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特許7197388クラッチ機構、駆動力伝達機構、およびロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】クラッチ機構、駆動力伝達機構、およびロボット
(51)【国際特許分類】
   F16D 7/04 20060101AFI20221220BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20221220BHJP
   F16D 11/00 20060101ALI20221220BHJP
   F16D 11/04 20060101ALI20221220BHJP
   F16D 43/202 20060101ALI20221220BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
F16D7/04 A
B25J17/00 Z
F16D11/00 A
F16D11/04 Z
F16D43/202
F16H1/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019013827
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020122509
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 清康
(72)【発明者】
【氏名】ファヤー ティエン
(72)【発明者】
【氏名】小菅 啓之
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-53827(JP,U)
【文献】特開昭61-175321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 7/04
F16D 11/00
F16D 43/20
F16H 35/10
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸と、前記出力軸に同軸に固定された円環状の第1クラッチ部材と、前記出力軸と同軸に配置され前記第1クラッチ部材を外周側から囲む円筒状の第2クラッチ部材と、前記第2クラッチ部材から前記第1クラッチ部材に向けて付勢する付勢部材とを有する駆動力伝達機構であって、
前記第1クラッチ部材は、前記第2クラッチ部材と対向する第1対向面に径方向に延びる突部を有し、前記第1対向面は、径方向内側から径方向外側に向かって前記第2クラッチ部材から離間する方向に傾斜し、
前記第2クラッチ部材は、前記第1クラッチ部材と対向する第2対向面に前記径方向に延びる溝部を有し、前記第2対向面は、径方向内側から径方向外側に向かって前記第1クラッチ部材に接近する方向に傾斜し、
前記第1クラッチ部材の前記突部と前記第2クラッチ部の前記溝部は係合により前記第2クラッチ部材から前記第1のクラッチ部材へ回転が伝達される、
前記第2クラッチ部材は、前記出力軸の周りに回転しかつ軸方向に移動可能に支持され、円筒の外周面には歯部を有し、この歯部により駆動源の駆動力が伝達される、駆動力伝達機構。
【請求項2】
前記突部および前記溝部は、径方向内側から径方向外側に向かって周方向の幅が広くなることを特徴とする請求項1に記載の駆動力伝達機構。
【請求項3】
前記第1対向面の傾斜角度および前記第2対向面の傾斜角度は、5°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動力伝達機構。
【請求項4】
前記第1クラッチ部材および第2クラッチ部材は、金属製であることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の駆動力伝達機構。
【請求項5】
請求項4に記載の駆動力伝達機構と、
前記駆動源と、
前記出力軸に接続されたアーム部と、
前記駆動源および伝達歯車を備え、前記アーム部を旋回可能に支持する支持部と、
を備えることを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ機構、駆動力伝達機構、およびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動力伝達機構の途中に配置されるクラッチ機構は、特許文献1に記載されている。同文献のクラッチ機構は、出力軸の外周部に回転自在且つ軸方向移動可能に支持された入力ディスクと、出力軸の外周部に固定された出力ディスクと、入力ディスクを出力ディスクに押し付ける付勢部材とを備える。入力ディスクの出力ディスク側の面と、出力ディスクの入力ディスク側の面との各面には、他方の面に対し重なり合うとともに軸方向へ嵌脱可能な歯部が設けられている。歯部は、径方向へ連続する凹部と凸部を周方向へ交互に配設してなる。