(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】作物収穫車両
(51)【国際特許分類】
A01D 46/30 20060101AFI20221220BHJP
A01D 46/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A01D46/30
A01D46/00 A
(21)【出願番号】P 2019138112
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英博
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
(72)【発明者】
【氏名】弓達 武志
(72)【発明者】
【氏名】坂井 義明
(72)【発明者】
【氏名】宇治野 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】竹村 佳也
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-125640(JP,A)
【文献】実開昭51-055900(JP,U)
【文献】特開平06-133625(JP,A)
【文献】特開2019-106104(JP,A)
【文献】特開平11-220902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 43/00 - 43/04
43/08 - 46/30
51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行手段を備えた車体(10)に、予め段積みした空のバケット(11)を載置する空バケット段積載置部(12)と、作物を収穫する収穫装置(14)と、前記収穫装置(14)で収穫された作物を受け入れて収容するバケット(11)を載せた収穫バケット載置部(24)と、収穫済のバケット(11)を段積みする収穫済バケット段積載置部(15)を備え、前記空バケット段積載置部(12)と前記収穫バケット載置部(24)を隣接して配置し、前記空バケット段積載置部(12)を昇降可能に設け、走行方向前方を検出する障害物検出手段(36)を設け、前記障害物検出手段(36)の検出中に前記空バケット段積載置部(12)を前記障害物検出手段(36)の検出圏外に上昇するよう構成したことを特徴とする作物収穫車両。
【請求項2】
前記空バケット段積載置部(12)に段ばらし装置(20)を構成し、前記段ばらし装置(20)で分離した単一の空バケット(11)を前記収穫バケット載置部(24)に搬送する繰出コンベア(18)を設け、前記繰出コンベア(18)によって搬送する場合、前記空バケット段積載置部(12)を下降して空バケット(11)を前記収穫バケット載置部(24)に供給可能に構成した請求項1に記載の作物収穫車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実等の作物を収穫して容器に収容する作物収穫車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウス栽培等における収穫の省力化を図るため、所定経路に沿って自走する収穫車両があり、車体に収穫作業用のマニピュレータと収穫した作物を入れる収穫容器を設ける構成がある(特許文献1)。マニピュレータは遠隔操作されるハンド部を備え、このハンド部の支持構成は、昇降用ブームやアーム、旋回用テーブル、進退用ブームやアームを備えるもので、ハンド部の視覚部で果実等の作物を見つけると接近作動し、カッタ切断によって摘み取り、摘み取られた果実等の作物はバケットで受けることができ、ハンド部を収穫容器としてのキャリア上方に移動してバケット底を開くことによって当該作物を収穫容器に収容できるものである(特許文献1)。また、ハンド部に代替して把持部を構成する収穫の方法も公知である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3131993号公報
【文献】特許第5494183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、特許文献2の構成では、所定経路を移動しながら順次果実等の作物を摘み取りながら所定容器に収容するまでの一連の作業を自動化できて便利である。ところが、マニピュレータで収穫した作物を収容する容器が単一であるので、オペレータ又は補助員が満杯容器と空容器を入れ替えねばならず、作業効率が所定以上に向上できない欠点がある。
