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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】トノカバー、及び、トノカバー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20221220BHJP
   F21V 17/00 20060101ALI20221220BHJP
   B60Q 3/30 20170101ALI20221220BHJP
   B60Q 3/64 20170101ALI20221220BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60R5/04 T
F21V17/00 402
B60Q3/30
B60Q3/64
F21V8/00 282
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019553732
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2018037147
(87)【国際公開番号】W WO2019097880
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2017221501
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】浅井 寛晃
(72)【発明者】
【氏名】長縄 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】土本 芳裕
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108666(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007057079(DE,A1)
【文献】特開2012-020679(JP,A)
【文献】特開2001-191854(JP,A)
【文献】特開2017-094801(JP,A)
【文献】特開2001-229723(JP,A)
【文献】特開2007-250304(JP,A)
【文献】国際公開第2018/167977(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/167979(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第10260984(DE,A1)
【文献】特開平07-125574(JP,A)
【文献】特開2004-042699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
F21V 17/00
B60Q 3/30
B60Q 3/64
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な荷室用ドアを備える車両に用いられる折り畳み可能なトノカバーであって、
柔軟性を有するカバー本体と、
該カバー本体において奥側縁部、ドア側縁部、左側縁部、及び、右側縁部を含む縁部を縁取る縁取り部と、
該縁取り部に設けられ、前記カバー本体を囲む曲げ可能なワイヤーと、
前記荷室用ドアが開くと前記ドア側縁部が吊り上がるように前記荷室用ドアに引っ掛かる部位と、
前記カバー本体の前記奥側縁部の左右両側に配置された端部保持部と、
左側の前記端部保持部に保持された左端部、右側の前記端部保持部に保持された右端部、及び、前記カバー本体の曲がった縁部に沿って曲がった部位を有し、前記左端部から前記カバー本体における前記左側縁部、前記ドア側縁部、及び、前記右側縁部に沿って前記右端部まで設けられ、端部から入射した光を側面から視認可能に出す曲げ可能な長手状の導光体と、を備え
前記導光体は、前記トノカバーが内装部材に取り付けられたときに光が前記トノカバーの下側に出る位置に設けられている、トノカバー。
【請求項2】
前記端部保持部は、前記縁取り部よりも外側へ出て該外側からの光を通す状態で前記導光体の端部を前記外側に向けて保持し、
前記トノカバーは、前記導光体を保持して前記縁取り部に縫い込まれた縫代部をさらに備え、
前記ワイヤーは、前記縁取り部の中にあり、
前記導光体は、前記縁取り部の外に透明糸で保持されている、請求項1に記載のトノカバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のトノカバーと、
該トノカバーが取り付けられる内装部材と、を備え、
該内装部材は、前記トノカバーの方へ光を出す光出射部を有し、
前記導光体の端部は、前記光出射部に対向し、
前記光出射部は、前記導光体の端部に近付く方向、及び、前記導光体の端部から離れる方向へ移動可能であり、
前記内装部材は、前記導光体の端部に近付ける力を前記光出射部に加える付勢部を有し、
前記端部保持部は、前記縁取り部よりも前記光出射部の方へ出て前記光出射部からの光を通す状態で前記導光体の端部を前記光出射部の方に向けて保持し、
前記内装部材は、前記端部保持部を受ける凹部を有して前記光出射部からの光を通す受け部材を有する、トノカバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられる折り畳み可能なトノカバー、及び、トノカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハッチバック、ステーションワゴン、等の自動車には、後部の荷室を開閉するため、後部扉(Tailgate)が設けられることがある。このような自動車等には、荷室内の荷物等が車外から視認されないようにするため、荷室の上方位置にトノカバーを略水平方向に展開して荷室の上部を遮蔽可能なトノカバーが設けられることがある。また、このようなトノカバーを荷室から取り外すことにより、トノカバーの仕切り位置よりも高い荷物を荷室に収容することができる。
【0003】
特開2014-108666号公報には、折り畳み可能なトノカバーが示されている。このトノカバーは、シートの縁取り部材で直線ワイヤーと湾曲ワイヤーとが包まれ、突起状の結合部が形成された第一の部材と凹状の被結合部が形成された第二の部材とで直線ワイヤーと湾曲ワイヤーとが連結されている。このトノカバーを捩って折り畳み、突起状の結合部と凹状の被結合部とを結合すると、トノカバーの折り畳み状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-108666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
荷室は後部扉から奥にあるため、荷室に収容されている荷物が見え難いことがある
