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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】硫化検出センサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20221220BHJP
   G01N 17/04 20060101ALI20221220BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G01N27/04 F
G01N17/04
G01N27/00 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019018193
(22)【出願日】2019-02-04
(65)【公開番号】P2020125965
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0152449(US,A1)
【文献】特開2009-250611(JP,A)
【文献】特開2017-228701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0059375(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0011142(US,A1)
【文献】米国特許第06258253(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 - G01N 19/10
G01N 27/00 - G01N 27/24
H01C 7/00
H01C 17/00 - H01C 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に所定間隔を存して対向配置された一対の下地電極と、前記絶縁基板の裏面に所定間隔を存して対向配置された一対の裏電極と、対応する前記下地電極と前記裏電極を導通するように前記絶縁基板の長手方向の両端面に設けられた一対の端子電極と、一対の前記下地電極の一部を覆うように形成されて所定のギャップを隔てて対向する一対の硫化検出部とを備え、
一対の前記硫化検出部の少なくとも一方は、銅を主成分とする材料で形成されており、
一対の前記下地電極は、銅よりも硫化されにくい材料で形成されている、
ことを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の硫化検出センサにおいて、
一対の前記下地電極の中間部がそれぞれ絶縁性の保護膜によって覆われており、前記保護膜の一端側から露出する部位がそれぞれ前記硫化検出部によって覆われている、ことを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項3】
絶縁基板の主面に所定のギャップを隔てて対向する一対の下地電極を形成する工程と、
一対の前記下地電極の中間部にそれぞれ絶縁性の保護膜を形成する工程と、
前記保護膜から外方側に突出する前記下地電極を覆うように前記絶縁基板の両側端部に端面電極を形成する工程と、
前記端面電極の表面に銅メッキ層からなる外部電極を形成すると共に、前記保護膜から内方側に突出する前記下地電極の表面に銅メッキ層を同時に形成する工程と、を含み、
一対の前記下地電極は、銅よりも硫化されにくい材料で形成されており、一対の前記下地電極の表面に被着された前記銅メッキ層により、外部に露出する硫化検出部が形成されることを特徴とする硫化検出センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食環境の累積的な硫化量を検出するための硫化検出センサと、そのような硫化検出センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ抵抗器等の電子部品の内部電極としては、一般的に比抵抗の低いAg(銀)系の電極材料が使用されているが、銀は硫化ガスに晒されると硫化銀となり、硫化銀は絶縁物であることから、電子部品が断線してしまうという不具合が発生してしまう。そこで近年では、AgにPdやAuを添加して硫化しにくい電極を形成したり、電極に硫化ガスが到達しにくい構造にする等の硫化対策が講じられている。
【0003】
しかし、このような硫化対策を電子部品に講じたとしても、当該電子部品が流下ガス中に長期間晒された場合や、高濃度の硫化ガスに晒された場合は、断線を完全に防ぐことが難しくなるため、未然に断線を検知して予期せぬタイミングでの故障発生を防止することが必要となる。
【0004】
そこで従来より、特許文献1に記載されているように、電子部品の累積的な硫化の度合いを検出して、電子部品が硫化断線する等して故障する前に危険性を検出可能とした硫化検出センサが提案されている。
