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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】通信システムおよび伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/02 20060101AFI20221220BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H04B3/02
H04L25/02 V
H04L25/02 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019566998
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2019000689
(87)【国際公開番号】W WO2019146430
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2018009330
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】林 宏暁
(72)【発明者】
【氏名】城下 寛司
(72)【発明者】
【氏名】石上 聡
【審査官】浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/163252(WO,A1)
【文献】特開2005-045729(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068772(WO,A1)
【文献】特開2006-246280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/02
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信装置から、伝送路を介して1つの受信装置に信号を伝送する通信システムであって、
前記伝送路は、途中に分岐点を有しており、前記送信装置と前記分岐点とを互いに接続する複数の第1信号線を有しており、さらに、前記分岐点と前記受信装置とを互いに接続する第2信号線を有しており、
前記複数の第1信号線および前記第2信号線は、それぞれ、前記分岐点の近傍に抵抗素子を有し、
前記抵抗素子は、以下の式で表される抵抗値を有している
通信システム。
R=((分枝数-1)×Z0-RT/2)/分枝数
0:前記第1信号線および前記第2信号線の特性インピーダンス
T/2:前記送信装置および前記受信装置の終端抵抗
【請求項2】
複数の送信装置から、伝送路を介して1つの受信装置に信号を伝送する通信システムであって、
前記伝送路は、途中に分岐点を有しており、前記送信装置と前記分岐点とを互いに接続する複数の第1信号線を有しており、さらに、前記分岐点と前記受信装置とを互いに接続する第2信号線を有しており、
各前記第1信号線は、前記分岐点の近傍に抵抗素子を有し、
前記抵抗素子は、以下の式を解くことで得られる抵抗値を有している
通信システム。
【数1】
0 :前記第1信号線の特性インピーダンス
T /2:前記送信装置および前記受信装置の終端抵抗
【請求項3】
前記伝送路は、差動の信号線によって構成されており、
各前記信号線が、前記分岐点、前記複数の第1信号線、および、前記第2信号線を有している
請求項1または請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記複数の送信装置のうち、一の第1送信装置が前記信号を出力するときは、前記複数の送信装置のうち、他の1または複数の第2送信装置の出力は停止され、前記第2送信装置は差動終端される
請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記伝送路は、3つの信号線によって構成されており、
各前記信号線が、前記分岐点、前記複数の第1信号線、および、前記第2信号線を有している
請求項1または請求項2に記載の通信システム。
【請求項6】
前記複数の送信装置のうち、一の第1送信装置が前記信号を出力するときは、前記複数の送信装置のうち、他の1または複数の第2送信装置の出力は停止され、前記第2送信装置は終端される
請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
複数の送信装置から1つの受信装置に信号を伝送する通信システムに用いられる伝送装置であって、
分岐点と、
前記送信装置と前記分岐点とを互いに接続する複数の第1信号線と、
前記分岐点と前記受信装置とを互いに接続する第2信号線
を備え、
前記複数の第1信号線および前記第2信号線は、それぞれ、前記分岐点の近傍に抵抗素子を有し、
前記抵抗素子は、以下の式で表される抵抗値を有している
伝送装置。
R=((分枝数-1)×Z0-RT/2)/分枝数
0:前記第1信号線および前記第2信号線の特性インピーダンス
T/2:前記送信装置および前記受信装置の終端抵抗
【請求項8】
複数の送信装置から1つの受信装置に信号を伝送する通信システムに用いられる伝送装置であって、
分岐点と、
前記送信装置と前記分岐点とを互いに接続する複数の第1信号線と、
前記分岐点と前記受信装置とを互いに接続する第2信号線
を備え、
各前記第1信号線は、前記分岐点の近傍に抵抗素子を有し、
前記抵抗素子は、以下の式を解くことで得られる抵抗値を有している
伝送装置。
【数2】
0 :前記第1信号線の特性インピーダンス
T /2:前記送信装置および前記受信装置の終端抵抗
【請求項9】
各前記抵抗素子は、可変抵抗素子である
請求項7または請求項8に記載の伝送装置。
【請求項10】
前記分岐点における分岐数を変えるスイッチ素子を更に備えた
請求項9に記載の伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号の伝送に適用される通信システムおよび伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン、ウェアラブル機器、自動車、スマートフォンなどでは、複数のカメラを搭載する構成が急増している。複数のカメラからの画像データをアプリケーションプロセッサ等に伝送する際には、MIPI(Mobile Industry Processor Interface)アライアンスが策定したC-PHY規格やD-PHY規格といった高速インタフェース規格が適用される。特許文献1には、D-PHY規格の信号伝送についての技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-195500号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、MIPIでは、データ伝送がポイントツーポイント伝送であるので、例えば、複数のカメラに対応するためには、アプリケーションプロセッサ側のピン数や伝送路サイズのアップ、製品デザイン面での制約など課題が多い。複数のカメラに対応するためには、マルチポイントバス伝送が有望である。しかし、従来のマルチポイントバス伝送では、反射などの影響で波形品質が大きく劣化するので、高速伝送に向かない。従って、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することの可能な通信システムおよび伝送装置を提供することが望ましい。
【0005】
本開示の一実施の形態に係る通信システムは、複数の送信装置から、伝送路を介して1つの受信装置に信号を伝送する通信システムである。この通信システムにおいて、伝送路は、途中に分岐点を有しており、送信装置と分岐点とを互いに接続する複数の第1信号線を有しており、さらに、分岐点と受信装置とを互いに接続する第2信号線を有している。複数の第1信号線および第2信号線のうち、少なくとも複数の第1信号線は、分岐点の近傍に抵抗素子を有している。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る伝送装置は、複数の送信装置から1つの受信装置に信号を伝送する通信システムに用いられる伝送装置ある。この伝送装置は、分岐点と、送信装置と分岐点とを互いに接続する複数の第1信号線と、分岐点と受信装置とを互いに接続する第2信号線と、複数の第1信号線および第2信号線のうち、少なくとも複数の第1信号線の、分岐点の近傍に設けられた複数の抵抗素子とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1の実施形態に係る通信システムの概要を表す図である。
図2図1の通信システムにおける伝送路の構成の一例を表す図である。
図3図1の通信システムにおける伝送路の構成の一例を表す図である。
図4図1の通信システムにおける伝送路の構成の一例を表す図である。
図5図1の通信システムにおける通過特性の一例を表す図である。
図6図1の通信システムにおける反射特性の一例を表す図である。
図7図1の通信システムにおけるアイダイアグラムの一例を表す図である。
図8】比較例Aに係る通信システムの概要を表す図である。
図9図8の通信システムにおける通過特性の一例を表す図である。
図10図8の通信システムにおける反射特性の一例を表す図である。
