(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】情報提示面の価値の判定装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20221220BHJP
【FI】
G06Q30/02 380
(21)【出願番号】P 2019227689
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】杉山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】石先 広海
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-038825(JP,A)
【文献】特開2012-123727(JP,A)
【文献】特開2009-093183(JP,A)
【文献】特開2010-176686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ装置から、当該ユーザ装置の位置及び当該位置での当該ユーザ装置の方向を示すユーザ情報を取得する取得手段と、
予め定義された複数の領域それぞれの領域価値を前記複数の領域内の所定条件を満たすユーザ装置の数に基づき判定する領域価値判定手段と、
情報提示面を情報提示に使用する場合における当該情報提示面の価値を示す提示面価値を、前記複数の領域の内の当該情報提示面が存在する第1領域の前記領域価値と、前記第1領域のユーザ装置から取得した前記ユーザ情報が示す位置及び方向と、当該情報提示面の位置及び方向と、に基づき判定する提示面価値判定手段と、
を備えていることを特徴とする判定装置。
【請求項2】
前記情報提示面の位置は、前記情報提示面の重心位置であり、前記情報提示面の方向は、前記情報提示面とは直交する方向であることを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記提示面価値判定手段は、前記重心位置から前記ユーザ情報が示す位置に向かう第1ベクトルと前記ユーザ情報が示す方向とは逆方向の第2ベクトルとの内積に基づき求められる第1内積値と、前記第1ベクトルと前記情報提示面の方向の第3ベクトルとの内積に基づき求められる第2内積値と、の少なくとも1つに基づき前記情報提示面の前記提示面価値を判定することを特徴とする請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記第1ベクトル、前記第2ベクトル及び前記第3ベクトルの長さは同じであることを特徴とする請求項3に記載の判定装置。
【請求項5】
前記第1内積値は、前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとの内積が0以上の値であると前記第1ベクトルと前記第2ベクトルの内積の値であり、前記第1ベクトルと前記第2ベクトルとの内積が0未満の値であると0であり、
前記第2内積値は、前記第1ベクトルと前記第3ベクトルとの内積が0以上の値であると前記第1ベクトルと前記第3ベクトルの内積の値であり、前記第1ベクトルと前記第3ベクトルとの内積が0未満の値であると0であることを特徴とする請求項3又は4に記載の判定装置。
【請求項6】
前記提示面価値判定手段は、前記ユーザ情報それぞれについて、前記第1内積値と前記第2内積値との重み付け和を中間値として求め、前記ユーザ情報それぞれについて求めた前記中間値の平均値と、前記第1領域の前記領域価値と、に基づき前記提示面価値を判定することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項7】
前記提示面価値判定手段は、前記第1内積値と、前記第2内積値と、前記重心位置と前記ユーザ情報が示す位置との距離と、に基づき前記情報提示面の前記提示面価値を判定することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項8】
前記提示面価値判定手段は、前記ユーザ情報それぞれについて、前記第1内積値と前記第2内積値との重み付け和に、前記距離に比例する値を乗じた値を中間値として求め、前記ユーザ情報それぞれについて求めた前記中間値の平均値と、前記第1領域の前記領域価値と、に基づき前記提示面価値を判定することを特徴とする請求項7に記載の判定装置。
【請求項9】
