(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】患者モニタリング・システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20221220BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20221220BHJP
【FI】
A61B5/00 102B
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2019524045
(86)(22)【出願日】2017-11-03
(86)【国際出願番号】 EP2017078117
(87)【国際公開番号】W WO2018086990
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-30
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ロード,ウィリアム パーマー
(72)【発明者】
【氏名】ファン ゾン,コルネリス コンラデュス アドリアニュス マリア
(72)【発明者】
【氏名】フラワー,アビゲイル
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0217260(US,A1)
【文献】特開2009-219867(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098977(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0030825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
G16H 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つまたは複数のプロセッサによって、エリア内の複数の患者のうちの所与の患者に関連付けられた患者情報を決定する段階であって、前記エリアは一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラによって捕捉されることができる、段階と;
前記バイタルサイン取得カメラの一つまたは複数によって、前記所与の患者から一つまたは複数の更新されたバイタルサインを取得する段階と;
前記プロセッサの一つまたは複数によって、前記一つまたは複数の更新されたバイタルサインおよび前記所与の患者に関連付けられた前記患者情報に基づいて、一つまたは複数の調整された更新されたバイタルサインを生成する段階と;
前記プロセッサの一つまたは複数によって、前記一つまたは複数の調整された更新されたバイタルサインと、前記所与の患者から以前に取得された一つまたは複数の以前のバイタルサインとを比較する段階と;
前記プロセッサの一つまたは複数によって、前記比較に基づいて、前記所与の患者の悪化を検出する段階と;
前記プロセッサの一つまたは複数によって、前記所与の患者の悪化について医療人員にアラートする出力を提供する段階であって、前記アラートは、前記所与の患者をみつける助けとなる情報を含み、前記所与の患者をみつける助けとなる情報は、
現在位置がわからない前記所与の患者についての前記エリア内の前記所与の患者の最後の既知の位置および/または
未登録の前記所与の患者の参照画像を含む、段階とを含む、
コンピュータ実装される方法。
【請求項2】
前記患者情報が、前記所与の患者の性別を含み、前記生成することは、前記所与の患者の性別に基づいて、前記一つまたは複数の更新されたバイタルサインを調整することを含む、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項3】
前記患者情報が、前記所与の患者によって服用される一つまたは複数の医薬を含み、前記生成することは、前記所与の患者によって服用される医薬に基づいて、前記一つまたは複数の更新されたバイタルサインを調整することを含む、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項4】
前記プロセッサの一つまたは複数によって、前記所与の患者の少なくとも一つのバイタルサインについてのベースライン・スコアを決定する段階であって、前記ベースライン・スコアは前記所与の患者から以前に取得された前記少なくとも一つのバイタルサインの測定に基づく、段階と;
前記プロセッサの一つまたは複数によって、前記所与の患者の前記少なくとも一つのバイタルサインについての更新されたバイタルサイン・スコアを決定する段階であって、前記更新されたバイタルサイン・スコアは前記患者の前記一つまたは複数の調整された更新されたバイタルサインに基づく、段階とをさらに含み、
前記比較することは、前記ベースライン・バイタルサイン・スコアを前記更新されたバイタルサイン・スコアと比較することを含む、
請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項5】
前記検出することは、前記ベースライン・バイタルサイン・スコアと前記更新されたバイタルサイン・スコアとの間の差が閾値を満たすことを判別することを含む、請求項4記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項6】
前記検出することは、前記ベースライン・バイタルサイン・スコアと前記更新されたバイタルサイン・スコアとの間の差が、前記少なくとも一つのバイタルサインの正常性に向かう傾向を実証しないことを判別することを含む、請求項4記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つのバイタルサインが脈拍数を含む、請求項4記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つのバイタルサインが呼吸数を含む、請求項4記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項9】
前記一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラはパン‐チルト‐ズーム(「PZT」)カメラを含む、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項10】
一つまたは複数のプロセッサと;
前記一つまたは複数のプロセッサと動作可能に結合された一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラと;
命令を記憶している、前記一つまたは複数のプロセッサと動作可能に結合されたメモリとを有するシステムであって、前記命令は、一つまたは複数のプロセッサによる該命令の実行に応答して、前記一つまたは複数のプロセッサに:
エリア内の複数の患者のうちの所与の患者に関連付けられた患者情報を決定する段階であって、前記エリアは前記一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラによって捕捉されることができる、段階と;
前記バイタルサイン取得カメラの一つまたは複数によって、前記所与の患者から一つまたは複数の更新されたバイタルサインを取得する段階と;
前記一つまたは複数の更新されたバイタルサインおよび前記所与の患者に関連付けられた前記患者情報に基づいて、一つまたは複数の調整された更新されたバイタルサインを生成する段階と;
前記一つまたは複数の調整された更新されたバイタルサインと、前記所与の患者から以前に取得された一つまたは複数の以前のバイタルサインとを比較する段階と;
前記比較に基づいて、前記所与の患者の悪化を検出する段階と;
前記所与の患者の悪化について医療人員にアラートする出力を提供する段階であって、前記アラートは、前記所与の患者をみつける助けとなる情報を含み、前記所与の患者をみつける助けとなる情報は、
現在位置がわからない前記所与の患者についての前記エリア内の前記所与の患者の最後の既知の位置および/または
未登録の前記所与の患者の参照画像を含む、段階とを実行させるためのものである、
システム。
【請求項11】
前記患者情報が、前記所与の患者の性別または年齢を含み、前記生成することは、前記所与の患者の性別または年齢に基づいて、前記一つまたは複数の更新されたバイタルサインを調整することを含む、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記患者情報が、前記所与の患者によって服用される一つまたは複数の医薬を含み、前記一つまたは複数の調整されたバイタルサインは、前記所与の患者によって服用される医薬に基づいて生成される、請求項10記載のシステム。
【請求項13】
前記ベースライン・バイタルサイン・スコアと前記更新されたバイタルサイン・スコアとの間の差が閾値を満たすことを判別するための命令をさらに含む、請求項10記載のシステム。
【請求項14】
前記ベースライン・バイタルサイン・スコアと前記更新されたバイタルサイン・スコアとの間の差が、前記少なくとも一つのバイタルサインの正常性に向かう傾向を実証しないことを判別するための命令をさらに含む、請求項10記載のシステム。
【請求項15】
命令を有する少なくとも一つの非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、一つまたは複数のプロセッサによる該命令の実行に応答して、前記一つまたは複数のプロセッサに:
エリア内の複数の患者のうちの所与の患者に関連付けられた患者情報を決定する段階であって、前記エリアは一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラによって捕捉されることができる、段階と;
前記バイタルサイン取得カメラの一つまたは複数によって、前記所与の患者から一つまたは複数の更新されたバイタルサインを取得する段階と;
前記一つまたは複数の更新されたバイタルサインおよび前記所与の患者に関連付けられた前記患者情報に基づいて、一つまたは複数の調整された更新されたバイタルサインを生成する段階と;
前記一つまたは複数の調整された更新されたバイタルサインと、前記所与の患者から以前に取得された一つまたは複数の以前のバイタルサインとを比較する段階と;
前記比較に基づいて、前記所与の患者の悪化を検出する段階と;
前記所与の患者の悪化について医療人員にアラートする出力を提供する段階であって、前記アラートは、前記所与の患者をみつける助けとなる情報を含み、前記所与の患者をみつける助けとなる情報は、
現在位置がわからない前記所与の患者についての前記エリア内の前記所与の患者の最後の既知の位置および/または
未登録の前記所与の患者の参照画像を含む、段階とを実行させるものである、
媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概括的には医療に向けられている。より詳細には、本稿に開示されるさまざまな方法および装置は、待合室などのエリアにおける患者のような複数の個人の状態の変化をモニタリングすることに関するが、それだけではない。
【背景技術】
【0002】
患者が病院を訪れるとき、患者は典型的には、患者の名前、年齢、身長、体重、バイタルサイン、訪問理由および他の同様の情報など、患者に関するさまざまな情報を決定するためにトリアージされる。いったんトリアージされると、患者は待合室などのエリアに送られて、患者を診察および/または治療するために医師などの病院資源が利用可能になるのを待つ。患者の待ち時間は、病院資源の利用可能性によってはかなりの長さになることがある。患者が待っている間に悪化することはめずらしくなく、医療人員が常に適時に悪化に気づくとは限らない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、待合室などのエリアにおける患者のような複数の個人の状態の変化をモニタリングするための方法、システムおよび装置に向けられる。たとえば、複数のトリアージされた患者は、救急治療室(「ER」)の医師によって診察されることができるまで待合室で待つことがある。患者は、患者モニタリング待ち行列(単に「患者待ち行列」とも称される)に含められてもよく、この待ち行列は、たとえば、トリアージ看護師によって患者から取得/収集された情報に基づいて決定される各患者に関連付けられた緊急度のインジケーターもしくは指標(本稿では「患者緊急度インジケーター(patient acuity indicator)」と称される)ならびに患者待ち時間、患者の在室などの他のデータ・ポイントに基づいて順序付けまたはランク付けされる。待合室に取り付けられた一つまたは複数の「バイタルサイン取得カメラ」が、各患者からの一つまたは複数の更新されたバイタルサインの非接触および/または邪魔にならない収集を周期的に実施するように構成されてもよい。これらの更新されたバイタルサインは、血圧、温度、脈拍数、酸素飽和度(「SO2」)、呼吸数、皮膚の色、姿勢、発汗レベルなどを含みうるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、更新されたバイタルサインおよび/または更新されたバイタルサインと以前に取得されたバイタルサイン(たとえばトリアージの際に取得された初期バイタルサイン、バイタルサイン取得カメラによって取得された以前の更新されたバイタルサイン)との間の差が一つまたは複数の閾値を満たす場合、患者の悪化を医療人員に通知するためにアラートが生成されてもよい。すると、医療人員は即座のアクションをとりうる。
【0004】
