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特許7197514非晶質シリカ粉末およびその製造方法、用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】非晶質シリカ粉末およびその製造方法、用途
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20221220BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20221220BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221220BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
H01L23/30 R
C08L101/00
C08K3/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019567012
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2019000974
(87)【国際公開番号】W WO2019146454
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2018011603
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 修治
(72)【発明者】
【氏名】新田 純也
(72)【発明者】
【氏名】山隈 龍馬
(72)【発明者】
【氏名】吉開 浩明
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 孝治
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-187302(JP,A)
【文献】特開2015-086120(JP,A)
【文献】特開2006-273927(JP,A)
【文献】特開2007-145880(JP,A)
【文献】特開2019-019222(JP,A)
【文献】特許第5280626(JP,B2)
【文献】日本シリカ工業株式会社営業本部 赤崎 忠行ら,ゲル法シリカの特徴と応用,東ソー研究・技術報告,第45巻,2001年,65-69
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
H01L 23/28-23/30
C08L 101/00
C08K 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が10μm超50μm以下、250μm以上の乾式篩残存率が5.0質量%以下であって、以下の方法で測定した45μm以上の着磁性粒子の個数が0個であることを特徴とする非晶質シリカ粉末。
[着磁性粒子の測定方法]
1000mLビーカーに非晶質シリカ粉末50gとイオン交換水800gを加えてスラリーを調製する。このスラリーを撹拌装置により、回転数550rpm、5秒間隔で反転させながら、そこに、厚み20μmのゴム製カバーを被せた長さ150mm、直径25mm、磁力12000ガウスの棒磁石を1分間浸漬させ、着磁性粒子を捕捉する。着磁性粒子を捕捉した棒磁石をスラリーから取り出し、空のビーカー上でゴム製カバーを外してイオン交換水でゴム製カバーを洗浄しながら着磁性粒子を脱離させ、着磁性粒子を水中に分散させる。得られた分散液を直径25mmのナイロンフィルター(目開き35μm)を装着した吸引濾過装置にかけることによりナイロンフィルター上に着磁性粒子を回収する。着磁性粒子を回収したナイロンフィルターをマイクロスコープにセットし、100倍の倍率にてフィルター全領域を移動させながらナイロンフィルター上に回収させた着磁性粒子のうち、45μm以上の着磁性粒子の個数を計測する。
【請求項2】
最大粒子径が75μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の非晶質シリカ粉末。
【請求項3】
10μm以上の粒子の平均球形度が0.80以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質シリカ粉末。
【請求項4】
60℃以下の水を用いて非晶質シリカ粉末濃度40質量%以下の水スラリーを調製する工程と、
目開き0.5mm以上15mm以下、磁力14000ガウス以上のスクリーンを垂直方向に10枚以上重ねた磁選ゾーンを有する循環ラインに、前記水スラリーを下から上に0.2cm/s以上5cm/s以下の流速で磁選ゾーンを循環通過させながら非晶質シリカ粉末中に含まれる着磁性粒子を除去する工程と、
容器内の温度を130℃以上300℃以下とし、容器上部に二流体ノズルが設置され、その二流体ノズルの中心部から着磁性粒子を除去した非晶質シリカ粉末を含有する水スラリーをフィードすると共に、二流体ノズルの外側から乾燥空気を噴射し、スラリー液滴の噴霧速度が50m/s以上250m/s以下でスラリーを噴霧乾燥させる工程と
