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特許7197525ノズル清掃装置、塗布装置、ノズル清掃方法、および、スクレーパー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ノズル清掃装置、塗布装置、ノズル清掃方法、および、スクレーパー
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20221220BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20221220BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/02
B05D1/26 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020008293
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021115490
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】高村 幸宏
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-113213(JP,A)
【文献】特開2002-177848(JP,A)
【文献】特開2008-149247(JP,A)
【文献】特開2008-149224(JP,A)
【文献】特許第6430056(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を清掃するノズル清掃装置であり、
前記スリットノズルの端部に接触可能なノズル清掃部材と、
前記ノズル清掃部材を前記スリットノズルの端部に接触させながら、前記スリットノズルの前記吐出口が延びる方向である第1の方向に沿って前記ノズル清掃部材を移動させる移動機構とを備え、
前記ノズル清掃部材は、
第1の本体部と、前記第1の本体部から延び、かつ、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向から前記スリットノズルの端部の第1の側面に接触可能な第1の薄板部材とを備える少なくとも1つの第1のスクレーパーと、
第2の本体部と、前記第2の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の前記第1の側面とは反対側の第2の側面に接触可能な第2の薄板部材とを備える少なくとも1つの第2のスクレーパーと、
第3の本体部と、前記第3の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の下面に接触可能な第3の薄板部材とを備える少なくとも1つの第3のスクレーパーと、
前記第1のスクレーパー、前記第2のスクレーパーおよび前記第3のスクレーパーを支持する支持部とを備え
前記第1の薄板部材、前記第2の薄板部材および前記第3の薄板部材のうちの少なくとも1つの、前記ノズル清掃部材が移動する方向を向く面の対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部と連続する部分は、湾曲する曲面である、
ノズル清掃装置。
【請求項2】
スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を清掃するノズル清掃装置であり、
前記スリットノズルの端部に接触可能なノズル清掃部材と、
前記ノズル清掃部材を前記スリットノズルの端部に接触させながら、前記スリットノズルの前記吐出口が延びる方向である第1の方向に沿って前記ノズル清掃部材を移動させる移動機構とを備え、
前記ノズル清掃部材は、
第1の本体部と、前記第1の本体部から延び、かつ、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向から前記スリットノズルの端部の第1の側面に接触可能な第1の薄板部材とを備える少なくとも1つの第1のスクレーパーと、
第2の本体部と、前記第2の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の前記第1の側面とは反対側の第2の側面に接触可能な第2の薄板部材とを備える少なくとも1つの第2のスクレーパーと、
第3の本体部と、前記第3の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の下面に接触可能な第3の薄板部材とを備える少なくとも1つの第3のスクレーパーと、
前記第1のスクレーパー、前記第2のスクレーパーおよび前記第3のスクレーパーを支持する支持部とを備え
前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて厚くなり、
前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて、1mm以上かつ5mm以下の曲率半径にしたがって厚くなる、
ノズル清掃装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のノズル清掃装置であり、
前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて厚くなる、
ノズル清掃装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1つに記載のノズル清掃装置であり、
前記第1の薄板部材、前記第2の薄板部材および前記第3の薄板部材のうちの少なくとも1つの、前記ノズル清掃部材が移動する方向を向く面の対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部と連続する部分は、湾曲する曲面である、
ノズル清掃装置。
【請求項5】
請求項に記載のノズル清掃装置であり、
前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて、1mm以上かつ5mm以下の曲率半径にしたがって厚くなる、
ノズル清掃装置。
【請求項6】
請求項1からのうちのいずれか1つに記載のノズル清掃装置であり、
前記第1の薄板部材、前記第2の薄板部材および前記第3の薄板部材のうちの少なくとも1つは、ロックウェル硬度R110以上かつR130以下であり、かつ、曲げ強度30以上かつ50以下である、
ノズル清掃装置。
【請求項7】
請求項1からのうちのいずれか1つに記載のノズル清掃装置であり、
前記第1の方向において、前記第1のスクレーパー、前記第2のスクレーパーおよび前記第3のスクレーパーのうちの少なくとも1つを複数備える、
ノズル清掃装置。
【請求項8】
請求項1からのうちのいずれか1つに記載のノズル清掃装置であり、
前記第1の薄板部材、前記第2の薄板部材および前記第3の薄板部材のうちの少なくとも1つの、前記ノズル清掃部材が移動する方向を向く面と前記スリットノズルの端部とのなす角が鈍角である、
ノズル清掃装置。
【請求項9】
請求項1からのうちのいずれか1つに記載のノズル清掃装置であり、
前記第3の薄板部材は、前記第1の薄板部材および前記第2の薄板部材よりも、前記ノズル清掃部材が移動する方向における上流側に位置する、
ノズル清掃装置。
【請求項10】
スリット状の吐出口から塗布液を吐出するスリットノズルと、
請求項1からのうちのいずれか1つに記載のノズル清掃装置とを備える、
塗布装置。
【請求項11】
スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を清掃するノズル清掃方法であり、
前記スリットノズルの端部に接触可能なノズル清掃部材を前記スリットノズルの端部に接触させながら、前記スリットノズルの前記吐出口が延びる方向である第1の方向に沿って前記ノズル清掃部材を移動させる工程を備え、
前記ノズル清掃部材は、
第1の本体部と、前記第1の本体部から延び、かつ、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向から前記スリットノズルの端部の第1の側面に接触可能な第1の薄板部材とを備える少なくとも1つの第1のスクレーパーと、
第2の本体部と、前記第2の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の前記第1の側面とは反対側の第2の側面に接触可能な第2の薄板部材とを備える少なくとも1つの第2のスクレーパーと、
第3の本体部と、前記第3の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の下面に接触可能な第3の薄板部材とを備える少なくとも1つの第3のスクレーパーと、
前記第1のスクレーパー、前記第2のスクレーパーおよび前記第3のスクレーパーを支持する支持部とを備え
前記第1の薄板部材、前記第2の薄板部材および前記第3の薄板部材のうちの少なくとも1つの、前記ノズル清掃部材が移動する方向を向く面の対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部と連続する部分は、湾曲する曲面である、
ノズル清掃方法。
【請求項12】
スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を清掃するノズル清掃方法であり、
