(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】中空粒子分散体
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20221220BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20221220BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20221220BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20221220BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20221220BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20221220BHJP
C08K 5/5317 20060101ALI20221220BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221220BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221220BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221220BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20221220BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/24
C08K5/09
C08K5/10
C08K5/42
C08K5/5313
C08K5/5317
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/20
(21)【出願番号】P 2020506599
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2019010240
(87)【国際公開番号】W WO2019177013
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2018047046
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 悠吾
(72)【発明者】
【氏名】松浦 春彦
(72)【発明者】
【氏名】野田 百夏
(72)【発明者】
【氏名】大内 卓太
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/163439(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つ以上の層で形成されたシェルを有する中空粒子、酸性化合物及び有機溶媒を含有する中空粒子分散体であって、
前記層の少なくとも一つが、窒素原子と炭素原子を含有し、リン原子及び/又は硫黄原子を含有し、
前記層中に前記リン原子が含有される場合、前記リン原子の含有量が、0.2~5.00質量%であり、
前記層中に前記硫黄原子が含有される場合、前記硫黄原子の含有量が、0.2~5.00質量%であり、
前記層中に前記リン原子及び前記硫黄原子が含有される場合、前記リン原子及び前記硫黄原子の含有量の合計が、0.2~10.00質量%であり、
前記層の少なくとも一つが、少なくとも1種以上のエポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体の重合体を、ポリアミン系化合物で架橋した重合体を含有し、
前記酸性化合物の含有量が、前記中空粒子と前記酸性化合物の合計100質量部に対して、0.01~70質量部であり、前記中空粒子の含有量が、前記中空粒子分散体100質量部に対して、0.01~30質量部である中空粒子分散体。
【請求項2】
前記酸性化合物が、10~300mgKOH/gの酸価を示す請求項1に記載の中空粒子分散体。
【請求項3】
前記中空粒子が、30~120nmの平均粒子径を示し、10~70%の中空率を示す請求項1又は2に記載の中空粒子分散体。
【請求項4】
前記中空粒子のXPS測定における窒素原子の存在比Nと炭素原子の存在比Cが0.01≦N/C≦0.2の関係を満たす請求項1~3のいずれか1つに記載の中空粒子分散体。
【請求項5】
前記層の少なくとも一つがケイ素原子と炭素原子を含有し、中空粒子のXPS測定におけるケイ素原子の存在比Siと炭素原子の存在比Cが0.001≦Si/C≦0.1の関係を満たす請求項1~4のいずれか1つに記載の中空粒子分散体。
【請求項6】
前記中空粒子が、ATR-FTIRで測定して得られた赤外線吸収スペクトルにおいて810cm
-1での吸光度(A810)と1720cm
-1での吸光度(A1720)の比α(吸光度比α:A810/A1720)を算出した場合、0.015~0.50の吸光度比αを示す請求項1~5のいずれか1つに記載の中空粒子分散体。
【請求項7】
前記酸性化合物が、無機酸、カルボン酸化合物、酸のアルキルエステル化合物、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物及びホスフィン酸化合物から選択される請求項1~6のいずれか1つに記載の中空粒子分散体。
【請求項8】
前記有機溶媒が、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤及びグリコールエステル系溶剤から選択される請求項1~7のいずれか1つに記載の中空粒子分散体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の中空粒子分散体を含有したコーティング剤。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1つに記載の断熱フィルム用中空粒子分散体。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1つに記載の反射防止膜及び反射防止膜付基材用中空粒子分散体。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1つに記載の光取り出し膜及び光取り出し膜付基材用中空粒子分散体。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1つに記載の低誘電率膜用中空粒子分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空粒子分散体に関する。本発明の中空粒子分散体によれば、硬化性樹脂中で分散性が高く、また中空粒子を含有する硬化性樹脂組成物を硬化させることで耐擦傷性や高い透明性を有する硬化物を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
内部に空隙を有する粒子は、その空隙に各種の物質を内蔵させることによりマイクロカプセル粒子として使用されている。また、これらの内部に空隙を有する粒子は、中空粒子とも称され、光散乱材料、低反射材料、断熱材料、低誘電率材料等として使用されている。これら材料は、例えば、熱硬化性や熱可塑性の樹脂に添加して板状に成形したり、紫外線硬化性の樹脂に添加してフィルム状にしたりすることで、光散乱フィルム、低反射フィルム、断熱フィルム、低誘電率フィルム等として使用されている。
しかし、中空粒子を熱硬化性や熱可塑性の樹脂に添加して成形したり、硬化性樹脂組成物に添加して硬化させたりした場合、成形物や硬化物の機械強度、特に表面の耐擦傷性が低下するといった課題があった。この課題を解決する技術が、特開2010-084017号公報(特許文献1)、特開2010-084018号公報(特許文献2)及び特許第5411477号公報(特許文献3)で提案されている。これら特許文献では、アルコキシシランで表面処理した後、更にラジカル重合性基を有するシランカップリング剤で表面処理された中空粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010―084017号公報
【文献】特開2010―084018号公報
【文献】特許第5411477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献の中空粒子においても、有機溶媒や硬化性樹脂中での分散性が低いため、十分な耐擦傷性や透明性を有する成形物や硬化物を得ることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして本発明によれば、少なくとも一つ以上の層で形成されたシェルを有する中空粒子、酸性化合物及び有機溶媒を含有する中空粒子分散体であって、
前記層の少なくとも一つが窒素原子と炭素原子を含有し、
前記酸性化合物の含有量が、前記中空粒子と前記酸性化合物の合計100質量部に対して、0.01~70質量部であり、前記中空粒子の含有量が、前記中空粒子分散体100質量部に対して、0.01~30質量部である中空粒子分散体が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、十分な耐擦傷性を有する成形物を作製するのに適した中空粒子分散体を提供できる。
本発明によれば、下記のいずれかの態様を有する場合、より十分な耐擦傷性を有する成形物を作製するのに適した中空粒子分散体を提供できる。
(1)酸性化合物が、10~300mgKOH/gの酸価を示す。
(2)中空粒子が、30~120nmの平均粒子径を示し、10~70%の中空率を示す。
(3)中空粒子が、XPS測定における窒素原子の存在比Nと炭素原子の存在比Cが0.01≦N/C≦0.2の関係を満たす。
(4)中空粒子が、XPS測定におけるケイ素原子の存在比Siと炭素原子の存在比Cが0.001≦Si/C≦0.1の関係を満たす。
(5)中空粒子が、ATR-FTIRで測定して得られた赤外線吸収スペクトルにおいて810cm-1での吸光度(A810)と1720cm-1での吸光度(A1720)の比α(吸光度比α:A810/A1720)を算出した場合、0.015~0.50の吸光度比αを示す。
(6)酸性化合物が、無機酸、カルボン酸化合物、酸のアルキルエステル化合物、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物及びホスフィン酸化合物から選択される。
(7)有機溶媒が、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤及びグリコールエステル系溶剤から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(A)中空粒子分散体
中空粒子分散体は、少なくとも中空粒子と、酸性化合物と、中空粒子を分散させる有機溶媒とを含む。中空粒子は、中空粒子分散体100質量部に対して0.01~30質量部含まれ得る。
有機溶媒としては、中空粒子を溶解しない限り特に限定されず、水性及び油性の媒体をいずれも使用できる。例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジグライム系溶剤、パークロロエチレン、1-ブロモプロパン等のハロゲン系溶剤、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。中でも、取り扱い性の面から、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤及びグリコールエステル系溶剤が好ましい。また、水や一つ以上の異なる有機溶媒を必要に応じて有機溶媒に加えてもよい。
