(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】セラミックヒータ
(51)【国際特許分類】
G01K 7/02 20210101AFI20221220BHJP
H05B 3/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G01K7/02 Z
H05B3/02 Z
(21)【出願番号】P 2020102174
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 諒平
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-128694(JP,A)
【文献】特開平05-052665(JP,A)
【文献】国際公開第2012/039453(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/162000(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0259090(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/14
G01K 7/02
H05B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ載置面を有する円盤状のセラミックプレートと、
前記セラミックプレートのうち前記ウエハ載置面とは反対側の裏面に接合された筒状シャフトと、
前記セラミックプレートの内周部に埋設された内周側抵抗発熱体と、
前記セラミックプレートの外周部に埋設された外周側抵抗発熱体と、
前記内周側抵抗発熱体の一対の端子及び前記外周側抵抗発熱体の一対の端子を含む付帯部品と、
前記セラミックプレートの前記裏面のうち前記筒状シャフトの内側領域の起点から前記セラミックプレートの外周部の終端位置に至る長穴と、
前記長穴の入口部分である長溝と、
直線状の第1管部と、前記第1管部に繋がり、前記第1管部の向きを変換するよう設けられた湾曲部を有する第2管部と、を備えた熱電対ガイドであって、前記湾曲部のうち少なくとも先端から所定長さまでの先端側部分の外径は、前記第1管部の外径よりも小さく、前記長溝に前記湾曲部の前記先端側部分が配置され
た熱電対ガイドと、
を備えたセラミックヒータ。
【請求項2】
前記長穴は、熱電対を挿入する熱電対挿入用長穴である、
請求項
1に記載のセラミックヒータ。
【請求項3】
前記長溝の長さは、前記熱電対ガイドの前記湾曲部のうち前記長溝に配置される前記先端側部分の長さ以上となるように定められている、
請求項
1又は
2に記載のセラミックヒータ。
【請求項4】
請求項
1~
3のいずれか1項に記載のセラミックヒータであって、
前記熱電対ガイド及び前記長穴に挿入された熱電対
を備えたセラミックヒータ。
【請求項5】
前記第2管部は、前記第1管部に溶接されている、
請求項1
~4のいずれか1項に記載の
セラミックヒータ。
【請求項6】
前記湾曲部のうち少なくとも前記先端側部分の内径は、前記第1管部の内径よりも小さい、
請求項1
~5のいずれか1項に記載の
セラミックヒータ。
【請求項7】
前記第2管部の全体の外径は、前記第1管部の外径よりも小さい、
請求項1~
6のいずれか1項に記載の
セラミックヒータ。
【請求項8】
前記第2管部の全体の内径は、前記第1管部の内径よりも小さい、
請求項
7に記載の
セラミックヒータ。
【請求項9】
前記湾曲部の曲率半径は、20mm以上50mm以下であり、
前記湾曲部のストローク長さは、20mm以上50mm以下であり、
前記湾曲部は、前記第1管部の向きを50°以上90°以下に変換するように設けられている、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の
セラミックヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電対ガイド及びセラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックヒータとしては、ウエハ載置面を有する円盤状のセラミックプレートの内周側と外周側にそれぞれ独立に抵抗発熱体を埋め込んだ2ゾーンヒータと呼ばれるものが知られている。例えば特許文献1には、
