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特許7197519コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物及びコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物の風味改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物及びコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物の風味改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/18 20160101AFI20221220BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20221220BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20221220BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20221220BHJP
   C07K 14/78 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
A23L33/18
A23L29/269
A23L2/66
A23L2/00 B
C07K14/78
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019570703
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003161
(87)【国際公開番号】W WO2019155955
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2018022437
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】岡田 恵
(72)【発明者】
【氏名】今尾 孝子
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062830(JP,A)
【文献】特開2017-158544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均分子量が300~2000のコラーゲンペプチド及びウェランガムを含み、前記ウェランガムに対する前記コラーゲンペプチドの重量比(コラーゲンペプチド/ウェランガム)が3~70である、液状経口用組成物。
【請求項2】
前記コラーゲンペプチドの含有量が600~20000mg/100mLである請求項1に記載の液状経口用組成物。
【請求項3】
前記ウェランガムの含有量が50~400mg/100mLである請求項1又は2に記載の液状経口用組成物。
【請求項4】
粘度が30~500mPa・sである請求項1~のいずれか一項に記載の液状経口用組成物。
【請求項5】
さらに、プロテオグリカン及び/又はエラスチンペプチドを含む請求項1~のいずれか一項に記載の液状経口用組成物。
【請求項6】
飲料である請求項1~のいずれか一項に記載の液状経口用組成物。
【請求項7】
平均分子量が300~2000のコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物に、ウェランガムに対する前記コラーゲンペプチドの重量比(コラーゲンペプチド/ウェランガム)が3~70となるように、ウェランガムを配合する、コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物の風味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物に関する。本発明はまた、コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物の風味を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンペプチドは、肌の保湿性、弾力性を向上するなどの美肌効果や、血液流動性を改善する効果など様々な機能を有することが明らかとなり、近年、多くの飲料、食品、化粧品等に配合されている。
【0003】
コラーゲンペプチドの効果を得るためには、コラーゲンペプチドを継続して摂取する必要がある。しかしながら、タンパク質分解物であるコラーゲンペプチドは、生臭さ等の特有の臭気を有するものが多く、特に、コラーゲンペプチドを飲料に配合した場合には、その臭気が強く感じられる。コラーゲンペプチドを含む飲料の臭気を抑制する方法として、特許文献1には、コラーゲンペプチド等のタンパク質分解ペプチドを含有する液体経口組成物に、マルトール等の特定の成分と、カテキン等の特定のフラボノイドとを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-222287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コラーゲンペプチドは、低分子量化したものが、体内吸収性がよいことが知られている。本発明者らは、平均分子量が300~2000の低分子量のコラーゲンペプチドを配合した液状経口用組成物の設計を試みたところ、このような低分子量のコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物は、該コラーゲンペプチドに起因する独特の不快臭、特に、培地様の臭い(ペプトン様の臭い)が強く、苦味も強いことが判明した。しかしながら、飲料等の液状経口用組成物において、このような低分子量のコラーゲンペプチドに起因する培地様の臭い及び苦味を低減する技術は、これまで検討されていない。低分子量のコラーゲンペプチドの継続的な摂取を可能とするために、該コラーゲンペプチドに起因する培地様の臭い及び苦味を低減できる新たな技術の開発が望まれる。
