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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221220BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20221220BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20221220BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20221220BHJP
   G08G 1/137 20060101ALI20221220BHJP
   H04W 4/029 20180101ALI20221220BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20221220BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G05D1/02 S
G08G1/00 X
G08G1/09 V
G08G1/09 H
G08G1/137
H04W4/029
H04W4/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019088278
(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公開番号】P2020184195
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕丈
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 朋之
(72)【発明者】
【氏名】石本 英史
(72)【発明者】
【氏名】桐村 亮好
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-315112(JP,A)
【文献】特開2014-203398(JP,A)
【文献】特開2017-111576(JP,A)
【文献】特開2018-18379(JP,A)
【文献】中国実用新案第203233545(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G05D 1/02
G08G 1/00
G08G 1/09
G08G 1/137
H04W 4/029
H04W 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱山内を自律走行する自律走行車両と、
有人車両
備え、
前記自律走行車両と前記有人車両とは、各々が自己位置推定装置と車載型通信端末とを備え、
複数の前記車載型通信端末を無線接続する複数の無線回線を備え、
前記無線回線ごとに同一の位置情報を割り当てるための複数のサブフレームを時分割多重方式により構成した1つの無線フレームを1つの無線チャネルを介して通信可能に接続される車両制御システムであって、
前記有人車両は、車々間距離又は通信距離に対応する伝搬ロスから求まる第1の変調方式を用いて第1の位置情報粒度で有人車両位置情報を送信し、
前記自律走行車両は、前記第1の変調方式で送信された前記有人車両位置情報に基づいて、前記有人車両との距離が、第1の車間距離閾値以下と判断した場合に、前記第1の変調方式とは異なる第2の変調方式で、且つ前記第1の位置情報粒度よりも小さい第2の位置情報粒度で前記有人車両位置情報を送信するよう前記有人車両に指示し、前記有人車両は、前記自律走行車両から、前記第2の変調方式を用いて前記第2の位置情報粒度で前記有人車両位置情報を送信するよう指示を受けると、前記第2の変調方式を用いて前記第2の位置情報粒度で前記有人車両位置情報を送信する
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記有人車両の前記車載型通信端末は、前記自律走行車両の非常減速又は停止を指示する非常減速/停止信号と、GPS受信機から送られてくる自己の現在位置を示す位置情報を送信データとして生成するよう構成され、
前記自律走行車両は、前記送信データを受信すると、前記第1の位置情報粒度で送信された前記有人車両の現在位置情報に基づいて得られる距離、及び前記第2の位置情報粒度で送信された前記有人車両の現在位置情報に基づいて得られる距離のうち少なくとも一方に従って判断される前記有人車両との距離が、前記第1の車間距離閾値よりも短い第2の車間距離閾値以下と判断した場合、減速又は停止を含む衝突回避のための動作を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御システムにおいて、
前記第2の変調方式を用いて前記第2の位置情報粒度で前記有人車両位置情報を送信する通信は、前記自律走行車両と前記有人車両との間で通信される車々間通信である
ことを特徴とする請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記自律走行車両は、各々の前記自律走行車両が前記車々間通信に関し個別の優先度を与えられる複数の車両であり、
前記優先度の値が第1の値である前記自律走行車両は、前記優先度の値が前記第1の値よりも小さい第2の値である前記自律走行車両に比べ、優先的に前記車々間通信を割り当てられる、請求項3に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記自律走行車両は、前記自己位置推定装置により得られる位置情報の変化又は車体に備えた傾斜センサにより得られる傾斜情報から、上り坂を上っているか否かを判定し、上り坂を上っていると判定される場合には、他の自律走行車両に比べ高い優先度を与えられる、請求項4に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記自律走行車両と前記有人車両が高低差のある別のコースを走行しており、前記有人車両が前記自律走行車両よりも高い位置にいる場合には、前記自律走行車両に対し、他の自律走行車両に比べ高い優先度が与えられる、請求項4に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記自律走行車両が前記有人車両により追尾されている場合には、前記自律走行車両に対し、追尾されていない他の自律走行車両に比べ高い優先度を与えられる、請求項4に記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記自律走行車両は、さらに積荷重量を計測するため、車輪を支持するサスペンションシリンダに圧力センサを備え、所定の重量以上の積荷を積載している場合には、前記所定の重量以上の積荷を積載していない場合に比べ高い優先度を与えられる、請求項4に記載の車両制御システム。
【請求項9】
前記第2の変調方式は、前記第1の変調方式に比べて通信速度が大きい、請求項1に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システムに関し、特に鉱山現場において自律走行車両の制御を実行することを可能に構成された車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山現場では、人件費の高騰や安全性の向上により、運搬車両を自律走行させる要望が高い。この要望に対し、鉱山現場において土砂や鉱物を搬送する運搬車両を、有人運転によらず管制サーバ等からの指示に従って自律走行させる技術が知られている。例えば特許文献1には、車両相互間の位置データを送信して相互の位置関係を監視し、車両同士が接近し過ぎた場合には車両を減速又は停止させて干渉を回避する技術が開示されている。また特許文献2には、鉱山現場内を走行する運搬車両に対して、非常停止入力装置が操作されるときのみ、鉱山現場内を走行する全ての運搬車両に対して非常停止信号を送信する技術が開示されている。
【0003】
