(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】アクセルペダル装置
(51)【国際特許分類】
B60K 26/02 20060101AFI20221220BHJP
F02D 11/02 20060101ALI20221220BHJP
F02D 11/04 20060101ALI20221220BHJP
F16F 1/12 20060101ALI20221220BHJP
F16F 3/04 20060101ALI20221220BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20221220BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20221220BHJP
【FI】
B60K26/02
F02D11/02 S
F02D11/04 C
F16F1/12 N
F16F3/04 Z
G05G1/30 E
G05G5/03 Z
(21)【出願番号】P 2019016651
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】長島 潤
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-253265(JP,A)
【文献】特開平10-83224(JP,A)
【文献】特開2010-269638(JP,A)
【文献】国際公開第01/019638(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0230875(US,A1)
【文献】実開昭56-146628(JP,U)
【文献】特開2018-2018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/00-26/04
F02D 9/00-11/10
F16F 1/00- 3/12
G05G 1/00-13/02,
25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに対して揺動自在に支持されたアクセルペダルと、
前記アクセルペダルを押し戻す方向に付勢力を及ぼす戻しバネと、
前記アクセルペダルの踏込み操作及び戻し操作における踏力にヒステリシスを発生するメインヒステリシス発生機構と、
前記アクセルペダルが踏込まれた所定の目標開度を境にして、前記目標開度よりも大きい開度領域における前記踏力の変化率が前記目標開度よりも小さい開度領域における前記踏力の変化率よりも相対的に大きくなるように、前記アクセルペダルを押し戻す方向に反力を付加する反力付加機構と、
を備え、
前記メインヒステリシス発生機構は、前記アクセルペダルが係合する第1ヒステリシス発生機構と、前記第1ヒステリシス発生機構の動作に連動して作動する第2ヒステリシス発生機構を含み、
前記反力付加機構は、前記アクセルペダルが前記目標開度を超えて踏み込まれたとき前記第2ヒステリシス発生機構の動作を規制するべく前記ハウジングに設けられた規制部材と、前記規制部材により前記第2ヒステリシス発生機構の動作が規制された後において作動する前記第1ヒステリシス発生機構を含む、
ことを特徴とするアクセルペダル装置。
【請求項2】
前記反力付加機構は、前記目標開度よりも大きい開度領域において、前記アクセルペダルの開度の増加に伴って徐々に大きくなる反力を付加する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアクセルペダル装置。
【請求項3】
前記反力付加機構は、前記規制部材の位置を調整する調整機構を含む、
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載のアクセルペダル装置。
【請求項4】
前記メインヒステリシス発生機構は、前記ハウジングを摺動するスライダと、前記スライダを押し戻しつつ前記ハウジングに押し付ける付勢力を及ぼす付勢バネを含む、
ことを特徴とする請求項1ないし
3いずれか一つに記載のアクセルペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に適用されるアクセルペダル装置に関し、特にアクセルペダルの踏力に反力を付加する反力付加機構を備えたアクセルペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に適用されるアクセルペダル装置としては、アクセル開度を検知するアクセル開度検知手段と、アクセルペダルの踏力を変更する踏力変更手段と、エンジン又は車両の運転状況に応じて所定の閾値を設定する閾値設定手段を備えた、アクセルペダル踏力制御装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この装置においては、アクセル開度が閾値に至ると、アクセルペダルの踏力が所定量だけステップ的に増加するように設定されている。
また、アクセル開度減少時に、閾値よりも小さいアクセル開度においてステップ的に増加した踏力を解除して、急激な踏力の増加に伴うアクセルペダルのバタツキを防止するように設定されている。
【0004】
しかしながら、この装置においては、閾値を境にステップ的に反力が付加されるため、急激な変化に対して、運転者は無意識に反応してアクセルペダルを戻し過ぎてしまう虞があり、当該閾値が例えばエコドライブの運転モードの閾値として設定された場合に、反力が強すぎると当該運転モードにアクセル開度を維持するのが難しい。