【0006】
本発明は、低分子量のコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物の不快臭、特に培地様の臭い及び苦味を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究したところ、平均分子量が300~2000のコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物にウェランガムを配合すると、液状経口用組成物において当該コラーゲンペプチドに起因する不快臭、特に培地様の臭い及び苦味を低減(抑制)できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の液状経口用組成物等に関する。
〔1〕平均分子量が300~2000のコラーゲンペプチド及びウェランガムを含む液状経口用組成物。
〔2〕上記コラーゲンペプチドの含有量が600~20000mg/100mLである上記〔1〕に記載の液状経口用組成物。
〔3〕上記ウェランガムに対するコラーゲンペプチドの重量比(コラーゲンペプチド/ウェランガム)が3~70である上記〔1〕又は〔2〕に記載の液状経口用組成物。
〔4〕上記ウェランガムの含有量が50~400mg/100mLである上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の液状経口用組成物。
〔5〕粘度が30~500mPa・sである上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の液状経口用組成物。
〔6〕さらに、プロテオグリカン及び/又はエラスチンペプチドを含む上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の液状経口用組成物。
〔7〕飲料である上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の液状経口用組成物。
〔8〕平均分子量が300~2000のコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物にウェランガムを配合する、コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物の風味改善方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低分子量のコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物において、該コラーゲンペプチドに起因する不快臭、特に培地様の臭い及び苦味を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<液状経口用組成物>
本発明の液状経口用組成物は、平均分子量が300~2000のコラーゲンペプチド及びウェランガムを含む。
本発明で用いられる平均分子量が300~2000のコラーゲンペプチドを、以下では、単にコラーゲンペプチドともいう。
【0011】
<コラーゲンペプチド>
本発明で用いられるコラーゲンペプチドは、平均分子量が300~2000である。
本発明によれば、上記の平均分子量を有するコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物において、該コラーゲンペプチドに起因する不快臭、特に、培地様の臭い(ペプトン様の臭い)及び苦味を低減することができる。このため本発明によれば、上記コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物において培地様の臭い及び苦味を低減して、該組成物の風味をより摂取しやすいものに改善することが可能となる。
コラーゲンペプチドは、平均分子量が小さいほど、培地様の臭いが強くなる傾向がある。また、コラーゲンペプチドは、平均分子量が小さいほど、アミノ酸への分解度が高まり苦味が強くなる傾向がある。培地様の臭い及び苦味の低減効果をより充分に発揮できることから、コラーゲンペプチドの平均分子量は、1800以下が好ましく、1500以下がより好ましい。一態様において、コラーゲンペプチドの平均分子量は、1000以下であってよく、800以下であってもよい。苦味をより充分に低減できる観点から、コラーゲンペプチドの平均分子量は、好ましくは350以上、より好ましくは400以上である。本明細書において、上限及び下限は、いずれの組み合わせによる範囲としてもよい。一態様において、コラーゲンペプチドの平均分子量は、好ましくは350~1800であり、より好ましくは400~1500であり、さらに好ましくは400~1000であり、特に好ましくは400~800である。