【0008】
中空粒子分散体は、分散剤として酸性化合物を含む。酸性化合物を含むことで、中空粒子の分散性をより向上できる。酸性化合物を構成する酸基が、中空粒子に含まれる窒素原子の孤立電子対に対して相互作用することで、有機溶媒への分散性を向上させる。その結果、中空粒子分散体を用いて得られた成形物や硬化物により高い耐擦傷性や高い透明性を付与できる。また、成形物や硬化物の表面平滑性を向上させることが出来る。酸性化合物は、例えば、硝酸、燐酸、硫酸、炭酸のような無機酸やカルボン酸化合物、無機酸のアルキルエステル化合物、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物及びホスフィン酸化合物から選択できる。なかでも、酸性化合物としては中空粒子の分散性をより向上させることができる硫酸のアルキルエステル化合物、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物及びホスフィン酸化合物が好ましい。
【0009】
酸性化合物は、10~300mgKOH/gの酸価を示すことが好ましい。酸価が10mgKOH/g未満の場合、中空粒子の分散性の向上が不十分となり、中空粒子分散体を用いて得られた成形物の耐擦傷性が乏しくなることがある。300mgKOH/gより大きい場合、有機溶媒中での中空粒子の分散性が低下することがある。酸価は、10mgKOH/g、15mgKOH/g、20mgKOH/g、50mgKOH/g、100mgKOH/g、150mgKOH/g、200mgKOH/g、250mgKOH/g及び300mgKOH/gを取り得る。酸価は、15~300mgKOH/gであることが好ましく、20~250mgKOH/gであることがより好ましい。
酸性化合物の含量は、中空粒子と酸性化合物の合計100質量部に対して、0.01~70質量部である。含量が0.01質量部未満の場合、良好な分散性が得られないことがある。70質量部より多い場合、中空粒子分散体を用いて得られた成形物の耐擦傷性が乏しくなることがある。含量は、0.01質量部、0.1質量部、0.5質量部、1質量部、2質量部、5質量部、10質量部、30質量部、50質量部及び70質量部を取り得る。含量は、1~50質量部であることが好ましく、2~30質量部であることがより好ましい。
【0010】
また、中空粒子分散体は任意のバインダーを含んでいてもよい。
バインダーは、特に限定されず、公知のバインダー樹脂をバインダーとして用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられ、より具体的には、フッ素系樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、バインダー樹脂は、1つの反応性単量体単独重合体であってもよいし、複数のモノマーの共重合体であってもよい。また、バインダーとして反応性単量体を使用してもよい。
例えば反応性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、(シクロ)ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数1~25のアルコールとのエステルのような単官能性反応性単量体、
【0011】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性反応性単量体
が挙げられる。
また、これらの反応性単量体を使用する際は、電離放射線により硬化反応を開始させる重合開始剤を中空粒子分散体に含んでいてもよい。重合開始剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N-アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられる。
【0012】
また、バインダーとしては、例えばケイ素アルコキシドの加水分解物等の無機系バインダーを使用することもできる。ケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
更に、中空粒子分散体には、硬化剤、着色剤、帯電防止剤、レベリング剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
中空粒子分散体の被塗布基材は、特に限定されず、用途に応じた基材を使用できる。被塗布基材としては、例えば、光学用途では、ガラス基材、透明樹脂基材等の透明基材が挙げられる。
【0013】
(中空粒子)
中空粒子は、少なくとも一つ以上の層で形成されたシェルを有している。シェルを構成する層は、一つからなっていても、二つ以上の複数層からなっていてもよい。
シェルを構成する層の少なくとも一つは、窒素原子と炭素原子を含有する。また、シェルを構成する層の少なくとも一つは、ビニル系樹脂を含有することが好ましい。ビニル系樹脂は、ビニル系単量体から構成された部位を含有する樹脂である。特に、芳香族環を有しないビニル系単量体から構成されたビニル系樹脂は耐候性が高く、経時での黄変等を抑制できるため好ましい。シェル全体が、ビニル系樹脂から構成されてもよい。ビニル系樹脂は、少なくとも1種以上のエポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体の重合体を、ポリアミン系化合物のような架橋性単量体で架橋した重合体であることが好ましい。
中空粒子はXPS(X線光電子分光法)での測定において、0.01≦N/C≦0.2の関係を満たす窒素原子の存在比Nと炭素原子の存在比Cとを有することが好ましい。N/Cが0.01未満の場合、架橋密度が低くなり、低分子のバインダー成分が中空内部に浸入しやすくなることがある。また、酸性化合物と相互作用しにくくなり、十分な分散性を付与できなくなることがある。0.2を超える場合、架橋密度が高すぎるため、ピンホールが発生しやすくなり、低分子のバインダー成分が中空内部に浸入しやすくなることがある。N/Cは、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1及び0.2を取り得る。N/Cは、0.01~0.15であることがより好ましく、0.02~0.1であることが更に好ましい。
【0014】
また、少なくとも一つ以上の層は、リン原子及び/又は硫黄原子を含有する層であってもよい。これら原子が少なくとも一つ以上の層に含有されることで硬化性樹脂中での中空粒子の分散性を向上させることができたり、中空粒子の物理強度を向上させることができたりすることで、成形物に十分な耐擦傷性や透明性を付与し得る。少なくとも一つ以上の層のリン原子及び/又は硫黄原子は、蛍光X線分析やXPS等によりその存在の確認ができる。リン原子及び/又は硫黄原子は、ビニル系樹脂自体にリン原子及び/又は硫黄原子を含むモノマーを用いることで、少なくとも一つ以上の層に含有されてもよい。特に、以下で説明するリン原子及び硫黄原子を含有する表面処理剤で表面処理を行うことで、少なくとも一つ以上の層にリン原子及び硫黄原子を含有させることが好ましい。また、シェル全体が、リン原子及び/又は硫黄原子を含有した層であってもよいし、一部の層のみがリン原子及び/又は硫黄原子を含有してもよい。リン原子又は硫黄原子の含有量は、0.2~5.00質量%であることが好ましい。含有量が0.2質量%未満の場合、中空粒子を含む成形物に十分な耐擦傷性を付与できないことがある。5.00質量%より多い場合、硬化性樹脂中での中空粒子の分散性が低下したり、成形物の硬度が高くなりすぎたりして耐擦傷性が低下することがある。含有量は、0.2質量%、0.3質量%、0.5質量%、1.00質量%、2.00質量%、3.00質量%、4.00質量%及び5.00質量%を取り得る。含有量は0.2~4.00質量%であることがより好ましく、0.3~3.00質量%であることが更に好ましい。リン原子及び硫黄原子は、少なくとも一つ以上の層に、どちらか一方の原子のみが含まれていてもよく、両方の原子が含まれていてもよい。両方の原子が含まれる場合、その含有量を0.2~10.0質量%とし得る。含有量は、0.2質量%、0.5質量%、1.00質量%、3.00質量%、5.00質量%、7.00質量%及び10.00質量%を取り得る。
【0015】
更に、中空粒子は、ATR-FTIR(赤外分光分析ATR)により中空粒子を測定して得られた赤外線吸収スペクトルから810cm-1での吸光度(A810)と1720cm-1での吸光度(A1720)の比α(吸光度比α:A810/A1720)を算出した場合、0.015~0.50の吸光度比αを示す粒子であることが好ましい。吸光度A810は、ビニル基CHの面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。また、吸光度A1720は、カルボニル基のC=O伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。吸光度比αは、中空粒子のラジカル反応性基の導入量の程度を示す指標として使用できる。具体的には、吸光度比αが大きくなると、粒子に導入されたラジカル反応性基が大きくなるという傾向を示す。粒子にラジカル反応性基を導入することで、硬化性樹脂中での分散性や硬化後の樹脂との密着性が高まり、耐擦傷性の高い成形物が得られやすい。吸光度比αが0.015未満の場合、中空粒子の分散性や密着性が低下して耐擦傷性が低い成形物が得られることがある。基本的に吸光度比αが大きいほど耐擦傷性が高い成形物が得られるため、吸光度比αが大きいことが好ましいが、0.50より大きい場合、経時で中空粒子に導入したラジカル反応性基が反応して分散体中で凝集を起こすことがある。吸光度比αは、0.015、0.020、0.050、0.10、0.20、0.30、0.40及び0.50を取り得る。吸光度比αは0.015~0.400であることがより好ましく、0.020~0.300であることが更に好ましい。
【0016】
前記シェルを構成する層の少なくとも一つはケイ素原子を含有することが好ましい。更に、ケイ素成分を含有する有機-無機ハイブリッドビニル系樹脂(Si含有樹脂)であることが好ましい。本明細書において、「有機-無機」とは、ケイ素を無機成分とし、ケイ素以外の樹脂を有機成分としていることを意味する。
Si含有樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基、シンナモイル基等のラジカル反応性官能基を有する少なくとも一つの単量体を重合、又は共重合して得られる共重合体をポリアミン系化合物のような架橋性単量体で架橋されたSi含有樹脂が好ましい。
Si含有樹脂は、少なくとも1種以上のエポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体と、少なくとも1種以上のシリル基を有するラジカル反応性単量体とからなる共重合体を、ポリアミン系化合物のような架橋性単量体で架橋した共重合体であることが好ましい。なお、エポキシ基、オキセタン基及びシリル基を併せて、非ラジカル反応性官能基ともいう。
【0017】
また、中空粒子はXPSでの測定において、0.001≦Si/C≦0.1の関係を満たすケイ素原子の存在比Siと炭素原子の存在比Cとを有することが好ましい。Si/Cが0.001未満の場合、架橋密度が低くなり、低分子のバインダー成分が中空粒子の内部に浸入しやすくなることがある。0.1を超える場合、架橋密度が高すぎるため、ピンホールが発生しやすくなり、低分子のバインダー成分が中空粒子の内部に浸入しやすくなることがある。Si/Cは、0.001、0.002、0.005、0.01、0.03、0.05、0.08及び0.1を取り得る。Si/Cは、0.002~0.05であることがより好ましく、0.002~0.02であることが更に好ましい。
