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特許7197489硬化層と金属配線を有する構造物の形成方法及び構造物形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】硬化層と金属配線を有する構造物の形成方法及び構造物形成装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20221220BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20221220BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221220BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221220BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20221220BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019542918
(86)(22)【出願日】2017-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2017034330
(87)【国際公開番号】W WO2019058515
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2019-08-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良崇
(72)【発明者】
【氏名】牧原 克明
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】石附 直弥
【審判官】松波 由美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/041189(WO,A1)
【文献】特開2013-67118(JP,A)
【文献】特開2015-150708(JP,A)
【文献】特開2015-231684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性粘性流体を吐出する第1吐出工程と、
前記第1吐出工程において吐出された前記硬化性粘性流体を半硬化させる第1半硬化工程と、
前記第1吐出工程と前記第1半硬化工程とを繰り返して、第1半硬化層を形成する第1半硬化層形成工程と、
前記第1半硬化層の少なくとも一部を平坦化装置により平坦化して、前記第1半硬化層に対象面を形成する平坦化工程と、
前記対象面に前記硬化性粘性流体を吐出する第2吐出工程と、
前記第2吐出工程において吐出された前記硬化性粘性流体を半硬化させる第2半硬化工程と、
前記第2吐出工程と前記第2半硬化工程とを繰り返して、前記第1半硬化層の厚みに比べて薄い第2半硬化層を形成する第2半硬化層形成工程と、
前記第1半硬化層及び前記第2半硬化層をさらに硬化させて硬化層を形成する第1硬化工程と、
前記硬化層の前記対象面に金属製流体を吐出する第3吐出工程と、
前記第3吐出工程において吐出された前記金属製流体を硬化させ、前記対象面に金属配線を形成する第2硬化工程と、
を含む、硬化層と金属配線を有する構造物の形成方法。
【請求項2】
前記硬化性粘性流体は、紫外線硬化樹脂であり、
前記第2半硬化工程は、前記紫外線硬化樹脂に照射する紫外線の強度、照射時間、照射回数のうち、少なくとも1つを低減させることで前記硬化性粘性流体を半硬化させる、請求項1に記載の硬化層と金属配線を有する構造物の形成方法。
【請求項3】
前記第2吐出工程において、
インクジェットヘッドを用いて前記硬化性粘性流体を前記対象面に吐出し、前記インクジェットヘッドから吐出可能な吐出量のうち最小の吐出量を設定し、前記対象面の各部分を1回だけ走査させながら前記硬化性粘性流体を吐出させ、前記対象面に薄膜状に広がった薄膜層を形成し、
前記第2半硬化工程において、
前記薄膜層を半硬化させる、請求項1又は請求項2に記載の硬化層と金属配線を有する構造物の形成方法。
【請求項4】
硬化性粘性流体を吐出する吐出装置と、
金属製流体を吐出する金属吐出装置と、
前記吐出装置により吐出された前記硬化性粘性流体を半硬化させ半硬化層を形成する半硬化装置と、
前記半硬化層を平坦化する平坦化装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記硬化性粘性流体を前記吐出装置により吐出する第1吐出処理と、
