(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】空気圧クランプ式のアダプタ
(51)【国際特許分類】
B41F 27/10 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B41F27/10
(21)【出願番号】P 2020532661
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2018084773
(87)【国際公開番号】W WO2019115699
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-09-21
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508373925
【氏名又は名称】フリント グループ ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】マークス シュラプシィ
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/194440(WO,A1)
【文献】特表2013-540617(JP,A)
【文献】特表2007-529343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0023562(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/00-33/18
B41M 1/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の中空シリンダの内径を円筒形のローラの外径に適合させるためのスリーブ形アダプタ(10)であって、内から外に見て、変形可能なベーススリーブ(3)と、任意選択で少なくとも1つの中間層(4)と、上層(5)とを備えたスリーブボディを含み、
前記スリーブ形アダプタが、第1のガス分配システム(1)に連通している少なくとも1つのガス入口(6)を有しており、
前記スリーブ形アダプタ(10)が、前記第1のガス分配システム(1)に連通された少なくとも1つの第1のガス出口(7)を有しており、該第1のガス出口(7)が、前記スリーブ形アダプタ(10)の外周面(30)に開口している、スリーブ形アダプタ(10)において、
前記スリーブ形アダプタ(10)が、さらに第2のガス分配システム(2)を含み、該第2のガス分配システム(2)が前記ガス入口(6)に連通しており、前記第2のガス分配システム(2)が中空室(12)を備えており、該中空室(12)は、圧力下にあるガスを供給されると、前記スリーブ形アダプタ(10)の少なくとも部分領域において前記ベーススリーブ(3)の変形によって前記スリーブボディの内径が減径するように、前記変形可能なベーススリーブ(3)に内部から圧力を伝達するように調整されていることを特徴とするスリーブ形アダプタ(10)。
【請求項2】
前記スリーブ形アダプタ(10)の端面に、前記ガス入口(6)としてガス接続部(13)が配設されていることを特徴とする、請求項1記載のスリーブ形アダプタ(10)。
【請求項3】
前記スリーブ形アダプタ(10)が第3のガス分配システム(11)を含み、該第3のガス分配システム(11)が前記ガス入口(6)に連通しており、前記スリーブ形アダプタ(10)が少なくとも1つの第2のガス出口(9)をさらに有しており、該第2のガス出口(9)が、前記第3のガス分配システム(11)に連通し、前記変形可能なベーススリーブ(3)の表面で前記スリーブ形アダプタ(10)の内周面(32)に開口していることを特徴とする、請求項2記載のスリーブ形アダプタ(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのガス入口(6)が、前記スリーブボデ
ィの内側に配設され、前記円筒形のローラの外周面に設けられた複数のガス出口に連通するように調整されていることを特徴とする、請求項1記載のスリーブ形アダプタ(10)。
【請求項5】
前記スリーブ形アダプタ(10)がガス制御ユニット(8)を含み、該ガス制御ユニット(8)が、前記ガス入口(6)から前記第1のガス分配システム(1)、前記第2のガス分配システム(2)および/または前記第3のガス分配システム(11)へのガスの流れを解放および/または遮断するように調整されていることを特徴とする、請求項
3記載のスリーブ形アダプタ(10)。
【請求項6】
前記ガス制御ユニット(8)が、二方コック弁、三方コック弁、少なくとも1つのスイッチ、少なくとも1つの弁、バンジョーボルト、およびこれらのユニットのうちの少なくとも2つのユニットの組合せからなる群から選択されていることを特徴とする、請求項5記載のスリーブ形アダプタ(10)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1のガス出口(7)および/または前記少なくとも1つの第2のガス出口(9)が、圧縮空気を、前記スリーブ形アダプタ(10)の長さにわたって分配して、または前記スリーブ形アダプタ(10)の端面に隣接して、放出するように調整されていることを特徴とする、請求項
3、5または6のいずれか1項記載のスリーブ形アダプタ(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1のガス出口(7)および/または前記少なくとも1つの第2のガス出口(9)が、周方向に配設された複数の穴または周方向に配設された多孔性領域として形成されていることを特徴とする、請求項
3、5、6または7のいずれか1項記載のスリーブ形アダプタ(10)。
【請求項9】
前記中空室(12)が、実質的に前記スリーブ形アダプタ(10)の長さにわたって延びるか、または前記端面の一方に隣接する領域に限定されていることを特徴とする、請求項
2または7記載のスリーブ形アダプタ(10)。
【請求項10】
円筒形のローラと、該ローラに装着された、請求項1から9までのいずれか1項記載の少なくとも1つのスリーブ形アダプタ(10)とを含むアッセンブリ。
【請求項11】
円筒形のローラと、該ローラに装着された、請求項1から9までのいずれか1項記載の少なくとも1つのスリーブ形アダプタ(10)と、該スリーブ形アダプタ(10)に装着された少なくとも1つの中空シリンダとを含むアッセンブリ。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか1項記載のスリーブ形アダプタ(10)を使用して円筒形のローラに中空シリンダを組み付ける方法であって、
a)円筒形のローラを用意し、スリーブ形アダプタ(10)を用意し、中空シリンダを用意するステップと、
b)前記スリーブ形アダプタ(10)を前記円筒形のローラに位置決めするステップと、
c)前記スリーブ形アダプタ(10)に設けられた中空室(12)内に圧力下にあるガスが流入するように前記圧力下にあるガスを前記スリーブ形アダプタ(10)に供給するステップであって、前記中空室(12)内の前記ガスは、前記スリーブ形アダプタ(10)の少なくとも部分領域で該スリーブ形アダプタ(10)の内径が、変形可能なベーススリーブ(3)の変形によって減径し、それにより前記スリーブ形アダプタ(10)が前記円筒形のローラ上にクランプされるように、前記スリーブ形アダプタ(10)の前記ベーススリーブ(3)に圧力を伝達する、ステップと、
d)前記ガスが、前記スリーブ形アダプタ(10)の第1のガス分配システム(1)により、少なくとも1つの第1のガス出口(7)を介して、前記スリーブ形アダプタ(10)の前記外周面から流出してガスクッションを形成するように、前記スリーブ形アダプタ(10)に圧力下にあるガスを供給するステップと、
