(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】光レセプタクルおよび光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2019124596
(22)【出願日】2019-07-03
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森岡 心平
(72)【発明者】
【氏名】今 亜耶乃
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-138749(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068843(WO,A1)
【文献】特開2015-161909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0252503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27, 6/30-6/34, 6/42-6/43
G02B 6/12-14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長の光を出射する光伝送体と、前記第1波長と異なる波長の第2波長の光を出射する発光素子および前記第1波長の光を受光する受光素子を含む光電変換装置との間に配置されたときに、前記光伝送体と、前記発光素子および前記受光素子とを光学的に結合するための光レセプタクルであって、
前記光レセプタクルは、
光レセプタクル本体と、
前記光レセプタクル本体上に配置されるフィルターと、
を有し、
前記光レセプタクル本体は、
前記光伝送体から出射された前記第1波長の光を入射させるか、前記光レセプタクル本体の内部を進行してきた前記第2波長の光を前記光伝送体に向けて出射させるための第1光学面と、
前記光レセプタクル本体の内部を進行してきた前記第1波長の光を前記受光素子に向けて出射させるか、または前記発光素子から出射された前記第2波長の光を入射させるための第2光学面と、
前記第2光学面よりも前記第1光学面から離れた位置に配置され、前記光レセプタクル本体の内部を進行してきた前記第1波長の光を前記受光素子に向けて出射させるか、または前記発光素子から出射された前記第2波長の光を入射させるための第3光学面と、
前記第1光学面および前記第2光学面の間の光路上に配置され、前記第2光学面で入射した前記第2波長の光を前記第1光学面に向けて内部反射させるか、または前記第1光学面で入射した前記第1波長の光を前記第2光学面に向けて内部反射させる反射面と、
を含み、
前記第2光学面は、前記第2光学面の第2中心軸が前記発光素子の第1光軸または前記受光素子の第2光軸と一致しないように配置されており、
前記第3光学面は、前記第3光学面の第3中心軸が前記第1光軸または前記第2光軸と一致しないように配置されており、
前記フィルターは、
一方の面に配置された、前記第1波長の光を反射させ、かつ前記第2波長の光を透過させるための第1フィルター面と、
他方の面に配置された、前記第2波長の光を反射させ、かつ前記第1波長の光を透過させるための第2フィルター面と、
を含み、
前記第2光学面が前記第1波長の光を前記受光素子に向けて出射させるか、または前記第3光学面が前記第2波長の光を入射させる場合は、
前記フィルターは、前記第1フィルター面が前記反射面に密着するように前記光レセプタクル本体上に配置され、
前記第2フィルター面は、前記第3光学面で入射した前記第2波長の光を前記第1光学面に向けて反射させ、
前記反射面および前記第1フィルター面は、前記第1光学面で入射した前記第1波長の光を前記第2光学面に向けて反射させるか、または前記第2フィルター面で反射した前記第2波長の光を前記第1光学面に向けて透過させ、
前記第2光学面が前記第2波長の光を入射させるか、または前記第3光学面が前記第1波長の光を前記受光素子に向けて出射させる場合は、
前記フィルターは、前記第2フィルター面が前記反射面に密着するように前記光レセプタクル本体上に配置され、
前記反射面および前記第2フィルター面は、前記第2光学面で入射した前記第2波長の光を前記第1光学面に向けて反射させるか、または前記第1光学面で入射した前記第1波長の光を前記第1フィルター面に向けて透過させ、
前記第1フィルター面は、前記第2フィルター面を透過した前記第1波長の光を前記第3光学面に向けて反射させる、
光レセプタクル。
【請求項2】
前記第2光学面は、前記第2中心軸が前記第1光軸または前記第2光軸に対して傾斜するように配置されているか、または前記第2中心軸および前記第1光軸または前記第2光軸が平行、かつと一致しないように配置されており、
前記第3光学面は、前記第3中心軸が前記第1光軸または前記第2光軸に対して傾斜するように配置されているか、または前記第3中心軸および前記第1光軸または前記第2光軸が平行、かつと一致しないように配置されている、
請求項1に記載の光レセプタクル。
【請求項3】
基板と、前記基板上に配置された発光素子と、前記基板上に配置された受光素子とを含む光電変換装置と、
請求項1または請求項2に記載の光レセプタクルと、
を有し、
前記発光素子は、前記発光素子の前記第1光軸が前記基板の表面の法線と平行となるように配置されており、
前記受光素子は、前記受光素子の前記第2光軸が前記基板の表面の法線と平行となるように配置されている、
光モジュール。
【請求項4】
前記光モジュールと組み合わせて使用される光伝送体のコアの端面の大きさが、前記発光素子の発光面の大きさ以上である場合は、
前記発光素子は、前記第3光学面と対向するように前記基板上に配置され、
前記受光素子は、前記第2光学面と対向するように前記基板上に配置され、
前記フィルターは、前記第1フィルター面が前記反射面に密着するように前記光レセプタクル本体上に配置され、
前記光伝送体のコアの端面の大きさが、前記発光素子の発光面の大きさ未満である場合は、
前記発光素子は、前記第2光学面と対向するように前記基板上に配置され、
前記受光素子は、前記第3光学面と対向するように前記基板上に配置され、
前記フィルターは、前記第2フィルター面が前記反射面に密着するように前記光レセプタクル本体上に配置される、
請求項3に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光レセプタクルおよび光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバーや光導波路などの光伝送体を用いた光通信には、発光ダイオードなどの発光素子およびフォトディテクターなどの受光素子を備えた光モジュール(光伝送モジュール)が使用されている。光モジュールは、発光素子から出射された通信情報を含む光を、光伝送体の端面に入射させ、光伝送体から出射された通信情報を含む光を受光素子の受光面に入射させる光レセプタクル(光学部材)を有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、送信用光学素子および受信用光学素子を含む光素子アッセンブリと、光ファイバーと、光学部材とを有する光伝送モジュールが記載されている。光学部材は、送信用光学素子からの光信号を光ファイバーに入射させるか、光ファイバーからの光信号を受信用光学素子に入射させる。