【0006】
本発明は、折り畳み可能なトノカバー近傍を見易くすることが可能な技術を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、開閉可能な荷室用ドアを備える車両に用いられる折り畳み可能なトノカバーであって、
柔軟性を有するカバー本体と、
該カバー本体において奥側縁部、ドア側縁部、左側縁部、及び、右側縁部を含む縁部を縁取る縁取り部と、
該縁取り部に設けられ、前記カバー本体を囲む曲げ可能なワイヤーと、
前記荷室用ドアが開くと前記ドア側縁部が吊り上がるように前記荷室用ドアに引っ掛かる部位と、
前記カバー本体の前記奥側縁部の左右両側に配置された端部保持部と、
左側の前記端部保持部に保持された左端部、右側の前記端部保持部に保持された右端部、及び、前記カバー本体の曲がった縁部に沿って曲がった部位を有し、前記左端部から前記カバー本体における前記左側縁部、前記ドア側縁部、及び、前記右側縁部に沿って前記右端部まで設けられ、端部から入射した光を側面から視認可能に出す曲げ可能な長手状の導光体と、を備え
前記導光体は、前記トノカバーが内装部材に取り付けられたときに光が前記トノカバーの下側に出る位置に設けられている、態様を有する。
【0009】
また、本発明のトノカバー装置は、上述したトノカバーと、
該トノカバーが取り付けられる内装部材と、を備え、
該内装部材は、前記トノカバーの方へ光を出す光出射部を有し、
前記導光体の端部は、前記光出射部に対向し、
前記光出射部は、前記導光体の端部に近付く方向、及び、前記導光体の端部から離れる方向へ移動可能であり、
前記内装部材は、前記導光体の端部に近付ける力を前記光出射部に加える付勢部を有し、
前記端部保持部は、前記縁取り部よりも前記光出射部の方へ出て前記光出射部からの光を通す状態で前記導光体の端部を前記光出射部の方に向けて保持し、
前記内装部材は、前記端部保持部を受ける凹部を有して前記光出射部からの光を通す受け部材を有する、態様を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、折り畳み可能なトノカバー近傍を見易くする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、後部扉(Tailgate)が開きトノカバーの後縁部が吊り上がっている状態の自動車の後部の例を模式的に示す斜視図。
図2図2は、後部扉が閉じている状態の自動車の後部内装の例を模式的に示す図。
図3図3は、トノカバー装置の要部の例を模式的に示す分解斜視図。
図4図4は、トノカバーの裏側の例を模式的に示す底面図。
図5図5は、トノカバーの縁部を含む要部の例を図4のA1-A1の位置において模式的に示す断面図。
図6図6は、トノカバー装置の寸法ばらつきの例を模式的に説明するための図。
図7図7は、トノカバー装置の付勢部を含む要部の例を模式的に示す断面図。
図8図8Aは端部保持部材の表側における外観の例を模式的に示す斜視図、図8Bは端部保持部材の裏側における外観の例を模式的に示す斜視図。
図9図9A~9Cはトノカバーの製造方法の例を模式的に示す断面図。
図10図10は、トノカバーの取り付け方法の例を模式的に示す斜視図。
図11図11は、後部扉が開きトノカバーの後縁部が吊り上がっていない状態の自動車の後部の例を模式的に示す図。
図12図12は、トノカバーの折り畳み方法の例を模式的に示す図。
図13図13は、トノカバー装置の電気回路の例を模式的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0013】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~13に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
【0014】
[態様1]
本技術の一態様に係る折り畳み可能なトノカバー2は、柔軟性を有するカバー本体10、該カバー本体10の縁部11を縁取る縁取り部(例えば図5等に示す縁取り部材20)、該縁取り部(20)に設けられた曲げ可能なワイヤー30、及び、曲げ可能な長手状の導光体40を備え、車両に用いられる。前記ワイヤー30は、前記カバー本体10を囲んでいる。前記導光体40は、前記カバー本体10の縁部11に沿って設けられ、端部41から入射した光L1を側面42から視認可能に出す。
【0015】
上記態様1では、導光体40の端部41に入射した光L1が導光体40の側面42から視認可能に出ることにより、トノカバー2の近傍が照らされ、荷室LR1の視認性が向上する。また、ワイヤー30と導光体40は曲げ可能であるので、トノカバー2を折り畳むことができる。従って、本態様は、トノカバー近傍を見易くする折り畳み可能なトノカバーを提供することができる。
【0016】
ここで、カバー本体の概念には、シート、スクリーン、シェード、ブラインド、等が含まれる。
縁取り部は、カバー本体に接合された別の部材でもよいし、カバー本体を含むシート状部材の端末部が折り返された部位といったカバー本体を含む共通部材の一部でもよい。
縁取り部に設けられるワイヤーは、1本でもよいし、2本以上に分割されてもよい。
カバー本体の縁部に沿って設けられる長手状の導光体は、1本でもよいし、2本以上でもよい。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0017】
[態様2]
図4,7等に例示するように、本トノカバー2は、前記縁取り部(20)よりも外側20oへ出て該外側20oからの光L1を通す状態で前記導光体40の端部41を前記外側20oに向けて保持する端部保持部(例えば端部保持部材60)をさらに備えてもよい。図5等に例示するように、前記導光体40は、前記トノカバー2が内装部材3に取り付けられたときに光L1が前記トノカバー2の下側に出る位置に設けられてもよい。本態様は、導光体40の端部41に対向して光L1を出す光出射部80を車両本体に設けることにより、光出射部80から導光体40の端部41に入射した光L1がトノカバー2の下側に出る。これにより、トノカバー2の下側が照らされ、荷室LR1の下部の視認性が向上する。従って、本態様は、トノカバーに光源が無くてもトノカバーの下の空間を見易くすることができる。
【0018】
[態様3]
図5に例示するように、本トノカバー2は、前記導光体40を保持して前記縁取り部(20)に縫い込まれた縫代部50をさらに備えてもよい。前記ワイヤー30は、前記縁取り部(20)の中にあってもよい。前記導光体40は、前記縁取り部(20)の外にあってもよい。図4等に例示するように、前記導光体40は、前記カバー本体10の曲がった縁部12に沿って曲がった部位43を有してもよい。本態様は、トノカバー近傍を見易くする好適な構造を提供することができる。
