(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】思春期前の小児期前糖尿病のマーカー
(51)【国際特許分類】
G01N 33/66 20060101AFI20221220BHJP
G01N 33/70 20060101ALI20221220BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20221220BHJP
A23L 33/00 20160101ALI20221220BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20221220BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20221220BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20221220BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20221220BHJP
【FI】
G01N33/66 A
G01N33/70
G01N33/50 T
A23L33/00
A23L33/17
A23L33/15
A23L33/115
A23L33/16
(21)【出願番号】P 2020500733
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2018072172
(87)【国際公開番号】W WO2019034719
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-10
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】マーティン, フランソア―ピエール
(72)【発明者】
【氏名】コミネッティ, オルネラ
(72)【発明者】
【氏名】ピンクニー, ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ホスキン, ジョアン
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-076703(JP,A)
【文献】特表2012-522989(JP,A)
【文献】特表2017-516085(JP,A)
【文献】国際公開第2010/005982(WO,A2)
【文献】A Mastrangelo,Insulin resistance in prepubertal obese children correlates with sex-dependent early onset metabolomic alterations,International Journal of Obesity,2016年,vol.40,pp.1494-1502
【文献】PETER WUURTZ,Branched-Chain and Aromatic Amino Acids Are Predictors of Insulin Resistance in Young Adults,DIABETES CARE,2013年03月,VOLUME 36,pp.648-655
【文献】Walter E. Gall,a-Hydroxybutyrate Is an Early Biomarker of Insulin Resistance and Glucose Intolerance in a Nondiabetic Population,PLoS ONE,2010年05月,Volume 5 Issue 5 e10883,pp.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における高血糖値を予測するための方法であって
、
a.
前記対象が6歳又は7歳のときに前記対象から採取された
血液試料における
3-D-ヒドロキシブチレートの値を測定すること
、及び
b.
前記3-D-ヒドロキシブチレー
トの値を、対応する基準値と比較すること
を含み、
前記3-D-ヒドロキシブチレー
トの値が
、前記対応する基準値よりも高い
ことが、
前記対象の13歳~16歳における高血糖値のリスクが高
いことを示す、方法。
【請求項2】
前記高血糖値が、小児期前糖尿病に相当する、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記
血液試料が、前記対象が6歳のときに採取される、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記3-D-ヒドロキシブチレートの値が、前記対応する基準値よりも高いことが、前記対象の16歳における高血糖値のリスクが高いことを示す、請求項
1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記
血液試料が、正常体重の対象から採取される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記基準値が、予め定められた標準である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記
血液試料が、ヒト血清である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
高血糖値が、空腹時血糖異常として現れる、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
空腹時血糖異常が、世界保健機関(WHO)の基準をもとに測定され、6.1mmol/L(110mg/dL)~6.9mmol/L(125mg/dL)の空腹時血漿グルコース値に相当する、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
空腹時血糖異常が、米国糖尿病学会(ADA)の基準をもとに測定され、5.6mmol/L(100mg/dL)~6.9mmol/L(125mg/dL)の空腹時血漿グルコース値に相当する、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
6歳又は7歳の対象から採取された
血液試料における
3-D-ヒドロキシブチレートの値を測定する手段を含む、パーツからなるキット
であって、前記対象が13歳~16歳において高血糖値になることについて予測するための、キット。
【請求項12】
6歳又は7歳の対象が、
13歳~16歳において高血糖値になるこ
とについ
て予測するための、請求項
11に記載
のキットの、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、早期小児期(思春期前)における小児期前糖尿病のマーカーに関する。また、思春期前及び青年期における栄養療法のための代謝目標も提供される。
【背景技術】
【0002】
序論
慢性疾患及び進行性疾患の世界的増加により、医療経済学の分野において新たな課題が生じている(Nicholson、2006)。メタボリックシンドロームには、内臓肥満、耐糖能異常、高血圧症、高尿酸血症、脂質異常症、及び非アルコール性脂肪性肝疾患をはじめとする、多因子代謝異常が包含され、これらのすべては、成人における2型糖尿病及び心血管疾患の長期リスクの増大に関連する(Mottillo et al.,2010;Scherer et al.,2014)。インスリン抵抗性(IR)はなおも、メタボリックシンドロームの病態生理学の根幹をなす重要な機序であるが、多くの研究において、遺伝因子、身体組成、栄養、及び生活習慣も含む、より複雑な病因が裏付けられている。特に、脂肪症には幅広い研究において対象とされており、身体におけるその定量的及び定性的(例えば、皮下、内臓)分布は、心血管疾患並びに同化及び糖尿病の様々なリスクと関連することが、示唆されている(Wildman et al.,2008)。
【0003】
