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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】車両制御システム及び区画線推定方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/12 20200101AFI20221220BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20221220BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221220BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221220BHJP
【FI】
B60W30/12
B60W60/00
G08G1/16 A
G06T7/00 650A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020219115
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104108
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 康一郎
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-86489(JP,A)
【文献】特開2014-13450(JP,A)
【文献】特開2010-52716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する走行路の画像を撮影する撮像装置と、
前記撮像装置が撮影した画像に基づいて前記走行路上の区画線の位置を推定する区画線推定部と、を備えた車両制御システムであって、
前記区画線推定部は、
前記車両が第1の位置を走行しているときに前記撮像装置が撮影した画像に基づいて第1区画線点列を生成し、
前記車両が前記第1の位置よりも車両走行方向後方の第2の位置を走行しているときに前記撮像装置が撮影した画像に基づいて前記第1区画線点列に対して車両走行方向後方にずれた第2区画線点列を生成し、
前記第1区画線点列及び前記第2区画線点列に基づいて、前記第1区画線点列に対して車両走行方向後方に延長された補正区画線点列を生成し、
前記補正区画線点列に基づいて前記走行路上の前記区画線の位置を推定することを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記第1区画線点列、前記第2区画線点列、前記補正区画線点列は、それぞれ、複数の第1区画点、複数の第2区画点、複数の補正区画点によって構成され、
前記区画線推定部は、前記第1区画線点列と前記第2区画線点列の車両走行方向の位置が重なる重複区間では、前記各第1区画点から前記各補正区画点までの距離と前記各第2区画点から前記各補正区画点までの距離の比が一定になるように、前記補正区画線点列を生成することを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記区画線推定部は、前記第1区画線点列と前記第2区画線点列の車両走行方向の位置が重ならない非重複区間では、前記重複区間のうちで前記非重複区間に最も近い位置における前記第1区画点又は前記第2区画点から前記補正区画点までの距離と前記非重複区間における前記第1区画点又は前記第2区画点から前記補正区画点までの距離とが一致するように、前記補正区画線点列を生成することを特徴とする請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記第1区画線点列は、前記車両の真横の点である基準点を含み、
前記区画線推定部は、
前記基準点の軌跡である基準点軌跡を生成し、
前記補正区画線点列と前記基準点軌跡とのずれ量に応じて前記補正区画線点列の回転補正量を算出し、
前記補正区画線点列を前記回転補正量だけ回転させ、
回転した前記補正区画線点列に基づいて前記走行路上の前記区画線の位置を推定することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記区画線推定部は、前記回転補正量が所定の閾値を超える場合に、前記回転補正量から前記閾値を超える部分を差し引くことを特徴とする請求項4に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記撮像装置は、車外カメラであり、
前記区画線推定部は、前記車外カメラが撮影した画像に基づいて認識される前記区画線であるカメラ区画線が有効であるか否かを判定し、前記カメラ区画線が有効であると判定した場合に限り、前記補正区画線点列を生成することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記区画線推定部が推定した前記走行路上の前記区画線の位置に基づいて車線維持支援制御を実行する走行制御部を更に備えていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記車両の周辺領域の地図を生成する地図生成部と、
前記区画線推定部が推定した前記走行路上の前記区画線の位置と前記地図上の前記区画線の位置とを照合することで前記地図上の前記車両の位置を推定する自車位置推定部と、を更に備えていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項9】
車両が走行する走行路上の区画線の位置を推定する区画線推定方法であって、
前記車両が第1の位置を走行しているときに撮影された画像に基づいて第1区画線点列を生成するステップと、
前記車両が前記第1の位置よりも車両走行方向後方の第2の位置を走行しているときに撮影された画像に基づいて前記第1区画線点列に対して車両走行方向後方にずれた第2区画線点列を生成するステップと、
前記第1区画線点列及び前記第2区画線点列に基づいて、前記第1区画線点列よりも車両走行方向後方に延長された補正区画線点列を生成するステップと、
