(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】観察部位観察システムおよび観察部位観察方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20221220BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20221220BHJP
A61B 1/313 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61B1/00 552
A61B1/045 616
A61B1/045 623
A61B1/313 510
(21)【出願番号】P 2020103322
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】i-PRO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 章二
(72)【発明者】
【氏名】矢萩 芳明
(72)【発明者】
【氏名】塚原 伸一
(72)【発明者】
【氏名】星野 功一
(72)【発明者】
【氏名】榎本 博文
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/045368(WO,A1)
【文献】特表2008-522789(JP,A)
【文献】特表2018-537213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が被検体の観察部位内に挿入されかつ基端部が固定され、ユーザの操作により前記先端部が前記基端部に向かってプルバックされる間に前記被検体の観察部位を撮像する内視鏡と、
前記内視鏡の基端部を固定する固定部を有し、前記ユーザの操作に基づく前記プルバック中の前記内視鏡の位置情報および速度情報を取得するプルバック装置と、
前記プルバック装置から送られる前記内視鏡の位置情報および速度情報に基づいて、前記プルバック中に前記内視鏡により撮像された観察部位画像が略一定時間ごとに取得されたか否かを判定し、前記観察部位画像が略一定時間ごとに取得されたと判定した場合に、前記内視鏡の位置情報に対応する前記観察部位画像の表示画面をモニタに表示するコントローラと、を備える、
観察部位観察システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記プルバック中に前記観察部位画像が略一定時間ごとに取得されない場合に、前記内視鏡のプルバック速度を示すインジケータを前記モニタに表示する、
請求項1に記載の観察部位観察システム。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記内視鏡の位置情報および速度情報とその位置情報で前記内視鏡により撮像された観察部位画像とを関連付けし、前記観察部位画像に対応する前記内視鏡の位置情報および速度情報に基づいて、前記プルバック中に前記観察部位画像が略一定時間ごとに取得されたか否かを判定する、
請求項1に記載の観察部位観察システム。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記プルバック終了後に前記観察部位画像が略一定時間ごとに取得されなかったと判定した場合に、前記内視鏡のプルバックの再実行の指示を前記モニタに表示する、
請求項1に記載の観察部位観察システム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記プルバックの再実行前に取得された複数枚の観察部位画像と前記プルバックの再実行後に取得された複数枚の観察部位画像とに基づいて、前記内視鏡により撮像された観察部位画像が略一定時間ごとに取得されたか否かを判定する、
請求項4に記載の観察部位観察システム。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記内視鏡が挿入された前記被検体の観察部位を撮像する観察部位造影装置と接続され、前記観察部位造影装置により撮像された観察部位造影画像と前記内視鏡により撮像された観察部位画像とを対比表示した表示画面を前記モニタに表示する、
請求項1に記載の観察部位観察システム。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記内視鏡の位置情報および速度情報とその位置情報で前記内視鏡により撮像された観察部位画像とを関連付けし、前記観察部位造影画像に基づいて、前記観察部位画像に対応する前記内視鏡の位置情報を補正する、
請求項6に記載の観察部位観察システム。
【請求項8】
前記コントローラは、
関連付けされた前記観察部位画像と前記内視鏡の位置情報および速度情報とを用いて、略一定時間ごとに取得された複数枚の前記観察部位画像に基づいて前記観察部位の径を算出する、
請求項3に記載の観察部位観察システム。
【請求項9】
前記内視鏡は、前記被検体の観察部位を撮像可能な画像センサを有し、
前記画像センサは、前記内視鏡の先端部に実装されている、
請求項1に記載の観察部位観察システム
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血管内を撮像した画像を表示する血管観察システムおよび血管観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、最適なステントの決定を迅速かつ容易にし、決定したステントの妥当性を治癒前に容易に確認可能であり、一方で診断日時の異なる血管画像を高精度で比較する画像解析装置が開示されている。この画像解析装置は、血管内画像撮像装置から出力される血管の短軸断面画像を保存し、保存された複数の短軸断面画像から血管の長軸断面画像を生成する。また、画像解析装置は、保存された短軸断面画像から、少なくとも血管の内腔の外周に沿った内腔閉曲線を生成し、この生成された内腔閉曲線から血管に挿入しようとするステントの径を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、冠動脈等の血管の内部に血管内画像撮像装置(例えば超音波プローブ)が挿入され、一定の速度で血管内画像撮像装置が血管内を移動(つまりオートプルバック)させられていることが前提となっている。ここで、血管内に挿入可能な内視鏡が血管内に挿入されて一定の速度でオートプルバックされると、オートプルバックの途中で内視鏡が血管内壁等に衝突してもそのまま引き戻し(つまりプルバック)がなされて血管を傷つける可能性があった。このため、手術等の医療行為中には、医師等のユーザの操作によって内視鏡が手動で引き戻し(つまりプルバック)される方がより安全と考えられる。だが、手動で内視鏡がプルバックされると、プルバックの個人差によってオートプルバック時に比べると略一定時間ごとに撮像画像が得られにくいため血管径の測定が困難となる等、手術等の医療行為の安全性の確保と血管内の観察の利便性とを両立することができなかった。
【0005】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、手術等の医療行為の安全性の確保と医師等のユーザによる血管内の観察の利便性との両立を適切に図る血管観察システムおよび血管観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、先端部が被検体の観察部位内に挿入されかつ基端部が固定され、ユーザの操作により前記先端部が前記基端部に向かってプルバックされる間に前記被検体の観察部位を撮像する内視鏡と、前記内視鏡の基端部を固定する固定部を有し、前記ユーザの操作に基づく前記プルバック中の前記内視鏡の位置情報および速度情報を取得するプルバック装置と、前記プルバック装置から送られる前記内視鏡の位置情報および速度情報に基づいて、前記プルバック中に前記内視鏡により撮像された観察部位画像が略一定時間ごとに取得されたか否かを判定し、前記観察部位画像が略一定時間ごとに取得されたと判定した場合に、前記内視鏡の位置情報に対応する前記観察部位画像の表示画面をモニタに表示するコントローラと、を備える、血管観察システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、手術等の医療行為の安全性の確保と医師等のユーザによる血管内の観察の利便性との両立を適切に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る血管観察システムの構成例を示す図
【
図2】マニュアルプルバック装置の構成例を模式的に示す図
【
図3】プルバック速度の個人差を加味した中継器による正規化処理の動作例を示す図
【
図4】血管内視鏡の位置に対応する血管内視鏡画像のデータ不足時の撮り直しに基づくデータ照合および補正の第1例を示す図
【
図5】血管内視鏡の位置に対応する血管内視鏡画像のデータ不足時の撮り直しに基づくデータ照合および補正の第2例を示す図
【
図6】血管内視鏡の位置に対応する血管内視鏡画像のデータ不足時の撮り直しに基づくデータ照合および補正の第3例を示す図
【
図7】実施の形態1に係る血管観察システムの動作手順例を示すフローチャート
【
図8】
図7のステップS14の血管径算出の動作手順例を示すフローチャート
【
図9】血管画像上における特徴点の配置、特徴点と対応点の位置関係、および3次元点を用いて推定された血管径を示す図
【
図13】アンギオ画像および血管内視鏡画像を対比表示する表示画面の一例を示す図
【
図14】実施の形態2に係る血管観察システムの構成例を示す図
【