ここで、カバー本体の折れ曲がった縁部に対しては、導光体を曲線状に曲げて縁部に沿わせてもよい。これにより得られるトノカバーも、上記態様4に含まれる。一方、態様1,2においては、導光体に曲がった部位が無くてもよい。
【0019】
[態様4]
ところで、本技術の別の態様に係るトノカバー2は、柔軟性を有するカバー本体10、及び、長手状の導光体40を備え、車両に用いられる。前記導光体40は、前記カバー本体10の縁部11に沿って設けられ、前記カバー本体10の曲がった縁部12に沿って曲がった部位43を有し、端部41から入射した光L1を側面42から視認可能に出す。
【0020】
上記態様4では、導光体40の端部41に入射した光L1が導光体40の側面42から視認可能に出ることにより、トノカバー2の近傍が照らされ、荷室LR1の視認性が向上する。また、導光体40がカバー本体10の曲がった縁部12に沿って曲がった部位43を有しているので、トノカバー2の曲がった部分(縁部12)を含む縁部11の近傍が照らされ、導光体40が直線状に配置される場合と比べて荷室LR1の視認性をさらに向上させることが可能である。従って、本態様は、トノカバー近傍を見易くする好適なトノカバーを提供することができる。
尚、態様4のトノカバーは、折り畳むことができなくてもよい。
【0021】
[態様5]
また、本技術の一態様に係るトノカバー装置1は、態様1~4のいずれか一つに記載のトノカバー2、及び、該トノカバー2が取り付けられる内装部材3を備える。図7等に例示するように、前記内装部材3は、前記トノカバー2の方へ光L1を出す光出射部80を有している。前記導光体40の端部41は、前記光出射部80に対向している。前記光出射部80は、前記導光体40の端部41に近付く方向(図7では左側D2aの方)、及び、前記導光体40の端部41から離れる方向(図7では右側D2bの方)へ移動可能である。前記内装部材3は、前記導光体40の端部41に近付ける力F1を前記光出射部80に加える付勢部90を有する。
【0022】
内装部材3とトノカバー2には、寸法のばらつきが生じることがある。光出射部80が導光体40の端部41に近いと光出射部80から導光体40の端部41に入射する光の比率が比較的大きい傾向にあり、光出射部80が導光体40の端部41から遠いと光出射部80から導光体40の端部41に入射する光の比率が比較的小さい傾向にある。上記態様5では、光出射部80が導光体40の端部41に近付く方向、及び、導光体40の端部41から離れる方向へ移動可能であって、導光体40の端部41に近付ける力F1が光出射部80に加えられるので、光出射部80が導光体40の端部41に近くに保持される。これにより、導光体40の側面42から出る光L1が弱くなることが抑制される。従って、本態様は、トノカバー近傍をさらに見易くするトノカバー装置を提供することができる。
【0023】
ここで、付勢部には、ばね、ゴム、エラストマー、等といった弾性部が含まれる。ばねには、コイルばね、板ばね、等が含まれる。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0024】
[態様6]
図4,7等に例示するように、前記トノカバー2は、前記カバー本体10の縁部11を縁取る縁取り部(例えば図5等に示す縁取り部材20)よりも前記光出射部80の方へ出て前記光出射部80からの光L1を通す状態で前記導光体40の端部41を前記光出射部80の方に向けて保持する端部保持部(60)をさらに備えてもよい。前記内装部材3は、前記端部保持部(60)を受ける凹部71を有して前記光出射部80からの光L1を通す受け部材(70)を有してもよい。本態様は、トノカバー近傍を見易くする好適な構造を提供することができる。
尚、上記態様6には含まれないが、トノカバーに端部保持部が無かったり内装部材に受け部材がなかったりする場合も、本技術に含まれる。
【0025】
(2)トノカバー装置の具体例:
図1は、トノカバー装置を有する自動車の例として、荷室用ドアである後部扉(Tailgate)120が開きトノカバー2の後縁部21bが吊り上がっている状態の自動車100の後部を模式的に例示している。図2は、荷室形成部110の左側面部を省略して自動車100の後部内装を模式的に例示している。図1,2に示す自動車100は、道路上で使用されるように設計及び装備された路上走行自動車であり、後席(座席102)の前に車室が形成され後席(102)の後に荷室LR1が形成された乗用自動車であるものとする。本技術を適用可能な自動車には、前席と後席を備える2列シートタイプのモータビークル、さらにサードシートを備える3列シートタイプのモータビークル、運転席の後方であって後席の前方に荷室が形成されるモータビークル、等が含まれ、いわゆるステーションワゴンやワンボックスカー等が含まれる。
【0026】
本具体例において、左右の位置関係は、自動車100の運転席に座って前を見る方向を基準とする。ここで、符号D1は前後方向を示し、符号D1aは前側を示し、符号D1bは後側を示している。符号D2は自動車100の幅方向を示し、符号D2aは左側を示し、符号D2bは右側を示している。符号D3は上下方向を示し、符号D3aは上側を示し、符号D3bは下側を示している。これらの方向D1,D2,D3は、互いに直交するものとするが、設計等により直交しない場合も互いに交差していれば本技術に含まれる。尚、「直交」は、厳密な90°に限定されず、誤差により厳密な90°からずれることを含む。また、方向や位置等の同一は、厳密な一致に限定されず、誤差により厳密な一致からずれることを含む。さらに、各部の位置関係の説明は、例示に過ぎない。従って、左右方向を上下方向又は前後方向に変更したり、上下方向を左右方向や前後方向に変更したり、前後方向を左右方向や上下方向に変更したり、回転方向を逆方向に変更したり等することも、本技術に含まれる。
【0027】
荷室LR1は、概ね、リヤフロアパネル上の内装材で構成される荷室フロア103、座席102のシートバック102b、デッキサイドトリムといった内装材で構成される左右の側壁部材70(受け部材の例)、及び、後部扉120により区画されている。荷室形成部110は、荷室フロア103や左右の側壁部材70を有し、後部が開口部111とされている。開口部111の下部には、開口部111を塞ぐ閉位置において後部扉120の下縁部122をロックするラッチ118が設けられている。後部扉120は、閉じているときを基準とした上縁部121を回転中心として外側の上方へ開動作し下方へ閉動作するように荷室形成部110に取り付けられ、図2に例示する閉位置と図1に例示する開位置との間で双方向に回転動作する。図1,2等に示す後部扉120と荷室形成部110は上縁部121に設けられた回転軸121aにより互いに回転動作可能に繋がり、荷室形成部110が後部扉の上縁部121を軸支している。
【0028】