図11図8の通信システムにおけるアイダイアグラムの一例を表す図である。
図12】比較例Bに係る通信システムの概要を表す図である。
図13図12の通信システムにおける通過特性の一例を表す図である。
図14図12の通信システムにおける反射特性の一例を表す図である。
図15図12の通信システムにおけるアイダイアグラムの一例を表す図である。
図16】比較例Cに係る通信システムの概要を表す図である。
図17図16の通信システムにおける通過特性の一例を表す図である。
図18図16の通信システムにおける反射特性の一例を表す図である。
図19図16の通信システムにおけるアイダイアグラムの一例を表す図である。
図20】本開示の第2の実施形態に係る通信システムの概要を表す図である。
図21】3分岐の通信システムの実装形態の一例を表す図である。
図22】4分岐の通信システムの実装形態の一例を表す図である。
図23】5分岐の通信システムの実装形態の一例を表す図である。
図24図1の通信システムの一変形例を表す図である。
図25図24の通信システムにおける通過特性の一例を表す図である。
図26図24の通信システムにおける反射特性の一例を表す図である。
図27図24の通信システムにおけるアイダイアグラムの一例を表す図である。
図28】本開示の第3の実施形態に係る通信システムの概要を表す図である。
図29図1の通信システムにおける伝送路の一例を表す図である。
図30図20の通信システムにおける伝送路の一例を表す図である。
図31図21の通信システムにおける伝送路の一例を表す図である。
図32図24の通信システムにおける伝送路の一例を表す図である。
図33図28の通信システムにおける伝送路の一例を表す図である。
図34図29の通信システムにおける伝送路の一例を表す図である。
図35図30の通信システムにおける伝送路の一例を表す図である。
図36図31の通信システムにおける伝送路の一例を表す図である。
図37図32の通信システムにおける伝送路の一例を表す図である。
図38図33の通信システムにおける伝送路の一例を表す図である。
図39】上記各実施の形態およびその変形例に係る通信システムが適用されたスマートフォンの外観構成を表す斜視図である。
図40】上記各実施の形態およびその変形例に係る通信システムが適用されたアプリケーションプロセッサの一構成例を表すブロック図である。
図41】上記各実施の形態およびその変形例に係る通信システムが適用されたイメージセンサの一構成例を表すブロック図である。
図42】上記各実施の形態およびその変形例に係る通信システムが適用された車載用カメラの設置例を表す図である。
図43】車載用カメラに、上記各実施の形態およびその変形例に係る通信システムを適用した一構成例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(通信システム)
2.第2の実施の形態(通信システム)
3.第1~第2の実施の形態に共通の変形例(通信システム)
4.第3の実施の形態(通信システム)
5.第1~第3の実施の形態およびそれらの変形例に共通の変形例(通信システム)
6.適用例(スマートフォン、アプリケーションプロセッサ、
イメージセンサ、車載用カメラ)
【0009】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
本開示の第1の実施形態に係る通信システム1について説明する。図1は、通信システム1の概要を表したものである。通信システム1は、マルチポイントバス伝送に適用されるものである。通信システム1は、2つの送信装置TX1,TX2と、1つの受信装置RXとを備えている。通信システム1は、さらに、例えば、図1図2図3図4に示したように、各送信装置TX1,TX2と、受信装置RXとを互いに接続する伝送路Pを備えている。通信システム1は、2つの送信装置TX1,TX2から、伝送路Pを介して1
つの受信装置RXに信号を伝送する。
【0010】
伝送路Pは、途中で3つに分岐しており、分岐点Hp,Hnを有している。分岐の1つである伝送路P1は、送信装置TX1と、分岐点Hp,Hnとを互いに接続している。伝送路P1は、差動信号を伝送する差動の信号線(一対の信号線P1p,P1n)によって構成されている。信号線P1pは、分岐点Hpに接続されており、信号線P1nは、分岐点Hnに接続されている。送信装置TX1の、各信号線P1p,P1nに対して終端抵抗RT/2が設けられている。
【0011】
分岐の1つである伝送路P2は、送信装置TX2と、分岐点Hp,Hnとを互いに接続している。伝送路P2は、差動信号を伝送する差動の信号線(一対の信号線P2p,P2n)によって構成されている。信号線P2pは、分岐点Hpに接続されており、信号線P2nは、分岐点Hnに接続されている。送信装置TX2の、各信号線P2p,P2nに対して終端抵抗RT/2が設けられている。
【0012】
分岐の1つである伝送路P3は、受信装置RXと、分岐点Hp,Hnとを互いに接続している。伝送路P3は、差動信号を伝送する差動の信号線(一対の信号線P3p,P3n)によって構成されている。信号線P3pは、分岐点Hpに接続されており、信号線P3nは、分岐点Hnに接続されている。受信装置RXの、各信号線P3p,P3nに対して終端抵抗RT/2が設けられている。信号線P1p,P2p,P3pは、分岐点Hpにおいて互いに接続されている。信号線P1n,P2n,P3nは、分岐点Hnにおいて互いに接続されている。
【0013】
伝送路P1,P2,P3は、例えば、配線基板上に形成されている。例えば、図2図3に示したように、伝送路P1,P3が配線基板上の共通の層内に形成されており、伝送路P2は配線基板上の、伝送路P1,P3とは異なる層内に形成されている。さらに、例えば、図2図3に示したように、伝送路P1,P3と伝送路P2とが、スルーホールで構成された分岐点Hp,Hnを介して互いに電気的に接続されている。
【0014】
例えば、図4に示したように、伝送路P2,P3が配線基板上の共通の層内に形成されており、伝送路P1が配線基板上の、伝送路P2,P3とは異なる層内に形成されていてもよい。さらに、例えば、図4に示したように、伝送路P2,P3と伝送路P1とが、スルーホールで構成された分岐点Hp,Hnを介して互いに電気的に接続されていてもよい。
【0015】
各信号線P1p,P2p,P3pは、分岐点Hpの近傍に抵抗素子Rを有しており、さらに、各信号線P1n,P2n,P3nも、分岐点Hnの近傍にも抵抗素子Rを有している。ここで、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3nの特性インピーダンスをZ0とし、各送信装置TX1,TX2の、各信号線P1p,P1n,P2p,P2nに対する終端抵抗をRT/2とし、受信装置RXの、各信号線P3p,P3nに対する終端抵抗をRT/2とすると、抵抗素子Rは、以下の式(1)で表される抵抗値を有している。
R=((分枝数-1)×Z0-RT/2)/分枝数…(1)
【0016】
特性インピーダンスZ0が50オームとなっており、終端抵抗RT/2が100/2=50オームとなっているとき、抵抗素子Rは、16.7オームとなっている。このとき、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3nは、送信装置TX1,TX2および受信装置RXのいずれのポートから見ても、50オーム(RS)となっており、インピーダンス整合のとれた伝送路となっている。
【0017】
各抵抗素子Rは、反射による伝送特性の劣化を抑えるため、極力、分岐点Hp,Hnの近傍に配置される。また、伝送路Pのレーン内スキュー特性の劣化を抑えるため、信号線P1pと信号線P1nと配線パターンが極力、近似レイアウトとなるように、信号線P1p,P1nが配置される。同様に、信号線P2pと信号線P2nと配線パターンが極力、近似レイアウトとなるように、信号線P2p,P2nが配置される。同様に、信号線P3pと信号線P3nと配線パターンが極力、近似レイアウトとなるように、信号線P3p,P3nが配置される。また、伝送路Pのレーン間スキュー特性の劣化を抑えるため、互いに異なるレーン同士の配線パターンが極力、近似レイアウトとなるように、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3nが配置される。
【0018】
反射による伝送特性の劣化の抑制、伝送路Pのレーン内スキュー特性の劣化の抑制、および伝送路Pのレーン間スキュー特性の劣化の抑制を実現するためには、伝送路Pが、図2図4に示したように、複数レイヤーに渡って配線されることが好ましい。このとき、各レイヤーの特性が互いに近くなるように、伝送路Pが構成されていることが好ましい。伝送路Pが複数レイヤーに渡って配線される場合、各レイヤーの特性が互いに近くならないときには、1レーンを構成する各配線の特性や、レーン間特性に差分が出難くなるように、各レイヤーの使用割合を揃えることが好ましい。
【0019】
通信システム1では、送信装置TX1が信号を出力するときは、例えば、図1に示したように、送信装置TX2の出力は停止され、さらに、送信装置TX2は差動終端される。同様に、通信システム1では、送信装置TX2が信号を出力するときは、送信装置TX1の出力は停止され、さらに、送信装置TX1は差動終端される。送信装置TX1,TX2は、外部からの制御信号に応じて、信号出力および差動終端のいずれかに設定される。