前記第1吐出処理において吐出された前記硬化性粘性流体を前記半硬化装置により半硬化させる第1半硬化処理と、
前記第1吐出処理と前記第1半硬化処理とを繰り返して、第1半硬化層を形成する第1半硬化層形成処理と、
前記第1半硬化層の少なくとも一部を前記平坦化装置により平坦化して、前記第1半硬化層に対象面を形成する平坦化処理と、
前記対象面に前記硬化性粘性流体を前記吐出装置により吐出する第2吐出処理と、
前記第2吐出処理において吐出された前記硬化性粘性流体を、前記半硬化装置により半硬化させる第2半硬化処理と、
前記第2吐出処理と前記第2半硬化処理とを繰り返して、前記第1半硬化層の厚みに比べて薄い第2半硬化層を形成する第2半硬化層形成処理と、
前記第1半硬化層及び前記第2半硬化層をさらに硬化させて硬化層を形成する第1硬化処理と、
前記硬化層の前記対象面に前記金属製流体を前記金属吐出装置により吐出する第3吐出処理と、
前記第3吐出処理において吐出された前記金属製流体を硬化させ、前記対象面に金属配線を形成する第2硬化処理と、
を実行する、構造物形成装置。
【請求項5】
前記硬化性粘性流体は、紫外線硬化樹脂であり、
前記制御装置は、
前記第2半硬化処理において、前記半硬化装置を制御し、前記半硬化装置により前記紫外線硬化樹脂に照射する紫外線の強度、照射時間、照射回数のうち、少なくとも1つを低減させることで前記硬化性粘性流体を半硬化させる、請求項4に記載の構造物形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化層と金属配線を有する構造物の形成方法及び構造物形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化樹脂など、硬化性粘性流体によって構造物を形成するための技術が開発されている。詳しくは、吐出装置によって硬化性粘性流体を吐出し、その硬化性粘性流体に紫外線等を照射することで硬化させる。これにより、硬化性粘性流体の硬化層が形成される。硬化性粘性流体を硬化させた硬化層の表面には、凹凸が形成される可能性がある。例えば、硬化層の表面には、硬化性粘性流体の液滴の大きさに起因した凹凸が形成される。あるいは、吐出装置のノズルのそれぞれから同時に吐出する硬化性粘性流体の量に差が生じることで、硬化層の表面には、凹凸が形成される。これに対し、下記特許文献では、硬化性粘性流体を吐出した後に、半硬化状態の半硬化層の表面をローラなどの平坦化装置によって平坦化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-67118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、硬化性粘性流体の液滴の大きさに起因した凹凸の高さの差は、例えば、数μm(マイクロメートル)又は1μmに満たない大きさとなる可能性があり、ローラなどの大きさに比べて極めて小さくなる。このため、ローラなどの平坦化装置では、十分に平坦化を図れず、平坦化処理を実行した後の半硬化層の表面には、細かい凹凸が残される虞がある。本開示は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、半硬化層の対象とする面をより平坦化できる硬化層と金属配線を有する構造物の形成方法及び構造物形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の硬化層と金属配線を有する構造物の形成方法は、硬化性粘性流体を吐出する第1吐出工程と、前記第1吐出工程において吐出された前記硬化性粘性流体を半硬化させる第1半硬化工程と、前記第1吐出工程と前記第1半硬化工程とを繰り返して、第1半硬化層を形成する第1半硬化層形成工程と、前記第1半硬化層の少なくとも一部を平坦化装置により平坦化して、前記第1半硬化層に対象面を形成する平坦化工程と、前記対象面に前記硬化性粘性流体を吐出する第2吐出工程と、前記第2吐出工程において吐出された前記硬化性粘性流体を半硬化させる第2半硬化工程と、前記第2吐出工程と前記第2半硬化工程とを繰り返して、前記第1半硬化層の厚みに比べて薄い第2半硬化層を形成する第2半硬化層形成工程と、前記第1半硬化層及び前記第2半硬化層をさらに硬化させて硬化層を形成する第1硬化工程と、前記硬化層の前記対象面に金属製流体を吐出する第3吐出工程と、前記第3吐出工程において吐出された前記金属製流体を硬化させ、前記対象面に金属配線を形成する第2硬化工程と、を含む。
