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特許7197467特に液剤処理装置のための弁と、対応する液剤処理装置
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  • 特許-特に液剤処理装置のための弁と、対応する液剤処理装置 図1
  • 特許-特に液剤処理装置のための弁と、対応する液剤処理装置 図2
  • 特許-特に液剤処理装置のための弁と、対応する液剤処理装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】特に液剤処理装置のための弁と、対応する液剤処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/20 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
A61M16/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019514078
(86)(22)【出願日】2017-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017073147
(87)【国際公開番号】W WO2018050750
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】102016117396.7
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519084526
【氏名又は名称】ソフトハレ エヌヴイ
【氏名又は名称原語表記】SOFTHALE NV
【住所又は居所原語表記】Agoralaan building Abis, 3590 Diepenbeek Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】バルテルズ, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェルト, ユーゲン
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/075975(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0196909(US,A1)
【文献】特表2015-506731(JP,A)
【文献】特表2012-527258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
A61M 13/00
A61M 15/00
A61M 16/00
A61M 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が保管されている、あるいは保管可能なリザーバと、リザーバからポンプ室への方向にのみ通過させる止め弁を介してリザーバに流体的に接続され、弁を介して薬剤流出口に流体的に接続されるポンプ室を有するポンプとを備えた液剤処理装置であって、前記弁は、液体(20)を収容するための内部空間(2)を有する弁体(1)を備え、前記弁体(1)は、液体流入口(3)と、対向する液体流出口(4)とを有し、前記液体流入口(3)および前記液体流出口(4)の両方は前記内部空間(2)に連通し、前記内部空間(2)には、前記液体流入口(3)と前記液体流出口(4)の間で接続方向(x)へ延伸する多数のマイクロチャネル(5)が配置され、
前記マイクロチャネルは、平行なロッド状の制限要素(6)からなる格子、または平行なロッド状の制限要素(6)からなる格子の、平行な、互いにずれて配置された複数の層によって形成され、
前記制限要素(6)は、前記液体流入口(3)と前記液体流出口(4)の間で接続方向(x)に垂直に延伸し、
前記マイクロチャネル(5)は、5μm~20μmの直径を有し、
前記マイクロチャネルおよび前記内部空間の断面積比は、1:50~1:100であり、
前記内部空間(2)と、前記液体流入口(3)と、前記液体流出口(4)とが、接続方向(x)に垂直の同じ断面を有する、液剤処理装置。
【請求項2】
前記制限要素(6)は、丸い、または多角形の断面を有する、請求項1に記載の液剤処理装置。
【請求項3】
前記制限要素(6)は、円形の断面を有する、請求項1に記載の液剤処理装置。
【請求項4】
前記弁体(1)が、内面(8)が前記内部空間(2)を画定する平行な側壁(7)を有し、前記側壁が、対向する端部において前記液体流入口(3)または前記液体流出口(4)に連通する、請求項1から3のいずれか一項に記載の液剤処理装置。
【請求項5】
前記弁体(1)が、前記液体流入口(3)と前記液体流出口(4)の間の長さ全体を通じて一定の断面を有する、請求項4に記載の液剤処理装置。
【請求項6】
前記弁体(1)は、丸い、または多角形の断面を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の液剤処理装置。
【請求項7】
前記弁体(1)は、円形の断面を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の液剤処理装置。
