(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B65H 23/06 20060101AFI20221220BHJP
B41J 2/32 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B65H23/06
B41J2/32 Z
(21)【出願番号】P 2019099406
(22)【出願日】2019-05-28
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507351883
【氏名又は名称】シチズン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】丹澤 広基
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-189748(JP,A)
【文献】特開2013-028431(JP,A)
【文献】特開2005-154113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 16/00-16/10
B65H 23/00-23/16
B65H 23/24-23/34
B65H 27/00
B41J 2/32
B41J 11/00-11/70
B41J 15/04-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙ロールを収容する収納部と、
モータを動力源として前記用紙ロールを回転させることにより前記用紙ロールから被印字部を繰り出す送り機構と、
前記被印字部に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの印字動作と前記モータの回転とを制御する制御部と、を有し、
前記モータが停止した状態から、少なくとも、前記モータが所定の速度を越える期間に前記印字ヘッドが印字して、前記モータが減速期間を経て停止するように、前記制御部が前記モータと前記印字ヘッドとを制御するプリンタであって、
前記減速期間は、少なくとも、前記所定の速度まで、前記モータを減速しながら前記印字ヘッドが印字する第1減速期間を含むように、前記制御部が、前記モータと前記印字ヘッドとを制御し、
前記減速期間の直前の速度で前記モータが回転したときの前記用紙ロールの回転が、前記送り機構から外力を受けずに前記収納部との摩擦によって減速する場合の速度の変化特性を自由減速特性とした場合に、
前記第1減速期間は、前記自由減速特性よりも前記用紙ロールの回転が遅く減速する特性を
有し、
前記所定の速度は、前記自由減速特性よりも急な勾配で減速する減速特性である弛み発生減速特性に従って前記モータを減速しても、前記用紙ロールに弛みが発生する状態と発生しない状態との境界、又は前記用紙ロールに発生する弛みが無視できない状態と無視できる状態との境界として設定した境界速度である、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記第1減速期間の後に、前記モータが停止するまで減速する第2減速期間を有し、
前記第2減速期間は、前記自由減速特性よりも前記用紙ロールの回転が速く減速する特性を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1減速期間は、一定速度から前記所定の速度まで達するまでの間の期間であり、
前記第2減速期間は、前記所定の速度から、前記モータが停止するまでの期間である、ことを特徴とする、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記第1減速期間は、前記第2減速期間に切替る直前に、より遅い減速特性に変化する期間を有する、ことを特徴とする、請求項2又は3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記第1減速期間と前記第2減速期間との間に、一定速度で前記モータを制御する第2の等速期間を有する、ことを特徴とする、請求項2又は3に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記第1減速期間の特性は、前記モータの共振速度を含む共振速度範囲において前記自由減速特性よりも前記用紙ロールの回転が速く減速する共振速度通過特性を含む、
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記第1減速期間の特性は、前記用紙ロールの種類に応じて変更可能である、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2減速期間に、印字しないように前記印字ヘッドを制御する、ことを特徴とする、請求項2~5のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項9】
用紙ロールを収容する収納部と、
モータを動力源として前記用紙ロールを回転させることにより前記用紙ロールから被印字部を繰り出す送り機構と、
前記被印字部に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドの印字動作と前記モータの回転とを制御する制御部と、を有し、
前記モータが停止した状態から、前記印字ヘッドが印字して、前記モータが減速期間を経て停止するように、前記制御部が前記モータと前記印字ヘッドとを制御するプリンタであって、
前記減速期間は、前記モータを減速しながら前記印字ヘッドが印字する期間を含むように、前記制御部が、前記モータと前記印字ヘッドとを制御し、