を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の非晶質シリカ粉末の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の非晶質シリカ粉末を含有してなる樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物を用いた半導体封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質シリカ粉末およびその製造方法、用途に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型軽量化及び高性能化の要求に対応して、半導体の小型化、薄型化、及び高密度実装化が急速に進展している。このため、半導体の構造は、従来のリードフレーム型から、薄型化及び高密度実装化に有利なエリアアレイ型が増加している。さらに近年では、一つの半導体パッケージ内に複数のICチップを積層、搭載するスタックチップ構造、マルチチップ構造も積極的に採用されるようになっており、半導体構造の複雑化、高密度実装化がますます進んでいる。また、半導体の小型化、薄型化、及び高密度実装化の流れに伴い、半導体内部の金ワイヤの配線間隔も狭くなっており、金ワイヤの間隔が50μm程度のものも実用化されている。
【0003】
半導体をパッケージング(封止)する半導体封止材には、低熱膨張性、半田耐熱性、電気絶縁性などの特性付与の為、エポキシ樹脂に無機質粉末、特に非晶質シリカ粉末が充填されているが、非晶質シリカ粉末には、その製造工程において、微細な金属質粒子が異物として混入することがある。これは、非晶質シリカ粉末の製造設備の一部が、一般には、鉄やステンレス鋼などの金属で作られており、その表面が、上記粉末を粉砕する際や、気流で輸送する際、分級、篩分けを行う際、ブレンドを行う際などに、粉末により削られるためである。このように、半導体封止材に充填される非晶質シリカ粉末に金属質異物が混入していると、半導体のワイヤ等の配線間の短絡(ショート)が引き起こされる可能性が高くなってしまう。これらの金属質粒子の大半は着磁性粒子からなっており、非晶質シリカ粉末に混入している着磁性粒子を除去する試みが種々検討されている。
【0004】
非晶質シリカ粉末中の着磁性粒子を除去する技術としては、金属質粒子を含んだ球状シリカ粉末を硫酸水溶液中に入れ、金属質粉末を溶解し、除去する方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、酸処理後の球状シリカ粉末を洗浄、加熱乾燥、解砕させる必要があり、多大なコストがかかるばかりでなく、加熱乾燥工程、粉末化のための解砕工程で、金属質粒子が再び混入してしまうリスクが大きいという問題点がある。また、残留する硫酸イオンのために、該球状シリカ粉末を充填した半導体封止材の信頼性が低下してしまう問題も発生する。また、非磁性金属酸化物粉末を有機溶媒、又は60℃を超える温水中に分散させてマグネットに接触させて着磁性粒子を除去する方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら、この方法では、有機溶媒を用いた場合は多大なコストがかかり、また、着磁性粒子除去後にそのまま加熱乾燥すると、使用した有機溶剤の官能基が無機粉末表面にマスキングされるおそれがある為、半導体封止材の特性に悪影響を及ぼす可能性がある。温水を用いた場合は、加熱乾燥した際に粉末どうしの固い凝集が発生し、この無機粉末を充填した半導体封止材の封止時の流動圧力が上昇し細線化した金ワイヤを変形させる、いわゆるワイヤ流れという不具合を起こす問題点がある。その為、最先端の半導体封止材には、高絶縁信頼性を達成するため着磁性粒子が極めて少なく、かつ、ワイヤ流れ量が小さい高成形性が求められているが、これらを十分満たす特性の半導体封止材は未だ存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-005346号公報
【文献】特開2005-187302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、絶縁信頼性が極めて高く、かつ、高成形性の半導体封止材を調製することが出来る非晶質シリカ粉末を提供することであり、それを含有してなる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成するべく鋭意研究を進めたところ、これを達成する非晶質シリカ粉末を見いだした。本発明はかかる知見に基づくものであり、以下の態様を提供できる。
【0008】
(1)平均粒子径が3μm以上50μm以下、250μm以上の乾式篩残存率が5.0質量%以下であって、以下の方法で測定した45μm以上の着磁性粒子の個数が0個であることを特徴とする非晶質シリカ粉末。
[着磁性粒子の測定方法]
