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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】硫化検出抵抗器
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/04 20060101AFI20221220BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20221220BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20221220BHJP
   H01C 1/034 20060101ALI20221220BHJP
   H01C 1/142 20060101ALI20221220BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20221220BHJP
   H01C 13/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G01N17/04
G01N27/04 E
G01N27/12 B
H01C1/034
H01C1/142
H01C7/00 110
H01C13/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019076151
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020173200
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250611(JP,A)
【文献】特開2001-143902(JP,A)
【文献】特開2016-152258(JP,A)
【文献】特開平10-300699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0174720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 - 17/04
H01C 1/034
H01C 1/142
H01C 7/00
H01C 13/02
G01N 27/04
G01N 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に設けられた硫化可能な硫化検出導体と、前記絶縁基板の裏面における長手方向両端部に設けられた一対の裏電極と、一対の前記裏電極間を接続する抵抗体と、前記抵抗体を覆う保護膜と、前記硫化検出導体の長手方向両端部と前記裏電極を導通する一対の端面電極と、前記端面電極と前記裏電極を覆う一対の外部電極と、を備え、
前記硫化検出導体の長手方向両端部が一対の前記外部電極によって覆われており、一対の前記外部電極で覆われていない領域の前記硫化検出導体が硫化ガスと接触可能な硫化検出部になっていることを特徴とする硫化検出抵抗器。
【請求項2】
請求項1に記載の硫化検出抵抗器において、
前記絶縁基板の裏面から前記保護膜までの高さ寸法が、前記絶縁基板の裏面から前記裏電極を覆う前記外部電極までの高さ寸法に比べて小さくなるように設定されていることを特徴とする硫化検出抵抗器。
【請求項3】
請求項2に記載の硫化検出抵抗器において、
前記裏電極が、前記絶縁基板の裏面上に形成された第1裏電極と、該第1裏電極上に積層された第2裏電極とを含んでいることを特徴とする硫化検出抵抗器。
【請求項4】
請求項1に記載の硫化検出抵抗器において、
前記硫化検出部が硫化ガス透過性保護膜によって覆われていることを特徴とする硫化検出抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食環境の累積的な硫化量を検出するための硫化検出抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にチップ抵抗器等の電子部品の内部電極としては、比抵抗の低いAg(銀)系の電極材料が使用されているが、銀は硫化ガスに曝されると硫化銀となり、硫化銀は絶縁物であることから、電子部品が断線してしまうという不具合が発生してしまう。そこで近年では、AgにPd(パラジウム)やAu(金)を添加して硫化しにくい電極を形成したり、電極を硫化ガスが到達しにくい構造にする等の硫化対策が講じられている。
【0003】
しかし、このような硫化対策を電子部品に講じたとしても、当該電子部品が硫化ガス中に長期間曝された場合や高濃度の硫化ガスに曝された場合は、断線を完全に防ぐことが難しくなるため、未然に断線を検知して予期せぬタイミングでの故障発生を防止することが必要となる。
【0004】
