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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】多孔性支持体を有する細胞培養槽
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/24 20060101AFI20221220BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20221220BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C12M1/24
C12M3/00 Z
C12N1/00 C
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020501480
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018042161
(87)【国際公開番号】W WO2019014636
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】62/532,671
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,グレゴリー ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】パルド,アナ マリア デル ピラール
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,マイケル カート
(72)【発明者】
【氏名】タナー,アリソン ジーン
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087369(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/069895(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/020992(WO,A1)
【文献】特開2005-080660(JP,A)
【文献】特開2004-129558(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157322(WO,A1)
【文献】特表2004-535829(JP,A)
【文献】米国特許第05047347(US,A)
【文献】英国特許出願公開第02147100(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養槽において、
前記槽の細胞培養室を画定する内面を含む壁部と、
前記細胞培養室内で該細胞培養室の第1の領域と該細胞培養室の第2の領域の間に配置された非多孔性材料の基材であって、複数の微細空洞部を含み、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部は、ウエルを画定する凹状表面および前記第1の領域から前記ウエルへの経路を画定する開口部を含み、前記各微細空洞部の前記凹状表面の底部には、5マイクロメートル以下の寸法を有し、前記基材の上面から、前記基材の底面に延伸して該ウエルから前記第2の領域への経路を画定する少なくとも1つの開口を含むものである基材と、
前記壁部を通って延伸し、前記第1の領域と流体連通する第1の開口と
前記第1の開口を前記第2の領域に接続し、前記第1の開口を介して前記槽の外側から前記第2の領域へと流体連通する流路と、
を含む細胞培養槽。
【請求項2】
前記壁部は、気体透過性材料を有して前記第2の領域と前記槽の外部との間を流体連通するポートを含むものである、請求項1に記載の細胞培養槽。
【請求項3】
細胞培養槽において、
前記槽の細胞培養室を画定する内面を含む壁部と、
前記細胞培養室内で該細胞培養室の第1の領域と該細胞培養室の第2の領域の間に配置された非多孔性材料の基材であって、複数の微細空洞部を含み、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部は、ウエルを画定する凹状表面および前記第1の領域から前記ウエルへの経路を画定する開口部を含み、前記各微細空洞部の前記凹状表面の底部には、15マイクロメートル以下の径寸法を有し、前記基材の上面から、前記基材の底面に延伸して該ウエルから前記第2の領域への経路を画定する少なくとも1つの開口を含むものである基材と、
前記壁部を通って延伸し、前記第1の領域と流体連通する第1の開口と、
前記壁部を通って延伸し、前記第2の領域と流体連通する第2の開口と、
前記第2の開口を前記第2の領域に接続し、前記第2の開口を介して前記槽の外側から前記第2の領域へと流体連通する流路と
を含む、胞培養槽。
【請求項4】
細胞培養槽において、
前記槽の細胞培養室を画定する内面を含む壁部と、
前記細胞培養室内で該細胞培養室の第1の領域と該細胞培養室の第2の領域の間に配置された非多孔性材料の基材であって、複数の微細空洞部を含み、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部は、ウエルを画定する凹状表面および前記第1の領域から前記ウエルへの経路を画定する開口部を含み、前記各微細空洞部の前記凹状表面の底部には、15マイクロメートル以下の径寸法を有し、前記基材の上面から、前記基材の底面に延伸して該ウエルから前記第2の領域への経路を画定する少なくとも1つの開口を含むものである基材と、
前記壁部を通って延伸し、前記第1の領域と流体連通する第1の開口と、
前記第1の領域前記第2の領域との間を流体連通する流路
を含み、
前記第1の領域から前記第2の領域に進行する前記流路の端部は、該第1の領域で、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記開口部から離間して位置する、
胞培養槽
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体が、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部の前記凹状表面の前記少なくとも1つの開口を通り抜けるようにする工程と、
前記少なくとも1つの微細空洞部で細胞を培養する工程と
を含む方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と、
を含む方法。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を通って、前記槽の外側から前記第1の領域へ通り抜けるようにする工程と、
前記液体の少なくとも一部を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部に堆積させる工程と、
前記液体の少なくとも一部を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部に堆積させた後に、細胞を、該少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項8】
請求項2に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体を、前記ポートの気体透過性フィルタに通す工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項9】
請求項に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項10】
請求項に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第2の開口を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項11】
請求項に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第2の開口を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項12】
請求項に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体が、前記第1の領域を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項13】
細胞培養槽において、
前記槽の細胞培養室を画定する内面を含む壁部と、
前記細胞培養室内で該細胞培養室の第1の領域と該細胞培養室の第2の領域の間に配置された基材であって、複数の微細空洞部および多孔性材料層を含み、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部は、ウエルを画定する凹状表面および前記第1の領域から前記ウエルへの経路を画定する開口部を含み、前記多孔性材料層の第1の面は、該複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記凹状表面の少なくとも一部を画定し、該多孔性材料層の第2の面は、前記第2の領域に向いたものである基材と、
前記壁部を通って延伸し、前記第1の領域と流体連通する第1の開口と
前記第1の開口を前記第2の領域に接続し、前記第1の開口を介して前記槽の外側から前記第2の領域へと流体連通する流路と、
を含む細胞培養槽。
【請求項14】
前記多孔性材料層の前記第1の面は、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記凹状表面の全体を画定するものである、請求項13に記載の細胞培養槽。
【請求項15】
前記複数の微細空洞部の各微細空洞部は、前記開口部から前記凹状表面に延伸する側壁部表面を含むものであり、
前記多孔性材料層の前記第1の面は、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記側壁部表面の少なくとも一部を画定するものである、請求項13または14に記載の細胞培養槽。
【請求項16】
前記多孔性材料層の前記第1の面は、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記側壁部表面の全体を画定するものである、請求項15に記載の細胞培養槽。
【請求項17】
前記多孔性材料層は、前記基材全体を画定するものである、請求項13から16のいずれか1項に記載の細胞培養槽。
【請求項18】
気体透過性フィルタを含み、前記壁部を通って延伸し、前記第2の領域と前記槽の外部との間を流体連通するポート、
を含む、請求項13から17のいずれか1項に記載の細胞培養槽。
【請求項19】
細胞培養槽において、
前記槽の細胞培養室を画定する内面を含む壁部と、
前記細胞培養室内で該細胞培養室の第1の領域と該細胞培養室の第2の領域の間に配置された基材であって、複数の微細空洞部および多孔性材料層を含み、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部は、ウエルを画定する凹状表面および前記第1の領域から前記ウエルへの経路を画定する開口部を含み、前記多孔性材料層の第1の面は、該複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記凹状表面の少なくとも一部を画定し、該多孔性材料層の第2の面は、前記第2の領域に向いたものである基材と、
前記壁部を通って延伸し、前記第1の領域と流体連通する第1の開口と、
前記壁部を通って延伸し、前記第2の領域と流体連通する第2の開口