図9に示すシャフト付きセラミックヒータ410が開示されている。このシャフト付きセラミックヒータ410は、セラミックプレート420の外周側の温度を外周側熱電対450で測定する。熱電対ガイド432は、筒状部材であり、ストレートシャフト440の内部で下方から上方にまっすぐ延びたあと円弧状に曲げられて90°方向転換している。この熱電対ガイド432は、セラミックプレート420の裏面のうちストレートシャフト440に囲まれた領域に設けられたスリット426aに取り付けられている。スリット426aは、熱電対通路426の入口部分をなす。外周側熱電対450は、熱電対ガイド432の筒内に挿入されて熱電対通路426の終端位置に達している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/039453号パンフレット(
図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱電対ガイド432は、1本の筒状部材を円弧状に曲げることにより、直線管部432aと湾曲管部432bとを形成したものであるため、以下の問題があった。すなわち、湾曲管部432bを細くすると、直線管部432aも細くなってしまうため、熱電対ガイド432の剛性が不足するという問題が生じた。一方、直線管部432aを太くすると、湾曲管部432bも太くなってしまうため、スリット426aの幅を大きくせざるを得ないという問題が生じた。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、熱電対ガイドの剛性を保持しつつ熱電対通路の入口部分の幅を狭くすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱電対ガイドは、
直線状の第1管部と、
前記第1管部に繋がり、前記第1管部の向きを変換するよう設けられた湾曲部を有する第2管部と、
を備えた熱電対ガイドであって、
前記湾曲部のうち少なくとも先端から所定長さまでの先端側部分の外径は、前記第1管部の外径よりも小さい、
ものである。
【0007】
この熱電対ガイドは、以下のように用いられる。すなわち、抵抗発熱体が内蔵されたプレートの熱電対通路の入口部分に熱電対ガイドの先端側部分を配置し、細長い熱電対を熱電対ガイドの直線状の第1管部及び湾曲部を有する第2管部に通し、熱電対を熱電対通路へ導く。この熱電対ガイドは、第2管部が有する湾曲部のうち少なくとも先端から所定長さまでの先端側部分の外径が第1管部の外径よりも小さい。この先端側部分は熱電対通路に配置される部分であり、その外径が第1管部の外径よりも小さいため、熱電対通路の入口部分の幅を小さくすることができる。また、熱電対ガイドの第1管部の外径は先端側部分の外径よりも大きい。そのため、第1管部の剛性を比較的高く保持することができる。
【0008】
本発明の熱電対ガイドにおいて、前記第2管部は、前記第1管部に溶接されていてもよい。こうすれば、第2管部と第1管部とを別々に用意しておき、両者を溶接すれば本発明の熱電対ガイドを得ることができる。
【0009】
本発明の熱電対ガイドにおいて、前記湾曲部のうち少なくとも前記先端側部分の内径を、前記第1管部の内径よりも小さくしてもよい。こうすれば、先端側部分の内径が第1管部の内径と同じ場合に比べて、先端側部分の外径を第1管部の外径よりも一層小さくすることができる。また、先端側部分の外径を所定値とした場合、先端側部分の内径が小さい分、先端側部分の壁厚が厚くなるため、先端側部分の剛性を高くすることができる。
【0010】
本発明の熱電対ガイドにおいて、前記第2管部の全体の外径を、前記第1管部の外径よりも小さくしてもよい。特に、第2管部が第1管部に溶接されている場合にこの構成を採用すれば、第2管部の全体が同じ径であるため、第2管部を簡単に用意することができる。この場合、前記第2管部の全体の内径を前記第1管部の内径よりも小さくしてもよい。こうすれば、第2管部の内径が第1管部の内径と同じ場合に比べて、第2管部の外径を第1管部の外径よりも一層小さくすることができる。また、第2管部の外径を所定値とした場合、第2管部の内径が小さい分、第2管部の壁厚が厚くなるため、第2管部の剛性を高くすることができる。
【0011】
本発明の熱電対ガイドにおいて、前記湾曲部の曲率半径は、20mm以上50mm以下であり、前記湾曲部のストローク長さは、20mm以上50mm以下であり、前記湾曲部は、前記第1管部の向きを50°以上90°以下に変換するように設けられていることが好ましい。こうすれば、細長い熱電対を熱電対ガイドの第1管部及び第2管部に通したあと、熱電対を熱電対通路へスムーズに導くことができる。
【0012】
本発明のセラミックヒータは、
ウエハ載置面を有する円盤状のセラミックプレートと、
前記セラミックプレートのうち前記ウエハ載置面とは反対側の裏面に接合された筒状シャフトと、
前記セラミックプレートの内周部に埋設された内周側抵抗発熱体と、
前記セラミックプレートの外周部に埋設された外周側抵抗発熱体と、
前記内周側抵抗発熱体の一対の端子及び前記外周側抵抗発熱体の一対の端子を含む付帯部品と、