そこで従来より、特許文献1に記載されているように、電子部品の累積的な硫化の度合いを検出して、電子部品が硫化断線する等して故障する前に危険性を検出可能とした硫化検出センサが提案されている。
【0005】
特許文献1に記載された硫化検出センサは、絶縁基板上にAgを主体とした硫化検出体を形成し、この硫化検出体を覆うように透明で硫化ガス透過性のある保護膜を形成すると共に、絶縁基板の両側端部に硫化検出体に接続する端面電極を形成した構成となっている。このように構成された硫化検出センサを他の電子部品と共に回路基板上に実装した後、該回路基板を硫化ガスを含む雰囲気で使用すると、時間経過に伴って他の電子部品が硫化されると共に、硫化ガスが硫化検出センサの保護膜を透過して硫化検出体に接するため、硫化ガスの濃度と経過時間に応じて硫化検出体を構成する銀の体積が減少していく。したがって、硫化検出体の抵抗値の変化や断線を検出することにより、硫化の度合いを検出することができる。
【0006】
また、特許文献1には、硫化検出体を硫化ガス透過性の保護膜と硫化ガス非透過性の保護膜とで覆い、これらを電極間方向と直交する方向に並設させた構成の硫化検出センサが開示されている。このように構成された硫化検出センサでは、硫化ガス透過性保護膜で覆われた領域の硫化検出体が硫化によって断線されたとしても、硫化ガス非透過性保護膜で覆われた領域の硫化検出体は硫化せず、その後に、硫化ガス非透過性保護膜で覆われた硫化検出体が両保護膜の境界から横方向(幅方向)に侵入する硫化ガスによって徐々に硫化していく。これにより、硫化ガス透過性保護膜で覆われた領域が硫化により断線した場合でも、導通状態が確保されている状態では徐々に抵抗値が上昇していくため、その抵抗値を測定することによって硫化の度合いを検出することができ、特に、横方向の硫化の進行は遅いので、長期間にわたる硫化の検出に好適な硫化検出センサとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-250611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、硫化検出体が比抵抗の低いAgを主体とした導電体であるため、累積的な硫化量に伴う硫化検出体の抵抗値変化は極めて微量であり、しかもAgは温度特性(TCR)が非常に悪く、温度による抵抗値変化が大きいため、硫化検出体の抵抗値の変化に基づいて硫化の度合いを正確に検出することは困難となる。また、硫化検出体を硫化ガス透過性と硫化ガス非透過性の2種類の保護膜で幅方向に覆うように構成した硫化検出センサの場合、印刷ズレ等に起因して両保護膜の形成位置がばらつき易くなるため、硫化ガス透過性保護膜で覆われた硫化検出体が断線するタイミングや、硫化ガス非透過性保護膜で覆われた硫化検出体の抵抗値変化率が製品毎にばらついてしまい、検出精度の個体差が大きいという問題もある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、硫化の度合いを正確に検出することができる硫化検出抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の硫化検出抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に設けられた硫化可能な硫化検出導体と、前記絶縁基板の裏面における長手方向両端部に設けられた一対の裏電極と、一対の前記裏電極間を接続する抵抗体と、前記抵抗体を覆う保護膜と、前記硫化検出導体の長手方向両端部と前記裏電極を導通する一対の端面電極と、前記端面電極と前記裏電極を覆う一対の外部電極と、を備え、前記硫化検出導体の長手方向両端部が一対の前記外部電極によって覆われており、一対の前記外部電極で覆われていない領域の前記硫化検出導体が硫化ガスと接触可能な硫化検出部になっていることを特徴としている。
【0011】
このように構成された硫化検出抵抗器では、硫化検出部を有する硫化検出導体と保護膜で覆われた抵抗体とが絶縁基板の表裏両面に振り分けて設けられているため、絶縁基板の表面側に設けられた硫化検出導体の硫化検出部が断線したことを、絶縁基板の裏面側に設けられた抵抗体を流れる電流の抵抗値によって正確に検出することができ、しかも、硫化検出導体が断線した状態になっても外部電極間の導通を確保することができる。
【0012】
上記構成の硫化検出抵抗器において、絶縁基板の裏面から保護膜までの高さ寸法が、絶縁基板の裏面から裏電極を覆う外部電極までの高さ寸法に比べて小さくなるように設定されていると、硫化検出導体が形成された絶縁基板の表面側を上向きにした姿勢で回路基板に実装した際に、絶縁基板の裏面側に形成された保護膜と回路基板との間に隙間が確保されるため、硫化検出抵抗器を安定した姿勢で回路基板上に実装することができる。この場合において、裏電極が、絶縁基板の裏面上に形成された第1裏電極と、該第1裏電極上に積層された第2裏電極とを含んでいると、高さ寸法の厚い裏電極を容易に形成することができて好ましい。