e)前記スリーブ形アダプタ(10)に前記中空シリンダを装着して位置決めするステップと、
f)前記ガス供給を止めるステップであって、場合により前記スリーブ形アダプタ(10)の前記中空室(12)内の過圧を維持することができるステップと、
を含む、円筒形のローラに中空シリンダを組み付ける方法。
【請求項13】
スリーブ形アダプタ(10)を使用して組み付けられた中空シリンダを円筒形のローラから取り外す方法であって、
a)ガス供給部を装備されたローラと、請求項1から9までのいずれか1項記載のスリーブ形アダプタ(10)と、少なくとも1つの中空シリンダとを含むアッセンブリを用意するステップと、
b)前記スリーブ形アダプタ(10)に設けられた中空室(12)内に圧力下にあるガスが流入するように前記圧力下にあるガスを前記スリーブ形アダプタ(10)に供給するステップであって、前記中空室(12)内の前記ガスは、前記スリーブ形アダプタ(10)の少なくとも部分領域で該スリーブ形アダプタ(10)の内径が、変形可能なベーススリーブ(3)の変形によって減径し、それにより前記スリーブ形アダプタ(10)が前記円筒形のローラ上にクランプされるように、前記スリーブ形アダプタ(10)の前記ベーススリーブ(3)に圧力を伝達する、ステップと、
c)前記ガスが、前記スリーブ形アダプタ(10)の第1のガス分配システム(1)により、少なくとも1つの第1のガス出口(7)を介して、前記スリーブ形アダプタ(10)の前記外周面から流出してガスクッションを形成するように、前記スリーブ形アダプタ(10)に前記ガスを供給するステップと、
d)前記中空シリンダを引き抜くステップと、
を含む、中空シリンダを円筒形のローラから取り外す方法。
【請求項14】
請求項4から9までのいずれか1項記載のスリーブ形アダプタ(10)が用意され、前記円筒形のローラにガス分配部が装備されており、それにより、前記円筒形のローラが、該円筒形のローラ上に前記スリーブ形アダプタ(10)を位置決めするためにガスクッションを提供し、前記円筒形のローラ上での前記スリーブ形アダプタ(10)の位置決めの後に、前記スリーブ形アダプタ(10)に供給するためのガスが、前記円筒形のローラによって提供されることを特徴とする、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
請求項2、3、5、6、7、8または9記載のスリーブ形アダプタ(10)が用意され、前記円筒形のローラに前記スリーブ形アダプタ(10)を装着するために、該スリーブ形アダプタ(10)に、前記スリーブ形アダプタ(10)に設けられたガス接続部(13)を介してガスが供給されて、前記ガスが、前記スリーブ形アダプタ(10)の内周面に開口している少なくとも1つの第2のガス出口(9)から流出してガスクッションを形成し、前記ガスクッションが、前記円筒形のローラに対する前記スリーブ形アダプタ(10)の組付けまたは取外しスリーブ形アダプタを可能にすることを特徴とする、請求項12または13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形の中空シリンダの内径を円筒形のローラの外径に適合させるためのスリーブ形アダプタであって、内から外に見て、変形可能なベーススリーブと、場合によっては中間層と、上層と、を有するスリーブボディを含むスリーブ形アダプタに関する。さらに、本発明は、そのようなスリーブ形アダプタを含むアッセンブリ、およびそのようなスリーブ形アダプタを使用して円筒形のローラに中空シリンダを組み付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷産業において、スリーブおよびスリーブ形アダプタは、大部分がフレキソ印刷法において使用されている。フレキソ印刷では、印刷版を介して圧縮応力によってインクが印刷媒体に転写される。フレキソ印刷は、凸版印刷および凹版印刷に並んで、特に包装産業において最も重要な印刷法に数えられる。フレキソ印刷は、弾性の印刷版を特徴としており、したがって、紙、シート、および繊維素材への印刷に使用可能である。さらに、フレキソ印刷は様々なインクシステムに使用することができ、このことは、多目的な使用可能性を保証する。
【0003】
フレキソ印刷機の様々な構成は、それぞれの使用分野に個別に適合される。ここで、フレキソ印刷機は、多シリンダ型印刷機およびセンタシリンダ型印刷機というメインカテゴリーに分類することができる。種々異なる直径を有する鋼製シリンダを使用することによって、個別の印刷リピート長(周長)を実現することができる。原理的には、リピート長を補償するためのスリーブ形アダプタが鋼製シリンダに組み付けられる。スリーブ形アダプタ上には本来のスリーブが組み付けられる。このスリーブには、前組付けプロセスにおいて、印刷版または凸版スリーブが装着される。この凸版は、版板の形で、またはエンドレス印刷パターンを有する「イン・ザ・ラウンド用スリーブ」(In the round-Sleeve;ITR)の形でスリーブに組み付けることができる。
【0004】
さらに、印刷産業では、たいていスリーブ形アダプタスリーブ駆動される鋼シリンダまたはCFKシリンダ(炭素繊維強化プラスチックシリンダ)によって特徴付けられた駆動シリンダ(以下では「シリンダ」と呼ぶ)と、このシリンダ上にたいてい組み付けられるスリーブ形アダプタと、このスリーブ形アダプタ上に組み付けられる中空シリンダ(以下では「スリーブ」とも呼ぶ)と、この中空シリンダ上に組み付けられた版板と、から成る構造を使用することが一般的である。容易な組付けを可能にするために、駆動シリンダおよびスリーブ形アダプタはガス通路およびガス出口を備えており、これらのガス通路およびガス出口は、シリンダとスリーブ形アダプタとの間、およびスリーブ形アダプタと中空シリンダとの間に、それぞれ装着時のスライディングを容易にするガスクッションを形成する。これらのガスクッションは、単純な開口部を介してコンベンショナルに形成することができ、または市販のrotec(商標登録)EcoBridgeスリーブ形アダプタにおいて実現されるように多孔性領域を介して著しく最適化されて形成することができる。当然、どちらの形態も、スリーブ形アダプタのガス案内システムに連通していなければならない。
【0005】
一般に、スリーブ形アダプタへのガス送給には2つの手段が存在する。すなわち、駆動シリンダのシステム内部のガス通路によるガス送給、またはスリーブ形アダプタに対する外部のガス供給部用の別個の接続部によるガス送給である。どちらの場合にも、たいていは、欧州特許第2051856号明細書に記載されているように中間層内部にフライス加工されたガス通路またはガス分配システムが存在する。シリンダからスリーブ形アダプタへのガス送給では、この場合には空気圧式の接続部が存在せず、半径方向のガス通路がスリーブ形アダプタを通って延びるだけであるので、この移送がどれほど良好に機能するかが重要である。多くの場合、この移送は、欧州特許第1263592号明細書に記載されているように、いわゆる旋削加工部を用いて旋削加工部最適化される。これにより、空気通路は、より大きい領域から空気を使用することができるようになり、とりわけ、スリーブ形アダプタの入口開口部がシリンダの出口開口部に完全に正確に整合する必要はなく、旋削加工部によって画定された領域内に位置しさえすればよいという、取扱い時の大きな利点を提供する。しかし、ここで、たとえば印刷機において中空シリンダを交換したい場合、システム内部のガス送給の場合には、駆動シリンダによるガス供給の接続とともに組付けプロセスのために望まれる、スリーブ形アダプタと本来のスリーブとの間のガスクッションが形成されると同時に、シリンダとスリーブ形アダプタとの間にもクッションガスクッションクッションが形成され、スリーブ形アダプタを引き抜くことなく中空シリンダだけを引き抜くことが困難になる。