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特許7197567ハイドロゲル中の個別の生物学的単位を捕捉およびバーコード付与するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ハイドロゲル中の個別の生物学的単位を捕捉およびバーコード付与するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20221220BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20221220BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20221220BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20221220BHJP
   C12Q 1/6834 20180101ALI20221220BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20221220BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12Q1/02 ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6834 Z
C12Q1/6837 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020512098
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 IB2018000612
(87)【国際公開番号】W WO2018203141
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】62/502,180
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519392786
【氏名又は名称】スキピオ バイオサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】エーデルシュタイン,スチュアート ジェー.
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/118915(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/130704(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/200541(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/075265(WO,A1)
【文献】特表2016-533187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0376609(US,A1)
【文献】特表2017-506877(JP,A)
【文献】Acc. Chem. Res.,2016年12月28日,vol.50,p.22-31
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロゲル中の個別の生物学的単位を捕捉するための方法であって、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、バーコード単位の数が生物学的単位の数と等しいか生物学的単位の数よりも多い、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合させて、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)ハイドロゲルマトリックス中の前記生物学的単位/バーコード単位の複合体のそれぞれの中にある生物学的単位の核酸にバーコードを付与するステップと、
を含み、各バーコード単位が固有のバーコードを含む、方法。
【請求項2】
個別の生物学的単位における遺伝子発現を解析するための方法であって、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、バーコード単位の数が生物学的単位の数と等しいか生物学的単位の数よりも多く、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合させて、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位から核酸を放出させるステップと、
e)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位に由来する前記核酸にバーコードを付与するステップと、
f)各生物学的単位由来の核酸からcDNAライブラリーを合成するステップと、
g)各生物学的単位由来の前記cDNAライブラリーを増幅させるステップであって、各生物学的単位由来の前記cDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピーを、各生物学的単位由来の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)任意選択で、前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含む、方法。
【請求項3】
個別の生物学的単位における遺伝子型を解析するための方法であって、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、バーコード単位の数が生物学的単位の数と等しいか生物学的単位の数よりも多く、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合させて、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位からゲノムDNAを放出させるステップと、
e)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位に由来する前記ゲノムDNAにバーコードを付与するステップと、
f)任意選択で、各生物学的単位由来の核酸からDNAライブラリーを合成するステップと、
g)各生物学的単位由来の前記ゲノムDNAまたはDNAライブラリーを増幅させるステップであって、各生物学的単位由来の前記ゲノムDNAまたはDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピーを、各生物学的単位の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)任意選択で、前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含む、方法。
【請求項4】
個別の生物学的単位のハプロタイプを解析するための方法であって、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、バーコード単位の数が生物学的単位の数と等しいか生物学的単位の数よりも多く、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合させて、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)任意選択で、前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位から核酸を放出させるステップと、
e)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位由来の前記核酸にバーコードを付与するステップと、
f)任意選択で、各生物学的単位由来の核酸からDNAライブラリーを合成するステップと、
g)各生物学的単位由来の前記核酸またはDNAライブラリーを増幅させるステップであって、各生物学的単位由来の前記核酸またはDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピーを、各生物学的単位由来の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)任意選択で、前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含む、方法。
【請求項5】
個別の生物学的単位のエピゲノムを解析するための方法であって、
a)複数の細胞の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、バーコード単位の数が生物学的単位の数と等しいか生物学的単位の数よりも多く、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合させて、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位から、非ヌクレオソーム結合型DNAを放出させるステップと、
e)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位由来の前記非ヌクレオソーム結合型DNAにバーコードを付与するステップと、
f)任意選択で、各生物学的単位由来の非ヌクレオソーム結合型DNAからDNAライブラリーを合成するステップと、
g)各生物学的単位由来の前記非ヌクレオソーム結合型DNAまたはDNAライブラリーを増幅させるステップであって、各生物学的単位由来の前記非ヌクレオソーム結合型DNAまたはDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピーを、各生物学的単位由来の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)任意選択で、前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含む、方法。
【請求項6】
生物学的単位/バーコード単位の複合体の大部分が、生物学的単位とバーコード単位を1:1の比で含む、請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的単位が、担体に固定される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記バーコード単位が、担体に固定される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的単位または前記バーコード単位が、ハイドロゲル層にある担体に固定される、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
前記固有のバーコードが、各バーコード単位に関する複数のクローンコピーに存在する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記固有のバーコードが、核酸配列のバーコードを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記固有のバーコードが、核酸配列のプライマーをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸配列のプライマーが、ランダムな核酸配列のプライマーおよび/または特定の核酸配列のプライマーを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記生物学的単位への結合に関与する前記少なくとも1つの手段が、タンパク質、ペプチド、および/もしくはそれらのフラグメント;抗体および/もしくはそのフラグメント;核酸;炭水化物;ビタミンおよび/もしくはその誘導体;補酵素および/もしくはその誘導体;受容体リガンドおよび/もしくはその誘導体;ならびに/または疎水基を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記各バーコード単位が、ビーズからなる、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記バーコード付与のステップが、プライマー・テンプレートアニーリング、プライマー誘導型の伸長および/またはライゲーションにより、ハイドロゲルマトリックス中で実施される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記個別の生物学的単位が、細胞、細胞群、ウイルス、核、ミトコンドリア、葉緑体、生体高分子、エキソソーム、染色体、連結性が保存された転位DNAフラグメント、および/または核酸フラグメントを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞または細胞群が、in vitroの培養物中の細胞、幹細胞、腫瘍細胞、組織生検細胞、血液細胞、および組織切片の細胞を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロゲル中の個別の生物学的単位を捕捉およびバーコード付与するための方法に関する。特に本発明は、個別の生物学的単位の発現解析のための方法、および本発明の方法を実施するためのキットに関する。さらに本発明の方法は、単一細胞のトランスクリプトームのプロファイリング、ジェノタイピング、フェーズ化(phasing)、および/またはハプロタイピング(haplotyping)に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
次世代シーケンシング(NGS)解析を駆動するためには、3つのタスク:1)サンプルの調製(サンプルプレップ(sample prep))、2)シーケンシング、および3)バイオインフォマティクスが起こらなければならない。この3つの必要条件の1番目のサンプルプレップを、特に高スループット(HT)な反応の並列化およびスケールの効率性を可能にすることによって向上させるために、マイクロ流体学が用いられている。HTなマイクロ流体学を用いたサンプルプレップを火急に必要としている適用技術の1つとして、RNAシーケンシングによる単一細胞の遺伝子発現解析(単一細胞RNAseq)がある。この理由は、解析される細胞の数が、数百から数千の範囲である可能性があり、各ワークフローが、まず個別の反応チャンバーに単一の細胞を単離することにより開始するためである。よって、いずれかのマイクロ流体的なプラットフォームのHT並列化反応能が、これら細胞数の必要要件に合致する必要がある。
【0003】
単一細胞RNAseq解析に関して商業化されている第1のマイクロ流体的なプラットフォームは、PDMS(ポリジメチルシロキサン)チップ技術に基づくものであった。入手可能なバージョンのプラットフォームは、数十から数百の細胞を処理することができる。懸濁液由来の細胞は、ナノリットル(nL)の容量のPDMSチャンバーに単離され、その後、バルブの開口および適切な溶解試薬の入口へのアクセスを介した溶解試薬の使用により溶解される。mRNAの逆転写、cDNAへのアダプター配列の付加、およびPCRを、連続して達成するために、バルブの開口および特定の試薬の入口の選択が、その後の各ステップで行われる。次に、単一細胞産物由来のアンプリコンを、チップから回収し、バルクで処理し、シーケンシングのサンプルプレップを完了する。PDMSの構造を使用するプラットフォームは、費用のかかる多層のPDMSチップ、ならびにこれらチップを作動させるための洗練された圧力および熱の制御の計測手段を必要とするため、限定されている。さらに、反応の数は、製造され得る最小のPDMSの特性により決定される。合理的な大きさのチップで、所定の時間に1000個以下の細胞を処理できるこの手段は、生体サンプルの大部分にとっては十分ではない。さらにスループットが適切な場合であっても、チップおよび器具の観点の両方からみて、PDMSの基盤は、非常に費用がかかる。
【0004】
油滴中水型のエマルジョンは、別の形態のマイクロ流体学である。PDMSベースの技術と比較すると、液滴は、反応の数を有意に増やす利点がある。スループットは、エマルジョンの体積によってのみ限定され、この数は、液滴の大きさの減少に比例して増大する。各ビーズに固有のクローンオリゴ(clonal oligo)でコーティングされたビーズをカプセル化することが、液滴反応の並列した分子のコード化を可能にすることが発見された。たとえば、遺伝子発現の適用空間において、液滴への細胞溶解の後に、ビーズオリゴは、mRNAに結合し、このプロセスにおいて、ビーズのバーコードとしても知られている一般的なビーズ分子タグ(bead molecular tag)で単一の細胞のトランスクリプトームをコードする。シーケンシング後に、同じバーコードを有する配列を、まとめてグループ分けすることができ、これによって、個々の反応チャンバーまたは液滴におけるビーズおよび細胞の以前のカップリングを効率的に再構成し、単一細胞の解析を可能にする。分子生物学のステップは、様々な形態の液滴コード化技術のプラットフォームによって変動する。Drop-SEQでは、液滴でのビーズオリゴへのmRNAの結合後に、逆転写およびその後のサンプル調製のステップが、崩壊したエマルジョンに関するバルクで行われる。他の市販のプラットフォームでは、逆転写が液滴で起こり、ここでは最終的なサンプル調製のステップはバルクで行われる。スループットのボトルネックを除去した後に、液滴は、他の有意な欠点を有する。第1に、液滴およびそれらの単分散の形態は、溶解することが困難な細胞(植物細胞、特定の細菌、特にグラム陽性細菌、カビ、胞子、酵母、マイコバクテリアなど)を溶解するため、核へのアクセスするため、および多くの重要な分子生物学のステップを行うために使用される界面活性剤のレベルと適合しない。第2に、複数のステップの分子生物学の反応を行うことは、液滴では非常に困難である。たとえば液滴の混合またはpico-injectionにより可能性はあるが、複数のステップの液滴のワークフローは、複雑さおよびマイクロ流体の設定の費用を著しく増大させる。第3に、液滴のプラットフォームは、高いグレードの油、その特性が産業規模で製造することが困難である洗練されたチップ、ならびにこれらチップを介した正確な流量制御を調整および行うための器具を必要とする。液滴のプラットフォームに必要な3つの要素の全て、すなわち油、チップ、および器具は、製造および技術サポートに重荷を負わせ、かつ重要なことに、エンドユーザに対する費用を増大させることにより、幅広い液滴技術の採用を限定している。
【0005】
本発明は、既存の技術の欠点を排除するために設計されている。驚くべきことに、実際に本発明者らは、数千超の細胞を処理できる点における液滴のプラットフォームの鍵となる利点を保ちつつ、PDMSチップまたは液滴を必要としない単一細胞遺伝子発現解析に関する新規の方法を開発した。この新規の技術はまた、ハイドロゲルのプラットフォームの使用に基づき、液滴の技術に関連する鍵となる3つの問題をも解決している。第1に、いずれの界面活性剤のレベルもが、ハイドロゲルのプラットフォームにより担持され、いずれの細胞または核を溶解する可能性をもたらし、鍵となる生化学および分子生物学の反応を支援する。第2に、可溶性の試薬がハイドロゲルを介して反応器の空間に容易にアクセスできるため、複数のステップの反応を容易に行うことができる。その後の反応は、単純に、ハイドロゲルと接触した大部分の溶液を交換することにより行われる。第3に、費用のかかる油、チップ、および/または液滴の作製器具を必要としない。自動化のため、ハイドロゲル反応器のプラットフォームを管理するための器具が使用される場合があるが、必須ではない。
【0006】
PDMSおよび液滴の技術の限定およびハイドロゲル反応器のプラットフォームの改善は、単一細胞の遺伝子発現の分野に限定されてはいない。これらは、基質が、フェーズ化およびゲノム構造の適用技術における基質として使用される単一細胞のゲノムおよび長いネイキッドDNA分子などの複数のプライマー結合部位を有するいずれの応用にも当てはまる。分子生物学の反応は、基質の同定およびサンプルプレップ法の出力の必要条件により変動する。しかしながら、ハイドロゲル中の生物学的単位を捕捉およびバーコード付与するための基本的な方法は、変化しないままである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ハイドロゲル中の個別の生物学的単位を捕捉するための方法であって、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合させて、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)ハイドロゲルマトリックス中の前記生物学的単位/バーコード単位の複合体のそれぞれの中にある生物学的単位の核酸にバーコードを付与するステップと
を含む、方法に関する。
【0008】
一実施形態では、各バーコード単位は、固有のバーコードを含む。
【0009】
さらに本発明は、個別の生物学的単位における遺伝子発現を解析するための方法であって、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合させて、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位から核酸を放出させるステップと、
e)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位に由来する核酸にバーコードを付与するステップと、
f)前記各生物学的単位由来の核酸からcDNAライブラリーを合成するステップと、
g)各生物学的単位由来の前記cDNAライブラリーを増幅させるステップであって、各生物学的単位由来の前記cDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピー(clonal copies)を、各生物学的単位由来の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)任意選択で、前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含む、方法に関する。
【0010】
さらに本発明は、個別の生物学的単位における遺伝子型を解析するための方法であって、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合させて、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位からゲノムDNAを放出させるステップと、
e)ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位に由来する前記ゲノムDNAにバーコードを付与するステップと、
f)任意選択で、各生物学的単位由来の核酸からDNAライブラリーを合成するステップと、