前記第2の開口を前記第2の領域に接続し、前記第2の開口を介して前記槽の外側から前記第2の領域へと流体連通する流路と、
を含む、細胞培養槽。
【請求項20】
細胞培養槽において、
前記槽の細胞培養室を画定する内面を含む壁部と、
前記細胞培養室内で該細胞培養室の第1の領域と該細胞培養室の第2の領域の間に配置された基材であって、複数の微細空洞部および多孔性材料層を含み、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部は、ウエルを画定する凹状表面および前記第1の領域から前記ウエルへの経路を画定する開口部を含み、前記多孔性材料層の第1の面は、該複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記凹状表面の少なくとも一部を画定し、該多孔性材料層の第2の面は、前記第2の領域に向いたものである基材と、
前記壁部を通って延伸し、前記第1の領域と流体連通する第1の開口と、
前記第1の領域前記第2の領域との間を流体連通する流路
を含み、
前記第1の領域から前記第2の領域に進行する前記流路の端部は、該第1の領域で、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記開口部から離間して位置する、
胞培養槽。
【請求項21】
請求項13から20のいずれか1項に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部の前記多孔性材料層の前記第1の面によって画定された前記凹状表面の一部へ通す工程と、
細胞を、前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項22】
請求項13から20のいずれか1項に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項23】
請求項13から20のいずれか1項に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を通って、前記槽の外側から前記第1の領域へ通り抜けるようにする工程と、
前記液体の少なくとも一部を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部に堆積させる工程と、
前記液体の少なくとも一部を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部に堆積させた後に、細胞を、該少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項24】
請求項18に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体を、前記ポートの前記気体透過性フィルタに通す工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項25】
請求項19に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項26】
請求項20に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第2の開口を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項27】
請求項21に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第2の開口を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【請求項28】
請求項20に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体が、前記第1の領域を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、「Cell Culture Containers and Methods of Culturing Cells」という名称で2017年7月14日に出願された米国仮特許出願第62/532、671号の優先権の利益を主張し、その内容は依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、細胞培養槽および細胞培養方法に関し、特に、3次元の細胞を培養するための多孔性支持体を有する細胞培養槽、および、3次元の細胞をその細胞培養槽で培養する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞培養槽に3次元の細胞を入れることが知られている。3次元の細胞を、細胞培養槽で培養することも知られている。
【発明の概要】
【0004】
以下、詳細な記載で示すいくつかの例示的な実施形態の基本的理解のために、本開示の概要を、簡単に示す。
【0005】
実施形態において、本開示は、首状開口部、細胞培養室、最上部、底部、側壁部、首状開口部の反対側の端壁部、および、微細空洞部アレイを有する細胞培養面を有する細胞培養槽を提供する。実施形態において、微細空洞部アレイを有する細胞培養面は、部分的または全体的に、多孔性材料から形成される。実施形態において、細胞を培養するための基材は、1つの面に微細空洞部アレイを有し、第2の面に多孔性材料を有し、微細空洞部の壁部の一部は、多孔性材料によって提供される。実施形態において、微細空洞部は、開口部を有し、気体が、微細空洞部の壁部を通り抜けるのを可能にする。
【0006】
更なる実施形態において、細胞培養槽は、微細空洞部アレイの微細空洞部に留まる細胞の上に位置する培地を乱すことなく、多孔性材料の下方で、または、多孔性材料を通って、培地を導入し、取り除くための構造物を有する。更なる実施形態において、本開示は、細胞培養槽での細胞培養方法、並びに、細胞および培地を槽に導入、および、そこから取り除く方法を提供する。
【0007】
上記実施形態は例示的なものであり、単独で、または、本明細書に記載の任意の1つ以上の実施形態と任意の組合せで、本開示の範囲を逸脱することなく提供されうる。更に、ここまでの概略的記載と次の詳細な記載の両方が、本開示の実施形態を示し、請求項に記載し、請求したような実施形態の本質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図すると理解すべきである。添付の図面は、実施形態の更なる理解のために含められ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本開示の様々な実施形態を示し、その記載と共に、原理および動作を説明する役割を果たす。
【0008】
これら及び他の本開示の特徴、実施形態および利点は、添付の図面と読むことで、更に理解されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態による第1の例示的な細胞培養槽を概略的に示す側面図である。
図2】本開示の実施形態による第1の例示的な細胞培養槽の図1の2‐2線に沿った平面図である。
図3】本開示の実施形態による第1の領域および第2の領域を有する細胞培養室を含む細胞培養槽の例示的な断面図を示している。
図4】本開示の実施形態による細胞培養槽の微細空洞部アレイの例示的な実施形態の拡大概略図を示しており、少なくとも1つの開口を含む複数の微細空洞部を有する基材を含んでいる。
図5】本開示の実施形態による細胞培養槽の図3の部分5を見た例示的な実施形態の拡大概略図を示しており、少なくとも1つの開口を含む複数の微細空洞部を有する基材を含んでいる。
図6】本開示の実施形態による細胞培養槽の図3の部分5を見た代わりの実施形態を示しており、複数の微細空洞部および多孔性材料層を有する基材を含んでいる。
図7】本開示の実施形態による細胞培養槽の一部の基材の少なくとも1つの開口を含む複数の微細空洞部のうち少なくとも1つの微細空洞部での細胞培養方法を示している。
図8】本開示の実施形態による細胞培養槽の図3の部分5を見た代わりの実施形態を示しており、複数の微細空洞部および多孔性材料層を有する基材を含んでいる。
図9】本開示の実施形態による細胞培養槽の一部の代わりの実施形態を示しており、複数の微細空洞部および多孔性材料層を有する基材を含んでいる。
図10】本開示の実施形態による細胞培養槽の一部の代わりの実施形態を示しており、複数の微細空洞部および多孔性材料層を有する基材を含んでいる。
図11】本開示の実施形態による複数の微細空洞部および多孔性材料層を有する基材の一部の複数の微細空洞部のうち少なくとも1つの微細空洞部での細胞培養方法を示している。
図12】本開示の実施形態によるポートおよび気体透過性フィルタを含む細胞培養槽の代わりの実施形態の断面図を示している。
図13】本開示の実施形態による第1の開口を第2の領域に接続する流路を含む細胞培養槽の代わりの実施形態の断面図を示している。
図14】本開示の実施形態による第2の開口および第2の開口を第2の領域に接続する流路を含む細胞培養槽の代わりの実施形態の断面図を示している。
図15】本開示の実施形態による第1の領域を第2の領域に接続する流路を含む細胞培養槽の代わりの実施形態の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本開示の例示的な実施形態を示した添付の図面を参照して、本発明の特徴をより完全に記載する。全図を通して、同じ、または、類似の部分を称するには、可能な限り同じ符号を用いている。しかしながら、本開示は多くの異なる形態で実施しうるものであり、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0011】
細胞培養槽(例えば、フラスコ)は、無菌細胞培養室を提供しうる。いくつかの実施形態において、細胞培養は、疾病および毒物学の研究、投薬および治療の有効性、腫瘍の特徴、生物、遺伝的特徴、並びに、細胞または細胞に関する他の科学的、生物学的、および、化学的原理に関する情報を提供しうる。いくつかの実施形態において、3次元の細胞培養は、2次元の細胞培養と比べて、多細胞構造を生成しうるもので、2次元の細胞培養と比べて、生理学的に正確で、実際の利用例で細胞が存在し成長しうる環境をより現実的に表す。例えば、3次元の細胞培養は、「生体内」(つまり、生体の中、実際の条件での)細胞成長をシミュレーションする現実に近い環境を提供することが分かり、一方、2次元の細胞培養は、実験室の外で生じる実際の環境を余り表さない「体外」(つまり、検査管内、実験室の条件での)細胞成長をシミュレーションする環境を提供することが分かった。3次元の細胞培養の特性および振舞いと相互作用し、それらを観察することで、例えば、疾病および毒物学の研究、投薬および治療の有効性、腫瘍の特徴、生物、遺伝的特徴、並びに、細胞または細胞に関する他の科学的、生物学的、および、化学的原理について、細胞の理解を高めうる。
【0012】
実施形態において、細胞培養槽100は、底部108、最上部101、並びに、端壁部107、および、側壁部106を含み、各々、液体培地および培養中の細胞に接触する内面を有しうる。これらの内面は、細胞培養室103を画定する。これらの表面の少なくとも1つは、細胞成長に特に適合されうる。例えば、細胞培養表面を被膜処理して、細胞の表面への付着を強めたり、弱めたりしうる。または、スフェロイド細胞の培養を支持するために、細胞成長面は、例えば、アレイ状に配列された複数の微細空洞部またはコンパートメント(例えば、マイクロメートルサイズのウエル、ミリメートル以下のサイズのウエル)を含みうる。細胞成長面は、フラスコに一体であるか、または、細胞成長室に配置されるか、または、取り付けられた微細空洞部アレイを有する別体の表面でありうる。最上面、底面、1つ以上の側面、または、これらの組合せは、アレイ状の微細空洞部を含みうる。
