IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アライドマテリアルの特許一覧

<>
  • 特許-ビトリファイドボンド超砥粒ホイール 図1
  • 特許-ビトリファイドボンド超砥粒ホイール 図2
  • 特許-ビトリファイドボンド超砥粒ホイール 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ビトリファイドボンド超砥粒ホイール
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/14 20060101AFI20221220BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20221220BHJP
   B24D 3/18 20060101ALI20221220BHJP
   B24D 7/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B24D3/14
B24D3/00 310F
B24D3/00 320B
B24D3/18
B24D7/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019547958
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2018034362
(87)【国際公開番号】W WO2019073753
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2017197407
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220103
【氏名又は名称】株式会社アライドマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】網野 修一
(72)【発明者】
【氏名】石津 智広
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/106001(WO,A1)
【文献】特開2016-172306(JP,A)
【文献】特開2014-012328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008153(US,A1)
【文献】特開昭62-094262(JP,A)
【文献】特開2014-083621(JP,A)
【文献】特開2009-061554(JP,A)
【文献】特表2003-532550(JP,A)
【文献】特開2016-137536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台金と、
前記台金に設けられた超砥粒層とを備え、
前記超砥粒層は、複数の超砥粒と、複数の前記超砥粒を結合するビトリファイドボンドとを含み、前記ビトリファイドボンドは複数の前記超砥粒間に位置して複数の前記超砥粒を結合する複数のボンドブリッジを有し、
前記超砥粒層の断面において複数の前記超砥粒の80%以上は前記ボンドブリッジにより隣接する前記超砥粒と結合されており、
前記超砥粒層の断面の複数の前記ボンドブリッジにおいて、厚みが前記超砥粒の平均粒径以下で厚みより長さの大きいものが90%以上存在し、
前記超砥粒層は前記超砥粒を20体積%以上60体積%以下含み、
2つの前記超砥粒間に前記ボンドブリッジが存在し、隣り合う前記2つの超砥粒間で距離が最も近接する箇所を結び、この距離を前記厚みとし、前記厚みの中間点で前記厚みに対する垂線が前記ボンドブリッジ内で延びる距離を前記長さとする、ビトリファイドボンド超砥粒ホイール。
【請求項2】
前記超砥粒層において、前記ビトリファイドボンド、前記超砥粒および気孔の合計の体積割合が99%以上である、請求項1に記載のビトリファイドボンド超砥粒ホイール。
【請求項3】
前記ビトリファイドボンドは、SiOを30質量%以上60質量%以下、Alを2質量%以上20質量%以下、Bを10質量%以上40質量%以下、RO(ROはCaO、MgO、およびBaOより選ばれる1種類以上の酸化物)を1質量%以上10質量%以下、RO(ROは、LiO、NaOおよびKOより選ばれる1種類以上の酸化物)を2質量%以上5質量%以下含む、請求項1または2に記載のビトリファイドボンド超砥粒ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビトリファイドボンド超砥粒ホイールに関する。本出願は、2017年10月11日に出願した日本特許出願である特願2017-197407号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来、ビトリファイドボンド超砥粒ホイールはたとえば特開2002-224963号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-224963号公報