また、中空粒子は少なくとも一つ以上の層がケイ素原子、硫黄原子、リン原子の少なくても1種と炭素原子を含有し、中空粒子のでXPSにおけるケイ素原子、硫黄原子、リン原子の合計の存在比Mと炭素原子の存在比Cが0.001≦M/C≦0.2の関係を満たすケイ素原子、硫黄原子、リン原子の合計の存在比Mとを有することが好ましい。M/Cが0.001未満の場合、粒子の強度が不十分となり潰れ粒子が発生しやすくなることがある。0.2を超える場合であっても、粒子の潰れが発生することがある。NM/Cは、0.001~0.15であることがより好ましく、0.001~0.1であることが更に好ましい。
また、中空粒子は、30~120nmの平均粒子径を示すことが好ましい。平均粒子径が30nm未満の中空粒子は、中空粒子同士の凝集が発生して、取扱い性に劣ることがある。120nmより大きい中空粒子は、コーティング剤や樹脂と混練した場合に表面の凹凸や粒子界面での散乱が大きくなり、白化することがある。平均粒子径は30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、100nm、120nmを取り得る。平均粒子径は30~100nmであることがより好ましく、30~80nmであることが更に好ましい。
【0018】
中空粒子は、10~70%の中空率を示すことが好ましい。10%未満であると、中空部が小さく、所望の特性が得られないことがある。70%より大きい場合、中空部が大きくなりすぎて中空粒子の強度が低下することがある。中空率は、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%及び70%を取り得る。中空率は20~60%がより好ましく、25~50%更に好ましい。
中空粒子は、中空粒子分散体中において、単分散性の評価の指標であるCV値が30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。CV値が30%を超える場合、粗大な粒子の存在により耐擦傷性が低下することがある。CV値は、30%、25%、20%、15%、10%及び5%を取り得る。
シェルは、ピンホールが少ないことが好ましい。シェルのピンホールが多い場合、これら粒子を、熱伝導率を調整することが望まれている部材に使用した際に、低分子のバインダー成分が中空粒子の内部に浸入しやすい。そのため、中空粒子を低屈折率材料に使用した際に十分な低屈折率化ができないことがあったり、熱伝導率調整剤として使用した際に熱伝導率を調整できなかったりすることがある。
【0019】
(1)エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体
少なくとも1種以上のエポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体は、エポキシ基又はオキセタン基とラジカル反応性官能基とを有する。
ラジカル反応性官能基は、ラジカル重合で反応するエチレン性不飽和基(ビニル基又はビニル基含有官能基)であれば特に限定されない。例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基及びシンナモイル基等が挙げられる。これらの中でも、反応性の制御が容易である点から、ビニル基、(メタ)アクリロイル基及びアリル基が好ましい。
【0020】
エポキシ基又はオキセタン基は、アミノ基、カルボキシ基、クロロスルホン基、メルカプト基、水酸基、イソシアナート基等を有する化合物と反応して重合体を生成する官能基である。
ラジカル反応性官能基とエポキシ基又はオキセタン基とを有する反応性単量体は、特に限定されない。例えば、p-グリシジルスチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0021】
(2)シリル基を有するラジカル反応性単量体
少なくとも1種以上のシリル基を有するラジカル反応性単量体は、シリル基とラジカル反応性官能基とを有する。
ラジカル反応性官能基は、ラジカル重合で反応するエチレン性不飽和基であれば特に限定されない。例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基、シンナモイル基等が挙げられる。中でも反応性の制御が容易なビニル基、(メタ)アクリロイル基及びアリル基が好ましい。
シリル基とラジカル反応性官能基とを有する反応性単量体は、特に限定されない。例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
(3)エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体とからなる共重合体
前記共重合体において、エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の割合(質量比)は、1:100~0.001であることが好ましい。シリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の割合が0.001未満の場合、シェルの強度が低くなり中空粒子が潰れたり、中空粒子が得られなかったりすることがある。100より大きい場合、シェルが脆くなりすぎて、ピンホールが発生しやすくなることによりフィルムの断熱性を高くし難くなることがある。成分の割合(質量比)は、1:100、1:50、1:10、1:5、1:1、1:0.1、1:0.01及び1:0.001を取り得る。より好ましい割合は1:10~0.001であり、更に好ましい割合は1:1~0.01である。
【0023】
(4)単官能単量体
エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体からなる重合体は、反応性官能基を1つだけ有する単官能単量体に由来する成分を含んでいてもよい。単官能単量体としては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸と炭素数1~25のアルコールとのエステル等が挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル酸と炭素数1~25のアルコールとのエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、(シクロ)ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
単官能単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の含有量は、反応性単量体に由来する成分全体の10質量%以上であることが好ましい。含有量が10質量%未満であると、中空粒子とならないことがある。含有量は、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%、90質量%及び100質量%を取り得る。エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の含有量は、より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上である。
【0025】
(5)架橋性単量体
ビニル系樹脂は、ポリアミン系化合物のような架橋性単量体由来の成分を含んでいてもよい。
ポリアミン系化合物としては、例えば、エチレンジアミン及びその付加物、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン及びその変性物、
N-アミノエチルピペラジン、ビス-アミノプロピルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス-ヘキサメチレントリアミン、ジシアンジアミド、ジアセトンアクリルアミド、各種変性脂肪族ポリアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等の脂肪族アミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3-アミノ-1-シクロヘキシルアミノプロパン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン等の脂環族アミン及びその変性物、
【0026】
4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、2,4’-トルイレンジアミン、m-トルイレンジアミン、o-トルイレンジアミン、メタキシリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族アミン及びその変性物、その他特殊アミン変性物、
アミドアミン、アミノポリアミド樹脂等のポリアミドアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ-2-エチルヘキサン塩等の3級アミン類
等が挙げられる。
架橋性単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0027】
(6)表面処理剤
中空粒子は、少なくとも一つ以上のアニオン性基を有する化合物で処理された表面を有していてもよい。この化合物で処理された表面は、中空粒子に耐熱性や有機溶媒中での分散性、低分子のバインダー成分が中空内部に侵入しにくくなるという性質を付与する。
アニオン性基を有する化合物は、塩酸、有機二酸無水物、オキソ酸(例えば、硝酸、燐酸、硫酸、炭酸のような無機酸やカルボン酸化合物、硫酸のアルキルエステル化合物、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物等の有機酸が挙げられる)から選択される。これら化合物は、リン原子及び/又は硫黄原子を構成成分として含む化合物であることが好ましい。
【0028】
カルボン酸化合物は、カルボキシ基を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸等の直鎖状カルボン酸;ピバリン酸、2,2-ジメチル酪酸、3,3-ジメチル酪酸、2,2-ジメチル吉草酸、2,2-ジエチル酪酸、3,3-ジエチル酪酸、2-エチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、4-メチルオクタン酸、ネオデカン酸等の分岐鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の環状カルボン酸等が挙げられる。これらの中で有機溶媒中での分散性を効果的に高めるためには、炭素数4~20の直鎖状カルボン酸、分岐鎖状カルボン酸等が好ましい。
また、カルボン酸化合物として、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基、シンナモイル基等のラジカル反応性官能基を有するカルボン酸も使用できる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、2-メタクリロイロキシエチルフタル酸、ビニル安息香酸等が挙げられる。
【0029】
硫酸のアルキルエステル化合物としては、ドデシル硫酸等が挙げられる。
スルホン酸化合物は、スルホ基を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
