(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】牽引自動車、トレーラ、およびトラクタ
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20221220BHJP
F17C 7/00 20060101ALI20221220BHJP
B60K 15/01 20060101ALI20221220BHJP
B62D 53/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60K15/03 E
F17C7/00 A
B60K15/01 B
B62D53/04 Z
(21)【出願番号】P 2019181993
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 俊行
(72)【発明者】
【氏名】横山 幸秀
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02391847(GB,A)
【文献】独国実用新案第202012103321(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0152215(US,A1)
【文献】米国特許第03653686(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102017214184(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
F17C 7/00
B60K 15/01
B62D 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを使用して走行するトラクタに連結されるトレーラであって、
前記トラクタが走行するための燃料としての高圧ガスを貯蔵するタンクと、
前記タンクに接続される第1種の配管と、
前記第1種の配管に接続され、前記第1種の配管によって前記タンクから供給される燃料ガスの圧力を低減する減圧部と、
前記減圧部に接続される第2種の配管であって、前記トラクタに設けられ燃料ガスを受け入れる入側接続部と接続される出側接続部を備える第2種の配管と、を備え、
前記第2種の配管の少なくとも一部は、前記第1種の配管の剛性よりも低い剛性を備
え、
前記出側接続部は、前記入側接続部と接続されたときに燃料ガスの流通を許可し、前記入側接続部と接続していないときに燃料ガスの流通を許可しないように構成されて
おり、
前記入側接続部と前記出側接続部とが接続された状態において、前記入側接続部と前記出側接続部との間に引張力が付与された場合に、前記タンクから前記出側接続部までの燃料の流通を実現する構造の一部が破壊されるよりも先に、前記出側接続部と前記入側接続部の接続が解除されるように構成されている、トレーラ。
【請求項2】
燃料ガスを使用して走行するトラクタに連結されるトレーラであって、
前記トラクタが走行するための燃料としての高圧ガスを貯蔵するタンクと、
前記タンクに接続される第1種の配管と、
前記第1種の配管に接続され、前記第1種の配管によって前記タンクから供給される燃料ガスの圧力を低減する減圧部と、
前記減圧部に接続される第2種の配管であって、前記トラクタに設けられ燃料ガスを受け入れる入側接続部と接続される出側接続部を備える第2種の配管と、
前記トラクタのカプラに連結されるキングピンと、を備え、
前記第2種の配管の少なくとも一部は、前記第1種の配管の剛性よりも低い剛性を備
え、
前記減圧部は、
前記キングピンの基部よりも下方の位置に配され、かつ、
前記キングピンおよび前記カプラを介して前記トレーラが前記トラクタに接続された状態において、前記トラクタの左右方向について、前記トラクタの端と前記キングピンとの間に位置するように設けられている、トレーラ。
【請求項3】
請求項
1または2
に記載のトレーラに連結されるトラクタであって、
前記入側接続部を備え、
前記入側接続部は、外部からガスを受け入れることを許容し、外部にガスを送出することを許容しない逆止弁を備える、トラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、牽引自動車およびトレーラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素ガスを貯蔵するタンクと、タンクから供給される水素ガスで発電を行う燃料電池システムと、燃料電池システムから供給される電力によって駆動するモータとを備える燃料電池車両が存在する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