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の構造物形成装置は、硬化性粘性流体を吐出する吐出装置と、金属製流体を吐出する金属吐出装置と、前記吐出装置により吐出された前記硬化性粘性流体を半硬化させ半硬化層を形成する半硬化装置と、前記半硬化層を平坦化する平坦化装置と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記硬化性粘性流体を前記吐出装置により吐出する第1吐出処理と、前記第1吐出処理において吐出された前記硬化性粘性流体を前記半硬化装置により半硬化させる第1半硬化処理と、前記第1吐出処理と前記第1半硬化処理とを繰り返して、第1半硬化層を形成する第1半硬化層形成処理と、前記第1半硬化層の少なくとも一部を前記平坦化装置により平坦化して、前記第1半硬化層に対象面を形成する平坦化処理と、前記対象面に前記硬化性粘性流体を前記吐出装置により吐出する第2吐出処理と、前記第2吐出処理において吐出された前記硬化性粘性流体を、前記半硬化装置により半硬化させる第2半硬化処理と、前記第2吐出処理と前記第2半硬化処理とを繰り返して、前記第1半硬化層の厚みに比べて薄い第2半硬化層を形成する第2半硬化層形成処理と、前記第1半硬化層及び前記第2半硬化層をさらに硬化させて硬化層を形成する第1硬化処理と、前記硬化層の前記対象面に前記金属製流体を前記金属吐出装置により吐出する第3吐出処理と、前記第3吐出処理において吐出された前記金属製流体を硬化させ、前記対象面に金属配線を形成する第2硬化処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
平坦化装置によって平坦化した第1半硬化層の対象面には、硬化性粘性流体の液滴の大きさに起因して平坦化前に対象面に発生している凹凸の高さの差、平坦化装置の大きさなどに応じて細かな凹凸が形成される。そこで、さらに、対象面に硬化性粘性流体を吐出し半硬化させることで、第1半硬化層に比べて薄い第2半硬化層を対象面に形成する。これにより、第2半硬化層を構成する硬化性粘性流体は、対象面の細かな凹凸に入り込み、対象面の凹凸を低減する。従って、平坦化装置では平坦化しきれなかった細かな凹凸をなくし、対象面をより平坦化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】構造物形成装置を示す図である。
図2】造形ユニットの印刷部を示す概略図である。
図3】造形ユニットの硬化部を示す概略図である。
図4】制御装置を示すブロック図である。
図5】構造物を示す模式図である。
図6】構造物の形成工程を説明するための模式図である。
図7】構造物の形成工程を説明するための模式図である。
図8】構造物の形成工程を説明するための模式図である。
図9】紫外線硬化樹脂と凹凸部との関係を模式的に示した拡大図である。
図10】紫外線硬化樹脂と凹凸部との関係を模式的に示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本願の構造物形成装置を具体化した一実施形態である構造物形成装置10を示している。本実施形態の構造物形成装置(以下、「形成装置」と略す場合がある)10は、搬送装置20と、造形ユニット22と、制御装置(図4参照)26とを備える。それら搬送装置20と造形ユニット22とは、形成装置10のベース28の上に配置されている。ベース28は、概して長方形状をなしており、以下の説明では、ベース28の長手方向をX軸方向、ベース28の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0010】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34と、X軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ(図4参照)38を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36をX軸方向の任意の位置に移動させる。
【0011】
また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50と、ステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。Y軸スライドレール50の一端部は、X軸スライダ36に連結されている。これにより、Y軸スライドレール50は、X軸スライダ36のスライド移動にともなって、X軸方向に移動可能とされている。ステージ52は、Y軸スライドレール50によってY軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、Y軸スライド機構32は、電磁モータ(図4参照)56を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52をY軸方向の任意の位置に移動させる。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース28上の任意の位置に移動可能となっている。