前記減速期間の直前の速度で前記モータが回転したときの前記用紙ロールの回転が、前記送り機構から外力を受けずに前記収納部との摩擦によって減速する場合の速度の変化特性を自由減速特性とした場合に、
前記減速期間は、前記自由減速特性よりも前記用紙ロールの回転が遅く減速する特性を有し、
前記減速期間は、前記モータの回転速度がゼロになるまでの期間として設定されている
ことを特徴とするプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
用紙ロールを用紙収納部内に置いて用紙ロールの外周を支持して収納するドロップイン方式等を用いたプリンタにおいて、用紙ロールを搬送する種々の技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、定速で搬送されていた用紙ロールの搬送を停止するときに、搬送モータを停止してから所定の減速領域を経てプラテンローラが停止するプリンタが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、一定速度で搬送されていた用紙ロールの搬送を停止するときに、プラテンローラを駆動するパルスモータのステップ数に応じた印字時間を設定することで、用紙ロールの搬送を停止する間も印字が可能になるプリンタが記載されている。
用紙ロールは、搬送を停止する直前の回転速度に応じて生じる回転方向への慣性と、用紙ロールと収納部との摩擦とに応じて、搬送停止直後も減速しながら回転し続けようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-56561号公報
【文献】特許第2554379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されるプリンタでは、プラテンローラを急激に減速して停止すると、減速しながら回転し続けようとする用紙ロールの速度が、急停止するようにパルスモータによって正確に制御が可能なプラテンローラの速度よりも速くなり用紙ロールの弛みが発生するおそれがある。用紙ロールの弛みが頻繁に発生すると、搬送方向と直交する用紙ロールの幅方向の一方に用紙ロールが徐々に螺旋状に拡がる。このような用紙ロールのブレが蓄積すると、蓄積した用紙ロールのブレが用紙ホルダの側壁と干渉して用紙ロールの端が折れる等の不具合が発生するおそれがある。また、用紙ロールの幅方向の双方に用紙ロールのブレが蓄積して用紙ロールの幅が拡がり、用紙ロールが回動不能となるおそれがある。
【0007】
本発明は、用紙ロールの弛みが発生するおそれが低いプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプリンタは、用紙ロールを収容する収納部と、モータを動力源として用紙ロールを回転させることにより用紙ロールから被印字部を繰り出す送り機構と、被印字部に印字する印字ヘッドと、印字ヘッドの印字動作とモータの回転とを制御する制御部と、を有し、モータが停止した状態から、少なくとも、モータが所定の速度を越える期間に印字ヘッドが印字して、モータが減速期間を経て停止するように、制御部がモータと印字ヘッドとを制御するプリンタであって、減速期間は、少なくとも、所定の速度まで、モータを減速しながら印字ヘッドが印字する第1減速期間を含むように、制御部が、モータと印字ヘッドとを制御し、減速期間の直前の速度でモータが回転したときの用紙ロールの回転が、送り機構から外力を受けずに収納部との摩擦によって減速する場合の速度の変化特性を自由減速特性とした場合に、第1減速期間は、自由減速特性よりも用紙ロールの回転が遅く減速する特性を有する。
【0009】
さらに、本発明に係るプリンタでは、前記第1減速期間の後に、前記モータが停止するまで減速する第2減速期間を有し、前記第2減速期間は、前記自由減速特性よりも前記用紙ロールの回転が速く減速する特性を有することが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係るプリンタでは、第1減速期間は、一定速度から所定の速度まで達するまでの間の期間であり、第2減速期間は、所定の速度から、モータが停止するまでの期間であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係るプリンタでは、第1減速期間は、第2減速期間に切替る直前に、より遅い減速特性に変化する期間を有することが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係るプリンタでは、第1減速期間と第2減速期間との間に、一定速度でモータを制御する第2の等速期間を有することが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係るプリンタでは、第1減速期間の特性は、モータの共振速度を含む共振速度範囲において自由減速特性よりも用紙ロールの回転が速く減速する共振速度通過特性を含むことが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係るプリンタでは、第1減速期間の特性は、用紙ロールの種類に応じて変更可能であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係るプリンタでは、制御部は、第2減速期間に、印字しないように印字ヘッドを制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るプリンタは、用紙ロールの弛みが発生するおそれを低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係るプリンタの斜視図(その1)である。
【
図2】第1実施形態に係るプリンタの斜視図(その2)である。
【
図3】(a)は
