(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】無段変速機用の駆動ベルトのための横断セグメント、駆動ベルトおよびそれらが設けられた無段変速機
(51)【国際特許分類】
F16G 5/16 20060101AFI20221220BHJP
F16H 9/12 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
F16G5/16 C
F16H9/12 B
(21)【出願番号】P 2019563866
(86)(22)【出願日】2018-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2018025140
(87)【国際公開番号】W WO2018210456
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-14
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐二
(72)【発明者】
【氏名】ヘールト ラマース
(72)【発明者】
【氏名】豊原 耕平
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ケールスマーケルス
(72)【発明者】
【氏名】百井 淳
(72)【発明者】
【氏名】木村 健
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-031354(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/16
F16H 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ベルト(50)のための横断セグメント(101;102;103;104)であって、リングのスタック(8)と、このようなリングスタック(8)の周囲に沿って一列に設けられた複数の横断セグメント(101;102;103;104)とを備え、該横断セグメント(101;102;103;104)は、ベース部分(10)と、2つのピラー部(11)とを有し、該ピラー部(11)は、それぞれ、前記ベース部分(10)のそれぞれの軸方向側部から半径方向外方へ延びており、前記ピラー部(11)の間に前記横断セグメント(101;102;103;104)の中央開口(5)を画定しており、かつほぼそれぞれ反対側のピラー部(11)の方向へ前記中央開口(5)の一部にわたって延びるフック部分(21)がそれぞれに設けられている、駆動ベルト(50)のための横断セグメント(101;102;103;104)において、該横断セグメント(101;102;103;104)の前記ピラー部(11)のうちの一方の
ピラー部(11)の幅寸法(W1)は、前記横断セグメント(101;102;103;104)の他方のピラー部(11)、すなわち軸方向で反対側のピラー部(11)の幅寸法(W2)より小さ
く、
前記中央開口(5)は、半径方向内方において、前記ベース部分(10)の、半径方向外方に面した、少なくとも主に軸方向に延びた支持面(13)によって範囲を定められており、前記ピラー部(11)の前記幅寸法(W1,W2)は、前記支持面(13)の半径方向の高さにおいて、軸方向で定められている、
ことを特徴とする、駆動ベルト(50)のための横断セグメント(101;102;103;104)。
【請求項2】
前記一方のピラー部(11)の前記幅寸法(W1)は、前記他方のピラー部(11)の前記幅寸法(W2)の0.5~0.8
倍である、請求項1記載の横断セグメント(101;102;103;104)。
【請求項3】
前記
一方のピラー部(11)に、前記他方のピラー部(11)
の幅よりも軸方向に
おいて局所的に幅が減じられることによって形成されたアンダカット(20)が設けられており、該アンダカット(20)は、前記中央開口(5)に接続している、請求項1
または2記載の横断セグメント(101;102;103;104)。
【請求項4】
前記一方のピラー部(11)に設けられた前記アンダカット(20)を除き、前記ピラー部(11)は、前記横断セグメント(101;102;103;104
)の軸方向中央(AM)に関して鏡像対称に成形されている、請求項
3記載の横断セグメント(101;102;103;104)。
【請求項5】
前記アンダカット(20)の軸方向境界面(22)の少なくとも大部分は、前記ベース部分(10)のそれぞれの軸方向側部に対してほぼ平行に向けられている、請求項
3または
4記載の横断セグメント(101;102;103;104)。
【請求項6】
前記アンダカット(20)の軸方向境界面(22)の少なくとも大部分は、
当該他方のピラー部(11)に向かって前記中央開口(5)への入口の軸方向範囲を規定する、
前記アンダカット(20)を有さない前記他方のピラー部(11)の前記フック部分(21)の外輪郭における第1の点(P1)と、
前記アンダカット(20)の前記軸方向境界面(22)の半径方向で最も内側によって定められた第2の点(P2)と
を通る仮想直線(L)に対してほぼ垂直に向けられている、請求項
3または
4記載の横断セグメント(101;102;103;104)。
【請求項7】
前記アンダカット(20)の半径方向内面、すなわち底面(24)の少なくとも大部分は、前記ベース部分(10)のそれぞれの軸方向側部に向かって半径方向内方へ向けられている、請求項
3から
6までのいずれか1項記載の横断セグメント(101;102;103;104)。
【請求項8】
前記アンダカット(20)の前記底面(24)は、
当該他方のピラー部(11)に向かって前記中央開口(5)への入口の軸方向範囲を規定する、