一般に、ある側面では、方法が、一つまたは複数のプロセッサによって、エリア内の複数の患者のうちの所与の患者に関連付けられた患者情報を決定する段階であって、前記エリアは一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラによって捕捉されることができる、段階と;前記バイタルサイン取得カメラの一つまたは複数によって、前記所与の患者からの一つまたは複数の更新されたバイタルサインを取得する段階と;前記プロセッサの一つまたは複数によって、前記一つまたは複数の更新されたバイタルサインおよび前記所与の患者に関連付けられた患者情報に基づいて、一つまたは複数の調整された更新されたバイタルサインを生成する段階と;前記プロセッサの一つまたは複数によって、前記一つまたは複数の調整された更新されたバイタルサインと、前記所与の患者から以前に取得された一つまたは複数の以前のバイタルサインとを比較して、前記プロセッサの一つまたは複数によって、該比較に基づいて、前記所与の患者の悪化を検出する段階と;前記プロセッサの一つまたは複数によって、前記所与の患者の悪化について医療人員にアラートする出力を提供する段階とを含みうる。
【0005】
さまざまな実施形態において、前記患者情報は、前記所与の患者の性別を含んでいてもよく、前記生成することは、前記所与の患者の性別に基づいて、前記一つまたは複数の更新されたバイタルサインを調整することを含む。さまざまな実施形態において、前記患者情報は、前記所与の患者が服用する一つまたは複数の医薬を含んでいてもよく、前記生成することは、前記所与の患者が服用する医薬に基づいて、前記一つまたは複数の更新されたバイタルサインを調整することを含む。さまざまな実施形態において、前記患者情報は、前記所与の患者が服用する一つまたは複数の医薬を含んでいてもよく、前記生成することは、前記所与の患者が服用する医薬に基づいて、前記一つまたは複数の更新されたバイタルサインを調整することを含む。
【0006】
さまざまな実施形態において、本方法はさらに:前記プロセッサの一つまたは複数によって、前記所与の患者の少なくとも一つのバイタルサインについてのベースライン・スコアを決定する段階であって、前記ベースライン・スコアは前記所与の患者から以前に取得された前記少なくとも一つのバイタルサインの測定に基づく、段階と;前記プロセッサの一つまたは複数によって、前記所与の患者の前記少なくとも一つのバイタルサインについての更新されたバイタルサイン・スコアを決定する段階であって、前記更新されたバイタルサイン・スコアは前記患者の前記一つまたは複数の調整された更新されたバイタルサインに基づく、段階とを含んでいてもよい。さまざまな実施形態において、前記比較することは、前記ベースライン・バイタルサイン・スコアを前記更新されたバイタルサイン・スコアと比較することを含んでいてもよい。さまざまな実施形態において、前記検出することは、前記ベースライン・バイタルサイン・スコアと前記更新されたバイタルサイン・スコアとの間の差が閾値を満たすことを判別することを含んでいてもよい。さまざまな実施形態において、前記検出することは、前記ベースライン・バイタルサイン・スコアと前記更新されたバイタルサイン・スコアとの間の差が、前記少なくとも一つのバイタルサインの正常性に向かう傾向を実証しないことを判別することを含んでいてもよい。さまざまな実施形態において、前記少なくとも一つのバイタルサインは脈拍数および/または呼吸数を含んでいてもよい。さまざまな実施形態において、前記一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラはパン‐チルト‐ズーム(「PZT」)カメラを含んでいてもよい。
【0007】
ある実装は、上記の方法のうちの一つまたは複数のような方法を実行するようプロセッサによって実行可能な命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含んでいてもよい。さらにもう一つの実装は、メモリと、該メモリに記憶された命令を実行して、上記の方法のうちの一つまたは複数のような方法を単独でまたは集団で実行する一つまたは複数のモジュールまたはエンジンを実装するよう動作可能な一つまたは複数のプロセッサとを含む制御システムを含んでいてもよい。
【0008】
上述の概念および下記でより詳細に論じられる追加的な概念のあらゆる組み合わせ(かかる概念が相互に矛盾しないことを条件とする)が、本稿で開示される主題の一部であると考えられることを理解しておくべきである。特に、本開示の末尾に現われる特許請求される主題のあらゆる組み合わせは、本稿に開示された主題の一部であると考えられる。また、本稿で明示的に用いられ、参照によって組み込まれる何らかの開示にも現われることがありうる用語は、本稿に開示される特定の概念と最も整合する意味を与えられるべきであることも理解しておくべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面において、同様の参照符号は一般に異なる図面を通じて同じ部分を指す。また、図面は、必ずしも同縮尺ではなく、一般に、開示の原理を例解することに重点が置かれている。
【0010】
【
図1】さまざまな実施形態に基づく、開示された技法を用いてモニタリングされる患者についての一般的なプロセス・フローを概略的に示す。
【0011】
【
図2】さまざまな実装に基づく、開示されるさまざまなコンポーネントが本開示の選択された諸側面を実装しうる例示的な環境を示す。
【0012】
【
図3】さまざまな実施形態に基づく、開示された技法が実施されうる例示的シナリオを示す。
【
図4】さまざまな実施形態に基づく、開示された技法が実施されうる例示的シナリオを示す。
【0013】
【
図5】さまざまな実施形態に基づく、エリア内の個人をモニタリングする例示的方法を示す。
【0014】
【
図6】例示的なコンピュータ・システムのコンポーネントを示す。
【0015】
【
図7】さまざまな実施形態に基づく、バイタルサイン取得カメラの例示的コンポーネントを概略的に示す。
【
図8】さまざまな実施形態に基づく、バイタルサイン取得カメラの例示的コンポーネントを概略的に示す。
【0016】
【
図9】さまざまな実施形態に基づく、たとえば悪化検出モジュールによって実装されうる例示的な方法を示す。
【0017】
【
図10】さまざまな実施形態に基づく、たとえば悪化検出モジュールによって扱われうるさまざまなイベントを示す。
【0018】
【
図11】さまざまな実施形態に基づく、悪化を検出するために患者の脈拍数を評価するためのある例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
患者が病院を訪れる時、患者は典型的には、患者の名前、年齢、身長、体重、バイタルサイン、訪問理由および他の同様の情報など、患者についてのさまざまな情報を決定するために、登録される。いったんトリアージされると、患者は待合室などのエリアに送られて、患者を診察および/または治療するために医師などの病院資源が利用可能になるのを待つ。患者の待ち時間は、病院資源の利用可能性によってはかなりの長さになることがある。患者が待っている間に悪化することもめずらしくなく、医療人員が常に適時に悪化に気づくとは限らない。よって、本稿に記載される技法は、待合室のようなエリアにおける患者の状態の自動的で邪魔にならない(たとえば無接触の)モニタリングを容易にし、それにより、患者の悪化が即時の医療上の注目を正当化するときに医療人員にアラートが提供されうる。
【0020】
下記は、本発明のさまざまな実施形態で使用される用語の定義である。本稿で使用される「データベース」という用語は、データおよび情報が記憶、検索、取り出し、更新および操作されることを許容するとともに、それらがテーブル形式などの一つまたは複数のフォーマットに提示される、またはテキスト、数値、画像およびオーディオ・データにグループ化されることを許容するように編成されたデータおよび情報の集合を指す。本稿で使用される「データベース」という用語は、より大きなデータベースの一部を指すこともあり、この場合、データベース内のある型のデータベースを形成する。本稿で使用される「データベース」は、ローカルに存在するか、またはリモート位置、たとえばリモート・ネットワーク・サーバーからアクセスされうる従来のデータベースをも指す。データベースは、典型的には、さまざまな型の揮発性および不揮発性のコンピュータ記憶装置を含むコンピュータ・メモリ内に存在する。データベースが存在するメモリは、高速ランダムアクセスメモリ、または磁気ディスク記憶装置、光記憶装置、およびフラッシュメモリのような不揮発性メモリを含みうる。データベースが存在するメモリは、データベースによって受領され、データベースに格納されるデータを処理し、整理するための一つまたは複数のソフトウェアをも含んでもよい。
【0021】
図1は、開示される技法を用いて患者が概括的にどのようにモニタリングされうるかを概略的に示している。具体的には、待合室より前のエリアにおいて生起しうる動作およびアクションが描かれている。待合室より前のエリアは、待合室より前のエリア(単数または複数)102などであり、受付および/または登録および/またはトリアージ・ステーションもしくはブースを含みうる。さらに、待合室104において生起しうる動作およびアクションが描かれている。ブロック106において、新規患者が、たとえば、受付デスク(図示せず)でチェックインした後、待合室前エリア102にはいるおよび/または接近することができる。
【0022】
ブロック108では、新規患者が登録されてもよい。登録はたとえば、患者の氏名、年齢、性別、保険情報および訪問理由などの患者についての情報を収集することを含んでいてもよい。典型的には、この情報は、トリアージ看護師のような医療人員によって手動でコンピュータに入力されてもよいが、それだけではない。いくつかの実施形態では、患者の一つまたは複数の参照画像が、たとえば、トリアージ看護師によって操作されるコンピューティング装置と一体のカメラ、スタンドアローンのカメラおよび/またはバイタルサイン取得カメラによって取得されてもよい(その場合、少なくともいくつかのバイタルサインは、登録時に任意的に取得されてもよい)。多くの事例において、トリアージ看護師は、さまざまな医療器具を用いてブロック110でさまざまな初期バイタルサインを取得しうる。これらの初期のバイタルサインは、血圧、脈拍、グルコースレベル、SO
2、フォトプレチスモグラム(「PPG」)、呼吸数(たとえば呼吸のレート)、温度、皮膚の色などを含みうるが、これらに限定されない。
図1には描かれていないが、いくつかの実施形態では、患者の病歴の取得/更新、患者のアレルギーの判別、患者の医薬使用の判別など、トリアージにおいて他の情報も収集されてもよい。
【0023】
ひとたび患者が登録されてその初期バイタルサインが取得されたら、ブロック112において、患者は待合室104に送られてもよい。いくつかの実施形態では、患者は、患者の疾患の重症度をランク付けするために使用されうる指標となりうる、いわゆる「患者緊急度インジケーター」を割り当てられてもよく、場合によっては、救急治療室資源の予期される必要性を示してもよい。患者緊急度インジケーターを決定および/または割り当てするためには、いくつもある一般に使われているインジケーターおよび/または臨床決定支援(「CDS」)アルゴリズムが使用されうる。それには、緊急重症度指数(「ESI」)、台湾トリアージシステム(「TTS」)、カナダ・トリアージ・アンド・アキュイティ・スケール(「CTAS」)などを含まれるが、これらに限定されない。たとえば、いくつかの実施形態では、患者のバイタルサインは、システム・データベースに記憶されている、あらかじめ定義されたバイタルサイン閾値、または所与の患者年齢、性別、体重などに典型的な公表されているかまたは既知のバイタルサイン値と比較されて、患者の初期患者緊急度インジケーターおよび/または患者待ち行列における患者の初期位置を決定してもよい。いくつかの実施形態では、患者についてのさまざまな生理的および他の情報が、トレーニングされたモデル(たとえば、回帰モデル、ニューラルネットワーク、深層学習ネットワークなど)、症例に基づく推論アルゴリズム、または一つまたは複数の緊急度指標を導出するための他の臨床推論アルゴリズムに供給されてもよい。いくつかの実施形態では、緊急度指標を導出するために使用される情報は、バイタルまたはバイタルサイン取得カメラによって捕捉されうる他の情報を含んでいてもよく、または完全にそれらに限定されていてもよい。いくつかの実施形態では、緊急度指標を導出するために使用される情報は、代替的または追加的に、患者の以前の電子医療記録(「EMR」)からの情報、トリアージ時に患者から取得された情報、患者によって携行されるウェアラブル装置もしくは他のセンサーからの情報、待合室の他の患者または人についての情報(たとえば、室内の他の人のバイタル)、家族メンバーまたは患者に関連するその他についての情報(たとえば、家族メンバーのEMR)などの情報を含んでいてもよい。
【0024】
ブロック114において、たとえば、一つまたは複数のカメラ、センサーまたは医療人員からの入力を用いて、患者が待合室を離れたことが判別されてもよい。ブロック114は、現在待合室内にいる各人物をスキャンし(たとえば、後述するブロック120の実行のように、ひとたび患者がバイタルが捕捉されるべき患者の待ち行列の先頭になったら該患者を位置特定しようとするシーク機能の一部として、または後述するブロック118および120を含むループの多重実行のように、バイタルを捕捉するために室内の各人物を通じて巡回する)、患者が位置特定されなかったことを判別することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、システムは、一時的な不在を考慮に入れるために(たとえばトイレに行くまたはトリアージ室で臨床スタッフと話す)、患者が待合室を離れたとみなされる前に、その患者がみつからない事例の所定回数に達するまたはその患者がみつからない所定の長さの時間が経過するまで待ってもよい。たとえば、患者は、医師の診察を受ける番なので、ER本体に連れて行かれたことがありうる。あるいは待っている間に患者の状態が改善したため患者が病院を去ったことがありうる。あるいは、患者がしびれをきらして、他所でケアを求めるために去ったことがありうる。理由がどうあれ、ひとたび患者が少なくとも閾値時間にわたって待合室を離れたことが判別されると、ブロック116において、患者は、たとえば、登録された患者が入力される待ち行列から除去することによって、システムから解放されてもよい。