前記スリットノズルの端部に接触可能なノズル清掃部材を前記スリットノズルの端部に接触させながら、前記スリットノズルの前記吐出口が延びる方向である第1の方向に沿って前記ノズル清掃部材を移動させる工程を備え、
前記ノズル清掃部材は、
第1の本体部と、前記第1の本体部から延び、かつ、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向から前記スリットノズルの端部の第1の側面に接触可能な第1の薄板部材とを備える少なくとも1つの第1のスクレーパーと、
第2の本体部と、前記第2の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の前記第1の側面とは反対側の第2の側面に接触可能な第2の薄板部材とを備える少なくとも1つの第2のスクレーパーと、
第3の本体部と、前記第3の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の下面に接触可能な第3の薄板部材とを備える少なくとも1つの第3のスクレーパーと、
前記第1のスクレーパー、前記第2のスクレーパーおよび前記第3のスクレーパーを支持する支持部とを備え
前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて厚くなり、
前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて、1mm以上かつ5mm以下の曲率半径にしたがって厚くなる、
ノズル清掃方法。
【請求項13】
スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を、前記スリットノズルの前記吐出口が延びる方向である第1の方向に沿って移動して清掃するためのスクレーパーであり、
本体部と、
前記本体部から延び、かつ、前記吐出口が延びる方向と交差する方向から前記スリットノズルの端部に接触可能な薄板部材とを備え
前記薄板部材の前記第1の方向を向く面の対応する前記本体部と連続する部分は、湾曲する曲面である、
スクレーパー。
【請求項14】
スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を清掃するためのスクレーパーであり、
本体部と、
前記本体部から延び、かつ、前記吐出口が延びる方向と交差する方向から前記スリットノズルの端部に接触可能な薄板部材とを備え
前記薄板部材の厚さは、前記本体部に近づくにつれて、1mm以上かつ5mm以下の曲率半径にしたがって厚くなる、
スクレーパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書に開示される技術は、ノズル清掃装置、塗布装置、ノズル清掃方法、および、スクレーパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板に対して塗布液を塗布するために、塗布液をスリット状の吐出口から吐出するスリットノズルが一般に用いられている。このようなスリットノズルでは、吐出口に残存する塗布液などの付着物を除去するために、スリットノズルの吐出口に沿って移動可能な清掃部材を用いて付着物を除去する処理が行われる(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-165137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吐出口の清掃部材としては、吐出口の形状に対して追従可能なゴム製の部材が用いられることが多いが、ゴム製の部材では摺動による摩耗が顕著であり清掃部材の交換頻度が高くなる。一方で、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの硬質の材料を用いると、摺動による摩耗は抑制されるものの、吐出口の形状に対する追従性が低下し、付着物を十分に除去することができない場合がある。
【0005】
本願明細書に開示される技術は、以上に記載されたような問題を鑑みてなされたものであり、ノズルの清掃部材において、摺動による摩耗を抑制しつつ、ノズルの吐出口に対する追従性の低下を抑制するための技術である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願明細書に開示される技術の第1の態様は、スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を清掃するノズル清掃装置であり、前記スリットノズルの端部に接触可能なノズル清掃部材と、前記ノズル清掃部材を前記スリットノズルの端部に接触させながら、前記スリットノズルの前記吐出口が延びる方向である第1の方向に沿って前記ノズル清掃部材を移動させる移動機構とを備え、前記ノズル清掃部材は、第1の本体部と、前記第1の本体部から延び、かつ、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向から前記スリットノズルの端部の第1の側面に接触可能な第1の薄板部材とを備える少なくとも1つの第1のスクレーパーと、第2の本体部と、前記第2の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の前記第1の側面とは反対側の第2の側面に接触可能な第2の薄板部材とを備える少なくとも1つの第2のスクレーパーと、第3の本体部と、前記第3の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の下面に接触可能な第3の薄板部材とを備える少なくとも1つの第3のスクレーパーと、前記第1のスクレーパー、前記第2のスクレーパーおよび前記第3のスクレーパーを支持する支持部とを備え、前記第1の薄板部材、前記第2の薄板部材および前記第3の薄板部材のうちの少なくとも1つの、前記ノズル清掃部材が移動する方向を向く面の対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部と連続する部分は、湾曲する曲面である。
本願明細書に開示される技術の第2の態様は、スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を清掃するノズル清掃装置であり、前記スリットノズルの端部に接触可能なノズル清掃部材と、前記ノズル清掃部材を前記スリットノズルの端部に接触させながら、前記スリットノズルの前記吐出口が延びる方向である第1の方向に沿って前記ノズル清掃部材を移動させる移動機構とを備え、前記ノズル清掃部材は、第1の本体部と、前記第1の本体部から延び、かつ、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向から前記スリットノズルの端部の第1の側面に接触可能な第1の薄板部材とを備える少なくとも1つの第1のスクレーパーと、第2の本体部と、前記第2の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の前記第1の側面とは反対側の第2の側面に接触可能な第2の薄板部材とを備える少なくとも1つの第2のスクレーパーと、第3の本体部と、前記第3の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の下面に接触可能な第3の薄板部材とを備える少なくとも1つの第3のスクレーパーと、前記第1のスクレーパー、前記第2のスクレーパーおよび前記第3のスクレーパーを支持する支持部とを備え、前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて厚くなり、前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて、1mm以上かつ5mm以下の曲率半径にしたがって厚くなる。
【0007】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、第1または2の態様に関連し、前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて厚くなる。
【0008】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、第1から3のうちのいずれか1つの態様に関連し、前記第1の薄板部材、前記第2の薄板部材および前記第3の薄板部材のうちの少なくとも1つの、前記ノズル清掃部材が移動する方向を向く面の対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部と連続する部分は、湾曲する曲面である。
【0009】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、第の態様に関連し、前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて、1mm以上かつ5mm以下の曲率半径にしたがって厚くなる。
【0010】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、第1からのうちのいずれか1つの態様に関連し、前記第1の薄板部材、前記第2の薄板部材および前記第3の薄板部材のうちの少なくとも1つは、ロックウェル硬度R110以上かつR130以下であり、かつ、曲げ強度30以上かつ50以下である。