【0005】
本発明は、上記の欠点に鑑み、複数の収容容器を搭載できる収穫車両とすることを課題とする。加えて走行を円滑に行うことを図る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、
走行手段を備えた車体(10)に、予め段積みした空のバケット(11)を載置する空バケット段積載置部(12)と、作物を収穫する収穫装置(14)と、前記収穫装置(14)で収穫された作物を受け入れて収容するバケット(11)を載せた収穫バケット載置部(24)と、収穫済のバケット(11)を段積みする収穫済バケット段積載置部(15)を備え、前記空バケット段積載置部(12)と前記収穫バケット載置部(24)を隣接して配置し、前記空バケット段積載置部(12)を昇降可能に設け、走行方向前方を検出する障害物検出手段(36)を設け、前記障害物検出手段(36)の検出中に前記空バケット段積載置部(12)を前記障害物検出手段(36)の検出圏外に上昇するよう構成したことを特徴とする作物収穫車両とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記空バケット段積載置部12に段ばらし装置20を構成し、前記段ばらし装置20で分離した単一の空バケット11を前記収穫バケット載置部24に搬送する繰出コンベア18を設け、前記繰出コンベア18によって搬送する場合、前記空バケット段積載置部12を下降して空バケット11を前記収穫バケット載置部24に供給可能に構成した。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によると、複数の空バケット11を準備でき、収穫作物を収容することができ、作業効率を向上する。また、障害物検出手段36の検出中に空バケット段積載置部12を障害物検出手段36の検出を阻害しない領域に上昇するよう構成したから、段積みした空バケット11が障害物検出手段の邪魔とならない。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の効果に加え、収穫作業途中であっても順次空バケットを収穫バケット載置部24に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】(A)(B)段ばらし装置の作用を示す正面図である。
【
図5】(A)(B)段積装置の作用を示す正面図である。
【
図7】(a)~(f)作用を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0012】
図1は、作物(例えばトマト)の栽培施設の一例を示すもので、この栽培施設は、暖房機や加湿機等により温度や湿度等の室内環境が管理される温室である栽培室1と、該栽培室1に隣接する出荷室2とを備えている。前記栽培室1内中央には作業者や防除・収穫等の作業車両3が通過できるメイン通路4を設けている。このメイン通路4は、路面がコンクリートで形成された通路としている。メイン通路4の両側方位置には、栽培ベッド5を多数列配置してなり、作物(トマト)栽培のための栽培スペース6としている。なお、前記栽培ベッド5は培地となるロックウールで形成された栽培床部であり、出荷室2内の養液供給装置7から各栽培ベッド5へ養液を供給できる。前記メイン通路4の両端側に開閉扉を備える栽培室1への出入口を設ける。そして作業車両3をメイン通路4から各栽培ベッド5の間に形成されるサブ通路9に移動できるよう構成する。該サブ通路9で栽培ベッド5に沿って作業車両3を移動させながら栽培する植物に対する防除作業や収穫作業等の各種作業を行うことができる。サブ通路9は栽培ベッド5の左右間で前後方向に形成されている。なお、作業車両3の前後の走行輪3f,3rは、メイン通路4及びサブ通路9に敷設されたレール8を走行できるよう構成している。
【0013】
前記作業車両3の一例である作物収穫車両3を
図2に基づき説明する。前後走行輪等の走行装置を備えた車体10に、その進行方向前方側から、空バケット11を多段に段積状態で積載する空バケット段積載置部12、栽培ベッド5で成長したトマトに接近して摘み取り収穫作動し、かつ収穫したトマトを下方に繰り出されて待機する空バケット11に収容作動するマニピュレータ13を備えた収穫装置14、トマトを収容した収穫済バケット11を段積する収穫済バケット段積載置部15、及び段積みされた収穫済バケット11を車体10からメイン通路4又はサブ通路9面又は通路4,9に構成された固定台16に排出する排出装置17を備える。なお、車体10はベースフレームの上部に、起立フレームや上部水平フレーム等を枠組み構成してなる。
