(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/42 20060101AFI20221220BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20221220BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61M5/42 520
A61B5/022 100B
A61B5/022 400F
A61B5/02 310M
(21)【出願番号】P 2020509238
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2019013317
(87)【国際公開番号】W WO2019189441
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2018068192
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】杉原 郁
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】垂永 明彦
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-005199(JP,A)
【文献】特開2017-006184(JP,A)
【文献】特開平06-007309(JP,A)
【文献】実開平05-020709(JP,U)
【文献】特開2012-045156(JP,A)
【文献】米国特許第07736330(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/42
A61B 5/022
A61B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の血圧を皮膚表層側から検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部と所定の距離だけ離間して配置され、前記第1の検出部とは異なる位置で前記被検者の血圧を皮膚表層側から検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部の検出結果及び前記第2の検出部の検出結果を出力する出力部と、
前記第1の検出部と前記第2の検出部との間へ、前記被検者に穿刺される穿刺器具の針先を誘導するガイド部と、を有
し、
前記出力部は、血管走行と交差する方向の圧力分布を表示する表示部を有する、医療デバイス。
【請求項2】
前記出力部は、
前記表示部の中心位置を指示する指示部を有する
、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記第1の検出部及び前記第2の検出部は、圧力センサが配置された柔軟な支持体を有する、請求項1又は2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
内針と、前記内針を収容する外筒管と、を備えた針組立体をさらに有し、
前記内針の針先は、矩形形状を有する、請求項1~3のいずれか1項に医療デバイス。
【請求項5】
前記内針は、前記外筒管に挿入された状態で、前記外筒管の内面との間に血液流路を形成する凹部を有する、請求項4に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者の腕の血管に形成した穿刺部位を介して各種の医療用長尺体(例えば、イントロデューサー等の医療デバイス)を血管内に導入し、病変部位に対する処置や治療を行う手技が知られている。このような手技を行った場合、術者等は、穿刺部位から医療用長尺体を抜去する際に穿刺部位の止血を行う。
【0003】
穿刺部位の止血に使用される止血器具として、腕等の肢体に巻き付けるための帯体と、帯体を肢体に巻き付けた状態で固定する固定手段と、帯体に連結されており、流体を注入することにより拡張して、穿刺部位を圧迫する押圧部と、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人体の腕を走行する橈骨動脈は、手側を迂回する手掌動脈(例えば、スナッフボックス周辺の橈骨動脈やスナッフボックスよりも指先側を走行する遠位橈骨動脈等)と繋がっている。そのため、例えば、術者等は、手掌動脈に穿刺部位を形成することにより、腕側を走行している橈骨動脈へ医療用長尺体を挿入することが可能になる。また、患者は、穿刺部位が腕や手首ではなく手に形成されると、止血が行われている最中(穿刺部位に対して圧迫力を付与している最中)に腕を動かすことが可能になるため、身体の動作の自由度が増して、QOL(quality of life)が向上する。