また、反力の急激な増加により、運転者は、ペダルの重さを感じ、その状態が続くと足の疲労感を招く虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、運転状態に応じて予め設定された目標開度を容易に認識でき、当該目標開度を容易に維持でき、又、運転者に違和感や疲労感を生じさせない操作性に優れたアクセルペダル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアクセルペダル装置は、ハウジングと、ハウジングに対して揺動自在に支持されたアクセルペダルと、アクセルペダルを押し戻す方向に付勢力を及ぼす戻しバネと、アクセルペダルの踏込み操作及び戻し操作における踏力にヒステリシスを発生するメインヒステリシス発生機構と、アクセルペダルが踏込まれた所定の目標開度を境にして、目標開度よりも大きい開度領域における踏力の変化率が目標開度よりも小さい開度領域における踏力の変化率よりも相対的に大きくなるように、アクセルペダルを押し戻す方向に反力を付加する反力付加機構を備え、メインヒステリシス発生機構は、アクセルペダルが係合する第1ヒステリシス発生機構と、第1ヒステリシス発生機構の動作に連動して作動する第2ヒステリシス発生機構を含み、反力付加機構は、アクセルペダルが目標開度を超えて踏み込まれたとき第2ヒステリシス発生機構の動作を規制するべくハウジングに設けられた規制部材と、規制部材により第2ヒステリシス発生機構の動作が規制された後において作動する上記第1ヒステリシス発生機構を含む。
【0008】
上記アクセルペダル装置において、反力付加機構は、目標開度よりも大きい開度領域において、アクセルペダルの開度の増加に伴って徐々に大きくなる反力を付加する、構成を採用してもよい。
【0012】
上記アクセルペダル装置において、反力付加機構は、規制部材の位置を調整する調整機構を含む、構成を採用してもよい。
【0013】
上記アクセルペダル装置において、メインヒステリシス発生機構は、ハウジングを摺動するスライダと、スライダを押し戻しつつハウジングに押し付ける付勢力を及ぼす付勢バネを含む、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成をなすアクセルペダル装置によれば、運転状態に応じて予め設定された目標開度を容易に認識でき、目標開度を容易に維持でき、又、運転者に違和感や疲労感を生じさせない操作性に優れたアクセルペダル装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のアクセルペダル装置の第1実施形態を示す外観側面図である。
【
図2】
図1に示すアクセルペダル装置の内部構造を示す側面図である。
【
図3】
図1に示すアクセルペダル装置に含まれるメインヒステリシス発生機構が発生するヒステリシスをなす踏力及び反力付加機構(反力バネ)が反力を付加した際の踏力を示す踏力特性図である。
【
図4】本発明のアクセルペダル装置の第2実施形態に係る内部構造を示す側面図である。
【
図5】
図4に示すアクセルペダル装置に含まれるメインヒステリシス発生機構が発生するヒステリシスをなす踏力及び反力付加機構(サブヒステリシス発生機構)が反力を付加した際の踏力を示す踏力特性図である。
【
図6】本発明のアクセルペダル装置の第3実施形態を示す外観側面図である。
【
図7】
図6に示すアクセルペダル装置の内部構造を示す側面図である。
【
図8】本発明のアクセルペダル装置の第4実施形態に係る内部構造を示す側面図である。
【
図9】本発明のアクセルペダル装置の第5実施形態を示す外観側面図である。
【
図10】
図9に示すアクセルペダル装置の内部構造を示す側面図である。
【
図11】
図10に示すアクセルペダル装置に含まれるメインヒステリシス発生機構が発生するヒステリシスをなす踏力及び反力付加機構が反力を付加した際の踏力を示す踏力特性図である。おける踏力特性図である。
【
図12】
図10に示すアクセルペダル装置の変形例を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
第1実施形態に係るアクセルペダル装置は、
図1及び
図2に示すように、車両としての自動車等の車体に固定されるハウジング10、アクセルペダル20、戻しバネ30、メインヒステリシス発生機構40、反力付加機構としての反力バネ50、位置センサ60を備えている。
【0018】
ハウジング10は、樹脂材料により二分割構造に成形され、支軸11、収容部12,13,14、埋設部15を備えている。
支軸11は、軸線Sを中心とする円柱状に形成され、アクセルペダル20の踏込み操作及び戻し操作において、アクセルペダル20を軸線S回りに揺動自在に支持する。
収容部12は、ハウジング10内において、戻しバネ30を収容する。
収容部13は、ハウジング10内において、メインヒステリシス発生機構40を収容する。
収容部14は、ハウジング10内において、反力付加機構としての反力バネ50を収容する。
埋設部15は、軸線Sの周りにおいて位置センサ60の一部を埋設する。
【0019】
アクセルペダル20は、全体が樹脂材料により成形され、
図1及び
図2に示すように、円筒部21、下側アーム部22、上側アーム部23、ペダル部24を備えている。
円筒部21は、ハウジング10の支軸11に嵌合されて回動自在に支持される。
下側アーム部22は、円筒部21から下方に伸長して一体的に形成されている。
上側アーム部23は、円筒部21から上方に伸長して一体的に形成され、第1係合部23a、第2係合部23b、バネ受け部23cを備えている。
【0020】
第1係合部23aは、メインヒステリシス発生機構40に含まれる第1スライダ41と離脱可能に係合する。