前記アンダカット(20)を有さない前記他方のピラー部(11)の前記フック部分(21)の外輪郭における第1の点(P1)と、
前記アンダカット(20)の前記軸方向境界面(22)の半径方向で最も内側によって定められた第2の点(P2)と
を通る仮想直線(L)とほぼ一致するまたは該仮想直線(L)の半径方向内方に位置する、請求項
5を引用する請求項7または請求項6を引用する請求項7記載の横断セグメント(101;102;103;104)。
【請求項9】
前記アンダカット(20)の前記底面(24)の少なくとも大部分は、凹面状に湾曲させられている
、請求項
7または
8記載の横断セグメント(101;102;103;104)。
【請求項10】
前記アンダカット(20)を有さない前記他方のピラー部(11)の前記フック部分(21)の半径方向外面、すなわち上面(23)の少なくとも一部は、
当該他方のピラー部(11)に向かって前記中央開口(5)への入口の軸方向範囲を規定する、
前記アンダカット(20)を有さない前記他方のピラー部(11)の前記フック部分(21)の外輪郭における第1の点(P1)と、
前記アンダカット(20)の前記軸方向境界面(22)の半径方向で最も内側によって定められた第2の点(P2)と
を通る仮想線(L)に対してほぼ平行に向けられている
または前記軸方向に対してこのような仮想直線(L)より浅い角度で向けられている、
請求項5、6、または請求項5または6を引用する請求項
7から
9までのいずれか1項記載の横断セグメント(101;102;103;104)。
【請求項11】
無段変速機(51)のための駆動ベルト(50)であって、複数の互いに重ねられたリングのスタック(8)と、複数の、請求項1から
10までのいずれか1項記載の横断セグメント(101;102;103;104)とを備え、該横断セグメント(101;102;103;104)は、その中央開口(5)に配置された前記リングスタック(8)の周囲に沿って一列に配置されている、無段変速機(51)のための駆動ベルト(50)において、該駆動ベルト(50)は、該駆動ベルト(50)の周方向で見て、それぞれの前記横断セグメント(101;102;103;104)の
前記一方のピラー部(11)と前記他方のピラー部(11)
との前記軸方向の配置関係が互いに異なる、2つのタイプ(I,II)の前記横断セグメント(101;102;103;104)を有することを特徴とする、無段変速機(51)のための駆動ベルト(50)。
【請求項12】
前記2つのタイプ(I,II)の横断セグメント(101;102;103;104)は、該横断セグメント(101;102;103;104)の前記列において交互に設けられている、請求項
11記載の駆動ベルト(50)。
【請求項13】
前記横断セグメント(101;102;103;104)の前記ピラー部(11)の前記フック部分(21)は、そのベース部分(10)の軸方向中央(AM)に対して軸方向で対称的な、それぞれの前記横断セグメント(101;102;103;104)の前記中央開口(5)への入口を定めている、請求項
11または
12記載の駆動ベルト(50)。
【請求項14】
前記横断セグメント(101;102;103;104)の前記他方のピラー部(11)の前記フック部分(21)は、前記アンダカット(20)を有さない当該中央開口(5)の軸方向幅
の10%~20
%だけ前記中央開口(5)上に延びている、
請求項3を引用する請求項
11から
13までのいずれか1項記載の駆動ベルト(50)。
【請求項15】
2つのプーリ(52,53)と、請求項
11から
14までのいずれか1項記載の駆動ベルト(50)とを備える無段変速機(51)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2つのプーリおよび駆動ベルトを備える無段変速機用の駆動ベルトの一部であることが予定された横断セグメントに関する。このような駆動ベルトは、一般的に知られており、2つの変速機プーリの周囲においてかつ2つの変速機プーリの間で走行するように主に適用され、これらの各プーリは、可変幅のV字形の溝を定めており、この溝に駆動ベルトのそれぞれの周囲部分が保持される。
【0002】
公知のタイプの駆動ベルトは、半径方向に互いに積層された複数の無端バンドまたはリングの周囲上にかつその周囲に沿って取り付けられた、横断セグメントの本質的に連続した列から成る。このような各横断セグメントは、中央開口を定めている。中央開口は、駆動ベルトの半径方向外側に向かって開放しており、横断セグメントがその周囲に沿って移動することを可能にしながら、このようなリングスタックのそれぞれの周囲セクションを収容しかつ閉じ込める。この特定のタイプの駆動ベルトは、例えば、英国特許第1286777号明細書から公知であり、そのより最近の例は、国際公開第2015/177372号によって提供されている。
【0003】
上記および下記の説明において、軸方向、半径方向および周方向は、円形の姿勢で配置されたときの駆動ベルトに関して定められる。横断セグメントの厚さ寸法は、プッシュベルトの周方向において定められており、横断セグメントの高さ寸法は、前記半径方向において定められており、横断セグメントの幅寸法は、前記軸方向において定められている。リングスタックの厚さ寸法は、前記半径方向において定められており、リングスタックの幅寸法は、前記軸方向において定められている。
【0004】