牽引自動車は、トラクタとトレーラから構成される。搬送対象である荷物を積載するトレーラは、自ら駆動力を発生させない。原動機を備え、トレーラを牽引するトラクタは、搬送対象である荷物を積載しない。このため、トラクタは、トレーラに比べて小型である。牽引自動車は、大量の荷物を積載して走行するため、乗用車に比べて大量のエネルギーを消費する。このため、トレーラを牽引するトラクタを燃料電池車両として構成する場合、トレーラに比べて小型であるトラクタに搭載できるタンクに貯蔵されている水素では、一度の水素の充填で走行可能な距離が、十分確保できない可能性があった。このような問題は、水素を燃料とする車両以外に、様々な物質を燃料とする牽引自動車について存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、トラクタと、前記トラクタに牽引されるトレーラと、を含む牽引自動車が提供される。前記トレーラは、前記トラクタが走行するための燃料としての高圧ガスを貯蔵する第1タンクを備え、前記トラクタは、前記トラクタが走行するための燃料としての高圧ガスを貯蔵する第2タンクを備え、前記第1タンクおよび前記第2タンクから供給される前記燃料を使用して走行する。
このような態様とすれば、燃料を貯蔵するタンクをトラクタのみに備える態様に比べて、一度の燃料の充填で牽引自動車が走行可能な距離を長くすることができる。
(2)本開示の他の形態によれば、燃料ガスを使用して走行するトラクタに連結されるトレーラが提供される。このトレーラは、前記トラクタが走行するための燃料としての高圧ガスを貯蔵するタンクと、前記タンクに接続される第1種の配管と、前記第1種の配管に接続され、前記第1種の配管によって前記タンクから供給される燃料ガスの圧力を低減する減圧部と、前記減圧部に接続される第2種の配管であって、前記トラクタに設けられ燃料ガスを受け入れる入側接続部と接続される出側接続部を備える第2種の配管と、を備える。前記第2種の配管の少なくとも一部は、前記第1種の配管の剛性よりも低い剛性を備える。
第1種の配管は、第2種の配管よりも高い剛性を備えるため、タンク内に貯蔵されている高圧の燃料ガスを安定して配送することができる。第2種の配管は、第1種の配管よりも低い剛性を備える。このため、連結部分においてトレーラとトラクタの相対位置が変化した場合には、第2種の配管が変形することにより、トレーラからトラクタへの燃料ガスの供給経路を維持することができる。
(3)上記形態のトレーラにおいて、前記出側接続部は、前記入側接続部と接続されたときに燃料ガスの流通を許可し、前記入側接続部と接続していないときに燃料ガスの流通を許可しないように構成されている、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、ユーザは、トレーラの出側接続部をトラクタの入側接続部に接続することによって、容易な手続きで、トレーラからトラクタに燃料ガスを供給できる状態とすることができる。
(4)上記形態のトレーラにおいて、前記入側接続部と前記出側接続部とが接続された状態において、前記入側接続部と前記出側接続部との間に引張力が付与された場合に、前記タンクから前記出側接続部までの燃料の流通を実現する構造の一部が破壊されるよりも先に、前記出側接続部と前記入側接続部の接続が解除されるように構成されている、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、たとえば、何らかの理由で、出側接続部と入側接続部とが接続された状態でトレーラとトラクタの相対距離が増大した場合に、タンクから出側接続部までの燃料の流通を実現する構造が破壊されて燃料が漏出する可能性を低減できる。
(5)上記形態のトレーラにおいて、さらに、前記トラクタのカプラに連結されるキングピンを備え、前記減圧部は、前記キングピンの基部よりも下方の位置に配され、かつ、前記キングピンおよび前記カプラを介して前記トレーラが前記トラクタに接続された状態において、前記トラクタの左右方向について、前記トラクタの端と前記キングピンとの間に位置するように設けられている、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、減圧部がキングピンの基部よりも上方の位置に配されている態様に比べて、トレーラにおいて積載物を積載するための空間を大きくすることができる。そして、たとえば、減圧部がトレーラの後端部に配されている態様に比べて、第2種の配管によって燃料ガスが配送される、減圧部と出側接続部との間の距離を短くすることができる。このため、第1種の配管よりも剛性が低い第2種の配管が、外力を受けて破壊されるリスクを低減することができる。
