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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】レイイングダイ
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/38 20060101AFI20221220BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20221220BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20221220BHJP
   B65G 47/91 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B29C70/38
B25J15/06 Z
B29C70/54
B65G47/91 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019571101
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2018055748
(87)【国際公開番号】W WO2018162637
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】102017203939.6
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519324581
【氏名又は名称】ツェヴォテック ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Cevotec GmbH
【住所又は居所原語表記】Willy-Messerschmitt-Str. 1, 82024 Taufkirchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ミヒル
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0062112(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/38
B25J 15/06
B29C 70/54
B65G 47/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧されたガスによって基板をピックアップおよびレイイングするためのレイイングダイであって、
上側および下側を有しかつ正に加圧されたガスを受け取るための入口ポート(168a)と、出口ポートとを有する、取付けエレメント(16)と、
弾性的に変形可能な材料から形成されかつ前記取付けエレメント(16)の前記下側に取り付けられたキャリヤボディ(18)と、を備え、
該キャリヤボディ(18)は、前記取付けエレメント(16)と、該取付けエレメント(16)と反対側の前記キャリヤボディ(18)の下側との間のガス流を可能にする複数の通路(18a)を有する、加圧されたガスによって基板をピックアップおよびレイイングするためのレイイングダイにおいて、
前記取付けエレメント(16)は、前記入口ポート(168a)から加圧ガスを受け入れるために配置された流路(168)と、前記取付けエレメント(16)の下側から該取付けエレメント(16)の上側に向かって延びる長手方向通路(172)とを有し、
前記流路(168)は、接合セクション(170)において前記長手方向通路(172)へ通じており、
前記接合セクション(170)は、前記長手方向通路(172)内へ排出される加圧ガスが、前記取付けエレメント(16)の前記下側において前記長手方向通路に負圧を発生させるように配設されており、前記取付けエレメント(16)の上側に向かって湾曲した、湾曲した逸らせ面(170a)を有しており、
弾性的に変形可能な材料から形成された前記キャリヤボディ(18)は、その上に気密形式で前記基板が収容されると、前記基板の形状に従って、または前記基板が配置されるツールの形状に従って、曲がるように設計されており、
前記長手方向通路(172)の周壁における唯一のオリフィスを構成する1つの接合セクション(170)が設けられており、
前記入口ポート(168a)および前記出口ポートの両方が、前記取付けエレメント(16)の前記上側に配置されていることを特徴とする、
加圧されたガスによって基板をピックアップおよびレイイングするためのレイイングダイ。