【0020】
図5は、通信システム1における通過特性の一例を表したものである。図6は、通信システム1における反射特性の一例を表したものである。図7は、通信システム1におけるアイダイアグラムの一例を表したものである。図5において、2つの波形のうち下側の波形は、送信装置TX1,TX2側から見たときの通過特性の結果であり、2つの波形のうち上側の波形は、受信装置RX側から見たときの通過特性の結果である。図6では、送信装置TX1,TX2側から見たときの反射特性の結果と、受信装置RX側から見たときの
反射特性の結果とが互いに重なり合っている。
【0021】
図5では、1GHz付近の信号レベルが-5dBとなっている。これは、抵抗素子Rが挿入されたことにより、通過する信号レベルが約56%にまで下がったことを意味している。また、図6では、1GHz付近の信号レベルが-15dBとなっている。これは、反射される信号レベルが約18%まで下がったことを意味している。図7では、アイダイアグラムの目が、くっきりと開いている。
【0022】
図8は、比較例Aに係る通信システム100の概要を表したものである。図9は、通信システム100における通過特性の一例を表したものである。図10は、通信システム100における反射特性の一例を表したものである。図11は、通信システム100におけるアイダイアグラムの一例を表したものである。通信システム100では、送信装置TX1の、各信号線P1p,P1nに対して終端抵抗RT/2が設けられており、受信装置RXの、各信号線P3p,P3nに対して終端抵抗RT/2が設けられている。さらに、通信システム100は、SSTL(Stub Series Termination Logic)を活用した伝送路を備えている。具体的には、通信システム100では、スタブである送信装置TX2側に分枝した各信号線P2p,P2nに対して、抵抗値がZ0/2のSSTが直列に挿入されている。これにより、送信装置TX2から見たときのバスのインピーダンスの非整合が解消される。
【0023】
図9では、1GHz付近の信号レベルが-2dB程度となっている。これは、本実施の形態のような抵抗素子Rが挿入されておらず、信号レベルがあまり減少しなかったためである。しかし、図10では、1GHz付近の信号レベルが-7dB程度となっている。これは、入力した信号の半分が反射によって戻ってきてしまっていることを意味している。また、図11では、アイダイアグラムの目が、図7のアイダイアグラムの目と比べて、かなり小さくなっている。これらのことから、通信システム100では、反射によるノイズが多く、信号が通過し難いことがわかる。
【0024】
図12は、比較例Bに係る通信システム200の概要を表したものである。図13は、通信システム200における通過特性の一例を表したものである。図14は、通信システム200における反射特性の一例を表したものである。図15は、通信システム200におけるアイダイアグラムの一例を表したものである。通信システム200では、送信装置TX2の、各信号線P2p,P2nに対して終端抵抗RT/2が設けられており、受信装置RXの、各信号線P3p,P3nに対して終端抵抗RT/2が設けられている。さらに、通信システム200は、SSTLを活用した伝送路を備えている。具体的には、通信システム200では、スタブである送信装置TX2側に分枝した各信号線P2p,P2nに対して、抵抗値がZ0/2のSSTが直列に挿入されている。これにより、送信装置TX2から見たときのバスのインピーダンスの非整合が解消される。
【0025】
図13では、1GHz付近の信号レベルが-2dB程度となっている。これは、本実施の形態のような抵抗素子Rが挿入されておらず、信号レベルがあまり減少しなかったためである。しかし、図14では、1GHz付近の信号レベルが-2dB程度となっている。これは、入力した信号のほとんどが反射によって戻ってきてしまっていることを意味している。また、図15では、アイダイアグラムの目が、ほとんど見えなくなっている。これらのことから、通信システム200では、反射によるノイズが多く、信号が通過し難いことがわかる。
【0026】
図16は、比較例Cに係る通信システム300の概要を表したものである。図17は、通信システム300における通過特性の一例を表したものである。図18は、通信システム300における反射特性の一例を表したものである。図19は、通信システム300におけるアイダイアグラムの一例を表したものである。通信システム300では、送信装置TX1の、各信号線P1p,P1nに対して終端抵抗RT/2が設けられており、送信装置TX2の、各信号線P2p,P2nに対しても終端抵抗RT/2が設けられている。通信システム300では、受信装置RXの、各信号線P3p,P3nに対しても終端抵抗RT/2が設けられている。さらに、通信システム300は、SSTLを活用した伝送路を備えている。具体的には、通信システム300では、スタブである送信装置TX2側に分枝した各信号線P2p,P2nに対して、抵抗値がZ0/2のSSTが直列に挿入されている。これにより、送信装置TX2から見たときのバスのインピーダンスの非整合が解消される。
【0027】
図17では、1GHz付近の信号レベルが-4dB程度となっている。これは、本実施の形態のような抵抗素子Rが挿入されておらず、信号レベルがあまり減少しなかったためである。しかし、図18では、1GHz付近の信号レベルが-6dB程度となっている。これは、入力した信号の約半分が反射によって戻ってきてしまっていることを意味している。また、図19では、アイダイアグラムの目が、ある程度、見えている。これらのことから、通信システム300では、反射によるノイズが多く、信号が通過し難いことがわかる。
【0028】
[効果]
次に、本実施の形態の通信システム1の効果について説明する。
【0029】
近年、ドローン、ウェアラブル機器、自動車、スマートフォンなどでは、複数のカメラを搭載する構成が急増している。複数のカメラからの画像データをアプリケーションプロセッサ等に伝送する際には、MIPIアライアンスが策定したC-PHY規格やD-PHY規格といった高速インタフェース規格が適用される。
【0030】
ところで、MIPIでは、データ伝送がポイントツーポイント伝送であるので、例えば、複数のカメラに対応するためには、アプリケーションプロセッサ側のピン数や伝送路サイズのアップ、製品デザイン面での制約など課題が多い。複数のカメラに対応するためには、マルチポイントバス伝送が有望である。しかし、従来のマルチポイントバス伝送では、反射などの影響で波形品質が大きく劣化するので、高速伝送に向かない。実際、上述した通信システム100,200,300では、反射によるノイズが多く、信号が通過し難かった。
【0031】
一方、本実施の形態では、伝送路Pにおいて、3分岐した分岐点Hp,Hnが設けられ、3分岐した分岐点Hp,Hnにおいて、信号線ごとに抵抗素子Rが設けられている。このように、本実施の形態では、非常に簡単な構成で伝送路Pに分岐を設けるだけで、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、伝送路Pに設けた各抵抗素子Rが、上記の式(1)で表される抵抗値を有している。これにより、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3nは、送信装置TX1,TX2および受信装置RXのいずれのポートから見ても、50オーム(RS)となっており、インピーダンス整合のとれた伝送路となる。従って、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0033】
また、本実施の形態では、信号を出力しない送信装置(例えば、送信装置TX2)が差動終端される。これにより、信号を出力しない送信装置が解放端にされている場合と比べて、伝送路P上のノイズを低減することができる。従って、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0034】
<2.第2の実施の形態>
[構成]
本開示の第2の実施形態に係る通信システム2について説明する。図20は、通信システム2の概要を表したものである。通信システム2は、マルチポイントバス伝送に適用されるものである。通信システム2は、3つの送信装置TX1,TX2,TX3と、1つの受信装置RXとを備えている。通信システム2は、さらに、例えば、図20に示したように、各送信装置TX1,TX2,TX3と、受信装置RXとを互いに接続する伝送路Pを備えている。通信システム2は、3つの送信装置TX1,TX2,TX3から、伝送路Pを介して1つの受信装置RXに信号を伝送する。
【0035】
伝送路Pは、途中で4つに分岐しており、分岐点Hp,Hnを有している。分岐の1つである伝送路P1は、送信装置TX1と、分岐点Hp,Hnとを互いに接続している。伝送路P1は、差動信号を伝送する差動の信号線(一対の信号線P1p,P1n)によって構成されている。信号線P1pは、分岐点Hpに接続されており、信号線P1nは、分岐点Hnに接続されている。送信装置TX1の、各信号線P1p,P1nに対して終端抵抗RT/2が設けられている。
【0036】