しかし、運搬車両が頻繁に減速又は停止すると運搬効率が低下し、鉱山の採掘作業の生産性の低下につながる。このため、必要な場合にのみ運搬車両を減速又は停止させたいという要望がある。また、自律走行エリアに作業者や有人車両が立ち入り作業を行うケースもあり、非常の際に、作業者や有人車両が遠隔操作により自律走行の運搬車両を停止させて安全を確保することも求められる。
【0004】
安全性を考慮すると、車両相互間の位置データを送受信して相互の位置関係を監視し、車両同士が接近し過ぎた場合には車両を減速又は停止させて干渉を回避する機能も必要となる。その場合に、安全性を維持しつつ鉱山の採掘作業の生産性の維持する観点からは、運搬車両の減速時間は出来るだけ短くし、不要な停止はなくしたいという要望がある。しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に開示の技術では、安全性の確保と生産性の向上とを両立することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-222227号公報
【文献】特開2017-72946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、安全性の確保と生産性の向上とを両立することを可能とした車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両制御システムは、鉱山内を自律走行する自律走行車両と、有人車両と、前記自律走行車両の非常減速又は停止を指示するための端末とを備え、前記自律走行車両と前記有人車両とは、各々が自己位置推定装置を備え、1つの無線チャネルを介して通信可能に接続される車両制御システムである。このシステムにおいて、前記有人車両は、第1の通信方法を用いて第1の粒度で有人車両位置情報を送信し、前記自律走行車両は、前記第1の通信方法で送信された前記有人車両位置情報に基づいて、前記有人車両との距離が、第1の車間距離閾値以下と判断した場合に、前記第1の通信方法とは異なる第2の通信方法で、且つ前記第1の粒度よりも小さい第2の粒度で前記有人車両位置情報を送信するよう前記有人車両に指示する。前記有人車両は、前記自律走行車両から、前記第2の通信方法を用いて前記第2の粒度で前記有人車両位置情報を送信するよう指示を受けると、前記第2の通信方法を用いて前記第2の粒度で前記有人車両位置情報を送信する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両制御システムによれば、自律走行車両と有人車両が接近した場合に、安全性を維持しながら自律走行車両の不要な減速又は停止を減らすことが可能となり、安全性の向上と生産性の向上とを両立することを可能とした車両制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係わる車両制御システム1000の全体構成の一例を示した概略図である。
図2】車両制御システム1000で用いられる無線フレーム及びサブフレームの一例を示した概略図である。
図3】第1の実施の形態に係わる車両制御システム1000における接近検知及び非常減速/停止の動作の一例を示した概略図である。
図4】通信距離毎に選択可能な変調方式とその符号化率、通信速度比の一例を示した表である。
図5】第1の通信方法による第1の粒度で位置情報を送受信した場合と、第2の通信方法による第2の粒度で位置情報を送受信した場合とで、次の位置情報取得のタイミングまでに無人車両10-1及び有人車両20-1が移動し得る範囲(移動可能領域)の違いを比較検証する概念図である。
図6図5に示す移動可能領域を図示した概略図である。
図7】優先度の付与について説明する概念図である。
図8】優先度の付与について説明する概念図である。
図9】優先度の付与について説明する概念図である。
図10】積荷の積載量を計測可能な無人ダンプ10-1、及びサスペンションシリンダ41、42の構成の一例を示す。
図11】複数の要素の合計に従って優先度を決定する例について説明する表である。
図12】車載型送信端末2の構成例を示すブロック図である。
図13】車両制御システム1000で用いられる通信プロトコルスタックについて説明する概略図である。
図14】安全通信レイヤ、無線通信レイヤのデータフォーマットの一例を示した図である。
図15】車載型送信端末2の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一又は関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施形態では、特に必要なとき以外は同一又は同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0011】
以下の実施形態においては、便宜上必要があるときは、複数のセクション又は実施形態に分割して説明する。以下の実施形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。尚、以下の実施形態において、その構成要素(処理ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。
【0012】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態に係わる車両制御システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、第1の実施の形態に係わる車両制御システム1000の全体構成の一例を示した概略図である。
【0013】
図1において、車両制御システム1000は、携帯型送信端末1-1~1-2、車載型送信端末2-1~2-2、車載型受信端末3-1~3-4、中継基地局4-1~4-2、統括基地局5、自律走行車両(以下「無人ダンプ」という)10-1~10-4、有人運転による有人車両20-1~20-2、及び管制センター30から構成される。無人ダンプ10-1~10-4は、土砂や鉱石等の積荷を搬送することを目的とした、無人で自律走行可能で、土砂や採掘物を運搬する運搬車両である。また、管制センター30には、運行管理システム31、及び非常減速/停止入力装置32が設置されている。
【0014】
尚、各装置の台数については、図示のものや特定の数字に限定されない。例えば車載型受信端末3-1~3-4や無人ダンプ10-1~10~4は、1台構成であっても複数台構成であってもよく、車載型送信端末や有人車両も、1台構成であっても複数台構成であってもよい。また、図示していないが、無人ダンプ10-1~10-4が自律走行するための自律走行に必要なシステムが、鉱山内の作業現場に設けられている。
【0015】
携帯型送信端末1-1、1-2の構成は全て同じであってよいし、異なった構成であってもよい。以下では、携帯型送信端末1-1、1-2を区別することなく総称して「携帯型送信端末1」と記載することがある。同様に、車載型送信端末2-1、2-2、車載型受信端末3-1~3-4、中継基地局4-1、4-2についても、総称して「車載型送信端末2」、「車載型受信端末3」、「中継基地局4」と記載することがある。また、無人ダンプ10-1~10-4の構成も全て同じであってよいので、総称する場合は「無人ダンプ10」と記載することがある。有人車両20-1、20-2も、総称して「有人車両20」と称することがある。
【0016】
無人ダンプ10は、原則として運転手が搭乗することなく運行され、車両制御システム1000の制御に基づき無人で走行することが可能に構成された自律走行車両である。なお、本システムの制御対象は無人ダンプであるが、本システムの制御対象の自律走行車両は、無人ダンプには限定されず、有人ダンプをも併せて制御対象とし、無人ダンプ10と同様の制御を行うことも可能である。無人ダンプ10は、鉱山現場内で予め設定された走行路100を無人で自律走行する。例えば無人ダンプ10は、走行路100に沿って、積込場200で土砂や鉱石の積込作業を行っているショベル(図示せず)と放土場300との間を往復し、積荷を搬送する。
【0017】
尚、鉱山現場では、土砂や鉱石等の積荷を搬送する無人ダンプ10以外に、有人車両20も走行する。有人車両20は、運転手やその他の搭乗者が乗車可能に構成され、運転手によって運転操作可能に構成された車両である。有人車両20は、例えば、積込場200で掘削及び積込作業を行うショベル、走行路100の路面の整地を行うドーザ、散水車、鉱山現場内をパトロールするサービスカー等を含み得る。