【請求項2】
前記取付けエレメント(16)は、シールされるように接合された上側部分(162)および下側部分(164)を有し、前記流路(168)および/または前記長手方向通路(172)および/または前記接合セクション(170)は、少なくとも部分的に、前記上側および下側部分(162,164)における凹所を適合させることによって形成されていることを特徴とする、請求項1載のレイイングダイ。
【請求項3】
前記長手方向通路(172)の前記周壁は、少なくともセクションにおいて、実質的に円形の横断面を有することを特徴とする、請求項1または2記載のレイイングダイ。
【請求項4】
前記逸らせ面(170a)は、実質的に前記長手方向通路(172)の全周にわたって延びていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のレイイングダイ。
【請求項5】
前記取付けエレメント(16)は、さらに、該取付けエレメント(16)の前記下側に正に加圧されたガスを供給することができるように配置された第2の長手方向通路(174)を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のレイイングダイ。
【請求項6】
少なくとも1つの制御される弁アセンブリを有し、前記流路および前記第2の長手方向通路は、前記弁アセンブリを使用して1つの入口ポートから加圧ガスが選択的に供給されるように配置されていることを特徴とする、請求項記載のレイイングダイ。
【請求項7】
前記取付けエレメントは、少なくとも2つのモジュール(176,178)を有し、各モジュールは、少なくとも1つの流路(168)と、少なくとも1つの長手方向通路(172)と、適用可能であるならば、少なくとも1つの第2の長手方向通路(174)とを有し、各モジュールは個々にシールされていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のレイイングダイ。
【請求項8】
前記キャリヤボディ(18)の少なくとも1つの外面(18b)および/または前記通路(18a)の少なくとも1つの壁面は、気密形式でコーティングされていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のレイイングダイ。
【請求項9】
前記取付けエレメント(16)の前記下側は、該下側の周囲を規定しておりかつ前記下側への前記キャリヤボディ(18)の気密な取付けを可能にするように配置されている外側セクション(180)と、前記取付けエレメント(16)の前記上側に向かって凹まされた中央セクション(182)とを有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のレイイングダイ。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項記載のレイイングダイ(10)と、正に加圧されたガスを供給するためのガス供給手段とを備える、基板のピックアップおよびレイイングのためのレイイングアセンブリ。
【請求項11】
請求項10記載のレイイングアセンブリと、レイイングダイを並進および回転させるための作動アセンブリと、該作動アセンブリおよびガス供給手段を制御するための制御ユニットとを備える、基板のピックアップおよびレイイングのためのレイイング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧ガスによる基板のピックアップおよびレイイング、即ち載置のためのレイイングダイであって、上側および下側を有しかつ正に加圧されたガスを受け入れるための入口ポートと、出口ポートとを有する、取付けエレメントと、弾性的に変形可能な材料から形成されかつ取付けエレメントの下側に取り付けられたキャリヤボディと、を備え、キャリヤボディは、取付けエレメントと、取付けエレメントと反対側のキャリヤボディの下側との間にガス流を可能にする複数の通路を有する、レイイングダイに関する。
【0002】
このタイプのレイイングダイは、繊維複合構造、特に、ロードパス整列繊維複合構造から形成された構成部材を製造するときに使用されてきた。これらの材料において、高強度繊維がプラスチックまたは樹脂材料のマトリックスに埋め込まれており、これにより、高強度繊維は、使用時に構成部材に作用する荷重の予想される方向と整列させられている。すなわち、結果として生じる構造は、十分に規定された荷重方向を備える使用ケースにおいてもまだ機械的特性に関して異方性であり、同じ強度のアルミニウムまたは鋼構造と比較して25%~50%の重量減少を達成することができる。