【0011】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、第1からのうちのいずれか1つの態様に関連し、前記第1の方向において、前記第1のスクレーパー、前記第2のスクレーパーおよび前記第3のスクレーパーのうちの少なくとも1つを複数備える。
【0012】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、第1からのうちのいずれか1つの態様に関連し、前記第1の薄板部材、前記第2の薄板部材および前記第3の薄板部材のうちの少なくとも1つの、前記ノズル清掃部材が移動する方向を向く面と前記スリットノズルの端部とのなす角が鈍角である。
【0013】
本願明細書に開示される技術の第の態様は、第1からのうちのいずれか1つの態様に関連し、前記第3の薄板部材は、前記第1の薄板部材および前記第2の薄板部材よりも、前記ノズル清掃部材が移動する方向における上流側に位置する。
【0014】
本願明細書に開示される技術の第10の態様は、スリット状の吐出口から塗布液を吐出するスリットノズルと、上記のノズル清掃装置とを備える。
【0015】
本願明細書に開示される技術の第11の態様は、スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を清掃するノズル清掃方法であり、前記スリットノズルの端部に接触可能なノズル清掃部材を前記スリットノズルの端部に接触させながら、前記スリットノズルの前記吐出口が延びる方向である第1の方向に沿って前記ノズル清掃部材を移動させる工程を備え、前記ノズル清掃部材は、第1の本体部と、前記第1の本体部から延び、かつ、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向から前記スリットノズルの端部の第1の側面に接触可能な第1の薄板部材とを備える少なくとも1つの第1のスクレーパーと、第2の本体部と、前記第2の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の前記第1の側面とは反対側の第2の側面に接触可能な第2の薄板部材とを備える少なくとも1つの第2のスクレーパーと、第3の本体部と、前記第3の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の下面に接触可能な第3の薄板部材とを備える少なくとも1つの第3のスクレーパーと、前記第1のスクレーパー、前記第2のスクレーパーおよび前記第3のスクレーパーを支持する支持部とを備え、前記第1の薄板部材、前記第2の薄板部材および前記第3の薄板部材のうちの少なくとも1つの、前記ノズル清掃部材が移動する方向を向く面の対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部と連続する部分は、湾曲する曲面である。
本願明細書に開示される技術の第12の態様は、スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を清掃するノズル清掃方法であり、前記スリットノズルの端部に接触可能なノズル清掃部材を前記スリットノズルの端部に接触させながら、前記スリットノズルの前記吐出口が延びる方向である第1の方向に沿って前記ノズル清掃部材を移動させる工程を備え、前記ノズル清掃部材は、第1の本体部と、前記第1の本体部から延び、かつ、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向から前記スリットノズルの端部の第1の側面に接触可能な第1の薄板部材とを備える少なくとも1つの第1のスクレーパーと、第2の本体部と、前記第2の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の前記第1の側面とは反対側の第2の側面に接触可能な第2の薄板部材とを備える少なくとも1つの第2のスクレーパーと、第3の本体部と、前記第3の本体部から延び、かつ、前記第2の方向から前記スリットノズルの端部の下面に接触可能な第3の薄板部材とを備える少なくとも1つの第3のスクレーパーと、前記第1のスクレーパー、前記第2のスクレーパーおよび前記第3のスクレーパーを支持する支持部とを備え、前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて厚くなり、前記第1の薄板部材の厚さ、前記第2の薄板部材の厚さおよび前記第3の薄板部材の厚さのうちの少なくとも1つは、対応する前記第1の本体部、前記第2の本体部または前記第3の本体部に近づくにつれて、1mm以上かつ5mm以下の曲率半径にしたがって厚くなる。
【0016】
本願明細書に開示される技術の第1の態様は、スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を、前記スリットノズルの前記吐出口が延びる方向である第1の方向に沿って移動して清掃するためのスクレーパーであり、本体部と、前記本体部から延び、かつ、前記吐出口が延びる方向と交差する方向から前記スリットノズルの端部に接触可能な薄板部材とを備え、前記薄板部材の前記第1の方向を向く面の対応する前記本体部と連続する部分は、湾曲する曲面である
【0017】
本願明細書に開示される技術の第1の態様は、スリット状の吐出口が設けられるスリットノズルの端部を清掃するためのスクレーパーであり、本体部と、前記本体部から延び、かつ、前記吐出口が延びる方向と交差する方向から前記スリットノズルの端部に接触可能な薄板部材とを備え、前記薄板部材の厚さは、前記本体部に近づくにつれて、1mm以上かつ5mm以下の曲率半径にしたがって厚くなる。
【発明の効果】
【0018】
本願明細書に開示される技術の第1から1の態様によれば、スリットノズルの清掃部材として硬質の材料を用いることで摺動による摩耗を抑制する場合であっても、それぞれの本体部から延びる薄板部材によってスリットノズルの端部に対する追従性の低下を抑制することができる。
【0019】
本願明細書に開示される技術の第1および1の態様によれば、スリットノズルの清掃部材として硬質の材料を用いることで摺動による摩耗を抑制する場合であっても、本体部から延びる薄板部材によってスリットノズルの端部に対する追従性の低下を抑制することができる。
【0020】
また、本願明細書に開示される技術に関連する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態に関する、ノズル清掃装置を含む塗布装置を模式的に示す斜視図である。
図2図1に例が示される塗布装置を模式的に示す側面図である。
図3図1に例が示される塗布装置を模式的に示す上面図である。
図4】スリットノズルをX軸方向から見た場合の側面図である。
図5】実施の形態に関する、ノズル清掃装置の構成の例を示す側面図である。
図6】ノズル清掃装置に用いられるノズル清掃部材の構成の例を示す斜視図である。
図7】ノズル清掃装置が行うクリーニング処理の例を示すフローチャートである。
図8】傾斜面と薄板部材とが接触して付着物を除去する場合の詳細を示す図である。
図9】リップ部と3つの薄板部材とが接触する態様を示す図である。
図10】ノズル清掃装置に用いられるノズル清掃部材の構成の変形例を示す斜視図である。
図11】ノズル清掃装置が行うクリーニング処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0023】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化が図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0024】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0025】
また、以下に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0026】
また、以下に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0027】
また、以下に記載される説明における、「対象物を特定の方向に移動させる」などの表現は、特に断らない限りは、対象物を当該特定の方向と平行に移動させる場合、および、対象物を当該特定の方向の成分を有する方向に移動させる場合を含むものとする。
【0028】
また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
【0029】
<第1の実施の形態>
以下、本実施の形態に関する塗布装置、ノズル清掃装置、スクレーパー、および、ノズル清掃方法について説明する。
【0030】
<塗布装置の構成について>
図1は、本実施の形態に関するノズル清掃装置を含む塗布装置を模式的に示す斜視図である。また、図2は、図1に例が示される塗布装置を模式的に示す側面図である。また、図3は、図1に例が示される塗布装置を模式的に示す上面図である。なお、図2および図3では、ノズル支持体などの一部の構成が省略されている。
【0031】
塗布装置1は、スリットノズル2を用いて基板3の上面31に塗布液を塗布するスリットコータと呼ばれる塗布装置である。
【0032】