人生の早い時期の栄養及び生活習慣が、後の人生における健康及び疾病素因に及ぼす影響が、決定的なものであり、かつ長期的に重要であることに関して、新たなエビデンスが示されている(Koletzko et al.,1998)。小児における2型糖尿病及び肥満の有病率の上昇は、血管合併症の有意な長期リスクに関連しており、ますます問題となっている(Rosenbloom et al.,1999;Marcovecchio and Chiarelli,2013;Cominetti et al.,2014)。小児肥満症は現在、世界的蔓延のレベルまで増加しており、英国においては3分の1超の小児が過体重又は肥満である(Jaarsveld and Gulliford,2014)。2型糖尿病の発症は生活習慣及び医学的介入によって遅延させることができ、又は予防することができるため、2型糖尿病を発症するリスクがある小児の早期特定が重要であるという認識が増している。用語「前糖尿病」は、進行して2型糖尿病を発症するリスクが高い、初期高血糖症の個体を定義するために使用されている。小児の代謝特性には、発育因子が強く影響を及ぼす。したがって、IRの発症に至る代謝、臨床、及び人体測定パラメータに対する小児期発育の影響を、捕捉及び説明する必要がある。適切な食事指針を策定する必要、並びに、小児期における2型糖尿病及び肥満の由来及び発生に対する、環境因子の影響のより包括的な特徴付けを進展させる必要性がある(Collino et al.,2012;Martin et al.,2013)。前提条件として、代謝調節異常になりやすい重要な期間を表す場合がある、思春期において重要な意味を持つ生理学的時期をはじめとする、ライフサイクルの様々な段階における個々の健康の経過に関連する生物学的プロセスについて、評価を行う必要がある(Mantovani and Fucic,2014)。Earlybirdの試験から最近の解析により、思春期における年齢及び性差の、IRに対する重大な影響が実証された(Jeffery et al.Pediatric Diabetes,2017年掲載)。
【0004】
肥満は、IRの発症と強く関連しており、成人及び小児の両方における、脂肪症、IR、グルコース調節障害、及び2型糖尿病の発症の間には強い相関がある。しかし、肥満であるすべての個体が糖尿病を発症するというものではなく、肥満とIRとを結びつける発症機序についての理解はなお不十分である。糖尿病がインスリン分泌不全及び/又はIRの組み合わせから生じることは広く認められているが、ヒトにおけるin vivoでのインスリン分泌及びIRの正確な測定には問題がある。このような測定のための最も高感度の方法(例えば、高血糖クランプ、高インスリン正常血糖クランプ、又は多点経口耐糖能試験)は、反復測定による長期前向き試験に十分には適しておらず、それらは概して、小児に繰り返し用いるには侵襲性が大き過ぎると見られる。このことから、より単純な代替法が必要とされている。
【0005】
新規な代謝バイオマーカーの同定により、肥満を単純に測定すること、又はインスリン分泌及び作用をより複雑に測定することよりも、糖尿病のリスクのある個体を正確に特定する可能性があるだけでなく、肥満とIRとを結びつける機序を更に解明する可能性もある。以前の横断的バイオマーカー研究の総説によると、分枝鎖アミノ酸(BCAA)及び芳香族アミノ酸(AAA)は、成人において脂肪症とは無関係に、IR、前糖尿病、及び2型糖尿病と一貫して正に相関することが示されている(Guach-Ferre et al,2016)。8つの前向き研究のメタアナリシスにより、アミノ酸のイソロイシン、ロイシン及びチロシンの濃度の各々の研究に特異的な差異は、2型糖尿病のリスクの36%の増加に関連していることが示された。同様に、バリンについては35%、フェニルアラニンについては26%のリスク増加に関連する一方、グリシン及びグルタミンは、2型糖尿病のリスクに逆相関した。これらの関連性により、BCAA代謝の異常が、肥満におけるIRの発症の要因となる場合があることが、示唆されている。しかし、IRが大きく変わりやすく、特に思春期の発育に応じて変化し、並びに身体組成及び身体活動が変化する、小児におけるデータは少ない。それにもかかわらず、小児における10の研究の総説によると、BCAA及びAAAは、アシルカルニチンと共に、しばしばIRに関係しており、他方、BCAA及びチロシンはまた、長期追跡調査を含む少数の研究において、将来の代謝リスクの増加と関係していることが、見出された(Zhao et al,2016)。しかし、この総説に含まれている研究のほとんどは横断的なものであり、加えて、それらは肥満の小児を対象として選択していた。このことから、正常体重の小児についての研究及び縦断的研究の欠如により、エビデンスには重大な欠落が表れている。結果として、成長、発達、内分泌因子、脂肪症及び生活習慣の影響を含む、小児期を通したグルコース代謝の調節については、未だに明らかにされていない。
【0006】
この特定のエビデンスの欠落に対処するために、EarlyBirdの研究が、健常な小児の長期コホート研究として設計された。その意図を説明すると、小児期及び青年期中のグルコース制御に対する、身体測定、臨床、及び代謝のプロセスの影響を調査するというものであった。EarlyBirdのコホートは、300名の健常な英国小児を小児期を通して毎年追跡調査した非介入的な前向き検討である。研究者らは、5歳から16歳までのEarlyBirdの小児期コホートにおいて、身体測定、臨床、及び血清バイオマーカー(代謝)のデータをはじめとする、これらの異なるデータ型の経時的な変動を統合及び相関させるという、困難な課題に取り組んだ。生物流体代謝プロファイリングは、広範囲の生化学的代謝産物を監視し、広範囲の分子調節プロセスを反映することによって、代謝特性及び栄養特性を説明するためのロバストなアプローチとして出現している。そこでは、代謝的アプローチを血清試料に適用することで、小児の成長及び発育期間中の複雑な代謝プロセスに新たな洞察がもたらされた。ヒト血清のプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトル法により、トリグリセリド、リン脂質、及びコレステリルエステルに見出されるリポタンパク質結合脂肪族アシル基、並びにアミノ酸及び他の主要有機酸などの血液中に存在する主要低分子量分子に関連するシグナルのモニタリングが可能になる。これらの代謝データを解析して、長期の方法で、年齢、BMI(標準偏差、sds)、身体活動、及び思春期の時機を考慮して、グルコースと個々の代謝産物との間の関連性を評価した。
【0007】
インスリン、グルコース、思春期の始まり、年齢、性別、脂肪症、及びIGF-1についての長期データの最近の統合により、成人の表現型と多くの点で異なる、小児期における脂肪症、インスリン、及びグルコースの間の強く性差特異的な関係性が注目されている(Jeffery et al.,2012)。小児期及び青年期中の成長は、異なる速度で現れ、遺伝因子、栄養因子、及び環境因子の相互作用によって影響を受け、ひいては、小児期疾患へのなりやすさ及び後の人生における疾患のリスクに影響を及ぼす。また、このことにより、研究の設計において時間の目安が導入され、更なる解析の課題が提起される。根幹をなす遺伝的調節については比較的わずかしか知られていないが、思春期中の成長の多様性は、成長、思春期の時機、及び脂肪症に影響を及ぼす、複雑な遺伝的構造と相関する(Cousminer et al.,2013)。代謝の健常性、小児期、及び青年期の文脈において、肥満により、正常な成長及び思春期パターンは有意に障害を受ける(Sandhu et al.,2006;Marcovecchio and Chiarelli,2013)。
【0008】
成人及び小児のいずれでも、正常範囲内の高グルコース値(いわゆる「前糖尿病」)がその後の2型糖尿病の指標となるというエビデンスが存在する。IRは糖尿病に関連し、小児期を通して外的要因の複雑なパターンによって調節される。IRは男性及び女性のいずれにおいても思春期中に高くなり、いくつかの研究では、その増加は、脂肪症の変化とは無関係であることが示されている(Jeffery et al.,2012)。IRの長期データ、思春期の始まりとの関係、並びに年齢、性別、脂肪症、及びIGF-1との相互作用についての、モデル化が最近行われている(Jeffery et al.,2012)。この研究により、IRが、中期小児期、思春期の数年前にどのように増強され始めるかが例示されたが、思春期前の60%超のIRの変動はなお原因不明である。加えて、糖尿病を検出するため、及び糖尿病を発症するリスクが高い個体を特定するための、並びにHbA1cなどの成人代謝疾患リスクについての、従来からのマーカーでは、小児用途について感度及び特異性が低下しており、若年者においては他の因子がこれらのマーカーの変動性に影響することを示唆している(Hosking et al.,2014)。現在検討されている、重要なものである可能性のある因子の1つは、思春期の始まる時機及びホルモンレベルに影響して思春期の発育にも影響を及ぼす場合がある、小児期における体重過多の影響である(Marcovecchio and Chiarelli,2013)。脂肪症と思春期との相互的影響は、複雑で遺伝特異的である。更に、女児においては、IRのレベルが高くなることにより、体脂肪の長期における更なる増加が制約され、観察は、体重増加に対する適応的応答としてのインスリン脱感作の機序としてのIRの概念と、場合によって一致する(Hosking et al.,2011)。