外部から接続可能なガス供給の場合に中空シリンダを交換したい場合には、シリンダに対するスリーブ形アダプタのクランプはそれによって影響を受けず、スリーブ形アダプタとスリーブとの間にのみガスクッションが形成される。内部のガス案内において、スリーブ形アダプタのずれ滑りを低減するために、しばしば「インターロック」が使用される。インターロックは、膨出部を有するノッチであり、このノッチ内には、シリンダの表面に設けられた金属ピンが掛け金式に係合されるようになっていて、スリーブ形アダプタをわずかに回転させることにより、もはや滑脱することがなくなる。ここでは、クランプは形成されない。この構成要素は、国際公開第00/44562号に記載されており、国際公開第00/44562号には、「軸方向の相対運動」を阻止するためにアダプタスリーブがロック可能となることが開示されている。改良された形態は、国際公開第2016/135552号および米国特許第5819657号明細書に記載されている。しかし、そのような「インターロック」は、多くの機械タイプでは、それらの技術的仕様に基づいて使用不可能である。たとえこれらの仕様が使用を可能にしても、これらのシステムの取扱いは非常に厄介である。このことは、とりわけ印刷機の装備プロセスにおいて顕著である。このプロセス中の時間的制約により、しばしば、駆動シリンダの金属ピンまたはインターロック自体の損傷が生じる。これらの欠点を回避するために、これまでのところ、スリーブ形アダプタへのガス供給を外部から確保するか、または内部のガス送給の場合には、固有の複数の出口開口部を有する第2のガス回路をシリンダに組み込むかのいずれかの手段しか存在していない。これらの出口開口部は、スリーブ形アダプタの被せ嵌めおよび引抜きのためにしか働かず、切換に応じて、スリーブ形アダプタとシリンダとの間にしかガスクッションを形成することができない。この形態は、たとえば欧州特許第2532523号明細書に記載されている。そのような駆動シリンダは、唯一つのガス案内部しか有しないシリンダよりも著しく高価である。
【0006】
スリーブまたは中空シリンダに上層の外部から半径方向でスリーブを通じてガスが供給されると、スリーブまたは中空シリンダを駆動シリンダまたはスリーブ形アダプタの表面に沿って移動させることができるという解決手段も存在する。そのような製品は、たとえば国際公開第2010/096133号に記載されている。しかし、国際公開第2010/096133号に記載の構成は、内部のガス案内部を含まないか、または、とりわけスリーブ形アダプタが半径方向で空気によって通流される際にスリーブ形アダプタを駆動シリンダに固定するためのクランプの、通流するガスにより励起される付加的な機構を備えている。ここでは、ガス流が遮断された状態でしかクランプ作用が存在しない。
【0007】
印刷機自体での使用の他に、前組付けにより、スリーブ形アダプタの別の主要の使用分野が存在する。前組付けでは、スリーブが印刷のために準備され、すなわち版板が、たいていは両面粘着テープ(「テープ」とも呼ばれる)によってスリーブに固定される。前組付けユニットの装着装置において、相応するスリーブをぴたりと嵌合するように組み付けることができるようにするためには、適合するスリーブ形アダプタが必要である。そのようなスリーブ形アダプタは、組付けユニットのベースシリンダに対する良好なクランプを有しなければならないと同時に、スリーブのぴたりと嵌合した装着を保証しなければならない。さらに、スリーブ形アダプタは、スリーブ形アダプタとシリンダとの間にガスクッションを形成すると同時に、スリーブ形アダプタとスリーブとの間にもガスクッションを形成することができることが望まれる。印刷機における前記装備過程と同様に、一般にこの場合にも、スリーブ交換過程中にスリーブ形アダプタが取り外されてしまうことは望ましくない。しかし、このことは、インターロックを有しない内部のガス案内の場合では、ほぼ必ずそうであると云える。
【0008】
センタシリンダ上には、たいてい、スリーブ形アダプタが装着され、そしてスリーブ形アダプタ上には、中空シリンダが装着され、この中空シリンダ上には、版板が組み付けられている。容易な組付けを可能にするためには、センタシリンダおよびスリーブ形アダプタが、ガス通路およびガス出口を備えており、これらのガス通路およびガス出口は、シリンダとスリーブ形アダプタとの間、およびスリーブ形アダプタと中空シリンダとの間に、それぞれ装着時のスライディングを容易にするガスクッションを形成する。しかし、中空シリンダを交換したい場合、再び両間隙にクッションガスクッションが形成され、スリーブ形アダプタを引き抜くことなく中空シリンダだけを引き抜くことが困難となる。本発明の課題は、ガス供給時でもなおクランプしていて、中空シリンダまたはスリーブの引抜きのみを可能にする、容易に取外し可能または容易に組付け可能なスリーブ形アダプタを提供する点に認められる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
円筒形の中空シリンダの内径を円筒形のローラの外径に適合させるためのスリーブ形アダプタであって、内から外に見て、変形可能なベーススリーブと、任意選択で少なくとも1つの中間層と、上層と、を備えたスリーブボディを含み、スリーブ形アダプタが、第1のガス分配システムに連通している少なくとも1つのガス入口を有しており、スリーブ形アダプタが、第1のガス分配システムに連通された少なくとも1つの第1のガス出口を有しており、第1のガス出口が、スリーブ形アダプタの外周面に開口している、スリーブ形アダプタが提案される。スリーブ形アダプタは、さらに第2のガス分配システムを含み、この第2のガス分配システムはガス入口に連通しており、第2のガス分配システムは中空室を備えており、この中空室は、圧力下にあるガスを供給されると、スリーブ形アダプタの少なくとも部分領域においてベーススリーブの変形によってスリーブボディの内径が減径するように、変形可能なベーススリーブに内部から圧力を伝達するように調整されている。
【0010】
このスリーブ形アダプタは、実質的には従来技術から知られているスリーブ形アダプタのスリーブボディに相当するスリーブボディを備えている。スリーブボディは、管形状または中空の円筒体の形状を有しており、好適には内から外に見て、変形可能なベーススリーブと、任意選択で中間層と、上層と、を含む。特に、ベーススリーブと、任意選択の中間層と、上層とは、実質的に、従来技術のスリーブ形アダプタのベーススリーブと、任意選択の中間層と、上層とに相当する。
【0011】
変形可能なベーススリーブは、1つまたは複数の層から構成されていてよく、好ましくは、変形可能なベーススリーブは、1つの層からなる。変形可能なベーススリーブは、フレキシブルなセラミック層、金属層、たとえばアルミニウム、ニッケル、および同等の合金から成る金属層、または強化プラスチックまたは非強化プラスチック、またはそれらの組合せから成っていてよい。金属、合金およびセラミックの使用時では、これらは、好ましくは部分層の形で提供されており、特に穴付きプレート、線材織布またはこれらの素材のいくつかの素材の組合せの形で提供されている。繊維、フィラーまたはそれらの組合せを用いて強化された強化プラスチックが使用されることが好ましい。繊維としては、特に金属繊維、ガラス繊維および/または炭素繊維が挙げられるが、プラスチック繊維を使用することもできる。フィラーは、無機粒子または有機粒子の形で混入されていてよい。無機フィラーとしては、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩または酸化物、たとえば炭酸カルシウムまたは硫酸カルシウム、ベントナイト、二酸化チタン、酸化ケイ素、石英またはそれらの組合せを使用することができる。強化は、好適には繊維を用いて、特に好適にはガラス繊維および/または炭素繊維を用いて行われる。これらは、織布、フリース、大半が平行な繊維の種々の層またはそれらの組合せの形で使用することができる。