(6)本開示のさらに他の形態によれば、上記形態のトレーラに連結されるトラクタが提供される。このトラクタは、前記入側接続部を備え、前記入側接続部は、外部からガスを受け入れることを許容し、外部にガスを送出することを許容しない逆止弁を備える。
このような態様とすれば、入側接続部と出側接続部との接続を解除する際に、ユーザが、トラクタの入側接続部におけるガスの流通を止める操作をしなくても、トラクタの入側接続部から燃料ガスが流出しない。
【0007】
本開示は、牽引自動車、トレーラ、またはトラクタ以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、牽引自動車、トレーラ、またはトラクタの製造方法や、牽引自動車、トレーラ、またはトラクタの制御方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の牽引自動車10を示す側面図である。
【
図2】トラクタ11およびトレーラ12の水素供給システムを示す説明図である。
【
図3】トレーラ12がトラクタ11に連結されたときのトラクタ11の各構成に対するトレーラ12のキングピン24と減圧部27の配置を示す平面図である。
【
図4】トレーラ12の出側接続部P22oと、トラクタ11の入側接続部P33iとの構成を示す断面図である。
【
図5】トレーラ12の出側接続部P22oと、トラクタ11の入側接続部P33iとの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態の牽引自動車10を示す側面図である。本明細書において、牽引自動車10の前方を、Y方向とする。牽引自動車10の右方向を、X方向とする。牽引自動車10の上方を、Z方向とする。
図1において、X方向、Y方向、Z方向を示す。
図3において示されるX方向、Y方向、Z方向は、
図1において示されるX方向、Y方向、Z方向と一致する。
【0010】
牽引自動車10は、搬送対象である荷物を積載し、搬送する車両である。牽引自動車10は、トラクタ11と、トレーラ12と、を含む。
【0011】
トラクタ11は、トレーラ12を連結されて、トレーラ12を牽引する。トラクタ11は、水素ガスを使用して走行する。より具体的には、トラクタ11は、トラクタ11が備えるタンク32およびトレーラ12が備えるタンク25から水素ガスを供給されて駆動する。トラクタ11は、フレーム15と、前輪16と、後輪17と、カプラ18と、タンク32と、減圧部37と、燃料電池30と、収納部35と、モータ70と、を備える。
【0012】
フレーム15は、トラクタ11の各構成を支持する。燃料電池30は、タンク32、およびトレーラ12のタンク25から水素ガスを供給されて発電する。モータ70は、燃料電池30から電力を供給されて、駆動する。後輪17は、モータ70の駆動力を伝達されて回転する。前輪16は、後輪17によってトラクタ11が移動するのに伴って、回転する。収納部35は、複数のタンク32を収容している。
【0013】
カプラ18は、トレーラ12のキングピン24を接続されて、キングピン24を回転可能に保持する。その結果、トレーラ12は、トラクタ11に接続される。トレーラ12は、トラクタ11に接続された状態において、キングピン24を回転の中心として一定の範囲内で回転することができ、その結果、トラクタ11に対する相対位置を変えることができる。
【0014】
図2は、トラクタ11およびトレーラ12の水素供給システムを示す説明図である。トラクタ11は、さらに、第1の配管P31と、第2の配管P32と、第3の配管P33と、第4の配管P34と、三方弁38と、を備える。
【0015】
タンク32は、トラクタ11が走行するための燃料としての高圧ガスを貯蔵する。より具体的には、タンク32は、燃料ガスとしての水素ガスを貯蔵する。タンク32は、最大で70MPaの圧力の水素ガスを貯蔵することができる。第1の配管P31は、タンク32に接続されている。第1の配管P31は、ステンレス鋼で構成されている。
【0016】
減圧部37は、第1の配管P31に接続されている。減圧部37は、第1の配管P31によって供給される水素ガスの圧力を低減する。より具体的には、減圧部37は、水素ガスの圧力を2MPaに低減する。第2の配管P32は、減圧部37に接続されている。第2の配管P32は、主としてゴムで構成される。
【0017】
三方弁38は、第2の配管P32と、第3の配管P33と、第4の配管P34とに、接続されている。三方弁38は、第4の配管P34に対して、第2の配管P32と、第3の配管P33とを、選択的に接続することができる。第4の配管P34は、三方弁38と燃料電池30とを接続している。第4の配管P34は、主としてゴムで構成される。