【0018】
携帯型送信端末1は、鉱山現場内の作業者が携帯可能な携帯型装置であり、非常時に無人ダンプ10の非常停止を指示する非常停止装置である。車載型送信端末2は、有人車両20に搭載される車載型装置であり、有人車両20の運転手又は搭乗者が非常時に無人ダンプ10の非常停止を指示する非常停止装置である。尚、ここで「非常時」とは、無人ダンプ10を停止させる必要のある状況全般をいい、例えば無人ダンプ10同士又は無人ダンプ10と有人車両20とが接触干渉する可能性のある状況や、作業者と無人ダンプ10とが接触干渉する可能性のある状況などである。
【0019】
車載型受信端末3-1~3-4は、無人ダンプ10-1~10-4にそれぞれ搭載された無線受信装置である。車載型受信端末3-1~3-4は、携帯型送信端末1又は車載型送信端末2から送信される、無人ダンプ10-1~10-4を停止させるための非常減速/停止信号を受信する。非常減速/停止信号は、これらの端末から直接受信することも可能であり、中継基地局4又は統括基地局5を介した中継により非常減速/停止信号を受信することも可能である。車載型受信端末3-1~3-4が非常減速/停止信号を受信すると、無人ダンプ10-1~10-4は減速又は走行を停止する。無人ダンプ10に搭載される車載型受信端末3のアンテナの設置箇所は、特定の箇所には限定されない。一例として当該アンテナは。電波の見通しのよい場所、例えば無人ダンプ10の上面前方に設置され得る。
【0020】
携帯型送信端末1、及び車載型送信端末2は、現場内の走行路100、積込場200、放土場300などから、非常減速/停止信号を送信することが可能に構成される。また、車載型受信端末3は、携帯型送信端末1又は車載型送信端末2から送信される非常減速/停止信号を直接又は間接的に受信することが可能に構成される。各中継基地局4と統括基地局5は、走行路100、積込場200、放土場300など無人ダンプ10及び有人車両20が移動する可能性がある位置において無線通信が可能となる位置に設置されている。
【0021】
各中継基地局4と統括基地局5とは、相互に通信を行うため、無線回線で接続されており、携帯型送信端末1及び車載型送信端末2から送信される非常減速/停止信号を中継し、鉱山現場内の全ての無人ダンプ10に対して、非常減速又は停止を指示することができる。これにより、いずれかの携帯型送信端末1又は車載型送信端末2から非常減速/停止信号が発せられた場合、当該減速又は停止が必要な無人ダンプ10以外の無人ダンプも、全て減速又は停止させることが可能である。
【0022】
管制センター30に設置された非常減速/停止入力装置32と統括基地局5とは、有線回線33により互いに接続されている。非常減速/停止入力装置32は、オペレータの操作に従い、非常減速又は停止を指示する装置である。管制センター30内のオペレータは、非常減速/停止入力装置32を用いて、統括基地局5経由で全ての無人ダンプ10に対して非常減速/停止を指示することができる。なお、非常減速/停止入力装置32は、統括基地局5と接続しているものとして説明したが、中継基地局4と接続する構成であってもよい。
【0023】
有人車両20に搭載される車載型送信端末2及び無人ダンプ10に搭載される車載型受信端末3-1~3-4はGPS受信機能を搭載している。このGPS受信機能により、無人ダンプ10及び有人車両20は自己の位置情報を識別することが可能である。有人車両20に搭載される車載型送信端末2は、自己の位置情報を送信する機能を有する。無人ダンプ10に搭載される車載型受信端末3は、有人車両20から送られてくる有人車両20の位置情報と、無人ダンプ10に搭載されたGPS受信機能から取得した自己の位置情報を用いて、無人ダンプ10と有人車両20の間の車々間距離(車々間通信の通信距離)を求めることができる。
【0024】
なお、この実施の形態の説明において、この車両制御システム1000内で設定される無線回線を、以下のように定義する。
・各中継基地局4と統括基地局5との間で相互に通信を行うため無線回線を「路々間通信510」と呼ぶ。
・各中継基地局4と無人ダンプ10又は有人車両20との間で相互に通信を行うための無線回線を「路車間通信520」と呼ぶ。
・携帯型送信端末1と無人ダンプ10との間で相互に通信を行うための無線回線を「歩車間通信530」と呼ぶ。
・携帯型送信端末1と各中継基地局4との相互に通信を行うための無線回線を「歩路間通信540」と呼ぶ。
・無人ダンプ10と有人車両20との間で相互に通信を行うための無線回線を「車々間通信550」と呼ぶ。
【0025】
図2は、車両制御システム1000で用いられる所定の間隔で送信される無線フレーム及び無線フレームを構成するサブフレームの一例を示した図である。無線フレームは、1つの無線チャネル上を所定の間隔で送信される。複数の無線基地局及び無線端末の間を、複数の通信路を介して1つの無線チャネル上で通信接続する場合には、お互いの通信が干渉することを防止するために多重化方式が採用される。干渉を防ぐための多重化方式としては、Wi-Fiシステム等で用いられているキャリアセンスを用いたCSMA-CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)方式と、複数の無線基地局及び無線端末又は複数の通信路に応じて、予めサブフレームと呼ばれる単位で無線フレームを区切り、すべてのサブフレームに対して定常的に接続機会が与えられるTDMA(Time Division Multiple Access)と呼ばれる時分割多重方式が知られている。
【0026】
一般に、CSMA-CA方式では、無線基地局数や無線端末が増えると接続機会が得られにくくなるという問題がある。このため、安全性を重要視する無線システムでは、定常的に接続機会が与えられる時分割多重方式を採用することが多い。
【0027】
図2(A)で示すサブフレーム割当2000では、時分割多重化方式に従い所定の間隔(例えば1秒間隔)で無線フレームが区切られている。一例として無線フレームは、複数の通信路に応じて制御用通信を割り当てるための制御用通信サブフレーム1500、路々間通信510を割り当てるための路々間通信サブフレーム1510、路車間通信520を割り当てるための路車間通信サブフレーム1520、歩車間通信530を割り当てるための歩車間通信サブフレーム1530、歩路間通信540を割り当てるための歩路間通信サブフレーム1540、及びそれ以外の用途に割り当てるための予約サブフレーム1590に分割され得る。
【0028】
制御用通信とは、中継基地局4、携帯型送信端末1、車載型送信端末2、及び車載型受信端末3が通信を開始するために必要な報知パラメータの配信、及び通信開始するために必要な接続手続を行うための通信を含む。なお、図2では図示していないが、各サブフレーム間には、実際は伝搬遅延時間の差による干渉を防ぐためのガードタイムと呼ばれる間隔が設けられる。また、各サブフレームは、上り回線と下り回線を同一の周波数で通信するTDD(Time Division Duplex)方式を採用した場合、下り回線及び上り回線で2分割され得る。TDD方式に替えて、下り回線と上り回線を異なる周波数で通信するFDD方式(Frequency Division Duplex)を採用することもできる。
【0029】
なお、各携帯型送信端末1、各車載型送信端末2、車載型受信端末3、各中継基地局4、及び統括基地局5は、通信する相手によって予め決められたサブフレームを割り当てられる。非常減速/停止信号等の安全性を維持するために必要な通信は全て、制御用通信サブフレーム1500、路々間通信サブフレーム1510、路車間通信サブフレーム1520、歩車間通信サブフレーム1530、及び歩路間通信サブフレーム1540に割り当てられている。各サブフレームが1無線フレーム中毎に与えられるため、各携帯型送信端末1、各車載型送信端末2、車載型受信端末3、各中継基地局4、及び統括基地局5は、1無線フレーム毎に必ず通信機会が与えられる。
【0030】