【0003】
高い質および低コストで多数において前記複合構造から形成されたこのような構成部材を製造するために、現代の高度に自動化された製造プロセスおよび技術が開発されている。自動化のための最も高い潜在性および最も低いサイクル時間を有する製造プロセスは、一般的に、プリフォーミング浸透プロセスと呼ばれる。そこでは、完成した構成部材における荷重の大部分を支持するように予定された炭素繊維が、三次元形状にプリフォームされ、その後、液体プラスチックまたは樹脂材料によって含浸され、硬化させられる。前記第2のプロセスステップは、一般的に、浸透または射出と呼ばれる。
【0004】
繊維の正しい向きでの、複雑に成形された成形ツールへの繊維基板の自動化されたレイイングのために、繊維パッチ配置プロセスが開発された。そこでは、バインダ材料によって処理されたプリフォームされた繊維が、バインダの粘度を減じるために圧力および熱を用いてプリフォーミングツールに位置決めされる。これにより、繊維の任意の向きを有する特定の位置に複数の前記パッチを順次に位置決めすることによって、比較的小さなピースからプリフォームが構成される。前記パッチの使用と、プリフォームの自動化された製造を可能にするツールの表面形状に対して受動的に調節することができるパッチレイイングダイの採用とである。前記レイイングダイは、パッチをピックアップ、搬送、加熱、チェックおよびツールに位置決めするために機能する。
【0005】
前記タスクを行うことができるレイイングダイは、例えば、欧州特許出願公開第2796263号明細書(EP 2 796 263 A2)から公知である。前記文献は、弾性的に変形可能な基板収容構造部と、基板をピックアップしかつ吹き飛ばすために正または負に加圧されたガスを提供するためのガスチャネルを有する取付けエレメントと、弾性的に変形可能な材料から形成されたキャリヤボディとを備える、基板のピックアップおよびレイイングのためのレイイングダイを開示している。前記公知のレイイングダイは、基板パッチをピックアップするための負に加圧されたガスと、基板パッチを吹き飛ばすための正に加圧されたガスとに依存する。
【0006】
負に加圧されたガスの十分な流れを提供するために、レイイングダイの外側に配置されなければならない大きな真空ポンプが必要とされ、負圧は、ガスパイプの系統を介してレイイングダイ自体へ搬送されなければならない。設計による前記負に加圧されたガス流は、大気と比較して1barの差圧のみを提供することができ、十分なガス質量流量を提供するために任意の管長さにおいて比較的大きな管直径を必要とする。欧州特許出願公開第2796263号明細書(EP 2 796 263 A2)のレイイングダイにおいて必要とされる大きな真空ポンプおよび広範囲の配管により、基板レイイングプロセスの可能なサイクル時間に関するボトルネックは、ダイの高い慣性により生ぜしめられることがある。また、同じ配管構造において負および正に加圧されたガスを交互に提供することは、配管構造自体において比較的高い慣性を有し、したがって、さらに、公知のレイイングダイの可能なサイクル時間を遅延させる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、このようなダイにおける基板のピックアップのために負に加圧された、即ち大気圧より低い圧力のガスを提供するために機能するシステムの重量およびサイズを減じることによって公知のレイイングダイの欠点のうちの少なくとも幾つかを改善することである。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明によるレイイングダイは、取付けエレメントが、入口ポートから加圧ガスを受け入れるために配置された流路と、取付けエレメントの下側から取付けエレメントの上側に向かって延びる長手方向通路とを有し、流路は、接合セクションにおいて長手方向通路へ通じており、接合セクションは、長手方向通路内へ排出される加圧ガスが、取付けエレメントの下側における長手方向通路に負圧を生じるように配置されており、かつ取付けエレメントの上側に向かって湾曲した、湾曲した逸らせ面を有することを特徴とする。
【0009】