【0018】
第3の配管P33は、入側接続部P33iを備える。入側接続部P33iは、トレーラ12から水素ガスを受け入れる。より具体的には、入側接続部P33iは、トレーラ12に設けられ水素ガスを送出する出側接続部P22oと接続される。入側接続部P33iは、逆止弁331を備える。入側接続部P33iは、逆止弁331により、外部からガスを受け入れることを許容し、外部にガスを送出することを許容しない。
【0019】
このような構成とすることにより、入側接続部P33iと出側接続部P22oとの接続を解除する際に、ユーザが、トラクタ11の入側接続部P33iにおけるガスの流通を止める操作をしなくても、トラクタ11の入側接続部P33iから水素ガスが流出しない。
【0020】
第3の配管P33のうち、三方弁38と入側接続部P33iとを繋ぐ部分は、ゴムで構成されている。その結果、第3の配管P33のうち三方弁38と入側接続部P33iとを繋ぐ部分は、第1の配管P31の剛性よりも低い剛性を備える。
【0021】
トレーラ12は、搬送対象である荷物を積載される(
図1参照)。トレーラ12は、トラクタ11に連結され、トラクタ11によって牽引される。トレーラ12は、フレーム21と、コンテナ22と、車輪23と、キングピン24と、タンク25と、減圧部27と、を備える。
【0022】
フレーム21は、トレーラ12の各構成を支持する。コンテナ22は、搬送対象である荷物を収容する。車輪23は、トラクタ11によってトレーラ12が牽引されるのに伴って、回転する。
【0023】
キングピン24は、トレーラ12の下面の前方において、下方に突出している棒状の構造である。キングピン24は、トラクタ11のカプラ18に連結されて、カプラ18に回転可能に保持される。その結果、トレーラ12は、トラクタ11に接続される。
【0024】
トレーラ12は、さらに、第1の配管P21と、第2の配管P22と、を備える(
図2参照)。タンク25は、トラクタ11が走行するための燃料としての高圧ガスを貯蔵する。より具体的には、タンク25は、燃料ガスとしての水素ガスを貯蔵する。タンク25は、最大で70MPaの圧力の水素ガスを貯蔵することができる。
【0025】
このような構成とすることにより、燃料電池30とモータ70とを備える燃料電池車両としてのトラクタ11のみに、水素ガスを貯蔵するタンクを備える態様に比べて、一度の水素ガスの充填で牽引自動車10が走行可能な距離を長くすることができる。
【0026】
第1の配管P21は、タンク25に接続されている。第1の配管P21は、ステンレス鋼で構成されている。第1の配管P21は、第2の配管P22よりも高い剛性を備えるため、タンク25内に貯蔵されている高圧の水素ガスを安定して配送することができる。
【0027】
減圧部27は、第1の配管P21に接続されている。減圧部27は、第1の配管P21によって供給される水素ガスの圧力を低減する。より具体的には、減圧部27は、水素ガスの圧力を2MPaに低減する。このような構成とすることにより、第1の配管P21よりも低い剛性を備える第2の配管P22を使用して、トレーラ12からトラクタ11に水素ガスを供給することができる。
【0028】
第2の配管P22は、減圧部27に接続されている。第2の配管P22は、出側接続部P22oを備える。出側接続部P22oは、トレーラ12に水素ガスを送出する。より具体的には、出側接続部P22oは、トラクタ11に設けられ水素ガスを受け入れる入側接続部P33iと接続される。
【0029】
このような構成とすることにより、トラクタ11の入側接続部P33iに、第2の配管P22の出側接続部P22oを接続することにより、トレーラ12に搭載されたタンク25からトラクタ11に水素ガスを供給することができる。その結果、水素ガスを貯蔵するタンクをトラクタ11のみに備え、水素ガスを貯蔵するタンクをトレーラ12に備えない態様に比べて、一度の水素ガスの充填で走行可能な距離を長くすることができる。
【0030】
第2の配管P22のうち、減圧部27と出側接続部P22oとを繋ぐ部分は、ゴムで構成されている。その結果、第2の配管P22のうち減圧部27と出側接続部P22oとを繋ぐ部分は、第1の配管P21の剛性よりも低い剛性を備える。
【0031】
このような構成とすることにより、連結部分においてトレーラ12とトラクタ11の相対位置が変化した場合には、第2の配管P22が変形することにより、トレーラ12からトラクタ11への水素ガスの供給経路が破壊されることなく、供給経路を維持することができる。
【0032】