塗布装置1は、その塗布液として、耐エッチング被膜とすべきフォトレジスト液、カラーフィルター用のフォトレジスト液、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を含む液、シリコン、ナノメタルインクまたは導電性材料を含むスラリー(ペースト)などの、種々の塗布液を用いることが可能である。
【0033】
また、塗布対象となる基板3についても、液晶表示装置用ガラス基板、半導体基板、PDP用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、カラーフィルター用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板などの精密電子装置用基板、矩形ガラス基板、フィルム液晶用フレキシブル基板、または、有機EL(electroluminescence)用基板などの種々の基板に適用可能である。
【0034】
なお、「基板3の上面31」とは、基板3の両主面のうち塗布液が塗布される側の主面を意味する。
【0035】
塗布装置1は、基板3を水平姿勢で吸着保持可能なステージ4と、ステージ4に保持される基板3にスリットノズル2を用いて塗布処理を施す塗布処理部5と、塗布処理に先立ってスリットノズル2に対してクリーニング処理を施すノズル清掃装置6(図2および図3を参照)と、これらの構成の動作を制御する制御部8とを備える。
【0036】
制御部8は、内部または外部の記憶媒体(HDD、RAM、ROMまたはフラッシュメモリなどの、揮発性または不揮発性のメモリなど)に記憶されたプログラムを実行することによって制御対象を制御するものであり、たとえば、中央演算処理装置(central processing unit、すなわち、CPU)、マイクロプロセッサまたはマイクロコンピュ-タなどで構成される。
【0037】
図4は、スリットノズル2をX軸方向から見た場合の側面図である。スリットノズル2は、X軸方向に延びる長尺スリット状の開口部である吐出口21を有する。吐出口21はX軸方向においてスリットノズル2の全長よりも短く、スリットノズル2のX軸方向の両端では吐出口21が開口しない。
【0038】
スリットノズル2は、ステージ4に保持されている基板3の上面31に向けて吐出口21から塗布液を吐出可能である。具体的には、スリットノズル2は、ノズル支持体51(図1を参照)によって固定支持される基部22と、図示しない供給機構から供給される塗布液を吐出口21まで送液する内部流路23と、基部22の下方に突出するリップ部24とを有する。
【0039】
リップ部24は、基部22の下方に突出する先端(下端)に設けられる平坦状の先端面25と、先端面25と基部22とを結ぶ、+Y側に形成される斜面である傾斜面26aと、先端面25と基部22とを結ぶ、-Y側に形成される斜面である傾斜面26bとを有する。以下では、傾斜面26aと傾斜面26bとを区別しない場合に、単に傾斜面26と称することがある。
【0040】
このようにリップ部24はその長手方向であるX軸方向からの側面視において先細りの凸形状を有し、凸形状の先端(下端)に吐出口21が設けられ、凸形状のそれぞれの側面が傾斜面26となっている。
【0041】
このように構成されたスリットノズル2に、図示しない供給機構から塗布液が供給されると、塗布液は内部流路23を通じてスリットノズル2の長手方向(X軸方向)に均等に拡散されて送液され、さらに、リップ部24の先端面25に設けられた吐出口21から下方に向けて吐出される。
【0042】
上記のように、スリットノズル2の吐出口21から塗布液を吐出しつつ基板3に対する塗布動作を実行すると、スリットノズル2の吐出口21の周囲部分(リップ部24)には、塗布液が付着することがある。付着した塗布液は乾燥して残渣となり、これを放置すると、塗布液の良好な吐出の妨げ、または、基板3に形成される膜の汚れの原因となる場合がある。
【0043】
そこで、塗布装置1では、上記のような吐出口21の周囲部分(リップ部24)における付着物(付着液)を除去するクリーニング処理を、ノズル清掃装置6によって行う。
【0044】
図1図2および図3に例が示されるステージ4は、略直方体の形状を有する花崗岩などの石材で構成される。ステージ4は、その上面(+Z側の面)のうち-Y側の領域には、略水平な平坦面に加工されて基板3を保持する保持面41を備える。保持面41には、図示しない多数の真空吸着口が分散して形成されている。これらの真空吸着口によって基板3が吸着されることで、塗布処理の際に基板3があらかじめ定められた位置に略水平状態に保持される。なお、基板3の保持態様はこれに限定されるものではなく、たとえば、機械的に基板3を保持するようにステージ4が構成されていてもよい。
【0045】
また、ステージ4は、保持面41が占有する領域よりも+Y側の領域において、ノズル調整領域100を備える。ノズル調整領域100には、ノズル清掃装置6(図2および図3を参照)が配置されている。
【0046】
塗布装置1では、スリットノズル2をY軸方向に移動させる後述の移動機構が塗布処理部5に設けられており、当該移動機構によって、保持面41の上方とノズル調整領域100の上方との間でスリットノズル2を往復移動させることができる。
【0047】
そして、スリットノズル2がノズル調整領域100の上方に移動している期間、すなわち、ステージ4において保持面41が占有する領域の上方にスリットノズル2がない期間に、先に塗布処理がなされた基板3の搬出と、これから塗布処理がなされる基板3の搬入とがステージ4上で行われる。一方、スリットノズル2が保持面41の上方を移動している間に、保持面41における基板3の上面31にスリットノズル2から塗布液が塗布される。
【0048】
塗布処理部5の移動機構は、主としてステージ4の上方をX軸方向に横断してスリットノズル2を支持するブリッジ構造のノズル支持体51と、Y軸方向に延びる一対のガイドレール52に沿ってノズル支持体51およびこれに支持されるスリットノズル2を水平移動させるスリットノズル移動部53とを有する。
【0049】
ノズル支持体51は、スリットノズル2を固定する固定部材51aと、固定部材51aを支持するとともに固定部材51aを昇降させる2つの昇降機構51bとを有する。なお、固定部材51aは、X軸方向を長手方向とするカーボンファイバー補強樹脂などの断面矩形の棒状部材で構成される。
【0050】
2つの昇降機構51bは固定部材51aの長手方向の両端部に連結されており、それぞれACサーボモータおよびボールネジなどを有する。これらの昇降機構51bによって、固定部材51aおよび固定部材51aに固定されたスリットノズル2が鉛直方向(Z軸方向)に昇降され、スリットノズル2の吐出口21と基板3との間隔、すなわち、基板3に対する吐出口21の相対的な高さが調整される。
【0051】
なお、固定部材51aの鉛直方向の位置は、たとえば、昇降機構51bの側面に設けられるスケール部と、当該スケール部に対向してスリットノズル2の側面などに設けられる検出センサーとで構成されるリニアエンコーダ(ここでは、図示しない)によって検出することができる。
【0052】
このように構成されたノズル支持体51は、図1に例が示されるように、ステージ4の左右両端部をX軸方向に沿って掛け渡し、保持面41を跨ぐ架橋構造である。スリットノズル移動部53は、架橋構造であるノズル支持体51とノズル支持体51に保持されるスリットノズル2とを、ステージ4上に保持される基板3に対してY軸方向に沿って相対移動させる。
【0053】
具体的には、スリットノズル移動部53は、±X側のそれぞれにおいてスリットノズル2の移動をY軸方向に案内するガイドレール52と、駆動源であるリニアモータ54と、スリットノズル2の吐出口の位置を検出するためのリニアエンコーダ55とを有する。
【0054】
2つのガイドレール52は、図1および図2に例が示されるように、ステージ4のX軸方向の両端部において、ノズル洗浄位置Y1(すなわち、ノズル清掃装置6の配設位置)から塗布終了位置Y3(すなわち、保持面41の-Y側の端部位置)までの区間を含むように、Y軸方向に沿って延びている。そのため、スリットノズル移動部53によって2つの昇降機構51bの下端部が2つのガイドレール52に沿って案内されることで、スリットノズル2は、ノズル洗浄位置Y1とステージ4上に保持される基板3に対向する位置との間を移動することができる。
【0055】
なお、図2においては、ノズル洗浄位置Y1および塗布終了位置Y3以外にも、塗布開始位置Y2が示されている。塗布開始位置Y2は、図3に例が示される基板3の塗布領域RTの、+Y側の端部に対応する塗布開始位置Y2に相当する。
【0056】
また、それぞれのリニアモータ54は、固定子54aと移動子54bとを有するACコアレスリニアモータである。固定子54aは、ステージ4のX軸方向の両側面においてY軸方向に沿って設けられている。一方で、移動子54bは、昇降機構51bの外側に設けられている。リニアモータ54は、固定子54aと移動子54bとの間に生じる磁力によって駆動する、スリットノズル移動部53の駆動源として機能する。
【0057】
また、リニアエンコーダ55はそれぞれ、スケール部55aと検出部55bとを有している。スケール部55aは、ステージ4に設けられたリニアモータ54の固定子54aの下部において、Y軸方向に沿って設けられている。一方で、検出部55bは、昇降機構51bに設けられたリニアモータ54の移動子54bのさらに外側に設けられ、かつ、スケール部55aに対向配置される。
【0058】