公知の横断セグメントは、ベース部分と、2つのピラー部とを有する。ピラー部は、ベース部分から、ベース部分のそれぞれ、すなわち左側および右側の軸方向側部において、半径方向外方に、すなわち高さ方向において上方に延びている。リングスタックを収容する前記中央開口は、ベース部分と2つのピラー部とによってこれらの間に画定されている。ピラー部の間において、前記開口は、ベース部分の、半径方向外方に面した支持面によって範囲を定められている。支持面は、その半径方向内側からリングスタックと相互作用しかつリングスタックを支持する。公知のベルトの少なくとも一方、しかしながら一般的には両方のピラー部には、フック部分が設けられている。フック部分は、中央開口上に軸方向に延びている。これにより、中央開口は、半径方向外方においても部分的に閉鎖されている。これにより、このようなフック部分の底部、すなわち半径方向内面は、その半径方向外側からリングスタックに係合し、これにより、リングスタックは、半径方向外方において横断セグメントの中央開口内に閉じ込められる。
【0005】
駆動ベルトを組み立てるために、すなわち、横断セグメントをリングスタックに取り付けるために、各横断セグメントは、まず、相対的に回転させられた位置においてリングスタックの軸方向側部に配置される。次いで、横断セグメントは、軸方向でリングスタックに向かって移動させられ、これにより、リングスタックの前記軸方向側部が、一方のピラー部のフック部分と、支持面との間に滑り込み、これにより、リングスタックの反対の軸方向側部は、反対側のピラー部のフック部分を通過する。その後、横断セグメントは、リングスタックと軸方向整列するように戻り回転させられ、最後に、横断セグメントは、横断セグメントをリングスタックに対して中心合わせするために、僅かに、すなわち反対の軸方向へ戻り移動させられる。横断セグメントのこのような最終的な、軸方向で中心合わせされた位置において、その1つまたは複数のフック部分は、リングスタックに対して、軸方向におけるオーバーラップ、すなわちオーバーハングを示す。このようなオーバーラップによって、駆動ベルトの作動中に横断セグメントがリングスタックから半径方向内方へ分離し得ることが防止される。この後者の点において、前記オーバーラップは、好ましくは、英国特許第1286777号明細書に示されているように両ピラー部にフック部分を提供することによってリングスタックの両軸方向側部に提供されることに留意されたい。しかしながら、このようなオーバーラップは、好ましくは、特にリングスタックの幅に対して、英国特許第1286777号明細書に示されたものよりも大きい。
【0006】
より大きな表面積にわたって接触力を分散させることにより、駆動ベルトの作動中にリングスタックとフック部分との間の接触応力を減じるという点でも、比較的大きなオーバーラップは有利である可能性がある。しかしながら、このようなオーバーラップが増大すると、横断セグメントが、横断セグメントを変形させる、すなわち曲げることなくリングスタックに取り付けられるために、横断セグメントとリングスタックとの間の軸方向における相対的な遊びまたは隙間も典型的に増大しなければならない。他方、このような大きな軸方向の遊びは、不利なことに、少なくともその任意の動力伝達能力に対して、駆動ベルト、ひいては変速機のサイズを増大させる。さらに、このような大きな軸方向の遊びにより、リングスタックは、駆動ベルトの作動中に横断セグメントの中央開口における好ましい軸方向で中心合わせされた位置から離れて、潜在的にその一方の軸方向側部においてそれぞれのフック部分がもはやリングスタックと重なり合わない程度まで、移動する。その結果、横断セグメントは、依然として、リングスタックから、その回転により半径方向内方へ分離することがあり、これは、駆動ベルト全体の作動を危険にさらす。
【0007】
上述の背景に対して、本開示は、公知の駆動ベルトを改良することを目的とする。特に、本開示は、好ましくは変速機における作動中の動力伝達能力の観点から、その通例の高い性能を損なうことなく、駆動ベルトの頑丈性を高めることを目的とする。
【0008】
本開示によれば、上記目的は、2つのタイプの横断セグメントを備える駆動ベルトであって、各タイプは、前記2つのタイプの間で軸方向において鏡像をなす非対称の設計を有する駆動ベルトを提供することによって、実現される。特に、横断セグメントの2つのピラー部のうちの一方には、軸方向で、中央開口に接続したアンダカット、すなわちポケットが設けられている。言い換えれば、アンダカットまたはポケットは、前記一方のピラー部に形成されており、中央開口へ開放している。これにより、有効に、前記一方のピラー部の幅は、少なくとも支持面の半径方向の高さにおいて、反対側のピラー部の幅に対して局所的に減じられている。さらに、前記2つのタイプの横断セグメントのうちの第1のタイプにおいて、アンダカットは、例えば、左側のピラー部に設けられており、前記2つのタイプの横断セグメントのうちの第2のタイプにおいて、アンダカットは、したがって、右側のピラー部に設けられている。アンダカットの存在によって、リングスタックをフック部分の下側においてアンダカット内へ挿入することによって、横断セグメントをリングスタックに取り付け得る。すなわち、その左側のピラー部にアンダカットが設けられている第1のタイプの横断セグメントは、リングスタックの軸方向左側に配置され、横断セグメントを取り付けるためにリングスタックに対して右へ移動させられる。その右側のピラー部にアンダカットが設けられている第2のタイプの横断セグメントは、リングスタックの軸方向右側に配置され、横断セグメントを取り付けるためにリングスタックに対して左へ移動させられる。このように組み立てられた駆動ベルトにおいて、リングスタックは、リングスタックとフック部分との間の好ましくは大きなオーバーラップと組み合わされて、好ましくは小さな軸方向の遊びと共に横断セグメントの中央開口にしっかりと閉じ込められる。