【0012】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面に基材(図2参照)70が載置される。保持装置62は、基台60のX軸方向の両側部に設けられている。そして、基台60に載置された基材70のX軸方向の両縁部が、保持装置62によって挟まれることで、基材70が基台60に対して固定的に保持される。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60をZ軸方向に昇降させる。
【0013】
造形ユニット22は、ステージ52の基台60に載置された基材70の上に構造物を造形するユニットであり、印刷部72と、硬化部74とを有している。印刷部72は、図2に示すように、インクジェットヘッド76を有しており、基台60に載置された基材70の上に、硬化性粘性流体77を薄膜状に吐出する。硬化性粘性流体77は、熱,光等により硬化する粘性流体である。硬化性粘性流体77としては、金属インクや紫外線硬化樹脂等が挙げられる。金属インクは、金属の微粒子を溶剤中に分散させたものであり、熱により焼成し、硬化する。また、紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する。インクジェットヘッド76は、硬化性粘性流体77が金属インクである場合には、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから金属インクを吐出する。また、インクジェットヘッド76は、硬化性粘性流体77が紫外線硬化樹脂である場合には、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから紫外線硬化樹脂を吐出する、あるいは紫外線硬化樹脂を加熱して気泡を発生させノズルから吐出するサーマル方式によって複数のノズルから紫外線硬化樹脂を吐出する。なお、本願における吐出装置は、複数のノズルを備えるインクジェットヘッド76に限らず、例えば、1つのノズルを備えたディスペンサーでも良い。また、インクジェットヘッド76は、金属インクを吐出するノズルと、紫外線硬化樹脂を吐出するノズルとを別々に備えてもよく、2つの硬化性粘性流体77を吐出するノズルを共用しても良い。
【0014】
図3に示すように、硬化部74は、平坦化装置78と、照射装置82とを有している。平坦化装置78は、インクジェットヘッド76によって基材70の上に吐出された硬化性粘性流体77の上面を平坦化するものである。平坦化装置78は、ローラ79と、回収部80とを有している。ローラ79は、円柱形状をなし、平坦化装置78の制御に基づいて、流動可能な状態の硬化性粘性流体77(例えば、紫外線硬化樹脂)の表面を回転しながら移動し、表面を平坦化する。回収部80は、例えば、ローラ79の表面に向かって突出するブレードを有しており、ブレードで掻き取った硬化性粘性流体77を貯めて排出する。回収部80は、例えば、回収した硬化性粘性流体77を廃液タンクに排出する。なお、回収部80は、回収した硬化性粘性流体77を、再度、供給タンクに戻しても良い。平坦化装置78は、硬化性粘性流体77の表面を均しながら余剰分の硬化性粘性流体77を掻き取ることで、硬化性粘性流体77の表面を平坦化する。
【0015】
また、照射装置82は、基材70の上に吐出された硬化性粘性流体77に光を照射するものである。硬化性粘性流体77は、光の照射により硬化し、薄膜状の硬化層86となる。具体的には、照射装置82は、例えば、硬化性粘性流体77が金属インクである場合に、レーザ光を照射するレーザ光照射装置143(図8参照)を備える。照射装置82は、レーザ光照射装置143によって金属インクにレーザ光を照射することで、金属インクを焼成して硬化させる。金属インクの焼成とは、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属微粒子保護膜の分解等が行われ、金属微粒子が接触または融着をすることで、導電率が高くなる現象である。このため、照射装置82は、金属インクを焼成することで、金属製の硬化層86を形成できる。また、照射装置82は、例えば、硬化性粘性流体77が紫外線硬化樹脂である場合に、紫外線を照射する紫外線照射装置133(図6参照)を備える。照射装置82は、紫外線照射装置133によって紫外線硬化樹脂に紫外線を照射することで、紫外線硬化樹脂を硬化し、樹脂製の硬化層86を形成する。
【0016】