【0013】
また、上記構成の硫化検出抵抗器において、硫化検出導体の硫化検出部は一対の外部電極間から外部に直接露出しても良いが、硫化検出部が硫化ガス透過性保護膜によって覆われていると、硫化検出部が外部からの接触の影響を受け難くなり、硫化検出部を除く硫化検出導体の両端部に外部電極を容易にめっき形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、硫化の度合いを正確に検出することが可能な硫化検出抵抗器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態例に係る硫化検出抵抗器の平面図である。
図2】該硫化検出抵抗器の裏面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4】該硫化検出抵抗器の製造工程を示す平面図である。
図5】該硫化検出抵抗器の製造工程を示す裏面図である。
図6】該硫化検出抵抗器の製造工程を示す断面図である。
図7】該硫化検出抵抗器を回路基板に実装した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る硫化検出抵抗器の平面図、図2は該硫化検出抵抗器の裏面図、図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
【0017】
図1図3に示すように、本実施形態例に係る硫化検出抵抗器100は、直方体形状の絶縁基板1と、絶縁基板1の表面に設けられた硫化検出導体2と、この硫化検出導体2の中央部に設けられ第1保護膜3と、絶縁基板1の裏面の長手方向両端部に設けられた一対の裏電極4と、これら裏電極4間を接続する抵抗体5と、この抵抗体5を覆う第2保護膜6と、絶縁基板1の長手方向両端面に設けられた一対の端面電極7と、硫化検出導体2の両端部と端面電極7および裏電極4を覆う一対の外部電極8と、によって主として構成されている。
【0018】
絶縁基板1は、後述する大判基板を縦横の分割溝に沿って分割して多数個取りされたものであり、大判基板の主成分はアルミナを主成分とするセラミックス基板である。
【0019】
硫化検出導体2は銀を主成分とするAgペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、この硫化検出導体2は絶縁基板1の表面に形成されている。硫化検出導体2の長手方向両端部は硫化ガスの透過を遮断する外部電極8によって覆われているが、硫化検出導体2の中央部は硫化ガスと接触可能な硫化検出部2aとなっている。
【0020】
第1保護膜3は、硫化ガス透過性の絶縁材料からなり、シリコン樹脂やフッ素樹脂等の樹脂ペースト等をスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。第1保護膜3は硫化検出導体2の硫化検出部2aを覆うように形成されており、この第1保護膜3を透過して硫化ガスが硫化検出部2aに接触するようになっている。後述するように、硫化検出抵抗器100が回路基板に実装されて硫化ガスの検出に使用される際に、第1保護膜3によって硫化検出部2aが覆われているため、硫化検出部2aは外部からの接触の影響を受け難くなっている。
【0021】
裏電極4は、絶縁基板1の裏面上に形成された第1裏電極4aと、この第1裏電極4a上に積層された第2裏電極4bとの2層構造からなり、トータル高さの厚い裏電極4が構成されている。第1裏電極4aは銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させた焼成銀からなり、第2裏電極4bは銀を主成分とするAgペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させた樹脂銀からなる。
【0022】
抵抗体5は酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものであり、抵抗体5の両端部は第1裏電極4aに重なっている。
【0023】
第2保護膜6はアンダーコート層6aとオーバーコート層6bの2層構造からなり、この第2保護膜6の両端部に第2裏電極4bが重なっている。アンダーコート層6aはガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものであり、オーバーコート層6bはエポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。これらアンダーコート層6aとオーバーコート層6bは硫化ガスの透過を遮断する絶縁材料からなり、このような第2保護膜6によって抵抗体5の全体が覆われている。