【0009】
駆動ベルトの組立て中の横断セグメントのアンダカット内へのリングスタックの挿入を容易にするために、アンダカットが設けられたピラー部のフック部分の前記底内面は、それぞれのピラー部から離れるように中央開口への入口に向かって半径方向外方へ向けられ得る。好ましくは、このような底面は、
-アンダカットを有さないピラー部のフック部分の外輪郭における点であって、当該ピラーへ向かう中央開口への入口の軸方向範囲を規定する点と、
-アンダカットの側における支持面の軸方向側縁によって定められた別の点と
の両方を通る仮想線、すなわち仮想直線に対して少なくとも部分的にほぼ平行に向けられている。加えてまたは代替的にかつ同じ効果で、アンダカットが設けられたピラー部のフック部分は、横断セグメントの軸方向中央に向かって、反対側のピラー部のフック部分よりも少なく延び得る。
【0010】
本開示による新規の駆動ベルトにおいて、リングスタックは、軸方向で、アンダカットが設けられていない、2つのタイプの横断セグメントのそれぞれのピラー部によって、これらのピラー部の間に閉じ込められている。好ましくは、すなわち、新規の駆動ベルトの作動中に特にリングスタックに加えられる力をできるだけ均等に分散させるために、2つの横断セグメントタイプは、駆動ベルトの横断セグメントの列において交互に配置されている。これにより、同じタイプの2つの連続する横断セグメントは、駆動ベルトにおいて一度だけ、駆動ベルトが合計で奇数の横断セグメントを有する場合にのみ存在する。
【0011】
横断セグメントのフック部分とリングスタックとの間の半径方向の遊びも駆動ベルトの設計の重要な態様であることに留意されたい。特に、このような半径方向の遊びは、好ましくは、駆動ベルトの所望の、すなわち最適な性能を保証するために、リングスタックの厚さと比較して小さく保たれる。しかしながら、このような半径方向の遊びが小さいと、少なくとも組立てにおいて横断セグメントを曲げることなく横断セグメントの中央開口にさらにはめ込むことができるリングスタックの幅は、軸方向において、フック部分によってかつフック部分の間に定められた中央開口への入口の軸方向範囲、すなわち幅よりも辛うじて大きくなり得るだけであり、これにより、前記オーバーラップも小さい。本開示の別の態様によれば、リングスタックの幅、ひいては前記オーバーラップの幅は、しかしながら、横断セグメントのピラー部におけるアンダカットを、軸方向においてのみならず、半径方向内方においても位置合わせすることによって、特に前記半径方向の遊びも増大させることなく、好ましくは増大させ得る。本開示による横断セグメントのこの後者の実施の形態において、支持面の延長部を形成するアンダカットの半径方向内面、すなわち底面は、少なくとも部分的に、支持面から離れるように半径方向内方へ向けられている。支持面に対する半径方向内方角度におけるこのような延長面の提供により、中央開口へのリングスタックの挿入角度は、その底面が支持面とほぼ一列に延びている軸方向にのみ向けられたアンダカットによって許容されるこのような挿入角度に対して、増大させられ得る。他方、このような増大した挿入角度は、前のようにリングスタックとフック部分との間の同じ大きさのオーバーラップを実現しながら、より厚いリングスタックがはめ込まれることを許容する。幾何学的考慮に基づき、延長面は、好ましくは、
-アンダカットを有さないピラー部のフック部分の外輪郭における点であって、当該ピラー部へ向かって中央開口への入口の軸方向範囲を規定する点と、
-アンダカットの延長面の側における支持面の軸方向側縁によって定められた別の点と
の両方を通る仮想直線とほぼ一致するまたはその半径方向内方に位置する。
【0012】
好ましくは、駆動ベルト作動中にリングスタックと横断セグメントとの間の好ましくない高い接触応力をさもなければ生じる可能性があるそれらの間の鋭いエッジを回避するために、延長面と、支持面、すなわちその前記軸方向側縁との間に、凸面状に湾曲した移行面が設けられている。これに関して、例えば米国特許第4080841号明細書に記載されているように、横断セグメントに対するリングスタックの好ましい中心合わせされた整列を促進するために、支持面は、典型的には既に凸面状に湾曲させられていることに留意されたい。本開示によれば、移行面に隣接する支持面の曲率半径は、しかしながら、移行面自体の曲率半径より著しく大きく、したがって、移行面自体の曲率半径とは明確に識別可能である。特に、支持面の(局所的な)曲率半径は、移行面のそれよりも少なくとも1桁大きい。
【0013】
本開示による新規の駆動ベルトのこの実施の形態および他の実施の形態が、ここで、図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】2つのプーリと、リングスタックおよびリングスタックの周囲に沿って取り付けられた横断セグメントの列を有する駆動ベルトと、を備える変速機の単純化されかつ概略的な側面図である。
【
図2】その周方向に面した断面において公知の駆動ベルトの第1の例を提供しており、その横断セグメントのみの別の側面図も含んでいる。
【
図3】その周方向に面したその断面において公知の駆動ベルトの第2の例を提供している。
【
図4】概略的な正面図においてその2つの変化態様(すなわち、2つの“タイプ”)における本開示による新規の横断セグメントの第1の実施の形態を提供している。
【
図5】
図4に示された2つのタイプの横断セグメントを用いて組み立てられた駆動ベルトを概略的に示しており、その組立てプロセスの概略図も含んでいる。
【
図6】その概略的な正面図において本開示による新規の横断セグメントの第2の実施の形態を提供している。
【