第2係合部23bは、アクセルペダル20が休止位置から踏み込まれて所定の目標開度θtに達したとき反力バネ50のバネ受け部材51と係合し、アクセルペダル20が目標開度θtを超えてさらに踏み込まれるときバネ受け部材51を介して反力バネ50を圧縮するように形成されている。
バネ受け部23cは、戻しバネ30の端部を受ける。
ペダル部24は、下側アーム部22の下方領域に一体的に形成されている。
ここで、目標開度θtとは、車両の運転状態に応じて予め設定された最適なアクセルペダル20の開度θである。尚、目標開度θtとしては、種々の運転モードに応じて最適なアクセルペダル20の開度θを設定するべく、複数の目標開度θtを含むことができる。
【0021】
戻しバネ30は、
図2に示すように、バネ鋼等により形成された圧縮型のコイルバネであり、ハウジング10の収容部12において、一端部がハウジング10の内壁12aに係合しかつ他端部がアクセルペダル20の上側アーム部23のバネ受け部23cに係合して圧縮した状態で配置されている。
そして、戻しバネ30は、アクセルペダル20を休止位置に戻す付勢力を及ぼす。
【0022】
メインヒステリシス発生機構40は、
図2に示すように、第1スライダ41、第2スライダ42、付勢バネ43を備えている。
第1スライダ41は、樹脂材料、例えば、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成され、ハウジング10の下側内壁面13aに摺動自在に接触する接触面41a、第2スライダ42の傾斜面42bと接触する傾斜面41b、上側アーム部23の第1係合部23aが離脱可能に係合し得る係合面41cを有する。
第2スライダ42は、樹脂材料、例えば、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成され、ハウジング10の上側内壁面13bに摺動自在に接触する接触面42a、第1スライダ41の傾斜面41bと接触する傾斜面42b、付勢バネ43の一端部を受ける受け面42cを有する。
付勢バネ43は、例えばバネ鋼等により形成された圧縮型のコイルバネであり、一端部が第2スライダ42の受け面42cに係合しかつ他端部がハウジング10の内壁13cに係合して圧縮された状態で配置される。
【0023】
そして、付勢バネ43は、第2スライダ42の傾斜面42bを第1スライダ41の傾斜面41bに押し付けて、第1スライダ41及び第2スライダ42を下側内壁面13a及び上側内壁面13bに向けて押し付けるようなくさび作用を及ぼし、又、第1スライダ41及び第2スライダ42を介してアクセルペダル20を休止位置に戻す付勢力を及ぼす。
【0024】
ここで、戻しバネ30及びメインヒステリシス発生機構40が発生するヒステリシスをなす踏力特性について説明する。
アクセルペダル20が、戻しバネ30及び付勢バネ43の付勢力に抗して休止位置から最大踏込み位置に向けて踏み込まれる場合は、上側アーム部23が付勢バネ43の付勢力に抗して第1スライダ41を
図2中の左向きに押圧する。
この踏込み操作のとき、付勢バネ43が及ぼす付勢力により、第1スライダ41及び第2スライダ42が互いにくさび作用を及ぼし、ハウジング10に対して摩擦力(摺動抵抗)が生じる。踏込み操作時の摩擦力は、踏込み操作と対抗する向きに作用すると共に付勢バネ43の圧縮量の増加に伴って増加する。
したがって、踏込み操作時の摩擦力と踏込み操作に応じて増加する付勢バネ43の付勢力との合力により、踏込み時の踏力は、
図3のヒステリシスをなす踏力線NLにおいて、上側の踏力線DNLとして示され、踏込み量(アクセルペダルの開度)の増加に伴って直線的に増加する。
【0025】
一方、アクセルペダル20が、戻しバネ30及び付勢バネ43の付勢力に応じて休止位置に向けて戻される場合は、第1スライダ41及び第2スライダ42は、付勢バネ43の付勢力により上側アーム部23に追従して
図2中の右向きに移動する。
この戻し操作のときも、付勢バネ43が及ぼす付勢力により、第1スライダ41及び第2スライダ42が互いにくさび作用を及ぼし、ハウジング10に対して摩擦力(摺動抵抗)が生じる。戻し操作時の摩擦力は、踏込み操作の場合と逆向きに作用すると共に付勢バネ43の圧縮量の減少に伴って減少する。
したがって、逆向きに作用する戻し操作時の摩擦力と戻し操作に応じて減少する付勢バネ40の付勢力との合力により、戻し時の踏力は、
図3のヒステリシスをなす踏力線NLにおいて、下側の踏力線RNLとして示され、踏込み量(アクセルペダルの開度)の減少に伴って直線的に減少する。
【0026】
ここで、戻り動作の際の踏力は、踏込み操作の際の踏力よりも小さくなるため、
図3中の踏力線DNL,RNLで示すように、踏込み操作から戻し操作までの全体において、踏力Nにヒステリシスが発生する。
尚、戻し操作の途中において、第1スライダ41がスティックして停止したときは、戻しバネ30の付勢力により、上側アーム部23が第1スライダ41から離脱することで、アクセルペダル20は休止位置に戻る。
【0027】
反力バネ50は、
図2に示すように、バネ鋼等により形成された圧縮型のコイルバネであり、ハウジング10の収容部14において、一端部がハウジング10の内壁14aに係合しかつ他端部がバネ受け部材51を介して規制部14bに係合して圧縮された状態で配置されている。
そして、アクセルペダル20が休止位置から目標開度θtまで踏み込まれると、バネ受け部材51にアクセルペダル20の第2係合部23bが係合し、アクセルペダル20が目標開度θtを超えてさらに踏み込まれると、反力バネ50はバネ受け部材51を介して徐々に圧縮されて反力を及ぼすようになっている。
したがって、反力バネ50は、