トノカバー2は、図2に例示するように荷室LR1の上部を略水平に覆うことにより、荷室LR1内の荷物等を後部扉120の窓ガラス等から視認し難くする。図1に例示するように後部扉120が開くことにより、荷室LR1に対して荷物等を開口部111から出し入れすることができる。
【0029】
図3は、トノカバー装置の例として、車幅方向D2の右側D2bにおけるトノカバー2と内装部材3の要部を模式的に分解して例示している。車幅方向D2の左側D2aにおけるトノカバー2と内装部材3の構造は、右側D2bにおける構造と左右対称であるので、図示を省略する。分かり易く示すため、図3ではカバー本体10を透視している。図4は、トノカバー2の裏側を模式的に例示している。図4の下部左側には、トノカバー2において導光体40が配置されている左側縁部21c近傍の要部を拡大して示している。図4の下部右側には、トノカバー2において導光体40が配置されていない前縁部21a近傍の要部を拡大して示している。図5は、トノカバー2の縁部を含む要部を図4のA1-A1の位置において模式的に例示している。図6は、トノカバー装置の寸法ばらつきの例を模式的に説明するための図である。図7は、トノカバー装置1の付勢部90を含む要部を模式的に例示している。分かり易く示すため、図7では導光体40が見えるようにしてトノカバー2の縁部21、及び、ワイヤー30の位置を二点鎖線で示している。また、図7の下部(二点鎖線の囲み内)には、図7の上部と比べて光出射部80が右側D2bに寄っていることが示されている。
【0030】
図3~7に示すトノカバー2は、カバー本体10、縁取り部材20(縁取り部の例)、ワイヤー30、長手状の導光体40、縫代部50、及び、端部保持部材60(端部保持部の例)を有している。図4に示すように、トノカバー2の縁部21には、前縁部21a(奥側縁部の例)、後縁部21b(ドア側縁部の例)、左側縁部21c、及び、右側縁部21dが含まれるものとする。図3,6,7に示す内装部材3は、側壁部材70(受け部材の例)、光出射部80、及び、付勢部90を有している。光出射部80が車両本体側にあることにより、トノカバー2が雨等で濡れても電気系統に影響せず、電池交換の負担が発生せず、光源から生じる熱を放出するヒートシンクの設定が十分なスペースにおいて可能である。
【0031】
本具体例のカバー本体10は、柔軟性を有するシート15の内、縁取り部材20で囲まれた部分(縁取り部材20よりも内側20i)とする。本具体例の縁取り部材20は、図4,5に例示するように、トノカバー2の表面2aから裏面2bにかけて折れ曲がってシート15の縁部を覆い、カバー本体10の縁部11を縁取る。縁部11は、曲がった縁部12を含む。縁取り部材20は、縫製部25から外側において袋綴じ状であり、ワイヤー30の挿入を許容する。縁取り部材20には、柔軟性を有する材料が好ましい。本具体例の縫代部50は、図5に例示するように、長手状の導光体40を保持する糸52を有し、トノカバー2の裏面2bにおいて導光体40からシート15の外側へ延びて縁取り部材20に縫い込まれている。縫代部50にも、柔軟性を有する材料を用いることができる。
【0032】
柔軟なシート15及び縁取り部材20は、遮光性を有する不透明の軟質材料が好ましい。縫代部50にも、遮光性を有する不透明の軟質材料を用いることができる。シート15と縁取り部材20は、ポリアミド繊維やポリエステル繊維といった繊維から形成されるジャージー織布やソフトレザー等、伸縮性に富みシワの発生し難い伸縮性素材が好ましい。むろん、シート15及び縁取り部材20は、柔軟性を有する材料であれば、塩化ビニル樹脂といった樹脂材料を成形したシート、塩化ビニル樹脂といった樹脂材料を用いたレザー、織物、等でもよい。縫代部50にも、ジャージー織布やソフトレザーといった伸縮性に富みシワの発生し難い伸縮性素材、塩化ビニル樹脂といった樹脂材料を成形したシート、塩化ビニル樹脂といった樹脂材料を用いたレザー、織物、等を用いることができる。
導光体40を保持する糸52は、導光体40の側面42から出る光L1を透過させる点から、無色透明な透明糸が好ましい。むろん、糸52は、着色された糸でもよく、導光体40の側面42から出る光L1が視認可能であれば、不透明の色でもよい。糸52の材料には、ポリアミド繊維やポリエステル繊維といった合成樹脂繊維等を用いることができる。
【0033】
図1,3に示すように、縁取り部材20において後縁部21bの左右両側には、後部扉120の引掛部123に引っ掛けるための紐28の一端が固定されている。例えば、図5に示す縫製部25に合わせて縁取り部材20と紐28の一端とを縫い合わせることにより、縁取り部材20に紐28の一端を固定することができる。むろん、紐28の一端の固定は、溶着でもよいし、固定部材を用いる固定でもよい。各紐28の先端には、引掛部123に引っ掛かるループ28aが形成されている。各ループ28aを引掛部123に引っ掛けると、図1に示すように後部扉120が開くとトノカバー2の後縁部21bが吊り上がる。
紐28の材料には、ポリアミド繊維やポリエステル繊維といった合成樹脂繊維等を用いることができる。
【0034】
本具体例のワイヤー30は、弾性を示す曲げ可能な線材であり、変形する力が加わると弾性変形し、この力が無くなると元の形状に復元する。ワイヤー30は、縁取り部材20の中に設けられることにより、カバー本体10を囲む。前述の弾性により、ワイヤー30は、使用しない時にトノカバー全体を小さく折り畳むことを可能にさせ、使用時にトノカバー2を元の形状に復元させる。図5に示すワイヤー30は断面長方形であるが、ワイヤーの断面形状は、円形を含む楕円形、正方形、長方形でない四角形、五角形以上の多角形、等でもよい。ワイヤー30の材料には、曲げ可能な鋼線等といった、自由に折り曲げ可能で復元力のある材料が好ましい。
【0035】
カバー本体10を囲むワイヤー30は、1本でもよいし、2本以上に分割されてもよい。2本に分割する例として、特開2014-108666号公報に示されるように、前縁部21aに配置される直線状の直線ワイヤー、及び、左側縁部21cと後縁部21bと右側縁部21dにかけて配置される湾曲した湾曲ワイヤーを用意してもよい。直線ワイヤーの左端部と湾曲ワイヤーの左端部とを左側の端部保持部材60により連結し、直線ワイヤーの右端部と湾曲ワイヤーの右端部とを右側の端部保持部材60により連結することにより、2本のワイヤーでカバー本体10を囲むことができる。
【0036】
本具体例の導光体40は、装飾照明(補助照明)として使用される。導光体40は、弾性を示す曲げ可能な長手状の光ファイバーであり、変形する力が加わると弾性変形し、この力が無くなると元の形状に復元する。図4に示すように、長尺な導光体40は、縁取り部材20の外においてカバー本体10の縁部11に沿って設けられ、端部41から入射した光L1を側面42から視認可能に出す。尚、導光体40の端部41は、左端部41aと右端部41bを総称する。導光体40の端部41の外側であり、図4に示す左側D2a及び右側D2bの方には、図3に例示する光出射部80が配置されている。各光出射部80は、導光体40の端部41に向けて、すなわち、トノカバー2の方へ光L1を出す。従って、導光体40の端部41は、光出射部80に対向している。