光学部材は、送信用光学素子と対向して配置された送信用レンズと、光ファイバーと対向して配置されたファイバー用レンズと、受信用光学素子と対向して配置された受信用レンズと、送信用レンズで入射した信号光をファイバー用レンズに向けて反射させるか、ファイバー用レンズで入射した受信光を透過させる光フィルターと、光フィルターを透過した受信光を受信用レンズに向けて反射させる反射面とを有する。光フィルターは、フィルター搭載部のフィルター搭載面に面して配置され、透明な接着剤によりフィルター搭載部を埋めるように固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された光素子アッセンブリでは、光フィルターを設置するためのフィルター搭載部と、フィルター搭載部から離れた位置に配置された反射面とを光学部材に設けることが必要なため、光ファイバーおよび受信用光学素子の間の光路が長くなり、光伝送モジュールが大型化してしまう問題があった。また、例えば、コアの端面の直径が大きい光ファイバーを用いた場合、ファイバー用レンズで完全にコリメート光に変換できないことがあった。このように受信光をコリメート光に変換できない場合、光ファイバーおよび受信用光学素子の間の光路が長いと、光ファイバーの端面と受信用光学素子の受光面との間の光結合効率が顕著に低下してしまう。
【0006】
また、送信用レンズの中心軸が送信用光学素子の光軸と一致して配置されているため、送信用光学素子から出射された光のうち、一部の光は、送信用レンズで反射して戻り光として送信用光学素子に到達する。送信用光学素子の発光面に、送信用レンズで反射した光が到達してしまうと、送信用光学素子から出射される光の強度分布が乱れるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、コアの端面が大きな光伝送体を用いた場合でも、高い光結合効率を維持でき、かつ発光素子から出射された光の戻り光を減少させることができる光レセプタクルおよび光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光レセプタクルは、第1波長の光を出射する光伝送体と、前記第1波長と異なる波長の第2波長の光を出射する発光素子および前記第1波長の光を受光する受光素子を含む光電変換装置との間に配置されたときに、前記光伝送体と、前記発光素子および前記受光素子とを光学的に結合するための光レセプタクルであって、前記光レセプタクルは、光レセプタクル本体と、前記光レセプタクル本体上に配置されるフィルターと、を有し、前記光レセプタクル本体は、前記光伝送体から出射された前記第1波長の光を入射させるか、前記光レセプタクル本体の内部を進行してきた前記第2波長の光を前記光伝送体に向けて出射させるための第1光学面と、前記光レセプタクル本体の内部を進行してきた前記第1波長の光を前記受光素子に向けて出射させるか、または前記発光素子から出射された前記第2波長の光を入射させるための第2光学面と、前記第2光学面よりも前記第1光学面から離れた位置に配置され、前記光レセプタクル本体の内部を進行してきた前記第1波長の光を前記受光素子に向けて出射させるか、または前記発光素子から出射された前記第2波長の光を入射させるための第3光学面と、前記第1光学面および前記第2光学面の間の光路上に配置され、前記第2光学面で入射した前記第2波長の光を前記第1光学面に向けて内部反射させるか、または前記第1光学面で入射した前記第1波長の光を前記第2光学面に向けて内部反射させる反射面と、を含み、前記第2光学面は、前記第2光学面の第2中心軸が前記発光素子の第1光軸または前記受光素子の第2光軸と一致しないように配置されており、前記第3光学面は、前記第3光学面の第3中心軸が前記第1光軸または前記第2光軸と一致しないように配置されており、前記フィルターは、一方の面に配置された、前記第1波長の光を反射させ、かつ前記第2波長の光を透過させるための第1フィルター面と、他方の面に配置された、前記第2波長の光を反射させ、かつ前記第1波長の光を透過させるための第2フィルター面と、を含み、前記第2光学面が前記第1波長の光を前記受光素子に向けて出射させるか、または前記第3光学面が前記第2波長の光を入射させる場合は、前記フィルターは、前記第1フィルター面が前記反射面に密着するように前記光レセプタクル本体上に配置され、前記第2フィルター面は、前記第3光学面で入射した前記第2波長の光を前記第1光学面に向けて反射させ、前記反射面および前記第1フィルター面は、前記第1光学面で入射した前記第1波長の光を前記第2光学面に向けて反射させるか、または前記第2フィルター面で反射した前記第2波長の光を前記第1光学面に向けて透過させ、前記第2光学面が前記第2波長の光を入射させるか、または前記第3光学面が前記第1波長の光を前記受光素子に向けて出射させる場合は、前記フィルターは、前記第2フィルター面が前記反射面に密着するように前記光レセプタクル本体上に配置され、前記反射面および前記第2フィルター面は、前記第2光学面で入射した前記第2波長の光を前記第1光学面に向けて反射させるか、または前記第1光学面で入射した前記第1波長の光を前記第1フィルター面に向けて透過させ、前記第1フィルター面は、前記第2フィルター面を透過した前記第1波長の光を前記第3光学面に向けて反射させる。
【0009】
本発明に係る光モジュールは、基板と、前記基板上に配置された発光素子と、前記基板上に配置された受光素子とを含む光電変換装置と、本発明に係る光レセプタクルと、を有し、前記発光素子は、前記発光素子の前記第1光軸が前記基板の表面の法線と平行となるように配置されており、前記受光素子は、前記受光素子の前記第2光軸が前記基板の表面の法線と平行となるように配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コアの端面が大きな光伝送体を用いた場合でも、高い光結合効率を維持でき、かつ発光素子から出射された光の戻り光を減少させることができる光レセプタクルおよび光モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る光モジュールの断面図である。
【
図2】
図2A~Dは、実施の形態1に係る光レセプタクルの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、光伝送体に対する発光素子の配置と、光伝送体に対する受光素子の配置とを説明するための図である。
【
図4】
図4A~Dは、比較例および実施の形態1の光モジュールにおける戻り光を説明するための図である。
【
図5】
図5A、Bは、実施の形態1の各変形例に係る光モジュールの断面図である。
【
図6】
図6A、Bは、実施の形態1における変形例の光モジュールにおける戻り光を説明するための図である。
【
図7】
図7A~Dは、実施の形態1における他の変形例の光モジュールにおける戻り光を説明するための図である。
【
図8】
図8A、Bは、実施の形態1における他の変形例の光モジュールにおける戻り光を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態2に係る光モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る光モジュールについて、添付した図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[実施の形態1]
(光モジュールの構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光モジュール100の断面図である。