【0005】
特許文献1に記載された硫化検出センサは、絶縁基板上にAgを主体とした硫化検出体を形成し、この硫化検出体を覆うように透明で硫化ガス透過性を有する保護膜を形成すると共に、絶縁基板の両側端部に硫化検出体に接続する端面電極を形成した構成となっている。このように構成された硫化検出センサを他の電子部品と共にプリント基板上に実装した後、該プリント基板を硫化ガスを含む雰囲気で使用すると、硫化ガスが硫化検出センサの保護膜を透過して硫化検出体に接するため、硫化ガスの濃度と経過時間に応じて硫化検出体を構成する銀が硫化銀に変化し、それに伴って硫化検出体の抵抗値が上昇していき、最終的に硫化検出体の断線に至る。したがって、硫化検出体の抵抗値の変化や断線を検出することにより、硫化の度合いを検出することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-250611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、硫化検出体は比抵抗の低いAgを主体とした導電体であるため、累積的な硫化量に伴う硫化検出体の抵抗値変化は微量となり、硫化検出体の抵抗値の変化に基づいて硫化の度合いを正確に検出することも困難となる。また、硫化検出体の硫化検出する部分(硫化ガスに接する硫化検出部)の面内の膜厚のバラツキにより、硫化検出体の断線のタイミングにバラツキが発生するため、結果的に所望のタイミングで硫化の度合いを精度良く検出することが困難であった。例えば、硫化検出部の側面のある1点から反対側の側面を結ぶ直性部分の膜厚が局部的に薄くなっていた場合に、当該箇所が硫化されることで断線するタイミングと、硫化検出部に局部的に膜厚が薄くなった部分が存在せず、硫化検出部の全体が硫化されることで断線するタイミングとは、断線のタイミングが大きく相違してしまうことになる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、第1の目的は、所望のタイミングで精度良く硫化の度合いを検出することができる硫化検出センサを提供することにあり、第2の目的は、そのような硫化検出センサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するために、本発明の硫化検出センサは、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に所定間隔を存して対向配置された一対の下地電極と、前記絶縁基板の裏面に所定間隔を存して対向配置された一対の裏電極と、対応する前記下地電極と前記裏電極を導通するように前記絶縁基板の長手方向の両端面に設けられた一対の端子電極と、一対の前記下地電極の一部を覆うように形成されて所定のギャップを隔てて対向する一対の硫化検出部とを備え、一対の前記硫化検出部の少なくとも一方は、銅を主成分とする材料で形成されており、一対の前記下地電極は、銅よりも硫化されにくい材料で形成されている、ことを特徴としている。
【0010】
このように構成された硫化検出センサは、一対の下地電極が銅よりも硫化されにくい材料で形成されていると共に、これら下地電極の一部を覆うように一対の硫化検出部がギャップを隔てて形成されており、これら一対の硫化検出部の少なくとも一方が銅を主成分とする材料からなるため、硫化ガスに晒されることで生成する硫化銅の結晶がギャップに跨るように伸長していくと、一対の硫化検出部間が硫化銅を介して短絡するここで、一対の硫化検出部間が短絡するタイミングはギャップ長に依存するため、下地電極に接続する一対の端子電極間が導通するタイミングのばらつきは少ないものとなり、結果的に所望のタイミングで精度良く硫化の度合いを検出することができる。しかも、硫化検出部で覆われた下地電極が銅よりも硫化されにくい材料で形成されているため、硫化検出部の銅材料がギャップ側に伸長することで、硫化検出部の銅が失われたとしても、硫化されにくい材料からなる下地電極によって予期せぬ断線を防止することができる。
【0011】
上記構成の硫化検出センサにおいて、一対の下地電極の中間部がそれぞれ絶縁性の保護膜によって覆われており、これら保護膜の一端側から露出する部位がそれぞれ硫化検出部によって覆われていると、硫化検出センサを回路基板に半田実装する際に、硫化検出部が半田で覆われてしまうことを防止することができる。
【0015】