g)各生物学的単位由来の前記ゲノムDNAまたはDNAライブラリーを増幅させるステップであって、各生物学的単位由来の前記ゲノムDNAまたはDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピーを、各生物学的単位の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)任意選択で、前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含む、方法に関する。
【0011】
さらに本発明は、個別の生物学的単位のハプロタイプを解析するための方法であって、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合させて、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)任意選択で、前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位から核酸を放出させるステップと、
e)ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位由来の前記核酸にバーコードを付与するステップと、
f)任意選択で、各生物学的単位由来の核酸からDNAライブラリーを合成するステップと、
g)各生物学的単位由来の前記核酸またはDNAライブラリーを増幅させるステップであって、各生物学的単位由来の前記核酸またはDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピーを、各生物学的単位由来の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)任意選択で、前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含む、方法に関する。
【0012】
さらに本発明は、個別の生物学的単位のエピゲノムを解析するための方法であって、
a)複数の細胞の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合させて、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位から、非ヌクレオソーム結合型DNAを放出させるステップと、
e)ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位由来の前記非ヌクレオソーム結合型DNAにバーコードを付与するステップと、
f)任意選択で、各生物学的単位由来の非ヌクレオソーム結合型DNAからDNAライブラリーを合成するステップと、
g)各生物学的単位由来の前記非ヌクレオソーム結合型DNAまたはDNAライブラリーを増幅させるステップであって、各生物学的単位由来の前記非ヌクレオソーム結合型DNAまたはDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピーを、各生物学的単位由来の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)任意選択で、前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含む、方法に関する。
【0013】
一実施形態では、生物学的単位を、担体に固定する。一実施形態では、バーコード単位を、担体に固定する。
【0014】
一実施形態では、生物学的単位を、ハイドロゲル層にある担体に固定する。一実施形態では、バーコード単位を、ハイドロゲル層にある担体に固定する。
【0015】
一実施形態では、固有のバーコードは、各バーコード単位に関する複数のクローンコピーに存在する。
【0016】
一実施形態では、固有のバーコードは、核酸配列のバーコードを含む。
【0017】
一実施形態では、固有のバーコードは、核酸配列のプライマーを含む。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、ランダムな核酸配列のプライマーを含む。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、特定の核酸配列のプライマーを含む。
【0018】
一実施形態では、バーコード単位は、生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む。一実施形態では、生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段は、タンパク質、ペプチド、および/もしくはそれらのフラグメント;抗体および/もしくはそのフラグメント;核酸;炭水化物;ビタミンおよび/もしくはその誘導体;補酵素および/もしくはその誘導体;受容体リガンドおよび/もしくはその誘導体;ならびに/または疎水基を含む。
【0019】
一実施形態では、各バーコード単位は、ビーズからなる。
【0020】
一実施形態では、バーコード付与のステップは、プライマー・テンプレートアニーリング(primer template annealing)により、ハイドロゲルマトリックス中で行われる。一実施形態では、バーコード付与のステップは、プライマー誘導型の伸長(primer-directed extension)により、ハイドロゲルマトリックス中で行われる。一実施形態では、バーコード付与のステップは、ライゲーションにより、ハイドロゲルマトリックス中で行われる。
【0021】
一実施形態では、個別の生物学的単位は、細胞、細胞群、ウイルス、核、ミトコンドリア、葉緑体、生体高分子、エキソソーム、染色体、連結性が保存された転位DNAフラグメント、および/または核酸フラグメントを含む。
【0022】
一実施形態では、細胞または細胞群は、in vitroの培養物中の細胞、幹細胞、腫瘍細胞、組織生検細胞、血液細胞、および組織切片の細胞を含む。
【0023】
さらに本発明は、
複数のバーコード単位であって、生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含み、各バーコード単位が、固有のバーコードを含む、複数のバーコード単位と、
ハイドロゲル溶液および/またはハイドロゲル溶液を調製するためのハイドロゲルモノマーと、
任意選択で、生物学的単位および/またはバーコード単位を結合するための担体と、
生化学アッセイおよび分子生物学アッセイのための試薬および溶液と、
使用説明書と
を含む、キットに関する。
【0024】
さらに本発明は、
複数のあらかじめ結合させたバーコード単位を含む担体であって、前記バーコード単位が、生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含み、各バーコード単位が、固有のバーコードを含む、担体と、
ハイドロゲル溶液および/またはハイドロゲル溶液を調製するためのハイドロゲルモノマーと、
生化学アッセイおよび分子生物学アッセイのための試薬および溶液と、
使用説明書と
を含む、キットに関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
【0026】
用語「約(「about」または「approximately」)」は、当業者により決定される場合に、特定の値についての許容可能な誤差の範囲内を意味し得、どのように値が測定または決定されるか、すなわち測定システムの限界に部分的に依存している。たとえば、「約」は、当該分野の実務ごとに、1以内または1超の標準偏差を意味し得る。あるいは、ある数字の前の「約」は、上記数字の値の±10%を意味する。あるいは、特に生体の系またはプロセスに関しては、この用語は、ある値の桁の範囲内、5倍の範囲内、より好ましくは2倍の範囲内を意味し得る。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、他の意味が記載されていない限り、特定の値に関して容認可能な誤差の範囲内を意味する用語「約」が想定されるべきである。
【0027】
用語「増幅」は、所望のテンプレート配列の複数のコピー、すなわち少なくとも2つのコピーを産生させるプロセスを表す。核酸を増幅させるための技術は当業者によく知られており、特定の増幅方法および無作為な増幅方法を含む。
【0028】
用語「A鎖形成(A-tailing)」は、平滑末端化した二本鎖のDNA分子の3’末端に、鋳型形成されていないAヌクレオチドを付加するための酵素を用いる方法を表す。
【0029】
用語「バーコード」は、個別の生物学的単位を独自に同定するための、固有の識別子として使用できる分子のパターンを表す。用語「バーコード」はさらに、たとえば個別の生物学的単位から抽出されるかまたはこれに由来する核酸配列などのサンプルの中の解析物の供給源または起源を同定するために使用される分子のパターンを表す。
【0030】
用語「バーコード単位」は、生物学的単位が結合または固定され得る同定可能な基質またはマトリックスを表す。バーコード単位は、強固な固体または半固体であり得る。
【0031】
用語「バーコードを付与する」は、プライマー・テンプレートアニーリング、プライマー依存性のDNA合成、および/またはライゲーションを介した、個別のバーコード単位のバーコード、好ましくは核酸のバーコードの、生物学的単位のテンプレートの核酸配列への結合を表す。
【0032】
用語「ビーズ」は、球状であり得るか(たとえばマイクロスフィア)または不規則な形状を有し得る個別の粒子を表す。ビーズは、直径が約0.1μmほどの小ささであってもよく、または直径約数ミリメートル程度の大きさであってもよい。
【0033】
用語「生物学的単位」は、個別の生体構造、および、生体構造の一部、構成要素、または組み合わせを表す。生物学的単位の例として、限定するものではないが、細胞、細胞群、ウイルス、核、ミトコンドリア、または葉緑体などのオルガネラ、エキソソームなどの高分子複合体、生体高分子、たとえば染色体、核酸フラグメント、連結性が保存された転位DNA(CPT-DNA)フラグメント、タンパク質、またはペプチドが挙げられる。
【0034】
用語「炭水化物」は、一般式Cx(HO)yを有するいずれかのクラスの有機化合物を表す。炭水化物として、糖、デンプン、セルロース、およびガムが挙げられる。炭水化物は、単糖、二糖、または多糖であり得る。炭水化物は、天然に存在するものであってもよく、または合成されたものであっってもよい。
【0035】
単糖は、単鎖または単環構造を有するモノマーまたは単純な糖である。単糖は、特にアルドース、ケトース、ピラノース、フラノース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、およびヘプトースなど、自身の構造およびその環または鎖の炭素原子の数によりさらに分類することができる。単糖の例として、限定するものではないが、N-アセチルグルコサミン、アロース、アルトロース、アラビノース、デオキシリボース、ジヒドロキシアセトン、エリトロース、フルクトース、フコース、α-L-フコピラノース、ガラクトース、β-D-ガラクトピラノース、ガラクツロン酸、グルコース(ブドウ糖)、グルクロン酸、グリセルアルデヒド、グロース、イドース、リキソース、マンノース、α-D-マンノピラノース、マンヌロン酸、ノイラミン酸、プシコース、ラムノース、リボース、リブロース、ソルボース、タガトース、トレオース、キシロース、およびキシルロースが挙げられる。
【0036】
二糖は、グリコシド結合により結合した2つの単糖から形成されている。二糖の例として、限定するものではないが、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトース、ラクトース、ラクツロース、ラミナリビオース、マルトース、マンノビオース、メリビオース、ニゲロース、ルチノース、スクロース、トレハロース、およびキシロビオースが挙げられる。
【0037】
多糖は、グリコシド結合により結合した2つ以上の単糖から形成されたポリマーである。3~10個の単糖から形成された多糖は、多くの場合オリゴ糖と呼ばれる。多糖の例として、限定するものではないが、アガロース、アルギン酸塩、アミロペクチン、アミロース、カラギーナン(carageenan)、セルロース、キチン、キトヘキサノース(chitohexanose)、キトサン、コンドロイチン硫酸、カードラン、デルマタンスルファート、デキストラン、デキストリン、エマルサン(emulsan)、フルセララン、ガラクトマンナン、グルコマンナン、ゲランガム、グルコサミン、グリコーゲン、グリコサミノグリカン、グアーガム、アラビアゴム、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、脱アシル化ヒアルロン酸、イヌリン、イソマルツロース、カラヤゴム、ケラタン硫酸、ラミナラン、ローカストビーンガム、ムラミン酸、ペクチン酸、ペクチン、プルラン、プスツラン、ラムザンガム、シゾフィラン、スクレログルカン、スタキオース、デンプン、トラガントガム(tragacant gum)、ウェランガム、キサンタン、およびキサンタンガムが挙げられる。
【0038】
本明細書中使用される場合、用語「炭水化物」はまた、たとえばタンパク質および脂質などの他の化学種と共有結合した炭水化物である「複合糖質」をも表す。複合糖質の例として、限定するものではないが、糖脂質、グリコペプチド、糖タンパク質、リポ多糖、およびペプチドグリカンが挙げられる。
【0039】
用語「cDNAライブラリー」は、mRNAから逆転写した相補的DNAから構成されたライブラリーを表す。
【0040】
用語「細胞」および「細胞群」は、限定するものではないが、in vitroの培養物中の細胞;胚性幹細胞、成体幹細胞、がん幹細胞、人工多能性幹細胞、または誘導性幹細胞などの幹細胞;新生細胞などの腫瘍細胞;組織生検細胞;赤血球、白血球、マスト細胞、マクロファージ、血小板、またはそれらの前駆細胞などの血液細胞;および組織切片の細胞が挙げられる。
【0041】
用語「クローンコピー」は、単一のバーコードの同一コピーの集合を表す。
【0042】
用語「コーティングする(coat)」および「コーティング(coating)」は、基質、たとえば担体および/またはバーコード単位の被覆、修飾、または官能基付与を表す。
【0043】
用語「補酵素」は、酵素反応中に化学構造を変化させ、反応基質に原子または電子などの機能的な要素を送達することにより、酵素反応を支援する因子である、アポ酵素に結合する非タンパク質要素を表す。また「補酵素」は、「補因子」または「ヘルパー酵素」とも呼ばれ得る。
【0044】
補酵素の例として、限定するものではないが、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、NADH、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、NADPH、アデノシン三リン酸(ATP)、ホスホアデニル硫酸(PAPS)、ウリジン二リン酸(UDP)、シチジン二リン酸(CDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、イノシン三リン酸(ITP)、チアミンピロリン酸(TPP)、フラビンモノヌクレオチド(FMM)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、補酵素A(CoA)、ビオサイチン、テトラヒドロ葉酸、補酵素B12、リポイルリシン、1,1-シス-レチナール、および1,2,5-ジヒドロキシコレカルシフェロールが挙げられる。
【0045】
用語「補完する(complement)」または「相補的な(complementary)」は、水素結合による別のポリヌクレオチド配列との塩基の対形成を形成できるポリヌクレオチド配列を表す。たとえば、グアニン(G)は、シトシン(C)の相補的な塩基であり、アデニン(A)は、チミン(T)およびウラシル(U)の相補的な塩基である。
【0046】
用語「連結性」は、共有した情報に基づく2つ以上のDNAフラグメント間の空間的な関係を表す。共有される情報の態様は、隣接した区画の距離空間的な関係に関するものであり得る。その後、これら関係に関する情報は、DNAフラグメントに由来する配列の読み取りの階層的な構築またはマッピングを促進する。この連結性の情報は、このような構築またはマッピングの効率および正確性を向上させる。この理由は、従来のショットガンシーケンシングに関連して使用される従来の構築またはマッピングの方法が、個別の配列の読み取りが派生する2つ以上のDNAフラグメント間の空間的な関係に関連する場合の、個別の配列の読み取りの相対的なゲノムの起源または座標(coordinate)を考慮していないためである。
【0047】
用語「所望のテンプレート配列のコピー」は、必ずしもテンプレート配列との完全な配列の相補性または同一性を意味するものではない。コピーは、たとえば、デオキシイノシンなどのヌクレオチド類縁体、意図的な配列の交代、および/または増幅中に起こる配列のエラーを含み得る。一実施形態では、所望の配列のコピーは、テンプレート配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%同一である。
【0048】
用語「界面活性剤」は、親油性および親水性(すなわち両親媒性)の特徴を有する分子を表す。界面活性剤は、界面活性物質の電荷に応じて、4つの広いグループに分類される:
(1)陰イオン性界面活性剤は、負のイオン電荷を有する界面活性剤を表す。陰イオン性界面活性剤の例として、限定するものではないが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、N-ラウリルサルコシン(サルコシル)、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、およびドデシル硫酸リチウム(LDS)が挙げられる。
(2)陽イオン性界面活性剤は、正のイオン電荷を有する界面活性剤を表す。陽イオン性界面活性剤の例として、限定するものではないが、四級アンモニウム塩、アミド結合を有するアミン、ポリオキシエチレンアルキル、および脂環式アミン、N,N,N’,N’[4]置換型エチレンジアミン、2-アルキル 1-ヒドロキシエチル 2 イミダゾリンエトキシル化アミン、およびアルキルアンモニウム塩が挙げられる。
(3)非イオン性界面活性剤は、いずれのイオン基も有さない界面活性剤を表す。非イオン性界面活性剤の例として、限定するものではないが、ポリソルベート、オクチルフェノールエトキシレート、グルカミン、Lubrol、Brij、Nonidet、ポロクサマー、Genapol、およびIgepalが挙げられる。
ポリソルベートの例として、限定するものではないが、ポリソルベート20(Tween 20)、ポリソルベート40(Tween 40)、ポリソルベート60(Tween 60)、ポリソルベート65(Tween 65)、ポリソルベート80(Tween 80)、およびポリソルベート85(Tween 85)が挙げられる。
オクチルフェノールエトキシレートの例として、限定するものではないが、Triton X-15、Triton X-35、Triton X-45、Triton X-100、Triton X-102、Triton X-114、Triton X-165(70%)、Triton X-305(70%)、Triton X-405(70%)、およびTriton X-705(70%)が挙げられる。
グルカミンの例として、限定するものではないが、N-オクタノイル-N-メチルグルカミン(MEGA-8)、N-ノナノイル-N-メチルグルカミン(MEGA-9)、およびN-デカノイル-N-メチルグルカミン(MEGA-10)が挙げられる。
Lubrolの例として、限定するものではないが、Lubrol WX、Lubrol PX、Lubrol 12A9、Lubrol 17A10、Lubrol 17A17、Lubrol N13、およびLubrol Gが挙げられる。
Brijの例として、限定するものではないが、Brij 35、Brij 58、Brij 93、Brij 97、Brij C2、Brij S2、Brij L4、Brij C10、Brij O10、Brij S10、Brij O20、Brij S20、Brij L23、およびBrij S100が挙げられる。
Nonidetの例として、限定するものではないが、Nonidet P40が挙げられる。
ポロクサマーの例として、限定するものではないが、ポロクサマー124、ポロクサマー181、ポロクサマー182、ポロクサマー184、ポロクサマー188(Pluronic F68)、ポロクサマー331、ポロクサマー407(Pluronic F127)が挙げられる。
Genapolの例として、限定するものではないが、Genapol X-080、Genapol X-100、およびGenapol C-100が挙げられる。
Igepalの例として、限定するものではないが、Igepal CA-210、Igepal CA-520、Igepal CA-630、Igepal CA-720、Igepal CO-520、Igepal CO-630、Igepal CO-720、Igepal CO-890、およびIgepal DM-970が挙げられる。
(4)双性イオン界面活性剤は、イオン基を有するが、正味の電荷を有さない界面活性剤を表す。双性イオン界面活性剤の例として、限定するものではないが、アミドスルホベタイン、アルキルベタイン、およびアンモニオプロパンスルホナート、たとえばアミドスルホベタイン-14、アミドスルホベタイン-16、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホナート(CHAPSO)、3-(4-ヘプチル)フェニル-3-ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニオプロパンスルホナート(C7BzO)、EMPIGEN(登録商標)BB、3-(N,N-ジメチルオクチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩、3-(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩、3-(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩、3-(N,N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩、3-(N,N-ジメチルパルミチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩、3-(N,N-ジメチルオクタデシルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩が挙げられる。
【0049】
用語「エピゲノム」は、細胞のDNAおよび/またはヒストンタンパク質に対する化学的変化の全てを表し、遺伝子発現の制御、発達、分化、および転移因子の抑制に寄与している。
【0050】
用語「ゲノム構造」は、染色体に沿って配置されている遺伝子単位(座位、遺伝子など)の順序、数、および存在を表す。
【0051】
用語「ハプロタイプ」は、単一の親からまとまって遺伝した単一の染色体上にある異なる座位由来の遺伝子のグループを表す。ハプロタイプの情報は、同じ(シス)または対立遺伝子(トランス)のDNA鎖上の遺伝子バリアントの潜在的な機能的効果の理解に寄与している。