前記距離に比例する値は、前記第1領域の任意の2点を結ぶ距離の最大値に対する前記距離の比率であることを特徴とする請求項7又は8に記載の判定装置。
【請求項10】
前記所定条件を満たすユーザ装置は、所定のアプリケーションを実行しているユーザ装置であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項11】
前記領域価値判定手段は、前記複数の領域それぞれについて、前記所定条件を満たすユーザ装置の数を判定し、前記第1領域の領域価値を、前記複数の領域それぞれについて判定した前記所定条件を満たすユーザ装置の数の最大値及び最小値と、前記第1領域について判定した前記所定条件を満たすユーザ装置の数と、に基づき判定することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項12】
領域の前記領域価値は、当該領域における前記所定条件を満たすユーザ装置の数が大きくなる程、大きくなることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項13】
前記領域価値判定手段は、所定期間内において前記所定条件を満たすユーザ装置の数に基づき前記複数の領域それぞれの前記領域価値を判定し、
前記提示面価値判定手段は、前記所定期間内において前記第1領域のユーザ装置から取得した前記ユーザ情報に基づき前記提示面価値を判定することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項14】
前記ユーザ装置の方向は、前記ユーザ装置のカメラの方向又は前記ユーザ装置のユーザの視線の方向であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項15】
1つ以上のプロセッサを有する装置の前記1つ以上のプロセッサで実行されると、前記装置を請求項1から14のいずれか1項に記載の判定装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元空間内において情報提示に使用できる面(情報提示面)が情報提示において有用であるか否かを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、通信サービスを提供している各領域の情報提示における価値を評価する構成を開示している。特許文献1によると、無線端末の移動履歴と、当該無線端末のカメラのフォーカス位置等を示す情報を多くの無線端末から取得し、これら情報に基づき通信サービスを提供している各領域の情報提示における価値を評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成は、領域を単位としてその価値を判定するものであり、3次元空間におけるある面(以下、情報提示面)が多くのユーザに注目されるものであるか否かを判定するものではない。つまり、例えば、特許文献1の構成では、実空間の建物のある側面が、情報提示面としての利用価値が高いものであるか否かを判定することはできない。
【0005】
本発明は、情報提示面の価値を判定する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、判定装置は、ユーザ装置から、当該ユーザ装置の位置及び当該位置での当該ユーザ装置の方向を示すユーザ情報を取得する取得手段と、予め定義された複数の領域それぞれの領域価値を前記複数の領域内の所定条件を満たすユーザ装置の数に基づき判定する領域価値判定手段と、情報提示面を情報提示に使用する場合における当該情報提示面の価値を示す提示面価値を、前記複数の領域の内の当該情報提示面が存在する第1領域の前記領域価値と、前記第1領域のユーザ装置から取得した前記ユーザ情報が示す位置及び方向と、当該情報提示面の位置及び方向と、に基づき判定する提示面価値判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、情報提示面の価値を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態による判定装置を含むシステムの構成図。
【
図5】一実施形態による情報提示面の価値の算出方法の説明図。
【
図6】一実施形態による情報提示面の価値の算出方法の説明図。
【