分岐の1つである伝送路P2は、送信装置TX2と、分岐点Hp,Hnとを互いに接続している。伝送路P2は、差動信号を伝送する差動の信号線(一対の信号線P2p,P2n)によって構成されている。信号線P2pは、分岐点Hpに接続されており、信号線P2nは、分岐点Hnに接続されている。送信装置TX2の、各信号線P2p,P2nに対して終端抵抗RT/2が設けられている。
【0037】
分岐の1つである伝送路P3は、受信装置RXと、分岐点Hp,Hnとを互いに接続している。伝送路P3は、差動信号を伝送する差動の信号線(一対の信号線P3p,P3n)によって構成されている。信号線P3pは、分岐点Hpに接続されており、信号線P3nは、分岐点Hnに接続されている。受信装置RXの、各信号線P3p,P3nに対して終端抵抗RT/2が設けられている。
【0038】
分岐の1つである伝送路P4は、送信装置TX3と、分岐点Hp,Hnとを互いに接続している。伝送路P4は、差動信号を伝送する差動の信号線(一対の信号線P4p,P4n)によって構成されている。信号線P4pは、分岐点Hpに接続されており、信号線P4nは、分岐点Hnに接続されている。送信装置TX3の、各信号線P4p,P4nに対して終端抵抗RT/2が設けられている。信号線P1p,P2p,P3p,P4pは、分岐点Hpにおいて互いに接続されている。信号線P1n,P2n,P3n,P4nは、分岐点Hnにおいて互いに接続されている。
【0039】
各信号線P1p,P2p,P3p,P4pは、分岐点Hpの近傍に抵抗素子Rを有しており、さらに、各信号線P1n,P2n,P3n,P4nも、分岐点Hnの近傍にも抵抗素子Rを有している。ここで、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3n,P4p,P4nの特性インピーダンスをZ0とし、各送信装置TX1,TX2,TX3の、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P4p,P4nに対する終端抵抗をRT/2とし、受信装置RXの、各信号線P3p,P3nに対する終端抵抗をRT/2とすると、抵抗素子Rは、上述の式(1)で表される抵抗値を有している。
【0040】
特性インピーダンスZ0が50オームとなっており、終端抵抗RT/2が100/2=50オームとなっているとき、抵抗素子Rは、25オームとなっている。このとき、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3n,P4p,P4nは、送信装置TX1,TX2,TX3および受信装置RXのいずれのポートから見ても、50オーム(RS)となっており、インピーダンス整合のとれた伝送路となっている。
【0041】
各抵抗素子Rは、反射による伝送特性の劣化を抑えるため、極力、分岐点Hp,Hnの近傍に配置される。また、伝送路Pのレーン内スキュー特性の劣化を抑えるため、信号線P1pと信号線P1nと配線パターンが極力、近似レイアウトとなるように、信号線P1p,P1nが配置される。同様に、信号線P2pと信号線P2nと配線パターンが極力、近似レイアウトとなるように、信号線P2p,P2nが配置される。同様に、信号線P3pと信号線P3nと配線パターンが極力、近似レイアウトとなるように、信号線P3p,P3nが配置される。同様に、信号線P4pと信号線P4nと配線パターンが極力、近似レイアウトとなるように、信号線P4p,P4nが配置される。また、伝送路Pのレーン間スキュー特性の劣化を抑えるため、互いに異なるレーン同士の配線パターンが極力、近似レイアウトとなるように、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3n,P4p,P4nが配置される。
【0042】
通信システム2は、送信装置TX1が信号を出力するときは、例えば、図20に示したように、送信装置TX2,TX3の出力は停止され、さらに、送信装置TX2,TX3は差動終端される。同様に、通信システム2では、送信装置TX2が信号を出力するときは、送信装置TX1,TX3の出力は停止され、さらに、送信装置TX1,TX3は差動終端される。同様に、通信システム2では、送信装置TX3が信号を出力するときは、送信装置TX1,TX2の出力は停止され、さらに、送信装置TX1,TX2は差動終端される。送信装置TX1,TX2,TX3は、外部からの制御信号に応じて、信号出力および差動終端のいずれかに設定される。
【0043】
[効果]
次に、本実施の形態の通信システム2の効果について説明する。
【0044】
本実施の形態では、伝送路Pにおいて、4分岐した分岐点Hp,Hnが一組、設けられ、4分岐した分岐点Hp,Hnの各組おいて、信号線ごとに抵抗素子Rが設けられている。このように、本実施の形態では、非常に簡単な構成で伝送路Pに分岐を設けるだけで、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0045】
また、本実施の形態では、伝送路Pに設けた各抵抗素子Rが、上記の式(1)で表される抵抗値を有している。これにより、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3n,P4p,P4nは、送信装置TX1,TX2,TX3および受信装置RXのいずれのポートから見ても、50オーム(RS)となっており、インピーダンス整合のとれた伝送路となる。従って、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、信号を出力しない送信装置(例えば、送信装置TX2,TX3)が差動終端される。これにより、信号を出力しない送信装置が解放端にされている場合と比べて、伝送路P上のノイズを低減することができる。従って、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0047】
<3.第1~第2の実施の形態に共通の変形例>
[変形例A]
図21は、3分岐の通信システム1の実装形態の一例を表したものである。本変形例に係る通信システム1は、2つの送信装置TX1,TX2から、伝送路Pを介して1つの受信装置RXに信号を伝送する。各抵抗素子Rは、分岐点Hp,Hnの近傍に配置されている。さらに、信号線P1pおよび信号線P2pは、分岐点Hpにおいて互いに接続されている。同様に、信号線P1nおよび信号線P2nは、分岐点Hnにおいて互いに接続されている。さらに、信号線P1pおよび信号線P3pは、分岐点Hpにおいて共通の伝送路上に配置されている。同様に、信号線P1nおよび信号線P3nは、分岐点Hnにおいて共通の伝送路上に配置されている。
【0048】
本変形例の通信システム1では、送信装置TX1が信号を出力するときは、送信装置TX2の出力は停止され、さらに、送信装置TX2は差動終端される。同様に、本変形例の通信システム1では、送信装置TX2が信号を出力するときは、送信装置TX1の出力は停止され、さらに、送信装置TX1は差動終端される。
【0049】
本変形例では、伝送路Pにおいて、3分岐した分岐点Hp,Hnが一組、設けられ、3分岐した分岐点Hp,Hnの各組おいて、信号線ごとに抵抗素子Rが設けられている。このように、本変形例では、非常に簡単な構成で伝送路Pに分岐を設けるだけで、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0050】
[変形例B]
図22は、4分岐の通信システム2の実装形態の一例を表したものである。本変形例に係る通信システム2は、3つの送信装置TX1,TX2,TX3から、伝送路Pを介して1つの受信装置RXに信号を伝送する。図22では、伝送路Pにおいて3分岐の分岐点Hp,Hnが2箇所(地点A,地点B)に設けられており、各地点A,Bにおいて、信号線ごとに抵抗素子Rが設けられている。このとき、各抵抗素子Rは、式(1)において分岐数を3としたときの抵抗値(16.7オーム)となっている。
【0051】
信号線P1pおよび信号線P2pは、地点Aの分岐点Hpにおいて互いに接続されている。同様に、信号線P1nおよび信号線P2nは、地点Aの分岐点Hnにおいて互いに接続されている。さらに、信号線P1pおよび信号線P5pは、地点Aの分岐点Hpにおいて共通の伝送路上に配置されている。同様に、信号線P1nおよび信号線P5nは、地点Aの分岐点Hnにおいて共通の伝送路上に配置されている。なお、信号線P5pは、地点Aの信号線P1pと地点Bの信号線P3pとを電気的につなぐ配線である。信号線P5nは、地点Aの信号線P1nと地点Bの信号線P3nとを電気的につなぐ配線である。
【0052】
信号線P3pおよび信号線P4pは、地点Bの分岐点Hpにおいて互いに接続されている。同様に、信号線P3nおよび信号線P4nは、地点Bの分岐点Hnにおいて互いに接続されている。さらに、信号線P3pおよび信号線P5pは、地点Bの分岐点Hpにおいて共通の伝送路上に配置されている。同様に、信号線P3nおよび信号線P5nは、地点Bの分岐点Hnにおいて共通の伝送路上に配置されている。
【0053】
本変形例の通信システム2では、送信装置TX1が信号を出力するときは、送信装置TX2,X3の出力は停止され、さらに、送信装置TX2,X3は差動終端される。同様に、本変形例の通信システム2では、送信装置TX2が信号を出力するときは、送信装置TX1,X3の出力は停止され、さらに、送信装置TX1,X3は差動終端される。同様に、本変形例の通信システム2では、送信装置TX3が信号を出力するときは、送信装置TX1,X2の出力は停止され、さらに、送信装置TX1,X2は差動終端される。