図7】その概略的な正面図において本開示による新規の横断セグメントの第3の実施の形態を提供しており、その組立てプロセスの概略図およびこの第3の実施の形態による2つのタイプの横断セグメントを用いて組み立てられた駆動ベルトの概略的な断面図も含んでいる。
【
図8】その概略的な正面図において本開示による新規の横断セグメントの第4の実施の形態を提供しており、この第4の実施の形態による2つのタイプの横断セグメントを用いて組み立てられた駆動ベルトの概略的な断面図も含んでいる。
【0015】
図1は、例えば乗用車の動力伝達経路において使用するための無段変速機51の中心部分を概略的に示している。この変速機51は、公知であり、少なくとも第1の可変プーリ52と第2の可変プーリ53とを含む。動力伝達経路において、第1のプーリ52は、電気モータまたは燃焼エンジンなどの一次発動機に連結されておりかつこれによって駆動され、第2のプーリ53は、通常は、複数の歯車を介して自動車の被動輪に連結されておりかつこれを駆動する。
【0016】
各変速機プーリ52,53は、一般的に、それぞれのプーリ52,53のプーリ軸54,55に固定された第1の円錐形のプーリシーブと、それぞれのプーリ軸54,55に対して軸方向に可動でありかつ回転方向でのみプーリ軸54,55に固定されている第2の円錐形のプーリシーブとを含む。変速機51の駆動ベルト50は、プーリのプーリシーブの間に受け入れられながら、プーリ52,53の周囲に巻き掛けられている。
図1から明らかなように、変速機51における駆動ベルト50の軌道は、2つの直線的な部分STと、2つの湾曲した部分CTとを有し、この湾曲した部分CTにおいて、駆動ベルト50は、2つの変速機プーリ52,53のそれぞれ1つの周囲に巻き掛けられている。駆動ベルト50は、リングスタック8と、少なくともほぼ接触した列においてリングスタック8の周囲に沿ってリングスタック8に取り付けられた複数の横断セグメント1と、から成る。単純にするために、幾つかのこれらの横断セグメント1のみが
図1に示されている。駆動ベルト50において、横断セグメント1はリングスタック8の周囲に沿って可動であり、このリングスタック8は、一般的に、複数のフレキシブルな金属バンドまたはリングから成り、これらの金属リングは、一方が他方を取り囲むように積層されている、すなわち互いに重ね合わされている。変速機51の作動中、第1のプーリ52における駆動ベルト50の横断セグメント1は、摩擦によって、その回転方向に駆動される。これらの駆動される横断セグメント1は、駆動ベルト50のリングスタック8の周囲に沿って、先行する横断セグメント1を押し付け、最終的に、第2のプーリ53を、やはり摩擦によって回転駆動する。横断セグメント1と変速機プーリ52,53との間でこのような摩擦(力)を発生させるために、各プーリ52,53の前記プーリシーブは互いに向かって押し付けられ、これらは、その軸方向で横断セグメント1に締付力を加える。このために、各プーリ52,53の可動なプーリシーブに作用する、電子制御可能でかつ液圧式に機能する移動手段(図示せず)が、変速機51に設けられている。駆動ベルト50に締付力を加えることに加えて、これらの移動手段は、プーリ52,53における駆動ベルト50のそれぞれの半径方向位置R1およびR2、ひいてはそのプーリ軸54,55の間で変速機51によって提供される速度比をも制御する。
【0017】
図2には、駆動ベルト50の初期の公知の例が概略的に示されている。
図2の左側には、駆動ベルト50が断面図で示されており、
図2の右側には、その横断セグメント1のみの側面図が含まれている。
図2から、横断セグメント1は、ほぼ“V”の文字に似た形状、すなわち、概してV字形であることが分かる。言い換えれば、変速機プーリ52,53と(摩擦)接触する、横断セグメント1のそれぞれの軸方向側部における側面12は、互いに、変速機プーリ52,53の円錐形のプーリシーブによってかつこれらの間に定められた角度とほぼ一致する角度で向けられている。実用上、これらの側部、すなわちプーリ接触面12は、巨視的プロフィルによって波形にされ、または粗い表面構造(図示せず)が設けられており、これにより、波形プロフィルまたは表面粗さのより高い位置の頂点のみが、変速機プーリ52,53と接触する。横断セグメント1の設計のこの特定の特徴は、駆動ベルト50と変速機プーリ52,53との間の摩擦が、公知の変速機51に提供される冷却油が、波形プロフィルまたは表面粗さのより低い位置の部分に収容されることを可能にすることによって最適化されることを提供する。
【0018】
横断セグメント1は、ベース部分10および2つのピラー部11を定めており、そのうちベース部分10は、主に駆動ベルト50の軸方向に延びており、そのうちピラー部11は、それぞれベース部分10のそれぞれの軸方向側部から、主に駆動ベルト50の半径方向に延びている。その厚さ方向において、各横断セグメント1は、その前面3と後面2との間に延びており、これらは両方とも、少なくともほぼ駆動ベルト50の周方向に向けられている。開口5は、各横断セグメントのピラー部11とベース部分10との間に中央に定められており、この開口5に、リングスタック8の周囲セクションが収容されている。中央開口5の半径方向内側境界部を形成する、ベース部分10の周面の半径方向外方に面した部分13は、半径方向内側からリングスタック8を支持しており、この面部分を、以下では支持面13と呼ぶ。この支持面13は、典型的には、変速機51における駆動ベルト50の作動、すなわち回転中のリングスタック8の好ましい中心合わせされた整列を促進するために凸面状に湾曲させられている。
【0019】