【請求項8】
前記制限要素(6)と液体との密着性を向上させるため、前記制限要素(6)の表面が、機能コーティングを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の液剤処理装置。
【請求項9】
前記制限要素(6)と液体との密着性を向上させるため、前記制限要素(6)の表面が、親水性コーティングを有する、請求項8に記載の液剤処理装置。
【請求項10】
前記制限要素(6)間の自由間隔または内寸法は、0.5~50μmである、請求項1から9のいずれか一項に記載の液剤処理装置。
【請求項11】
前記制限要素(6)間の自由間隔または内寸法は、3~15μmである、請求項1から10のいずれか一項に記載の液剤処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に液剤処理装置のための弁と、対応する液剤処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術からは、ポンプシステムと接続されているリザーバを有する液剤処理装置が公知である。ポンプの吐出側は、薬剤流出口、例えば管もしくはチューブ、または噴霧器と接続されている。ポンプのポンプ室は、しばしば流入弁および流出弁を有する。流入弁は、ポンプが管、チューブ、または噴霧器を経由して薬剤を供給する出力圧を生成する時に、ポンプ室をロックし、薬剤のリザーバへの逆流を回避する。ポンプ室を再充填するために、ポンプ室に負圧が生成され、これにより、流出弁が閉じている間に、リザーバからの薬剤が開口した流入弁を通ってポンプ室へ流れ、薬剤の管、チューブ、または噴霧器からの逆流を回避する。これにより、弁は一般的な止め弁、例えば逆流防止弁として形成される。類似の装置は、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/191011号パンフレット
【文献】米国特許第8628517号明細書
【文献】国際公開第2013/072790号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療用途では、液剤処理装置は可能な限り小さく構成され、ひいては取る場所が少ないことがしばしば望まれる。しかしながら、特に従来技術から公知の、通常純粋に機械的な流入弁・流出弁は、際限なく小型化できるわけではないため、この種の弁をさらに改善するか、場合によっては全く不要のものとする必要性がある。
【0005】
よって、本発明の課題は、可能な限り寸法の小さい、冒頭に述べたタイプの弁および対応する液剤処理装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する弁によって解決される。独立請求項12は、対応する液剤処理装置に関する。従属請求項2から9は、それぞれ本発明の有利な実施形態に関する。
【0007】
本発明による弁は、液体、特に液剤を収容するための内部空間を含む弁体を有する。弁体は、液体流入口と、対向する液体流出口とを有し、液体流入口および液体流出口の両方は内部空間に連通する。内部空間には、液体流入口と液体流出口の間で接続方向へ延伸する多数のマイクロチャネルが配置されている。
【0008】
本発明による弁は毛管効果を利用する。液体が毛管力によって表面を濡らし、複雑な構造を通って移動することが知られている。この際、液体の移動に必要なエネルギーは、液体内部の液体原子間の原子引力の差と、液体表面、ひいては液体と気体の間の界面にある液体原子間の原子引力の差とによって。液体と気体の間の界面は、自由表面とも呼ばれる。同様に、自由表面から液体原子を除去するためには、液体成分を強い湿潤性の表面から除去するために、以前はより低い位置にあり、液体内部にある原子が自由表面を形成するように、エネルギーを消費する必要がある。
【0009】
本発明の一実施形態では、弁体は、側壁によって画定された液体チャネルを形成する。 側壁は、断面が多角形または円形、例えば丸い溝の平行な側壁とすることができる。
【0010】
一実施形態では、内部空間はマイクロチャネルの断面積よりも大きい断面積を有し、マイクロチャネルおよび内部空間の断面積比は、好ましくは1:5~1:1000、特に好ましくは1:50~1:100である。 マイクロチャネルは、好ましくは1μm~200μm、特に好ましくは5μm~20μmの直径を有する。
【0011】
本発明の一実施形態では、マイクロチャネルは、平行なロッド状の制限要素からなる格子、または平行なロッド状の制限要素からなる格子の、平行な、互いにずれて配置された複数の層によって形成されている。その際、制限要素は、液体流入口と液体流出口の間で接続方向に垂直に延伸することができる。制限要素は、好ましくは丸い、特に円形、または多角形の断面を有する。制限要素は、例えば0.5μm~50μm、好ましくは3μm~15μmの直径を有することができる。制限要素の長さは、数μmから弁体の内部空間の全直径、特に好ましくは、液体流入口と液体流出口の間の接続方向に垂直な内部空間直径の20%~80%の長さである。このため、制限要素は、弁体の内部空間を画定する側壁の内面から出発して対向する側壁の方向へ延伸するが、それに到達することなく、その結果、制限要素とそれぞれ対向する側壁との間に間隔が形成される。この実施形態は、特に、製造が容易であることが優れている。