上述の予約サブフレームは、適宜他の用途に割り当てることができる。例えば、図2(B)で示すサブフレーム割当2100は、図2(A)の予約サブフレーム1590の部分に、車々間通信に割り当てるための車々間通信サブフレーム1550を割り当てた場合を示している。図2(A)のサブフレーム割当2000における予約サブフレーム1590は、1無線フレームに対し、制御用通信サブフレーム1500、路々間通信サブフレーム1510、路車間通信サブフレーム1520、歩車間通信サブフレーム1530、歩路間通信サブフレーム1540を割り当てた後の残余部分として割り当てられている。このため、予約サブフレーム1590は、他のサブフレームに比べて必然的にサブフレーム長が短くなってしまい、そのままでは車々間通信サブフレーム1550に割り当てられる無線リソースは少なく、本来割り当てるべき車々間通信550が割り当てられなくなるという問題が発生する。
【0031】
ここで、中継基地局4と統括基地局5との間の距離、及び中継基地局4又は統括基地局5と無人車両10との間の距離などを含めた鉱山の環境を考えると、路々間通信510、路車間通信520における通信距離は、数km~10km程度確保することが必要である。一方、車々間通信550における通信距離は、無人ダンプ10と有人車両20が接近しているときだけ通信するのであれば、数100m程度あれば十分となる。
【0032】
無線通信において、通信距離が数kmから10km程度必要な通信方法と、通信距離が数100mで十分な通信方法とに同様にリソースを配分することは非効率である。そこで、この第1の実施の形態のシステムでは、通信距離が数km~10km程度の遠距離通信には、第1の通信方法として、例えばQPSK変調方式(符号化率1/3)を割り当てる。一方、通信距離が数100m程度の近距離通信は、第2の通信方法として、例えば64QAM変調方式(符号化率5/6)を割り当てる。この場合、第2の通信方法を用いた近距離通信における通信速度は、遠距離通信における通信速度に比べて10倍となる。図2(C)で示すサブフレーム割当2200は、制御用通信500、路々間通信510、路車間通信520、歩車間通信530、歩路間通信540には第1の通信方法を適用し、車々間通信550に第2の通信方法を適用したものである。車々間通信550が割り当てられる車々間通信サブフレーム1550において、大きな通信速度(縦軸)が得られる。
【0033】
図2(D)のサブフレーム割当2300は、車々間通信550が割り当てられる車々間通信サブフレーム1550’を1の無線フレーム内において複数に分割して配置した例を示している。図2(C)の場合と同様に、車々間通信550が割り当てられる車々間通信サブフレーム1550’において、大きな通信速度(縦軸)が得られる。このサブフレーム割当2300の場合、車々間通信サブフレーム1550’に割り当てる車々間通信550に関し、1無線フレームあたりで複数回(図2(D)の場合、5回)の通信機会が得られる。
【0034】
図3は、第1の実施の形態に係わる車両制御システム1000における接近検知及び非常減速/停止の動作の一例を示した図である。有人車両20-1は、通常時は、有人車両20-1に搭載されたGPS受信機(図示せず)から自己の位置情報を取得し、この位置情報を、第1の通信方法を用いて路車間通信520により送信する。なお、第1の通信方法を用いた場合の位置情報の粒度は第1の粒度とする。第1の粒度とは、例えば10m単位である。
【0035】
一方、無人ダンプ10-1は、有人車両20-1から受信した有人車両20-1の位置情報を、当該第1の通信方法を用いた路車間通信520により受信する。無人ダンプ10-1は、自己の位置情報と有人車両20-1の位置情報とを用いて、無人ダンプ10-1と有人車両20-1の車々間距離を求めることが出来る。
【0036】
無人ダンプ10-1は、有人車両20-1から第1の通信方法で受信した第1の粒度を持つ位置情報に基づいて、有人車両20-1との車々間距離が、予め定めた接近検知第1段階の車間距離X以下か否かを判断する。車々間距離が車間距離X以下と判断した場合、無人ダンプ10-1は、有人車両20-1に対し、第2の通信方法により、第1の粒度よりも小さい第2の粒度で位置情報を送信するよう路車間通信520により指示する。有人車両20-1は、無人ダンプ10-1からこの指示を受けると、第2の通信方法を用いて、車々間通信サブフレーム1550に使用しての車々間通信550により、第2の粒度で自己の位置情報を送信する。
【0037】
無人ダンプ10-1はまた、第1の粒度で送信された位置情報に基づいて得られる距離、又は第2の粒度で送信された位置情報に基づいて得られる距離のうち少なくとも一方に従って判断される有人車両20-1との車々間距離が、予め定めた接近検知第2段階の車間距離Y以下か否かを判断する。車間距離Y以下と判断した場合、無人ダンプ10-1は減速又は停止する。ここで、無人ダンプ10-1は、相互の位置情報を用いて、無人ダンプ10-1と有人車両20-1との間の車々間距離、すなわち、車々間通信の通信距離を求めることができる。
【0038】
本システムでは、予め定めた接近検知第1段階で定義する車々間距離X又は通信距離に対応する伝搬ロスから求まる通信方法(変調方式、符号化率)を用いて車々間通信を行う。これにより、高精度な位置情報を高頻度で送ることが可能となる。なお、携帯電話やWi-Fiのような無線システムを一般の街中で使用する場合は、ビルや建物等の反射物があるため、通信距離から伝搬ロスを一意に定めることは一般的に難しい。しかしながら、鉱山は街中に比べて反射物が少ないため、通信距離から伝搬ロスを求めやすい。なお、通信距離から伝搬ロスを求める方法については、特定のものには限定されないが、一般に用いられている距離に対する2乗則の自由空間モデルを用いることで、通信距離から伝搬ロスを求めることができる。また、変調方式にも制限はなく、スペクトル拡散変調方式、周波数ホッピング方式、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式全てに適用可能である。
【0039】
図4は、通信距離毎に選択可能な変調方式とその符号化率、通信速度比の一例を示した表である。図4に示す通信速度比は、QPSK変調方式、符号化率1/3の場合の通信速度を基準として通信速度比を意味している。
例えば、第1の通信方法では、路々間通信510や路車間通信520により1kmを超える通信距離で通信を行うことを想定しなければいけない。このため、例えばQPSK変調方式で、符号化率1/3の通信方法が第1の通信方法として選択され得る。
一方、第2の通信方法では、例えば、車々間距離が100mとなることがあり得ることに対応し、一例として64QAM変調方式、符号化率5/6の通信方法が第2の通信方法として選択され得る。この場合、第2の通信方法で選択される64QAM(符号化率5/6)の通信速度は、第1の通信方法で選択されるQPSK変調方式(符号化率1/3)の通信速度に比べて10倍となる(通信速度比が10)。
【0040】
次に、図5の概念図を参照し、第1の通信方法による第1の粒度で位置情報を送受信した場合と、第2の通信方法による第2の粒度で位置情報を送受信した場合とで、次の位置情報取得のタイミングまでに無人車両10-1及び有人車両20-1が移動し得る範囲(移動可能領域)の違いを比較検証する。ここでは、無人ダンプ10-1の移動速度が時速60kmであり、有人車両20-1の移動速度が同様に時速60kmであると想定する。また、第1の通信方法による第1の粒度が10m、送信頻度が1秒に1回(1回/秒)であると想定する。また、第2の通信方法による第2の粒度が1m、送信頻度が0.2秒に1回(5回/秒)であると想定する。
【0041】
この場合において、第1の粒度を有する第1の通信方法が使用されると、無人ダンプ10-1及び有人車両20-1は、それぞれ位置情報の粒度が持つ誤差が10mであり、送信頻度が1秒に1回(1回/秒)である。このため、無人ダンプ10-1及び有人車両20-1は、次の位置情報取得(1秒後)までに16m進んでしまう(時速60km)。次の位置情報取得(1秒後)のタイミングまでに無人ダンプ10-1及び有人車両20-1が移動し得る領域(移動可能領域)は、半径26mの円となる。
【0042】