また、上記第2の目的を達成するために、本発明による硫化検出センサの他の製造方法は、絶縁基板の主面に所定のギャップを隔てて対向する一対の下地電極を形成する工程と、一対の前記下地電極の中間部にそれぞれ絶縁性の保護膜を形成する工程と、前記保護膜から外方側に突出する前記下地電極を覆うように前記絶縁基板の両側端部に端面電極を形成する工程と、前記端面電極の表面に銅メッキ層からなる外部電極を形成すると共に、前記保護膜から内方側に突出する前記下地電極の表面に銅メッキ層を同時に形成する工程と、を含み、一対の前記下地電極は、銅よりも硫化されにくい材料で形成されており、一対の前記下地電極の表面に被着された前記銅メッキ層により、外部に露出する硫化検出部が形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所望のタイミングで精度良く硫化の度合いを検出することが可能な硫化検出センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】該硫化検出センサの製造工程を示す平面図である。
図4】該硫化検出センサの製造工程を示す断面図である。
図5】本発明の第2実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
図6】本発明の第3実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
図7】本発明の第4実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
図8】該硫化検出センサの製造工程を示す平面図である。
図9】該硫化検出センサの製造工程を示す断面図である。
図10】本発明の第5実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
図11図10のXI-XI線に沿う断面図である。
図12】該硫化検出センサの製造工程を示す平面図である。
図13】該硫化検出センサの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、図1は本発明の第1実施形態例に係る硫化検出センサの平面図、図2図1のII-II線に沿う断面図である。
【0019】
図1図2に示すように、第1実施形態例に係る硫化検出センサ10は、直方体形状の絶縁基板1と、絶縁基板1の表面の長手方向両端部に設けられた第1導体2および第2導体3と、絶縁基板1の裏面の長手方向両端部に設けられ第1裏電極4および第2裏電極5と、絶縁基板1の長手方向両端面に設けられた第1端面電極6および第2端面電極7と、第1端面電極6の表面に設けられた第1外部電極8と、第2端面電極7の表面に設けられた第2外部電極9と、によって主として構成されている。
【0020】
絶縁基板1は、後述する大判基板を縦横の分割溝に沿って分割して多数個取りされたものであり、大判基板はアルミナを主成分とするセラミックス基板である。
【0021】
第1導体2と第2導体3は、銅を主成分とするCuペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものである。第1導体2には第1端面電極6で覆われずに外部に露出する硫化検出部2aが形成されており、第2導体3には第2端面電極7で覆われずに外部に露出する硫化検出部3aが形成されており、これら硫化検出部2a,3aは絶縁基板1の表面中央部で一定幅のギャップGを介して対向している。
【0022】
第1裏電極4と第2裏電極5は、銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら第1裏電極4と第2裏電極5は絶縁基板1の表面側の第1導体2および第2導体3と対応する位置に形成されている。
【0023】
第1端面電極6と第2端面電極7は、絶縁基板1の端面にNi/Crをスパッタリングしたり、Ag系ペーストを塗布して加熱硬化させたものである。第1端面電極6は第1導体2と第1裏電極4間を導通するように断面コ字状に形成されており、第2端面電極7は第2導体3と第2裏電極5間を導通するように断面コ字状に形成されている。
【0024】
第1外部電極8と第2外部電極9は端子電極として機能するものであり、これらはバリヤー層と外部接続層の2層構造からなる。そのうちバリヤー層は、電解メッキによって第1端面電極6と第2端面電極7の表面に形成されたNiメッキ層であり、外部接続層は、電解メッキによってNiメッキ層の表面に形成されたSnメッキ層である。
【0025】
次に、このように構成された硫化検出センサ10の製造工程について、図3図4を用いて説明する。なお、図3(a)~(e)はこの製造工程で用いられる大判基板を表面的に見た平面図、図4(a)~(e)は図3(a)~(e)のA-A線に沿う1チップ相当分の断面図をそれぞれ示している。
【0026】
まず、絶縁基板1が多数個取りされる大判基板を準備する。この大判基板には予め1次分割溝と2次分割溝が格子状に設けられており、両分割溝によって区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ領域となる。図3には1個分のチップ領域に相当する大判基板10Aが代表して示されているが、実際は多数個分のチップ領域に相当する大判基板に対して以下に説明する各工程が一括して行われる。