【0025】
ブロック118において、待合室104内の患者が、本稿に記載される技法を使うモニタリングのために識別されてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、ブロック108~110において得られた登録情報を記憶するデータベースが検索されて、最高の患者緊急度インジケーターをもつ患者または最近モニタリングされていない、測定された最高の指標をもつ患者を同定してもよい。最近というのは、全患者について設定される、または緊急度指標に基づいて(たとえば逆に相関するよう)設定される時間閾値によって判定されてもよい。他の実施形態では、待合室内の複数の患者が、たとえば、待ち時間、待合室における患者の存在(たとえば、みつからない患者は、繰り返し不在であれば解放されるべきであるかどうか判定するために、より頻繁にモニタリングするために選択されてもよい)などといった他の指標に加えてまたはかかる他の指標の代わりに、それぞれの患者緊急度インジケーターによって、患者モニタリング待ち行列においてランク付けされてもよい。さらに他の実施形態では、患者緊急度インジケーターは、患者モニタリング待ち行列をランク付けするときには考慮されなくてもよく、代わりに、患者の待ち時間、患者の存在等の事情のみが考慮されてもよい。
【0026】
しかしながら、そのような患者モニタリング待ち行列はランク付けされ、いくつかの実施形態では、待ち行列における最初の患者が、次にモニタリングされるべき患者として識別されてもよい。患者モニタリング待ち行列が、患者緊急度インジケーターによってランク付けされた物理的メモリ位置のシーケンスにおいて格納されることは要求されない(可能ではあるが)。むしろ、いくつかの実施形態では、ランク付けされた患者モニタリング待ち行列が、単に、各患者に関連付けられたランクまたは優先度レベル値を含むのでもよい。換言すれば、本稿に記載される「患者モニタリング待ち行列」は、必ずしもメモリ位置の連続するシーケンスではなく、患者緊急度インジケーター、待ち時間などに基づいて論理的にランク付けされる「論理的」待ち行列のことであってもよい。ブロック118において、患者は、患者モニタリング待ち行列におけるそれぞれのランク付けの順で、モニタリングのために同定されてもよい。
【0027】
ブロック120において、ブロック118で識別された患者は待合室104において位置特定されてもよい。さまざまな実施形態において、待合室104の中または近くに配備された一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラ(
図1には描かれていない;
図2、
図8および
図9参照)は、待合室104内の患者のさまざまな視覚的特徴をスキャンして、それらの特徴をブロック108における登録の間に捕捉された参照患者画像と照合するよう動作させられてもよい。患者画像の対応する特徴と照合されうる患者の視覚的特徴は、顔、毛髪、衣服、胴体などを含むが、これらに限定されない。
【0028】
他の実施形態では、患者モニタリング待ち行列が確立されなくてもよい。代わりに、バイタルサイン取得カメラは単に、それぞれの視野が待合室304の所定の軌道を通じて動くように、パン、チルトおよび/またはズームするように構成されてもよい。たとえば、バイタルサイン取得カメラは、椅子の列を通じて順次スキャンするように、および/または普通患者がいることが知られている待合室104の諸エリアを通じて順次スキャンするように構成されてもよい。そのような実施形態では、それぞれの顔が捕捉されるにつれて、諸患者記録と突き合わせて照合されて、その顔が対応する患者を識別する。それにより、バイタルが捕捉され、正しい患者または人物に相関付けられることができる。
【0029】
さまざまな実施形態において、システムは、(たとえばブロック108~112に従って)システムに登録されている患者のみをモニタリングすることに限定されなくてもよい。たとえば、待合室にいる患者の同伴者が、同伴者自身は患者として登録されていなかったとしても、注意を要する状態を発達させることがありうる。もう一つの例として、患者が、待合室/登録ステーションが混んでいる、登録することを知らない、登録しないことを選ぶなどの理由で、ブロック108~112を通過せず、単に待合室で座っていることがありうる。そのような未登録の人物/患者を捕捉するために、さまざまな実施形態において、一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラは、人が待っていそうな位置を逐次的に捕捉することによっておよび/またはエリアの広角ビューを実行することによって、モニタリングされるエリア(たとえば待合室104)をスキャンしてもよい。いくつかの実施形態では、ひとたび一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラが人物を捕捉したら、該カメラが捕捉しうる次の人物は隣の人物であってもよい。
【0030】
システムは、その顔の画像/ビデオを捕捉する(または他の識別特徴を捕捉する)ことによって、登録されていない人を検出することがあり、登録された患者のレコードのうちに一致する画像をみつけ損なうことがありうる。そのような場合、システムは、その未知の患者を表わすための新しいレコードを作成し(これはその未登録の患者についての一意的な識別子を生成することを含んでいてもよい)、初期バイタル測定として該レコードに記憶するためのバイタルを捕捉し、そして参照画像として画像/ビデオを記録してもよい(あるいは、参照画像としてのその後の使用のために、可能性としてはよりよいアングルから、一つまたは複数の追加の画像/ビデオを捕捉してもよい)。いくつかのそのような実施形態では、新規レコードは、将来捕捉されるバイタルの解析のために、本稿に記載されるように、少なくとも一つのバイタルについての人口集団ベースラインに関連付けられてもよい。一連のラウンドのバイタルが捕捉されるにつれて、患者固有のベースラインが確立されて、人口集団ベースラインを置換または補足してもよい。その未知の患者についてのアラートまたはその他の情報が(たとえば後述するように)待合室スタッフに対して表示される場合、その情報は、該アラートまたは他の情報が対応している待合室にいる人物を識別する際にスタッフを助けるために、これらの参照画像/ビデオの一つまたは複数と一緒に表示されてもよい。人物がブロック108~112に従って後に登録される場合、新しい情報は、「未知の人物」レコードにマージされてもよい。これは手動で(たとえば、登録情報で補足される既存のレコードをスタッフが手動で選択することによって)または自動的に(たとえば、後で二つのレコードの参照画像を比較し、それらが同じ人物に対応することを判別することによって、またはバイタル捕捉シーケンスの間にその人物を両方のレコードと照合することによって後で困難/曖昧さに遭遇することによって)のいずれでもよい。あるいはまた、未登録の人物がみつかったとき、システムは単に、モニタリングに関してこの人物をスキップしてもよい。
【0031】
ブロック122では、待合室104の中または近くに取り付けられるか、または他の仕方で配備された一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラが、ブロック118において識別され、ブロック120において位置特定された患者からの一つまたは複数の更新されたバイタルサインの邪魔にならない(unobtrusive)(たとえば非接触の)取得を実行するように動作させられてもよい。バイタルサイン取得カメラは、血圧、脈拍(または心拍数)、皮膚の色、呼吸数、PPG、SO2、温度、姿勢、発汗レベルなどを含むが、これらに限定されない、患者からの多様な異なるバイタルサインを(患者に物理的に接触することなく)取得するように構成されてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、バイタルサインを取得するためおよび/または患者から生理情報を抽出するために、いわゆる「非接触方法」を実行するように装備されたバイタルサイン取得カメラが、医療画像装置として使用されてもよい。そのようなカメラの限定しない例は、米国特許出願公開第20140192177A1、20140139656A1、20140148663A1、20140253709A1、20140235976A1および20140275880A1に記載されている。これらはあらゆる目的について参照によってここに組み込まれる。
図7および
図8は、本開示のさまざまな実施形態で使用されうるバイタルサイン取得カメラの二つの限定しない構成を概略的に描いている。
【0033】
いくつかの実施形態では、患者の心拍数または脈拍を決定するための一つの技法は、患者の顔の皮膚色をモニタリングすることでありうる。血流に起因する皮膚の色の微小変化が、バイタルサイン取得カメラによって検出されうる。これらの検出された微小変化を用いて、患者の脈拍数を決定しうる。変動する心拍数の変化による顔の皮膚色の変化は、肉眼では見えないかもしれないが、本稿に記載されるバイタルサイン取得カメラの使用は、皮膚の色の微小変化の検出を許容しうる。
【0034】
本稿に記載されるバイタルサイン取得カメラによって測定可能なもう一つのバイタルサインは、患者の呼吸数である。いくつかの実施形態において、バイタルサイン取得カメラは、患者の胸部および/または腹部エリアにズームインして、患者の胸部または腹部の動きを追跡してもよい。次いで、医療画像装置が、たとえば患者の胸部または横隔膜エリアの動きをモニタリングすることによって、患者の呼吸数を決定してもよい。追加的または代替的に、患者の体温が、サーモグラフィーまたは赤外線画像/ビデオを捕捉するように構成された、本稿に記載されるバイタルサイン取得カメラによって決定されてもよい。
【0035】
ブロック120では、たとえば
図2(後述)に描かれた一つまたは複数のコンポーネントによって、患者の状態が変化したかどうかが、ブロック122で取得された更新されたバイタルサイン(単数または複数)と、以前に取得されたバイタルサイン(たとえば、ブロック110で取得された初期バイタルサイン、またはバイタルサイン取得カメラによって取得された更新されたバイタルサイン/生理パラメータの前の反復)との比較に基づいて判定されてもよい。たとえば、患者の脈拍、呼吸数、血圧、SO2、PPG、体温などが、患者が待っている間に増加または減少したかどうかが判定されてもよい。答えがノーである場合、制御はブロック118に戻ってもよく、新たな患者(たとえば、次に高い患者緊急度インジケーターをもつ患者)が識別されてもよく、制御はブロック120に戻ってもよい。しかしながら、ブロック124における答えがイエスである(すなわち、患者の状態が変化した)場合、制御はブロック126に渡されてもよい。いくつかの実施形態において、患者の状態は、(少なくとも部分的には)モニタリング順序を決定するために使用される同じ緊急度指標によって表わされてもよい。
【0036】
ブロック126では、ブロック124で検出された変化に基づいて医療アラートが正当化されるかどうかが(やはり
図2の一つまたは複数のコンポーネントによって)判定されてもよい。たとえば、一つまたは複数のバイタルサインまたは患者緊急度インジケーターの変化が一つまたは複数の閾値を満たすかどうか(たとえば、血圧がこの特定の患者にとって安全と考えられるレベルを超えて上昇したか?)を決定することができる。答えがイエスである場合、制御はブロック128に渡されてもよい。ブロック128では、たとえば、当直看護師または他の医療人員に対して、患者が悪化しつつあるというアラートが出力されてもよい。いくつかの実施形態では、アラーム(alarm)は、患者をみつける助けとなる情報、たとえばモニタリングされているエリアにおける患者の最後の既知の位置、患者の参照画像、患者の名前などを含むアラート(alert)を含んでいてもよい。悪化が未登録の患者において検出されるいくつかの事例では、未登録の患者の参照画像が、たとえばハイライトとともに提供されてもよく、その未登録だが悪化しつつある患者を医療人員が迅速に位置特定することを許容する。次いで、医療人員は患者をチェックして、患者をただちに入院させたり、または患者を医師に送ったりするなどの是正アクションが正当化されるかどうかを判定してもよい。いくつかの実施形態では、制御はブロック118に戻ってもよい。しかしながら、ブロック126における答えがノーである場合、いくつかの実施形態では、制御はブロック118に戻ってもよい。
【0037】
図2は、さまざまな実施形態に従って、開示された技法を実施するために使用されうる例示的コンポーネントを描いている。病院情報システム240は、病院、医師の診察室などに一般的に見られるタイプのものであってもよい。病院情報システム240は、一つまたは複数のコンピュータ・ネットワーク(図示せず)を介して接続されていてもいなくてもよい一つまたは複数のコンピューティング・システムを用いて実装されてもよい。病院情報システム240は、なかでも、登録モジュール242、トリアージ・モジュール244、解放モジュール246およびアラーム・モジュール248を含んでいてもよい。モジュール242~248または本稿に記載される他の任意のモジュールまたはエンジンのうちの一つまたは複数は、メモリに記憶された命令を実行する一つまたは複数のマイクロプロセッサを含む、ハードウェアおよびソフトウェアの任意の組み合わせを使用して実装されてもよい。たとえば、登録モジュール242は、プロセッサ上で実行される登録に関連して本稿に記載される機能を実装する登録命令を含んでいてもよく、一方、トリアージ・モジュール244は、同じプロセッサ上で実行されるトリアージに関連して本明細書に記載の機能を実装するトリアージ命令を含んでいてもよい。同様の基礎となるハードウェアおよびソフトウェアが、本稿に記載される他の「モジュール」を実施するために使われてもよい。
