(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】判定システム、及び判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/60 20180101AFI20221220BHJP
【FI】
G16H20/60
(21)【出願番号】P 2019044169
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504426089
【氏名又は名称】水流 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】水流 聡子
(72)【発明者】
【氏名】石川 奈那
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-163493(JP,A)
【文献】特開2007-265077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0287891(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 20/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の状態を判定する判定システムであって、
前記対象者の第1身体情報を経時的に特定する第1身体特定情報を取得する取得手段と、
前記対象者とは異なる他の複数の対象者の第2身体情報を経時的に特定する第2身体特定情報に基づいて、前記対象者の状態を判定するための判定用情報を生成する生成手段と、
前記取得手段が取得した前記第1身体特定情報と、前記生成手段が生成した前記判定用情報とに基づいて、前記対象者の状態を判定する判定手段と、を備
え、
前記生成手段は、前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の特徴に基づいて、前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報を、前記他の複数の対象者各々の単位で複数の区分に分類し、分類した前記複数の区分各々に属する前記第2身体情報に基づく判定用統計身体特定情報を、前記判定用情報として生成し、
前記生成手段は、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の経時的な変化状態、又は、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の特徴点の時間要素に基づいて、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報を、前記複数の区分に分類し、
前記第1身体情報は、前記対象者の成長速度であり、
前記第2身体情報は、前記他の複数の対象者の成長速度である、
判定システム。
【請求項2】
前記生成手段は、所定の基準に基づいて、
前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報を相互に相対化し、相対化された前記第2身体情報の経時的な変化状態を特徴として、
前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する第2身体情報を
、前記複数の区分に分類する、
請求項1に記載の判定システム。
【請求項3】
前記判定手段は、前記複数の区分に対応する複数の前記判定用統計身体特定情報から、前記取得手段が取得した前記第1身体特定情報に対応する前記判定用統計身体特定情報を1つ選択し、選択した1つの前記判定用統計身体特定情報に基づいて、前記対象者の状態を判定する、
請求項
1又は2に記載の判定システム。
【請求項4】
前記判定手段は、前記対象者が早発症であるか否かを、前記対象者の状態として判定する、
請求項
1から3の何れか一項に記載の判定システム。
【請求項5】
前記他の複数の対象者各々の身長を示す身長情報を格納する格納手段、を備え、
前記生成手段は、前記格納手段に格納されている前記身長情報に基づいて、前記第2身体特定情報を生成し、生成された前記第2身体特定情報に基づいて、前記判定用情報を生成する、
請求項1から4の何れか一項に記載の判定システム。
【請求項6】
対象者の状態を判定する判定プログラムであって、
コンピュータを、
前記対象者の第1身体情報を経時的に特定する第1身体特定情報を取得する取得手段と、
前記対象者とは異なる他の複数の対象者の第2身体情報を経時的に特定する第2身体特定情報に基づいて、前記対象者の状態を判定するための判定用情報を生成する生成手段と、
前記取得手段が取得した前記第1身体特定情報と、前記生成手段が生成した前記判定用情報とに基づいて、前記対象者の状態を判定する判定手段と、として機能さ
せ、
前記生成手段は、前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の特徴に基づいて、前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報を、前記他の複数の対象者各々の単位で複数の区分に分類し、分類した前記複数の区分各々に属する前記第2身体情報に基づく判定用統計身体特定情報を、前記判定用情報として生成し、
前記生成手段は、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の経時的な変化状態、又は、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の特徴点の時間要素に基づいて、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報を、前記複数の区分に分類し、
前記第1身体情報は、前記対象者の成長速度であり、
前記第2身体情報は、前記他の複数の対象者の成長速度である、
判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定システム、及び判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、小児の成長において学童期は変化に富む時期であり、成長障害や肥満といった発育の問題の発見が遅れると、症状の急速な悪化や、他の問題への波及という危険性が考えられていた。特に日々小児を見守っている教育機関の役割は重要であり、例えば、小児の発育を管理するために、小学校では学校健診が行われ、定期的に小児の身体状態が計測されていた。