【発明の概要】
【0004】
この発明に従ったビトリファイドボンド超砥粒ホイールは、台金と、台金に設けられた超砥粒層とを備え、超砥粒層は、複数の超砥粒と、複数の超砥粒を結合するビトリファイドボンドとを含み、ビトリファイドボンドは複数の超砥粒間に位置して複数の超砥粒を結合する複数のボンドブリッジを有し、複数の超砥粒の80%以上はボンドブリッジにより隣接する超砥粒と結合されており、超砥粒層の断面の複数のボンドブリッジにおいて、厚みが超砥粒の平均粒径以下で厚みより長さの大きいものが90%以上存在する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施の形態1に従ったビトリファイドボンド超砥粒ホイールの超砥粒層の模式図である。
図2図2は、実施の形態2に従ったビトリファイドボンド超砥粒ホイールの超砥粒層の模式図である。
図3図3は、実施の形態2に従ったビトリファイドボンド超砥粒ホイールの超砥粒層の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
従来の技術では、寿命が短いという問題があった。そこでこの発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、寿命が長いビトリファイドボンド超砥粒ホイールを提供することを目的とするものである。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の実施形態について、説明する。この発明の実施形態に従ったビトリファイドボンド超砥粒ホイールは、台金と、台金に設けられた超砥粒層とを備え、超砥粒層は、複数の超砥粒と、複数の超砥粒を結合するビトリファイドボンドとを含み、ビトリファイドボンドは複数の超砥粒間に位置して複数の超砥粒を結合する複数のボンドブリッジを有し、複数の超砥粒の80%以上はボンドブリッジにより隣接する超砥粒と結合されており、超砥粒層の断面の複数のボンドブリッジにおいて、厚みが超砥粒の平均粒径以下で厚みより長さの大きいものが90%以上存在する。
【0007】
超砥粒層は超砥粒を20体積%以上60体積%以下含んでいてもよい。超砥粒の割合をこの範囲とすることで、切れ味をより一層向上させることができる。
【0008】
超砥粒層において、ビトリファイドボンド、超砥粒および気孔の合計の体積割合が99%以上であってもよい。この範囲であれば不純物が少なく、超砥粒層の寿命を一層向上されることができる。好ましくは上記体積割合は99.5%以上、より好ましくは99.9%以上である。最も好ましくは超砥粒層は、ビトリファイドボンド、超砥粒、気孔および不可避不純物のみからなる。
【0009】
ビトリファイドボンドは、SiOを30質量%以上60質量%以下、Alを2質量%以上20質量%以下、Bを10質量%以上40質量%以下、RO(ROはCaO、MgO、およびBaOより選ばれる1種類以上の酸化物)を1質量%以上10質量%以下、RO(ROは、LiO、NaOおよびKOより選ばれる1種類以上の酸化物)を2質量%以上5質量%以下含んでいてもよい。
【0010】
ビトリファイドボンド超砥粒ホイールは、SiC、GaN、サファイアの硬脆材料のほかシリコン、LT(リチウムタンタレイト)など脆弱材料ウエハを切断および加工するためのものである。
【0011】
従来、半導体ウエハなどの研削加工においてビトリファイドボンドホイールが用いられる。
【0012】
ビトリファイドボンド超砥粒ホイールでは、二酸化ケイ素などを主成分とするガラス質のボンド材で砥粒を結合するため砥粒保持力が強く、長時間の研削が可能な反面、砥粒保持力が高く自生発刃作用が不十分なため、研削加工を継続するにつれて研削抵抗値が高くなり、研削抵抗値が安定しない場合があった。
【0013】
特許文献1のビトリファイドボンド超砥粒ホイールは、気孔径を制御し、特定の組成のビトリファイドボンドとすることで、PCD(多結晶ダイヤモンド)などの難削材の研削加工において、砥粒を強固に保持するとともに、脱落した砥粒を気孔部分に保持できるようにして、加工面にスジが入るのを防止したものである。PCDなどの難削材の加工においては、良好な切れ味を維持するため、研削加工と同時に砥粒層のドレッシングも行いながら、加工を行う。
【0014】
ところで、半導体ウエハなどの加工においては、ホイールを取り付けた機上でドレッシングを行った後は、ドレッシングをせずに良好な切れ味が長時間継続することとホイールの寿命が長いことが要求される。
【0015】
本発明者は、ビトリファイドボンド超砥粒ホイールにおいて長時間の研削を可能にするため、鋭意検討を行った。その結果、ビトリファイドボンドの分散状態が、ビトリファイドボンド超砥粒ホイールの性能に影響を与えていることが分かった。