レイイングダイの外側ではなく、レイイングダイ自体の取付けエレメントにおいて負圧を生じることが有益であることに気づいたことは発明者たちの功績である。上述のようにレイイングダイに負に加圧されたガスを供給するときの1barの最大可能差圧とは異なり、正に加圧された、即ち大気圧以上の圧力のガスを、共通の技術的ガス供給手段によって少なくとも約8~10barの正圧で供給することができ、これにより、正に加圧されたガスをさらにかつより迅速に搬送することができる。前記より大きな差圧は、配管系統のためのより小さな所要の直径を生じることもできる。なぜならば、より大きな差圧により、増大されたガス質量流量を達成することができるからである。また、負および正に加圧されたガスを交互に提供する必要性が排除されるので、使用時のガス供給システムの慣性も減じられる。
【0010】
レイイングダイに加圧ガスを供給する速度の前記増大および装置のより少ない重量は、ダイを並進させるための極めて速いロボット構成部材の使用に関して、レイイングダイのより高いレベルの統合を可能にし、その結果、プリフォーム製造プロセスにおけるより短いサイクル時間と、レイイングダイのより大きな可能なサイズとを生じる。
【0011】
上記で示された本発明によるソリューションは、いわゆるコアンダ効果に依存し、コアンダ効果によって、正に加圧されたガス流は、超過されなくてもよい表面の圧力依存最大湾曲などのある境界条件が満たされる限り、ガス流が沿って通過する湾曲面の形状をたどる。コアンダ効果を生じるための前記条件は、文献において良く知られており、実験によって証明することができる。コアンダ効果を使用して、高い質量流量において、低い負の差圧のみを達成することができる。この特徴は、ほとんどの適用において真空生成のために不利であると考えられてもよいが、本願において、優れたシーリング効果を提供する低い差圧において既に圧縮されている変形可能なキャリヤボディにより、コアンダ効果により発生させられた差圧は、繊維パッチを確実にピックアップしかつ搬送するために十分であることに気づいたことは、発明者たちの功績である。さらに、上記で説明した公知のダイにおいて、基板をピックアップするために必要とされる低い差圧は、任意の有効直径においてガス供給管の可能な長さに別の不利な影響を有する。なぜならば、負圧を使用するときの1barの最大可能差圧さえ利用できないことがあるからである。
【0012】
このように正に加圧されたガス流を取付けエレメントの上側に向かって逸らせることによって、取付けエレメントの下側に負圧が生ぜしめられ、この負圧は、基板パッチを引き付けかつピックアップするために使用される。負圧が生ぜしめられる取付けエレメントの内部の実際の設計は、実用において異なってもよく、所望の吸引効果のために取付けエレメントの下側において通路が開放しておりかつコアンダ効果により取付けエレメントの上側に向かって加圧ガスが案内される限り、例えば、複数の流路および/または通路および/または複数の入口ポートを設けることができる。
【0013】
基板パッチをピックアップするための負圧が生ぜしめられる取付けエレメント以外のレイイングダイの付加的な構成部材は、従来公知のレイイングダイと同様に構成することができ、例えば、弾性的に変形可能な基板収容構造部は、取付けエレメントとは反対側のキャリヤボディの下側に取り付けられてもよく、弾性的に変形可能な基板収容構造部およびそれによって基板が処理されているバインダ材料を加熱するための加熱エレメントを設けることもできる。さらに、プリフォーミングツールに対してダイを並進および回転させる作動アセンブリにレイイングダイを取り付けるための適切な手段を、例えば取付けエレメントの上側に設けることができる。
【0014】
好ましい実施の形態において、長手方向通路の周壁における唯一のオリフィスを構成する1つの接合セクションを設けることができる。複数の長手方向通路が取付けエレメントに設けられている場合、そのうちの幾つかまたは全てのために1つの接合セクションを設けることができる。長手方向通路の周壁に1つのオリフィスを設けることによって、圧力損失を最小限に減じることができ、これにより、レイイングダイの吸引力を最大化させることができる。コアンダ効果により加圧ガスを上方へ逸らせるために機能する湾曲した逸らせ面が設けられている限り、接合セクションは、様々な異なる形状を有してもよく、例えば、長手方向通路の全周にわたって延びていることができ、それによって吸引効果を増大させることもできる。
【0015】
さらに、取付けエレメントは、シールされるように接合された上側部分および下側部分を有してもよく、流路および/または長手方向通路および/または接合セクションは、少なくとも部分的に、上側および下側部分における凹所を適合させることによって形成されている。このような取付けエレメントは、高い精度およびそれらの製造における低コストを可能にするフライス削りまたは切断技術によって製造することができる。代替的に、取付けエレメントは、1つの部品または複数の構成部材から形成されてもよく、前記1つの部品の場合、流路、長手方向通路および接合セクションは、部品に穿孔されてもよい。