【0009】
成長及び発育の複雑な動態はまた、基礎代謝の機能(例えば、エネルギー消費の休止、すなわちREE)及び身体活動に影響を及ぼす生物学的プロセスにおける変化も伴う。小児におけるエネルギー消費の休止及び体重増加がどのように影響するかは議論の的であり、特に、低エネルギー消費が小児肥満の素因となる因子であり得るかどうかの検討(Griffiths et al.,1990)、並びに思春期前及び思春期中のエネルギー必要量のより更なる理解(Hosking et al.,2010)が関心事である。Earlybirdの研究をもとにした最近の解析により、思春期中のREEの大幅な低下が、脂肪症とは無関係であるものとして示された(Mostazir et al.2016)。このことにより、成長が最大となる期間は、発達中には重要であったエネルギー貯蔵の保護が、現年齢では十分に適したものではなくなる場合があることに関連付けられることが示唆される。また、これらの所見により、長期的に身体組成に影響を及ぼすことについて、思春期は重要である可能性があることも示唆される。
【0010】
要約すると、Earlybirdのコホートは、代謝プロセス及び長期的な代謝の健常性のリスクに対する、小児期成長及び発育の影響を調査するために特別に設計された、独自の詳細な長期コホート研究である。本発明者らは、ここで、この独自のコホートにおける広範な血清代謝解析を行うことにより、高血糖(前糖尿病)についての新規バイオマーカーを同定した。本出願では、本発明者らは、混合影響モデル化を適用して、年齢、BMI標準偏差、身体活動、及び思春期の時機を考慮し、空腹時血糖濃度と個々の代謝産物との間の関連性を評価した。小児期の血中グルコースの変化に最も強く関与する代謝産物から、本発明者らは、思春期前の代謝変化が、いかに後の青年期(例えば、16歳)における空腹時血糖に関する驚くべき情報を提供するのかを見出した。
【発明の概要】
【0011】
定義
本明細書全体にわたって使用される様々な用語は、以下に示すように定義される。
【0012】
以下の用語は、本発明の対象、特にヒト対象の様々な早期ライフステージを説明するために、本明細書を通して使用される。
乳児、新生児:生後1ヶ月以内の対象(ヒト)、
乳児:1~23ヶ月齢の対象(ヒト)、
小児(学齢前):2~5歳の対象(ヒト)、
小児:6~12歳の対象(ヒト)、
思春期前:6~7歳の対象(ヒト)、
中期小児期:7~8歳の対象(ヒト)、
青年(又は青年期):13~18歳の対象(ヒト)(他の対象において相当する早期ライフステージは、例えば、イヌでは、6~18ヶ月齢である)。
【0013】
本明細書を通して記述される様々な代謝産物は、他の名称によっても知られている。例えば、代謝産物「3-D-ヒドロキシブチレート」はまた、(R)-(-)-β-ヒドロキシ酪酸、(R)-3-ヒドロキシブタン酸、3-D-ヒドロキシ酪酸、D-3-ヒドロキシ酪酸、(R)-(-)-b-ヒドロキシブチレート、(R)-(-)-b-ヒドロキシ酪酸、(R)-(-)-β-ヒドロキシブチレート、(R)-(-)-β-ヒドロキシブチレート、(R)-(-)-β-ヒドロキシ酪酸、(R)-3-ヒドロキシブチレート、(R)-3-ヒドロキシブタノエート、3-D-ヒドロキシブチレート、D-3-ヒドロキシブチレート、3-δ-ヒドロキシブチレート、3-δ-ヒドロキシ酪酸、BHIB、D-(-)-3-ヒドロキシブチレート、D-β-ヒドロキシブチレート、δ-(-)-3-ヒドロキシブチレート、δ-3-ヒドロキシブチレート、δ-3-ヒドロキシ酪酸、及びδ-β-ヒドロキシブチレートとしても知られている。
【0014】
代謝産物「シトレート」はまた、クエン酸、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、2-ヒドロキシトリカルバリル酸、3-カルボキシ-3-ヒドロキシペンタン-1,5-二酸、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボキシレート、2-ヒドロキシトリカルバリレート、3-カルボキシ-3-ヒドロキシペンタン-1,5-ジオエート、β-ヒドロキシトリカルバリレート、β-ヒドロキシトリカルバリル酸としても知られている。
【0015】
代謝産物「ラクテート」はまた、L-乳酸、(+)-乳酸、(S)-(+)-乳酸、(S)-2-ヒドロキシプロパン酸、(S)-2-ヒドロキシプロピオン酸、L-(+)-α-ヒドロキシプロピオン酸、L-(+)-乳酸、L-(+)-α-ヒドロキシプロピオネート、(S)-2-ヒドロキシプロパノエート、1-ヒドロキシエタン1-カルボキシレート、ミルク酸サルコ乳酸、D-乳酸としても知られている。
【0016】
代謝産物「アスパラギン」はまた、L-アスパラギン、(2S)-2,4-ジアミノ-4-オキソブタン酸、(2S)-2-アミノ-3-カルバモイルプロパン酸、(S)-2-アミノ-3-カルバモイルプロパン酸、(S)-アスパラギン、2-アミノケイ皮酸、アスパラギン酸、L-2-アミノケイ皮酸、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸β-アミド、(2S)-2,4-ジアミノ-4-オキソブタノエート、(2S)-2-アミノ-3-カルバモイルプロパノエート、2-アミノスクシナメート、アスパルタメート、L-アスパルタミン、L-2,4-ジアミノ-4-オキソブタン酸、b2,4-(S)-ジアミノ-4-オキソ-ブタノエート、アルテニン、αアミノスクシナメート、アゲドイト(Agedoite)としても知られている。
【0017】
代謝産物「バリン」はまた、L-バリン、(2S)-2-アミノ-3-メチルブタン酸、2-アミノ-3-メチル酪酸、L-(+)-α-アミノイソ吉草酸、L-α-アミノ-β-メチル酪酸、(2S)-2-アミノ-3-メチルブタノエート、2-アミノ-3-メチルブチレート、2-アミノ-3-メチルブタノエート、(S)-α-アミノ-β-メチル酪酸、(S)-α-アミノ-β-メチルブチレート、(S)-2-アミノ-3-メチルブチレート、L-α-アミノ-β-メチル酪酸としても知られている。
【0018】
代謝産物「クレアチン」はまた、((アミノ(イミノ)メチル)(メチル)アミノ)酢酸、(α-メチルグアニド)酢酸、(N-メチルカルバミダミド)酢酸、α-メチルグアニジノ酢酸、メチルグリコシアミン、N-(アミノイミノメチル)-N-メチルグリシン、N-[(e)-アミノ(イミノ)メチル]-N-メチルグリシン、N-アミジノサルコシン、N-カルバミミドイル-N-メチルグリシン、N-メチル-N-グアニルグリシン、(α-メチルグアニド)アセテート、メチルグアニドアセテート、[[アミノ(イミノ)メチル](メチル)アミノ]アセテート、(N-メチルカルバミダミド)アセテートとしても知られている。
【0019】
用語「前糖尿病」により、空腹時血糖値が血漿について5.6mmol/L以上であり、ただし、2型糖尿病と診断されほどには高くない状態を記載する。前糖尿病には、徴候又は症状がない。前糖尿病者では、2型糖尿病及び心血管(心臓及び循環器)疾患を発症するリスクが高い。健康的な摂食、活動量の増加、及び減量をはじめとする、持続的な生活習慣の変化がない場合、前糖尿病では3名のうち約1名が、2型糖尿病を発症するに至る。
【0020】
2つの前糖尿病の条件がある:
耐糖能異常(IGT)では、血漿の血糖値が5.6mmol/L以上であり、ただし、糖尿病として分類されるほどには高くない。
【0021】
空腹時血糖異常(IFG)では、血糖値が空腹状態において上昇するものの、ただし、糖尿病として分類されるほどには高くない。
【0022】
空腹時血糖異常(IFG)及び耐糖能異常(IGT)の両方になる可能性もある。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「基準値」は、実質的に健常な正常血糖の集団の生体液試料において測定された平均値として、定義することができる。この集団は、5.6mmol/L未満の平均空腹時血糖値を有してもよい。この集団の平均年齢は、好ましくは対象の平均年齢とおよそ同じである。この集団の平均BMI標準偏差は、好ましくは対象のBMI標準偏差とおよそ同じである。この集団の平均身体活動レベルは、好ましくは対象の平均身体活動レベルとおよそ同じである。この集団は、ヒト対象と実質的に同じ人種のものであってもよい。この集団は、少なくとも2、5、10、100、200、500、又は1000名に達してもよい。この集団は、対象がペットである場合、実質的に同じ品種であってもよい。