なお、配管の剛性の大小は、以下のように決定することができる。比較対象とする配管について、同じ長さを有する直線状の各配管を用意する。各配管の両端をそれぞれ支持して中央に同じ荷重をかける。各配管の荷重の方向に沿った中央の変形量を比較することによって、各配管の剛性の大小を決定することができる。
【0033】
図3は、トレーラ12がトラクタ11に連結されたときのトラクタ11の各構成に対するトレーラ12のキングピン24と減圧部27の配置を示す平面図である。前述のように、キングピン24は、トラクタ11のカプラ18に受け入れられ、カプラ18に回転可能に保持される(
図3の中段右部参照)。
【0034】
減圧部27は、キングピン24の基部よりも下方の位置に配される(
図1の下段左部参照)。キングピン24は、トレーラ12の下面の前方において、下方に突出している棒状の構造である。このため、キングピン24の基部は、キングピン24の上端部である。このような構成とすることにより、減圧部27がキングピン24の基部よりも上方の位置に配されている態様に比べて、トレーラ12おいて積載物を積載するためのコンテナ22の容量を、大きくすることができる。
【0035】
減圧部27は、キングピン24およびカプラ18を介してトレーラ12がトラクタ11に接続された状態において、トラクタ11の左右方向について、トラクタ11の左端11seLとキングピン24との間に位置するように設けられている(
図3の下段右部参照)。なお、本明細書において、減圧部27が、「トラクタ11の左右方向について、トラクタ11の端11seLとキングピン24との間に位置する」とは、トラクタ11の端11seLとキングピン24とに内接する円Cb内に減圧部27の少なくとも一部が設けられていることを意味する。
【0036】
このような構成とすることにより、減圧部27がキングピン24から遠く離れたトレーラ12の後端部に配されている態様に比べて、第2の配管P22によって水素ガスが配送される、減圧部27と出側接続部P22oとの間の距離を短くすることができる。このため、第1の配管P21よりも剛性が低い第2の配管P22が、外力を受けて破壊されるリスクを低減することができる。
【0037】
図4は、トレーラ12の第2の配管P22の出側接続部P22oと、トラクタ11の第3の配管P33の入側接続部P33iとの構成を示す断面図である。なお、
図4は、各部の機能を説明するための図であり、出側接続部P22oと入側接続部P33iの形状を正確に表すものではない。
【0038】
出側接続部P22oは、ボディ222と、弁体224と、コイルバネ226とを備える。ボディ222は、出側接続部P22oの流路を構成する。ボディ222は、内部に弁体224と、コイルバネ226とを収容している。ボディ222は、第1流路部2221、第2流路部2222、第3流路部2223、および一対の凹部2224を有する。
【0039】
第1流路部2221は、出側接続部P22oの開口端を含む円柱状の空間である。第2流路部2222は、第1流路部2221と中心軸を共有する円柱状の空間である。第2流路部2222の直径は、第1流路部2221の直径よりも大きい。第3流路部2223は、第2流路部2222に直角に接続されている円柱状の空間である。第3流路部2223の直径は、第2流路部2222の直径と等しい。
【0040】
一対の凹部2224は、ボディ222の開口端の近傍の外周部において、開口端を挟んで配されている。一対の凹部2224は、出側接続部P22oと入側接続部P33iとが接続される際に、入側接続部P33iの固定具336の先端部を受け入れる。
【0041】
弁体224とコイルバネ226とは、第2流路部2222内に収容されている。コイルバネ226の一端は、第2流路部2222の一端の壁に接触している。コイルバネ226の他端は、弁体224に接触している。コイルバネ226は、弁体224に力を加えて、第2流路部2222の他端の壁、すなわち、第1流路部2221との間の段差に、弁体224を押圧している。その結果、
図4の状態において、出側接続部P22oは、弁体224によって封止されている。
【0042】
トラクタ11の入側接続部P33iは、ボディ332と、押圧棒334と、一対の固定具336とを備える。ボディ332は、入側接続部P33iの流路を構成する。ボディ332は、流路部3321を有する。流路部3321は、入側接続部P33iを貫通する円柱状の空間である。
【0043】
一対の固定具336は、ボディ332の開口端の近傍の外周部において、開口端を挟んで配されている。固定具336の一端は、ボディ332に対して回転可能に取りつけられている。固定具336の先端は、出側接続部P22oと入側接続部P33iとが接続される際に、出側接続部P22oの凹部2224に受け入れられる。