【0013】
例えば、いくつかの実施形態において、単一のスフェロイドが、複数の微細空洞部の各微細空洞部に形成されうる。槽内に導入された液体培地内の細胞は、重力によって、微細空洞部内に定着する。液体培地内で浮遊する1つ以上の細胞は、液体を通って降下し、各微細空洞部内に定着する。微細空洞部の形状(例えば、ウエルを画定する凹状表面)、および、細胞が表面に付着するのを防ぐ微細空洞部の表面被膜も、細胞が3次元形状に成長して、各微細空洞部内でスフェロイドを形成するのを容易にしうる。
【0014】
微細空洞部は、例えば、波状または正弦波状に形成されて、丸まった最上部および丸まった底部を有する微細空洞部またはマイクロウエルを形成しうる。これらの丸まった縁部は、液体培地が槽を満たす時に、気泡の形成を防ぎうる。いくつかの実施形態において、フラスコは、3次元の細胞培養物(例えば、細胞塊、オルガノイド、または、スフェロイド)の成長を容易にする材料(例えば、培地、固体、液体、気体)で満たされうる。例えば、液体に浮遊する細胞を含む培地を、細胞培養室または槽に追加しうる。浮遊する細胞は、重力によって、複数の微細空洞部に集まって、細胞の群またはクラスタを形成(例えば、成長)しうる。群またはクラスタ化した細胞は、3次元に成長して、3次元の細胞を形成し、それは、スフェロイドまたはオルガノイドとしても知られる。単一の細胞クラスタまたはスフェロイドは、単一の微細空洞部で形成される。したがって、微細空洞部アレイを含む細胞培養表面を有する槽または細胞培養室を用いて、各々が個々の微細空洞部に位置するアレイ状のスフェロイドを培養しうる。
【0015】
培養中に、スフェロイドは、培地(例えば、栄養物、栄養素)を消費して、代謝産物(例えば、廃棄物)を副産物として生成しうる。したがって、いくつかの実施形態において、培養中に、栄養物を培地の形態で細胞培養室に追加して、培養中に、廃棄物培地を細胞培養室から取り除きうる。このように培地を交換して、細胞に養分を供給し、更に、廃棄物を取り除くことが可能なことは、細胞の長期培養に重要である。しかしながら、培地の追加および除去は、乱流を生じて、微細空洞部内に留まっているスフェロイドを破壊または移動させうる。これは、微細空洞部を低結合力の被膜で被覆して、細胞が微細空洞部表面に付着するのを防いでいる場合に特に当てはまる。スフェロイドは、固定されておらず(表面に取り付けられておらず)、微細空洞部内で留まっている位置から外れて、解放されて浮遊しうる。培養中に成長しているスフェロイドが外れることは、多くの理由から好ましくない。消耗した培地を取り除くことで、スフェロイドが培養処理から除去されうる。外れたスフェロイドは、既に使われている微細空洞部内に定着して、他のスフェロイドと合体して、不均一な3次元細胞構造を形成しうる。つまり、培地交換後に、いくつかのスフェロイドは、培養中の他のスフェロイドより大きいことがありうる。これにより、細胞培養の均一性が低下し、3次元の細胞について行われるアッセイまたは他の検査結果に影響しうる。本開示において、乱流を削減し、スフェロイドが微細空洞部から移動する可能性を削減し、したがって、スフェロイドの長期培養を促進する構造物を開示する。
【0016】
図1~15を参照して、細胞培養槽100、200、および、細胞培養槽100、200における細胞培養方法の実施形態を記載する。
【0017】
図1は、例示的な細胞培養槽100を概略的に示す側面図である。図1に示すような細胞培養槽100の実施形態を示す。細胞培養槽100は、ポートまたは開口105(図1では、キャップ104で覆われて示している)と、ポートまたは開口105を細胞培養室103に接続する首状部112を有する。実施形態において、開口は、解除自在に封止されうる。例えば、実施形態において、首状部112の開口105部分は、(内側または外側のいずれかに)ねじ山を有して、開口105が、相補的ねじ山を有するキャップ104によって解除自在に封止されるようにしうる。または、首状開口部105は、槽を閉じるために従来から知られた任意の他の機構によって、解除自在に封止されうる。首状部112と組み合わせた開口105が、首状開口部109である(図3を参照)。首状開口部109は、細胞培養室103の壁部を通って延伸し、細胞培養室103と流体連通している。首状開口部113は、液体が、槽の細胞培養室(内部)に導入、および、そこから取り除かれるのを可能にする。
【0018】
実施形態において、槽100の細胞培養表面200は、槽100が細胞成長を行うための向きに配置された時の槽100の底部108の内面208である。実施形態において、槽100は、槽100の底部108が面の上に平らに配置された時に、細胞成長を行うように向けられる。槽100は、側壁部106、首状開口部109に対向する端壁部107、最上部101、および、底部108も有しうる。実施形態において、最上部101は、槽100の細胞培養表面200に対向する。実施形態において、首状開口部109は、槽100の端壁部107に対向する。実施形態において、細胞培養表面200は、微細空洞部アレイ115を有する。これらの槽100の各構造物(首状開口部109、最上部101、底部108、側壁部106、および、端壁部107)は、槽100の内側を向いた内面を有する。つまり、最上部101は、内面201を有する。端壁部107は、内面207を有する。側壁部106は、内面206を有する。首状部112は、内面212を有する。槽の内部は、細胞培養室103、つまり、槽100の内部空間であり、それは、最上部101、底部108、側壁部106、および、端壁部107によって画定され、細胞は槽100の内部に位置する。例えば、いくつかの実施形態において、細胞培養室103は、槽100の内部空間容積部を含みうる。

【0019】
図2は、槽100の図1の2‐2線に沿った平面図である。いくつかの実施形態において、細胞培養槽100は、限定するものではないが、ポリマー、ポリカーボネート、ガラス、および、プラスチックを含む材料から製造されうる。実施形態において、槽100を、クリアな(例えば、透明な)材料から製造されたものとして示しているが、いくつかの実施形態において、その代わりに、槽100は、本開示の範囲を逸脱することなく、半透明、半不透明、または、不透明な材料から製造されうる。
【0020】
図1および図2、いくつかの実施形態において、槽100は、開口105を覆うように向いたキャップ104を含み、開口105を封止すること、および、塞ぐことの少なくとも1つを行い、それによって、槽100の外側から細胞培養室103への開口105を通る経路を塞ぎうる。明瞭に示すために、キャップ104は外されて、したがって、他の図面には示されていないが、本開示の範囲を逸脱することなく、いくつかの実施形態において、キャップ104は提供されて、選択的に槽100の開口105に加えられるか、または、取り除きうると理解すべきである。いくつかの実施形態において、キャップ104は、槽100の細胞培養室103内へ、および/または、そこからの気体の移動を可能にするフィルタを含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、キャップ104は、細胞培養室103内の気体の圧力を規制するように向いた気体透過性フィルタを含み、それによって、細胞培養室103内の気体の加圧(例えば、過圧)を、槽100の外の環境(例えば、雰囲気)の圧力と相対的に防ぎうる。
【0021】
図2の3‐3線に沿った断面図である図3に示すように、いくつかの実施形態において、基材215は、細胞培養室103の長さ「L」に亘って延伸する。したがって、図3を参照すると、いくつかの実施形態において、細胞培養槽100は、最上部101、側壁部(この図には不図示)、端壁部107、底部108、ポートまたは開口105、首状部112、並びに、首状開口部109を含みうる。これらの各要素は、内面を有する。つまり、最上部101は内面201を有し、側壁部(不図示)は内面(不図示)を有し、端壁部107は内面207を有し、底部108は内面208を有し、ポートまたは開口105は内面205を有し、更に、首状部112は内面212を有する。更に、細胞培養室103を示している。更に、実施形態において、槽100は、多孔性材料の基材215を含み、それは、細胞培養室103内で、細胞培養室103の第1の領域103aと細胞培養室103の第2の領域103bの間に位置しうる。つまり、基材215が、細胞培養室103を、多孔性材料より上の領域103aと、多孔性材料より下の領域103bに分けている。槽100は、第1の領域103aと流体連通する第1の開口105を含みうる。いくつかの実施形態において、基材215は、複数の微細空洞部220を含みうる(図4~9を参照)。いくつかの実施形態において、基材215は、槽100の細胞培養室103内に完全に配置され、したがって、細胞培養室103内へ、および、そこからのアクセスが、例えば、第1の開口105によって制限された状態で、細胞培養室103の無菌環境内に完全に隔離されうる。
【0022】
図4は、図3の基材215の一部を概略的に示す拡大図であり、微細空洞部アレイ115を有している。更に、図5は、図3において5として示した表面の部分の断面図を示し、微細空洞部アレイ115を有している。図4および5に示したように、いくつかの実施形態において、基材215の上面の微細空洞部アレイ115の各微細空洞部120(120a、120b、120cとして示す)は、開口部123a、123b、123cを、各微細空洞部120の最上部に有する。更に、微細空洞部アレイ115の各微細空洞部120は、ウエル122a、122b、122cを画定する凹状表面121a、121b、121cを含みうる。更に、各微細空洞部120a、120b、120cは、ウエル122a、122b、122cを含みうる。これらの構造物は、微細空洞部アレイが槽100の底部108に一体であるかどうか、または、微細空洞部アレイが、微細空洞部アレイ315を有する挿入物215によって提供されるかどうかに関わらず存在する。
【0023】
いくつかの実施形態において、基材215は、限定するものではないが、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスチレンコポリマー、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンブタジエンコポリマー、完全水素化スチレンポリマー、ポリカーボネートPDMSコポリマー、並びに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンコポリマー、および、環状オレフィンコポリマーなどのポリオレフィンを含むポリマー材料でありうる。更に、いくつかの実施形態において、凹状表面121a、121b、121cによって画定されたウエル122a、122b、122cの少なくとも一部は、超低結合力の材料で被膜されて、それによって、ウエル122a、122b、122cの少なくとも一部を、細胞に付着しないようにさせうる。例えば、いくつかの実施形態において、ペルフッ素化ポリマー、オレフィン、アガロース、ポリアクリルアミドなどの非イオン性ヒドロゲル、ポリエチレン酸化物などのポリエーテル、ポリビニルアルコールなどのポリオール、および、それらの混合物の1つ以上を、凹状表面121a、121b、121cによって画定されたウエル122a、122b、122cの少なくとも一部に塗布しうる。
【0024】