凹部と凸部の各々は、同じ高さに維持されたまま径外方向に延びる。入力ディスクの出力ディスク側の面と、出力ディスクの入力ディスク側の面との各面は、軸線と垂直な面である。従って、凹部と凸部の各々は、軸線と直交する方向に延びる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/002464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クラッチ機構を介して伝達するトルクが大きくなると、入力ディスクや出力ディスクに設けた突部にかかる負荷が大きくなる。従って、クラッチ機構には、突部にかかる許容荷重を大きくすることが要求されている。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、クラッチ部材に設けた突部の許容荷重を大きくすることができるクラッチ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動力伝達機構は、出力軸と、出力軸に同軸に固定された円環状の第1クラッチ部材と、出力軸と同軸に配置され第1クラッチ部材を外周側から囲む円筒状の第2クラッチ部材と、第2クラッチ部材から第1クラッチ部材に向けて付勢する付勢部材とを有する。第1クラッチ部材は、第2クラッチ部材と対向する第1対向面に径方向に延びる突部を有し、第1対向面は、径方向内側から径方向外側に向かって第2クラッチ部材から離間する方向に傾斜している。第2クラッチ部材は、第1クラッチ部材と対向する第2対向面に径方向に延びる溝部を有し、第2対向面は、径方向内側から径方向外側に向かって第1クラッチ部材に接近する方向に傾斜している。第1クラッチ部材の突部と第2クラッチ部の溝部は係合により第2クラッチ部材から第1のクラッチ部材へ回転が伝達される。第2クラッチ部材は、出力軸の周りに回転しかつ軸方向に移動可能に支持され、円筒の外周面には歯部を有し、この歯部により駆動源の駆動力が伝達される。

【発明の効果】
【0007】
本発明では、第1クラッチ部材の第1対向面と第2クラッチ部材の第2対向面とが互いに同一方向に傾斜するテーパー面である。また、突部が第1対向面に沿って傾斜し、溝部が第2対向面に沿って傾斜する。従って、突部と溝部とが軸線方向と直交する方向に延びる場合と比較して、突部と溝部とが係合する噛み合わせ距離を長くできる。これにより、突部にかかる負荷を分散させることができるので、第1クラッチ部材に設けた突部の許容荷重が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、クラッチ機構を介して駆動力を伝達する駆動力伝達機構の断面図である。
図2図2は、第1クラッチ部材の斜視図である。
図3図3は、第1クラッチ部材の断面図である。
図4図4は、第2クラッチ部材の斜視図である。
図5図5は、第2クラッチ部材の断面図である。
図6図6は、クラッチ機構による駆動力の伝達が解除された駆動力伝達機構の断面図である。
図7図7は、駆動力伝達機構を備えるロボットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したクラッチ機構および駆動力伝達機構の実施形態を説明する。
【0010】
図1は、クラッチ機構を介して駆動力を伝達する駆動力伝達機構の断面図である。図2は、第1クラッチ部材の斜視図である。図3は、第1クラッチ部材の断面図である。図4は、第2クラッチ部材の斜視図である。図5は、第2クラッチ部材の断面図である。
【0011】
図1に示すように、駆動力伝達機構1は、駆動源2からの駆動力が伝達される伝達歯車3と、クラッチ機構4と、伝達歯車3の駆動力がクラッチ機構4を介して伝達される出力軸5と、を備える。出力軸5には出力部材6が固定されている。
【0012】
伝達歯車3は、平歯車であり、外周面に歯部3aを備える。出力軸5は、大径部7と、大径部7と同軸で大径部7よりも外径寸法の小さい小径部8と、を備える。大径部7は、小径部8の側を向く環状面7aを備える。大径部7における小径部8とは反対側の端面7bには、出力部材6を接続するためのねじ穴9が設けられている。出力部材6は、ねじ穴9に捩じ込まれるボルト10によって出力軸5に固定される。以下の説明では、出力軸5の軸線Lに沿った方向を軸線方向Xとする。また、軸線方向Xの一方を第1方向X1、他方を第2方向X2とする。第1方向X1は、出力軸5において小径部8が位置する側であり、第2方向X2は、大径部7が位置する側である。
【0013】
クラッチ機構4は、同軸に配置された第1クラッチ部材11および第2クラッチ部材12を有する。第1クラッチ部材11は、第2クラッチ部材12の第1方向X1に位置する。第1クラッチ部材11および第2クラッチ部材12は金属製である。本例において、第1クラッチ部材11および第2クラッチ部材12は、金属粉末を金型に押し込んで焼結成形する。或いは、第1クラッチ部材11および第2クラッチ部材12は、樹脂と金属の混合物を金型に流し込んで熱処理して成形する。また、クラッチ機構4は、コイルバネ13を備える。コイルバネ13は、第2クラッチ部材12を第1クラッチ部材11に向けて付勢する付勢部材である。