前記セラミックプレートの前記裏面のうち前記筒状シャフトの内側領域の起点から前記セラミックプレートの外周部の終端位置に至る長穴と、
前記長穴の入口部分である長溝と、
前記長溝に前記湾曲部の前記先端側部分が配置された上述したいずれかの熱電対ガイドと、
を備えたものである。
【0013】
このセラミックヒータでは、熱電対ガイドは、第2管部が有する湾曲部のうち少なくとも先端から所定長さまでの先端側部分の外径が第1管部の外径よりも小さい。この先端側部分は熱電対通路に配置される部分であり、その外径が第1管部の外径よりも小さいため、熱電対通路の入口部分の幅を小さくすることができる。また、熱電対ガイドの第1管部の外径は先端側部分の外径よりも大きい。そのため、第1管部の剛性を比較的高く保持することができる。
【0014】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記長穴は、熱電対を挿入する熱電対挿入用長穴であってもよい。こうすれば、長穴を利用して熱電対を挿入することができる。
【0015】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記長溝の長さは、前記熱電対ガイドの前記湾曲部のうち前記長溝に配置される前記先端側部分の長さ以上となるように定められていてもよい。こうすれば、熱電対ガイドをより容易に長溝に配置することができる。
【0016】
本発明のセラミックヒータは、前記熱電対ガイド及び前記長穴に挿入された熱電対を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】熱電対ガイド32の第2管部34周辺の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1はセラミックヒータ10の斜視図、
図2は
図1のA-A断面図、
図3は
図1のB-B断面図、
図4は熱電対ガイド32の正面図、
図5は熱電対ガイド32の第2管部34周辺の部分拡大図、
図6は
図3の中央部分の拡大図である。
【0019】
セラミックヒータ10は、エッチングやCVDなどの処理が施されるウエハWを加熱するために用いられるものであり、図示しない真空チャンバ内に設置される。このセラミックヒータ10は、ウエハ載置面20aを有する円盤状のセラミックプレート20と、セラミックプレート20のウエハ載置面20aとは反対側の面(裏面)20bに接合された筒状シャフト40とを備えている。
【0020】
セラミックプレート20は、窒化アルミニウムやアルミナなどに代表されるセラミック材料からなる円盤状のプレートである。セラミックプレート20の直径は特に限定されるものではないが、例えば300mm程度である。セラミックプレート20は、セラミックプレート20と同心円状の仮想境界20c(
図3参照)によって小円形の内周側ゾーンZ1と円環状の外周側ゾーンZ2とに分けられている。セラミックプレート20の内周側ゾーンZ1には内周側抵抗発熱体22が埋設され、外周側ゾーンZ2には外周側抵抗発熱体24が埋設されている。両抵抗発熱体22,24は、例えばモリブデン、タングステン又は炭化タングステンを主成分とするコイルで構成されている。セラミックプレート20は、
図2に示すように、上側プレートP1とその上側プレートP1よりも薄い下側プレートP2とを面接合することにより作製されている。
【0021】
筒状シャフト40は、セラミックプレート20と同じく窒化アルミニウム、アルミナなどのセラミックスで形成されている。筒状シャフト40は、小径部40aと大径部40bとを備えている。小径部40aは、筒状シャフト40の下端から所定の高さまでの部分であり、内径d1の筒状部である。大径部40bは、筒状シャフト40の所定の高さから拡径されたあと筒状シャフト40の上端までの部分であり、内径d2(>d1)の筒状部である。筒状シャフト40は、上端(大径部40bの端面)がセラミックプレート20に拡散接合されている。筒状シャフト40の内部空間41は、小径部40aの内径と同じ径の円筒空間41aと、その円筒空間41aの外側に大径部40bによって囲まれた環状の拡張空間41bとを有している。拡張空間41bは、後述する熱電対ガイド32の第2管部34の先端を旋回しながら入れ込むことが可能な空間となっている。
【0022】
内周側抵抗発熱体22は、
図3に示すように、一対の端子22a,22bの一方から端を発し、一筆書きの要領で複数の折り返し部で折り返されつつ内周側ゾーンZ1のほぼ全域に配線されたあと、一対の端子22a,22bの他方に至るように形成されている。一対の端子22a,22bは、シャフト内領域20d(セラミックプレート20の裏面20bのうち小径部40aの内側領域)に設けられている。一対の端子22a,22bには、それぞれ金属製(例えばNi製)の給電棒42a,42bが接合されている。
【0023】
