(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電力供給装置、電力供給方法、および電力供給プログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20221220BHJP
H02H 7/16 20060101ALI20221220BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20221220BHJP
H02P 25/16 20060101ALI20221220BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H02M7/48 L
H02H7/16 A
H02M7/48 M
H02P27/06
H02P25/16
H02J7/00 302A
(21)【出願番号】P 2019141083
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】蛭間 洋明
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-312160(JP,A)
【文献】特開2012-222955(JP,A)
【文献】特開2006-262586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
H02H 7/00
H02H 7/10-7/20
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/10-27/18
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターを駆動するインバータとバッテリーとの間に接続されて、前記バッテリーから前記インバータへの電力供給をオンとオフのいずれかに切り換えるコンタクタと直列に接続され、前記インバータと並列に接続されたキャパシタと、
前記コンタクタと並列に接続され、前記キャパシタにプリチャージ電流を供給するプリチャージ抵抗を含んで構成される、前記キャパシタをプリチャージするプリチャージ回路と、前記プリチャージ回路と前記コンタクタを制御する制御回路と、を備える電力供給装置であって、
前記制御回路は、前記バッテリーの電圧と、前記キャパシタの電圧とを測定するセンサとを有し、前記プリチャージが必要か否かの判定を、前記キャパシタの電圧が前記バッテリーの電圧に所定の電圧値を加えた電圧値未満であるか否かの判定をした後に、前記キャパシタの電圧の前記バッテリーの電圧に対する割合が目標値以下であるか否かに応じて行う、ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
前記制御回路は、記憶部と、カウンタとを有し、前記プリチャージが必要だと判定した場合、当該記憶部を制御して、前記キャパシタの電圧を、キャパシタ電圧初期値として、前記バッテリーの電圧をバッテリー電圧初期値として記憶し、かつ当該カウンタを制御して、前記プリチャージ開始後、前記プリチャージ抵抗に最大負荷が続く所定時間と、前記キャパシタに前記プリチャージ電流を供給しているプリチャージ期間とを測定し、
前記プリチャージが正常に行われているか否かの判定を、前記プリチャージ期間の開始後、前記所定時間が経過した際の前記キャパシタの電圧が、(前記バッテリー電圧初期値-前記キャパシタ電圧初期値)×自然対数(-前記所定時間/前記キャパシタのキャパシタ容量値×前記プリチャージ抵抗の抵抗値)+前記バッテリー電圧初期値で表される前記キャパシタの電圧の予測値に許容値を乗じた閾値以上であるか否かに応じて行う、ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記プリチャージが完了したか否かの判定を、前記キャパシタの電圧の前記バッテリーの電圧に対する割合が目標値以上であるか否かに応じて行い、当該割合が当該目標値未満である場合、前記プリチャージ期間が経過したか否かの判定を行う、ことを特徴とする請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記プリチャージが完了したか否かの判定において、前記プリチャージを停止した場合と、
前記プリチャージが必要か否かの判定において、前記プリチャージを実行しないとした場合と、において、
前記コンタクタをオンさせて、前記バッテリーから前記インバータへの電力供給を実行させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記所定時間は、前記プリチャージ抵抗の抵抗値、および電力定格に基づいて予め決定される、ことを特徴とする請求項2から請求項4いずれか一項に記載の電力供給装置。
【請求項6】