また、本実施形態の照射装置82は、制御装置26の制御に基づいて、半硬化した状態の半硬化層を造形することが可能となっている。ここでいう半硬化した状態とは、完全に硬化した状態までには至っておらず、例えば、吐出した際の液滴の状態から粘性を高めて流動的になっているジェル状のような状態である。制御装置26は、例えば、レーザ光や紫外線を硬化性粘性流体77に照射する強度、照射する回数、照射する時間、走査する回数などを、完全に硬化する際の設定に比べて減らすことで、硬化性粘性流体77を半硬化状態にする。平坦化装置78は、半硬化状態の硬化性粘性流体77の表面でローラ79を回転させることで、硬化性粘性流体77を平坦化することが可能となる。
【0017】
図4に示すように、制御装置26は、コントローラ102と、複数の駆動回路104と、記憶装置106とを備えている。複数の駆動回路104は、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、インクジェットヘッド76、平坦化装置78、照射装置82に接続されている。コントローラ102は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路104に接続されている。記憶装置106は、RAM、ROM、ハードディスク等を備えており、形成装置10の制御を行う制御プログラム107が記憶されている。コントローラ102は、制御プログラム107をCPUで実行することで、搬送装置20、造形ユニット22の作動を、制御することが可能となっている。
【0018】
本実施形態の形成装置10は、上述した構成によって、薄膜状の硬化性粘性流体77を硬化させることで硬化層86又は半硬化層を形成し、硬化層86等を複数、積層させることで、任意の形状の構造物を形成する。例えば、制御プログラム107には、構造物をスライスした各層の三次元のデータが設定されている。コントローラ102は、制御プログラム107のデータに基づいて、硬化性粘性流体77を吐出、硬化等させて構造物を形成する。以下の説明では、一例として、図5に示す三次元の構造物91を形成する場合について説明する。図5に示すように、構造物91は、樹脂層93と、Z軸方向における樹脂層93の上面93A(対称面の一例)に形成された金属配線95とを備えている。
【0019】
図6図8は、構造物91の形成工程を示している。以下の説明では、コントローラ102が、制御プログラム107を実行して各装置を制御することを、単に「装置が」と記載する場合がある。例えば、「搬送装置20が基台60を移動させる」とは、「コントローラ102が、制御プログラム107を実行して搬送装置20の作動を制御し、搬送装置20の作動によって基台60を移動させる」ことを意味している。
【0020】
まず、図1に示すステージ52の基台60に基材70がセットされる。搬送装置20は、基材70をセットされたステージ52を、造形ユニット22の下方に移動させる。図6のステップ(以下、単に「S」と記載する)11に示すように、印刷部72のインクジェットヘッド76は、硬化性粘性流体77として紫外線硬化樹脂131を基材70の上に吐出する。吐出された紫外線硬化樹脂131は、基材70の上に付着し薄膜状に広がる(S13)。
【0021】
次に、S15に示すように、照射装置82の紫外線照射装置133は、基材70上の紫外線硬化樹脂131に対して紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂131を半硬化させる。コントローラ102は、紫外線照射装置133から紫外線硬化樹脂131に照射する紫外線の強度等を制御し、紫外線硬化樹脂131を半硬化状態にする。
【0022】
次に、S17に示すように、インクジェットヘッド76は、半硬化状態にした紫外線硬化樹脂131の上からさらに紫外線硬化樹脂131を吐出する。吐出された紫外線硬化樹脂131は、半硬化状態の紫外線硬化樹脂131の上に積層される。紫外線硬化樹脂131を吐出した後、紫外線照射装置133は、S15に示すように、吐出した紫外線硬化樹脂131に紫外線を再度照射し、紫外線硬化樹脂131を半硬化状態にする。
【0023】
コントローラ102は、上記したS15の工程(第1吐出工程の一例)とS17の工程(第1半硬化工程の一例)とを繰り返し実行する。これにより、図7のS19に示すように、基材70の上には、紫外線硬化樹脂131を積層した半硬化状態の第1半硬化層135が形成される。例えば、制御プログラム107には、S19に示す第1半硬化層135の厚さW1、即ち、形成したい半硬化層の厚さに応じて、S15、S17を繰り返す回数が予め設定されている。コントローラ102は、この制御プログラム107に設定された回数だけ、S15、S17を繰り返し実行する。なお、上記した第1半硬化層135の形成方法では、S15と、S17を繰り返し実行したが、第1半硬化層135の形成方法はこれに限らない。例えば、S17の吐出と、吐出した紫外線硬化樹脂131を完全に硬化させる工程とを繰り返し実行し、厚さW1よりも薄い硬化層を形成する。そして、形成した硬化層の上に、半硬化層を形成してもよい。即ち、形成する層の上部のみを半硬化状態としても良い。