リニアエンコーダ55は、スケール部55aと検出部55bとの相対的な位置関係に基づいて、Y軸方向におけるスリットノズル2の吐出口21の位置を検出する。
【0059】
以上のような構成によって、スリットノズル2は、基板3が保持される保持面41の上部空間を、保持面41に対して相対的にY軸方向へ略水平に移動可能となっている。そして、塗布装置1は、スリットノズル2の吐出口21から塗布液を吐出しながらスリットノズル2を上記のように相対移動させることで、保持面41で保持された基板3の上面31に塗布層を形成することができる。
【0060】
なお、基板3のそれぞれの辺の端部から所定の幅の領域(額縁状の領域)は、塗布液の塗布対象とならない非塗布領域となっている。そして、基板3のうち、非塗布領域を除く矩形領域が、塗布液が塗布されるべき領域である塗布領域RTとなっている(図3を参照)。
【0061】
このため、スリットノズル2の移動可能な区間のうち、基板3の塗布領域RTのY軸方向の範囲に対応する、塗布開始位置Y2(塗布領域RTの+Y側の端部)から塗布終了位置Y3(塗布領域RTの-Y側の端部)までの区間で、吐出口21から塗布液が吐出される。
【0062】
また、塗布装置1と外部搬送機構との間での基板3の受け渡し期間(すなわち、基板3の搬入搬出期間)などのステージ4上で塗布処理が行われない期間には、スリットノズル2は、基板3の保持面41から+Y側に外れる領域であるノズル調整領域100に待避され(図1に例が示される状態に相当)、スリットノズル2は、ノズル清掃装置6によってクリーニング処理を受ける。
【0063】
<ノズル清掃装置の構成について>
図5は、本実施の形態に関するノズル清掃装置の構成の例を示す側面図である。また、図6は、ノズル清掃装置に用いられるノズル清掃部材の構成の例を示す斜視図である。
【0064】
ノズル清掃装置6は、リップ部24に付着する付着物を除去する除去ユニット6Aと、除去ユニット6Aを清掃方向101(すなわち、スリットノズル2の吐出口21が延びる方向)に移動させるための駆動ユニット6Bとを有する。除去ユニット6Aは、スリットノズル2のリップ部24に沿う清掃方向101へノズル清掃部材61を伴って移動することで、リップ部24に付着する付着物を除去する。
【0065】
ここで、駆動ユニット6Bは、除去ユニット6AをX軸方向へ往復移動させる(すなわち、清掃方向101の方向およびその反対方向に移動させる)ことが可能である。また、除去ユニット6Aによる除去対象となる付着物としては、スリットノズル2のリップ部24に付着しうる種々の物質が挙げられ、たとえば、塗布液の溶質が乾燥および固化したもの、あらかじめ吐出された塗布液自体、または、ノズル清掃装置6による清掃動作の前にスリットノズル2に対して吐出されたリンス液などがある。たとえば、塗布液がカラーフィルター用のフォトレジストである場合には、塗布液に含まれる顔料が付着物としてスリットノズル2のリップ部24に付着する。
【0066】
また、ノズル清掃装置6は、ノズル清掃部材61を洗浄する洗浄ユニット6C(図3を参照)を備える。洗浄ユニット6Cは、スリットノズル2のリップ部24に付着する付着物を拭き取って除去した後のノズル清掃部材61に洗浄液を供給することで、ノズル清掃部材61に付着している付着物を洗い流す。
【0067】
除去ユニット6Aは主として、スリットノズル2のリップ部24に対応する形状を有するノズル清掃部材61と、ノズル清掃部材61を支持する支持台62とを有する。
【0068】
リンス液が供給される場合、ノズル清掃部材61は、スリットノズル2の端部に接触しつつ摺動することによって、スリットノズル2のリップ部24からリンス液を除去する。これによって、スリットノズル2のリップ部24の付着物をリンス液とともに除去することができる。すなわち、乾燥して固化した塗布液などの付着物がリップ部24の傾斜面26に付着している場合、リンス液が付着物をある程度溶解し、さらに、当該溶解物(付着物)を含むリンス液がノズル清掃部材61によって除去される。
【0069】
図6に例が示されるように、ノズル清掃部材61は、支持台62によって支持可能なベース部201と、ベース部201の上面に配置される支持部202と、支持部202によって一体的に支持されるスクレーパー205A、スクレーパー205Bおよびスクレーパー205Cとを備える。以下では、スクレーパー205A、スクレーパー205Bおよびスクレーパー205Cを区別せずに、単に「スクレーパー205」と称する場合がある。
【0070】
スクレーパー205Aは、支持部202に支持される本体部203Aと、本体部203Aからそれぞれ連続的に延びる2つの薄板部材204Aとを有する。なお、図6では、薄板部材204Aが清掃方向101において複数配置されているが、薄板部材204Aは1つであってもよい。
【0071】
薄板部材204Aの本体部203Aと連続する側とは反対側の端面は、リップ部24の傾斜面26(たとえば、傾斜面26a)に対し、清掃方向101と交差する方向から略平行に接触する。また、薄板部材204Aの2つの主面は、略清掃方向101またはその逆方向を向く面である。
【0072】
また、薄板部材204Aの清掃方向101における厚さは、本体部203Aに近づくにつれて厚くなる。なお、薄板部材204Aの清掃方向101における厚さは、たとえば、1mm以上、かつ、2mm以下である。
【0073】
薄板部材204Aの略清掃方向101(すなわち、ノズル清掃部材61の移動方向)を向く面とリップ部24の傾斜面26(たとえば、傾斜面26a)との間のなす角は、鈍角(たとえば、120°)である。また、薄板部材204Aの清掃方向101を向く面のうちの本体部203Aと連続する部分は、あらかじめ定められた曲率半径R(たとえば、曲率半径Rが1mm以上、かつ、5mm以下)に従って湾曲する曲面である。薄板部材204Aが湾曲する曲面を有することによって、掻き取られた液の液流れ(排液)がスムーズになる。また、薄板部材204Aの先端が撓む際の強度を維持することができる。換言すれば、薄板部材204Aの強度を維持しつつ、その先端を撓ませることができる。
【0074】
スクレーパー205Bは、支持部202に支持される本体部203Bと、本体部203Bからそれぞれ連続的に延びる2つの薄板部材204Bとを有する。なお、図6では、薄板部材204Bが清掃方向101において複数配置されているが、薄板部材204Bは1つであってもよい。
【0075】
薄板部材204Bの本体部203Bと連続する側とは反対側の端面は、リップ部24の反対側の傾斜面26(たとえば、傾斜面26b)に対し、清掃方向101と交差する方向から略平行に接触する。また、薄板部材204Bの2つの主面は、略清掃方向101またはその逆方向を向く面である。
【0076】
また、薄板部材204Bの清掃方向101における厚さは、本体部203Bに近づくにつれて厚くなる。なお、薄板部材204Bの清掃方向101における厚さは、たとえば、1mm以上、かつ、2mm以下である。
【0077】
薄板部材204Bの略清掃方向101を向く面とリップ部24の反対側の傾斜面26(たとえば、傾斜面26b)との間のなす角は、鈍角(たとえば、120°)である。また、薄板部材204Bの清掃方向101を向く面のうちの本体部203Bと連続する部分は、あらかじめ定められた曲率半径R(たとえば、曲率半径Rが1mm以上、かつ、5mm以下)に従って湾曲する曲面である。薄板部材204Bが湾曲する曲面を有することによって、掻き取られた液の液流れ(排液)がスムーズになる。また、薄板部材204Bの先端が撓む際の強度を維持することができる。換言すれば、薄板部材204Bの強度を維持しつつ、その先端を撓ませることができる。
【0078】
スクレーパー205Cは、支持部202に支持される本体部203Cと、本体部203Cからそれぞれ連続的に延びる3つの薄板部材204Cとを有する。なお、図6では、薄板部材204Cが清掃方向101において複数配置されているが、薄板部材204Cは1つであってもよい。
【0079】
薄板部材204Cの本体部203Cと連続する側とは反対側の端面は、リップ部24の先端面25に対し、清掃方向101と交差する方向から略平行に接触する。また、薄板部材204Cの2つの主面は、略清掃方向101またはその逆方向を向く面である。
【0080】
また、薄板部材204Cの清掃方向101における厚さは、本体部203Cに近づくにつれて厚くなる。なお、薄板部材204Cの清掃方向101における厚さは、たとえば、1mm以上、かつ、2mm以下である。
【0081】
薄板部材204Cの略清掃方向101を向く面とリップ部24の反対側の傾斜面26(たとえば、傾斜面26b)との間のなす角は、鈍角(たとえば、120°)である。また、薄板部材204Cの清掃方向101を向く面のうちの本体部203Cと連続する部分は、あらかじめ定められた曲率半径R(たとえば、曲率半径Rが1mm以上、かつ、5mm以下)に従って湾曲する曲面である。薄板部材204Cが湾曲する曲面を有することによって、掻き取られた液の液流れ(排液)がスムーズになる。また、薄板部材204Cの先端が撓む際の強度を維持することができる。換言すれば、薄板部材204Cの強度を維持しつつ、その先端を撓ませることができる。
【0082】
また、複数備えられるうちの少なくとも1つの薄板部材204Cは、薄板部材204Aおよび薄板部材204Bよりも清掃方向101の上流側(すなわち、清掃方向101に進む除去ユニット6Aにおける後方側)に位置する。また、薄板部材204Cの清掃方向101と交差する方向における幅は、本体部203Cから離れるにつれて狭くなる。