【0003】
そこで、教育機関にて、小児の発育の状態を管理する装置として、発育についての情報等を記録して利用する学校管理装置(例えば、特許文献1参照)が提案されていた。そして、教育機関では、この学校管理装置の如き装置を用いて、小児の発育についての情報を記録して、記録した情報に基づいて小児の発育状態を判定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、教育機関側で行われる小児の発育状態の判定については、専門医(例えば、学校医等)が学校管理装置に記録されている小児の情報を1人分ずつ目視確認して、自己の経験則に基づいて行っていたので、比較的長時間(例えば、1人につき1分半~2分程度等)を要してまっており、また、専門医の主観が判定に入り込む余地があり、判定の客観性を欠いてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、対象者の状態の判定を迅速且つ客観的に行うことが可能な判定システム、及び判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の判定システムは、対象者の状態を判定する判定システムであって、前記対象者の第1身体情報を経時的に特定する第1身体特定情報を取得する取得手段と、前記対象者とは異なる他の複数の対象者の第2身体情報を経時的に特定する第2身体特定情報に基づいて、前記対象者の状態を判定するための判定用情報を生成する生成手段と、前記取得手段が取得した前記第1身体特定情報と、前記生成手段が生成した前記判定用情報とに基づいて、前記対象者の状態を判定する判定手段と、を備え、前記生成手段は、前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の特徴に基づいて、前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報を、前記他の複数の対象者各々の単位で複数の区分に分類し、分類した前記複数の区分各々に属する前記第2身体情報に基づく判定用統計身体特定情報を、前記判定用情報として生成し、前記生成手段は、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の経時的な変化状態、又は、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の特徴点の時間要素に基づいて、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報を、前記複数の区分に分類し、前記第1身体情報は、前記対象者の成長速度であり、前記第2身体情報は、前記他の複数の対象者の成長速度である。
【0008】
また、請求項2に記載の判定システムは、請求項1に記載の判定システムにおいて、前記生成手段は、所定の基準に基づいて、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報を相互に相対化し、相対化された前記第2身体情報の経時的な変化状態を特徴として、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する第2身体情報を、前記複数の区分に分類する。
【0009】
また、請求項3に記載の判定システムは、請求項1又は2に記載の判定システムにおいて、前記判定手段は、前記複数の区分に対応する複数の前記判定用統計身体特定情報から、前記取得手段が取得した前記第1身体特定情報に対応する前記判定用統計身体特定情報を1つ選択し、選択した1つの前記判定用統計身体特定情報に基づいて、前記対象者の状態を判定する。
【0010】
また、請求項4に記載の判定システムは、請求項1から3の何れか一項に記載の判定システムにおいて、前記判定手段は、前記対象者が早発症であるか否かを、前記対象者の状態として判定する。
【0011】
また、請求項5に記載の判定システムは、請求項1から4の何れか一項に記載の判定システムにおいて、前記他の複数の対象者各々の身長を示す身長情報を格納する格納手段、を備え、前記生成手段は、前記格納手段に格納されている前記身長情報に基づいて、前記第2身体特定情報を生成し、生成された前記第2身体特定情報に基づいて、前記判定用情報を生成する。
【0012】
また、請求項6に記載の判定プログラムは、対象者の状態を判定する判定プログラムであって、コンピュータを、前記対象者の第1身体情報を経時的に特定する第1身体特定情報を取得する取得手段と、前記対象者とは異なる他の複数の対象者の第2身体情報を経時的に特定する第2身体特定情報に基づいて、前記対象者の状態を判定するための判定用情報を生成する生成手段と、前記取得手段が取得した前記第1身体特定情報と、前記生成手段が生成した前記判定用情報とに基づいて、前記対象者の状態を判定する判定手段と、として機能させ、前記生成手段は、前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の特徴に基づいて、前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報を、前記他の複数の対象者各々の単位で複数の区分に分類し、分類した前記複数の区分各々に属する前記第2身体情報に基づく判定用統計身体特定情報を、前記判定用情報として生成し、前記生成手段は、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の経時的な変化状態、又は、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の特徴点の時間要素に基づいて、前記他の複数の対象者各々についての前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報を、前記複数の区分に分類し、前記第1身体情報は、前記対象者の成長速度であり、前記第2身体情報は、前記他の複数の対象者の成長速度である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の判定システム、及び請求項6に記載の判定プログラムによれば、取得した第1身体特定情報と、生成した判定用情報とに基づいて、対象者の状態を判定することにより、例えば、対象者の状態の判定を迅速且つ客観的に行うことが可能となる。特に、例えば、対象者の成長過程の個人差を考慮して、適切に判定することが可能となる。