前記補正区画線点列に基づいて前記走行路上の前記区画線の位置を推定するステップと、を含むことを特徴とする区画線推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム及び区画線推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置が撮影した画像に基づいて走行路上の区画線の位置を推定する方法が種々提案されている。例えば、特許文献1では、現在の区画線(白線)の画像から生成した微分画像に一定時間前の区画線の画像から生成した微分画像を重ね合わせ、この重ね合わせた微分画像上の区画線の候補点列を近似する直線を求め、この直線の位置を区画線の位置として推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3584194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、現在の区画線の画像と一定時間前の区画線の画像が重ね合わされた区間でのみ、区画線の位置を推定することができる。そのため、区画線の位置を推定することができる距離が不十分となり、推定された区画線の位置と地図上の区画線の位置とを照合して地図上の自車位置を推定する場合に、地図上の自車位置を正確に推定することが困難になる虞がある。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、区画線の位置を推定することができる距離を十分に確保することが可能な車両制御システム及び区画線推定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様に係る車両制御システム(1)は、車両(V)が走行する走行路の画像を撮影する撮像装置(18)と、前記撮像装置が撮影した画像に基づいて前記走行路上の区画線の位置を推定する区画線推定部(31)と、を備え、前記区画線推定部は、前記車両が第1の位置(A1)を走行しているときに前記撮像装置が撮影した画像に基づいて第1区画線点列(P1)を生成し、前記車両が前記第1の位置よりも車両走行方向後方の第2の位置(A2)を走行しているときに前記撮像装置が撮影した画像に基づいて前記第1区画線点列に対して車両走行方向後方にずれた第2区画線点列(P2)を生成し、前記第1区画線点列及び前記第2区画線点列に基づいて、前記第1区画線点列に対して車両走行方向後方に延長された補正区画線点列(P3)を生成し、前記補正区画線点列に基づいて前記走行路上の前記区画線の位置を推定することを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、第1区画線点列に対して車両走行方向後方に延長された補正区画線点列に基づいて走行路上の区画線の位置が推定される。そのため、第1区画線点列そのものに基づいて走行路上の区画線の位置を推定する場合と比較して、走行路上の区画線の位置を推定することができる距離を延ばすことができる。また、第1区画線点列だけでなく第2区画線点列にも基づいて走行路上の区画線の位置が推定される。そのため、車両が第1の位置を走行しているときに撮像装置が撮影した画像に含まれるノイズによって走行路上の区画線の位置の推定精度が低下するのを抑制することができる。
【0008】
上記の態様において、前記第1区画線点列、前記第2区画線点列、前記補正区画線点列は、それぞれ、複数の第1区画点(Q1)、複数の第2区画点(Q2)、複数の補正区画点(Q3)によって構成され、前記区画線推定部は、前記第1区画線点列と前記第2区画線点列の車両走行方向の位置が重なる重複区間(B)では、前記各第1区画点から前記各補正区画点までの距離と前記各第2区画点から前記各補正区画点までの距離の比が一定になるように、前記補正区画線点列を生成しても良い。
【0009】
この態様によれば、重複区間において、補正区画線点列を適切な位置に生成することができる。
【0010】
上記の態様において、前記区画線推定部は、前記第1区画線点列と前記第2区画線点列の車両走行方向の位置が重ならない非重複区間(C1、C2)では、前記重複区間のうちで前記非重複区間に最も近い位置における前記第1区画点又は前記第2区画点から前記補正区画点までの距離と前記非重複区間における前記第1区画点又は前記第2区画点から前記補正区画点までの距離とが一致するように、前記補正区画線点列を生成しても良い。
【0011】
この態様によれば、重複区間だけでなく非重複区間においても、補正区画線点列を適切な位置に生成することができる。
【0012】
上記の態様において、前記第1区画線点列は、前記車両の真横の点である基準点(R)を含み、前記区画線推定部は、前記基準点の軌跡である基準点軌跡を生成し、前記補正区画線点列と前記基準点軌跡とのずれ量に応じて前記補正区画線点列の回転補正量を算出し、前記補正区画線点列を前記回転補正量だけ回転させ、回転した前記補正区画線点列に基づいて前記走行路上の前記区画線の位置を推定しても良い。
【0013】
この態様によれば、補正区画線点列の角度と走行路上の区画線の角度のずれを抑制することができる。
【0014】
上記の態様において、前記区画線推定部は、前記回転補正量が所定の閾値を超える場合に、前記回転補正量から前記閾値を超える部分を差し引いても良い。
【0015】
この態様によれば、補正区画線点列の回転補正量を閾値以内に留めることで、回転後の補正区画線点列の位置が回転前の補正区画線点列の位置に対して過度にずれるのを抑制することができる。
【0016】
上記の態様において、前記撮像装置は、車外カメラであり、前記区画線推定部は、前記車外カメラが撮影した画像に基づいて認識される前記区画線であるカメラ区画線が有効であるか否かを判定し、前記カメラ区画線が有効であると判定した場合に限り、前記補正区画線点列を生成しても良い。
【0017】
この態様によれば、有効性が不十分なカメラ区画線(例えば、長さが不十分なカメラ区画線)に基づいて補正区画線点列が生成されるのを抑制することができる。
【0018】
上記の態様において、前記車両制御システムは、前記区画線推定部が推定した前記走行路上の前記区画線の位置に基づいて車線維持支援制御を実行する走行制御部(42)を更に備えていても良い。
【0019】