【0052】
用語「ハイドロゲル」は、物理的または化学的な架橋を伴う、親水性であり高含水性の、ポリマーのネットワークを表す。通常ハイドロゲルは、特に架橋の度合いに応じて、2つの状態:ゾル状態およびゲル状態で、見いだされる。ゾル状態では、ハイドロゲルは液体としてふるまい、ゲル状態では、ハイドロゲルは、流動を呈さない。当業者にはっきりと明らかであるように、ハイドロゲルは、ゾル状態ですでにポリマーであり得るが、「ハイドロゲルを重合化すること」との文言は、ゾルからゲルの移行を達成するために必要とされる重合化および/または架橋を指定するように、本明細書中で使用される。
【0053】
用語「ハイドロゲルマトリックス」は、ゲル状態、すなわち、本明細書中さらに開示されるように、本発明の目的にとって望ましい多孔度を達成する架橋したポリマーのネットワーク状である、ハイドロゲルの物理的な構造を表す。
【0054】
用語「同一性」は、2つ以上の核酸配列の配列間の関係に使用される場合、2つ以上のヌクレオチド残基の鎖間の一致数により決定される、核酸間の配列の関連性の度合いを表す。「同一性」は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)により提示される、ギャップアライメント(存在する場合)を伴う2つ以上の配列のうちの小さい方に合わせた配列間の同一である一致のパーセントを測定する。関連する核酸配列の同一性は、既知の方法によって容易に計算できる。このような方法として、限定するものではないが、Lesk, Arthur M. (1988), “Computational molecular biology”, New York, NY:Oxford University Press;Smith, Douglas W. (1993), “Biocomputing: informatics and genome projects”, New York, NY:Academic Press;Griffin, Annette M., and Hugh G. Griffin (1994), “Computer analysis of sequence data, part 1”, Totowa, NJ: Humana;von Heinje, Gunnar (1987), “Sequence analysis in molecular biology:treasure trove or trivial pursuit”, Academic Press;Gribskov, Michael, and John Devereux (1991), “Sequence analysis primer”, New York, NY:M. Stockton Press;Carillo et al., 1988. SIAM J. Applied Math. 48:1073に記載されるものが挙げられる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間に最大の一致を提供するように設計されている。同一性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムで記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラム法として、GAP(Devereux et al., 1984. Nucl Acid Res. 2:387;Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)、BLASTN、およびFASTA(Altschul et al., 1990. J Mol Biol. 215:403-410)を含むGCGプログラムパッケージが挙げられる。BLASTXプログラムは、国立生物工学情報センター(NCBI)および他の供給源(BLASTマニュアル;Altschul et al. NCB/NLM/NIH Bethesda, Md. 20894;Altschul et al., 1990. J Mol Biol. 215:403-410)から、公的に入手可能である。よく知られているSmith Watermanアルゴリズムもまた、同一性を決定するために使用されてもよい。
【0055】
用語「キット」および「キットオブパーツ」は、輸送および保存を可能にするためにパッケージングされている、本発明に係る方法を行うために必要な異なる試薬を含むいずれかの製造物品(たとえばパッケージまたは少なくとも1つの容器)を表す。用語「キット」および「キットオブパーツ」は、個別の使用が意図されているが、互いに機能的に関連している、物理的に別々の構成要素の実体を包有すべきである。キットは、本発明の方法を行うための単位として、奨励、配布、または販売され得る。さらに、キットの試薬のいずれかまたは全てが、密閉された無菌性の容器などの、試薬を外部環境から保護する容器の中に提供され得る。またキットは、キットおよびその使用方法を説明する添付文書を含み得る。
【0056】
用語「ライゲーション」は、共有結合でDNA分子をまとめて結合するプロセスを表す。たとえばDNAのライゲーションは、1つのヌクレオチドの3’ヒドロキシル基と別のヌクレオチドの5’リン酸基との間にホスホジエステル結合を作製することを含む。ライゲーションは、好ましくは、リガーゼ酵素の存在下にて、約4~約37℃の範囲の温度で行われる。適切なリガーゼの例として、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)のリガーゼ、テルムス・アクウァーティクス(Thermus acquaticus)のリガーゼ、大腸菌のリガーゼ、T4リガーゼ、およびパイロコッカスのリガーゼが挙げられる。
【0057】
用語「ライセート」は、生物学的単位の溶解手法を受けた後の、液体または固体の物質の集合を表す。
【0058】
用語「溶解(lysis)」または「溶解する(lyse)」は、他の場合では接近できない物質へのアクセスを可能にするための、生物学的単位の崩壊を表す。生物学的単位が細胞である場合、溶解は、細胞の細胞膜を破壊すること、細胞膜の孔を介した細胞内への試薬の伝達を可能にすること、および/または細胞の中身の波及をもたらすことを表す。溶解方法は、当業者によく知られており、限定するものではないが、タンパク質分解性の溶解、化学的な溶解、熱的溶解、機械的溶解、および浸透圧性の溶解を含む。
【0059】
用語「核酸配列のプライマー」または「プライマー」は、適切な条件、たとえば適切なバッファーおよび適切な温度における、ヌクレオシド三リン酸、およびDNAもしくはRNAのポリメラーゼまたは逆転写酵素などの重合化のための酵素の存在下で、核酸とハイブリダイゼーションまたはアニーリングでき、かつヌクレオチドの重合化の開始部位として機能できるオリゴヌクレオチドを表す。
【0060】
用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドのポリマー、全般的にヌクレオチドの一本鎖のポリマーを表す。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、2~500ヌクレオチド、好ましくは10~150ヌクレオチド、好ましくは20~100ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、合成されたものであってもよく、または酵素により産生されてもよい。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチドモノマー、デオキシリボヌクレオチドモノマー、または両者の混合物を含み得る。
【0061】
用語「PCRハンドル配列」および「ユニバーサルなタグ配列」は、互換可能であり、生物学的単位から抽出されるかこれに由来する核酸配列の増幅、好ましくはPCR増幅、さらには、シーケンシングに有用な核酸配列を表す。一実施形態では、PCRハンドルは、テンプレート配列との相同性がない。一実施形態では、PCRハンドル配列は、全サンプル調製のワークフローに共通している。
【0062】
用語「フェーズ化」は、相同染色体の個々の補体の同定を表す。
【0063】
用語「ポリッシング(polishing)」または「平滑末端化」は、平滑末端のライゲーションの促進のための、適合しない3’または5’のDNAのオーバーハングの排除を表す。当業者によく知られているいくつかの技術が、DNA末端のポリッシングに使用され得る。たとえば、末端の対形成されていないヌクレオチドは、末端のホスホジエステル結合を加水分解するエキソヌクレアーゼの活性を伴う酵素を使用し、よって一度にオーバーハングした塩基を1つずつ除去することにより、DNA末端から除去され得る。5’にオーバーハングを有するDNAフラグメントは、dNTPの存在下で、DNAポリメラーゼにて、くぼんでいる3’末端に充填されることにより、平滑末端化され得る。末端の除去または充填(fill-in)は、DNA Polymerase I Large(Klenow)Fragment、T4 DNA Polymerase、またはMung Bean Nucleaseを含む多くの酵素を使用して、達成することができる。
【0064】
用語「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、限定するものではないが、アレルに特異的なPCR、非対称PCR、ホットスタートPCR、配列間に特異的なPCR、メチル化に特異的なPCR、ミニプライマーPCR、マルチプレックなライゲーション依存性のプローブ増幅、マルチプレックスPCR、ネステッドPCR1 定量的PCR、逆転写PCR、および/またはタッチダウンPCRを含む方法を包有する。核酸の増幅に適切なDNAポリメラーゼ酵素として、限定するものではないが、TaqポリメラーゼStoffelフラグメント、Taqポリメラーゼ、Advantage DNAポリメラーゼ、AmpliTaq、AmpliTaq Gold、Titanium Taqポリメラーゼ、KlenTaq DNAポリメラーゼ、Platinum Taqポリメラーゼ、Accuprime Taqポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼturbo、Ventポリメラーゼ、Vent exo-ポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、9 Nm DNAポリメラーゼ、Therminator、Pfx DNAポリメラーゼ、Expand DNAポリメラーゼ、rTth DNAポリメラーゼ、DyNAzyme-EXTポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAポリメラーゼI、T7ポリメラーゼ、Sequenase(商標)、Tfiポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Bcaポリメラーゼ、BSUポリメラーゼ、phi-29 DNAポリメラーゼ、およびDNAポリメラーゼBeta、またはそれらの改変したバージョンが挙げられる。一実施形態では、DNAポリメラーゼは、3’-5’のプルーフリーディング、すなわちエキソヌクレアーゼの活性を有する。一実施形態では、DNAポリメラーゼは、5’-3’のプルーフリーディング、すなわちエキソヌクレアーゼの活性を有する。一実施形態では、DNAポリメラーゼは、鎖置換活性を有し、すなわちDNAポリメラーゼは、鋳型依存性の核酸合成と併せてかつこの近くで、5’から3’への方向にて、対形成している核酸のその相補鎖からの解離をもたらす。大腸菌のDNAポリメラーゼI、DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント、T7またはT5のバクテリオファージDNAポリメラーゼ、およびHIVウイルス逆転写酵素などのDNAポリメラーゼは、ポリメラーゼの活性および鎖置換活性の両方を有する酵素である。ヘリカーゼなどの作用物質を、鎖置換作用、すなわち同じ配列の核酸の合成に関連した核酸の置換をもたらすために、鎖置換活性を有さない作用物質の誘導と併せて使用することができる。同様に、大腸菌または別の生物由来のRec Aまたは一本鎖結合タンパク質などのタンパク質を、鎖置換をもたらすかまたは促進させるために、他の誘導する作用物質と併せて使用することができる(Kornberg A. & Baker T.A. (1992). Chapters 4-6. In DNA replication(2nd ed., pp. 113-225). New York: W.H. Freeman)。
【0065】
用語「プライマー誘導型の伸長」は、核酸分子の線形または対数的な増幅での核酸配列の複製を開始するためにプライマーを使用する、当該分野で知られているいずれかの方法を表す。プライマー誘導型の伸長は、限定するものではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、およびSDA(strand-displacement amplification)を含む、この分野で知られているいくつかのスキームのいずれかにより、達成され得る。「プライマー誘導型の伸長」は、本明細書中上述されるDNAポリメラーゼ酵素により、行うことができる。
【0066】
用語「無作為な増幅技術」は、限定するものではないが、MDA(multiple displacement amplification)、ランダムPCR、RAPD(random amplification of polymorphic DNA)、またはMALBAC(multiple annealing and looping based amplification cycles)を含む。
【0067】
用語「受容体リガンド」は、大きな複合体から、受容体などの別の実体に結合するいずれかの物質を表す。
【0068】
用語「逆転写」は、DNAの相補鎖(cDNA)を産生させるための、RNA誘導性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素、RT)を使用したRNAの複製を表す。RNAの逆転写は、逆転写酵素、ならびに4つのデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、すなわちデオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、および(デオキシ)チミジン三リン酸(dTTP)の混合物を使用して、当業者によく知られている技術により、行われ得る。一部の実施形態では、RNAの逆転写は、第1の鎖のcDNAの合成である第1のステップを含む。第1の鎖のcDNA合成のための方法は、当業者によく知られている。第1の鎖のcDNAの合成反応は、配列に特異的なプライマー、オリゴ(dT)プライマー、またはランダムプライマーの組み合わせを使用し得る。逆転写酵素の例として、限定するものではないが、M-MLV逆転写酵素、SuperScript II(Invitrogen)、SuperScript III(Invitrogen)、SuperScript IV(Invitrogen)、Maxima(ThermoFisher Scientific)、ProtoScript II(New England Biolabs)、PrimeScript(ClonTech)が挙げられる。
【0069】
用語「単一細胞のエピゲノムのプロファイリング」または「単一細胞のエピゲノミクス」は、単一細胞のエピゲノムの解析を表す。
【0070】
用語「単一細胞のジェノタイピング」または「単一細胞のゲノミクス」は、単一細胞のゲノムの解析を表す。
【0071】
用語「単一細胞のハプロタイピング」は、全ゲノムに基づくハプロタイプの解明を表す。
【0072】
用語「単一細胞のトランスクリプトームのプロファイリング」または「単一細胞のトランスクリプトミクス」は、単一の細胞のトランスクリプトームの解析を表す。
【0073】
用語「スペーサー領域」は、オリゴヌクレオチドの長さを伸長させるために使用される化学基またはアンカー部分を表す。スペーサーの例として、限定するものではないが、エチレングリコールポリマー、アルキル、オリゴヌクレオチド、ペプチド、およびペプチド模倣体が挙げられる。
【0074】
用語「特定の増幅技術」として、限定するものではないが、温度サイクリングを必要とする方法(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応、転写ベースの増幅など)、および/または等温の増幅システム(自立した配列の複製、レプリカーゼ系、ヘリカーゼ系、鎖置換増幅、ローリングサークルベースの増幅、およびNASBAなど)が挙げられる。
【0075】
用語「担体」は、生物学的単位および/またはバーコード単位がその上に固定され得るマトリックスを表す。担体は、強固な固体または半固体であり得る。
【0076】
用語「テンプレート」または「テンプレート配列」は、増幅が望まれている核酸配列を表す。テンプレートは、DNAまたはRNAを含み得る。一実施形態では、テンプレート配列は知られている。一実施形態では、テンプレート配列は知られていない。
【0077】
用語「テンプレートのスイッチング(template switching)」は、最初の核酸配列のテンプレートから、最初のテンプレートから合成されたcDNAの3’末端にほとんどまたは全く相補性がない新規の核酸配列のテンプレート(「テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド」と呼ばれる)の3’末端へと切り替える、逆転写酵素の能力を表す。
【0078】
用語「テンプレートスイッチアダプター配列」および「テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド」は、核酸重合化反応の間に、ポリメラーゼが最初のテンプレート(たとえばテンプレートのDNAまたはRNA)から切り替わるオリゴヌクレオチドのテンプレートを表す。これに関して、テンプレートのDNAまたはRNAは、「ドナーテンプレート」と呼ばれてもよく、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、「アクセプターテンプレート」と呼ばれてもよい。
【0079】
逆転写がMoloney Murine Leukemia Virus Reverse Transcriptase(M-MLV逆転写酵素)を使用して起こる場合、酵素のTdT(terminal nucleotidyl transferase)の活性は、新生のcDNA鎖の3’末端に対するヌクレオチドの非テンプレート誘導性の付加をもたらす。外因的に付加された「テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド」は、ポリ(G)プライマー部位によりC-末端(C-tract)にアニールする。次に、逆転写酵素は、mRNAからテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドへと、テンプレートを切り替え、第1の鎖のcDNAに「アダプター配列」または「アダプター」を付加する(「アダプター付与」)。好ましくは、アダプター配列は、PCRハンドルと相同性を共有する。
【0080】
用語「トランスクリプトーム」は、個々の細胞の全RNA構成要素を表す。一部の実施形態では、用語「トランスクリプトーム」は、特に、RNAポリメラーゼIIのポリアデニル化産物を表し得る。
【0081】
用語「固有の分子の識別子配列」は、生物学的単位由来の核酸配列のPCR増幅およびさらにはシーケンシング後に二連の増幅産物間を区別するために有用な核酸配列を表す。
【0082】
用語「ビタミン」は、対象の正常な代謝にとって少量で重要ないずれかの群の有機物質を表す。ビタミンの例として、限定するものではないが、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、レチノール、およびトレチノイン(ビタミンA);チアミン(ビタミンB1)および類縁体、たとえばアセフルチアミン、アリチアミン、ベンホチアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、プロスルチアミン、およびスルブチアミン;リボフラビン(ビタミンB2);ナイアシンおよびニコチン酸(ビタミンB3);アデニン、カルニチンおよびコリン(ビタミンB4);パントテン酸、デクスパンテノール、およびパンテチン(ビタミンB5);ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、ピリドキサミン、およびピリチノール(ビタミンB6);ビオチン(ビタミンB7);アデノシン一リン酸(AMP)およびイノシトール(ビタミンB8);葉酸、ジヒドロ葉酸、フォリン酸、およびレボメ葉酸(levomefolic acid)(ビタミンB9);4-アミノ安息香酸(pABA)(ビタミンB10);プテリル-ヘプタ-グルタミン酸(pteryl-hepta-glutamic acid:PHGA)(ビタミンB11);アデノシルコバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、およびメチルコバラミン(ビタミンB12);オロト酸(ビタミンB13);パンガミン酸(ビタミンB15);ジメチルグリシン(DMG)(ビタミンB16);アミグダリン(ビタミンB17);L-カルニチン(ビタミンB20);アスコルビン酸、およびデヒドロアスコルビン酸(ビタミンC);エルゴステロール、およびエルゴカルシフェロール(ビタミンD2);7-デヒドロコレステロール、プレビタミンD3、コレカルシフェロール、25-ヒドロキシコレカルシフェロール、カルシトリオール、およびカルシトロン酸(ビタミンD3);ジヒドロエルゴカルシフェロール(ビタミンD4);アルファカルシドール、ジヒドロタキステロール、カルシポトリオール、タカルシトール、およびパリカルシトール(ビタミンD5);α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノール、およびトコフェルソラン(ビタミンE);フィロキノン(ビタミンK1);メナキノン(ビタミンK2);メナジオン(ビタミンK3);メナジオール(ビタミンK4);ならびにそれらの誘導体が挙げられる。
【0083】
本明細書中使用される専門用語は、単に特定の事例を説明する目的のためにあり、限定とは意図されていない。本明細書中使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他の意味を明記しない限り、同様に複数形を含むと意図されている。さらに、用語「~を含んでいる(including)」、「を含む(includes)」、「~を有する(having)」、「を有する(has)」、「伴う(with)」、またはそれらのバリアントが、詳細な説明および/または特許請求の範囲に使用されている限りは、当該用語は、用語「を含んでいる(comprising)」と同様の意味を含むと意図されている。
【0084】
詳細な説明
本発明は、ハイドロゲル中の個別の生物学的単位を捕捉およびバーコード付与するための方法に関する。
【0085】
一実施形態では、複数の生物学的単位が、担体に結合される。一実施形態では、複数のバーコード単位が、担体に結合される。