【0016】
長手方向通路の周壁が、少なくとも長手方向延在範囲に沿った複数のセクションにおいて実質的に円形の横断面を有すると有利であることがある。円形の横断面を備える長手方向通路を設けることは、ガス流の対称性を高め、したがって、取付けエレメントの下側におけるより均一な圧力分布につながることがある。もちろん、長手方向通路は、別の形状を有することもでき、例えば、楕円形または矩形であってもよく、長手方向断面において見たときに円筒形または円錐形を有してもよい。
【0017】
本発明によるレイイングダイにおけるコアンダ効果による吸引効果を最大化するために、逸らせ面が、長手方向通路の実質的に全周にわたって延びていると有利であることがある。このような逸らせ面に加圧ガスを供給するために、流路を、さらに、対応して成形することができ、例えば、長手方向通路の全周にわたって延びていてもよい。
【0018】
本発明によるレイイングダイのサイズを減じるために、入口ポートおよび出口ポートの両方が取付けエレメントの上側に配置されていると有利であることがある。しかしながら、使用時にレイイングダイが取り付けられる作動アセンブリがそれを必要とするならば、入口ポートおよび出口ポートのその他の配置が使用されてもよい。
【0019】
基板をレイイングする迅速かつ確実な方法を提供するために、取付けエレメントは、さらに、取付けエレメントの下側に正に加圧されたガスを供給することができるように配置された第2の長手方向通路を有してもよい。前記第2の長手方向通路に、正に加圧されたガスを供給することによって、基板はレイイングダイから迅速かつ正確に吹き飛ばされてもよいまたは分離されてもよい。また、取付けエレメントの下側に負圧および正圧をそれぞれ提供するための別個の長手方向通路であって、それにもかかわらず両方とも取付けエレメントに供給される正に加圧されたガスによって作動させられる長手方向通路を提供することによって、取付けエレメントへのガス流の反転を回避することができ、これは、使用時のガス供給システムの慣性を減じる。
【0020】
流路および第2の長手方向通路に正に加圧されたガスを選択的に供給するために、本発明によるレイイングダイは、さらに、流路において少なくとも1つの制御される弁アセンブリを有してもよく、第2の長手方向通路は、前記弁アセンブリを使用して1つの入口ポートから加圧ガスが選択的に供給されるように配置されていてもよい。代替的に、流路および第2の長手方向通路の両方への加圧ガスの供給がダイの外側から制御されるように、複数の入口ポートおよび制御される供給手段を使用することができる。これは、付加的な配管を必要とすることがあるが、ダイ自体に制御弁アセンブリを設けないことは、必要とされる空間およびレイイングダイの重量の両方を減じる。
【0021】
発明の1つの可能な実施の形態において、本発明によるレイイングダイの取付けエレメントは、2つのモジュールを有してもよく、各モジュールは、少なくとも1つの流路と、少なくとも1つの長手方向通路と、適用可能であるならば、少なくとも1つの第2の長手方向通路とを有し、各モジュールは個々にシールされている。別の可能な実施の形態において、モジュールのうちの幾つかのみが、第2の長手方向通路を有する。複数のモジュールを備える構成は、より大きな基板パッチをピックアップするためのより大きなダイのために特に有利であることがあり、モジュールは、より大きな面積を適切な形式においてカバーするために、例えば1×2または2×3の構成でダイに配置されてもよい。個々のモジュールには、加圧ガスのための個々のまたは共通の供給手段と、個々のまたは共通の制御される弁とが設けられていてもよい。
【0022】
使用時に基板が実際に収容されながら、キャリヤボディの上側からキャリヤボディの下側への負に加圧されたガスの最適な流れを保証するために、キャリヤボディの少なくとも1つの外面および/または通路の少なくとも1つの壁面は、気密形式でコーティングされていてもよい。前記コーティングは、例えば、気密箔、適切なワニスまたは一般的に言えば、対象となる表面の透過性を減じるあらゆる種類のコーティングから形成することができる。キャリヤボディの下側において十分な負圧を保証するために、できるだけ多くのまたは必要に応じた上記の面がコーティングされてもよい。
【0023】