この態様によれば、補正区画線点列に基づいて精度良く推定された走行路上の区画線の位置に基づいて、車線維持支援制御を実行することができる。そのため、車線維持支援制御の有効性を高めることができる。
【0020】
上記の態様において、前記車両制御システムは、前記車両の周辺領域の地図を生成する地図生成部(53)と、前記区画線推定部が推定した前記走行路上の前記区画線の位置と前記地図上の前記区画線の位置とを照合することで前記地図上の前記車両の位置を推定する自車位置推定部(54)と、を更に備えていても良い。
【0021】
この態様によれば、補正区画線点列(第1区画線点列に対して車両走行方向後方に延長された区画線点列)に基づいて推定された走行路上の区画線の位置と地図上の区画線の位置が照合されることになる。そのため、両者の照合距離を十分に確保することができ、地図上の車両の位置を正確に推定することができる。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明のある態様に係る区画線推定方法は、車両(V)が走行する走行路上の区画線の位置を推定する区画線推定方法であって、前記車両が第1の位置(A1)を走行しているときに撮影された画像に基づいて第1区画線点列(P1)を生成するステップと、前記車両が前記第1の位置よりも車両走行方向後方の第2の位置(A2)を走行しているときに撮影された画像に基づいて前記第1区画線点列に対して車両走行方向後方にずれた第2区画線点列(P2)を生成するステップと、前記第1区画線点列及び前記第2区画線点列に基づいて、前記第1区画線点列よりも車両走行方向後方に延長された補正区画線点列(P3)を生成するステップと、前記補正区画線点列に基づいて前記走行路上の前記区画線の位置を推定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0023】
この態様によれば、第1区画線点列に対して車両走行方向後方に延長された補正区画線点列に基づいて走行路上の区画線の位置が推定される。そのため、第1区画線点列そのものに基づいて走行路上の区画線の位置を推定する場合と比較して、走行路上の区画線の位置を推定することができる距離を延ばすことができる。また、第1区画線点列だけでなく第2区画線点列にも基づいて走行路上の区画線の位置が推定される。そのため、撮像装置が第1の位置で撮影した画像に含まれるノイズによって走行路上の区画線の位置の推定精度が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の構成によれば、区画線の位置を推定することができる距離を十分に確保することが可能な車両制御システム及び区画線推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る車両制御システムの構成図
図2】本発明の一実施形態に係る区画線推定制御を示すフローチャート
図3】本発明の一実施形態に係る有効判定処理を示すフローチャート
図4】本発明の一実施形態に係る点列生成処理を示す平面図
図5】本発明の一実施形態に係る軌跡生成処理を示す平面図
図6】本発明の一実施形態に係る回転補正処理を示すフローチャート
図7】本発明の一実施形態に係る推定処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る車両制御システム1について説明する。図1に示すように、車両制御システム1は、車両Vに搭載された車両システム2と、車両システム2にネットワークNを介して接続された高精度地図サーバ3(以下、「地図サーバ3」と略称する)とを含む。以下、「車両V」と記載する場合には、車両システム2が搭載された車両(即ち、自車両)を示す。
【0027】
<車両システム2>
まず、車両システム2について説明する。車両システム2は、推進装置4、ブレーキ装置5、ステアリング装置6、外界センサ7、車両センサ8、通信装置9、GNSS受信機10、ナビゲーション装置11、運転操作子12、運転操作センサ13、HMI14、スタートスイッチ15、及び制御装置16を有している。車両システム2の各構成要素は、CAN(Controller Area Network)等の通信手段によって信号伝達可能に互いに接続されている。
【0028】
推進装置4は、車両Vに駆動力を付与する装置であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と電動機の少なくとも一方を有する。ブレーキ装置5は、車両Vに制動力を付与する装置であり、例えば、ブレーキロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに油圧を供給する電動シリンダとを含む。ブレーキ装置5は、ワイヤケーブルによって車輪の回転を規制するパーキングブレーキ装置を含んでいてもよい。ステアリング装置6は、車輪の舵角を変えるための装置であり、例えば、車輪を転舵するラックアンドピニオン機構と、ラックアンドピニオン機構を駆動する電動モータとを有する。推進装置4、ブレーキ装置5、及びステアリング装置6は、制御装置16によって制御される。
【0029】
外界センサ7は、車両Vの周辺からの電磁波や音波等を捉えて、車外の物体等を検出するセンサである。外界センサ7は、ソナー17及び車外カメラ18(撮像装置の一例)を含んでいる。外界センサ7は、ミリ波レーダやレーザライダを含んでいてもよい。外界センサ7は、検出結果を制御装置16に出力する。
【0030】
ソナー17は、いわゆる超音波センサであり、超音波を車両Vの周囲に発射してその反射波を捉えることにより、物体の位置(距離及び方向)を検出する。ソナー17は、車両Vの後部及び前部にそれぞれ複数設けられている。
【0031】
車外カメラ18は、車両Vの周囲を撮像する装置であり、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。車外カメラ18は、ステレオカメラであっても良いし、単眼カメラであってもよい。車外カメラ18は、車両Vの前方を撮像する前方カメラと、車両Vの後方を撮像する後方カメラと、車両Vの左右側方を撮像する一対の側方カメラと、を含んでいる。車両Vの走行時に、車外カメラ18は、所定の間隔(例えば、所定の距離的間隔又は所定の時間的間隔)で車両Vが走行する走行路の画像を撮影する。