図15】実施の形態2に係る血管観察システムの動作手順例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る血管観察システムおよび血管観察方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る血管観察システム5の構成例を示す図である。血管観察システム5は、手術あるいは検査(以下「手術等」と称する)の時に、人体等の被検体を対象として被検体内の血管を血管内視鏡10で撮像するとともに、血管内視鏡10により撮像された複数の画像を用いて血管径を測定してその結果を表示する。血管は、例えば冠動脈でもよいし、上肢あるいは下肢でもよく、部位は特に限定されなくてよい。血管観察システム5は、血管内視鏡10と、マニュアルプルバック装置MPB1と、中継器20と、画像コンソールCSL1とを含む構成である。また、血管観察システム5は、医師対面モニタ80と、アンギオグラフィ装置90とをさらに含む構成としてもよい。
【0012】
1.血管観察システムの構成
血管内視鏡10は、血管観察システム100を構成する内視鏡の一例であり、手術等の時に被検体内に予め挿入されたカテーテル(図示略)内に沿って挿入されたり引き戻されたりする医療器具である。血管内視鏡10は、いわゆる血管内視鏡カテーテルと称されることがある。血管内視鏡10は、被検体内に挿入されて被検体内を撮像可能な撮像部(図示略)が実装された先端部TP1と、マニュアルプルバック装置MPB1に固定された基端部BE1とを有する。基端部BE1から先端部TP1までは、可撓性を有するアウターシースOS1により血管内視鏡10の外周が覆われている。血管内視鏡10の外径は、血管内視鏡10の撮像部(図示略)の光軸に垂直な方向の外形状が円形となるアウターシースOS1の径に相当し、例えば最大外径として1.8mmΦであるが、このサイズに限定されなくてよい。
【0013】
血管内視鏡10は、手術等の前に予め被検体内の観察部位(例えば血管)に挿通されたガイドワイヤGW1に沿って、医師等のユーザ(以下「ユーザ」と称する)の操作によって被検体内の血管内を進退自在に挿通される。ここで、血管内視鏡10が被検体内の観察部位に向かって挿入される方向を進行方向と定義し、反対に血管内視鏡10が被検体外に向かって引き戻される方向を退避方向と定義する。したがって、進退自在とは、血管内視鏡10が被検体内に向かって挿入されることも引き戻されることも可能であることを意味する。血管内視鏡10は、手術等の観察部位(例えば患部)までに予め挿通されたガイドワイヤGW1に案内されて観察部位までスムーズに挿入可能である。血管内視鏡10は、通常のカテーテル(図示略)の先端部に撮像部(図示略)が交換自在に装着されたものでもよい。カテーテルは、例えば体液の排出あるいは薬液の注入に用いられる医療用の管である。カテーテルには、血管内視鏡10の他、バルーンもしくはステント等が交換自在に装着されてよい。
【0014】
血管内視鏡10は、例えば、血管を撮像可能な画像センサが先端側に実装された48万画素の高解像度カメラである。なお、48万画素はあくまで一例であり、画素数は48万画素に限定されなくてよい。血管内視鏡10が被検体内の血管に挿入されると、血管内視鏡10は、血管の内壁(血管壁)を撮像可能である。血管内視鏡10は、画像センサとして、例えばCCD(Charge Coupled Device)あるいはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子(つまりイメージセンサ)を内蔵し、被写体(例えば血管壁)からの光学像を撮像面に結像し、結像した光学像を電気信号に変換して画像のデータ信号を出力する。血管内視鏡10は、ユーザの操作によってマニュアルプルバック装置MPB1を介してユーザの感覚に基づいて退避方向に引き戻され、血管壁を撮像した画像のデータ信号を出力する。以後、血管内視鏡10が血管壁を撮像した画像を「血管内視鏡画像」と称する。なお、血管内視鏡画像のデータ信号は、静止画像および動画像のいずれの信号でもよく、またマニュアルプルバック装置MPB1を介して中継器20に入力される。また、血管内視鏡10は、患部を明るく照明するために、LED(Light Emission Diode)光源あるいはCCU30からの照射光を導く光ファイバを内蔵してもよい。
【0015】
マニュアルプルバック装置MPB1は、血管観察システム100を構成するプルバック装置であり、血管内視鏡10の基端部BE1が固定された状態で、ユーザの操作に基づく血管内視鏡10のプルバックを制御する動作を行う。マニュアルプルバック装置MPB1は、駆動力の付与によってユーザの操作によって血管内視鏡10をプルバックすることを支援するためのドライブモードと、ユーザが自身のプルバック時のテンションを感じながら血管内視鏡10をプルバックすることを支援するためのドライブレスモードとのうちいずれかの動作モードを選択的に実行する。ユーザが血管内視鏡10を引き戻す長さは、患部付近の位置に挿通された血管内視鏡10が基端部BE1に向かって引き戻される長さと略一致すると考えることができる。上述したように、血管内視鏡10は、マニュアルプルバック装置MPB1を介してユーザの操作によって引き戻される際、所定のフレームレートで血管壁を撮像する。
【0016】
また、マニュアルプルバック装置MPB1は、血管内視鏡10の位置情報およびその位置(つまり撮像位置)での速度情報のデータ(以下「計測データ」と称する)を算出かつ取得して中継器20に送る。ここで、血管内視鏡10の位置での速度情報は、血管内視鏡10が基端部BE1に向かって引き戻される際に、血管内視鏡10の撮像位置(つまり、血管内視鏡10の位置)が移動する時の速度であり、プルバック速度となる。血管内視鏡10の撮像位置の速度情報は、ユーザの操作による個人差の影響を受けるので一様な値とはならないことが多い。すなわち、速く引き戻すユーザのプルバック速度は推奨速度値よりも高く、望ましい引き戻しを行うユーザのプルバック速度は推奨速度値と同等となり、遅く引き戻すユーザのプルバック速度は推奨速度値よりも低くなる。撮像の開始位置は、例えばユーザが血管内視鏡10により撮像された観察部位の画像をモニタ70で確認した上で決定される。マニュアルプルバック装置MPB1の詳細については、
図2を参照して後述する。
【0017】
中継器20は、血管観察システム100を構成するコントローラの一例であり、血管内視鏡10とCCU30との間で行われる各種の信号を中継する。各種の信号は、例えば、血管内視鏡10で撮像された画像のデータ信号以外に、CCU30が血管内視鏡10を制御するための各種の制御信号を含む。また、中継器20は、マニュアルプルバック装置MPB1とCCU30との間で行われる各種の信号を中継する。中継器20は、FPGA21(Field Programmable Gate Array)と、AFE22(Analog Front End)と、インターフェース23,24,25とを含む構成である。
図1および
図14のそれぞれでは、インターフェースを「I/F」と略記している。
【0018】
インターフェース23は、血管内視鏡10との間でデータ信号の入力を可能に接続され、血管内視鏡10で撮像された画像のデータ信号(例えば動画あるいは静止画)を入力してAFE22に出力する。
【0019】
インターフェース24は、マニュアルプルバック装置MPB1との間でデータの入力を可能に接続され、マニュアルプルバック装置MPB1から出力される血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータ(計測データ)を入力してFPGA21に出力する。
【0020】
AFE22は、増幅器、AD(Analog Digital)コンバータおよびフィルタを少なくとも含む集積回路により構成される。AFE22は、インターフェース23を介して入力された画像のデータ信号に対し、増幅処理、アナログデジタル変換処理、フィルタリング処理等を行ってFPGA21に出力する。
【0021】
FPGA21は、AFE22により処理された後の画像のデータと、血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータとを結合する。FPGA21は、結合の処理例として、画像のデータの格納領域(例えばオプション領域)に、血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータ(計測データ)を格納する。または、FPGA21は、結合の他の処理例として、画像上の視認性を遮らない位置に、血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータ(つまりテキストデータである計測データ)を重畳する。ここで、画像のデータと位置情報および速度情報のデータとの結合の処理は、これらのデータを連結することで、例えばこれらのデータを足し合わせて1つのデータにすることで行われる。このように、中継器20による結合により、マニュアルプルバック装置MPB1から提供される血管内の撮像位置と、血管内視鏡10から提供される画像の取得タイミングとが一致(同期)するように対応付けられる。以下の説明において、画像のデータと位置情報および速度情報のデータとの結合データを、単に「結合データ」と称する場合がある。
【0022】
インターフェース25は、FPGA21により生成された結合データ(つまり、画像のデータと血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータとが結合されたデータ)を画像コンソールCSL1に出力する。なお、ここでは、中継器20に使用されるプロセッサの一例として、FPGA21が用いられるが、FPGA21以外にCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等が用いられてもよい。
【0023】
画像コンソールCSL1は、例えばCCU30(Camera Control Unit)と、PC50(Personal Computer)と、モニタ70とにより構成される。
【0024】
CCU30は、中継器20を介して血管内視鏡10と電気的に接続され、血管内視鏡10による撮像動作、血管内視鏡10からの画像のデータ信号に基づく血管内視鏡画像のデータ生成を制御する。CCU30は、血管内視鏡画像のデータと血管内視鏡の位置情報および速度情報のデータとが結合されたデータ(つまり、上述した結合データ)にメタデータを付加する。メタデータは、血管内視鏡10から提供される血管内視鏡画像の撮像日時等のデータを含む。