一方、第2の粒度を有する第2の通信方法が使用されると、無人ダンプ10-1及び有人車両20-1は、それぞれ位置情報の粒度が持つ誤差が1mであり、且つ送信頻度が0.2秒に1回(5回/秒)である。このため、無人ダンプ10-1及び有人車両20-1は、次の位置情報取得(0.2秒後)までに3.2mしか進まない(時速60km)。次回位置情報取得(0.2秒後)までに無人ダンプ10-1及び有人車両20-1が移動し得る領域(移動可能領域)は、半径4.2mの円であり、第1の通信方法の場合に比べ非常に小さい。
【0043】
次回の位置情報取得までに車両が移動し得る領域が小さければ小さいほど、接近検知第2段階の車間距離Yを短くすることが可能となる。又は、無人ダンプ10-1が減速して動作する時間を短縮したり、又は不要な停止の回数を減らしたりすることが可能となり、本システムの生産性を大きく向上させることが可能となる。
【0044】
図6は、上述した移動可能領域を図示した概略図である。この図6では、第1の粒度を有する第1の通信方法が使用される場合における有人車両20-1の次回位置情報取得までの移動可能領域600、及び無人ダンプ10-1の次回位置情報取得までの移動可能領域610を示している。また図6は、第2の粒度を有する第2の通信方法が使用される場合における有人車両20-1の次回位置情報取得までの移動可能領域700、及び無人ダンプ10-1の次回位置情報取得までの移動可能領域710を示している。
【0045】
なお、この実施の形態での説明では、無人ダンプ10及び有人車両20を減速させるか否かの判断の手法、停止させるかどうかの判断の方法は、特定のものに限定されない。図6から明らかなように、次回の位置情報取得までの移動可能領域を大きく狭めることにより、減速時間を短縮したり、又は不要な停止を抑制したりすることができる。具体的には、通信方法が切り替わることで、移動可能領域を大きな領域600、610から小さな領域に700、710に切り替えることができる。これにより、無人ダンプ10-1の非常減速/停止が生じる可能性を少なくすることができ、鉱山の採掘作業の効率を向上させることができる。
【0046】
以上説明したように、この第1の実施の形態の車両制御システムによれば、無人ダンプ10と有人車両20とは、当初は第1の粒度の第1の通信方法で通信しているところ、両者間の距離が第1の車間距離閾値以下となったと判断される場合に、無人ダンプ10は、第1の通信方法とは異なる第2の通信方法で、且つ第1の粒度よりも小さい第2の粒度で位置情報を送信するよう有人車両20に指示する。有人車両20は、無人ダンプ10から、第2の通信方法を用いて第2の粒度で位置情報を送信するよう指示を受けると、第2の通信方法を用いて第2の粒度で位置情報を送信する。第2の粒度の第2の通信方法による位置情報の送信がなされることにより、無人ダンプ10が不要に減速又は停止の対象とされることが抑制される。従って、この第1の実施の形態によれば、安全性の確保と生産性の向上とを両立することを可能とした車両制御システムを提供することができる。なお、上記の説明では、非常時に無人ダンプ10を減速又は停止させる制御を説明したが、減速又は停止の代わりに、例えば無人ダンプ10を迂回路に迂回させるなどの制御を行うこともできる。すなわち、非常時において無人ダンプ10と他の車両等との衝突を回避するための手法が取られるのであれば、その衝突回避の方法は特定のものには限定されない。
【0047】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る車両制御システムを、図7図11を参照して説明する。この第2の実施の形態の車両制御システムの全体構成や全体的な動作は、第1の実施の形態と略同一であるので、重複する説明は省略する。ただし、この第2の実施の形態では、第1の通信方法から第2の通信方法に切り替える場合における動作の詳細が第1の実施の形態とは異なっている。具体的にこの第2の実施の形態では、有人車両20と無人ダンプ10が第1段階の車々間距離がX以下となった場合、原則として有人車両20と無人ダンプ10との間で車々間通信が開始され、第2の粒度を有する第2の通信方法により通信が開始される。ただし、この切り替えの際に、下に説明する優先度が考慮され、より優先度が高い無人ダンプ10は、優先度が低い無人ダンプ10よりも優先して第2の通信方法に切り替えられる。換言すれば、自律走行車両である複数の無人ダンプ10は、それぞれ車々間通信に関し個別の優先度を与えられる。なお、優先度の決定は、例えば管制センター30において実行することができる。
【0048】
車々間通信サブフレーム1550に割り当てる車々間通信550のデータ量が、車々間通信サブフレーム1550で送ることが可能な通信容量を超える場合がある。換言すれば、車々間通信サブフレーム1550に割り当てられる車々間通信550の無線リソース(割り当てられる回線数)は有限であるため、全ての有人車両20と無人ダンプ10の間の車々間通信550が車々間通信サブフレーム1550により可能となるとは限らない。そこで、この第1の実施の形態のシステムは、データ量が通信容量を超える場合に、所定の条件に従って定まる優先順位に従い、車々間通信550に対し車々間サブフレーム1550を割り当てる。優先度の高い状況にある無線ダンプ10については、車々間サブフレーム1550を用いた第2の通信方法による車々間通信が開始される一方で、優先度が低い状況にある無線ダンプ10については、車々間通信は行われず、引き続き路車間通信による制御が継続されることがあり得る。
【0049】
無人ダンプ10の位置情報、及び位置情報から判別される地図情報、無人ダンプ10の走行状態に関する情報、無人ダンプ10の積荷積載情報、その他鉱山での採掘に関する様々な情報に基づいて優先度が高い状況にあると判断される場合には、その無人ダンプ10に対し車々間サブフレーム1550を優先的に割り当てることができる。
【0050】
例えば、図7に示すように、無人ダンプ10-1と有人車両20-1が走行路100上で接近しているが、無人ダンプ10-1は上り坂を走っており、一方、有人車両20-1は下り坂を走っているとする。この場合は、無人ダンプ10-1の非常時の減速や停止が容易であり、危険性が低いと判断され、減速や停止をできるだけ回避することが鉱山の採掘作業を効率化の観点からは望ましい。このため、この第2の実施の形態のシステムでは、この図7のような状況にある無人ダンプ10-1に高い優先度を与え、第1の車間距離Xが検知された場合、優先的に当該無人ダンプ10-1において車々間通信550を開始させ、第2の通信方法による第2の粒度で車々間距離を求める。これにより、より細やかな減速判断又は停止判断が可能となるため、無人ダンプ10-1の減速時間又は不要な停止を減らすことが可能となり、生産性の向上を図ることができる。
【0051】
また、図8に示すように、無人ダンプ10-1と有人車両20-1が走行路100上で接近しているが、無人ダンプ10-1と有人車両20-1とは高低差のある別のコースを走っているとする。特に、有人車両20-1が無人ダンプ10-1よりも高い位置にいる場合は、危険性が低いと判断される。このため、第2の実施の形態のシステムでは、この図8のような状況にある無人ダンプ10-1に高い優先度を与える。図8のような無人ダンプ10-1と有人車両20-1の間で第1の車間距離Xが検知された場合、優先的に当該無人ダンプ10-1において車々間通信550を開始させ、第2の通信方法による第2の粒度で車々間距離を求める。これにより、より細やかな減速判断又は停止判断が可能となるため、無人ダンプ10-1の減速時間又は不要な停止を減らすことが可能となり、生産性の向上を図ることができる。なお、車両の高さは、例えばGPS受信機109によって得られる位置情報から判定することができる。
【0052】