【0044】
押圧棒334の一部は、流路部3321内に配されている。押圧棒334の一端は、流路部3321の内壁に固定されている。押圧棒334の他の一部は、ボディ332の開口端から流路部3321の軸方向に沿って突出している。
【0045】
図5は、トレーラ12の出側接続部P22oと、トラクタ11の入側接続部P33iとの構成を示す断面図である。
図4が、出側接続部P22oと入側接続部P33iとが接続されていない状態を示すのに対して、
図5は、出側接続部P22oと入側接続部P33iとが接続されている状態を示す。
図5は、各部の機能を説明するための図であり、出側接続部P22oと入側接続部P33iの形状を正確に表すものではない。
【0046】
出側接続部P22oと入側接続部P33iとが接続される際には、弁体224は、コイルバネ226に向かって、押圧棒334によって押圧される。すると、弁体224は、出側接続部P22oの第2流路部2222と第1流路部2221との間の段差から離れる。その結果、第1流路部2221と第2流路部2222とが連通する。この状態において、出側接続部P22oの第3流路部2223、第2流路部2222、および第1流路部2221、ならびに入側接続部P33iの流路部3321は、連通している。よって、トレーラ12の第2の配管P22から、トラクタ11の第3の配管P33に、水素ガスが流れることができる(
図2の中段左部参照)。
【0047】
出側接続部P22oと入側接続部P33iとが接続される際には、入側接続部P33iの固定具336が回転されて、固定具336の先端部が出側接続部P22oの凹部2224に挿入される。その結果、入側接続部P33iが出側接続部P22oに対して固定される。よって、コイルバネ226の抗力によって、弁体224および押圧棒334が変位させられることがない。
【0048】
以上で説明した機構により、出側接続部P22oは、入側接続部P33iと接続されたときに水素ガスの流通を許可し、入側接続部P33iと接続していないときに水素ガスの流通を許可しないように構成される。
【0049】
このような構成を採用することにより、ユーザは、トレーラ12の出側接続部P22oをトラクタ11の入側接続部P33iに接続することによって、容易な手続きで、トレーラ12からトラクタ11に水素ガスを供給できる状態とすることができる。
【0050】
固定具336は、入側接続部P33iと出側接続部P22oとが接続された状態において、入側接続部P33iと出側接続部P22oとの間に引張力が付与された場合に、タンク25、第1の配管P21、減圧部27、および出側接続部P22oを含む第2の配管P22のいずれかの構成が破壊されるよりも先に、破断するように構成されている(
図2参照)。言い換えれば、入側接続部P33iと出側接続部P22oとの間に引張力が付与された場合に、タンク25から出側接続部P22oまでの水素ガスの流通を実現する構造の一部が破壊されるよりも先に、出側接続部P22oと入側接続部P33iの接続が解除されるように、トレーラ12およびトラクタ11は、構成されている。
【0051】
このような構成とすることにより、トレーラ12のキングピン24とトラクタ11のカプラ18のいずれか一方または両方が破壊されるなど、何らかの理由で、出側接続部P22oと入側接続部P33iとが接続された状態でトレーラ12とトラクタ11の相対距離が増大した場合における、以下のような利点が得られる。すなわち、タンク25から出側接続部P22oまでの水素ガスの流通を実現する構造が破壊されて水素ガスが漏出することがない(
図4参照)。
【0052】
本実施形態における水素ガスを「燃料」とも呼ぶ。水素ガスを「燃料ガス」とも呼ぶ。タンク25を「第1タンク」とも呼ぶ。タンク32を「第2タンク」とも呼ぶ。第1の配管P21を「第1種の配管」とも呼ぶ。第2の配管P22を「第2種の配管」とも呼ぶ。
【0053】
B.他の実施形態:
B1.他の実施形態1:
(1)上記実施形態においては、燃料は水素ガスである。しかし、燃料は、たとえは、メタンやエタン、天然ガスなどの炭化水素など、他の物質であってもよい。燃料を燃料電池の燃料ガスとして使用する場合には、牽引自動車は、炭化水素を改質して、水素ガスを生成する改質装置を備えることが好ましい。また、燃料電池に代えて、燃料ガスを燃焼させて運動エネルギーを得る内燃機関や外燃機関を、トラクターに備える態様とすることもできる。
【0054】