【0025】
CCU30は、画像入力部(図示略)、画像処理部(図示略)および画像出力部(図示略)を少なくとも含む。画像入力部(図示略)は、血管内視鏡画像のデータと血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータとが結合された結合データを入力する。画像入力部(図示略)は、専用の画像入力インターフェースの他、映像データを高速に転送可能なHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)あるいはUSB(Universal Serial Bus) Type-C等を用いたインターフェースでもよい。画像処理部(図示略)は、入力された結合データにメタデータを付加する等の処理を行う。また、画像処理部(図示略)は、中継器20から送られた結合データに対し、所定の画像処理を行うことで、モニタ70において視認可能なRGB形式あるいはYUV形式の結合されたデータを生成してもよい。画像出力部(図示略)は、メタデータが付加された結合されたデータをPC50に送信する。
【0026】
PC50は、血管観察システム100を構成するコントローラの一例であり、画像キャプチャーボード51と、入力インターフェース52と、メモリ53と、プロセッサ54と、操作部55と、ストレージ56と、出力インターフェース57とを含む構成である。PC50は、中継器20により生成された結合データを、CCU30を介して受信する。PC50は、結合データに含まれる血管内視鏡画像のデータ、あるいはこの血管内視鏡画像のデータに対して所定の画像処理を施した後の血管内視鏡画像のデータ等をストレージ56に記録して保存する。また、PC50は、血管造影装置としての役割を有するアンギオグラフィ装置90との間でデータ通信が可能に接続され、アンギオグラフィ装置90により撮像された画像(以下「アンギオ画像」と称する)を受信して保存する。
【0027】
また、PC50は、CCU30からの結合データ(上述参照)とアンギオグラフィ装置90からのアンギオ画像とに基づいて、観察部位(例えば患部である血管)の血管径の算出に用いる結合データを選別し、選別された結合データを用いて血管径を算出する処理を行う。PC50は、血管径の算出結果を含む、アンギオ画像(
図11参照)、血管内視鏡画像(
図12参照)あるいはアンギオ画像および血管内視鏡画像(
図13参照)の表示画面のデータを生成してモニタ70および医師対面モニタ80に出力(表示)し、血管の観察状況を示す表示画面によって血管内を可視化する処理を行う。
【0028】
また、PC50は、中継器20から随時入力されてくる結合データを用いて、複数枚の血管画像から構成される等速動画を生成する。ここでいう等速動画は、例えば、複数枚の血管画像の中から、血管内視鏡10の位置情報および速度情報を用いて、略一定時間間隔ごとに撮像された撮像位置の異なる複数枚の血管画像が時系列にプロセッサ54によって適宜選択されることで構成された動画である。プロセッサ54は、この等速動画を用いることで、血管径を算出する(
図8~
図10参照)。
【0029】
画像キャプチャーボード51は、アンギオグラフィ装置90から送られてくるアンギオ画像のデータ、CCU30から送られてくる血管内視鏡画像のデータをそれぞれ受信して一時的に保存するとともに、入力インターフェース52を介してプロセッサ54に送る。
【0030】
入力インターフェース52は、画像キャプチャーボード51からの画像のデータ(上述参照)を高速に転送可能なHDMI(登録商標)あるいはUSB Type-C等を用いたインターフェースでもよい。
【0031】
メモリ53は、プロセッサ54のワーキングメモリとして使用されるRAM(Random Access Memory)と、プロセッサ54により実行される各種の処理用のプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、を含む。
【0032】
プロセッサ54は、メモリ53に記憶された各種の処理用のプログラムを実行することで、例えば上述した結合データの選別処理、血管径算出処理、表示画面のデータ生成処理等のそれぞれを実行する。プロセッサ54は、例えば画像処理に適したGPUでもよいし、MPU、CPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で設計された専用の電子回路、またはFPGA等で再構成可能に設計された電子回路で構成されてもよい。プロセッサ54の処理例の詳細については後述する。
【0033】
操作部55は、血管観察システム100を起動させる起動スイッチを含み、ユーザによる操作を受け付ける。操作部55は、上述した起動スイッチの他に、例えば、マウス、キーボード、タッチパッド、タッチパネル、マイクロホンまたはその他の入力デバイスを含んでよい。
【0034】
ストレージ56は、大容量の記憶装置であり、血管内視鏡10で撮像された血管内視鏡画像、アンギオグラフィ装置90により撮像されたアンギオ画像のデータ等を蓄積する。ストレージ56は、例えば二次記憶装置(例えばHDD(Hard Disk Drive)もしくはSSD(Solid StateDrive))、あるいは三次記憶装置(例えば光ディスク、SDカード)を含んでよい。
【0035】
モニタ70は、PC50から出力される血管径の算出結果、あるいは血管画像のデータを表示する。モニタ70は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electroluminescence)、CRT(Cathode Ray Tube)等の表示デバイスを有する。なお、CCU30、PC50およびモニタ70は、画像コンソールCSL1として単一の筐体に搭載されて手術室内に配置される。
【0036】
医師対面モニタ80は、医師等と対面するように、被検体が寝ている手術台を挟んで医師等と反対側に配置される大型の表示用モニタである。医師対面モニタ80は、PC50により生成された表示画面のデータ(
図11、
図12、
図13参照)を表示する。
【0037】
アンギオグラフィ装置90は、血管観察システム100を構成する血管造影装置の一例であり、手術等の時に手術台で寝ている被検体(患者)の血管の形状あるいは異常の有無等の分布、腫瘍への血管あるいは血流の状態を検査治療する機器である。具体的には、カテーテル(図示略)を介して被検体内の血管に造影剤が注入され、アンギオグラフィ装置90によって、血流あるいは腫瘍の分布、血管の狭窄あるいは閉塞の検査治療が行われる。アンギオグラフィ装置90は、例えば被検体の血管の形状を撮像することでアンギオ画像を生成し、アンギオ画像のデータをPC50に伝送する。詳細は後述するが、血管内視鏡10にはアンギオグラフィ装置90による撮像時の目印としてのマーカMK1が先端部TP1に設けられている。このため、アンギオ画像には、血管内視鏡10の位置をユーザが判明可能となるように血管内視鏡10のマーカMK1が映る。
【0038】
図2は、マニュアルプルバック装置MPB1の構成例を模式的に示す図である。マニュアルプルバック装置MPB1は、一端側において血管内視鏡10を固定し、他端側において中継器20と接続する。マニュアルプルバック装置MPB1は、アンカー部AC1と、ドライブユニット部DVU1とを含む構成である。なお、ドライブユニット部DVU1は省略されても構わない。
【0039】
アンカー部AC1は、第1アンカー部と第2アンカー部と検出部(図示略)とを含む。
図2に示すように、第1アンカー部は、固定部としての機能を有し、血管内視鏡10のアウターシースOS1の基端部BE1を収容して固定するための収容空間OSCX1を有する、金属等からなる構造体である。第2アンカー部は、固定部としての機能を有し、血管内視鏡10の挿入の目安となるガイドワイヤGW1の基端側を固定するためのガイドワイヤ固定部GFX1,GFX2を有する、金属等からなる構造体である。なお、第2アンカー部は、ガイドワイヤ固定部GFX1,GFX2と同一の役割を有するガイドワイヤ固定部EFX1,EFX2を有してもよい。ガイドワイヤGW1は、血管内視鏡10を挿入する時および血管内視鏡10を引き戻す時の命綱ロープのような役割を果たす。このため、ガイドワイヤGW1の基端側はマニュアルプルバック装置MPB1において固定される必要がある。
【0040】
検出部(図示略)は、マニュアルプルバック装置MPB1のドライブモードおよびドライブレスモードのいずれの動作モードであって、電子方式、接点方式および開閉方式のうちいずれかを用いて、血管内視鏡10の位置情報およびその位置(つまり撮像位置)での速度情報のデータ(計測データ)を演算して検出する。それぞれの方式の概要を簡単に説明する。
【0041】
1)電子方式
検出部(図示略)は、LED(Light Emission Diode)ライト(図示略)とフォトトランジスタ(図示略)と演算処理部(図示略)とを有する。LEDライトは、アウターシースOS1に予め等間隔(例えば0.01mm~1mm)に複数のマーカが付された血管内視鏡10に向けて光(LEDライト光)を照射する。フォトトランジスタは、LEDライト光の反射光を受光する。演算処理部は、フォトトランジスタの出力に基づいて、予め決められた固定位置をそれぞれのマーカが通過したことを検出することで、血管内視鏡10の計測データ(上述参照)を算出して検出する。
【0042】
2)接点方式
検出部(図示略)は、等間隔(例えば0.01mm~1mm)に複数の凸部が設けられたレール(図示略)と演算処理部(図示略)とを有する。接点方式の使用においては、血管内視鏡10のアウターシースOS1の外周の特定箇所に、レール(図示略)に設けられたそれぞれの凸部と接するためのレール接点部(図示略)が設けられる。演算処理部は、血管内視鏡10の引き戻しにより血管内視鏡10のレール接点部と接する検出部のレールの凸部の位置および接触時刻に基づいて、血管内視鏡10の計測データ(上述参照)を算出して検出する。
【0043】
3)開閉方式