【0012】
プラスチックまたはプラスチック混合物としては、50℃よりも上のガラス転移温度、好ましくは70℃よりも上の、特に好ましくは80℃よりも上のガラス転移温度を有するものが挙げられる。ベーススリーブの製造を容易にするために、好適には熱硬化性の混合物および/またはUV硬化性の混合物が使用され、これらの混合物によって繊維は、繊維がプラスチックマトリックス内に埋め込まれるように含浸される。熱硬化性の混合物としては、好適には、エポキシド、不飽和ポリエステル-スチロール混合物、ポリエステル、ポリエーテルおよびポリウレタンが使用される。好ましくは、エポキシドおよび不飽和ポリエステル-スチロール混合物が使用される。
【0013】
任意選択の中間層としては、硬質の材料も変形可能な材料も使用され、これらの材料は、好ましくは変形させることができ、その後、再びその初期形状に戻すことができ、すなわち復元能力を有している。そのために、天然ゴムおよび合成ゴム、エラストマー、発泡体などの様々なポリマーが使用可能である。発泡体は、連続気孔または独立気孔またはそれらの組合せを有していてよい。独立気孔が使用されることが好ましい。発泡体は、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチロール、ポリエステルおよびポリウレタンのようなポリマーから製造される。発泡体としては、ポリウレタン発泡体が用いられると好適である。
【0014】
上層のために、硬質の材料、好適には金属、合金、セラミック、ガラス、ポリマー、たとえばポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシドおよび一般に繊維強化プラスチックまたは発泡プラスチックおよびそれらの組合せが使用される。上層の表面は、粗く形成されているか、または滑らかに形成されていてよく、好ましくは上層の表面は、中空シリンダ上に沿った容易なスライディングを可能にするために、できるだけ滑らかに形成されている。好適には上層は、形状安定性であるか、または硬質である。
【0015】
この場合、層の材料は、圧力形成が可能が可能であり、かつ数日または数時間にわたって圧力を維持できる程度にガスに対して不透過性となるように選択されていると好適である。いくつかの事例では、静電荷を回避するために層に導電性の特性を装備させることも必要になり得る(たとえば欧州特許出願公開第1346846号明細書、欧州特許出願公開第1144200号明細書、欧州特許出願公開第2051856号明細書、欧州特許出願公開第1263592号明細書参照)。
【0016】
ベース層の厚さは、0.3mm~8mmの範囲、好ましくは0.5mm~5mmの範囲、特に好ましくは2.9mm~4.5mmの範囲である。任意選択の中間層の厚さは、0.2mm~125mmの範囲、好ましくは10mm~100mmの範囲である。上層の厚さは、0.5mm~10mmの範囲、好ましくは1mm~3mmの範囲である。スリーブ形アダプタの肉厚は8mm~150mmの範囲、好ましくは15mm~75mmの範囲である。ここで、スリーブ形アダプタの肉厚は、スリーブ形アダプタのすべての層の肉厚の総和である。
【0017】
本発明によるスリーブ形アダプタの内径は、10mm~1000mmの範囲、好ましくは40mm~630mmの範囲、特に好ましくは85mm~275mmの範囲である。本発明によるスリーブ形アダプタの外径は、20mm~2000mmの範囲、好ましくは100mm~700mmの範囲、特に好ましくは125mm~300mmの範囲である。
【0018】
本発明によるスリーブ形アダプタは、第1のガス分配システムに連通している少なくとも1つのガス入口を有している。
【0019】
ガス入口は、本発明によるスリーブ形アダプタでは、第1のガス分配システムに連通されており、第1のガス分配システムはスリーブ形アダプタ内にガスを分配する。第1のガス分配システムは、複数の通路またはホースからなっていてよく、これらの通路またはホースは、ベース層および上層の内部またはベース層と上層との間、1つまたは複数の中間層の内部または種々の層の間またはそれらの組合せに延びている。好ましくは、第1のガス分配システムは、たとえば穴開け、フライス加工、彫刻、切削、切断またはそれらの組合せによって層の表面またはコアに導入される1つまたは複数の通路の形で形成されている。第1のガス分配システムは、本発明によるスリーブ形アダプタでは第1のガス出口に連通しており、第1のガス出口は、外周面に開口しており、つまり上層の表面に開口している。ここで、第1のガス出口は、上層に設けられた1つまたは複数の円形、スリット形、もしくは多角形の開口部の形で、または多孔性材料または開口部の割合が高い材料として形成されていてよい。ここで、第1のガス出口は、スリーブ形アダプタの長手方向に沿って見て、好ましくはスリーブ形アダプタの一方の側から最初の1/3の範囲にあり、この側は、好ましくは操作者に面した側である。
【0020】
本発明によるスリーブ形アダプタは、さらに第2のガス分配システムを含み、第2のガス分配システムはガス入口に連通しており、第2のガス分配システムは中空室を備え、中空室は、圧力下にあるガスを供給されると、スリーブ形アダプタの少なくとも部分領域においてベーススリーブの変形によってスリーブボディの内径が減径するように、変形可能なベーススリーブに内部から圧力を伝達するように調整されている。第2のガス分配システムは、複数の通路またはホースからなっていてよく、これらの通路またはホースは、ベース層および上層の内部またはベース層と上層との間、1つまたは複数の中間層の内部または種々の層の間またはそれらの組合せに延びている。好ましくは、第2のガス分配システムは、たとえば穴開け、フライス加工、彫刻、切削、切断またはそれらの組合せによって層の表面またはコアに導入される1つまたは複数の通路の形で形成されている。ここで、中空室は、この中空室がガス分配システムの一部を成すように、または1つもしくは複数の付加的な中空室の形で形成されるように構成されていてよい。付加的な中空室は、ベース層および上層の内部またはベース層と上層との間、1つまたは複数の中間層の内部または種々の層の間またはそれらの組合せに配置されていてよい。この付加的な中空室は、ベース層の近くにあることが好ましい。付加的な中空室は、たとえば穴開け、フライス加工、彫刻、切削、切断、またはそれらの組合せによって形成することができる。
【0021】
スリーブ形アダプタの一実施形態では、スリーブ形アダプタの端面に、ガス接続部がガス入口として配設されている。この場合、スリーブ形アダプタには、ガスクッションを形成するためのガスが提供されないシリンダ上に沿ったスライディングも可能になるようにガスが供給される。ここで、ガス接続部は、急速継手、ガス締込管継手、管、クランプ付きホースに接続した管の形で形成されていてよい。好ましくは、ガス接続部は急速継手である。
【0022】
好ましくは、スリーブ形アダプタは第3のガス分配システムを含み、第3のガス分配システムはガス入口に連通しており、スリーブ形アダプタが少なくとも1つの第2のガス出口をさらに有しており、第2のガス出口は第3のガス分配システムに連通しており、変形可能なベーススリーブの表面でスリーブ形アダプタの内周面に開口している。
【0023】
第3のガス分配システムは、複数の通路またはホースからなっていてよく、これらの通路またはホースは、ベース層および上層の内部またはベース層と上層との間、1つまたは複数の中間層の内部または種々の層の間またはそれらの組合せに延びている。好ましくは、第3のガス分配システムは、たとえば穴開け、フライス加工、彫刻、切削、切断またはそれらの組合せによって層の表面またはコアに導入される1つまたは複数の通路の形で形成されている。