【0086】
一実施形態では、本方法は、複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップを含む。一実施形態では、本方法はさらに、生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップを含む。一実施形態では、本方法はさらに、ハイドロゲル溶液を重合化して、ハイドロゲルマトリックスに生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップを含む。一実施形態では、本方法はさらに、ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位/バーコード単位の複合体の中の生物学的単位の核酸にバーコードを付与するステップを含む。
【0087】
一実施形態では、生物学的単位およびバーコード単位は、ハイドロゲルの重合化の後には結合せず、すなわち生物学的単位/バーコード単位の複合体の結合の化学的性質は、劣化される。複合体を分解する技術は、当業者によく知られている。
【0088】
一実施形態では、生化学および分子生物学のアッセイを、本発明に係るハイドロゲルに捕捉した生物学的単位で行うことができる。一実施形態では、生化学および分子生物学のアッセイは、本発明に係るハイドロゲルに捕捉した個別の生物学的単位で行うことができる。一実施形態では、生化学および分子生物学のアッセイは、本発明に係るハイドロゲルに捕捉したバーコード単位で行うことができる。一実施形態では、生化学および分子生物学のアッセイは、本発明に係るハイドロゲルに捕捉した個別のバーコード単位で行うことができる。一実施形態では、ハイドロゲルは、溶液および/またはバルクにおける特定の生化学および分子生物学のアッセイを可能にするために脱重合され得る。
【0089】
生化学および分子生物学のアッセイの例として、限定するものではないが、細胞の溶解、PCR、逆転写、核酸の加水分解、キャップ除去(すなわち5’キャップ構造の加水分解)、トランスクリプトームのプロファイリング(またはトランスクリプトミクス)、ジェノタイピング(またはゲノミクス)、エピゲノムのプロファイリング(またはエピゲノミクス)、フェーズ化、およびハプロタイピングが挙げられる。
【0090】
本発明に係る方法のいくつかの態様は、例示のために例となる適用に準拠して、本明細書中に記載されている。多くの特定の詳細、関係、および方法は、本明細書中記載される特性の完全な理解を提供するために記載されていることを理解されたい。しかしながら、関連する分野の当業者は、1つ以上の特定の詳細を伴わないかまたは他の方法を用いて、本明細書中記載される特性を実施できることを容易に理解している。本明細書中記載される特性は、一部の作用が、他の作用または事象と異なる順序で起こり得るためおよび/または他の作用または順序と同時に起こり得るため、例示した作用または事象の順序によって限定されてはいない。さらに、本明細書中記載される特性に係る方法を実施するために、例示した全ての作用または事象が必要というわけではない。
【0091】
ハイドロゲルは、その架橋機構に基づき、物理的なハイドロゲルおよび化学的なハイドロゲルに分類され得る。
【0092】
一実施形態では、ハイドロゲルは、少なくとも1つの天然のポリマーから調製されている。一実施形態では、ハイドロゲルは、少なくとも1つの合成ポリマーから調製されている。一実施形態では、ハイドロゲルは、少なくとも1つの天然/合成のハイブリッドポリマーから調製されている。一実施形態では、ハイドロゲルは、少なくとも1つの天然のポリマーおよび少なくとも1つの合成ポリマーから調製されている。
【0093】
一実施形態では、本発明で使用されるハイドロゲルは、物理的なハイドロゲルである。
【0094】
物理的なハイドロゲルの架橋として、限定するものではないが、もつれた鎖(entangled chain)、水素結合、疎水性相互作用、および微結晶形成が挙げられる。物理的なハイドロゲルは、イオン相互作用、結晶化、ステレオコンプレックス形成、疎水化した多糖、タンパク質の相互作用、および水素結合により、合成できる。
【0095】
一実施形態では、物理的なハイドロゲルは、永続性である。一実施形態では、物理的なハイドロゲルは、可逆性である。
【0096】
一実施形態では、本発明で使用されるハイドロゲルは、化学的なハイドロゲルである。
【0097】
化学的なハイドロゲルの架橋として、限定するものではないが、共有結合が挙げられる。化学的なハイドロゲルは、連鎖重合(chain growth polymerization)、付加重合および縮合重合、ならびにγ線および電子線による重合により、合成することができる。
【0098】
一実施形態では、化学的なハイドロゲルは、末端官能基化マクロマーの重合により、形成されている。
【0099】
一実施形態では、化学的なハイドロゲルは、永続性である。一実施形態では、化学的なハイドロゲルは、可逆性である。
【0100】
一実施形態では、ハイドロゲルは、多糖のハイドロゲルである。
【0101】
多糖として、限定するものではないが、アルギン酸塩、アガロース、κ-カラゲナン、ι-カラゲナン、キトサン、デキストラン、ヘパリン、ゲラン、天然のゲランガム、ラムザン、脱アセチル化ラムザン、S-657、ウェランが挙げられる。
【0102】
一実施形態では、重合した多糖のハイドロゲルは、共有性の架橋、イオン性の架橋、化学的なコンジュゲート、エステル化、および/または重合により、形成されている。
【0103】
一実施形態では、多糖のハイドロゲルは、アルギン酸塩であり、重合したアルギン酸塩は、カルシウムなどの二価の陽イオンの存在下でのイオン性の架橋により、形成されている。
【0104】
一実施形態では、ハイドロゲルは、タンパク質ベースのハイドロゲルである。
【0105】
タンパク質として、限定するものではないが、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ラミニンが挙げられる。
【0106】
一実施形態では、重合したタンパク質ベースのハイドロゲルは、熱的なゲル化により、形成されている。一実施形態では、タンパク質ベースのハイドロゲルは、架橋剤を使用して架橋されている。
【0107】
タンパク質ベースのハイドロゲルの架橋剤として、限定するものではないが、カルボジイミド、シアナミド、ジアルデヒドデンプン、ジイミド、ジイソシアネート、ジメチルアジピミダート、エポキシ化合物、エチルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリセルアルデヒド、ヘキサメチレンジアミン、テレフタルアルデヒド、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0108】
一実施形態では、ハイドロゲルは、本明細書中上述されるタンパク質と組み合わせた多糖のハイドロゲルである。
【0109】
一実施形態では、ハイドロゲルは、非生分解性の合成ハイドロゲルである。
【0110】
非生分解性ポリマーとして、限定するものではないが、ビニル化モノマーおよびビニル化マクロマー、特に2-ヒドロキシエチルメタクリラート、2-ヒドロキシプロピルメタクリラート、アクリルアミド、アクリル酸、N-イソプロピルアクリルアミド、ポリN-イソプロピルアクリルアミド、メトキシポリエチレングリコールモノアクリラートが挙げられる。
【0111】
一実施形態では、非生分解性分子の重合は、少なくとも1つの架橋剤を必要とする。一実施形態では、非生分解性の合成ハイドロゲルは、非生分解性分子および架橋剤の共重合により形成されている。
【0112】
非生分解性の合成ハイドロゲルの架橋剤として、限定するものではないが、N,N′-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラートが挙げられる。
【0113】
一実施形態では、非生分解性分子の重合は、さらに、少なくとも1つのイニシエーター、たとえば過硫酸イオン(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなど)、硝酸セリウム(IV)アンモニウム、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を必要とする。
【0114】
一実施形態では、ハイドロゲルは、脱重合され得る。「脱重合」は、ハイドロゲルが溶液に戻る間の反応を意味する。当業者に明らかであるように、これは、必ずしも、過剰な脱重合および/または架橋の過剰な切断を必要とするものではない。ゲル-ゾルへの移行を達成するために必要な脱重合および/または架橋の切断の度合いは、ハイドロゲルの性質に基づき変化し、一般的な方法により容易に決定することができる。一実施形態では、ハイドロゲルの脱重合は、化学的である。一実施形態では、ハイドロゲルの脱重合は、熱性である。一実施形態では、ハイドロゲルの脱重合は、酵素を用いる。
【0115】
一実施形態では、ハイドロゲルの脱重合は、二価の陽イオンの除去により達成することができる。二価の陽イオンの除去により脱重合され得るハイドロゲルの例として、限定するものではないが、アルギン酸塩が挙げられる。
【0116】
一実施形態では、ハイドロゲルの脱重合は、還元剤の添加により達成することができる。還元剤の例として、限定するものではないが、ホスフィン(たとえばトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP))およびジチオスレイトール(DTT)が挙げられる。還元剤の添加により脱重合され得るハイドロゲルの例として、限定するものではないが、架橋剤と共重合したハイドロゲル、たとえば非生分解性の合成ハイドロゲルが挙げられる。
【0117】
一実施形態では、ハイドロゲルの脱重合は、熱融解、すなわち温度上昇による融解により、達成できる。
【0118】
一実施形態では、本発明に使用されるハイドロゲルは、熱感受性である。
【0119】
「熱感受性」は、形成後に、少なくとも1つのポリマーの融点を超えて上昇する場合に脱重合し、室温またはその融点未満に冷却されると再編成する、ハイドロゲルを意味する。
【0120】
一実施形態では、本発明で使用されるハイドロゲルは、熱可逆性である。
【0121】
「熱可逆性」は、形成後に、少なくとも1つのポリマーの融点を超えて上昇する場合に脱重合し、さらには、室温またはその融点未満に冷却される場合であっても再編成しない、ハイドロゲルを表す。
【0122】
一実施形態では、ハイドロゲルの少なくとも1つのポリマーの融点は、約20℃~約200℃、好ましくは約25℃~約100℃である。
【0123】
一実施形態では、ハイドロゲルは、生物学的単位、バーコード単位、および/または生物学的単位から抽出されるかもしくはこれに由来する解析物を捕捉するために十分小さい孔径を有する。一実施形態では、ハイドロゲルは、生化学および分子生物学の試薬の拡散を可能にするために十分大きい孔径を有する。
【0124】
一実施形態では、ハイドロゲルは、約1nm~約1μm、好ましくは約10nm~500nm、より好ましくは25nm~250nmの範囲の孔径を有する。
【0125】
一実施形態では、ハイドロゲルマトリックスは、生化学および分子生物学の試薬にアクセス可能である。一実施形態では、ハイドロゲルマトリックスは、生化学および分子生物学の試薬にアクセス可能な少なくとも1つの表面を有する。一実施形態では、生化学および分子生物学の試薬にアクセス可能な少なくとも1つの表面は、天然に存在する。一実施形態では、生化学および分子生物学の試薬にアクセス可能な少なくとも1つの表面は、ハイドロゲルの重合の前、最中、および/または後に、成型される。
【0126】
一実施形態では、バーコード単位の組成、形状、形態、および修飾は、応用に応じた選択肢の範囲から、選択することができる。
【0127】
本発明においてバーコード単位として使用できる例示的な物質として、限定するものではないが、アクリル、炭素(たとえば、グラファイト、カーボンファイバー)、セルロース(たとえば酢酸セルロース)、セラミクス、CPG(controlled-pore glass)、架橋した多糖(たとえば、アガロース、SEPHAROSE(商標)またはアルギン酸塩)、ゲル、ガラス(たとえば改変または機能化したガラス)、金(たとえば原子的に平滑なAu(111))、グラファイト、無機ガラス、無機ポリマー、ラテックス、金属酸化物(たとえばSiO、TiO、ステンレス鋼)、メタロイド、金属(たとえば原子的に平滑なAu(111))、雲母、硫化モリブデン、ナノマテリアル(たとえば高配向性熱分解グラファイト(HOPG)ナノシート)、ニトロセルロース、NYLON(商標)、光ファイバーの束、有機ポリマー、紙、プラスチック、ポリアクリロイルモルホリド(polacryloylmorpholide)、ポリ(4-メチルブテン)、ポリエチレンテレフタラート)、ポリ(ビニルブチラート)、ポリブチレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリメタクリラート、ポリプロピレン、多糖、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、水晶、レーヨン、樹脂、ゴム、半導体材料、シリカ、シリコン(たとえば表面を酸化させたシリコン)、硫化物、およびTEFLON(登録商標)が挙げられる。
【0128】
一実施形態では、バーコード単位は、単一の物質から構成されている。別の実施形態では、バーコード単位は、いくつかの異なる物質の混合物から構成されている。
【0129】
一実施形態では、本発明で使用されるバーコード単位は、単純な四角のグリッド、チェッカーボードのグリッド、六角形のアレイなどであり得る。また、適切なバーコード単位として、限定するものではないが、ビーズ、スライド、チップ、粒子、鎖、ゲル、シート、チュービング、スフィア、容器、毛細管、パッド、スライス、フィルム、培養ディッシュ、マイクロタイタープレート、たとえば768-ウェル、384-ウェル、96-ウェル、48-ウェル、24-ウェル、12-ウェル、8-ウェル、6-ウェル、4-ウェル、1-ウェルのプレートなどが挙げられる。様々な実施形態では、バーコード単位は、生体由来、非生体由来、有機物由来、無機物由来、またはそれらのいずれかの組み合わせであってもよい。
【0130】
よって、複数のバーコード単位における単一のバーコード単位は、上記複数のバーコード単位の最小限の分割できない部分であり得る。複数のバーコード単位における単一のバーコード単位は、たとえば、グリッド上の単一の四角、ビーズの集合における単一のビーズ、マイクロタイタープレートにおける単一のウェルなどであり得る。あるいは、複数のバーコード単位における単一のバーコード単位は、上記複数のバーコード単位の最小限の部分であって、生物学的単位とバーコード単位との間の単一の結合事象が、分子レベルで起こる、部分であり得る。あるいは、複数のバーコード単位における単一のバーコード単位は、約1μm~約1mm、好ましくは約1μm~約100μm、より好ましくは約1μm~約50μmの範囲の、上記複数のバーコード単位の一部であり得る。一実施形態では、この大きさの範囲は、製造能を考慮して選択される。一実施形態では、この大きさの範囲は、生物学的単位/バーコード単位の複合体の1:1の比での形成を確保するために選択される。
【0131】
バーコード単位の表面は、その上への生物学的単位の捕捉または固定化を促進するために、当業者に知られている方法により修飾することができる。
【0132】
一実施形態では、バーコード単位は、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、エポキシなどの化学反応基をその表面に含む。
【0133】
一実施形態では、バーコード単位は、その表面に結合した官能基などの、官能基修飾を有し得る。
【0134】
一実施形態では、本発明に使用されるバーコード単位は、バーコード付与されている。
【0135】
一実施形態では、複数のバーコード単位における単一のバーコード単位は、それぞれ、固有のバーコードを含む。一実施形態では、複数のバーコード単位における単一のバーコード単位は、それぞれ、固有のバーコードのクローンコピーを含む。
【0136】
一実施形態では、バーコード単位は、少なくとも1つの生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む。
【0137】
好ましい実施形態では、バーコード単位はビーズである。
【0138】
本発明に係る方法の実施は、各個別の生物学的単位および/または各バーコード単位に結合した反応解析物の下流での同定に依存し得る。よって、生物学的単位の供給源もしくは起源、および/またはサンプルの中の解析物、たとえば個別の生物学的単位から抽出されるかもしくはこれに由来する核酸配列などについての情報を伝達するために、バーコード単位に少なくとも1つの識別子またはバーコードを追加することが望ましいとされ得る。
【0139】
一実施形態では、バーコード単位は、バーコードを付与されている。一実施形態では、複数のバーコード単位における単一のバーコード単位はそれぞれ、固有のバーコードを含む。一実施形態では、複数のバーコード単位における単一のバーコード単位はそれぞれ、固有のバーコードのクローンコピーを含む。
【0140】
バーコードは、ラベル、タグ、プローブなどを含む様々な異なる形式であり得る。
【0141】
一実施形態では、バーコード単位は、光学的にバーコード付与されている。一実施形態では、バーコード単位は、非光学的にバーコード付与されている。一実施形態では、バーコード単位は、光学的かつ非光学的にバーコード付与されている。
【0142】
光学的なバーコードとして、限定するものではないが、たとえばラマンスペクトルもしくは電磁性スペクトルなどの自身のスペクトルにより、および/または自身の色の強度により同定できる、発色団、フルオロフォア、量子ドット、スチレンモノマー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0143】
非光学的なバーコードとして、限定するものではないが、たとえばシーケンシングにより同定できる、DNA、RNA、および/またはタンパク質の配列などの生体分子の配列が挙げられる。
【0144】
一実施形態では、本発明に使用される固有のバーコードの数は、約2~約1012の範囲にある。
【0145】
一実施形態では、複数のバーコード単位における単一のバーコード単位のそれぞれに含まれる各固有のバーコードのクローンコピーの数は、約2~約1012の範囲にある。
【0146】
一実施形態では、本発明に係るバーコード単位は、非光学的なバーコードを含む。一実施形態では、本発明に係るバーコード単位は、核酸のバーコードを含む。一実施形態では、この核酸のバーコードは、一本鎖である。一実施形態では、核酸のバーコードは二本鎖である。一実施形態では、核酸のバーコードは、一本鎖および/または二本鎖である。一実施形態では、本発明に係るバーコード単位は、DNAのバーコードを含む。一実施形態では、本発明に係るバーコード単位は、RNAのバーコードを含む。一実施形態では、本発明に係るバーコード単位は、DNAおよびRNAのバーコードの混合物を含む。
【0147】
一実施形態では、本発明に係る核酸のバーコードは、5~20ヌクレオチド、好ましくは8~16ヌクレオチドを含む。
【0148】
一実施形態では、バーコード単位は、複数の固有の核酸配列、すなわち固有のバーコードのクローンコピーを含む。
【0149】
一実施形態では、上記固有の核酸配列は、縮重した配列である。一実施形態では、上記固有の核酸配列は、コンビナトリアルケミストリーに基づくものである。
【0150】
担体、好ましくはバーコード単位上にバーコードを共有結合させるために技術は、当業者によく知られており、限定するものではないが、コンビナトリアルの形式での結合したプライマーの複製、コンビナトリアルの形式でのアダプターのライゲーション、およびコンビナトリアルな形式でのヌクレオチドの化学的付加を含む。
【0151】
一実施形態では、上記固有の核酸配列は、複数のバーコード単位における単一のバーコード単位がそれぞれ、開始した核酸配列のクローンコピーでコーティングされるように、バーコード単位上で増幅される。
【0152】
一実施形態では、核酸のバーコードのバーコード単位への共有結合は、バーコードの合成の間に直接行われる。一実施形態では、核酸のバーコードのバーコード単位への共有結合は、バーコードの合成の後に行われる。
【0153】
バーコード単位上に核酸のバーコードを共有結合するために技術は、当業者によく知られている。
【0154】
一実施形態では、生物学的単位の核酸へのバーコード付与は、生物学的単位の核酸へのバーコードのプライマーテンプレートアニーリングにより、達成される。一実施形態では、生物学的単位の核酸へのバーコード付与は、生物学的単位の核酸へのバーコードのプライマー誘導型の伸長により、達成される。一実施形態では、生物学的単位の核酸へのバーコード付与は、生物学的単位の核酸へのバーコードのライゲーションにより、達成される。
【0155】
本発明に係る方法の実施は、生物学的単位の核酸配列または生物学的単位由来の核酸配列の固定化、複製、伸長、および/または増幅に依存し得る。よって、生物学的単位の遺伝子情報または生物学的単位由来の遺伝子情報を固定、複製、伸長、および/または増幅させるために、バーコード単位に対して少なくとも1つの核酸配列のプライマーを付加すること、好ましくは複数のバーコード単位における単一のバーコード単位のそれぞれに対して少なくとも1つの核酸配列のプライマーを付加することが、望ましいとされ得る。
【0156】
一実施形態では、核酸配列のプライマーは、一本鎖である。一実施形態では、核酸配列のプライマーは二本鎖である。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、一本鎖および/または二本鎖である。
【0157】
一実施形態では、核酸配列のプライマーは、縮重した(すなわちランダムな)核酸配列のプライマーである。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、目的の核酸配列に特異的である。
【0158】
一実施形態では、核酸配列のプライマーは、生物学的単位の核酸配列または生物学的単位由来の核酸配列の複数の位置で、プライミングすることができる。一実施形態では、生物学的単位の核酸配列または生物学的単位由来の核酸配列は、複数のプライミング部位を含む。
【0159】
一実施形態では、核酸配列のプライマーは、poly-dT配列を含む。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、poly-dU配列を含む。よって核酸配列のプライマーは、ポリA配列に特異的である。ポリA配列は、たとえば、mRNAの3’末端の、ポリA鎖の中で見出され得る。
【0160】