【0024】
ここで、第1半硬化層135を、Z軸方向において所定の厚さごとにスライスし、スライスした各層の厚みを均一に保つことで、厚さW1の造形精度を維持できる。しかし、インクジェットヘッド76の複数のノズルから同時に吐出される紫外線硬化樹脂131の量を、互いに一定の量に制御することは困難となる場合がある。その結果、図7のS19に示すように、第1半硬化層135の上面135Aには、ノズルごとの吐出量の誤差に起因してうねりのような凹凸が形成される。あるいは、第1半硬化層135の上面135Aには、紫外線硬化樹脂131の液滴の大きさに起因した凹凸が形成される。
【0025】
そこで、S21に示すように、コントローラ102は、第1半硬化層135の上面135Aにおいて平坦化装置78のローラ79を回転させ、平坦化を行う。S21に示すように、ローラ79は、例えば、進行方向に対して逆方向に回転され、流動可能な状態の紫外線硬化樹脂131を掻き上げる。掻き上げられた紫外線硬化樹脂131は、ローラ79に付着し、回収部80のブレード(図示略)で掻き取られて回収部80に回収される。
【0026】
しかしながら、上記したノズルの吐出量の差や紫外線硬化樹脂131の液滴の大きさなどに起因して上面135Aに形成される凹凸の高さの差は、例えば、数μmに満たない大きさとなる可能性があり、ローラ79の大きさに比べて極めて小さくなる。このため、紫外線硬化樹脂131を積層した第1半硬化層135をローラ79で平坦化したとしても、細かな凹凸まで平坦化することは困難となる。図7のS21に示すように、ローラ79によって平坦化された後の上面135Aには、細かい凹凸部分である凹凸部135Bが形成される。
【0027】
そこで、図7のS22に示すように、本実施形態のインクジェットヘッド76は、ローラ79によって平坦化した第1半硬化層135の上面135Aに再度、紫外線硬化樹脂131を吐出する。次に、S23に示すように、紫外線照射装置133は、紫外線硬化樹脂131を吐出した上面135Aに向かって紫外線を照射し、吐出した紫外線照射装置133を半硬化させる。
【0028】
図9及び図10は、吐出した紫外線硬化樹脂131と、凹凸部135Bとの状態を示している。図9及び図10は、模式図であり、紫外線硬化樹脂131の状態を厳密に示していない。また、図9及び図10の状態変化は一例であり、紫外線硬化樹脂131の液滴の大きさ、硬化の速度、粘性、凹凸部135Bの大きさなどに応じて状態変化が異なる。図9に示すように、第1半硬化層135の上面135A(図7参照)に吐出された紫外線硬化樹脂131は、上面135Aにおいて薄膜状に広がった薄膜層137を形成する。薄膜層137の厚さW2は、第1半硬化層135の厚さW1に比べて薄い。例えば、薄膜層137は、図7に示すS22の工程において、インクジェットヘッド76で紫外線硬化樹脂131を吐出可能な最小の吐出量を設定し、上面135Aを1回だけ走査したことで形成される。即ち、厚さW2は、インクジェットヘッド76で形成可能な最も薄い厚さであることが好ましい。なお、厚さW2は、例えば、凹凸部135Bの大きさや深さに応じて適宜変更可能である。例えば、形成される凹凸部135Bの深さが深い場合、インクジェットヘッド76の吐出量や走査回数を増やしてもよい。
【0029】
薄膜状に広がった薄膜層137の紫外線硬化樹脂131は、上面135Aに付着した後に凹凸部135Bに入り込む。また、薄膜層137に含まれる紫外線硬化樹脂131は、図7のS23において紫外線を照射されることで半硬化状態となる。紫外線硬化樹脂131は、紫外線を照射され粘性が変化しつつ、凹凸部135Bに入り込む。コントローラ102は、上記したS22の工程(第2吐出工程の一例)とS23の工程(第2半硬化工程の一例)を繰り返し実行する。これにより、図10に示すように、積層された薄膜層137は、凹凸部135Bを塞ぐようにして広がって半硬化した第2半硬化層139となる。第2半硬化層139の厚さW3は、例えば、第1半硬化層135の厚さW1に比べて薄く、薄膜層137の厚さW2に比べて厚くなる。そして、上面135Aは、S21のローラ79で平坦化した直後の状態に比べてより一層平坦化される。
【0030】