【0024】
ここで、少なくとも1つの第2のガス出口は、ベーススリーブのベース層に設けられた1つまたは複数の円形、スリット形または多角形の開口部の形で形成されていてよい。第2のガス出口の開口部の配置、数および構成については、第1のガス出口に関する上記の記載および説明が当てはまる。
【0025】
スリーブ形アダプタのさらなる実施形態では、少なくとも1つのガス入口は、スリーブボディの内側に配設されており、円筒形のローラの外周面に設けられたガス出口に連通するように調整されている。この構成により、円筒形のローラ、たとえばスリーブ形アダプタが装着されている印刷版シリンダに提供されるガスが、スリーブ形アダプタの表面に達し、1つまたは複数の別の中空シリンダを組み付けるために使用されることができる。
【0026】
スリーブボディのベース層に設けられたガス入口は、スリーブ形アダプタを被せたいシリンダによって提供されるガスをスリーブ形アダプタに流入させるために使用される。ここで、ガス入口は、上層に設けられた1つもしくは複数の円形、スリット形または多角形の開口部の形で、または多孔性材料もしくは開口部の割合が高い材料として形成されていてよい。
【0027】
ここで、ガス入口は、スリーブ形アダプタの長手方向に沿って見て、好ましくはスリーブ形アダプタの一方の側から最初の1/3の範囲にあり、この側は、好ましくは操作者に面した側である。
【0028】
好ましくは、スリーブ形アダプタはガス制御ユニットを含み、ガス制御ユニットは、ガス入口から第1のガス分配システム、第2のガス分配システムおよび/または第3のガス分配システムへのガスの流れを解放および/または遮断するように調整されている。
【0029】
ガス制御ユニットの様々な設定により、ガスを意図的にどのガス分配システムにも送らないか、または1つ、2つまたは3つすべてのガス分配システムに送ることが可能となり、ひいては様々な機能を形成することが可能となる。ガスがいずれのガス分配システムにも送られない場合、独自のガス供給部を有するシリンダ上に沿ったスリーブ形アダプタのスライディングが可能である。ガスが第1のガス分配システムにのみ送られる場合、スリーブ形アダプタ上への別の中空シリンダの組付けが可能になる。なぜならば、導通されたガスが、スリーブ形アダプタと中空シリンダとの間にガスクッションを形成するからである。ガスが第2のガス分配システムのみに送られる場合、スリーブ形アダプタは、存在するシリンダ、たとえば印刷版シリンダ上にクランプ固定される。ガスが第3のガス分配システムにのみ送られる場合、それによって形成されたガスクッションを用いて、スリーブ形アダプタをシリンダに、特に独自のガス供給部を有しないシリンダに、押し被せることができる。ガスが第1のガス分配システムと第2のガス分配システムとに送られる場合、スリーブ形アダプタがずらされることなく中空シリンダを、形成されたガスクッションによってスリーブ形アダプタに沿って移動させることができる。なぜならば、スリーブ形アダプタがシリンダ上にクランプされているからである。第2のガス分配システムと第3のガス分配システムとへの同時のガス導入は可能ではあるが、しかし利点を有しない。なぜならば、クランプの効果とガスクッション形成の効果とが互いに妨害し合うか、または相殺し合うからである。同様のことは、3つの分配システムすべてに同時にガスを供給する場合にも云えるが、ただし、スリーブ形アダプタ上に沿った中空シリンダの移動はなお可能である。
【0030】
ガス制御ユニットは、1つまたは複数の構成要素からなっていてよく、スリーブ形アダプタに組み込まれていてもよいし、スリーブ形アダプタの外部に配置されていてもよい。ガス制御ユニットは、スリーブ形アダプタの内部に配置されていることが好ましい。
【0031】
好ましくは、ガス制御ユニットは、二方コック弁、三方コック弁、少なくとも1つのスイッチ、少なくとも1つの弁、バンジョーボルトおよびこれらのユニットのうちの少なくとも2つのユニットの組合せからなる群から選択されている。
【0032】
ガス制御ユニットは、たとえば、ガス入口と第1のガス分配システム、第2のガス分配システムおよび/または第3のガス分配システムとの間に挿入されている。さらに、たとえば、第1のガス分配システムが、ガス制御ユニットを介在せずにガス入口に連通しており、ガス制御ユニットが、第1のガス分配システムと第2のガス分配システムおよび/または第3のガス分配システムとの間の接続部に配置されていることも可能である。
【0033】
ガス制御ユニットの構成要素は、個別にまたはアッセンブリの形で制御することができる。この場合、制御は、手動式、またはコントロール装置によって自動式または半自動式に行うことができる。好ましくは、ガス制御ユニットは、ガス制御ユニットの制御がスリーブ形アダプタの外部から行われるように調整されかつ構成されている。たとえば、弁またはスイッチを電子式または手動式に切り換えることができる。電子式の切換の場合には、弁またはスイッチならびに場合により必要となる、バッテリまたは蓄電池の形の必要なエネルギー供給部が、スリーブ形アダプタに組み込まれていてよい。別の可能性は、コントロール装置とガス制御ユニットの構成要素との間の無線通信である。
【0034】
好ましくは、少なくとも1つの第1のガス出口および/または少なくとも1つの第2のガス出口は、圧縮空気を、スリーブ形アダプタの長さにわたって分配して、またはスリーブ形アダプタの端面に隣接して、放出するように調整されている。
【0035】
第1のガス出口および/または第2のガス出口は、好ましくは、スリーブ形アダプタの一方の端部に設けられている。これにより、形成されたエアクッションが印刷版シリンダの端面にまで達し、かつ印刷版シリンダ上へのスリーブ形アダプタの容易な装着またはスリーブ形アダプタ上への印刷スリーブの容易な装着が可能となることが確保される。スリーブ形アダプタの端部からの第1のガス出口および第2のガス出口の間隔は、好ましくは1mm~100mmの範囲、特に好ましくは5mm~50mmの範囲である。
【0036】
好ましくは、少なくとも1つの第1のガス出口および/または少なくとも1つの第2のガス出口は、周方向に配設された複数の穴または周方向に配設された多孔性領域として形成されている。
【0037】
スリーブ形アダプタのガス入口がスリーブボディの内側に配設されている場合、ガス入口も、1つもしくは複数の開口部として、または1つもしくは複数のガス透過性の多孔性領域として構成されていてよい。そのような例は、周方向に配設された複数の穿孔または周方向に配設されたガス透過性の複数の多孔性領域である。
【0038】
ある領域を多孔性およびガス透過性にするために、多孔性材料を使用することもできるし、単位面積当たりの開口部の割合が高い材料を使用することもできる。そのような材料は、篩状、レーキ状、薄片状、またはスリット形の開口部を有することができる。
【0039】
第1のガス出口、第2のガス出口および/またはガス入口は、上層またはベース層に設けられた1つまたは複数の円形、スリット形または多角形の開口部または穿孔の形で存在していてよい。しかし、開口部は、上層またはベース層および場合によっては中間層に挿設され、多孔性材料を含む多孔性領域の形で形成されていてもよい。多孔性材料とは、細孔が材料の1%~50%の範囲、特に好ましくは5%~40%の範囲、とりわけ好ましくは10%~30%の範囲の体積分率を占める材料を意味する。ここで、パーセンテージの記載は、多孔性材料全体の体積における細孔の体積分率に基づいている。孔径は、1μm~500μm、好ましくは2μm~300μm、好ましくは5μm~100μm、とりわけ好ましくは10μm~50μmの範囲である。細孔は、多孔性材料の体積全体にわたって均質に分布していることが好ましい。そのような材料の例は、連続気泡を有する発泡材料または焼結多孔性材料である。