【0024】
端面電極7は、絶縁基板1の端面にNi/Crをスパッタしたり、Ag系ペーストを塗布して加熱硬化させたものであり、端面電極7は硫化検出導体2の長手方向両端部とそれに対応する裏電極4との間を導通するように形成されている。
【0025】
外部電極8はバリヤー層と外部接続層の2層構造からなり、そのうちバリヤー層は電解メッキによって形成されたNiメッキ層であり、外部接続層は電解メッキによって形成されたSnメッキ層である。この外部電極8により、第1保護膜3から露出する硫化検出導体2の両端部と端面電極7および裏電極4の表面が断面コ字状に被覆されている。ここで、第2裏電極4bがオーバーコート層6bの表面高さに対して下方に突出する厚膜構造の裏電極4となっており、このような第2裏電極4bを外部電極8が覆っているため、絶縁基板1の裏面から第2裏電極4bを覆う外部電極8に至る高さ寸法に比べると、絶縁基板1の裏面からオーバーコート層6bに至る高さ寸法は小さくなっている。
【0026】
次に、この硫化検出抵抗器100の製造工程について、図4図6を用いて説明する。なお、図4(a)~(h)はこの製造工程で用いられる大判基板の平面図、図5(a)~(h)は該大判基板の裏面図、図6(a)~(h)は図4(a)~(h)の長手方向中央部に沿った1チップ相当分の断面図をそれぞれ示している。
【0027】
まず、絶縁基板1が多数個取りされる大判基板を準備する。この大判基板には予め1次分割溝と2次分割溝が格子状に設けられており、両分割溝によって区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ領域となる。図4図6には1個分のチップ領域に相当する大判基板が代表して示されているが、実際は多数個分のチップ領域に相当する大判基板に対して以下に説明する各工程が一括して行われる。
【0028】
すなわち、図4(a)と図5(a)および図6(a)に示すように、この大判基板10Aの裏面にAg系ペースト(Ag-Pd20%)をスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成して一対の第1裏電極4aを形成する。
【0029】
次に、図4(b)と図5(b)および図6(b)に示すように、大判基板10Aの表面に銀を主成分とするAgペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、大判基板10Aの表面に長方形状の硫化検出導体2を形成する。なお、硫化検出導体2の長手方向両端部は大判基板10Aの短辺に達する位置まで延びているが、硫化検出導体2の短手方向の寸法は大判基板10Aの短辺長さに比べて若干短めに設定されている。
【0030】
次に、大判基板10Aの裏面に酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、図4(c)と図5(c)および図6(c)に示すように、両端部が第1裏電極4aに重なる抵抗体5を形成する。
【0031】
次に、抵抗体5を覆う領域にガラスペーストをスクリーン印刷した後、このガラスペーストを乾燥・焼成してアンダーコート層6aを形成し、必要に応じてアンダーコート層6aの上から抵抗体5に図示せぬトリミング溝を形成して抵抗値調整する。しかる後、アンダーコート層6aの上からエポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷し、これを加熱硬化してオーバーコート層6bを形成することにより、図4(d)と図5(d)および図6(d)に示すように、抵抗体5の全体を覆う2層構造の第2保護膜6を形成する。
【0032】
次に、第1裏電極4aに重なるように銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷した後、これを加熱硬化して一対の第2裏電極4bを形成することにより、図4(e)と図5(e)および図6(e)に示すように、トータル膜厚の厚い2層構造の裏電極4を形成する。
【0033】
次に、硫化検出導体2の中央部にシリコン樹脂やフッ素樹脂等の樹脂ペースト等をスクリーン印刷し、これを加熱硬化することにより、図3(f)と図4(f)に示すように、硫化検出導体2の中央部を覆う硫化ガス透過性の第1保護膜3を形成する。
【0034】
次に、大判基板10Aを一次分割溝に沿って短冊状基板10Bに1次分割した後、短冊状基板10Bの分割面にNi/Crをスパッタすることにより、図4(g)と図5(g)および図6(g)に示すように、硫化検出導体2と裏電極4(第1裏電極4aと第2裏電極4b)間を接続する一対の端面電極7を形成する。なお、短冊状基板10Bの分割面にNi/Crをスパッタする代わりに、Ag系ペーストを塗布して加熱硬化させることにより端面電極7を形成するようにしても良い。
【0035】