モーターを駆動するインバータとバッテリーとの間に接続されて、前記バッテリーから前記インバータへの電力供給をオンとオフのいずれかに切り換えるコンタクタと直列に接続され、前記インバータと並列に接続されたキャパシタと、
前記コンタクタと並列に接続され、前記キャパシタにプリチャージ電流を供給するプリチャージ抵抗を含んで構成される、前記キャパシタをプリチャージするプリチャージ回路と、前記プリチャージ回路と前記コンタクタを制御する制御回路と、を備える電力供給装置における電力供給方法であって、
前記制御回路は、前記バッテリーの電圧と、前記キャパシタの電圧とを測定するセンサとを有し、前記プリチャージが必要か否かの判定を、前記キャパシタの電圧が前記バッテリーの電圧に所定の電圧値を加えた電圧値未満であるか否かの判定をした後に、前記キャパシタの電圧の前記バッテリーの電圧に対する割合が目標値以下であるか否かに応じて行う、ことを特徴とする電力供給方法。
【請求項7】
モーターを駆動するインバータとバッテリーとの間に接続されて、前記バッテリーから前記インバータへの電力供給をオンとオフのいずれかに切り換えるコンタクタと直列に接続され、前記インバータと並列に接続されたキャパシタと、
前記コンタクタと並列に接続され、前記キャパシタにプリチャージ電流を供給するプリチャージ抵抗を含んで構成される、前記キャパシタをプリチャージするプリチャージ回路と、前記プリチャージ回路と前記コンタクタを制御する制御回路と、を備える電力供給装置において前記制御回路に実行させる電力供給プログラムであって、
前記制御回路は、前記バッテリーの電圧と、前記キャパシタの電圧とを測定するセンサとを有し、前記プリチャージが必要か否かの判定を、前記キャパシタの電圧が前記バッテリーの電圧に所定の電圧値を加えた電圧値未満であるか否かの判定をした後に、前記キャパシタの電圧の前記バッテリーの電圧に対する割合が目標値以下であるか否かに応じて行う、ことを特徴とする電力供給プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給装置、電力供給方法、および電力供給プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中容量から大容量のモータードライバ(インバータ)においては、内蔵されたリップル吸収用コンデンサ(キャパシタ)も大きな容量が必要である。
そのため、電源投入時バッテリーからこのキャパシタへの突入電流によって配線や継電器(コンタクタ)の電流定格を超えるため、予め抵抗器などを介して予備充電(プリチャージ)を行う必要がある(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0003】
ここで、プリチャージ中はモーター駆動できないため、商品性向上のためには素早くプリチャージを完了する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-065437号公報
【文献】特開2005-295697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プリチャージを素早く行うためには上記抵抗器の抵抗値を小さくし、それによって増大した瞬時損失による温度上昇に耐えられる体積が大きな(インラッシュ耐量が大きな)抵抗器を必要とする。一般的には、抵抗器として巻き線式セメント抵抗等を用いる場合が多い。さらに、インバータ回路の故障や回路の短絡などによって、抵抗器に最大負荷が続く可能性を考慮すると、これに対応するためにはより大型で高価な抵抗器が必要となってしまう。
【0006】
ここで、上記の抵抗器は殆どがリード線付きタイプであり、大型でインバータ筐体内でのレイアウト性が悪い。また、チップ抵抗器に比べると高価であり、プリント回路基板に実装するためにはフローの工程を必要とするため、工程増によるコストが増加する問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、コストの増加を抑制することが可能な電力供給装置、電力供給方法、および電力供給プログラムを提供することを主要な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、モーターを駆動するインバータとバッテリーとの間に接続されて、前記バッテリーから前記インバータへの電力供給をオンとオフのいずれかに切り換えるコンタクタと直列に接続され、前記インバータと並列に接続されたキャパシタと、前記コンタクタと並列に接続され、前記キャパシタにプリチャージ電流を供給するプリチャージ抵抗を含んで構成される、前記キャパシタをプリチャージするプリチャージ回路と、前記プリチャージ回路と前記コンタクタを制御する制御回路と、を備える電力供給装置であって、前記制御回路は、前記バッテリーの電圧と、前記キャパシタの電圧とを測定するセンサとを有し、前記プリチャージが必要か否かの判定を、前記キャパシタの電圧が前記バッテリーの電圧に所定の電圧値を加えた電圧値未満であるか否かの判定をした後に、前記キャパシタの電圧の前記バッテリーの電圧に対する割合が目標値以下であるか否かに応じて行う、ことを特徴とする電力供給装置である。