さらに、キャリヤボディにおける複数の通路の間で負圧を均等に分配するために、取付けエレメントの下側は、下側の周囲を規定しておりかつ下側へのキャリヤボディの気密な取付けを可能にするように配置されている外側セクションと、取付けエレメントの上側に向かって凹まされた中央セクションとを有してもよい。凹まされた中央セクションを提供することによって、キャリヤボディにおける複数の通路において負圧を均等化するために、キャリヤボディの上方のキャビティが取付けエレメントにおいて形成される。基板がピックアップされ、複数の通路を通じてガス流がもはや可能ではないために、負圧がキャリヤボディを取付けエレメントに向かって引き付けたとき、キャリヤボディが前記キャビティ内へ押し込まれることを防止するために、好ましくは外側セクションのレベルと整列させられた、キャリヤボディのための1つまたは複数の付加的な接触点または領域が、中央セクションに設けられてもよい。
【0024】
本発明は、本発明によるレイイングダイと、正に加圧されたガスを供給するためのガス供給手段とを備える、基板のピックアップおよびレイイングのためのレイイングアセンブリにも関する。
【0025】
本発明は、さらに、本発明によるレイイングアセンブリと、レイイングダイを並進および回転させるための作動アセンブリと、作動アセンブリおよびガス供給手段を制御するための制御ユニットとを備える、基板のピックアップおよびレイイングのためのレイイング装置に関する。
【0026】
作動アセンブリによって行われかつ制御ユニットによって制御されるレイイングダイの前記並進および回転は、任意の自由度に沿っていてもよく、装置の使用時、基板をピックアップする位置と、基板を置く位置との間でレイイングダイを並進させるために機能する。制御ユニットは、コンピュータおよびマイクロコントローラなどの、前記目的のための公知の適切な手段によって具体化されてもよいまたは当該手段を含んでもよく、一体化されかつ自動化された製造環境へ本発明によるレイイングダイを統合するために複合的な構造製造プロセスのその他の態様を制御する別の制御ユニットに接続されていてもよい。
【0027】
本発明の付加的な利点および特徴は、同封された図面と一緒に検討されたときに以下の説明から理解されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明によるレイイングダイの概略的な断面図である。
図2図1のレイイングダイの取付けエレメントの概略的な断面図である。
図3図3aおよび図3bは、図1および図2の取付けエレメントの上側部分の上方から見た図および断面図である。
図4図4a~図4cは、図1および図2の取付けエレメントの下側部分の上方から見た図、断面図および下方から見た図である。
【0029】
図1において、基板をピックアップおよび載置するための手段としてのレイイングダイが、概略的な断面図で示されており、概して符号10によって示されている。さらに、長手方向が、矢印Lによって示されている。使用時、図1のレイイングダイ10は、レイイングダイ10の上側に設けられた接続エレメント12を介してレイイングダイ10を並進および回転させるために機能する作動アセンブリ(図示せず)に接続されており、接続エレメント12は、特に、作動アセンブリに設けられた適切な対応エレメントに接続可能である。レイイングダイ10の上側には、2つの供給管14も設けられており、2つの供給管14を通って、正に加圧されたガスが、外部ガス供給手段からレイイングダイ10へ供給される。
【0030】
接続エレメント12は、その下端部において取付けエレメント16に接続されている。前記取付けエレメント16は、固定されて接続された上側部分162と下側部分164とによって形成されている。取付けエレメント16の詳細な説明のために、図2図4cが参照されるが、図1において、取付けエレメント16は、概略的な形式においてのみ示されている。供給管14も、接続エレメント16に接続されており、そのために、入口ポート168aが接続エレメント16に設けられており、接続エレメント16は、図2および図3aを参照して後で説明される。
【0031】
取付けエレメント16および特にその下側部分164の下側に、弾性的に変形可能な材料から形成されたキャリヤボディ18が、気密形式で取り付けられている。キャリヤボディ18は、欧州特許出願公開第2796263号明細書(EP 2 796 263 A2)から公知のタイプのものであってもよく、特に、ポリウレタンフォームなどの発泡材料から形成されていてもよい。キャリヤボディ18は、複数の通路18aを有する。複数の通路18aは、実質的に長手方向Lに沿って延びており、キャリヤボディ18の下側を、キャリヤボディ18の上側、ひいては取付けエレメント16の下側に接続している。さらに、キャリヤボディ18の外側表面は、気密箔または気密ワニスなどの気密材料18bによってシールまたはコーティングされている。通路18aの壁面は、外側表面と同じ形式でコーティングされていてもよい。