1000mLビーカーに非晶質シリカ粉末50gとイオン交換水800gを加えてスラリーを調製する。このスラリーを撹拌装置により、回転数550rpm、5秒間隔で反転させながら、そこに、厚み20μmのゴム製カバーを被せた長さ150mm、直径25mm、磁力12000ガウスの棒磁石を1分間浸漬させ、着磁性粒子を捕捉する。着磁性粒子を捕捉した棒磁石をスラリーから取り出し、空のビーカー上でゴム製カバーを外してイオン交換水でゴム製カバーを洗浄しながら着磁性粒子を脱離させ、着磁性粒子を水中に分散させる。得られた分散液を直径25mmのナイロンフィルター(目開き35μm)を装着した吸引濾過装置にかけることによりナイロンフィルター上に着磁性粒子を回収する。着磁性粒子を回収したナイロンフィルターをマイクロスコープにセットし、100倍の倍率にてフィルター全領域を移動させながらナイロンフィルター上に回収させた着磁性粒子のうち、45μm以上の着磁性粒子の個数を計測する。
【0009】
(2)最大粒子径が75μm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の非晶質シリカ粉末。
【0010】
(3)10μm以上の粒子の平均球形度が0.80以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の非晶質シリカ粉末。
【0011】
(4)60℃以下の水を用いて非晶質シリカ粉末濃度40質量%以下の水スラリーを調製する工程と、
目開き0.5mm以上15mm以下、磁力14000ガウス以上のスクリーンを垂直方向に10枚以上重ねた磁選ゾーンを有する循環ラインに、前記水スラリーを下から上に0.2cm/s以上5cm/s以下の流速で磁選ゾーンを循環通過させながら非晶質シリカ粉末中に含まれる着磁性粒子を除去する工程と、
容器内の温度を130℃以上300℃以下とし、容器上部に二流体ノズルが設置され、その二流体ノズルの中心部から着磁性粒子を除去した非晶質シリカ粉末を含有する水スラリーをフィードすると共に、二流体ノズルの外側から乾燥空気を噴射し、スラリー液滴の噴霧速度が50m/s以上250m/s以下でスラリーを噴霧乾燥させる工程と
を有することを特徴とする前記(1)~(3)に記載の非晶質シリカ粉末の製造方法。
【0012】
(5)前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の非晶質シリカ粉末を含有してなる樹脂組成物。
【0013】
(6)前記(5)に記載の樹脂組成物を用いた半導体封止材。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、絶縁信頼性が極めて高く、かつ、高成形性を有する半導体封止材を調製することが出来る非晶質シリカ粉末及びその樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の実施形態に係る非晶質シリカ粉末の平均粒子径は3μm以上50μm以下であることが必要である。平均粒子径が3μm未満であると、細かい粒子が多くなり過ぎ、樹脂に充填した際に、半導体封止材の粘度が上昇し、ワイヤ流れ量が増加する。一方、平均粒子径が50μmを超えると、比較的粒子径の大きな粒子の割合が多くなり過ぎ、これら粒子径の大きな粒子が金ワイヤに衝突する頻度が増える為、やはりワイヤ流れ量が増加する。より好ましい平均粒子径は5μm以上50μm以下、さらに好ましくは5μm以上35μm以下、よりさらに好ましくは20μm以上35μm以下である。
【0017】
本明細書においては、非晶質シリカ質粉末の平均粒子径は、レーザー回折光散乱法による質量基準の粒度測定に基づく値であり、マイクロトラック・ベル社製「マイクロトラックMT3300EX2」を用いて測定する。ヘキサメタリン酸ナトリウム1質量%水溶液に非晶質シリカ質粉末を分散させる。装置の循環速度を80に設定し、測定サンプルを濃度が適正範囲内となるように投入する。超音波出力40Wで240秒間分散させた後、測定を実施する。粒度分布測定は、粒子径チャンネルが0.1、0.7、1、1.5、2、3、4、6、8、12、16、24、32、48、64、96、128、192μmにて行う。測定した粒度分布において、累積質量が50%となる粒子径が平均粒子径である。
【0018】
本発明の実施形態に係る非晶質シリカ粉末は、250μm以上の乾式篩残存率が5質量%以下であることが必要である。なお本明細書において「250μm以上の乾式篩残存率」とは、粒径250μm以上の粒子であって、目開き250μmの乾式篩を通らずに残る粒子(すなわち篩上)の比率のことを言う。乾式篩残存率が高いことは、凝集粒子が多く含まれることを意味しており、250μm以上の乾式篩残存率が5.0質量%を超えると、樹脂に充填し、半導体封止材として用いた際に、樹脂中の非晶質シリカの分散性が低下するため、半導体封止材の粘度が上昇し、ワイヤ流れ量が増加する。より好ましい250μm以上の乾式篩残存率は3.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%未満である。
【0019】