【0012】
本明細書において、コラーゲンペプチドの平均分子量は、重量平均分子量である。本明細書において、コラーゲンペプチドの平均分子量は、中国国家標準規格(GB規格)GB/T 22729-2008 フィッシュオリゴペプチドパウダーに関する相対分子質量測定法にて測定した値を意味する。ただし、M,451及びM,189の試薬については、代替品を用いる。
本法での平均分子量は、あらかじめ分子量が既知である細胞色素C(cytochrome, M,6500)、トラジロール(aprotinin, M,12500)、バシラス菌(bacitracin, M,1450)、グリシン-グリシン-チロシン-アルギニン(M,451)、グリシン-グリシン-グリシン(M,189)を同条件で測定して得られたリテンションタイムと相対分子量の対数の関係の相対分子質量較正曲線を元に算出する。本発明における平均分子量とは、この手法に従って各標準品換算で算出した重量平均分子量を言う。
【0013】
本発明において用いられるコラーゲンペプチドは、コラーゲン、又は、ゼラチン等の変性コラーゲンを酵素、酸、アルカリ等で加水分解処理することで得ることができる。コラーゲンペプチドの由来及び製法は特に限定されるものではない。人工的に合成したコラーゲンペプチドを用いることもできる。コラーゲンペプチドは1種のコラーゲンペプチドを単独で用いてもよく、2種以上のコラーゲンペプチドを組み合わせて用いてもよい。
【0014】
コラーゲンペプチドの原料となるコラーゲン又はゼラチンは、ウシ、ブタ、ニワトリ、魚類等に由来するものでよく、これらの1種又は2種以上を原材料として用いることができる。一態様において、魚類由来のコラーゲンが好ましい。魚類は、海水魚であっても淡水魚であってもよく、マグロ(キハダ)、サメ、タラ、ヒラメ、カレイ、タイ、テラピア、サケ、ナマズ等が挙げられる。
【0015】
コラーゲンペプチドの調製に用いる酵素としては、コラーゲン又はゼラチンのペプチド結合を切断することができるものであればよく、例えば、コラゲナーゼ、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、フィシン、カテプシン、ペプシン、キモシン、トリプシン、及びこれらの酵素を混合した酵素製剤等が挙げられる。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などを用いることができる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。
【0016】
本発明においては、加水分解されたコラーゲンペプチドの水溶液をそのまま使用してもよいし、乾燥等により粉末化したものを用いてもよい。また、当該水溶液に通常用いられる精製処理を施したものを、水溶液や粉末等の形態として用いてもよい。
【0017】
コラーゲンペプチドは市販品を用いてもよく、上記平均分子量のコラーゲンペプチドを使用することができる。市販品として、例えば、「コラペプPU」(新田ゼラチン(株)製)、「TYPE-S」(新田ゼラチン(株)製)、「HACP」(ゼライス(株)製)等を用いることができる。
【0018】
一態様において、本発明におけるコラーゲンペプチドは、ジペプチドであるPro-Hyp(プロリルヒドロキシプロリン(以下、PO))及び/又はHyp-Gly(ヒドロキシプロリルグリシン(以下、OG))を多く含むことが好ましく、PO及びOGを多く含むことがより好ましい。このようなジペプチドを多く含むコラーゲンペプチドは、有用性が高いが、不快な風味が強い傾向がある。
【0019】
コラーゲンペプチド中のPO及びOGの合計含有量は、好ましくは0.05~10重量%、より好ましくは0.5~5.0重量%である。
上記のジペプチドの濃度は、公知の方法で測定でき、例えば、LC/MS/MSなどの装置を用いて測定することができる。平均分子量が300~2000であり、PO及びOGの合計含有量が上記範囲であるコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物は、培地様の臭い及び苦味が特に強い傾向がある。本発明によれば、このようなコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物において、該コラーゲンペプチドに起因する培地様の臭い及び苦味を低減することが可能である。
【0020】
本発明の液状経口用組成物中のコラーゲンペプチドの含有量は、600~20000mg/100mLが好ましい。コラーゲンペプチドの含有量が上記範囲であると、上述した本発明の効果をより充分に発揮することができる。コラーゲンペプチドの含有量が液状経口用組成物中に600mg/100mL未満であると、コラーゲンペプチドに起因する培地様の臭い及び苦味が少ない場合があり、培地様の臭い及び苦味を低減するという本発明の効果が小さくなる場合がある。
コラーゲンペプチドの含有量は、液状経口用組成物中に1000mg/100mL以上がより好ましく、2000mg/100mL以上がさらに好ましく、また、10000mg/100mL以下がより好ましく、7500mg/100mL以下がさらに好ましい。一態様において、コラーゲンペプチドの含有量は、液状経口用組成物中に1000~10000mg/100mLがより好ましく、2000~7500mg/100mLがさらに好ましい。上記含有量は、コラーゲンペプチドを複数種用いる場合は、合計含有量を意味する。