【0027】
すなわち、図3(a)と図4(a)に示すように、この大判基板10Aの表面にCuペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、ギャップGを介して対向する第1導体2と第2導体3を形成する。また、これに前後して大判基板10Aの裏面にAgペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、第1導体2および第2導体3に対応する第1裏電極4と第2裏電極5をそれぞれ形成する。
【0028】
次に、図3(b)と図4(b)に示すように、可溶性材料等からなるマスキング材11を印刷・乾燥することにより、ギャップGを含めて第1裏電極4と第2導体3の中央部分を覆うように所定幅のマスキング材11を形成する。
【0029】
次に、大判基板10Aを1次分割溝に沿って短冊状基板10Bに1次分割した後、この短冊状基板10Bの分割面にNi/Crをスパッタリングすることにより、図3(c)と図4(c)に示すように、マスキング材11から露出する第1導体2と裏面側の第1裏電極4を接続する第1端面電極6および、マスキング材11から露出する第2導体3と裏面側の第2裏電極5を接続する第2端面電極7とをそれぞれ形成する。なお、短冊状基板10Bの分割面にNi/Crをスパッタリングする代わりに、Ag系ペーストを塗布して加熱硬化することにより、第1端面電極6と第2端面電極7を形成するようにしても良い。
【0030】
次に、短冊状基板10Bを2次分割溝に沿ってチップ状基板10Cに2次分割した後、このチップ状基板10Cに対して電解メッキを施してNiメッキ層とSnメッキ層を順次形成することにより、図3(d)と図4(d)に示すように、第1端面電極6の表面に第1外部電極8を形成すると共に、第2端面電極7の表面に第2外部電極9をそれぞれ形成する。
【0031】
次に、溶剤を用いてマスキング材11を除去することにより、マスキング材11で覆われていた第1導体2と第2導体3の中央部分を露出させると、図3(e)と図4(e)に示すように、第1導体2と第2導体3にギャップGを介して対向する硫化検出部2a,3aが形成され、図1,2に示す硫化検出センサ10が完成する。
【0032】
以上説明したように、第1実施形態例に係る硫化検出センサ10は、銅を主成分とする第1導体2と第2導体3が外部に露出する硫化検出部2a,3aを有しており、これら硫化検出部2a,3aがギャップGを隔てて対向する構成となっているため、硫化検出センサ10が硫化ガスを含む雰囲気中に配置されると、硫化検出部2a,3aが硫化ガスに晒されることにより、硫化検出部2a,3aに生成した硫化銅の結晶がギャップGの内方に向かって徐々に伸長していく。そして、硫化検出部2a,3aに生成した硫化銅がギャップG間に跨るまで伸長すると、その時点で第1導体2と第2導体3との間が硫化銅を介して短絡するため、一対の端子電極(第1外部電極8および第2外部電極9)間の導通状態によって硫化を検知することができる。
【0033】
ここで、第1導体2と第2導体3が硫化銅を介して短絡するタイミングは、硫化検出部2a,3aの間に存するギャップGの幅(ギャップ長)に依存し、このギャップGは第1導体2と第2導体3の印刷時に使用されるスクリーンマスクによって高精度に規定されるため、端子電極間が導通するタイミングのばらつきは少ないものとなり、所望のタイミングで精度良く硫化の度合いを検出することができる。
【0034】
図5は本発明の第2実施形態例に係る硫化検出センサ20の平面図、図6は本発明の第3実施形態例に係る硫化検出センサ30の平面図であり、図1に対応する部分には同一符号を付してある。
【0035】
上記した第1実施形態例では、第1導体2と第2導体3の硫化検出部2a,3a間に存するギャップGが絶縁基板1の短手方向に沿って直線状に延びる形状となっているが、図5に示す硫化検出センサ20では、硫化検出部2a,3aがくの字状に蛇行するギャップGを介して対向しており、図6に示す硫化検出センサ30では、硫化検出部2a,3aがクランク状に蛇行するギャップGを介して対向している。
【0036】
図5図6に示すように、硫化検出部2a,3a間に存するギャップGを蛇行形状にすると、第1導体2と第2導体3の幅寸法Wよりも全長の長いギャップGを硫化検出部2a,3a間に介在させることができるため、導通を検出する範囲が長くなって検出精度が向上する。なお、ギャップGの蛇行形状は、図5図6に示す形状以外にも、鋸刃形状や波形状や渦巻き状等を採用することができる。
【0037】
図7(A)は本発明の第4実施形態例に係る硫化検出センサ40の平面図であり、図1に対応する部分には同一符号を付してある。