本明細書においては、非晶質シリカ粉末の250μm以上の乾式篩残存率は、以下の方法で測定する。パウダテスタ(ホソカワミクロン社製「PT-E型」)に目開き250μmの篩をセットする。篩の上に非晶質シリカ質粉末2gを静かに置き、篩の振幅1mmに設定して60秒間振動した後に、250μm篩上に残った非晶質シリカ粉末の質量を計測し、次式によって250μm以上の乾式篩残存率を算出する。
250μm以上の乾式篩残存率(質量%)=A/2×100
式中のAは以下の通りである。
A:250μm篩上の非晶質シリカ粉末質量(g)
【0020】
本発明の実施形態に係る非晶質シリカ粉末は以下の方法で測定した45μm以上の着磁性粒子の個数が0個であることが、半導体の配線間の短絡を引き起さない効果を奏する上で必要である。
[着磁性粒子の測定方法]
1000mLビーカーに非晶質シリカ粉末50gとイオン交換水800gを加えてスラリーを調製する。このスラリーを撹拌装置により、回転数550rpm、5秒間隔で反転させながら、そこに、厚み20μmのゴム製カバーを被せた長さ150mm、直径25mm、磁力12000ガウスの棒磁石を1分間浸漬させ、着磁性粒子を捕捉する。着磁性粒子を捕捉した棒磁石をスラリーから取り出し、空のビーカー上でゴム製カバーを外してイオン交換水でゴム製カバーを洗浄しながら着磁性粒子を脱離させ、着磁性粒子を水中に分散させる。得られた分散液を直径25mmのナイロンフィルター(目開き35μm)を装着した吸引濾過装置にかけることによりナイロンフィルター上に着磁性粒子を回収する。着磁性粒子を回収したナイロンフィルターをマイクロスコープにセットし、100倍の倍率にてフィルター全領域を移動させながらナイロンフィルター上に回収させた着磁性粒子のうち、45μm以上の着磁性粒子の個数を計測する。
【0021】
上記の方法で測定した非晶質シリカ粉末の45μm以上の着磁性粒子の個数が0であることで、樹脂に充填し、半導体封止材として用いた際の半導体の短絡不良が発生する可能性を著しく低下させることが出来る。なお、棒磁石の磁力が12000ガウス未満の場合や、棒磁石に被せる材料の厚みが20μmよりも厚い場合は、弱磁性の着磁性粒子を捕捉しきれないことが多い。したがって、上記の測定方法ではない条件で測定した非晶質シリカ粉末の45μm以上の着磁性粒子の個数が仮に0個であったとしても、半導体の短絡不良に対する改善効果は不十分である。なお、本明細書において着磁性粒子とは、上述した着磁性粒子の測定方法において磁力12000ガウスの棒磁石に捕捉される磁性粒子と定義し、着磁性粒子の粒子径は、ナイロンフィルター上に回収させた各着磁性粒子の最長径とする。
【0022】
本発明の実施形態に係る非晶質シリカ粉末の最大粒子径は75μm以下であることが好ましい。最大粒子径が75μm以下であると、樹脂に充填し、半導体封止材として用いた際に、細線化した金ワイヤに衝突しづらく、ワイヤ流れが抑えられる効果を奏する。より好ましい最大粒子径は63μm以下である。
【0023】
本明細書においては非晶質シリカ粉末の最大粒子径は、以下の湿式篩法で測定する。セイシン企業社製ふるい分け振とう機「オクタゴンDigital(湿式ふるいユニット)」に、例えば、目開き90μm、75μm、63μm、53μmのJIS標準篩をセットし、非晶質シリカ粉末10gを精秤したものを篩上から投入し、9.5リットル/分のシャワー水量で5分間振とうさせた後、篩上に残った粉末をアルミニウム製容器に移し替え、大気中120℃で30分間乾燥させ、篩上の粉末の質量を計量する。篩上の粉末の質量を、測定に供した非晶質シリカ粉末の質量で除して百分率にし、篩上に残った粉末の割合を算出する。この際に、それぞれの目開きの篩上に残る粉末の割合が0.5質量%以下である篩の目開きを、非晶質シリカ粉末の最大粒子径とする。
【0024】
本発明の実施形態に係る非晶質シリカ粉末は粒子径10μm以上の粒子の平均球形度が0.80以上であることが好ましい。平均球形度が高いほど、樹脂に充填した際に、封止材の粘度が低下し、封止時のワイヤ流れ量を低減することができる。より好ましい平均球形度は0.83以上である。
【0025】
本明細書においては非晶質シリカ粉末の平均球形度は、以下の方法で測定する。非晶質シリカ粉末とエタノールを混合して、非晶質シリカ粉末1質量%のスラリーを調整し、BRANSON社製「SONIFIER450(破砕ホーン3/4’’ソリッド型)」を用い、出力レベル8で2分間分散処理する。その分散スラリーを、スポイトでカーボンペースト塗布した試料台に滴下する。試料台に滴下した試料粉末が乾燥するまで大気中放置後、オスミウムコーティングを行い、日本電子社製走査型電子顕微鏡「JSM-6301F型」で撮影した倍率500倍、解像度2048×1536ピクセルの画像をパソコンに取り込む。この画像を、マウンテック社製画像解析装置「MacView Ver.4」を使用し、簡単取り込みツールを用いて粒子を認識させ、粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)から球形度を測定する。周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の球形度はA/Bとなるので、試料の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円(半径r)を想定すると、PM=2πr、B=πr2であるから、B=π×(PM/2π)2となり、個々の粒子の球形度は、球形度=A/B=A×4π/(PM)2となる。このようにして得られた任意の投影面積円相当径10μm以上の粒子200個の球形度を求め、その平均値を平均球形度とする。
