている。この取付支持体6に対する取付状態で、排気ガス処理装置30の前端部30aが、排気導入管31に接続されている。排気導入管31の前端部は、エンジン4のエキゾーストマニホールド45に接続されている。
この取付状態で、排気ガス処理装置30は長手方向を前後方向に沿わせた姿勢であり、排気導入管31も管長手方向がほぼ前後方向に沿う姿勢で配設されている。
【0027】
取付支持体6は、ミッションケース50の左側上部に対してボルト連結可能な取付部60と、その取付部60に対して脱着可能で、排気ガス処理装置30に固定された連結部61と、を備えている。
【0028】
取付部60は、平面視で前後両端部分が横外方へ突出する屈曲したチャンネル状の下部板62と、その下部板62の上端縁に交差する平坦面部63Aを備えた上部板63と、の組み合わせで構成され、下部板62の上端縁に対して上部板63の平坦面部63Aが溶接固定されている。
そして、下部板62には、ミッションケース50の左側面に形成されている前後一対の下部ねじ穴54,54に螺合する連結用ボルト64を挿通可能な、前後一対の第一ボルト挿通孔62a,62aが形成されている。この第一ボルト挿通孔62a,62a同士、及び前記下部ねじ穴54,54同士は、前後方向で距離L1だけ離れた二箇所に形成されている。
上部板63には、平坦面部63Aの外周端部のうち、ミッションケース50の左側面に近い側の端部に上方への起立片部63Bが形成されている。その起立片部63Bには、ミッションケース50の左側面に形成された前記下部ねじ穴54よりも高い位置に形成された上部ねじ穴55に螺合する連結用ボルト64を挿通可能な第二ボルト挿通孔63aが形成されている。この第二ボルト挿通孔63a及び前記上部ねじ穴55は、第一ボルト挿通孔62a、及び前記下部ねじ穴54よりも、上下方向高さH1だけ高い位置に形成されている。
また、第二ボルト挿通孔63a及び上部ねじ穴55は、左右方向でも、第一ボルト挿通孔62a及び下部ねじ穴54よりも、左右幅W1だけミッションケース50の左右方向中心側へ偏倚している。
【0029】
連結部61は、取付部60の平坦面部に対向する平板部分61A
(連結面部分に相当する)と、円筒状の排気ガス処理装置30の下半側に対向する位置で、上方側ほど左右方幅が広くなる上拡がりの傾斜板部分61B
(連結片部分に相当する)と、を備えた略V字状に形成されている。
平板部分61Aに備えた溶接ナット65は、取付部60の平坦面部63Aに備えた、前後方向が長径である長孔状の連結孔63b(
図4及び
図5参照)に対向する位置にあり、長孔状の連結孔63bに下方側から挿通した連結ボルト66を介して、連結及び連結解除可能に構成されている。
連結部61の上拡がりの傾斜板部分61Bの上端縁61Cは、円筒状の排気ガス処理装置30の下半側に溶接固定されている。
【0030】
上記のように、円筒状の排気ガス処理装置30の下半側に対向する位置に設けられた連結部61は、円筒状の排気ガス処理装置30の下半側を覆い、かつ、排気ガス処理装置30の外周面とミッションケース50の外面との間に外気の流通が可能な空間S1を形成している。
これによって、連結部61の平板部分61Aと上拡がりの傾斜板部分61Bは、取付支持体6の連結部61としての役割を果たすとともに、ミッションケース50と排気ガス処理装置30の間における輻射熱の伝導を抑制する遮熱板部67としても機能している。
【0031】
次に、
図6乃至
図8に基づいて第二実施形態を説明する。
〔第二実施形態の排気ガス処理装置〕
原動部3には、エンジン4の排気ガスの排出経路途中に排気ガス処理装置30が備えられている。この排気ガス処理装置30は、排気ガスの排出音を低減させるための消音室を備えた消音装置(マフラー)を用いて構成されている。
このように排気ガス処理装置30として消音装置を用いた構造のものでは、エンジン4がディーゼルエンジンであるものに限らず、ガソリンエンジンを用いた場合にも同じ構造を採用することができる。
【0032】
排気ガス処理装置30は、
図6乃至
図8に示すように、取付支持体6を介して、エンジン4と一体の固定部であるところの変速装置5に取り付けられている。
取付支持体6は、排気ガス処理装置30がエンジン4から離れた後方に位置するように、ミッションケース50の上部に取り付けられている。この取付支持体6に対する取付状態で、排気ガス処理装置30の前端部30aが、排気導入管31に接続されている。排気導入管31の前端部は、エンジン4のエキゾーストマニホールド45に接続されている。
この取付状態で、排気ガス処理装置30は長手方向を前後方向に沿わせた姿勢であり、排気導入管31も管長手方向がほぼ前後方向に沿う姿勢で配設されている。
【0033】
取付支持体6は、ミッションケース50の左側上部に対してボルト連結可能な取付部60と、その取付部60に対して脱着可能で、排気ガス処理装置30に固定された連結部61と、を備えている。
【0034】
取付部60は、平面視で、前後方向に沿う縦壁部分の前端部分が横外方へ向けて突出するように屈曲された下部板62と、その下部板62の上端縁に交差する平坦面部63Aを備えた上部板63と、の組み合わせで構成され、下部板62の上端縁に対して上部板63の平坦面部63Aが溶接固定されている。