リン酸エステル化合物は、リン酸のエステル化合物であれば特に限定されない。例えば、リン酸ドデシル、下記一般式(a)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸が挙げられる。
【0030】
【0031】
前記式中、R1は、炭素数4~19のアルキル基又はアリル基(CH2=CHCH2-)、(メタ)アクリル基及びスチリル基である。炭素数4~19のアルキル基としてはブチル基、ペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基等が挙げられる。これら基は、直鎖状でも、分岐状であってもよい。また、これらは1種類でも複数種を併用してもよい。
R2は、H又はCH3である。
nは、アルキレンオキサイドの付加モル数であり、全体を1モルとした場合、0~30の付加モル数を与えるのに必要な範囲の数値である。
aとbの組み合わせは、1と2又は2と1の組み合わせである。
また、日本化薬社のKAYAMER PM-21等も使用することができる。
【0032】
また、オキソ酸としては、酸基を有する重合体も使用することができる。例えば、ディスパービック103、ディスパービック110、ディスパービック118、ディスパービック111、ディスパービック190、ディスパービック194N、ディスパービック2015(以上ビックケミー社製)、ソルスパース3000、ソルスパース21000、ソルスパース26000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000、ソルスパース41090、ソルスパース43000、ソルスパース44000、ソルスパース46000、ソルスパース47000、ソルスパース53095、ソルスパース55000(以上ルーブリゾール社製)、EFKA4401、EFKA4550(エフカ アディティブズ社製)、フローレンG-600、フローレンG-700、フローレンG-900、フローレンGW-1500、フローレンGW-1640(以上共栄社化学社製)、ディスパロン1210、ディスパロン1220、ディスパロン2100、ディスパロン2150、ディスパロン2200、ディスパロンDA-325、ディスパロンDA-375(楠本化成社製)、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824、アジスパーPB881、アジスパーPN411(味の素ファインテクノ社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
また必要に応じてシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、イソシアネート系化合物等の表面処理剤で表面処理を行ってもよい。
前記シラン系カップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシランや、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン、トリメチルシリルクルロライド等のクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のシラン系カップリング剤が挙げられる。
上記シラン系カップリング剤以外に、下記一般式(I)で表されるシラン系カップリング剤も挙げられる。
【0034】
【0035】
一般式(I)において、R1は、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~4のアルコキシアルキル基又はフェニル基を表す。
R2は、それぞれ独立して、置換又は非置換の、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~4のアルコキシアルキル基又はフェニル基を表す。
R3は、炭素数1~30の2価の有機基を表す。
R4は、水素原子又はメチル基を表す。
mは0~2の整数を表す。
R1及びR2中、炭素数1~6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルが挙げられる。これらアルキル基には、可能であれば、構造異性体が含まれる。
R1及びR2中、炭素数2~4のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチル、メトキシブチル、エトキシエチル及びブトキシメチルが挙げられる。これらアルコキシアルキル基には、可能であれば、構造異性体が含まれる。
R1及びR2の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基、フェニル基等が挙げられる。
R3中、炭素数1~30の2価の有機基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン等のアルカンジイル基が挙げられる。アルカンジイル基は、アルキル基で置換された分岐構造を有していてもよい。
【0036】
一般式(I)で表されるシラン系カップリング剤の具体例としては、
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、4-(メタ)アクリロキシブチルメチルジエトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルトリエトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルメチルジメトキシシラン、5-(メタ)アクリロキシペンチルメチルジエトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-(メタ)アクリロキシヘキシルメチルジエトキシシラン、7-(メタ)アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、7-(メタ)アクリロキシヘプチルトリエトキシシラン、7-(メタ)アクリロキシヘプチルメチルジメトキシシラン、7-(メタ)アクリロキシヘプチルメチルジエトキシシラン、8-(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、8-(メタ)アクリロキシオクチルトリエトキシシラン、8-(メタ)アクリロキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-(メタ)アクリロキシオクチルメチルジエトキシシラン、9-(メタ)アクリロキシノニルトリメトキシシラン、9-(メタ)アクリロキシノニルトリエトキシシラン、9-(メタ)アクリロキシノニルメチルジメトキシシラン、9-(メタ)アクリロキシノニルメチルジエトキシシラン、10-(メタ)アクリロキシデシルトリメトキシシラン、10-(メタ)アクリロキシデシルトリエトキシシラン、10-(メタ)アクリロキシデシルメチルジメトキシシラン、10-(メタ)アクリロキシデシルメチルジエトキシシラン、11-(メタ)アクリロキシウンデシルトリメトキシシラン、11-(メタ)アクリロキシウンデシルトリエトキシシラン、11-(メタ)アクリロキシウンデシルメチルジメトキシシラン、11-(メタ)アクリロキシウンデシルメチルジエトキシシラン、12-(メタ)アクリロキシドデシルトリメトキシシラン、12-(メタ)アクリロキシドデシルトリエトキシシラン、12-(メタ)アクリロキシドデシルメチルジメトキシシラン、12-(メタ)アクリロキシドデシルメチルジエトキシシラン、13-(メタ)アクリロキシトリデシルトリメトキシシラン、13-(メタ)アクリロキシトリデシルトリエトキシシラン、13-(メタ)アクリロキシトリデシルメチルジメトキシシラン、13-(メタ)アクリロキシトリデシルメチルジエトキシシラン、14-(メタ)アクリロキシテトラデシルトリメトキシシラン、14-(メタ)アクリロキシテトラデシルトリエトキシシラン、14-(メタ)アクリロキシテトラデシルメチルジメトキシシラン、14-(メタ)アクリロキシテトラデシルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
本発明に用いられるシラン系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。なお、シラン系カップリング剤は、例えば、信越シリコーン社のようなシリコーン製造メーカーから入手し得る。
上記シラン系カップリング剤の中でも、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリエトキシシラン及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0038】
前記チタネート系カップリング剤としては、味の素ファインテクノ社製のプレンアクトTTS、プレンアクト46B、プレンアクト55、プレンアクト41B、プレンアクト38S、プレンアクト138S、プレンアクト238S、プレンアクト338X、プレンアクト44、プレンアクト9SA及びプレンアクトETが挙げられるが、本発明に用いられるチタネート系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。
前記アルミネート系カップリング剤としては、味の素ファインテクノ社製のプレンアクトAL-Mが挙げられるが、本発明に用いられるアルミネート系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。
前記ジルコネート系カップリング剤としては、マツモトファインケミカル社製のオルガチックスZA-45、オルガチックスZA-65、オルガチックスZC-150、オルガチックスZC-540、オルガチックスZC-700、オルガチックスZC-580、オルガチックスZC-200、オルガチックスZC-320、オルガチックスZC-126及びオルガチックスZC-300が挙げられるが、本発明に用いられるジルコネート系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。
前記イソシアネート系化合物としては、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、tert―ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、フェニルイソシアネート、4-ブチルフェニルイソシアネート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート及び1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが挙げられるが、本発明に用いられるイソシアネート系化合物はこれらに限定されるものではない。
前記表面処理剤は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0039】
(7)他の添加物
本発明の効果を阻害しない範囲で、中空粒子は、必要に応じて、顔料粒子(顔料)、染料、安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤等の他の添加物を含んでいてもよい。
顔料粒子としては、当該技術分野で用いられる顔料粒子であれば特に限定されない。例えば、雲母状酸化鉄、鉄黒等の酸化鉄系顔料;鉛丹、黄鉛等の酸化鉛系顔料;チタンホワイト(ルチル型酸化チタン)、チタンイエロー、チタンブラック等の酸化チタン系顔料;酸化コバルト;亜鉛黄のような酸化亜鉛系顔料;モリブデン赤、モリブデンホワイト等の酸化モリブデン系顔料等の粒子が挙げられる。顔料粒子は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0040】