一実施形態では、核酸配列のプライマーは、配列(dT)VN(式中nは、5~50の範囲にあり、Vは、T/U以外の任意のヌクレオチド(すなわちA、C、またはG)を表し、Nは、任意のヌクレオチド(すなわちA、T/U、C、またはG)を表す)を含む。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、配列(dU)VN(式中、nは5~50の範囲にあり、Vは、T/U以外の任意のヌクレオチド(すなわちA、C、またはG)を表し、Nは、任意のヌクレオチド(すなわちA、T/U、C、またはG)を表す)を含む。よって、核酸配列のプライマーは、(A)BN配列(式中nは、5~50の範囲にあり、Bは、A以外の任意のヌクレオチド(すなわちT/U、C、またはG)を表し、Nは、任意のヌクレオチド(すなわちA、T/U、C、またはG)を表す)に特異的である。(A)BN配列は、たとえば、ポリA鎖と3’UTRまたはCDSとの間で重複する、mRNAの3末端上で見出され得る。
【0161】
一実施形態では、核酸配列のプライマーは、poly-I配列を含む。よって核酸配列のプライマーは、非特異的であり、生物学的単位のいずれかの核酸配列または生物学的単位由来のいずれかの核酸配列に対してプライミングし得る。
【0162】
一実施形態では、核酸配列のプライマーは、5~50ヌクレオチド、好ましくは5~30ヌクレオチドを含む。
【0163】
一実施形態では、バーコード単位への核酸配列のプライマーの共有結合は、核酸配列のプライマーの合成の間に、直接行われる。一実施形態では、バーコード単位への核酸配列のプライマーの共有結合は、核酸配列のプライマーの合成の後に、行われる。
【0164】
一実施形態では、バーコード単位は、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。
【0165】
一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、DNAオリゴヌクレオチドである。一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、RNAオリゴヌクレオチドである。一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、DNA/RNAハイブリッドのオリゴヌクレオチドである。
【0166】
一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、一本鎖である。一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、二本鎖である。一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、一本鎖および/または二本鎖である。
【0167】
一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの核酸のバーコードおよび少なくとも1つの核酸配列のプライマーを含む。一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、5’から3’の方向に、少なくとも1つの核酸のバーコードおよび少なくとも1つの核酸配列のプライマーを含む。一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、5’から3’の方向に、少なくとも1つの核酸配列のプライマーおよび少なくとも1つの核酸のバーコードを含む。一実施形態では、核酸のバーコードは、所定のバーコード単位の表面上の全てのオリゴヌクレオチドで同一である。一実施形態では、核酸のバーコードは、1つのバーコード単位の表面上のオリゴヌクレオチドで、別のバーコード単位とは異なっている。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、所定のバーコード単位の表面上の全てのオリゴヌクレオチドで同一である。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、所定のバーコード単位の表面上の全てのオリゴヌクレオチドで異なっている。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、全てのオリゴヌクレオチドおよびバーコード単位で同一である。一実施形態では、核酸のバーコードは、5~20ヌクレオチド、好ましくは8~16ヌクレオチドを含む。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、5~50ヌクレオチド、好ましくは5~30ヌクレオチドを含む。
【0168】
一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドはさらに、PCRハンドル配列を含む。一実施形態では、PCRハンドル配列は、全てのオリゴヌクレオチドおよびバーコード単位で同一である。一実施形態では、PCRハンドル配列は、10~30ヌクレオチド、好ましくは15~25ヌクレオチドを含む。
【0169】
一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドはさらに、固有の分子の識別子配列を含む。一実施形態では、固有の分子の識別子配列は、所定のバーコード単位の表面上の全てのオリゴヌクレオチドで異なっている。一実施形態では、固有の分子の識別子配列は、10~30ヌクレオチド、好ましくは15~25ヌクレオチドを含む。
【0170】
一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドはさらに、スペーサー領域を含む。
【0171】
一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、5’から3’の方向に(すなわちバーコード単位の表面に関して、近位から遠位の方向に)、
任意選択でスペーサー領域と、
任意選択でPCRハンドル配列と、
核酸のバーコードと、
任意選択で固有の分子の識別子配列と、
核酸配列のプライマーと
を含む。
【0172】
一実施形態では、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、3’から5’の方向に(すなわちバーコード単位の表面に関して遠位から近位の方向に)、
任意選択でスペーサー領域と、
任意選択で、PCRハンドル配列と、
核酸のバーコードと、
任意選択で固有の分子の識別子配列と、
核酸配列のプライマーと
を含む。
【0173】
一実施形態では、核酸のオリゴヌクレオチドのバーコード単位への共有結合は、核酸のオリゴヌクレオチドの合成の間に、直接行われる。一実施形態では、核酸のオリゴヌクレオチドのバーコード単位への共有結合は、核酸のオリゴヌクレオチドの合成の後に、行われる。
【0174】
ガラスまたはプラスチックのチューブまたはビーズ、ニトロセルロースまたはナイロンのファイバー、マイクロタイターのウェル、アガロースビーズゲル、および磁性粒子などのバーコード単位上に核酸のオリゴヌクレオチドを共有結合および/またはこれを合成するための技術は、当業者によく知られている。これら技術として、限定するものではないが、UV照射、ビオチン-アビジン/ストレプトアビジン、および化学的な共有結合(Macosko et al., 2015. Cell. 161:1202-1214; Fan et al., 2015. Science. 347(6222):1258367; Beaucage, S.L. (1993), In Protocols for oligonucleotides and analogs-Synthesis and properties. Totowa, NJ: Humana Press, 20:33-61; Conner et al., 1983. Proc Natl Acad Sci. USA. 80:278-282; Lockley et al., 1997. Nucleic Acids Res. 25:1313-1314; Joos et al., 1997. Anal Biochem. 247:96-101; Cohen et al., 1997. Nucl Acid Res. 25:911-912; Yang et al., 1998. Chem Lett. 3:257-258; Maskos et al., 1992. Nucl Acid Res. 20:1679-1684; Chrisey et al., 1996. Nucl Acid Res. 24:3131-3039; Chrisey et al., 1996. Nucl Acid Res. 24:3040-3047; Marble et al., 1995. Biotechnol Prog. 11:393-396; Liu et al., 1997. Promega Notes Mag. 64:21-25; Weiler et al., 1996. Anal Biochem. 243:218-227; Beattie et al., 1995. Mol Biotechnol. 4:213-225;Rasmussen et al., 1991. Anal Biochem. 198:138-142;Timofeev et al., 1996. Nucl Acid Res. 24:3142-3148;Yershov et al., 1997. Anal Biochem. 250:203-211;DeAngelis et al., 1995. Nucl Acid Res. 23:4742-4743;Haukanes et al., 1993. Biotechnology. 11:60-63)が挙げられる。
【0175】
本発明に係る方法の実施は、バーコード単位上の生物学的単位の結合および/または固定化に依存し得る。よって、個別の生物学的単位を捕捉するために、バーコード単位に生物学的単位を結合するための少なくとも1つの手段を加えることが望ましいとされ得る。
【0176】
一実施形態では、生物学的単位のバーコード単位への結合および/または固定化は、特異的ではない(aspecific)。一実施形態では、生物学的単位のバーコード単位への結合および/または固定化は、特異的である。
【0177】
一実施形態では、バーコード単位上への生物学的単位の結合および/または固定化は、生物学的単位上にバーコード単位を結合するための少なくとも1つの手段の存在を必要とする。
【0178】
生物学的単位を結合するための手段および/またはバーコード単位を結合するための手段として、限定するものではないが、タンパク質またはそのフラグメント、ペプチド、抗体またはそのフラグメント、核酸(一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAなど)、炭水化物、ビタミンまたはその誘導体、補酵素またはその誘導体、受容体リガンドまたはその誘導体、疎水基が挙げられる。
【0179】
一実施形態では、生物学的単位を結合するための手段および/またはバーコード単位を結合するための手段は、少なくとも1つのタンパク質および/または少なくとも1つのペプチドを含む。タンパク質またはペプチドの例として、限定するものではないが、抗体(たとえばIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM)およびそのフラグメント(限定するものではないが、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、scFvフラグメント、ジアボディ、トリアボディ、scFv-Fcフラグメント、ミニボディを含む);プロテインA、プロテインG、アビジン、ストレプトアビジン、受容体およびそのフラグメント、ならびにリガンドおよびそのフラグメントが挙げられる。
【0180】
一実施形態では、生物学的単位を結合するための手段および/またはバーコード単位を結合するための手段は、少なくとも1つの核酸を含む。核酸の例として、限定するものではないが、DNA、RNA、ならびに人工的な核酸、たとえばイノシン、キサントシン、ワイブトシン(wybutosine)、および/またはそれらの誘導体を含む核酸が挙げられる。
【0181】
一実施形態では、生物学的単位を結合するための手段および/またはバーコード単位を結合するための手段は、少なくとも1つの炭水化物を含む。炭水化物の例として、限定するものではないが、単糖、二糖、および多糖が挙げられる。
【0182】
一実施形態では、生物学的単位を結合するための手段および/またはバーコード単位を結合するための手段は、少なくともビタミンを含む。
【0183】
一実施形態では、生物学的単位を結合するための手段および/またはバーコード単位を結合するための手段は、少なくとも補酵素を含む。
【0184】
一実施形態では、生物学的単位を結合するための手段および/またはバーコード単位を結合するための手段は、少なくとも受容体リガンドを含む。
【0185】
一実施形態では、生物学的単位を結合するための手段および/またはバーコード単位を結合するための手段は、少なくとも疎水基を含む。疎水基の例として、限定するものではないが、約2~8個の炭素原子を有するアルキル基、たとえばエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、もしくはオクチル、およびそれらの異性体の形態;またはアリール基、たとえばフェニル、ベンジル、またはナフチルが挙げられる。
【0186】
生物学的単位を結合するための手段でバーコード単位をコーティングするための技術は、当業者によく知られている。
【0187】
一実施形態では、コーティングは、全体のコーティング、すなわちバーコード単位を完全にカバーすることであってもよく、または部分的なコーティング、すなわちバーコード単位の一部のみをカバーすることであってもよい。
【0188】
一実施形態では、生物学的単位を結合するための手段でのバーコード単位のコーティングは、バーコード単位の官能基付与を必要とする。官能基付与したバーコード単位の例として、限定するものではないが、アミノ官能基付与したバーコード単位、カルボキシル官能基付与したバーコード単位、ヒドロキシル官能基付与したバーコード単位、およびエポキシ官能基付与したバーコード単位が挙げられる。バーコード単位に官能基を付与するための技術は、当該分野でよく知られており、限定するものではないが、メトキシシラン、エトキシシラン、およびアセトキシシランの誘導体などのオルガノシランの架橋が挙げられる。
【0189】
生物学的単位を結合するための手段でバーコード単位をコーティングするための技術の例として、限定するものではないが、吸着および共有結合が挙げられる。共有結合は、カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、スルホ-NHS、ジメチルアミノプロピル(DEAP)、グルタルアルデヒド、アルデヒド、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)、スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、ジチオスレイトール(DTT)、および/または臭化シアン(BrNC)などのカップリング剤を使用して、官能基付与したバーコード単位で行われ得る。
【0190】
一実施形態では、バーコード単位を結合するための少なくとも1つの手段は、生物学的単位の表面および/または内部に天然に存在する。一実施形態では、バーコード単位を結合するための少なくとも1つの手段は、生物学的単位の表面および/または内部に天然には存在していない。
【0191】
一実施形態では、生物学的単位は、バーコード単位上への結合および/または固定化の前に、少なくとも1つの抗体と共にインキュベートされる。一実施形態では、少なくとも1つの抗体は、生物学的単位に特異的である。一実施形態では、少なくとも1つの抗体は、機能付与されている。機能付与の例として、限定するものではないが、タンパク質またはそのフラグメント、ペプチド、抗体またはそのフラグメント、核酸(一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAなど)、炭水化物、ビタミンまたはその誘導体、補酵素またはその誘導体、受容体リガンドまたはその誘導体、および疎水基が挙げられる。一実施形態では、抗体は、ビオチン化されており、すなわちビオチン部分で機能付与されている。
【0192】
本発明に係る方法の実施は、単一のバーコード単位上への単一の生物学的単位の結合および/または固定化に依存し得る。よって、1超の生物学的単位が各バーコード単位に結合しないこと;またはあるいは、1超のバーコード単位が各生物学的単位に結合しないことが望ましいとされ得る。
【0193】
生物学的単位およびバーコード単位の両方の濃度および/大きさなどのパラメータに応じて、1超の生物学的単位が、単一のバーコード単位に結合し得、その逆も同様である。結果として、本発明に係る方法は、1:1の比の生物学的単位/バーコード単位の複合体を確保、選択、および/または精製するための手段を提供する。また本発明に係る方法は、1:1の比の生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するための手段を提供する。
【0194】
一実施形態では、本発明の方法は、1:1の比の生物学的単位/バーコード単位の複合体の選択および/または精製のステップを含む。一実施形態では、複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成してもよく、これはさらに選択および/または精製され得る。
【0195】
複合体を選択および/または精製するための技術は、当業者によく知られており、限定するものではないが、サイズ排除クロマトグラフィー技術、密度勾配技術、および/またはろ過技術を含む。
【0196】
一実施形態では、本発明の方法は、1:1の比の生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するための手段を含む。
【0197】
一実施形態では、生物学的単位は、担体に結合される。一実施形態では、バーコード単位は、担体に結合される。
【0198】
複数のバーコード単位と接触させる前に、複数の生物学的単位を担体に結合させることは、障害物をもたらし、担体を妨害として作用させ、単一の生物学的単位へのバーコード単位の複数の結合を防止する。よって、生物学的単位と比較して大きなバーコード単位を使用することが望ましいとされ得る。さらに、生物学的単位に関連したバーコード単位の限界濃度を、生物学的単位あたり最大1つのバーコード単位の結合を確保するために使用してもよい。
【0199】
あるいは、複数の生物学的単位と接触させる前に、複数のバーコード単位を担体に結合させることは、障害物をもたらし、担体を妨害として作用させ、単一のバーコード単位への生物学的単位の複数の結合を防止する。よって、生物学的単位と比較して小さなバーコード単位を使用することが望ましいとされ得る。さらに、バーコード単位に関連した生物学的単位の限界濃度を、バーコード単位あたり最大1つの生物学的単位の結合を確保するために使用してもよい。
【0200】
一実施形態では、担体の組成、形状、形態、および修飾は、応用に応じた選択肢の範囲から選択され得る。
【0201】
本発明の担体に使用され得る例示的な物質として、限定するものではないが、アクリル、炭素(たとえば、グラファイト、カーボンファイバー)、セルロース(たとえば酢酸セルロース)、セラミクス、CPG(controlled-pore glass)、架橋した多糖(たとえば、アガロース、SEPHAROSE(商標)またはアルギン酸塩)、ゲル、ガラス(たとえば改変または機能化したガラス)、金(たとえば原子的に平滑なAu(111))、グラファイト、無機ガラス、無機ポリマー、ラテックス、金属酸化物(たとえばSiO、TiO、ステンレス鋼)、メタロイド、金属(たとえば原子的に平滑なAu(111))、雲母、硫化モリブデン、ナノマテリアル(たとえば高配向性熱分解グラファイト(HOPG)ナノシート)、ニトロセルロース、NYLON(商標)、光ファイバーの束、有機ポリマー、紙、プラスチック、ポリアクリロイルモルホリド(polacryloylmorpholide)、ポリ(4-メチルブテン)、ポリエチレンテレフタラート)、ポリ(ビニルブチラート)、ポリブチレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリメタクリラート、ポリプロピレン、多糖、ポリスチレン、ポリウレタン、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、水晶、レーヨン、樹脂、ゴム、半導体材料、シリカ、シリコン(たとえば表面を酸化させたシリコン)、硫化物、およびTEFLON(商標)が挙げられる。
【0202】
一実施形態では、担体は、単一の物質から構成されている。別の実施形態では、担体は、いくつかの異なる物質の混合物から構成されている。
【0203】
一実施形態では、本発明で使用される担体は、チューブ、ビーズ、スライド、チップ、粒子、鎖、ゲル、シート、チュービング、スフィア、容器、毛細管、パッド、スライス、フィルム、培養ディッシュ、マイクロタイタープレート、たとえば768-ウェル、384-ウェル、96-ウェル、48-ウェル、24-ウェル、12-ウェル、8-ウェル、6-ウェル、4-ウェル、1-ウェルのプレート、四角形のグリッド、チェッカーボードのグリッド、六角形のアレイなどであり得る。様々な実施形態では、担体は、生物学的、非生物学的、有機、無機、またはそれらのいずれかの組み合わせであり得る。
【0204】
担体の表面は、その上への生物学的単位および/またはバーコード単位の捕捉または固定化を促進するために、当業者に知られている方法により修飾することができる。
【0205】
一実施形態では、担体への生物学的単位および/またはバーコード単位の捕捉または固定化は、特異的なものではない。
【0206】
一実施形態では、生物学的単位および/またはバーコード単位は、担体をコーティングするハイドロゲルの層に捕捉または固定される。
【0207】
一実施形態では、担体への生物学的単位および/またはバーコード単位の捕捉または固定化は、特異的なものである。
【0208】
一実施形態では、担体は、その表面に、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、エポキシなどの反応基を含む。一実施形態では、担体は、その表面に結合した官能基などの官能基の修飾を有し得る。一実施形態では、担体は、少なくとも1つの生物学的単位および/または少なくとも1つのバーコード単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む。
【0209】
生物学的単位および/またはバーコード単位を結合するための手段として、限定するものではないが、本明細書中上述されるように、タンパク質またはそのフラグメント、ペプチド、抗体またはそのフラグメント、核酸(一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAなど)、炭水化物、ビタミンまたはその誘導体、補酵素またはその誘導体、受容体リガンドまたはその誘導体、および疎水基が挙げられる。
【0210】
生物学的単位および/またはバーコード単位を結合するための手段で担体をコーティングするための技術は、当業者によく知られている。
【0211】
一実施形態では、コーティングは、全体のコーティング、すなわち担体を完全にカバーすることであってもよく、または部分的なコーティング、すなわち担体の一部のみをカバーすることであってもよい。