【0024】
用語「高い値のグルコース」又は「高グルコース値」は、対象の生体液試料において測定したとき、5.6mmol/L以上であると定義される。
【0025】
用語「生体液」は、例えば、ヒト血液(特にヒト血清、ヒト血漿)、尿又は間質液であってもよい。
【0026】
「過体重」は、25~30のBMIを有する成人のヒトに対して定義される。「ボディマス指数」、すなわち「BMI」は、体重のキログラム値を身長のメートル値の二乗で除算した比率を意味する。「肥満」とは、動物、特にヒト及び他の哺乳類の脂肪組織に蓄えられた天然のエネルギー貯蔵が、特定の健康状態又は死亡率の増加に関係する点まで増加した状態である。「肥満の」は、30より大きいBMIを有する成人のヒトに対して定義される。成人のヒトの「正常体重」は、18.5~25のBMIとして定義されるものであり、他方、「体重過少」は、18.5未満のBMIとして定義することができる。ボディマス指数(BMI)は、小児及びティーンエイジャーにおいて、小児期の過体重及び肥満を判定するために使用される尺度である。小児及びティーンエイジャーにおける過体重は、同じ年齢及び性別の小児及びティーンエイジャーに対して、85パーセンタイル以上及び95パーセンタイル未満のBMIとして定義される。肥満は、同じ年齢及び性別の小児及びティーンエイジャーに対して95パーセンタイル以上のBMIとして定義される。小児及びティーンエイジャーにおける正常体重は、同じ年齢及び性別の小児及びティーンエイジャーに対して、5パーセンタイル以上及び85パーセンタイル未満のBMIとして定義される。小児及びティーンエイジャーにおける過少体重は、同じ年齢及び性別の小児及びティーンエイジャーに対して、5パーセンタイル未満として定義される。BMIは、人の体重のキログラム値を身長のメートル値の二乗で除算することによって算出される。小児及びティーンエイジャーについては、BMIは年齢特異的及び性別特異的であり、多くの場合、年齢別BMIと呼ばれる。小児の体重状態は、成人に使用されるBMI分類ではなく、BMIの年齢特異的及び性別特異的なパーセンタイルを使用して決定される。これは、小児の身体組成が年齢を重ねるにつれて変わること、及び男児と女児との間で変わることによる。したがって、小児及びティーンエイジャーでのBMIレベルは、同じ年齢及び性別の他の小児に対して表される必要がある。
【0027】
用語「対象」は、好ましくはヒトの中の対象であり、又はペットの中の対象、例えばネコ若しくはイヌであってもよい。
【0028】
用語「実質的に」は、50%以上、より好ましくは75%以上、又はより好ましくは90%以上を意味するものとする。用語「約」又は「およそ」は、値を指すとき、又は量若しくは百分率を指すとき、いくつかの実施形態では、±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、及びいくつかの実施形態では±0.1%の、特定の値、量、又は百分率からの変動を包含することを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、対象の生体液における高グルコース値を予測するための方法を提供するものであり、当該方法は、
a.(i)3-D-ヒドロキシブチレートの、並びにシトレート、ラクテート、及びアスパラギンのうちの1つ以上の、当該対象の生体液における値を測定すること、並びに/又は(ii)当該対象の生体液における、3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の値を測定すること;
b.(i)3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、3-D-ヒドロキシブチレート:ラクテート、及び3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、のうちの1つ以上の値の比率を、基準値と比較すること、並びに/又は(ii)3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の値を、基準値と比較すること;
c.
(I)3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、3-D-ヒドロキシブチレート:ラクテート、及び3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、のうちの1つ以上の値の比率が、b(i)における基準値よりも高い場合;並びに/又は
(II)3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の値が、b(ii)における基準値よりも高い場合に、高グルコース値のリスクが高くなったとして当該対象を特定すること、を含む。
【0030】
本発明は更に、対象における高グルコース値、特に高血糖値を予測するための方法を提供するものであり、当該方法は、
a.(i)3-D-ヒドロキシブチレートの、並びにシトレート、ラクテート、及びアスパラギンのうちの1つ以上の、思春期の時点で当該対象から採取された生体液における値を測定すること、並びに/又は(ii)3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の、思春期の時点で当該対象から採取された生体液試料における値を測定すること;
b.(i)3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、3-D-ヒドロキシブチレート:ラクテート、及び3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、のうちの1つ以上の値の比率を、対応する基準値と比較すること、並びに/又は(ii)3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の値を、対応する基準値と比較すること;
c.
(I)3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、3-D-ヒドロキシブチレート:ラクテート、及び3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、のうちの1つ以上の値の比率が、b(i)における対応する基準値よりも高い場合;並びに/又は
(II)3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の値が、b(ii)における対応する基準値よりも高い場合に、青年期における高グルコース値のリスクが高くなったとして当該対象を特定すること、を含む。
【0031】
一実施形態では、対象における高血糖値を予測するための方法は:
a.3-D-ヒドロキシブチレートの、並びにシトレート、ラクテート、及びアスパラギンのうちの1つ以上の、思春期前の時点で当該対象から採取された生体液試料中の値を測定すること;
b.3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、3-D-ヒドロキシブチレート:ラクテート、及び3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、のうちの1つ以上の値の比率を、対応する基準値と比較すること;
c.対象を、3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、3-D-ヒドロキシブチレート:ラクテート、及び3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、のうちの1つ以上の値の比率が、(b)における対応する基準値よりも高い場合、青年期における高血糖値のリスクが高くなったとして特定すること、を含む。
【0032】
一実施形態では、対象における高血糖値を予測するための方法は:
a.3-D-ヒドロキシブチレートの、並びにシトレート及びアスパラギンのうちの1つ以上の、思春期前の時点で当該対象から採取された生体液試料における値を測定すること;
b.3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、及び3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、のうちの1つ以上の値の比率を、対応する基準値と比較すること;