図1に示すプリンタの部分拡大斜視図(その1)であり、(b)は
図1に示すプリンタの部分拡大斜視図(その2)である。
【
図6】
図1に示すプリンタによる印字処理のフローチャートである。
【
図8】
図1に示すプリンタの減速特性を示す図である。
【
図9】
図1に示すプリンタ及び従来のプリンタによる印字特性を示す図である。
【
図10】第2実施形態に係るプリンタのブロック図である。
【
図12】
図10に示すプリンタによる印字処理のフローチャートである。
【
図14】第3実施形態に係るプリンタのブロック図である。
【
図16】
図14に示すプリンタによる印字処理のフローチャートである。
【
図18】変形例に係るプリンタの減速特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係るプリンタについて説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0019】
(第1実施形態に係るプリンタの構成及び機能)
図1~3を参照して、第1実施形態に係るプリンタの構造について説明する。
図1はプリンタに用紙ロールを収納していない状態でプリンタの上ケースが開いたときの斜視図であり、
図2はプリンタに用紙ロールを収納した状態でプリンタの上ケースが開いたときの斜視図である。
【0020】
プリンタ1は、収納部10と、サーマルプリントヘッド11と、プラテンローラ12と、固定刃13と、可動刃14と、上ケース15と、下ケース16と、回転軸17と、開閉ボタン18と、用紙排出口19とを有する。プリンタ1は、加熱により変色する感熱紙である用紙ロール100に、加熱されたサーマルプリントヘッド11を接触させることで文字又は図形を印字するサーマルプリンタである。用紙ロール100は、円筒状の芯材にロール状に巻回された連続紙である。
【0021】
収納部10は、用紙ホルダ20と、第1用紙ローラー21と、第2用紙ローラー22と、基準面23と、仕切り板24と、第1ガイド軸25と、第2ガイド軸26とを有し、用紙ロール100を収納する。用紙ホルダ20、第1用紙ローラー21、第2用紙ローラー22、基準面23、仕切り板24、第1ガイド軸25及び第2ガイド軸26のそれぞれは、下ケース16の内部に配置される。
【0022】
用紙ホルダ20は、第1用紙ローラー21及び第2用紙ローラー22と共に、収納部10に収納された用紙ロール100を保持する。すなわち、収納部10は、その中に直接おかれた用紙ロール100外周を支持するドロップイン方式の収納構造を有する。第1用紙ローラー21及び第2用紙ローラー22は、用紙ホルダ20と共に用紙ロール100を支持しながら、用紙ロール100の搬送に伴って回転する。
【0023】
基準面23は、収納部10に収納された用紙ロール100の一方の端面102に対向して配置される。仕切り板24は、基準面23に対向し且つ基準面23の方向に移動可能に配置され、収納部10に用紙ロール100が収納されたとき、用紙ロール100の他方の端面101に対向する。第1ガイド軸25及び第2ガイド軸26は、第2用紙ローラー22の延伸方向と平行に延伸し、基準面23の直交する方向に仕切り板24を移動可能に支持する。
【0024】
サーマルプリントヘッド11は、上ケース15が閉まったときにプラテンローラ12と対向する位置に配置され、用紙ロール100から繰り出された被印字部に文字又は図形を印字する印字部である。用紙ロール100は、サーマルプリントヘッド11とプラテンローラ12とに挟持されて印字される。サーマルプリントヘッド11は、内蔵されるバネ材によりプラテンローラ12の方向に押圧されると共に、印字する文字又は図形を示す印字データに応じて、長手方向に配列される発熱体を発熱させ、用紙ロール100に文字又は図形を印字する。
【0025】
プラテンローラ12は、不図示の駆動モータにより回転して用紙ロール100を搬送する搬送部である。サーマルプリントヘッド11とプラテンローラ12とによって挟持された用紙ロール100は、プラテンローラ12が回転することによって搬送される。サーマルプリントヘッド11により用紙ロール100に印字された後に、用紙ロール100は被印字領域の後端で固定刃13及び可動刃14によって切断され、用紙排出口19から排出される。
【0026】
固定刃13はサーマルプリントヘッド11と上ケース15の用紙排出口19側の端面との間に固定して配置され、可動刃14はプラテンローラ12と下ケース16の用紙排出口19側の端面との間に鉛直方向に移動可能に配置される。用紙ロール100は、サーマルプリントヘッド11により印字された後に、固定刃13及び可動刃14によって切断され、
図2において矢印Aで示される方向にプリンタ1から排出される。
【0027】
上ケース15は、下ケース16の上部を覆い、下ケース16の上部に回転軸17によって回転自在に支持されている。開閉ボタン18は、上ケース15に配置され、押下されることに応じて、回転軸17を中心として、上ケース15が下ケース16に対して上方に回転して、上ケース15が開く。なお、プリンタ1は、上ケース15が閉じた状態で使用される。
【0028】
図4及び5を参照して、プリンタ1の構成要素の機能を説明する。プリンタ1は、インターフェース回路31と、RAM32と、ROM33と、サーマルプリントヘッドドライバ34と、ステップモータドライバ35と、ステップモータ36と、処理部40とを更に有する。
【0029】
インターフェース回路31は、USB、シリアル、パラレル、有線LAN、無線LAN、Bluetooth(登録商標)などの有線又は無線の通信インターフェース回路を有する。インターフェース回路31は、通信ケーブルを介してパーソナルコンピュータ及びサーバ等のホスト装置200と通信を行う。なお、インターフェース回路31はプリンタ1から着脱可能な構成としても良い。