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記電力供給装置であって、前記制御回路は、記憶部と、カウンタとを有し、前記プリチャージが必要だと判定した場合、当該記憶部を制御して、前記キャパシタの電圧を、キャパシタ電圧初期値として、前記バッテリーの電圧をバッテリー電圧初期値として記憶し、かつ当該カウンタを制御して、前記プリチャージ開始後、前記プリチャージ抵抗に最大負荷が続く所定時間と、前記キャパシタに前記プリチャージ電流を供給しているプリチャージ期間とを測定し、前記プリチャージが正常に行われているか否かの判定を、前記プリチャージ期間の開始後、前記所定時間が経過した際の前記キャパシタの電圧が、(前記バッテリー電圧初期値-前記キャパシタ電圧初期値)×自然対数(-前記所定時間/前記キャパシタのキャパシタ容量値×前記プリチャージ抵抗の抵抗値)+前記バッテリー電圧初期値で表される前記キャパシタの電圧の予測値に許容値を乗じた閾値以上であるか否かに応じて行う、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記電力供給装置であって、前記制御回路は、前記プリチャージが完了したか否かの判定を、前記キャパシタの電圧の前記バッテリーの電圧に対する割合が目標値以上であるか否かに応じて行い、当該割合が当該目標値未満である場合、前記プリチャージ期間が経過したか否かの判定を行う、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記電力供給装置であって、前記制御回路は、前記プリチャージが完了したか否かの判定において、前記プリチャージを停止した場合と、前記プリチャージが必要か否かの判定において、前記プリチャージを実行しないとした場合と、において、前記コンタクタをオンさせて、前記バッテリーから前記インバータへの電力供給を実行させる、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記電力供給装置であって、前記所定時間は、前記プリチャージ抵抗の抵抗値、および電力定格に基づいて予め決定される、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様は、モーターを駆動するインバータとバッテリーとの間に接続されて、前記バッテリーから前記インバータへの電力供給をオンとオフのいずれかに切り換えるコンタクタと直列に接続され、前記インバータと並列に接続されたキャパシタと、前記コンタクタと並列に接続され、前記キャパシタにプリチャージ電流を供給するプリチャージ抵抗を含んで構成される、前記キャパシタをプリチャージするプリチャージ回路と、前記プリチャージ回路と前記コンタクタを制御する制御回路と、を備える電力供給装置における電力供給方法であって、前記制御回路は、前記バッテリーの電圧と、前記キャパシタの電圧とを測定するセンサとを有し、前記プリチャージが必要か否かの判定を、前記キャパシタの電圧が前記バッテリーの電圧に所定の電圧値を加えた電圧値未満であるか否かの判定をした後に、前記キャパシタの電圧の前記バッテリーの電圧に対する割合が目標値以下であるか否かに応じて行う、ことを特徴とする電力供給方法である。
【0014】
また、本発明の一態様は、モーターを駆動するインバータとバッテリーとの間に接続されて、前記バッテリーから前記インバータへの電力供給をオンとオフのいずれかに切り換えるコンタクタと直列に接続され、前記インバータと並列に接続されたキャパシタと、前記コンタクタと並列に接続され、前記キャパシタにプリチャージ電流を供給するプリチャージ抵抗を含んで構成される、前記キャパシタをプリチャージするプリチャージ回路と、前記プリチャージ回路と前記コンタクタを制御する制御回路と、を備える電力供給装置において前記制御回路に実行させる電力供給プログラムであって、前記制御回路は、前記バッテリーの電圧と、前記キャパシタの電圧とを測定するセンサとを有し、前記プリチャージが必要か否かの判定を、前記キャパシタの電圧が前記バッテリーの電圧に所定の電圧値を加えた電圧値未満であるか否かの判定をした後に、前記キャパシタの電圧の前記バッテリーの電圧に対する割合が目標値以下であるか否かに応じて行う、ことを特徴とする電力供給プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コストの増加を抑制することが可能な電力供給装置、電力供給方法、および電力供給プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態における電力供給装置10の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態における電力供給装置10のプリチャージ期間において、制御回路11が行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明の態様を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。