【0006】
手掌動脈周辺には、腱や骨が集まっており、腱や骨を避けて穿刺を行う必要がある。しかし、腱や骨を避けて穿刺する際、穿刺位置の目安が無いと、正確な位置に穿刺を行うことができない。仮に、穿刺位置にずれ等が生じると、穿刺した際に血管の手前側だけでなく奥側も意図せずに穿刺してしまう可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、手掌動脈に対する穿刺位置を正確に位置決めすることを可能にする医療デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る医療デバイスは、被検者の血圧を皮膚表層側から検出する第1の検出部と、前記第1の検出部と所定の距離だけ離間して配置され、前記第1の検出部とは異なる位置で前記被検者の血圧を皮膚表層側から検出する第2の検出部と、前記第1の検出部の検出結果及び前記第2の検出部の検出結果を出力する出力部と、前記第1の検出部と前記第2の検出部との間へ、前記被検者に穿刺される穿刺器具の針先を誘導するガイド部と、を有し、前記出力部は、血管走行と交差する方向の圧力分布を表示する表示部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る医療デバイスによれば、出力部に第1の検出部の検出結果と第2の検出部の検出結果が出力される。また、手掌動脈への穿刺を行う際に、ガイド部により穿刺器具の針先を所望の位置へ誘導することによって、正確な位置に穿刺部位を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る医療デバイスを被検者の手に装着した様子を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る医療デバイスを示す概略斜視図である。
【
図3】
図2に示す医療デバイスと穿刺器具を用いて穿刺部位を形成する際の様子を示す図である。
【
図4】
図2に示す医療デバイスの出力部を示す図である。
【
図5】
図5(A)、
図5(B)は穿刺器具によって穿刺部位を形成する際の様子を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る針組立体を示す軸直角断面図である。
【
図7】体表面に形成された穿刺部位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本明細書の説明において、医療デバイス100が備える支持台41、42が並ぶ方向を「長さ方向X」とする。また、医療デバイス100が備える各出力部30A、30B及びガイド部40の幅方向を「幅方向Y」と記載する。また、長さ方向X及び幅方向Yと直交する高さ方向を「高さ方向Z」と記載する。
【0013】
(第1実施形態)
図1~
図7は、本発明の実施形態に係る医療デバイス100の説明に供する図である。
【0014】
医療デバイス100は、被検者(患者)の手Hの手の甲Hbを走行する手掌動脈(深掌動脈)Bの橈骨動脈(例えば、スナッフボックス周辺の橈骨動脈やスナッフボックスよりも指先側を走行する遠位橈骨動脈等)からカテーテルやイントロデューサー等の医療用長尺体を導入するにあたり、手の甲Hbの所望の位置に穿刺部位t1を形成するために使用される。なお、穿刺部位t1を形成する位置は、手Hを走行する手掌動脈Bに医療用長尺体を挿入可能な位置であれば特に限定されず、左手、右手、手の甲側、掌側等のいずれの部位であってもよい。
【0015】
本実施形態に係る医療デバイス100は、
図2に示すように、第1の検出部10、第2の検出部20、第1の出力部30A、第2の出力部30B、ガイド部40、及び針組立体(「穿刺器具」に相当する)50を有する。
【0016】
(第1の検出部、第2の検出部)
第1の検出部10及び第2の検出部20は、被検者の血圧を皮膚の表層側から検出する。第1の検出部10は、圧力センサ11と、支持体12と、を備える。圧力センサ11は、被検者の血圧をガイド部40の支持台41、42の幅方向Yにおいて一定の間隔で検出できるように構成している。
【0017】