更に、いくつかの実施形態において、複数の微細空洞部120の各微細空洞部120a、120b、120cは、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な特徴物、および、特徴物の変形例を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、複数の微細空洞部120は、アレイ状に配列されて、それは、(図示したような)線形アレイ、対角線状アレイ、矩形アレイ、円形アレイ、放射状アレイ、六方最密充填配列などを含みうる。更に、いくつかの実施形態において、開口部123a、123b、123cは、様々な形状を含みうる。いくつかの実施形態において、開口部123a、123b、123cは、円、楕円、矩形、四角形、六角形、および、他の多角形の形状の1つ以上を含みうる。更に、いくつかの実施形態において、開口部123a、123b、123cは、約100マイクロメートル(μm)から約5000μmの寸法(例えば、直径、幅、正方形または矩形の対角線など)を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、開口部123a、123b、123cは、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm、1000μm、1500μm、2000μm、2500μm、3000μm、3500μm、4000μm、4500μm、5000μm、並びに、約100μmから約5000μmの範囲に包含される任意の寸法または寸法範囲の寸法を含みうる。
【0025】
いくつかの実施形態において、凹状表面121a、121b、121cによって画定されたウエル122a、122b、122cは、任意の形状でありうる。いくつかの実施形態において、凹状表面121a、121b、121cによって画定されたウエル122a、122b、122cは、円形、楕円形、放物線状、双曲線状、山形、傾斜、または、他の断面輪郭形状の1つ以上を含みうる。更に、いくつかの実施形態において、ウエル122a、122b、122cの深さ(例えば、開口部123a、123b、123cによって画定された平面から、凹状表面121a、121b、121cまでの深さ)は、約100マイクロメートル(μm)から約5000μmの寸法を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、ウエル122a、122b、122cの深さは、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm、1000μm、1500μm、2000μm、2500μm、3000μm、3500μm、4000μm、4500μm、5000μm、並びに、約100μmから約5000μmの範囲に包含される任意の寸法または寸法範囲の寸法を含みうる。
【0026】
図5は、いくつかの実施形態において、複数の微細空洞部120の少なくとも1つの微細空洞部120a、120b、120cで培養しうる3次元の細胞150(例えば、スフェロイド、オルガノイド150a、150b、150c)が、約50μmから約5000μmの寸法(例えば、直径)を有しうることを示しており、約50μmから約5000μmの範囲に包含される任意の寸法または寸法範囲の寸法を含みうる。いくつかの実施形態において、本開示で明示した寸法より大きいか、または、それより小さい寸法を提供しうるものであり、したがって、別段の記載がない限りは、本開示で明示した寸法より大きいか、または、それより小さい寸法も、本開示の範囲であると考えられる。例えば、いくつかの実施形態において、本開示の範囲を逸脱することなく、開口部123a、123b、123cの寸法、ウエル122a、122b、122cの深さ、および、3次元の細胞150(例えば、スフェロイド150a、150b、150c)の寸法の1つ以上が、本開示で明示した寸法より大きいか、または、それより小さい寸法でありうる。
【0027】
図6は、槽200内の微細空洞部アレイ220の他の例示的な実施形態を概略的に示す拡大図であり、いくつかの実施形態において、複数の微細空洞部220の各微細空洞部220a、220b、220cは、ウエル222a、222b、222cを画定する凹状表面221a、221b、221c、および、(図3に示したような)第1の領域103aからウエル222a、222b、222cへの経路を画定する開口部223a、223b、223cを含みうる。つまり、液体培地および細胞は、微細空洞部に、各微細空洞部220a、220b、220cの最上部の開口部223a、223b、223cを通って入りうる。いくつかの実施形態において、各微細空洞部220a、220b、220cの凹状表面221a、221b、221cは、約15マイクロメートル以下の寸法d2a、d2b、d2cを有する少なくとも1つの開口229a、229b、229cを含みうる。少なくとも1つの開口229a、229b、229cは、基材215の上面225から、基材215を通って、基材215の底面226に延伸し、ウエル222a、222b、222cから第2の領域103bへの経路を画定しうる。例えば、いくつかの実施形態において、約15マイクロメートル以下(例えば、5~15マイクロメートル、5~10マイクロメートル、10~15マイクロメートル、5マイクロメートル、並びに、それらの全範囲および部分範囲)の寸法d2a、d2b、d2cは、気体は、そこを通り抜けうるが、液体および細胞は、そこを通り抜けることができない1つ以上の開口229a、229b、229cを提供しうる。いくつかの実施形態において、各微細空洞部220a、220b、220cは、複数の開口(不図示)を含みうる。更に、開口229a、229b、229cは、円、楕円、矩形、または、他の四角形の1つ以上を含む輪郭を有しうる。同様に、いくつかの実施形態において、開口229a、229b、229cは、約15マイクロメートル以下の寸法d2a、d2b、d2c(例えば、直径、正方形または矩形の対角線)を含みうる。
【0028】
いくつかの実施形態において、開口229a、229b、229cは、基材215の微細空洞部220a、220b、220cに開口229a、229b、229cを提供する動作、例えば、レーザ穴あけ、または、レーザアブレーション、機械加工、製造、形成、または、他の技術によって形成されうる。したがって、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの開口229a、229b、229cを有する微細空洞部220a、220b、220cを提供することで、溶液培地(例えば、細胞を含む液体)が微細空洞部220a、220b、220c内に堆積する時に、気体が微細空洞部220a、220b、220c内に閉じ込められるのを防ぎうる。更に、寸法d2a、d2b、d2cは、約15マイクロメートル以下なので、気体は開口229a、229b、229cを通り抜けうるが、一方、液体および細胞は、(いくつかの実施形態において、液体の表面張力を考慮して)約15マイクロメートル以上の寸法を有すると考えられるので、液体、および、液体に浮遊する細胞は、力を加えられない限りは、開口229a、229b、229cを通り抜けない。更に、細胞がウエルの底部に形成された穴を通って降下し、ウエルの断面より下で表面張力によって垂れて、垂れた液滴内でウエルから離れて降下する傾向がある滴下型または懸滴細胞培養と比べて、本開示の特徴は、気体が開口229a、229b、229cを通り抜けるのを可能にするが、細胞もスフェロイドも開口229a、229b、229cを通り抜けることができないようにしながら、細胞をウエル222a、222b、222c内に入れて、そこで培養するのを可能にすることであると理解すべきである。
【0029】
例えば、図7に示したように、いくつかの実施形態において、細胞培養槽200内での細胞培養方法は、液体を導入する工程と、細胞を微細空洞部220a、220b、220cに入れる工程とを含みうる。微細空洞部220a、220b、220cが液体で満たされる時に、気体は、複数の微細空洞部220の少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cの凹状表面221a、221ba、221cの少なくとも1つの開口229a、229b、229cを下方に通り抜ける。比較的高い表面張力を培地に与える蛋白質および他の成分を含むことによる培地の表面張力、および、微細空洞部220a、220b、220cのサイズが小さいことにより、気泡の形成は、懸念される問題である。気泡は、細胞培養を妨げる。実施形態において、液体が微細空洞部に入る時に、気体が微細空洞部から出ることができるようにすることで、微細空洞部で、気泡が形成されない。図7に示した方法は、細胞またはスフェロイド250(例えば、3次元の細胞250a、3次元の細胞250b、3次元の細胞250c)を少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cで培養する工程も含む。例えば、矢印251a、251b、251cが示すように、気体は、少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cから、少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cの凹状表面221a、221b、221cの少なくとも1つの開口229a、229b、229cを通って、細胞培養室103の第2の領域103bへと通り抜けうる。その代わりに、矢印252a、252b、252cが示すように、気体は、細胞培養室103の第2の領域103bから、少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cの凹状表面221a、221b、221cの少なくとも1つの開口229a、229b、229cを通って、少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220へと通り抜けうる。
【0030】
いくつかの実施形態において、気体が開口229a、229b、229cを通り抜けることができるようにしながら、細胞250a、250b、250cを含む液体270を微細空洞部220a、220b、220cに入れて培養しうる。少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cに液体270を入れて、細胞250a、250b、250cを培養しながら、気体が開口229a、229b、229cを通り抜けることができるようにすることで、(例えば、最初に少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cが液体270で満たされる間に)気体が閉じ込められるのを防ぐだけではなく、培養中に、気体が、少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cの中へ、または、そこから外に通り抜けるのを可能する。例えば、いくつかの実施形態において、細胞250a、250b、250cを培養しながら、細胞250a、250b、250cによって細胞培養の副産物として生成された気体が、開口229a、229b、229cを通り抜けるようにすることによって、微細空洞部220a、220b、220cから除去されうる。同様に、いくつかの実施形態において、細胞250a、250b、250cを培養しながら、細胞250a、250b、250cの細胞培養を補助する気体が、開口229a、229b、229cを通り抜けるようにすることによって、気体が微細空洞部220a、220b、220cに追加されうる。
【0031】