また、図9に示すように、無人ダンプ10-1と有人車両20-1とが同一の走行路100上で接近しているが、有人車両20-1が無人ダンプ10-1を追尾して走っているとする。この場合は、無人ダンプ10-1と有人車両20-1との間の相対速度は小さく、危険性が低いと判断される。このため、第2の実施の形態のシステムでは、この図9のような状況にある無人ダンプ10-1に高い優先度を与える。図9のような無人ダンプ10-1と有人車両20-1の間で第1の車間距離Xが検知された場合、優先的に当該無人ダンプ10-1において車々間通信550を開始させ、第2の通信方法による第2の粒度で車々間距離を求める。これにより、より細やかな減速判断又は停止判断が可能となるため、無人ダンプ10-1の減速時間又は不要な停止を減らすことが可能となり、生産性の向上を図ることができる。なお、上述の追尾がなされているか否かは、例えば各々の車両が備えるGPS受信機等の自己位置推定装置によって得られる位置情報から判定することができる。
【0053】
また、無人ダンプ10-1が積載している積荷の積載量が大きい場合には、無人ダンプ10-1が積荷を積載していない場合や、積載量が小さい場合に比べ、優先度を高くすることができる。図10(a)は、積荷の積載量を計測可能な無人ダンプ10-1の構成の一例を示す。この無人ダンプ10-1は、前輪タイヤ、後輪タイヤのそれぞれにサスペンションシリンダ41、42を備えている。なお、サスペンションシリンダ41は、2つの前輪タイヤの各々に設けることができ、サスペンションシリンダ42は、2つの後輪タイヤの各々に設けることができる。すなわち、サスペンションシリンダ41又は42は前後4本のタイヤの各々に計4個設置することができる。これらのサスペンションシリンダ41、42には、各シリンダに掛かる荷重を計測するための圧力センサ43、44が設けられている。この圧力センサ43,44の検知出力に従って、積荷の重量を計測し、優先度の判断を行うことができる。また、圧力センサ43、44に加えて、無人ダンプ10-1の傾斜を計測する傾斜センサ45を設けても良い。傾斜センサ45により、無人ダンプ10-1が走行している走行路の斜度を計測することができる。
【0054】
図10(b)に示すように、このサスペンションシリンダ41、42は、タイヤの回転軸に支持されるシリンダ51と、車体に支持されるピストン52とを備えている。ピストン52は、シリンダ51内を上下に摺動するピストン本体53と、このピストン本体53に連結されたピストン筒54とから構成されている。このピストン本体53によってシリンダ51が上室CUと下室CLとに区画される。また、ピストン本体53に形成されたオリフィス55を介してオイルが上室CUと下室CLとの間で流通することが可能になっている。
【0055】
下室CLと連通するピストン筒54の内部にはオイルと共に窒素ガスが封入されている。窒素ガスの圧力はピストン筒54の内側上端付近に設けられた圧力センサ56により計測される。この圧力センサ56の検知圧力により、無人ダンプ10-1の積荷の積載量を計測することができる。
【0056】
図11に示すように、上述の優先度は、1つの要素だけでなく、複数の要素の合計に従って決定してもよい。図11の例は、走行路100の異同、無人ダンプ10-1が放土場300にいるか否か、無人ダンプ10-1が上り坂を上っているか、有人車両20-1が無人ダンプ10-1を追尾中であるか否か、及び無人ダンプ10-1の積荷の積載量が所定値以上か否かの総合点により、優先度を計算したものである。高い優先度を与えられた無人ダンプ10は、それよりも低い優先度を与えられた無人ダンプ10に比べて優先的に車々間通信及び第2の通信方法を割り当てられる。このように、車々間通信サブフレーム1550の通信容量を超えない範囲で、無人ダンプ10に車々間通信が割り当てられる。例えば、車々間通信サブフレーム1550で送ることが可能な回線数が3回線までとすると、図10のケースでは、優先度の上位3位までの無人ダンプ10に車々間通信サブフレーム1550が割り当てられる。なお、上り坂を上っているか否かは、例えば傾斜センサ45から得られる傾斜情報から判定してもよいし、車両に搭載されたGPS受信機109によって得られる位置情報の変化から判定することもできる。
【0057】
優先度が低かったため、車々間通信サブフレーム1550に車々間通信550が割り当てられなかった無人ダンプ10と有人車両20は、引き続き路々間通信510及び路車間通信520を用いた、第1の通信方法による第1の粒度の位置情報から求まる車々間距離により減速判断又は停止判断を行う。路々間通信510及び路車間通信520を用いた、第1の通信方法による第1の粒度の位置情報から求まる車々間距離により安全性は守られる。一方、車々間通信550を用いた、第2の通信方法による第2の粒度の位置情報から求まる車々間距離により減速判断又は停止判断が行えた場合は、生産性向上が見込める。
【0058】
なお、無人ダンプ10が上記の状況にあるか否かは、上述のGPS受信機、地図情報、圧力センサ56の検出圧力、図示しないテレビカメラの画像処理結果、その他の情報から判定することができる。
【0059】
なお、優先順位は、管制センター30及び統括基地局5が各種情報に基づいて決定し、該当する無人ダンプ10と有人車両20に対し、車々間通信550の開始を指示することが望ましい。
【0060】
[車載型送信端末2の構成例]
図12のブロック図は、上記実施の形態の車載型送信端末2の構成例を示している。車載型送信端末2は、一例として、送受信アンテナ101、無線装置102、電源装置105、表示装置106、非常減速/停止ボタン107、コントローラ108、GPS受信機109、及びGPSアンテナ110を有する。また、コントローラ108は、マイコン装置104、及びベースバンド装置103を含む。ベースバンド装置103の機能は、無線装置102が有していても良い。
【0061】
電源装置105は、バッテリ810、及び電圧変換器811などから構成される。電源装置105は、バッテリ810から供給される電源を、電圧変換器811で必要な電圧に変換した後、車載型送信端末2内の各部に対して供給する機能を持つ。
【0062】
表示装置106は、LEDや液晶表示装置などから構成され、電源装置105とマイコン装置104に接続している。表示装置106は、電源の正常性、及び無線エリアの圏外判定結果を操作者に知らせる機能を有する。
【0063】
非常減速/停止ボタン107は、コントローラ108のマイコン装置104と接続されており、操作者が無人ダンプ10-1の非常減速又は停止を指示するための操作用ボタンを含んでいる。管制センター30の非常減速/停止入力装置32と同様に、無人ダンプ10-1の非常減速又は停止を指示するものであるが、この非常減速/停止ボタン107は、車載型送信端末2に設けられている。非常減速/停止ボタン107は、その押下操作により操作者からの指示を検知する押しボタン構造とすることできる。また、非常減速/停止ボタン107は、押下された場合にロックされ、これを解除しない限り押下され続ける機構を備えていることが望ましい。
【0064】
GPS受信機109は、GPSアンテナ110及びコントローラ108のマイコン装置104と接続しており、GPSアンテナ110を介して受信したGPS受信信号から、有人車両20の現在位置を表す位置情報を取得する。GPS受信機109は有人車両20の現在位置を表す位置情報を、マイコン装置104に対して定期的(例えば1秒単位)に出力する。
【0065】
コントローラ108のマイコン装置104は、表示装置106、非常減速/停止ボタン107、ベースバンド装置103、GPS受信機109と接続しているマイクロコンピュータであり、演算処理装置であるCPU801、メインメモリやフラッシュメモリなどの記憶装置802を有している。記憶装置802に記憶されているプログラムがCPU801で演算実行されることで、以降に説明する機能を実現する。マイコン装置104は、その一部又は全てが集積回路などで構成されていてもよい。マイコン装置104は、上記の機能に加え、電源装置105が正常に動作しているかの判定、及び各中継基地局4と統括基地局5とにより形成される無線エリアの中に有人車両2が在圏しているかどうかの圏外判定を行う。なお、マイコン装置104には、機能安全に適したマイクロコンピュータを使用することが望ましく、SIL(Safety Integrity Level)などの安全規格を満たしたマイクロコンピュータであることが望ましい。
【0066】