【0032】
車両センサ8は、車両Vの状態を測定するセンサである。車両センサ8は、車両Vの速度を検出する車速センサ、車両Vの加速度を検出する加速度センサ、車両Vの鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両Vの向きを検出する方位センサ等を含む。ヨーレートセンサは、例えばジャイロセンサである。車両センサ8は、車体の傾きを検出する傾きセンサや車輪の回転速度を検出する車輪速センサを含んでいてもよい。
【0033】
通信装置9は、制御装置16と車外の機器(例えば、地図サーバ3)との間の通信を媒介する。通信装置9は、制御装置16をインターネットに接続するルータを含む。通信装置9は、車両Vの制御装置16と周辺車両の制御装置との間の無線通信や車両Vの制御装置16と道路上の路側機との間の無線通信を媒介する無線通信機能を有するとよい。
【0034】
GNSS受信機10は、全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)を構成する複数の衛星から車両Vの位置(緯度や経度)に関する信号(以下、「GNSS信号」と称する)を受信する。GNSS受信機10は、受信したGNSS信号をナビゲーション装置11及び制御装置16に出力する。
【0035】
ナビゲーション装置11は、公知のハードウェアによるコンピュータによって構成されている。ナビゲーション装置11は、直前の走行履歴やGNSS受信機10から出力されたGNSS信号に基づいて、車両Vの位置(緯度や経度)を特定する。ナビゲーション装置11は、RAM、HDD、SSD等に、車両Vが走行する地域や国の道路情報に関するデータ(以下、「ナビ地図データ」と称する)を記憶している。
【0036】
ナビゲーション装置11は、GNSS信号及びナビ地図データに基づいて車両Vの現在位置から乗員が入力した目的地までのルートを設定し、制御装置16に出力する。ナビゲーション装置11は、車両Vが走行を開始すると、乗員に対する目的地までのルート案内を行う。
【0037】
運転操作子12は、車室内に設けられ、車両Vを制御するために乗員が行う入力操作を受け付ける。運転操作子12は、ステアリングホイール、アクセルペダル、及びブレーキペダルを含む。更に、運転操作子12は、シフトレバー、パーキングブレーキレバー、ウィンカーレバー等を含んでいてもよい。
【0038】
運転操作センサ13は、運転操作子12の操作量を検出するセンサである。運転操作センサ13は、ステアリングホイールの操作量を検出する舵角センサと、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサと、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサとを含む。運転操作センサ13は、検出した操作量を制御装置16に出力する。運転操作センサ13は、乗員がステアリングホイールを把持したことを検出する把持センサを含んでいてもよい。把持センサは、例えば、ステアリングホイールの外周部に設けられた静電容量センサによって構成される。
【0039】
HMI14は、乗員に対して表示や音声によって各種情報を報知すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI14は、例えば、液晶や有機EL等を含み、乗員による入力操作を受け付けるタッチパネル23と、ブザーやスピーカ等の音発生装置24とを含む。HMI14は、タッチパネル23上に運転モード切換ボタンを表示することができる。運転モード切換ボタンは、乗員による車両Vの運転モード(例えば、自動運転モードと手動運転モード)の切換操作を受け付けるボタンである。
【0040】
HMI14は、ナビゲーション装置11への出入力を媒介するインターフェースとしても機能する。即ち、HMI14が乗員による目的地の入力操作を受け付けると、ナビゲーション装置11が目的地までのルート設定を開始する。また、HMI14は、ナビゲーション装置11が目的地までのルート案内を行う際に、車両Vの現在位置及び目的地までのルートを表示する。
【0041】
スタートスイッチ15は、車両システム2を起動させるためのスイッチである。即ち、乗員が運転席に着座し、ブレーキペダルを踏み込んだ状態でスタートスイッチ15を押圧すると、車両システム2が起動する。
【0042】
制御装置16は、CPU、ROM、RAM等を含む一又は複数の電子制御装置(ECU)によって構成されている。制御装置16は、CPUがプログラムに沿った演算処理を実行することで、各種の車両制御を実行する。制御装置16は、1つのハードウェアとして構成されていてもよく、複数のハードウェアからなるユニットとして構成されていてもよい。制御装置16の各機能部の少なくとも一部は、LSIやASIC、FPGA等のハードウェアによって実現されていてもよく、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されていてもよい。
【0043】
制御装置16は、外界認識部31(区画線推定部の一例)と、移動量算出部32と、運転制御部33と、地図処理部34とを有する。これらの構成要素は、別々の電子制御装置によって構成されていても良いし、一体の電子制御装置によって構成されていても良い。
【0044】
外界認識部31は、外界センサ7の検出結果に基づいて車両Vの周辺に存在する物標を認識し、物標の位置や大きさに関する情報を取得する。外界認識部31が認識する物標には、車両Vの走行路上の区画線、車線、路端、路肩、障害物等が含まれる。区画線は、車両走行方向に沿って表示された線である。車線は、一又は複数の区画線によって区画された領域である。路端は、車両Vの走行路の端部である。路肩は、車幅方向(左右方向)の端部に位置する区画線と路端の間の領域である。障害物は、防壁(ガードレール)、電柱、周辺車両、歩行者等を含む。
【0045】