外周側抵抗発熱体24は、
図3に示すように、一対の端子24a,24bの一方から端を発し、一筆書きの要領で複数の折り返し部で折り返されつつ外周側ゾーンZ2のほぼ全域に配線されたあと一対の端子24a,24bの他方に至るように形成されている。一対の端子24a,24bは、セラミックプレート20の裏面20bのシャフト内領域20dに設けられている。一対の端子24a,24bには、それぞれ金属製(例えばNi製)の給電棒44a,44bが接合されている。
【0024】
セラミックプレート20の内部には、
図2に示すように、外周側熱電対50を挿入するための長穴26がウエハ載置面20aと平行に設けられている。長穴26は、セラミックプレート20の裏面20bのうちシャフト内領域20dの起点26sからセラミックプレート20の外周部の所定の終端位置26eに至っている。長穴26の横幅は、
図3に示すように、終端位置26eの手前から終端位置26eに向かって徐々に細くなっている。この長穴26は、
図3及び
図5に示すように、セラミックプレート20の半径方向から外れた方向に沿って設けられている。長穴26のうち、起点26sから拡張領域20f(裏面20bのうち拡張空間41b内の領域)に至る入口部分は、熱電対ガイド32の第2管部34の先端を嵌め込むための長溝26aになっている。長溝26aは、筒状シャフト40の内部空間41に開口している。本実施形態では、長溝26aは、起点26sから拡張領域20fの外周縁まで延びている。長溝26aの長さは、熱電対ガイド32の湾曲部34cのうち長溝26aに配置される先端側部分34bの長さ以上となるように定められている。端子22a,22b,24a,24bは、シャフト内領域20dであって長溝26a以外の位置に設けられている。
【0025】
熱電対ガイド32は、ガイド穴32aを備えた金属製の筒状部材であり、
図4に示すように、直線状の第1管部33と、湾曲部34cを有する第2管部34とを備えている。第1管部33は、先端から基端までまっすぐに延びた筒状部材である。第2管部34は、1本の金属製の筒状部材に曲げ加工を施したものであり、直線部34sと湾曲部34cとを備えている。直線部34sは、第1管部33と同じ方向にまっすぐに延びている部分である。第2管部34は、直線部34sの基端で第1管部33の先端に溶接されている。湾曲部34cは、第1管部33の向きを変換するよう設けられている。具体的には、湾曲部34cは、
図5に示すように、第1管部33の軸方向に対して角度θだけ
第1管部33の向きを変換するように設けられている。第2管部34の全体(先端側部分34bを含む)の外径φo2は、第1管部33の外径φo1よりも小さい。第2管部34の全体(先端側部分34bを含む)の内径φi2は、第1管部33の内径φi1よりも小さい。
【0026】
熱電対ガイド32を製造するには、予め第1管部33と第2管部34とを別々に用意し、第1管部33の先端に第2管部34の基端を溶接する。具体的には、第1管部33の中心軸と第2管部34の中心軸とが同軸となるように位置決めしたあと溶接する。第1管部33の中心軸と第2管部34の中心軸とはできるだけ同軸となるように溶接することが好ましいが、同軸から若干ずれたとしてもガイド穴32aが溶接箇所から外部に通じない程度のズレ幅で溶接されていれば支障はない。
【0027】
湾曲部34cの曲率半径Rやストローク長さS(第2管部34の先端から第1管部33の中心軸までの水平距離)は、筒状シャフト40の内径に応じて適宜設定するのが好ましい。例えば、筒状シャフト40の小径部40aの内径が35mm以上45mm以下の場合、湾曲部34cの曲率半径Rは好ましくは20mm以上50mm以下、より好ましくは20mm以上30mm以下であり、湾曲部34cのストローク長さSは好ましくは20mm以上50mm以下、より好ましくは20mm以上30mm以下である。角度θは、50°以上90°以下が好ましく、75°以上90°以下がより好ましい。なお、
図4及び
図5では、角度θは90°の例を示した。第1管部33の外径φo1は、2.4mm以上5mm以下が好ましく、第2管部34の外径φo2は、1.9mm以上2.3mm以下が好ましい。第1管部33の内径φi1は、1.8mm以上2.5mm以下が好ましく、第2管部34の内径φi2は、1.6mm以上2.0mm以下が好ましい。
【0028】
熱電対ガイド32は、直線状の第1管部33がウエハ載置面20aに対して垂直方向になり、第2管部34の湾曲部34cによって垂直方向から水平方向に変換するように配置されている。熱電対ガイド32のガイド穴32aには、外周側熱電対50が挿通されている。第2管部34の先端は、長溝26a内に単に嵌め込まれているだけでもよいし、長溝26a内に接合又は接着されていてもよい。第1管部33は、固定されていなくてもよいし、例えば筒状シャフト40の基端(下部開口端)に固定されたセラミックヒータ10を支持する図示しない支持台などに固定又は位置決めされていてもよい。