【0026】
本発明の実施形態に係る非晶質シリカ粉末の非晶質率(溶融率)は98%以上であることが好ましい。本明細書において非晶質シリカ粉末の非晶質率は、RIGAKU社製粉末X線回折装置「モデルMini Flex」を用いて測定する。CuKα線の2θが26°~27.5°の範囲においてX線回折分析を行い、特定回折ピークの強度比から測定する。シリカ粉末の場合、結晶質シリカでは26.7°に主ピークが存在するが、非晶質シリカではピークが存在しない。非晶質シリカと結晶シリカとが混在していると、結晶質シリカの割合に応じた高さの26.7°のピークが得られるので、結晶質シリカ標準試料のX線強度に対する試料のX線強度の比から、結晶質シリカ混在比(試料のX線回折強度/結晶質シリカのX線強度回折)を算出し、下記の式、
非晶質率(%)=(1-結晶質シリカ混在比)×100
から非晶質率を求めることができる。
【0027】
つぎに、本発明の実施形態に係る非晶質シリカ粉末の製造方法について説明する。
【0028】
非晶質シリカ粉末の着磁性異物を除去する前の粉末は、所定の粒径に関する特性を有していればどのような方法で製造されたものでもよい。その一例を示すと、高温火炎の形成とシリカ粉末原料の噴射とが可能な溶融炉と、溶融処理物の捕集系とからなる設備にて、シリカ粉末原料の粒度、原料供給量、炉内温度、炉内圧力、炉内風量条件等を調整して種々の粒度構成をもった非晶質シリカ粉末を製造し、それを更に分級、篩分け、混合して製造することができる。上記設備の構成にあたっては多くの公知技術があり(例えば、特開平11-057451号公報の記載を参照)、それらのいずれかを採用することができる。
【0029】
非晶質シリカ粉末に含まれる着磁性粒子を除去する方法としては、非晶質シリカ粉末を含有した水スラリーを作製し、これを高磁力スクリーン中に循環通過させることで着磁性粒子を除去する接触選別が最も効果的である。スクリーンの目開きは0.5mm以上15mm以下であることが好ましい。この際、スクリーンの目開きが長方形の場合は短辺の長さを目開きとする。スクリーンの目開きが0.5mm未満であると、非晶質シリカ粉末スラリーがスクリーンに目詰まりし、着磁性粒子の除去を行うことができない。一方スクリーンの目開きが15mmを超えると、着磁性粒子とスクリーンの接触頻度が低くなるため、着磁性粒子を十分に除去することができず、本発明の非晶質シリカ粉末を得ることが困難となる。また、スクリーンの磁力は14000ガウス以上であることが好ましい。スクリーンの磁力が14000ガウス未満であると、着時性粒子の中でも弱磁性の粒子を除去しきれない可能性が高くなり、本発明の非晶質シリカ粉末を得ることが困難となる。なお、目開き0.5mm以上15mm以下、磁力14000ガウス以上のスクリーンを用いれば、この磁選ゾーンを循環通過させることで、スクリーンの枚数によらず着磁性粒子を除去することができるが、除去効率を考えるとスクリーンを10枚以上重ねた磁選ゾーンを形成することが好ましい。
【0030】
上述した水スラリーの調製は、水スラリーを乾燥させた後に粒子の凝集が発生しないように、60℃以下の水を用いることが必要であり、好ましくは冷水を使用する。本明細書において「冷水」とは、30℃以下の液体の水を意味し、さらに好ましくは20℃以上30℃以下の水を意味し、例えば25℃の水であってよい。
【0031】
非晶質シリカ粉末を含有した水スラリー中の非晶質シリカ粉末濃度は40質量%以下であることが好ましい。非晶質シリカ粉末濃度が40質量%を超えると、着磁性粒子の磁選ゾーンでの除去効率が低下し、45μm以上の着磁性粒子の除去が困難となる。また、この非晶質シリカ粉末を含有した水スラリーは、磁選ゾーンを下から上に0.2cm/s以上5cm/s以下の流速で通過させることが好ましい。流速が0.2cm/s未満であると、非晶質シリカ粉末を含有した水スラリーがスクリーンに閉塞し、着磁性粒子の除去を行うことができない。一方、流速が5cm/sを超えると、スクリーンに一旦捕捉された着磁性粒子が流速の勢いによって再度脱離する可能性が高くなり、望ましい非晶質シリカ粉末を得ることが困難となる。
【0032】
着磁性粒子を除去した非晶質シリカ粉末を含有した水スラリーを乾燥させるにあたっては、凝集粒子の発生を低減させる方法が好ましい。具体的には凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥などが挙げられるが、この中でも凝集抑制効果、乾燥効率の観点から噴霧乾燥法が最も好ましい。
【0033】