【0038】
登録モジュール242は、たとえば、当直看護師からの手動入力として、新規患者の登録(registration)情報を受領するように構成されてもよい。これは、たとえば、患者の氏名、年齢、保険情報などを含みうる。トリアージ・モジュール244は、たとえば、当直看護師から手動入力として、またはネットワーク接続された医療設備から直接、上述のようなバイタルサインおよび/または体重、身長、患者の来院理由などといった他の生理データを受領するよう構成されてもよい。さまざまな実施形態において、トリアージ・モジュール244によって受信されるバイタルサインおよび/または患者緊急度インジケーター(たとえば
図1におけるESI)は、登録モジュール242によって受信される対応する患者情報と、たとえば病院情報システム240に関連する一つまたは複数のデータベース(図示せず)において、関連付けられてもよい。
【0039】
アラーム・モジュール248は、患者の悪化などのさまざまなイベントを示す情報を受信し、応答してさまざまなアラーム(alarm)および/またはアラート(alert)を発するように構成されてもよい。これらのアラームおよび/またはアラートは、視覚的出力(たとえば、病院人員に見えるディスプレイ・スクリーン)、インターホン・アナウンス、テキスト・メッセージ、電子メール、オーディオ・アラート、触覚アラート、ページ、ポップアップ・ウインドー、フラッシュライトなどを含むが、これらに限定されない多様なモダリティーを使って出力されうる。病院情報システム240のモジュール242~248は、たとえば、一つまたはコンピュータ・ネットワーク(図示せず)を介して、病院情報システム・インターフェース250(
図2の「H.I.S.インターフェース」)に動作可能に結合されてもよい。
【0040】
病院情報システム・インターフェース250は、伝統的な病院情報システム240と、本開示の選択された諸側面をもって構成された患者モニタリング・システム252との間のインターフェースとして機能しうる。さまざまな実施形態において、病院情報システム・インターフェース250は、たとえば、患者モニタリング・システム252の他のモジュールに対して、患者についてのさまざまな情報を公開してもよい。該情報は、登録情報、患者緊急度インジケーター(たとえばESI)、処方および/または投与された医薬、患者が解放されたかどうか、さまざまなアラーム/アラートなどである。後述するように、いくつかの実施形態では、これらの公開は、イベント公開・申し込み(event publish and subscribe)(「EPS」)モジュール270に提供されてもよく、次いでこのモジュールが、それらを選択的にデータベース272に格納し、および/またはそれらを患者モニタリング・システム252の他のモジュールに選択的に公開してもよい。いくつかの実施形態では、病院情報システム・インターフェース250は、追加的にまたは代替的に、他のモジュールによって提供される一つまたは複数のアラートまたは公開に申し込んでもよい。たとえば、病院情報システム・インターフェース250は、悪化検出モジュール268からのアラートに申し込んでもよい。それによりたとえば、病院情報システム・インターフェース250が、アラーム・モジュール248のような病院情報システム240の適切なコンポーネントに、患者が悪化しつつあることを通知してもよい。
【0041】
患者モニタリング・システム252は、患者が実際の医学的状態に適した仕方でサービスを受けることを確実にするために、待合室104のようなエリアにいる患者のモニタリングを容易にする多様なコンポーネントを含んでもよい。患者モニタリング・システム252は、たとえば、一つまたは複数のカメラ256とインターフェースをもつ患者捕捉モジュール254、患者待ち行列モジュール258、患者位置特定器モジュール260、動的較正モジュール262、顔/胴体取得モジュール264、バイタルサイン測定モジュール266、悪化検出モジュール268、前述のEPSモジュール270および一つまたは複数のデータベース272、274を含みうる。上述のように、モジュール250、254および258~274のそれぞれは、ハードウェアおよびソフトウェアの任意の組み合わせを使って実装されてもよい。また、これらのモジュールは別々に描かれているが、これは限定したり、各モジュールが別々のハードウェアまたはソフトウェアに実装されることを示唆したりすることを意図するものではない。たとえば、一つまたは複数のモジュールが組み合わされたり、および/または省略されたりしてもよく、一つまたは複数のモジュールが、一つまたは複数のコンピュータ・ネットワーク(図示せず)を介して動作可能に接続された一つまたは複数のコンピューティング・システム上に実装されてもよい。
図2のさまざまなコンポーネントを接続する線は、これらのコンポーネントにアクセス可能な通信チャネルを表わしていてもよい。これらの通信チャネルは、一つまたは複数のバス、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、Z-Wave、ZigBee、セルラー通信などのような、いくつもあるネットワーキングまたは他のコンピュータ通信技術を用いて実装されうる。
【0042】
患者モニタリング・システム252は、たとえば、患者からある距離のところから、患者の一つまたは複数のバイタルサインを取得するように構成された一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラ276をも含んでもよい。そのようなバイタルサイン取得カメラの例を上述した。さまざまな実施形態において、バイタルサイン取得カメラ276は、待合室104のようなエリアの種々の部分がその視野内に含まれるようにパン、チルトおよびズームするように動作可能なパン‐チルト‐ズーム(「PTZ」)カメラであってもよい。このようにして、モニタリングされるエリアをスキャンして、種々の患者を位置特定することが可能であり、それにより、更新されたバイタルサインが、邪魔にならないように取得されうる。
【0043】
患者捕捉モジュール254は、一つまたは複数のカメラ256から、患者の捕捉された画像データを担持する一つまたは複数の信号を受領してもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、患者捕捉モジュール254は、カメラ256からビデオ・ストリームを受領してもよい。患者捕捉モジュール254は、患者が存在するときを検出するために、ビデオ・ストリームに対して画像処理(たとえば、顔検出、セグメンテーション、人間の形態を検出するための形状検出など)を実行してもよく、該検出に応答して患者の参照画像を捕捉してもよい。いくつかの実施形態では、参照画像は、ビデオ・ストリームの個々のフレームよりも高い解像度で捕捉されてもよいが、これは必須ではない。いくつかの実施形態では、カメラ256は、ウェブカメラ、PTZカメラ(たとえば276)などといった、待合室前のエリア102の中または近くで配備されるスタンドアローンのカメラであってもよい。カメラ256によって捕捉された一つまたは複数の画像は、その後、患者に関連付けられた参照患者画像として使われ、後に、モニタリングされるエリア内の患者を識別するために使用されてもよい。
【0044】
患者待ち行列モジュール258は、たとえば、データベース内の、モニタリングされるエリア内の患者の優先順位待ち行列を確立および/または維持するように構成されてもよい。さまざまな実施形態において、待ち行列は、さまざまなパラメータによって順序付けられてもよい。いくつかの実施形態において、待ち行列における患者は、患者緊急度インジケーターの順に(すなわち、健康状態に基づく優先順位によって)ランク付けされてもよい。たとえば、最も重篤な患者が待ち行列の先頭近くに位置されてもよく、それほど重篤でない患者は待ち行列の末尾近くに位置されてもよく、あるいは逆でもよい。いくつかの実施形態において、更新されたバイタルサインは、待合室104のようなモニタリングされるエリアで待っている患者から、待ち行列の順序で取得されてもよい。他の実施形態では、更新されたバイタルサインは、FIFOまたはラウンドロビン順に患者から取得されてもよい。他の実施形態では、更新されたバイタルサインは、バイタルサイン取得カメラ276にプログラムされた所定のスキャン軌跡に対応する順序で、諸患者から取得されてもよい(たとえば、椅子の各列を順にスキャンする)。
【0045】
患者位置特定器モジュール260は、患者捕捉モジュール254によって捕捉された一つまたは複数の参照患者画像との関連で、バイタルサイン取得カメラ276から受領された一つまたは複数の信号を使用して、モニタリングされているエリア(たとえば待合室104)における一または複数の患者を位置特定するように構成されてもよい。患者位置特定器モジュール260は、患者のさまざまな視覚的特徴を用いて患者を識別するために、さまざまな画像処理技法を使用してもよい。患者を認識するために使用されうるこれらの視覚的特徴は、顔の特徴、胴体の特徴、衣服、毛髪、姿勢などを含みうるが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの実施形態において、患者位置特定器モジュール260は、更新されたバイタルサインを得るもとになる特定の患者を求めて、モニタリングされるエリアを探索してもよい。たとえば、患者位置特定モジュール260は、患者待ち行列モジュール258によって同定された患者を求めて、モニタリングされるエリアを探索してもよい。患者待ち行列モジュール258によって同定された患者は、たとえば、最高の患者緊急度インジケーターをもつ待ち行列内の患者であってもよい。いくつかの実施形態において、患者位置特定モジュール260は、同定された患者が識別されるまで、バイタルサイン取得カメラ276に、モニタリングされているエリア(たとえば待合室104)をスキャンさせてもよい。
【0047】
動的較正モジュール262は、バイタルサイン取得カメラ276の使用を追跡し、必要に応じてそれらを較正するよう構成されてもよい。たとえば、動的較正モジュール262は、バイタルサイン取得カメラ276が特定のPTZ位置を指すように命令されるときはいつでも、それが常に同じ位置を指すことを確実にすることができる。PTZカメラは、絶えず、または少なくとも頻繁に動いていてもよい。よって、その機械的コンポーネントは、摩耗を受けることがある。小さな機械的誤差/バイアスが累積し、その結果、バイタルサイン取得カメラ276が時間の経過とともに、所与のPTZコマンドに対して異なる仕方で応答をすることがありうる。動的較正モジュール262は、たとえば、ランドマーク(たとえば、壁上の小さなステッカーのような印)を用いて、バイタルサイン取得カメラ276を適切に応答させる補正機構をトレーニングすることができる較正ルーチンを時折実行することによって、これを是正することができる。
【0048】
ひとたび患者待ち行列258から同定された患者が、患者位置特定モジュール260によって認識されると、顔/胴体取得モジュール264は、その視野が患者の所望される部分を捕捉するように、一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラ276をパン、チルトおよび/またはズームするように構成されてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、顔/胴体取得モジュール264は、患者の顔および/または胴体に焦点が合わされるように、バイタルサイン取得カメラ276をパン、チルトまたはズームしてもよい。追加的または代替的に、顔/胴体取得モジュール264は、患者の顔を捕捉するために一つのバイタルサイン取得カメラ276をパン、チルト、またはズームし、患者の胴体を捕捉するために別のバイタルサイン取得カメラ276をパン、チルト、またはズームしてもよい。次いで、さまざまなバイタルサインが取得されうる。たとえば、患者の脈拍、SpO2、呼吸数および血圧などのバイタルサインが、たとえば、バイタルサイン測定モジュール266によって、バイタルサイン取得カメラ276によって捕捉された患者の顔の画像/ビデオに対して画像処理を実行することによって取得されてもよい。患者の呼吸数、全身姿勢(これは疼痛および/または負傷を示すことがある)などといったバイタルサインが、バイタルサイン取得カメラ276によって捕捉された患者の胴体の画像/ビデオに対して画像処理を実行することによって、たとえばバイタルサイン測定モジュール266によって、取得されてもよい。もちろん、顔および胴体は、バイタルサインを得るために検査されうる身体部分の二つの例にすぎず、限定することは意図されていない。
【0049】
悪化検出モジュール268は、一つまたは複数の信号を分析して、登録された患者の状態が悪化、改善および/または安定のままであるかどうかを判定するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、患者の状態は、少なくとも部分的には、モニタリングのための患者の順序を決定するための上述した同じ患者緊急度インジケーターによって表わされてもよい。よって、悪化検出モジュール268は、本稿に記載される一つまたは複数のCDS、症例ベース推論もしくは他の臨床推論アルゴリズム、または、本稿に記載される緊急度指標以外の患者状態指標を評価するための他の臨床推論アルゴリズム(たとえばトレーニングされたロジスティック回帰モデルまたは他の機械学習モデル)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、悪化検出モジュール268によって使用される患者緊急度または患者状態の他の指標を評価するためのアルゴリズムは、たとえば、選択された機械学習モジュールのための新しいトレーニングされた重み(たとえばシータ値)を書くことによって、またはプロセッサによる実行のための新しい命令を(たとえばJava(登録商標)アーカイブ、JAR、ファイルまたはコンパイルされたライブラリの形で)提供することによって、随時更新されてもよい。これらの信号は、たとえば、患者の初期バイタルサインおよび他の生理情報(たとえば、