【0083】
それぞれのスクレーパー205は、たとえば、樹脂製のPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)またはPET(ポリエチレンテレフタレート)などで形成される。または、それぞれのスクレーパー205は、たとえば、ロックウェル硬度R110以上、かつ、R130以下であり、望ましくは、ロックウェル硬度R120である。または、それぞれのスクレーパー205は、曲げ強度30以上、かつ、50以下であり、望ましくは、曲げ強度41である。
【0084】
支持部202は、本体部203A、本体部203Bおよび本体部203Cの間の相対的な位置関係が固定されるように支持するが、本体部203A、本体部203Bおよび本体部203Cのそれぞれは、支持部202に対する位置が調整可能である。支持部202が本体部203A、本体部203Bおよび本体部203Cを一体的に支持する場合には、複数のスクレーパー205の位置調整を同時に行うことができるため、位置調整が簡素化する。
【0085】
特に、本体部203Aおよび本体部203Bは、支持部202にネジおよびボルトなどを介して連結され、かつ、支持部202に対してY軸方向に揺動可能に支持される。
【0086】
上記のような構成であるノズル清掃部材61は、ボルトなどによって支持台62に着脱自在に固定される。
【0087】
図5に示される支持台62は、ノズル清掃部材61のベース部201の下方に土台62Aを有する。そして、ノズル清掃部材61のベース部201は土台62Aによって昇降可能に支持されている。すなわち、支持台62では、土台62Aの上面からZ軸方向に延びて設けられたガイドレール62Bと、土台62Aとベース部201との間に設けられた付勢部材62C(たとえば、圧縮バネ)とが設けられている。
【0088】
そして、ガイドレール62Bがベース部201の移動をZ軸方向に案内しつつ、付勢部材62Cが土台62Aに対してベース部201を上方へ付勢する。そのため、ベース部201を含むノズル清掃部材61は、付勢部材62Cの付勢力により上方へ付勢される。
【0089】
また、支持台62の土台62Aは、駆動ユニット6Bに取り付けられている。駆動ユニット6Bは、X軸方向においてスリットノズル2の両外側に配置された一対のローラ651Aおよびローラ651Bと、ローラ651Aおよびローラ651Bに掛け渡された無端ベルト652とを有する。そして、無端ベルト652の上面には、支持台62の土台62Aが取り付けられている。
【0090】
このように構成された駆動ユニット6Bは、ローラ651Aおよびローラ651Bを回転させて無端ベルト652の上面をX軸方向へ駆動して、支持台62に伴ってノズル清掃部材61をX軸方向(具体的には、清掃方向101)へ移動させる。
【0091】
そして、以上のように構成されたノズル清掃装置6は、ノズル洗浄位置Y1に位置するスリットノズル2のリップ部24にノズル清掃部材61を下方から近接させつつノズル清掃部材61を清掃方向101に移動させることで、スリットノズル2のリップ部24をクリーニングする。
【0092】
<ノズル清掃装置の動作について>
図7は、ノズル清掃装置が行うクリーニング処理の例を示すフローチャートである。図7のフローチャートは、制御部8が塗布装置1のそれぞれの作動部を制御することによって実行される。
【0093】
まず、駆動ユニット6Bによる駆動によって、除去ユニット6Aが清掃開始位置P1に移動する(図7のステップST101)。清掃開始位置P1は、スリットノズル2のリップ部24の清掃方向101の上流端部20Aに対応して設定されており、除去ユニット6Aが清掃開始位置P1に位置する状態において、ノズル清掃部材61は、リップ部24の上流端部20Aに下方から対向する(図5と同様の位置)。
【0094】
なお、吐出口21はX軸方向においてスリットノズル2のリップ部24の全長より短いため、スリットノズル2のX軸方向の両端、すなわち、清掃方向101の上流端部20Aおよび下流端部20Bのそれぞれでは吐出口21が開口しない。すなわち、ステップST101では、スリットノズル2のリップ部24のうち、吐出口21よりも清掃方向101の上流側の上流端部20Aにノズル清掃部材61が対向する。
【0095】
また、ステップST101においては、スリットノズル2は上方位置に位置しており、リップ部24の上流端部20Aと、これに対向するノズル清掃部材61とはZ軸方向に離間している。
【0096】
清掃開始位置P1への除去ユニット6Aの移動が完了すると、次に、スリットノズル2は吐出口21からあらかじめ定められた量の塗布液を吐出する(図7のステップST102)。ここでの塗布液の吐出は、クリーニング処理に続いて実行される塗布処理の前に吐出口21の全域を塗布液で満たすことを目的としているが、当該吐出は必須ではない。
【0097】
次に、上方位置より低い下方位置へスリットノズル2が下降する(図7のステップST103)。スリットノズル2が下降を開始すると、スリットノズル2のリップ部24とノズル清掃部材61との間の間隔が狭くなり、薄板部材204Aの本体部203Aと連続する側とは反対側の端面および薄板部材204Bの本体部203Bと連続する側とは反対側の端面が、リップ部24の2つの傾斜面26に接触する。また、薄板部材204Cの本体部203Cと連続する側とは反対側の端面が、リップ部24の先端面25に接触する。
【0098】
そして、スリットノズル2はさらに下降し、付勢部材62Cの付勢力に抗してノズル清掃部材61を下方へ押し下げる。よって、付勢部材62Cの付勢力によって、薄板部材204Aおよび薄板部材204Bの端面がリップ部24の2つの傾斜面26に押し付けられる。また、付勢部材62Cの付勢力によって、薄板部材204Cの端面がリップ部24の先端面25に押し付けられる。
【0099】
続いて、駆動ユニット6Bが清掃方向101へ除去ユニット6Aを駆動することで、ノズル清掃部材61を清掃方向101へ移動させる(ステップST104)。
【0100】
リップ部24に対して薄板部材204A、薄板部材204Bおよび薄板部材204Cのそれぞれの端面が接触しながら清掃方向101に移動するノズル清掃部材61は、スリットノズル2の吐出口21から下方に吐出された塗布液を掻き取って、吐出口21を満たす塗布液の下部を清掃方向101に沿って均す。
【0101】
そして、除去ユニット6Aが清掃終了位置P2に到達して、ノズル清掃部材61がスリットノズル2よりも清掃方向101の下流側に移動すると、駆動ユニット6Bが除去ユニット6Aを停止させる(ステップST105)。
【0102】
図8は、上記の工程のうちのステップST104における、傾斜面26aと薄板部材204Aとが接触して付着物(たとえば、スリットノズル2に付着していて乾燥固化した後の塗布液が、潤滑用の塗布液に溶解したもの)を除去する場合の詳細を示す図である。なお、薄板部材204Bおよび薄板部材204Cがリップ部24と接触する態様もほぼ同様である。
【0103】
図8に例が示されるように、薄板部材204Aの本体部203Aと連続する側とは反対側の端面214Aは、リップ部24の傾斜面26aに対し、清掃方向101と交差する方向101Aから略平行に接触する。
【0104】
また、薄板部材204Aの清掃方向101における厚さは、本体部203Aに近づくにつれて厚くなる。特に、薄板部材204Aの清掃方向101を向く面224Aのうちの本体部203Aと連続する部分の面234Aは、あらかじめ定められた曲率半径Rに従って湾曲する曲面である。また、面224Aと傾斜面26aとの間のなす角θは、鈍角である。
【0105】
上記のように傾斜面26aと薄板部材204Aとが接触した状態でノズル清掃部材61が清掃方向101に移動すると、スリットノズル2のリップ部24に付着している付着物300が薄板部材204Aに掻き取られて除去される。
【0106】
この際、薄板部材204Aの清掃方向101における厚さは端面214Aの側で薄くなっているため、薄板部材204Aは、硬質の材料で形成されているにも関わらず多少湾曲する。一方で、薄板部材204Aの清掃方向101における厚さは、本体部203Aと連続する側では厚くなっているため、薄板部材204Aの強度の低下も抑制される。よって、薄板部材204Aは、摺動による摩耗を抑制しつつ、スリットノズル2のリップ部24の形状に応じて変形し、付着物300を効果的に掻き取ることができる。また、薄板部材204Aによれば、スリットノズル2のリップ部24における損傷を抑制することもできる。
【0107】
また、面224Aと傾斜面26aとの間のなす角θが鈍角であるため、付着物300はスムーズにスクレーパー205Aの薄板部材204Aの側から本体部203Aの側へ流れる。よって、排液性が向上する。
【0108】
また、面234Aがあらかじめ定められた曲率半径Rに従って湾曲しているため、掻き取られた付着物300が薄板部材204Aの根元部分(すなわち、薄板部材204Aと本体部203Aとが連続する部分)に溜まることを抑制することができ、掻き取られた付着物300をスムーズに流すことができる。よって、スクレーパー205A自体の汚れも抑制され洗浄も容易となる。
【0109】
図9は、上記の工程のうちのステップST104における、リップ部24と3つの薄板部材とが接触する態様を示す図である。
【0110】
