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特許7197469液体作用薬をエアロゾルに噴霧する噴霧器、特に吸入器、および対応する方法
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  • 特許-液体作用薬をエアロゾルに噴霧する噴霧器、特に吸入器、および対応する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】液体作用薬をエアロゾルに噴霧する噴霧器、特に吸入器、および対応する方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20221220BHJP
   B05B 11/00 20060101ALI20221220BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61M11/00 D
B05B11/00 101H
B05B11/00 101J
B65D83/00 K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019517068
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2017074775
(87)【国際公開番号】W WO2018060425
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】102016118654.6
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519084526
【氏名又は名称】ソフトハレ エヌヴイ
【氏名又は名称原語表記】SOFTHALE NV
【住所又は居所原語表記】Agoralaan building Abis, 3590 Diepenbeek Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】バルテルズ, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェルト, ユーゲン
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-512649(JP,A)
【文献】特表2013-502522(JP,A)
【文献】実開昭63-191276(JP,U)
【文献】実開平04-076975(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
B05B 11/00
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用薬リザーバ(1)と、噴霧ノズル(2)と、ポンプ装置(3)とを有する、液体作用薬をエアロゾルに噴霧する吸入器であって、前記ポンプ装置(3)の吸引側(4)が前記作用薬リザーバ(1)に、前記ポンプ装置(3)の押圧側(5)が前記噴霧ノズル(2)に連通し、前記ポンプ装置(3)は、シリンダ(6)内で前記シリンダ(6)の軸方向(x)に移動可能なピストン(7)を有するものにおいて、
前記ピストン(7)は、その外周(8)に沿って、前記シリンダ(6)の内壁(9)に部分的に形状接合的に当接し、さらに、前記シリンダ(6)の前記内壁(9)と前記ピストン(7)との間に部分的に間隙(10)が形成され、前記ピストン(7)は、その縦軸(x)の周りで回転可能に前記シリンダ(6)内に支承され、前記ポンプ装置(3)のポンプ室(11)が前記間隙(10)を介して前記吸引側(4)と接続される吸引位置と、前記ピストン(7)が前記吸引側(4)を閉鎖するポンプ位置との間で移動可能であることを特徴とする吸入器。
【請求項2】
前記ピストン(7)は中実である、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記ピストン(7)が外周(8)に沿って前記シリンダ(6)の前記内壁(9)に形状接合的に当接している限り、前記ピストン(7)の外周(8)は、略前記シリンダ(6)の内径に相当する外径(d)を有する、請求項1または2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記ピストンの外径(d)は、0.1mm~3mmである、請求項3に記載の吸入器。