支持体12は、圧力センサ11に隣接して配置されるとともに圧力センサ11よりも被検者の皮膚から離間して配置している。圧力センサ11は、例えば、公知のシート型の感圧式センサにより構成することが可能である。
【0018】
支持体12は、柔軟な材料で構成されることによって、被検者の装着部位に合わせて第1の検出部10を柔軟に変形可能に構成している。支持体12の材料としては、例えば、ポリウレタンやウレタン系エラストマー等を挙げることができる。
【0019】
第2の検出部20は、長さ方向Xにおいて第1の検出部10と所定の距離だけ離間して配置され、第1の検出部10と異なる位置で被検者の血圧を皮膚表層側から検出する。第2の検出部20は、
図2に示すように圧力センサ21及び支持体22を備える。圧力センサ21は第1の検出部10の圧力センサ11と同様であり、支持体22は第1の検出部10の支持体12と同様であるため、説明を省略する。
【0020】
(出力部)
図2に示すように、支持台41には第1の出力部30Aが配置されている。第1の出力部30Aは、第1の検出部10の検出結果を出力する。
【0021】
支持台42には第2の出力部30Bが配置されている。第2の出力部30Bは、第2の検出部20の検出結果を出力する。なお、第1の出力部30Aと第2の出力部30Bは実質的に同一の構成を有するため、第1の出力部30Aについて説明し、第2の出力部30Bについての説明は適宜省略する。
【0022】
第1の出力部30Aは、
図4に示すように、表示部31と、指示部32と、を備える。
【0023】
表示部31は、支持台41において第1の検出部10の検出結果として血管走行と交差する方向の圧力分布を視覚的に表示するように構成している。表示部31は、
図4に示すように第1の検出部10の圧力センサ11が検出した圧力の検出値を一例として数値のないヒストグラムにより表示する。表示部31は、ガイド部40を構成する支持台41の幅方向Yにおいて所定の間隔毎における圧力の検出結果を表示するように構成している。このように構成することによって手掌動脈Bが支持台41の幅方向Yにおけるどの位置に近接しているかを把握することができる。表示部31は、支持台41と同様に支持台42にも設けられる。なお、表示部31は、検出した圧力を数値、記号、文字、これらの組み合わせ等で表示するように構成してもよい。
【0024】
指示部32は、支持台41の幅方向Yにおいて表示部31の中心位置を表示するように構成している。指示部32は、
図4に示すように本実施形態において表示部31の下部において上向きの略三角形のマークにより表示される。
【0025】
第2の出力部30Bは、支持台42の幅方向Yにおいて所定の間隔毎における圧力の検出結果を表示する。また、第2の出力部30Bの指示部32は、支持台41の幅方向Yにおいて表示部31の中心位置を表示する。
【0026】
(ガイド部)
ガイド部40は、第1の検出部10と第2の検出部20との間(長さ方向Xにおける第1の検出部10と第2の検出部20との間の略中心位置)へ、被検者に穿刺される針組立体50の針先を誘導する。ガイド部40は、
図2に示すように支持台41、42と、棒状部材43、44と、を備える。
【0027】
支持台41は、高さ方向Zにおいて第1の検出部10の上部に取り付けられる。支持台41は、
図2に示すように針組立体50の針先を載置する凹状のガイド溝41aを備えるように構成している。第1の検出部10、第2の検出部20、第1の出力部30A、第2の出力部30Bによって被検者に対して医療デバイス100の位置合わせをした状態で、
図3に示すように針組立体50の針部をガイド溝41aに載置することで、穿刺対象となる手掌動脈Bを目視した状態で穿刺できる。また、ガイド溝41aには傾斜を設けることで、針組立体50の針部をガイド溝41aに載置した状態で水平面から例えば30度傾斜した状態とし、針先を穿刺に適した角度とすることができる。また、手掌動脈Bの走行方向に沿うように、かつ、手掌動脈Bの略中央を狙って穿刺することができる。
【0028】
支持台42は、第2の検出部20の上部に取り付けられる。支持台42は、支持台41から長さ方向Xに間隔を空けて配置することによって、針組立体50の針部の先端を各支持台41、42の間に誘導する。支持台41と支持台42との間の距離dは例えば、針組立体50を約30度で刺入するようにガイド溝41aが形成され、かつ、体表面から約2mmの深さで穿刺するようにする場合、5mm~10mmに設定することができる。
【0029】
棒状部材43、44は、