図1では、光伝送体140およびフェルール142を破線で示している。
図1では、光学面の中心軸および光の光軸を示すため、光レセプタクル本体121と、フィルター122のハッチングを省略している。
【0014】
図1に示されるように、光モジュール100は、基板実装型の光電変換装置110と、光レセプタクル120とを有する。光モジュール100は、光レセプタクル120に光伝送体140が結合(以下、接続ともいう)されて使用される。本実施の形態に係る光モジュール100は、単芯双方向通信に利用できる。この場合、光モジュール100は、光伝送体140のコアの端面140aから出射された第1波長の光(受信光)を検出し、光伝送体140のコアの端面140aに第1波長と異なる第2波長の光(送信光)を出射する。
【0015】
光電変換装置110は、基板111と、発光素子112と、受光素子113とを有する。
【0016】
基板111は、発光素子112および受光素子113を支持するとともに、光レセプタクル120も支持する。基板111は、例えば、ガラスコンポジット基板やガラスエポキシ基板、フレキブシル基板、アルミナ等のセラミック基板などである。基板111上には、発光素子112および受光素子113が配置されている。
【0017】
発光素子112は、基板111上に配置されており、第2波長の光を出射する。第2波長は、第1波長と異なり、かつ単芯双方向通信を適切に行うことができれば特に限定されないが、例えば800~1000nm、または1200~1600nmである。発光素子は、例えば、発光ダイオードや、垂直共振器面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。発光素子112から出射される光の発光強度の分布は、一峰性の分布でもよいし、二峰性の分布でもよい。
【0018】
発光素子112の数は、特に限定されない。本実施の形態では、発光素子112の数は、12個である。また、本実施の形態では、光伝送体140のコアの端面140aの大きさは、発光素子112の発光面112aの大きさよりも大きい。
【0019】
発光素子112は、発光素子112の第1光軸LA2が基板111の表面の法線と平行となるように配置されていてもよいし、当該法線に対して傾斜するように配置されていてもよい。すなわち、発光素子112は、発光素子112の第1光軸LA2が基板111の表面の法線と一致していない。発光素子112は、設置が容易である観点から、発光素子112の第1光軸LA2が基板111の表面の法線と平行となるように配置されていることが好ましい。ここで、「第1光軸LA2」とは、発光素子112の発光面112aを通る発光面112aの法線を意味する。
【0020】
受光素子113は、光伝送体140のコアの端面140aから出射された第1波長の光を受光する。受光素子113は、例えば、フォトディテクターである。受光素子113の数は、特に限定されず、光レセプタクル120の構成に合わせて選択される。本実施の形態では、受光素子113の数は、12個である(
図2C参照)。また、本実施の形態では、光伝送体140のコアの端面140aの大きさが発光素子112の発光面112aの大きさよりも大きいことに対応して(後述)、受光素子113は、発光素子112よりも光伝送体140側に配置されている。
【0021】
受光素子113は、受光素子113の光軸(第2光軸)LA3が基板111の表面の法線と平行となるように配置されていてもよいし、当該法線に対して傾斜するように配置されていてもよい。すなわち、受光素子113は、受光素子113の第2光軸LA3が基板111の表面の法線と一致していない。受光素子113は、設置が容易である観点から、受光素子113の第2光軸LA3が基板111の表面の法線と平行となるように配置されていることが好ましい。ここで、「第2光軸LA3」とは、受光素子113の受光面113aの中心を通る受光面113の法線を意味する。
【0022】
光レセプタクル120は、光電変換装置110の基板111上に配置されている。光レセプタクル120は、光電変換装置110と光伝送体140との間に配置されたときに、光伝送体140のコアの端面140aと、発光素子112の発光面112aおよび受光素子113の受光面113aとを光学的に結合させる。本実施の形態では、光レセプタクル120は、12本の光伝送体140のコアの端面140aと、12個の発光素子112の発光面112aおよび12個の受光素子113の受光面113aとをそれぞれ光学的に結合させる。光レセプタクル120の構成については、別途詳細に説明する。
【0023】
光伝送体140の種類は、特に限定されない。光伝送体140の種類の例には、光ファイバー、光導波路が含まれる。本実施の形態では、光伝送体140は、光ファイバーである。光ファイバーは、シングルモード方式でもよいし、マルチモード方式でもよい。光伝送体140のコアの端面140aから出射される光(受信光)の第1波長は、第2波長と異なり、かつ単芯双方向通信を適切に行うことができれば特に限定されないが、例えば800~1000nm、または1200~1600nmである。光伝送体140の数は、特に限定されず、光レセプタクル120の構成に合わせて選択される。本実施の形態では、光伝送体140の数は、12本である。また、本実施の形態では、光伝送体140は、フェルール142を介して光レセプタクル120に接続される。
【0024】
(光レセプタクルの構成)
図2A~Dは、光レセプタクル120の構成を示す図である。
図2Aは、光レセプタクル120の平面図であり、
図2Bは、正面図であり、
図2Cは、底面図であり、
図2Dは、
図2Aに示されるA-A線の断面図である。
【0025】
光レセプタクル120は、透光性を有し、光伝送体140のコアの端面140aから出射された第1波長の光(受信光)を受光素子113の受光面113aに向けて出射させるとともに、発光素子112の発光面112aから出射された第2波長の光(送信光)を光伝送体140のコアの端面140aに向けて出射させる。
図2A~Dに示されるように、光レセプタクル120は、光レセプタクル本体121と、フィルター122とを有する。
【0026】
光レセプタクル本体121は、第1光学面123と、第2光学面124と、第3光学面125と、反射面126とを有する。本実施の形態では、第1光学面123と、第2光学面124と、第3光学面125との数は、それぞれ12個ずつである。本実施の形態では、光レセプタクル本体121は、光伝送体140を位置決めするための位置決め部127をさらに有する。
【0027】
光レセプタクル本体121は、光通信に用いられる波長の光に対して透光性を有する材料を用いて形成される。そのような材料の例には、ポリエーテルイミド(PEI)や環状オレフィン樹脂などの透明な樹脂が含まれる。また、光レセプタクル本体121は、例えば、射出成形により製造される。
【0028】
第1光学面123は、光伝送体140のコアの端面140aから出射された第1波長の光を光レセプタクル本体121の内部に入射させるとともに、光レセプタクル本体121の内部を進行してきた光を光伝送体140のコアの端面140aに向けて出射させる光学面である。第1光学面123の形状は、特に限定されない。第1光学面123は、光伝送体140に向かって凸状の凸レンズ面でもよいし、光伝送体140に対して凹状の凹レンズ面でもよいし、平面でもよい。本実施の形態では、第1光学面123は、光伝送体140に向かって凸状の凸レンズ面である。第1光学面123の平面視形状は、特に限定されない。第1光学面123の平面視形状は、円形状でもよいし、多角形状でもよい。本実施の形態では、第1光学面123の平面視形状は、円形状である。