【0029】
筒状シャフト40の内部には、
図2に示すように、内周側抵抗発熱体22の一対の端子22a,22bのそれぞれに接続される給電棒42a,42bや外周側抵抗発熱体24の一対の端子24a,24bのそれぞれに接続される給電棒44a,44bが配置されている。筒状シャフト40の内部には、セラミックプレート20の中央付近の温度を測定するための内周側熱電対48やセラミックプレート20の外周付近の温度を測定するための外周側熱電対50も配置されている。内周側熱電対48は、セラミックプレート20の裏面20bに設けられた凹部49に差し込まれ、先端の測温部48aがセラミックプレート20に接触している。凹部49は、各端子22a,22b,24a,24bや長溝26aと干渉しない位置に設けられている。外周側熱電対50は、シース熱電対であり、熱電対ガイド32のガイド穴32a及び長穴26を通過し、先端の測温部50aが長穴26の終端位置26eに達している。外周側熱電対50に用いられるシース熱電対としては、例えば直径が0.5mm以上1.5mm以下でありステンレス(SUSなど)製又はニッケル合金(インコネル(登録商標)など)製のシース熱電対が挙げられる。
【0030】
熱電対ガイド32は、セラミックヒータ10の製造工程の終盤で取り付けられる。このときの様子を
図7及び
図8に示す。
図7及び
図8に示すように、セラミックプレート20の裏面20bに筒状シャフト40を接合し、セラミックプレート20の裏面20bに露出している端子22a,22b,24a,24bのそれぞれに給電棒42a,42b,44a,44bを接合した後、熱電対ガイド32を取り付ける。本実施形態では、熱電対ガイド32の第2管部34の向きを長穴26の入口部分である長溝26aの向きに合わせたあと、熱電対ガイド32を筒状シャフト40の小径部40aに入れようとしても、長穴26およびその延長線がシャフト内領域20dに現れる距離は第2管部34の先端から第1管部33の中心軸までの水平距離より短く、第2管部34が小径部40aに引っかかるため、そのままでは熱電対ガイド32を小径部40aに入れることはできない。そのため、まず、熱電対ガイド32の第2管部34を小径部40aや給電棒42a,42b,44a,44bに干渉しない姿勢(
図7及び
図8の一点鎖線の熱電対ガイド32参照)にした後、第2管部34をセラミックプレート20の裏面20bに近づける。そして、第2管部34の先端が大径部40bの内部空間に達したあと、熱電対ガイド32を旋回させて第2管部34の先端が拡張空間41bに入るようにしながら第2管部34の先端を長溝26aに嵌め込む(
図7及び
図8の実線の熱電対ガイド32参照)。その後、熱電対ガイド32のガイド穴32aに外周側熱電対50を挿通して測温部50aを長穴26の終端位置26eに到達させる。
【0031】
次に、セラミックヒータ10の使用例について説明する。まず、図示しない真空チャンバ内にセラミックヒータ10を設置し、そのセラミックヒータ10のウエハ載置面20aにウエハWを載置する。そして、内周側熱電対48によって検出された温度が予め定められた内周側目標温度となるように内周側抵抗発熱体22に供給する電力を調整すると共に、外周側熱電対50によって検出された温度が予め定められた外周側目標温度となるように外周側抵抗発熱体24に供給する電力を調整する。これにより、ウエハWの温度が所望の温度になるように制御される。そして、真空チャンバ内を真空雰囲気もしくは減圧雰囲気になるように設定し、真空チャンバ内にプラズマを発生させ、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。
【0032】
以上説明した本実施形態のセラミックヒータ10及び熱電対ガイド32では、第2管部34の外径φo2が第1管部33の外径φo1よりも小さいため、熱電対通路の入口部分、つまり、長溝26aの幅を小さくすることができる。これにより、端子22a,22b,24a,24bや凹部49などの付帯部品を配置する領域が広がり、付帯部品の配置の自由度が高まる。また、熱電対ガイド32の第1管部33の外径φo1は第2管部34の外径φo2よりも大きいため、第1管部33の剛性を比較的高く保持することができる。また、セラミックプレート20から熱電対ガイド32を介した外部への熱伝導(熱引き)の抑制も期待される。これにより、セラミックプレート20の均熱性の改善や熱電対ガイド32を筒状シャフト40の外側で支持する部材への熱的影響の抑制が期待される。
【0033】
また、熱電対ガイド32において、第2管部34は、第1管部33に溶接されているため、第2管部34と第1管部33とを別々に用意しておき、両者を溶接すれば熱電対ガイド32を得ることができる。