噴霧乾燥を行う際は、容器内の温度を130℃以上300℃以下とすることが好ましい。容器内の温度が130℃未満であると水分の蒸発能力が不十分で、スラリー乾燥を行うことが困難となる。一方、容器内の温度が高い分にはスラリー乾燥自体には問題ないが、温度が高すぎると非晶質シリカ粉末表面のシラノール基を消失させ、表面特性に影響を与える可能性があり、それを防ぐため、300℃以下とすることが好ましい。
【0034】
噴霧乾燥を行うにあたり、容器の上部に設置された二流体ノズルの外側からフィード中心部から着磁性粒子を除去した非晶質シリカ粉末を含有した水スラリーをフィードすると共に、二流体ノズルの外側から乾燥空気を噴射する際に、そのスラリー液滴の噴霧速度は50m/s以上250m/s以下であることが好ましい。噴霧速度が50m/s未満であると、スラリー液滴が大きくなり過ぎるため、スラリーを乾燥させた際に凝集粒子が発生しやすくなり、望ましい非晶質シリカ粉末を得ることが困難となる。一方、スラリー噴霧速度が250m/sを超えると、容器内の通過速度が速くなりすぎる為、水分が十分に蒸発せず、スラリー乾燥を行うことが困難となる。
【0035】
本発明の実施形態においては、上述した非晶質シリカ粉末を含有してなる樹脂組成物も提供できる。樹脂組成物中の非晶質シリカ粉末の含有率は10~95質量%が好ましく、さらに好ましくは30~93質量%である。
【0036】
樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネイト、マレイミド変成樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリルーアクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂等を使用することができる。
【0037】
これらの中、半導体封止材としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の例示としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールSなどのグリシジルエーテル、フタル酸やダイマー酸などの多塩基酸とエポクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル酸エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、アルキル変性多官能エポキシ樹脂、β-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、1,6-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、2,7-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビスヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、更には難燃性を付与するために臭素などのハロゲンを導入したエポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、耐湿性や耐ハンダリフロー性の点からは、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格のエポキシ樹脂等が好適である。
【0038】
樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物の場合、樹脂組成物は、エポキシ樹脂の硬化剤を含む。エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、フェノールアラルキル等のノボラック型樹脂、ポリパラヒドロキシスチレン樹脂、ビスフェノールAやビスフェノールS等のビスフェノール化合物、ピロガロールやフロログルシノール等の3官能フェノール類、無水マレイン酸、無水フタル酸や無水ピロメリット酸等の酸無水物、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン等をあげることができる。また、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進させるために硬化促進剤を配合することもでき、硬化促進剤としては、例えばトリフェニルホスフィン、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等をあげることができる。
【0039】