【0029】
第1光学面123の第1中心軸CA1は、光伝送体140のコアの端面140aから出射される第1波長の光の光軸LA1と一致していてもよいし、一致していなくてもよい。すなわち、第1光学面123の第1中心軸CA1は、光伝送体140のコアの端面140aの中心軸(光軸LA1)と一致していてもよいし、一致していなくてもよい。本実施の形態では、第1光学面123の第1中心軸CA1は、光伝送体140のコアの端面140aの中心軸(光軸LA1)と一致している(
図1参照)。
【0030】
第2光学面124は、第3光学面125よりも第1光学面123側に配置され、発光素子112または受光素子113と対向するように配置されている光学面である。本実施の形態では、第2光学面124は、受光素子113と対向しており、光レセプタクル本体121の内部を進行してきた第1波長の光を受光素子113に向けて出射させる。第2光学面124の形状は、特に限定されない。第2光学面124は、受光素子113に向かって凸状の凸レンズ面でもよいし、受光素子113に対して凹状の凹レンズ面でもよいし、平面でもよい。本実施の形態では、第2光学面124は、受光素子113に向かって凸状の凸レンズ面である。第2光学面124の平面視形状は、特に限定されない。第2光学面124の平面視形状は、円形状でもよいし、多角形状でもよい。本実施の形態では、第2光学面124の平面視形状は、円形状である。
【0031】
第2光学面124は、第2光学面124の第2中心軸CA2が受光素子113の第2光軸LA3と一致しないように配置されている。具体的には、第2光学面124の第2中心軸CA2は、受光素子113の受光面113aの第2光軸LA3に対して傾斜するように配置されているか、または第2中心軸CA2および第2光軸LA3が平行、かつ一致しないように配置されている。本実施の形態では、第2光学面124の第2中心軸CA2は、受光素子113の受光面113aの第2光軸LA3に対して傾斜するように配置されている。より具体的には、前述したように、本実施の形態では、受光素子113の受光面113aの第2光軸LA3は、基板111の表面の法線と平行となるように配置されている。よって、第2光学面124の第2中心軸CA2は、光レセプタクル本体221の底面から天面に向かうにつれて、光伝送体140から離れるように傾斜しているか、光レセプタクル本体221の底面から天面に向かうにつれて、光伝送体140に近づくように傾斜している。本実施の形態では、第2光学面124の第2中心軸CA2は、光レセプタクル本体221の底面から天面に向かうにつれて、光伝送体140から離れるように傾斜している。
【0032】
受光素子113の受光面113aの第2光軸LA3に対する第2光学面124の第2中心軸CA2の傾斜角度は、特に限定されない。当該傾斜角度は、受光面113aで反射して光伝送体140のコアの端面140aに向かう戻り光を減少させる観点から、0.1~23°が好ましい。
【0033】
反射面126は、光レセプタクル本体121の天面側に形成された傾斜面であり、第1光学面123および第2光学面124の間の光路上に配置されている。反射面126は、第1光学面123で入射した光を第2光学面124に向けて内部反射させることができ、かつ第2光学面124で入射した光を第1光学面123に向けて内部反射させることができるように構成されている。本実施の形態では、反射面126は、光レセプタクル120の底面から天面に向かうにつれて、第1光学面123に近づくように傾斜した平面である。反射面126の傾斜角度は、光伝送体140から出射される光の光路と、発光素子112から出射される光の光路に応じて適宜調整できる。
【0034】
なお、この後説明するように、反射面126には、フィルター122の第1フィルター面128または第2フィルター面129が密着する。第1フィルター面128が反射面126に密着している場合、反射面126および第1フィルター面128は、第1波長の光を反射させ、第2波長の光を透過させる。一方、第2フィルター面129が反射面126に密着している場合、反射面126および第2フィルター面129は、第2波長の光を反射させ、第1波長の光を透過させる。本実施の形態では、第1フィルター面128が反射面に密着しており、反射面126および第1フィルター面128は、第1光学面123で入射した第1波長の光を第2光学面124に向けて反射させるとともに、第3光学面125で入射し、第2フィルター面129で反射した第2波長の光を第1光学面123に向けて透過させる(
図3参照)。
【0035】
第3光学面125は、第2光学面124よりも第1光学面123から離れて配置され、発光素子112または受光素子113と対向するように配置されている光学面である。本実施の形態では、第3光学面125は、発光素子112と対向しており、発光素子112から出射された第2波長の光を入射させる。第3光学面125の形状は、特に限定されない。第3光学面125は、発光素子112に向かって凸状の凸レンズ面でもよいし、発光素子112に対して凹状の凹レンズ面でもよいし、平面でもよい。本実施の形態では、第3光学面125は、発光素子112に向かって凸状の凸レンズ面である。第3光学面125の平面視形状は、特に限定されない。第3光学面125の平面視形状は、円形状でもよいし、多角形状でもよい。本実施の形態では、第3光学面125の平面視形状は、円形状である。
【0036】
第3光学面125は、第3光学面125の第3中心軸CA3が発光素子112の第1光軸LA2と一致しないように配置されている。具体的には、第3光学面125の第3中心軸CA3は、発光素子112の発光面112aの第1光軸LA2に対して傾斜するように配置されているか、または第3中心軸CA3および第1光軸LA2が平行、かつ一致しないように配置されている。本実施の形態では、第3光学面125の第3中心軸CA3は、発光素子112の発光面112aの第1光軸LA2に対して傾斜するように配置されている。より具体的には、前述したように、本実施の形態では、発光素子112の発光面112aの第1光軸LA2は、基板111の表面の法線と平行となるように配置されている。よって、第3光学面125の第3中心軸CA3は、光レセプタクル本体221の底面から天面に向かうにつれて、光伝送体140から離れるように傾斜しているか、光レセプタクル本体221の底面から天面に向かうにつれて、光伝送体140に近づくように傾斜している。本実施の形態では、第3光学面125の第3中心軸CA3は、光レセプタクル本体221の底面から天面に向かうにつれて、光伝送体140に近づくように傾斜している。
【0037】
発光素子112の発光面112aの第1光軸LA2に対する第3光学面125の第3中心軸CA3の傾斜角度は、特に限定されない。当該傾斜角度は、第3光学面125で反射して発光素子112の発光面112aに向かう戻り光を減少させる観点から、0.1~23°が好ましい。
【0038】
位置決め部127は、光レセプタクル本体121に対して、光伝送体140のコアの端面140aを位置決めする。位置決め部127の構成は、上記の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、位置決め部127は、略円柱形状の突起である。位置決め部127にフェルール142に形成された位置決め穴を嵌め込むことで、光伝送体140のコアの端面140aが光レセプタクル本体121に対して位置決めされる。