【0034】
更に、熱電対ガイド32において、第2管部34の内径φi2が、第1管部33の内径φi1よりも小さいため、第2管部34の内径φi2が第1管部33の内径φi1と同じ場合に比べて、第2管部34の外径φo2を第1管部33の外径φo1よりも一層小さくすることができる。また、第2管部34の外径φo2を所定値とした場合、第2管部34の内径φi2が小さい分、第2管部34の壁厚が厚くなるため、第2管部34の剛性を高くすることができる。
【0035】
更にまた、熱電対ガイド32において、第2管部34の全体が同じ径であるため、溶接前の第2管部34を簡単に用意することができる。
【0036】
また、本実施形態のセラミックヒータ10では、長穴26は、外周側熱電対50を挿入する熱電対挿入用長穴であるため、長穴26を利用して外周側熱電対50を挿入することができる。
【0037】
更に、長穴26の入口部分である長溝26aの長さは、熱電対ガイド32の湾曲部34cのうち長溝26aに配置される先端側部分34bの長さ以上となるように定められているため、熱電対ガイド32をより容易に長溝26aに配置することができる。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上述した実施形態において、熱電対ガイド32は、第2管部34が直線部34sを備えているものとしたが、直線部34sを備えていなくてもよい。例えば、第1管部33の先端に湾曲部34cの基端が直接溶接されていてもよい。
【0040】
上述した実施形態において、熱電対ガイド32は、第2管部34の出口に繋がる先端側直線部を有していてもよい。この先端側直線部は、ウエハ載置面20aに対して水平方向に延びるように設けられる。こうすれば、よりスムーズに外周側熱電対50を長穴26に誘導することができる。また、このような先端側直線部を有する熱電対ガイド32は、長溝26aに配置される部分が長くなる。そのため、それに合わせて長溝26aの長さを設定することが好ましい。
【0041】
上述した実施形態の
図4及び
図5において、熱電対ガイド32の湾曲部34cは、第1管部
33の向きを90°変換するように(角度θが90°となるように)設けられているものとしたが、角度θは90°未満としてもよい。曲率半径Rが同じならば、角度θが小さいほどストローク長さSが短くなるため、端子22a,22b,24a,24bや凹部49などの付帯部品を配置可能な領域が広くなる。角度θは50°以上90°以下が好ましく、75°以上90°以下がより好ましい。こうすれば、細長い外周側熱電対50を熱電対ガイド32の第1管部33及び第2管部34に通したあと、外周側熱電対50を熱電対通路である長穴26へスムーズに導くことができる。
【0042】
上述した実施形態において、湾曲部34cの曲率半径Rは、20mm以上50mm以下であることが好ましい。曲率半径Rが20mm以上であれば、外周側熱電対50の挿入時に熱電対ガイド32の第1管部33及び第2管部34内で外周側熱電対50にかかる応力が比較的小さいため、外周側熱電対50を熱電対通路である長穴26にスムーズに導くことができる。また、曲率半径Rが50mm以下であれば、ストローク長さSをあまり大きくできない場合(例えば、筒状シャフト40の小径部40aの内径が35mm以上45mm以下などで比較的小さい場合)でも角度θを上述の範囲にできるため、外周側熱電対50を熱電対通路である長穴26へスムーズに導くことができる。このうち、曲率半径Rが20mm以上30mm以下では、外周側熱電対50を長穴26へよりスムーズに導くことができる点で好ましい。また、曲率半径Rが30mm以上50mm以下では、外周側熱電対50の挿入時に熱電対ガイド32の曲がり(ベンド)が小さくあるいは元に戻りやすい点で好ましい。参考として、湾曲部34cの曲率半径Rが20mm、30mm、40mm、50mmの熱電対ガイド32を備えたセラミックヒータ10を用いて外周側熱電対50をセットする実験を行った結果を、表1に示す。なお、熱電対ガイド32において、第1管部33の内径φi1は2mm、第2管部34の外径φo2は2.2mm、内径φi2は1.69mmに統一した。表1において、熱電対ガイドの曲がりの評価は、熱電対の挿入時に熱電対ガイドが曲がらなかった場合を「1」、熱電対の挿入時に熱電対ガイドが曲がったがすぐに元に戻った場合を「2」、熱電対の挿入時に熱電対ガイドが曲がったが熱電対の挿入が完了すると元に戻った場合を「3」とした。表1に示すように、曲率半径Rが20mm以上50mm以下では、熱電対ガイドの曲がりの評価は「1」「2」及び「3」のうちのいずれかであり、熱電対ガイドの曲がりが小さくあるいは元に戻りやすかった。また、曲率半径Rが30mm以上50mm以下では、熱電対ガイドの曲がりの評価は「1」又は「2」であり、熱電対ガイド32の曲がりがより小さくあるいはより元に戻りやすかった。