【0014】
前記空バケット段積載置部12は、ベルトコンベア形態の繰出コンベア18の前側に手載せによって空バケット11を複数段に積み重ねることができる構成である。
図3に示すように、空バケット段積載置部12のフレーム部12a内に左右一対の電動スライダ19を備えた段ばらし装置20を構成している。詳細には、電動スライダ19によって上下昇降する係止体21を設け、電動スライダ19の上昇に伴い該係止体21は固定の規制板22と連携作動し、係止体21は支点21a回りに回動して空バケット11の上張出縁11aに下方側から係止できる構成である。更に電動スライダ19の上昇工程で最下段の空バケット11を残して他を上昇させることができる。このとき最下段の空バケット11を繰出コンベア18の駆動によって次段の収穫装置14の圏内に繰り出すことができるようになっている。一方、2段目から上に段積された空バケット11は上記電動スライダ19の上昇工程で係止体21の係止作用によって上昇し、この電動スライダ19の下降工程で規制板22の下方に至ることで支点21a回りに復帰回動して繰出コンベア18に載置され、上記2段目相当の空バケット11が次回繰出しバケット11となって待機するものである。
【0015】
前記収穫装置14には、前記マニピュレータ13を備えてトマトを収穫するが、マニピュレータ13の先端部には把持部とカッタ部とを有した摘み取り部14aを構成し、成熟トマトを視認して摘み取り部14aを接近すべくマニピュレータ13の関節部やアーム部を作動制御する動作制御部に撮像データを出力する撮像カメラ35を備える。
【0016】
また、車体10の進行方向前端に前方の障害物を検出する手段である監視カメラ36を備える。
【0017】
さらに、収穫装置14の下方において、前記空バケット段積載置部12から繰り出される空バケット11を受け継ぐ収穫コンベア23を配設している。収穫コンベア23はベルトコンベア形態とされ前記繰出コンベア17の搬送方向、即ち前方から後方、と同方向に搬送できる構成としている。そして、この収穫コンベア23の空バケット11には前記収穫装置14のマニピュレータ13で把持された作物(トマト)が順次収容されていくもので、収穫コンベア23は、その静止又は微動搬送中において、収穫中作物を収容する収穫バケット載置部24として機能するものである。
【0018】
なお、前記バケット11の底部には、トマト等球形作物の安定を確保する凹部11bを縦横所定間隔に設けている(
図4)。
【0019】
次いで、収穫済バケット11を段積する収穫済バケット載置部15について、収穫バケット載置部24としての収穫コンベア23の収穫済バケット11を受入れる段積コンベア25と、段積装置26を備えている。段積装置26は前記段ばらし装置20の構成部材と略共通で電動スライダ27、係止体28、規制板29を備えるが、係止体28に連繋して傾斜回動させる規制板29の位置が前記段ばらし装置20の規制板22の高さよりも低い位置に配置して段積コンベア25に送られてくる収穫済バケット11が段積コンベア25の所定位置に達すると段積装置26の電動スライダ27の上昇工程で係止上昇可能に設けられている。そして、順次収穫済バケット11を係止上昇させると所定複数段に段積みすることができる。なお、電動スライダ27の下降工程で段済みされた収穫済バケット11を段積コンベア25に載置できる。
【0020】
段積みされた収穫済バケット11を車体10からメイン通路4又はサブ通路9面又は通路4,9に構成された固定台16に排出する前記排出装置17は、駆動型ローラコンベア形態の排出コンベア30を、水平状態で搬送可能な姿勢と起立姿勢に切替え可能に構成し、前記収穫済バケット段積載置部15において段積装置26によって所定段数まで段積みが行われるときには排出コンベア30は起立姿勢をとり、所定段数に達することを段積完了センサ31によって検知されると、排出コンベア30は水平姿勢に回動し、かつローラ部を駆動する。よって段積コンベア25との協同によって段積みされた収穫済バケット11を排出移送し、これら収穫済バケット11は、段積コンベア25、排出コンベア30を経て固定台16に至る構成である。
【0021】
前記空バケット段積載置部12において、繰出コンベア18は図外昇降手段によって昇降可能に構成されている。したがって、車体10前方視界を遮蔽する状態とはならないため、前記監視カメラ36の撮像範囲から段積みされた空バケット11を圏外におくことができ、前方の撮像に邪魔とならない。
【0022】