【0039】
フィルター122は、第1光学面123および第2光学面124の間の光路上、かつ第1光学面123および第3光学面125の間の光路上に位置するように、反射面126の上に配置されている。
【0040】
フィルター122は、一方の面に配置された第1フィルター面128と、他方の面に配置された第2フィルター面129とを有する。第1フィルター面128は、第1波長の光を反射させ、かつ第2波長の光を透過させる。一方、第2フィルター面129は、第2波長の光を反射させ、かつ第1波長の光を透過させる。第1フィルター面128および第2フィルター面129の形状は、いずれも反射面126と相補的な形状である。本実施の形態では、第1フィルター面128および第2フィルター面129は、平面である。第1フィルター面128および第2フィルター面129は、平行に配置されてもよいし、平行でなく配置されていてもよい。本実施の形態では、フィルター122の断面形状は、台形である。台形の脚に相当する一方の面は、第1フィルター面128を含み、他方の面は、第2フィルター面129を含む。第2フィルター面129は、第1フィルター面128を反射面126に密着させた状態において、第1光学面123の第1中心軸CA1および第3光学面125の第3中心軸CA3の交点上に位置するように配置されており、第1光学面123で入射した光が第3光学面125に向かって内部反射され、第3光学面125で入射した光が第1光学面123に向かって内部反射されるように傾斜している。第1フィルター面128および第2フィルター面129の傾斜角度は、光伝送体140から出射される光の光路と、発光素子112から出射される光の光路に応じて適宜調整できる。
【0041】
フィルター122は、第1フィルター面128または第2フィルター面129が反射面126に密着するように光レセプタクル本体121の上に配置される。第1フィルター面128が反射面126に密着している場合、反射面126および第1フィルター面128は、第1波長の光を反射させ、第2波長の光を透過させる。一方、第2フィルター面129が反射面126に密着している場合、反射面126および第2フィルター面129は、第2波長の光を反射させ、第1波長の光を透過させる(実施の形態2参照)。
【0042】
本実施の形態では、第1フィルター面128が反射面126に密着しており、反射面126および第1フィルター面128は、第1光学面123の第1中心軸CA1および第2光学面124の第2中心軸CA2の交点上に位置するように配置されている。また、第2フィルター面129は、第1光学面123の第1中心軸CA1および第3光学面125の第3中心軸CA3の交点上に位置するように配置されている。反射面126および第1フィルター面128は、第1光学面123で入射した第1波長の光を第2光学面124に向けて反射させるとともに、第3光学面125で入射し、第2フィルター面129で反射した第2波長の光を第1光学面123に向けて透過させる(
図3参照)。第2フィルター面129は、第3光学面125で入射した第2波長の光を第1光学面123に向けて反射させる。
【0043】
フィルター122の構成は、上記機能を発揮できれば特に限定されない。たとえば、フィルター122は、樹脂またはガラス製の基板の一方の面に第1波長の光を反射させ、かつ第2波長の光を透過させるコーティング(例えば半導体多層膜)を形成し、他方の面に第2波長の光を反射させ、かつ第1波長の光を透過させるコーティング(例えば半導体多層膜)を形成することで得られる。基板の屈折率は、特に限定されないが、光レセプタクル本体121を構成する材料(例えば樹脂)の屈折率に近い屈折率が好ましく、同じ屈折率が特に好ましい。
【0044】
本実施の形態では、発光素子112の発光面112aから出射された第2波長の光は、第3光学面125で光レセプタクル本体121の内部に入射する。第3光学面125で入射した光は、光レセプタクル本体121とフィルター122との界面を透過して、フィルター122の第2フィルター面129で第1光学面123に向けて反射される。第2フィルター面129で反射された光は、第1フィルター面128および反射面126を透過し、第1光学面123から光伝送体140のコアの端面140aに向けて出射される。このように、発光素子112から出射された第2波長の光は、第3光学面125と、第2フィルター面129と、第1光学面123とを経て、光伝送体140に到達する(
図3参照)。
【0045】
一方、光伝送体140のコアの端面140aから出射された第1波長の光は、第1光学面123で光レセプタクル本体121の内部に入射し、反射面126(および第1フィルター面128)で第2光学面124に向けて反射される。反射面126で反射された光は、第2光学面124から受光素子113の受光面113aに向けて出射される。このように、光伝送体140から出射された第1波長の光は、第1光学面123と、反射面126(第1フィルター面128)と、第2光学面124とを経て、受光素子113に到達する(
図3参照)。
【0046】
ここで、光伝送体140に対する発光素子112の配置と、光伝送体140に対する受光素子113の配置とについて説明する。
図3は、光伝送体140に対する発光素子112の配置と、光伝送体140に対する受光素子113の配置とを説明するための図である。
図3では、光路を示すため、光レセプタクル本体121と、フィルター122とのハッチングを省略している。
【0047】
図3に示されるように、発光素子112の発光面112aおよび光伝送体140のコアの端面140aの間の光路を第1光路OP1とし、光伝送体140のコアの端面140aおよび受光素子113の受光面113aの間の光路を第2光路OP2とする。
【0048】
出射面(例えば光伝送体140のコアの端面140aまたは発光素子112の発光面112a)から出射された光を、光レセプタクル120により受光面(例えば受光素子113の受光面113aまたは光伝送体140のコアの端面140a)に導く場合、出射面と受光面との間の光結合効率は、出射面が大きいほど低くなりやすい。また、当該光結合効率は、光路が長いほど低くなりやすい。そこで、本実施の形態では、発光素子112の発光面112aの大きさと、光伝送体140のコアの端面140aの大きさを比較して、より大きい出射面から出射される光の光路がより短い光路となるように、発光素子112および受光素子113の位置ならびにフィルター122の配置を設定している。本実施の形態では、前述したように、光伝送体140のコアの端面140aの大きさは、発光素子112の発光面112aの大きさ以上である。よって、受光素子113は、第2光路OP2が第1光路OP1と比較して短くなるように、第2光学面124と対向して配置されている。この場合、光伝送体140から出射された光は、第2光路OP2を通って、受光素子113に到達する。ここで、第2光路OP2は、第1光路OP1より短いため、光伝送体140のコアの端面140aが大きい場合でも、受光素子113に対する光結合効率を維持できる。なお、光伝送体140のコアの端面140aの大きさが、発光素子112の発光面112aの大きさ未満である場合は、発光素子112が第2光学面124と対向して配置されることが好ましい(実施の形態2参照)。
【0049】