【0018】
本実施形態の電力供給装置10は、抵抗器(プリチャージ抵抗12b)に最大負荷が続く時間をごく短時間(以下、「所定時間」というが、詳細については後述する。)とし、その短時間の中で自己診断を行うことで抵抗器の自己発熱による故障を防ぐ。自己診断の方法は、バッテリー(バッテリー20)の電圧とキャパシタ(キャパシタ14)の電圧をそれぞれ監視しながら、ごく短時間のチャージの後、予想される電圧の範囲内であれば正常と判断してチャージを続行し、範囲外であれば異常と判断してそれ以上のチャージを取りやめ、抵抗器の過熱・故障を防ぐ。
後述する式のように、チャージ前の電圧初期値によって予測電圧が補正され、常に適格な故障判断を導くものである。このため、チャージ前にキャパシタの電荷を放電(ディスチャージ)しなくて済むため、イニシャル処理の短縮ができる。
以下に、本実施形態における電力供給装置10について、図を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態における電力供給装置10の概略構成の一例を示す図である。
図1に示すように、電力供給装置10は、制御回路11と、プリチャージ回路12と、コンタクタ13と、キャパシタ14と、を含んで構成される。
【0020】
コンタクタ13(継電器)は、モーター40を駆動するインバータ30とバッテリー20との間に接続されて、バッテリー20からインバータ30への電力供給をオンとオフのいずれかに切り換える。
【0021】
キャパシタ14は、コンタクタ13と直列に接続され、インバータと並列に接続されている。
【0022】
プリチャージ回路12は、コンタクタ13と並列に接続され、キャパシタ14にプリチャージ電流を供給するプリチャージ抵抗12bと、プリチャージ抵抗12bに直列に接続しているプリチャージスイッチ12aとを有している。プリチャージ回路12は、キャパシタ14をプリチャージする。
【0023】
制御回路11は、プリチャージ回路12とコンタクタ13を制御する。
制御回路11は、プリチャージ制御回路11aと、コンタクタ制御回路11bと、センサ11cと、センサ11dと、カウンタ11eと、記憶部11fと、制御部11gと、を有している。
【0024】
プリチャージ制御回路11aは、制御部11gから指示信号が入力されると、プリチャージスイッチ12aをオンオフさせるための、駆動信号Φ2を出力する。
なお、プリチャージスイッチ12aは、
図1において、NMOS FETで構成されているが、PMOS FETで構成されてもよく、半導体で形成されるスイッチでなくてもよい。つまり、プリチャージスイッチ12aは、駆動信号Φ2により、オンしてバッテリー20と、プリチャージ抵抗12bとを接続し、プリチャージ抵抗12bに、バッテリー20から供給されるバッテリー20のバッテリー電圧BVに対応する電流(プリチャージ電流)を流させる。
【0025】
コンタクタ制御回路11bは、制御部11gから指示信号が入力されると、コンタクタ13をオンオフさせるための、駆動信号Φ3を出力する。
しかしながら、プリチャージ期間において、コンタクタ13は、駆動信号Φ3により、オンしてバッテリー20と、インバータ30とを接続し、インバータ30にバッテリー電圧BVに対応する電力を供給することはない。これは、キャパシタ14をプリチャージしないで、コンタクタ13をオンに切り替えると、コンタクタ13の接点がキャパシタ14を充電する過大な電流で溶着するからである。
つまり、コンタクタ制御回路11bは、プリチャージ制御回路11aでキャパシタ14をプリチャージした後に、コンタクタ13をオンに切り替える。
【0026】
センサ11cは、バッテリー20のバッテリー電圧BVを測定し、測定したバッテリー電圧BVを制御部11gに送信する。
【0027】
センサ11dは、キャパシタ14のキャパシタ電圧CVを測定し、測定したバッテリー電圧CVを制御部11gに送信する。
【0028】