【0032】
キャリヤボディ18の下側には、基板収容構造部20が取り付けられている。基板収容構造部20も、弾性的に変形可能な材料から形成されており、欧州特許出願公開第2796263号明細書(EP 2 796 263 A2)から公知のタイプのものであってもよく、加熱エレメント20aを収容しており、その下面に、レイイングダイ10によって搬送される基板を収容するように配置されている。
【0033】
レイイングダイ10の使用時、取付けエレメント16の下側に負圧が発生させられ、この負圧は、キャリヤボディ18に形成された通路18aを通って基板収容構造部20へ移送される。基板収容構造部20の下面に提供された負圧により、基板パッチをピックアップしかつ搬送することができる。弾性的に変形可能であることにより、キャリヤボディ18および基板収容構造部20の両方は、基板が気密形式で基板収容構造部20の下面に収容されると、基板の形状に従ってまたは基板が配置されるツールの形状に従って、曲がる。
【0034】
図2は、ここで、図1のレイイングダイの取付けエレメント16の一部を概略的な断面図で示している。上述のように、取付けエレメント16は、固定されて接続された上側部分162と下側部分164とを有する。2つの部分162,164の間には、後で説明される取付けエレメント16の内部キャビティを、外側から、気密形式でシールするために、ゴム材料から形成されたシーリングエレメント166が設けられている。
【0035】
取付けエレメント16の上側部分162には、ガス流路168が形成されている。ガス流路168は、長手方向に延びるセクション168aから成る。長手方向に延びるセクション168aは、上述の正に(大気圧以上に)加圧されたガスのための入口ポートとしても機能しかつ前記正に加圧されたガスを受け取るためにガス供給管14に接続されている。長手方向に延びるセクション168aは、上側部分162の上側から、上側部分162と下側部分164との間の境界面まで延びている。前記境界面において、ガス流路は、90°方向転換し、水平に延びるセクション168bに移行している。前記水平に延びるセクション168bも、例えばフライス削りによって、取付けエレメント16の上側部分162に形成されている。
【0036】
ガス流路168の水平に延びるセクション168bは、接合セクション170において、長手方向通路172へ通じている。長手方向通路172は、取付けエレメント16の下側から上側まで延びており、上側部分162および下側部分164において整列して形成されており、これにより、上側通路172aと下側通路172bとから成る。図2における一点鎖線Cは、長手方向通路172の中心線を表している。接合セクション170において、湾曲した逸らせ面170aが形成されている。逸らせ面170aは、取付けエレメント16の上側に向かって湾曲させられている。上側通路172aおよび下側通路172bの両方は円形の横断面を有するが、逸らせ面170aおよび長手方向通路172の周壁は、上側通路172aの半径rupが、下側通路172bの半径rlowより僅かに小さくなるように形成されている。
【0037】
矢印GF1およびGF2は、レイイングダイ10が使用中でありかつ正に加圧されたガスがガス供給管14を通って入口ポート168aへ供給されるときの、取付けエレメント16内のガス流を示している。ガスは、最初にガス流路168のセクション168aおよび168bを通って流れ、接合セクション170において長手方向通路172へ流出する。正に加圧されたガス流は、それに沿ってガス流が通過する湾曲した面の形状に従い、コアンダ効果により、接合セクション170における逸らせ面170aによって取付けエレメント16の上側に向かって変向させられる。上側通路172a内への上方への移動の間、ガス流GF1は、下側通路172bからガスを引き込み、これにより、やはり取付けエレメント16の上側に向かって方向付けられた第2のガス流GF2を引き起こす。これにより、長手方向通路172内において、更には取付けエレメント16の下側において、差圧が発生して、基板をピックアップするようにレイイングダイ10を作動させるための負圧が発生させられる。取付けエレメント16の上側に向かって上側通路172aにおいて流れる正に加圧されたガスは、いずれも出口ポート(図示せず)を通じて、付加的なガス出口管によって導き出されてもよいまたは単に周囲環境中へ放出されてもよい。