【請求項5】
前記ピストンの外径(d)は、0.2~1mmである、請求項3または4に記載の吸入器。
【請求項6】
前記ピストン(7)の前記外周(8)は、前記間隙(10)が前記シリンダ(6)の前記内壁(9)と、前記ピストン(7)の前記外周(8)との間に形成されている限り、非円形である、請求項1から5のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項7】
前記ピストン(7)の前記外周(8)は、前記間隙(10)が前記シリンダ(6)の前記内壁(9)と、前記ピストン(7)の前記外周(8)との間に形成されている限り、平坦化されている、請求項6に記載の吸入器。
【請求項8】
前記ポンプ装置(3)の前記吸引側(4)は、前記シリンダ(6)の半径方向に延び、吸引位置において前記間隙(10)に連通する通路(13)を介して前記ポンプ室(11)と接続される、請求項1から7のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項9】
前記シリンダ(6)の内周における内側の外装面(13)は、面全体を通して一定の曲率半径を有し、前記通路(13)を介してのみ中断する、請求項8に記載の吸入器。
【請求項10】
前記通路(13)と、前記シリンダ(6)の内壁(9)との間の移行部(16)には、前記通路(13)を取り囲むシール要素(14)が配置されている、請求項8または9に記載の吸入器。
【請求項11】
前記間隙(10)は、吸引位置において前記通路(13)に対して向けられ、ポンプ位置において前記通路(13)の反対側に向けられており、ここで吸引位置とポンプ位置とは、互いに略180°回転した前記ピストン(7)の2つの設定位置である、請求項8から10のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項12】
前記ピストン(7)は、前記ピストン(7)の縦軸(x)に対して平行に延びる側に切欠部(15)を有する円筒である、請求項1から11のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項13】
前記ピストン(7)は片側を平坦化した円筒である、請求項12に記載の吸入器。
【請求項14】
前記ピストン(7)の円形の外装面(13)と、前記切欠部(15)と、または平坦化された面との間の接続面(17)は丸みがつけられている、請求項12または13に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体作用薬をエアロゾルに噴霧する噴霧器、特に吸入器、および対応する方法に基づく。噴霧器は、作用薬リザーバと、噴霧ノズルと、ポンプ装置とを有し、ポンプ装置の吸引側が作用薬リザーバに、ポンプ装置の押圧側が噴霧ノズルに連通する。ポンプ装置は、シリンダ内でシリンダの軸方向に移動可能なピストンを有する。この種の噴霧器は、例えば特許文献1、特許文献2から公知である。例示的な噴霧ノズルは、特許文献3から公知である。
【背景技術】
【0002】
従来技術から公知な噴霧器では、ポンプ室内で、噴霧ノズルを介してエアロゾルを放出するための過圧が発生すると、ポンプ装置のポンプ室を作用薬リザーバに対して閉鎖し、それによって作用薬のポンプ室から作用薬リザーバへの逆流を回避する、流入弁を備えていることが多い。ポンプ室を新たに充填する必要がある場合には、ピストンの移動により負圧がポンプ室に発生し、これにより、作用薬リザーバからの作用薬が、開口した流入弁を通ってポンプ室へ移送される。吸引工程の間は、噴霧ノズルに並設された流出弁が閉鎖され、液体または気体の噴霧ノズルからポンプ室への逆流を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7104470号明細書
【文献】米国特許第5662271号明細書
【文献】独国特許出願公開第102012014965号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作用薬をリザーバから吸引するために、ポンプ装置のピストンは、毛細管、または筒形ピストンとして実施されていることが多く、噴霧ノズルを介してエアロゾルを噴出するために、ポンプ室内に過圧が生成された時に、毛細管の閉鎖要素として毛細管内を移動するボールと共に機能する逆流防止弁を備えている。しかしながら、この種の毛細管として構成されたポンプピストンは煩雑であり、これにともない製造時に費用がかかる。