コントローラ108のベースバンド装置103は、集積回路などで構成されており、時分割多重化方式に従い他の装置と通信を行うユニットである。ベースバンド装置103は、規定の単位時間(例えば1秒)を複数に分割した各サブフレームのうち、予め割り当てられた、又は制御用通信510により自機に割り当てられたサブフレーム内で信号を出力する。ベースバンド装置103は、マイコン装置104からの制御に従い、自機に割り当てられたサブフレーム内で信号を送信するように無線装置102を制御する。
【0067】
無線装置102は、ベースバンド装置103による制御に基づき、ベースバンド装置103から出力されたデータに対し、誤り訂正符号化、変調、周波数変換、フィルタリング、増幅等の処理を施して無線信号を生成する。無線装置102は、生成した無線信号を送受信アンテナ101に送る。
【0068】
ここで、図13を参照して、車両制御システム1000で用いられる通信プロトコルスタックについて説明する。図13は、携帯型送信端末1、車載型送信端末2、車載型受信端末3、中継基地局4、統括基地局5の通信プロトコルスタックの一例を示した図である。
【0069】
携帯型送信端末1、車載型送信端末2、車載型受信端末3、中継基地局4、統括基地局5は、無線通信レイヤ、安全通信レイヤ、アプリケーションレイヤのプロトコルスタックから構成されるデータを相互に送受信する。
【0070】
無線通信レイヤは、無線通信として通信接続及び通信維持を目的とした通信プロファイルが定義するレイヤであって、これに基づいた無線通信機能を司るレイヤである。安全通信レイヤは、安全通信として機能安全を目的とした通信プロファイルが定義するレイヤであって、これに基づいた安全通信機能を司るレイヤである。アプリケーションレイヤは、操作者とのユーザインタフェースを司るレイヤである。
【0071】
携帯型送信端末1、車載型送信端末2、車載型受信端末3、中継基地局4、統括基地局5が互いに通信する際には、各々のレイヤ毎の通信プロファイルに基づいて、通信接続及び通信維持が図られる。例えば、車載型送信端末2と中継基地局4が通信する場合、車載型送信端末2の無線通信レイヤ121と中継基地局4の無線通信レイヤ421とは、相互に認識できるフォーマットを用いて通信接続を行う。車載型送信端末2の安全通信レイヤ122と中継基地局4の安全通信レイヤ422も同様に、相互に認識できるフォーマットを用いて通信接続を行う。車載型送信端末2のアプリケーションレイヤ123と中継基地局4のアプリケーションレイヤ423も同様であり、相互に認識できるフォーマットを用いて通信接続を行う。尚、送受信される対象データは、各レイヤを跨ぐごとにカプセル化され、またカプセル化の解除が行われる。
【0072】
図12に示すコントローラ108のマイコン装置104は、図13のアプリケーションレイヤ123と安全通信レイヤ122で提供される機能を実施する。マイコン装置104は、アプリケーションレイヤ123の機能として、非常減速/停止ボタン107が押されているか否かを示す非常減速/停止信号と、GPS受信機から送られてくる自己の現在位置を示す位置情報を送信データとして生成する。マイコン装置104は、生成した送信データを下位層の安全通信レイヤ122に転送する。
【0073】
加えて、マイコン装置104は、安全通信レイヤ122の機能として、アプリケーションレイヤ123から転送された送信データに対し、後述の制御情報を付与する。この制御情報により、機能安全を目的とした通信プロファイルに基づいた送信処理が行われる。この送信処理は、例えば、データ破損、繰り返し、不正順序、欠落、遅延、挿入、なりすまし、宛先違いのいずれか、又は全ての脅威に対する安全方策を行うための処理である。
【0074】
図14は、安全通信レイヤ、無線通信レイヤのデータフォーマットの一例を示した図である。アプリケーションレイヤ123で生成された、非常減速/停止信号と位置情報が含まれる送信データは、安全通信レイヤにおいてはDATA1223となる。DATA1223として送られる送信データは、機能安全を目的とした安全方策として、通番1221、ID1222、及びセーフティコード1224を付与される。通番1221は、送信側の携帯型送信端末1や車載型送信端末2が自機内で管理している通し番号(シーケンス番号)である。ID1222は、送信側となる携帯型送信端末1及び車載型送信端末2を一意に識別するための識別情報である。セーフティコード1224は、上記のデータ破損、繰り返し、不正順序、欠落、遅延、挿入、なりすまし、宛先違いなどの脅威に対する安全方策を施すためのコードである。
【0075】
マイコン装置104は、これらの制御情報をDATA1223に付与して安全通信送信データ113を生成し、これをベースバンド装置103に出力する。尚、図14における安全通信レイヤのデータフォーマットはあくまで一例であり、これに限定されない。図12に示すコントローラ108のベースバンド装置103は、図13に示す無線通信レイヤ121の機能を持つ。ベースバンド装置103は、無線通信レイヤ121において、安全通信レイヤ122で生成された安全通信送信データ113に対し、無線通信接続、通信維持を目的とした通信プロファイルに基づいた処理を施す。
【0076】
図14に示すように、無線通信レイヤ121において、安全通信送信データ113はPAYLOAD1213となり、通信の接続及び維持を目的としたUW(Unique Word)1211、CTRL(Control)1212、データ誤りを検出するCRC(Cyclic Redundancy Code)1214が付与されて無線通信送信データ111が生成される。無線通信送信データ111は複数のスロットSに分割されて送信される。なお、図14における無線通信レイヤのデータフォーマットはあくまで一例であり、これに限定されない。
【0077】
無線通信レイヤ121で生成された無線通信送信データ111は、予め決められた所定のサブフレームで送信されるようにタイミング調整された後、無線装置102に送られる。無線装置102は、無線通信送信データ111を、変調、周波数変換、フィルタリング、増幅等の処理を施して無線信号を生成し、生成した無線信号を送受信アンテナ101に送る。
【0078】
送受信アンテナ101は、無線装置102で生成された無線信号を携帯型送信端末1、車載型送信端末2、車載型受信端末3、中継基地局4、統括基地局5に向けて放射する。また、送受信アンテナ101は、携帯型送信端末1、車載型送信端末2、車載型受信端末3、中継基地局4、統括基地局5から送信される無線信号を受信し、無線装置102にこの無線信号を送る。無線装置102は、送受信アンテナ101から送られてきた無線信号を、増幅、フィルタリング、周波数変換、復調、誤り訂正復号等の処理を施してベースバンド受信データ112を生成する。尚、ベースバンド受信データ112のデータフォーマットは図14の無線通信送信データ111と同じである。
【0079】
コントローラ108のベースバンド装置103は、無線通信レイヤ121の機能として、無線装置102で生成されたベースバンド受信データ112に対し、無線通信接続、通信維持を目的とした通信プロファイルに基づいた受信処理を施し、安全通信受信データ114を生成する。尚、安全通信受信データ114のデータフォーマットは、図14の安全通信送信データ113と同じである。また、無線通信接続、通信維持を目的とした通信プロファイルに基づいた受信処理とは、例えば、同期検出、同期維持、誤り検出等である。ベースバンド装置103は、これらを行った後、ベースバンド受信データ112内のPAYLOAD1213、すなわち安全通信受信データ114を抽出する。ベースバンド装置103は、生成した安全通信受信データ114を、マイコン装置104に出力する。
【0080】
コントローラ108のマイコン装置104は、ベースバンド装置103で生成された安全通信受信データ114に対し、安全通信として機能安全を目的とした通信プロファイルに基づいた受信処理を施す。マイコン装置104は、その後、安全通信受信データ114からDATA1223を生成する。ここで生成されたDATA1223が受信データであり、自己が送信した非常減速/停止信号や位置情報のデータに対する応答データ及び制御データである。以上、車載型送信端末2の構成及び動作を図12図14を参照して説明したが、携帯型送信端末1の構成及び動作も略同様である。
【0081】