【0038】
図7(A)に示す硫化検出センサ40が第1実施形態例に係る硫化検出センサ10と相違する点は、第1導体2と第2導体3の中間部がそれぞれ保護膜31,32によって覆われており、これら保護膜31,32の一端側から露出する部位が硫化検出部2a,3aになっていることにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。保護膜31,32はエポキシ樹脂等の絶縁性材料からなり、第1端面電極6と第2端面電極7は保護膜31,32の他端側から露出する部位を覆うように形成されている。これら保護膜31,32により、硫化検出部2a,3aと端子電極(第1外部電極8および第2外部電極9)が隔てられるため、回路基板に半田実装する際に、硫化検出部2a,3aが半田で覆われてしまうことを防止できる。
【0039】
次に、このように構成された硫化検出センサ40の製造工程について、図8図9を用いて説明する。なお、図8(a)~(f)はこの製造工程で用いられる大判基板を表面的に見た平面図、図9(a)~(f)は図8(a)~(f)のB-B線に沿う1チップ相当分の断面図をそれぞれ示している。
【0040】
まず、絶縁基板1が多数個取りされる大判基板40Aを準備し、この大判基板40Aの表面にCuペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、図8(a)と図9(a)に示すように、ギャップGを介して対向する第1導体2と第2導体3を形成する。また、これに前後して大判基板40Aの裏面にAgペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、第1導体2および第2導体3に対応する第1裏電極4と第2裏電極5をそれぞれ形成する。
【0041】
次に、エポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化することにより、図8(b)と図9(b)に示すように、第1裏電極4の中間部を覆う保護膜31と第2裏電極5の中間部を覆う保護膜32を形成する。
【0042】
次に、これら保護膜31,32で挟まれた領域に可溶性材料等からなるマスキング材11を印刷・乾燥することにより、図8(c)と図9(c)に示すように、ギャップGを含めて第1裏電極4と第2導体3の中央部分を所定幅で覆うマスキング材11を形成する。
【0043】
次に、大判基板40Aを1次分割溝に沿って短冊状基板40Bに1次分割した後、この短冊状基板40Bの分割面にNi/Crをスパッタリングすることにより、図8(d)と図9(d)に示すように、保護膜31から外方側に突出する第1導体2と裏面側の第1裏電極4を接続する第1端面電極6と、保護膜32から外方側に突出する第2導体3と裏面側の第2裏電極5を接続する第2端面電極7とを形成する。なお、短冊状基板40Bの分割面にNi/Crをスパッタリングする代わりに、Ag系ペーストを塗布して加熱硬化することにより、第1端面電極6と第2端面電極7を形成するようにしても良い。
【0044】
次に、短冊状基板40Bを2次分割溝に沿ってチップ状基板40Cに2次分割した後、このチップ状基板40Cに対して電解メッキを施してNiメッキ層とSnメッキ層を順次形成することにより、図8(e)と図9(e)に示すように、第1端面電極6の表面に第1外部電極8を形成すると共に、第2端面電極7の表面に第2外部電極9をそれぞれ形成する。
【0045】
次に、溶剤を用いてマスキング材11を除去することにより、マスキング材11で覆われていた第1導体2と第2導体3の中央部分を露出させると、図8(f)と図9(f)に示すように、第1導体2と第2導体3にギャップGを介して対向する硫化検出部2a,3aが形成され、図7(A)に示す硫化検出センサ40が完成する。
【0046】
なお、図7(A)に示す硫化検出センサ40において、端子電極である第1外部電極8と第2外部電極9をNiメッキ層とSnメッキ層で形成したが、図7(B)に示すように、第1外部電極8と第2外部電極9をCuメッキにより形成しても良い。この場合、硫化検出部2a,3aの表面がCuメッキ層によって覆われることになり、また、図8(c)と図9(c)に示すマスキング材11の形成工程を省略することができる。
【0047】
すなわち、図8図9に示す製造工程において、図8(b)と図9(b)に示すように、第1裏電極4の中間部を覆う保護膜31と第2裏電極5の中間部を覆う保護膜32を形成した後、図8(c)と図9(c)に示す工程を行わずに、大判基板40Aを1次分割溝に沿って短冊状基板40Bに1次分割する。
【0048】
次に、この短冊状基板40Bの分割面にNi/Crをスパッタリングすることにより、保護膜31から外方側に突出する第1導体2と裏面側の第1裏電極4を接続する第1端面電極6と、保護膜32から外方側に突出する第2導体3と裏面側の第2裏電極5を接続する第2端面電極7とを形成する。