次に、発光素子112から出射される出射光と、発光素子112に到達する戻り光との関係について説明する。なお、比較のため、第3光学面125の中心軸CAと、発光素子112の光軸LAとが一致している比較例に係る光モジュールについても説明する。ここでは、発光素子112から出射される光の強度分布は一峰性(ガウシアン分布に近い分布)であるものとする。
図4Aは、比較例の光モジュールにおける発光素子112と第3光学面125との位置関係を示す図である。
図4Bは、比較例の光モジュールにおける戻り光の強度を示すグラフである。
図4Cは、本実施の形態の光モジュール100における発光素子112と第3光学面125との位置関係を示す図である。
図4Dは、本実施の形態の光モジュールにおける戻り光の強度を示すグラフである。
図4Aおよび
図4Cでは、発光素子112の発光面112aの端部から出射された光の径を破線で示している。
図4Bおよび
図4Dの横軸は、発光素子112の発光面112aの中心からの距離を示しており、縦軸は、戻り光の強度(照度)を示している。また、戻り光の強度は、発光素子112から出射され、第3光学面125で反射した光の発光素子112の発光面112aと同じ高さの仮想面に到達した光の強度である。
【0050】
図4Aに示されるように、比較例の光モジュールでは、第3光学面125の中心軸CAと、発光素子112の光軸LAとは、一致している。発光素子112から出射された光のうち、一部の光は、第3光学面125で反射して光電変換装置110に向かって進行する。発光素子112から出射された光の強度分布はガウシアン分布に近い強度分布であるため、第3光学面125で反射された戻り光の強度分布もガウシアン分布様の強度分布となる。よって、
図4Bに示されるように、発光素子112には、他の領域と比較して強度の高い光が到達してしまう。
【0051】
一方、
図4Cに示されるように、本実施の形態の光モジュール100では、第3光学面125の第3中心軸CA3と、発光素子112の第1光軸LA2とは、一致していない。具体的には、発光素子112の第1光軸LA2に対して、第3光学面125の第3中心軸CA3が傾斜している。この場合も、発光素子112から出射された光の強度分布はガウシアン分布に近い強度分布であるため、第3光学面125で反射された光の強度分布もガウシアン分布様の強度分布となる。しかしながら、発光素子112の第1光軸LA2に対して、第3光学面125の第3中心軸CA3が傾斜しているため、強度が最も大きい戻り光は、発光素子112の発光面112a以外の領域に位置する。すなわち、発光素子112の発光面112aには、強度が最も大きい戻り光は、到達しない。これにより、本実施の形態の光モジュールは、比較例の光モジュールと比較して、戻り光を減少させることができる。
【0052】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係る光モジュール100では、光伝送体140のコアの端面140aの大きさと、発光素子112の発光面112aの大きさとを比較して、より大きい方から出射される光の光路が短くなるように、送信光の光路および受信光の光路を変更できる。これによって、コアの端面140aが大きな光伝送体140を用いた場合でも、高い光結合効率を維持できる。
【0053】
また、本実施の形態に係る光モジュール100では、第2光学面124の第2中心軸CA2および受光素子113の第2光軸LA3が一致しておらず(傾斜しており)、第3光学面125の第3中心軸CA3および発光素子112の第1光軸LA2が一致していない(傾斜している)ため、発光素子112から出射して発光素子112に到達する戻り光を減少させることができる。さらに、本実施の形態に係る光レセプタクル120は、フィルター122がなくても反射面126が機能できるので、フィルター122を使用せずに光レセプタクル本体121のみでも単方向通信の光レセプタクルとして機能できる。
【0054】
(変形例)
次に、実施の形態1の変形例に係る光モジュール200、300について説明する。
図5A、Bは、実施の形態1の各変形例に係る光モジュール200、300の断面図である。
図5Aは、変形例1に係る光モジュール200の断面図であり、
図5Bは、変形例2に係る光モジュール300の断面図である。
図5A、Bでは、光学面の中心軸および光の光軸を示すために、ハッチングを省略している。
【0055】
図5Aに示されるように、変形例1に係る光モジュール200は、光電変換装置210と、光レセプタクル220とを有する。光レセプタクル220は、光レセプタクル本体221およびフィルター222を有する。
【0056】
光電変換装置210は、基板111と、発光素子112と、受光素子113とを有する。本変形例における受光素子113は、実施の形態1の受光素子113と比較して発光素子112側に配置されている。
【0057】
光レセプタクル本体221の第2光学面124は、第2光学面124の第2中心軸CA2が基板111の法線に対して傾斜するように配置されている。第2光学面124の第2中心軸CA2は、光レセプタクル本体221の底面から天面に向かうにつれて、光伝送体140に近づくように傾斜している。
【0058】
反射面126は、第1光学面123の第1中心軸CA1および第2光学面124の第2中心軸CA2の交点上に位置するように配置されており、第1光学面123で入射した光が第2光学面124に向かって内部反射され、第2光学面124で入射した光が第1光学面123に向かって内部反射されるように傾斜している。変形例1に係る光レセプタクル220(
図5A)における、基板111に対する反射面126の傾斜角度は、実施例1に係る光レセプタクル120(
図1)における、基板111に対する反射面126の傾斜角度(45°)よりも小さい。
【0059】
フィルター222は、第1フィルター面128と、第2フィルター面129とを有する。フィルター222は、第1フィルター面128が反射面126に密着するように配置されている。本変形例では、フィルター222の断面形状は、平行四辺形である。変形例1に係る光レセプタクル220(
図4A)における、基板111に対する第2フィルター面129の傾斜角度は、実施例1に係る光レセプタクル120(
図1)における、基板111に対する第2フィルター面129の傾斜角度(45°)よりも小さい。
【0060】
本変形例では、第3光学面125の第3中心軸CA3と、第2フィルター面129で反射した光とのなす角度θ1は、90°超である。また、第1光学面123の第1中心軸CA1と、反射面126で反射した光とのなす角度θ2は、90°超である。
【0061】
次に、変形例2に係る光モジュール300について説明する。以下の説明では、変形例1に係る光モジュール200と異なる部分を主として説明する。
【0062】
図5Bに示されるように、変形例2に係る光モジュール300は、光電変換装置310と、光レセプタクル320とを有する。光レセプタクル320は、光レセプタクル本体321およびフィルター322を有する。
【0063】
光電変換装置310は、基板111と、発光素子112と、受光素子113とを有する。発光素子112は、発光素子112の第1光軸LA2が基板111の法線と平行となるように配置されている。受光素子113は、受光素子113の第2光軸LA3が基板111の法線と平行となるように配置されている。本実施の形態の光電変換装置310における発光素子112と受光素子113との距離は、実施の形態1の光電変換装置110における発光素子112と受光素子113との距離より短い。
【0064】