【0005】
よって、本発明の課題は、冒頭に述べた種類の噴霧器、および対応する方法を、これらが製造において容易かつ安価であるように発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有する噴霧器、および請求項12の特徴を有する対応する方法によって解決される。従属請求項は、それぞれ発明の有利な実施形態に関する。
【0007】
それによると、ピストンは、その外周に沿って、シリンダの内壁に部分的に形状接合的に当接し、さらに、シリンダの内壁とピストンとの間に部分的に間隙が形成される。ピストンは、その縦軸の周りで回転可能にシリンダ内に支承され、ポンプ装置のポンプ室が間隙を介して吸引側と接続される吸引位置と、ピストンが吸引側を閉鎖するポンプ位置との間で移動可能である。
【0008】
従来技術から公知な噴霧器と比較すると、記載されたポンプ装置の構成によれば、特にピストンが中実部材として構成可能であり、(ボール)逆流防止弁を統合した毛細管として構成する必要がない。中実で、一体的に構成されたピストンは、毛細管を統合した前述のピストン、およびボール逆流防止弁よりも基本的に製造が容易であり、ひいては安価で実現可能である。ピストンの外周は、ピストンが外周に沿ってシリンダの内壁に形状接合的に当接している限り、略シリンダの内径に相当する外径を有することができる。ここで、ピストンの外径は0.1~3mm、特に好ましくは0.2~1mmとすることができる。ピストンおよびシリンダの形状接合的に隣接した面に沿って、ピストンは、シリンダ内のポンプ位置と、吸引位置との間を案内されることができる。
【0009】
ピストンの外周は、間隙がシリンダの内壁と、ピストンの外周との間に形成されている限り、非円形とすることができ、特に平坦部を有することができる。ここで、ピストンは、例えばピストンがポンプ室内に突出する端部において、片側を平坦化した丸棒として形成することができ、平坦部は、例えば材料を局部的に横方向に除去することによって、例えば丸棒のフライス削りによって形成することができる。
【0010】
ポンプ装置の吸引側は、シリンダの半径方向に延び、吸引位置において間隙に連通する通路を介してポンプ室と接続される。
【0011】
ここで、シリンダの内周における内側の外装面は、面全体を通して一定の曲率半径を有することができ、通路を介してのみ中断することができる。通路と、シリンダの内壁との間の移行部には、ピストンのポンプ位置において、ポンプ室に対する通路のシーリング性をさらに改善するため、通路を取り囲むシール要素を配置することができる。
【0012】
吸引位置において、間隙は通路に対して向けられ、ポンプ位置において通路の反対側に向けることができ、ここで吸引位置とポンプ位置とは、互いに略180°回転したピストンの2つの設定位置である。通路をポンプ位置で閉鎖するために、ピストンを、間隙が通路に対して向けられている吸引位置に対して180°回転させることは、必ずしも必要ではない。ピストンの外周と、シリンダの内周との間の実現可能な製造公差と、それによって達成される、ポンプ位置における通路とポンプ室との間の耐圧性に応じて、ポンプ位置は吸引位置に対して180°未満、例えば90°のみ回転することもできる。
【0013】
ピストンは、例えばピストンの縦軸に対して平行に延びる側に切欠部を有する円筒とすることができる。特に、ピストンは片側を平坦化した円筒とすることができる。ピストンの円形の外装面と、切欠部と、または平坦化した面との間の接続面は、丸みをつけることができる。この実施形態では、シリンダの内壁上の通路を取り囲む、場合によって設けられるシール要素が、ピストンが吸引位置とポンプ位置との間を回転する間に損傷を受けることがない。その他の態様によれば、本発明は、前述の種類の噴霧器の作動方法に関する。この方法は、引出し位置と押込み位置との間で、ピストンとシリンダの長手方向に、シリンダに対してピストンを変位させることを有する。
【0014】
ここで、ピストンを引出し位置から押込み位置へ変位させる際に、ピストンが吸引側を閉鎖し、一方でピストンを押込み位置から引出し位置へ変位させる際に、間隙が吸引側とポンプ室を接続することができる。
【0015】
吸引側を閉鎖するために、吸引位置からポンプ位置へ、ピストンをその縦軸の周りで回転させることができる。
【0016】
この方法はさらに、以下のステップを有する。