【0043】
【0044】
上述した実施形態において、湾曲部34cのストローク長さSは、20mm以上50mm以下であることが好ましく、20mm以上30mm以下であることがより好ましい。こうすれば、端子22a,22b,24a,24bや凹部49などの付帯部品を配置可能な領域を広く保ったまま、角度θや曲率半径Rを上述の範囲に設定できる。そのため、外周側熱電対50を長穴26へスムーズに導くことができる。
【0045】
上述した実施形態では、第2管部34は第1管部33に溶接されているものとしたが、溶接以外の冶金的接合方法(圧接や拡散接合など)で接合されていてもよい。また、接合部のない一本の管で形成されていることによって第2管部34が第1管部33に繋がっていてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、第2管部34の内径φi2は第1管部33の内径φi1よりも小さいものとしたが、第2管部34の内径φi2は第1管部33の内径φi1と同じでもよい。この場合、ガイド穴32aには第2管部34と第1管部33との繋ぎ目に段差がないようにすることができるため、外周側熱電対50をスムーズに通過させることができる。
【0047】
上述した実施形態では、第2管部34の全体の外径φo2が第1管部33の外径φo1よりも小さいものとしたが、第2管部34のうち少なくとも先端側部分34bの外径が第1管部33の外径φo1よりも小さければよい。例えば、第2管部34のうち先端側部分34b以外の部分の外径が第1管部33の外径φo1と同じであってもよい。長溝26aに嵌め込まれる先端側部分34bの外径が第1管部33の外径φo1よりも小さければ、長溝26aの幅を小さくすることができる。
【0048】
上述した実施形態では、第2管部34全体の内径φi2が第1管部33の内径φi1よりも小さいものとしたが、第2管部34のうち先端側部分34bの内径が第1管部33の内径φi1よりも小さければよい。例えば、第2管部34のうち先端側部分34b以外の部分の内径が第1管部33の内径φi1と同じでもよい。この場合でも、先端側部分34bの内径が第1管部33の内径φi1と同じ場合に比べて、先端側部分34bの外径を第1管部33の外径φo1よりも一層小さくすることができる。また、先端側部分34bの外径を所定値とした場合、先端側部分34bの内径が小さい分、先端側部分34bの壁厚が厚くなるため、先端側部分34bの剛性を高くすることができる。
【0049】
上述した実施形態において、第1管部33の外径φo1は、2.4mm以上5mm以下が好ましく、第2管部34の外径φo2は、1.9mm以上2.3mm以下が好ましい。第1管部33の内径φi1は、1.8mm以上2.2mm以下が好ましく、第2管部34の内径φi2は、1.5mm以上1.9mm以下が好ましい。第1管部33の壁厚は0.15mm以上1.5mm以下が好ましい。こうすれば、第1管部33の剛性を比較的高くすることができる。第2管部34の壁厚は0.15mm以上0.25mm以下が好ましい。こうすれば、第2管部34の剛性を比較的高くすることができる。また、第2管部34の外径を小さく内径を大きくすることができるため、長溝26aの溝を小さくしつつ外周側熱電対50をスムーズに挿入することができる。第2管部34の形状及びサイズ並びに第1管部33の長さ及び内径は所定のものとし、第1管部33の外径を変えた熱電対ガイド32を比較した場合、熱電対ガイド32に外周側熱電対50を挿入したときの熱電対ガイド32の曲がり(ベンド)は第1管部33の外径φo1が太いほど小さくなる傾向あるいは元に戻りやすい傾向が見られた。また、第2管部34の外径φo2の第1管部33の外径φo1に対する比φo2/φo1は、例えば2/5以上9/10以下としてもよい。また、第2管部34の内径φi2の第1管部33の内径φi1に対する比φi2/φi1は、例えば3/4以上19/20以下としてもよい。
【0050】
上述した実施形態において、ガイド穴32aの段差、つまり(φi1-φi2)/2の値は、外周側熱電対50を長穴26へスムーズに導くことができる程度であることが好ましい。(φi1-φi2)/2の値は、外周側熱電対50の形状や種類にもよるが、例えば0.2mm以下としてもよい。
【0051】
上述した実施形態では、湾曲部34cは、曲率半径Rの円弧状に湾曲しているものとしたが、例えば、湾曲部34cの先端に向かって徐々にカーブがきつくなるように(例えば徐々に曲率半径が小さくなるように)してもよいし、湾曲部34cの先端に向かって徐々にカーブがゆるくなるように(例えば徐々に曲率半径が大きくなるように)してもよい。湾曲部34cは、例えば、楕円弧状に湾曲していてもよいし、放物線状に湾曲していてもよい。