カウンタ11eは、制御部11gにより制御され、プリチャージ開始後、抵抗器(プリチャージ抵抗12b)に最大負荷が続く時間(「所定時間dt」)とキャパシタ14にプリチャージ電流を供給している時間(「プリチャージ期間pt」)とを測定する。例えば、本実施形態においては、所定時間dtを、カウント数N1×周期処理時間T1として測定する。また、プリチャージ期間ptを、カウント数N2×周期処理時間T2として測定する。このとき、所定時間dtを測定する際のカウント数N1<プリチャージ期間ptを測定する際のカウント数N2となる。また、周期処理時間T1とT2とは同じであっても、異なるように設定してもよい。
【0029】
記憶部11fは、制御部11gが、プリチャージが必要か否かを判定し、プリチャージが必要だと判定した場合、キャパシタ14の電圧CVを、キャパシタ電圧初期値FCVとして、バッテリー20の電圧BVをバッテリー電圧初期値FBVとして記憶する。
【0030】
制御部11gは、プリチャージが正常に行われているか否かの判定を、プリチャージの一時停止の際のキャパシタ14の電圧CVが、バッテリー電圧初期値FBV、キャパシタ電圧初期値FCV、キャパシタ14のキャパシタ容量値C、プリチャージ抵抗12bの抵抗値R、自然対数e、および所定時間dtで表されるキャパシタ14の電圧の予測値PCVに対応する閾値TH(予測値PCV×許容値TO)以上であるか否かに応じて行う。ここで、予測値PCVは、下記式(1)の様に表される。
【0031】
予測値PCV=(バッテリー電圧初期値FBV-キャパシタ電圧初期値FCV)×自然対数e(-所定時間dt/キャパシタ容量値C×抵抗値R)+バッテリー電圧初期値FBV…(1)
【0032】
なお、所定時間dtは、プリチャージ抵抗12bの抵抗値R、および電力定格Wに基づいて予め決定される。
例えば、抵抗のワンパルス限界電力を表すグラフ(横軸「時間t」-縦軸「電力W」)によると、抵抗値Rを持つプリチャージ抵抗12bは、抵抗値Rを小さくして最大負荷が続く時間である「所定時間」を短くして、電力定格Wより大きな電力を流しても自己発熱による故障を防ぐことができる。
【0033】
そのため、プリチャージ抵抗12bとして、チップ抵抗器など容量の小さく安価な抵抗器を用いてプリチャージ回路12を実現できる。
【0034】
続いて、
図2を参照しつつ、プリチャージ期間において、制御回路11が行う制御処理について説明する。
図2は、本実施形態における電力供給装置10のプリチャージ期間において、制御回路11が行う処理を示すフローチャートである。
【0035】
キャパシタ14の電圧CV>バッテリー20の電圧BV+所定の電圧値DVか否かの判定を行う(ステップST01)。具体的には、制御回路11における制御部11gは、プリチャージが必要か否かを判定する(ステップST03)前に、キャパシタ14の電圧CVがバッテリー20の電圧BVに所定の電圧値DV(例えば、バッテリー20の電圧BV×0.05)を加えた電圧値より大きいか否かを判定する。なお、バッテリー20の電圧BVに加える所定の電圧値DVは、バッテリー20の電圧BVに0.03~0.1を乗じた値の電圧であればよい。
【0036】
キャパシタ14の電圧CVがバッテリー20の電圧BVに所定の電圧値DVを加えた電圧値以下の場合(ステップST01-NO)、制御部11gは、ステップST03へ進む。一方、キャパシタ14の電圧CVがバッテリー20の電圧BVに所定の電圧値を加えた電圧値DVより大きい場合(ステップST01-YES)、ステップST02へ進む。
【0037】
エラー1:モータ高電圧を検知し、プリチャージ動作には進まないと判断する(ステップST02)
具体的には、制御回路11における制御部11gは、プリチャージ動作には進まないと判断する。この理由は、インバータ30の誘起電圧がインバータ30に供給される電源電圧より高くなり、モーター40が過回転になる可能性があるためである。検出しなかった場合起こりうる事象として、下記事象が考えられる。
・コンタクタ13により、インバータ30が急制動となる可能性が高い。
・キャパシタ14からバッテリー20へ突入電流が流れ、コンタクタ13の溶着を招く恐れがある。
【0038】
プリチャージが必要か否かの判定を行う(ステップST03)。具体的には、制御回路11における制御部11gは、プリチャージが必要か否かの判定を、キャパシタ14のバッテリー20に対する充電率(割合=キャパシタ14の電圧CV/バッテリー20の電圧BV)が目標値P以下であるか否かに応じて行う。
【0039】
キャパシタ14のバッテリー20に対する充電率が目標値(ここでは、0.9とする)より大きい場合(ステップST03-NO)、プリチャージを実行しない。
この場合、制御回路11における制御部11gは、コンタクタ制御回路11bに対して、指示信号を出力し、コンタクタ制御回路11bは、コンタクタ13をオンさせるための、駆動信号Φ3を出力する。これにより、制御部11gは、コンタクタ13をオンさせて、バッテリー20からインバータ30への電力供給を実行させる。
【0040】