検出部(図示略)は、LEDライト(図示略)およびフォトトランジスタ(図示略)を有するロータリーエンコーダと演算処理部(図示略)とを有する。ロータリーエンコーダが備える円盤体には、等間隔に複数の丸穴が配置されている。丸穴とその隣接する丸穴との間隔は、例えば0.01mm~1mmである。開閉方式の使用においては、血管内視鏡10のアウターシースOS1の外周の特定箇所に、血管内視鏡10の引き戻しに連動して円盤体(上述参照)を回転させる回転駆動部(図示略)が設けられる。演算処理部は、血管内視鏡10の引き戻しによりロータリーエンコーダの円盤体を通過した丸穴の位置とその通過したLEDライト光の受光間隔とに基づいて、血管内視鏡10の計測データ(上述参照)を算出して検出する。
【0044】
ドライブユニット部DVU1は、マニュアルプルバック装置MPB1がドライブモードである場合に、ユーザが血管内視鏡10をプルバック方向PLD1(つまり血管内視鏡10の先端部TP1から基端部BE1に向かう方向)に引き戻すための駆動力を付与する機構(図示略)と検出部(上述参照)とを備える。検出部の構成の詳細はアンカー部AC1が備える検出部の構成と同一であるため説明は省略する。したがって、ドライブユニット部DVU1は、アンカー部AC1と同様に、上述した電子方式、接点方式および開閉方式のうちいずれかを用いて、血管内視鏡10の位置情報およびその位置(つまり撮像位置)での速度情報のデータ(計測データ)を演算して検出する。
【0045】
また、ドライブユニット部DVU1には、アンカー部AC1の第1アンカー部(上述参照)を介して血管内視鏡10の基端部BE1を固定するための基端固定部TR1が設けられる。ドライブユニット部DVU1は、基端固定部TR1に血管内視鏡10の基端部BE1が固定された状態で駆動力(上述参照)を付与することで、ユーザのマニュアルプルバックを支援する。
【0046】
図3は、プルバック速度の個人差を加味した中継器による正規化処理の動作例を示す図である。
図3の横軸は時間を示し、
図3の横軸に直交するそれぞれの縦線は血管内視鏡10により撮像された画像の1枚(つまりフレームFLM)を示す。上述したように、マニュアルプルバック装置MPB1の動作モードがドライブモードあるいはドライブレスモードに拘わらず、血管内視鏡10の撮像位置の速度情報は、ユーザの操作による個人差の影響を受けるので一様な値とはならないことが多い。
【0047】
つまり、遅く引き戻すユーザのプルバック速度は推奨速度値よりも小さいので(
図3の最上段である第1段の特性PTY1参照)、フレームFLMが取得される時間間隔が短くなる分フレームFLMの取得数が多くなり過ぎて、PC50が血管径を算出するために必要となる等速動画(上述参照)を生成する上で好ましくない。また、望ましい引き戻しを行うユーザのプルバック速度は推奨速度値と同等となるので(
図3の第2段の特性PTY2参照)、フレームFLMが取得される時間間隔が推奨速度値とフレームレートとで定まる推奨時間値t1とほぼ同等な値となる分無駄なフレームFLMが無くて好ましい。また、速く引き戻すユーザのプルバック速度は推奨速度値よりも大きいので(
図3の第3段の特性PTY3参照)、フレームFLMが取得される時間間隔が長くなる分フレームFLMの取得数が少なくなり過ぎてり、PC50が血管径を算出するために必要となる等速動画(上述参照)を生成する上で好ましくない。
【0048】
図3の第4段は、ある医師(ユーザの一例)が血管内視鏡10を手動でプルバック(引き戻し)した時のフレームFLMの取得タイミングを示す特性PTY4を示す。この特性PTY4の例では、フレームFLMの取得数の推奨例として示される第2段の特性PTY2と比べて、フレームFLMの取得間隔にばらつき(つまり、取得間隔が短い場合と長い場合とが混在)が発生している。この場合、PC50のプロセッサ54は、正規化処理の出力例として、中継器20から撮像の度に都度送られてくる血管内視鏡10の結合データ(上述参照)のうち、特性PTY2と同等の取得間隔となるフレームFLM(例えばフレームF0,F1,F2,F3,F5,F6,F7,…)を選別して取得する(
図3の最下段である第5段の特性PTY5参照)。ここでいう正規化処理とは、プロセッサ54により実行される処理であって、等速動画(上述参照)の生成に必要となる、推奨速度値に対応する推奨時間値t1ごとに得られたフレームを選別する処理である。プロセッサ54は、正規化処理によって選別されたフレームに対応する結合データを用いて等速動画(上述参照)を生成し、その等速動画に基づいて血管径を算出する(
図8~
図10参照)。なお、特性PTY4の例では、フレームF3とフレームF5との間ではフレームが取得されなかったため、プロセッサ54は、フレームF3とフレームF5との間の不足フレームは無いと判断して正規化処理を行う。
【0049】
また、プロセッサ54は、正規化処理において、取得されたフレームの時間間隔が所定値未満であると判定した場合、等速動画の生成に必要となるフレームの取得が足りていないと判断してユーザにマニュアルプルバックの再実行を指示してよい。この指示は、例えばプロセッサ54がモニタ70等に再実行を促すためのメッセージを表示することで実現可能であるが、メッセージの表示に限定されなくてもよい。プロセッサ54は、再実行前に取得されたフレームをストレージ56に一時的に蓄積し、再実行後に取得されたフレームと組み合わせて足りていなかったフレームを補充するように等速動画を生成してもよいし、あるいは、再実行前に取得されたフレームを再実行後に取得されたフレームに置き換えて等速動画を生成してもよい(
図4~
図6参照)。
【0050】
また、プロセッサ54は、血管内視鏡10が挿入されている部位によっては、不足しているフレームが存在すると判断した場合に公知のモーフィング技術を用いることで、不足しているフレームを前後のフレームに基づいて自動的に生成しても構わない。モーフィング技術の使用が許される部位としては、例えば太ももの付け根等の下肢、上腕等の上肢のように心臓から遠い部位が考えられるが、下肢および上肢に限定されないことは言うまでもない。
【0051】
図4は、血管内視鏡10の位置に対応する血管内視鏡画像のデータ不足時の撮り直しに基づくデータ照合および補正の第1例を示す図である。
図5は、血管内視鏡10の位置に対応する血管内視鏡画像のデータ不足時の撮り直しに基づくデータ照合および補正の第1例を示す図である。
図6は、血管内視鏡10の位置に対応する血管内視鏡画像のデータ不足時の撮り直しに基づくデータ照合および補正の第1例を示す図である。
図4~
図6の説明において、
図3の要素と同一の要素については同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0052】
図4の第2段は、初回のマニュアルプルバック時に取得されたフレームの枚数を示す特性PTY6を示す。この特性PTY6では、ユーザのマニュアルプルバックによるばらつきの影響により、一定期間NN1分のフレームが取得されていない。
図4の第3段は、n(n:2以上の整数)回目の撮り直し(つまりマニュアルプルバックの再実行)によって取得されたフレームの枚数を示す特性PTY7を示す。同様に、この特性PTY7では、ユーザのマニュアルプルバックによるばらつきの影響により、一定期間NN2分のフレームが取得されていない。
【0053】
そこで、プロセッサ54は、
図4に示すように、少なくとも特性PTY6と特性PTY7とを照合しかつ組み合わせることで不足フレームを補充することで、等速動画(上述参照)の生成に最低限必要となる推奨時間値t1ごとのフレームFLMを選別する(
図4の最下段である第4段の特性PTY8参照)。特性PTY8で示されるフレームの取得数は、特性PTY6のフレーム取得数と特性PTY7のフレーム取得数との和のうち、特性PTY2と同等の推奨時間値t1ごとのフレームFLMが抽出された最小値となる。
【0054】
また、プロセッサ54は、
図5に示すように、少なくとも特性PTY6と特性PTY7とを照合しかつ組み合わせることで不足フレームを補充することで、等速動画(上述参照)の生成に必要となる推奨時間値t1ごとのフレームFLMを含む全ての取得されたフレームを選別してもよい(
図5の最下段である第4段の特性PTY9参照)。特性PTY9で示されるフレームの取得数は、特性PTY6のフレーム取得数と特性PTY7のフレーム取得数との和(つまり、特性PTY2と同等の推奨時間値t1ごとのフレームFLMが抽出された最小値だけでなく取得された全てのフレームFLM1)となる。
【0055】
また、プロセッサ54は、
図6に示すように、少なくとも特性PTY6と特性PTY7とを照合しかつ組み合わせかつ等間隔に取得されたフレームのみが得られるように補正あるいは平均化することで、等速動画(上述参照)の生成に必要となる推奨時間値t1ごとのフレームFLMを含むより多くのフレームを選別してもよい(
図6の最下段である第5段の特性PTY10参照)。特性PTY10で示されるフレームの取得数は、特性PTY6のフレーム取得数と特性PTY7のフレーム取得数との和を基にして、推奨時間値t1ごとのフレームFLM以外のフレームは等間隔に取得されたようにモーフィング技術等による補正あるいは平均化によって得られたフレームとなる。
【0056】
2.血管観察システムの動作
次に、実施の形態1に係る血管観察システム100の動作手順を、
図7を参照して説明する。
図7は、実施の形態1に係る血管観察システム100の動作手順例を示すフローチャートである。
図7では、血管観察システム100を構成するマニュアルプルバック装置MPB1、中継器20、アンギオグラフィ装置90、画像コンソールCSL1、医師対面モニタ80のそれぞれによる動作が時系列に示されている。なお、画像コンソールCSL1の処理主体はプロセッサ54である。
【0057】