本願の出願人は、検証を実施し、例えば、上面135Aに形成された数十μmの凹凸が数μmまで改善されることを確認した。このため、例えば、S23で照射する紫外線の強度、照射時間、照射回数等は、凹凸部135Bの改善具合に応じて設定することができる。例えば、S23の前後における上面135Aの凹凸の低減率の向上、換言すれば、上面135Aの平坦化率の向上に応じて、照射装置82における紫外線の強度等を調整することで、より上面135Aの平坦化を図ることができる。同様に、例えば、上記したS22とS23とを繰り返す回数、S22とS23を繰り返す時間間隔などは、凹凸部135Bの改善具合に応じて設定することができる。なお、照射する紫外線の調整方法は、強度、照射時間、照射回数のうち、少なくとも1つを調整しても良い。また、可能な限り薄い第2半硬化層139を形成する上では、S22とS23とを繰り返し実行する回数は少ない方が好ましい。しかしながら、凹凸部135Bの大きさや深さに応じて、S22とS23とを繰り返す回数を変更しても良い。
【0031】
S22、S23を実行することで、薄膜層137に含まれる紫外線硬化樹脂131を半硬化させ、第2半硬化層139が上面135Aに形成される。次に、S25に示すように、第1半硬化層135及び第2半硬化層139を、さらに硬化させて硬化層を形成する。S25において、紫外線照射装置133は、例えば、第1半硬化層135及び第2半硬化層139を完全に硬化させるため、通常の紫外線を第1半硬化層135及び第2半硬化層139に照射する。ここでいう通常の紫外線とは、例えば、S23のような半硬化のために用いる強度等を調整した紫外線とは異なり、第1半硬化層135及び第2半硬化層139をより確実に硬化させるための強度等が設定されたものである。S25で通常の紫外線を照射することで、S27に示すように、第1半硬化層135及び第2半硬化層139を硬化させた硬化層が形成される。この硬化層は、図5の樹脂層93に対応する。即ち、これにより、樹脂層93が形成される。なお、S23の工程を終了した後からS25の工程を開始するまでの空き時間を、凹凸部135Bが平坦化される改善具合に応じて設定しても良い。
【0032】
従って、上記したように、本実施形態の硬化層と金属配線を有する構造物の形成方法では、第2半硬化層139をさらに硬化させて樹脂層93(硬化層)を形成する。これによれば、第2半硬化層139を硬化させることで、細かな凹凸を低減した凹凸部135Bを有する樹脂層93を形成できる。
【0033】
次に、図8に示すように、S27で形成した樹脂層93の上面93Aに、図5に示す金属配線95を形成する。コントローラ102は、制御プログラム107の三次元データに基づいて、上面93Aの所定箇所に金属配線95を形成する。詳述すると、S29において、インクジェットヘッド76は、コントローラ102の制御に基づいて、上面93Aに金属インク141を吐出する。そして、S31において、照射装置82のレーザ光照射装置143は、上面93Aに吐出された金属インク141にレーザ光を照射して焼成する。コントローラ102は、S29とS31の工程を繰り返し実行することで、樹脂層93の上に金属配線95を形成する。これにより、図5に示す構造物91が形成される。
【0034】
従って、上記したように、本実施形態の硬化層と金属配線を有する構造物の形成方法では、樹脂層93(硬化層の一例)の上面93A(上面135A)に金属インク141(金属製流体の一例)を吐出する工程(S29、第3吐出工程の一例)と、吐出された金属インク141を硬化させ、上面93Aに金属配線95を形成する工程(S31、第2硬化工程の一例)を含む。
【0035】
ここで、凹凸が形成された面、例えば、図7のS19やS21の上面135Aに、金属インク141を吐出及び硬化させて金属配線95を形成すると、金属配線95の厚みが、凹凸によって均一とならない虞がある。そして、金属配線95の電気抵抗の増大や、断線などの不具合が生じる虞がある。これに対し、上面135Aのより細かい凹凸までを低減し、低減した上面135Aに金属インク141を吐出等することで、より均一な厚みの金属配線95を形成することができる。その結果、金属配線95の電気抵抗を所望の値まで低減し、断線の発生を抑制することができる。
【0036】
上記した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
形成装置10のコントローラ102は、紫外線硬化樹脂131を吐出する第1吐出工程(S15)と、第1吐出工程において吐出された紫外線硬化樹脂131を半硬化させる第1半硬化工程(S17)と、を繰り返して、第1半硬化層135を形成する。また、コントローラ102は、第1半硬化層135を平坦化装置78により平坦化して、第1半硬化層135に上面135Aを形成する(S21)。さらに、コントローラ102は、上面135Aに紫外線硬化樹脂131を吐出する第2吐出工程(S22)と、第2吐出工程において吐出された紫外線硬化樹脂131を半硬化させる第2半硬化工程(S23)と、を繰り返して、第2半硬化層139を形成する。