図7】一実施形態による情報提示面の価値の算出方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1は、本実施形態による判定装置1を含むシステムの構成図である。判定装置1は、1つ以上の基地局(BS)と通信可能な様に構成される。
図1に示す判定装置1は、BS21及びBS22の2つのBSと通信可能な様に構成されている。BS21は、セル31を提供し、セル31に在圏するUE41及びUE42と通信できる。同様に、BS22は、セル32を提供し、セル32に在圏するUE43と通信できる。なお、判定装置1が通信するBSの数は、1つであっても、3つ以上であっても良い。各BSは、セルを提供し、提供するセルに在圏する1つ以上のUEと通信可能である。以下の説明において、判定装置1が通信するBSにより提供されるセルを合わせた領域を判定対象領域と呼ぶものとする。例えば、
図1においては、セル31とセル32とを合わせた領域が判定対象領域である。
【0011】
UE41~UE43(以下、単にUEと表記する)には、本実施形態によるAR(拡張現実)アプリケーションがインストールされている。UEのユーザがARアプリケーションを実行している(アクティベイトしている)と、UEは、例えば、ユーザ操作によりユーザ情報を取得し、在圏しているセルのBSを介して判定装置1にユーザ情報を送信する。
【0012】
ユーザ情報は、位置情報、方向情報及び時刻情報を含んでいる。ここで、位置情報とは、UEの緯度及び経度、或いは、UEの緯度、経度及び高度等の、UEの位置を示す情報である。UEは、例えば、GPS機能によりUEの位置情報を取得することができる。方向情報は、UEの方向を示す情報である。なお、本実施形態では、UEのカメラの方向又はUEのユーザの視線方向をUEの方向と定義する。例えば、ユーザがUEのカメラ機能を利用して、ある方向にカメラのフォーカスを合わせたときに、当該カメラのレンズの光軸方向をUEの方向を示す方向情報として取得することができる。また、UEがARアプリケーションと連動するスマートグラスを含み、当該スマートグラスをユーザが装着している場合には、スマートグラスの方向、つまり、当該スマートグラスを装着しているユーザの視線方向を方向情報として取得することができる。なお、UEが判定装置1に送信するユーザ情報に含まれる位置情報及び方向情報は、同じタイミングで取得したものであり、当該ユーザ情報に含まれる時刻情報は、当該位置情報及び方向情報を取得した時刻の情報である。UEは、このユーザ情報を取得する度に、BSを介して、取得したユーザ情報を判定装置1に送信する。
【0013】
図2は、判定装置1の構成図である。記憶部11は、UEから受信したユーザ情報を格納する。また、記憶部11には、判定対象領域を分割した分割領域と、各分割領域内にある情報提示面を示す情報が格納されている。
【0014】
図3は、判定対象領域を分割した分割領域を示している。
図3によると、判定対象領域を9つの分割領域#1~#9に分割している。なお、分割数は9に限定されない。また、
図3では、各分割領域を方形としているが、分割領域の形状に限定はない。情報提示面は、各分割領域に存在する建物の側面や、建物の上部にある空間部分に設定した仮想的な面等、例えば、広告等を表示することができる面である。情報提示面を示す情報は、当該情報提示面が占有する領域、つまり、例えば、情報提示面の外周に沿った位置(緯度、経度及び高度等)を特定する情報である。価値の判定対象である情報提示面については予め決定し、決定した情報提示面を示すデータについては予め記憶部11に格納しておく。
【0015】
本実施形態の判定装置1は、所定期間を単位として、各情報提示面の価値を判定する価値判定処理を行う。所定期間は、例えば、1日とすることができる。或いは、所定期間は、例えば、半日とすることができる。以下では、価値判定処理を行う所定期間を処理期間と呼ぶものとする。判定装置1は、処理期間毎に価値判定処理を繰り返すことができる。
【0016】
領域価値判定部12は、処理期間における分割領域#k(本例においてkは1から9までの整数)の領域価値Skを算出する。このため、領域価値判定部12は、各分割領域#kについて、処理期間におけるアクティブユーザ数Akを求める。分割領域#kのアクティブユーザ数Akは、分割領域#kにおいてARアプリケーションを起動させていたUEの数に基づき求める。例えば、領域価値判定部12は、分割領域#kにおいて、ARアプリケーションを起動させていたUEの数の処理期間に渡る平均値、最大値、又は、最小値等の統計値をアクティブユーザ数Akとすることができる。或いは、領域価値判定部12は、処理期間の終了時点又は開始時点においてARアプリケーションを起動させていた分割領域#k内のUEの数をアクティブユーザ数Akとすることができる。なお、分割領域#kにおいてARアプリケーションを起動させた上で、ユーザ情報を判定装置1に送信したUEの数をアクティブユーザ数Akとすることもできる。