【0030】
RAM32は、例えばDRAM、SRAM、SDRAM、DDRSDRAM等の揮発性メモリにより構成される。RMA32は、印字される文字及び図形を示す印字情報を記憶する受信バッファ321と、処理部40が印字処理を実行するときに使用されるドットライン情報が記憶される印字バッファ322とを有する。
【0031】
ROM33は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリにより構成され、処理部40が印字処理を実行するアプリケーションプログラムであるプリンタプログラム331、及び印字される文字のフォントに関する情報であるフォント情報332を記憶する。
【0032】
サーマルプリントヘッドドライバ34は、例えば半導体集積回路により構成され、サーマルプリントヘッド11の発熱体のそれぞれを処理部40から入力される指示に応じて選択的に加熱する。サーマルプリントヘッドドライバ34は、加熱する発熱体にヘッド加熱信号を出力する。
【0033】
ステップモータドライバ35は、ステップモータ36を駆動する駆動回路であり、定電流駆動方式及び定電圧駆動方式等の駆動方式を実行するように形成され、処理部40から入力される指示に応じてステップモータ36にパルス信号を出力する。
【0034】
ステップモータ36は、PFモータとも称され、ステップモータドライバ35から入力されるパルス信号に応じて回転することで、不図示のギア等の駆動機構を介してプラテンローラ12を回転する。ステップモータドライバ35、ステップモータ36及びプラテンローラ12は、ステップモータ36を動力源として用紙ロール100を回転させることにより用紙ロール100から被印字部を繰り出す送り機構である。
【0035】
処理部40は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有し、サーマルプリントヘッド11の印字動作とステップモータ36の回転とを制御して用紙ロール100から繰り出される被印字部に印字する印字処理を実行する。処理部40は、プリンタ1の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部40は、ROM33に記憶されているプリンタプログラム331等のプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部40は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0036】
処理部40は、印字情報取得部41と、印字情報変換部42と、駆動指示部43と、印字指示部44と、減速指示部45とを有する。これらの各部は、処理部40が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとしてプリンタ1に実装されてもよい。
【0037】
(第1実施形態に係るプリンタによる印字処理)
図6を参照して、プリンタ1による印字処理について説明する。
図6に示す印字処理は、予めROM33に記憶されているプリンタプログラム331に基づいて、主に処理部40によりプリンタ1の各要素と協働して実行される。
【0038】
まず、印字情報取得部41は、印字される文字及び図形を示す印字情報をホスト装置200から取得し(S101)、取得した印字情報を受信バッファ321に記憶する。印字情報は、印字する文字の文字コード、フォント及びサイズを示す情報、並びに文字及び図形を印字する位置を示す位置情報等を含む。
【0039】
次いで、印字情報変換部42は、S101の処理で取得された印字情報を、フォント情報332を使用して、サーマルプリントヘッド11の発熱体をドットとして印字情報に対応する文字及び図形を描画可能なドットライン情報に変換する。(S102)。ドットライン情報は、印字情報に対応する文字及び図形を、発熱体の大きさに応じて搬送方向に分割したそれぞれの行において、サーマルプリントヘッド11の発熱体のそれぞれを発熱させるか否かを示す情報を含む。印字情報変換部42は、変換したドットライン情報を印字バッファ322に記憶する。
【0040】
次いで、駆動指示部43は、ステップモータ36の回転速度を所定の一定速度まで上昇させるために回転速度上昇指示をステップモータドライバ35に出力する(S103)。回転速度上昇指示は、例えば一定の加速度でプラテンローラ12の回転速度を上昇させる指示である。ステップモータドライバ35は、入力される回転指示に応じたパルス信号をステップモータ36に出力し、ステップモータ36は、入力されるパルス信号に応じてプラテンローラ12の回転速度を一定速度まで上昇させる。
【0041】
次いで、駆動指示部43は、ステップモータ36を所定の一定速度で回転させるための一定回転指示をステップモータドライバ35に出力する(S104)。ステップモータドライバ35は、入力される一定回転指示に応じて、一定の間隔毎にパルス信号をステップモータ36に出力し、ステップモータ36は、入力されるパルス信号に応じてプラテンローラ12を回転させるために所定の一定速度で回転する。
【0042】
次いで、印字指示部44は、ドットライン情報に含まれる最初の行に対応する印字指示をサーマルプリントヘッドドライバ34に出力する(S105)。印字指示は、ドットライン情報に応じてサーマルプリントヘッド11の発熱させる発熱体を示す発熱体情報を含む。次いで、印字指示部44は、S105の処理で出力された印字指示に対応する行を示す情報を、ドットライン情報から削除する(S106)。
【0043】