光レセプタクル本体321の第2光学面124は、第2光学面124の第2中心軸CA2が受光素子113の第2光軸LA3と一致しないように配置されている。より具体的には、光レセプタクル本体321の第2光学面124は、第2光学面124の第2中心軸CA2が受光素子113の第2光軸LA3と平行、かつ一致しないように配置されている。第3光学面125は、第3光学面125の第3中心軸CA3が発光素子112の第1光軸LA2と一致しないように配置されている。より具体的には、第3光学面125は、第3光学面125の第3中心軸CA3が発光素子112の第1光軸LA2と平行、かつ一致しないように配置されている。
【0065】
反射面126は、第1光学面123の第1中心軸CA1および第2光学面124の第2中心軸CA2の交点上に位置するように配置されており、第1光学面123で入射した光が第2光学面124に向かって内部反射され、第2光学面124で入射した光が第1光学面123に向かって内部反射されるように傾斜している。変形例2に係る光レセプタクル320(
図5B)における、基板111に対する反射面126の傾斜角度は、45°である。
【0066】
フィルター322は、第1フィルター面128と、第2フィルター面129とを有する。フィルター322は、第1フィルター面128が反射面126に密着するように配置されている。本変形例では、フィルター322の断面形状は、平行四辺形であり、第1フィルター面128および第2フィルター面129は、平行である。第2フィルター面129は、第1フィルター面128を反射面126に密着させた状態において、第1光学面123の第1中心軸CA1および第3光学面125の第3中心軸CA3の交点上に位置するように配置されており、第1光学面123で入射した光が第3光学面125に向かって内部反射され、第3光学面125で入射した光が第1光学面123に向かって内部反射されるように傾斜している。変形例2に係る光レセプタクル320(
図5B)における、基板111に対する第2フィルター面129の傾斜角度は、45°である。
【0067】
本変形例では、第1光軸LA2(第3中心軸CA3)と、第2フィルター面129で反射した光とのなす角度θ1は、90°である。また、第2光軸LA3(第2中心軸CA2)と、反射面126で反射した光とのなす角度θ2も、90°である。
【0068】
ここで、発光素子112から出射される出射光と、発光素子112に到達する戻り光との関係について説明する。ここでは、発光素子112から出射される光の強度分布は、一峰性(ガウシアン分布に近い分布)であるものとする。
図6Aは、変形例2の光モジュール300における発光素子112と第3光学面125との位置関係を示す図である。
図6Bは、変形例2の光モジュール300における戻り光の強度を示すグラフである。
図6Aおよび
図6Bでは、発光素子112の発光面112aの端部から出射された光の光路を破線で示している。
図6Bの横軸は、発光素子112の発光面112aの中心からの距離を示しており、縦軸は、戻り光の強度(照度)を示している。また、戻り光の強度は、発光素子112から出射され、第3光学面125で反射した光の発光素子112の発光面112aと同じ高さの仮想面に到達した光の強度である。
【0069】
図6Aに示されるように、変形例2の光モジュール300では、第3光学面125の第3中心軸CA3と、発光素子112の第1光軸LA2とは、一致していない。発光素子112から出射された光のうち、一部の光は、第3光学面125で反射して光電変換装置110に向かって進行する。発光素子112から出射された光の強度分布はガウシアン分布に近い強度分布であるため、第3光学面125で反射された光の強度分布もガウシアン分布様の強度分布となる。第3光学面125の第3中心軸CA3と、発光素子112の第1光軸LA2とは、平行であるが一致していないため、強度が最も大きい戻り光は、発光素子112の発光面112a以外の領域に位置する。すなわち、発光素子112の発光面112aには、強度が最も大きい戻り光は、到達しない。これにより、比較例の光モジュールと比較して、戻り光を減少させることができる。
【0070】
次に、本実施の形態に係る光モジュール100、300において、発光強度の分布が二峰性の発光素子112から出射される出射光と、発光素子112に到達する戻り光との関係について説明する。なお、比較のため、第3光学面125の中心軸CAと、発光素子112の光軸LAとが一致している比較例に係る光モジュールについても説明する。
図7Aは、比較例の光モジュールにおける発光素子112と第3光学面125との位置関係を示す図である。
図7Bは、比較例の光モジュールにおける戻り光の強度を示すグラフである。
図7Cは、光モジュール100における発光素子112と第3光学面125との位置関係を示す図である。
図7Dは、光モジュール100における戻り光の強度を示すグラフである。
図8Aは、光モジュール300における発光素子112と第3光学面125との位置関係を示す図である。
図8Bは、光モジュール300における戻り光の強度を示すグラフである。
【0071】
図7A、
図7Cおよび
図8Aでは、発光素子112の発光面112aの端部から出射された光の光路を破線で示している。
図7B、
図7Dおよび
図8Bの横軸は、発光素子112の発光面112aの中心からの距離を示しており、縦軸は、戻り光の強度(照度)を示している。また、戻り光の強度は、発光素子112から出射され、第3光学面125で反射した光の発光素子112の発光面112aと同じ高さの仮想面に到達した光の強度である。
【0072】
図7Aに示されるように、比較例の光モジュールでは、第3光学面125の中心軸CAと、発光素子112の光軸LAとは、一致している。発光素子112から出射された光のうち、一部の光は、第3光学面125で反射して光電変換装置110に向かって進行する。発光素子112から出射された光の強度分布は二峰性の分布に近い強度分布であるため、第3光学面125で反射された光の強度分布も二峰性の分布に近い強度分布となる。よって、
図7Bに示されるように、発光素子112には、他の領域と比較して強度の高い光が到達してしまう。
【0073】
図7Cに示されるように、光モジュール100では、第3光学面125の第3中心軸CA3は、発光素子112の第1光軸LA2と一致していない。具体的には、第3光学面125の第3中心軸CA3は、発光素子112の第1光軸LA2に対して傾斜している。この場合も、発光素子112から出射された光の強度分布は二峰性の分布に近い強度分布であるため、第3光学面125で反射された光の強度分布も二峰性の分布の強度分布となる。しかしながら、第3光学面125の第3中心軸CA3は、発光素子112の第1光軸LA2に対して傾斜しているため、発光素子112の発光面112aに到達する光は減少している。これにより、比較例の光モジュールと比較して、戻り光を減少させることができる。
【0074】
図8Aに示されるように、光モジュール300では、第3光学面125の第3中心軸CA3と、発光素子112の第1光軸LA2とは、一致していない。発光素子112から出射された光のうち、一部の光は、第3光学面125で反射して光電変換装置110に向かって進行する。発光素子112から出射された光の強度分布は二峰性の分布に近い強度分布であるため、第3光学面125で反射された光の強度分布も二峰性の分布の強度分布となる。第3光学面125の第3中心軸CA3と、発光素子112の第1光軸LA2とは、平行であるが一致していないため、発光素子112の発光面112aに到達する光は減少している。これにより、比較例の光モジュールと比較して、戻り光を減少させることができる。