【0016】
従来のビトリファイドボンド超砥粒ホイールでは、超砥粒はビトリファイドボンドで強固に保持されているが、超砥粒とビトリファイドボンドの分散状態はバラツキが大きい。このようなホイールで、半導体ウエハなどの研削加工を行うと、自生発刃作用がうまく継続されず切れ味が悪化したり、超砥粒とビトリファイドボンドの固まりが脱落してホイール寿命が短くなる恐れがある。
【0017】
この点を解消することで、良好な切れ味が長時間継続でき、長寿命が実現できるビトリファイドボンド超砥粒ホイールを提供できることを見出した。具体的には、超砥粒およびビトリファイドボンドの分布をできるだけ均一にするとともに、超砥粒を結合するビトリファイドボンドの厚みを薄くして過剰に結合力を高くせず、自生発刃作用が適度に行われるようにして、切れ味が良好で寿命も延びる超砥粒層を提供することができる。
【0018】
図1は、実施の形態1に従った超砥粒層の断面図である。図1では、2つの超砥粒11,12間に単独でボンドブリッジ21が存在する。隣り合う2つの超砥粒11,12間で距離が最も近接する箇所を結び、この距離(矢印101の長さ)を「厚み」とする。厚みの中間点で厚みに対する垂線がボンドブリッジ21内で延びる長さ(矢印102の長さ)を「長さ」とする。ビトリファイドボンド20はボンドブリッジ21を有する。超砥粒層1には、図1で示したボンドブリッジ21のみでなく、複数のボンドブリッジ21が存在する。
【0019】
図2は、実施の形態2に従った超砥粒層の断面図である。図2では、複数のボンドブリッジ21が一体となっている場合には、各超砥粒毎にボンドブリッジ21の厚みと長さを定義する。超砥粒11と超砥粒12との間において、点線31は超砥粒11,12の一方側における最外周を結ぶ外接直線であり、点線32は超砥粒11,12の他方側における最外周を結ぶ外接直線である。超砥粒11,12間で距離が最も近接する箇所を結びこの距離(矢印101の長さ)をボンドブリッジ21の厚みとし、厚みの中間点で厚みに対する垂線が点線31,32間で延びる長さ(矢印102の長さ)を長さとする。点線31,32で囲まれた領域をボンドブリッジ21とみなす。
【0020】
図3は、実施の形態2に従った超砥粒層の断面図である。超砥粒13と超砥粒12との間において、点線31は超砥粒1,12の一方側における最外周を結ぶ外接直線であり、点線32は超砥粒13,12の他方側における最外周を結ぶ外接直線である。超砥粒13,12間で距離が最も近接する箇所を結びこの距離(矢印101の長さ)をボンドブリッジ21の厚みとし、厚みの中間点で厚みに対する垂線が点線31,32間で延びる長さ(矢印102の長さ)を長さとする。点線31,32で囲まれた領域をボンドブリッジ21とみなす。
【0021】
超砥粒11,12,13の平均粒径は、好ましくは0.1~100μmとする。超砥粒11,12,13はダイヤモンドまたはCBNである。
【0022】
[ビトリファイドボンドの成分]
ビトリファイドボンド20の成分は特に限定されるものではない。たとえば、ビトリファイドボンド20は、SiOを30質量%以上60質量%以下、Alを2質量%以上20質量%以下、Bを10質量%以上40質量%以下、RO(ROはCaO、MgO、およびBaOより選ばれる1種類以上の酸化物)を1質量%以上10質量%以下、RO(ROは、LiO、NaOおよびKOより選ばれる1種類以上の酸化物)を2質量%以上5質量%以下含む。
【0023】
[ボンドブリッジの測定方法]
ボンドブリッジ21を測定する場合には、超砥粒層1の断面において、超砥粒11,12,13が100ヶ程度含まれる大きさの正方形の範囲を選択する。
【0024】
ボンドブリッジ21寸法の規定は、上記の実施の形態1および2で示す通りである。超砥粒層1をダイヤモンドカッターで切断し、切断した面が露出するように超砥粒層1の周囲をエポキシ樹脂で包むように埋めて、切断面をイオンミリング法で研磨する。研磨面をSEM(scanning electron microscope)で観察および撮像する。撮影された写真において超砥粒11,12,13はグレーに見え、ビトリファイドボンド20は白に近いグレーに、気孔は黒に近いグレーに見える。撮影された写真の上に透明のシートを載置し、観察者が、透明シートに超砥粒11,12,13およびビトリファイドボンド20をトレースする。点線31,32も観察者が記載する。さらに、観察者によって、ボンドブリッジ21の厚みおよび長さを求める。
【0025】
[体積割合の測定方法]
上記のSEMで観察および撮像した写真の上に、新たな透明シートを載置して超砥粒に該当する部分のみを観察者がトレースして黒く塗る。画像解析ソフトを用いて黒い部分とそれ以外の部分とに二値化して画像解析ソフトが黒い部分の面積割合を求める。これを超砥粒の面積割合とする。
【0026】