次いで、減速指示部45は、印字バッファ322に記憶された残りのドットライン情報に含まれる行数が減速しきい値行数に一致か否かを判定する(S107)。減速しきい値行数は、ステップモータ36が減速している間に、残りのドットライン情報に対応する文字又は図形がプリンタ1によって印字可能な行数である。減速指示部45によって残りのドットライン情報に含まれる行数が減速しきい値行数に一致していないと判定される(S107-NO)と、処理はS104に戻る。
【0044】
以降、減速指示部45によって残りのドットライン情報に含まれる行数が減速しきい値行数に一致すると判定される(S107-YES)まで、S104~S107の処理を繰り返される。S104~S107の処理を繰り返されることで、用紙ロール100から繰り出される被印字部に、S101の処理で取得された印字情報に対応する文字又は図形が、ドットライン情報に含まれる行毎に順次印字される。
【0045】
減速指示部45は、残りのドットライン情報に含まれる行数が減速しきい値行数に一致すると判定する(S107-YES)と、ステップモータ36を第1減速特性に応じて減速することを示す第1減速指示をステップモータドライバ35に出力する(S108)。
【0046】
図7を参照して第1減速特性について説明する。
図7において、横軸は時間を示し、縦軸はステップモータ36の速度と、ある条件における用紙ロール100の速度とを示す。
図7において、実線は、第1減速特性に応じたステップモータ36の減速特性を示し、破線は、第1減速特性とは異なるステップモータ36の弛み発生減速特性を示す。また、一転鎖線は、所定の一定速度でステップモータ36が回転したときの用紙ロール100の回転が、プリンタ1の送り機構から外力を受けずに収納部10との摩擦によって減速する場合の速度の変化特性である自由減速特性を示す。
【0047】
用紙ロール100は、所定の一定速度で回転した状態で、仮に、プリンタ1の送り機構から外力を受けなくなっても、用紙ロール100に生じる回転にともなう慣性によって、減速しながら回転を続けようとする。このときの減速特性は、プリンタ1の送り機構から外力を受けなくなる直前の回転数と、収納部10との摩擦とに応じたものとなる。自由減速特性は、用紙ロール100に生じるこの現象を想定してステップモータ36を適切に制御するために用いられる。
【0048】
図7に図示したように、第1減速特性は、自由減速特性よりも緩やかな勾配で減速する減速特性であり、弛み発生減速特性は、自由減速特性よりも急な勾配で減速する減速特性である。
【0049】
第1減速特性では、プラテンローラ12の用紙送り速度は、常に、自由減速特性により減速しながら回転を続けようとする用紙ロール100の速度以上となり、プラテンローラ12は、用紙ロール100を引きながら減速をすることができる。これにより、プラテンローラ12と用紙ロール100との間に引き出された用紙に弛みは発生しない。
【0050】
一方、弛み発生減速特性では、プラテンローラ12の用紙送り速度は、常に、自由減速特性により減速しながら回転を続けようとする用紙ロール100の速度未満となり、用紙ロール100がプラテンローラ12に用紙を押し出ながら回転する。これにより、プラテンローラ12と用紙ロール100との間に引き出された用紙の弛みが発生する。
【0051】
次いで、印字指示部44は、ドットライン情報に含まれる次の行に対応する印字指示をサーマルプリントヘッドドライバ34に出力する(S109)。印字指示部44は、ステップモータ36に入力されるパルス信号の周期が長くなり、プラテンローラ12の用紙送り速度が減速されることに応じて発熱体の加熱時間が長くなるように印字指示をサーマルプリントヘッドドライバ34に出力する。次いで、印字指示部44は、S109の処理で出力された印字指示に対応する行を示す情報を、ドットライン情報から削除する(S110)。
【0052】
次いで、減速指示部45は、ステップモータ36の速度が所定の速度としての境界速度まで減速されたか否かを判定する(S111)。前述のように、用紙ロール100は、自由減速特性に基づいて減速しながら回転を続けようとするが、用紙ロール100の速度が遅くなるほど、用紙ロール100が有する回転方向への慣性と弛みへの影響が小さくなる。境界速度は、弛み発生減速特性に従って、ステップモータ36を減速しても用紙ロール100に弛みが発生する状態と発生しない状態との境界、又は用紙ロール100に発生する弛みが無視できない状態と無視できる状態との境界として設定した速度である。
【0053】
用紙ロール100の現在の速度をvCとし、用紙ロール100と用紙ホルダ20との間の摩擦係数をμとし、重力加速度をgとし、用紙ロール100が速度vCの状態から経過した時間をtとすると、t時間後の用紙ロール100の速度v0は、用紙ロールの減速要因の大部分が、用紙ロールが自由減速特性に基づいて回転する際に発生する用紙収容部底面との摩擦抵抗によるため、等加速度直線運動中の物体の時刻tにおける速度の計算公式
v0 = vC - μgt
で示される値で近似できる。例えば、現在の速度vCが0.3[m/s]であり、摩擦係数μが0.3、重力加速度gが9.8 [m/s2]であるとき、用紙ロール100が停止するまでの時間、すなわち、用紙ロール100の速度v0がゼロになる時間tは0.1[s]である。この場合、停止するまでの用紙ロール100の用紙送り距離xは、約15[mm]となる。なお、用紙送り距離xは、vCが減速してゼロに変化するまでの用紙の送り量であるため、等加速度直線運動中の物体の時刻tにおける変位の計算公式
x = vC・t - μgt2/2
で示される値で近似できる。このように、用紙ロール100に大きな弛みが発生する。したがって、0.3[m/s]は、境界速度よりも大きい速度である。
【0054】