外界認識部31は、車外カメラ18が撮影した画像(以下、「カメラ画像」と称する)に基づいて、カメラ画像上の区画線(以下、「カメラ区画線」と称する)の位置を認識する。例えば、外界認識部31は、カメラ画像上で濃度値が閾値以上に変化している複数の点(以下、「複数の候補点」と称する)を抽出し、複数の候補点を通過する直線をカメラ区画線として認識しても良い。外界認識部31は、カメラ画像に基づいて、カメラ区画線の種別を特定する。カメラ区画線の種別は、単一実線、単一破線、減速表示線、2重実線等を含む。減速表示線は、例えば、単一破線よりも間隔が狭く幅が広い破線によって構成される。
【0046】
移動量算出部32は、車両センサ8からの信号に基づいて、オドメトリや慣性航法等のデッドレコニングによって車両Vの移動量(車両Vの移動距離及び移動方向)を算出する。例えば、移動量算出部32は、車輪速センサが検出する車輪の回転速度と、加速度センサが検出する車両Vの加速度と、ジャイロセンサが検出する車両Vの角速度とに基づいて、車両Vの移動量を算出すると良い。以下、移動量算出部32がデッドレコニングによって算出した車両Vの移動量のことを、「車両VのDR移動量」と称する。
【0047】
運転制御部33は、行動計画部41と、走行制御部42と、モード設定部43とを有する。
【0048】
行動計画部41は、ナビゲーション装置11によって設定されたルートに沿って車両Vを走行させるための行動計画を作成する。行動計画部41は、作成した行動計画に対応する走行制御信号を走行制御部42に出力する。
【0049】
走行制御部42は、行動計画部41からの走行制御信号に基づいて、推進装置4、ブレーキ装置5、及びステアリング装置6を制御する。即ち、走行制御部42は、行動計画部41が作成した行動計画に従って、車両Vを走行させる。
【0050】
モード設定部43は、手動運転モードと自動運転モードとの間で車両Vの運転モードを切り換える。手動運転モードでは、乗員による運転操作子12に対する入力操作に応じて走行制御部42が推進装置4、ブレーキ装置5、及びステアリング装置6を制御し、車両Vを走行させる。一方で、自動運転モードでは、乗員による運転操作子12に対する入力操作に関わらず走行制御部42が推進装置4、ブレーキ装置5、及びステアリング装置6を制御し、車両Vを自律的に走行させる。
【0051】
地図処理部34は、地図取得部51と、地図記憶部52と、ローカルマップ生成部53(地図生成部の一例:以下、「LM生成部53」と称する)と、位置特定部54(自車位置推定部の一例)とを有する。
【0052】
地図取得部51は、地図サーバ3にアクセスし、地図サーバ3からダイナミックマップデータ(詳細は後述)を取得する。例えば、地図取得部51は、ナビゲーション装置11が設定したルートに対応する地域のダイナミックマップデータを地図サーバ3取得すると良い。
【0053】
地図記憶部52は、HDDやSSD等の記憶装置によって構成されており、自動運転モードにおける車両Vの自律的な走行に必要な各種情報を保持している。地図記憶部52は、地図取得部51が地図サーバ3から取得したダイナミックマップデータを記憶している。
【0054】
LM生成部53は、地図記憶部52に記憶されたダイナミックマップデータに基づいて、車両Vの周辺領域の詳細な地図(以下、「ローカルマップ」と称する)を生成する。ローカルマップは、ダイナミックマップデータから車両Vの周辺領域に関するデータを抽出することで生成される。従って、ローカルマップは、ダイナミックマップデータに含まれるあらゆる情報を含みうる。例えば、ローカルマップは、走行路上の車線に関する情報(例えば、車線の本数や車線番号)や走行路上の区画線に関する情報(例えば、区画線の種別)を含む。更に、ローカルマップは、カメラ画像に基づいて外界認識部31が認識した物標(例えば、障害物)に関する情報を含んでも良いし、車両Vの過去のDR移動量(即ち、車両Vの移動軌跡)に関する情報を含んでも良い。自動運転モードで車両Vが自律的に走行している時に、LM生成部53は、車両Vの走行位置に応じてローカルマップを随時更新すると良い。
【0055】
位置特定部54は、ローカルマップ上において各種ローカリゼーション処理を実行する。例えば、位置特定部54は、GNSS受信機10から出力されるGNSS信号、車両VのDR移動量、カメラ画像等に基づいて、ローカルマップ上における車両Vの位置を推定する。また、位置特定部54は、GNSS受信機10から出力されるGNSS信号、カメラ画像等に基づいて、ローカルマップ上において車両Vが走行する自車線の位置を特定する。自動運転モードで車両Vが自律的に走行している時に、位置特定部54は、車両Vの走行位置に応じてローカルマップ上における車両Vの位置や自車線の位置を随時更新すると良い。
【0056】
<地図サーバ3>
次に、地図サーバ3について説明する。図1に示すように、地図サーバ3は、ネットワークN(本実施形態では、インターネット)及び通信装置9を介して制御装置16に接続されている。地図サーバ3は、CPU、ROM、RAM、及び、HDDやSSD等の記憶装置を備えたコンピュータである。地図サーバ3の記憶装置には、ダイナミックマップデータが記憶されている。
【0057】
ダイナミックマップデータは、静的情報、準静的情報、準動的情報、及び動的情報を含む。静的情報は、ナビ地図データよりも高精度な3次元地図データを含む。準静的情報は、交通規制情報、道路工事情報、広域気象情報を含む。準動的情報は、事故情報、渋滞情報、狭域気象情報を含む。動的情報は、信号情報、周辺車両情報、歩行者情報を含む。
【0058】
ダイナミックマップデータの静的情報は、走行路上の車線に関する情報(例えば、車線の本数や車線番号)や走行路上の区画線に関する情報(例えば、区画線の種別)を含む。例えば、静的情報の区画線は、所定の間隔ごとに配置されたノードと、ノードを接続するリンクとによって表現される。
【0059】
<区画線推定制御>
次に、図2を参照して、カメラ画像に基づいて走行路上の区画線の位置を推定するための区画線推定制御(区画線推定方法の一例)の概要について説明する。制御装置16の外界認識部31は、車両Vの左右両側の区画線に対してそれぞれ区画線推定制御を行う。以下、車両Vの左側の区画線に対して行われる区画線推定制御のみを説明し、車両Vの右側の区画線に対して行われる区画線推定制御の説明は省略する。
【0060】