(8)中空粒子分散体の用途
中空粒子分散体は、耐擦傷性の向上が望まれている用途である塗料、紙、情報記録紙、断熱フィルム、熱電変換材料の添加剤の原料として有用である。また、中空粒子分散体は、光拡散フィルム(光学シート)、導光板インク、反射防止膜、光取出し膜等に用いられるコーティング剤(塗布用組成物)の添加剤、光拡散板、導光板等の成形体形成用のマスターペレットの添加剤、化粧品の添加剤の原料としても有用である。
(a)マスターペレット
マスターペレットは、中空粒子と基材樹脂とを含む。
基材樹脂は、通常の熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。例えば(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル-スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。特に透明性が求められる場合には(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル-スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂がよい。これらの基材樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、基材樹脂は、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、フィラー等の添加剤を微量含んでいてもよい。
【0041】
マスターペレットは、中空粒子と基材樹脂とを溶融混練して、押出成形、射出成形等の成形方法により製造できる。マスターペレットにおける中空粒子の配合割合は、特に限定されないが、好ましくは0.1~60質量%程度、より好ましくは0.3~30質量%程度、更に好ましくは0.4~10質量%程度である。配合割合が60質量%を上回ると、マスターペレットの製造が難しくなることがある。また、0.1質量%を下回ると、本発明の効果が低下することがある。
マスターペレットは、例えば押出成形、射出成形又はプレス成形することにより成形体となる。また、成形の際に基材樹脂を新たに添加してもよい。基材樹脂の添加量は最終的に得られる成形体に含まれる中空粒子の配合割合が0.1~60質量%程度となるように添加するのがよい。なお、成形時には、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、フィラー等の添加剤を微量添加してもよい。
【0042】
(b)化粧料
中空粒子を配合しうる具体的な化粧料としては、おしろい、ファンデーション等の固形状化粧料、ベビーパウダー、ボディーパウダー等のパウダー状化粧料、化粧水、乳液、クリーム、ボディーローション等の液状化粧料等が挙げられる。中空粒子分散体は、必要に応じて、媒体を除去した後、これらの化粧料に配合される。液状の化粧料の場合、中空粒子分散体は、媒体を除去せずにそのまま化粧料に配合されてもよい。
これらの化粧料への中空粒子の配合割合は、化粧料の種類によっても異なる。例えば、おしろい、ファンデーション等の固形状化粧料の場合は、1~20質量%が好ましく、3~15質量%が特に好ましい。また、ベビーパウダー、ボディーパウダー等のパウダー状化粧料の場合は、1~20質量%が好ましく、3~15質量%が特に好ましい。更に、化粧水、乳液、クリームやリキッドファンデーション、ボディーローション、プレシェーブローション等の液状化粧料の場合は、1~15質量%が好ましく、3~10質量%が特に好ましい。
【0043】
また、これらの化粧料には、光学的な機能の向上や触感の向上のため、マイカ、タルク等の無機化合物、酸化鉄、酸化チタン、群青、紺青、カーボンブラック等の着色用顔料、又はアゾ系等の合成染料等を添加できる。液状化粧料の場合、液状の媒体は、特には限定されないが、水、アルコール、炭化水素、シリコーンオイル、植物性、動物性油脂等を用いることもできる。これらの化粧料には、前記他の成分以外に、化粧品に一般的に用いられる保湿剤、抗炎症剤、美白剤、UVケア剤、殺菌剤、制汗剤、清涼剤、香料等を添加することにより、各種機能を追加することもできる。
【0044】
(c)断熱フィルム
断熱フィルムは、少なくとも前記中空粒子を含有する。前記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子内部に空気層を有するため、断熱フィルムとして使用できる。また、中空粒子の粒子径が小さいため、透明性の高い断熱フィルムが得られ、バインダーが中空粒子の内部に侵入しにくいため高い断熱性を有する断熱フィルムが得られやすい。前記断熱フィルムは前記のコーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
【0045】
(d)反射防止膜
反射防止膜は、少なくとも前記中空粒子を含有する。前記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子の内部の空気層により屈折率が低下するため、反射防止膜として使用できる。また、前記中空粒子は高い耐熱性を有するため、高い耐熱性を有する反射防止膜が得られる。前記反射防止膜は前記のコーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
(e)反射防止膜付基材
反射防止膜付基材は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に前記反射防止膜を形成したものである。用途によって異なるが、被膜は、単独で形成されるか、あるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成される。なお、組み合わせて用いる場合、反射防止膜が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。
【0046】
(f)光取出し膜
光取出し膜は、少なくとも前記中空粒子を含有する。LEDや有機EL照明は、空気層と発光層の屈折率差が大きいため、発光した光が素子内部に閉じ込められやすい。そのため、発光効率を向上させる目的に光取出し膜が使用されている。前記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子内部の空気層により屈折率が低下するため、光取出し膜として使用することが可能である。また、前記中空粒子が高い耐熱性を有するため、高い耐熱性を有する光取出し膜が得られる。前記光取出し膜は前述のコーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
(g)光取出し膜付基材
光取出し膜付基材は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に前述の光取出し膜を形成したものである。用途によって異なるが、被膜は、単独で形成されるか、あるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成される。なお、組み合わせて用いる場合、光取出し膜が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。
(h)低誘電率膜
低誘電率膜は、少なくとも前記中空粒子を含有する。前記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子内部に空気層を有するため、低誘電率膜として使用できる。また、前記中空粒子の粒子径が小さいため、透明性の高い低誘電率膜が得られ、バインダーが中空内部に侵入しにくいため低い比誘電率の低誘電率膜が得られやすい。また、前記中空粒子は耐アルカリ性に優れているため、耐アルカリ性の高い低誘電率膜が得られやすい。前記低誘電率膜は前記のコーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
【0047】
(9)中空粒子分散体の製造方法
中空粒子分散体は、特に限定されないが、例えば、非反応性溶媒を含有する重合体粒子を作製する工程(重合工程)と、重合体粒子から非反応性溶媒を相分離させる工程(相分離工程)と、非反応性溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)、必要に応じて媒体に分散させる工程(分散工程)を経ることにより製造できる。
従来の中空粒子の製造方法は、シェルが反応性単量体を1回重合させることで形成されており、有機溶媒(非反応性溶媒)とシェルとの相分離が重合と同時に行われる。本発明の発明者等は、この方法において、相分離と重合とを同時に行う工程が、ピンホールの発生と単分散性の低下を生じさせていると考えた。また、シェルのピンホールが、中空粒子を熱伝導率調整剤として使用した際におけるフィルムの熱伝導率の低減及びフィルムの反射率の低減を阻害していると考えた。そこで、発明者等は、非反応性溶媒の相分離前に、一旦、重合体粒子を形成し、その後に相分離を生じさせれば、ピンホールの発生を抑制でき、かつ単分散性を向上できると考えた。
具体的には、ラジカル反応性官能基と非ラジカル反応性官能基とを有する反応性単量体を、両官能基のいずれか一方に基づいて重合させることにより重合体粒子を作製する。非反応性溶媒は、予め反応性単量体と混合するか、重合体粒子作製後に吸収させることにより、重合体粒子中に含有させる。次いで、両官能基の残存する他方の官能基による重合により、重合体と非反応性溶媒とが相分離することで、非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子が得られる。この後、非反応性溶媒を除去することで中空粒子が得られる。
【0048】
前記製造方法は、重合と相分離とを分けることにより、
・従来の製造方法で存在していたシェルの重合体間の隙間が存在しなくなり、得られるシェルでのピンホールの発生を抑制できる
・中空粒子の形状が油滴に依存せず、相分離前の重合体粒子の形状や粒度分布に依存するため、単分散性の高い中空粒子が得られやすい
という利点を有する。以下、製造方法の説明を記載する。
【0049】
(9-1)重合工程
重合工程では、ラジカル反応性官能基と非ラジカル反応性官能基とを有する反応性単量体を、両官能基のいずれか一方に基づいて重合させることにより重合体粒子を作製する。非反応性溶媒は、予め反応性単量体と混合するか、重合体粒子作製後に吸収させることにより、重合体粒子中に含有させる。
【0050】
(a)重合体粒子の作製方法
重合体粒子の作製方法としては、塊状重合法、溶液重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法の中から、任意の方法を採用できる。その中でも、重合体粒子を比較的簡便に作製できる点から、懸濁重合法又は乳化重合法が好ましい。更に、単分散性の高い重合体粒子が得られやすい点から、乳化重合法がより好ましい。
重合体粒子は、ラジカル反応性官能基又は非ラジカル反応性官能基を重合させることにより得られる。
【0051】
重合は、重合対象の官能基を重合させる化合物を添加して行うことが好ましい。