図2の正面図において見た横断エレメント1の両ピラー部、すなわち左側および右側のピラー部11には、軸方向で中央開口5上に張り出したフック部分9が設けられている。フック部分9、特にその底部、すなわち半径方向内方に面した面14は、半径方向外方においても中央開口5を部分的に閉鎖している。駆動ベルト50において、横断セグメント1のフック部分9は、軸方向においてリングスタック8と重なり合っており、これにより、横断セグメント1がリングスタック8から半径方向内方へ分離し得ることを防止するまたは少なくとも妨げる。
【0020】
駆動ベルト50の横断セグメント1の列において、横断セグメント1の前側本体面3の少なくとも一部は、前記列においてそれぞれ先行する横断セグメント1の後側本体面2の少なくとも一部に対して当接するのに対し、横断セグメント1の後側本体面2の少なくとも一部は、それぞれ後続する横断セグメント1の前側本体面3の少なくとも一部に対して当接する。当接しあう横断セグメント1は、その前面3の、軸方向に延びておりかつ半径方向で凸面状に湾曲した面部分4においてかつこの面部分4を介して互いに接触したまま、互いに対して傾斜することができ、この面部分を、以下では傾斜エッジ4と呼ぶ。このような傾斜エッジ4の下方、すなわち半径方向内方において、
図2のその側面図において見ることができるように、傾斜エッジ4の下方において、当接しあう横断セグメント1のそれぞれのベース部分10の干渉なしにこのような相互の傾斜を許容するために、横断セグメントはテーパさせられている。
図2において、傾斜エッジ4は横断セグメント1のベース部分10に配置されているが、少なくとも部分的に傾斜エッジ4をピラー部11、すなわち2つの軸方向に別個の、ただし半径方向で整列したセクションに配置することも公知であることに留意されたい。
【0021】
前述のように、
図2の駆動ベルト50は、比較的初期に知られた設計である。
図3には、そのより最近の公知の設計が示されている。まず、横断セグメント1の2つのピラー部11にそれぞれ突出部6が設けられており、この突出部6は、それぞれの横断セグメント1の前面3から、ほぼ前記周方向に突出しているという点において、駆動ベルト50のこの後者の公知の設計は、前のものと異なる。駆動ベルト50において、横断セグメント1の突出部6は、隣接する横断セグメント1の後面2に設けられた凹所(図示せず)に挿入され、これにより、少なくとも半径方向において、しかしながら一般的には軸方向においても、隣接しあう横断セグメント1の間の相対移動を制限する。
【0022】
さらに、駆動ベルト50のこの後者の公知の設計は、2つのタイプI,IIの横断セグメント1、すなわち第1の横断セグメントタイプIおよび第2の横断セグメントタイプIIを有する。第1の横断セグメントタイプIの、
図3に示された一方のピラー部11、すなわち右側のピラー部11-rのフック部分15は、反対側、すなわち左側のピラー部11-lのフック部分16よりかなり大きい、すなわち軸方向でさらに延びている。反対に、第2の横断セグメントタイプIIの、左側のピラー部11-lのフック部分17は、右側のピラー部11-rのフック部分18よりかなり大きい。駆動ベルト50の横断セグメント1の列において、これらの2つの横断セグメントタイプI,IIは、相前後して配置されている。さらに、その前記2つのタイプI,IIの間で軸方向において鏡像対称である横断セグメント1のこの特定の非対称の設計により、個々の横断セグメント1は、比較的容易にリングスタック8に取り付けられる。なぜならば、そのより小さなフック部分16または18が、軸方向において、中央開口5への比較的広い入口を提供するからである。駆動ベルト50において、2つのタイプI,IIの横断セグメント1のより大きなフック部分15,17は、軸方向におけるその中央開口5への入口の幅を減じかつそこにリングスタック8を閉じ込めるために協働する。
【0023】
本開示によれば、両公知の駆動ベルト設計において、リングスタック8の幅に対する、個々の横断セグメント1のフック部分9、または15と16、または17と18の組み合わされた軸方向の延び、すなわちそれらの間の前記オーバーラップは、制限されている。特に、このような組み合わされた軸方向の延びは、ほぼ変形させることなくリングスタック8を横断セグメント1の中央開口5内へ挿入することが可能でなければならないという要求によって制限される。すなわち、これらの公知の設計において、駆動ベルト50の前記直線的な軌道部分STにおけるリングスタック8に対する横断セグメント1の比較的小さな軸方向変位において既に、横断セグメント1は、リングスタック8の軸方向側部を中心として回転することができ、リングスタック8の軸方向反対側が中央開口5から解放されるという懸念がある。本開示は、横断セグメント1のための新規の設計におけるこのような懸念に対処する。
【0024】
図4は、その第1の実施の形態における本開示による横断セグメント101の概略的な正面図を提供している。2つのタイプI,IIの新規の横断セグメント101、すなわち第1の横断セグメントタイプIおよび第2の横断セグメントタイプIIが設けられている。第1の横断セグメントタイプIの、
図4における一方のピラー部11、すなわち左側のピラー部11-lには、少なくともその反対側、すなわち右側のピラー部11-rの輪郭に対して、アンダカット20が設けられている。第2の横断セグメントタイプIIの右側のピラー部11-rのみにこのようなアンダカット20が設けられている。それぞれ、アンダカット20は、横断セグメント101の中央開口5からそのそれぞれのピラー部11内へ軸方向に延びており、これにより、局所的に、アンダカット20を有するそれぞれのピラー部11の軸方向幅W1は、