例えば被検体内の血管内に血栓があったり血管壁にプラークができていたりする等、被検体内の血管の状態を観察するため、血管内視鏡10は血管内に挿入される。ユーザが血管内視鏡10を血管内に挿入する際、ガイドワイヤGW1およびカテーテル(図示略)の順に血管内に挿通される。ガイドワイヤGW1およびカテーテル(図示略)が観察したい血管内に届けられると、ユーザは、ガイドワイヤGW1に案内されかつカテーテル内に沿うように、血管内視鏡10を血管内に進行させて挿入していく。血管内視鏡10の先端部TP1が観察部位(例えば血管等の患部)に達すると、ユーザは、マニュアルプルバック装置MPB1を作動させ、カテーテル内で血管内視鏡10を手動で引き戻す動作を開始する。なお、血管内視鏡10が血管内を鮮明に撮像できるように、カテーテル(図示略)内には血管内視鏡10の基端部BE1から造影剤もしくは生理食塩水等の透明液が血管内に注入される。
【0058】
図7において、ユーザが画像コンソールCSL1の筐体に収容されたPC50の操作部55に含まれる起動スイッチを押下すると、血管観察システム100は起動する(S1)。血管観察システム100が起動すると、血管内視鏡10、マニュアルプルバック装置MPB1、中継器20、アンギオグラフィ装置90、画像コンソールCSL1、医師対面モニタ80は、それぞれ動作を開始する。
【0059】
ユーザは、マニュアルプルバック装置MPB1に対し、被検体内の観察部位に挿入された血管内視鏡10を引き戻すための計測の開始位置および終了位置を設定する。この時、ユーザは、血管内視鏡10で撮像された血管内視鏡画像をその血管内視鏡画像が表示されたモニタ70で実際に目視によって確認し、計測の開始位置および終了位置を決定する。マニュアルプルバック装置MPB1を介した血管内視鏡10の引き戻しの開始位置から終了位置までの長さが、ユーザが求める血管の測定長に相当する。
【0060】
血管内視鏡10は、ユーザの操作により、ドライブモードおよびドライブレスモードのうちいずれかに設定されたマニュアルプルバック装置MPB1を介して引き戻されながら(S2)、血管内を撮像する。マニュアルプルバック装置MPB1は、血管内視鏡10により撮像された血管内視鏡画像(フレーム)のデータを都度入力して中継器20に伝送する(S3)。マニュアルプルバック装置MPB1は、上述した測定長の範囲内で血管内視鏡10が引き戻される際に、上述した電子方式、接点方式および開閉方式のうちいずれかを用いて血管内視鏡10の位置情報および速度情報(計測データ)を検出(導出)し(S4)、中継器20に送る。なお、マニュアルプルバック装置MPB1がドライブモードである場合、ステップS4の計測データは、アンカー部AC1により検出された計測データと、ドライブユニット部DVU1により検出された計測データとの両方が含まれる。一方、マニュアルプルバック装置MPB1がドライブレスモードである場合、ステップS4の計測データは、アンカー部AC1により検出された計測データのみが含まれる。
【0061】
中継器20は、マニュアルプルバック装置MPB1からの血管内視鏡画像(フレームFLM)のデータを都度入力する(S5)。中継器20は、マニュアルプルバック装置MPB1からの血管内視鏡10の位置情報および速度情報(計測データ)を入力する(S6)。中継器20は、血管内視鏡画像のデータの入力タイミング(つまり入力した時と同時刻)にマニュアルプルバック装置MPB1から入力された血管内視鏡10の計測データを関連付け(結合)する(S7)。結合例として、例えば中継器20は、血管内視鏡画像のデータに血管内視鏡10の計測データを重畳する。中継器20は、ドライブモードであるマニュアルプルバック装置MPB1のアンカー部AC1およびドライブユニット部DVU1のそれぞれからの計測データを照合し、不足データ(
図4~
図6参照)を補正する(S8)。なお、ドライブレスモードである場合には、中継器20による計測データの照合および補正は省略される。中継器20は、ステップS7の結合(例えば重畳)後の血管内視鏡画像のデータを画像コンソールCSL1(例えばPC50)に伝送する(S8)。この伝送は、例えば血管内視鏡10により撮像される血管内視鏡画像をユーザがリアルタイムで閲覧かつモニタ70にて表示可能なフレームレートで行われる。
【0062】
アンギオグラフィ装置90は、血管内視鏡10が挿入されている被検体の血管の形状を撮像することでアンギオ画像を生成し(S9)、アンギオ画像のデータを画像コンソールCSL1(例えばPC50)に伝送する(S10)。
【0063】
画像コンソールCSL1において、PC50は、中継器20から伝送されてくる血管内視鏡画像のデータ(ステップS8参照)を入力して受け取るとともに(S11)、アンギオグラフィ装置90から伝送されてくるアンギオ画像のデータ(ステップS10参照)を入力して受け取る(S12)。PC50は、ステップS11で取得された血管内視鏡画像に結合された計測データとアンギオ画像に映る血管内視鏡10のマーカMK1(
図11あるいは
図13参照)の位置とを照合する(S13)。これは、例えば血管内視鏡10がプルバックされる時に若干撓む可能性があったり、アンギオグラフィ装置90の撮像タイミングと血管内視鏡10の撮像タイミングとのタイムラグがあったりするために、アンギオ画像のフレームと血管内視鏡画像のフレームとの撮像タイミングが一致しないためであることを考慮したものである。PC50は、アンギオ画像と計測データとの照合に基づいて、血管内視鏡画像のデータと結合されるべき計測データを必要に応じて補正(修正)し、最終計測データを生成する(S13)。なお、補正(修正)が必要ないとプロセッサ54によって判断された場合には、ステップS11において入力された血管内視鏡画像のデータに結合されている計測データが上述した最終計測データとなる。
【0064】
PC50は、ステップS13で得られた最終計測データと結合されている血管内視鏡画像のデータを用いて上述した等速動画を生成し、等速動画を構成する複数枚の血管内視鏡画像のデータを用いて、観察部位(例えば血管)の血管径を算出する(S14)。このステップS14の処理の詳細については後述する。また、PC50は、血管径の算出結果が含まれる、アンギオ画像が主に映る表示画面WD1(
図11参照)、血管内視鏡画像が主に映る表示画面WD2(
図12参照)、アンギオ画像および血管内視鏡画像の両方が主に映る表示画面WD3(
図13参照)のそれぞれを生成してストレージ56に蓄積する(S14)。
【0065】
また、PC50は、血管径の算出結果が含まれる、アンギオ画像が主に映る表示画面WD1(
図11参照)、血管内視鏡画像が主に映る表示画面WD2(
図12参照)、アンギオ画像および血管内視鏡画像の両方が主に映る表示画面WD3(
図13参照)のうちいずれかをストレージ56から読み出してモニタ70に表示する(S15)。さらに、PC50は、ステップS15のモニタ70の表示と同期するように、血管径の算出結果が含まれる、アンギオ画像が主に映る表示画面WD1(
図11参照)、血管内視鏡画像が主に映る表示画面WD2(
図12参照)、アンギオ画像および血管内視鏡画像の両方が主に映る表示画面WD3(
図13参照)のうちいずれかをストレージ56から読み出して医師対面モニタ80に出力して表示する(S16)。
【0066】
ここで、
図7のステップS14の血管径算出の動作概要について、
図8、
図9および
図10を参照して説明する。
図8は、
図7のステップS14の血管径算出の動作手順例を示すフローチャートである。
図9は、血管画像上における特徴点の配置、特徴点と対応点の位置関係、および3次元点を用いて推定された血管径を示す図である。
図10は、3次元位置の算出例を示す図である。
図8の処理は、例えば、
図7のステップS14において作成される等速動画を構成する複数枚の血管内視鏡画像のデータを用いて、血管径を算出する処理である。
【0067】
ユーザは、PC50に対し、円の中心と半径を入力するだけでよい。プロセッサ54は、操作部55を介して、ユーザ入力による円の中心と半径を受け付ける。プロセッサ54は、CCU30から入力した血管内視鏡画像のデータに対し、血管内視鏡画像の全体に配置された複数(例えば1156)個の測定点の中から、円の中心と半径に基づく円周上に複数(例えば128)個の特徴点e1を検出する(S51)。なお、1156個の測定点および128個の特徴点の数は一例である。
【0068】
図9において、血管内視鏡10で撮像された血管内視鏡画像GZ1に対し、ユーザにより指定された円の円周上に128個の特徴点e1が重畳して描画される。プロセッサ54は、特徴点e1を検出した血管内視鏡画像GZ1が1フレーム目の画像であるか否かを判別する(S52)。1フレーム目の画像である場合(S52、YES)、プロセッサ54は、
図8に示す処理を終了し、血管径を算出することなく元の処理に復帰する。
【0069】
一方、ステップS52で2フレーム目以降の画像である場合(S52、NO)、プロセッサ54は、第1の特徴点マッチングを行う(S53)。第1の特徴点マッチングでは、プロセッサ54は、前フレーム(言い換えると、第(n-1)番目フレーム)の特徴点近傍の矩形領域をテンプレートとして取得する(n:2以上の整数)。一例として、テンプレートサイズは、幅16ピクセル×高さ16ピクセルのサイズである。
【0070】
プロセッサ54は、現フレーム(言い換えると、第n番目フレーム)の特徴点位置を中心とした矩形領域を、探索範囲としてテンプレートと一致する領域を探索する。探索範囲のサイズは、幅128ピクセル×高さ128ピクセルのサイズである。プロセッサ54は、ZNCC(Zero-means Normalized Cross Correction)値が最小となる位置を特徴点e1に対応する対応点f2とする。なお、第n番目フレームは、第(n-1)番目フレームに対し、血管内視鏡10が手前に引かれた状態の画像であるので、複数の対応点f2が形成する円は、複数の特徴点e1が形成する円と比べ、小さくなる。
【0071】