【0014】
図2に示すように、第1クラッチ部材11は、軸線Lを囲む円環状の部材である。第1クラッチ部材11は、軸線方向Xから見た場合の輪郭形状が円形である。図1に示すように、第1クラッチ部材11の中心穴11aには、出力軸5の小径部8が貫通する。第1クラッチ部材11は、小径部8の第1方向X1の端部分に固定されている。
【0015】
第1クラッチ部材11は、第2クラッチ部材12と対向する第1対向面15を備える。図3に示すように、第1対向面15は、径方向内側から径方向外側に向かって軸線方向Xの同一方向に傾斜するテーパー面である。本例では、第1対向面15は、径方向内側から径方向外側に向かって第2クラッチ部材12から離間する第1方向X1に傾斜する。第1
対向面15の傾斜角度θ1は、2°である。すなわち、第1対向面15は、半径方向において、軸線Lと垂直な仮想面S1に対して2°傾斜する。
【0016】
また、第1クラッチ部材11は、第1対向面15に径方向に延びる突部16を備える。突部16は、軸線L回りの周方向に等間隔で複数本設けられている。複数本の突部16は放射状に延びる。従って、第1対向面15における突部16と突部16との間は、溝部17となっている。突部16と溝部17とは周方向で交互に設けられる。
【0017】
各突部16は、軸線方向Xの高さ寸法H1が一定で、第1対向面15に沿って延びる。従って、各突部16の先端(第2方向X2の端)は、径方向内側から径方向外側に向かって第1方向X1に傾斜する。各突部16の先端は、周方向の中央が周方向の両端よりも第2方向X2に突出する曲面である。各溝部17の底は、周方向の中央が周方向の両端よりも第1方向X1に窪む曲面である。各突部16は、径方向内側から径方向外側に向かって周方向の幅が広くなる。
【0018】
図4に示すように、第2クラッチ部材12は、軸線Lを囲む円環状の部材である。図1に示すように、第2クラッチ部材12の中心穴12aには、出力軸5の小径部8が貫通する。第2クラッチ部材12は、軸線L回りに回転可能、かつ、軸線方向Xに移動可能な状態で、出力軸5(小径部8)に支持される。これにより、第1クラッチ部材11と第2クラッチ部材12とは、軸線方向Xに相対移動可能な状態で同軸に配置されている。
【0019】
第2クラッチ部材12は、軸線方向Xから見た場合の輪郭が第1クラッチ部材11の輪郭と重なる円形のクラッチ部21と、クラッチ部21を外周側から囲む円筒部22と、円筒部22の外周面に設けられた歯部23と、を備える。
【0020】
図5に示すように、クラッチ部21における第1クラッチ部材11の側の面、すなわち、第2クラッチ部材12において、第1クラッチ部材11と対向する第2対向面25は、径方向内側から径方向外側に向かって傾斜するテーパー面である。第2対向面25と第1対向面15とは、軸線方向Xの同一方向に傾斜する。従って、第2対向面25は、径方向内側から径方向外側に向かって第1クラッチ部材11に接近する第1方向X1に傾斜する。第2対向面25の傾斜角度θ2は、第1対向面15の傾斜角度θ1と同一である。すなわち、第2対向面25は、半径方向において、軸線Lと垂直な仮想面S2に対して2°傾斜する。
【0021】
また、第2クラッチ部材12は、第2対向面25に径方向に延びる溝部26を備える。溝部26は、軸線L回りの周方向に等間隔で複数本設けられている。複数本の溝部26は放射状に延びる。従って、第2対向面25における溝部26と溝部26との間は、突部27となっている。溝部26と突部27とは、周方向で交互に設けられる。周方向において溝部26が形成されたピッチは、第1クラッチ部材11の第1対向面15において、周方向で突部16が形成されたピッチと同一である。
【0022】
各溝部26は、軸線方向Xの深さ寸法H2が一定で、第2対向面25に沿って延びる。従って、各溝部26の底(第2方向X2の端)は、径方向内側から径方向外側に向かって第1方向X1に傾斜する。各溝部26の底は、周方向の中央が周方向の両端よりも第2方向X2に窪む曲面である。各突部27の先端は、周方向の中央が周方向の両端よりも第1方向X1に突出する曲面である。各溝部26は、径方向内側から径方向外側に向かって周方向の幅が広くなる。
【0023】
円筒部22は、第2対向面25よりも第1クラッチ部材11の側に突出する突出部分22aを備える。図1に示すように、突出部分22aの内側には、第1クラッチ部材11が
挿入される。歯部23は、円筒部22の外周面の第1方向X1の端から第2方向X2の端まで延びる。歯部23は、伝達歯車3と噛み合う。
【0024】