図2に示すように、長さ方向Xに間隔を空けて配置した支持台41、42を連結するように構成している。棒状部材43、44は、支持台41と支持台42の間に針組立体50の針先を誘導することが可能となるように、支持台41、42の幅方向Yに所定のスペースを空けて配置している。
【0030】
(針組立体)
針組立体50は、
図6に示すように、内針51と、外筒管52と、を備える。内針51及び外筒管52の先端は、
図6に示すように略矩形状に形成している。これにより、穿刺した際の傷口(穿刺部位t1の平面視の形状)を
図7に示すように手掌動脈Bの走行方向に沿うように延びた形状に形成することができる。血管は、一般的に伸縮性を備えるため、手掌動脈Bの走行方向に沿うように傷口を形成した場合においても、断面形状が略円形で形成された医療用長尺体を円滑に通過させることができる。また、内針51により形成された傷口は、医療用長尺体の抜去後には自然に閉じる方向に作用することが期待できる。また、上記のような穿刺部位t1の形成方法は、傷口を無理に押し広げないため、傷口を塞ぎ易くすることができる。
【0031】
内針51の外側面には、
図6に示すように、外筒管52に挿入された状態で外筒管52との間に血液流路を形成する凹部53a、53bが形成されている。本実施形態では、内針51の高さ方向(
図6の上下方向)の異なる2箇所の位置に凹部53a、53bを設けている。内針51と外筒管52を用いて穿刺を行うと、各凹部53a、53bに手掌動脈Bからの血液が毛細管現象によって流通する。各凹部53a、53bを内針51の高さ方向の異なる位置に配置しているため、術者は、いずれの凹部53、53bを介して血液が流れているかを確認することにより、針組立体50が手掌動脈Bに対してどの程度の深さまで穿刺を行ったかが把握できる。これによって、意図せずにダブルウォールパンクチャーとなるリスクを低減し、シングルウォールパンクチャー(手掌動脈Bの体表面から手前側の血管壁のみに対する穿刺)により手掌動脈Bを捉えることができる。
【0032】
なお、内針51の外表面には、内針51と皮膚との付着を防止するために、ナシジ加工やシボ加工を施してもよい。
【0033】
(使用例)
次に本実施形態に係る医療デバイス100の使用例について説明する。
【0034】
術者は、医療デバイス100を
図1に示すように手Hの手掌動脈B付近に載置し、第1の検出部10の検出結果を第1の出力部30Aに表示させ、第2の検出部20の検出結果を第2の出力部30Bに表示させる。
【0035】
次に、術者は、第1の出力部30Aが示す圧力分布と第2の出力部30Bが示す圧力分布とが略同一となるように、医療デバイス100の位置を調整する。この際、術者は、第1の検出部10の検出結果が出力された第1の出力部30Aに表示された圧力分布と、第2の検出部20検出結果が出力された第2の出力部30Bに表示された圧力分布とを目視により確認し、被検者の血管走行に沿うように医療デバイス100の向き等を調整する。
【0036】
術者は、上記の作業を終えた後、針組立体50を用いて穿刺を行う。この際、
図3に示すように手掌動脈Bへの刺入位置と体表面への刺入位置とは、長さ方向Xに位置が変わることを考慮して穿刺を行う。また、術者は、第1の出力部30Aが示す圧力分布と第2の出力部30Bが示す圧力分布を確認しながら、長さ方向Xにおける支持台41と支持台42との間の略中心位置に穿刺位置を設定する。
【0037】
穿刺の際には、
図6に示す針組立体50を用いて、
図7に示すように手掌動脈Bの走行方向に沿うような形状の傷口を形成する。
【0038】
針組立体50が手掌動脈Bに穿刺されると、針組立体50の凹部53の中でも穿刺時に下側に位置する凹部53aから毛細管現象によって血液が流通する。そこからさらに針先を進めると、穿刺時に上側に位置する凹部53bにも逆血が見られるようになる。これにより、外筒管52の先端が手掌動脈B内を確保したことが確認できる。術者は逆血を確認した後、外筒管52を残し、内針51を引き抜く。
【0039】
次に、イントロデューサーを手掌動脈Bに挿入する。血管壁には伸縮性があるため、手掌動脈Bに形成した傷口はイントロデューサーに合わせて円形に近い形になる。そのため、手掌動脈Bの壁面がさらに押し広げられることはないか、又はほとんどない状態となる。
【0040】
治療等の処置が終了した後、イントロデューサーを手掌動脈Bから抜去する。穿刺部位t1は手掌動脈Bの伸縮性によって自然に閉じる方向に作用することが期待できる。また、本実施形態に係る医療デバイス100を使用すれば、傷口は無理に押し広げられないため、組織の状態は比較的きれいな状態であり、傷口が塞がり易くなる。