a)ピストンを、ピストンの長手方向に沿って、押込み位置から引出し位置へ変位させ、その際ピストンは吸引位置にあり、負圧がポンプ室で生成され、その結果、液体作用薬が作用薬リザーバからポンプ室へ引き込まれるステップ
b)その後、ピストンを吸引位置からポンプ位置へ回転させるステップ
c)その後、ピストンを引出し位置から押込み位置へ変位させ、その際ピストンはポンプ位置にあり、過圧がポンプ室で生成され、ポンプ室の液体作用薬が噴霧ノズルを介して噴霧器から放出されるステップ
d)その後、ピストンをポンプ位置から吸引位置へ回転させるステップ。
さらなるエアロゾルを放出するため、ステップa)~d)を、所望のエアロゾル量に応じて少なくとも一回繰り返す。
【0017】
発明の詳細を、以下に図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来技術による噴霧器を示す。
図2】本発明による噴霧器の一実施形態の、ポンプ装置縦軸に対して垂直な概略断面図を示す。
図3】シリンダに対するピストンの異なる設定位置における、本発明による噴霧器の実施形態を概略的に示す。
図4】シリンダに対するピストンの異なる設定位置における、本発明による噴霧器の実施形態を概略的に示す。
図5】シリンダに対するピストンの異なる設定位置における、本発明による噴霧器の実施形態を概略的に示す。
図6】シリンダに対するピストンの異なる設定位置における、本発明による噴霧器の実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は従来技術による噴霧器を示す。これは、基本的に作用薬リザーバ1と、噴霧ノズル2とからなり、これらはポンプ装置3を介して流動的に互いに接続されている。ポンプ装置3を介して、作用薬リザーバ1に保管されている作用薬は、加圧下で噴霧ノズル2を通って押圧され、その結果、非常に微細な粒子に噴霧されてエアロゾルを形成する。適切な噴霧ノズルは特許文献3に説明されている。噴霧器は、例えば吸入器として使用することができる。
【0020】
ポンプ装置3は、吸引側4と押圧側5とを有し、吸引側は、ポンプ装置3のピストン7内の毛細管7.1を介して作用薬リザーバ1と流動的に接続されている。さらに、ポンプ室11が噴霧ノズル2と流動的に接続されている。
【0021】
ピストン7は、シリンダ6においてその長手方向xに移動可能である。ポンプ室11内に突出した端部において、ピストン7はボール弁12を有し、ボール弁12は、吸引運動においてピストン7が少なくとも部分的にポンプ室11から引き出された場合、毛細管7.1を開放し、ポンプ運動においてピストン7がさらにポンプ室1へ押し込まれた場合、毛細管7.1を閉鎖する。こうしてピストン7がポンプ室11から少なくとも部分的に引き出された場合、ポンプ室11内に発生した負圧によって、作用薬リザーバ1からの作用薬が毛細管7.1を通ってポンプ室11へ流入する。
【0022】
続くステップで、ピストン7がポンプ室11内へさらに押し込まれると、ボール弁は、その際ポンプ室11に生じる過圧によって毛細管7.1を閉鎖し、その結果、ポンプ室11にある作用薬は、噴霧ノズル2を介してのみポンプ室11から流出し、特に毛細管7.1を通って作用薬リザーバ1へ逆流することはできない。
【0023】
作用薬噴霧器の領域では、ピストン7は通常約0.9~1.5mmの直径を有するため、ピストン7内でピストンの長手方向へ延びる毛細管は、適宜一回り小さい直径を有する必要がある。ここで非常に複雑なのは、ボール逆流防止弁12の構成であり、弁12の機能性を保証するため、製造公差をマイクロメートルの範囲内で遵守しなければならず、このため噴霧器は製造が非常に煩雑であり、ひいては高価である。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態によるポンプ装置3のピストン7およびシリンダ6の長手方向に垂直な断面図を示す。これによると、ピストンは、その外周8に沿って切欠部10を有するため、ピストンはその外周に沿って、シリンダ6の内壁9に部分的に形状接合的に当接し、シリンダの内壁9と、ピストン7との間に部分的に間隙10を形成する。ピストン7は、図2による図面では図面平面に対し垂直に延びている縦軸xの周りを回転可能にシリンダ6内に支承されている。図2において、ピストン7はシリンダ6に対して吸引位置に配置されている。吸引位置では、間隙10はシリンダ6の一方の側に向けられており、この一方の側を通って通路13がシリンダ6の半径方向へ延びている。通路13を介してポンプ装置3の吸引側4を連結することができ、その結果、通路13と間隙10とを介して、吸引側4を介して連結された作用薬リザーバ1と、ポンプ装置3のポンプ室11との間に流体接続を確立することができる(図2では図示せず。図3図6を参照)。