区画線推定制御が開始されると、外界認識部31は、有効判定処理を実行する(ステップS1)。有効判定処理において、外界認識部31は、カメラ区画線が有効であるか否かを判定する。有効判定処理においてカメラ区画線が無効であると判定した場合(ステップS1:No)、外界認識部31は、走行路上の区画線の位置を推定することなく区画線推定制御を終了する。
【0061】
一方で、有効判定処理においてカメラ区画線が有効であると判定した場合(ステップS1:Yes)、外界認識部31は、点列生成処理を実行する(ステップS2)。点列生成処理において、外界認識部31は、第1区画線点列P1及び第2区画線点列P2を生成すると共に、第1区画線点列P1及び第2区画線点列P2に基づいて補正区画線点列P3を生成する。
【0062】
次に、外界認識部31は、軌跡生成処理を実行する(ステップS3)。軌跡生成処理において、外界認識部31は、第1区画線点列P1上の車両Vの真横の点の軌跡を生成する。
【0063】
次に、外界認識部31は、回転補正処理を実行する(ステップS4)。回転補正処理において、外界認識部31は、補正区画線点列P3と車両Vの真横の点の軌跡とのずれ量に応じて補正区画線点列P3を回転させることで、補正区画線点列P3を補正する。
【0064】
次に、外界認識部31は、推定処理を実行する(ステップS5)。推定処理において、外界認識部31は、回転補正処理で回転させた補正区画線点列P3又は回転補正処理で回転させる前の補正区画線点列P3に基づいて走行路上の区画線の位置を推定し、推定した走行路上の区画線の位置を走行制御部42及び位置特定部54に出力する。
【0065】
<有効判定処理>
次に、図3を参照して、区画線推定制御における有効判定処理(ステップS1)について説明する。
【0066】
有効判定処理が開始されると、外界認識部31は、カメラ区画線の種別が所定の種別(例えば、単一実線又は単一破線)であるか否かを判定する(ステップS11)。カメラ区画線の種別が所定の種別でない場合(ステップS11:No)、外界認識部31は、カメラ区画線が無効であると判定する(ステップS12)。
【0067】
一方で、カメラ区画線の種別が所定の種別である場合(ステップS11:Yes)、外界認識部31は、カメラ区画線が第1長さL1以上の欠落部分を含むか否か(カメラ区画線に飛びがあるか否か)を判定する(ステップS13)。カメラ区画線が第1長さL1以上の欠落部分を含む場合(ステップS13:Yes)、外界認識部31は、カメラ区画線が無効であると判定する(ステップS12)。
【0068】
一方で、カメラ区画線が第1長さL1以上の欠落部分を含まない場合(ステップS13:No)、外界認識部31は、カメラ区画線の長さ(全長)が第2長さL2(但し、L2>L1)以上であるか否かを判定する(ステップS14)。カメラ区画線の長さが第2長さL2未満である場合(ステップS14:No)、外界認識部31は、カメラ区画線が無効であると判定する(ステップS12)。
【0069】
一方で、カメラ区画線の長さが第2長さL2以上である場合(ステップS14:Yes)、外界認識部31は、カメラ区画線の信頼度を算出する。例えば、外界認識部31は、カメラ区画線が通過する複数の候補点の数に基づいて、カメラ区画線の信頼度を算出しても良い。この場合、外界認識部31は、カメラ区画線が通過する複数の候補点の数が増加するのに応じて、カメラ区画線の信頼度を増加させると良い。または、外界認識部31は、カメラ区画線を連続的に認識している時間の長さに基づいて、カメラ区画線の信頼度を算出しても良い。この場合、外界認識部31は、カメラ区画線を連続的に認識している時間が長くなるのに応じて、カメラ区画線の信頼度を増加させると良い。
【0070】
次に、外界認識部31は、算出されたカメラ区画線の信頼度が基準値以上であるか否かを判定する(ステップS15)。カメラ区画線の信頼度が基準値未満である場合(ステップS15:No)、外界認識部31は、カメラ区画線が無効であると判定する(ステップS12)。一方で、カメラ区画線の信頼度が基準値以上である場合(ステップS15:Yes)、外界認識部31は、カメラ区画線が有効であると判定する(ステップS16)。
【0071】
なお、他の実施形態では、上記の複数の判定基準(ステップS11、S13-15参照)のうちの一部のみを用いて有効判定処理を実行しても良いし、上記の複数の判定基準に加えて他の判定基準(例えば、カメラ区画線の種別が一定であるか否か)を用いて有効判定処理を実行しても良い。
【0072】
<点列生成処理>
次に、図4を参照して、区画線推定制御における点列生成処理(ステップS2)について説明する。以下、単に「前方」又は「後方」と記載する場合には、車両走行方向Xにおける「前方」又は「後方」を示す。
【0073】
点列生成処理が開始されると、外界認識部31は、車両Vが第1の位置A1を走行しているときのカメラ画像(最新のカメラ画像)に基づいて第1区画線点列P1を生成する。第1区画線点列P1は、第1の位置A1における車両Vの真横から前方に向かって延びている。第1区画線点列P1は、車両走行方向Xにおいて一定の間隔Zで配置された複数の第1区画点Q1(図4において三角形の点で表示)によって構成されている。各第1区画点Q1は、車両Vが第1の位置A1を走行しているときのカメラ画像から認識されるカメラ区画線上の点である。
【0074】
また、外界認識部31は、車両Vが第2の位置A2を走行しているときのカメラ画像(1サンプル前のカメラ画像)に基づいて第2区画線点列P2を生成する。第2の位置A2は第1の位置A1よりも距離Yだけ後方に位置しているため、第2区画線点列P2は第1区画線点列P1に対して距離Yだけ後方にずれている。第2区画線点列P2の車両走行方向Xの位置は、第1区画線点列P1の車両走行方向Xの位置と部分的に重なっている。第2区画線点列P2は、車両走行方向Xにおいて一定の間隔Zで配置された複数の第2区画点Q2(図4において四角い点で表示)によって構成されている。各第2区画点Q2は、車両Vが第2の位置A2を走行しているときのカメラ画像から認識されるカメラ区画線上の点である。
【0075】
なお、第2の位置A2から第1の位置A1まで車両Vが距離Yだけ前進するのに伴って、第2区画線点列P2も距離Yだけ前進し、第2区画線点列P2の始点(即ち、後端の第2区画点Q2)が第2の位置A2よりも距離Yだけ前方にずれる。そこで、外界認識部31は、第2の位置A2から第1の位置A1まで車両Vが距離Yだけ前進したときに、第2区画線点列P2を距離Yだけ後方に移動させる。図4では、このような後方への移動が完了した後の第2区画線点列P2が表示されている。