一方、用紙ロール100の現在の速度vCが0.05[m/s]であるとき、用紙ロール100が停止するまでの時間tは0.017[s]である。停止するまでの用紙ロール100の用紙送り距離xは、約0.4[mm]となり、用紙ロール100に発生する弛みは無視できる。したがって、0.3[m/s]は、境界速度以下の速度である。
【0055】
以降、減速指示部45によってステップモータ36の速度が境界速度まで減速されたと判定される(S111-YES)まで、S108~S111の処理を繰り返される。なお、S101の処理で取得された印字情報に対応する文字又は図形は、減速指示部45によってステップモータ36の速度が境界速度まで減速されたと判定される(S111-YES)までの間に全て印字される。すなわち、ステップモータ66の回転が、少なくとも、所定の速度としての境界速度を越えた状態で印字が行われる。
【0056】
減速指示部45は、ステップモータ36の速度が境界速度まで減速されたと判定する(S111-YES)と、ステップモータ36を第2減速特性に応じて減速することを示す第2減速指示をステップモータドライバ35に出力する(S112)。
【0057】
第2減速特性では、
図7において破線で示される弛み発生減速特性と同様に、プラテンローラ12の用紙送り速度は、常に用紙ロール100の用紙送り速度未満となる。しかしながら、ステップモータ36が第2減速特性に応じて減速する速度は、境界速度以下の速度であるので、用紙ロール100に発生する弛みは無視できる。
【0058】
そして、プラテンローラ12の用紙送り速度が0[m/s]となり、プリンタ1による印字処理が終了する。
【0059】
(第1実施形態に係るプリンタの作用効果)
図8に示すように、プリンタ1では、減速期間は、境界速度までステップモータ36を減速しながらサーマルプリントヘッド11が印字する第1減速期間と、第1減速期間の後にステップモータ36が停止するまで減速する第2減速期間とを含む。第1減速期間は、自由減速特性よりも用紙ロールの回転が遅く減速する第1減速特性を有し、第2減速期間は、自由減速特性よりも用紙ロール100の回転が速く減速する第2減速特性を有する。プリンタ1は、第1減速期間の後に自由減速特性よりも用紙ロール100の回転が速く減速する第2減速特性で減速し、弛みに影響がない第2減速期間を有するので、減速時間を短縮することができる。
【0060】
また、以下に説明するように、第1減速期間において、ステップモータ36に入力されるパルス信号の周期が長くなることに応じてサーマルプリントヘッドドライバ34の発熱体の加熱時間が長くなるので、第1減速期間に印字される文字の濃度が薄くなることはない。
【0061】
まず、
図9(a)~9(c)を参照して、従来のプリンタの問題点を説明する。従来のプリンタでは、
図9(a)に示す一定速度の期間、及び
図9(b)に示す第1減速期間の何れにおいてもヘッド加熱信号がLレベルである加熱期間が一定の期間に設定されているため、
図9(c)に示すように、第1減速期間に印字される文字の濃度が薄くなる。
図9(a)の例では、ステップモータ36に6つのパルス信号が入力されて1ドット分だけ用紙ロールが搬送される間に5パルス分に対応する期間だけヘッド加熱信号が出力される。すなわち、5/6ドット分だけ送る期間の間、ヘッド過熱信号が出力される。これに対し、
図9(b)の例では、減速中でパルス信号の周期が長くなっても、6つのパルス信号が入力されて1ドット分だけ用紙ロールが搬送される間に、
図9(a)と同じ期間しかヘッドに加熱信号が出力されない。その結果、
図9(b)の場合は、3パルス分に対応する期間、すなわち、半ドット分を送る期間しかヘッド加熱信号が印加されない。
【0062】
これに対し、本発明によるプリンタ1では、
図9(e)に示す第1減速期間の加熱期間は、
図9(d)に示す一定速度の期間の加熱期間よりも、ステップモータ36に入力されるパルス信号の周期が長くなることに応じて長く設定されている。プリンタ1では、ステップモータ36に入力されるパルス信号の周期が長くなることに応じてサーマルプリントヘッドドライバ34の発熱体の加熱時間が長くなるので、
図9(f)に示すように、第1減速期間に印字される文字の濃度が薄くなることはない。なお、
図9(e)は、
図9(d)と同様に、1ドット分を送る6つのパルス信号のうち、5つのパルス分に対応する期間の間、ヘッド加熱信号を印加する例である。
【0063】
また、プリンタ1では、第2減速期間に印字しないので、印字のために使用される電力が節約できると共に、サーマルプリントヘッド11を冷却する冷却期間を設けることができる。すなわち、1行当たりの移動距離が比較的長く、且つ、被印字部の移動が略無視できる第2減速期間にサーマルプリントヘッド11に電力供給を行わないことにより、省電力効果及びサーマルプリントヘッド11の冷却効果が期待できる。
【0064】
(第2実施形態に係るプリンタの構成及び機能)
図10及び11を参照して、第2実施形態に係るプリンタの構成及び機能について説明する。プリンタ2は、処理部50を処理部40の代わりに有することがプリンタ1と相違する。処理部50は、減速指示部55を減速指示部45の代わりに有することが処理部40と相違する。減速指示部55以外のプリンタ2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された構成要素の構成及び機能と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0065】
(第2実施形態に係るプリンタによる印字処理)
図12を参照して、プリンタ2による印字処理について説明する。
【0066】