【0054】
本変形例では、伝送路Pにおいて、3分岐した分岐点Hp,Hnが2組、設けられ、3分岐した分岐点Hp,Hnの各組おいて、信号線ごとに抵抗素子Rが設けられている。このように、本変形例では、非常に簡単な構成で伝送路Pに分岐を設けるだけで、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0055】
[変形例C]
図23は、5分岐の通信システム3の実装形態の一例を表したものである。本変形例に係る通信システム3は、4つの送信装置TX1,TX2,TX3,TX4から、伝送路Pを介して1つの受信装置RXに信号を伝送する。図23では、図22の4分岐の通信システム2の信号線P3pおよび信号線P4pにおいて、新たに3分岐を設けたものに相当する。なお、新たに設けた3分岐の箇所を地点Cと称する。各地点A,B,Cにおいて、信号線ごとに抵抗素子Rが設けられている。このとき、各抵抗素子Rは、式(1)において分岐数を3としたときの抵抗値(16.7オーム)となっている。
【0056】
信号線P4pおよび信号線P6pは、地点Cの分岐点Hpにおいて互いに接続されている。同様に、信号線P4nおよび信号線P6nは、地点Cの分岐点Hnにおいて互いに接続されている。なお、信号線P6pは、送信装置TX4に接続された一方の配線である。信号線P6nは、送信装置TX4に接続された他方の配線である。さらに、信号線P4pおよび信号線P7pは、地点Cの分岐点Hpにおいて共通の伝送路上に配置されている。同様に、信号線P4nおよび信号線P7nは、地点Cの分岐点Hnにおいて共通の伝送路上に配置されている。なお、信号線P7pは、送信装置TX3に接続された一方の配線である。信号線P7nは、送信装置TX3に接続された他方の配線である。
【0057】
本変形例の通信システム3では、送信装置TX1が信号を出力するときは、送信装置TX2,X3,X4の出力は停止され、さらに、送信装置TX2,X3,X4は差動終端される。同様に、本変形例の通信システム3では、送信装置TX2が信号を出力するときは、送信装置TX1,X3,X4の出力は停止され、さらに、送信装置TX1,X3,X4は差動終端される。同様に、本変形例の通信システム3では、送信装置TX3が信号を出力するときは、送信装置TX1,X2,X4の出力は停止され、さらに、送信装置TX1,X2,X4は差動終端される。同様に、本変形例の通信システム3では、送信装置TX4が信号を出力するときは、送信装置TX1,X2,X3の出力は停止され、さらに、送信装置TX1,X2,X3は差動終端される。送信装置TX1,TX2,TX3,TX4は、外部からの制御信号に応じて、信号出力および差動終端のいずれかに設定される。
【0058】
本変形例では、伝送路Pにおいて、3分岐した分岐点Hp,Hnが2組、設けられ、さらに、一方の組の分岐点Hp,Hnにおいて、送信装置TX1と受信装置RXとをつなぐメインの伝送路から分岐した一対の信号線において、3分岐した分岐点Hp,Hnが1組、設けられている。3分岐した分岐点Hp,Hnの各組おいて、信号線ごとに抵抗素子Rが設けられている。このように、本変形例では、非常に簡単な構成で伝送路Pに分岐を設けるだけで、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0059】
[変形例D]
上記各実施の形態およびそれらの変形例において、各分岐点Hp,Hnにおいて、受信装置RX寄りに設けられた各抵抗素子Rが省略されていてもよい。図24は、通信システム1の一変形例を表したものである。図24に記載の通信システム1は、上記実施の形態に係る通信システム1の分岐点Hp,Hnにおいて、受信装置RX寄りに設けられた各抵抗素子Rが省略されたものに相当する。図24に記載の通信システム1において、各抵抗素子Rは、以下の式(2)を解くことにより得られる抵抗値を有している。
【数1】
【0060】
特性インピーダンスZ0が50オームとなっており、終端抵抗RT/2が100/2=50オームとなっているとき、抵抗素子Rは、20.7オームとなっている。このとき、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3nは、送信装置TX1,TX2のポートから見たときには、50オーム(RS-fromTX)となっており、受信装置RXのポートから見たときには、35.35オーム(RS-fromRX)となっている。
【0061】
図25は、図24に記載の通信システム1における通過特性の一例を表したものである。図26は、図24に記載の通信システム1における反射特性の一例を表したものである。図27は、図24に記載の通信システム1におけるアイダイアグラムの一例を表したものである。図25において、2つの波形のうち下側の波形は、送信装置TX1,TX2側から見たときの通過特性の結果であり、2つの波形のうち上側の波形は、受信装置RX側から見たときの通過特性の結果である。図26では、送信装置TX1,TX2側から見たときの反射特性の結果と、受信装置RX側から見たときの反射特性の結果とが互いに重なり合っておらず、送信装置TX1,TX2側から見たときの反射特性の方が、受信装置RX側から見たときの反射特性よりも優れている。
【0062】
図25では、1GHz付近の信号レベルが-3dBと、図5における信号レベルと比べて若干、改善している。これは、分岐点Hp,Hnにおいて、受信装置RX寄りに設けられた各抵抗素子Rが省略されたことにより、受信装置RX寄りに設けられた各抵抗素子Rによる電圧の分圧がなされずに済んだためである。また、図26では、送信装置TX1,TX2側から見たときの反射特性において、1GHz付近の信号レベルが-18dBとなっており、受信装置RX側から見たときの反射特性において、1GHz付近の信号レベルが-10dBとなっている。図27では、アイダイアグラムの目が、くっきりと開いている。
【0063】
本変形例では、分岐点Hp,Hnにおいて、受信装置RX寄りに設けられた各抵抗素子Rが省略されたことにより、受信装置RXに入力される信号レベルを改善することができる。従って、信号レベルが改善した分だけノイズに強いことになるので、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0064】
<4.第3の実施の形態>
[構成]
本開示の第3の実施形態に係る通信システム4について説明する。図28は、通信システム4の概要を表したものである。通信システム4は、マルチポイントバス伝送に適用されるものである。通信システム4は、2つの送信装置TX1,TX2と、1つの受信装置RXとを備えている。通信システム4は、さらに、例えば、図28に示したように、各送信装置TX1,TX2と、受信装置RXとを互いに接続する伝送路Pを備えている。通信システム4は、2つの送信装置TX1,TX2から、伝送路Pを介して1つの受信装置RXに信号を伝送する。
【0065】
伝送路Pは、途中で3つに分岐しており、分岐点H1,H2,H3を有している。分岐の1つである伝送路P1は、送信装置TX1と、分岐点H1,H2,H3とを互いに接続している。伝送路P1は、3つで一組の信号を伝送する3つの信号線P11,P12,P13によって構成されている。信号線P11は、分岐点H1に接続されており、信号線P12は、分岐点H2に接続されており、信号線P13は、分岐点H3に接続されている。
【0066】
分岐の1つである伝送路P2は、送信装置TX2と、分岐点H1,H2,H3とを互いに接続している。伝送路P2は、3つで一組の信号を伝送する3つの信号線P21,P22,P23によって構成されている。信号線P21は、分岐点H1に接続されており、信号線P22は、分岐点H2に接続されており、信号線P23は、分岐点H3に接続されている。分岐の1つである伝送路P3は、送信装置TX3と、分岐点H1,H2,H3とを互いに接続している。伝送路P3は、3つで一組の信号を伝送する3つの信号線P31,P32,P33によって構成さ
れている。信号線P31は、分岐点H1に接続されており、信号線P32は、分岐点H2に接続されており、信号線P33は、分岐点H3に接続されている。
【0067】
各信号線P11,P21,P31は、分岐点H1の近傍に抵抗素子Rを有しており、各信号線P12,P22,P32は、分岐点H2の近傍に抵抗素子Rを有しており、各信号線P13,P23,P33は、分岐点H3の近傍に抵抗素子Rを有している。ここで、各信号線P11,P21,P31,P12,P22,P32,P13,P23,P33の特性インピーダンスをZ0とし、各送信装置TX1,TX2の、各信号線P11,P21,P12,P22,P13,P23に対する終端抵抗をRT/2とし、受信装置RXの、各信号線P31,P32,P33に対する終端抵抗をRT/2とすると、抵抗素子Rは、上記の式(1)で表される抵抗値を有している。
【0068】
特性インピーダンスZ0が50オームとなっており、終端抵抗RT/2が100/2=50オームとなっているとき、抵抗素子Rは、16.7オームとなっている。このとき、各信号線P11,P21,P31,P12,P22,P32,P13,P23,P33は、送信装置TX1,TX2および受信装置RXのいずれのポートから見ても、50オーム(RS)となっており、インピーダンス整合のとれた伝送路となっている。