その代わりに、図8~11に示したように、いくつかの実施形態において、基材215は、多孔性材料層216を含みうる。いくつかの実施形態において、複数の微細空洞部220の各微細空洞部220a、220b、220cは、開口部223a、223b、223cから凹状表面221a、221b、221cに延伸する微細空洞部側壁部表面224a、224b、224cを含みうる。図8に示したように、いくつかの実施形態において、多孔性材料層216の第1の面216aは、複数の微細空洞部220の各微細空洞部220a、220b、220cの凹状表面221a、221b、221cの少なくとも一部を画定し、多孔性材料層216の第2の面216bは、第2の領域103bに対向しうる。いくつかの実施形態において、多孔性材料層216の第1の面216aは、複数の微細空洞部220の各微細空洞部220a、220b、220cの凹状表面221a、221b、221cの全体を画定しうる。
【0032】
図9に示したように、いくつかの実施形態において、多孔性材料層216の第1の面216aは、複数の微細空洞部220の各微細空洞部220a、220b、220cの側壁部表面224a、224b、224c少なくとも一部を画定しうる。いくつかの実施形態において、多孔性材料層216の第1の面216aは、複数の微細空洞部220の各微細空洞部220a、220b、220cの側壁部表面224a、224b、224cの全体を画定しうる。図10に示したように、多孔性材料層216は、基材215の全体を画定しうるものであり、多孔性材料層の第1の面216aが基材215の第1の面225を画定し、多孔性材料層の第2の面216bが基材215の第2の面226を画定する。
【0033】
図11に示したように、いくつかの実施形態において、細胞培養槽100での細胞培養方法250は、気体を、複数の微細空洞部220の少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cの多孔性材料層216の第1の面216aによって画定された凹状表面221a、221b、221cの少なくとも一部へ通す工程を含みうる。例えば、矢印253a、253b、253cが示すように、気体は、少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cから多孔性材料層216へと通り、次に、気体は、多孔性材料層216から、細胞培養室103の第2の領域103bへと通る。その代わりに、気体は、細胞培養室103の第2の領域103bから多孔性材料層216へと通り、次に、矢印254a、254b、254cが示すように、気体は、多孔性材料層216から少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cへと通りうる。
【0034】
いくつかの実施形態において、気体が多孔性材料層216を通り抜ける間に、細胞250a、250b、250cを含む液体270を、微細空洞部220a、220b、220cに入れて培養しうる。少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cに液体270を入れて、細胞250a、250b、250cを培養しながら、気体が多孔性材料層216を通り抜けることができるようにすることで、(例えば、最初に少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cが液体270で満たされる間に)気体が閉じ込められるのを防ぐだけではなく、培養中に、気体が多孔性材料層216の中へ、または、そこから外に通るのを可能にする。例えば、いくつかの実施形態において、細胞250a、250b、250cを培養しながら、細胞250a、250b、250cによって細胞培養の副産物として生成された気体が、多孔性材料層216を通り抜けるようにすることによって、微細空洞部220a、220b、220cから除去されうる。同様に、いくつかの実施形態において、細胞250a、250b、250cを培養しながら、細胞250a、250b、250cの細胞培養を補助する気体が、多孔性材料層216を通り抜けるようにすることによって、気体が微細空洞部220a、220b、220cに追加されうる。
【0035】
更に、更なる例示的な実施形態の槽200の断面図である図12~15に示したように、細胞培養槽200での細胞培養方法250は、液体270が第1の開口205を通り抜けるようにする工程と、複数の微細空洞部220の少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cで細胞250a、250b、250cを培養する工程とを含みうる(図5および図7を参照)。別段の記載がない限りは、図12~15の特徴物を参照して記載する基材215は、開口229a、229b、229cを含む図6および図7に示した基材215の1つ以上の特徴物、更に、図8~11に示した基材215の1つ以上の特徴物も含む。いくつかの実施形態において、矢印260が示すように、方法は、液体270が、槽200の外側から第1の領域103aへ、第1の開口205を通り抜けるようにする工程を含みうる。
【0036】
図12に示したように、いくつかの実施形態において、槽200は、壁部101を通って延伸し、第2の領域103bと流体連通するポート230を含みうる。実施形態において、ポート230は、気体透過性材料231を含みうる。いくつかの実施形態において、方法は、気体271が、ポート230の気体透過性材料231を通り抜けるようにする工程と、細胞を複数の微細空洞部220で培養する工程とを含みうる。実施形態において、気体透過性材料231は、気体透過性フィルタでありうる。例えば、矢印262aが示すように、気体271は、第2の領域103bからポート230の気体透過性材料231へと通り、次に、例えば、気体は、気体透過性材料231から槽200の外側に通りうる。同様に、矢印262bが示すように、気体は、槽200の外側から、ポート230の気体透過性材料231を通り抜け、次に、例えば、気体は、気体透過性フィルタ231から第2の領域103bへと通りうる。第2の領域103bに、気体透過性フィルタ231を含むポート230を設けることによって、例えば、第2の領域103bと槽200の外の環境との間でガス交換を可能にし、それにより、槽200の細胞培養室103の第2の領域103bでの気体271の加圧(例えば、過圧)を防ぎうる。更に、いくつかの実施形態において、細胞を培養しながら、細胞によって細胞培養の副産物として生成された気体を、ポート230を通り抜けるようにすることによって、細胞培養室103(例えば、第2の領域103b)から除去しうる。同様に、いくつかの実施形態において、細胞250a、250b、250cを培養しながら、細胞の細胞培養を補助する気体が、ポート230を通り抜けるようにすることによって、気体が細胞培養室103(例えば、第2の領域103b)に追加されうる。
【0037】
図13に示したように、いくつかの実施形態において、槽200は、第1の開口205を第2の領域103bに接続する流路232を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、流路232は、細胞培養室103に位置する管を含み、管は、第1の開口205および第2の領域103bと流体連通する経路273を画定しうる。いくつかの実施形態において、流路232は、(例えば、第1の開口205を介して)槽200の外側と第2の領域103bの間の経路273に沿った流体連通を提供しうる。いくつかの実施形態において、方法は、液体272が、第1の開口205を第2の領域103bに接続する流路232を通り抜けるようにする工程と、細胞を複数の微細空洞部220で培養する工程とを含みうる。例えば、矢印263aが示すように、液体272は、槽200の外側から流路232の中へ、経路273に沿って通り、次に、矢印263bが示すように、液体272は、流路232から第2の領域103bへと通りうる。更に、または、その代わりに、矢印264aが示すように、液体272は、第2の領域103bから流路232へ、経路273に沿って通り、次に、矢印264bが示すように、液体272は、流路232から槽200の外側に通りうる。更に、液体は、矢印260が示すように、第1の領域103aに第1の開口205を通して導入され、矢印261が示すように、第1の領域103aから取り除かれうる。
【0038】
図14に示したように、いくつかの実施形態において、槽200は、壁部101を通って延伸し、第2の領域103bと流体連通する第2の開口233を含みうる。更に、いくつかの実施形態において、槽200は、第2の開口233を第2の領域103bに接続する流路234を含みうる。例えば、第2の開口233および流路234の少なくとも1つが、第2の開口233および第2の領域103bと流体連通する経路274を画定しうる。いくつかの実施形態において、流路234は、(例えば、第2の開口233を介して)槽200の外側と第2の領域103bの間の経路274に沿った流体連通を提供しうる。更に、いくつかの実施形態において、第2の開口233は、第2の開口233を覆い、第2の開口233を封止するか塞ぐように向いたキャップ(不図示、図1および図2を参照)を含み、それにより、槽200の外側から細胞培養室103への第2の開口233を通る経路を塞ぎうる。いくつかの実施形態において、第2の開口233のキャップ(不図示)は、細胞培養槽200について記載したような開口105のキャップ104と同様または同じでありうる。いくつかの実施形態において、方法は、液体272が、第2の開口233を通って、更に、流路234を通って、通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部220の少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cで培養する工程とを含みうる。例えば、矢印265aが示すように、液体272は、槽200の外側から第2の開口233および流路234へ、経路274に沿って通り、次に、矢印265bが示すように、液体272は、流路234から第2の領域103bに通りうる。更に、または、その代わりに、矢印266aが示すように、液体272は、第2の領域103bから流路234に、経路274に沿って通り、次に、矢印266bが示すように、液体272は、第2の開口233から槽200の外側に通りうる。更に、液体は、矢印260が示すように、第1の領域103aに第1の開口205を通して導入され、矢印261が示すように、第1の領域103aから取り除かれうる。
【0039】
図13に戻り、流路232を提供することで、細胞培養室103の第1の領域103aを乱すことなく、液体272を、第2の領域103bに追加、または、そこから取り除くことが可能になり、したがって、基材215の複数の微細空洞部220の微細空洞部220a、220b、220cで培養されている複数の細胞250のうち1つ以上の細胞250a、250b、250cを乱す(例えば、外れる、移動する、破損する)ことがない。同様に、図14を参照すると、第2の開口233および流路234を提供することで、細胞培養室103の第1の領域103aを乱すことなく、液体272を、第2の領域103bに追加、または、そこから取り除くことが可能になり、したがって、基材215の複数の微細空洞部220の微細空洞部220a、220b、220cで培養されている複数の細胞250のうち1つ以上の細胞250a、250b、250cを乱す(例えば、外れる、移動する、破損する)ことがない。更に、第2の領域103bに液体272を提供することで、栄養素および廃棄物が、基材215を通って、細胞250a、250b、250cに拡散、および、そこから拡散するのを可能にし、微細空洞部220a、220b、220cで培養されている1つ以上の細胞250a、250b、250cが乱される可能性を、更に削減するか、なくしうる。更に、いくつかの実施形態において、液体272を第2の領域103bに提供することで、細胞250a、250b、250cへの、または、そこからのガス交換速度を、例えば第1の領域103aの液体270の高さ(例えば、ヘッド高さ)に少なくとも基づいて選択して制御しうる。例えば、いくつかの実施形態において、液体270の液体270を通した気体拡散に対する抵抗は、基材215の1つ以上の特徴物に対する液体270の高さに基づきうる。したがって、いくつかの実施形態において、液体272を第2の領域103bに提供し、第1の領域103aの液体270の特定の高さを選択することによって、液体270を通した気体拡散速度を制御して、細胞培養処理全体に亘って、改良した制御を実現しうる。