図3中の踏力線DAL,RALで示すように、アクセルペダル20が目標開度θtを超えて踏み込まれると、アクセルペダル20の開度θの増加に伴って徐々に大きくなる反力を付加する。
【0028】
すなわち、反力バネ50は、アクセルペダル20が踏込まれた所定の目標開度θtを境にして、目標開度θtよりも大きい開度領域における踏力の変化率ΔN/Δθが目標開度θtよりも小さい開度領域における踏力の変化率ΔN/Δθよりも相対的に大きくなるように、アクセルペダル20を押し戻す方向に反力を付加する。
【0029】
位置センサ60は、アクセルペダル20の動作及び開度を検出する非接触式の磁気式センサであり、軸線Sの周りの領域に配置されており、アクセルペダル20の円筒部21の内周面に埋設され磁性材料の環状アマチャ、アマチャの内周面に固定された一対の永久磁石、ハウジング10の埋設部15に埋設された二つのステータ及び二つのホール素子により構成されている。
【0030】
そして、位置センサ60は、アクセルペダル20が回動することにより生じる磁束密度の変化をホール素子で検出して電圧信号として出力する。すなわち、位置センサ60により、アクセルペダル20の開度位置を検出することができ、又、アクセルペダル20が踏込み操作又は戻し操作のいずれの動作にあるか等を検出することができる。
【0031】
次に、第1実施形態に係るアクセルペダル装置の動作について説明する。
先ず、休止状態において、アクセルペダル20は、戻しバネ30及び付勢バネ43の付勢力により休止位置に停止し、アクセルペダル20の第2係合部23bは、反力バネ60のバネ受け部材61から離脱した状態にある。
【0032】
アクセルペダル20が休止位置から踏み込まれると、運転者は、目標開度θtまで
図3中の踏力線DNLに沿う踏力を受ける。
アクセルペダル20が目標開度θtを超えてさらに踏み込まれると、運転者は、
図3中の踏力線DALに沿う踏力を受ける。
一方、アクセルペダル20が戻されると、運転者は、目標開度θtよりも大きい開度領域において
図3中の踏力線RALに沿う踏力を受け、目標開度θt以下の小さい開度領域において
図3中の踏力線RNLに沿う踏力を受ける。
【0033】
すなわち、
図3に示すように、アクセルペダル20の踏込み操作の際に、踏力Nは、目標開度θtよりも小さい開度領域から目標開度θtに至るまで踏力線DNLであり、目標開度θtよりも大きい開度領域において、アクセルペダル20の開度の増加に伴って徐々に大きくなる反力が付加された踏力線DALとなる。
【0034】
要するに、目標開度θtを境にして、目標開度θtよりも大きい開度領域における踏力(踏力線DAL)の変化率ΔN/Δθが、目標開度θtよりも小さい開度領域における踏力(踏力線DNL)の変化率ΔN/Δθよりも相対的に大きくなるように、反力バネ50が反力を付加するようになっている。
【0035】
このように踏力が変更されることにより、運転者は、目標開度θtまで踏み込むと、目標開度θtを屈曲点として踏力Nが徐々に増加する感覚を受けるため、従来のような急激な変化によるアクセルペダルの戻し動作、操作上の違和感や疲労感を生じることはない。
したがって、運転者は、屈曲点に対応する目標開度θtを容易に認識でき、アクセルペダル20を目標開度θtに容易に維持することができる。
【0036】
尚、反力付加機構としての反力バネ50が仮に作動不良になっても、第2係合部23bはバネ受け部材51から離脱可能であり、又、メインヒシテリシス発生機構40が仮に作動不良になっても、第1係合部23aは第1スライダ41から離脱可能であるため、戻しバネ30の付勢力により、アクセルペダル20は休止位置へ確実に戻ることができる。
【0037】
図4は、本発明の第2実施形態に係るアクセルペダル装置を示すものであり、反力付加機構として反力バネ50に替えてサブヒステリシス発生機構70を採用した以外は、前述の第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
第2実施形態において、サブヒステリシス発生機構70は、
図4に示すように、第1スライダ71、第2スライダ72、付勢バネ73を備えている。
第1スライダ71は、樹脂材料、例えば、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成され、ハウジング10の下側内壁面14cに摺動自在に接触する接触面71a、第2スライダ72の傾斜面72bと接触する傾斜面71b、上側アーム部23の第2係合部23bが離脱可能に係合し得る係合面71cを有する。
第2スライダ72は、樹脂材料、例えば、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成され、ハウジング10の上側内壁面14dに摺動自在に接触する接触面72a、第1スライダ71の傾斜面71bと接触する傾斜面72b、付勢バネ73の一端部を受ける受け面72cを有する。
付勢バネ73は、例えばバネ鋼等により形成された圧縮型のコイルバネであり、一端部が第2スライダ72の受け面72cに係合しかつ他端部がハウジング10の内壁14aに係合して圧縮された状態で配置され、第2スライダ72を介して第1スライダ71をハウジング10の規制部14bに押し付けるように付勢力を及ぼす。
【0039】
そして、付勢バネ73は、第2スライダ72の傾斜面72bを第1スライダ71の傾斜面71bに押し付けて、第1スライダ71及び第2スライダ72を下側内壁面14c及び上側内壁面14dに向けて押し付けるようなくさび作用を及ぼし、又、目標開度θtよりも大きい開度領域から目標開度θtに至るまで、第1スライダ71及び第2スライダ72を介してアクセルペダル20を押し戻す付勢力を及ぼす。
【0040】