上記のSEMで観察および撮像した写真の上に、新たな透明シートを載置してビトリファイドボンドに該当する部分のみを観察者がトレースして黒く塗る。画像解析ソフトを用いて黒い部分とそれ以外の部分とに二値化して画像解析ソフトが黒い部分の面積割合を求める。これをビトリファイドボンドの面積割合とする。
【0027】
上記のSEMで観察および撮像した写真の上に、新たな透明シートを載置して気孔に該当する部分のみを観察者がトレースして黒く塗る。画像解析ソフトを用いて黒い部分とそれ以外の部分とに二値化して画像解析ソフトが黒い部分の面積割合を求める。これを気孔の面積割合とする。
【0028】
求めた面積割合を、超砥粒、ビトリファイドボンドおよび気孔の体積割合とみなす。
[超砥粒の平均粒径の測定方法]
ビトリファイドボンド超砥粒ホイール中に含まれる超砥粒の平均粒径を測定するには、超砥粒層の結合材全体を酸などによって溶かして超砥粒を取り出す。超砥粒ホイールが大きい場合は、超砥粒層を所定の体積(例えば、0.5cm)だけ切り取って、ビトリファイドボンド材を酸などで溶解して超砥粒を取り出し、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、SALDシリーズ)で測定して、平均粒径を測定する。
【0029】
[ビトリファイドボンド超砥粒ホイールの製造方法]
ビトリファイドボンド超砥粒ホイールを製作するには、以下の手順で行う。
【0030】
(1)超砥粒とビトリファイドボンドを混合し、焼結する。焼結の温度は700~900℃とする。
【0031】
(2)超砥粒とビトリファイドボンドの焼結体をボールミルに入れて粉砕する。
(3)粉砕した焼結体とビトリファイドボンドの粒を混合し、再度成形・焼結する。
【0032】
(1)で超砥粒とビトリファイドボンドの混合比率を調整したり、(2)で粉砕する時間などを調節することによっても、粉砕したときの超砥粒に付着したビトリファイドボンドの量を制御できる。
【0033】
超砥粒同士の結合力が極度に高くないため、長時間安定した切れ味が継続でき、しかも超砥粒とビトリファイドボンドが固まって脱落することも大幅に減少するため、寿命も向上する。これにより、従来ホイールと表面粗さは同等でありながら低負荷、低摩耗の研削が可能になった。
【0034】
超砥粒層にフィラーが含まれていないので、過度に結合力が高くなるのを防止し、適度に超砥粒が脱落して、自生発刃作用が行われるので、切れ味が良好な状態が長時間継続される。フィラーがあると、フィラーとビトリファイドボンドの結合力が高くなり、フィラー周辺の超砥粒が単独で脱落しにくくなり、しかもフィラーが無い部分の超砥粒の結合力と比較すると、フィラー周辺の結合力が高くなるため、フィラー、超砥粒およびビトリファイドボンドの固まりが脱落する現象が生じるため、超砥粒層の摩耗が大きくなることがあり、ホイールの寿命が短くなる。
【0035】
超砥粒層の断面を平面的に見たときに、超砥粒の80%以上というほとんどの超砥粒がビトリファイドボンドで結合されているので、超砥粒が個々に脱落することも少なく、ビトリファイドボンドのボンドブリッジの厚みが厚くないため、適度な結合力となり、結合力が高すぎることもなく、超砥粒とビトリファイドボンドの固まりが脱落することも抑制できる。3次元で見たときにすべての超砥粒がボンドブリッジにより結合されていても、2次元で見たときには結合されていないように見える超砥粒が存在する。断面において80%以上の超砥粒にボンドブリッジが形成されて結合されていれば、個々に脱落してしまう超砥粒は非常に少なくなり、超砥粒層の摩耗は少なくなる。超砥粒層全体の結合力は、高い所と低い所の差が小さく、全体的にバランスが良いので、均一に摩耗する。より好ましくは、超砥粒層の断面において複数の超砥粒の90%以上、さらに好ましくは95%以上はボンドブリッジにより隣接する超砥粒と結合されている。
【0036】
超砥粒層の断面の複数のボンドブリッジにおいて、厚みが超砥粒の平均粒径以下で厚みより長さの大きいものが90%以上存在することで、超砥粒層が自生発刃しやすくなる。その結果、切れ味が向上して工具を回転させるための負荷電流値を低くすることができる。
【0037】
特許文献1は、超砥粒とガラスの分散状態が不均一で、ガラスの固まりのような部分もあるため、結合度が高くなり、この固まりが脱落する恐れがある。
【0038】
実施形態の発明は、超砥粒層全体にわたり、できるだけ均一にビトリファイドボンドを薄く分散させ、超砥粒の結合力を極度に高くせず、結合力のバラツキを小さくして、均一に摩耗させる。
【0039】
[本発明の実施形態の詳細]
(実施例1)
SiOを43.5質量%、Alを15.5質量%、Bを32.0質量%、RO(ROはCaO、MgO、およびBaOより選ばれる1種類以上の酸化物)を4.0質量%、RO(ROは、LiO、NaOおよびKOより選ばれる1種類以上の酸化物)を5質量%含むビトリファイドボンドを準備した。ビトリファイドボンドの平均粒径は、5μmであった。