本樹脂組成物には、更に以下の成分を必要に応じて配合することができる。すなわち、低応力化剤として、シリコーンゴム、ポリサルファイドゴム、アクリル系ゴム、ブタジエン系ゴム、スチレン系ブロックコポリマーや飽和型エラストマー等のゴム状物質、各種熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂状物質、更にはエポキシ樹脂、フェノール樹脂の一部又は全部をアミノシリコーン、エポキシシリコーン、アルコキシシリコーンなどで変性した樹脂など。シランカップリング剤として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等の疎水性シラン化合物やメルカプトシランなど。表面処理剤として、Zrキレート、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤など。難燃助剤として、Sb23、Sb24、Sb25など。難燃剤として、ハロゲン化エポキシ樹脂やリン化合物など。着色剤として、カーボンブラック、酸化鉄、染料、顔料など。更には離型剤として、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィンなども挙げられる。
【0040】
本樹脂組成物は、上記各材料の所定量をブレンダーやヘンシェルミキサー等によりブレンドした後、加熱ロール、ニーダー、一軸又は二軸押し出し機等により混練したものを冷却後、粉砕することによって製造することができる。
【0041】
本発明の実施形態では、半導体封止材も提供できる。当該半導体封止材は、上記材料の中でも、樹脂組成物がエポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、エポキシ樹脂の硬化促進剤を含む組成物からなるものが好ましい。本半導体封止材を用いて半導体を封止するには、トランスファーモールド法、真空印刷モールド法等の常套の成形手段が採用できる。
【実施例
【0042】
以下、本発明について、実施例及び比較例により、更に、詳細に説明する。
【0043】
実施例1~8、比較例1~7
燃焼炉の頂部に内炎と外炎が形成できる二重管構造のLPG-酸素混合型バーナーが設置され、下部にサイクロン、バグフィルターからなる捕集系ラインに直結される装置を用いて非晶質シリカ粉末を製造した。火炎の形成は二重管バーナーの出口に数十個の細孔を設け、そこからLPG8m3/Hrと酸素50m3/Hrの混合ガスを噴射することによって行い、バーナーの中心部から平均粒子径4~55μmの結晶シリカ粉末を10~40kg/Hrの供給速度で、キャリア酸素5m3/Hrに同伴させ噴射した。火炎を通過した非晶質シリカ粉末はブロワによって捕集ラインを空気輸送させ、サイクロン及びバグフィルターで捕集した。なお、平均粒子径、最大粒子径の制御は結晶シリカ粉末の平均粒子径の調整、及びサイクロン、バグフィルターで捕集した各粒子径の非晶質シリカ粉末を適宜組み合わせた後に、各種目開きのJIS規格ステンレス試験用篩で篩うことによって行った。平均球形度の制御は結晶シリカ粉末の供給速度の調整によって行った。具体的には、球形度を高くする場合は、結晶シリカ粉末の供給速度を低下させ、球形度を低くする場合は結晶シリカ粉末の供給速度を増加させることで調整した。
【0044】
次に、以下の方法により上記で作製した各種非晶質シリカ粉末の着磁性粒子除去処理を実施した。各種非晶質シリカ粉末と25℃のイオン交換水を混合して、非晶質シリカ粉末濃度30質量%、40質量%、又は50質量%の水スラリーを40L作製し、100L樹脂容器に投入した。樹脂容器中のスラリーはヤマト科学社製撹拌機「ラボスターラLR500B(オールPTFE被覆、長さ100mm羽根付き撹拌棒装着)」を用いて300rpmの回転数で撹拌させた。一方で、湿式処理が可能な電磁脱鉄機に、目開きが0.3mm、0.5mm、1mm、15mm、又は20mmのメッシュ構造を有するスクリーンを垂直方向にそれぞれ10枚、又は40枚重ね、スクリーンの磁力が13000ガウス、14000ガウス、又は14500ガウスとなるように、電磁脱鉄機の励磁電流を設定した。磁選ゾーンの容積は25Lとした。非晶質シリカ粉末を含有した水スラリーの入った樹脂容器と電磁脱鉄機の間にはWatson-Marlow社製チューブポンプ「704U IP55 Washdown」を設置し、非晶質シリカ粉末を含有した水スラリーを電磁脱鉄機の磁選ゾーンの下から上に0.1cm/s、0.2cm/s、5cm/s、又は6cm/sの流速で60min循環通過させ、非晶質シリカ粉末中に含まれる着磁性粒子を除去した。なお、樹脂容器と電磁脱鉄機を繋ぐラインは内径19mmφの樹脂ホースを用い、ライン長さは5mとした。
【0045】
次に、以下の方法により着磁性粒子を除去した非晶質シリカ粉末スラリーの乾燥処理を実施した。円筒型容器内の温度を120℃、130℃、又は300℃とし、下部にバグフィルターからなる捕集系ラインが設けられた円筒型容器上部に二流体ノズルが設置され、その二流体ノズルの中心部から着磁性粒子を除去した非晶質シリカ粉末を含有する水スラリーをフィードすると共に、二流体ノズルの外側から乾燥空気を噴射し、スラリー液滴の噴霧速度が45m/s、50m/s、250m/s、又は300m/sでスラリーを噴霧し、非晶質シリカ粉末を含むスラリーを乾燥させた。乾燥後の非晶質シリカ粉末は、バグフィルターで捕集した。なお、円筒型容器、捕集ライン、バグフィルター回収口はアルミナでライニングし、バグフィルター内部は天然ゴムでライニングした。
【0046】