プロセッサ54は、第(n-1)番目フレームに含まれる特徴点e1と第n番目フレームに含まれる対応点f2を用いて、消失点dpを推定する(S54)。消失点dpの推定では、プロセッサ54は、全ての特徴点e1および対応点f2に対し、特徴点e1から対応点f2へのフローを求める。プロセッサ54は、2つのフローの交点を求める。プロセッサ54は、全ての特徴点e1から交点までのベクトルを求める。プロセッサ54は、このフローと各ベクトルとの類似度(ここでは角度差)を求め、この類似度が閾値を超えるか否か、例えばフローとベクトルの角度差が3°未満であるか否かを判別する。プロセッサ54は、角度差が3°未満である場合、この特徴点e1を有効な特徴点(以下、「インライア」と称する場合がある)であると判定する。一方、プロセッサ54は、角度差が3°以上である場合、この特徴点e1を無効な特徴点(以下、「アウトライア」と称する場合がある)であると判定する。プロセッサ54は、全てのフローの交点に対し、インライアの数を算出する。プロセッサ54は、インライアの数が最も多いフローの交点を消失点dpとする。
【0072】
プロセッサ54は、クロスチェックのために第2の特徴点マッチングを行う(S55)。第2の特徴点マッチングでは、プロセッサ54は、現フレーム(つまり、第n番目フレーム)の対応点近傍の矩形領域をテンプレートとして取得する。一例として、テンプレートサイズは、幅16ピクセル×高さ16ピクセルのサイズである。プロセッサ54は、前フレーム(つまり、第(n-1)番目フレーム)の対応点位置を中心とした矩形領域を、探索範囲としてテンプレートと一致する領域を探索する。探索範囲のサイズは、幅128ピクセル×高さ128ピクセルのサイズである。プロセッサ54は、ZNCC値が最小となる位置を対応点f2に対応する特徴点(対応特徴点)とする。プロセッサ54は、前フレーム(つまり、第(n-1)番目フレーム)における、特徴点e1と対応特徴点とが略一致するか否かを判別する。特徴点e1と対応特徴点との略一致は、例えば位置座標を基に判別可能である。プロセッサ54は、特徴点e1と対応特徴点とが略一致する場合、対応点f2が信頼性ありと判断し、特徴点e1と対応特徴点とが略一致しない場合、対応点f2が信頼性なしと判断する。プロセッサ54は、信頼性ありと判断された特徴点e1をインライアとして採用し、信頼性なしと判断された特徴点e1をアウトライアとして採用しない。
【0073】
プロセッサ54は、インライアである特徴点e1の3次元位置を算出する(S56)。特徴点e1の3次元位置の算出には、例えば三角測量が用いられる。三角測量は、2点間の距離およびこれら2点から測定したい特徴点への角度をそれぞれ測定することで、特徴点の位置を求める、三角法および幾何学を用いた周知の測量方法である。
【0074】
図10において、特徴点e1の3次元座標Eを(X,Y,Z)とする。Xは、血管の径(短軸)方向を表すx軸の座標値である。Yは、x軸に対し垂直な血管の径方向を表すy軸の座標値である。Zは、血管の長手(長軸)方向を表すz軸の座標値である。第(n-1)番目フレームのカメラ位置g1における、特徴点e1の画像座標p1を(u1,u2)とする。第n番目フレームのカメラ位置g2における、対応点f2の画像座標p2を(u2,v2)とする。第(n-1)番目フレームのカメラ位置g1と第n番目フレームのカメラ位置g2の間の距離をDとする。ここで、距離Dは、ユーザがマニュアルプルバック装置MPB1を介して血管内視鏡10をプルバックする際、第(n-1)番目フレームのカメラ位置と第n番目フレームのカメラ位置の撮像時間差とプルバック速度との積で算出される。
【0075】
カメラの内部パラメータの行列Kを数式(1)で表す。
【0076】
【0077】
ここで、fx:焦点距離を水平画素ピッチで割った値、fy:焦点距離を垂直画素ピッチで割った値、Cx:画像中心のx座標、Cy:画像中心のy座標である。
【0078】
特徴点e1の画像座標p1と3次元座標Eは、数式(2)で表される。
【0079】
【0080】
対応点f2の画像座標p2と3次元座標Eは、数式(3)で表される。
【0081】
【0082】
プロセッサ54は、例えば三角測量関数を使用し、画像座標p1と画像座標p2に対応する、特徴点e1の3次元座標Eを求める。プロセッサ54は、特徴点e1の3次元座標Eを3次元の立体画像としてモニタ70に表示(3D表示)可能である。
【0083】
プロセッサ54は、複数の特徴点e1の3次元座標Eを基に、楕円フィッティングが行われる平面を検出する(S57)。平面の検出では、プロセッサ54は、複数の特徴点e1(3次元点という)の中から3点を選択し、これら3点を含む平面を表す式(平面式という)を求める。プロセッサ54は、求めた平面との距離が所定距離以内で平面に近い3次元点の数を計数する。プロセッサ54は、計数した3次元点の数が最も多くなる平面式を選択する。プロセッサ54は、選択した平面式で表される平面に近い3次元点を抽出する。プロセッサ54は、抽出した3次元点群を基に、主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)を行い、平面を検出する。主成分分析は、相関のある多数の変数から相関のない少数で全体のばらつきを最もよく表す主成分と呼ばれる変数を合成する多変量解析の一手法である。
【0084】
プロセッサ54は、平面からの距離が所定距離を超えて離れている特徴点e1をアウトライアとし、所定距離以内である特徴点e1をインライアとして血管径の推定に採用する。
【0085】
プロセッサ54は、複数の特徴点e1を基に、楕円フィッティングを行って血管径を推定する(S58)。楕円フィッティングでは、複数の特徴点e1をx-y平面に投影し、x-y平面に投影された2次元点に対し、RANSAC(Random Sample Consensus)を利用したフィッティングが行われる。RANSACは、外れ値を含まないように、楕円パラメータを推定する手法である。
【0086】
プロセッサ54は、RANSACを利用することで、複数の2次元点に外れ値が含まれても、その影響を抑えて楕円を推定できる。したがって、楕円の推定精度が向上する。具体的に、プロセッサ54は、複数の2次元点を入力し、入力した複数の2次元点の中から5点をランダムに抽出する。プロセッサ54は、抽出した5点を用いて楕円パラメータを求める。楕円パラメータは、長径および短径を含む。プロセッサ54は、各2次元点から楕円弧までの最短距離を算出し、その距離が閾値より小さくなる2次元点の数(インライア数)を計数し、メモリ53に記録する。プロセッサ54は、入力した複数の2次元点の中から別の5点を抽出し、上記と同様の手順で、インライア数を計数する。プロセッサ54は、計数したインライア数がメモリ53に記録されたインライア数を超える場合、メモリ53に記録されたインライア数を更新する。プロセッサ54は、同様の手順を繰り返し、メモリ53に記録されるインライア数が一定回数連続して更新されなかった場合、つまり最大となるインライア数が得られた場合、2次元点の抽出を終了する。プロセッサ54は、全ての2次元点に対し、インライア数が最大となる楕円パラメータを用いて、各2次元点から楕円弧までの最短距離が閾値より小さくなる2次元点をインライアとして決定する。プロセッサ54は、決定した全てのインライアを用いて、楕円パラメータを求める。全てのインライアを用いて楕円パラメータを求めた結果、プロセッサ54は、楕円パラメータの1つである長径を血管径φ1と推定する。プロセッサ54は、血管径を長径とすることで、血管に挿通可能なステントのサイズを適正に決定できる。
【0087】
なお、ここでは、プロセッサ54は、特徴点に対応する対応点をテンプレートマッチングによって取得したが、例えば第(n-1)番目フレームの特徴点および第n番目フレームの対応点を用いて、ディープラーニングによる機械学習を行い、機械学習の結果生成された学習済みモデルを使用し、第(n-1)番目フレームの特徴点に対応する第n番目フレームの対応点を取得してもよい。
【0088】
また、プロセッサ54は、楕円パラメータの長径を血管径として推定したが、短径を血管径として推定してもよい。また、プロセッサ54は、長径と短径を用い、例えば長径と短径を加算しその半分の値を用いて、血管径を推定してもよい。
【0089】
また、ユーザのマニュアルプルバック装置MPB1を介した操作により血管内視鏡10がプルバックされる際、PC50(例えばプロセッサ54)は、血管内視鏡10で撮像される、血管内視鏡10の位置情報に対応する血管内視鏡画像を順次取得しており、ストレージ56に血管短軸断面画像として記録してよい。ここで、短軸断面とは、血管を略円筒形状とみなした場合に、血管径の方向(つまり直径方向である短軸方向)の断面を示す。また、短軸方向に垂直な方向を長軸方向と定義する。また、PC50(例えばプロセッサ54)は、マニュアルプルバック装置MPB1から順次入力される血管内視鏡10の位置情報を基に、血管の計測長TAR1(
図11~
図13参照)を算出してよい。PC50は、ストレージ56に記録された複数枚の血管短軸断面画像を基に、血管の3次元画像を生成し、血管の3次元画像を血管の長軸方向に沿って切断することで血管長軸断面画像LGT1(
図11~
図13参照)を生成する。長軸断面とは、同様に血管を略円筒形状とみなした場合に、血管の長さ方向(長手方向)の断面を示す。PC50は、血管径の算出結果と血管短軸断面画像と血管長軸断面画像とを含む表示画面WD1(
図11参照),WD2(
図12参照),WD3(
図13参照)をモニタ70に表示してよい。
【0090】
図11は、アンギオ画像ANG1の表示画面WD1の一例を示す図である。表示画面WD1は、アンギオ画像ANG1の表示領域を有する。アンギオ画像ANG1はプロセッサ54によって生成される。アンギオ画像ANG1には、アウターシースOS1により外周が覆われた血管内視鏡10とその先端部TP1に設けられたマーカMK1とが映っている。また、アンギオ画像ANG1には、医師等のユーザにより定められた血管内視鏡10を引き戻すための計測の開始位置から終了位置までの範囲を示す計測長TAR1に相当する計測範囲VSL1も映っている。
【0091】
また、表示画面WD1は、計測範囲VSL1に相当する計測長TAR1以上の長さを有する血管長軸断面画像LGT1の表示領域と、ユーザの操作を受け付けるボタンエリアBT1の表示領域と、計測結果を表示するための計測結果表示エリアMRT1の表示領域とを有する。計測長TAR1の計測の開始位置での血管径は5.3mmと算出されたことが示され、計測長TAR1の計測の終了位置での血管径は6.1mmと算出されたことが示されている。血管長軸断面画像LGT1には、アンギオ画像ANG1が示す血管内視鏡10の位置を示す指定バーBAR1がユーザの操作により重畳して表示される。ユーザの操作により計測長TAR1内で指定バーBAR1が適宜左右方向にスライドされることで、プロセッサ54は、指定バーBAR1が示す位置にマーカMK1が映るアンギオ画像ANG1をストレージ56から読み出して表示画面WD1を生成する。