図9に例が示されるように、リップ部24の2つの傾斜面26それぞれに対応するスクレーパー205Aおよびスクレーパー205Bが接触し、かつ、リップ部24の先端面25にスクレーパー205Cが接触している。
【0111】
また、スクレーパー205C(具体的には薄板部材)の清掃方向101と交差する方向における幅は、本体部側から離れるにつれて狭くなる。なお、スクレーパー205C(具体的には薄板部材)の先端部の幅は、先端面25に設けられた吐出口の幅よりも広いものとする。
【0112】
この場合、清掃方向101に沿う方向から見ると、スクレーパー205Cがスクレーパー205Aおよびスクレーパー205Bと一部重なって配置されるが、これらのスクレーパー205は清掃方向101においては配置がずれているため、互いに接触してはいない。
【0113】
ここで、塗布液の掻き取り不良を抑制するために、スクレーパー205の、リップ部24と接触する端面の幅D1、幅D2および幅D3の少なくとも1つを、対応するリップ部24の幅よりも広くしてもよい。具体的には、スクレーパー205Aの端面の幅D1を、スクレーパー205Aが接触するリップ部24の傾斜面26の幅よりも広くする、スクレーパー205Bの端面の幅D2を、スクレーパー205Bが接触するリップ部24の傾斜面26の幅よりも広くする、または、スクレーパー205Cの端面の幅D3を、スクレーパー205Cが接触するリップ部24の先端面25の幅よりも広くすることができる。
【0114】
<第2の実施の形態>
以下、本実施の形態に関する塗布装置、ノズル清掃装置、スクレーパー、および、ノズル清掃方法について説明する。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態で説明された構成要素と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、その詳細な説明については適宜省略するものとする。
【0115】
<ノズル清掃装置の構成について>
図10は、ノズル清掃装置に用いられるノズル清掃部材の構成の変形例を示す斜視図である。図10に例が示されるように、ノズル清掃部材61Aは、ベース部201と、支持部202と、スクレーパー205A、スクレーパー205Bおよびスクレーパー205Cと、リンスノズル700とを備える。
【0116】
リンスノズル700は、ベース部201の下方における図示しないリンス液供給源から供給されるリンス液を、スリットノズル2へ供給する。
【0117】
<ノズル清掃装置の動作について>
図11は、ノズル清掃装置が行うクリーニング処理の例を示すフローチャートである。図11のフローチャートは、制御部8が塗布装置のそれぞれの作動部を制御することによって実行される。
【0118】
まず、駆動ユニット6Bによる駆動によって、除去ユニット6Aが清掃開始位置P1に移動する(図11のステップST101)。清掃開始位置P1は、スリットノズル2のリップ部24の清掃方向101の上流端部20Aに対応して設定されており、除去ユニット6Aが清掃開始位置P1に位置する状態において、ノズル清掃部材61は、リップ部24の上流端部20Aに下方から対向する(図5と同様の位置)。
【0119】
なお、吐出口21はX軸方向においてスリットノズル2のリップ部24の全長より短いため、スリットノズル2のX軸方向の両端、すなわち、清掃方向101の上流端部20Aおよび下流端部20Bのそれぞれでは吐出口21が開口しない。すなわち、ステップST101では、スリットノズル2のリップ部24のうち、吐出口21よりも清掃方向101の上流側の上流端部20Aにノズル清掃部材61が対向する。
【0120】
また、ステップST101においては、スリットノズル2は上方位置に位置しており、リップ部24の上流端部20Aと、これに対向するノズル清掃部材61とはZ軸方向に離間している。
【0121】
清掃開始位置P1への除去ユニット6Aの移動が完了すると、次に、上方位置より低い下方位置へスリットノズル2が下降する(図11のステップST103)。スリットノズル2が下降を開始すると、スリットノズル2のリップ部24とノズル清掃部材61との間の間隔が狭くなり、薄板部材204Aの本体部203Aと連続する側とは反対側の端面および薄板部材204Bの本体部203Bと連続する側とは反対側の端面が、リップ部24の2つの傾斜面26に接触する。また、薄板部材204Cの本体部203Cと連続する側とは反対側の端面が、リップ部24の先端面25に接触する。
【0122】
そして、スリットノズル2はさらに下降し、付勢部材62Cの付勢力に抗してノズル清掃部材61を下方へ押し下げる。よって、付勢部材62Cの付勢力によって、薄板部材204Aおよび薄板部材204Bの端面がリップ部24の2つの傾斜面26に押し付けられる。また、付勢部材62Cの付勢力によって、薄板部材204Cの端面がリップ部24の先端面25に押し付けられる。
【0123】
スリットノズル2の下降が完了すると、図示しないリンス液供給源からスリットノズル2のリップ部24とノズル清掃部材61との間へリンス液が供給される(ステップST106)。リンス液の単位時間あたりの供給量は、リップ部24の先端面25よりも上方にリンス液の液面が維持されてリップ部24の傾斜面26にリンス液が付着する程度が好ましい。なお、リンス液としては種々の液体を利用でき、たとえば、塗布液を組成する溶媒であってもよい。この場合、溶媒であるリンス液に溶質を溶かした溶液が塗布液となる。
【0124】
続いて、駆動ユニット6Bが清掃方向101へ除去ユニット6Aを駆動することで、ノズル清掃部材61を清掃方向101へ移動させる(ステップST104)。ノズル清掃部材61の移動中は、リップ部24とノズル清掃部材61との間へリンス液の供給が継続されている。
【0125】
リップ部24に対して薄板部材204A、薄板部材204Bおよび薄板部材204Cのそれぞれの端面が接触しながら清掃方向101に移動するノズル清掃部材61は、付着物(たとえば、スリットノズル2に付着していて乾燥固化した後の塗布液が、潤滑用のリンス液に溶解したもの)をリップ部24の傾斜面26および先端面25から除去する。
【0126】
そして、除去ユニット6Aが清掃終了位置P2に到達して、ノズル清掃部材61がスリットノズル2よりも清掃方向101の下流側に移動すると、駆動ユニット6Bが除去ユニット6Aを停止させる(ステップST105)。また、リンス液の供給も停止される(ステップST107)。
【0127】
<以上に記載された実施の形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された実施の形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。
【0128】
以上に記載された実施の形態によれば、ノズル清掃装置6は、ノズル清掃部材61を有する除去ユニット6Aと、移動機構とを備える。ここで、移動機構は、たとえば、駆動ユニット6Bに対応するものである。ノズル清掃部材61は、スリットノズル2の端部に接触可能である。駆動ユニット6Bは、ノズル清掃部材61をスリットノズル2の端部に接触させながら、スリットノズル2の吐出口21が延びる方向である第1の方向に沿ってノズル清掃部材61を移動させる。ここで、第1の方向は、たとえば、清掃方向101およびその反対方向に対応するものである。ノズル清掃部材61は、少なくとも1つの第1のスクレーパーと、少なくとも1つの第2のスクレーパーと、少なくとも1つの第3のスクレーパーと、支持部202とを備える。ここで、第1のスクレーパーは、たとえば、スクレーパー205Aに対応するものである。また、第2のスクレーパーは、たとえば、スクレーパー205Bに対応するものである。また、第3のスクレーパーは、たとえば、スクレーパー205Cに対応するものである。スクレーパー205Aは、第1の本体部と、第1の薄板部材とを備える。ここで、第1の本体部は、たとえば、本体部203Aに対応するものである。また、第1の薄板部材は、たとえば、薄板部材204Aに対応するものである。薄板部材204Aは、本体部203Aから延びる。また、薄板部材204Aは、第1の方向と交差する方向である第2の方向からスリットノズル2の端部の第1の側面に接触可能である。ここで、第2の方向は、たとえば、方向101Aに対応するものである。また、第1の側面は、たとえば、傾斜面26aなどに対応するものである。スクレーパー205Bは、第2の本体部と、第2の薄板部材とを備える。ここで、第2の本体部は、たとえば、本体部203Bに対応するものである。また、第2の薄板部材は、たとえば、薄板部材204Bに対応するものである。薄板部材204Bは、本体部203Bから延びる。また、薄板部材204Bは、第2の方向からスリットノズル2の端部の第1の側面とは反対側の第2の側面に接触可能である。ここで、第2の側面は、たとえば、傾斜面26bなどに対応するものである。スクレーパー205Cは、第3の本体部と、第3の薄板部材とを備える。ここで、第3の本体部は、たとえば、本体部203Cに対応するものである。また、第3の薄板部材は、たとえば、薄板部材204Cに対応するものである。薄板部材204Cは、本体部203Cから延びる。また、薄板部材204Cは、第2の方向からスリットノズル2の端部の下面(先端面25)に接触可能である。支持部202は、スクレーパー205A、スクレーパー205Bおよびスクレーパー205Cを支持する。
【0129】