【0037】
本具体例では、左側縁部21cと後縁部21bと右側縁部21dにかけて長尺な導光体40が配置され、この導光体40の両端部41a,41bが図4,7に例示するように端部保持部材60の突出部63により保持されている。従って、導光体40は、カバー本体10の曲がった縁部12に沿って曲がった部位43を有している。また、図5等に示すように、導光体40は、トノカバー2が内装部材3に取り付けられたときに光L1がトノカバー2の下側に出る位置に設けられている。
【0038】
上述の弾性により、長手状の導光体40は、使用しない時にトノカバー全体を小さく折り畳むことを可能にさせ、使用時に元の形状に戻る。図5に示す導光体40は断面円形であるが、導光体の断面形状は、楕円形、正方形を含む長方形、長方形でない四角形、五角形以上の多角形、等でもよい。
【0039】
照明用の導光体40の材料には、透明な分散媒に光散乱性粒子が分散したコア材、及び、このコア材の径方向外側を覆う低屈折率の透明なクラッド材を含む光ファイバー等を用いることができる。前記コア材の分散媒には、アクリル(PMMA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、シリコーンゴムを含むシリコーン(SI)樹脂、といった、常温において固体であるが変形可能であってクラッド材よりも高屈折率で透明性を有する樹脂等を用いることができる。前記光散乱性粒子には、シリコーン(SI)樹脂粒子やポリスチレン(PS)樹脂粒子といった有機ポリマー粒子、酸化アルミニウムや酸化チタンや酸化ケイ素といった金属酸化物粒子、硫酸バリウムといった硫化塩粒子、炭酸カルシウムといった炭酸塩粒子、これらの組合せ、等を用いることができる。光散乱性粒子の平均粒径は、例えば、0.1~100μm程度とすることができる。コア材に対する光散乱性粒子の配合割合は、例えば、0.00001~0.1重量%程度とすることができる。前記クラッド材には、ポリジメチルシロキサンポリマーやポリメチルフェニルシロキサンポリマーといったシリコーン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)といった、コア材よりも低屈折率で透明性を有する樹脂等を用いることができる。
【0040】
上記コア材及び上記クラッド材は、無色透明の材料が好ましいものの、光L1を透過させる限り、着色された材料でもよい。
【0041】
本具体例の端部保持部材60は、図4,7に例示するように、縁取り部材20よりも外側20oへ出て該外側20oからの光L1を通す状態で導光体40の端部41を外側20oに向けて保持する突出部63を有している。図3に例示するように、突出部63には、外側20oから光L1を入射させる光照射部80が対向している。従って、端部保持部材60は、縁取り部材20よりも光出射部80の方へ出て光出射部80からの光L1を通す状態で導光体40の端部41を光出射部80の方に向けて保持している。
【0042】
図3に示す端部保持部材60は、アッパーカバー62とロアカバー66に分割されている。図4,7に示すアッパーカバー62は、導光体40の端部41を通す貫通穴63aが形成された突出部63を有している。突出部63の穴63aに幅方向D2の内側から導光体40の端部41を通して設計位置で固定すると、導光体40の端部41が外側20oに向いた状態で保持される。突出部63に対する端部41の固定には、摩擦力による固定、接着剤による固定、等が含まれる。中にワイヤー30が配置されカバー本体10を縁取っている縁取り部材20とともに導光体40を挟んだ状態でアッパーカバー62とロアカバー66とをねじ69で互いに固定すると、前縁部21aの左右両側に端部保持部材60が配置される。
【0043】
端部保持部材60の材料には、ポリプロピレン(PP)樹脂といったポリオレフィン樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、といった熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの樹脂に着色剤や充てん材等といった添加剤が添加されてもよい。
【0044】
本具体例の側壁部材70は、デッキサイドトリムである。側壁部材70は、図3,7に例示するように、端部保持部材60を受ける凹部71を有し、光出射部80から導光体40の端部41への光L1を通す。図10も参照して説明すると、凹部71は、端部保持部材60の突出部63を入れるための開口71aを上部に有し、突出部63を下部まで誘導するための開口71bを車幅方向D2の内側に有している。凹部71の下部の奥(車幅方向外側)には、キャッチ部材72の凹部72aが配置されている。これにより、図7に示すように、凹部71の下部において突出部63がキャッチ部材72の凹部72aに位置決めされ、導光体40の端部41が光出射部80の光源81aに対向する。
【0045】
側壁部材70の材料には、樹脂材料を射出成形した基材、樹脂材料を発泡させて射出成形した基材、繊維を集合させてプレス成形した基材、等を用いることができる。前記樹脂材料には、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリエチレン(PE)樹脂といったポリオレフィン樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、等を用いることができる。前記繊維には、熱可塑性樹脂といった合成樹脂(エラストマーを含む)の繊維、合成樹脂に添加剤を添加した繊維、ガラス繊維といった無機繊維、等を用いることができる。熱可塑性樹脂繊維には、PP樹脂やPEといったポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂といったポリエステル樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、等の繊維を用いることができる。
【0046】
本具体例の光出射部80は、図3,7に例示するように、光源基板81、アウターケース82、及び、インナーケース83を有している。光源基板81は、光源81aを有し、この光源81aを車幅方向D2の内側に向けて配置される。アウターケース82は、光源81aから車幅方向内側へ向かう光L1を通す開口を有し、光源基板81の車幅方向内側を覆う。インナーケース83は、光源基板81の車幅方向外側を覆い、アウターケース82と嵌め合わされる。従って、光出射部80は、トノカバー2の方へ光L1を出す。