次に、図15のフローチャートを参照して車載型送信端末2の動作を詳細に説明する。図14のフローチャートは、ある所定の時間(例えば1秒又は0.2秒)単位で実施されるものとする。
【0082】
車載型送信端末2は、無人ダンプ10又は統括基地局5から車々間通信550を実行するか否かを制御用通信500又は路車間通信520を介して指示される。車々間通信550に関する指示がない場合(ステップS001のNo)、携帯型送信端末2のベースバンド装置103が第1の通信方法である変調方式(符号化率)で動作するようパラメータ設定がなされる(ステップS002)。例えば、第1の通信方法であるQPSK変調方式(符号化率1/3)が設定される。
【0083】
一方、車々間通信550に関する指示がある場合(ステップS001のYes)、車載型送信端末2のベースバンド装置103が第2の通信方法である変調方式(符号化率)で動作するようパラメータ設定がされる(ステップS006)。例えば、第2の通信方法である64QAM変調方式(符号化率=5/6)が設定される。
【0084】
第1の通信方法が設定された場合、続いて、車載型送信端末2のGPSアンテナ110は、GPS信号を受信し(ステップS003)、このGPS信号に基づき、GPS受信機109は有人車両20の現在位置を表す位置情報を取得する(ステップS004)。そして、マイコン装置104は、自己の位置情報を含む送信データを第1の粒度で生成する(ステップS005)。ここで第1の粒度は第2の粒度よりも粗く、例えば10mとする。
【0085】
第2の通信方法が設定された場合においても、ステップS007及び008で、ステップS003、004と同一の動作がなされる。マイコン装置104は、自己の位置情報を含む送信データを第2の粒度で生成する(ステップS009)。ここで第2の粒度は第1の粒度よりも細かく、例えば1mとする。第2の粒度を有する第2の通信方法で自己の位置情報等が得られている場合において、車間距離が車々間距離Y以下に達したことが検知された場合、無人タンク10に対し減速又は停止処理が実行される。
【0086】
続いて、ステップS010に移行し、非常減速/停止ボタン107が押されているか否かが判定される。押されていないと判定される場合(ステップS010のNo)、マイコン装置104は、アプリケーションレイヤ123にて非常減速/停止信号“0”を生成する(ステップS011)。一方、非常減速/停止ボタン107が押されていると判定される場合(ステップS010のYes)、マイコン装置104は、アプリケーションレイヤ123にて非常減速/停止信号“1”を生成する(ステップS012)。そして、マイコン装置は、得られた位置情報と非常減速/停止信号を含む送信データを生成する(ステップS013)。
生成された送信データは、安全通信レイヤ122にて機能安全として必要な送信処理を施された後送信される(ステップS014)。ベースバンド装置103は、受領したデータに対し、無線通信レイヤ121にて無線通信として必要な送信処理を施す。
【0087】
送信処理を施した後のデータは、車々間通信の指示があれば、車々間通信サブフレーム1550の該当スロットで送信されるタイミングで無線装置102に出力される(ステップS015)。車々間通信の指示がなければ、当該データは、路車間通信サブフレーム1520の該当スロットで送信されるタイミングで無線装置102へ出力される。無線装置102は、ベースバンド装置103から受領したデータに対し、変調、周波数変換、フィルタリング、増幅等の処理を施して送受信アンテナ101から確認応答信号を出力する(ステップS016)。このステップS016の終了後、車々間通信550の指示がある場合(S001:Yes)、0.2秒毎にSTARTにループし、車々間通信550の指示がない場合(S001:No)、1秒毎にSTARTにループする。
【0088】
車々間通信550の指示の有無に関わらずSTARTにループすることで、自己の位置情報は定期的に送信され、非常減速/停止ボタン107が押下されている間は(S010:Yes)、連続して非常減速/停止信号が“1”として送信されることとなる。また、非常減速/停止ボタン107が解除されれば(S010:No)、マイコン装置104は、非常減速/停止信号が“0”として送信されることとなる。
【0089】
なお、図15では省略したが、車々間通信550の指示がある場合において(S001:Yes)において、第2の通信方法による第2の粒度で位置情報を生成し、車々間通信サブフレーム1550で送信することに加えて、第1の通信方法による第1の粒度で位置情報を生成し、路車間通信サブフレーム1520で並行して送信してもよい(1秒単位)。
【0090】
車々間通信550の指示がない場合には、第1の粒度を有する第1の通信方法で、路車間通信520により自己の位置情報が伝達され、且つ非常減速/停止信号も伝達される。第1の通信方法の場合、車間距離Xにおいて非常減速/停止の判断がなされ、無人ダンプ10及び統括基地局5に伝わるので、安全性として問題になることはない。一方、車々間通信550の指示があれば、車々間通信を使って、自己の高精度な位置情報を高頻度で無人ダンプ10又は統括基地局5に伝えることが可能となり、無人ダンプの減速時間又は不要な停止を減らすことが可能となり、生産性の向上が得られる。
【0091】
尚、上記実施形態では、図14に示す通番1221、ID1222などのフィールドサイズは調整することができ、例えばそれぞれ数バイトずつの小サイズとすることができる。例えば、端末が256台以下の場合はIDのフィールドは1バイト(=256bit)で足り、通番については、半日(43200秒)程度で数値を巡回させることが許容される場合は2バイト(=65536bit)で足りる。上記実施形態のように、付与する制御コード(ヘッダやフッタ)のサイズを小さくし、制御コードの種別を減らして簡素な構成とすることで、1回で送信可能な情報量を削減することができ、またガードタイムを長めに設けることも可能となる。
【0092】
また本実施形態の場合、図14に示すDATA1223に入る情報(コンテンツ)は、少なくとも非常減速/停止及び自己の位置情報が含まれていれば足りるため、その容量は数十バイト程度であればよい。このような小サイズのDATA1223を送受信するのに際し、制御コードが大きなサイズでは、コンテンツデータに対する伝送効率が低減する。本実施形態では、制御コードのサイズを小さくすることで、コンテンツデータに対する伝送効率の低減を緩和することもできる。
【0093】
尚、上記実施形態ともに鉱山現場の無人ダンプを例にして実施形態を説明したが、鉱山の無人ダンプに限らず、有人ダンプ、建設現場の建設機械等にも同様の制御が適用可能である。
【0094】
以上に詳説したように、本実施形態によれば、自律走行する無人ダンプの減速時間又は不必要な停止を減らしつつ、非常時には、高速移動する運搬車両を遠隔から停止させることができる。
【0095】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0096】
1…携帯型送信端末、2…車載型送信端末、3…車載型受信端末、4…中継基地局、5…統括基地局、10…無人ダンプ、20…有人車両、30…管制センター、31…運行管理システム、32…非常減速/停止入力装置、100…走行路、101…送受信アンテナ、102…無線装置、103…ベースバンド装置、104…マイコン装置、105…電源装置、106…表示装置、107…非常減速/停止ボタン、108…コントローラ、109…GPS受信機、110…GPSアンテナ、200…積込場、300…放土場、500…制御用通信、510…路々間通信、520…路車間通信、530…歩車間通信、540…歩路間通信、550…車々間通信、600、610、700…移動可能領域、1000…車両制御システム、1500…制御用通信サブフレーム、1510…路々間通信サブフレーム、1520…路車間通信サブフレーム、1530…歩車間通信サブフレーム、1540…歩路間通信サブフレーム、1550…車々間通信サブフレーム、1590…予約サブフレーム、2000、2100、2200、2300…サブフレーム割当方法。
図1
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