次に、短冊状基板10Bを二次分割溝に沿って複数のチップ状基板10Cに2次分割し、これらチップ状基板10Cに対して電解メッキを施してNiメッキ層とSnメッキ層を順次形成することにより、図4(h)と図5(h)および図6(h)に示すように、第1保護膜3から露出する硫化検出導体2の両端部と端面電極7および裏電極4の表面を覆う一対の外部電極8を形成する。これにより、硫化検出導体2の中央部を除く両端部が硫化ガス非透過性の外部電極8によって被覆され、第1保護膜3で覆われた領域を除く硫化検出導体2の中央部が硫化ガスと接触可能な硫化検出部2aとなり、図1図3に示す硫化検出抵抗器100が完成する。
【0036】
図7に示すように、このように構成された硫化検出抵抗器100は、図示せぬ他の電子部品と共に回路基板11上に実装された後、該回路基板11を硫化ガスを含む雰囲気に曝すことで使用される。その際、硫化検出抵抗器100は、硫化検出導体2が形成された絶縁基板1の表面側を上向きにした姿勢(すなわち、抵抗体5を下向きにした姿勢)で回路基板11上に搭載されるが、第2保護膜6のオーバーコート層6bが裏電極4を覆う一対の外部電極8の間に段落ち状に配置されているため、第2保護膜6と回路基板11との間に段差相当分の隙間が確保される。これにより、硫化検出抵抗器100を安定した姿勢で回路基板11上に搭載することができ、回路基板11の表面に設けられた配線パターン12と硫化検出抵抗器100の外部電極8とを容易に且つ確実に半田13で接合することができる。
【0037】
このようにして回路基板11に実装された硫化検出抵抗器100が硫化ガスに曝されると、硫化ガスが第1保護膜3を透過して硫化検出導体2の硫化検出部2aに接触するため、経年的に累積硫化量が増えていくことにより、硫化検出部2aが第1保護膜3の内部で断線し、この時点で抵抗体5を流れる電流の抵抗値によって硫化の度合いを正確に検出することができる。しかも、絶縁基板1の表面側に設けられた硫化検出導体2が断線した状態になっても、絶縁基板1の裏面側に設けられた抵抗体5は硫化されないため、一対の外部電極8間の導通を抵抗体5によって確保することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態例に係る硫化検出抵抗器100では、硫化検出部2aを有する硫化検出導体2と第2保護膜6で覆われた抵抗体5とが絶縁基板1の表裏両面に振り分けて設けられているため、絶縁基板1の表面側に設けられた硫化検出導体2の硫化検出部2aが累積的な硫化により断線したことを、絶縁基板1の裏面側に設けられた抵抗体5を流れる電流の抵抗値により正確に検出することができ、しかも、硫化検出導体2が断線した状態になっても外部電極8間の導通を確保することができる。
【0039】
また、本実施形態例に係る硫化検出抵抗器100では、絶縁基板1の裏面から第2保護膜6に至る高さ寸法が、絶縁基板1の裏面から裏電極4を覆う外部電極8に至る高さ寸法に比べて小さくなっており、裏電極4を覆う一対の外部電極8で挟まれた領域に第2保護膜6が段落ち状に配置された構成となっているため、硫化検出導体2が形成された絶縁基板1の表面側を上向きにした姿勢で回路基板11に実装した際に、絶縁基板1の裏面側に形成された第2保護膜6と回路基板11との間に両者の当接を回避する隙間が確保され、硫化検出抵抗器100を安定した姿勢で回路基板11上に実装することができる。しかも、裏電極4が、絶縁基板1の裏面上に形成された第1裏電極4aと、第1裏電極4a上に積層された第2裏電極4bとの積層構造(2層構造)からなるため、高さ寸法の厚い裏電極4を容易に形成することができる。
【0040】
また、本実施形態例に係る硫化検出抵抗器100では、硫化検出導体2の硫化検出部2aが硫化ガス透過性の第1保護膜3によって覆われているため、硫化検出部2aが外部からの接触の影響を受け難くなると共に、硫化検出部2aを除く硫化検出導体2の両端部に外部電極8を容易にめっき形成することができる。ただし、第1保護膜3を省略して硫化検出部2aが外部に露出する構成にすることも可能であり、その場合は、硫化検出部2aを溶解剥離型のレジスト膜で被覆した状態で外部電極8をめっき形成し、外部電極8のめっき形成後にレジスト膜を溶剤で剥離・除去して硫化検出部2aを露出させれば良い。
【符号の説明】
【0041】
1 絶縁基板
2 硫化検出導体
2a 硫化検出部
3 第1保護膜
4 裏電極4
4a 第1裏電極
4b 第2裏電極
5 抵抗体
6 第2保護膜
6a アンダーコート層
6b オーバーコート層
7 端面電極
8 外部電極
10A 大判基板
10B 短冊状基板
10c チップ状基板
11 回路基板
12 配線パターン
13 半田
100 硫化検出抵抗器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7