【0017】
図3には、ある処理期間における分割領域#1~分割領域#9のアクティブユーザ数A
1~A
9も示している。
図3によると、分割領域#1のアクティブユーザ数A
1は10であり、分割領域#2のアクティブユーザ数A
2は30である。領域価値判定部12は、ある分割領域#kの領域価値S
kを、以下の式(1)により算出する。
S
k=X×(A
k-A
min)/(A
max-A
min) (1)
なお、A
minはA
1~A
9の最小値であり
図3の例においては10(分割領域#1)である。また、A
maxはA
1~A
9の最大値であり、
図3の例においては100(分割領域#9)である。また、Xは所定の係数である。式(1)から領域価値S
kは、0~Xの値であって、アクティブユーザ数A
kが多い程、高くなる。
【0018】
提示面価値判定部13は、記憶部11に保存されている情報提示面毎にその価値Vを判定する。なお、情報提示面の価値Vの判定は、分割領域毎に独立して行われる。以下では、ある1つの分割領域内に存在する、ある1つの情報提示面の価値Vの算出について説明する。なお、以下の説明において、"情報提示面"とは、価値Vの判定対象である情報提示面を意味し、"分割領域"とは、価値Vの判定対象の情報提示面が存在する分割領域を意味するものとする。提示面価値判定部13は、処理期間内において、分割領域内のUEから取得したユーザ情報毎に、情報提示面に対する中間値Yを算出する。そして、処理期間内において、分割領域内のUEから取得したユーザ情報毎に求めたこの中間値Yの平均値に、当該分割領域の領域価値Sを乗ずることで情報提示面の価値Vを求める。
【0019】
図4は、1つのユーザ情報に対する中間値Yの算出方法の説明図である。
図4において、参照符号55は、ユーザ情報に含まれる位置情報が示す位置である。また、参照符号51は、ユーザ情報に含まれる方向情報が示す方向に対応する単位ベクトル(以下、視線ベクトルG)である。さらに、参照符号52は、ユーザ情報に含まれる方向情報が示す方向とは逆向きの単位ベクトル(以下、視線逆ベクトルGr)である。位置55と、視線ベクトルGと、視線逆ベクトルGrは、UEから取得するユーザ情報から特定される。
【0020】
本実施形態では、情報提示面の位置を情報提示面の重心位置として定義する。しかしながら、情報提示面の任意の位置を情報提示面の位置として定義することができる。また、本実施形態では、情報提示面の方向を、情報提示面とは直交し、かつ、情報を提示する面が向いている方向と定義する。つまり、情報提示面が建物の外部側面であると、当該側面に直交し、かつ、当該建物の内部から外部に向かう方向が情報提示面の方向である。また、情報提示面が、空間を占有する物体がない空間領域内である場合、当該情報提示面に直交し、かつ、広告等を表示しない側から広告等を表示する側に向かう方向が情報提示面の方向である。情報提示面の方向及び位置については、情報提示面を示すデータから求めることができる。なお、情報提示面の方向及び位置を予め求めておき、当該情報提示面に関連付けて記憶部11に格納しておく構成とすることもできる。参照符号53は、情報提示面の方向の単位ベクトル(以下、法線ベクトルN)である。さらに、直線56は、位置情報が示す位置55と情報提示面の位置(重心位置)とを結ぶ直線であり、参照符号54は、情報提示面の重心位置から位置55に向かう単位ベクトル(以下、接続ベクトルC)である。直線56及び接続ベクトル54は、位置情報が示す位置と、情報提示面の位置と、に基づき判定することができる。
【0021】
提示面価値判定部13は、中間値Yを以下の式(2)に基づき計算する。
Y=α×f(N・C)+β×f(C・Gr) (2)
式(2)においてα及びβは、所定の係数である。例えば、α及びβは、α+β=1となる様に決定することができる。また、N・Cは、法線ベクトルNと接続ベクトルCとの内積を示し、C・Grは、接続ベクトルCと視線逆ベクトルGrとの内積を示している。また、関数f(x)は、xが0以上であるとxとなり、xが0未満(負の値)であると、0となる関数である。