第2実施形態においては、アクセルペダル20が休止位置から目標開度θtまで踏み込まれると、第1スライダ71にアクセルペダル20の第2係合部23bが係合し、アクセルペダル20が目標開度θtを超えてさらに踏み込まれると、サブヒステリシス発生機構70が作動してヒステリシスをなす反力を及ぼすようになっている。
したがって、サブヒステリシス発生機構70は、
図5中の踏力線DAL,RALで示すように、アクセルペダル20が目標開度θtを超えて踏み込まれると、アクセルペダル20の開度θの増加に伴って徐々に大きくなる反力を付加する。
【0041】
すなわち、サブヒステリシス発生機構70は、アクセルペダル20が踏込まれた所定の目標開度θtを境にして、目標開度θtよりも大きい開度領域における踏力の変化率ΔN/Δθが目標開度θtよりも小さい開度領域における踏力の変化率ΔN/Δθよりも相対的に大きくなるように、踏力のヒステリシスを変化させてアクセルペダル20を押し戻す方向に反力を付加する。
【0042】
次に、上記アクセルペダル装置の動作について説明する。
先ず、休止状態において、アクセルペダル20は、戻しバネ30及び付勢バネ43の付勢力により休止位置に停止し、アクセルペダル20の第2係合部23bは、サブヒステリシス発生機構70の第1スライダ71から離脱した状態にある。
【0043】
アクセルペダル20が休止位置から踏み込まれると、運転者は、目標開度θtまで
図5中の踏力線DNLに沿う踏力を受ける。
アクセルペダル20が目標開度θtを超えてさらに踏み込まれると、運転者は、
図5中の踏力線DALに沿う踏力を受ける。
一方、アクセルペダル20が戻されると、運転者は、目標開度θtよりも大きい開度領域において
図5中の踏力線RALに沿う踏力を受け、目標開度θt以下の小さい開度領域において
図5中の踏力線RNLに沿う踏力を受ける。
【0044】
すなわち、
図5に示すように、アクセルペダル20の踏込み操作の際に、踏力Nは、目標開度θtよりも小さい開度領域から目標開度θtに至るまで踏力線DNLであり、目標開度θtよりも大きい開度領域において、アクセルペダル20の開度の増加に伴って徐々に大きくなる反力が付加された踏力線DALとなる。
【0045】
要するに、目標開度θtを境にして、目標開度θtよりも大きい開度領域における踏力(踏力線DAL)の変化率ΔN/Δθが、目標開度θtよりも小さい開度領域における踏力(踏力線DNL)の変化率ΔN/Δθよりも相対的に大きくなるように、サブヒステリシス発生機構70が反力を付加するようになっている。
【0046】
このように踏力が変更されることにより、運転者は、目標開度θtまで踏み込むと、目標開度θtを屈曲点として踏力Nが徐々に増加する感覚を受けるため、従来のような急激な変化によるアクセルペダルの戻し動作、操作上の違和感や疲労感を生じることはない。
したがって、運転者は、屈曲点に対応する目標開度θtを容易に認識でき、アクセルペダル20を目標開度θtに容易に維持することができる。
【0047】
尚、反力付加機構としてのサブヒステリシス発生機構70が仮に作動不良になっても、第2係合部23bは第1スライダ71から離脱可能であり、又、メインヒシテリシス発生機構40が仮に作動不良になっても、第1係合部23aは第1スライダ41から離脱可能であるため、戻しバネ30の付勢力により、アクセルペダル20は休止位置へ確実に戻ることができる。
【0048】
図6及び
図7は、本発明の第3実施形態に係るアクセルペダル装置を示すものであり、ハウジング及びアクセルペダルの形状を一部変更し、反力付加機構として反力バネ50の配置場所を変更した以外は、前述の第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
第3実施形態に係るアクセルペダル装置は、ハウジング110、アクセルペダル120、戻しバネ30、メインヒステリシス発生機構40、反力付加機構としての反力バネ50、位置センサ60を備えている。
【0050】
ハウジング110は、樹脂材料により二分割構造に成形され、支軸11、収容部12,13,14、埋設部15を備えており、収容部14が支軸11よりも下方側に配置されている。
【0051】
アクセルペダル120は、全体が樹脂材料により成形され、円筒部21、下側アーム部122、上側アーム部123、ペダル部24を備えている。
下側アーム部122は、円筒部21から下方に伸長して一体的に形成され、その途中において第2係合部122aを備えている。
第2係合部122aは、アクセルペダル120が休止位置から踏み込まれて所定の目標開度θtに達したとき反力バネ50のバネ受け部材51と係合し、アクセルペダル120が目標開度θtを超えてさらに踏み込まれるときバネ受け部材51を介して反力バネ50を圧縮するように形成されている。
上側アーム部123は、円筒部21から上方に伸長して一体的に形成され、第1係合部23a、バネ受け部23cを備えている。
【0052】
第3実施形態に係るアクセルペダル装置の動作は、第1実施形態と同様である。
すなわち、
図3に示すように、アクセルペダル120の踏込み操作の際に、踏力Nは、目標開度θtよりも小さい開度領域から目標開度θtに至るまで踏力線DNLであり、目標開度θtよりも大きい開度領域において、アクセルペダル120の開度の増加に伴って徐々に大きくなる反力が付加された踏力線DALとなる。
【0053】
要するに、第3実施形態においても、目標開度θtを境にして、目標開度θtよりも大きい開度領域における踏力(踏力線DAL)の変化率ΔN/Δθが、目標開度θtよりも小さい開度領域における踏力(踏力線DNL)の変化率ΔN/Δθよりも相対的に大きくなるように、反力バネ50が反力を付加するようになっている。