(i)ラジカル反応性官能基を重合させる場合、この化合物には重合開始剤を使用できる。重合開始剤は、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、クメンハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジメチルビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(tert-ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレラート、2-エチルヘキサンペルオキシ酸tert-ブチル、ジベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド及びtert-ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物類、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチル-ブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-イソプロピルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,3-ジメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルカプロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,3,3-トリメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-エトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-n-ブトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピネート)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)等のアゾ化合物類が挙げられる。重合開始剤は、1種のみ使用していてもよく、2種以上併用してもよい。
【0052】
また、前記の過硫酸塩類及び有機過酸化物類の重合開始剤と、ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸及びその塩、第一銅塩、第一鉄塩等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤を重合開始剤として使用してもよい。
【0053】
重合が乳化重合である場合、重合開始剤は、水溶媒下で乳化重合が可能な水溶性の重合開始剤であることが好ましい。水溶性の重合開始剤は、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等のアゾ化合物類が挙げられる。
【0054】
(ii)重合体粒子は、ラジカル反応性官能基を先に重合することにより、重合体中に未反応の非ラジカル反応性官能基を有することが好ましい。非ラジカル反応性官能基を先に重合すると、非反応性溶媒の吸収がしにくくなることがある。
重合体粒子は、ラジカル反応性官能基と非ラジカル反応性官能基の一方の反応性官能基を重合することで、重合体中に未反応の他方の反応性官能基を有することが好ましい。しかし、重合体粒子の製造時に重合する官能基は、その全量が重合せず、部分的に重合しても大きな問題はないし、他方の反応性官能基が一部重合しても大きな問題はない。例えば、グリシジルメタクリレートのラジカル反応性官能基を重合させて、エポキシ基を有する重合体粒子を作製する際には、未反応のラジカル反応性官能基が残存してもよいし、部分的にエポキシ基が開環反応してもよい(言い換えると、重合体粒子中に相分離が可能な量のエポキシ基が残っていればよい)。
(iii)連鎖移動剤を、反応性単量体の重合時に使用してもよい。連鎖移動剤は、特に限定されず、例えば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロロメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物が挙げられる。連鎖移動剤は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
連鎖移動剤の使用量の上限は、反応性単量体100質量部に対して、50質量部である。
【0055】
(b)非反応性溶媒の吸収
重合体粒子への非反応性溶媒の吸収は、重合体粒子の製造時又は製造後に行うことができる。また、非反応性溶媒の吸収は、非反応性溶媒と相溶しない分散媒の存在下又は非存在下で行うことができる。分散媒の存在下で行う方が、非反応性溶媒の吸収を効率よく行うことができるので好ましい。重合体粒子の製造に媒体を使用する場合、媒体は分散媒としてそのまま使用してもよく、一旦、重合体粒子を媒体から単離した後、分散媒に分散してもよい。
【0056】
重合体粒子を含む分散媒には、分散媒に相溶しない非反応性溶媒が添加され、一定時間撹拌等を行うことで重合体粒子に非反応性溶媒を吸収させることができる。
また、重合体粒子の製造時での非反応性溶媒の吸収は、重合体粒子の作製に適切な分散媒と非反応性溶媒を選定することで実現できる。例えば、水溶媒下で重合体粒子を乳化重合で作製する場合、水に相溶しない非反応性溶媒を事前に水溶媒に添加しておき、反応性単量体を重合させることで、重合体粒子の作製と重合体粒子の吸収を同時に行うことができる。重合体粒子の作製と重合体粒子の吸収を同時に行うと、非反応性溶媒の吸収にかかる時間を削減できる。
【0057】
(i)分散媒
分散媒は、重合体粒子を完全に溶解させない液状物であれば特に限定されない。例えば、水;エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン等のアルカン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒が挙げられる。これらは、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0058】
(ii)非反応性溶媒
非反応性溶媒は、分散媒に相溶しない液状物であるものであれば特に限定されない。ここで分散媒に相溶しないとは、非反応性溶媒の分散媒への溶解度(25℃時)が10質量%以下のことである。例えば分散媒として水を使用した場合、使用できる非反応性溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1,4-ジオキサン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらは、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
非反応性溶媒の添加量は、特に限定されないが、重合体粒子100質量部に対して、20~5000質量部である。20質量部未満であると、得られる中空粒子の中空部が小さくなり、所望の特性が得られないことがある。5000質量部を超えると、中空部が大きくなりすぎて得られる中空粒子の強度が低下することがある。
【0059】
(9-2)相分離工程
次に、残存する反応性官能基を重合させて、重合体と非反応性溶媒とを相分離させる。相分離により、非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子が得られる。なお本発明において、中空粒子の中空とは、中空部に空気が存在する場合だけでなく、非反応性溶媒や他の分散媒体が中空部に存在しているマイクロカプセル粒子も含む趣旨である。
残存する反応性官能基を重合させるために添加する化合物は、前記重合工程に記載した、ラジカル反応性官能基を重合させるための重合開始剤、非ラジカル反応性官能基を重合させるための架橋剤と同じものを使用できる。
【0060】
(9-3)溶媒除去(置換)工程
必要に応じてマイクロカプセル粒子に内包された非反応性溶媒を除去又は置換することで、中空部に空気や他の溶媒が存在する中空粒子を得ることができる。非反応性溶媒の除去方法は特に限定されず、減圧乾燥法等が挙げられる。減圧乾燥法の条件としては、例えば、500Pa以下の圧力、30~200℃、30分~50時間が挙げられる。また、非反応性溶媒を溶媒置換操作によって置換できる。例えば、非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子又はそれらの分散体に、適当な分散媒体を加え、撹拌等を行うことで粒子内部の非反応性溶媒を分散媒体に置換させる。その後、余分な非反応性溶媒と分散媒体を減圧乾燥法や遠心分離法、限外ろ過法等により除去することで非反応性溶媒を置換できる。溶媒置換は一回だけ行ってもいいし、複数回実施してもよい。
(9-4)(分散工程)
中空粒子分散体は、例えば、相分離工程後に得られる非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子分散体の状態のままであってもよいし、他の溶媒で置換した分散体であってもよい。
他の溶媒で置換する場合、相分離工程後に存在する溶媒を一旦除去して中空粒子を取り出し、取り出された中空粒子を所望の媒体に分散させることができる。
(9-5)その他工程
相分離工程後の中空粒子分散体中にアニオン性基を有する化合物を添加して撹拌したり、溶媒除去工程後に中空粒子にアニオン性基を有する化合物を添加し混合したりすることで中空粒子の表面をアニオン性基を有する化合物で処理することができる。中でも、相分離工程後に余分な架橋剤を除去した後に、中空粒子分散体中にアニオン性基を有する化合物を添加し、撹拌することが好ましい。処理条件としては、例えば、30~200℃、30分~50時間が挙げられる。
中空粒子は、必要に応じて中空粒子分散体を乾燥させた乾燥粉体として使用してもよい。中空粒子の乾燥方法は特に限定されず、減圧乾燥法等が挙げられる。なお、乾燥粉体中には、乾燥せずに残った分散溶媒や非反応性溶媒等が残存していてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。まず、実施例に使用した各種測定法の詳細を下記する。
(平均粒子径、中空率)
以下のように中空粒子の平均粒子径及び中空率を測定した。
すなわち10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散体又は中空粒子メチルイソブチルケトン分散体を70℃の真空乾燥機(圧力は100kPa以下)で4時間乾燥し、乾燥粉体を得た。中空粒子を、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製H-7600)を用いて、加速電圧80kVの条件下、倍率約10万倍でTEM写真を撮影した。このとき四酸化ルテニウム染色等を用いることによって、より明確に粒子を確認することができた。この写真に撮影された任意の100個以上の粒子の粒子径及び内径を観察した。この時、粒子の中心を通るように5箇所以上の粒子径及び内径を測定、平均することで、平均粒子径、平均内径とした。更に、(平均内径)3/(平均粒子径)3×100の式より、中空粒子の中空率を求めた。
【0062】
(分散粒子径)
以下のように中空粒子の有機溶媒中での分散粒子径を測定した。
すなわち、10質量%中空粒子イソプロピルアルコール分散体又は中空粒子メチルイソブチルケトン分散体をイソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトンで希釈し、約0.1質量%に調製した分散体にレーザー光を照射し、イソプロピルアルコール中で分散した中空粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定した。そして、検出された中空粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により着色樹脂粒子のZ平均粒子径を求めた。このZ平均粒子径を有機溶媒中での分散粒子径とした。このZ平均粒子径の測定は、市販の粒子径測定装置で簡便に実施できた。以下の実施例及び比較例では、マルバーン社(Malvern Instruments Ltd.)の粒子径測定装置(商品名「ゼータサイザーナノZS」)を使用してZ平均粒子径を測定した。