【0022】
法線ベクトルN、接続ベクトルC及び視線逆ベクトルGrは、総て単位ベクトルであるため、内積の値は、2つのベクトルの角度が0の場合には1であり、角度が大きくなると小さくなる。したがって、f(N・C)は、法線ベクトルNと接続ベクトルCの角度が0のときは1であり、角度が90度以上であると0であり、角度が0から90度までは、角度が大きくなるに従って小さくなる。f(C・Gr)についても同様である。したがって、中間値Yは、法線ベクトルN、接続ベクトルC及び視線逆ベクトルGrの総てが同じ方向の場合に最も大きくなる。これは、情報提示面の重心を通り、情報提示面に垂直な直線上にUEが位置し、かつ、その方向情報が情報提示面の重心に向かう方向であること、つまり、UEのユーザが情報提示面の重心位置を見ていることに対応する。そして、中間値Yは、UEの位置が、情報提示面の重心を通り情報提示面に垂直な直線上からずれたり、方向情報が示す方向が情報提示面の重心に向かう方向からずれたりすると小さくなる。ここで、ずれ量が大きくなる程、中間値Yは小さくなる。なお、α及びβは、UEの位置を重視するか、視線の方向を重視するかにより決定される重みである。つまり、UEの位置を重視する場合には、αをβより大きくし、視線の方向を重視する場合にはβをαより大きくする。また、α及びβのいずれかを0とすることもできる。つまり、f(N・C)又はf(C・Gr)のみに基づき中間値を算出する構成とすることもできる。なお、関数f(x)により2つのベクトルの角度が90度を超えた場合に内積値を0とするのは、角度が90を超えていることは情報提示面を見ていないとの判断によるものである。なお、関数f(x)を使用せず、純粋な内積値のみで中間値を計算する構成であっても良い。
【0023】
上述した様に、中間値Yは、UEから取得したユーザ情報毎に求められる値である。提示面価値判定部13は、処理期間内に分割領域内のUEから取得したユーザ情報それぞれについて中間値Yを求め、その平均値に分割領域の領域価値Sを乗ずることで情報提示面の価値Vを判定する。
【0024】
以下では、判定装置1が、ある処理期間において、分割領域のUEから3つのユーザ情報(第1ユーザ情報から第3ユーザ情報)を取得した場合を例にして、情報提示面の価値Vの値の計算方法を説明する。
図5(A)~
図5(C)は、それぞれ、価値Vを判定する情報提示面及びその法線ベクトルNと、第1ユーザ情報から第3ユーザ情報に基づき判定される接続ベクトルC及び視線ベクトルGを示している。なお、図の簡略化のため視線逆ベクトルGrについては省略している。
【0025】
図5(A)に示す様に、第1ユーザ情報に基づき判定される接続ベクトルCと法線ベクトルNの角度は60度であり、接続ベクトルCと視線ベクトルGの角度は180度である。つまり、接続ベクトルCと視線逆ベクトルGrの角度は0度である。
図5(B)に示す様に、第2ユーザ情報に基づき判定される接続ベクトルCと法線ベクトルNの角度は60度であり、接続ベクトルCと視線ベクトルGの角度は120度である。つまり、接続ベクトルCと視線逆ベクトルGrの角度は60度である。
図5(C)に示す様に、第3ユーザ情報に基づき判定される接続ベクトルCと法線ベクトルNの角度は0度であり、接続ベクトルCと視線ベクトルGの角度は180度である。つまり、接続ベクトルCと視線逆ベクトルGrの角度は0度である。
【0026】
図6に示す様に、第1ユーザ情報から求められる接続ベクトルCと法線ベクトルNの角度は60度であるため、内積の値(N・C)は0.5である。また、接続ベクトルCと視線逆ベクトルGの角度は0度であるため、内積の値(C・Gr)は1である。なお、内積の値は共に0より大きいため、f(N・C)及びf(C・Gr)は、内積の値と同じである。この場合において、α=β=0.5とすると、第1ユーザ情報に対応する中間値Yは、0.5×0.5+0.5×1=0.75となる。同様に、第2ユーザ情報から求められる中間値Yは0.5となり、第3ユーザ情報から求められる中間値Yは1となる。従って、中間値Yの平均値は、2.25/3であり、領域価値Sを100とすると、情報提示面の価値Vは225/3と判定される。
【0027】