【0047】
本具体例の付勢部90は、図3,7に例示するように、圧縮コイルばね91(弾性部材の例)、ばねカバー92、及び、ねじ93を有している。ばねカバー92は、光出射部80の車幅方向外側に接触したばね91を収容した状態でキャッチ部材72の車幅方向外側に配置され、ねじ93によりキャッチ部材72に固定される。光出射部80は、キャッチ部材72とばねカバー92との間において、導光体40の端部41に近付く方向(図7では左側D2aの方)、及び、導光体40の端部41から離れる方向(図7では右側D2bの方)へ移動可能に配置される。ばねカバー92に収容されたばね91は、導光体40の端部41に近付ける力F1を光出射部80に加える。
ばね91は、上記力F1を光出射部80に加えることができればよく、圧縮コイルばね以外にも、引っ張りコイルばね、板ばね、等も用いることができる。また、ばねの代わりに、ゴムやエラストマー等の弾性部材を用いてもよい。
【0048】
上述したキャッチ部材72、アウターケース82、インナーケース83、及び、ばねカバー92の材料には、PP樹脂といったポリオレフィン樹脂、POM樹脂、PBT樹脂、PA樹脂、といった熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの樹脂に着色剤や充てん材等といった添加剤が添加されてもよい。
【0049】
次に、図6を参照して、内装部材3に付勢部90を設けた理由を説明する。
図6に示す側壁部材70は、デッキサイドトリムであり、車幅方向D2の両側D2a,D2bにおいて、樹脂クリップ131によりインナーパネル130に固定されている。トノカバー2の幅方向D2の両側縁部21c,21dは、側壁部材70の凹部71に配置される。
【0050】
自動車100の各部品の形状には、ばらつきが生じる。ここで、左右のインナーパネル130間の距離をW1、左側D2aにおけるインナーパネル130から側壁部材70の凹部71の奥までの距離をW2、トノカバー2の左右の側縁部21c,21d間の間隔をW3、及び、右側D2bにおけるインナーパネル130から側壁部材70の凹部71の奥までの距離をW4とする。距離W1の寸法ばらつきをX1とし、距離W2の寸法ばらつきをX2とし、距離W3の寸法ばらつきをX3とし、距離W4の寸法ばらつきをX4とすると、これらの寸法ばらつきX1~X4を合わせた寸法ばらつきXは、以下の通りとなる。
X=(X12+X22+X32+X421/2
従って、幅方向D2において導光体40の端部41を保持する突出部63の位置は、寸法ばらつきを考慮して設計する必要がある。
【0051】
内装部材3に付勢部90が無い場合、車幅方向D2において導光体40の端部41と光出射部80の光源81aとの距離にばらつきが生じる。実験を行ったところ、光源81aから導光体端部41までの距離が短いと光L1の入光率が比較的高い傾向にあり、光源81aから導光体端部41までの距離が長いと光L1の漏れにより入光率が比較的低い傾向にあることが判った。尚、入光率は、導光体端部41に入る直前の入射光強度に対する導光体端部41に入った直後の光強度の百分率とする。
以上より、車両によって導光体40の側面42から出る光L1が強くなったり弱くなったりしてしまうことになる。また、同じ車両でも、側壁部材70に取り付けられたトノカバー2の車幅方向D2における位置に応じて導光体40の側面42から出る光L1が強くなったり弱くなったりしてしまう。導光体40の両端部41a,41bに光L1が入射する場合には、トノカバー2の車幅方向D2における位置に応じて左側の方が右側の方と比べて明るくなったり暗くなったりする。
【0052】
本具体例では、光源81aを含む光出射部80をキャッチ部材72とばねカバー92とにより導光体端部41に近付く方向、及び、導光体端部41から離れる方向へ移動可能に配置したうえ、ばね91により導光体端部41に近付ける力F1を光出射部80に加えている。例えば、図7の上部に示すように導光体端部41を保持している突出部63が比較的車幅方向内側(図7では左側D2a)にある場合、光出射部80はばね91からの力F1により比較的車幅方向内側(図7では左側D2a)に配置される。図7の下部(二点鎖線の囲み内)に示すように導光体端部41を保持している突出部63が比較的車幅方向外側(図7では右側D2b)にある場合、光出射部80は突出部63に押されることにより比較的車幅方向外側(図7では右側D2b)に配置される。
以上より、光源81aと導光体端部41との間が短い距離に維持され、導光体40の側面42から出る光L1が強い状態に維持される。従って、車両やトノカバー2の位置に関わらず、導光体40の側面42から略一定の強さの光L1が放出される。
【0053】
トノカバー2を使用しない場合、トノカバー2を折り畳むことができる。そこで、トノカバー2を折り畳んだ状態を保持することができると、好適である。
【0054】
図8A,8Bは、トノカバー2の折り畳み状態を保持する構造(係合部64,68)を有する端部保持部材60を模式的に例示している。図8Aは、端部保持部材60の表側にあるアッパーカバー62の外観を模式的に例示している。図8Bは、端部保持部材60の裏側にあるロアカバー66の外観を模式的に例示している。尚、端部保持部材60の各部の位置関係は、図2に示すようなトノカバー2の使用時を基準として説明する。
【0055】
図8Aに示すアッパーカバー62は、該アッパーカバー62の表面から上方へ出た係合部64を有している。この係合部64は、アッパーカバー62の上面から上方へ円柱状に延びた基部64a、及び、該基部64aの先端からさらに上方へ円柱状に短く延びた頭部64bを有している。この頭部64bの径は、基部64aの径よりも大きい。
図8Bに示すロアカバー66は、該ロアカバー66の下面から下方へ膨出した台座部68aを係合部68として有している。この台座部68aは、頭部64bが入り込む内部空間を有し、さらに、この内部空間に繋がる鍵穴状の開口68bを有している。台座部68aは、開口68bの下面部に基部64aが入って開口68bの側面部から頭部64bが内部空間に入ることを許容し、内部空間にある頭部64bが下方へ抜けないようにしている。
【0056】
以上より、トノカバー2の折り畳み状態において、ロアカバー66の開口68bから台座部68aの内部空間にアッパーカバー62の頭部64bを横方向へスライドさせて入れると、端部保持部材60同士が係合する。このようにして、トノカバー2の折り畳み状態が維持され、予期せぬタイミングで折り畳み状態が解除されることが抑制される。
尚、アッパーカバー62が係合部68を有してロアカバー66が係合部64を有してもよく、両カバー62,66ともに両係合部64,68を有してもよい。また、端部保持部材60同士を係合する構造は、図8A,8Bに示した係合部64,68に限定されず、ボタンや磁石を利用する構造等でもよい。