一方、キャパシタ14のバッテリー20に対する充電率が目標値P(ここでは、0.9とする)以下である場合(ステップST03-YES)、ステップST04に進む。
バッテリー電圧初期値FBVの記憶を実行する(ステップST04)。
具体的には、センサ11cは、バッテリー20の電圧BVを測定し、測定したバッテリー20の電圧BVを制御部11gに送信する。記憶部11fは、制御部11gが、プリチャージが必要か否かを判定し、プリチャージが必要だと判定した場合であるので、送信されたバッテリー20の電圧BVをバッテリー電圧初期値FBVとして記憶する。
【0041】
キャパシタ電圧初期値FCVの記憶を実行する(ステップST05)。
具体的には、センサ11dは、キャパシタ14の電圧CVを測定し、測定したキャパシタ14の電圧CVを制御部11gに送信する。記憶部11fは、制御部11gが、プリチャージが必要か否かを判定し、プリチャージが必要だと判定した場合であるので、送信されたキャパシタ14の電圧CVを、キャパシタ電圧初期値FCVとして記憶する。
【0042】
プリチャージ開始する(ステップST06)。
具体的には、制御回路11における制御部11gは、プリチャージ制御回路11aに対して、指示信号を出力し、プリチャージ制御回路11aは、プリチャージスイッチ12aをオンオフさせるための、駆動信号Φ2を出力する。これにより、制御部11gは、プリチャージスイッチ12aをオンさせてプリチャージ電流をキャパシタ14に供給させるプリチャージを開始する。
【0043】
また、制御部11gは、カウンタ11eを制御して、プリチャージ開始後、キャパシタ14にプリチャージ電流を供給している時間(「プリチャージ期間pt」)の測定を開始させる。具体的には、プリチャージ期間ptを、カウント数N2×周期処理時間T2として測定する。
【0044】
プリチャージ開始後、所定時間dtが経過したか否かを繰り返し判定する(ステップST07)。具体的には、制御部11gは、カウンタ11eを制御して、プリチャージ開始後、抵抗器(プリチャージ抵抗12b)に最大負荷が続く時間(「所定時間dt」)を、カウント数N1×周期処理時間T1として測定させる。ここでは、例えば、カウント数N1×周期処理時間T1=10×0.001[s]=10msで所定時間が測定される。
もちろん、この所定時間dtは、抵抗値Rの大小に依存するものであり、10msに対応する抵抗値より小さい場合は、1ms~9msが所定時間となり、10msに対応する抵抗値より大きい場合は、11ms以上の時間が所定時間dtとなる。
カウンタ11eが測定した時間が「所定時間dt」を経過した場合(ステップST07-YES)、ステップST08に進む。
【0045】
プリチャージの一時停止を行う(ステップST08)。
具体的には、制御部11gは、カウンタ11eを制御して、キャパシタ14にプリチャージ電流を供給している時間(「プリチャージ期間pt」)の測定を開始し、プリチャージ期間ptの測定の開始後、所定時間dtが経過した後、プリチャージスイッチ12aをオフさせてプリチャージを一時停止する。
【0046】
プリチャージは正常か否かの判定を行う(ステップST09)。
具体的には、制御部11gは、プリチャージが正常に行われているか否かの判定を、プリチャージの一時停止の際のキャパシタ14の電圧CVが、前述したキャパシタ14の電圧の予測値PCV(上記(1)式で算出される電圧)に対応する閾値TH(キャパシタ14の電圧の予測値PCV×許容値TO)以上であるか否かに応じて行う。ここでは、例えば、許容値TO=0.5として、判定されるが、この値は0.5を前後する値であってもよい。
【0047】
プリチャージが正常に行われているか否かの判定において、プリチャージが正常に行われていないと判定した場合、ステップST10に進む。
エラー2:プリチャージ異常を検知し、プリチャージを停止する(ステップST10)
具体的には、制御回路11における制御部11gは、プリチャージ制御回路11aに対して、指示信号を出力し、プリチャージ制御回路11aは、プリチャージスイッチ12aをオンオフさせるための、駆動信号Φ2を出力する。これにより、制御部11gは、プリチャージスイッチ12aをオフさせてプリチャージ電流をキャパシタ14に供給させるプリチャージを停止する。
【0048】
この場合の想定原因として考えられるのは、プリチャージ抵抗12bの異常と、インバータ30の異常が考えられる。また、検出しなかった場合起こり得る事象としては、下記事象が考えられる。
・プリチャージ抵抗12bの故障により、キャパシタ14をプリチャージできず、モーター40が作動しない。
【0049】
プリチャージが正常に行われているか否かの判定において、プリチャージが正常に行われていると判定した場合、ステップST11に進む。
プリチャージを再開する(ステップST11)。