c.当該対象を、3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、及び3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、のうちの1つ以上の値の比率が、(b)における対応する基準値よりも高い場合、青年期における高血糖値のリスクが高くなったとして特定すること、を含む。
【0033】
一態様では、対象における高血糖値を予測するための方法は:
a.3-D-ヒドロキシブチレート及びシトレートの、思春期前の時点で当該対象から採取された生体液試料における値を測定すること;
b.3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、の値の比率を、対応する基準値と比較すること;
c.当該対象を、3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、のうちの1つ以上の値の比率が、(b)における対応する基準値よりも高い場合、青年期における高血糖値のリスクが高くなったとして特定すること、を含む。
【0034】
別の態様では、対象における高血糖値を予測するための方法は:
a.3-D-ヒドロキシブチレート及びラクテートの、思春期前の時点で当該対象から採取された生体液試料における値を測定すること;
b.3-D-ヒドロキシブチレート:ラクテート、の値の比率を、対応する基準値と比較すること;
c.当該対象を、3-D-ヒドロキシブチレート:ラクテート、のうちの1つ以上の値の比率が、(b)における対応する基準値よりも高い場合、青年期における高血糖値のリスクが高くなったとして特定すること、を含む。
【0035】
別の態様では、対象における高血糖値を予測するための方法は:
a.3-D-ヒドロキシブチレート及びアスパラギンの、思春期前の時点で当該対象から採取された生体液試料中の値を測定すること;
b.3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、の値の比率を、対応する基準値と比較すること;
c.当該対象を、3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、のうちの1つ以上の値の比率が、(b)における対応する基準値よりも高い場合、青年期における高血糖値のリスクが高くなったとして特定すること、を含む。
【0036】
一実施形態では、高血糖値は、ヒト血漿の空腹時血糖が5.6mmol/L以上であることに相当する。
【0037】
代替の実施形態では、本発明は、対象における5.6mmol/L未満の空腹時血糖値を予測するための方法を提供し、当該方法は:
a.3-D-ヒドロキシブチレートの、並びにシトレート、ラクテート、及びアスパラギンのうちの1つ以上の、思春期前の時点で当該対象から採取された生体液試料における値を測定すること;
b.3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、3-D-ヒドロキシブチレート:ラクテート、及び3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、のうちの1つ以上の値の比率を、対応する基準値と比較すること;
c.当該対象を、3-D-ヒドロキシブチレート:シトレート、3-D-ヒドロキシブチレート:ラクテート、及び3-D-ヒドロキシブチレート:アスパラギン、のうちの1つ以上の値の比率が、(b)における対応する基準値よりも低い場合、青年期における高血糖値のリスクが低くなったとして特定すること、を含む。
【0038】
別の実施形態では、対象における高血糖値を予測するための方法は、
a.3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の、思春期前の時点で当該対象から採取された生体液試料における値を測定すること;
b.3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の値を、対応する基準値と比較すること;
c.対象を、3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の値が、(b)における対応する基準値よりも高い場合、青年期における高血糖値のリスクが高くなったとして特定すること、を含む。
【0039】
一態様では、対象における高血糖値を予測するための方法は:
a.3-D-ヒドロキシブチレートの、思春期前の時点で当該対象から採取された生体液試料における値を決定すること;
b.3-D-ヒドロキシブチレートの値を、対応する基準値と比較すること;
c.当該対象を、3-D-ヒドロキシブチレートの値が、(b)における対応する基準値よりも高い場合、青年期における高血糖値のリスクが高くなったとして特定すること、を含む。
【0040】
別の態様では、対象における高血糖値を予測するための方法は:
a.バリンの、思春期前の時点で当該対象から採取された生体液試料における値を測定すること;
b.バリンの値を、対応する基準値と比較すること;
c.当該対象を、バリンの値が、(b)における対応する基準値よりも高い場合、青年期における高血糖値のリスクが高くなったとして特定すること、を含む。
【0041】
別の態様では、対象における高血糖値を予測するための方法は:
a.クレアチンの、思春期前の時点で当該対象から採取された生体液試料における値を測定すること;
b.クレアチンの値を、対応する基準値と比較すること;
c.当該対象を、クレアチンの値が、(b)における対応する基準値よりも高い場合、青年期における高血糖値のリスクが高くなったとして特定すること、を含む。
【0042】
代替の実施形態では、本発明は、対象における低血糖値を予測するための方法を提供し、この方法は:
a.3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の、思春期前の時点で当該対象から採取された生体液試料における値を測定すること;
b.3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の値を、対応する基準値と比較すること;
c.当該対象を、3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の値が、(b)における対応する基準値よりも低い場合、青年期における高血糖値のリスクが低くなったとして特定すること、を含む。
【0043】
好ましくは、3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の、生体液試料中の値を測定し、3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンのうちの1つ以上の値を、対応する基準値と比較するとき、この生体液試料は、好ましくは少なくとも2度の時点で対象から採取され、この少なくとも2度の時点は、好ましくは、対象の5歳の誕生日又は誕生日後、ただし、対象の9歳の誕生日の前にあり、好ましくは、少なくとも1年の間隔が、好ましくは本明細書に記載されるようにあけられる。
【0044】
一実施形態では、この生体液試料の採取は、5歳、6歳、7歳、又は8歳の対象から、少なくとも1年間の間隔をあけて行われる。一実施形態では、この生体液試料の採取は、6歳及び7歳の対象から行われる。
【0045】
一実施形態では、この生体液試料の採取は、正常体重の対象から行われる。
【0046】
一実施形態では、この生体液試料の採取は、5歳、6歳、7歳、又は8歳の正常体重の対象から、少なくとも1年間の間隔をあけて行われる。一実施形態では、この生体液試料の採取は、6歳及び7歳の正常体重の対象から行われる。
【0047】
本発明の一態様では、高血糖値は、小児期前糖尿病に相当する。
【0048】
本発明の一態様では、生体液試料の採取は、対象が6歳のときに行われる。
【0049】
本発明の一態様では、2つ以上の生体液試料の採取は、この対象から、工程a(i)及び/又はa(ii)において行われる。
【0050】
本発明の一態様では、代謝産物の測定は、NMR(核磁気共鳴)によって行われる。あるいは、代謝産物の測定は、質量分析法によって行われても、臨床アッセイによって行われてもよい。
【0051】
本発明の一態様では、年齢の部分的な範囲として13~16歳は、青年期を代表するものとして選択される。
【0052】
本発明の一態様では、16歳は、青年期を代表するものとして選択される。
【0053】
本発明の一態様では、基準値は、予め設定された標準である。
【0054】
本発明の一態様では、生体液試料は、ヒト血清である。
【0055】
本発明の一態様では、高血糖値は、空腹時血糖異常として現れる。
【0056】