コイルバネ13は、出力軸5の小径部8を囲んで当該小径部8の外周側に配置される。また、コイルバネ13は、出力軸5の大径部7の環状面7aと第2クラッチ部材12との間に、圧縮された状態で、配置される。従って、コイルバネ13は、第2クラッチ部材12を、第1クラッチ部材11に向かう第1方向X1に付勢する。
【0025】
コイルバネ13によって第2クラッチ部材12が第1クラッチ部材11に付勢された状態では、第1クラッチ部材11の突部16と第2クラッチ部材12の溝部26とが係合する。クラッチ機構4は、突部16と溝部26との係合により第1クラッチ部材11と第2クラッチ部材12との間で軸線L回りの回転を伝達する。
【0026】
(駆動力伝達機構の動作)
図1に示すように、駆動力伝達機構1は、初期状態では、第1クラッチ部材11の突部16と第2クラッチ部材12の溝部26とが係合している。この状態で、駆動源2からの駆動力が伝達歯車3に伝達されると、伝達歯車3が回転する。これにより、伝達歯車3と噛み合う第2クラッチ部材12が回転する。また、第2クラッチ部材12の回転は、第1クラッチ部材11に伝達される。第1クラッチ部材11が回転すると、第1クラッチ部材11と一体に出力軸5が回転する。従って、出力軸5に接続された出力部材6は、軸線L回りに旋回する。すなわち、駆動源2からの駆動力は、駆動力伝達機構1を介して、出力部材6に伝達される。
【0027】
ここで、駆動源2の駆動によって伝達歯車3が回転しているにも関わらず、外力などによって出力部材6の旋回が阻止された場合には、クラッチ機構4に負荷がかかる。
【0028】
クラッチ機構4にかかる負荷が所定のトルクを超える場合には、第1クラッチ部材11と第2クラッチ部材12とが相対回転を開始する。この結果、図6に示すように、第2クラッチ部材12がコイルバネ13の付勢力に抗して第2方向X2に移動して、第1クラッチ部材11の突部16と第2クラッチ部材12の溝部26との係合が解除される。これにより、第1クラッチ部材11と第2クラッチ部材12との間の回転の伝達が解除されるので、駆動力伝達機構1を介した駆動力の伝達が遮断される。なお、第2クラッチ部材12が第2方向X2に移動して第1クラッチ部材11の突部16と第2クラッチ部材12の溝部26との係合が解除された状態でも、第2クラッチ部材12の歯部23と伝達歯車3との噛み合わせが外れることはない。
【0029】
その後、クラッチ機構4にかかる負荷が低減すると、第2クラッチ部材12がコイルバネ13の付勢力により第1方向X1に移動する。これにより、第1クラッチ部材11の突部16と第2クラッチ部材12の溝部26とが係合して図1に示す状態となる。第1クラッチ部材11の突部16と第2クラッチ部材12の溝部26とが係合すると、駆動源2からの駆動力は、再び、駆動力伝達機構1を介して、出力部材6に伝達される。
【0030】
(作用効果)
本発明では、第1クラッチ部材11の第1対向面15と第2クラッチ部材12の第2対向面25とが互いに同一方向に傾斜するテーパー面である。また、第1クラッチ部材11の突部16が第1対向面15に沿って傾斜し、第2クラッチ部材12の溝部26が第2対向面25に沿って傾斜する。従って、突部16と溝部26とが軸線方向Xと直交する方向に延びる場合と比較して、突部16と溝部26とが係合する噛み合わせ距離を長くできる。これにより、突部16にかかる負荷を分散させることができるので、第1クラッチ部材11に設けた突部16の許容荷重が大きくなる。
【0031】
また、突部16と溝部26とが係合する噛み合わせ距離を長くできるので、第1クラッチ部材11と第2クラッチ部材12との間でトルクを伝達する際に、突部16と溝部26とが軸線方向Xと直交する方向に延びる場合と比較して、突部16の高さおよび溝部26の深さを短くできる。すなわち、突部16と溝部26とが係合する噛み合わせ距離を長くなった分、突部16の高さおよび溝部26の深さを短くしても、同一のトルクを伝達できる。
【0032】
また、突部16が傾斜しているので、軸線方向Xから第1クラッチ部材11と第2クラッチ部材12とを噛み合わせる際に、突部16を溝部26に挿入しやすい。従って、クラッチ機構4の組み立てが容易である。
【0033】
さらに、第1対向面15および第2対向面25が互いに同一方向に傾斜するテーパー面なので、第1クラッチ部材11と第2クラッチ部材12とを噛み合わせたときに、第1クラッチ部材11と第2クラッチ部材12とを同軸に位置させることが容易である。
【0034】
また、突部16および溝部26は、径方向内側から径方向外側に向かって周方向の幅が広くなる。従って、回転の伝達時、および、回転の伝達解除時に、突部16の外周側部分の損傷を防止或いは抑制できる。
【0035】