【0063】
(中空粒子の元素分析)
以下のように中空粒子の元素分析を実施した。
10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液を90℃の真空乾燥機(圧力は100kPa以下)で4時間乾燥し、乾燥粉体を得た。X線光電子分光分析装置(XPS)Kratos社(英)製,AXIS-ULTRA DLDを使用し、窒素原子と炭素原子は1s、ケイ素原子と硫黄原子、リン原子は2p軌道を由来するピークの面積とRSF(相対感度係数)を用いて、中空粒子を構成している窒素原子の物質量N[atom%]と炭素原子の物質量C[atom%]、ケイ素原子の物質量Si[atom%]、硫黄原子の物質S[atom%]、リン原子の物質量P[atom%]の量を測定した。
X線源 :単色化 Al-Kα線
光電子取出角 :90°
測定範囲 :0.3×0.7mm 長方形
ビーム出力 :75W (15kV-5mA)
測定エネルギー :1200-0eV
パスエネルギー :80eV
中和機構 :ON
測定ステップ :1eV
測定時間 :100ms
積算回数 :4回
真空度 :約4×10-9Torr
測定された窒素原子の物質量N及びケイ素原子の物質量Si、硫黄原子の物質S、リン原子の物質量Pの合計の物質量Mを炭素原子の物質量Cで割ることで、(N/C)及び(M/C)を算出した。
【0064】
(中空粒子分散体の透過率)
以下のように中空粒子分散体の透過率を測定した。
すなわち、実施例で作製した中空粒子分散体をLUM JAPAN社製LUMiSizer用セル(ポリアミド製、光路長2mm)に0.4ml入れ、装置の中央から115mmの位置の透過率を中空粒子分散体の透過率とした。
【0065】
(ヘイズ及び耐擦傷性)
以下のように中空粒子を用いた硬化物のヘイズ及び耐擦傷性を評価した。
すなわち中空粒子分散体をギャップ12.5μmのアプリケーターが付いた自動塗工装置(井元製作所社製IMC-70F0-C型、引き速:10mm/sec)を用いて易接着加工PET基材(東レ社製ルミラーU34 厚み100μm)に塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を、60℃のオーブンで1分間乾燥させた後に、紫外線照射装置(JATEC社製J-Cure、型式JUC1500、引き速:0.4m/min、積算光量:2000mJ/cm2)に2回通して硬化させることで、中空粒子を含有する硬化物を作製した。
ヘイズはJIS K7361-1:1997「プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法-第1部:シングルビーム法」に記載の方法に準じて次の手順で測定した。すなわち、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社製、型式:HM-150型)を用いて装置光源の安定後、作製した光取出し膜付基板を光源(D65)、ダブルビーム法にて個別ヘイズを測定した。安定していることは、光源始動30分後に測定を行うことで確認した。試験数を2回とし、2個の個別ヘイズの平均をヘイズとした。
#0000スチールウールを用い、荷重250gで10回摺動し、硬化物の表面を目視観察し、以下の基準で耐擦傷性を評価した。
評価基準:
キズがほとんど認められない:◎
キズが僅かに認められる:○
キズが多数認められる:△
表面が全体的に削られている:×
【0066】
(中空粒子分散体Aの製造)
5Lのステンレスビーカーにイオン交換水3600質量部と反応性界面活性剤アクアロンAR-10(第一工業製薬社製)0.4質量部、アニオン変性ポリビニルアルコール ゴーセネックスL-3266(日本合成化学工業社製)0.02質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム6.0質量部、過硫酸カリウム9.5質量部を加え溶解させた。グリシジルメタクリレート176質量部と3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン24質量部、n-オクチルメルカプタン4.0質量部、トルエン200質量部の混合溶液をステンレスビーカーに加え、内部超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて10分間撹拌することでエマルジョンを作製し、攪拌機、温度計を備えた5Lの反応器に入れ、窒素置換して内部を窒素雰囲気としたのちに70℃まで昇温し、2時間重合反応を行うことでエポキシ基が残存した重合体粒子を得た。乳化重合にトルエンを添加していたため、エポキシ基が残存した重合体粒子はトルエンで膨潤されていた。
【0067】
次に、残存しているエポキシ基を重合させるために、エチレンジアミン100質量部を添加し、16時間70℃で重合を行った。重合体粒子中のエポキシ基が反応することで、重合体とトルエンが相分離し、中空粒子分散体を得た。中空粒子分散体4000質量部を50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイオン交換水14000質量部でクロスフロー洗浄し、過剰なエチレンジアミンを除去した後に、固形分が10質量%となるように適宜濃縮やイオン交換水の添加を行い、10質量%の中空粒子水分散体を得た。
【0068】
120質量部のリン酸基を有する界面活性剤フォスファノールRS-710(東邦化学工業社製)をイソプロピルアルコール2000質量部に溶解させた後に、10質量%の中空粒子水分散体2000質量部を加え、内部超音波ホモジナイザーを用いて30分間撹拌することで、表面処理された中空粒子分散体を得た。次に表面処理された中空粒子分散体をイソプロピルアルコール20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮やイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%の中空粒子イソプロピルアルコール分散体を得た。
【0069】
10質量%の中空粒子イソプロピルアルコール分散体2000質量部に100質量部の3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、70℃で16時間撹拌することで、反応性基が導入された中空粒子分散体を得た。表面処理された中空粒子分散体をイソプロピルアルコール20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるようにイソプロピルアルコールを添加し、10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散体(中空粒子分散体A)を得た。
得られた中空粒子の透過型電子顕微鏡による平均粒子径は81nm、動的光散乱法によるイソプロピルアルコール中での分散粒子径は105nmで、中空率は40%であった。また、中空粒子のN/Cは0.03、Si/Cは0.02、M/Cは0.02であった。
【0070】
(中空粒子分散体Bの製造)
5Lのステンレスビーカーにイオン交換水3600質量部と反応性界面活性剤アクアロンAR-10(第一工業製薬社製)0.4質量部、アニオン変性ポリビニルアルコール ゴーセネックスL-3266(日本合成化学工業社製)0.02質量部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム8.0質量部、過硫酸カリウム9.5質量部を加え溶解させた。グリシジルメタクリレート168質量部と3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン32質量部、n-オクチルメルカプタン4.0質量部、トルエン200質量部の混合溶液をステンレスビーカーに加え、内部超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて10分間撹拌することでエマルジョンを作製し、攪拌機、温度計を備えた5Lの反応器に入れ、窒素置換して内部を窒素雰囲気としたのちに70℃まで昇温し、2時間重合反応を行うことでエポキシ基が残存した重合体粒子を得た。乳化重合にトルエンを添加していたため、エポキシ基が残存した重合体粒子はトルエンで膨潤されていた。
【0071】
次に、残存しているエポキシ基を重合させるために、エチレンジアミン100質量部を添加し、16時間80℃で重合を行った。重合体粒子中のエポキシ基が反応することで、重合体とトルエンが相分離し、中空粒子分散体を得た。中空粒子分散体4000質量部を50nmの細孔径を有するセラミックフィルターを用いてイオン交換水14000質量部でクロスフロー洗浄し、過剰なエチレンジアミンを除去した後に、固形分が10質量%となるように適宜濃縮やイオン交換水の添加を行い、10質量%の中空粒子水分散体を得た。
120質量部のスルホン酸基を有する界面活性剤ライポンLH-200(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)をイソプロピルアルコール2000質量部に溶解させた後に、10質量%の中空粒子水分散体2000質量部を加え、内部超音波ホモジナイザーを用いて30分間撹拌することで、表面処理された中空粒子分散体を得た。次に表面処理された中空粒子分散体をイソプロピルアルコール20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるように適宜濃縮やイソプロピルアルコールの添加を行い、10質量%の中空粒子イソプロピルアルコール分散体を得た。
【0072】
10質量%の中空粒子イソプロピルアルコール分散体2000質量部に200質量部の3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、70℃で16時間撹拌することで、反応性基が導入された中空粒子分散体を得た。表面処理された中空粒子分散体をイソプロピルアルコール20000質量部でクロスフロー洗浄し、固形分が10質量%となるようにイソプロピルアルコールを添加し、10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散体(中空粒子分散体B)を得た。
得られた中空粒子の透過型電子顕微鏡による平均粒子径は72nm、動的光散乱法によるイソプロピルアルコール中での分散粒子径は96nmで、中空率は40%であった。また、中空粒子のN/Cは0.04、Si/Cは0.02、M/Cは0.03であった。
【0073】
実施例1
中空粒子分散体Aを20.0質量部、フォスファノールRS-710を0.1質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学社製A-TMMT)を1.90質量部、光重合開始剤(イルガキュア127)を0.1質量部、メチルイソブチルケトンを40.0質量部混合し、中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が102nm、透過率が91%であり、中空粒子の分散性が優れた分散体であった。
また、硬化物のヘイズは0.6%、耐擦傷性試験後の表面はキズが僅かに認められる程度であり優れた光学特性、物理特性を有する硬化物であった。
実施例2