【0049】
次に、短冊状基板40Bを2次分割溝に沿ってチップ状基板40Cに2次分割した後、このチップ状基板40Cに対して電解メッキを施すことにより、第1端面電極6の表面にCuメッキ層からなる第1外部電極8を形成すると共に、第2端面電極7の表面にCuメッキ層からなる第2外部電極9を形成する。その際、保護膜31,32間に露出する第1導体2と第2導体3の表面にもCuメッキ層が同時に形成され、当該部位がギャップGを介して対向する硫化検出部2a,3aとなり、図7(B)に示す硫化検出センサ40が完成する。
【0050】
以上説明したように、図7(A)と図7(B)に示す第4実施形態例に係る硫化検出センサ40では、第1導体2と第2導体3の中間部にそれぞれ絶縁性の保護膜31,32が設けられており、これら保護膜31,32によって、硫化検出部2a,3aと端子電極(第1外部電極8および第2外部電極9)が隔てられているため、前述した第1実施形態例に係る硫化検出センサ10の作用効果に加えて、硫化検出センサ40を回路基板に半田実装する際に、硫化検出部2a,3aが半田で覆われてしまうことを防止できる。
【0051】
なお、上記した第1乃至第4実施形態例では、第1導体2と第2導体3が両方共に銅を主成分とする材料を用いて形成されているが、第1導体2と第2導体3の少なくとも一方が銅を主成分とする材料で形成されていれば、ギャップG内に伸長する硫化銅によって硫化の度合いを正確に検出することができる。すなわち、第1導体2と第2導体3の一方だけを銅を主成分とする材料で形成し、他方を硫化しにくい材料、例えばAgにPdやAuを添加した材料で形成するようにしても良い。
【0052】
図10は本発明の第5実施形態例に係る硫化検出センサ50の平面図、図11図10のXI-XI線に沿う断面図である。
【0053】
図10図11に示すように、第5実施形態例に係る硫化検出センサ50は、直方体形状の絶縁基板51と、絶縁基板51の表面の長手方向両端部に設けられた第1下地電極52および第2下地電極53と、絶縁基板51の裏面の長手方向両端部に設けられた第1裏電極54および第2裏電極55と、第1下地電極52および第2下地電極53の中間部に設けられた保護膜56,57と、これら保護膜56,57で挟まれた部位に形成された一対の硫化検出部58,59と、絶縁基板51の長手方向両端面に設けられた第1端面電極60および第2端面電極61と、第1端面電極60の表面に設けられた第1外部電極62と、第2端面電極61の表面に設けられた第2外部電極63と、によって主として構成されている。
【0054】
第1下地電極52と第2下地電極53は、PdやAu等の硫化されにくい導電材料をスパッタリングしたり、Pdを5%以上含有する導電ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものである。第1裏電極54と第2裏電極55は、銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これらは絶縁基板51の表面側の第1下地電極52と第2下地電極53に対応する位置に形成されている。
【0055】
保護膜56,57は、エポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化したものであり、これらは第1下地電極52と第2下地電極53の中間部を覆うように形成されている。
【0056】
一対の硫化検出部58,59は、保護膜56,57の相対向する一端側から突出する第1下地電極52と第2下地電極53の表面に被着されたCuメッキ層や、Niメッキ層の上に積層されて露出するCuメッキ層からなり、これら硫化検出部58,59は絶縁基板51の表面中央部で一定幅のギャップGを介して対向している。
【0057】
第1端面電極60と第2端面電極61は、絶縁基板51の端面にNi/Crをスパッタリングしたり、Ag系ペーストを塗布して加熱硬化させたものである。第1端面電極60は断面コ字状に形成されており、この第1端面電極60によって保護膜56の他端側から突出する第1下地電極52と絶縁基板51の裏面側の第1裏電極54が導通される。第2端面電極61も断面コ字状に形成されており、この第2端面電極61によって保護膜57の他端側から突出する第2下地電極53と絶縁基板51の裏面側の第2裏電極55が導通される。
【0058】
第1外部電極62と第2外部電極63は端子電極として機能するものであり、これらは第1端面電極60と第2端面電極61の表面を覆うように形成されたCuメッキ層や、Niメッキ層の上に積層されて露出するCuメッキ層からなる。なお、これら第1外部電極62および第2外部電極63と前述した硫化検出部58,59は、電解メッキによって同時に形成される。