つまり、空バケット段積載置部12の上昇機構は車体10前方に装着の監視カメラ36のいずれにおいても視界確保に有効である。
【0023】
なお、監視カメラ37が、障害物を検出すると、車体10が停止したり、空バケット段積載置部12を下降制御し衝突を回避できるよう構成している。
【0024】
さらに、空バケット段積載置部12のフレーム部12aを傾斜作動可能に構成し、傾斜作動によって、車体10を極力収穫対象作物に接近させることができる。
【0025】
図6は別実施例の収穫作業車両3Aを示す。排出コンベア30の構成を前記実施例と異ならせ、固定台16を準備せずとも、段積された収穫済バケット11を地面に直接排出させるもので、排出コンベア30の排出搬送角度を傾斜対応可能に設けるものである。
【0026】
図7は、収穫作業の工程を示すものである。停止状態の車体10の繰出コンベア18に作業員が空バケット11を積み重ねる(空バケット段積載置部12)(
図7(a))。車体10を前進させながら、空バケット段積載置部12の段ばらし装置20をもって最下段の空バケット11を繰出コンベア18駆動による繰り出し動作、及び収穫コンベア23駆動による受継ぎ動作をもって、空バケット11を収穫装置14下方にのぞませ、余りの空バケット11は段積みのまま図外リフト機構によって上昇させておく(
図7(b))。このとき、空コンテナ段積載置部12と空コンテナ群は、監視カメラ36のカメラ撮像範囲Eの圏外にあって撮像検知に支障を来さない。マニピュレータ(図示せず)で摘み取ったトマトは、下方の(収穫バケット載置部24の)バケット11に収容し、所定個数に達すると、後方の収穫済バケット段積載置部15に向け搬送される。同時に空コンテナ段積載置部12を下降させて、段ばらし装置20の作動で次の空コンテナ11を収穫バケット載置部24に受け入れ待機の状態とする(
図7(c))。収穫作業と並行して収穫済バケット段積載置部15において複数段に段積みが実行される(
図7(d))。収穫済バケット11が所定段数になると、車体10停止状態とし、排出コンベア30が倒伏して駆動する。段積みされた収穫済バケット11は機外のメイン通路4又はサブ通路9面に排出され(
図7(e))、排出コンベア30を復帰し、次の収穫区画に移動する((
図7(f))。そして、これら(a)~(f)の行程を繰り返すものである。
【0027】
次いで、
図8のフローチャートに基づき、空バケット段積載置部昇降制御について説明する。各部スイッチやセンサ類の入力を行う(S101)。空バケット段積載置部12は下降位置にあるか否か判定され、下降位置にあるときは空バケット11が複数載置されているか否か判定される(S102,S103)。次いで、段ばらし装置20出力ONされると、繰出コンベア18と収穫コンベア23とを同期して駆動し、空バケット11が収穫コンベア23に引き継がれて、収穫バケット載置部24の所定位置に達して待機状態となると、繰出コンベア18及び収穫コンベア23は出力OFFされる(S104~S106)。
【0028】
そして、撮像カメラ35がONして収穫物の情報を撮像データ入力ONして(S107)、収穫装置14のマニピュレータ13出力ONして収穫作業を開始する(S108)。このとき、監視カメラ36も作動するため、空バケット段積載置部12が上昇する(S109)。したがって空バケット段積載置部12の空バケット11が、監視カメラ36より高い位置になるため、走行時に障害物の視認を妨げない。
【0029】
撮像データで作物(トマト)の位置を確認しつつマニピュレータ13は摘み取り作業及び下方に待機のバケット11内に収容作業を実行する(S110)。収穫済バケット11が満杯になると、この収穫済バケット11は後続の段積装置26へ向け段積コンベア25を駆動するが、一方空バケット段積載置部12は下降して次の空バケット11の繰出し準備に入る(S112)。
【0030】
S112において、空バケット段積載置部12を下降した後、収穫作業終了しないと判定されると(S113)、当該S113からS102に戻って実行処理されるものとなるが、S113で収穫作業終了と判断されると制御終了する。
【0031】
本実施の形態の障害物検出手段は監視カメラ36であるが、その他、レーザ等の光センサや超音波センサといった障害物を検出可能なセンサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 車体
11 バケット
12 空バケット段積載置部
14 収穫装置
15 収穫済バケット段積載置部
18 繰出コンベア
20 段ばらし装置
24 収穫バケット載置部
35 撮像カメラ(撮像手段)
36 監視カメラ