具体的には、制御回路11における制御部11gは、プリチャージ制御回路11aに対して、指示信号を出力し、プリチャージ制御回路11aは、プリチャージスイッチ12aをオンオフさせるための、駆動信号Φ2を出力する。これにより、制御部11gは、プリチャージスイッチ12aをオンさせてプリチャージ電流をキャパシタ14に供給させるプリチャージを再開する。
【0050】
プリチャージが完了したか否かの判定を行う(ステップST12)。
具体的には、制御回路11における制御部11gは、プリチャージを再開した後、プリチャージが完了したか否かの判定を、キャパシタ14のバッテリー20に対する充電率(キャパシタ14の電圧CV/バッテリー20の電圧BV)が目標値P以上であるか否かに応じて行う。
【0051】
キャパシタ14のバッテリー20に対する充電率が目標値P(ここでは、0.9とする)未満である場合(ステップST12-NO)、ステップST13に進む。
プリチャージ期間ptが経過したか否かを判定する(ステップST13)。
具体的には、制御部11gは、カウンタ11eを制御して、プリチャージ開始後、キャパシタ14にプリチャージ電流を供給している時間(「プリチャージ期間pt」)を、カウント数N2×周期処理時間T2として測定させる。ここでは、例えば、カウント数N2×周期処理時間T2=600×0.001[s]=0.6sで所定時間が測定される。制御部11gは、プリチャージに対して予め設定されたプリチャージ期間が経過したか否かをカウンタ11eの測定時間に応じて判定する。
【0052】
プリチャージ期間ptが経過した場合(ステップST13-YES)、ステップST14に進む。
エラー3:プリチャージ期間の経過を検知し、プリチャージスイッチをオフさせて前記プリチャージを停止する(ステップST14)。
具体的には、制御回路11における制御部11gは、プリチャージ制御回路11aに対して、指示信号を出力し、プリチャージ制御回路11aは、プリチャージスイッチ12aをオンオフさせるための、駆動信号Φ2を出力する。これにより、制御部11gは、プリチャージスイッチ12aをオフさせてプリチャージ電流をキャパシタ14に供給させるプリチャージを停止する。
【0053】
この場合の想定原因として考えられるのは、プリチャージ抵抗12bの異常と、インバータ30の異常が考えられる。また、検出しなかった場合起こり得る事象としては、下記事象が考えられる。
・プリチャージ抵抗12bの故障により、キャパシタ14をプリチャージできず、モーター40が作動しない。
一方、プリチャージ期間が経過していない場合(ステップST13-NO)、上記ステップST12に進む。
【0054】
一方、キャパシタ14のバッテリー20に対する充電率が目標値P(ここでは、0.9とする)以上である場合(ステップST12-YES)、ステップST15に進む。
プリチャージ停止を行う(ステップST15)。
具体的には、制御回路11における制御部11gは、プリチャージ制御回路11aに対して、指示信号を出力し、プリチャージ制御回路11aは、プリチャージスイッチ12aをオンオフさせるための、駆動信号Φ2を出力する。これにより、制御部11gは、プリチャージスイッチ12aをオフさせてプリチャージ電流をキャパシタ14に供給させるプリチャージを停止する。すなわち、プリチャージ期間は、終了する。
【0055】
また、この場合、制御回路11における制御部11gは、コンタクタ制御回路11bに対して、指示信号を出力し、コンタクタ制御回路11bは、コンタクタ13をオンさせるための、駆動信号Φ3を出力する。これにより、制御部11gは、コンタクタ13をオンさせて、バッテリー20からインバータ30への電力供給を実行させる。
【0056】
本発明によれば、抵抗器の耐熱余裕度を低く抑えられるため、チップ抵抗器など容量の小さく安価な抵抗器を用いてプリチャージ回路を実現することにより、インバータの小型化・低コスト化ができる。また、チップ抵抗で実現できた場合、フロー工程をスキップできる可能性があり、コストメリットが大となる。また、リード線のカシメやコネクタ接続の工程も必要なく、抵抗器組み付けの工程は手作業からチップマウンタによる高速実装へ置換が可能となる。
【0057】
これにより、コストの増加を抑制することが可能な電力供給装置、電力供給方法、および電力供給プログラムを提供することができる。
【0058】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10 電力供給装置
11 制御回路
11a プリチャージ制御回路
11b コンタクタ制御回路
11c,11d センサ
11e カウンタ
11f 記憶部
11g 制御部
12 プリチャージ回路
12a プリチャージスイッチ
12b プリチャージ抵抗
13 コンタクタ
14 キャパシタ
20 バッテリー
30 インバータ
40 モーター