【0092】
図12は、血管内視鏡画像VED1の表示画面WD2の一例を示す図である。表示画面WD2は、血管内視鏡画像VED1の表示領域を有する。血管内視鏡画像VED1はプロセッサ54によって生成される。血管内視鏡画像VED1の真下には、ユーザが血管内視鏡10を手動でプルバックしている時のプルバック速度の目安を示すインジケータIND1が表示される。このインジケータIND1は、例えば3段階の色分けで示され、緑色だけで示される場合には適正なプルバック速度(
図3の特性PTY2参照)であること、黄色だけで示される場合にはプルバック速度が遅いこと(
図3の特性PTY1参照)、赤色だけで示される場合にはプルバック速度が速い(
図3の特性PTY3参照)ことを示す。プロセッサ54は、中継器20から都度伝送されてくる血管内視鏡画像VED1と結合されている計測データに基づいて、現在のプルバック速度が速い状態、適正な状態、遅い状態のうちいずれかを判定し、判定結果に対応する色を選択してインジケータIND1を生成して血管内視鏡画像VED1の表示画面WD2に重畳する。
【0093】
また、表示画面WD2は、計測範囲VSL1に相当する計測長TAR1以上の長さを有する血管長軸断面画像LGT1の表示領域と、ユーザの操作を受け付けるボタンエリアBT2の表示領域と、計測結果を表示するための計測結果表示エリアMRT2の表示領域とを有する。計測長TAR1の計測の開始位置での血管径は5.3mmと算出されたことが示され、計測長TAR1の計測の終了位置での血管径は6.1mmと算出されたことが示されている。血管長軸断面画像LGT1には、血管内視鏡10の位置を示す指定バーBAR1がユーザの操作により重畳して表示される。ユーザの操作により計測長TAR1内で指定バーBAR1が適宜左右方向にスライドされることで、プロセッサ54は、指定バーBAR1が示す位置に対応する血管内視鏡画像VED1をストレージ56から読み出して表示画面WD1を生成する。
【0094】
図13は、アンギオ画像ANG1および血管内視鏡画像VED1を対比表示する表示画面WD3の一例を示す図である。表示画面WD3は、アンギオ画像ANG1および血管内視鏡画像VED1のそれぞれの表示領域を有する。アンギオ画像ANG1および血管内視鏡画像VED1の表示領域のそれぞれは
図11、
図12を参照して説明した内容と重複するので説明を省略する。
【0095】
また、表示画面WD3は、計測範囲VSL1に相当する計測長TAR1以上の長さを有する血管長軸断面画像LGT1の表示領域と、ユーザの操作を受け付けるボタンエリアBT3の表示領域と、計測結果を表示するための計測結果表示エリアMRT3の表示領域とを有する。計測長TAR1の計測の開始位置での血管径は5.3mmと算出されたことが示され、計測長TAR1の計測の終了位置での血管径は6.1mmと算出されたことが示されている。血管長軸断面画像LGT1には、血管内視鏡10の位置を示す指定バーBAR1がユーザの操作により重畳して表示される。ユーザの操作により計測長TAR1内で指定バーBAR1が適宜左右方向にスライドされることで、プロセッサ54は、指定バーBAR1が示す位置にマーカMK1が映るアンギオ画像ANG1、ならびに指定バーBAR1が示す位置に対応する血管内視鏡画像VED1のそれぞれをストレージ56から読み出して表示画面WD1を生成する。
【0096】
以上により、実施の形態1に係る血管観察システム100は、先端部TP1が被検体の血管内に挿入されかつ基端部BE1が固定され、ユーザの操作により先端部TP1が基端部BE1に向かってプルバックされる間に被検体の血管を撮像する血管内視鏡10を有する。血管観察システム100は、血管内視鏡10の基端部BE1を固定するアンカー部AC1を有し、ユーザの操作に基づくプルバック中の血管内視鏡10の位置情報および速度情報を取得するマニュアルプルバック装置MPB1を有する。血管観察システム100は、マニュアルプルバック装置MPB1から送られる血管内視鏡10の位置情報および速度情報に基づいて、マニュアルプルバック中に血管内視鏡10により撮像された血管画像(血管内視鏡画像)が略一定時間ごとに取得されたか否かを判定し、血管画像が略一定時間ごとに取得されたと判定した場合に、血管内視鏡10の位置情報に対応する血管画像の表示画面をモニタ70あるいは医師対面モニタ80に表示するコントローラ(例えば中継器20およびPC50、あるいはPC50)を有する。
【0097】
これにより、血管観察システム100は、手術等の時に医師等のユーザが被検体内の血管壁等を傷つけないように血管内視鏡をマニュアルプルバックする際に血管内視鏡10のプルバック速度が適正な範囲であるか否かを確かめることができ、マニュアルプルバックによるプルバック速度が適正な範囲である時に血管内視鏡10が撮像した画像をモニタ70に表示できる。したがって、血管観察システム100は、手術等の医療行為の安全性の確保と医師等のユーザによる血管内の観察の利便性との両立を適切に図ることができ、さらには、ユーザによる被検体内に挿通される適切な径のステントの選択を支援することができる。特に実施の形態1では、中継器20が血管画像のデータと血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータとを結合するので、PC50は、血管画像のデータ取得と同期(一致)したタイミングで取得した位置情報および速度情報のデータを用いて、血管画像の等速動画をリアルタイムに生成し、被検体の観察部位である血管の血管径を高精度に算出できる。
【0098】
また、コントローラ(例えばPC50)は、マニュアルプルバック中に血管画像が略一定時間ごとに取得されない場合に、血管内視鏡10のプルバック速度を示すインジケータIND1をモニタ70あるいは医師対面モニタ80に表示する。これにより、医師等のユーザは、血管内視鏡10のプルバック速度が適正な範囲であるか否かを直感的かつ視覚的に分かり易く確かめることができる。
【0099】
また、コントローラは、血管内視鏡10の位置情報および速度情報とその位置情報で血管内視鏡10により撮像された血管画像とを関連付けし、血管画像に対応する血管内視鏡10の位置情報および速度情報に基づいて、マニュアルプルバック中に血管画像が略一定時間ごとに取得されたか否かを判定する。これにより、画像コンソールCSL1は、血管内視鏡10が撮像した血管画像のフレームと血管内視鏡10の撮像位置での計測データとを関連付けでき、マニュアルプルバック中に血管画像が略一定時間ごとに取得されたか否かの判定処理の信頼性を向上できる。
【0100】
また、コントローラは、マニュアルプルバック終了後に血管画像が略一定時間ごとに取得されなかったと判定した場合に、血管内視鏡10のマニュアルプルバックの再実行の指示をモニタ70あるいは医師対面モニタ80に表示する。これにより、医師等のユーザは、適切なプルバック速度でマニュアルプルバックをできなかったことを視覚的に分かり易く把握できる。つまり、血管観察システム100は、適切なプルバック速度でのマニュアルプルバックの実行をユーザに意識付けさせることができる。
【0101】
また、コントローラは、マニュアルプルバックの再実行前に取得された複数枚の血管画像とマニュアルプルバックの再実行後に取得された複数枚の血管画像とに基づいて(
図4~
図6参照)、血管内視鏡10により撮像された血管画像が略一定時間ごとに取得されたか否かを判定する。これにより、血管観察システム100は、マニュアルプルバックの再実行前に取得された複数枚の血管画像とマニュアルプルバックの再実行後に取得された複数枚の血管画像とを適宜組み合わせることで、適切なプルバック速度でマニュアルプルバックされた時に得られる推奨時間値t1ごとに取得されたフレームFLMを柔軟に選別でき、血管径算出に必要となる等速動画を的確に生成できる。
【0102】
また、コントローラは、血管内視鏡10が挿入された被検体の血管を撮像する血管造影装置(例えばアンギオグラフィ装置90)と接続され、アンギオグラフィ装置90により撮像された血管造影画像(例えばアンギオ画像ANG1)と血管内視鏡10により撮像された血管画像(例えば血管内視鏡画像VED1)とを対比表示した表示画面WD3をモニタ70あるいは医師対面モニタ80に表示する。これにより、医師等のユーザは、例えばユーザと手術台を挟んで対面可能に配置された医師対面モニタ80等でアンギオ画像ANG1と血管内視鏡画像VED1との両方を見比べながら患部(例えば血管)の状態を効率的かつ分かり易く観察できる。
【0103】
また、コントローラは、血管内視鏡10の位置情報および速度情報とその位置情報で血管内視鏡10により撮像された血管内視鏡画像とを関連付けし、血管造影画像(例えばアンギオ画像)に基づいて、血管画像に対応する血管内視鏡10の位置情報を補正する。これにより、例えば血管内視鏡10がプルバックされる時に若干撓む可能性があったり、アンギオグラフィ装置90の撮像タイミングと血管内視鏡10の撮像タイミングとのタイムラグがあったりしても、血管観察システム100は、アンギオグラフィ装置90からのアンギオ画像を参照して血管内視鏡10の位置情報を正しく修正できる。
【0104】
また、コントローラは、関連付けされた血管画像と血管内視鏡10の位置情報および速度情報とを用いて、略一定時間ごとに取得された複数枚の血管画像に基づいて血管の血管径を算出する。これにより、血管観察システム100は、血管画像に配置された、血管径の測定に有効な特徴点を用いて、血管径を正確に測定できる。
【0105】
また、血管内視鏡10は、被検体の血管を撮像可能な画像センサを有する。画像センサは、血管内視鏡の先端部に実装されている。これにより、血管観察システム100は、高解像度を有して血管内視鏡10により撮像された血管画像を用いて、血管内の様子を観察可能な表示画面を生成でき、ユーザの利便性を向上できる。