【0212】
一実施形態では、生物学的単位および/またはバーコード単位を結合するための手段での担体のコーティングは、担体の官能基付与を必要とする。官能基付与した担体の例として、限定するものではないが、アミノ官能基付与した担体、カルボキシル官能基付与した担体、ヒドロキシル官能基付与した担体、およびエポキシ官能基付与した担体が挙げられる。担体に官能基を付与するための技術は、当業者によく知られており、限定するものではないが、メトキシシラン、エトキシシラン、およびアセトキシシランの誘導体などのオルガノシランの架橋を含む。
【0213】
生物学的単位および/またはバーコード単位を結合するための手段で担体をコーティングするための技術の例として、限定するものではないが、吸着および共有結合が挙げられる。共有結合は、カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、スルホ-NHS、ジメチルアミノプロピル(DEAP)、グルタルアルデヒド、アルデヒド、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)、スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、ジチオスレイトール(DTT)、および/または臭化シアン(BrNC)などのカップリング剤を使用して、官能基付与した担体で行われ得る。
【0214】
一実施形態では、本発明に係るハイドロゲル中の個別の生物学的単位を捕捉するための方法は、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合化して、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)前記ハイドロゲルマトリックス中の前記生物学的単位/バーコード単位の複合体のそれぞれの中の生物学的単位の核酸にバーコードを付与するステップと
を含む。
【0215】
一実施形態では、各バーコード単位は、本明細書中上記に定義される生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む。一実施形態では、各生物学的単位は、本明細書中上記に定義されるバーコード単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む。
【0216】
一実施形態では、各バーコード単位は、本明細書中上記に定義される固有のバーコードを含む。一実施形態では、各バーコード単位は、固有のバーコードのクローンコピーを含む。
【0217】
一実施形態では、各バーコード単位は、本明細書中上記に定義される少なくとも1つの核酸配列のプライマーを含む。
【0218】
一実施形態では、各バーコード単位は、本明細書中上記に定義される核酸オリゴヌクレオチドを含む。
【0219】
一実施形態では、複数の生物学的単位は、本明細書中上記に定義されるように、担体に結合する。一実施形態では、複数のバーコード単位は、本明細書中上記に定義されるように、担体に結合する。
【0220】
一実施形態では、本発明に係る方法は、生物学的単位の選択および/またはソーティングのステップを含み得る。生物学的単位の選択および/またはソーティングは、タンパク質もしくは炭水化物などの所定の表面分子の発現、または各生物学的単位の特定の光散乱および蛍光の特徴に基づくものであってもよい。また、生物学的単位の選択および/またはソーティングは、それらの大きさに基づいていてもよい。生物学的単位を選択および/またはソーティングするための方法は、当業者によく知られており、限定するものではないが、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、FISH-FC(fluorescence in situ hybridization-flow cytometry)、IsoRaft array、DEPArray lab-on-a-chip技術、MACS(magnetic cell sorting)、免疫沈降法、ろ過などを含む。
【0221】
一実施形態では、本発明に係る方法は、生物学的単位の溶解のステップを含み得る。
【0222】
一実施形態では、本発明に係る方法は、生物学的単位のRNA内容物、好ましくは生物学的単位のmRNA内容物の逆転写のステップを含み得る。
【0223】
一実施形態では、生化学および分子生物学のアッセイは、ハイドロゲルマトリックス中の生物学的単位/バーコード単位の複合体のそれぞれの中の生物学的単位の核酸にバーコード付与するステップの前、最中、または後に、行うことができる。
【0224】
一実施形態では、本発明に係る方法は、DNA、RNA、またはcDNAなどの生物学的単位の核酸の事前の増幅(pre-amplification)のステップを含み得る。一実施形態では、本発明に係る方法は、ハイドロゲルマトリックス中の生物学的単位/バーコード単位の複合体のそれぞれの中の生物学的単位の核酸にバーコード付与するステップの前に、DNA、RNA、またはcDNAなどの生物学的単位の核酸の事前の増幅のステップを含み得る。
【0225】
一実施形態では、本発明に係る方法は、生化学および分子生物学のアッセイのためのテンプレートを精製するステップを含み得る。核酸のテンプレートまたは核酸のテンプレートを封入する膜に結合した内因的または外因的なタンパク質および複合体は、生物学的単位/バーコード単位の複合体の捕捉の後に、ハイドロゲルから除去することができる。核酸精製に関する技術は、当業者によく知られており、限定するものではないが、プロテイナーゼK、および/または界面活性剤、たとえばSDS、サルコシル、NP-40などを含む。
【0226】
一実施形態では、本発明に係る方法は、増幅した核酸をクリーニングするステップを含み得る。シーケンシング用の核酸のライブラリーを調製する前に、一本鎖のプライマーおよび酵素などの反応産物を除去することが望ましいとされ得る。核酸のクリーンアップに関する技術は、当業者によく知られており、限定するものではないが、一本鎖に特異的なヌクレアーゼの使用、および/または核酸のリン酸化末端を脱リン酸化するホスファターゼの使用を含む。一本鎖に特異的なヌクレアーゼの例として、限定するものではないが、エキソヌクレアーゼI、マングビーンヌクレアーゼ、ヌクレアーゼBh1、ヌクレアーゼP1、ヌクレアーゼS1、BAL 31ヌクレアーゼが挙げられる。ホスファターゼの例として、限定するものではないが、エビのアルカリホスファターゼなどのアルカリホスファターゼが挙げられる。
【0227】
一実施形態では、本発明に係る方法は、増幅した核酸の大きさを調節する(sizing)ステップを含み得る。IlluminaまたはIon Torrentなどのショートリードシーケンサーは、製造社の推奨に従い、同様の大きさのフラグメントを含むDNAライブラリーを供給する際に、最良に作動する。ライブラリーの大きさの選択が適切ではない場合、これらシーケンサーの効率は低下し得る。限定するものではないが、核酸ゲル電気泳動、ビーズベースのプロトコル、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)、自動化されたサイズの選択を含む、DNAの大きさの選択に関する技術が、当業者によく知られている。
【0228】
一実施形態では、本発明に係る方法は、核酸および/またはcDNAライブラリーのフラグメント化のステップを含み得る。
【0229】
一実施形態では、本発明に係る方法は、核酸および/またはcDNAライブラリーの酵素を用いたフラグメント化のステップを含み得る。
【0230】
一実施形態では、本発明に係る方法は、核酸および/またはcDNAライブラリーの機械的なフラグメント化のステップを含み得る。
【0231】
一実施形態では、本発明に係る方法は、核酸および/またはcDNAライブラリーのポリッシングのステップを含み得る。
【0232】
一実施形態では、本発明に係る方法は、核酸および/またはcDNAライブラリーのA鎖形成のステップを含み得る。
【0233】
一実施形態では、本発明に係る方法は、核酸および/またはcDNAライブラリーのライゲーションのステップを含み得る。
【0234】
一実施形態では、本発明に係る方法は、タグ処理(tagmentation)のステップを含み得る。核酸および/またはcDNAライブラリーをタグ処理するための技術は、当業者によく知られている。
【0235】
一実施形態では、本発明に係る方法は、核酸のシーケンシングのステップを含み得る。一実施形態では、核酸のシーケンシングは、次世代シーケンシング(NGS)により行われ得る。核酸ライブラリーのNGSに関する方法は、当業者に知られており、限定するものではないが、ペアエンドシーケンシング(paired-end sequencing)、SBS(sequencing by synthesis)、およびシングルリードシーケンシング(single-read sequencing)を含む。
【0236】
一実施形態では、本発明に係る方法は、ハイドロゲルマトリックスを、本方法を行うために有用な生化学および分子生物学の試薬と接触させるステップを含む。一実施形態では、ハイドロゲルマトリックスは、バーコード単位、生物学的単位、および/または解析物、たとえば個別の生物学的単位から抽出した核酸またはこれに由来する核酸などの拡散を許容することなく、生化学および分子生物学の試薬の拡散を可能にするように十分に多孔性である。一実施形態では、その後のステップを、ハイドロゲルマトリックスと接触した生化学および分子生物学の試薬を交換および/または洗浄することにより、行うことができる。
【0237】
生化学および分子生物学の試薬は、当業者によく知られており、溶液(バッファー溶液、洗浄溶液など)、界面活性剤、酵素、核酸プライマーなどの、生化学および分子生物学のアッセイを行うための既知の全ての試薬を包有する。
【0238】
一実施形態では、生化学および分子生物学の試薬の拡散は、受動拡散である。受動拡散として、限定するものではないが、浸透および拡散泳動(diffusiophoresis)が挙げられる。
【0239】
一実施形態では、生化学および分子生物学の試薬の拡散は、能動拡散である。ハイドロゲルにおける能動拡散に関する技術は、当業者によく知られており、限定するものではないが、ポンプの使用、電気浸透、および電気泳動を含む。
【0240】
一実施形態では、その後のステップは、ハイドロゲルと接触した試薬の大部分を交換することにより、行われる。
【0241】
一実施形態では、本発明に係る方法は、高価な油、チップ、および/または液滴生成器具の使用を必要としない。
【0242】
一実施形態では、本発明に係る方法は、自動化することができる。
【0243】
一実施形態では、本発明に係る方法は、ハイドロゲルマトリックスを溶解するステップを含み得る。一実施形態では、ハイドロゲルマトリックスの溶解は、本方法を通して任意の時点で起こり得る。ハイドロゲルマトリックスを溶解するための技術は、当業者によく知られており、限定するものではないが、アガラーゼなどの酵素を用いた酵素による脱重合および熱を使用した熱的な脱重合を含む。
【0244】
一実施形態では、ハイドロゲルマトリックスの溶解は、少なくとも1つのバーコード単位由来の固有のバーコードの少なくとも1つのコピー、好ましくはクローンコピーが、生物学的単位および/または解析物、たとえば個別の生物学的単位から抽出した核酸もしくは個別の生物学的単位由来の核酸などに組み込まれた後に、起こり得る。
【0245】
一実施形態では、ハイドロゲルマトリックスの脱重合は、個別の生物学的単位から抽出されるかまたはこれに由来する少なくとも1つの核酸が、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、好ましくは個別のバーコード単位由来の核酸配列のプライマーを含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに対してプライミングされた後に、起こり得る。
【0246】
本明細書中記載の方法は、限定するものではないが、単一細胞のトランスクリプトームのプロファイリング、単一細胞のジェノタイピング、フェーズ化、および単一細胞のエピゲノムのプロファイリングを含む様々な応用において、実施できる。
【0247】
開示した出願に記載される実施形態は、全てが本発明の必須の特性ではなく、むしろ本発明の実施の単なる例であることは、明らかである。単一細胞のトランスクリプトームのプロファイリング、単一細胞のジェノタイピング、フェーズ化、および/または単一細胞のエピゲノムのプロファイリングの当業者は、この分野の一般的な知識を使用して、本方法を適切に行う方法を承知している。さらに、これらステップは、本開示に列挙されているかまたは当業者に知られている科学文献および特許文書に記載されるものを含む、本開示の他のいずれかの適切なステップ、態様、および/または特性と組み合わせてもよく、かつ/またはこれらにより修正されてもよい。
【0248】
本発明は、個別の生物学的単位における遺伝子発現を解析するための方法に関する。
【0249】
単一細胞のトランスクリプトームのプロファイリングは、単一の細胞のmRNAの含有物の増幅およびそのシーケンシングに依存する。単一の細胞のトランスクリプトームの作製は、全般的に、ポリ(A)鎖を有するmRNAを、さらに増幅およびシーケンシングされ得る第1の鎖のcDNAに変換するように逆転写させる第1のステップを必要とする。
【0250】
一実施形態では、個別の生物学的単位における遺伝子発現を解析するための方法は、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合化して、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位から核酸を放出するステップと、
e)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位に由来する核酸にバーコードを付与するステップと、
f)前記各生物学的単位由来の核酸からcDNAライブラリーを合成するステップと、
g)前記各生物学的単位由来のcDNAライブラリーを増幅させるステップであって、前記各生物学的単位由来のcDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピーを、各生物学的単位由来の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含み得る。
【0251】
一実施形態では、本発明に係る個別の生物学的単位における遺伝子発現を解析するための方法は、当業者によく知られている追加的なステップを含む。このようなステップは、それら内容の全てが参照によって本明細書中に組み込まれている、Macosko et al., 2015. Cell. 161:1202-1214; Fan et al., 2015. Science. 347(6222):1258367; Klein et al., 2015. Cell. 161(5):1187-201; Gierahn et al., 2017. Nat Methods. 14(4):395-398;ならびに米国特許出願US2016-0289669号、US2016-0265069号、US2016-0060621号、およびUS2015-0376609号に記載されている。
【0252】
一実施形態では、各バーコード単位は、poly-dT核酸配列のプライマー、固有のバーコード、および/またはPCRハンドルを含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。
【0253】
一実施形態では、各バーコード単位は、poly-dU核酸配列のプライマー、固有のバーコード、および/またはPCRハンドルを含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。
【0254】
一実施形態では、各バーコード単位は、(dT)nVN核酸配列のプライマー、固有のバーコード、および/またはPCRハンドルを含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む(式中nは、5~50の範囲にあり、Vは、T/U以外の任意のヌクレオチド(すなわちA、C、またはG)を表し、Nは、任意のヌクレオチド(すなわちA、T/U、C、またはG)を表す)。
【0255】
一実施形態では、各バーコード単位は、(dU)nVN核酸配列のプライマー、固有のバーコード、および/またはPCRハンドルを含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む(式中nは、5~50の範囲にあり、Vは、T/U以外の任意のヌクレオチド(すなわちA、C、またはG)を表し、Nは、任意のヌクレオチド(すなわちA、T/U、C、またはG)を表す)。
【0256】
一実施形態では、各生物学的単位からの核酸の放出は、細胞の溶解、好ましくは非イオン性界面活性剤および/またはプロテイナーゼKを使用する細胞の溶解により、行われる。
【0257】
一実施形態では、本方法はさらに、非イオン性界面活性剤および/またはプロテイナーゼKを洗い出すステップを含む。
【0258】
一実施形態では、本方法はさらに、プロテイナーゼKを不活性化するステップを含む。一実施形態では、プロテイナーゼKの不活性化は、熱および/または化学的な阻害により行われる。
【0259】
一実施形態では、各生物学的単位由来の核酸からcDNAライブラリーを合成するステップは、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて行われる。
【0260】
一実施形態では、各生物学的単位由来の核酸からcDNAライブラリーを合成するステップは、逆転写により、すなわち逆転写酵素を使用して行われる。
【0261】
一実施形態では、逆転写酵素は、M-MLV逆転写酵素である。
【0262】
一実施形態では、cDNAライブラリーのcDNAの相補鎖は、好ましくは第2の鎖反応の構成要素を使用して、合成される。一実施形態では、cDNAライブラリーのcDNAの相補鎖は、RNAse H、DNAポリメラーゼI、および/またはDNAリガーゼを使用して合成される。
【0263】
一実施形態では、cDNAライブラリーは、cDNAフラグメントを入手するためにフラグメント化される。DNAをフラグメント化するための方法は、当該分野でよく知られており、限定するものではないが、Covarisの超音波処理およびDNAの酵素を用いた切断を含む。
【0264】
一実施形態では、cDNAのフラグメントは、ポリッシングされる。一実施形態では、cDNAフラグメントは、A鎖形成される。
【0265】
一実施形態では、アダプターが、cDNAライブラリーに付加される。アダプターは、限定するものではないが、Tn5の転位およびライゲーションを含む様々な方法を使用して、cDNAライブラリーに付加され得る。
【0266】
一実施形態では、cDNAライブラリーの増幅は、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて、行われる。
【0267】
一実施形態では、増幅のステップは、遊離する核酸配列のプライマー、すなわちバーコード単位に結合していない核酸配列のプライマーを使用して、増強され得る。
【0268】
また本発明は、個別の生物学的単位における遺伝子型を解析するための方法に関する。
【0269】
単一細胞のジェノタイピングは、シーケンシングにとって十分なDNAをもたらすための、単一細胞のDNAのWGA(全ゲノム増幅法:whole genome amplification)に依存する。WGAに関するいくつかの方法が利用可能であり、当業者によく知られている。しかしながらこれら方法のいくつかは、増幅のバイアスおよびその後の不適切なゲノムのカバー率(genome coverage)をもたらす。縮重したプライマーを用いたPCRベースの指数関数的なWGAは、配列依存的なバイアスを導入する。鎖を置換させる(strand-displacing)Φ29DNAポリメラーゼを使用するMDA(Multiple displacement amplification)は、改善を呈するが、同様に、非線形の増幅によりバイアスを導入し得る。MALBAC(Multiple annealing and loop-based amplification cycles)は、非線形な増幅に関連したバイアスを低減するために、準線型(quasilinear)の事前の増幅を導入する別の方法である。これは、その後の指数関数的な増幅のためのhigh-fidelity PCR酵素に加え、準線型の事前の増幅の段階のためのBstI DNAポリメラーゼに依存する(Zong et al., 2012. Science. 338(6114):1622-6; Lu et al., 2012. Science. 338(6114):1627-30)。
【0270】
一実施形態では、個別の生物学的単位における遺伝子型を解析するための方法は、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合化して、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位からゲノムDNAを放出するステップと、
e)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位に由来するゲノムDNAにバーコードを付与するステップと、
f)任意選択で、前記各生物学的単位由来の核酸からDNAライブラリーを合成するステップと、
g)前記各生物学的単位由来のゲノムDNAまたはDNAライブラリーを増幅させるステップであって、前記各生物学的単位由来のゲノムDNAまたはDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピーを、各生物学的単位の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含み得る。
【0271】
一実施形態では、本発明に係る個別の生物学的単位における遺伝子型を解析するための方法は、当業者によく知られているさらなるステップを含む。このようなステップは、それら内容の全てが参照によって本明細書中に組み込まれている、Hutchison et al., 2005. Proc Natl Acad Sci USA. 102(48):17332-6; Leung et al., 2016. Proc Natl Acad Sci USA. 113(30):8484-9;Wang et al., 2012. Cell. 150(2):402-12;Marcy et al., 2007. PLoS Genet. 3(9):1702-8;Gole et al., 2013. Nat Biotechnol. 31(12):1126-32; Zhang et al., 2006. Nat Biotechnol. 24(6):680-6;ならびに国際公開第2016/061517号および同第2005/003304号に記載されている。
【0272】