【0040】
透過率は、たとえばISO4022:1987に従って測定され、一定の圧力と温度における所与の体積流量で、所与のフィルタ面積を有する多孔性材料を通過した後の圧力損失が測定され、層流に関しては通流係数αが決定され、乱流に関しては通流係数βが測定される。本発明における多孔性材料は、好ましくは、αに関しては0.01×10-12m2よりも大きい値、βに関しては0.01×10-7mよりも大きい値を有している。特に好ましくは、多孔性材料は、αに関しては0.05×10-12m2よりも大きい値、βに関しては0.1×10-7mよりも大きい値を有している。
【0041】
好ましくは、多孔性領域は、1つの多孔性領域または複数の多孔性領域に分割される。この場合、多孔性領域は、好ましくは周方向に環状に延びるリングとして構成されているか、または多孔性領域は、周方向に環状に延びる、中断されたリングの形で構成および配置されている複数の部分領域を含む。リングの幅は、好ましくは1cm~20cmの範囲、特に好ましくは5cm~15cmの範囲である。代替としてまたは追加として、少なくとも1つの多孔性領域を、軸方向に延びるストリップの形で提供することができる。多孔性材料の使用には、消費されるガスがより少なくなり、騒音が低減されるという利点がある。
【0042】
開口部の割合が高い材料は、500mm2の面積あたり少なくとも1つの開口部を有する材料とみなされる。好ましくは、開口部の割合が高い材料は、200mm2の面積あたり少なくとも1つの開口部を有している。ここで、開口部の直径は、0.1mm~2mmの範囲、好ましくは0.2mm~1.5mmの範囲、特に好ましくは0.3mm~1mmの範囲である。開口部の数は、1つよりも多く、好ましくは4つよりも多く、特に好ましくは6つよりも多い。開口部は、全周にわたって規則的にまたは不規則に分布されていてよく、1列または複数列に配置されていてよい。
【0043】
開口部の割合が高い材料は、その外側に位置する表面で、たとえば0.3%~90%の範囲の開口部の面積分率を有している。好ましくは、表面は、1%~90%の開口部の面積分率を有している。ここで、5%~80%の範囲の開口部の面積分率が特に好ましく、10%~70%の範囲の開口部の面積分率が特に好ましい。たとえば、開口部の面積分率は、0.3%~50%の範囲である。開口部は、連続または分岐した開口部または通路として形成され、ガス送給部に連通している。開口部の直径、または通路もしくはスリットの幅は、100μm~5mmの範囲、好ましくは500μm~2mmの範囲である。
【0044】
好ましくは、中空室は、実質的にスリーブ形アダプタの長さにわたって延びているか、または中空室は、一方の端面に隣接する領域に限定されている。ここで、中空室は、この中空室がガス分配システムの一部を成すように、ガス分配システムの通路の一方の端部の形で形成されるように、または1つもしくは複数の付加的な中空室の形で形成されるように構成されていてよい。第2のガス分配システムの通路の端部、または付加的な中空室は、スリーブ形アダプタの1つまたは複数の任意の場所に配置することができる。通路の端部または中空室は、スリーブ形アダプタの長さ全体にわたって均一にもしくは不均一に分布されているか、またはスリーブ形アダプタの一方の最初の1/3もしくは両方の最初の1/3の範囲に配置されていてよい。通路の端部または中空室は、環状に配置されていてよい。しかし、中空室は、環状の通路として形成されていてもよく、これは、ガス送給連通部が1つしか必要ないという利点を有している。好ましくは、端部または中空室は、スリーブ形アダプタの長手方向で見たとき、スリーブ形アダプタの、ガス入口とは反対側の最初の1/3の範囲内に配置されている。言い換えると、通路の端部または中空室は、操作者とは反対の側でスリーブ形アダプタの最初の1/3の範囲内に配置されている。
【0045】
本発明のさらなる態様は、円筒形のローラと、このローラに装着された、上述した少なくとも1つのスリーブ形アダプタとを含むアッセンブリに関する。そのようなアッセンブリでは、円筒形のローラは、回転しかつ別の中空シリンダを装着することのできる任意の円筒形のローラであってよい。そのようなアッセンブリは、とりわけ印刷および仕上げまたは処理プロセスで生じる。特に、凹版印刷、凸版印刷、およびオフセット印刷プロセス用のアッセンブリにおいて、本発明によるアッセンブリが使用可能である。
【0046】
本発明のさらなる態様は、円筒形のローラと、このローラに装着された、上述したような少なくとも1つのスリーブ形アダプタと、スリーブ形アダプタに装着された少なくとも1つの中空シリンダとを含むアッセンブリに関する。そのようなアッセンブリでは、円筒形のローラは、回転しかつ別の中空シリンダを装着することができる任意の円筒形のローラであってよく、スリーブ形アダプタは、円筒形のローラおよび中空シリンダの直径を適合させるために用いられる。そのようなアッセンブリは、とりわけ印刷および仕上げまたは処理プロセスで生じる。特に、凹版印刷、凸版印刷、およびオフセット印刷プロセス用のアッセンブリにおいて、本発明によるアッセンブリが使用可能である。
【0047】
本発明の別の観点は、上述したスリーブ形アダプタを使用して円筒形のローラに中空シリンダを組み付けるための方法を提供することである。この方法は:
a)円筒形のローラを用意し、前で説明したスリーブ形アダプタの1つを用意し、中空シリンダを用意するステップと、
b)スリーブ形アダプタを円筒形のローラに位置決めするステップと、
c)スリーブ形アダプタに設けられた中空室内に圧力下にあるガスが流入するように圧力下にあるガスをスリーブ形アダプタに供給するステップであって、中空室内のガスは、スリーブ形アダプタの少なくとも部分領域でスリーブ形アダプタの内径が、変形可能なベーススリーブの変形によって減径し、それによりスリーブ形アダプタが円筒形のローラ上にクランプされるように、スリーブ形アダプタのベーススリーブに圧力を伝達する、ステップと、
d)ガスが、スリーブ形アダプタの第1のガス分配システムにより、少なくとも1つの第1のガス出口を介して、スリーブ形アダプタの外周面から流出してガスクッションを形成するように、スリーブ形アダプタに圧力下にあるガスを供給するステップと、
e)スリーブ形アダプタに中空シリンダを装着して位置決めするステップと、
f)ガス供給を止めるステップであって、場合によりスリーブ形アダプタの中空室内の過圧を維持することができるステップと、
を含む。これは、さらなる実施形態に含まれている。
【0048】
本発明のさらに別の観点は、円筒形のローラから中空シリンダを取り外すための方法を提供することであり、この場合、中空シリンダは上述したスリーブ形アダプタの1つを使用して組み付けられている。この方法は:
a)ガス供給部を装備されたローラと、前で説明したスリーブ形アダプタの1つと、少なくとも1つの中空シリンダとを含むアッセンブリを用意するステップと、
b)スリーブ形アダプタに設けられた中空室内に圧力下にあるガスが流入するように圧力下にあるガスをスリーブ形アダプタに供給するステップであって、中空室内のガスは、スリーブ形アダプタの少なくとも部分領域でスリーブ形アダプタの内径が、変形可能なベーススリーブの変形によって減径し、それによりスリーブ形アダプタが円筒形のローラ上にクランプされるように、スリーブ形アダプタのベーススリーブに圧力を伝達する、ステップと、
c)ガスが、スリーブ形アダプタの第1のガス分配システムにより、少なくとも1つの第1のガス出口を介して、スリーブ形アダプタの外周面から流出してガスクッションを形成するように、スリーブ形アダプタにガスを供給するステップと、