図1のブロック108~110で得られたもの)、バイタルサイン測定モジュール266によって得られた更新されたバイタルサイン、患者の初期患者緊急度インジケーター(たとえば、トリアージの際に割り当てられる)、および/または患者の更新された患者緊急度インジケーター(たとえばバイタルサイン測定モジュール266から受領される更新されたバイタルサインに基づいて計算される)を含んでいてもよい。これらの信号を使用してなされた判定に基づいて、悪化検出モジュール268は、さまざまなアクションを行なうために、さまざまなアラートをさまざまな他のモジュールに送ってもよい。たとえば、悪化検出モジュール268は、たとえば、EPSモジュール270にアラートを送ることにより、アラートを公開してもよく、それにより、EPSモジュールは、病院情報システム240のアラーム・モジュール248のような申し込んでいるモジュールに対して該アラートを公開することができる。いくつかの実施形態では、そのようなアラートは、たとえば、患者名(またはより一般的には患者識別子)、画像、待合室における患者の最後に検出された位置、ベースラインのバイタルサイン、一つまたは複数の更新されたバイタルサイン、および/または患者緊急度インジケーターの指示を含んでいてもよい。アラートを受信すると、アラーム・モジュール248は、患者の悪化、特に待合室で患者の最後に検出された位置について医療人員に対してアラートまたはアラームを発してもよい。
【0050】
EPSモジュール270は、
図2のさまざまな他のコンポーネントによって発された(released)イベントを分配するように構成された一般的な通信ハブであってもよい。いくつかの実施形態では、
図2に描かれる他のモジュールの全部または少なくともいくつかは、そのモジュールからの結果/決定/計算/判定の何らかの形を示すイベントを生成しうる。これらのイベントは、EPSモジュール270に送られるか、または「公開される」(published)ことができる。
図2に描かれる他のモジュールの全部または一部は、他の任意のモジュールから任意のイベントを受信することを選択する、またはかかるイベントに「申し込む」ことができる。EPSモジュール270は、イベントを受信すると、イベントを示すデータを、そのイベントに申し込んでいるすべてのモジュールに送ってもよい(たとえばそのイベントを転送する)。
【0051】
いくつかの実施形態では、EPSモジュール270は、データベース272および/またはアーカイブ274(これは任意的であってもよい)のような一つまたは複数のデータベースと通信してもよい。いくつかの実施形態では、EPSモジュール270は、一つまたは複数のデータベース272および/または274に記憶された情報へのアクセスを提供する、および/または他のモジュールから受領された情報(たとえばアラート)をデータベース272および/または274に追加するために、任意のモジュールからリモート手続き呼出し(remote procedure call)(「RPC」)を受け入れてもよい。データベース272は、
図2の一つまたは複数の他のモジュールによって送られる/ブロードキャストされる/送信されるアラート、公開または他の通信に含まれる情報を記憶してもよい。いくつかの実施形態では、データベース272は、たとえば、患者に関連する参照画像および/または患者の初期バイタルサイン、更新されたバイタルサイン(バイタルサイン取得カメラ276によって取得される)および/または患者緊急度インジケーターを記憶してもよい。任意的なアーカイブ274は、いくつかの実施形態では、同じまたは類似の情報をより長い期間にわたって記憶してもよい。
【0052】
さまざまなハードウェア構成が、患者モニタリング・システム252を実装するために利用されうることは明白であろう。たとえば、いくつかの実施形態では、単一の装置が、システム252全体を実装してもよい(たとえば、単一のサーバーがカメラ276を動作させてバイタル取得機能260~266を実行し、悪化検出モジュール268および患者待ち行列モジュール258を含むバイタル解析およびアラート機能を実行する)。他の実施形態では、複数の独立した装置がシステム252を形成してもよい。たとえば、第一の装置がカメラ276を駆動し、機能260~266を実装してもよく、一方、別のサーバーが残りの機能を実行してもよい。いくつかのそのような実施形態では、ある装置は待合室にローカルであってもよく、別の装置は遠隔であってもよい(たとえば、地理的に遠隔なクラウド・コンピューティング・アーキテクチャーにおける仮想マシンとして実装される)。いくつかの実施形態では、装置(たとえばプロセッサおよびメモリを含む)がカメラ276自体の内部に配置されてもよく、よって、カメラ276は、単に単能周辺機器ではなくてもよく、バイタルサイン機能260~266を実行してもよい。いくつかのそのような実施形態では、別のサーバーは、さらなる処理のためにバイタルが返されることを要求するために、カメラ276に指示(たとえば、識別子、フル・レコード、または登録された顔画像)を提供してもよい。いくつかのそのような実施形態では、追加的な機能がカメラ276に搭載されてもよく、たとえば、悪化検出268(またはそのための前処理)および/または患者待ち行列258の管理がカメラ276上で実行されてもよい。いくつかの実施形態では、カメラ276が、HISインターフェース250またはEPS 270までも実装してもよい。さまざまな追加的な構成が明白であろう。
【0053】
図3は、開示される技法が待合室304内の複数の患者378A~378Cをモニタリングするために実装されうる例示的シナリオを示す。この例では、三人の患者378A~378Cは、医療人員380の診療を受けるために病院待合室304で待っている。二つのビデオ・カメラ376A、376Bが、待合室304の表面(たとえば、天井、壁)に取り付けられる。二つのビデオ・カメラ376A、376Bは、待合室304内の患者378をモニタリングするために使用されてもよい。患者378A~378Cはそれぞれ、予備的な患者状態分析に基づいてトリアージ医療人員(図示せず)により、患者緊急度インジケーターを割り当てられていてもよい。患者378が診療する医師を待つ間、二つのビデオ・カメラ376A、376Bが、患者の悪化を検出するために、上述のように患者378をモニタリングしてもよい。いくつかの実施形態では、患者に関連付けられた患者緊急度インジケーターが、患者が悪化したことが患者モニタリング・システム(より具体的には、悪化検出モジュール268)によって検出されたことに応答して、医療人員によって更新されてもよい。患者待ち行列は、新たな患者が待合室304にはいるたびに、たとえば患者待ち行列モジュール258によって自動的に更新されてもよい。追加的または代替的に、医療人員が、トリアージ後に新たに到着した患者を含めるよう、患者待ち行列を手動で更新してもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、バイタルサイン取得カメラ376は、患者378を、荒いまたは不規則な呼吸などの異常な呼吸パターンについて解析してもよい。呼吸困難を経験している患者をも描く非常に蒼白な皮膚色をもつ患者の画像またはビデオが、たとえば病院情報システム240によって記憶された患者の参照画像と比較されて、患者が心臓発作を経験していることを判定してもよい。そのようなシナリオでは、たとえばテキスト・メッセージ、インターホン・アナウンス、ディスプレイ画面上の出力などによって、アラートがすぐに医療人員に送られてもよい。
【0055】
図3において、第一の患者378Aは血液および尿検査の結果を待つ学生であり、第二の患者378Bはスポーツ負傷の治療を受けるのを待っており、第三の患者378Cはいくつかの胃痛に関して医師の診察を受ける必要があるとする。四人目の患者378Dが、何らかの軽度の呼吸困難のために前から医師の診察を待っていたが、ビデオ・カメラ376A、376Bによって、緊急ケアを正当化するいくつかの症状を示すことが検出されたとする。四人目の患者378Dの悪化を医療人員に通知するために、音声または視覚的警告のようなアラートが発されてもよい。アラートを受信すると、ケア提供者は患者378Dの状態を確認しに行く。結果として、救急人員380が第四の患者378Dを救急室384に連れて行ってもよく、患者はそこで必要な処置を受ける。ひとたび第四の患者378Dが救急室384に搬送されると、いまだ待合室304で順番を待っている患者378A~378Cのみがモニタリングされるよう、患者モニタリング待ち行列が更新されてもよい。
【0056】
本稿に記載される技法は、病院の待合室に限定されない。本稿に記載される技法が実装されて多様な技術的利点を達成しうる他の多くのシナリオがある。たとえば、開示された技法は、空港、アリーナおよび他の公共の場所における群衆のセキュリティー・モニタリングのためにも使用されうる。そのようなシナリオでは、患者緊急度インジケーターを決定するために患者をモニタリングするのではなく、リスク測定のような他の型の測定のために個人がモニタリングされてもよい。
【0057】
もう一つの例として、
図4は、開示される技法がジムにおいてどのように実装されうるかを描いている。二つのバイタルサイン取得カメラ476A、476Bは、たとえば運動家478A~478Bをモニタリングするために使用されることができるように、ジム内の各運動家をモニタリングするために要求されるあらゆる角度をカバーするように戦略的に位置される。トレーニング・インストラクター486(たとえば、コーチ、フィットネス・インストラクターまたは理学療法士)は、まず、たとえば、運動家の以前の身体負傷に起因するストレッチ中にその特定の運動家が痛みを感じるかどうかを判定することによって、運動家478の身体状態を評価してもよい。第一の運動家478Aが評価に合格すると、トレーニング・インストラクター486は、第一の運動家478Aに標準的なトレーニング・レジメンを開始するよう指示してもよい。この例では、第一の運動家478Aが、割り当てられたトレーニング・レジメン――たとえばトレッドミルを使用するもの――を実行するとき、心拍数、呼吸数および体温などのそのバイタルサインが、バイタルサイン取得カメラ476A、476Bによって連続的/定期的にモニタリングされてもよく、それによりたとえば、第一の運動家478Aが運動しすぎているかどうかを判定しうる。
【0058】
いくつかの実施形態において、モニタリング・プロセスの開始時に、たとえば、第一の運動家478Aが運動のためにジムにはいるとき、二つのバイタルサイン取得カメラ476のうちの一つが、たとえば、以前に(たとえば、第一の運動家478がジムに入会し、写真IDを受け取ったときに)捕捉された参照画像に基づいて、第一の運動家478Aを識別することができる。バイタルサイン取得カメラ476Aは、心拍数を取得するために第一の運動家478Aの顔エリアにズームインし、次いで、呼吸数を取得するために第一の運動家478Aの胸部領域にズームインしてもよい。取得されたバイタルサインは、バイタルサイン取得カメラ476Aによって、さらなる解析のためにコンピューティング装置(図示せず;患者モニタリング・システム252の一つまたは複数のコンポーネント)に送信されてもよく、データベース(たとえば272、274)に記憶されてもよい。取得されたバイタルサインが一定の閾値レベルを超える場合、超えられた閾値についてトレーニング・インストラクター486にアラートするための通知が(たとえば、可聴信号または視覚的アラートの形で)生成されてもよい。いくつかの実施形態では、コンピューティング装置は、ストレッチングおよびトレーニング・セッション間の十分な休息のような、第一の運動家478Aによって実行されるべき特定の段階を勧告してもよい。他の運動家、たとえば第二の運動家478Bに対しても、それぞれの健康状態に応じて同様の技法が適用されてもよい。いくつかの実施形態では、負傷の徴候をモニタリングするよりもむしろ、本稿に記載される技法は、ジムまたは同様の場面において、燃焼カロリーまたは他の生理メトリックを追跡するために使われてもよい。これは、バイタルサイン取得カメラ476によって経時的に追跡される、たとえば運動家の動き、体重、温度、脈拍、呼吸数などに基づく。
図2のシステムをこの設定に適合させるために、悪化検出モジュール268は単に、利用可能なパラメータからカロリー燃焼(または他のメトリック)を導出するためのアルゴリズムを設けられてもよい。いくつかの実施形態では、システムは、たとえば、室内の各人の燃焼カロリーまたは他のメトリックを示す室内の人々に見えるディスプレイのような競争的コンポーネントを含んでいてもよく、表示は可能性としては、燃焼カロリーの高い順または観察された他のメトリックのよい順にランク付けされてもよい。
【0059】
図5は、待合室、ジムなどのエリアにおける患者などの複数の個人をモニタリングするための例示的な方法500を示す。便宜上、方法500の動作のいくつかは、動作を実行するシステムを参照して記述される。このシステムは、さまざまなコンピュータ・システムのさまざまなコンポーネントを含んでいてもよい。たとえば、いくつかの動作は、患者モニタリング・システム252の一つまたは複数のコンポーネントによって実行されてもよい。さらに、方法500の動作は特定の順序で示されるが、これは限定することは意図されていない。一つまたは複数の動作が並べ替え、省略または追加されてもよい。
【0060】
ブロック502では、上述のバイタルサイン取得カメラ(これは上述のように、パン、チルトおよび/またはズームによって調節可能な視野を有していてもよい)の視野において捕捉されることができる待合室などのエリアに位置する複数の個人(たとえば、患者、運動家、ナーシングホームの居住者など)について、(たとえばトリアージ時に)たとえば医療人員から、個々の健康指数(たとえば、患者緊急度インジケーター、運動強度指標、ESIなど)が受領されてもよい。たとえば、さまざまな実施形態において、モニタリングされる領域にはいる前に、一つまたは複数の初期バイタルサインが、たとえばトリアージ看護師またはトレーナーによって、各個人から取得されてもよい。これらの初期のバイタルサインに基づいて、ブロック502において、エリア内の各個人について、たとえば医療人員によって、個々の健康指数が決定されてもよい。