フォスファノールRS-710に代えてNACURE 5076を0.04質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを1.96質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が104nm、透過率が90%であり、中空粒子の分散性が優れた分散体であった。
また、硬化物のヘイズは0.7%、耐擦傷性試験後の表面はキズが僅かに認められる程度であり、優れた光学特性及び物理特性を有する硬化物であった。
【0074】
実施例3
フォスファノールに代えてBYKーW996を0.20質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを1.80質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が109nm、透過率が87%であり、中空粒子の分散性が優れた分散体であった。
また、硬化物のヘイズは0.7%、耐擦傷性試験後の表面はキズが僅かに認められる程度であり、優れた光学特性及び物理特性を有する硬化物であった。
実施例4
フォスファノールRS-710に代えてソルスパース 41000を0.20質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを1.80質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が110nm、透過率が87%であり、中空粒子の分散性が優れた分散体であった。
また、硬化物のヘイズは0.7%、耐擦傷性試験後の表面はキズが僅かに認められる程度であり、優れた光学特性及び物理特性を有する硬化物であった。
【0075】
実施例5
フォスファノールRS-710に代えてKAYAMER PM-21を0.40質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを1.60質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が105nm、透過率が88%であり、中空粒子の分散性が優れた分散体であった。
また、硬化物のヘイズは0.7%、耐擦傷性試験後の表面はキズがほとんど認められない程度であり、優れた光学特性及び物理特性を有する硬化物であった。
実施例6
フォスファノールRS-710に代えてSR9053を0.20質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを1.80質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が106nm、透過率が88%であり、中空粒子の分散性が優れた分散体であった。
また、硬化物のヘイズは0.7%、耐擦傷性試験後の表面はキズがほとんど認められない程度であり、優れた光学特性及び物理特性を有する硬化物であった。
実施例7
中空粒子分散体Bを20.0質量部、SR9053を0.20質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製A-TMM-3LM-N)を1.90質量部、光重合開始剤(イルガキュア127)を0.1質量部、メチルイソブチルケトンを20.0質量部、酢酸ブチルを20.0質量部混合し、中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が97nm、透過率が92%であり、中空粒子の分散性が優れた分散体であった。
また、硬化物のヘイズは0.4%、耐擦傷性試験後の表面はキズがほとんど認められない程度であり、優れた光学特性及び物理特性を有する硬化物であった。
【0076】
比較例1
フォスファノールRS-710に代えてエマルゲン123Pを使用したこと以外は実施例1と同様にして中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が121nm、透過率が80%であり、中空粒子の分散性が低い分散体であった。
また、硬化物のヘイズは1.1%、耐擦傷性試験後の表面はキズが多数認められる程度であり、物理特性の劣った硬化物であった。
比較例2
フォスファノールRS-710に代えてコータミン 86Wを使用したこと以外は実施例1と同様にして中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が259nm、透過率が59%であり、中空粒子の分散性が低い分散体であった。
また、硬化物のヘイズは6.2%、耐擦傷性試験後の表面が全体的に削られている程度であり、光学特性及び物理特性の劣った硬化物であった。
【0077】
比較例3
フォスファノールRS-710に代えてDISPERBYK-2164を0.20質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを1.80質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が233nm、透過率が64%であり、中空粒子の分散性が低い分散体であった。
また、硬化物のヘイズは5.4%、耐擦傷性試験後の表面が全体的に削られている程度であり、光学特性及び物理特性の劣った硬化物であった。
比較例4
フォスファノールRS-710に代えてライトエステルDMを0.20質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを1.80質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が332nm、透過率が54%であり、中空粒子の分散性が低い分散体であった。
また、硬化物のヘイズは8.2%、耐擦傷性試験後の表面が全体的に削られている程度であり、光学特性及び物理特性の劣った硬化物であった。
【0078】
比較例5
フォスファノールRS-710に代えてライトエステルMを0.40質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを1.60質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして中空粒子分散体を作製した。
得られた分散体は、分散粒子径が132nm、透過率が80%であり、中空粒子の分散性が低い分散体であった。
また、硬化物のヘイズは0.7%、耐擦傷性試験後の表面はキズが多数認められる程度であり、物理特性の劣った硬化物であった。
【0079】
【0080】
なお、表1に記載した各商品名の薬剤の入手先及び物性を下記する。
フォスファノールRS-710:東邦化学工業社製、リン酸基を有する界面活性剤、酸価:50-75mgKOH/g
NACURE 5076:キングインダストリーズ社製、スルホン酸基を有する界面活性剤、酸価:130-149mgKOH/g(不揮発分70%)
BYK-W996:ビッグケミー・ジャパン社製、リン酸基を有する分散剤、酸価:71mgKOH/g(不揮発分52%)
ソルスパース 41000:日本ルーブリゾール社製、リン酸基を有する分散剤、酸価:50±5mgKOH/g
KAYAMER PM-21:日本化薬社製、リン酸基を有するモノマー、酸価:200mgKOH/g以下
SR9053:サートマー社製、リン酸基を有するモノマー、酸価:120-180mgKOH/g
エマルゲン123P:花王社製、非イオン性の界面活性剤
コータミン 86W:花王社製、アミン塩型の界面活性剤(不揮発分28%)
DISPERBYK-2164:ビッグケミー・ジャパン社製、アミノ基を有する分散剤ライトエステルDM:共栄社化学社製、アミノ基を有するモノマー
ライトエステルM:共栄社化学社製、非イオン性のモノマー
【0081】
表1の実施例1~7と比較例1~5との比較により、小粒径で、耐擦傷性の高いフィルムを作製するのに適した中空粒子分散体を製造できることが分かった。
【0082】
実施例8(反射防止膜・反射防止膜付基材)
実施例1の中空粒子分散体20質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学社製NKエステルA-DPH)4質量部、光重合開始剤(BASF社製IRGACURE1173)0.20質量部を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて5分間強制撹拌し、コーティング剤を得た。コーティング剤0.5mlをスライドガラス(松浪硝子工業社製S1111)に滴下し、スピンコーター(共和理研社製、型式K-359SD1)で塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を、室温(約25℃)及び常圧下で乾燥させた。乾燥した塗膜を紫外線照射装置(JATEC社製J-Cure、型式JUC1500、引き速:0.4m/min、積算光量:2000mJ/cm2)に2回通して硬化させることで、ガラス基板上に反射防止膜が形成されている反射防止膜付基材を作製した。
【0083】
実施例9(光取出し膜・光取出し膜付基材)
実施例1の中空粒子分散体20質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学社製NKエステルA-DPH)4質量部、光重合開始剤(BASF社製IRGACURE1173)0.20質量部を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて5分間強制撹拌し、コーティング剤を得た。コーティング剤0.5mlをスライドガラス(松浪硝子工業社製S1111)に滴下し、スピンコーター(共和理研社製、型式K-359SD1)で塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を、室温(約25℃)及び常圧下で乾燥させた。乾燥した塗膜を紫外線照射装置(JATEC社製J-Cure、型式JUC1500、引き速:0.4m/min、積算光量:2000mJ/cm2)に2回通して硬化させることで、ガラス基板上に光取出し膜が形成されている光取出し膜付基材を作製した。
【0084】
実施例10(導光板インク・導光板)
実施例1の中空粒子分散体をメチルエチルケトンで3回洗浄し、10質量%の中空粒子メチルエチルケトン分散体を得た。10質量%の中空粒子メチルエチルケトン分散体45質量部、アクリル系樹脂(DIC社製アクリディックA-181、固形分45%)10質量部、ポリエーテルリン酸エステル系界面活性剤(日本ルーブリゾール社製ソルスパース41000)1.0質量部を混合し、光拡散性組成物(導光板インク)を得た。
5インチの透明アクリル板に前記光拡散性組成物をドットピッチ500μm、ドットの径50μmになるようにスクリーン印刷し、導光板を得た。
実施例11(低誘電率膜)
実施例1で作製した10質量%の表面処理された中空粒子イソプロピルアルコール分散液20質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学社製NKエステルA-DPH)4質量部、光重合開始剤(BASF社製IRGACURE1173)0.20質量部を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて5分間強制撹拌し、コーティング剤を得た。コーティング剤0.5mlをスライドガラス(松浪硝子工業社製S1111)に滴下し、スピンコーター(共和理研社製、型式K-359SD1)で塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を、室温(約25℃)及び常圧下で乾燥させた。乾燥した塗膜を紫外線照射装置(JATEC社製J-Cure、型式JUC1500、引き速:0.4m/min、積算光量:2000mJ/cm2)に2回通して硬化させることで、ガラス基板上に低誘電率膜を作製した。