d)中空シリンダを引き抜くステップと、
を含む。
【0049】
好ましくは、中空シリンダを組み付ける方法または中空シリンダを取り外すための方法は付加的に、スリーブボディの内側に少なくとも1つのガス入口を有するスリーブ形アダプタが用意され、円筒形のローラにガス分配部が装備されており、それにより、円筒形のローラが、円筒形のローラ上にスリーブ形アダプタを位置決めするためにガスクッションを提供し、円筒形のローラ上でのスリーブ形アダプタの位置決めの後に、スリーブ形アダプタに供給するためのガスが、円筒形のローラによって提供されることを含む。この方法は、とりわけ円筒形のローラが独自のガス供給部を含むときに使用される。この場合、本発明によるスリーブ形アダプタには、第3のガス分配システムおよび第2のガス出口開口部は設けられていない。
【0050】
好ましくは、中空シリンダを組み付ける方法または中空シリンダを取り外すための方法は、スリーブ形アダプタの端面にガス入口として配設された少なくとも1つのガス接続部を有するスリーブ形アダプタが用意され、この場合、円筒形のローラ上へのスリーブ形アダプタの装着のために、スリーブ形アダプタに、スリーブ形アダプタのガス接続部を介してガスが供給され、この場合、ガスが、スリーブ形アダプタの内周面に開口している少なくとも1つの第2のガス出口から出てガスクッションを形成し、ガスクッションが、円筒形のローラに対するスリーブ形アダプタの組付けまたは取外しを可能にすることをさらに含む。この方法は、とりわけ円筒形のローラが独自のガス供給部を有しない場合に使用される。この場合には、本発明によるスリーブ形アダプタには、第3のガス分配システムおよび第2のガス出口開口部が設けられている。
【0051】
ガスとしては、すべてのガスが使用可能であるが、好ましくは圧縮空気が使用される。事情によっては、火災または爆発を回避するために不活性ガス(たとえば、窒素、アルゴン、ヘリウムまたはCO2)を使用するか、または製品もしくは構成要素の望ましくない反応(たとえば酸化)を阻止または低減することが有益であり得る。たいてい、相応するガスクッションを形成できるようにするために、ガスは過圧下で使用され、圧力は、用途に応じて1バール~30バール、好ましくは4バール~8バールで変化する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】中間層を有しないスリーブ形アダプタの横断面図である。
【
図2】中間層を有するスリーブ形アダプタの横断面図である。
【
図3】第1のガス分配システムと第2のガス分配システムとを有するスリーブ形アダプタの縦断面図である。
【
図4】第1のガス分配システムと、第2のガス分配システムと、第3のガス分配システムとを有するスリーブ形アダプタの縦断面図である。
【
図5】第1のガス分配システムと、第2のガス分配システムと、第2のガス分配システムの端部に設けられた付加的な中空室とを有するスリーブ形アダプタの縦断面図である。
【
図6】第1のガス分配システムと、第2のガス分配システムと、第3のガス分配システムと、第2のガス分配システムの端部に設けられた付加的な中空室とを有するスリーブ形アダプタの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、スリーブ形アダプタ10の第1の実施形態の横断面図を示している。
図1のスリーブ形アダプタ10は、変形可能なベース層3と上層5とを有するスリーブボディを備えている。スリーブボディの形状は、ほぼ中空の円筒体に相当している。スリーブ形アダプタ10の外周面30は、上層5の、外側に位置する側によって形成され、スリーブ形アダプタ10の内周面32は、ベース層3の、外側に位置する面によって形成される。
【0054】
スリーブ形アダプタ10は、さらに、スリーブボディの内側に配設されたガス入口6を含んでいる。
図1に示される実施形態では、ガス入口6は、変形可能なベース層3に設けられた開口部として形成されており、好ましくは全周にわたって環状に分配された複数の開口部として形成されている。
【0055】
スリーブ形アダプタ10は第1のガス分配システム1を有しており、この第1のガス分配システム1は複数の通路20,22を含み、これらの通路20,22は、変形可能なベース層3および/または上層5内に、またはベース層3と上層5との間に延びている。フレキシブルなベース層3と上層5とに半径方向に延びる通路20は、ガス入口6を第1のガス分配システム1に接続している。
【0056】
半径方向に延びる通路20を介して、ガス分配システム1は第1のガス出口7に連通しており、第1のガス出口7は、上層5の表面に、ひいてはスリーブ形アダプタ10の外側に、開口している。スリーブ形アダプタ10は、
図1には見えていない別の第1のガス出口7を有しており、それらのガス出口7には、別の通路を介して第1のガス分配システム1によってガスを供給することができる。第1のガス出口7から流出したガスは、スリーブ形アダプタ10上への中空シリンダの簡単な装着を可能にするエアクッションを形成するために使用することができる。
【0057】
さらに、スリーブ形アダプタ10は第2のガス分配システム2を備えており、この第2のガス分配システム2のうち、
図1には、軸方向に延びる1つの通路22しか見えていない。第2のガス分配システム2は、接続通路24とガス制御ユニット8とを介して第1のガス分配システム1に連通している。ガスは、ガス入口6を起点として、第1のガス分配システム1とガス制御ユニット8とを介して、第2のガス分配システム2に案内されることができる。ガス制御ユニット8を介して、第2のガス分配システム2に対するガス流を解放または遮断することができる。
【0058】
図2は、スリーブ形アダプタ10の第2の実施形態の断面図を示している。
図2のスリーブ形アダプタ10は、内から外へ見たときに、変形可能なベース層3と、中間層4と、上層5とを有するスリーブボディを備えている。スリーブボディの形状は、ほぼ中空の円筒体に相当している。
【0059】
スリーブ形アダプタ10は、さらにスリーブボディの内側に配設されたガス入口6を含んでいる。
図1の第1の実施形態について説明したように、ガス入口6は、変形可能なベース層3に設けられた開口部として形成されており、好ましくは全周にわたって環状に分配された複数の開口部として形成されている。
【0060】
スリーブ形アダプタ10は第1のガス分配システム1を有しており、この第1のガス分配システム1は複数の通路20,22を含み、これらの通路20,22は、変形可能なベース層3、中間層4および/または上層5内に、またはこれらの層の間に延びている。第1のガス分配システム1は、フレキシブルなベース層3と中間層45とに半径方向に延びる通路20を介して、ガス入口6に接続されている。
【0061】
中間層4と上層5とに半径方向に延びる通路20を介して、ガス分配システム1は第1のガス出口7に連通されており、第1のガス出口7は、上層5の表面に開口しており、ひいてはスリーブ形アダプタ10の外側に開口している。スリーブ形アダプタ10は、
図2には見えていない別の第1のガス出口7を有しており、それらのガス出口7には、別の通路を介して第1のガス分配システム1によってガスを供給することができる。
【0062】
さらに、スリーブ形アダプタ10は第2のガス分配システム2を備えており、
図2では、第2のガス分配システム2のうち、軸方向に延びる1つの通路22しか見えていない。第2のガス分配システム2は、接続通路24とガス制御ユニット8をと介して第1のガス分配システム1に連通している。ガスは、ガス入口6を起点として、第1のガス分配システム1とガス制御ユニット8とを介して、第2のガス分配システム2に案内されることができる。ガス制御ユニット8を介して、第2のガス分配システム2に対するガス流を解放または遮断することができる。