【0040】
超砥粒として、ダイヤモンドを準備した。ダイヤモンドの平均粒径は7μmであった。
ビトリファイドボンドとダイヤモンドとをミキサーで混合し、温度800℃で焼結した。焼結体をボールミルで2時間粉砕した。2時間経過後、粉砕物の平均粒径が20μmを超えていたので、粉砕物の平均粒径が20μm程度になるまで粉砕を続けた。
【0041】
粉砕物とビトリファイドボンドとを混合して再度成形および焼結して超砥粒層を作成した。超砥粒層を溶かしてダイヤモンドの平均粒径を測定した。超砥粒層を切断して分析した。それらの結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同じ原料を用いて、製造方法において焼結体をボールミルで粉砕する時間を変更することにより超砥粒層を製造した。超砥粒層を溶かしてダイヤモンドの平均粒径を測定した。超砥粒層を切断して分析した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同じ原料を用いて、製造方法においてビトリファイドボンドの割合を変更することにより超砥粒層を製造した。超砥粒層を溶かしてダイヤモンドの平均粒径を測定した。超砥粒層を切断して分析した。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同じ原料を用いて、製造方法において超砥粒とビトリファイドボンドの焼結体を粉砕することなく、1回の焼結で超砥粒層を作製する方法に変更することにより超砥粒層を製造した。超砥粒層を溶かしてダイヤモンドの平均粒径を測定した。超砥粒層を切断して分析した。結果を表4に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
実施例1から3および比較例1の超砥粒層からなるチップを、接着剤を用いてアルミニウム合金製の台金に接着し、その後、在来砥石を用いてツルーイング・ドレッシングを行い、ビトリファイドボンド超砥粒ホイールを完成させた。
【0050】
ホイールのサイズは外径200mm、超砥粒層の半径方向の幅は4mm、超砥粒層の厚みは5mmのセグメント型カップホイール(JIS B4131 6A7S型)である。
【0051】
これらのビトリファイドボンド超砥粒ホイールを縦型ロータリーテーブル方式の平面研削盤に取り付け、直径6インチ(15.24cm)のSiCウエハの研削加工を行って、寿命および切れ味の効果を確認した。
【0052】
その結果を表5に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
寿命の評価において、ウエハを100枚加工して寿命になったものを1.0としている。たとえば、ウエハを300枚加工できれば、寿命は3である。
【0055】
評価Aは、寿命が3以上、評価Bは寿命が1.5以上3未満、評価Cは寿命が0.5以上1.5未満であることを示す。
【0056】
切れ味の評価では、比較例1の研削加工中の主軸モーターの平均負荷電流値を1として、それに対する実施例における切削中の主軸モーターの相対的な負荷電流値(相対電流値といい、(実施例の研削加工中の主軸モーターの負荷電流値)/(比較例1の研削加工中の主軸モーターの平均負荷電流値)で定義される)とウエハの加工枚数と考慮して評価を作成した。
【0057】
評価aは、終始、相対電流値が0.5未満でウエハ300枚以上加工できることを示す。評価bは、最初は相対電流値が0.5未満だが、ウエハ300枚加工後は上昇し0.5以上0.7未満となることを示す。評価cは、最初から相対電流値が0.7以上であることを示す。
【0058】
実施例1から3では、比較例1と比較して寿命および切れ味が向上していることが分かった。
【0059】
その理由として、実施例1では、超砥粒の90%以上をボンドブリッジで結合することによって摩耗を低減できるからと考えられる。ボンドブリッジの厚みが超砥粒の平均粒径以下で厚みより長さの大きいものが90%以上存在するので、自生発刃しやすく負荷電流値を低くすることができる。
【0060】
実施例2では、実施例1よりさらに多く(95%以上)の超砥粒をボンドブリッジで結合し、ボンドブリッジ厚みも好ましい状態になり、さらに低負荷、長寿命化の傾向が出ている。
【0061】
実施例3では、実施例1および2よりは、隣接する超砥粒がボンドブリッジで結合された割合が80%程度と少し低くなっているため寿命が短くなり、切れ味は加工が進むにつれて電流値が大きくなる。
【0062】
比較例1では、ガラスが偏析し、結合力が強固なものと弱いものが混在しているため、砥粒層の固まりが脱落する傾向がある。
【0063】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 超砥粒層、11,12,13 超砥粒、20 ビトリファイドボンド、21 ボンドブリッジ。
図1
図2
図3