【0069】
通信システム4では、送信装置TX1が信号を出力するときは、送信装置TX2の出力は停止され、さらに、送信装置TX2は終端される。同様に、通信システム4では、送信装置TX2が信号を出力するときは、送信装置TX1の出力は停止され、さらに、送信装置TX1は終端される。送信装置TX1,TX2は、外部からの制御信号に応じて、信号出力および終端のいずれかに設定される。
【0070】
本実施の形態では、伝送路Pにおいて、3分岐した分岐点H1,H2,H3が設けられ、3分岐した分岐点H1,H2,H3において、信号線ごとに抵抗素子Rが設けられている。このように、本実施の形態では、非常に簡単な構成で伝送路Pに分岐を設けるだけで、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0071】
また、本実施の形態では、伝送路Pに設けた各抵抗素子Rが、上記の式(1)で表される抵抗値を有している。これにより、各信号線P11,P21,P31,P12,P22,P32,P13,P23,P33は、送信装置TX1,TX2および受信装置RXのいずれのポートから見ても、50オーム(RS)となっており、インピーダンス整合のとれた伝送路となる。従って、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0072】
また、本実施の形態では、信号を出力しない送信装置(例えば、送信装置TX2)が終端される。これにより、信号を出力しない送信装置が解放端にされている場合と比べて、伝送路P上のノイズを低減することができる。従って、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。
【0073】
<5.第1~第3の実施の形態およびそれらの変形例に共通の変形例>
第1~第3の実施の形態およびそれらの変形例に共通の変形例の伝送路Pにおいて、分岐点Hp,Hnもしくは分岐点H1,H2,H3や各抵抗素子Rを含む部分が、IC(Integrated Circuit)やモジュールなどの伝送装置を含んで構成されていてもよい。
【0074】
図1の通信システム1において、伝送路Pが、例えば、図29に示したような伝送装置10を含んで構成されていてもよい。伝送装置10は、例えば、分岐点Hp,Hnと、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3nのうち分岐点Hp,Hnの近傍に設けられた6つの抵抗素子Rとを有している。伝送装置10は、さらに、例えば、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3nのうち分岐点Hp,Hnとは反対側の端部に接続された6つの接続端子T1p,T1n,T2p,T2n,T3p,T3nを有している。
【0075】
図20の通信システム2において、伝送路Pが、例えば、図30に示したような伝送装置20を含んで構成されていてもよい。伝送装置20は、例えば、分岐点Hp,Hnと、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3n,P4p,P4nのうち分岐点Hp,Hnの近傍に設けられた8つの抵抗素子Rとを有している。伝送装置20は、さらに、例えば、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3n,P4p,P4nのうち分岐点Hp,Hnとは反対側の端部に接続された8つの接続端子T1p,T1n,T2p,T2n,T3p,T3n,T4p,T4nを有している。
【0076】
図21の通信システム1において、伝送路Pが、例えば、図31に示したような伝送装置30を含んで構成されていてもよい。伝送装置30は、例えば、分岐点Hp,Hnと、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3nのうち分岐点Hp,Hnの近傍に設けられた6つの抵抗素子Rとを有している。伝送装置30は、さらに、例えば、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3nのうち分岐点Hp,Hnとは反対側の端部に接続された6つの接続端子T1p,T1n,T2p,T2n,T3p,T3nを有している。
【0077】
図22の通信システム2において、伝送路Pの地点Aおよび地点Bが、それぞれ、例えば、図31に示したような伝送装置30を含んで構成されていてもよい。また、図23の通信システム3において、図23の伝送路Pの地点A、地点Bおよび地点Cが、それぞれ、例えば、図31に示したような伝送装置10を含んで構成されていてもよい。
【0078】
図24の通信システム1において、伝送路Pが、例えば、図32に示したような伝送装置40を含んで構成されていてもよい。伝送装置40は、例えば、分岐点Hp,Hnと、各信号線P1p,P1n,P2p,P2nのうち分岐点Hp,Hnの近傍に設けられた4つの抵抗素子Rとを有している。伝送装置40は、さらに、例えば、各信号線P1p,P1n,P2p,P2n,P3p,P3nのうち分岐点Hp,Hnとは反対側の端部に接続された6つの接続端子T1p,T1n,T2p,T2n,T3p,T3nを有している。伝送装置40において、各信号線P3p,P3nには、抵抗素子Rが設けられていない。
【0079】
図28の通信システム4において、伝送路Pが、例えば、図33に示したような伝送装置50を含んで構成されていてもよい。伝送装置50は、例えば、分岐点H1,H2,H3と、各信号線P11,P12,P13,P21,P22,P23,P31,P32,P33のうち分岐点H1,H2,H3の近傍に設けられた9つの抵抗素子Rとを有している。伝送装置50は、さらに、例えば、各信号線P11,P12,P13,P21,P22,P23,P31,P32,P33のうち分岐点H1,H2,H3とは反対側の端部に接続された9つの接続端子T11,T12,T13,T21,T22,T23,T31,T32,T33を有している。
【0080】
このように、本変形例では、伝送路Pのうち、分岐点Hp,Hnもしくは分岐点H1,H2,H3や各抵抗素子Rを含む部分が、IC(Integrated Circuit)やモジュールなどの伝送装置を含んで構成されている。これにより、伝送路Pを容易に構築することができる。
【0081】
なお、本変形例において、分岐点Hp,Hnもしくは分岐点H1,H2,H3における分岐数を変えるスイッチ素子が設けられていてもよい。
【0082】
図29の伝送装置10において、例えば、図34に示したように、分岐点Hpにおける分岐数を変えるスイッチ素子SW1と、分岐点Hnにおける分岐数を変えるスイッチ素子SW2とが設けられていてもよい。スイッチ素子SW1は、分岐点Hpと信号線P1p上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hpと信号線P2p上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hpと信号線P3pとを接続する配線とを含んで構成されている。スイッチ素子SW1は、外部からの制御信号に応じて、内部の2つのスイッチをオンオフする。スイッチ素子SW1は、外部からの制御信号に応じて、例えば、信号線P1p,P2pのうち少なくとも1つと、信号線P3pとを接続する。スイッチ素子SW2は、分岐点Hn
信号線P1n上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hnと信号線P2n上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hnと信号線P3nとを接続する配線とを含んで構成されている。スイッチ素子SW2は、外部からの制御信号に応じて、内部の2つのスイッチをオンオフする。スイッチ素子SW2は、外部からの制御信号に応じて、例えば、信号線P1n,P2nのうち少なくとも1つと、信号線P3nとを接続する。
【0083】
図30の伝送装置20において、例えば、図35に示したように、分岐点Hpにおける分岐数を変えるスイッチ素子SW3と、分岐点Hnにおける分岐数を変えるスイッチ素子SW4とが設けられていてもよい。スイッチ素子SW3は、分岐点Hpと信号線P1p上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hpと信号線P2p上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hpと信号線P3p上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hpと信号線P4pとを接続する配線とを含んで構成されている。スイッチ素子SW3は、外部からの制御信号に応じて、内部の3つのスイッチをオンオフする。スイッチ素子SW3は、外部からの制御信号に応じて、例えば、信号線P1p,P2p,P4pのうち少なくとも1つと、信号線P3pとを接続する。スイッチ素子SW4は、分岐点Hnと信号線P1n上の
抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hnと信号線P2n上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hnと信号線P3n上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hnと信号線P4nとを接続する配線とを含んで構成されている。スイッチ素子SW4は、外部からの制御信号に応じて、内部の3つのスイッチをオンオフする。スイッチ素子SW4は、外部からの制御信号に応じて、例えば、信号線P1n,P2n,P4nのうち少なくとも1つと、信号線P3nとを接続する。
【0084】
図31の伝送装置30において、例えば、図36に示したように、分岐点Hpにおける分岐数を変えるスイッチ素子SW5と、分岐点Hnにおける分岐数を変えるスイッチ素子SW6とが設けられていてもよい。スイッチ素子SW5は、分岐点Hpと信号線P1p上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hpと信号線P2p上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hpと信号線P3pとを接続する配線とを含んで構成されている。スイッチ素子SW5は、外部からの制御信号に応じて、内部の2つのスイッチをオンオフする。スイッチ素子SW5は、外部からの制御信号に応じて、例えば、信号線P1p,P2pのうち少なくとも1つと、信号線P3pとを接続する。スイッチ素子SW6は、分岐点Hnと信号線P1n上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hnと信号線P2n上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hnと信号線P3nとを接続する配線とを含んで構成されている。スイッチ素子SW6は、外部からの制御信号に応じて、内部の2つのスイッチをオンオフする。スイッチ素子SW6は、外部からの制御信号に応じて、例えば、信号線P1n,P2nのうち少なくとも1つと、信号線P3nとを接続する。
【0085】
図32の伝送装置40において、例えば、図37に示したように、分岐点Hpにおける分岐数を変えるスイッチ素子SW7と、分岐点Hnにおける分岐数を変えるスイッチ素子SW8とが設けられていてもよい。スイッチ素子SW7は、分岐点Hpと信号線P1p上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hpと信号線P2p上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hpと信号線P3pとを接続する配線とを含んで構成されている。スイッチ素子SW7は、外部からの制御信号に応じて、内部の2つのスイッチをオンオフする。スイッチ素子SW7は、外部からの制御信号に応じて、例えば、信号線P1p,P2pのうち少なくとも1つと、信号線P3pとを接続する。スイッチ素子SW8は、分岐点Hnと信号線P1n上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hnと信号線P2n上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点Hnと信号線P3nとを接続する配線とを含んで構成されている。スイッチ素子SW8は、外部からの制御信号に応じて、内部の2つのスイッチをオンオフする。スイッチ素子SW8は、外部からの制御信号に応じて、例えば、信号線P1n,P2nのうち少なくとも1つと、信号線P3nとを接続する。
【0086】
図33の伝送装置50において、例えば、図38に示したように、分岐点H1における分岐数を変えるスイッチ素子SW9と、分岐点H2における分岐数を変えるスイッチ素子SW10と、分岐点H3における分岐数を変えるスイッチ素子SW11とが設けられていてもよい。スイッチ素子SW9は、分岐点H1と信号線P11上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点H1と信号線P21上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点H1と信号線P31上の抵抗素子Rとを接続する配線とを含んで構成されている。スイッチ素子SW9は、外部からの制御信号に応じて、内部の2つのスイッチをオンオフする。スイッチ素子SW9は、外部からの制御信号に応じて、例えば、信号線P11,P21のうち少なくとも1つと、信号線P31とを接続する。スイッチ素子SW10は、分岐点H2と信号線P12上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点H2と信号線P22上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点H2と信号線P32上の抵抗素子Rとを接続する配線とを含んで構成されている。スイッチ素子SW10は、外部からの制御信号に応じて、内部の2つのスイッチをオンオフする。スイッチ素子SW10は、外部からの制御信号に応じて、例えば、信号線P12,P22のうち少なくとも1つと、信号線P32とを接続する。スイッチ素子SW11は、分岐点H3と信号線P13上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点H3と信号線P23上の抵抗素子Rとを継断するスイッチと、分岐点H3と信号線P33上の抵抗素子Rとを接続する配線とを含んで構成されている。スイッチ素子SW11は、外部からの制御信号に応じて、内部の2つのスイッチをオンオフする。スイッチ素子SW11は、外部からの制御信号に応じて、例えば、信号線P13,P23のうち少なくとも1つと、信号線P33とを接続する。
【0087】
このように、本変形例では、分岐点Hp,Hnもしくは分岐点H1,H2,H3における分岐数を変えるスイッチ素子が設けられているので、伝送路Pを目的に応じて容易に変更することができる。
【0088】
ところで、本変形例において、各抵抗素子Rは、外部からの制御信号に応じて抵抗値が変化する可変抵抗素子であってもよい。各抵抗素子Rの抵抗値は、例えば、信号出力および終端の切り換えのタイミングに同期して変化する。このようにした場合には、伝送路Pを目的に応じて容易に調整することができる。
【0089】
<6.適用例>
以下に、上記各実施の形態およびそれらの変形例に係る通信システム1~4の適用例について説明する。
【0090】
(適用例その1)
図39は、上記各実施の形態およびそれらの変形例に係る通信システム1~4が適用されるスマートフォン5(多機能携帯電話)の外観を表すものである。このスマートフォン5には、様々なデバイスが搭載されており、それらのデバイス間でデータのやり取りを行う通信システムにおいて、上記各実施の形態およびそれらの変形例に係る通信システム1~4が適用されている。
【0091】
図40は、スマートフォン5に用いられるアプリケーションプロセッサ310の一構成例を表すものである。アプリケーションプロセッサ310は、CPU(Central Processing Unit)311と、メモリ制御部312と、電源制御部313と、外部インタフェース314と、MIPIインタフェース315と、GPU(Graphics Processing Unit)316と、メディア処理部317と、ディスプレイ制御部318と、MIPIインタフェース319とを有している。CPU311、メモリ制御部312、電源制御部313、外部インタフェース314、MIPIインタフェース315、GPU316、メディア処理部317、ディスプレイ制御部318は、この例では、システムバス320に接続され、このシステムバス320を介して、互いにデータのやり取りをすることができるようになっている。
【0092】
CPU311は、プログラムに従って、スマートフォン5で扱われる様々な情報を処理するものである。メモリ制御部312は、CPU311が情報処理を行う際に使用するメモリ501を制御するものである。電源制御部313は、スマートフォン5の電源を制御するものである。
【0093】
外部インタフェース314は、外部デバイスと通信するためのインタフェースであり、この例では、無線通信部502と接続されている。無線通信部502は、携帯電話の基地局と無線通信をするものであり、例えば、ベースバンド部や、RF(Radio Frequency)フロントエンド部などを含んで構成される。
【0094】
MIPIインタフェース315は、画像信号をイメージセンサ410から受信するものである。このMIPIインタフェース315とイメージセンサ410との間の通信システムには、例えば、上記各実施の形態およびそれらの変形例に係る通信システム1~4が適用される。イメージセンサ410は、画像を取得するものであり、例えばCMOSセンサを含んで構成される。
【0095】
GPU316は、画像処理を行うものである。メディア処理部317は、音声や、文字や、図形などの情報を処理するものである。ディスプレイ制御部318は、MIPIインタフェース319を介して、ディスプレイ504を制御するものである。
【0096】