図4に示したように、少なくとも軸方向で支持面13と一列に、すなわち支持面13とほぼ同じ半径方向位置において測定された場合、このようなアンダカット20を有さないそれぞれの反対側のピラー部11の軸方向幅W2より小さい。また、
図4において、公知の横断セグメント1のそれぞれのピラー部11-l,11-rの輪郭は、比較のために、すなわち従来技術に対して本開示によるアンダカット20の概念を規定するために、点線によって概略的に示されている。
【0025】
好ましくは、
図4にも示されているように、新規の横断セグメント101のそれぞれのピラー部11のフック部分21は、軸方向にその軸方向中央AMに向かって実質的に同じ分だけ延びている。これにより、新規の横断セグメント101は、有利には、そのピラー部11-l,11-rのうちの一方のみに存在するアンダカット20を除き、ほぼ軸方向で対称的に成形されている。
【0026】
図4に示されたフック部分21の軸方向の大きさは例示的でしかないことに留意されたい。特に、中央開口5の幅に対するフック部分21の軸方向の大きさは、より幅広のリングスタック8が開口5にはめ込まれることができるように、
図4に示されたものより小さくなり得る。これにより、駆動ベルト50の動力伝達能力が高められるが、ただしそれは、フック部分21とリングスタック8との間の減じられた大きさのオーバーラップという犠牲による。本開示によれば、実際的な最適条件は、アンダカット20を排除した中央開口5の軸方向幅の10%~20%、より好ましくは12.5%~17.5%、または約15%の個々のフック部分21の軸方向の大きさの場合に見られる。好ましくはまた、アンダカット20を有するピラー部11の軸方向幅W1は、新規の横断セグメント101の反対側のピラー部11の軸方向幅W2の0.5~0.8、より好ましくは0.6~0.7倍である。本開示によれば、これらの特定の相対的な寸法は、リングスタック8とフック部分21との間の結果的なオーバーラップと、アンダカット20を有するピラー部11の残りの強度との最適なバランスを提供する。
【0027】
図5に示したように、駆動ベルト50には、両タイプI,IIの新規の横断セグメント101が組み込まれている。駆動ベルト50の周方向で見て、第1の横断セグメントタイプIのアンダカット20を有さないピラー部11;11-rは、第2の横断セグメントタイプIIのアンダカット20と一致しており、その逆も同じである。これにより、駆動ベルト50の横断セグメント101の列に対するリングスタック8の軸方向の遊びは、好ましくは、アンダカット20を有さないそれぞれのピラー部11によって決定される。好ましくは、前記2つの横断セグメントタイプI,IIは、相互に連続して駆動ベルト50に組み込まれている。
【0028】
図5に概略的に示したように、駆動ベルト50は、その左側のピラー部11-lにアンダカット20が設けられている第1のタイプIの横断セグメント101をリングスタック8の軸方向左側に配置し、リングスタック8の軸方向右側が第1のタイプIのそれぞれの横断セグメント101の右側のピラー部11-rのフック部分21から外れるまで、これによりアンダカット20に挿入されたリングスタック8に対してこれらの横断セグメント101を右へ移動させることによって、新規の横断セグメント101から組み立てられる。新規の横断セグメント101の形状、すなわち外輪郭に応じて、アンダカット20へのリングスタック8のこのような挿入は、横断セグメント101の線形の軸方向における平行移動のみによって達成することができるまたはその高さ方向における平行移動および/または回転を含む。その後、それぞれの横断セグメント101は、リングスタック8と軸方向で整列するように回転させられ、横断セグメント101をリングスタック8に対して軸方向において中心合わせするために僅かに左へ戻される。第2のタイプIIの新規の横断セグメント101は、同様の、ただし軸方向で鏡像対称の形式でリングスタック8に取り付けられる。
【0029】
図6は、その第2の実施の形態における本開示による横断セグメント102の概略的な正面図を提供している。この第2の実施の形態において、アンダカット20の軸方向境界面22は、
-軸方向において横断セグメント102の中央開口5への入口を規定するアンダカット20を有さないピラー部11のフック部分21の外輪郭における第1の点P1と、
-アンダカット20の軸方向境界面22の半径方向で最も内側によって定められた第2の点P2と
を通る仮想直線Lに対してほぼ垂直に向けられている。この仮想線Lは、有効に、駆動ベルト50が組み立てられるときにリングスタック8がアンダカット20に挿入される際のリングスタック8の半径方向内側を表している。このような仮想線Lに対して垂直に延びる軸方向境界面22によって、アンダカット20は、組立てプロセスにおいてリングスタック8を収容するために軸方向において最適に寸法決めされている。
【0030】
好ましくはかつ
図6にも示したように、アンダカット20の軸方向境界面22は、その最も近くに配置された新規の横断セグメント102のプーリ接触面12に対してほぼ平行に向けられている。これにより、アンダカット20が設けられたピラー部11は、好ましくは、その軸方向幅が、アンダカット20の半径方向高さに沿ってほぼ同じままであるように成形することができる。加えて、アンダカット20を有さない反対側のピラー部11のフック部分21は、好ましくは、
-仮想線Lが、前記プーリ接触面12の角度に対応する、支持面13に対する角度で向けられており、かつ/または
-アンダカット20を有さない反対側のピラー部11のフック部分21の上面23が、好ましくは、仮想線Lに対してほぼ平行にまたは少なくとも部分的に軸方向に対してより浅い角度で向けられている