S201~S211の処理は、S101~S111の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は、省略する。減速指示部55は、ステップモータ36の速度が境界速度まで減速されたと判定する(S211-YES)と、ステップモータ36の減速を一旦停止して一定の速度にすることを示す減速停止指示をステップモータドライバ35に出力する(S212)。
【0067】
次いで、減速指示部55は、所定の緩衝期間が経過したか否かを判定する(S213)。減速指示部55は、所定の緩衝期間が経過したと判定する(S213-YES)まで、S212及びS213の処理を繰り返す。
【0068】
減速指示部55は、所定の緩衝期間が経過したと判定する(S213-YES)と、ステップモータ36を第2減速特性に応じて減速することを示す第2減速指示をステップモータドライバ35に出力する(S214)。
【0069】
(第2実施形態に係るプリンタの作用効果)
図13に示すように、プリンタ2では、減速期間は、第1減速期間と第2減速期間との間にステップモータ36の速度が一定になる緩衝期間が設けられる。すなわち、プリンタ2では、第1減速期間と第2減速期間との間に、一定速度でステップモータ36を制御する第2の等速期間を有する。
【0070】
一般に、ステップモータ36やステップモータ36によって駆動される機構は慣性を有している。従って、ステップモータ36の速度が境界速度まで減速されたと減速指示部55が判定した時点では、まだ、プラテンローラ12が、境界速度まで追従していない可能性がある。プリンタ2では、第1減速期間と第2減速期間との間に緩衝期間が設けられることで、プラテンローラ12を確実に境界速度まで追従させてから、第1減速特性から第2減速特性に切り替えることができるため、この速度の切り替わりにともなう急激な速度変化によってプラテンローラ12の振動やステップモータ36の脱調を防止することができる。
【0071】
(第3実施形態に係るプリンタの構成及び機能)
図14及び15を参照して、第3実施形態に係るプリンタの構成及び機能について説明する。プリンタ3は、処理部60を処理部40の代わりに有することがプリンタ1と相違する。処理部60は、減速指示部65を減速指示部45の代わりに有することが処理部40と相違する。減速指示部65以外のプリンタ2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された構成要素の構成及び機能と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0072】
(第3実施形態に係るプリンタによる印字処理)
図16を参照して、プリンタ3による印字処理について説明する。
【0073】
S301~S310の処理は、S101~S110の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は、省略する。減速指示部65は、ステップモータ36の速度が共振上限速度まで減速されたか否かを判定する(S311)。共振上限速度は、ステップモータ36の共振速度範囲の上限値よりも速い速度である。ステップモータ36の共振速度範囲は、ステップモータ36の振動が大きくなったり、ステップモータ36のトルクが減少するなどの現象が発生する速度範囲である。
【0074】
次いで、減速指示部65は、ステップモータ36を共振速度通過特性に応じて減速することを示す共振速度通過指示をステップモータドライバ35に出力する(S312)。
【0075】
共振速度通過特性では、
図7において破線で示される弛み発生減速特性と同様に、プラテンローラ12の用紙送り速度は、常に用紙ロール100の用紙送り速度未満となる。共振速度通過特性は、例えば500[μs]以下等の短い時間でステップモータ36の共振速度範囲を通過することが好ましい。
【0076】
次いで、減速指示部65は、ステップモータ36の速度が共振下限速度まで減速されたか否かを判定する(S313)。共振下限速度は、ステップモータ36の共振速度範囲の下限値よりも遅い速度である。減速指示部65は、ステップモータ36の速度が共振下限速度まで減速されたと判定する(S313-YES)まで、S312及びS313の処理を繰り返す。
【0077】
減速指示部65は、ステップモータ36の速度が共振下限速度まで減速されたと判定する(S313-YES)と、ステップモータ36を第1減速特性に応じて減速することを示す第1減速指示をステップモータドライバ35に出力する(S314)。次いで、印字指示部44は、ドットライン情報に含まれる次の行に対応する印字指示をサーマルプリントヘッドドライバ34に出力する(S315)。次いで、印字指示部44は、S109の処理で出力された印字指示に対応する行を示す情報を、ドットライン情報から削除する(S316)。
【0078】
次いで、減速指示部65は、ステップモータ36の速度が境界近傍速度まで減速されたか否かを判定する(S317)。境界近傍速度は、境界速度よりも速い速度である。減速指示部65は、ステップモータ36の速度が境界近傍速度まで減速されたと判定する(S317-YES)まで、S314~S317の処理を繰り返す。
【0079】
減速指示部65は、ステップモータ36の速度が境界近傍速度まで減速されたと判定する(S317-YES)と、境界速度漸近指示をステップモータドライバ35に出力する(S318)。境界速度漸近指示は、ステップモータ36を境界速度まで減速するときの加速度が徐々にゼロに近づくように減速することを示す指示である。
【0080】
次いで、減速指示部65は、ステップモータ36の速度が境界速度まで減速されたか否かを判定する(S319)。減速指示部65は、ステップモータ36の速度が境界速度まで減速されたと判定する(S319-YES)まで、S318及びS319の処理を繰り返す。S318及びS319の処理が繰り返されることで、第1減速期間は、第2減速期間に切替る直前に、より遅い漸近減速特性に変化する期間を有することができる。