【0012】
制限要素と液体との密着性を向上させるため、本発明の一実施形態では、制限要素の表面が、機能コーティング、例えば親水性コーティングを有する。さらに、チャネルの内面を疎水性にコーティングすることができる。
【0013】
本発明のその他の実施形態では、内部空間と、液体流入口と、液体流出口とが、接続方向に垂直の同じ断面幾何学形状を有する。これにより、特にコンパクトで簡単に製造可能な弁の幾何学形状が達成される。
【0014】
その際、弁体が、内面が内部空間を画定する平行な側壁を有し、側壁が、対向する端部において液体流入口または液体流出口に連通することができる。簡単に製造可能な弁は、最後に述べた実施形態において、弁体が液体流入口と液体流出口の間の長さ全体を通じて一定の断面を有することによって達成される。
【0015】
弁体は、丸い、特に円形または多角形の断面を有することができる。
【0016】
1つの態様によれば、本発明は、薬剤が保管されている、あるいは保管可能なリザーバと、リザーバからポンプ室への方向にのみ通過させる止め弁を介してリザーバに流体的に接続され、前記された請求項のうちいずれか1つに記載の弁を介して薬剤流出口に流体的に接続されるポンプ室を有するポンプとを備えた液剤処理装置に関する。
【0017】
本発明の詳細を、以下の図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】負圧がかけられていない、本発明による弁の一実施形態の概略縦断面図である。
図2】負圧P1>0がかけられている、図1による弁の概略縦断面図である。
図3】負圧P2>P1がかけられている、図1および図2による弁の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示された弁では、弁体1の縦断面が示されている。弁体1は、対向する平行な側壁7によって画定されている。側壁7はその内面8によって、液体20、例えば薬剤が収容されている内部空間2を画定する。弁体1の対向する面には、液体流入口3と、液体流出口4とが形成されている。液体流入口3と、対向する液体流出口4とは、弁体1の他の部分、特に内部空間2と全く同じ断面を有する。液体流出口4には、例えば液剤処理装置のポンプ室を備えるポンプを連結することができる。
【0020】
弁体1は、例えば円形の断面、または多角形の、例えば長方形もしくは特に正方形の断面を有する。図1に断面で示された制限要素6は、互いに平行に延伸するロッド状の格子支柱であり、図面平面に対し垂直に延伸する。それぞれ2つの隣接した制限要素6は、液体流入口3と液体流出口4の間で接続方向xに延伸し、両方の流出入部3,4に開口しているマイクロチャネル5をその間に形成する。
【0021】
図1に示すように、マイクロチャネルは、平行なロッド状の制限要素からなる格子の、平行な、互いにずれて配置された複数の層によって形成されている。
【0022】
液体流出口4に負圧がかかっていない場合(P0=0)、液体20は、図1に示すように、液体20と気体30の間に、略平面の自由表面を形成する。
【0023】
負圧(P1>0)が液体流出口4にかかると(図2参照)、液体20と気体30の間の自由表面は、凹状の幾何学形状を形成する。負圧が増加するにつれて、液体20と気体30の間の凹状の界面の半径は減少する。図3には、P2>P1である場合を示す。
【0024】
自由表面の曲率半径は、いわゆるラプラス圧に依存する。この圧力は、界面半径が減少するにつれて増加する。よって、負圧が図1図3に示されるマイクロチャネル構造に有効な最大ラプラス圧を超えると、液体は弁体1の外へ移送される。よって、本発明による弁は、冒頭に述べた液剤処理装置における流出弁としての使用に特に適している。
【0025】
基本的に、ラプラス圧は液体の表面張力に比例して増加する。よって、液体が弁体1から外へ移送される負圧の閾値を、所与の表面張力で所定値に適合させるために、マイクロチャネル5の直径、ひいては制限要素6の間隔を互いに適宜調整する必要がある。
【0026】
図1図3に示した実施形態は、例えば約1μm~500μmの、側壁の内面8に垂直の内部空間直径を有することができる。この直径は、好ましくは10μm~100μmである。
【0027】
マイクロチャネル5の直径、ひいては制限要素6間の自由間隔または内寸法は、0.5~50μmとすることができる。制限要素6間の自由間隔または内寸法は、好ましくは3~15μmである。
【0028】
本発明による弁は、必要な構造が、一般的なパターン化方法、例えば、マイクロ射出成形法またはシリコンエッチング法を用いて製造可能であることによって利点を有する。
【0029】
上記の説明、図面および請求項に開示されている本発明の特徴は、個別でも、任意の組合せでも、本発明を実現するための本質であり得る。
【符号の説明】
【0030】
1 弁体
2 内部空間
3 液体流入口
4 液体流出口
5 マイクロチャネル
6 制限要素
7 側壁
8 内面
x 液体流入口と液体流出口の間の接続方向
図1
図2
図3