【0061】
ブロック504では、システムは、エリア内の個人の待ち行列(たとえば患者待ち行列)を確立(またはすでに存在する場合は更新)してもよい。さまざまな実施形態において、待ち行列は、少なくとも部分的にはブロック502で決定された個々の健康指数に基づいて、順序付けおよび/またはランク付けされてもよい。追加的または代替的に、いくつかの実施形態では、待ち行列は、各患者が到着した時刻、各患者がどのくらい長く待っているか、などを含むがこれらに限定されない他のデータ・ポイントに基づいて順序付けられてもよい。いくつかの実施形態では、フローがブロック512または514から戻るとき、ブロック504は、最も最近モニタリングされた患者を待ち行列に戻す(あるいは他の仕方でその患者のための新規エントリーを待ち行列に入れる)ことを含んでいてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、その患者は単に待ち行列の末尾に配置されてもよい。他の実施形態では、ブロック504は、患者緊急度インジケーター、悪化指標、バイタルまたは他の情報を考慮に入れて、たとえばその患者を、より高い緊急度指標をもつどの患者よりも後でありかつ、より低い緊急度指標をもつどの患者よりも前である位置に配置する。他の実施形態では、より複雑な規則が用いられてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、患者は、上記のように待ち行列に戻されるが、待ち行列の先頭から五番目(または他の一定値)より高順位にはされなくてもよい。同じ(最も高い緊急度の)患者が繰り返しモニタリングされるが、他の患者のモニタリングを許容しない(他の患者が決して待ち行列の先頭に達しないため)ことを防ぐ助けとするためである。あるいはまた、一定の最高位置ではなく、最高位置は、待ち行列の現在の内容に基づいて決定されてもよい。たとえば、最高位置は、事前設定された閾値を超える患者緊急度インジケーターをもつ患者として特定される「高い緊急度」の患者の数(または定数にその数を加えたもの)に等しくなるよう設定されてもよい。いくつかの実施形態では、そのような高い緊急度の諸患者は、(本稿に記載される方法のいずれかに従って)待ち行列における中間的な点に配置されてもよく、一方、他の患者は待ち行列の末尾に配置されてもよい。他の実施形態では、その患者は、待ち行列における、より高い緊急度指標をもつ患者の数に1を加えたものに等しい先頭からの順位のところに配置されてもよい。少なくとも若干数の、より低い緊急度の患者が、現在の患者より先にモニタリングされることを許容するためである。いくつかの実施形態では、緊急度指標値(またはその範囲)は、測定間の、たとえば待ち行列位置の数でまたは実時間で測ったその後の測定の間の遅延に関連付けられていてもよく、かかる遅延がその後、患者が配置される待ち行列の位置に変換されてもよい。いくつかの実施形態では、患者緊急度インジケーター(または待ち行列位置配置を駆動する他の値)は、その患者が最後にモニタリングされて以来経過した時間を考慮に入れてもよい;よって、患者が待ち行列にいる間、その緊急度指標(または他の待ち行列位置を決定する値)は一般に増大し、待ち行列において他の患者がその患者より前に配置されにくくしてもよい。いくつかのそのような実施形態では、「待ち行列優先度値(queue priority value)」が、患者緊急度インジケーターに適用された上記のような仕方で利用されてもよいが、患者緊急度インジケーターに、その患者が最後にモニタリングされて以降の時間を加えたもの(またはこれら二つまたはさらなる値の何らかの重み付けされた和)に等しくてもよい。
【0062】
ブロック506では、システムは、更新されたバイタルサインが取得されるべき所与の個人を選択してもよい。たとえば、システムは、ブロック504で確立された待ち行列の先頭から患者を選択してもよく、あるいは患者緊急度インジケーターが最も高い患者を選択してもよい(これは、多くの実施形態において、待ち行列における最初の患者でありうる)。他の実施形態では、システムは、FIFOおよび/またはラウンドロビンを使用するなど、異なる順序で個人を選択してもよい。
【0063】
ブロック508では、ブロック506で選択された個人は、たとえば、その個人の一つまたは複数の参照画像に基づいて、一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラ276によって、モニタリングされるエリア内で位置特定されてもよい。上述のように、顔の特徴、姿勢、衣服、サイズなどを含むがこれらに限定されない、個人のさまざまな視覚的特徴が、位置特定のために使用されうる。ブロック510では、一つまたは複数のバイタルサイン取得カメラ276は、ブロック506で選択され、ブロック508で位置特定された個人から、一つまたは複数の更新されたバイタルサインを邪魔にならないように取得してもよい。さまざまな実施形態において、個人は、たとえば、トリアージ看護師または他の人員に通知することにより、邪魔にならない取得からオプトアウトしてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、ブロック512において、ブロック506で選択され、ブロック508で識別された個人における悪化が、ブロック510で取得された更新されたバイタルサインと、所与の患者に関連付けられた個々の健康指数(たとえばブロック502で決定された)または所与の患者から取得された初期バイタルサイン(または患者モニタリング・システム252の以前の反復の際に取得された更新されたバイタルサイン)のうちの少なくとも一方とに基づいて検出されてもよい。たとえば初期バイタルサインと更新バイタルサインとの間の差が閾値を満たすことに起因して悪化が検出される場合、方法500は、ブロック514に進んでもよい。ブロック514では、テキスト・メッセージ、インターホン・アナウンス、視覚的出力、オーディオ出力、触覚フィードバックなどを含むがこれらに限定されないさまざまなモダリティーの出力が、前記の差について関係する人員にアラートするために、たとえば患者の悪化について当直看護師に通知するために、提供されてもよい。いくつかの実施形態では、たとえば、医療人員は、(たとえば、医療人員が待合室で誰を探すかを知るように)悪化している患者の最も最近に捕捉された画像または待合室における悪化している患者のライブ・ストリーミング・ビデオを表示することによって、患者の悪化についてアラートされてもよい。方法500がブロック512の後にブロック514に進むか否かにかかわりなく、方法500は、ブロック504に戻って、待ち行列を更新し、たとえば、次に高い患者緊急度インジケーターをもつ患者がモニタリングされうるように待ち行列を再順序付けしてもよい。
【0065】
本稿に記載される例は、バイタルサインの非接触収集を実行するように構成されたカメラのようなバイタルサイン取得カメラに主として関わるものであったが、これは限定することは意図されていない。さまざまな実施形態において、他の型のセンサーがバイタルサイン取得カメラに組み込まれ、および/または患者のバイタルサインを検出するために別個に配備されてもよい。たとえば、モーション・センサーが、たとえば、患者が発作を起こしていることに起因する動きのような待合室における患者の異常な動きを検出するために使われてもよい。赤外線、光学、マイクロ波、超音波、音響、または断層撮影に基づくセンサー、ならびに在室センサーのカテゴリーに該当するセンサーを含むがこれらに限定されない、さまざまな型のモーション・センサーを使用することができる。モーション・センサーは、受動的および/または動的でありうる。受動的赤外線センサーは、たとえば、動く物体によって放射される赤外線放射を検出するよう設計された焦電センサーによって熱移動を検出する。これに対して、超音波センサーは、ドップラー・シフトの原理を利用してもよい。超音波センサーは、モニタリングされる領域において高周波音波を送信し、反射波パターンを検出してもよい。マイクロ波センサーは、音波ではなく高周波のマイクロ波を送信しうる点を除いて、同様の仕方で機能しうる。
【0066】
図6は、例示的なコンピュータ・システム610のブロック図である。コンピュータ・システム610は、典型的には、バス・サブシステム612を介して多数の周辺装置と通信する少なくとも一つのプロセッサ614を含む。本稿で使用されるところでは、用語「プロセッサ」は、たとえばマイクロプロセッサ、FPGA、ASIC、他の同様のデバイスおよびそれらの組み合わせなどの、本稿に記載されるCDSシステムに帰せられるさまざまな機能を実行することができるさまざまなデバイスを包含するものと理解されるであろう。これらの周辺装置は、たとえばメモリ・サブシステム625およびファイル記憶サブシステム626を含むデータ保持サブシステム624と、ユーザー・インターフェース出力装置620と、ユーザー・インターフェース入力装置622と、ネットワーク・インターフェース・サブシステム616とを含んでいてもよい。入出力装置は、コンピュータ・システム610とのユーザー対話を許容する。ネットワーク・インターフェース・サブシステム616は、外部ネットワークへのインターフェースを提供し、他のコンピュータ・システム内の対応するインターフェース・デバイスに結合される。
【0067】
ユーザー・インターフェース入力装置622は、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドまたはグラフィックス・タブレットのようなポインティングデバイス、スキャナ、ディスプレイに組み込まれたタッチスクリーン、音声認識システム、マイクロフォンおよび/または他の型の入力装置などのオーディオ入力装置を含んでいてもよい。一般に、用語「入力装置」の使用は、コンピュータ・システム610または通信ネットワーク上に情報を入力するための可能なあらゆる型の装置および方法を含むことが意図されている。
【0068】
ユーザー・インターフェース出力装置620は、ディスプレイ・サブシステム、プリンター、ファクシミリ機またはオーディオ出力装置のような非視覚的ディスプレイを含むことができる。表示サブシステムは、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)のようなフラットパネル装置、投影装置または可視画像を生成するための他の何らかの機構を含みうる。前記ディスプレイ・サブシステムはまた、オーディオ出力装置を介してなど、非視覚的ディスプレイをも設けてもよい。一般に、「出力装置」という用語の使用は、コンピュータ・システム610からユーザーまたは別の機械もしくはコンピュータ・システムに情報を出力するためのあらゆる可能な型の装置および方法を含むことが意図されている。
【0069】
データ保持システム624は、本稿に記載されるモジュールの一部または全部のモジュールの機能を提供するプログラミングおよびデータ構造体を記憶する。たとえば、データ保持システム624は、方法500の選択された諸側面を実行する、および/または患者モニタリング・システム252の一つまたは複数のコンポーネントを実装する論理を含んでいてもよい。
【0070】
これらのソフトウェア・モジュールは、一般に、プロセッサ614単独によって、または他のプロセッサとの組み合わせで、実行される。記憶サブシステムにおいて使用されるメモリ625は、プログラム実行中に命令およびデータを記憶するためのメイン・ランダムアクセスメモリ(RAM)630、固定した命令が記憶されるリードオンリーメモリ(ROM)632および命令/データ・キャッシュ(追加的または代替的に少なくとも一つのプロセッサ614と一体であってもよい)のような他の型のメモリを含むいくつかのメモリを含むことができる。ファイル記憶サブシステム626は、プログラムおよびデータ・ファイルのための持続的記憶装置を提供することができ、ハードディスクドライブ、関連のリムーバブル媒体と一緒のフロッピーディスクドライブ、CD-ROMドライブ、光学式ドライブまたはリムーバブル媒体カートリッジを含んでいてもよい。ある種の実装の機能を実装するモジュールは、ファイル記憶サブシステム626によってデータ保持システム624に、またはプロセッサ614によってアクセス可能な他のマシンに記憶されてもよい。本稿で使用されるところの用語「非一時的なコンピュータ読取り可能媒体」は、揮発性メモリ(たとえばDRAMおよびSRAM)および不揮発性メモリ(たとえばフラッシュメモリ、磁気記憶装置および光学式記憶装置)の両方を包含するが、一時的な信号を除外することが理解されるであろう。
【0071】
バス・サブシステム612は、コンピュータ・システム610のさまざまなコンポーネントおよびサブシステムが意図したように互いと通信するようにする機構を提供する。バス・サブシステム612は、単一のバスとして概略的に示されているが、バス・サブシステムの代替的な実装は複数のバスを使用してもよい。
【0072】
コンピュータ・システム610は、ワークステーション、サーバー、計算クラスター、ブレードサーバー、サーバーファームまたは他の任意のデータ処理システムもしくはコンピューティング装置を含むさまざまな型であることができる。いくつかの実施形態では、コンピュータ・システム610は、クラウド・コンピューティング環境内に実装されてもよい。コンピュータおよびネットワークの絶えず変化する性質のため、
図6に描かれるコンピュータ・システム610の記述は、いくつかの実装を例解するための特定の例としてのみ意図される。
図6に描かれるコンピュータ・システムよりも多数または少数のコンポーネントを有する、コンピュータ・システム610の他の多くの構成が可能である。
【0073】