以上、ユーザ情報毎に、情報提示面に対する中間値Yを求める。中間値Yは、ユーザ情報を送信したUEのユーザが当該情報提示面を注目している度合いが高い程、大きくなる値である。よって、処理期間内に取得したユーザ情報から求めた中間値Yの平均値を求めることにより、処理期間において情報提示面の平均的な注目度合いを取得することができる。また、処理期間において領域価値Sを求める。領域価値Sは、ARアプリケーションを利用しているユーザ数が多い程、高くなる値である。そして、本実施形態では、情報提示面の価値Vを、当該情報提示面に対して求めた中間値Yの平均値と、当該情報提示面が存在する分割領域の領域価値Sとの積として求める。情報提示面の価値は、ARアプリケーションを利用しているユーザ数が多い領域に存在する程高くなり、かつ、平均的な注目度合いが高い程高くなるため、上記構成により情報提示面が情報提示として有用であるか否かを定量的に判定することができる。
【0028】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態の情報提示面の価値Vの算出においては、UEと当該情報提示面との距離については考慮していなかった。本実施形態では、UEと情報提示面との距離を考慮して当該情報提示面の価値Vを算出する。
【0029】
まず、各分割領域それぞれに対して最大距離L
maxを予め求め、最大距離L
maxを分割領域に関連付けて記憶部11に格納しておく。分割領域の最大距離L
maxとは、分割領域内の任意の2点間を結ぶ直線距離の内の最も長い距離である。例えば、分割領域の形状が、
図3に示す様に方形であると、最大距離L
maxは対角線の長さとなる。提示面価値判定部13は、位置情報が示す位置56と情報提示面の重心を結ぶ直線56(
図4)の長さLを求め、係数γを以下の式(3)により求める。
γ=L/L
max (3)
そして、提示面価値判定部13は、以下の式(4)により中間値Yを算出する。
Y=γ×(α×f(N・C)+β×f(C・G)) (4)
例えば、
図5(A)及び
図5(B)の距離Lが2であり、
図5(C)の距離Lが1であり、最大距離L
maxが4√2であるものとする。この場合、第1ユーザ情報及び第2ユーザ情報におけるγは、
図7に示す様に2/(4√2)=√2/4となる。また、第3ユーザ情報におけるγは、
図7に示す様に1/(4√2)=√2/8となる。したがって、α=β=0.5とすると、第1ユーザ情報に対応する中間値Yは、0.75×√2/4=3√2/16となる。同様に、第2ユーザ情報から求められる中間値Yは0.5×√2/4=√2/8となり、第3ユーザ情報から求められる中間値Yは1×√2/8=√2/8となる。従って、中間値Yの平均値は、7√2/48であり、領域価値Sを100とすると、情報提示面の価値Vは700√2/48=175√2/12と判定される。
【0030】
本実施形態において係数γは、0~1の値であり、UEと情報提示面との距離が大きくなる程、大きくなる。これは、遠くからでも注目される情報提示面程、その価値を大きく評価することに対応する。遠くからでも注目される情報提示面は、情報提示としての利用価値が高いものであり、この構成により、情報提示面の価値を定量的に判定することができる。
【0031】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態では、法線ベクトルN、接続ベクトルC及び視線逆ベクトルGrを単位ベクトル、つまり、長さが同じベクトルとしたが、法線ベクトルN、接続ベクトルC及び視線逆ベクトルGrの長さ(大きさ)を異ならせることができる。つまり、法線ベクトルN、接続ベクトルC及び視線逆ベクトルGrの内の価値の算出に重視するベクトルを他のベクトルの長さより長くすることができる。
【0032】
なお、判定装置1は、処理期間における各情報提示面の価値Vを算出することを繰り返すことができる。例えば、処理期間を1日とすることで、平日における各情報提示面の価値や、休日における各情報提示面の価値を判定することができる。さらに、処理期間を半日とすることで、昼間の時間帯と夜間の時間帯における各情報提示面の価値を判定することができる。
【0033】
なお、本発明による判定装置1は、例えば、コンピュータといった装置の1つ以上のプロセッサで実行されると、当該装置を上記判定装置1として機能・動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0034】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
11:記憶部、12:領域価値判定部、13:提示面価値判定部