【0054】
このように踏力が変更されることにより、運転者は、目標開度θtまで踏み込むと、目標開度θtを屈曲点として踏力Nが徐々に増加する感覚を受けるため、従来のような急激な変化によるアクセルペダルの戻し動作、操作上の違和感や疲労感を生じることはない。
したがって、運転者は、屈曲点に対応する目標開度θtを容易に認識でき、アクセルペダル120を目標開度θtに容易に維持することができる。
また、第3実施形態では、メインヒステリシス発生機構40が上側アーム部123に作用し、反力バネ50が下側アーム部122に作用するように形成されているため、支軸11に生じる曲げ荷重等の負荷を低減することができる。
【0055】
図8は、本発明の第4実施形態に係るアクセルペダル装置を示すものであり、反力付加機構として反力バネ50に替えてサブヒステリシス発生機構70を採用した以外は、前述の第3実施形態と同様である。したがって、第3実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
第4実施形態に係るアクセルペダル装置の動作は、第2実施形態と同様である。
すなわち、
図5に示すように、アクセルペダル120の踏込み操作の際に、踏力Nは、目標開度θtよりも小さい開度領域から目標開度θtに至るまで踏力線DNLであり、目標開度θtよりも大きい開度領域において、アクセルペダル120の開度の増加に伴って徐々に大きくなる反力が付加された踏力線DALとなる。
【0057】
要するに、第4実施形態においても、目標開度θtを境にして、目標開度θtよりも大きい開度領域における踏力(踏力線DAL)の変化率ΔN/Δθが、目標開度θtよりも小さい開度領域における踏力(踏力線DNL)の変化率ΔN/Δθよりも相対的に大きくなるように、ヒステリシス発生機構70が反力を付加するようになっている。
【0058】
このように踏力が変更されることにより、運転者は、目標開度θtまで踏み込むと、目標開度θtを屈曲点として踏力Nが徐々に増加する感覚を受けるため、従来のような急激な変化によるアクセルペダルの戻し動作、操作上の違和感や疲労感を生じることはない。
したがって、運転者は、屈曲点に対応する目標開度θtを容易に認識でき、アクセルペダル120を目標開度θtに容易に維持することができる。
また、第4実施形態では、メインヒステリシス発生機構40が上側アーム部123に作用し、サブヒステリシス発生機構70が下側アーム部122に作用するように形成されているため、支軸11に生じる曲げ荷重等の負荷を低減することができる。
【0059】
図9及び
図10は、本発明の第5実施形態に係るアクセルペダル装置を示すものであり、ハウジング及びアクセルペダルの形状を一部変更し、メインヒステリシス発生機構として第1ヒステリシス発生機構140及び第2ヒステリシス発生機構150を採用し、反力付加機構として規制部材130及び第1ヒステリシス発生機構140を採用した以外は、前述の実施形態と同様である。したがって、前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
第5実施形態に係るアクセルペダル装置は、ハウジング210、アクセルペダル220、戻しバネ30、位置センサ60、規制部材130、第1ヒステリシス発生機構140、第2ヒステリシス発生機構150を備えている。
【0061】
ハウジング210は、樹脂材料により二分割構造に成形され、支軸11、収容部12、埋設部15、収容部213を備えている。
【0062】
アクセルペダル220は、全体が樹脂材料により成形され、円筒部21、下側アーム部22、上側アーム部223、ペダル部24を備えている。
上側アーム部223は、円筒部21から上方に伸長して一体的に形成され、係合部223a、バネ受け部23cを備えている。
係合部223aは、第1ヒステリシス発生機構140に含まれる第1スライダ141と離脱可能に係合する。
【0063】
規制部材130は、ハウジング210の収容部213の内部に突出するように配置されており、アクセルペダル220が踏み込まれて所定の目標開度θtまで達すると、第2ヒステリシス発生機構150の第2スライダ152と当接して第2ヒステリシス発生機構150の動作を規制する、すなわち、第1スライダ151及び第2スライダ152の踏込み方向への移動を規制するように機能する。
【0064】
第1ヒステリシス発生機構140は、
図10に示すように、第1スライダ141、第2スライダ142、付勢バネ143を備えている。
第1スライダ141は、樹脂材料、例えば、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成され、ハウジング210の下側内壁面213aに摺動自在に接触する接触面141a、第2スライダ142の傾斜面142bと接触する傾斜面141b、上側アーム部223の係合部223aが離脱可能に係合し得る係合面141cを有する。
第2スライダ142は、樹脂材料、例えば、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成され、ハウジング210の上側内壁面213bに摺動自在に接触する接触面142a、第1スライダ141の傾斜面141bと接触する傾斜面142b、付勢バネ143の一端部を受ける受け面142cを有する。
付勢バネ143は、例えばバネ鋼等により形成された圧縮型のコイルバネであり、一端部が第2スライダ142の受け面142cに係合しかつ他端部が第2ヒステリシス発生機構150の第1スライダ151に係合して圧縮された状態で配置される。
【0065】