【0021】
<ウェランガム>
本発明で用いられるウェランガムは、スフィンゴモナス属細菌(Sphingomonas sp.)の培養液から得られた多糖類を主成分とするものである。ウェランガムは、市販品を使用することができる。ウェランガムの市販品として、三栄源エフ・エフ・アイ(株)のビストップ(登録商標)W等が挙げられる。
【0022】
本発明においては、上記コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物にウェランガムを配合することにより、液状経口用組成物において、該コラーゲンペプチドに起因する不快臭、特に培地様の臭い及び苦味を低減することが可能となる。このため本発明によれば、体内吸収性が高い低分子量のコラーゲンペプチドを含有し、しかも培地様の臭い及び苦味が低減されて摂取しやすい、該コラーゲンペプチドを含有する液状経口用組成物を提供することができる。
【0023】
液状経口用組成物中のウェランガムの含有量は、50~400mg/100mLが好ましい。ウェランガムの含有量が上記範囲であると、コラーゲンペプチドに起因する培地様の臭い及び苦味を低減することができる。また、液状経口用組成物を飲料(飲料組成物)とする場合に、飲用可能な粘度となるため好ましい。ウェランガムの含有量は、コラーゲンペプチドに起因する培地様の臭い及び苦味をより低減できることから、液状経口用組成物中に80mg/100mL以上がより好ましく、100mg/100mL以上がさらに好ましい。液状経口用組成物の粘度が飲用により適したものとなることから、ウェランガムの含有量は、液状経口用組成物中に375mg/100mL以下がより好ましく、300mg/100mL以下がさらに好ましく、250mg/100mL以下がさらにより好ましく、200mg/100mL以下が特に好ましい。一態様において、コラーゲンペプチドに起因する培地様の臭い及び苦味の低減、並びに、飲用に適した粘度の観点から、ウェランガムの含有量は、液状経口用組成物中に80~375mg/100mLが好ましく、80~300mg/100mLがより好ましく、100~250mg/100mLがさらに好ましく、100~200mg/100mLが特に好ましい。
【0024】
コラーゲンペプチドに起因する不快臭、特に、培地様の臭い及び苦味の低減の観点から、ウェランガムに対するコラーゲンペプチドの重量比(コラーゲンペプチド/ウェランガム)は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは10以上、さらにより好ましくは20以上、特に好ましくは25以上であり、また、好ましくは70以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは55以下である。上記観点から、一態様において、ウェランガムに対するコラーゲンペプチドの重量比(コラーゲンペプチド/ウェランガム)は、好ましくは1~70、より好ましくは3~70、さらに好ましくは10~60、さらにより好ましくは20~55、特に好ましくは25~55である。
【0025】
<他の成分等>
本発明の液状経口用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を1種又は2種以上含んでもよい。
本発明の液状経口用組成物は、甘味料を含むことが好ましい。甘味料を含有させると、適度な甘味を付与することができ、液状経口用組成物がより好ましい風味を呈するものとなる。甘味料は特に限定されず、糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等が挙げられ、1種又は2種を組み合わせて用いることができる。
【0026】
糖として、単糖、二糖、三糖以上の多糖(オリゴ糖を含む)等が挙げられ、具体的には、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース等が挙げられる。糖アルコールとして、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元パラチノース等が挙げられる。中でも、エリスリトールがより好ましい。糖及び糖アルコールの含有量は、適度な甘味が付与され、風味がより良好となることから、糖及び糖アルコールの合計含有量として、液状経口用組成物中に1000~15000mg/100mLが好ましく、3000~10000mg/100mLがより好ましい。
【0027】
高甘味度甘味料は、砂糖よりも甘味度の高い甘味料を意味し、その具体例としては、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、サッカリン、サッカリンナトリウム、ネオテーム等が挙げられる。中でも、アセスルファムK、スクラロースが好ましい。高甘味度甘味料の含有量は、適度な甘味が付与され、風味がより良好となることから、液状経口用組成物中に、1~50mg/100mLが好ましく、3~30mg/100mLがより好ましい。
一態様において、本発明の液状経口用組成物は、糖又は糖アルコールと、高甘味度甘味料とを含むことが好ましく、アセスルファムK、スクラロース及びエリスリトールを含むことがより好ましい。このような甘味料を含有すると、液状経口用組成物の風味がより良好となる。
【0028】