【0063】
図3は、第2の実施形態のスリーブ形アダプタ10の縦断面図を概略的に示している。
【0064】
図2について既に説明したように、スリーブ形アダプタ10は、変形可能なベース層3と、中間層4と、上層5とを有するスリーブボディを備えている。スリーブ形アダプタ10の外周面30は、上層5の外側に位置する面によって形成され、スリーブ形アダプタ10の内周面32は、ベース層3の外側に位置する面によって形成される。
【0065】
ガス入口6は、変形可能なベース層3に設けられた1つの開口部として形成されており、好ましくは全周にわたって環状に分配された複数の開口部として形成されている。半径方向に延びる1つの通路20が、変形可能なベース層3と中間層4とに延びていて、ガス入口6を第1のガス分配システム1に接続している。
【0066】
第1のガス分配システム1は複数の通路20、22を含み、それらの通路20、22のうち、
図3には、第1のガス出口7に向かって半径方向に延びる1つの通路20しか見えていない。スリーブ形アダプタ10は、
図3には見えていない別の第1のガス出口7を有しており、それらのガス出口7には、別の通路を介して第1のガス分配システム1によってガスを供給することができ、ガス出口7は、好ましくは全周にわたって環状に分配された複数の開口部として構成されている。第1のガス出口7から流出したガスは、スリーブ形アダプタ10上への中空シリンダの簡単な装着を可能にするエアクッションを形成するために使用することができる。
【0067】
スリーブ形アダプタ10は、さらに第2のガス分配システム2を備えている。第2のガス分配システム2は、ガス制御ユニット8を介して第1のガス分配システム1に連通しており、軸方向に延びる通路22と、半径方向に、変形可能なベース層3の方向へ延びる半径方向の通路20とを備えている。
【0068】
第2のガス分配システム2の半径方向に延びる通路20は、変形可能なベース層3に接している中空室12を形成している。圧力下にあるガスが、ガス入口6とガス制御ユニット8とを介して第2のガス分配システム2に送給されると、中空室12内には、中空室12内に流入するガスによって中空室圧力を形成することができる。中空室12内に存在する、圧力下にあるガスは、変形可能なベーススリーブ3に力を加え、この力は、ベーススリーブ3を変形させ、ひいてはスリーブ形アダプタ10の内径を減少させる。スリーブ形アダプタ10がシリンダに被せられていると、内径の減少により、シリンダ上でのスリーブ形アダプタ10のクランプが行われる。
【0069】
図4は、第3の実施形態のスリーブ形アダプタ10の縦断面図を概略的に示している。
【0070】
図2について既に説明したように、スリーブ形アダプタ10は、変形可能なベース層3と、中間層4と、上層5とを有するスリーブボディを備えている。
図2および
図3に示した第2の実施形態とは異なり、第3の実施形態のスリーブ形アダプタ10は、一方の端面にガス入口6として、ガス接続部13を有している。ガス接続部13を介して、たとえば圧縮空気管路をスリーブ形アダプタ10に接続することができる。
【0071】
ガス接続部13は、ガス制御ユニット8に連通している。ガス制御ユニット8は、ガス接続部13から第1のガス分配システム1および第2のガス分配システム2ならびに第3のガス分配システム11へのガス流を解放または遮断することができる。
【0072】
第1のガス分配システム1は複数の通路20、22を含み、それらの通路20、22のうち、
図4には、第1のガス出口7に対して半径方向に延びる1つの通路20しか見えていない。スリーブ形アダプタ10は、
図4には見えていない別の第1のガス出口7を有しており、それらのガス出口7には、別の通路を介して第1のガス分配システム1によってガスを供給することができる。第1のガス出口7から流出したガスは、スリーブ形アダプタ10上への中空シリンダの簡単な装着を可能にするエアクッションを形成するために使用することができる。ガス制御ユニット8を介して、ガス流を制御することにより、エアクッションに影響を与えることができる。
【0073】
第2のガス分配システムは、軸方向に延びる通路22と、半径方向で、変形可能なベース層3の方向へ延びる半径方向の通路20とを備えている。第2のガス分配システム2の半径方向に延びる通路20は、変形可能なベース層3に接している中空室12を形成している。圧力下にあるガスが、ガス接続部13とガス制御ユニット8とを介して第2のガス分配システム2に送給されると、中空室12内には、中空室12内に流入するガスによって圧力を形成することができる。中空室12内に存在する、圧力下にあるガスは、変形可能なベーススリーブ3に力を加え、この力は、ベーススリーブ3を変形させ、ひいてはスリーブ形アダプタ10の内径を減少させる。スリーブ形アダプタ10がシリンダに被せられていると、内径の減少により、シリンダ上でのスリーブ形アダプタ10のクランプが行われる。
【0074】
図4に示される第3の実施形態のスリーブ形アダプタ10は、第3のガス分配システム11を有しており、図には、第3のガス分配システム11のうち、軸方向に延びる通路22と、半径方向に延びる通路20しか見えていない。半径方向に延びる通路20は、第3のガス分配システム11を第2のガス出口9に接続しており、第2のガス出口9は、スリーブ形アダプタ10の内側に、変形可能なベース層3に設けられた開口部として形成されている。スリーブ形アダプタ10は、
図4には見えていない別の第2のガス出口9を備えている。ガス制御ユニット8の相応する制御よって第3のガス分配システム11にガスが送給されると、このガスは、第2のガス出口9へ導かれて、この第2のガス出口9から流出する。第2のガス出口9から流出したガスにより、スリーブ形アダプタ10の内側には、シリンダ上へのスリーブ形アダプタ10の容易な装着を可能にするエアクッションが形成される。
【0075】
図5は、第4の実施形態のスリーブ形アダプタ10の縦断面図を概略的に示している。
図5に示されるスリーブ形アダプタ10は、
図2および
図3について説明した第2の実施形態のスリーブ形アダプタ10に相当しており、この場合、変形可能なベース層3と、第2のガス分配システム2の半径方向に延びる通路20の開口部との間に、中空室12が、中間層4に設けられた、全周にわたって環状に空洞化された領域26として形成されている。空洞化された領域26は、より大きな面にわたって、変形可能なベース層3に圧力を加えることを可能にするので、より大きい面にわたってスリーブ形アダプタ10の内径の減少が行われる。
【0076】
図6は、第5の実施形態のスリーブ形アダプタ10の縦断面図を概略的に示している。
図6に示されるスリーブ形アダプタ10は、
図4について説明した第3の実施形態のスリーブ形アダプタ10に相当しており、この場合、変形可能なベース層3と、第2のガス分配システム2の半径方向に延びる通路20の開口部との間に、中空室12が、中間層4に設けられた、全周にわたって環状に空洞化された領域26として形成されている。空洞化された領域26は、より大きな面にわたって、変形可能なベース層3に圧力を加えることを可能にするので、より大きい面にわたってスリーブ形アダプタ10の内径の減少が行われる。
【符号の説明】
【0077】
1 第1のガス分配システム
2 第2のガス分配システム
3 変形可能なベーススリーブ
4 中間層
5 上層
6 ガス入口
7 第1のガス出口
8 ガス制御ユニット
9 第2のガス出口
10 スリーブ形アダプタ
11 第3のガス分配システム
12 任意選択の中空室
13 ガス接続部
20 通路
22 長手方向の通路
24 接続通路
26 空洞化された領域
30 外周面
32 内周面