【0059】
次に、このように構成された硫化検出センサ50の製造工程について、図12図13を用いて説明する。なお、図12(a)~(e)はこの製造工程で用いられる大判基板を表面的に見た平面図、図13(a)~(e)は図12(a)~(e)のC-C線に沿う1チップ相当分の断面図をそれぞれ示している。
【0060】
まず、絶縁基板51が多数個取りされる大判基板51Aを準備し、この大判基板51Aの裏面にAgペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、図12(a)と図13(a)に示すように、大判基板51Aの裏面に第1裏電極54と第2裏電極55を形成する。
【0061】
次に、大判基板51Aの表面にPdやAu等の導電材料をスパッタリングすることにより、図12(b)と図13(b)に示すように、大判基板51Aの表面に所定間隔を存して離反する第1下地電極52と第2下地電極53を形成する。なお、導電材料をスパッタリングする代わりに、Pdを5%以上含有するAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、第1下地電極52と第2下地電極53を形成するようにしても良い。
【0062】
次に、エポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化することにより、図12(c)と図13(c)に示すように、第1下地電極52の中間部を覆う保護膜56と第2下地電極53の中間部を覆う保護膜57とを形成する。
【0063】
次に、大判基板51Aを1次分割溝に沿って短冊状基板51Bに1次分割した後、この短冊状基板51Bの分割面にNi/Crをスパッタリングすることにより、図12(d)と図13(d)に示すように、保護膜56から外方側に突出する第1下地電極52と裏面側の第1裏電極54を接続する第1端面電極60と、保護膜57から外方側に突出する第2下地電極53と裏面側の第2裏電極55を接続する第2端面電極61とを形成する。なお、短冊状基板51Bの分割面にNi/Crをスパッタリングする代わりに、Ag系ペーストを塗布して加熱硬化することにより、第1端面電極60と第2端面電極61を形成するようにしても良い。
【0064】
次に、短冊状基板51Bを2次分割溝に沿ってチップ状基板51Cに2次分割した後、このチップ状基板51Cに対して電解メッキ(CuメッキまたはNiメッキ-Cuメッキ)を施すことにより、図12(e)と図13(e)に示すように、第1端面電極60の表面にCuメッキ層からなる第1外部電極62を形成すると共に、第2端面電極61の表面にCuメッキ層からなる第2外部電極63を形成する。また、この電解メッキにより、保護膜56,57間に露出する第1下地電極52と第2下地電極53の表面にCuメッキ層が同時に形成され、これらCuメッキ層がギャップGを介して対向する硫化検出部58,59となり、図10,11に示す硫化検出センサ50が完成する。
【0065】
以上説明したように、第5実施形態例に係る硫化検出センサ50では、第1下地電極52と第2下地電極53が硫化されにくい材料にて形成されていると共に、第1下地電極52と第2下地電極53の中間部にそれぞれ絶縁性の保護膜56,57が設けられており、これら保護膜56,57で挟まれた部位の第1下地電極52と第2下地電極53にCuメッキ層を被着することにより、ギャップGを介して対向する硫化検出部58,59が外部に露出する構成となっている。このような構成により、前述した第4実施形態例に係る硫化検出センサ40と同様に、硫化検出センサ50を回路基板に半田実装する際に、硫化検出部58,59が半田で覆われてしまうことを防止できると共に、硫化検出部58,59のCu材料がギャップG側に伸長することで、硫化検出部58,59のCuが失われたとしても、硫化されにくい材料からなる第1下地電極52と第2下地電極53によって予期せぬ断線を防止することができる。
【符号の説明】
【0066】
10,20,30,40,50 硫化検出センサ
1 絶縁基板
2 第1導体
2a 硫化検出部
3 第2導体
3a 硫化検出部
4 第1裏電極
5 第2裏電極
6 第1端面電極
7 第2端面電極
8 第1外部電極(端子電極)
9 第2端面電極(端子電極)
10A,51A 大判基板
10B,51B 短冊状基板
11 マスキング材
31,32 保護膜
51 絶縁基板
52 第1下地電極
53 第2下地電極
54 第1裏電極
55 第2裏電極
56,57 保護膜
58,59 硫化検出部
60 第1端面電極
61 第2端面電極
62 第1外部電極(端子電極)
63第2外部電極(端子電極)
G ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13