また、例えば、第2身体情報の特徴を判定用統計身体特定情報に反映させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
また、例えば、第2身体情報の経時的な変化状態を判定用統計身体特定情報に反映させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
また、例えば、第2身体情報の特徴点の時間要素を判定用統計身体特定情報に反映させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
また、例えば、成長速度に基づいて対象者の状態を判定することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の判定システムによれば、例えば、第2身体情報の分類精度を向上させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の判定システムによれば、複数の区分に対応する複数の判定用統計身体特定情報から、取得した第1身体特定情報に対応する判定用統計身体特定情報を1つ選択し、選択した1つの判定用統計身体特定情報に基づいて、対象者の状態を判定することにより、例えば、対象者の状態を比較的単純な処理で判定することができるので、迅速に判定することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の判定システムによれば、対象者が早発症であるか否かを対象者の状態として判定することにより、例えば、対象者が早発症であるかの判定を迅速且つ客観的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施の形態に係る判定装置のブロック図である。
【
図3】判定用成長速度曲線生成処理のフローチャートである。
【
図4】1人分の基準成長速度曲線を例示した図である。
【
図5】複数人分の基準成長速度曲線を例示した図である。
【
図6】基準成長速度曲線を分類手法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る判定システム、及び判定プログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0026】
〔実施の形態の基本的概念〕
まずは、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、判定システム、及び判定プログラムに関するものである。
【0027】
ここで、「判定システム」とは、対象者の状態を判定するシステムであり、例えば、対象者の発育状態を判定するシステムであり、一例としては、思春期早発症であるか否か、その他の任意の症状であるか否かを判定するシステムである。なお、「思春期早発症であるか否か」とは、例えば、思春期が想定よりも早い段階ではじまる可能性があるか否か等を含む概念である。「判定システム」とは、例えば、取得手段、生成手段、及び判定手段を備える。この判定システムは、例えば、汎用システムに対して判定プログラムをインストールすることにより前述の各手段を実装したもの、あるいは、各手段を備えている専用システムとして構成したもの等を含む概念である。
【0028】
また、「対象者」とは、判定の対象となる者であり、具体的には、判定システムを用いて判定される者であり、例えば、小児、大人、老人、男性、及び女性等を含む概念である。「対象者の状態」とは、判定の対象となる対象者のありさまであり、具体的には、判定システムを用いて判定される対象者のありさまであり、例えば、発育状態、健康状態、学習能力の状態、老化の状態、及び認知能力の状態等を含む概念であり、一例としては、前述の思春期早発症であるか否か等を含む概念である。
【0029】
また、「取得手段」とは、対象者の第1身体情報を経時的に特定する第1身体特定情報を取得する手段である。「第1身体情報」とは、対象者の身体の状態に関する情報であり、例えば、成長速度等を含む概念である。「成長速度」とは、例えば、単位期間(例えば、1年間等)当たりの身長の変化量(増加量)等を含む概念である。「第1身体特定情報」とは、経時的に変化する第1身体情報を特定する情報であり、例えば、対象者における複数の成長速度等を含む概念である。「第1身体特定情報」とは、例えば、判定システムを用いて小児である小学生の判定を行う場合における、小学1~2年生間の成長速度、小学2~3年生間の成長速度、小学3~4年生間の成長速度、小学4~5年生の成長速度等を特定する情報を含む概念である。
【0030】
また、「生成手段」とは、対象者とは異なる他の複数の対象者の第2身体情報を経時的に特定する第2身体特定情報に基づいて、対象者の状態を判定するための判定用情報を生成する手段である。また、「生成手段」とは、例えば、第2身体特定情報が特定する第2身体情報の特徴に基づいて、第2身体特定情報の第2身体情報を複数の区分に分類し、分類した複数の区分各々に属する第2身体情報に基づく判定用統計身体特定情報を、判定用情報として生成する手段等を含む概念である。また、「生成手段」とは、例えば、少なくとも、第2身体情報の経時的な変化状態を特徴として、当該第2身体情報を複数の区分に分類する手段等を含む概念である。また、「生成手段」とは、例えば、所定の基準に基づいて、第2身体特定情報が特定する第2身体情報を相互に相対化し、相対化された第2身体情報の経時的な変化状態を特徴として、第2身体情報を複数の区分に分類する手段等を含む概念である。また、「生成手段」とは、例えば、少なくとも、第2身体情報の特徴点の時間要素を特徴として、第2身体情報を複数の区分に分類する手段等を含む概念である。
【0031】
また、「他の複数の対象者」とは、前述の対象者とは異なる者であって、判定の対象とならない者であり、具体的には、判定用情報を生成する基準となる複数の者等を含む概念であり、例えば、小児、大人、老人、男性、及び女性等を含む概念である。
【0032】
「第2身体情報」とは、他の複数の対象者の身体の状態に関する情報であり、例えば、成長速度等を含む概念である。「第2身体特定情報」とは、経時的に変化する第2身体情報を特定する情報であり、例えば、複数の他の対象者における複数の成長速度等を含む概念である。
【0033】