さらに、第1クラッチ部材11および第2クラッチ部材12は、金属製である。従って、第1クラッチ部材11および第2クラッチ部材12の強度を確保することが容易である。ここで、第1クラッチ部材11では第1対向面15および突部16が傾斜している。従って、第1対向面15および突部16が軸線Lと直交する方向に延びる場合と比較して、成形時に金型から第1クラッチ部材11を離脱させることが容易である。よって、第1クラッチ部材11の製造が容易となる。また、第2クラッチ部材12では、第2対向面25および溝部26が傾斜している。従って、第2対向面25および溝部26が軸線Lと直交する方向に延びる場合と比較して、成形時に、金型から第2クラッチ部材12を離脱させることが容易である。
【0036】
また、第2対向面25が傾斜することにより、第2クラッチ部材12のクラッチ部21は突出部分22aに近い外周側が厚肉となる。従って、歯部23を介して円筒部22に外力が加わったときに、突出部分22aが内周側に倒れるように変形することを防止或いは抑制できる。
【0037】
さらに、第1クラッチ部材11は、第2クラッチ部材12の突出部分22aに挿入されている。従って、第2クラッチ部材12の外周面に歯部23を設け、歯部23の軸線方向Xの寸法を確保した場合でも、クラッチ機構4が軸線方向Xで大きくなることを抑制できる。
【0038】
なお、第1対向面15の傾斜角度θ1および第2対向面25の傾斜角度θ2は、5°以下とすることが望ましい。このようにすれば、第1クラッチ部材11および第2クラッチ部材12が軸線方向Xで過度に厚くなることを抑制できる。
【0039】
また、第1対向面15および第2対向面25は、径方向内側から径方向外側に向かって第2方向に傾斜してもよい。この場合、第1対向面15に設けた各突部16は、軸線方向Xの高さ寸法H1が一定で、第1対向面15に沿って延びる。また、第2対向面25に設けた各溝部26は、軸線方向Xの深さ寸法H2が一定で、第2対向面25に沿って延びる。このようにした場合でも、突部16と溝部26とが係合する噛み合わせ距離を長くできる。これにより、突部16にかかる負荷を分散させることができるので、第1クラッチ部
材11に設けた突部16の許容荷重が大きくなる。
【0040】
(駆動力伝達機構のロボットへの適用)
図7は、駆動力伝達機構1を搭載するロボットの説明図である。図7では、ロボットの断面を示す。本発明のロボット50は、産業用のロボットである。ロボット50は、上記の駆動力伝達機構1と、駆動源2と、駆動力伝達機構1の出力軸5に接続されたアーム部51と、アーム部51を旋回可能に支持する支持部52と、を備える。支持部52は、駆動源2および駆動力伝達機構1を備える。本例では、支持部52は、駆動源2、伝達歯車3、クラッチ機構4、および出力軸5を備える。また、支持部52は、出力軸5を軸線L回りに回転可能に支持する。アーム部51は、出力軸5にボルト10で固定されている。アーム部51は出力部材6である。本例では、アーム部51の先端に、ワークWを搬送するためのワーク載置部51aが設けられている。
【0041】
本発明のロボット50によれば、駆動源2が駆動されると、駆動源2からの駆動力は、駆動力伝達機構1を介して、アーム部51に伝達される。これにより、アーム部51は軸線L回りに旋回して、ワークWを搬送する。
【0042】
ここで、駆動源2の駆動によって伝達歯車3が回転しているにも関わらず、外力などによってアーム部51の旋回が阻止された場合には、クラッチ機構4に負荷がかかる。この負荷が所定のトルクを超える場合には、第2クラッチ部材12が第1クラッチ部材11から第2方向X2に離間して、第1クラッチ部材11の突部16と第2クラッチ部材12の溝部26との係合が解除される。これにより、第1クラッチ部材11と第2クラッチ部材12との間の回転の伝達が解除されるので、駆動力伝達機構1を介した駆動力の伝達が遮断される。
【0043】
その後、クラッチ機構4にかかる負荷が低減すると、第2クラッチ部材12がコイルバネ13の付勢力により第1方向X1に移動する。これにより、第1クラッチ部材11の突部16と第2クラッチ部材12の溝部26とが係合すると、駆動源2からの駆動力は、再び、駆動力伝達機構1を介して、アーム部51に伝達される。これにより、アーム部51は旋回して、ワークWの搬送を再開する。
【符号の説明】
【0044】
1…駆動力伝達機構、2…駆動源、3…伝達歯車、3a…伝達歯車の歯部、4…クラッチ機構、5…出力軸、6…出力部材、7…大径部、7a…環状面、7b…端面、8…小径部、9…ねじ穴、10…ボルト、11…第1クラッチ部材、11a…中心穴、12…第2クラッチ部材、12a…中心穴、13…コイルバネ(付勢部材)、15…第1対向面、16…突部、17…溝部、21…クラッチ部、22…円筒部、22a…突出部分、23…歯部、25…第2対向面、26…溝部、27…突部、50…ロボット、51…アーム部、51a…ワーク把持部、52…支持部、L…軸線、H1…突部の高さ寸法、H2…溝部の深さ寸法、S1…仮想面、S2…仮想面、X…軸線方向、X1…第1方向、X2…第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7