【0041】
以上、説明したように本実施形態に係る医療デバイス100は、被検者の血圧を皮膚表層側から検出する第1の検出部10と、第1の検出部10と所定の距離だけ離間して配置され、第1の検出部10とは異なる位置で被検者の血圧を皮膚表層側から検出する第2の検出部20と、第1の検出部10の検出結果及び第2の検出部20の検出結果を出力する出力部30A、30Bと、第1の検出部10と第2の検出部20との間へ、被検者に穿刺される針組立体50の針先を誘導するガイド部40と、を有するように構成している。
【0042】
医療デバイス100は、出力部30A、30Bに第1の検出部10の検出結果と第2の検出部20の検出結果を出力させることができる。そして、術者は、手掌動脈Bへの穿刺を行う際に、ガイド部40により針組立体50の針先を所望の位置へ誘導することができる。そのため、術者は、正確な位置に穿刺部位t1を形成することが可能になる。また、穿刺針は通常、穿刺部位に対して傾いた角度から穿刺を行うため、体表における穿刺位置と血管における穿刺位置は上肢等の長手方向に幾分ずれる。さらに、手掌動脈から医療用長尺体を挿入する場合、手掌動脈周辺には腱等が複雑に接近しており、穿刺部位が腱等の下方に位置した場合、体表から止血部位への圧迫が不完全になる場合がある。これに対して、本実施形態に係る医療デバイス100を使用することによって、穿刺位置を正確に検出することで止血部位への圧迫を確実に行うことができる。
【0043】
また、出力部30A、30Bは、血管走行と交差する方向の圧力分布を表示する表示部31と、表示部31の中心位置を指示する指示部32と、を有するように構成している。そのため、針組立体50が血管走行に合わせて穿刺できるように医療デバイス100を被検者に対して位置合わせすることができる。
【0044】
また、第1の検出部10及び第2の検出部20は、圧力センサ11、21が配置された柔軟な支持体12、22を備えるように構成している。そのため、医療デバイス100を患者の手Hの体表面に沿わせるように載置することができる。
【0045】
また、医療デバイス100は、内針51と、内針51を収容する外筒管52と、を備えた針組立体50をさらに有する。内針51の針先は矩形形状を有するように構成している。このように構成することによって、針組立体50で穿刺部位t1を形成した際に傷口を無理に押し広げないようにでき、傷口を塞がり易くすることができる。
【0046】
また、内針51は、外筒管52に挿入された状態で、外筒管52との間に血液流路を形成する凹部53を有するように構成している。そのため、針組立体50を穿刺した際に凹部53から毛細管現象によって血液が流通することをもって針組立体50が手掌動脈Bに対してどの程度穿刺されたのかを推測することができる。これにより、ダブルウォールパンクチャーとなるリスクを低減するとともにシングルウォールパンクチャーでも手掌動脈Bを捉えることができる。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲に応じて種々の変更が可能である。上記では指示部32が表示部31の中心位置を指示すると説明した。しかし、医療デバイス100を被検者の血管走行に沿うように位置合わせできれば、指示部が示す位置は表示部の中心位置でなくてもよい。
【0048】
また、上記では指示部32を略三角形状のマークにて構成し、表示部31に表示された圧力分布と指示部32のマークとを合わせることで医療デバイス100の位置合わせを行うと説明した。しかし、医療デバイス100を被検者の手掌動脈Bに対して位置合わせできればこれに限定されず、上記以外にも圧力分布がガイド部40によって誘導される針先の予定穿刺位置にきたら、音等によって位置合わせされたことを使用者に通知するように構成してもよい。
【0049】
本出願は、2018年3月30日に出願された日本国特許出願第2018-068192号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0050】
100 医療デバイス、
10 第1の検出部、
11、21 圧力センサ、
12、22 支持体、
20 第2の検出部、
30A 第1の出力部(出力部)、
30B 第2の出力部(出力部)、
53a、53b 凹部、
40 ガイド部、
41a ガイド溝、
50 針組立体(穿刺器具)、
51 内針、
52 外筒管、
H 手、
Hb 手の甲、
B 手掌動脈、
t1 穿刺部位。