そして、付勢バネ143は、第2スライダ142の傾斜面142bを第1スライダ141の傾斜面141bに押し付けて、第1スライダ141及び第2スライダ142を下側内壁面213a及び上側内壁面213bに向けて押し付けるようなくさび作用を及ぼし、又、第1スライダ151の傾斜面151bを第2スライダ152の傾斜面152bに押し付けて、第1スライダ151及び第2スライダ152を下側内壁面213a及び上側内壁面213bに向けて押し付けるようなくさび作用を及ぼし、さらに、第1スライダ141及び第2スライダ142を介して、アクセルペダル220を休止位置に押し戻す付勢力を及ぼす。
【0066】
第2ヒステリシス発生機構150は、
図10に示すように、第1スライダ151、第2スライダ152、付勢バネ153を備えている。
第1スライダ151は、樹脂材料、例えば、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成され、ハウジング210の下側内壁面213aに摺動自在に接触する接触面151a、第2スライダ152の傾斜面152bと接触する傾斜面151b、付勢バネ143の他端部が係合する受け面151cを有する。
第2スライダ152は、樹脂材料、例えば、含油ポリアセタール等の高摺動性材料により形成され、ハウジング210の上側内壁面213bに摺動自在に接触する接触面152a、第1スライダ151の傾斜面151bと接触する傾斜面152b、付勢バネ153の一端部を受ける受け面152cを有する。
付勢バネ153は、例えばバネ鋼等により形成された圧縮型のコイルバネであり、一端部が第2スライダ152の受け面152cに係合しかつ他端部がハウジング210の内壁213cに係合して圧縮された状態で配置される。
【0067】
そして、付勢バネ153は、第2スライダ152の傾斜面152bを第1スライダ151の傾斜面151bに押し付けて、第1スライダ151及び第2スライダ152を下側内壁面213a及び上側内壁面213bに向けて押し付けるようなくさび作用を及ぼし、又、第1スライダ141,151及び第2スライダ142,152を介して、アクセルペダル220を休止位置に押し戻す付勢力を及ぼす。
【0068】
ここで、付勢バネ143のバネ定数をk1、付勢バネ153のバネ定数をk2とすると、直列に配置された付勢バネ143,153の合成バネ定数は、(k1・K2)/(k1+k2)であり、k1>(k1・K2)/(k1+k2)の関係が成立する。
したがって、付勢バネ143及び付勢バネ153が共に付勢力を及ぼす場合に比べて、付勢バネ143のみが付勢力を及ぼす場合の方が、第1ヒステリシス発生機構140におけるバネ定数を大きくすることができる。
【0069】
ここで、戻しバネ30及びメインヒステリシス発生機構(第1ヒステリシス発生機構140及び第2ヒステリシス発生機構150)が発生するヒステリシスをなす踏力について説明する。
アクセルペダル220が、戻しバネ30及び付勢バネ143,153の付勢力に抗して休止位置から最大踏込み位置に向けて踏み込まれる場合、上側アーム部223が付勢バネ143,153の付勢力に抗して第1スライダ141を
図10中の左向きに押圧する。
【0070】
この踏込み操作のとき、付勢バネ143,153が及ぼす付勢力により、第1スライダ141及び第2スライダ142が互いにくさび作用を及ぼし、ハウジング210に対して摩擦力(摺動抵抗)が生じ、又、付勢バネ153が及ぼす付勢力により、第1スライダ151及び第2スライダ152が互いにくさび作用を及ぼし、ハウジング210に対して摩擦力(摺動抵抗)が生じる。
【0071】
すなわち、目標開度θtよりも小さい開度領域において、第2ヒステリシス発生機構150は第1ヒステリシス発生機構140の動作に連動して作動し、踏込み操作時の摩擦力は踏込み操作と対抗する向きに作用すると共に付勢バネ143,153の圧縮量の増加に伴って増加し、踏力は
図11中の上側の踏力線DNLに沿って増加する。
そして、アクセルペダル220が目標開度θtまで踏み込まれると、第2スライダ152が規制部材130に当接して、第2ヒステリシス発生機構150の動作が規制される。
【0072】
アクセルペダル220が目標開度θtを超えてさらに踏み込まれると、第1ヒステリシス発生機構140のみが作動し、付勢バネ143が及ぼす付勢力により、第1スライダ141及び第2スライダ142が互いにくさび作用を及ぼし、ハウジング210に対して摩擦力(摺動抵抗)が生じる。
すなわち、目標開度θtよりも大きい開度領域において、踏込み操作時の摩擦力は踏込み操作と対抗する向きに作用すると共に付勢バネ143の圧縮量の増加に伴って増加し、踏力は
図11中の上側の踏力線DALに沿って増加する。
【0073】
一方、アクセルペダル220が、休止位置に向けて戻される場合、踏込み操作時の場合と逆向きになり、戻し操作時の摩擦力は目標開度θtよりも大きい開度領域において踏込み操作と逆向きに作用すると共に付勢バネ143の圧縮量の減少に伴って減少し、踏力は
図11中の下側の踏力線RALに沿って減少する。また、目標開度θtよりも小さい開度領域において、戻し操作時の摩擦力は踏込み操作と逆向きに作用すると共に付勢バネ143,153の圧縮量の減少に伴って減少し、踏力は
図11中の下側の踏力線RNLに沿って減少する。
【0074】
すなわち、アクセルペダル220の踏込み操作の際に、踏力Nは、目標開度θtよりも小さい開度領域から目標開度θtに至るまで踏力線DNLであり、目標開度θtよりも大きい開度領域において、アクセルペダル220の開度の増加に伴って徐々に大きくなる反力が付加された踏力線DALとなる。
尚、規制部材130が無く、第2ヒステリシス発生機構150の動作が規制さない場合は、
図11中の二点鎖線で示す踏力線NLとなる。
【0075】