【0075】
[実施の形態2]
実施の形態2では、光伝送体140のコアの端面140aの大きさが発光素子112の発光面112aの大きさ未満である場合について説明する。実施の形態2に係る光モジュール400は、光伝送体140のコアの端面140aの大きさが発光素子112の発光面112aの大きさ未満であることに伴って、発光素子112および受光素子113の配置と、フィルター面128、129の表裏が実施の形態1に係る光モジュール100と異なる。そこで、実施の形態1に係る光モジュール100と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0076】
(光モジュールの構成)
図9は、本発明の実施の形態2に係る光モジュール400の断面図である。
図9では、光路を示すため、光レセプタクル本体121と、フィルター122のハッチングを省略している。
【0077】
図9に示されるように、光モジュール400は、光電変換装置410と、光レセプタクル420とを有する。前述のとおり、本実施の形態では、光伝送体140のコアの端面140aの大きさは、発光素子112の発光面112aの大きさ未満である。
【0078】
光電変換装置410は、基板111と、発光素子112と、受光素子113とを有する。本実施の形態では、発光素子112は第2光学面124と対向して配置されており、受光素子113は第3光学面125と対向して配置されている。
【0079】
光レセプタクル420は、光レセプタクル本体121と、フィルター422とを有する。光レセプタクル本体121は、実施の形態1における光レセプタクル本体121と同じ構造であるが、第2光学面124および第3光学面125の機能が実施の形態1における光レセプタクル本体121と異なっている。
【0080】
本実施の形態では、第2光学面124は、発光素子112と対向しており、発光素子112の発光面112aから出射された第2波長の光を光レセプタクル本体121の内部に入射させる。第2光学面124は、第2光学面124の第2中心軸CA2が発光素子112の第1光軸LA2に対して傾斜するように配置されている。
【0081】
本実施の形態では、第3光学面125は、受光素子113と対向しており、光レセプタクル120の内部を進行してきた第1波長の光を受光素子113の受光面113aに向けて出射させる。第3光学面125は、第3光学面125の第3中心軸CA3が受光素子113の第2光軸LA3に対して傾斜するように配置されている。
【0082】
フィルター122は、第1フィルター面128と、第2フィルター面129とを有する。本実施の形態では、フィルター122は、第2フィルター面129が反射面126に密着するように光レセプタクル本体121の上に配置される。第2フィルター面129が反射面126に密着している場合、反射面126および第2フィルター面129は、第2波長の光を反射させ、第1波長の光を透過させる。本実施の形態では、フィルター122の断面形状は、台形であり、第1フィルター面128および第2フィルター面129は、台形の脚に相当する面に配置されている。
【0083】
本実施の形態では、第2フィルター面129が反射面126に密着しており、反射面126および第2フィルター面129は、第1光学面123の第1中心軸CA1および第2光学面124の第2中心軸CA2の交点上に位置するように配置されている。また、第1フィルター面128は、第1光学面123の第1中心軸CA1および第3光学面125の第3中心軸CA3の交点上に位置するように配置されている。反射面126および第2フィルター面129は、第2光学面124で入射した第2波長の光を第1光学面123に向けて反射させるとともに、第1光学面123で入射した第1波長の光を第1フィルター面128に向けて透過させる。第1フィルター面128は、第2フィルター面129を透過した第1波長の光を第3光学面125に向けて反射させる。
【0084】
本実施の形態では、第1光学面123で入射した第1波長の光は、反射面126および第2フィルター面129を透過する。反射面126および第2フィルター面129を透過した光は、第1フィルター面128で第3光学面125に向かって反射され、第3光学面125から受光素子113の受光面113aに向かって出射される。発光素子112の発光面112aから出射された光は、第2光学面124で光レセプタクル120の内部に入射する。光レセプタクル120の内部に入射した光は、反射面126(第2フィルター面129)で第1光学面123に向かって反射し、第1光学面123から光伝送体140のコアの端面140aに向かって出射される。
【0085】
ここで、光伝送体140に対する発光素子112の配置と、光伝送体140に対する受光素子113の配置とについて説明する。
図9に示されるように、発光素子112の発光面112aおよび光伝送体140のコアの端面140aの間の光路を第3光路OP3とし、光伝送体140のコアの端面140aおよび受光素子113の受光面113aの間の光路を第4光路OP4とする。本実施の形態では、前述したように、光伝送体140のコアの端面140aの大きさは、発光素子112の発光面112aの大きさ未満である。よって、発光素子112は、第3光路OP3が第4光路OP4と比較して短くなるように、第2光学面124と対向して配置されている。光伝送体140コアの端面140aから出射された光は、第4光路OP4を通って、受光素子113に到達する。一方、発光素子112の発光面112aから出射された光は、第3光路OP3を通って、光伝送体140のコアの端面140aに到達する。第3光路OP3は、第4光路OP4より短いため、発光素子112の発光面112aが光伝送体140のコアの端面140aよりも大きい場合でも、光伝送体140のコアの端面140aに対する光結合効率を維持できる。
【0086】
なお、本実施の形態に係る光モジュール400でも、第2光学面124は、第2光学面124の第2中心軸CA2が、第1光軸LA2と平行、かつ一致しないように配置されていてもよい。また、この場合、第3光学面125の第3中心軸CA3が、第2光軸LA3と平行、かつ一致しないように配置されていてもよい。
【0087】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係る光モジュール400は、実施の形態1に係る光モジュール100と同様の効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る光レセプタクルおよび光モジュールは、例えば光伝送体を用いた光通信に有用である。
【符号の説明】
【0089】
100、200、300、400 光モジュール
110、210、310、410 光電変換装置
111 基板
112 発光素子
112a 発光面
113 受光素子
113a 受光面
120、220、320、420 光レセプタクル
121、221、321 光レセプタクル本体
122、222、322、422 フィルター
123 第1光学面
124 第2光学面
125 第3光学面
126 反射面
127 位置決め部
128 第1フィルター面
129 第2フィルター面
140 光伝送体
140a コアの端面
142 フェルール
CA1 第1中心軸
CA2 第2中心軸
CA3 第3中心軸
LA1 光伝送体の端面の光軸(光伝送体から出射された光の光軸)
LA2 第1光軸(発光素子から出射された光の光軸)
LA3 第2光軸