また、「第2身体特定情報」とは、例えば、判定システムを用いて小児である小学生の判定を行う場合における、他の対象者各々における1年毎の成長速度であって、前述の第1身体特定情報が特定する成長速度よりも後の期間までの成長速度を特定する情報等を含む概念である。より詳細には「第2身体特定情報」とは、例えば、少なくとも、他の対象者各々における成長速度がピーク(最大)となる期間よりも後の期間までの成長速度を特定する情報等を含む概念であり、一例としては、前述の第1身体特定情報で例示した各成長速度に加えて、小学5年生~小学6年生、小学6年生~中学1年生の成長速度、中学1年生~中学2年生の成長速度、中学2年生~中学3年生の成長速度、中学3年生~高校1年生の成長速度、高校1年生~高校2年生の成長速度、及び高校2年生~高校3年生の成長速度等も含む概念である。
【0034】
また、「判定用情報」とは、対象者の状態を判定するために用いられる情報であり、具体的には、第2身体特定情報が特定する第2身体情に基づく情報であり、例えば、判定用統計身体特定情報等を含む概念である。「判定用統計身体特定情報」とは、分類された複数の区分各々に属する第2身体情報に基づく情報であり、例えば、各区分における身体情報の統計値(一例としては、中央値、又は平均値等)に対応する情報等を含む概念である。
【0035】
また、「判定手段」とは、取得手段が取得した第1身体特定情報と、生成手段が生成した判定用情報とに基づいて、対象者の状態を判定する手段であり、例えば、複数の区分に対応する複数の判定用統計身体特定情報から、取得手段が取得した第1身体特定情報に対応する判定用統計身体特定情報を1つ選択し、選択した1つの判定用統計身体特定情報に基づいて、対象者の状態を判定する手段等を含む概念であり、また、対象者が思春期早発症であるか否かを、対象者の状態として判定する手段等を含む概念である。なお、以下の説明では、「思春期早発症」を適宜「早発症」と称して説明する。
【0036】
そして、以下に示す実施の形態では、判定システムを用いて対象者である小学生が早発症であるか否かを判定する場合について説明する。
【0037】
〔実施の形態の具体的な内容〕
次に、実施の形態の具体的な内容について説明する。
【0038】
(構成)
まず、本実施の形態に係る判定装置の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る判定装置のブロック図である。
【0039】
図1に示す判定装置100は、判定システムであり、具体的には、対象者である小学生が早発症であるか否かを判定するものであり、例えば、通信部11、操作部12、表示部13、記録部14、及び制御部15を備えている。
【0040】
(構成-通信部)
通信部11は、他の装置との間でネットワークを介した通信を行う通信手段である。この通信部11の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、公知の通信回路等を備えて構成することができる。
【0041】
(構成-操作部)
操作部12は、ユーザによる操作により当該ユーザから各種操作入力を受け付ける受付手段である。この操作部12の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、マウス又はキーボード等の公知の入力装置等を備えて構成することができる。
【0042】
(構成-表示部)
表示部13は、制御部15の制御に基づいて各種情報を表示する表示手段である。この表示部13の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイ等を備えて構成することができる。
【0043】
(構成-記録部)
記録部14は、判定装置100の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、DVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体、又はFlash、ROM、USBメモリ、SDカードの如き電気的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0044】
また、この記録部14は、例えば、基準身長情報データベース141(以下、データベースを「DB」と称する)を備えている。
【0045】
(構成-記録部-基準身長情報DB)
基準身長情報DB141は、基準身長情報を格納する基準身長情報格納手段である。ここで、「基準身長情報」とは、前述の第2身体特定情報の基となる情報であり、例えば、複数人分の過去の1年毎の身長を特定する情報である。ここでは、例えば、男子600人分の小学1年生時(つまり、7歳時)~高校3年生時(つまり、18歳時)までの1年毎の身長を特定する情報、及び女子600人の分の男子と同様な期間の身長を特定する情報が基準身長情報として記録されている場合を例示して説明する。なお、この基準身長情報の具体的な格納手法は任意であるが、例えば、ユーザが、操作部12を介して入力することにより格納されることとしてもよいし、あるいは、通信部11を介して他の装置との間で通信を行うことにより格納されることとしてもよい。
【0046】
(構成-制御部)
図1の制御部15は、判定装置100を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、実施の形態に係る判定プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して判定装置100にインストールされることで、判定装置100の各部を実質的に構成する。
【0047】
この制御部15は、機能概念的に、取得部151、生成部152、及び判定部153を備える。取得部151とは、対象者の第1身体情報を経時的に特定する第1身体特定情報を取得する取得手段である。生成部152は、対象者とは異なる他の複数の対象者の第2身体情報を経時的に特定する第2身体特定情報に基づいて、対象者の状態を判定するための判定用情報を生成する生成手段である。判定部153は、取得部151が取得した第1身体特定情報と、生成部152が生成した判定用情報とに基づいて、対象者の状態を判定する判定手段である。なお、この制御部15の各部により行われる処理については、後述する。
【0048】
(処理)
次に、このように構成される判定装置100によって実行される判定処理について説明する。
図2は、判定処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。「判定処理」とは、例えば、対象者である小学生が早発症であるか否かを判定するである。この「判定処理」を実行するタイミングは任意であるが、例えば、ユーザが対象者の身長を特定する対象者身長情報を、通信部11又は操作部12を介して入力した上で、判定処理を開始するための所定操作を行った場合に、起動されて実行するものとして、当該処理が起動されたところから説明する。ここでは、例えば、小学5年生の男子を対象者として、当該対象者の対象者身長情報として、小学1年生時の身長を特定する情報、小学2年生時の身長を特定する情報、小学3年生時の身長を特定する情報、小学4年生時の身長を特定する情報、及び小学5年生時の身長を特定する情報の5個の情報が入力された場合を例示して説明する。