そして、下部板62には、ミッションケース50の左側面に形成されている前後一対の下部ねじ穴54,54に螺合する連結用ボルト64を挿通可能な、前後一対の第一ボルト挿通孔62a,62aが形成されている。この第一ボルト挿通孔62a,62a同士、及び前記下部ねじ穴54,54同士は、前後方向で距離L1だけ離れた二箇所に形成されている。この第二実施形態においては、前記下部ねじ穴54,54同士や、前記第一ボルト挿通孔62a,62a同士の前後方向での距離L1が、第一実施形態で示した構造の取付部60における第一ボルト挿通孔62a,62a同士の前後方向での距離L1に比べて短く形成されている。
【0035】
上部板63には、平坦面部63Aの外周端部のうち、ミッションケース50の左側面に近い側の端部に上方への起立片部63Bが形成されている。その起立片部63Bには、ミッションケース50の左側面に形成された前記下部ねじ穴54よりも高い位置に形成された上部ねじ穴55に螺合する連結用ボルト64を挿通可能な第二ボルト挿通孔63aが形成されている。この第二ボルト挿通孔63a及び前記上部ねじ穴55は、第一ボルト挿通孔62a、及び前記下部ねじ穴54よりも、上下方向高さH1だけ高い位置に形成されている。
また、第二ボルト挿通孔63a及び上部ねじ穴55は、左右方向でも、第一ボルト挿通孔62a及び下部ねじ穴54よりも、左右幅W1だけミッションケース50の左右方向中心側へ偏倚している。
【0036】
連結部61は、取付部60の平坦面部に対向する平板部分61Aと、円筒状の排気ガス処理装置30の下半側に対向する位置で、上方側ほど左右方幅が広くなる上拡がりの傾斜板部分61Bと、を備えた略V字状に形成されている。
平板部分61Aに備えた溶接ナット65は、取付部60の平坦面部63Aに備えた、左右方向が長径である長孔状の連結孔63b(
図7参照)に対向する位置にあり、長孔状の連結孔63bに下方側から挿通した連結ボルト66を介して、連結及び連結解除可能に構成されている。
連結部61の上拡がりの傾斜板部分61Bの上端縁61Cは、円筒状の排気ガス処理装置30の下半側に溶接固定されている。
【0037】
上記のように、円筒状の排気ガス処理装置30の下半側に対向する位置に設けられた連結部61は、円筒状の排気ガス処理装置30の下半側を覆い、かつ、排気ガス処理装置30の外周面とミッションケース50の外面との間に外気の流通が可能な空間S1を形成している。
これによって、連結部61の平板部分61Aと上拡がりの傾斜板部分61Bは、取付支持体6の連結部61としての役割を果たすとともに、ミッションケース50と排気ガス処理装置30の間における輻射熱の伝導を抑制する遮熱板部67としても機能している。
【0038】
〔別実施形態の1〕
上記の実施形態では、取付支持体6の取り付け対象となる、エンジン4と一体の固定部として、変速装置5のミッションケース50を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、変速装置5の静油圧式無段変速装置51であったり、その他のエンジン補機であったり、エンジン4そのものであったりしても差し支えない。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0039】
〔別実施形態の2〕
上記の実施形態では、取付支持体6として、取付部60と、その取付部60に対して脱着可能な連結部61と、で構成された構造のものを例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、取付部60と連結部61が一体に構成されたものであっても差し支えない。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0040】
〔別実施形態の3〕
上記の実施形態では、取付支持体6が、機体フレーム1と、機体フレーム1上の前部側に配設された運転部10と、機体フレーム1上で運転部の後方側に配設された荷台2と、の間に設けられた原動部3で用いられた構造のものを例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、荷台2による高さ制限や、運転部10による前後方向での配設位置の制限がない箇所で用いることも可能である。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0041】
〔別実施形態の4〕
上記の実施形態では、走行装置として、前車輪1F及び後車輪1Rを備えた構造のものを例示したが、この構造に限られるものではなく、例えば、前車輪1Fもしくは後車輪1Rの何れか一方に代えてクローラ走行装置を採用する、もしくは、前車輪1F及び後車輪1Rに代えてクローラ走行装置を用いたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ユーティリティービークルに限られるものではなく、芝刈り機や運搬車、あるいは農作業機などの、各種の作業車に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 機体フレーム
1F 前車輪(走行装置)
1R 後車輪(走行装置)
2 荷台
3 原動部
5 変速装置
4 エンジン
6 取付支持体
10 運転部
30 排気ガス処理装置
31 排気導入管
45 エキゾーストマニホールド
60 取付部
61 連結部
67 遮熱板部