【0040】
更に、微細空洞部アレイ220が図6および7に示した特徴物(開口部を有するウエル)および図8~11に示した特徴物(多孔性材料)を有する場合、気体および液体は、第2の領域103bから微細空洞部220へ、ウエル開口部または多孔性材料216のいずれかを通り抜けうる。
【0041】
図15に示したように、いくつかの実施形態において、槽200は、第1の領域103aを第2の領域103bに接続する流路235を含みうる。例えば、流路235は、第1の領域103aおよび第2の領域103bと流体連通する経路275を画定しうる。いくつかの実施形態において、流路235は、第1の領域103aと第2の領域103bの間の経路275に沿って流体連通を提供しうる。更に、いくつかの実施形態において、第1の領域103aから第2の領域103bに進行する流路237の端部236は、複数の微細空洞部220の各微細空洞部220a、220b、220cの開口部223a、223b、223cから、(例えば、距離「d3」で)離間して、第1の領域103aに位置しうる。いくつかの実施形態において、方法は、気体271が、第1の領域103aを第2の領域103bに接続する流路235を通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部220の少なくとも1つの微細空洞部220a、220b、220cで培養する工程とを含みうる。例えば、矢印267aが示すように、気体271は、第1の領域103aから流路235へ、経路275に沿って通り、次に、矢印267bが示すように、気体271は、流路235から第2の領域103bへ通りうる。更に、または、その代わりに、矢印268aが示すように、気体271は、第2の領域103bから流路235へ、経路275に沿って通り、次に、矢印268bが示すように、気体271は、流路235から第1の領域103aへ通りうる。更に、液体は、矢印260が示すように、第1の領域103aに第1の開口205を通って導入され、矢印261が示すように、第1の領域103aから取り除かれうる。
【0042】
槽200に流路235を設けることで、例えば、第1の領域103aと第2の領域103bの間でのガス交換を可能にし、それにより、槽200の細胞培養室103の第2の領域103bで、気体271の加圧(例えば、過圧)を防ぎうる。更に、いくつかの実施形態において、細胞250a、250b、250cを培養しながら、細胞250a、250b、250cによって細胞培養の副産物として生成された気体が、第1の領域103aに流路235を通って通り抜けるようにすることによって、第2の領域103bから除去されうる。同様に、いくつかの実施形態において、細胞250a、250b、250cを培養しながら、細胞250a、250b、250cの細胞培養を補助する気体が、第1の領域103aから流路235を通って第2の領域103bへ通り抜けるようにすることによって、気体が第2の領域103bに追加されうる。更に、第1の領域103aから第2の領域103bへ進行する流路235の端部236を、距離「d3」で、複数の微細空洞部220の各微細空洞部220a、220b、220cの開口部223a、223b、223cから離間させることによって、液体270が、流れたり、はねたり、流路235の端部236に入り、気体271を含む第2の領域103bに流れ込むことなく、液体270を第1の領域103aに入れうる。
【0043】
本開示を通して、「材料」、「液体」、および、「気体」という用語を用いて、細胞培養槽で細胞を培養する時に採用される材料の物性を記載しうる。別段の記載がない限りは、本発明を開示する目的では、「材料」は、流体材料(例えば、液体または気体)を含みうる。更に、材料は、培養液、または、液体に浮遊した固体粒子(例えば、細胞)を含む液体を含む培地を含みうる。別段の記載がない限りは、本発明を開示する目的では、「液体」は、洗浄または濯ぎ液、水溶液、若しくは、例えば、細胞培養室の洗浄、基材および槽の1つ以上の特徴物の殺菌、細胞成長用基材の用意、更に、液体の他の利用のために槽に追加、または、そこから除去されうる他の液体を含みうる。更に、液体は、培養液、または、液体に浮遊した固体粒子(例えば、細胞)を含む液体を含む培地を含みうる。別段の記載がない限りは、本発明を開示する目的では、「気体」は、空気、フィルタまたは処理済みの空気、若しくは、他の気体を含みうる。
【0044】
本開示を通して、「非透過性」、「気体透過性」、および、「透過性」という用語を用いて、基材の1つ以上の特徴物の物性(例えば、材料の物性、特徴、パラメータ)を記載しうる。
【0045】
別段の記載がない限りは、本発明を開示する目的では、「非透過性」基材(例えば、非透過性基材の材料)は、通常条件下(例えば、限定するものではないが、圧力、力などの外部からの影響がない状態)で、固体、液体、および、気体に対して不透過性であると考えられるものであり、したがって、固体、液体、または、気体が、通常条件下で、非透過性基材の中へ移動、そこを通って移動、または、そこから外に移動するのを可能にしない。いくつかの実施形態において、非透過性基材は、槽の壁部の一部を形成しうる。更に、非透過性基材が槽の壁部の一部を形成する場合、例えば細菌は非透過性基材を通り抜けることができないので、槽の細胞培養室は、無菌状態であると考えられる。しかしながら、基材の複数の微細空洞部を材料で満たす時に、気体は、液体の表面張力により、非透過性基材の微細空洞部内に閉じ込められ、それによって、いくつかの実施形態において、材料が微細空洞部を満たすことを妨げ、スフェロイドの成長を妨げうる。
【0046】
別段の記載がない限りは、本発明を開示する目的では、「気体透過性」基材(例えば、気体透過性基材の材料)は、標準条件下で、固体および液体に対して不透過性であるが、気体に対しては透過性であると考えられるものである。したがって、気体透過性基材は、固体および液体が、気体透過性基材の中へ移動、そこを通って移動、または、そこから外に移動するのを可能にしないが、気体が、気体透過性基材の中へ移動、そこを通って移動、または、そこから外に移動するのを可能にする。いくつかの実施形態において、気体透過性基材は、槽の壁部の一部を形成しうる。更に、気体透過性基材が槽の壁部の一部を形成する場合、例えば細菌は、合理的に考えると、気体透過性基材を通り抜けることができないので、槽の細胞培養室は、無菌状態であると考えられる。しかしながら、基材が気体透過性であっても、微細空洞部を材料で満たす間に、気体は微細空洞部に閉じ込められうるもので、それは、気体透過性基材を通る気体透過速度は、通常動作条件下で気体を空洞部から移動させるのに要する速度より遅く、したがって、基材を透過するのに、容認できないような長い時間が掛かるからである。したがって、いくつかの実施形態において、微細空洞部をゆっくりと満たすことで、液の先端が各微細空洞部に斜めに入いり、それにより、液体が微細空洞部を満たす時に気体を移動させる。いくつかの実施形態において、空洞部を液体で満たした後に、気体は、気体透過性基材を(ゆっくりと)透過しうる。
【0047】
別段の記載がない限りは、本発明を開示する目的では、「多孔性」基材(例えば、多孔性基材の材料)は、標準条件下で、固体に対して不透過性であるが、液体および気体に対して透過性であると考えられるものである。したがって、多孔性基材は、固体が、多孔性基材の中へ移動、そこを通って移動、または、そこから外に移動するのを可能にしないが、液体および気体が、多孔性基材の中へ移動、そこを通って移動、または、そこから外に移動するのを可能にする。細菌は多孔性基材を通り抜け、したがって、細胞培養室で無菌についての問題を生じうるので、多孔性基材は、槽の一部を形成することができない。したがって、多孔性基材を用いる場合には、基材を、槽の無菌細胞培養室に閉じ込め(完全に閉じ込め)なくてはならない。しかしながら、微細空洞部を材料で満たす間に、気体は多孔性基材を通って漏れうる(例えば、通り抜けうる)。したがって、気体を微細空洞部に閉じ込める心配なく、微細空洞部を急速に満たしうる。いくつかの実施形態において、液体は、圧力または物理的接触が加えられ、基材が乱れた場合だけ、多孔性基材を通り抜けうる。したがって、いくつかの実施形態において、基材が、加えられた圧力または物理的接触に曝されて乱れない限りは、液体を含む材料を、基材の微細空洞部に入れておけうる。例えば、いくつかの実施形態において、多孔性基材を細胞培養室内で支持して、満たす間、および、培養中に、気体が基材を通り抜けるようにし、更に、基材が、加えられた圧力および物理的接触、並びに、(例えば、細胞培養室の外側の)外力からの乱れから隔離されるようにしうる。
【0048】
本明細書において、細胞培養槽および細胞培養方法の多くの態様を開示した。以下、いくつかの態様を選択して、概略をまとめる。
【0049】
第1の態様において、細胞培養槽を提供し、それは、槽の細胞培養室を画定する内面を含む壁部と、細胞培養室内で細胞培養室の第1の領域と細胞培養室の第2の領域の間に配置された非多孔性材料の基材であって、複数の微細空洞部を含み、複数の微細空洞部の各微細空洞部は、ウエルを画定する凹状表面および第1の領域からウエルへの経路を画定する開口部を含み、各微細空洞部の凹状表面は、約15マイクロメートル以下の寸法を有してウエルから第2の領域への経路を画定する少なくとも1つの開口を含むものである基材と、壁部を通って延伸し、第1の領域と流体連通する第1の開口とを含む。
【0050】
第2の態様において、本開示は、態様1の特徴を提供し、更に、ポートを提供し、それは、気体透過性材料を含み、壁部を通って延伸して第2の領域と流体連通する。
【0051】
第3の態様において、本開示は、態様1の特徴を提供し、更に、第1の開口を第2の領域に接続する流路を提供する。
【0052】
第4の態様において、本開示は、態様1の特徴を提供し、更に、壁部を通って延伸し、第2の領域と流体連通する第2の開口を提供する。
【0053】
第5の態様において、本開示は、態様4の特徴を提供し、更に、第2の開口を第2の領域に接続する流路を提供する。
【0054】
第6の態様において、本開示は、態様1または2の特徴を提供し、更に、第1の領域を第2の領域に接続する流路を提供する。
【0055】
第7の態様において、本開示は、態様6の特徴を提供し、更に、第1の領域から第2の領域に進行する流路の端部は、第1の領域で、複数の微細空洞部の各微細空洞部の開口部から離間して位置するように提供する。
【0056】
第8の態様において、本開示は、態様1から7のいずれか1つに記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、更に、気体が、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部の凹状表面の少なくとも1つの開口を通り抜けるようにする工程と、少なくとも1つの微細空洞部で細胞を培養する工程を提供する。