このような構成によれば、スリットノズル2の清掃部材として硬質の材料を用いることで摺動による摩耗を抑制する場合であっても、それぞれの本体部から延びる薄板部材によってスリットノズル2の吐出口21に対する追従性の低下を抑制することができる。また、具体的には、スクレーパー205A、スクレーパー205Bおよびスクレーパー205Cのそれぞれがスリットノズル2の吐出口21に接触しつつ摺動することによって吐出口21の周囲部分における付着物を除去するため、スリットノズル2のリップ部24の形状が変更される場合であっても、それぞれのスクレーパーの支持部202に対する位置を調整することによって、リップ部24の形状に柔軟に対応して付着物を除去することができる。
【0130】
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0131】
また、以上に記載された実施の形態によれば、薄板部材204Aの厚さ、薄板部材204Bの厚さおよび薄板部材204Cの厚さのうちの少なくとも1つは、対応する本体部203A、本体部203Bまたは本体部203Cに近づくにつれて厚くなる。このような構成によれば、薄板部材の清掃方向101における厚さは端面の側で相対的に薄くなっているため、薄板部材は多少湾曲する。一方で、薄板部材の清掃方向101における厚さは、本体部と連続する側では相対的に厚くなっているため、薄板部材の強度の低下も抑制される。よって、薄板部材は、摺動による摩耗を抑制しつつ、スリットノズル2のリップ部24の形状に応じて変形し、付着物を効果的に掻き取ることができる。
【0132】
また、以上に記載された実施の形態によれば、薄板部材204Aの厚さ、薄板部材204Bの厚さおよび薄板部材204Cの厚さのうちの少なくとも1つは、対応する本体部203A、本体部203Bまたは本体部203Cに近づくにつれて、1mm以上かつ5mm以下の曲率半径にしたがって厚くなる。このような構成によれば、掻き取られた付着物が薄板部材の根元部分に溜まることを抑制することができ、掻き取られた付着物をスムーズに流すことができる。よって、スクレーパー自体の汚れも抑制され洗浄も容易となる。また、曲率半径Rを調整することによって、薄板部材の強度と薄板部材の湾曲度とを調整することができる。具体的には、曲率半径Rが大きいと薄板部材の強度が高まり、曲率半径Rが小さいと、薄板部材の湾曲度が高まる。
【0133】
また、以上に記載された実施の形態によれば、薄板部材204A、薄板部材204Bおよび薄板部材204Cのうちの少なくとも1つは、ロックウェル硬度R110以上かつR130以下であり、かつ、曲げ強度30以上かつ50以下である。このような構成によれば、よって、薄板部材は、摺動による摩耗を抑制しつつ、スリットノズル2のリップ部24の形状に応じて変形し、付着物を効果的に掻き取ることができる。
【0134】
また、以上に記載された実施の形態によれば、第1の方向において、スクレーパー205A、スクレーパー205Bおよびスクレーパー205Cのうちの少なくとも1つを複数備える。このような構成によれば、除去ユニット6Aの1回の摺動で除去可能な付着物の量を増大させることができる。
【0135】
また、以上に記載された実施の形態によれば、薄板部材204A、薄板部材204Bおよび薄板部材204Cのうちの少なくとも1つの、ノズル清掃部材61が移動する方向を向く面とスリットノズル2の端部とのなす角が鈍角である。このような構成によれば、付着物はスムーズに薄板部材の側から本体部の側へ流れるため、排液性が向上する。
【0136】
また、以上に記載された実施の形態によれば、薄板部材204Cは、薄板部材204Aおよび薄板部材204Bよりも、ノズル清掃部材61が移動する方向における上流側に位置する。このような構成によれば、薄板部材204Aおよび薄板部材204Bによってリップ部24の先端面25へ押し流された付着物についても、清掃方向101に進む除去ユニット6Aの後方に位置する薄板部材204Cによって効果的に除去することができる。
【0137】
また、以上に記載された実施の形態によれば、塗布装置1は、スリット状の吐出口21から塗布液を吐出するスリットノズル2と、上記のノズル清掃装置とを備える。このような構成によれば、スリットノズル2の清掃部材として硬質の材料を用いることで摺動による摩耗を抑制する場合であっても、それぞれの本体部から延びる薄板部材によってスリットノズル2の吐出口21に対する追従性の低下を抑制することができる。
【0138】
以上に記載された実施の形態によれば、ノズル清掃方法において、スリットノズル2の端部に接触可能なノズル清掃部材61をスリットノズル2の端部に接触させながら、スリットノズル2の吐出口21が延びる方向である第1の方向に沿ってノズル清掃部材61を移動させる工程を備える。ここで、ノズル清掃部材61は、少なくとも1つのスクレーパー205Aと、少なくとも1つのスクレーパー205Bと、少なくとも1つのスクレーパー205Cと、支持部202とを備える。
【0139】
このような構成によれば、スリットノズル2の清掃部材として硬質の材料を用いることで摺動による摩耗を抑制する場合であっても、それぞれの本体部から延びる薄板部材によってスリットノズル2の吐出口21に対する追従性の低下を抑制することができる。
【0140】
なお、特段の制限がない場合には、それぞれの処理が行われる順序は変更することができる。
【0141】
また、以上に記載された実施の形態によれば、スクレーパー205Cは、本体部203Cと、本体部203Cから延び、かつ、吐出口21が延びる方向と交差する方向からスリットノズル2の端部に接触可能な薄板部材204Cとを備える。このような構成によれば、スリットノズル2の清掃部材として硬質の材料を用いることで摺動による摩耗を抑制する場合であっても、本体部203Cから延びる薄板部材204Cによってスリットノズル2の吐出口21に対する追従性の低下を抑制することができる。
【0142】
また、以上に記載された実施の形態によれば、薄板部材204Cの吐出口21が延びる方向と交差する方向における幅は、本体部203Cから離れるにつれて狭くなる。このような構成によれば、薄板部材204Cが薄板部材204Aおよび薄板部材204Bと干渉することを避けつつ、本体部203Cと連続する側で薄板部材204Cの幅を広くすれば薄板部材204Cの強度の低下を抑制することができる。
【0143】
<以上に記載された実施の形態の変形例について>
上記の実施の形態では、薄板部材204A、薄板部材204Bおよび薄板部材204Cが、対応する本体部に近づくにつれて厚さが厚くなる旨が記載されたが、対応する本体部に近づくにつれて厚さが変化しない薄板部材が含まれていてもよい。
【0144】
また、上記の実施の形態では、薄板部材204A、薄板部材204Bおよび薄板部材204Cが、対応する本体部に近づくにつれてあらかじめ定められた曲率半径Rにしたがって厚さが厚くなる旨が記載されたが、対応する本体部に近づくにつれて厚さが変化しない薄板部材が含まれていてもよい。
【0145】
また、上記の実施の形態では、薄板部材204A、薄板部材204Bおよび薄板部材204Cの清掃方向101を向く面とリップ部24とのなす角が鈍角である旨が記載されたが、当該角が鈍角でない薄板部材が含まれていてもよい。
【0146】
また、上記の実施の形態では、薄板部材204A、薄板部材204Bおよび薄板部材204Cが一体的に支持されて用いられたが、薄板部材204A、薄板部材204Bおよび薄板部材204Cのうちのいずれか1つが備えられる場合であってもよい。
【0147】
また、上記の実施の形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、本願明細書に記載されたものに限られることはないものとする。
【0148】
したがって、例が示されていない無数の変形例、および、均等物が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【0149】
また、以上に記載された実施の形態において、特に指定されずに材料名などが記載された場合は、矛盾が生じない限り、当該材料に他の添加物が含まれた、たとえば、合金などが含まれるものとする。
【符号の説明】
【0150】
1 塗布装置
2 スリットノズル
3 基板
4 ステージ
5 塗布処理部
6 ノズル清掃装置
6A 除去ユニット
6B 駆動ユニット
6C 洗浄ユニット
8 制御部
20A 上流端部
20B 下流端部
21 吐出口
22 基部
23 内部流路
24 リップ部
25 先端面
26,26a,26b 傾斜面
31 上面
41 保持面
51 ノズル支持体
51a 固定部材
51b 昇降機構
52,62B ガイドレール
53 スリットノズル移動部
54 リニアモータ
54a 固定子
54b 移動子
55 リニアエンコーダ
55a スケール部
55b 検出部
61 ノズル清掃部材
62 支持台
62A 土台
62C 付勢部材
100 ノズル調整領域
101 清掃方向
101A 方向
201 ベース部
202 支持部
203A,203B,203C 本体部
204A,204B,204C 薄板部材
205,205A,205B,205C スクレーパー
214A 端面
224A,234A 面
300 付着物
651A,651B ローラ
652 無端ベルト
700 リンスノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11