(2)上記実施形態においては、タンク25,32は、最大で70MPaの圧力の水素ガスを貯蔵することができる。しかし、高圧ガスを貯蔵するタンクは、圧縮ガスではなく、液化ガスを貯蔵する態様とすることもできる。本明細書において、「高圧ガス」とは、高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号、平成30年4月1日施行法)第2条に定められた高圧ガスを意味する。すなわち、本明細書において、「高圧ガス」とは、以下のいずれかに該当するものをいう。
一 常用の温度において圧力(ゲージ圧力をいう。以下同じ。)が一メガパスカル以上となる圧縮ガスであつて現にその圧力が一メガパスカル以上であるもの又は温度三十五度において圧力が一メガパスカル以上となる圧縮ガス(圧縮アセチレンガスを除く。)
二 常用の温度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる圧縮アセチレンガスであつて現にその圧力が〇・二メガパスカル以上であるもの又は温度十五度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる圧縮アセチレンガス
三 常用の温度において圧力が〇・二メガパスカル以上となる液化ガスであつて現にその圧力が〇・二メガパスカル以上であるもの又は圧力が〇・二メガパスカルとなる場合の温度が三十五度以下である液化ガス
四 上記三に掲げるものを除くほか、温度三十五度において圧力零パスカルを超える液化ガスのうち、液化シアン化水素、液化ブロムメチル、または液化酸化エチレン。
【0055】
(3)上記実施形態の
図1においては、トラクタ11には3個のタンク32が示され、トレーラ12には、1個のタンク25が示されている。しかし、トラクタ11に備えられるタンクは、1以上の任意の数とすることができる。トレーラ12に備えられるタンクも、1以上の任意の数とすることができる。トラクタ11に複数のタンク32が備えられる場合、複数のタンク32の構成は同一であってもよいし、異なっていてもよい。トレーラ12に複数のタンク25が備えられる場合、複数のタンク25の構成は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
(4)上記実施形態においては、トレーラ12は、コンテナ22を備える(
図1参照)。しかし、トレーラ12は、コンテナ22を備えず、搬送対象である流体を貯蔵するタンクや、荷台を備える態様など、他の態様とすることもできる。
【0057】
B2.他の実施形態2:
(1)上記実施形態においては、第1の配管P21は、ステンレス鋼で構成されている(
図2参照)。しかし、第1の配管P21は、他の素材で構成されていてもよい。また、第1の配管P21は、複数の層を有する構造を有していてもよい。
【0058】
上記実施形態においては、第2の配管P22のうち、減圧部27と出側接続部P22oとを繋ぐ部分は、ゴムで構成されている。しかし、第2の配管P22は、樹脂など、他の素材で構成されていてもよい。また、第2の配管P22は、複数の層を有する構造を有していてもよい。ただし、第2の配管P22は、第1の配管P21よりも剛性の低い構成とすることが好ましい。第2の配管P22は、第1の配管P21よりも弾性変形しやすい構成とすることが好ましい。
【0059】
(2)上記実施形態においては、トレーラ12の第2の配管P22のうち減圧部27と出側接続部P22oとを繋ぐ部分は、第1の配管P21の剛性よりも低い剛性を備える。しかし、第2の配管の全体が、第1の配管の剛性よりも低い剛性を備えていてもよい。また、第2の配管の一部が、第1の配管の剛性よりも低い剛性を備えていてもよい。
【0060】
(3)第1の配管P21は、燃料の流通経路に沿って、構成が異なる部分を有していてもよい。たとえば、第1の配管P21のうち上流側の部分は、液化ガスの流通を想定した構成を有していてもよい。第1の配管P21のうち下流側の部分は、気体であるガスの流通を想定した構成を有していてもよい。第1の配管P21のうち上流側の部分と下流側の部分との間には、液化ガスを気化させる構成を備えていてもよい。また、牽引自動車は、液化ガスを気化させるための特定の構成を備えず、第1の配管P21が、第1の配管P21内を流通する間に液化ガスが気化するように構成されていてもよい。
【0061】
第2の配管P22は、燃料の流通経路に沿って、構成が異なる部分を有していてもよい。たとえば、出側接続部P22oと他の部分とでは、異なる構成を有していてもよい。
【0062】
(4)上記実施形態においては、タンク25内の水素ガスをトレーラ12の外部に供給する配管は、第1の配管P21と、第2の配管P22と、で構成されている(