本発明の一態様では、空腹時血糖異常は、世界保健機関(WHO)の基準をもとに測定され、6.1mmol/L(110mg/dL)~6.9mmol/L(125mg/dL)の空腹時血漿グルコース値に相当する。
【0057】
本発明の別の態様では、空腹時血糖異常は、米国糖尿病学会(American Diabtic Association)(ADA)の基準をもとに測定され、5.6mmol/L(100mg/dL)~6.9mmol/L(125mg/dL)の空腹時血漿グルコース値に相当する。
【0058】
本発明はまた、青年の対象におけるグルコース値の管理を改善する方法であって、(i)この対象が本発明による高血糖値を有するかどうかを予測することと、(ii)青年期において高血糖値を有するリスクが高くなったとして特定された対象の生活習慣を改善する方法を提供することと、を含み、食事介入によりグルコース値を減少させる、方法を提供する。
【0059】
本発明の一態様では、この生活習慣の改善により、高血糖値の尤度を低減する、又は予防する。
【0060】
本発明の一態様では、この生活習慣の改善は、思春期前及び思春期を通して施される。
【0061】
本発明の一態様では、この方法により、1つ以上の代謝疾患、特に2型糖尿病の発症について、特に早期成人期において尤度を低減する、又は予防する。
【0062】
本発明の一態様では、この生活習慣の改善は、思春期前、思春期、及び青年期を通して施される。
【0063】
本発明の一態様では、対象における生活習慣の改善は、食生活の変更を含むものであり、好ましくは、食生活の一部として、グルコースの値を調節する少なくとも1つの栄養製品を対象に与えることを含む。
【0064】
本発明の一態様では、食生活の一部として、グルコースの値を調節する少なくとも1つの栄養製品を対象に与えることにより、対象におけるグルコースの減少を促進する、又はグルコース値の上昇を防止する。
【0065】
本発明の一態様では、食生活の変更は、脂肪の摂取の減少、及び/又は低脂肪食品の摂取の増加により、1日のカロリーのうち脂肪から得るものを20%以下にすることを含む。
【0066】
低脂肪食品としては、パン及び小麦粉、オート麦、朝食用シリアル、全粒米及びパスタ、生鮮、冷凍、及び缶入りの、野菜及び果物、乾燥した大豆及びヒラマメ、焼いた又は茹でたジャガイモ、ドライフルーツ、白身の魚、甲殻類、皮なしの鶏及び七面鳥の胸肉などの脂肪の少ない胸肉(lean wite meat)、脱脂及び部分脱脂粉乳(smi skimmed milk)、カッテージチーズ又はカード状態のチーズ、低脂肪ヨーグルト、又は卵白が挙げられる。ほとんどの成人は、1日のカロリーの20%~35%を脂肪から得る。これは、1日当たり2,000カロリーを摂取する場合、1日当たり約44~77gの脂肪に等しい。低脂肪食品はまた、全粒粉小麦粉及びパン、ポリッジにしたオート麦、食物繊維の多い朝食シリアル、乾燥した大豆及びヒラマメ、クルミ、ニシン、サバ、イワシ、魚の燻製、マイワシ、サケ、及び脂肪の少ない肉から選択されるものでもよい。
【0067】
本発明の一態様では、食生活の変更は、身体の成長及び修復に十分なタンパク質と、年齢及び身長に対して適正な体重を維持するのに十分なカロリーと、を提供するケトン食を含む。
【0068】
ケトン食は、デンプン質の果物及び野菜、パン、パスタ、穀物、及び糖などの高炭水化物食品を除外し、かつナッツ、クリーム、及びバターなどの高脂肪食品の摂取を増加させることによって、実現することができる。中鎖トリグリセリド(MCT)ケトン食として知られる従前からの食生活のバリエーションでは、MCTに富み、カロリーのおよそ半分を提供するココナッツ油を使用する。この食生活のバリエーションでは、必要とされる脂肪が総合的により少ないことから、摂取することができる炭水化物及びタンパク質の割合がより多くなり、より多様な食品を選択可能である。本発明の一態様では、食生活の変更は、ケトン食への変更を含む。一実施形態では、ケトン食は、1日当たり20g未満の炭水化物を摂取するものである。
【0069】
本発明の一態様では、食生活の変更は、地中海食への変更を含む。
【0070】
一実施形態では、この地中海食は、より高脂肪であり、断続的な絶食を含む場合がある。例えば、典型的な地中海諸国では、朝食を抜く場合があり、重い昼食を、朝食と昼食とを合わせたカロリーに相当するカロリー数で摂食することができる。
【0071】
地中海食には、典型的には、1日当たり、3~9杯分(serving)の野菜、半杯~2杯分の果物、1~13杯分のシリアル、及び最大8杯分のオリーブ油が入っている。一実施形態では、地中海食には、約9300kJ以上が含まれる。一実施形態では、地中海食には、総脂肪が37%以下(具体的には、一価不飽和脂肪として18%以下、及び飽和脂肪として9%以下)で含まれている。一実施形態では、地中海食には、1日当たり33g以上の食物繊維が含まれている。
【0072】
例として、地中海食の、食品の種類及び摂取並びに栄養素含有量は、Davisらによって記載されている(Reference Definition of the Mediterranean Diet:A Literature Review,Davis et al.,Nutrients,7(11),9139-9153,2015)。
【0073】
本発明の一態様では、食生活の変更は、1日を通して正常な血糖値を維持するため、又はそれに達するために、適度な低炭水化物食への変更を含む。一実施形態では、適度な低炭水化物食では、1日当たり20g~50gの炭水化物の摂取になる。比較すると、標準的な食生活では、1日当たり約50g~100gの炭水化物の摂取になる。
【0074】
本発明の一態様では、食生活の変更は、ビーガン食への変化を含む。典型的には、ビーガン食は、主要栄養素及び微量栄養素の組成のバランスがよく、1日を通して平均血糖値が低くなる。ビーガン食は、食肉、卵、乳製品、並びに任意の他の動物由来の食品及び成分を含まない、植物ベースの食生活である。
【0075】
対照的に、菜食では、植物ベースの食品に重きが置かれるものの、乳製品、卵、蜂蜜、及び魚が含まれてもよい。ビーガン食及び菜食のいずれも、タンパク質、鉄、n-3脂肪酸、ヨウ素、亜鉛、カルシウム、及びビタミンB12についての栄養要件を適切に満たす植物ベースの食品を適切に選択することにより、すべてのライフステージについて健康的なものにすることができる。習慣的なバランスのよい食生活と交互に行われる、断続的なビーガン食もまた、これらの栄養要件を満たすことができる。
【0076】
本発明の一態様では、食生活の変更は、必須アミノ酸、脂質及び水溶性ビタミン、ミネラル、又は栄養素の組み合わせなどの、グルコース管理を改善する目的での必須栄養素の補給を含む。
【0077】
必須栄養素の例は、アミノ酸(フェニルアラニン、バリン、スレオニン、トリプトファン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、リシン、及びヒスチジン);脂肪酸(α-リノレン酸(ω-3脂肪酸)及びリノール酸(ω-6脂肪酸);ビタミン(ビタミンA、B(1~12)、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE);ミネラル、例えば、「主要ミネラル」(カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、塩素、及びマグネシウム)、及び「微量ミネラル」(鉄、亜鉛、マンガン、及び銅などの金属);並びに条件による栄養素(コリン、イノシトール、タウリン、アルギニン、グルタミン、及びヌクレオチド)である。
【0078】
本発明の一態様では、食生活の変更は、身体活動プログラム管理と関連している。身体活動プログラムは、対象の身体組成、医学的状態及び年齢に適したものである必要があり、最適なグルコース管理による成果のための、減量又は体重管理、並びに体脂肪量及び除脂肪量の改善を目的とする。
【0079】
例えば、この解決策を、生徒が身体的に活動的になる機会をすべて使用するものであり、国が推奨する毎日の身体活動についての分単位の時間(例えば、毎日60分の適度ないし激しい身体的活動)を満たすことができる、身体活動プログラム(Physical Activity Program)の一部とすることもできる。例えば、プログラムは、小児及び若年者の身体活動に関する公的健康指針(例えば、National institute for health and care promanlence,UK:https://www.nice.org.uk/guidance)に従うものでもよい。
【0080】
本発明の一態様は、対象の生活習慣を変更した後に、対象におけるグルコース値を予測する工程を繰り返す行程、を更に含む。