【0057】
第9の態様において、本開示は、態様1から7のいずれか1つに記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、液体が、第1の開口を通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0058】
第10の態様において、本開示は、態様1から7のいずれか1つに記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、液体が、第1の開口を通って、槽の外側から第1の領域へ通り抜けるようにする工程と、液体の少なくとも一部を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部に堆積させる工程と、液体の少なくとも一部を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部に堆積させた後に、細胞を、少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0059】
第11の態様において、本開示は、態様2に記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、気体を、ポートの気体透過性フィルタに通す工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0060】
第12の態様において、本開示は、態様2に記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、液体が、第1の開口を第2の領域に接続する流路を通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0061】
第13の態様において、本開示は、態様4に記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、液体が、第2の開口を通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0062】
第14の態様において、本開示は、態様5に記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、液体が、第2の開口を第2の領域に接続する流路を通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0063】
第15の態様において、本開示は、態様6に記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、気体が、第1の領域を第2の領域に接続する流路を通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0064】
第16の態様において、本開示は、細胞培養槽を提供し、それは、槽の細胞培養室を画定する内面を含む壁部と、細胞培養室内で細胞培養室の第1の領域と細胞培養室の第2の領域の間に配置された基材であって、複数の微細空洞部および多孔性材料層を含み、複数の微細空洞部の各微細空洞部は、ウエルを画定する凹状表面および第1の領域からウエルへの経路を画定する開口部を含み、多孔性材料層の第1の面は、複数の微細空洞部の各微細空洞部の凹状表面の少なくとも一部を画定し、多孔性材料層の第2の面は、第2の領域に向いたものである基材と、壁部を通って延伸し、第1の領域と流体連通する第1の開口とを含む。
【0065】
第17の態様において、本開示は、態様16に記載の細胞培養槽を提供し、多孔性材料層の第1の面は、複数の微細空洞部の各微細空洞部の凹状表面の全体を画定するものである。
【0066】
第18の態様において、本開示は、態様16または17に記載の細胞培養槽を提供し、複数の微細空洞部の各微細空洞部は、開口部から凹状表面に延伸する側壁部表面を含むものであり、多孔性材料層の第1の面は、複数の微細空洞部の各微細空洞部の側壁部表面の少なくとも一部を画定するものである。
【0067】
第19の態様において、本開示は、態様18に記載の細胞培養槽を提供し、多孔性材料層の第1の面は、複数の微細空洞部の各微細空洞部の側壁部表面の全体を画定するものである。
【0068】
第20の態様において、本開示は、態様16から19のいずれか1つに記載の細胞培養槽を提供し、多孔性材料層は、基材全体を画定するものである。
【0069】
第21の態様において、本開示は、態様16から20のいずれか1つに記載の細胞培養槽を提供し、気体透過性フィルタを含み、壁部を通って延伸し、第2の領域と流体連通するポートを含む。
【0070】
第22の態様において、本開示は、態様16から20のいずれか1つに記載の細胞培養槽を提供し、第1の開口を第2の領域に接続する流路を含む。
【0071】
第23の態様において、本開示は、態様16から20のいずれか1つに記載の細胞培養槽を提供し、壁部を通って延伸し、第2の領域と流体連通する第2の開口を、
含む。
【0072】
第24の態様において、本開示は、態様23に記載の細胞培養槽を提供し、第2の開口を第2の領域に接続する流路を含む。
【0073】
第25の態様において、本開示は、態様16から21のいずれか1つに記載の細胞培養槽を提供し、第1の領域を第2の領域に接続する流路を含む。
【0074】
第26の態様において、本開示は、態様25に記載の細胞培養槽を提供し、第1の領域から第2の領域に進行する流路の端部は、第1の領域で、複数の微細空洞部の各微細空洞部の開口部から離間して位置するものである。
【0075】
第27の態様において、本開示は、態様16から26のいずれか1つに記載の細胞培養槽を提供し、気体を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部の多孔性材料層の第1の面によって画定された凹状表面の一部へ通す工程と、細胞を、少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0076】
第28の態様において、本開示は、態様16から26のいずれか1つに記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、液体が、第1の開口を通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0077】
第29の態様において、本開示は、態様16から26のいずれか1つに記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、液体が、第1の開口を通って、槽の外側から第1の領域へ通り抜けるようにする工程と、液体の少なくとも一部を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部に堆積させる工程と、液体の少なくとも一部を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部に堆積させた後に、細胞を、少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0078】
第30の態様において、本開示は、態様21に記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、気体を、ポートの気体透過性フィルタに通す工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0079】
第31の態様において、本開示は、態様22に記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、液体が、第1の開口を第2の領域に接続する流路を通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0080】
第32の態様において、本開示は、態様23に記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、液体が、第2の開口を通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0081】
第33の態様において、本開示は、態様24に記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、液体が、第2の開口を第2の領域に接続する流路を通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程とを含む。
【0082】
第34の態様において、本開示は、態様25または26に記載の細胞培養槽での細胞培養方法を提供し、気体が、第1の領域を第2の領域に接続する流路を通り抜けるようにする工程と、細胞を、複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と、
を含む。
【0083】
実施形態において、本開示は、複数の微細空洞部を含む基材と、その内面と基材とで槽の細胞培養室を画定する壁部と、壁部を通って延伸し細胞培養室と連通する開口と、槽の軸に沿って、開口の反対側に位置する内面の第1の部分であって、槽の軸に沿って、基材が細胞培養室の長さに亘って延伸するものである第1の部分と、開口から基材へ延伸する内面の第2の部分と、第1の部分から基材へ延伸する内面の第3の部分とを含む細胞培養槽を提供する。
【0084】
様々な開示した実施形態は、その特定の実施形態に関連して記載した特定の特徴、要素、または、工程を含みうることが分かるだろう。特定の特徴、要素、または、工程を、1つの特定の実施形態との関係で記載しているが、様々な示していない組合せまたは順序で、代わりの実施形態と交換または組み合わせうることも分かるだろう。
【0085】
本明細書で用いるように、原文の英語の定冠詞、不定冠詞は、「少なくとも1つ」を意味し、そうでないと明示しない限りは、「1つだけ」の意味に限定されるべきではないと理解すべきである。したがって、例えば、不定冠詞を付けた「構成要素」に言及した場合には、文脈から、そうでないことが明らかでない限りは、そのような構成要素を2つ以上有する実施形態を含む。
【0086】
本明細書において、範囲を、「約」1つの特定の値から、および/または、「約」他の特定の値までと表しうる。範囲を、そのように表した場合には、実施形態は、その1つの特定の値から、および/または、他方の特定の値までを含む。同様に、値の前に「約」を付けて概数で表した場合には、その特定の値が他の態様を形成することが理解されよう。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関係でと、他方の端点とは独立に両方で重要であることも分かるだろう。
【0087】
そうでないと明示されない限りは、本明細書に示したいずれの方法も、工程が特定の順序で行われることを要すると解釈されることを全く意図しない。したがって、方法の請求項が、工程が行われる順序を実際に記載しないか、請求項または明細書の記載で、そうではなく、工程は特定の順序に限定されると具体的に記載しない限りは、いずれの特定の順序も推測されることを意図しない。
【0088】
特定の実施形態の様々な特徴、要素、または、工程を、「含む」という移行句を用いて記載しうるが、「からなる」または「から実質的になる」という移行句を用いて記載しうる実施形態を含む代わりの実施形態を含意すると理解すべきである。したがって、例えば、A+B+Cを含む装置が含意する代わりの実施形態は、A+B+Cからなる装置の実施形態、および、A+B+Cから実質的になる装置の実施形態を含む。