【0049】
図2のSA1において生成部152は、判定用成長速度曲線生成処理を実行する。
図3は、判定用成長速度曲線生成処理のフローチャートである。「判定用成長速度曲線生成処理」とは、判定用成長速度曲線を生成する処理である。「判定用成長速度曲線」とは、前述の判定用情報であり、具体的には、判定用統計身体特定情報であり、例えば、対象者である小学生が早発症であるか否かを判定する基準となる情報である。
【0050】
図3のSB1において生成部152は、複数の他の対象者の基準成長速度曲線を生成する。
図4は、1人分の基準成長速度曲線を例示した図である。「基準成長速度曲線」とは、他の対象者の各年齢における成長速度を特定する情報である。なお、基準成長速度曲線が「第2身体特定情報」に対応し、また、基準成長速度曲線の成長速度が「第2身体情報」に対応する。
【0051】
図3のSB1の具体的な処理は任意であるが、例えば、基準身長情報DB141の基準身長情報を取得し、取得した基準身長情報において他の対象者各々の1年毎の成長速度を演算し、演算した各成長速度の間を任意の補間手法で補間することにより、基準成長速度曲線を他の対象者の人数分生成する。ここでの成長速度の演算手法は任意であるが、例えば、「成長速度=(N+1)歳時の身長-N歳時の身長(Nは整数)」の演算式を用いて成長速度を演算する場合について説明する。ここでは、例えば、「小学2年生時(8歳時)の身長」-「小学1年生時(7歳時)の身長」の演算、「小学3年生時(9歳時)の身長」-「小学2年生時(8歳時)の身長」の演算等を行った上で補間することにより、
図4等の基準成長速度曲線を生成する。そして、前述の男子600人及び女子600人分の基準成長速度曲線を生成する。
【0052】
図3のSB2において生成部152は、SB1で生成した複数の他の対象者の基準成長速度曲線を複数の区分に分類する(つまり、他の対象者の成長速度を複数の区分に分類する)。
図5は、複数人分の基準成長速度曲線を例示した図である。「区分」とは、例えば、任意の基準で区分けされる集合である。ここでの具体的な分類手法は任意であるが、例えば、複数の他の対象者の基準成長速度曲線について、
図5(a)に示すように、基準成長速度曲線における成長速度がピーク(最大)となる年齢であるピーク年齢がばらつくこと、及び、
図5(b)に示すように、基準成長速度曲線の形がばらつくことに着目して、複数の他の対象者の基準成長速度曲線の成長速度の特徴に基づいて分類する手法を用いることとする。なお、「複数の他の対象者の基準成長速度曲線の成長速度の特徴」とは、例えば、
図5(a)に示すピーク年齢がばらつく特徴(第2身体情報の特徴点の時間要素の特徴)、及び
図5(b)に示す基準成長速度曲線の形が相互にばらつく特徴(経時的な変化状態の特徴)等を含む概念である。
【0053】
図6は、基準成長速度曲線を分類手法の説明図であり、
図7は、第1~第4クラスターを示す図である。「第1~第4クラスター」とは、区分された基準成長速度曲線の集合である。なお、
図7の各曲線は、第1~第4クラスターに属する基準成長速度曲線の代表値として平均値を示している。
【0054】
図3のSB2の具体的な処理は任意であり、
図5(b)に示す基準成長速度曲線の形が相互にばらつく特徴に基づいて分類する。そして、男子及び女子の各々について分類するが、これらの各分類手法は相互にほぼ同様であるので、男子の分類手法について詳細に説明し、女子の分類手法については男子の分類手法と異なる部分のみ説明する。
【0055】
具体的には、まず、SB1で生成した複数の他の対象者の基準成長速度曲線のうちの男子の複数の基準成長速度曲線を取得し、取得した男子の複数の基準成長速度曲線各々について、当該複数の基準成長速度曲線各々のピーク点(成長速度が最大となる点)を相互に原点として一致させることにより、当該複数の基準成長速度曲線各々を相対化する。なお、「複数の基準成長速度曲線各々のピーク点(成長速度が最大となる点)を相互に原点として一致させる」とは、例えば、各基準成長速度曲線の形を維持した状態で、各基準成長速度曲線各々のピーク点を1点で一致させた上で、当該1点を原点とすることを示している。
【0056】
ここでは、例えば、SB1で生成した男子600人分の基準成長速度曲線を取得し、取得した男子600人分の基準成長速度曲線各々について、
図6(a)に示すように、ピーク点を原点とすることにより相対化する。なお、
図6(a)では、1人分の基準成長速度曲線が図示されているが、実際には、600人分の基準成長速度曲線のピーク点を原点として一致させることにより、600人分の基準成長速度曲線各々を相対化する。
【0057】
次に、相対化された各基準成長速度曲線について、ピーク点の年齢及び成長速度を0としたときの、成長速度の相対値を分散共分散行列に基づき主成分分析し、相対化された各基準成長速度曲線を、第1~第3主成分の固有ベクトルと各固有ベクトルの重みの線形結合として求めた後、当該相対化された各基準成長速度曲線を表す重みを用いて、基準成長速度曲線の形の類似度を基準にして類似するものが同じ区分となるように分類する。
【0058】
ここでは、例えば、相対化された600人分の各基準成長速度曲線について、ピーク点の年齢及び成長速度を0としたときの、成長速度の相対値を分散共分散行列に基づき主成分分析し、相対化された各基準成長速度曲線を、
図6(b)の第1成分~第3成分の固有ベクトルと各固有ベクトルの重みの線形結合として求める。一例としては、相対化された各基準成長速度曲線を、「W1(重み)×第1主成分の固有ベクトル+W2(重み)×第2主成分の固有ベクトル+W3(重み)×第3主成分の固有ベクトル(なお、W1~W3は、各基準成長速度曲線相互間において異なる)」として求める。そして、各基準成長速度曲線に対応する重み(W1、W2、W3)に着目して、形が相互に類似する基準成長速度曲線が同じ区分となるように、例えば、4個の区分に分類する。なお、ここでの分類手法は任意であるが、例えば、公知のクラスターに関するロジックを適用してもよい。このように処理することにより、例えば、600人分の各基準成長速度曲線が、