【0081】
本発明はまた、思春期における対象の生体液におけるクレアチン、シトレート、及びアスパラギンの値を測定する手段を備えたパーツからなるキットも提供する。
【0082】
本発明はまた、3-D-ヒドロキシブチレート、バニリン、クレアチン、シトレート、ラクテート、及びアスパラギンの、思春期の対象の生体液における値を測定する手段を備えたパーツからなるキットを提供する。
【0083】
本発明はまた、思春期前の対象が、青年期において高グルコース値を有すること、又は前糖尿病を発症することについて、予測するための、本発明によるパーツからなるキットの使用を提供する。
【実施例】
【0084】
実施例1
試験において使用される方法
試験集団
EarlyBirdの糖尿病試験では、1995/1996年の出生コホートを2000/2001年に募集して、5歳の小児(307名の小児、170名は男児)として組み込む。EarlyBirdのコホートからのデータの収集は、5歳から16歳まで毎年測定された、いくつかの臨床及び人体測定変数から構成されている。検討を、Declaration of Helsinki IIの倫理指針に従って行った。倫理審査の承認は、Plymouth Local Research Ethics Committee(1999)から得て、保護者からは書面による同意を得て、小児からは口頭で同意を得た。
【0085】
人体測定パラメータ
BMIは、身長(Leicester Height Measure;Child Growth Foundation(London,U.K.))、及び体重(Tanita Solar 1632 electronic scales)の直接測定から導出し、盲検で2重に行い、平均した。BMIの標準偏差を、英国の1990年度の標準をもとに算出した。
【0086】
加速度計法(Acti-Graph[旧称MTI/CSA])によって、5歳から毎年、身体活動を測定した。小児に、毎年各時点で連続7日間の加速度計着用をお願いし、少なくとも4日間捕捉された記録のみを使用した。
【0087】
エネルギー消費の休止を、フード法により換気した流れを使用する間接熱量測定法によって測定した(Gas Exchange Measurement,Nutren Technology Ltd(Manchester,UK))。パフォーマンス試験では、報告によると、酸素摂取の測定において0.3±2.0%の平均誤差、及び二酸化炭素産生の測定において1.8±1%の平均誤差を示している。少なくとも6時間の終夜絶食期間後に、測定を、静穏で常温(20℃)の室内で行い、食品に関する熱的影響に起因するあらゆる影響を最小限に抑えた。データを少なくとも10分間収集し、呼吸商(RQ)を基礎代謝率(BMR)の指標として算出した。
【0088】
臨床パラメータ
毎年、終夜絶食後、末梢血をEDTA管に採取し、-80℃で保存した。インスリン抵抗性(IR)について、空腹時血糖(Cobas Integra 700分析器;Roche Diagnostics)、及びインスリン(DPC IMMULITE)(プロインスリンと交差反応性、1%)から、小児において認証された恒常性モデル評価プログラム(HOMA-IR)を使用して毎年測定した。
【0089】
血清メタボノミクス
400μLの血清を、1mMのナトリウム3-(トリメチルシリル)-[2,2,3,3-2H4]-1-プロピオネート(TSP、化学シフトの基準δH=0.0ppm)を含有する、200μLの重水素化リン酸緩衝液、0.6MのKH2PO4と混合した。550μLの混合物を、5mmのNMR管に移した。
【0090】
血清試料の1HNMR代謝プロファイルを、5mmのクライオプローブを備えたBruker Avance III 600MHzスペクトル測定器(Bruker Biospin(Rheinstetten,Germany))により310Kで取得し、TOPSPIN(バージョン2.1,Bruker Biospin,Rheinstetten,Germany)ソフトウェアパッケージを使用して、前に報告したように処理した。水抑制を伴う標準的な1H NMR1次元パルスシーケンス、水抑制を伴うCarr-Purcell-Meiboom-Gill(CPMG)スピンエコーシーケンス、及び拡散編集シーケンスを、32スキャンを用いて98Kのデータ点で取得した。スペクトルデータ(δ0.2からδ10まで)を、22Kのデータ点の分解能を有するMatlabソフトウェア(バージョンR2013b、Mathworksinc Inc(Natwick MA))にインポートし、溶媒ピーク除去後の総面積に対して正規化した。質の悪い、又は非常に希薄なスペクトルについては、以降の解析では除外した。
【0091】
ヒト血漿の1H-NMRスペクトルにより、トリグリセリド、リン脂質、及びコレステリルエステルに見出されるリポタンパク質結合脂肪酸アシル基に関連するシグナルを、トリグリセリドのグリセリル部分及びホスファチジルコリンのコリン頭部基からのピークと共にモニタリングすることが可能になる。このデータはまた、血中に存在する主要な低分子量分子の定量的プロファイリングを網羅している。内部データベースに基づいて、1H CPMG NMRスペクトルで帰属可能な、アスパラギン、ロイシン、イソロイシン、バリン、2-ケト酪酸、3-メチル-2-オキソ吉草酸、α-ケトイソ吉草酸、(R)-3-ヒドロキシ酪酸、乳酸、アラニン、アルギニン、リシン、酢酸、N-アセチルグリコタンパク質、O-アセチルグリコタンパク質、アセト酢酸、グルタミン酸、グルタミン、クエン酸、ジメチルグリシン、クレアチン、シトルリン、トリメチルアミン、トリメチルアミンN-オキシド、タウリン、プロリン、メタノール、グリシン、セリン、クレアチニン、ヒスチジン、チロシン、ギ酸、フェニルアラニン、スレオニン、及びグルコースをはじめとする、代謝産物を表すシグナルを積分した。加えて、拡散編集スペクトルでは、コリン、VLDL下位分類、不飽和脂肪酸及びポリ不飽和脂肪酸を含有するリン脂質をはじめとする、異なる種類の脂質に関連するシグナルを、積分した。血清中の代謝産物濃度の相対的変化を表す、全代謝プロファイルに対し正規化したピーク面積に対応する任意的な単位でシグナルを表す。
【0092】
統計:
すべての年齢でのデータを同時に使用して、混合効果モデルを使用し、年齢、BMI標準偏差、身体活動及び思春期の時機(APHV)を考慮して、グルコースと個々の代謝産物との間の関連を評価した。固定の効果としての、年齢(グルコースにおける経時的な非線形変化を見越して分類)、性差、BMI標準偏差、APHV、MVPA(適度ないし激しい身体活動に費やした分数)及び個々の代謝産物(別個のモデルにおけるもの)と共に、変量切片を含めた。Rソフトウェアにてパッケージlme4におけるlmer機能を使用して、モデル化を実施した。
【0093】
実施例2
代謝産物濃度の測定
6歳及び16歳の小児の特性を表1にまとめる。両方の性別で、グルコース、インスリン、BMI標準偏差、呼吸商が16歳まで増加し、身体活動は、mvpaパラメータにより示されるように低下した。
【0094】
【0095】
すべての年齢で同時にデータを使用して、混合効果モデルを適用し、グルコースと個々の代謝産物との間の関連を評価した。各代謝産物について作成されたモデルの結果を、所与の代謝経路に関して各代謝産物について、表2に報告する。統計的有意性に関してデータを報告する。代謝経路及び代謝産物に関しアルファベット順とする。(表2)。
【0096】
【0097】
解析によると、アミノ酸、ケトン体、解糖、及び脂肪酸の代謝における特定の代謝産物の重大性が、小児期全体を通した血糖の変動を説明するにあたって、注目された。これは、血糖全体の変動に対する、特定の代謝プロセスの代謝的な関与についての最初の長期的かつ連続的な方法での報告であると考えられる。この解析により、分枝鎖アミノ酸の代謝及びそれの異化、ケトン生成、糖原性アミノ酸が、小児期を通したグルコース産生にどのように関与するかについて説明される。
【0098】
各暦年齢での、男児及び女児のこれらの代謝産物の濃度を、表3に報告する。この情報により、これらの代謝産物の血中値における、様々な年齢関連の動態の認識が可能になる。
【0099】
【0100】
【0101】