上記の工程を経て製造した15種類の非晶質シリカ粉末A~Oの平均粒子径、250μm以上の乾式篩残存率、45μm以上の着磁性粒子の個数、最大粒子径、粒子径10μm以上の粒子の平均球形度を表1、表2に示す。非晶質シリカ粉末の非晶質率は、いずれも99%以上であった。なお、着磁性粒子除去工程において、スクリーンの目開きが0.3mmの場合、磁選ゾーンの通過速度が0.1cm/sの場合は、非晶質シリカ粉末を含有したスラリーがスクリーンに目詰まりし、着磁性粒子の除去処理を行うことが出来ず、非晶質シリカ粉末を作製することが出来なかった。また、乾燥工程において、円筒型容器の温度が円筒機内の温度が120℃の場合、スラリー液滴の噴霧速度が300m/sの場合は、非晶質シリカ粉末を含有したスラリーの水分蒸発が不十分で、乾燥処理を行うことが出来ず、非晶質シリカ粉末を作製することが出来なかった。これらの非晶質シリカ粉末の平均粒子径、250μm以上の乾式篩残存率、45μm以上の着磁性粒子の個数、最大粒子径、粒子径10μm以上の粒子の平均球形度も表1、表2に示す。
【0047】
比較例8、9
さらなる比較例として、上記の火炎溶融によって作製し、着磁性粒子除去工程、乾燥工程を経ていない2種類の非晶質シリカ粉末P、Qも準備した。
【0048】
評価
得られた非晶質シリカ粉末の半導体封止材の充填材としての特性を評価するため、非晶質シリカ粉末2610gに対し、エポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製:YX-4000H)194g、フェノール樹脂としてフェノールアラルキル樹脂(三井化学社製:ミレックスXLC-4L)169g、カップリング剤としてエポキシシラン(信越化学工業社製:KBM-403)10g、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(北興化学工業社製:TPP)9g、離型剤としてワックス(クラリアント社製Licowax-E)8gを加え、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製「FM-10B型」)にて1000rpmで1分間ドライブレンドした。その後、同方向噛み合い二軸押出混練機(スクリュー径D=25mm、ニーディングディスク長10Dmm、パドル回転数50~150rpm、吐出量3.3kg/Hr、混練物温度98±1℃)で加熱混練した。混練物(吐出物)をプレス機にてプレスして冷却した後、粉砕、打錠して半導体封止材タブレット(18mmφ、32mmH)を作製し、絶縁信頼性(半導体の短絡不良個数)、成形性(ワイヤ流れ量)を以下に従って評価した。それらの結果を表1及び表2に示す。なお、半導体封止材を作製するための設備及び器具からの着磁性粒子の混入を避けるため、各材料が接する部位は、すべてアルミナ、タングステンカーバイド、ウレタンのいずれかの材質で形成した。
【0049】
(1)半導体の短絡不良の個数
BGA用サブストレート基板にダイアタッチフィルムを介して、サイズ8mm×8mm×0.3mmのTEGチップを置き、金ワイヤで接続した後、上記の各半導体封止材タブレットを使用し、トランスファー成形機を用いて、パッケージサイズ38mm×38mm×1.0mmに成形後、ポストキュアし、模擬半導体を作製した。なお、チップ上の隙間は200μm、金ワイヤの直径は20μmφ、接続間隔は55μmとした。トランスファー成形条件は、金型温度175℃、成形圧力7.5MPa、保圧時間90秒とし、ポストキュア条件は175℃、8時間とした。同じ半導体封止材タブレットにつき模擬半導体を30個作製し、短絡不良が起きた半導体の個数をカウントした。この個数が少ないほど、絶縁特性が良いことを示す。具体的には、短絡不良個数0個であることが好ましい。
【0050】
(2)ワイヤ流れ量
上記で作製した模擬半導体の金ワイヤ部分を軟X線透過装置で観察し、パッケージングにより金ワイヤが流された最大距離を測定した。金ワイヤ流れ量は、パッケージング前後で金ワイヤが流れた最大距離とし、ゲート部(金型の半導体封止材注入部)から近い順に12本の金ワイヤの平均値を求め、ワイヤ流れ量とした。このワイヤ流れ量の値が小さいほど、成形性が良好であることを表す。具体的には、ワイヤ変形量が25μm以下であることが好ましく、25μm未満であることがさらに好ましい。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
実施例と比較例の対比から明らかなように、本発明の実施例に係る非晶質シリカ粉末を含む半導体封止材は、半導体の短絡不良を起こさず、ワイヤ変形量も低減することができた。以上のことから、本発明によれば、小型化、高密度化した半導体に好適に用いられる半導体封止材を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の非晶質シリカ粉末は、自動車、パソコン、スマートフォンやタブレットに代表されるモバイル端末等に使用される半導体封止材、半導体が搭載される積層板などの充填材として使用される。また、本発明の樹脂組成物は、半導体封止材の他に、ガラス織布、ガラス不織布、その他有機基材に含浸硬化させてなる例えばプリント基板用のプリプレグや、各種エンジニアプラスチックス等として使用できる。