本発明の液状経口用組成物は、コラーゲンペプチドに加えて、その他の生体内機能性を有する素材、例えば、皮膚改善効果が知られている素材を含んでもよい。皮膚改善効果が知られている素材として、例えば、プロテオグリカン、エラスチンペプチド、セラミド、植物エキス、コンドロイチン硫酸、グルコサミン類、ミネラル類(カルシウム等)、ビタミン類(ビタミンC等)等が挙げられる。
【0029】
一態様においては、液状経口用組成物は、プロテオグリカン及び/又はエラスチンペプチドを含むことが好ましい。プロテオグリカン及びエラスチンペプチドは、特有の臭みがある場合がある。本発明によれば、液状経口用組成物がコラーゲンペプチドと共にプロテオグリカン及び/又はエラスチンペプチドを含む場合、コラーゲンペプチドに起因する培地様の臭い及び苦味に加えて、プロテオグリカン及び/又はエラスチンペプチドに起因する臭みを低減することが可能である。
【0030】
プロテオグリカンとは、コアとしてのタンパク質に、コンドロイチン硫酸やデルマタン硫酸等のグリコサミノグリカン(ムコ多糖)が共有結合している化合物の総称である。これは、動物の軟骨、皮膚などの結合組織中に存在し、これらの組織の構造を維持するために必要な物質である。
本発明に用いられるプロテオグリカンの種類、由来及び製法は特に限定されない。例えば、サメ、サケ、エイ等の魚類軟骨から抽出したプロテオグリカンを使用することができる。このうち、サケ由来、特にサケの鼻軟骨由来のものが好ましく、これを単独で、又は他のプロテオグリカンと組み合わせて用いることができる。プロテオグリカンは、市販品を用いてもよい。
【0031】
本発明の液状経口用組成物中のプロテオグリカンの含有量は、1~200mg/100mLが好ましく、5~100mg/100mLがより好ましい。上記含有量は、プロテオグリカンを複数種用いる場合は、合計含有量を意味する。
【0032】
本発明において、エラスチンペプチドは、水溶性エラスチンペプチドを意味する。エラスチンペプチドとしては、例えば、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヒツジ、魚等の動物性生体組織から抽出したものや、水溶性又は不溶性のエラスチンに酵素、酸、アルカリ等で加水分解処理等を施すことにより得られた分解物を使用することができる。また人工的に合成したエラスチンペプチドを用いてもよく、これらの1種又は2種以上を用いることもできる。
本発明において用いるエラスチンペプチドの分子量は特に限定されず、あらゆる分子量のエラスチンを用いることができる。
【0033】
エラスチンペプチドは、市販品を用いてもよく、例えば、「カツオエラスチン」(林兼産業(株)製)、「美弾エラスチンFI」(日本水産(株)製)、「マグロエラスチンHS-1」(はごろもフーズ(株)製)、「P-エラスチン」(日本ハム(株)製)等を用いることができる。
【0034】
本発明の液状経口用組成物中のエラスチンペプチドの含有量は、好ましくは10~750mg/100mL、より好ましくは50~300mg/100mLである。上記含有量は、エラスチンペプチドを複数種用いる場合は、合計含有量を意味する。
【0035】
本発明の液状経口用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外に、例えば、酸味料、酸化防止剤、安定剤、保存料、香料、乳化剤、色素類、調味料、pH調整剤、栄養強化剤等を含んでいてもよい。
本発明の液状経口用組成物は水性媒体、通常水を含む。本発明の液状経口用組成物は、好ましくは水を媒体とする液状経口用組成物(水性液状経口用組成物)である。
【0036】
本発明の液状経口用組成物における「液状」とは、常温において液体の状態であることを意味する。液状の組成物として、粘度(22℃)が約500mPa・s以下である流動体が好ましい。本発明において、液状経口用組成物の粘度は、22℃における粘度であり、B型粘度計により実施例に記載の方法で測定することができる。
【0037】
本発明の液状経口用組成物は、粘度が30mPa・s以上であることが好ましく、30~500mPa・sであることが好ましい。ウェランガムを含み、粘度がこのような範囲であると、コラーゲンペプチドに起因する培地様の臭い及び苦味を低減することができる。また、液状経口用組成物の粘度が上記範囲であると、飲料とする場合に飲用可能な粘度である。コラーゲンペプチドに起因する培地様の臭い等をより低減できる観点から、粘度は、35mPa・s以上がより好ましい。また、飲用により適した粘度とする観点から、粘度は250mPa・s以下がより好ましい。コラーゲンペプチドに起因する培地様の臭い及び苦味の低減、並びに、飲用により適した粘度の観点から、液状経口用組成物の粘度は、30~250mPa・sがより好ましく、35~250mPa・sがさらに好ましい。一態様において、液状経口用組成物のウェランガムの含有量は、粘度が上記範囲となる量とすることが好ましい。
【0038】