【0057】
(3)トノカバー装置の製造方法、作用、及び、効果:
図9A~9Cは、トノカバー2の製造方法を模式的に例示している。
本製造方法では、まず、図9Aに示すように長手状の曲げ可能な導光体40を柔軟な縫代部50に縫い込んで導光体40と縫代部50の一体物を得る。例えば、導光体40の側面42に糸52を巻いて縫代部50に縫い込むことにより、導光体40と縫代部50の一体物が得られる。次いで、導光体40が縫い込まれた縫代部50を裏面2b側において柔軟なシート15の端部に合わせる。
【0058】
次いで、図9Bに示すように、表面2aから裏面2bにかけて柔軟な縁取り部材20を折り曲げてシート15の端部と縫代部50の大部分とを覆う。シート15のうち縁取り部材20で覆われない部分がカバー本体10である。カバー本体10の縁部11よりも若干外側において、全周のうちワイヤー30を入れる場所を除いてシート15と縫代部50とを挟んだ縁取り部材20を縫製する。これにより、図9Cに示すようにカバー本体10の縁部11に沿った縫製部25が形成される。
【0059】
次いで、図9Cに示すように、縫製部25から外側において袋綴じ状の縁取り部材20に縫製部25の無い箇所から曲げ可能なワイヤー30を挿入する。ワイヤー30がカバー本体10を囲むと、折り畳み可能な状態で柔軟なカバー本体10が広がった状態に保持される。尚、縫製部25が無くワイヤー30が挿入された箇所を別の布で覆って隠してもよい。
【0060】
また、アッパーカバー62とロアカバー66は、射出成形等といった公知の成形方法により形成することができる。まず、導光体40の両端部41a,41bをそれぞれアッパーカバー62の突出部63の貫通穴63aに入れて突出部63に設計位置において固定する(図7参照)。次いで、中にワイヤー30が配置されている縁取り部材20とともに導光体40を挟んだ状態でアッパーカバー62とロアカバー66とをねじ69で互いに固定すると、図4に示すようなトノカバー2が形成される。
【0061】
次に、図3,7を参照して、内装部材3の製造方法を説明する。
側壁部材70は、プレス成形や射出成形等といった公知の成形方法により形成することができる。キャッチ部材72、アウターケース82、インナーケース83、及び、ばねカバー92は、射出成形等といった公知の成形方法により形成することができる。
【0062】
光出射部80は、光源基板81を挟んでアウターケース82とインナーケース83とを嵌め合わせることにより形成される。付勢部90は、ばねカバー92にばね91を収容し、光出射部80を挟んでキャッチ部材72とばねカバー92とをねじ93により互いに固定することにより形成することができる。これら光出射部80と付勢部90とが取り付けられたキャッチ部材72を凹部71,72a同士が合うように側壁部材70に取り付けると、内装部材3が形成される。光出射部80と付勢部90とが取り付けられたキャッチ部材72の側壁部材70への取り付けは、ねじや溶着により行うことができる。
上記内装部材3にトノカバー2を取り付けると、トノカバー装置1が形成される。
【0063】
図10は、内装部材3に対するトノカバー2の取り付け方法を模式的に例示している。車幅方向D2の左側D2aにおけるトノカバー2と内装部材3の構造は、右側D2bにおける構造と左右対称であるので、図示を省略する。右側D2bを図10に示すように、左右の突出部63を上部開口71aから側壁部材70の凹部71に入れ、凹部71の下部に配置すると、左右の突出部63がキャッチ部材72の凹部72aに位置決めされる。これにより、図7に示すように、導光体40の端部41が光出射部80の光源81aに対向する。トノカバー2の左右の側縁部21c,21dは、側壁部材70の段部に載置されて保持される。これにより、トノカバー2が略水平に配置される。
【0064】
車両本体から光源基板81に電力を供給して光源81aを点灯させると、図7に示すように、左右の光源81aから光L1が車幅方向D2の内側へ出てアウターケース82の開口を通過し、突出部63に保持されている導光体端部41に入射する。導光体端部41に入射した光L1は、長手状の導光体40に沿って進み、内部の光散乱性粒子により反射して側面42から視認可能に出る。
【0065】
図11に示すようにトノカバー2の後縁部21bが吊り上がっていない場合、トノカバー2の下面側に導光体40が配置されているので、導光体40の側面42からトノカバー2の下側へ視認可能に光L1が放出される。これにより、トノカバー2の下側が照らされ、荷室LR1の下部の視認性が向上する。従って、トノカバーに光源が無くても、トノカバーの下の空間が見易くなる。また、周囲が暗くても、トノカバー2の位置が分かり易い。
さらに、長手状の導光体40が左側縁部21c、後縁部21b、及び、右側縁部21dに沿って配置されているので、ユーザーから見て手前側となる荷室LR1の後側が明るく照らされる。従って、荷室LR1の後側が見易くなる。
【0066】
図1に示すようにトノカバー2の後縁部21bが吊り上がっている場合は、導光体40の側面42からトノカバー2の後側の下向きに光L1が放出される。これにより、トノカバー2の後側が下向きに照らされ、トノカバー近傍の荷室LR1の視認性が向上する。従って、トノカバーに光源が無くても、トノカバー近傍の荷室LR1が見易くなる。むろん、長手状の導光体40が左側縁部21c、後縁部21b、及び、右側縁部21dに沿って配置されているので、周囲が暗くても、光L1を放出している導光体40の位置によりトノカバー2の位置が分かり易い。
【0067】
また、トノカバー2を使用しないとき、左右の側壁部材70の凹部71から突出部63を外すことにより、側壁部材70からトノカバー2を取り外すことができる。これにより、トノカバー2の仕切り位置よりも高い荷物を荷室LR1に収容することができる。取り外されたトノカバー2は、折り畳んで保管することができる。
【0068】
図12は、トノカバー2の折り畳み方法を模式的に例示している。図12に示すトノカバー2には、便宜上、曲げ可能なワイヤー30に沿っている縁部21と端部保持部材60のみ示している。長尺な導光体40も曲げ可能であるので、トノカバー2を折り畳むことができる。図12に示すトノカバー2は、ステップST1~ST6の順に折り畳まれる。
まず、展開状態のトノカバー2(ステップST1)をユーザーが手作業によりトノカバー2の幅方向D2の一方を捻じるように力を加えると、白抜き矢印に示すようにワイヤー30が捻り変形する(ステップST2,ST3)。さらに、捻じられ変形した部分(裏返った部分)を押し倒し(ステップST4)、捻じらず裏返っていなかった部分を押し倒された部分に重なるように折り畳む(ステップST5)。最終的に、端部保持部材60同士が重なり合い、片方の端部保持部材60のアッパーカバー62と他方の端部保持部材60のロアカバー66とが合わさる(ステップST6)。図8A,8Bに示す係合部64,68を端部保持部材60が有している場合、係合部64,68同士の係合によりトノカバー2の折り畳み状態が維持される。