【0038】
図3aおよび図3bは、ここで、図1および図2の取付けエレメント16の上側部分162を上方から見た図および断面図で示している。4つの角において、ボアホール22aが設けられており、これらのボアホール22aを通って、取付けエレメント16の上側および下側部分162および164を接続するためのねじまたはボルトなどの接続エレメントを挿入することができる。
【0039】
上側部分162は、上側部分162を半分に分割する軸線Aに関して実質的に対称的であり、各半分は、流路168、長手方向通路172、および右側のモジュールの場合、第2の長手方向通路174を含む個々のモジュールを形成していることを見ることもできる。図3Aの上方から見た図において、流路168の入口ポート168aと、長手方向通路172の上側通路172aとが示されている。2つのモジュールは、符号176および178によって示されており、図4aに示されるように、個々にシールされている。
【0040】
第2の長手方向通路174は、長手方向Lに従って上側部分162および下側部分164の両方を通って整列させられた形式で取付けエレメント16の上側から下側まで延びており、基板収容構造部20から基板を吹き飛ばすために取付けエレメントの下側に正に加圧されたガスを供給することができるように配置されている。基板の吹き飛ばしは、基板の重量によって補助されるため、基板のピックアップよりも明らかに容易であるので、右側のモジュール178に設けられた1つの長手方向通路174がその目的のために十分である。
【0041】
図3aに示された中心線Bに沿った断面図である図3bは、さらに、2つのモジュール176および178の2つの円形の上側通路172aが、平行に延びており、それらのそれぞれの逸らせ面170aが上側通路172aの全周にわたって延びていることを示している。正に加圧されたガスを、周囲にわたって長手方向通路172へ分配するために、ガス流路168の周囲セクション168cが設けられており、周囲セクション168cは、水平セクション168bから来る加圧ガスを長手方向通路172の周囲に案内し、これにより、接合セクション170も円形を有する。ガス流路168の前記周囲セクション168cは、図4aに示されている。
【0042】
前記図4a、図4bおよび図4cは、図1および図2の取付けエレメントの下側部分164を上方から見た図、断面図および下方から見た図で示している。下側部分も、4つの角においてボアホール22bを有し、これらのボアホール22bを通って、取付けエレメント16の上側および下側部分162および164を接続するための上述の接続エレメントを挿入することができる。
【0043】
上側部分162と同様に、取付けエレメント16の下側部分164は、軸線Aに関して対称的であり、2つのモジュール176および178を形成している。各モジュール176および178は、個々のシーリングエレメント166を有し、これにより、上側部分162と下側部分164との間に形成された両モジュール176および178のキャビティを個々にシールしている。図4aの上方から見た図において、ガス流路168の水平および周囲セクション168b,168cと、下側通路172bと、第2の通路174が示されている。
【0044】
図3bと同様の中心線Bに沿った下側エレメント164の断面図である図4bにおいて、下側エレメント164は、その下側において、下側の周囲を規定しておりかつ下側へのキャリヤボディ18の気密な取付けを可能にするように配置された外側セクション180と、取付けエレメントの上側に向かって凹まされた中央セクション182とを有する。発生させられた負圧による下側通路172b内へのガス流は、これにより、中央セクション182において分配され、取付けエレメント16の下側の大きな面積にわたって均一な負圧を形成し、これは、キャリヤボディ18の複数の通路における均一なガス流と、図1に示された基板収容構造部20における最適な吸引効果とを生ぜしめる。
【0045】
図4cの下方からの図においてさらに見ることができるように、中央セクション182において、キャリヤボディ18に対する別の接触領域184が、“H”の文字の形で設けられており、これは、基板がピックアップされかつ負圧がキャリヤボディ18を取付けエレメント16に向かって引き付けるときにキャリヤボディ18が中央セクション182内へ引き込まれることを防止する。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c