【0106】
(実施の形態2)
実施の形態1では、中継器20が、血管内視鏡10で撮像された血管画像のデータと、ユーザがマニュアルプルバック装置MPB1を介して血管内視鏡10を引き戻す際の血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータを取得し、これらの同期したデータ(つまり、取得タイミングが一致するデータ)を結合した。実施の形態2では、PC50が、血管内視鏡10で撮像された血管画像のデータと、ユーザがマニュアルプルバック装置MPB1を介して血管内視鏡10を引き戻す際の血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータを別々に入力する例を説明する。この場合、血管画像のデータと、血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータとは、PC50への入力タイミングによっては同期したデータ(つまり、取得タイミングが一致するデータ)になるとは限らない。このため、実施の形態2では、PC50は、例えば、血管画像のデータ取得に時間がかかる場合、血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータ取得時刻に所定の遅延時間(ディレイ)を加えることで、これらのデータの対応付け(つまり、上述した同期したデータの生成)が可能となる。ここでは、PC50は、入力された血管画像のデータと血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータとのそれぞれに、PC50に入力された時刻を示すタイムスタンプを付与し、これらのデータを対応付ける。
【0107】
図14は、実施の形態2に係る血管観察システム100Aの構成例を示す図である。実施の形態2に係る血管観察システム100Aの構成は、実施の形態1に係る血管観察システム100とほぼ同一の構成を有する。実施の形態2に係る血管観察システム100Aの構成の説明において、実施の形態1に係る血管観察システム100の構成と同一の構成については同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0108】
血管観察システム100Aでは、マニュアルプルバック装置MPB1は、血管内視鏡10を引き戻す際の血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータを画像コンソールCSL2のPC50に送る。血管内視鏡10で撮像される血管画像のデータは、実施の形態1と同様に中継処理部20Aに送られる。中継処理部20Aは、実施の形態2に係る画像コンソールCSL2の一部を構成し、実質的に実施の形態1に係る中継器20と同一の構成を有するものであり、血管画像のデータを画像コンソールCSL2のCCU30に送る。
【0109】
PC50のプロセッサ54は、マニュアルプルバック装置MPB1から受信した血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータにタイムスタンプを付与する。このタイムスタンプは、例えばプロセッサ54がマニュアルプルバック装置MPB1から受け取ったデータをストレージ56に保存した時の時刻を示す。また、PC50のプロセッサ54は、血管内視鏡10から中継処理部20AおよびCCU30を介して入力した血管画像のデータにタイムスタンプを付与する。このタイムスタンプは、例えばプロセッサ54がCCU30から受け取ったデータをストレージ56に保存した時の時刻を示す。
【0110】
PC50のプロセッサ54は、血管画像のデータの取得と血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータの取得との時間差が予め分かっている場合、一方のデータの取得時間に遅延時間を加算もしくは減算することで、これらのデータを対応付ける。また、血管画像のデータの取得と、血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータの取得とに特に時間差が無く、単に異なるタイミングでこれらのデータがPC50に入力される場合、PC50のプロセッサ54は、タイムスタンプが略一致する、これらのデータを対応付ける。PC50のプロセッサ54は、血管内視鏡10の異なる位置情報ごとに、対応付けられた血管画像のデータと、血管内視鏡の位置情報および速度情報のデータとをストレージ56に順次記録する。
【0111】
図15は、実施の形態2に係る血管観察システム5Aの動作手順の一例を示すフローチャートである。
図15の説明において、
図7に示す処理と同一の処理については、同一のステップ番号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0112】
図15において、中継処理部20Aは、マニュアルプルバック装置MPB1からの血管内視鏡画像(フレームFLM)のデータを都度入力する(S5A)。中継処理部20Aは、マニュアルプルバック装置MPB1からの血管内視鏡10の位置情報および速度情報(計測データ)を入力する(S6A)。中継処理部20Aは、血管内視鏡画像のデータの入力タイミング(つまり入力した時と同時刻)にマニュアルプルバック装置MPB1から入力された血管内視鏡10の計測データを関連付け(結合)する(S7A)。結合例として、例えば中継処理部20Aは、血管内視鏡画像のデータに血管内視鏡10の計測データを重畳する。中継処理部20Aは、ドライブモードであるマニュアルプルバック装置MPB1のアンカー部AC1およびドライブユニット部DVU1のそれぞれからの計測データを照合し、不足データ(
図4~
図6参照)を補正する(S8A)。なお、ドライブレスモードである場合には、中継処理部20Aによる計測データの照合および補正は省略される。中継処理部20Aは、ステップS7Aの結合(例えば重畳)後の血管内視鏡画像のデータを画像コンソールCSL1(例えばPC50)に伝送する(S8A)。この伝送は、例えば血管内視鏡10により撮像される血管内視鏡画像をユーザがリアルタイムで閲覧かつモニタ70にて表示可能なフレームレートで行われる。
【0113】
また、画像コンソールCSL2において、PC50は、中継処理部20Aから伝送されてくる血管内視鏡画像のデータ(ステップS8A参照)を入力して受け取るとともに(S11A)、アンギオグラフィ装置90から伝送されてくるアンギオ画像のデータ(ステップS10参照)を入力して受け取る(S12)。ステップS13以降の処理は実施の形態1と同一であるため、説明を省略する。
【0114】
このように、実施の形態2に係る血管観察システム100Aでは、PC50は、血管画像のデータと血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータとの対応付けをソフトウェア処理で行う。したがって、中継処理部20Aは、血管内視鏡10から取得した血管画像のデータをPC50に転送するだけでよく、中継器20の構成を簡略化でき、電子部品等のハードウェアを削減できる。
【0115】
以上により、血管観察システム100Aでは、PC50は、血管内視鏡10により撮像された血管画像のデータとユーザがマニュアルプルバック装置MPB1を介して手動でプルバックしている間の血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータとを入力して対応付けてストレージ56に保存する。PC50は、ストレージ56に保存された血管画像のデータの入力タイミングと血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータの入力タイミングとの差分に基づいて血管画像の等速動画を生成し、等速動画を構成する複数枚の血管画像に基づいて血管の血管径を測定する。
【0116】
これにより、血管観察システム100Aは、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。例えば、血管観察システム100Aは、手術等の時に医師等のユーザが被検体内の血管壁等を傷つけないように血管内視鏡をマニュアルプルバックする際に血管内視鏡10のプルバック速度が適正な範囲であるか否かを確かめることができ、マニュアルプルバックによるプルバック速度が適正な範囲である時に血管内視鏡10が撮像した画像をモニタ70に表示できる。したがって、血管観察システム100Aは、手術等の医療行為の安全性の確保と医師等のユーザによる血管内の観察の利便性との両立を適切に図ることができ、さらには、ユーザによる被検体内に挿通される適切な径のステントの選択を支援することができる。実施の形態2でも、中継処理部20Aが血管画像のデータと血管内視鏡10の位置情報および速度情報のデータとを結合するので、PC50は、血管画像のデータ取得と同期(一致)したタイミングで取得した位置情報および速度情報のデータを用いて、血管画像の等速動画をリアルタイムに生成し、被検体の観察部位である血管の血管径を高精度に算出できる。
【0117】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本開示は、手術等の医療行為の安全性の確保と医師等のユーザによる血管内の観察の利便性との両立を適切に図る血管観察システムおよび血管観察方法として有用である。
【符号の説明】
【0119】
10 血管内視鏡
20 中継器
21 FPGA
22 AFE
23、24、25 インターフェース
30 CCU
50 PC
51 画像キャプチャーボード
52 入力インターフェース
53 メモリ
54 プロセッサ
55 操作部
56 ストレージ
57 出力インターフェース
70 モニタ
80 医師対面モニタ
90 アンギオグラフィ装置
100、100A 血管観察システム
BE1 基端部
CSL1 画像コンソール
GW1 ガイドワイヤ
MPB1 マニュアルプルバック装置
OS1 アウターシース
TP1 先端部