一実施形態では、各バーコード単位は、核酸配列のプライマー、固有のバーコード、および/またはPCRハンドルを含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。一実施形態では、各バーコード単位は、oligo-dNプライマー(ヘキサヌクレオチドd(N)またはオクタヌクレオチドd(N)プライマーなど)(式中Nは、任意のヌクレオチド(すなわち(すなわちA、T/U、C、またはG)を表す)、固有のバーコード、および/またはPCRハンドルを含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。
【0273】
一実施形態では、各生物学的単位からゲノムDNAを放出するステップは、細胞および/または核の溶解、好ましくはイオン性界面活性剤および/またはプロテイナーゼKを使用した細胞および/または核の溶解により、行われる。
【0274】
一実施形態では、本方法はさらに、イオン性界面活性剤および/またはプロテイナーゼKを洗い出すステップを含む。
【0275】
一実施形態では、本方法はさらに、プロテイナーゼKを不活性化するステップを含む。一実施形態では、プロテイナーゼKの不活性化は、熱および/または化学的な阻害により行われる。
【0276】
一実施形態では、本方法はさらに、ゲノムDNAの変性のステップを含む。ゲノムDNAを変性するための方法は、当業者によく知られており、限定するものではないが、アルカリ処理および/または熱を含む。
【0277】
一実施形態では、各生物学的単位由来の核酸からcDNAライブラリーを合成するステップは、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて行われる。
【0278】
一実施形態では、各生物学的単位由来の核酸からcDNAライブラリーを合成するステップは、プライマー誘導型の伸長により行われる。
【0279】
一実施形態では、ゲノムDNAの増幅は、WGA(whole genome amplification)により行われる。一実施形態では、ゲノムDNAの増幅は、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて行われる。
【0280】
一実施形態では、増幅したゲノムDNAは、DNAフラグメントを入手するためにフラグメント化される。DNAをフラグメント化するための方法は、当該分野でよく知られており、限定するものではないが、Covarisの超音波処理およびDNAの酵素を用いた切断を含む。
【0281】
一実施形態では、cDNAフラグメントは、ポリッシングされる。一実施形態では、cDNAフラグメントは、A鎖形成される。
【0282】
一実施形態では、アダプターがDNAフラグメントに付加される。限定するものではないが、アダプターは、Tn5の転位およびライゲーションを含む様々な方法を使用して、DNAフラグメントに付加され得る。
【0283】
一実施形態では、個別の生物学的単位における遺伝子型を解析するための方法は、DLP(direct library preparation)を実施し得る。一実施形態では、増幅したゲノムDNAは、タグ処理される。一実施形態では、増幅していないゲノムDNAが、タグ処理される。DLPおよびタグ処理は、当業者によく知られている。たとえば、それら内容の全てが参照によって本明細書中に組み込まれている、Vitak et al., 2017. Nat Methods. 14(3):302-308; Adey et al., 2010. Genome Biol. 11(12):R119; Gertz et al., 2012. Genome Res. 22(1):134-41;およびZahn et al., 2017. Nat Methods. 14(2):167-173を参照することができる。よって一実施形態では、各バーコード単位は、核酸配列のプライマー、固有のバーコード、および/またはPCRハンドルを含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、少なくとも1つのTn5アダプターに相補的な配列を有する。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、配列5’-TCGTCGGCAGCGTC-3’(配列番号1)または5’-GTCTCGTGGGCTCG-3’(配列番号2)を含む、またはからなる。
【0284】
一実施形態では、本方法は、各バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに各生物学的単位由来のタグ処理されたゲノムDNAをライゲートするステップを含む。
【0285】
一実施形態では、本方法は、DNAフラグメントの増幅のステップを含む。DNAフラグメントを増幅させるための技術は、当業者によく知られている。
【0286】
一実施形態では、DNAフラグメントの増幅は、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて行われる。一実施形態では、DNAフラグメントの増幅は、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーではない少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて、行われる。
【0287】
一実施形態では、増幅ステップは、遊離する核酸配列のプライマー、すなわちバーコード単位に結合していない核酸配列のプライマーを使用して、増強され得る。
【0288】
また本発明は、個別の生物学的単位のハプロタイプを解析するため、すなわちフェーズ化のための方法に関する。
【0289】
フェーズ化は、シーケンシングにとって十分なDNAを作製するための、高分子量、すなわち25または50キロベース超のDNAのWGA(whole genome amplification)に依存する。WGAに関するいくつかの方法が利用可能であり、当業者によく知られている。しかしながらこれら方法のいくつかは、増幅のバイアス、およびその後の不適切なゲノムのカバー率をもたらす。縮重したプライマーを用いたPCRベースの指数関数的なWGAは、配列依存的なバイアスを導入する。鎖を置換させるΦ29DNAポリメラーゼを使用するMDA(Multiple displacement amplification)は、改善を呈するが、同様に、非線形の増幅によりバイアスを導入し得る。MALBAC(Multiple annealing and loop-based amplification cycles)は、非線形な増幅に関連したバイアスを低減するために、準線型の事前の増幅を導入する別の方法である。これは、その後の指数関数的な増幅のためのhigh-fidelity PCR酵素に加え、準線型の事前の増幅の段階のためのBstI DNAポリメラーゼに依存する(Zong et al., 2012. Science. 338(6114):1622-6; Lu et al., 2012. Science. 338(6114):1627-30)。あるいは、Tn5トランスポザーゼおよびその後の増幅が、「Contiguity-Preserving Transposition」(CPT-seq)と呼ばれる方法でのライブラリーの調製(library prep)のために、使用され得る(Amini et al., 2014. Nat Genet. 46(12):1343-9)。この方法では、ゲノムDNAが、任意選択で精製された後の第1のステップは、Tn5転位を介してDNAをタグ処理することである。これは、DNAをフラグメント化し、ユニバーサルなアダプターをテンプレートに直接付加する。ギャップファイリングの後、次に、PCRを、挿入したTn5アダプターに相補的なプライマーを使用して行った後、シーケンシングを行う。
【0290】
一実施形態では、個別の生物学的単位のハプロタイプを解析するための方法は、
a)複数の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合化して、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)任意選択で、前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位から核酸を放出するステップと、
e)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位に由来する核酸にバーコードを付与するステップと、
f)任意選択で、前記各生物学的単位由来の核酸からDNAライブラリーを合成するステップと、
g)前記各生物学的単位由来の核酸またはDNAライブラリーを増幅させるステップであって、前記各生物学的単位由来の核酸またはDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピーを、各生物学的単位由来の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含み得る。
【0291】
一実施形態では、本発明に係る個別の生物学的単位のハプロタイプを解析するための方法は、当業者によく知られているさらなるステップを含む。このようなステップは、それら内容の全てが参照によって本明細書中に組み込まれている、国際特許出願公開公報第2015/126766号、同2016/130704号、同2016/61517号、同2015/95226号、同2016/003814号、同2005/003304号、同2015/200869号、同2014/124338号、同2014/093676号;米国特許出願公開公報第2015-066385号;Kuleshov et al., 2014. Nat Biotechnol. 32(3):261-6; Amini et al., 2014. Nat Genet. 46(12):1343-9; Kaper et al., 2013. Proc Natl Acad Sci USA. 110(14):5552-7; Peters et al., 2012. Nature. 487(7406):190-5、およびZheng et al., 2016. Nat Biotechnol. 34(3):303-11に記載されている。
【0292】
一実施形態では、生物学的単位を結合するための少なくとも1つの手段は、抗Tn5抗体である。一実施形態では、生物学的単位を結合するための少なくとも1つの手段は、ストレプトアビジンであり、生物学的単位は、ビオチン化した抗Tn5抗体と接触する。
【0293】
一実施形態では、各バーコード単位は、核酸配列のプライマー、固有のバーコード、および/またはPCRハンドルを含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、少なくとも1つのTn5アダプターに相補的な配列を有する。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、配列5’-TCGTCGGCAGCGTC-3’(配列番号1)または5’-GTCTCGTGGGCTCG-3’(配列番号2)を含む、またはからなる。別の実施形態では、各バーコード単位は、oligo-dNプライマー(ヘキサヌクレオチドd(N)またはオクタヌクレオチドd(N)プライマーなど(式中Nは任意のヌクレオチド(すなわちA、T/U、C、またはG)を表す))、固有のバーコード、および/またはPCRハンドルを含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。
【0294】
一実施形態では、各生物学的単位から核酸を放出するステップは、細胞および/または核の溶解、好ましくはイオン性界面活性剤および/またはプロテイナーゼKを使用した細胞および/または核の溶解により、行われる。
【0295】
一実施形態では、各生物学的単位由来の核酸からDNAライブラリーを合成するステップは、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて行われる。
【0296】
一実施形態では、本方法はさらに、イオン性界面活性剤および/またはプロテイナーゼKを洗い出すステップを含む。
【0297】
一実施形態では、本方法はさらに、プロテイナーゼKを不活性化するステップを含む。一実施形態では、プロテイナーゼKの不活性化は、熱および/または化学的な阻害により行われる。
【0298】
一実施形態では、本方法はさらに、各生物学的単位由来の核酸の変性のステップを含む。核酸を変性させるための方法は、当業者によく知られており、限定するものではないが、アルカリ処理および/または熱を含む。
【0299】
一実施形態では、各生物学的単位由来の核酸の増幅は、WGA(whole genome amplification)により行われる。一実施形態では、各生物学的単位由来の核酸の増幅は、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて、行われる。
【0300】
一実施形態では、各生物学的単位から増幅された核酸は、核酸フラグメントを得るためにフラグメント化される。DNAをフラグメント化するための方法は、当該分野でよく知られており、限定するものではないが、Covarisの超音波処理およびDNAの酵素を用いた切断を含む。
【0301】
一実施形態では、核酸フラグメントは、ポリッシングされる。一実施形態では、核酸フラグメントは、A鎖形成される。
【0302】
一実施形態では、アダプター、好ましくはTn5アダプターが、核酸フラグメントに付加される。アダプターは、限定するものではないが、Tn5転位およびライゲーションを含む様々な方法を使用して、核酸フラグメントに付加され得る。
【0303】
一実施形態では、個別の生物学的単位のハプロタイプを解析するための方法は、CTP-seq(contiguity-preserving transposition)を実施し得る。このような方法は、本明細書中参照により組み込まれている国際特許出願公開公報第2016/061517号に記載されている。
【0304】
一実施形態では、本方法は、好ましくはTn5トランスポザーゼで、各生物学的単位由来の核酸をタグ処理するステップを含む。一実施形態では、各生物学的単位由来の核酸は、高分子量のDNA(HMW-DNA)である。一実施形態では、各生物学的単位由来のHMW-DNAをタグ処理するステップは、各生物学的単位(biological)由来のHMW-DNAの連結性を保存する。
【0305】
一実施形態では、本方法は、各生物学的単位由来の核酸、好ましくは各生物学的単位由来のHMW-DNAを断片化する(disrupting contiguity)ステップを含む。断片化のための技術は、当業者によく知られており、限定するものではないが、好ましくはイオン性界面活性剤および/またはプロテイナーゼKを使用することによる、各生物学的単位由来の核酸からのTn5複合体の放出を含む。
【0306】
一実施形態では、本方法は、アダプター、好ましくはTn5アダプターのギャップファイリングのステップを含む。
【0307】
一実施形態では、本方法は、タグ処理した、各生物学的単位由来の核酸の増幅のステップを含む。一実施形態では、タグ処理した、各生物学的単位由来の核酸の増幅は、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて、行われる。
【0308】
一実施形態では、本方法は、各バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに、タグ処理した各生物学的単位由来の核酸をライゲートするステップを含む。
【0309】
一実施形態では、本方法は、タグ処理した核酸の増幅のステップを含む。核酸を増幅させるための技術は、当業者によく知られている。一実施形態では、タグ処理した核酸の増幅は、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて、行われる。
【0310】
一実施形態では、増幅ステップは、遊離する核酸配列のプライマー、すなわちバーコード単位に結合していない核酸配列のプライマーを使用して、増強され得る。
【0311】
また本発明は、個別の生物学的単位のエピゲノムを解析するための方法に関する。
【0312】
Tn5転位に基づいた単一細胞のヌクレオソーム配置の決定法が開発されており、「Assay for Transposase-Accessible Chromatin with high throughput sequencing」(ATAC-seq)と呼ばれている(Buenrostro et al., 2015. Nature. 523(7561):486-90)。この方法では、第1のステップは、インタクトな細胞または単離した核で非イオン性界面活性剤を低いパーセンテージで使用することにより、分子を、ヌクレオソームフリーのDNAへアクセスさせることができる。次に、このアクセス可能なDNAを、Tn5転位を介してタグ処理する。これは、DNAをフラグメント化し、テンプレートに直接ユニバーサルなアダプターを付加する。次に、これらアダプターに相補的なプライマーを使用してPCRを行った後、シーケンシングを行う。
【0313】
よって一実施形態では、個別の生物学的単位のエピゲノムを解析するための方法は、
a)複数の細胞の生物学的単位を複数のバーコード単位と接触させて、生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成するステップであって、各バーコード単位が固有のバーコードを含み、前記バーコード単位が、前記生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む、ステップと、
b)前記生物学的単位/バーコード単位の複合体をハイドロゲル溶液と接触させるステップと、
c)前記ハイドロゲル溶液を重合化して、ハイドロゲルマトリックスに前記生物学的単位/バーコード単位の複合体を埋め込むステップと、
d)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位から非ヌクレオソーム結合型DNAを放出するステップと、
e)前記ハイドロゲルマトリックス中の各生物学的単位に由来する非ヌクレオソーム結合型DNAにバーコードを付与するステップと、
f)任意選択で、前記各生物学的単位由来の非ヌクレオソーム結合型DNAからDNAライブラリーを合成するステップと、
g)前記各生物学的単位由来の非ヌクレオソーム結合型DNAまたはDNAライブラリーを増幅させるステップであって、前記各生物学的単位由来の非ヌクレオソーム結合型DNAまたはDNAライブラリーの増幅が、前記固有のバーコードのクローンコピーを、各生物学的単位由来の増幅産物に組み込む、ステップと、
h)前記増幅産物をシーケンシングするステップと
を含み得る。
【0314】
一実施形態では、各生物学的単位由来の非ヌクレオソーム結合型DNAまたはDNAライブラリーの増幅は、非ヌクレオソーム開始部位から開始する。非ヌクレオソーム開始部位は、転位が起こる部位、すなわちDNAがアクセス可能な部位である。任意選択で、非ヌクレオソーム開始部位は、DNAが、酵素によりフラグメント化され、DNAがライゲートされる部位である。
【0315】
一実施形態では、本発明に係る個別の生物学的単位のエピゲノムを解析するための方法は、当業者によく知られているさらなるステップを含む。このようなステップは、それら内容の全てが参照によって本明細書中に組み込まれている、国際特許出願公開公報第2014/189957号;Buenrostro et al., 2015. Nature. 523(7561):486-90;Buenrostro et al., 2013. Nat Methods. 10(12):1213-8;およびChristiansen et al., 2017. Methods Mol Biol. 1551:207-221に記載されている。
【0316】
一実施形態では、各バーコード単位は、核酸配列のプライマー、固有のバーコード、および/またはPCRハンドルを含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、少なくとも1つのアダプター配列、好ましくは少なくとも1つのIlluminaアダプター配列に相補的な配列を有する。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、少なくとも1つのTn5アダプターに相補的な配列を有する。一実施形態では、核酸配列のプライマーは、配列5’-TCGTCGGCAGCGTC-3’(配列番号1)または5’-GTCTCGTGGGCTCG-3’(配列番号2)を含む、またはからなる。
【0317】
一実施形態では、各生物学的単位から非ヌクレオソーム結合型DNAを放出するステップは、細胞の溶解、好ましくは非イオン性界面活性剤および/またはプロテイナーゼKを使用する細胞の溶解により、行われる。
【0318】
一実施形態では、各生物学的単位由来の非ヌクレオソーム結合型DNAからDNAライブラリーを合成するステップは、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて、行われる。
【0319】
一実施形態では、本方法はさらに、非イオン性界面活性剤および/またはプロテイナーゼKを洗い出すステップを含む。
【0320】
一実施形態では、本方法はさらに、プロテイナーゼKを不活性化するステップを含む。一実施形態では、プロテイナーゼKの不活性化は、熱および/または化学的な阻害により行われる。
【0321】
一実施形態では、非ヌクレオソーム結合型DNAは、タグ処理される。タグ処理するための技術は、当業者によく知られている。一実施形態では、非ヌクレオソーム結合型DNAのタグ処理は、Tn5転位、好ましくはIlluminaのアダプター配列を使用して行われる。
【0322】
一実施形態では、本方法は、各生物学的単位由来のタグ処理した非ヌクレオソーム結合型DNAを、各バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドにライゲートするステップを含む。
【0323】
一実施形態では、本方法は、各生物学的単位由来のタグ処理した非ヌクレオソーム結合型DNAの増幅のステップを含む。DNAを増幅させるための技術は、当業者によく知られている。
【0324】
一実施形態では、タグ処理した非ヌクレオソーム結合型DNAの増幅は、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて、行われる。一実施形態では、タグ処理した非ヌクレオソーム結合型DNAの増幅は、バーコード単位の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの核酸配列のプライマーではない少なくとも1つの核酸配列のプライマーを用いて、行われる。
【0325】
一実施形態では、タグ処理した非ヌクレオソーム結合型DNAの増幅は、Tn5トランスポザーゼ由来のアダプター配列を、各生物学的単位由来の増幅産物に組み込む。
【0326】
一実施形態では、増幅ステップは、遊離する核酸配列のプライマー、すなわちバーコード単位に結合していない核酸配列のプライマーを使用して、増強され得る。
【0327】