図7は、本稿に記載されるさまざまな実施形態で使用されうるバイタルサイン取得カメラ776の第一の実施形態の概略図を示す。電磁放射782、特に可視波長および赤外波長範囲の光が、患者などの生体784から反射され、前記カメラ776によって受信され、評価されて、生体784の生体計測信号798を生成する。カメラ776は、実質的に550nmまで、および/または約600nmまで、および/または650nmまでの波長範囲で、入射電磁放射782内の入射可視光をブロックするためのフィルタ786を含んでいてもよい。次いで、フィルタリングされた入射光788は、少なくとも二つの異なる色信号792
A、792
Bを生成する色センサー790によって、たとえば二つの別個の色検出器793、794(またはそのような色検出器のアレイ)の使用によって、検知される。結合ユニット795は、たとえば線形結合によって、前記色信号792
A、792
Bを組み合わせることによって、少なくとも一つの結合色信号796を生成する。最後に、処理ユニット797が、前記結合色信号796を処理し、生体784の少なくとも一つの生体計測信号798を抽出するために設けられる。結合ユニット795および処理ユニット797は、いくつかの実施形態では、共通のプロセッサ799によって、たとえばプロセッサの処理要素として実現されてもよく、あるいは従来のプロセッサ上のソフトウェアにおいて実装されてもよい。しかしながら、それらは異なる仕方で、たとえば専用のハードウェア要素として実現されてもよい。
【0074】
図8は、本稿に記載されるさまざまな実施形態で使用され得るカメラ876’の第二の実施形態を概略的に示す。
図8は、任意的に、(このおよび/または他の実施形態において)追加的なフィルタ886’が設けられてもよいことを示している。フィルタ886’は、色センサー890に到達する前に、少なくとも1100nmより上、特に少なくとも1000nmより上の波長範囲内の入射光をブロックするように構成される。一般に、これらの色センサー、たとえばイメージング・シリコン・センサーは、より長い波長に向かって自然に減少する感度を示すが、そのような追加的なフィルタ886’は、上述の上限閾値波長よりも上のフィルタリングされる入射光888内の信号寄与がブロックされる、すなわち、水吸収が支配的になる信号寄与が、二回フィルタリングされた入射光888’内ではブロックされることを保証し得る。
【0075】
さらに、この実施形態では、色センサー890は、たとえば、光検出器895(より一般にはイメージセンサー)の前に設けられた三つの異なる色フィルタ領域を有する色フィルタ・アレイ893の使用によって、三つの異なる色信号892
A、892
B、892
Cを生成する。そのような色センサー(たとえば、二つの色フィルタ領域のみを有する色フィルタ・アレイを含む)は、
図7に示される実施形態においても使用されることができる。いくつかの実施形態では、色センサー890は、RGB色センサーによって従来から提供されるような、赤色信号892
A、緑色信号892
Bおよび青色信号892
Cを生成する色フィルタ・アレイを含んでもよい。これら三つの色信号892
A、892
B、892
Cから、結合ユニット895は、前記三つの色信号892
A、892
B、892
Cのうちの少なくとも二つの色信号の二つの異なる組み合わせ、特に線形結合を作ることによって、二つの組み合わされた色信号896
A、896
Bを生成する。これら二つの組み合わされた色信号896
A、896
Bから、処理ユニットは、次いで、最終的に、生体884からの所望の生体計測信号898を抽出する。
【0076】
上記のように、
図1のブロック124~126ならびに
図5のブロック512において、患者の状態が有意に変化した、たとえば悪化したかどうかが判定されてもよい。
図9は、医療人員にアラートを発することを正当化するのに十分に患者の状態が悪化したかどうかを判定するための、悪化検出モジュール268のようなコンポーネントによって実行されうるある例示的な方法900を描いている。ブロック902では、悪化検出モジュール268はイベントを待って、処理する。そのようなイベントの限定しない例は
図10に描かれており、患者モニタリング・システム252の他のコンポーネントから、たとえばEPSモジュール270を介して受領されうる。たとえば、いくつかの実施形態では、悪化検出モジュール268は(たとえばEPSモジュール270を介して)バイタルサイン測定イベント(測定されたバイタルサイン、患者識別子などを含む)をバイタルサイン測定モジュール266から受領してもよい。
【0077】
悪化検出モジュール268がバイタルサイン測定イベントを受領するとき、方法900はブロック904に進んでもよく、その時点で、悪化検出モジュール268が、たとえばバイタルサイン測定モジュール266から受領されたその患者についての更新されたバイタルサインに基づいて、その患者の状態が、アラームを発することを正当化するのに十分悪化したかどうかを判定してもよい。答えがイエスであれば、方法900はブロック906に進んでもよく、その時点で、患者の悪化について、医療アラートが医療人員に発されてもよい(
図5のブロック514と同様)。しかしながら、ブロック904における答えがノーであれば、方法900はブロック902に戻ってもよく、その時点で悪化検出モジュール268はさらなるイベントを待ってもよい。
【0078】
図10は、ブロック902において扱われてもよいイベント1020
1-Nおよびブロック904の一部として実行されうる対応するそれぞれのアクション1022
1-Nの限定しない例を描いている。イベント1020
1-Nは別個で相異なるものとして描かれているが、そのことはこれらのイベントが異なる時点において生起しなければならないことを意味すると理解されるべきではない。実際、複数のイベントが同時に生起することが可能であり、その可能性が高いとさえいえる。たとえば、バイタルサイン取得カメラ276が特定の患者にフォーカスされている間に二つ以上のバイタルサインを取得するときがそうである。
【0079】
脈拍数イベント1020
1はたとえば、バイタルサイン取得カメラ276が患者から更新された脈拍数を邪魔にならないように取得することに応答して、バイタルサイン測定モジュール266によって発されてもよい。上記のように、いくつかの実施形態では、バイタルサイン測定モジュール266は、患者の更新された脈拍数を(たとえば患者識別子のような他の情報とともに)EPSモジュール270に提供(または「公開」)してもよい。すると、EPSモジュール270はそのイベントを、悪化検出モジュール268のような患者モニタリング・システム252の申し込んでいるモジュールに提供(または「公開」)してもよい。
図10に描かれた他のイベントに関しても同じプロセスをたどってもよい。脈拍数イベント1020
1に応答して、さまざまな実施形態において、悪化検出モジュール268はブロック1022
1において、患者の更新された脈拍数に基づいて患者の悪化を評価してもよい。悪化検出モジュール268がどのように悪化を評価しうるかの例は
図11に描かれている。
【0080】
呼吸数イベント1020
2はたとえば、バイタルサイン取得カメラ276が患者から更新された呼吸数を邪魔にならないように取得することに応答して、バイタルサイン測定モジュール266によって発されてもよい。呼吸数イベント1020
2に応答して、さまざまな実施形態において、悪化検出モジュール268はブロック1022
2において、患者の更新された呼吸数に基づいて患者の悪化を評価してもよい。
図10に示されるように、バイタルサイン取得カメラ276が他の更新されたバイタルサイン測定を邪魔にならないように取得することに応答して、同様のイベントがバイタルサイン測定モジュール266によって発されてもよく、同様の悪化評価につながってもよい。それぞれの更新されたバイタルサイン測定値は、バイタルサインを与えられたときに理にかなった仕方で評価されうる。たとえば、後述するように、いくつかのバイタルサインについては、更新されたバイタルサイン測定値が正常性に向かう傾向を実証している(たとえばベースライン脈拍数測定値は高かったが、バイタルサイン取得カメラ276によって取得されたその後の測定値はより「正常」に見える)場合、悪化は検出されなくてもよい。
【0081】
図11は、たとえば悪化検出モジュール268によってまたは患者モニタリング・システム252の別のコンポーネントによって実行されうる、脈拍数を使って悪化を評価する例示的方法1110を描いている(
図10のブロック1022
1)。方法1110は、たとえば、画像取得カメラ276が目標とされる患者から更新された脈拍数を取得する際に、実行されてもよい。方法1110の特定の動作が特定の順序で描かれているが、これは限定することは意図されていない。さまざまな実施形態において、さまざまな動作が追加、省略または順序変更されてもよい。
【0082】
ブロック1102では、一つまたは複数の調整された更新されたバイタルサイン(この場合は脈拍数)が、たとえばバイタルサイン取得カメラ(単数または複数)276によって自動的に(または医療人員によって手動で)取得された更新されたバイタルサインに基づいて生成されてもよい。これらの調整された更新されたバイタルサインは、患者が服用する薬物、性別、年齢、サイズなどを含むがそれに限られない、関連しうるさまざまな患者情報を考慮に入れてもよい。そのような患者情報がバイタルサインに対してもちうる効果は、医療人員によって設定されてもよく、および/または自動的に調整されてもよい。これはたとえば経験的な証拠、一つまたは複数の機械学習モデルなどに基づいていてもよい。
【0083】
たとえば、ベータ遮断薬を服用する患者は、人口集団平均よりも約15拍毎分(「bpm」)遅い脈拍数をもちうる。よって、ブロック1104において、たとえば、患者EMRおよび/またはたとえばデータベース272に含まれる登録/トリアージ時に患者から得られた情報から、患者が現在ベータ遮断薬を服用しているかどうかが判定されてもよい。答えがイエスであれば、上記事実を考慮に入れるために、測定された脈拍数は、ブロック1106において、たとえば15拍毎分だけ増大させられてもよい。もちろん、患者が服用するベータ遮断薬の用量、患者のサイズ、患者の健康状態などに依存して、他の調整が可能である。さらに、ベータ遮断薬使用の結果として適用されるいかなる増大/減少が選択されてもよく、たとえば医療人員によっておよび/または自動的に調整されてもよく、たとえば経験的な証拠、機械学習技法などに基づいていてもよい。
【0084】
ブロック1108および1112では、たとえば、EMRおよび/またはたとえばデータベース272に含まれる登録/トリアージ情報を使って、患者が男性か女性かが判定されてもよい。患者が女性であれば、脈拍数は、ブロック1110において、たとえば2拍毎分だけ増大させられてもよい。これは、一般に女性が男性よりもやや低い脈拍数をもつという事実を考慮に入れうる。次いで、方法1110はブロック1116に進んでもよい。同様に、ブロック1112において患者が男性であると判定される場合に、脈拍数がたとえば2拍毎分だけ減少させられてもよく、次いで方法1110はブロック1116に進んでもよい。もちろん、2拍毎分という増大または減少は単に例解目的のためであり、値のいかなる増大/減少が選択されてもよく、たとえば医療人員によって調整されおよび/または自動的に設定されてもよく、たとえば経験的な証拠、機械学習技法などに基づいていてもよい。
【0085】
ブロック1116では、脈拍数スコアがたとえばテーブルから患者に割り当てられてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、下記の表1のようなルックアップテーブルが、患者の脈拍数スコアをその調整された脈拍数(「PR」)に基づいて決定するために参照されてもよい。この特定の例では、上の行は調整された脈拍数の範囲を表わし、下の行は対応する脈拍数スコアを表わす。
【表1】
これらの値/範囲および/または対応するスコアは限定することは意図されていない。むしろ、これらは脈拍数スコアを割り当てるためにさまざまな脈拍範囲がどのように使用されうるかの一例をなす。当業者は、他の範囲/スコアが、たとえば医療人員によって手動で、または機械学習アルゴリズム(たとえばニューラルネットワーク)などといったさまざまな技法を使って自動的に選択されうることを理解するであろう。たとえば、より粒度の細かいテーブルが、たとえばデータマイニングおよび/または専門家の意見に基づいて確立されてもよい。場合によっては、そのようなテーブルが十分に粒度が細かくなる場合、患者の悪化が有意である条件を満たすかどうかを判定する動作(後述するブロック1122)はなくされてもよい。
【0086】
追加的または代替的に、いくつかの実施形態では、患者のさまざまな属性(たとえば他のバイタルサイン、人口学的データなど)が患者の測定された脈拍数と関連して、たとえば出力として患者に「ラベル」を与えるよう構成された一つまたは複数の機械学習アルゴリズム/モデル/分類器のための入力として使われてもよい。場合によっては、出力「ラベル」はたとえば脈拍数スコアであってもよい。より一般には、さまざまな実施形態において、特徴ベクトルが、既知の帰結(たとえば「悪化している」「安定」「悪化していない」など)をもつ複数の患者について生成されてもよく、いくつかの事例では、既知の帰結でラベル付けされてもよい。次いで、これらの特徴ベクトルは機械学習モデル(たとえばニューラルネットワーク)のためのトレーニング・データとして使用されてもよい。次いで、その後の患者情報および/または関連付けられたバイタルサイン(いずれも以前に取得され、更新されたもの)が、機械学習モデルのための入力として使われる新たな特徴ベクトルを構築するために使われてもよい。機械学習モデルの出力は、その後の患者に関連付けられたラベル、たとえば「悪化している」「安定」「悪化していない」などを含んでいてもよい。
【0087】