【0089】
当業者であれば、本開示の精神および範囲を逸脱することなく、本開示に様々な変更および変形が可能なことが明らかだろう。したがって、本開示は、添付の請求項、および、その等価物の範囲内である限りは、本開示の変更例および変形例を網羅することを意図する。
【0090】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0091】
実施形態1
細胞培養槽において、
前記槽の細胞培養室を画定する内面を含む壁部と、
前記細胞培養室内で該細胞培養室の第1の領域と該細胞培養室の第2の領域の間に配置された非多孔性材料の基材であって、複数の微細空洞部を含み、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部は、ウエルを画定する凹状表面および前記第1の領域から前記ウエルへの経路を画定する開口部を含み、前記各微細空洞部の前記凹状表面は、約15マイクロメートル以下の寸法を有して該ウエルから前記第2の領域への経路を画定する少なくとも1つの開口を含むものである基材と、
前記壁部を通って延伸し、前記第1の領域と流体連通する第1の開口と
を含む細胞培養槽。
【0092】
実施形態2
前記壁部は、気体透過性材料を有して前記第2の領域と流体連通するポートを含むものである、実施形態1に記載の細胞培養槽。
【0093】
実施形態3
前記第1の開口を前記第2の領域に接続する流路、
を含む、実施形態1に記載の細胞培養槽。
【0094】
実施形態4
前記壁部を通って延伸し、前記第2の領域と流体連通する第2の開口、
を含む、実施形態1に記載の細胞培養槽。
【0095】
実施形態5
前記第2の開口を前記第2の領域に接続する流路、
を含む、実施形態4に記載の細胞培養槽。
【0096】
実施形態6
前記第1の領域を前記第2の領域に接続する流路、
を含む、実施形態1または2に記載の細胞培養槽。
【0097】
実施形態7
前記第1の領域から前記第2の領域に進行する前記流路の端部は、該第1の領域で、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記開口部から離間して位置するものである、実施形態6に記載の細胞培養槽。
【0098】
実施形態8
実施形態1から7のいずれか1つに記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体が、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部の前記凹状表面の前記少なくとも1つの開口を通り抜けるようにする工程と、
前記少なくとも1つの微細空洞部で細胞を培養する工程と
を含む方法。
【0099】
実施形態9
実施形態1から7のいずれか1つに記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と、
を含む方法。
【0100】
実施形態10
実施形態1から7のいずれか1つに記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を通って、前記槽の外側から前記第1の領域へ通り抜けるようにする工程と、
前記液体の少なくとも一部を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部に堆積させる工程と、
前記液体の少なくとも一部を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部に堆積させた後に、細胞を、該少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0101】
実施形態11
実施形態2に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体を、前記ポートの気体透過性フィルタに通す工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0102】
実施形態12
実施形態3に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0103】
実施形態13
実施形態4に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第2の開口を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0104】
実施形態14
実施形態5に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第2の開口を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0105】
実施形態15
実施形態6または7に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体が、前記第1の領域を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0106】
実施形態16
細胞培養槽において、
前記槽の細胞培養室を画定する内面を含む壁部と、
前記細胞培養室内で該細胞培養室の第1の領域と該細胞培養室の第2の領域の間に配置された基材であって、複数の微細空洞部および多孔性材料層を含み、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部は、ウエルを画定する凹状表面および前記第1の領域から前記ウエルへの経路を画定する開口部を含み、前記多孔性材料層の第1の面は、該複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記凹状表面の少なくとも一部を画定し、該多孔性材料層の第2の面は、前記第2の領域に向いたものである基材と、
前記壁部を通って延伸し、前記第1の領域と流体連通する第1の開口と
を含む細胞培養槽。
【0107】
実施形態17
前記多孔性材料層の前記第1の面は、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記凹状表面の全体を画定するものである、実施形態16に記載の細胞培養槽。
【0108】
実施形態18
前記複数の微細空洞部の各微細空洞部は、前記開口部から前記凹状表面に延伸する側壁部表面を含むものであり、
前記多孔性材料層の前記第1の面は、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記側壁部表面の少なくとも一部を画定するものである、実施形態16または17に記載の細胞培養槽。
【0109】
実施形態19
前記多孔性材料層の前記第1の面は、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記側壁部表面の全体を画定するものである、実施形態18に記載の細胞培養槽。
【0110】
実施形態20
前記多孔性材料層は、前記基材全体を画定するものである、実施形態16から19のいずれか1つに記載の細胞培養槽。
【0111】
実施形態21
気体透過性フィルタを含み、前記壁部を通って延伸し、前記第2の領域と流体連通するポート、
を含む、実施形態16から20のいずれか1つに記載の細胞培養槽。
【0112】
実施形態22
前記第1の開口を前記第2の領域に接続する流路、
を含む、実施形態16から20のいずれか1つに記載の細胞培養槽。
【0113】
実施形態23
前記壁部を通って延伸し、前記第2の領域と流体連通する第2の開口、
を含む、実施形態16から20のいずれか1つに記載の細胞培養槽。
【0114】
実施形態24
前記第2の開口を前記第2の領域に接続する流路、
を含む、実施形態23に記載の細胞培養槽。
【0115】
実施形態25
前記第1の領域を前記第2の領域に接続する流路、
を含む、実施形態16から21のいずれか1つに記載の細胞培養槽。
【0116】
実施形態26
前記第1の領域から前記第2の領域に進行する前記流路の端部は、該第1の領域で、前記複数の微細空洞部の各微細空洞部の前記開口部から離間して位置するものである、実施形態25に記載の細胞培養槽。
【0117】
実施形態27
実施形態16から26のいずれか1つに記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部の前記多孔性材料層の前記第1の面によって画定された前記凹状表面の一部へ通す工程と、
細胞を、前記少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0118】
実施形態28
実施形態16から26のいずれか1つに記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0119】
実施形態29
実施形態16から26のいずれか1つに記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を通って、前記槽の外側から前記第1の領域へ通り抜けるようにする工程と、
前記液体の少なくとも一部を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部に堆積させる工程と、
前記液体の少なくとも一部を、前記複数の微細空洞部の前記少なくとも1つの微細空洞部に堆積させた後に、細胞を、該少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0120】
実施形態30
実施形態21に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体を、前記ポートの前記気体透過性フィルタに通す工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0121】
実施形態31
実施形態22に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第1の開口を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0122】
実施形態32
実施形態23に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第2の開口を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0123】
実施形態33
実施形態24に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
液体が、前記第2の開口を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と
を含む方法。
【0124】
実施形態34
実施形態25または26に記載の細胞培養槽での細胞培養方法において、
気体が、前記第1の領域を前記第2の領域に接続する前記流路を通り抜けるようにする工程と、
細胞を、前記複数の微細空洞部の少なくとも1つの微細空洞部で培養する工程と、
を含む方法。
【符号の説明】
【0125】
100、200 細胞培養槽
103 細胞培養室
104 キャップ
105 開口
106 側壁部
109 首状開口部
112 首状部
120、220 微細空洞部
215 基材
230 ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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