また本発明は、キットに関する。一実施形態では、本キットは、
複数のバーコード単位と、
ハイドロゲル溶液および/またはハイドロゲル溶液を調製するためのハイドロゲルモノマーと、
生化学および分子生物学のアッセイのための試薬および溶液と、
使用説明書と
を含む。
【0328】
一実施形態では、各バーコード単位は、本明細書中上記に定義される生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む。一実施形態では、各バーコード単位は、本明細書中上記に定義される少なくとも1つの核酸配列のプライマーを含む。一実施形態では、各バーコード単位は、本明細書中上記に定義される少なくとも1つの核酸のオリゴヌクレオチドを含む。
【0329】
一実施形態では、本キットはさらに、生物学的単位および/またはバーコード単位の結合のための少なくとも1つの担体を含む。
【0330】
一実施形態では、本キットは、
あらかじめ結合した複数のバーコード単位を含む担体と、
ハイドロゲル溶液および/またはハイドロゲル溶液を調製するためのハイドロゲルモノマーと、
生化学および分子生物学のアッセイのための試薬および溶液と、
使用説明書と
を含む。
【0331】
一実施形態では、各バーコード単位は、本明細書中上記に定義される生物学的単位への結合に関与する少なくとも1つの手段を含む。一実施形態では、各バーコード単位は、本明細書中上記に定義される少なくとも1つの核酸配列のプライマーを含む。一実施形態では、各バーコード単位は、本明細書中上記に定義される少なくとも1つの核酸のオリゴヌクレオチドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0332】
図1図1は、ハイドロゲル中の生物学的単位の捕捉およびバーコード付与を表す図である。以下の記号が使用される:(A)バーコード単位;(B)生物学的単位;(B)バーコード付与した生物学的単位;(C)生物学的単位を結合するための手段;(H)ハイドロゲル(ゾル状態);(H)ハイドロゲルマトリックス(ゲル状態のハイドロゲル);(H/H)固体またはゲルの状態のハイドロゲル;(1)生物学的単位およびバーコード単位の結合;(2)ハイドロゲル溶液との接触;(3)ハイドロゲルの重合化;(4)生物学的単位のバーコード付与;(5)プライマー誘導型の伸長、ライゲーション、増幅、フラグメント化、アダプター付与(Adaptering);(6)次世代シーケンシング。
図2図2は、単一のバーコード単位への複数の生物学的単位の結合を表す図である。以下の記号が使用される:(A1、A2)バーコード単位;(B1、B2)生物学的単位;(C)生物学的単位を結合するための手段;(Y)バイアスのかかったデータ;(1)生物学的単位およびバーコード単位の結合;(2-6)図1のステップ2~6。
図3図3は、単一の生物学的単位への複数のバーコード単位の結合を表す図である。以下の記号が使用される:(A1、A2)バーコード単位;(B1、B2)生物学的単位;(C)生物学的単位を結合するための手段;(1)生物学的単位およびバーコード単位の結合;(2-6)図1のステップ2~6。
図4図4は、バーコード単位への結合、捕捉、およびバーコード付与の前の、固体の担体への生物学的単位の結合を表す図である。バーコード単位は、生物学的単位よりも著しく大きく、よって、単一の生物学的単位への複数のバーコード単位の結合を妨げる。以下の記号が使用される:(A1、A2)バーコード単位;(B1、B2)生物学的単位;(C)生物学的単位を結合するための手段;(S)固体の担体;(11)固体の担体への生物学的単位の結合;(12)溶液へのバーコード単位の添加;(1)生物学的単位およびバーコード単位の結合;(2-6)図1のステップ2~6。
図5図5は、生物学的単位への結合、捕捉、およびバーコード付与の前の、固体の担体へのバーコード単位の結合を表す図である。生物学的単位は、バーコード単位よりも著しく大きいため、単一のバーコード単位への複数の生物学的単位の結合を妨げる。以下の記号が使用される:(A1、A2)バーコード単位;(B1、B2)生物学的単位;(C)生物学的単位を結合するための手段;(D)バーコード単位を結合するための手段;(S)固体の担体;(21)固体の担体へのバーコード単位の結合;(22)溶液への生物学的単位の添加;(1)生物学的単位およびバーコード単位の結合;(2-6)図1のステップ2~6。
図6図6は、バーコード単位への結合、捕捉、およびバーコード付与の前の、固体の担体への生物学的単位の結合を表す図である。バーコード単位および生物学的単位は、おおよそ同じ大きさである。バーコード単位は、単一の生物学的単位への複数のバーコード単位の結合を防止するために、限界希釈されている。以下の用語が使用される:(A)バーコード単位;(B1、B2)生物学的単位;(C)生物学的単位を結合するための手段;(S)固体の担体;(11)固体の担体への生物学的単位の結合;(12)限界濃度での溶液へのバーコード単位の添加;(1)生物学的単位およびバーコード単位の結合;(2-6)図1のステップ2~6。
図7図7は、生物学的単位への結合、捕捉、およびバーコード付与の前の、固体の担体へのバーコード単位の結合を表す図である。生物学的単位およびバーコード単位は、おおよそ同じ大きさである。生物学的単位は、単一のバーコード単位への複数の生物学的単位の結合を防止するために、限界希釈されている。以下の記号が使用される:(A1、A2)バーコード単位;(B)生物学的単位;(C)生物学的単位を結合するための手段;(D)バーコード単位を結合するための手段;(S)固体の担体;(21)固体の担体へのバーコード単位の結合;(22)限界濃度での溶液への生物学的単位の添加;(1)生物学的単位およびバーコード単位の結合;(2-6)図1のステップ2~6。
図8図8は、自身がポリ-dT核酸配列のプライマー、固有のバーコード、およびPCRハンドルを含む、オリゴヌクレオチドを含むバーコード単位を使用する、見込みのある単一細胞のRNAseqのトランスクリプトームのワークフローを表す図である。複数のバーコードのオリゴヌクレオチドが、第1のステップから存在しているが、ここでは簡便性のため、ステップ84の後では(a)として、1つのみが示されている。ステップ1-3(1-3)は、図1のように行われてもよく、または固体の担体を含んでもよく、よって図4~7の追加的なステップを含んでもよい。以下の記号が使用される:(A)バーコード単位;(B)生物学的単位;(H)ハイドロゲルマトリックス(ゲル状態のハイドロゲル);(H/H)固体またはゲルの状態のハイドロゲル;(R)ポリ(A)mRNA;(a)バーコード;(PCR)PCRハンドル;(T)ポリ(T)プライマー;(DNA1)第1の鎖のcDNA;(DNA2)第2の鎖のcDNA;(83)非イオン性界面活性剤の使用による細胞溶解:(84)バーコード付与、すなわちバーコードオリゴヌクレオチドのオリゴd(T)プライマーでのポリ(A)mRNAのプライミング;(85)第2の鎖のcDNA合成(任意選択でテンプレートのスイッチングおよび増幅を介する);(86)フラグメント化、アダプター付与、増幅、次世代シーケンシング。
図9図9は、自身が相補的なTn5アダプター核酸配列のプライマー、固有のバーコード、およびPCRハンドルを含む、オリゴヌクレオチドを含むバーコード単位を使用した、見込みのあるフェーズ化のワークフローを表す図である。複数のバーコードのオリゴヌクレオチドが、第1のステップから存在しているが、ここでは簡便性のため、ステップ94の後では、1つのみが示されている。図5および図7などのバーコード単位または図4~6などのトランスポザーゼの、固体の担体への結合が、可能である。以下の記号が使用される:(A)バーコード単位;(CPT)連結性が保存された転位DNA;(Tn5)Tn5トランスポザーゼ;(Tn5)Tn5アダプター配列;(a)バーコード;(PCR)PCRハンドル;(Tn5)Tn5アダプターのプライマー;(H)ハイドロゲル(ゾル状態);(H)ハイドロゲルマトリックス(ゲル状態のハイドロゲル);(H/H)固体またはゲルの状態のハイドロゲル;(91)バーコード単位へのトランスポザーゼの結合;(2)ハイドロゲル溶液との接触;(3)ハイドロゲルの重合化;(94)トランスポザーゼの放出;(95)ライゲーション、ギャップファイリング;(96)増幅、次世代シーケンシング。
【実施例
【0333】
実施例
本発明を、以下の実施例により示す。しかしながら、本発明はこれら実施例の特定の詳細に限定されないことを理解されたい。
【0334】
実施例1:ハイドロゲル中の個別の生物学的単位の捕捉およびバーコード付与
本発明は、個別の生物学的単位(すなわち細胞もしくは細胞群、ウイルス、オルガネラ、高分子複合体、または生体高分子)の捕捉に関する。
【0335】
本発明およびその応用は、図1に記載される連続したステップの実施に基づくものである。
【0336】
第1のステップでは、複数の生物学的単位/バーコード単位の複合体が形成され、ここで各複合体は、単一のバーコード単位および単一の生物学的単位を含んでいる(図1のステップ1)。生物学的単位/バーコード単位の複合体は、バーコード単位上への生物学的単位の結合および/または固定化により、形成され得る。よってバーコード単位はその表面に、生物学的単位と特異的または非特異的に結合するための手段を担持していなければならない。この手段として、タンパク質もしくはそのフラグメント、ペプチド、抗体もしくはそのフラグメント、核酸、炭水化物、ビタミンもしくはその誘導体、補酵素もしくはその誘導体、受容体リガンドもしくはその誘導体、および/または疎水基が挙げられる。同時に、生物学的単位は、バーコード単位の手段に結合する、天然であるかまたはそうではない、相補的な手段を担持していなければならない。たとえば、生物学的単位を結合するための手段は、生物学的単位の表面に(天然または人工的に)発現または存在する分子を対象とする抗体であり得る。別の選択肢は、生物学的単位の表面に発現または存在する分子を対象とするビオチン化抗体の使用、およびその後の、ストレプトアビジンでコーティングされたバーコード単位に対するビオチン化抗体を担持する生物学的単位の結合であり得る。
【0337】
生物学的単位/バーコード単位の複合体が形成された後、これらを、ハイドロゲル溶液と接触させ、ハイドロゲル溶液の重合後に、生物学的単位/バーコード単位の複合体が捕捉される(図1のステップ2~3)。
【0338】
次に、生化学および分子生物学のアッセイを、ハイドロゲルをいずれかの必要な試薬および/または溶液と接触させることにより、ハイドロゲルマトリックスにおいて直接行うことができる。
【0339】
たとえば、適切なハイドロゲル溶液は、アルギン酸塩であり得る。この微細な粒径は、カルシウムを用いた重合による非常に小さな穴の形成を可能にすることにより、拡散のリスクを全く伴わずに生物学的単位/バーコード単位の複合体を捕捉しながら、試薬および/または溶液のようなこれよりも小さな成分の拡散を可能にする。
【0340】
通常、生物学的単位が細胞、細胞群、核、またはオルガネラである場合、第1のステップは、その核酸含有物を放出するための生物学的単位の溶解を含む。いずれの界面活性剤のレベルも、ハイドロゲルのプラットフォームにより支援されており、溶解が困難な生物学的単位を溶解することをも可能にする。
【0341】
次に、放出された核酸に、バーコード単位の表面にコーティングされたオリゴヌクレオチドに対するプライミングを介して、バーコードが付与され得る(図1のステップ4)。通常、各バーコード単位は、少なくとも1つのプライミング部位(核酸配列のプライマー)およびバーコード配列から構成されている、オリゴヌクレオチドのクローンコピーを含む。1つの個別の生物学的単位から抽出されるかまたはこれに由来する核酸の供給源または起源の同定を可能にするために、バーコード配列は、常に、所定のバーコード単位の全てのオリゴヌクレオチドで同一であるべきである。
【0342】
バーコード付与(すなわちバーコード単位の核酸配列のプライマーに対する生物学的単位の核酸のプライミング)が達成されると、従来の生化学および分子生物学のアッセイを、依然としてハイドロゲルマトリックスに取り込まれた状態またはハイドロゲルマトリックスが溶解した後の溶液中のいずれかで、バーコード付与された核酸で行うことができる。これらは、限定するものではなく、必ずしもこの順序ではないが、プライマー誘導型の伸長、ライゲーション、増幅、フラグメント化、アダプター配列の付加、次世代シーケンシングなどを含む(図1のステップ5~6)。たとえば、ハイドロゲルとしてアルギン酸塩を使用する場合、カルシウムをハイドロゲルから洗いだして脱重合させることができる。いずれかの生化学および分子生物学のアッセイの前、特にプライマー誘導型の伸長の前に、プライミングされた、すなわちバーコード付与された核酸の安定化を、ナトリウムなどの他の陽イオンを使用して達成することができる。
【0343】
本発明の方法を実施する際の重要なステップは、単一の生物学的単位を単一のバーコード単位に結合させて1:1の複合体を形成することである。図2に示されるような、単一のバーコード単位への複数の生物学的単位の結合は、その後回収されるデータ、特に単一の細胞の次世代シーケンシングデータをゆがめる。配列解析後に、「バーコード1」を有する配列は、2つの個別の生物学的単位から集められているため、バイアスがかかっているかまたはエラーを含んでいる。
【0344】
同様に、単一の生物学的単位への複数のバーコード単位の結合は、単一の細胞の次世代シーケンシングデータをゆがめる(図3)。「生物学的単位1」(B1)から集められた配列データは、「バーコード1」および「バーコード2」(A1およびA2)により2回表される。
【0345】
いくつかの方法は、非化学両論的な生物学的単位/バーコード単位の複合体の形成の回避を支援することができる。
【0346】
図4は、上記生物学的単位を結合するための手段でコーティングされた担体表面への、目的の生物学的単位の固定化を示す(ステップ11)。担体表面へ固定されると、生物学的単位は、バーコード単位(ステップ12)、好ましくは、妨害を作製し単一の生物学的単位上に複数のバーコード単位の結合を防止するために生物学的単位と比較して大きな大きさであるバーコード単位と、接触し得る(ステップ1)。よって、生物学的単位あたり1つのバーコード単位のみが結合されるため、その後の次世代シーケンシングデータを、単一の生物学的単位において解析することが可能である。
【0347】
このような構成は、担体、たとえば、ビオチンなどの生物学的単位を結合するための手段でコーティングされた微量遠心機のチューブを使用して、容易に実施することができる。細胞などの生物学的単位は、ストレプトアビジンが結合した抗体と接触され、次に、結合を可能にするためにチューブに入れられる。過剰な細胞は、除去される。次に、ビーズなどのビオチンでコーティングされたバーコード単位が、細胞への結合を可能にするためにチューブに入れられる。過剰なビーズは、除去される。次に、アルギン酸塩を重合化させるためのカルシウムイオンとまとめられたアルギン酸塩ナトリウムなどのハイドロゲル溶液が、チューブに注がれる。次に捕捉された細胞が、たとえばチューブ上部への界面活性剤の添加などにより、処理され得る。毛細管現象により、界面活性剤は捕捉した細胞に達し、細胞膜を溶解し、細胞の核酸含有物を放出する。アルギン酸塩の孔径は、核酸の拡散を回避しつつ、それよりも小さな反応物および基質の拡散を可能にするように十分に小さい。バーコード付与は、個別の細胞由来の核酸が放出され、隣接するバーコードのビーズの核酸配列のバーコードに結合する際に、起こる。核酸に適切にバーコードが付与された後に、サンプルを洗い出し、カルシウムイオンを除去することができる。アルギン酸塩のハイドロゲルは、溶解し、さらなるステップを、チューブの溶液中で直接処理することができる。
【0348】
あるいは、バーコード単位は、上記バーコード単位を結合するための手段でコーティングされた担体表面に結合させることができる。担体に結合されると、バーコード単位は、生物学的単位、好ましくは妨害を作製し単一のバーコード単位上への複数の生物学的単位の結合を防止するために、バーコード単位と比較して大きな大きさである生物学的単位と接触し得る(図5)。
【0349】
このような構成は同様に、担体(ハイドロゲルの薄層でコーティングされており、重合後に担体全体にわたってバーコード単位を固定する、微量遠心機のチューブなど)を使用して実施することができる。次に、細胞などの生物学的単位を、バーコード単位への結合を可能にするためにチューブに入れる(ただし、バーコード単位を固定化するハイドロゲルの層がバーコード単位の最小の寸法よりも薄い場合、すなわちバーコード単位の少なくとも一部が接触する生物学的単位にアクセス可能なままである場合)。過剰な細胞は、除去される。次に、ハイドロゲル溶液をチューブに注ぎ、重合させる。次に、捕捉した細胞が、本明細書中上述されるように処理され得る。核酸に適切にバーコード付与がなされた後に、両方のハイドロゲル(すなわちチューブをコーティングした薄層および生物学的単位を捕捉したハイドロゲルマトリックス)を溶解することができ、さらなるステップを、チューブの溶液中で直接処理することができる。
【0350】
非化学量論的な生物学的単位/バーコード単位の複合体の形成を回避するための別の戦略は、目的の生物学的単位(図6)またはバーコード単位(図7)が、それぞれ限界濃度のバーコード単位または生物学的単位と、上述のように結合および/または固定される担体の使用である。好ましくは、遊離する単位(それぞれバーコード単位または生物学的単位)の濃度は、担体に結合した単位(それぞれ生物学的単位またはバーコード単位)の濃度よりも低い。よってこのことは、生物学的単位あたり最大1のバーコード単位の結合およびその逆を確保し、その後の次世代シーケンシングデータを単一の生物学的単位において解析することを可能にする。一部の生物学的単位(図6のステップ1)またはバーコード単位(図7のステップ1)は、それぞれバーコード単位または生物学的単位と結合せず、よって、いずれのデータをも生成しない。
【0351】
実施例2:単一細胞のトランスクリプトームのプロファイリング
単一細胞のトランスクリプトームのプロファイリングは、本発明の方法を使用して行うことができる多くの生化学および分子生物学のアッセイのうちの1つである(図8)。
【0352】
実施例1に記載されるようにハイドロゲル溶液中に生物学的単位/バーコード単位の複合体を形成(図1のステップ1~3)した後;任意選択で図4~7のいずれかの追加的なステップ(11および12もしくは12、または21および22もしくは22)の後に、ハイドロゲルを重合化させ、よって、生物学的単位/バーコード単位の複合体を捕捉する(図8の1~3)。
【0353】
最も一般的には、生物学的単位は、たとえば哺乳類細胞などの細胞、または単一細胞のトランスクリプトームのプロファイリングに適切な他のいずれかの細胞である。単一細胞のトランスクリプトームのプロファイリングは、単一の細胞のmRNA含有物の増幅およびそのシーケンシングに依存する。よって第1のステップは、ハイドロゲル中の細胞を直接溶解することにより、細胞のmRNA含有物を放出することである。これを行うために、細胞溶解のための非イオン性界面活性剤または他のいずれかの適切な試薬を、ハイドロゲルマトリックス上で直接使用することができる。拡散により、この試薬は、生物学的単位にまで達し、これらを溶解することができる(図8のステップ83)。
【0354】
放出されたmRNAは、局所的な環境において、バーコード単位により担持されるオリゴヌクレオチドに結合する。これらオリゴヌクレオチドは、各バーコード単位に関する複数のクローンコピーに存在し、各バーコード単位で配列に関して固有である。これらは、PCRハンドル、固有のバーコード配列、および核酸配列のプライマーを含む。
【0355】
哺乳類のmRNAは、天然の3’ポリ(A)配列を有し、よって、ポリ(T)配列を含む核酸配列のプライマーに対しプライミングすることができる(図8のステップ84)。プライミング(すなわちバーコード付与)の後に、以下の分子生物学のステップを、ハイドロゲルマトリックスまたは溶液のいずれかにおいて行うことができる。通常、第1の鎖のcDNA合成は、逆転写酵素を使用して、バーコード単位オリゴヌクレオチドの3’で起こる。
【0356】
次に、第2の鎖のcDNA合成が、任意選択でテンプレートのスイッチングおよび増幅を介して起こり得る(図8のステップ85)。次のステップは、たとえばcDNAライブラリーのフラグメント化、アダプター付与、および増幅を含む。
【0357】
バーコード付与、増幅、およびアダプター付与が行われた産物は、最後に、次世代シーケンシングによりシーケンスすることができる(図8のステップ86)。
【0358】
実施例3:フェーズ化
フェーズ化は、本発明の方法を使用して行うことができる別の分子生物学アッセイである(図9)。
【0359】
第1のステップでは、高分子量のDNA(すなわち生物学的単位)とTn5トランスポザーゼを混合することにより、溶液中でトランスポソームが構築される。場合によりタグ処理とも呼ばれるこのステップは、連結性が保存された転位DNA(CPT-DNA)フラグメントを作製し、次に、第2のステップが行われ、ここでトランスポソームを、生物学的単位を結合するための手段を含むバーコード単位と接触させる(図9のステップ91)。好適には、この手段は、Tn5トランスポザーゼと結合する。
【0360】
次に、ハイドロゲル溶液を、CPT-DNA/バーコード単位の複合体と接触させ、重合させる(図9のステップ2~3)。ハイドロゲルマトリックス中に捕捉した後、Tn5トランスポザーゼが、イオン性界面活性剤および/またはプロテイナーゼKを使用して放出され、よって、断片化が生じ、Tn5アダプター配列を含むDNAフラグメントが回収される(図9のステップ94)。
【0361】
Tn5アダプター配列を含む放出したDNAフラグメントは、局所的な環境において、バーコード単位により担持され相補的なTn5アダプター配列(たとえば配列番号1または配列番号2など)を含む核酸配列のプライマーに対しプライミングすることができる。これらオリゴヌクレオチドは、各バーコード単位に関する複数のクローンコピーに存在し、各バーコード単位で配列に関して固有である。これらは、PCRハンドル、固有のバーコード配列、およびTn5アダプター配列に相補的な核酸配列のプライマー(Tn5アダプターのプライマー、Tn5)を含む。プライミング(すなわちバーコード付与)の後、以下の分子生物学のステップを、ハイドロゲルマトリックスまたはハイドロゲルの溶解後の溶液中のいずれかで行うことができる。
【0362】
ライゲーション、ギャップファイリング、および増幅(図9のステップ95)は、ハイドロゲルマトリックスまたは溶液のいずれかにおいて起こり得る。
【0363】
バーコード付与、増幅、およびアダプター付与が行われた産物は、最後に、次世代シーケンシングによりシーケンスすることができる(図9のステップ96)。
【0364】
他のバリエーションの分子生物学は、本明細書中参照により組み込まれている国際公開第2016/061517号(たとえば図15~21中)で見出すことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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