要するに、第5実施形態においても、目標開度θtを境にして、目標開度θtよりも大きい開度領域における踏力(踏力線DAL)の変化率ΔN/Δθが、目標開度θtよりも小さい開度領域における踏力(踏力線DNL)の変化率ΔN/Δθよりも相対的に大きくなるように、規制部材130及び第1ヒステリシス発生機構140が反力を付加するようになっている。
【0076】
このように踏力が変更されることにより、運転者は、目標開度θtまで踏み込むと、目標開度θtを屈曲点として踏力Nが徐々に増加する感覚を受けるため、従来のような急激な変化によるアクセルペダルの戻し動作、操作上の違和感や疲労感を生じることはない。
したがって、運転者は、屈曲点に対応する目標開度θtを容易に認識でき、アクセルペダル220を目標開度θtに容易に維持することができる。
【0077】
図12は、第5実施形態に係るアクセルペダル装置の変形例を示すものであり、規制部材の位置を調整する調整機構を採用した以外は、第5実施形態と同様である。したがって、第5実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
第5実施形態に係るアクセルペダル装置は、ハウジング210、アクセルペダル220、戻しバネ30、位置センサ60、第1ヒステリシス発生機構140、第2ヒステリシス発生機構160、規制部材170、調整機構180を備えている。
【0078】
第2ヒステリシス発生機構160は、第1スライダ151、第2スライダ152、付勢バネ161を備えている。
付勢バネ161は圧縮型の二つのコイルバネ161a,161bにより構成され、付勢バネ153と実質的に同一の作用を及ぼす。
【0079】
規制部材170は、調整機構180のリードスクリュー182が螺合される雌ネジ171を有する。
そして、規制部材170は、ハウジング210の収容部213において、リードスクリュー182の軸線回りに回動不能に保持されると共に、付勢バネ161と非接触にてリードスクリュー182の軸線方向に移動自在に配置される。
【0080】
調整機構180は、ハウジング210の外壁に固定されたモータ181、モータ181の出力軸に直結されたリードスクリュー182を備えている。
モータ181は、例えばステッピングモータである。
リードスクリュー182は、規制部材170の雌ネジ171に螺合されている。
したがって、モータ181が適宜回転駆動されることにより、リードスクリュー182の回転量に応じて、規制部材170の位置が適宜調整される。
【0081】
上記変形例によれば、規制部材170の位置を調整することにより、アクセルペダル220の作動範囲内において、目標開度θtを適宜選択的に設定することができる。
したがって、目標開度θtとして、車両の運転状態に応じて、予め複数の目標開度が設定されている場合、運転状態に対応して、踏力を変化させる屈曲点の位置を可変とすることができる。
【0082】
上記実施形態においては、メインヒステリシス発生機構として、第1スライダ41,(141,151)、第2スライダ42,(142,152)、及び付勢バネ43,(143,153)により構成されたメインヒステリシス発生機構40,(140,150)を示したが、これに限定されるものではない。
例えば、踏力にヒステリシスを発生させるものであれば、アクセルペダルの傾斜面をなす係合部と係合し得る一つのスライダと当該スライダをハウジングの壁面に付勢する付勢バネを含む構成、その他の構成をなす機構を採用してもよい。
【0083】
上記実施形態においては、反力付加機構としてのサブヒステリシス発生機構として、第1スライダ71、第2スライダ72、及び付勢バネ73により構成されたサブヒステリシス発生機構70を示したが、これに限定されるものではない。
例えば、反力を発生させるものであれば、アクセルペダルの傾斜面をなす係合部と係合し得る一つのスライダと当該スライダをハウジングの壁面に付勢する付勢バネを含む構成、その他の構成をなす機構を採用してもよい。
【0084】
上記実施形態においては、アクセルペダルとして、ハウジング10,110,210の支軸11により揺動自在に支持されたアクセルペダル20,120,220を示したが、これに限定されるものではない。
例えば、アクセルペダルが車両の床面に揺動自在に支持されたアクセルペダル、又は、ハウジングの支軸により揺動自在に支持されたペダルアーム部と車両の床面に揺動自在に支持されたペダル部を連動させるリンク機構を備えたアクセルペダルを採用してもよい。
【0085】
以上述べたように、本発明のアクセルペダル装置は、運転状態に応じて予め設定された目標開度を容易に認識でき、目標開度を容易に維持でき、又、反力を付加する際に運転者に違和感を生じさせない優れた操作性を得ることができるため、自動車等に適用できるのは勿論のこと、作業車両、その他の車両等においても有用である。
【符号の説明】
【0086】
θ アクセルペダルの開度
θt 目標開度
N 踏力
ΔN/Δθ 踏力の変化率
10,110,210 ハウジング
20,120,220 アクセルペダル
30 戻しバネ
40 メインヒステリシス発生機構
41 第1スライダ
42 第2スライダ
43 付勢バネ
50 反力バネ(反力付加機構)
70 サブヒステリシス発生機構(反力付加機構)
71 第1スライダ
72 第2スライダ
73 付勢バネ
130 規制部材(反力付加機構)
140 第1ヒステリシス発生機構(メインヒステリシス発生機構、反力付加機構)
141 第1スライダ
142 第2スライダ
143 付勢バネ
150,160 第2ヒステリシス発生機構(メインヒステリシス発生機構)
151 第1スライダ
152 第2スライダ
153,163 付勢バネ
170 規制部材
180 調整機構