ように成形されている。これにより、アンダカット20を有さない前記ピラー部11、特にそのフック部分21と、リングスタック8との不都合な接触を、駆動ベルト50の組立てプロセスにおいて回避することができる。
【0031】
図6には、その左側のピラー部11-lに(のみ)アンダカット20が設けられた、1つのタイプ、特にタイプIの新規の横断セグメント102のみが示されていることに留意されたい。しかしながら、本開示の文脈において、駆動ベルト50は、その右側のピラー部11-r(図示せず)に(のみ)アンダカット20が設けられた、第2のタイプIIの新規の横断セグメント102も有することが理解される。
【0032】
図7は、その第3の実施の形態における本開示による横断セグメント103の概略的な正面図を提供している。この第3の実施の形態において、新規の横断セグメント103のアンダカット20の別の、すなわち半径方向内側の境界面24は、軸方向のみならず、半径方向内方へも支持面13から離れるように延びている。これにより、中央開口5へのリングスタック8の比較的大きな挿入角度が可能にされ、これにより、特に上述の横断セグメント102の、その他は同じように成形された第2の実施の形態と比較して、比較的厚いリングスタック8をフック部分21の間の中央開口5の入口を通じて挿入することができる。
【0033】
好ましくは、新規の横断セグメント103のこの第3の実施の形態においてかつ幾何学的な考慮に基づき、前記仮想線Lは、第3の点P3と交差する。第3の点P3は、アンダカット20の半径方向内側境界面24と、支持面13またはそれらの間に設けられていてもよい凸面状に湾曲した移行面(図示せず)との間の交差部によって定められる。
【0034】
図8は、その第4の実施の形態における本開示による横断セグメント104の概略的な正面図を提供している。新規の横断セグメント104のこの第4の実施の形態において、そのプーリ接触面12は、ベース部分10(の軸方向側部)からピラー部10(の軸方向側部)へ延びている。さらに、傾斜エッジ4は、ピラー部11に配置されており、すなわち、それぞれの左側および右側のピラー部11-l,11-rに配置された2つのセクション4-l,4-rに設けられている。特に、傾斜エッジ4の2つのセクション4-l,4-rは、ほぼ軸方向で支持面13と一列に、すなわち支持面13とほぼ同じ半径方向位置に配置されている。これらの後者の2つの設計特徴は、公知であり、これらの新規の横断セグメント104が設けられた駆動ベルト50を組み込んだ変速機51の作動効率を高めることが知られている。また、新規の横断セグメント104のこの第4の実施の形態において、アンダカット20は、以下の好ましい設計特徴を有する。
【0035】
第1に、アンダカット20の半径方向内側の境界面24と、支持面13の軸方向側縁との間に、凸面状に湾曲した移行面25が設けられている。この移行面25の凸面の曲率半径は、好ましくは、支持面13の反対側の軸方向側縁に設けられた別の移行面の凸面の曲率半径に相当し、この別の移行面において、支持面13は、アンダカット20を有さない反対側のピラー部11の、軸方向に面した側面に接続している。好ましくはまた、移行面25および前記別の移行面は、新規の横断セグメント104の軸方向中央AMに関して軸方向で対称的に設けられている。新規の横断セグメント104のこれらの後者の設計特徴によって、駆動ベルト50の作動中のリングスタック8の荷重は、より好ましく、特に、その軸方向側部の間でより均等に分散させられる。
【0036】
第2にかつ同じ効果で、新規の横断セグメント104の凸面状に湾曲した面部分27は、アンダカット20の半径方向外側の境界面26と、それぞれのフック部分21の半径方向内方に面した面14との間に設けられている。この特定の面部分27の凸面の曲率半径は、好ましくは、反対側のフック部分21の半径方向内方に面した面14が、アンダカット20を有さない反対側のピラー部11の前記軸方向に面した側面に接続したところに設けられたさらに別の移行面の凸面の曲率半径に相当する。
【0037】
第3に、アンダカット20の半径方向内側の境界面24は、特に半径方向内側の境界面24とアンダカット20の軸方向境界面22との間の角が90度未満であるように、少なくとも部分的に凹面状に湾曲させられている。好ましくは、前記角は、0.5mm未満の半径で湾曲させられているのに対し、半径方向内側の境界面24の凹面の曲率半径は、1.5mm以上である。このような凹面状に湾曲した半径方向内側の境界面24によって、アンダカット20が、横断セグメント104のベース部分10内へさらに延びているとしても、軸方向におけるその範囲は、好ましくは、これにより、
図7に示したように、少なくとも、仮想線Lと一致する直線的かつ平坦な半径方向内側の境界面24に対して、減じられ得る。この設計特徴は、これにより、好ましくは、アンダカット20を有さないピラー部11に対する、アンダカット20を有するそれぞれのピラー部11の曲げ剛性および/または機械的強度における最小限の減少を提供する。
【0038】
本開示は、前記説明の全ておよび添付図面の全ての詳細に加えて、添付の特許請求の範囲の全ての特徴にも関しかつこれらの特徴を含む。請求項における括弧書きの符号は、請求項の範囲を限定するのではなく、単に、それぞれの特徴の拘束しない例として提供されている。請求項に記載された特徴は、場合によって、任意の製品または任意の方法において別々に適用することができるが、これらの特徴の2つ以上のあらゆる組合せを適用することも可能である。
【0039】
本開示によって表された発明は、明細書に明示的に言及された実施の形態および/または実施例に限定されるのではなく、その補正、変更および実用的な適用、特に当業者の到達範囲にあるものも包含する。