【0037】
平坦化装置78によって平坦化した第1半硬化層135の上面135Aには、紫外線硬化樹脂131の液滴の大きさに起因して平坦化前に上面135Aに発生している凹凸の高さの差、ローラ79の大きさに応じて細かな凹凸部135Bが形成される。そこで、上面135Aに紫外線硬化樹脂131を再度吐出して半硬化させることで、第1半硬化層135に比べて薄い第2半硬化層139を上面135Aに形成する。これにより、第2半硬化層139を構成する紫外線硬化樹脂131は、上面135Aの細かな凹凸部135Bに入り込み、上面135Aの凹凸を低減する。従って、平坦化装置78では平坦化しきれなかった細かな凹凸をなくし、上面135Aをより平坦化することが可能となる。
【0038】
なお、制御装置26のコントローラ102は、図4に示すように、吐出部110と、半硬化部112と、半硬化層形成部114と、平坦化部116と、硬化部118とを有している。吐出部110等は、例えば、コントローラ102のCPUにおいて制御プログラム107を実行することで実現される処理モジュールである。なお、吐出部110等を、ソフトウェアで構成せずに、ハードウェアで構成しても良い。
【0039】
吐出部110は、インクジェットヘッド76によって硬化性粘性流体77を吐出するための機能部である。半硬化部112は、照射装置82によって硬化性粘性流体77を半硬化させる機能部である。半硬化層形成部114は、吐出工程と半硬化工程とを繰り返して、半硬化層を形成する機能部である。平坦化部116は、平坦化装置78によって半硬化層を平坦化し、対象面を形成する機能部である。硬化部118は、照射装置82によって半硬化層を硬化させ硬化層を形成する機能部である。
【0040】
因みに、上記実施例において、形成装置10は、構造物形成装置の一例である。インクジェットヘッド76は、吐出装置、金属吐出装置の一例である。紫外線硬化樹脂131は、硬化性粘性流体の一例である。照射装置82は、半硬化装置及び硬化装置の一例である。吐出部110により実行される工程は、第1~第3吐出工程の一例である。半硬化部112により実行される工程は、第1半硬化工程及び第2半硬化工程の一例である。半硬化層形成部114により実行される工程は、第1半硬化層形成工程及び第2半硬化層形成工程の一例である。硬化部118により実行される工程は、第1硬化工程及び第2硬化工程の一例である。上面135Aは、対象面の一例である。
【0041】
なお、本開示は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
上記実施形態では、平坦化を図る対象の硬化性粘性流体77として、紫外線硬化樹脂131を採用した例について説明したが、これに限らない。他の硬化性粘性流体77、例えば、金属インク141やサポート材を用いて平坦化を実施しても良い。より具体的には、例えば、金属インク141を積層した半硬化層を形成し、その半硬化層をローラ79で平坦化した後に金属インク141を再度吐出、半硬化して平坦化を図っても良い。また、サポート材とは、例えば、積層造形において所望の形状の構造物91を形成する場合に、その型取りや貫通孔の形成のために一時的に形成された後、化学材料や熱などによって溶融され構造物91から取り除かれるものである。例えば、サポート材を積層した半硬化層を形成し、その半硬化層をローラ79で平坦化した後にサポート材を再度吐出、半硬化して平坦化を図っても良い。これにより、例えば、サポート材と接触する面(構造物91の表面や貫通孔の内面)に形成されるより細かい凹凸を低減し平坦化を図れる。
また、本願の硬化性粘性流体77は、紫外線硬化樹脂131及び、金属インク141に限らず、光、熱等により硬化する種々の硬化性粘性流体を採用することが可能である。
また、本願の平坦化装置78は、ローラ79のような回転体に限らず、例えば、上面135Aの硬化性粘性流体77を掻き取るブレードでもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 形成装置(構造物形成装置)、76 インクジェットヘッド(吐出装置、金属吐出装置)、78 平坦化装置、82 照射装置(半硬化装置、硬化装置)、102 コントローラ(制御装置)、110 吐出部(第1~第3吐出工程)、112 半硬化部(第1及び第2半硬化工程)、114 半硬化層形成部(第1及び第2半硬化層形成工程)、118 硬化部(第1及び第2硬化工程)、131 紫外線硬化樹脂(硬化性粘性流体)。
図1
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図10