【0025】
ピストン7は、図2の図面平面に対し垂直に延びる縦軸xの周りを回転可能である。 ピストン7が、例えば図2に示す位置に対して軸線xの周りを180°回転すると、間隙10は通路13の反対側の、シリンダ6の側壁部分に向けられる。この場合、シリンダ7は、切欠部15に隣接した外周で通路13を閉鎖する。
【0026】
通路13の領域において、シリンダ6の内周9と、ピストン7の外周8との間のシール性を改善するために、通路13は、シリンダ6の内壁9への移行部にシール要素14を有する。シリンダ6内でのピストン7の回転によってシール要素14が損傷しないように、ピストンの円対称の外周8を切欠部5に接続する接続面17は、それぞれ丸みを有する。
【0027】
ピストン7と、シリンダ6の内壁9との間に間隙10を形成する切欠部15は、その他の部分は略円筒形のピストン7の横方向の平坦部として形成されている。
【0028】
図3図6は、ピストン7のシリンダ6に対する4つの異なる設定位置を示す。図3および図3aでは、間隙10は通路13の反対側に配置されているため、ピストン7は通路13を閉鎖する。さらに、ピストン7はその縦軸xに沿って、引出し位置から押込み位置へ変位する。ピストン7が通路13を閉鎖しているため、ポンプ室11に過圧が発生し、その結果、ポンプ室にある液体作用薬が、噴霧ノズル2を介して噴霧器から放出される。
【0029】
ピストン7が押込み位置にある場合、図4および図4aが示すように、ピストンは、図3および図3aに示されたポンプ位置から図4および図4aに示された吸引位置へ回転し、この吸引位置では、間隙10が通路13に向けられ、ひいては間隙10と、通路13と、吸引側4とを介して、ポンプ室11と、作用薬リザーバ1との間に流体接続が確立される。シリンダ6に対するピストン7のこの回転配向では、ポンプ室11を充填するため、ピストン7をポンプ室11から少なくとも部分的に引き出すことができ、その結果、ポンプ室11内に負圧が発生する。これは図5および図5aに示されている。負圧により、作用薬リザーバ1にある作用薬を、吸引側4、通路13、および間隙10を介してポンプ室11に搬送することができる。加えて、噴霧ノズル2は逆流防止弁を有することができ、逆流防止弁は、ポンプ室11内が負圧である際、ポンプ装置3の外部環境に対してノズル2を閉鎖する。
【0030】
ポンプ室11が少なくとも部分的に作用薬で充填された後、ピストン7はシリンダ6内で再び180°回転し、その結果、ピストン7はシリンダ内の通路13を閉鎖する。
【0031】
したがって、ポンプ装置3は、図3および図3aに示される状況に応じて、ピストン7を長手方向xに沿って引出し位置から押込み位置へと再び変位させることによって、ポンプ室11に過圧を発生させ、噴霧ノズル2を介して噴霧器からさらに液体作用薬が吐出されるように準備されている。
【0032】
ピストン7は、図2図6aに示される実施形態では、断面がピストンの長手方向に垂直な、片側が平坦化された円筒として形成されており、ひいては円筒形のピストンの片側を部分的に平坦化することによって、容易に、ひいては安価に製造することができる。さらに、切欠部15は、ピストン7のポンプ室11内へ突出した端部にのみ形成され、ピストンは特に、ピストン7がポンプ室11に対してシールされているシール領域18において、縦軸に垂直な断面が円対称であるため、Oリングのような簡単なシール手段を用いて、ピストン7をポンプ室11に対してシールすることができる。
【0033】
上記の説明、図面および請求項に開示されている本発明の特徴は、個別でも、任意の組合せでも、本発明を実現するための本質であり得る。
【符号の説明】
【0034】
1 作用薬リザーバ
2 噴霧ノズル
3 ポンプ装置
4 ポンプ装置の吸引側
5 ポンプ装置の押圧側
6 シリンダ
7 ピストン
7.1 毛細管
8 外周
9 内壁
10 間隙
11 ポンプ室
12 ボール弁
13 通路
14 シール要素
15 切欠部
16 移行部
17 接続面
18 シール領域
d ピストンの外径
x 縦軸
図1
図2
図3
図3a
図4
図4a
図5
図5a
図6
図6a