さらに他の実施形態では、患者の測定された脈拍数(またはより一般には、患者の更新されたバイタルサイン測定値)を性別/ベータ遮断薬/サイズ/年齢などに基づいて調整するのではなく、異なる特性をもつ患者について異なるテーブルが選択されてもよい。たとえば、男性についてはある脈拍数スコア・テーブルが使われてもよく、女性については別のテーブルが使われてもよく、ある特定の年齢範囲の患者については別のテーブルが使われてもよい、などである。そのような実施形態では、更新されたバイタルサインは、さまざまな患者人口学的情報などに従って、更新されるまたは更新されないことがありうる。
【0088】
ブロック1118では、たとえば悪化検出モジュール268によって、ブロック116で割り当てられた脈拍数スコアに基づいて、患者の脈拍数スコアが以前のスコア「より悪い」(または少なくとも異なる)かどうかおよび/または患者の脈拍数スコアが、以前に決定された患者緊急度インジケーターに対して患者の状態における変化を反映しているかどうかが判定されてもよい。たとえば、患者の以前の脈拍数スコア(たとえばベースライン)が比較的高い脈拍数を示していて、患者の新しい脈拍数スコア(たとえばバイタルサイン取得カメラ276によって取得された更新された脈拍数から決定されるもの)が患者の脈拍数が「正常」および/または「健康」な脈拍数に向かって遅くなりつつあることを示しているとする。そのようなシナリオでは、悪化検出モジュール268は、患者の脈拍数スコアが「悪くなって」いないと判定してもよい。次いで、方法1100はブロック1120に進んでもよく、その時点で、たとえば悪化検出モジュール268によって、悪化が検出されないと判定されてもよい。患者の脈拍数スコアが患者の脈拍数が「正常」または「健康」な脈拍数に向かって増大しつつあることを示している場合も同様。しかしながら、ブロック1118における答えがイエスである(たとえば、患者が「正常」または「健康」に向かう傾向にあるように見えない)場合には、方法1110はブロック1122に進んでもよい。
【0089】
いくつかのシナリオでは、患者のベースライン・スコアが利用可能でないことがある。たとえば、
図1のブロック120に関して上記したように、いくつかのシナリオでは、患者は、登録することなく単に待合室にはいってくることがある。たとえば登録することを忘れているおよび/または単に別の登録された患者に付き添っているためである。上記で(ブロック120に関して)触れたように、本稿に記載される技法は、最初にトリアージされてもいない未登録の患者をモニタリングするために使用されてもよい。そのようなシナリオにおいては、登録/トリアージ時に取得されたデータに基づいてベースライン・スコアを確立するのではなく、たとえばバイタルサイン取得カメラ276によって取得された初期バイタルサインが、未登録の患者についてのベースライン・スコアを確立するために使用されてもよい。追加的または代替的に、不均一な人口集団のベースラインが比較のために使われて、たとえば未登録の患者が、不均質な人口集団のうちで見出される正常な範囲から悪化しつつあるかどうかを大まかに近似してもよい。
【0090】
わずかな下降を経験するすべての患者を悪化しているとフラグ付けすることは、助けにならないことがありうる。わずかな下降が生理的な観点からは有意でないことがありうるときは特にそうである。たとえば、表1のようなルックアップテーブルの厳密な使用はベースライン脈拍数値およびその後の脈拍数値がたった1bpm離れている(たとえば100と101)が、それでもスコアの差(たとえば0と1)を示すことにつながることがありうる。よって、ブロック1122において、患者の以前のバイタルサイン・スコアと患者の現在のバイタルサイン・スコアが「有意に」異なっているかどうかが判定されてもよい。バイタルサイン・スコアが以前のバイタルサイン・スコアより「有意に」悪いかどうかは、さまざまな仕方で判定されうる。いくつかの実施形態では、悪化検出モジュール268は、値の差が5%、10%、20%などといった何らかの閾値を超える場合にのみ、患者悪化のアラートを発してもよい。そのような閾値は、手動でまたは自動的に確立されてもよい。
【0091】
たとえば、呼吸数のようないくつかのバイタルサインは、よりノイズが多い傾向があることがあり、その結果、それらのバイタルサインのために使われる閾値はより小さいことがある。追加的または代替的に、他の実施形態では、悪化検出モジュール268は、たとえば以前のバイタルサイン測定値が利用可能でないときは(たとえば未登録の患者について)、絶対的な値を用いてもよい。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のトレーニングされたモデル(たとえば回帰モデル、ニューラルネットワーク、深層学習ネットワークなど)および/または症例ベースの推論アルゴリズムが、悪化を検出するために使われるべき閾値を決定するために使われてもよい。たとえば、陽性および/または陰性の帰結が既知である諸EMRのコーパスに基づいてモデルがトレーニングされてもよい。それらのEMRのさまざまなバイタルサインにおいて反映されている傾向が、既知の帰結との関連で、モデルをトレーニングするために使われてもよく、それにより、新たな患者に関連付けられたその後のバイタルサイン(まだ決定されていない帰結をもつ)が解析されて、悪化があるかどうかが判定されうる。
【0092】
ブロック1122における答えがノーであれば、方法1100は、先に説明したブロック1120に進んでもよい。しかしながら、ブロック1122において答えがイエスであれば、方法1100はブロック1124に進んでもよい。ブロック1124では、悪化検出モジュール268は、悪化が検出されたというアラートをたとえばEPSモジュール270に対して公開してもよい。次いで、EPSモジュール270はアラートを、上記のようにアラーム・モジュール248のようなさまざまな申込者に公開してもよい。すると、アラーム・モジュール248は、たとえば
図5のブロック514で論じたような、適切なアラートを生成してもよい。
【0093】
図11の方法1100は、患者の脈拍数に基づいて患者悪化を検出するために適用可能でありうる。しかしながら、患者悪化を検出するために他のバイタルサインが、単独でまたは互いとおよび/または脈拍数との関連で使われてもよい。これらの他のバイタルサインは、バイタルサイン取得カメラ276によっておよび/またはウェアラブル・センサーを使って取得されてもよく、および/または医療人員によって取得された測定値であってもよい。たとえば、先に触れたように、患者の呼吸数は、単独でまたは他のバイタルサインとの関連で、患者が悪化しつつあるまたは悪化していないことを検出するために使われてもよい。他のどのバイタルサインが悪化を検出するために使われようと、1100と同様の方法が使われてもよい。ある種の動作はそれらのバイタルサインに合わせて調整される。たとえば、性別が特定のバイタルサインに影響しないのであれば、動作1108~1114は省略されてもよい。他の患者属性/バイタルサインが特定のバイタルサインに影響するのであれば、動作1108~1114と同様の他の動作が追加されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態が本願に記載され図示されているが、当業者は、機能を実行するおよび/または本明細書に記載される結果および/または利点の一つもしくは複数を得るための、多様な他の手段および/または構造を容易に構想するであろう。そのような変形および/または修正の各々は、本明細書に記載される実施形態の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料および構成が例示的であることが意味されており、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は、教示が使用される特定の用途(単数または複数)に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載する個別的な実施形態への多くの等価物を認識するか、または高々日常的なを用いて確かめることができるであろう。よって、上述の実施形態は単に例として呈示されており、添付の請求項およびその等価物の範囲内で、実施形態が、具体的に記載され、特許請求される以外の仕方で実施されうることは理解される。本開示の発明的実施形態は、本明細書中で記載されたそれぞれの個別の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法に向けられる。さらに、二つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の組み合わせは、もしそのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が相互に矛盾するものでなければ、本開示の範囲内に含まれる。
【0095】
本明細書中で定義され、用いられるあらゆる定義は、辞書の定義、参照により組み込まれた文書における定義および/または定義された用語の通常の意味よりも優先することが理解されるべきである。
【0096】
本願の明細書および特許請求の範囲において使われる不定冠詞「a」および「an」は、そうでないことが明瞭に示されるのでない限り、「少なくとも一つ」を意味することが理解されるべきである。
【0097】
本願の明細書および特許請求の範囲において使われる句「および/または」は、そのように連結された要素、すなわち、いくつかの場合には同時に存在し、他の場合には一方のみが存在する要素の「いずれかまたは双方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」を用いて挙げられる複数の要素は同じように、すなわち、そのように連結された要素の「一つまたは複数」と解釈されるべきである。任意的に、「および/または」節によって具体的に特定された要素に以外の要素が任意的に存在していてもよく、具体的に特定された要素に関係していてもいなくてもよい。このように、限定しない例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」のようなオープンエンドの言辞との関連で使われるときは、ある実施形態ではAのみ(任意的に、B以外の要素を含む)を;もう一つの実施形態ではBのみ(任意的に、A以外の要素を含む)を;さらにもう一つの実施形態ではAおよびBの両方(任意的に、他の要素を含む);などをいうことができる。
【0098】
本願で明細書および特許請求の範囲において使われるところでは、「または」は上記で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。たとえば、リスト中で項目を分離するときに、「または」または「および/または」は、包含的である、すなわち、いくつかのもしくはリストの要素の、二つ以上をも含め少なくとも一つを含み、任意的にはリストにない追加的な項目をも含むと解釈されるべきである。「…の一つのみ」または「…のちょうど一つ」、あるいは請求項で使われるときの「…からなる」など、そうでないことが明瞭に示された用語のみが、いくつかの要素またはリストの要素のちょうど一つの要素を含むことをいう。一般に、本明細書において使用される「または」という用語は、排他的選択肢(すなわち、一方または他方であるが両方ではない)を示すものと解釈されるのは、「いずれか一つ」、「…の一つ」、「…の一方のみ」または「…のちょうど一つ」のような排他性の用語を伴うときのみである。請求項において使用されるときの「本質的には…からなる」は、特許法の分野において使用される通常の意味を有する。
【0099】
本願で明細書および特許請求の範囲において用いられるところでは、一つまたは複数の要素のリストに言及しての句「少なくとも一つ」は、要素のリスト中のいずれか一つまたは複数の要素から選択される少なくとも一つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも要素のリスト内に具体的に挙げられている一つ一つの要素の少なくとも一つを含むとは限らず、要素のリスト中の要素のどんな組合せも排除しない。この定義は、具体的に特定された要素に関連するかまたは関連しないかを問わず、句「少なくとも一つ」が言及する要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が任意的に存在していてもよいことをも許容する。このように、限定しない例として、「AおよびBのうちの少なくとも一つ」(または、等価だが、「AまたはBの少なくとも一つ」、または等価だが、「Aおよび/またはBの少なくとも一つ」)は、ある実施形態では、任意的には二つ以上を含む少なくとも一つAであって、Bは存在しない(任意的に、B以外の要素を含む)こと;もう一つの実施形態では、任意的には二つ以上を含む少なくとも一つBであって、Aは存在しない(任意的に、A以外の要素を含む)こと;さらにもう一つの実施形態では、任意的には二つ以上を含む少なくとも一つAおよび任意的には二つ以上を含む少なくとも一つB(任意的に、他の要素を含む);などをいう。
【0100】
また、そうでないことが明瞭に示されているのでない限り、二つ以上の段階または工程を含む本願で特許請求されるいずれの方法においても、該方法の段階または工程の順序は、必ずしも該方法の段階または工程が記載される順序に限定されないことも理解されるべきである。
【0101】
特許請求の範囲ならびに上記の明細書において、「有する」、「含む」、「担持する」、「もつ」、「含有する」、「関わる」、「保持する」、「から構成された」などのようなすべての移行句は、オープンエンドである、すなわち、それを含むがそれに限定されるものではないことを意味すると理解されるべきである。「…からなる」および「本質的には…からなる」という移行句のみが、それぞれ、米国特許庁特許審査手続マニュアル、第2111.03節に記載されるクローズドまたは半クローズドな移行句である。特許協力条約(「PCT」)の規則6.2(b)に従って請求項において使われているある種の表現および参照符号は範囲を限定しないことを理解しておくべきである。