MIPIインタフェース319は、画像信号をディスプレイ504に送信するものである。画像信号としては、例えば、YUV形式やRGB形式などの信号を用いることができる。このMIPIインタフェース319とディスプレイ504との間の通信システムには、例えば、上記各実施の形態およびそれらの変形例に係る通信システム1~4が適用される。
【0097】
図41は、イメージセンサ410の一構成例を表すものである。イメージセンサ410は、センサ部411と、ISP(Image Signal Processor)412と、JPEG(Joint Photographic Experts Group)エンコーダ413と、CPU414と、RAM(Random Access Memory)415と、ROM(Read Only Memory)416と、電源制御部417と、I2C(Inter-Integrated Circuit)インタフェース418と、MIPIインタフェース419とを有している。これらの各ブロックは、この例では、システムバス420に接続され、このシステムバス420を介して、互いにデータのやり取りをすることができるようになっている。
【0098】
センサ部411は、画像を取得するものであり、例えばCMOSセンサにより構成されるものである。ISP412は、センサ部411が取得した画像に対して所定の処理を行うものである。JPEGエンコーダ413は、ISP412が処理した画像をエンコードしてJPEG形式の画像を生成するものである。CPU414は、プログラムに従ってイメージセンサ410の各ブロックを制御するものである。RAM415は、CPU414が情報処理を行う際に使用するメモリである。ROM416は、CPU414において実行されるプログラムを記憶するものである。電源制御部417は、イメージセンサ410の電源を制御するものである。I2Cインタフェース418は、アプリケーションプロセッサ310から制御信号を受け取るものである。また、図示していないが、イメージセンサ410は、アプリケーションプロセッサ310から、制御信号に加えてクロック信号をも受け取るようになっている。具体的には、イメージセンサ410は、様々な周波数のクロック信号に基づいて動作できるよう構成されている。
【0099】
MIPIインタフェース419は、画像信号をアプリケーションプロセッサ310に送信するものである。画像信号としては、例えば、YUV形式やRGB形式などの信号を用いることができる。このMIPIインタフェース419とアプリケーションプロセッサ310との間の通信システムには、例えば、上記各実施の形態およびそれらの変形例に係る通信システム1~4が適用される。
【0100】
(適用例その3)
図42および図43に、撮像装置への適用例として、車載用カメラの構成例を示す。図42は車載用カメラの設置例の一例を示し、図43は車載用カメラの内部構成例を示している。
【0101】
例えば、図42に示したように、車両301のフロント(前方)に車載用カメラ401、左右に車載用カメラ402,403、さらにリア(後方)に車載用カメラ404が設置される。車載用カメラ401~404はそれぞれ、車内ネットワークを介してECU302(Electrical Control Unit;電子制御ユニット)に接続されている。
【0102】
車両301のフロントに備え付けられた車載用カメラ401の画像取り込み角度は、例えば図42にaで示す範囲である。車載用カメラ402の画像取り込み角度は、例えば図42にbで示す範囲である。車載用カメラ403の画像取り込み角度は、例えば図42にcで示す範囲である。車載用カメラ404の画像取り込み角度は、例えば図42にdで示す範囲である。車載用カメラ401~404はそれぞれ、取り込んだ画像をECU302に出力する。この結果、車両301の前方、左右、後方の360度(全方位)の画像をECU302において取り込むことができる。
【0103】
例えば、図43に示したように、車載用カメラ401~404はそれぞれ、イメージセンサ431と、DSP(Digital Signal Processing)回路432と、セレクタ433と、SerDes(SERializer/DESerializer)回路434とを有している。
【0104】
DSP回路432は、イメージセンサ431から出力された撮像信号に対して各種の画像信号処理を行うものである。SerDes回路434は、信号のシリアル/パラレル変換を行うものであり、例えばFPD-Link III等の車載インタフェースチップで構成されている。
【0105】
セレクタ433は、イメージセンサ431から出力された撮像信号を、DSP回路432を介して出力するか、DSP回路432を介さずに出力するかを選択するものである。
【0106】
イメージセンサ431とDSP回路432との間の接続インタフェース441に、例えば、上記各実施の形態およびそれらの変形例に係る通信システム1~4が適用可能である。また、イメージセンサ431とセレクタ433との間の接続インタフェース442に、例えば、上記各実施の形態およびそれらの変形例に係る通信システム1~4が適用可能である。
【0107】
以上、複数の実施の形態およびそれらの変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示である。本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されるものではない。本開示が、本明細書中に記載された効果以外の効果を持っていてもよい。
【0108】
また、例えば、本開示は以下のような構成を取ることができる。
(1)
複数の送信装置から、伝送路を介して1つの受信装置に信号を伝送する通信システムであって、
前記伝送路は、途中に分岐点を有しており、前記送信装置と前記分岐点とを互いに接続する複数の第1信号線を有しており、さらに、前記分岐点と前記受信装置とを互いに接続する第2信号線を有しており、
前記複数の第1信号線および前記第2信号線のうち、少なくとも前記複数の第1信号線は、前記分岐点の近傍に抵抗素子を有している
通信システム。
(2)
前記伝送路は、差動の信号線によって構成されており、
各前記信号線が、前記分岐点、前記複数の第1信号線、および、前記第2信号線を有している
(1)に記載の通信システム。
(3)
前記複数の送信装置のうち、一の第1送信装置が前記信号を出力するときは、前記複数の送信装置のうち、他の1または複数の第2送信装置の出力は停止され、前記第2送信装置は差動終端される
(2)に記載の通信システム。
(4)
前記伝送路は、3つの信号線によって構成されており、
各前記信号線が、前記分岐点、前記複数の第1信号線、および、前記第2信号線を有している
(1)に記載の通信システム。
(5)
前記複数の送信装置のうち、一の第1送信装置が前記信号を出力するときは、前記複数の送信装置のうち、他の1または複数の第2送信装置の出力は停止され、前記第2送信装置は終端される
(4)に記載の通信システム。
(6)
前記複数の第1信号線および前記第2信号は、それぞれ、前記分岐点の近傍に抵抗素子を有し、
前記抵抗素子は、以下の式で表される抵抗値を有している
(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の通信システム。
R=((分枝数-1)×Z0-RT/2)/分枝数
0:前記第1信号線および前記第2信号線の特性インピーダンス
T/2:前記送信装置および前記受信装置の終端抵抗
(7)
各前記第1信号線は、前記分岐点の近傍に抵抗素子を有し、
前記抵抗素子は、以下の式を解くことで得られる抵抗値を有している
(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の通信システム。
【数2】
0:前記第1信号線の特性インピーダンス
T/2:前記送信装置および前記受信装置の終端抵抗
(8)
複数の送信装置から1つの受信装置に信号を伝送する通信システムに用いられる伝送装置あって、
分岐点と、
前記送信装置と前記分岐点とを互いに接続する複数の第1信号線と、
前記分岐点と前記受信装置とを互いに接続する第2信号線と、
前記複数の第1信号線および前記第2信号線のうち、少なくとも前記複数の第1信号線の、前記分岐点の近傍に設けられた複数の抵抗素子と
を備えた
伝送装置。
(9)
各前記抵抗素子は、可変抵抗素子である
(8)に記載の伝送装置。
(10)
前記分岐点における分岐数を変えるスイッチ素子を更に備えた
(8)または(9)に記載の伝送装置。
【0109】
本開示の一実施の形態に係る通信システムおよび伝送装置によれば、高速伝送に適したマルチポイントバス伝送を実現することができる。なお、本開示の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されず、本明細書中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【0110】
本出願は、日本国特許庁において2018年1月24日に出願された日本特許出願番号第2018-009330号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0111】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。
図1
図2
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