【0081】
減速指示部65は、ステップモータ36の速度が境界速度まで減速されたと判定する(S319-YES)と、ステップモータ36を第2減速特性に応じて減速することを示す第2減速指示をステップモータドライバ35に出力する(S320)。
【0082】
(第3実施形態に係るプリンタの作用効果)
プリンタ3では、第1減速期間は、ステップモータ36の共振速度を含む共振速度範囲において自由減速特性よりも用紙ロールの回転が速く減速する特性を有する共振速度通過特性を含むので、ステップモータ36の共振の影響を最小限にすることができる。
【0083】
プリンタ3では、第1減速期間は、第2減速期間に切替る直前に、より遅い漸近減速特性に変化する期間を有するので、第1減速特性から第2減速特性への変化にステップモータ36が追従できず、振動及び脱調が発生することを防止することができる。
【0084】
(実施形態に係るプリンタの変形例)
プリンタ1~3では、第1減速期間では印字は継続され、第2減速期間では印字は継続されない。しかしながら、実施形態に係るプリンタでは、印字は、第2減速期間も継続されてもよい。印字が第2減速期間に継続されるとき、第2減速期間における加熱期間は、第2減速特性に応じた時間になる。
【0085】
また、
図18に示すように、実施形態に係るプリンタでは、ステップモータの速度に応じてヘッド加熱信号の印加時間を変化させてもよい。
図18は、ステップモータ36を一定速度で制御している状態から停止させるまでの減速期間を、
図18(a)に示した第1印加期間~第3印加期間の3つの期間に分けてヘッド加熱信号の印加時間を変化させる例を示す。
図18(b)に示すように、一定速度及び第1減速期間の初期の期間を含む第1印加期間では、加熱期間は、一定速度のときと同一の期間となる。
図18(c)に示すように、第1減速期間の中間期間を含む第2印加期間では、加熱期間は、第1印加期間でよりも長い期間となる。
図18(d)に示すように、第1減速期間の後期の期間及び第2減速期間を含む第3印加期間では、加熱期間は、第2印加期間よりも更に長い期間となる。
【0086】
この変形例に係るプリンタでは、ステップモータ36の減速時に用紙ロール100の用紙送り速度に応じてより適切な加熱時間を使用することで、印字品質が向上される。
【0087】
また、実施形態に係るプリンタでは、第1減速期間と、第2減速期間の特性及び境界速度は、用紙ロール100の種類に応じて変更可能であってもよい。実施形態に係るプリンタでは、第1減速期間及び第2減速期間の特性及び境界速度は、図示しないROM33の内部に備えられた記憶領域に保存され、例えば用紙ロール100の幅、ロール径及び材質等に応じて変化する自由減速特性に応じた特性に変更される。第1減速期間及び第2減速期間の特性は、例えばホスト装置200に接続された表示装置に表示されるGUIを介してオペレータによって変更される。または、ホスト装置200から送信される設定変更指示によって変更されても良い。
【0088】
また、プリンタ1では、第2減速期間を設ける例を示したが、減速時間を短縮する必要がなければ、第2減速期間を設けなくても良い。すなわち、ステップモータ36の回転速度を第1減速特性に応じて制御し、境界速度に達しても、ステップモータ36の回転速度がゼロになるまで第1減速特性だけで、ステップモータ36の回転速度を制御することも可能である。
【0089】
また、プリンタ1では、第1減速期間から第2減速期間に直接切り替えられるが、プリンタ1においてもプリンタ3と同様に、第1減速期間が、第2減速期間に切替る直前に、より遅い漸近減速特性に変化する期間を有してもよい。
【0090】
また、プリンタ1~3では、境界速度まで減速したと判断した時点で、第1減速特性から第2減速特性に切り替えたが、境界速度まで減速したと判断してから、遅延時間を経過した後、第1減速特性から第2減速特性に切り替えてもよい。すなわち、この遅延時間により、境界速度を確実に下回った状態で、第1減速特性から第2減速特性に切り替えてもよい。
【0091】
また、プリンタ1~3では、第1減速特性に切り替える直前に、ステップモータ36が
一定速度に制御される例を示したが、第1減速特性に切り替える直前に、ステップモータ36の速度は一定ではなく、変化していても良い。
【0092】
また、プリンタ1や2では、第1減速特性が、時間の経過とともに、直線的に一定の割合で変化する例を示したが、プリンタ3の共振速度範囲とは別に、多段階に傾きを変えるように変化さることも可能である。
【0093】
また、プリンタ2では、境界速度まで減速したと判断した時点で、減速を停止することにより、緩衝期間を設ける例を示したが、境界速度まで減速したと判断した時点で、一時的にゆるやかな減速特性に切り替えることにより、緩衝期間を設けても良い。
【0094】
また、プリンタ1~3では、ドロップイン方式のもので説明したが、本発明は、これに限らず、用紙ロールがシャフトによって支持されてシャフトを軸にして回転するように収納部に収納される方式のものにも適用が可能である。この場合は、シャフトと用紙ロールにおけるシャフトが挿通される内面との間に収納部としての摩擦が生じる。
【符号の説明】
【0095】
1、2、3 プリンタ
10 収納部
11 サーマルプリントヘッド(印字部)
12 プラテンローラ(搬送部)
31 インターフェース回路
32 RAM
33 ROM
34 サーマルプリントヘッドドライバ
35 ステップモータドライバ
36 ステップモータ(モータ)
41 印字情報取得部
42 印字情報変換部
43 駆動指示部
44 印字指示部
45、55、65 減速指示部