本発明の液状経口用組成物は、防腐性の観点から、pHが5.0以下が好ましく、pH3.0~4.5がより好ましく、pH3.3~4.0がさらに好ましい。本明細書中、pHは、25℃におけるpHである。pHの調整には、酸味料を用いることができる。酸味料としては、飲食品に使用可能な酸又はその塩が好ましく、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸、フィチン酸などの酸又はその塩が挙げられる。酸味料は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。塩は特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。酸味料には、遊離の酸だけを用いてもよいし、その塩だけを用いてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。液状経口用組成物の風味の観点から、酸味料は、クエン酸又はその塩を含むことが好ましく、クエン酸又はその塩か、又は、クエン酸又はその塩及びリン酸又はその塩であることがより好ましい。
【0039】
酸味料の含有量は、酸味料の種類に応じて設定することができる。例えば、液状経口用組成物中に、酸味料として使用する酸又はその塩が、当該酸又はその塩の、遊離酸量に換算した総含有量として100~3000mg/100mLが好ましく、300~2000mg/100mLがより好ましい。上記含有量は、酸味料を複数種用いる場合は、合計含有量を意味する。尚、本明細書において、「遊離酸量に換算した量」、又はこれに類する表現は、ある酸が遊離酸の形態である場合にはその量を、塩の形態である場合には、当該塩のモル数に、対応する遊離酸の分子量を乗じて得られる値を意味する。
【0040】
本発明の液状経口用組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、各成分を混合する混合工程を含むことが好ましい。
混合工程では、成分に、水性媒体を加えて混合することが好ましい。水性媒体としては、通常水が用いられる。各成分を混合する順番は特に限定されず、各成分が均一に混合されればよい。一態様において、揮発性の成分(例えば香料)や分解しやすい成分(例えば、ビタミンC等)を配合する場合、このような成分は最後に混合することが好ましい。液状経口用組成物の製造方法においては、粘度を調整する粘度調整工程等の工程を行ってもよい。粘度調整工程は、組成物にウェランガムを含有させることにより行うことができる。粘度調整工程は、混合工程と同時に行ってもよく、混合工程の後で行ってもよい。ウェランガム配合後の組成物に粉末の原料を混合する場合は、該原料を組成物中に均一に溶解させるための作業が容易となることから、当該組成物に、該粉末の原料を溶解させた溶液を混合することが好ましい。液状経口用組成物の製造方法においては、pHを調整するpH調整工程等の工程を行ってもよい。
【0041】
本発明の液状経口用組成物は、飲料(飲料組成物)として好ましく用いられる。
本発明の液状経口用組成物は、容器詰めとすることができる。容器の形態は特に限定されず、ビン、缶、ペットボトル、紙パック、アルミパウチ、ビニールパウチ等の密封容器に充填して、容器入り飲料(容器詰め飲料)等とすることができる。
【0042】
<コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物の風味を改善する方法>
本発明は、平均分子量が300~2000のコラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物にウェランガムを配合する、コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物の風味改善方法も包含する。
上記コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物にウェランガムを配合することにより、該コラーゲンペプチドに起因する不快臭、特に培地様の臭い及び苦味を低減することができ、該組成物の風味を改善することができる。本発明の方法の一態様において、風味改善は、培地様の臭い及び苦味の低減であり得る。
ウェランガムを配合する方法及びタイミングは特に限定されない。上記コラーゲンペプチドを含む液状経口用組成物が、最終的にウェランガムを含むものとなればよい。コラーゲンペプチド及びウェランガム並びにこれらの好ましい態様、配合量等は、上述した液状経口用組成物におけるものと同じである。液状経口用組成物には、上述した甘味料等の他の成分を配合してもよい。ウェランガムを配合した液状経口用組成物の好ましい粘度も、上述した液状経口用組成物における好ましい粘度と同じである。一態様において、液状経口用組成物の粘度が上記範囲となるようにウェランガムを配合することが好ましい。
【実施例
【0043】
以下、本発明をより具体的に説明する実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
実施例及び比較例で使用した原料を以下に示す。
コラーゲンペプチド:平均分子量500、魚由来
ウェランガム:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、ビストップ(登録商標)W
プロテオグリカン:一丸ファルコス(株)製、プロテオグリカンF(商品名)
エラスチンペプチド:林兼産業(株)製、カツオエラスチン(商品名)
キサンタンガム:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、サンエースE-S(商品名)
特に断らない場合は、上記の原料を使用した。
【0045】
コラーゲンペプチドの平均分子量は、中国国家標準規格(GB規格)GB/T 22729-2008 フィッシュオリゴペプチドパウダーに関する相対分子質量測定法にて測定した。ただし、M,451及びM,189の試薬については、それぞれグリシン-グリシン-チロシン-アルギニン(M,451)、グリシン-グリシン-グリシン(M,189)を用いた。