【0052】
上述した実施形態において、熱電対ガイド32の材質は、ステンレス鋼(SUS304など)とすることが好ましい。こうすれば、熱電対ガイド32の耐熱性及び耐食性を高めることができる。また、加工性がよいため、熱電対ガイド32を容易に形成できる。
【0053】
上述した実施形態では、第1管部33がウエハ載置面20aに対して垂直方向になるように配置されているものとしたが、垂直方向に対してわずかに(例えば±5°以内)傾いて配置されていてもよい。ただし、給電棒42a,42b,44a,44bや内周側熱電対48との干渉を避ける観点からは、この傾きは小さい方がよい。
【0054】
上述した実施形態では、筒状シャフト40は、内径d1の小径部40aと内径d2(>d1)の大径部40bとを備えているものとしたが、ストレート形状でもよいし、内径d1と内径d2とが同じでもよい。内径d1と内径d2とが同じ場合、内部空間41において円筒空間41aと拡張空間41bとの区別はなく、裏面20bにおいてシャフト内領域20dと拡張領域20fとの区別はない。
【0055】
上述した実施形態では、両抵抗発熱体22,24をコイル形状としたが、特にコイル形状に限定されるものではなく、例えば印刷パターンであってもよいし、リボン形状やメッシュ形状などであってもよい。
【0056】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に抵抗発熱体22,24に加えて静電電極やRF電極を内蔵してもよい。静電電極が内蔵される場合には、セラミックプレート20のシャフト内領域20dに静電電極の端子(付帯部品の一つ)が設けられる。静電電極の端子はシャフト内領域20dで長溝26a以外の位置に設けられる。RF電極が内蔵される場合には、セラミックプレート20のシャフト内領域20dにRF電極の端子(付帯部品の一つ)が設けられる。RF電極の端子はシャフト内領域20dで長溝26a以外の位置に設けられる。
【0057】
上述した実施形態では、熱電対ガイド32の上下方向の長さを筒状シャフト40の高さより長くしたが、筒状シャフト40の高さと同じにしてもよいし短くしてもよい。
【0058】
上述した実施形態において、内周側ゾーンZ1を複数の内周側小ゾーンに分けて内周側小ゾーンごとに抵抗発熱体を一筆書きの要領で引き回してもよい。また、外周側ゾーンZ2を複数の外周側小ゾーンに分けて外周側小ゾーンごとに抵抗発熱体を一筆書きの要領で引き回してもよい。端子の数は小ゾーンの数に応じて増加するが、上述した実施形態では長溝26aが拡張領域20fに入り込むように設けられているため、端子などを配置可能な領域が広くなる。そのため、端子の数が多くなっても対応し得る。
【0059】
上述した実施形態では、凹部49の位置は長溝26aの位置を決めた後に決めてもよいし、長溝26aの位置を決める前に決めてもよい。後者の場合、凹部49を付帯部品の一つとみなし、長溝26aは凹部49を通らないように定めることになる。
【0060】
上述した実施形態では、セラミックプレート20の裏面20bに筒状シャフト40を接合し、セラミックプレート20の端子22a,22b,24a,24bのそれぞれに給電棒42a,42b,44a,44bを接合した後、熱電対ガイド32を取り付けたが、取付手順はこれに限定されない。例えば、セラミックプレート20の裏面20bに筒状シャフト40を接合し、熱電対ガイド32を取り付けた後、端子22a,22b,24a,24bのそれぞれに給電棒42a,42b,44a,44bを接合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えばウエハに処理を施すのに用いられる半導体製造装置用部材として利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10,410 セラミックヒータ、20,420 セラミックプレート、20a ウエハ載置面、20b 裏面、20c 仮想境界、20d シャフト内領域、20f 拡張領域、22 内周側抵抗発熱体、22a,22b 端子、24 外周側抵抗発熱体、24a,24b 端子、26 長穴、26a 長溝、26e 終端位置、26s 起点、32,432 熱電対ガイド、32a ガイド穴、33 第1管部、34 第2管部、34b 先端側部分、34c 湾曲部、34s 直線部、40 筒状シャフト、40a 小径部、40b 大径部、41 内部空間、41a 円筒空間、41b 拡張空間、42a,42b,44a,44b 給電棒、48 内周側熱電対、48a 測温部、49 凹部、50 外周側熱電対、50a 測温部、450 外周側熱電対、426 熱電対通路、426a スリット、440 ストレートシャフト、P1 上側プレート、P2 下側プレート、W ウエハ、Z1 内周側ゾーン、Z2 外周側ゾーン。