具体的には、グルコース濃度では、男児及び女児について、5歳でのそれぞれ4.3mmol及び4.4mmolから、16歳でのそれぞれ5.2mmol及び5.0mmolまで、その血中値の大幅な生物学的な上昇が示されている。興味深いことに、この濃度上昇では、2つの定常期、すなわち、8~11歳での1つ目の定常期、及び13歳~16歳で2つ目の定常期が際立っている。血糖濃度が上昇するにつれて、呼吸商(RQ)のパターンの年齢に伴う上昇が見られる。このRQは、基礎代謝率を考察するために、並びに、どの主要栄養素がエネルギー補給のために、ひいては小児期の期間における成長及び発育のための主要エネルギー源として代謝されているかを考察するために、非常に参考になる。RQ値は、5歳から7歳まで平均0.87~0.92に留まり、8歳から10歳までに0.93~0.97に上昇し、11歳から13歳までに0.98~1.01に更に上昇し、14歳から以降0.95に向かって減少する。参考情報として、0.7の値は、脂質が代謝されていることを示し、タンパク質では0.8、及び炭水化物では1.0である。換言すれば、RQが1に等しいとき、身体では、ほとんど内在性及び外来性の炭水化物のみが代謝燃料源として使用されており、他方、0.7の値は、ほとんど脂肪のみが代謝の燃料として使用される極端な飢えの状況に相当する。
【0102】
したがって、小児期を通してグルコース産生及び摂取の大幅な変化があることが、空腹時血糖及びRQのパターンにより説明されている。かかるデータは、小児期において、小児が、思春期の一定期間(11~13歳)中に、炭水化物のみを燃料として身体に供給し得ること、並びに思春期後期に青年期に達をしたときに、代謝燃料の選択範囲が再び広がり、成人の表現型により近くなることを示す。興味深いことに、データによると、男児及び女児の両者について、思春期前の段階(8歳未満)において大幅な変化が示されている。
【0103】
興味深いことに、小児期中のグルコースの変動と最も関連する代謝産物の変化についての観察では、2-ケトブチレート、3-メチル-2-オキソバレレート、ロイシン、バリン、イソロイシン、3-ヒドロキシブチレート、アセトアセテート、シトレート、アルギニン、アスパラギン、及びクレアチンにおける非常に特有のパターンが注目された。
【0104】
アルギニン、2-ケトブチレート、及び3-メチル-2-オキソバレレートでは、5歳から12歳までの減少パターンの後、定常期に達することが示されている。ロイシン及びバリンでは、小児期を通して比較的一定のままである。イソロイシンは、5歳からその値がより低い値へと減少し、6歳から10歳までの一定濃度の後、16歳まで増加するという、興味深いパターンを示す。アスパラギンは、男児及び女児において5歳から8歳までは減少パターンを示し、その後男児においては9歳以降に定常期が示される一方、女児においては、この代謝産物は14歳まで更に減少し、その後、男児において16歳で見られる値にまで増加を示す。ケトン体、3-d-ヒドロキシブチレート、クレアチン、及びシトレートでは、5歳から7歳まで非常に高濃度を示し、その後、16歳までの一貫した減少が示されている。
【0105】
実施例3
青年期に血糖が高くなることを示す代謝産物
上記の観察に基づいて、代謝産物のうち小児期におけるグルコースの変動に最も関与するものについて更に調査した。この代謝産物は、青年期に血糖が高くなることを、より早期により多く示す指標になり得る。表4では、5歳から16歳までの小児期における血糖値は、16歳で正常血糖として分類された小児、又は空腹時血糖異常(例えば、ADA基準より高い空腹時血糖、すなわち、5.6mmol/L以上の血漿)であるとして分類された小児について報告されている。16歳でのグルコースの状態は、13歳、14歳、及び15歳でのグルコースの段階を代表している。小児の両方の群で、思春期前の期間において同様の血糖濃度が示される一方、青年期の期間においてのみ、それらの空腹時血糖濃度の相違が検出され得る。
【0106】
【0107】
したがって、小児期におけるグルコースの変動に関連する主要代謝産物のいくつかについて、16歳での血糖に関してより高感度の情報を提供することができるものかどうか、評価した。この目的を達成するために、16歳での血糖と、5~6歳、6~7歳、及び7~8歳の、それぞれの年齢間での有力な代謝産物の変化率と、の間で作成された相関係数を比較することを目的とする戦略を採用した。最も有意な相関が、6~7歳の間での代謝産物の変動から特定された。結果を表5に示す。参考として、結果を、16歳でのグルコースと、6~7歳でのBMI標準偏差の変化との間で得られた相関と比較し、又は16歳でのグルコースと、6~7歳でのグルコースの変化との間で得られた相関と比較した。最も有力な代謝産物のうち、3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンでは、その年次変動が16歳でのグルコース濃度と統計的に正に相関しており、BMI標準偏差単独又はグルコース単独よりも多くの情報を提供した。
【0108】
これまでの結果を考慮して、6歳又は7歳での代謝産物間の比率について、所与の代謝産物における経時的変動としての情報になるかどうか、更に試験した。3-ヒドロキシブチレートとグルコースとの間の統計的で生物学的な関係性により、代謝産物と3-D-ヒドロキシブチレートとの間の比率を計算し、16歳での血糖との相関を評価することにした。結果を表5に示す。非常に興味深いことに、3-D-ヒドロキシブチレート/シトレート、3-D-ヒドロキシブチレート/ラクテート、3-D-ヒドロキシブチレート/アスパラギンの6歳での比率により、16歳での血糖との良好な相関は、3-D-ヒドロキシブチレート/グルコースの比率よりも統計的に良好にもたらされることが、分かった。解析によりまた、3-D-ヒドロキシブチレート/バリン又は3-D-ヒドロキシブチレート/クレアチンでは、16歳での血糖との関係性がはるかに低く、これらの3つの代謝産物は密接に生物学的に関係していることが示されている。
【0109】
【0110】
したがって、小児期における高空腹時血糖に関係する最も有力な生化学種間で、解析により次のことが示される:
【0111】
3-D-ヒドロキシブチレート、バリン、及びクレアチンの6歳及び7歳での測定は、16歳での高グルコース、ひいてはIFGのリスクの重要な指標になる。
【0112】
3-D-ヒドロキシブチレート/シトレート、又は3-D-ヒドロキシブチレート/ラクテート、又は3-D-ヒドロキシブチレート/アスパラギンの6歳での測定は、16歳での高グルコース、ひいてはIFGのリスクの重要な指標になる。
【0113】
本試験のコホートの例として、小児は、その空腹時血糖値が5.6mmol/Lよりも高かった場合に、16歳で空腹時血糖異常として分類された。平均すると、IFGの小児では、16歳で、空腹時血糖が正常血糖の小児よりも11%高い。したがって、本試験における思春期前マーカーについて、例えば次のことを述べることができる:
【0114】
平均よりも11%高い16歳でのグルコース値は、平均すると、6歳での3-HB/シトレートの比率の205%の上昇に相当する。
【0115】
平均よりも11%高い16歳でのグルコース値は、平均すると、6歳での3-HB/アセテートの比率の214%の上昇に相当する。
【0116】
平均よりも11%高い16歳でのグルコース値は、平均すると、6歳での3-HB/アスパラギンの比率の218%の上昇に相当する。
【0117】
平均よりも11%高い16歳でのグルコース値は、平均すると、6歳での3-HB/ラクテートの比率の328%の上昇に相当する。
【0118】
平均よりも11%高い16歳でのグルコース値は、平均すると、6歳での3-HB/7歳での3-HBの比率の229%の上昇に相当する。
【0119】
平均よりも11%高い16歳でのグルコース値は、平均すると、6歳でのバリン/7歳でのバリンの比率の69%の上昇に相当する。
【0120】
平均よりも11%高い16歳でのグルコース値は、平均すると、6歳でのクレアチン/7歳でのクレアチンの比率の73%の上昇に相当する。
【0121】
米国内の若年者(10~19歳)のうちでの、1型糖尿病及び2型糖尿病の両方の年間発生率の有意な増加が、Mayer-Davisらによって最近報告されている(Incidence Trends of Type 1 and Type 2 Diabetes among Youths,2002-2012,The New England Journal of Medicine,376:1419-1429,2017)。人種群及び民族群間に変動が存在することは十分に認められている。Mayer-Davisらによって例示されるように、これには、米国内の非ヒスパニック系の白人以外の人種群及び民族群における、高相関での2型糖尿病の発生率の上昇が例として挙げられる。人口統計学的な部分群間の変動は、糖尿病に関与する、遺伝因子、環境因子、及び行動因子の様々な組み合わせを反映し得る。したがって、提案されるマーカーについて適宜基準値を作成する必要がある。
【0122】
本試験のコホートの例として、基準値は、正常血糖の集団から決定される(表6)。
【0123】