上記コラーゲンペプチドは、Pro-Hyp(PO)及びHyp-Gly(OG)の合計含有量が約1.4重量%であった。
【0046】
<実施例1~4>
コラーゲンペプチド由来の不快な風味の改善効果を評価する目的で、表1に示す配合で実施例1~4の液状経口用組成物(溶液)を調製した。媒体には水を用いた。
具体的には、コラーゲンペプチドとウェランガムを水に加えて溶解し1000mLとし、実施例1~4の液状経口用組成物を得た。
【0047】
<比較例1~2>
原料の配合を表1に示す配合とした以外は、実施例1と同じ方法で液状経口用組成物を製造した。比較例2は、増粘剤として使用されるキサンタンガムを使用した。
【0048】
実施例1~4及び比較例1~2で得られた液状経口用組成物を常温にて、風味(臭い及び呈味)を下記方法で官能にて評価した。液状経口用組成物の粘度を、下記方法で測定した。液状経口用組成物の配合及び評価結果を、表1に示す。
【0049】
<風味の評価>
専門のパネラー5名が、液状経口用組成物(常温)の風味を、不快な風味(具体的には、培地様の臭い(ペプトン様の臭い)及び苦味)の観点で、下記の基準で官能評価した。結果は、評価スコアの平均が4.0~3.1を○、3.0~2.1を△、2.1未満を×として示した。
風味の評価基準
4:不快な風味はほとんど感じない
3:やや不快な風味を感じる
2:不快な風味を感じる
1:非常に不快な風味を感じる
【0050】
<粘度測定>
サンプル(液状経口用組成物)の粘度は、B型粘度計により以下の方法で測定した。
測定装置(B型粘度計):BII型粘度計(東機産業(株))、型式BMII
ローター:No.2
サンプル容器:100mLサンプル瓶
サンプル量:75mL
サンプルは、22℃に保持し、回転開始から1分後の数値を読み取り、粘度とした。測定時の回転速度として60rpmで測定を行った。
【0051】
【表1】
【0052】
表1及び後掲の表2~3中の「(A)/(B)」は、(B)ウェランガムに対する(A)コラーゲンペプチドの重量比(コラーゲンペプチド/ウェランガム)である。
表1~3中の各成分の配合量は、液状経口用組成物1000mL中の配合量(mg/1000mL)である。
【0053】
比較例1の液状経口用組成物では、コラーゲンペプチド由来の培地様の臭いと苦味が非常に強く感じられた。比較例2の液状経口用組成物も、比較例1と同様にコラーゲンペプチド由来の培地様の臭い及び苦味が非常に強く感じられた。実施例の液状経口用組成物では、コラーゲンペプチド由来の培地様の臭い及び苦味が低減(抑制)された。実施例2~4の液状経口用組成物は、コラーゲンペプチド由来の培地様の臭い及び苦味が特に効果的に低減された。また、実施例1~4の液状経口用組成物は、いずれも飲用しやすい粘度であった。
【0054】
<実施例5~8>
実施例1と同様の方法により、表2に示す配合で実施例5~8の液状経口用組成物を調製した。得られた液状経口用組成物の風味を、実施例1と同じ方法で常温にて評価した。液状経口用組成物の粘度を、上記方法で測定した。評価結果を、表2に示す。
実施例5~8の液状経口用組成物でも、ウェランガムの配合によりコラーゲンペプチド由来の培地様の臭い及び苦味が低減され、これらの不快な風味が改善された。
【0055】
【表2】
【0056】
<実施例9~10>
実施例1と同様の方法により、表3に示す配合で実施例9~10の液状経口用組成物を調製した。得られた液状経口用組成物の風味を、実施例1と同じ方法で常温にて評価した。液状経口用組成物の粘度を、上記方法で測定した。評価結果を、表3に示す。
【0057】
実施例9~10においても、ウェランガムの配合により、コラーゲンペプチド由来の培地様の臭い及び苦味が抑えられた。また、プロテオグリカン及びエラスチンペプチドは、生臭い風味を有した。ウェランガムを配合した実施例9~10では、プロテオグリカン由来及びエラスチンペプチド由来の生臭い風味も低減された。
【0058】
【表3】
【0059】
<実施例11>
コラーゲンペプチドとして、平均分子量が931のコラーゲンペプチドを使用した。実施例1と同様の方法により、表4に示す配合で実施例11の液状経口用組成物を調製した。表4中の各成分の配合量は、飲料1000mL中の配合量(mg/1000mL)である。表4中の「(A)/(B)」は、(B)ウェランガムに対する(A)コラーゲンペプチドの重量比(コラーゲンペプチド/ウェランガム)である。得られた液状経口用組成物の風味を、実施例1と同じ方法で常温にて評価した。液状経口用組成物の粘度を、上記方法で測定した。評価結果を、表4に示す。
【0060】
<比較例3~4>
実施例11で用いた平均分子量が931のコラーゲンペプチドを使用した。原料の配合を表4に示す配合とした以外は、実施例11と同じ方法で液状経口用組成物を製造し、同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
比較例3及び4の液状経口用組成物では、コラーゲンペプチド由来の培地様の臭いと苦味が非常に強く感じられた。ウェランガムの配合により、コラーゲンペプチド由来の培地様の臭い及び苦味が低減された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、飲食品分野等において有用である。