【0069】
トノカバー2を折り畳み状態から展開する場合は、図12に示すステップST6~ST1の順にトノカバー2が展開される。ユーザーは、折り畳み状態のトノカバー2において係合部64,68同士の係合を解除させ(ステップST6)、ステップST5のようにトノカバー2を広げると、ワイヤー30の復元力によりステップST4~ST2の順にトノカバー2が広がってステップST1のようにトノカバー2が展開状態となる。
【0070】
以上説明したように、本具体例のトノカバー2は、ワイヤー30と導光体40が曲げ可能であるので、折り畳むことができる。また、トノカバー2の使用時、導光体40の端部41に入射した光L1が導光体40の側面42から視認可能に出ることにより、トノカバー2の近傍が照らされ、荷室LR1の視認性が向上する。従って、本具体例は、トノカバー近傍を見易くする折り畳み可能なトノカバーを提供することができる。また、本具体例のトノカバーは、導光体端部41への入光率が高く、雨等で濡れても電気系統に影響せず、電池交換の負担が発生しない。
【0071】
(4)トノカバー装置の利用例:
上述したトノカバー装置1の装飾照明は、様々な利用例が考えられる。例えば、図13に示す制御系と組み合わせることにより、様々な装飾照明を実現することができる。
【0072】
図13は、制御部150の例であるECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)151を含むトノカバー装置1の電気回路を模式的に例示している。ECU151には、操作部160、後部扉120の下縁部122のラッチ118、後部扉120の駆動部125、及び、導光体端部41a,41bにそれぞれ光L1を入射させる光源81a,81aが接続されている。駆動部125は、例えば、モーター、このモーターの駆動力を後部扉120に伝達する動力伝達機構、及び、モーターと動力伝達機構とを結合したり離したりする電磁クラッチを有する。
【0073】
ECU151は、例えば、CPU(Central Processing Unit)152、半導体メモリー153,154、タイマー(Timer)155、I/O(入出力)回路156、等を有する。各部152~156は、互いに情報を入出力可能に接続されている。トノカバー装置1の制御プログラム153pがROM(Read Only Memory)153に記録される場合、このROM153はトノカバー装置の制御プログラム153pを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体となる。CPU152は、RAM(Random Access Memory)154をワークエリアとして使用しながらROM153に記録されているプログラム153pを実行することにより、コンピューターを制御部150として機能させ、トノカバー装置1の動作を制御する。
【0074】
操作部160は、後部扉120を開くための開スイッチ161、及び、後部扉120を閉じるための閉スイッチ162を有している。例えば、ECU151は、開スイッチ161の操作を受け付けると、後部扉120のロックを解除する指示をラッチ118に出し、後部扉120を開くように駆動する指示を駆動部125に出す。これにより、ラッチ118が後部扉120のロックを解除し、駆動部125が後部扉120を開くように駆動する。また、ECU151は、閉スイッチ162の操作を受け付けると、後部扉120を閉じるように駆動する指示を駆動部125に出し、後部扉120が完全に閉じると後部扉120をロックする指示をラッチ118に出す。これにより、駆動部125が後部扉120を閉じるように駆動し、後部扉120が完全に閉じるとラッチ118が後部扉120をロックする。
【0075】
トノカバー2の装飾照明として、ECU151は、開スイッチ161の操作を受け付けると、上述した処理とともに左右の光源81a,81aを点灯させてもよい。これにより、後部扉120が開く時点から導光体40の側面42から視認可能に光L1が出てトノカバー近傍が照らされ、荷室LR1の視認性が向上する。また、ECU151は、開スイッチ161の操作を受け付けてからT1秒後(例えばT1は2~5)に光源81a,81aを点灯させてもよい。
さらに、ECU151は、後部扉120が完全に閉じると、上述した処理とともに左右の光源81a,81aを消灯させてもよい。これにより、後部扉120が完全に閉じて荷室LR1の装飾照明が不要であるときに装飾照明用の電力が消費されない。また、ECU151は、閉スイッチ162の操作を受け付けてからT2秒後(例えばT2は2~5)に光源81a,81aを消灯させてもよい。
【0076】
図示していないが、光出射部80が出す光L1の色を変えることができるようにして、車両の状態に応じて光L1の色を変えてもよい。すると、導光体40の側面42から出る光L1の色が車両の状態に応じて変わり、装飾照明としての効果が高まる。例えば、停車時に光出射部80が出す光L1を赤色にすると、図1に示すように後部扉120が開いてトノカバー2の後縁部21bが吊り上がっている場合に導光体40を補助的な警告灯として利用することができる。
【0077】
(5)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、荷室用ドアは、荷室の側部に配置され、側方へ開くドアとされてもよい。
カバー本体の縁部を縁取る縁取り部は、シート15の端末部が折り返された部位といった、シート15の一部でもよい。
【0078】
上述した具体例では左右にそれぞれ光出射部80が配置されていたが、光出射部80は左右のいずれか一方のみに配置されてもよい。この場合でも、導光体40の片方の端部41から光L1が入射することにより、導光体40の側面42から光L1が出てトノカバー近傍を照らすことができる。また、トノカバー2に長手状の導光体40を2本以上設け、左側の光出射部80から光L1を入射する導光体40と右側の光出射部80から光L1を入射する導光体40とを別々にしてもよい。むろん、一つの光出射部80から2本以上の導光体40の端部41に光L1を入射してもよい。
【0079】
尚、導光体端部に光を入射させる光源がトノカバーに設けられる場合も、上述した基本的な作用、効果が得られる。
【0080】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、トノカバー近傍を見易くする好適なトノカバー等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
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図13