図2参照)。しかし、タンク25内の水素ガスをトレーラ12の外部に供給する配管は、さらに他の配管を含んでいてもよい。さらに他の配管は、第1の配管P21と第2の配管P22との間に配されていることができる。さらに他の配管は、第1の配管P21もしくは第2の配管P22から分岐して、設けられることができる。
【0063】
B3.他の実施形態3:
(1)上記実施形態においては、出側接続部P22oは、入側接続部P33iに対して、入側接続部P33iの固定具336によって固定される(
図4および
図5参照)。しかし、たとえば、出側接続部P22oと入側接続部P33iの一方に雌ねじを備え、他方に雄ねじを備え、雌ねじと雄ねじによって両者を固定する態様とすることもできる。
【0064】
(2)上記実施形態においては、出側接続部P22oは、入側接続部P33iと接続されたときに水素ガスの流通を許可し、入側接続部P33iと接続していないときに水素ガスの流通を許可しないように構成される(
図4および
図5参照)。しかし、出側接続部P22oは、そのような機能を備えない態様とすることができる。たとえば、出側接続部は、ガスの双方向の流通を許可し、または禁止する弁を備える態様とすることができる。そのような弁は、出側接続部と入側接続部との接続の有無によって自動的に動作するものでなくてもよい。
【0065】
B4.他の実施形態4:
上記実施形態においては、固定具336は、入側接続部P33iと出側接続部P22oとが接続された状態において、入側接続部P33iと出側接続部P22oとの間に引張力が付与された場合に、タンク25、第1の配管P21、減圧部27、および出側接続部P22oを含む第2の配管P22のいずれかの構成が破壊されるよりも先に、破断するように構成されている(
図5参照)。しかし、たとえば、入側接続部P33iのボディ332など、入側接続部P33iと出側接続部P22oの他の構成が、タンク25から出側接続部P22oまでの水素ガスの流通を実現する構造の他の一部が破壊されるよりも先に、破壊されるように構成されていてもよい。
【0066】
また、牽引自動車10は、そのような構成を備えず、タンク25から出側接続部P22oまでの水素ガスの流通を実現する構造の一部が最初に破壊される態様とすることもできる。
【0067】
B5.他の実施形態5:
(1)上記実施形態においては、トレーラ12の減圧部27は、キングピン24の基部よりも下方の位置に配される(
図1の下段左部参照)。しかし、減圧部は、キングピンの基部よりも上方の位置に配されてもよい。
【0068】
(2)上記実施形態においては、トレーラ12の減圧部27は、トレーラ12がトラクタ11に接続された状態において、トラクタ11の左右方向について、トラクタ11の左端11seLとキングピン24との間に位置するように設けられている(
図3の下段右部参照)。しかし、トレーラ12の減圧部27は、トレーラ12がトラクタ11に接続された状態において、トラクタ11の左右方向について、トラクタ11の右端11seRとキングピン24との間に位置するように設けられてもよい。また、トレーラ12の減圧部27は、キングピン24の前方や後方など、トレーラ12の他の部位に設けられてもよい。
【0069】
B6.他の実施形態6:
上記実施形態においては、入側接続部P33iは、逆止弁331により、外部からガスを受け入れることを許容し、外部にガスを送出することを許容しない(
図2参照)。このような逆止弁331としては、スイング式逆止弁、リフト式逆止弁、ディスク式逆止弁など、様々な逆止弁を採用することができる。
【0070】
一方、入側接続部P33iは、逆止弁331を備えない態様とすることができる。たとえば、入側接続部は、ガスの双方向の流通を許可し、または禁止する弁を備える態様とすることができる。
【0071】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
10…牽引自動車、11…トラクタ、11seL…トラクタの左端、11seR…トラクタの右端、12…トレーラ、15…フレーム、16…前輪、17…後輪、18…カプラ、21…フレーム、22…コンテナ、23…車輪、24…キングピン、25…タンク、27…減圧部、30…燃料電池、32…タンク、35…収納部、37…減圧部、38…三方弁、70…モータ、222…ボディ、224…弁体、226…コイルバネ、331…逆止弁、332…ボディ、334…押圧棒、336…固定具、2221…第1流路部、2222…第2流路部、2223…第3流路部、2224…凹部、3321…流路部、Cb…トラクタ11の端11seLとキングピン24との間の領域を示す円、P21…第1の配管、P22…第2の配管、P22o…出側接続部、P31…第1の配管、P32…第2の配管、P33…第3の配管、P33i…入側接続部、P34…第4の配管