図7の第1~第4クラスターのうちの何れか1個に対応する区分に分類される。なお、一例としては、
図7の第1~第4クラスターに対応する区分に、200人、200人、100人、100人分の基準成長速度曲線が分類される。
【0059】
なお、SB1で生成した女子600人分の基準成長速度曲線については、男子の場合と同様な処理を行った上で、2個の区分に分類する。なお、ここでは、男子の区分数を4個とし、女子の区分数を2個としる場合について説明するが、早発症の判定精度を考慮しつつ任意の区分数に分類するように構成してもよい(後述するSB3の区分数も同様である)。
【0060】
図3のSB3において生成部152は、SB2で分類した各基準成長速度曲線を、
図5(a)に示すピーク年齢がばらつく特徴に基づいて分類する(つまり、他の対象者の成長速度を複数の区分に分類する)。具体的には任意であるが、SB2で分類した1つの区分において、各基準成長速度曲線を取得し、取得した各基準成長速度曲線のピーク年齢を基準に、6個の区分を生成し、各基準成長速度曲線を、生成した6個区分のうちの1つの区分に分類する。ここで6個の区分の生成について具体的には、SB2で分類した区分に属する基準成長速度曲線のピーク年齢の平均値、及び±1SD、±2SDを演算し、演算結果に基づいて、-2SD未満の区分(以下、第1区分)、-2SD以上~-1SD未満の区分(以下、第2区分)、-1SD以上~0SD(平均値)未満の区分(以下、第3区分)、0SD以上~+1SD未満の区分(以下、第4区分)、+1SD以上~+2SD未満の区分(以下、第5区分)、及び+2SD以上の区分(以下、6区分)の6個の区分を生成する。なお、「SD」とは、例えば、標準偏差(Standard Deviation)に対応する概念である。そして、この処理を、SB2で分類した4つの区分各々に対して行う。
【0061】
ここでは、例えば、男子についてはSB2において、前述のように、
図7の第1~第4クラスターに対応する区分に、200人、200人、100人、100人分の基準成長速度曲線が分類されたので、第1クラスターに対応する区分に分類された200人についてピーク年齢の平均値、及び±1SD、±2SDを演算し、第1~第6区分を生成し、200人分の基準成長速度曲線を、生成した第1~第6区分の何れか1つの区分に分類する。そして、
図7の第2~第4クラスターに対応する区分に分類された200人、100人、100人分の基準成長速度曲線についても同様な処理を行うことにより、第1~第6区分の何れか1つの区分に分類する。このように、SB2及びSB3の処理を行うことにより、男子600人の基準成長速度曲線は、SB2で4個の区分に分類され、更に、SB3での6個の区分に分類されるので、24個(4個×6個)の区分に分類されることになる。なお、女子600人の基準成長速度曲線は、SB2で2個の区分に分類され、更に、SB3での6個の区分に分類されるので、12個(2個×6個)の区分に分類されることになる。
【0062】
図3のSB4において生成部152は、判定用成長速度曲線を生成する。具体的には任意であるが、例えば、SB2及びSB3で分類した区分に属する基準成長速度曲線の各年齢の成長速度の中央値を演算し、演算結果に基づいて、判定用成長速度曲線を生成する。
【0063】
図8は、判定用成長速度曲線を例示した図である。ここでは、例えば、SB2にて
図7の第2クラスターに対応する区分に分類された男子200人分の基準成長速度曲線のうちの、SB3で第1区分(つまり、-2SD未満の区分)に分類された基準成長速度曲線の各年齢の成長速度の中央値を演算し、演算結果に対応する
図8の判定用成長速度曲線L1を生成する。同様にして、SB3で第2区分~第6区分に分類された基準成長速度曲線の各年齢の成長速度の中央値を演算し、演算結果に対応する
図8の判定用成長速度曲線L2~L6を生成する。また、同様にして、SB2にて
図7の第1、第3、及び第4クラスターに対応する区分に分類された男子200人、100人、100人分の基準成長速度曲線のうちの、SB3で第1区分~第6区に分類された基準成長速度曲線に対応する判定用成長速度曲線を生成することにより、24個の判定用成長速度曲線を生成する。そして、判定用成長速度曲線生成処理をリターンする。
【0064】
図2に戻って、SA2において取得部151は、対象者成長速度情報を取得する。「対象者成長速度情報」とは、対象者の複数の成長速度を特定する情報である。なお、対象者成長速度情報が「第1身体特定情報」に対応し、また、対象者成長速度情報の成長速度が「第1身体情報」に対応する。
図9は、対象者成長速度情報を例示した図である。SA2の処理について具体的には任意であるが、例えば、判定処理の起動時に入力された、対象者の身長を特定する情報を取得し、取得した身長を特定する情報に基づいて、複数の成長速度を演算し、演算した複数の成長速度を特定する情報を対象者成長速度情報として取得する。
【0065】
ここでは、例えば、対象者である小学5年生の男子の小学1年生時の身長を特定する情報、小学2年生時の身長を特定する情報、小学3年生時の身長を特定する情報、小学4年生時の身長を特定する情報、及び小学5年生時の身長を特定する情報の5個の情報を取得し、
図3のSB1の場合と同様な処理を行うことにより、小学1~2年生間の成長速度、小学2~3年生間の成長速度、小学~4年生間の成長速度、小学4~5年生間の成長速度の4個の成長速度を演算し、この演算した4個の成長速度を特定する
図9の対象者成長速度情報を取得する。
【0066】
図2のSA3において判定部153は、対象者が早発症であるか否かを判定する。具体的には任意であるが、例えば、SA2で取得した対象者成長速度情報を取得し、
図3のSB4で生成した、当該対象者と同じ性別用の判定用成長速度曲線において、当該取得した対象者成長速度情報に対応する判定用成長速度曲線を選択し、選択した判定用成長速度曲線に基づいて判定する。なお、ここでの判定用成長速度曲線を選択する具体的な手法は任意であるが、例えば、取得した対象者成長速度情報に最も合致するものを選択することとし、一例としては、取得した対象者成長速度情報に対しての差の二乗和が最小となるものを選択する手法を用いてもよい。そして、選択した判定用成長速度曲線が、
図7の第1~第4クラスターに対応する区分における、第1区分(つまり、ピーク年齢が-2SD未満の区分)の判定用成長速度曲線である場合、早発症であるものと判定する。また、選択した判定用成長速度曲線が、
図7の第1~第4クラスターに対応する区分における、第1区分の判定用成長速度曲線でない場合(つまり、第2~第6区分の判定用成長速度曲線である場合)、早発症でないものと判定する。