【0076】
次に、外界認識部31は、第1区画線点列P1と第2区画線点列P2を合成することで、補正区画線点列P3を生成する。補正区画線点列P3は、車両走行方向Xにおいて一定の間隔Zで配置された複数の補正区画点Q3(図4において丸い点で表示)によって構成されている。各補正区画点Q3の車両走行方向Xにおける位置は、各第1区画点Q1及び各第2区画点Q2の車両走行方向Xにおける位置と一致している。補正区画線点列P3の終点(即ち、前端の補正区画点Q3)の車両走行方向Xにおける位置は、第1区画線点列P1の終点(即ち、前端の第1区画点Q1)の車両走行方向Xにおける位置と一致している。補正区画線点列P3の始点(即ち、後端の補正区画点Q3)は、第1区画線点列P1の始点(即ち、後端の第1区画点Q1)よりも後方にずれている。このように、補正区画線点列P3は、第1区画線点列P1に対して後方に延長されている。
【0077】
図4の区間Bは、第1区画線点列P1と第2区画線点列P2の車両走行方向Xの位置が重なっている区間(以下、「重複区間B」と称する)を示している。この重複区間Bでは、外界認識部31は、各第1区画点Q1から各補正区画点Q3までの距離(L3、L4、・・・、L7、L8)と各第2区画点Q2から各補正区画点Q3までの距離(M3、M4、・・・、M7、M8)の比が一定になるように、補正区画線点列P3を生成する。即ち、図4では、L3:M3=L4:M4=・・・=L7:M7=L8:M8となっている。例えば、上記の距離の比は、1:1である。
【0078】
図4の区間C1は、第1区画線点列P1は存在しているが第2区画線点列P2は存在していない区間(以下、「第1非重複区間C1」と称する)を示している。この第1非重複区間C1では、外界認識部31は、第3の位置A3(重複区間Bのうちで第1非重複区間C1に最も近い位置)における第1区画点Q1から補正区画点Q3までの距離と第1非重複区間C1における各第1区画点Q1から各補正区画点Q3までの距離とが一致するように、補正区画線点列P3を生成する。即ち、図4では、L8=L9=L10となっている。
【0079】
図4の区間C2は、第2区画線点列P2は存在しているが第1区画線点列P1は存在していない区間(以下、「第2非重複区間C2」と称する)を示している。この第2非重複区間C2では、外界認識部31は、第1の位置A1(重複区間Bのうちで第2非重複区間C2に最も近い位置)における第2区画点Q2から補正区画点Q3までの距離と第2非重複区間C2における各第2区画点Q2から各補正区画点Q3までの距離とが一致するように、補正区画線点列P3を生成する。即ち、図4では、M1=M2=M3となっている。
【0080】
<軌跡生成処理>
次に、図4図5を参照して、区画線推定制御における軌跡生成処理(ステップS3)について説明する。
【0081】
図4を参照して、外界認識部31は、第1区画線点列P1を生成する度に、第1区画線点列P1上の車両Vの真横の点R(以下、「基準点R」と称する)を制御装置16内の記憶領域(図示せず)に記憶させる。即ち、外界認識部31は、基準点Rのバッファリングを実行する。
【0082】
図5を参照して、外界認識部31は、記憶領域に記憶されている基準点Rを並べていくことで、基準点Rの軌跡(以下、「基準点軌跡」と称する)を生成する。基準点軌跡の始点(即ち、後端の基準点R)の車両走行方向Xにおける位置は、補正区画線点列P3の始点(即ち、後端の補正区画点Q3)の車両走行方向Xにおける位置と一致している。
【0083】
<回転補正処理>
次に、図6を参照して、区画線推定制御における回転補正処理(ステップS4)について説明する。
【0084】
回転補正処理が開始されると、外界認識部31は、算出処理(ステップS21)を実行する。算出処理において、外界認識部31は、補正区画線点列P3と基準点軌跡とのずれ量(以下、「基準ずれ量」と称する)を算出する。例えば、外界認識部31は、各補正区画点Q3と各基準点Rのずれ量の最大値又は総和に基づいて、基準ずれ量を算出しても良い。次に、外界認識部31は、基準ずれ量に応じて補正区画線点列P3の回転補正量を算出する。例えば、外界認識部31は、基準ずれ量が増加するのに応じて回転補正量を増加させると良い。
【0085】
次に、外界認識部31は、リミット処理を実行する(ステップS22)。リミット処理において、外界認識部31は、算出処理で算出した回転補正量が所定の閾値を超える場合に、回転補正量から閾値を超える部分を差し引く。即ち、外界認識部31は、回転補正量を閾値以下の値に制限する。
【0086】
次に、外界認識部31は、回転処理を実行する(ステップS23)。回転処理において、外界認識部31は、基準ずれ量が減少する方向に補正区画線点列P3を回転補正量だけ回転させることで、補正区画線点列P3を補正する。このとき、外界認識部31は、第1の位置A1における補正区画点Q3を中心に補正区画線点列P3を回転させると良い。
【0087】
<推定処理>
次に、図7を参照して、区画線推定制御における推定処理(ステップS5)について説明する。
【0088】
推定処理が開始されると、外界認識部31は、算出処理(ステップS21)で算出した回転補正量が有効であるか否かを判定する(ステップS31)。このとき、外界認識部31は、基準点軌跡を構成する基準点Rの数、補正区画線点列P3の全長、基準ずれ量の評価値等に基づいて、回転補正量が有効であるか否かを判定すると良い。例えば、外界認識部31は、基準点軌跡を構成する基準点Rの数が所定数以上である場合に回転補正量が有効であると判定し、基準点軌跡を構成する基準点Rの数が上記所定数未満である場合に回転補正量が無効であると判定すると良い。
【0089】
回転補正量が有効である場合(ステップS31:Yes)、外界認識部31は、第1推定処理を実行する(ステップS32)。第1推定処理において、外界認識部31は、回転処理(ステップS23)によって回転させた補正区画線点列P3に基づいて走行路上の区画線の位置を推定する。例えば、外界認識部31は、回転処理によって回転させた補正区画線点列P3を通過する直線や曲線の位置を走行路上の区画線の位置と推定しても良い。または、外界認識部31は、回転処理によって回転させた補正区画線点列P3に基づいて生成される近似直線や近似曲線の位置を走行路上の区画線の位置と推定しても良い。