【0067】
ここでは、例えば、SA2で取得した
図9の対象者成長速度情報を取得し、
図3のSB4で生成した男子用の24個の判定用成長速度曲線において、当該取得した
図9の対象者成長速度情報に対応する判定用成長速度曲線として、例えば
図8の判定用成長速度曲線L1を選択する。この場合、
図8の判定用成長速度曲線L1は、第1区分(つまり、ピーク年齢が-2SD未満の区分)の判定用成長速度曲線であるので、早発症であるものと判定する。
【0068】
なお、この後の処理は任意であるが、例えば、制御部15が、SA3の判定結果を表示部13を介して出力することにより、ユーザに対して判定結果を報知することとしてもよい。これにて、判定処理を終了する。
【0069】
(早発症の判定について)
上述の判定処理を行うことにより、男子については、4個の成長速度を用いて早発症であるか否かを判定することができ、また、女子については、具体的には例示していないが、小学1~2年生間の成長速度、及び小学2~3年生間の成長速度の2個の成長速度を用いて早発症であるか否かを判定することができるので、早期に早発症であるか否かを判定することが可能となる。
【0070】
(実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、取得した対象者成長速度情報と、生成した判定用成長速度曲線とに基づいて、対象者の状態を判定することにより、例えば、対象者の状態の判定を迅速且つ客観的に行うことが可能となる。特に、例えば、対象者の成長過程の個人差を考慮して、適切に判定することが可能となる。
【0071】
また、基準成長速度曲線の成長速度の特徴に基づいて当該基準成長速度曲線の成長速度を複数の区分に分類し、分類した複数の区分各々に属する成長速度に基づく判定用成長速度曲線を生成することにより、例えば、基準成長速度曲線の成長速度の特徴を判定用成長速度曲線に反映させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0072】
また、基準成長速度曲線の成長速度の経時的な変化状態を特徴として、当該基準成長速度曲線の成長速度を複数の区分に分類することにより、例えば、基準成長速度曲線の成長速度の経時的な変化状態を判定用成長速度曲線に反映させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0073】
また、所定の基準に基づいて、基準成長速度曲線の成長速度を相互に相対化し、相対化された基準成長速度曲線の成長速度の経時的な変化状態を特徴として、当該基準成長速度曲線の成長速度を複数の区分に分類することにより、例えば、基準成長速度曲線の成長速度の分類精度を向上させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0074】
また、基準成長速度曲線の成長速度の特徴点の時間要素を特徴として、第2身体情報を複数の区分に分類することにより、例えば、基準成長速度曲線の成長速度が最大となるピーク年齢のばらつき(第2身体情報の特徴点の時間要素)を判定用成長速度曲線に反映させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0075】
また、複数の区分に対応する複数の判定用成長速度曲線から、取得した対象者成長速度情報に対応する判定用成長速度曲線を1つ選択し、選択した1つの判定用成長速度曲線に基づいて、対象者の状態を判定することにより、例えば、対象者の状態を比較的単純な処理で判定することができるので、迅速に判定することが可能となる。
【0076】
また、第1身体情報は対象者の成長速度であり、第2身体情報は他の複数の対象者の成長速度であるので、例えば、成長速度に基づいて対象者の状態を判定することが可能となる。
【0077】
また、対象者が早発症であるか否かを対象者の状態として判定することにより、例えば、対象者が早発症であるかの判定を迅速且つ客観的に行うことが可能となる。
【0078】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0079】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の詳細に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏したりすることがある。
【0080】
(分散や統合について)
また、上述した構成は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。本出願における「システム」とは、複数の装置によって構成されたものに限定されず、単一の装置によって構成されたものを含む。また、本出願における「装置」とは、単一の装置によって構成されたものに限定されず、複数の装置によって構成されたものを含む。また、記録されている情報のデータ構造及び記録先等を任意に変更してもよい。
【0081】
(判定対象の対象者について)
また、上記実施形態では、
図2の判定処理において、対象者が小学5年生である場合を例示して説明したが、例えば、小学5年生未満又は小学6年生以上を対象者としてもよい。また、多数の対象者を自動的に処理するように構成してもよい。
【0082】
(固有ベクトルの成分の数について)
また、上記実施の形態では、
図3のSB1で説明した固有ベクトルの成分の個数が3個である場合について説明したが、これに限らない。例えば、固有ベクトルの成分の個数を2個としてもよいし、あるいは、4個以上としてもよい。
【0083】
(区分の数について)
また、上記実施の形態では、男子については24個の区分に分類し、女子については12個の区分に分類する場合について説明したが、これに限らず、男子及び女子で同数の区分に分類してもよいし、あるいは、他の個数の区分に分類してもよい。
【0084】
(判定用成長速度曲線について)
また、上記実施の形態の
図3のSB4においては、中央値を演算して判定用成長速度曲線を生成する場合を例示したが、中央値の代わりにその他の統計値(例えば、平均値等)を延在して判定用成長速度曲線を生成するように構成してもよい。
【0085】
(判定処理について)
また、上記実施の形態の
図3のSB4で生成される判定用成長速度曲線を記録部14に記録しておき、
図2の判定処理において、SA1の処理を省略した上で、当該記録されている判定用成長速度曲線を用いて、SA2及びSA3の処理を行うように構成してもよい。
【0086】
(特徴について)
また、実施の形態の特徴及び変形例の特徴を任意に組み合わせてもよい。
【0087】
(付記)
付記1の判定システムは、対象者の状態を判定する判定システムであって、前記対象者の第1身体情報を経時的に特定する第1身体特定情報を取得する取得手段と、前記対象者とは異なる他の複数の対象者の第2身体情報を経時的に特定する第2身体特定情報に基づいて、前記対象者の状態を判定するための判定用情報を生成する生成手段と、前記取得手段が取得した前記第1身体特定情報と、前記生成手段が生成した前記判定用情報とに基づいて、前記対象者の状態を判定する判定手段と、を備える。
【0088】
付記2の判定システムは、付記1に記載の判定システムにおいて、前記生成手段は、前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報の特徴に基づいて、前記第2身体特定情報の前記第2身体情報を複数の区分に分類し、分類した前記複数の区分各々に属する前記第2身体情報に基づく判定用統計身体特定情報を、前記判定用情報として生成する。
【0089】
付記3の判定システムは、付記2に記載の判定システムにおいて、前記生成手段は、少なくとも、前記第2身体情報の経時的な変化状態を特徴として、当該第2身体情報を前記複数の区分に分類する。
【0090】
付記4の判定システムは、付記3に記載の判定システムにおいて、前記生成手段は、所定の基準に基づいて、前記第2身体特定情報が特定する前記第2身体情報を相互に相対化し、相対化された前記第2身体情報の経時的な変化状態を特徴として、当該第2身体情報を前記複数の区分に分類する。
【0091】
付記5の判定システムは、付記2から4の何れか一項に記載の判定システムにおいて、前記生成手段は、少なくとも、前記第2身体情報の特徴点の時間要素を特徴として、前記第2身体情報を前記複数の区分に分類する。
【0092】
付記6の判定システムは、付記2から5の何れか一項に記載の判定システムにおいて、前記判定手段は、前記複数の区分に対応する複数の前記判定用統計身体特定情報から、前記取得手段が取得した前記第1身体特定情報に対応する前記判定用統計身体特定情報を1つ選択し、選択した1つの前記判定用統計身体特定情報に基づいて、前記対象者の状態を判定する。
【0093】
付記7の判定システムは、付記1から6の何れか一項に記載の判定システムにおいて、前記第1身体情報は、前記対象者の成長速度であり、前記第2身体情報は、前記他の複数の対象者の成長速度である。
【0094】
付記8の判定システムは、付記7に記載の判定システムにおいて、前記判定手段は、前記対象者が早発症であるか否かを、前記対象者の状態として判定する。
【0095】
付記9の判定プログラムは、対象者の状態を判定する判定プログラムであって、コンピュータを、前記対象者の第1身体情報を経時的に特定する第1身体特定情報を取得する取得手段と、前記対象者とは異なる他の複数の対象者の第2身体情報を経時的に特定する第2身体特定情報に基づいて、前記対象者の状態を判定するための判定用情報を生成する生成手段と、前記取得手段が取得した前記第1身体特定情報と、前記生成手段が生成した前記判定用情報とに基づいて、前記対象者の状態を判定する判定手段と、として機能させる。
【0096】
(付記の効果)
付記1に記載の判定システム、及び付記9に記載の判定プログラムによれば、取得した第1身体特定情報と、生成した判定用情報とに基づいて、対象者の状態を判定することにより、例えば、対象者の状態の判定を迅速且つ客観的に行うことが可能となる。特に、例えば、対象者の成長過程の個人差を考慮して、適切に判定することが可能となる。
【0097】
付記2に記載の判定システムによれば、第2身体情報の特徴に基づいて第2身体情報を複数の区分に分類し、分類した複数の区分各々に属する第2身体情報に基づく判定用統計身体特定情報を生成することにより、例えば、第2身体情報の特徴を判定用統計身体特定情報に反映させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0098】
付記3に記載の判定システムによれば、第2身体情報の経時的な変化状態を特徴として、当該第2身体情報を複数の区分に分類することにより、例えば、第2身体情報の経時的な変化状態を判定用統計身体特定情報に反映させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0099】
付記4に記載の判定システムによれば、所定の基準に基づいて、第2身体情報を相互に相対化し、相対化された第2身体情報の経時的な変化状態を特徴として、当該第2身体情報を複数の区分に分類することにより、例えば、第2身体情報の分類精度を向上させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0100】
付記5に記載の判定システムによれば、第2身体情報の特徴点の時間要素を特徴として、第2身体情報を複数の区分に分類することにより、例えば、第2身体情報の特徴点の時間要素を判定用統計身体特定情報に反映させることができるので、対象者の状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0101】
付記6に記載の判定システムによれば、複数の区分に対応する複数の判定用統計身体特定情報から、取得した第1身体特定情報に対応する判定用統計身体特定情報を1つ選択し、選択した1つの判定用統計身体特定情報に基づいて、対象者の状態を判定することにより、例えば、対象者の状態を比較的単純な処理で判定することができるので、迅速に判定することが可能となる。
【0102】
付記7に記載の判定システムによれば、第1身体情報は対象者の成長速度であり、第2身体情報は他の複数の対象者の成長速度であるので、例えば、成長速度に基づいて対象者の状態を判定することが可能となる。
【0103】
付記8に記載の判定システムによれば、対象者が早発症であるか否かを対象者の状態として判定することにより、例えば、対象者が早発症であるかの判定を迅速且つ客観的に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0104】
11 通信部
12 操作部
13 表示部
14 記録部
15 制御部
100 判定装置
141 基準身長情報DB
151 取得部
152 生成部
153 判定部
L1 判定用成長速度曲線
L2 判定用成長速度曲線
L3 判定用成長速度曲線
L4 判定用成長速度曲線
L5 判定用成長速度曲線
L6 判定用成長速度曲線