【0090】
一方で、回転補正量が有効でない場合(ステップS31:No)、外界認識部31は、第2推定処理を実行する(ステップS33)。第2推定処理において、外界認識部31は、回転処理(ステップS23)によって回転させる前の補正区画線点列P3に基づいて走行路上の区画線の位置を推定する。例えば、第2推定処理において、外界認識部31は、回転処理によって回転させる前の補正区画線点列P3を通過する直線や曲線の位置を走行路上の区画線の位置と推定しても良い。または、外界認識部31は、回転処理によって回転させる前の補正区画線点列P3に基づいて生成される近似直線や近似曲線の位置を走行路上の区画線の位置と推定しても良い。
【0091】
次に、外界認識部31は、第1推定処理(ステップS32)又は第2推定処理(ステップS33)で推定した走行路上の区画線(以下、「推定区画線」と称する)の位置を走行制御部42及び位置特定部54に出力する(ステップS34)。
【0092】
<推定区画線の位置に基づく制御>
外界認識部31から推定区画線の位置が出力されると、走行制御部42は、推定区画線の位置に基づいて走行路上の自車線の位置を推定し、推定した走行路上の自車線の位置に基づいて車線維持支援制御を実行する。車線維持支援制御において、走行制御部42は、推定した走行路上の自車線を車両Vが走行するように、ステアリング装置6やステアリングホイールを制御する。
【0093】
外界認識部31から推定区画線の位置が出力されると、位置特定部54は、推定区画線の位置とローカルマップ上の区画線の位置とを照合することで、ローカルマップ上における車両Vの位置を推定する。例えば、位置特定部54は、ローカルマップ上において推定区画線の位置とローカルマップ上の区画線の位置を合わせた上で、車両Vと推定区画線の位置関係に基づいてローカルマップ上の車両Vの位置を推定する。
【0094】
<効果>
本実施形態では、外界認識部31は、第1区画線点列P1に対して後方に延長された補正区画線点列P3に基づいて、走行路上の区画線の位置を推定している。そのため、第1区画線点列P1そのものに基づいて走行路上の区画線の位置を推定する場合と比較して、走行路上の区画線の位置を推定することができる距離を延ばすことができる。また、外界認識部31は、第1区画線点列P1だけでなく第2区画線点列P2にも基づいて、走行路上の区画線の位置を推定している。そのため、車両Vが第1の位置A1を走行しているときのカメラ画像に含まれるノイズによって走行路上の区画線の位置の推定精度が低下するのを抑制することができる。
【0095】
また、重複区間B(第1区画線点列P1と第2区画線点列P2の車両走行方向Xの位置が重なっている区間)では、外界認識部31は、各第1区画点Q1から各補正区画点Q3までの距離と各第2区画点Q2から各補正区画点Q3までの距離の比が一定になるように、補正区画線点列P3を生成している。そのため、重複区間Bにおいて、補正区画線点列P3を適切な位置に生成することができる。
【0096】
また、第1、第2非重複区間C1、C2(第1区画線点列P1と第2区画線点列P2の車両走行方向Xの位置が重ならない区間)では、外界認識部31は、重複区間Bのうちで第1、第2非重複区間C1、C2に最も近い位置における第1区画点Q1又は第2区画点Q2から補正区画点Q3までの距離と第1、第2非重複区間C1、C2における各第1区画点Q1又は各第2区画点Q2から各補正区画点Q3までの距離とが一致するように、補正区画線点列P3を生成している。そのため、重複区間Bだけでなく第1、第2非重複区間C1、C2においても、補正区画線点列P3を適切な位置に生成することができる。
【0097】
また、外界認識部31は、基準ずれ量に応じて補正区画線点列P3の回転補正量を算出し、回転補正量だけ回転した補正区画線点列P3に基づいて走行路上の区画線の位置を推定している。そのため、補正区画線点列P3の角度と走行路上の区画線の角度のずれを抑制することができる。
【0098】
また、外界認識部31は、補正区画線点列P3の回転補正量が所定の閾値を超える場合に、補正区画線点列P3の回転補正量から閾値を超える部分を差し引いている。そのため、補正区画線点列P3の回転補正量を閾値以内に留めることができ、回転後の補正区画線点列P3の位置が回転前の補正区画線点列P3の位置に対して過度にずれるのを抑制することができる。
【0099】
また、外界認識部31は、カメラ区画線が有効であると判定した場合に限り、補正区画線点列P3を生成する。そのため、有効性が不十分なカメラ区画線(例えば、長さが不十分なカメラ区画線)に基づいて補正区画線点列P3が生成されるのを抑制することができる。
【0100】
また、走行制御部42は、補正区画線点列P3に基づいて精度良く推定された推定区画線の位置に基づいて、車線維持支援制御を実行している。そのため、車線維持支援制御の有効性を高めることができる。
【0101】
また、位置特定部54は、補正区画線点列P3(第1区画線点列P1に対して後方に延長された区画線点列)に基づいて推定された推定区画線の位置とローカルマップ上の区画線の位置を照合している。そのため、両者の照合距離を十分に確保することができ、ローカルマップ上の車両Vの位置を正確に推定することができる。
【0102】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 車両制御システム
18 車外カメラ(撮像装置の一例)
31 外界認識部(区画線推定部の一例)
42 走行制御部
53 LM生成部(地図生成部の一例)
54 位置特定部(自車位置推定部の一例)
A1 第1の位置
A2 第2の位置
B 重複区間
C1 第1非重複区間
C2 第2非重複区間
R 基準点
P1 第1区画線点列
P2 第2区画線点列
P3 補正区画線点列
Q1 第1区画点
Q2 第2区画点
Q3 補正区画点
V 車両
X 車両走行方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7