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特許7197592ct-DNA及びBSAにおける自己組織化した銀ナノ粒子の光化学合成及び特性評価
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ct-DNA及びBSAにおける自己組織化した銀ナノ粒子の光化学合成及び特性評価
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/02 20060101AFI20221220BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20221220BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20221220BHJP
【FI】
B22F9/02 Z
B22F1/00 K
B22F1/054
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020536092
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 TR2018050921
(87)【国際公開番号】W WO2019132846
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】2017/22282
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(31)【優先権主張番号】2018/20232
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2017年12月8日にJournal of Photochemistry and Photobiology A:Chemistry,vol.356,8 December 2017,pages1-6
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520224133
【氏名又は名称】イルディズ テクニク ユニヴァーシテシ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】アルス,ナーギス
(72)【発明者】
【氏名】メティン,エユップ
(72)【発明者】
【氏名】バティベイ,ゴヌル サーデット
(72)【発明者】
【氏名】オクテン,ヌール セナ
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-512421(JP,A)
【文献】特開2013-177678(JP,A)
【文献】Eyup Metin et al.,In-situ formation of self-assembled Ag nanoclusters on ct-DNA in the presence of 2-mercaptothioxanthone by using UV-vis light irradiation,Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry,2017年12月08日,Volume 356,p. 1-6,https://doi.org/10.1016/j.jphotochem.2017.12.009
【文献】A.Gebregeorgis et al.,Characterization of Silver/Bovine Serum Albumin (Ag/BSA) nanoparticles structure: Morphological, compositional, and interaction studies,Journal of Colloid and Interface Science,2013年,Volume 389, Issue 1,p. 31-41,https://doi.org/10.1016/j.jcis.2012.08.041
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断及び治療画像化技術の改善に使用に適した、ct-DNAにおいて1秒の短い光照射時間でも色の変化が見られる、自己組織化した銀ナノ粒子を取得する方法であって、
a)ct-DNA溶液、2-メルカプトチオキサントン溶液及びTris-HCl溶液をAgNO溶液に加えるステップ、
ここで、
前記AgNO溶液の濃度は、0.5×10-3M~3×10-3Mの範囲であり、
前記ct-DNA溶液の濃度は、1×10-5M~10×10-5Mの範囲であり、
前記2-メルカプトチオキサントンの溶液の濃度は、0.5×10-3M~3×10-3Mの範囲であり、
前記AgNO 溶液、前記ct-DNA溶液、前記2-メルカプトチオキサントン溶液、及び前記Tris-HCl溶液が、2:2:0.1:0.95の体積比で使用され、
b)均質になるまで、混合物を混合するステップ、
c)前記混合物をUVキュベットに移し、1~10cmの距離でUV光源を照射するステップ、
d)光源を照射する間、同時にUV-Vis吸収スペクトル及び蛍光発光スペクトルを取得するステップ、及び
e)UV-Visスペクトルで400~450nmの間にピークが観察された時に、銀ナノ粒子及び/或いは銀ナノクラスターが形成されたと結論付けるステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップc)で、前記混合物に1秒~150秒間、前記UV光源を照射する、請求項1に記載のct-DNAにおいて銀ナノ粒子を取得する方法。
【請求項3】
診断及び治療画像化技術の改善に使用に適した、BSAにおいて1秒の短い光照射時間でも色の変化が見られる、自己組織化した銀ナノ粒子を取得する方法であって、
a)BSA溶液、2-メルカプトチオキサントン溶液、及びTris-HCl溶液をAgNO溶液に加えるステップ、
ここで、
前記AgNO溶液の濃度は、0.5×10-3M~3×10-3Mの範囲であり、
前記BSA溶液の濃度は、0.5×10-5M~3×10-5Mの範囲であり、
前記2-メルカプトチオキサントンの溶液の濃度は、0.5×10-3M~3×10-3Mの範囲であり、
b)均質になるまで、混合物を混合するステップ、
c)前記混合物をUVキュベットに入れ、1~10cmの距離でUV光源を照射するステップ、
d)光源を照射する間、同時にUV-Vis吸収スペクトル及び蛍光発光スペクトルを取得するステップ、
e)吸収グラフからAgナノ粒子(AgNP)の形成を観察し、その後、Agナノクラスター(AgNC)の形成を観察するステップ
を含む、方法。
【請求項4】
前記ステップc)で、前記混合物に1秒~150秒間、前記UV光源を照射する、請求項に記載のBSAにおいて銀ナノ粒子を取得する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断及び治療画像化技術の改善のために取得される銀ナノ粒子に関する。
【0002】
本発明は、特に、1秒の短い光照射時間で、DNA及びBSAにおいて、2-メルカプトチオキサントンにより、銀塩が銀ナノ粒子に還元されて自己組織化した銀ナノクラスターの性質を調べることに関する。
【背景技術】
【0003】
バイオテクノロジーにより提供される利点、及びDNA-金属ナノ粒子/BSA-金属ナノ粒子における研究と応用への関心の高まりにより、多くのナノスケールの材料が開発され、診断と治療、及び生物学的システムで使用される。
【0004】
光加硫には、加硫に比べて急速硬化、室温または最小温度での生産及び反応速度の低下などのいくつかの利点がある。さらに、前述の反応で使用される化学物質及び製品は毒性が低いことが非常に重要である。
【0005】
他のナノ粒子と比較すると、貴金属ナノ粒子(特にAgNP)は、興味深い化学的、物理的及び機械的特性のために考慮され、注目される材料である。その材料への関心の基準に触媒、ナノエレクトロニクス、生物医学、センサーなど様々な分野で使用されることがある(非特許文献1、2)。
【0006】
ナノ粒子とタンパク質との相互作用を理解することは、生物学的及び医療的な応用における効果的な使用にとって重要である。相互作用により、タンパク質の構造が変化、または悪化することがある。その構造変化はまた、毒性に繋がる予期しない生物学的反応を引き起こす可能性がある。薬物送達デバイスとしてのBSAの機能の強化は、そのナノ粒子との生体共役反応に基づいている(非特許文献3)。
【0007】
最近、UV照射技術は熱技術の代替としてよく使用されている。UV照射技術が、より短い時間、より少ない工程及びより低温でのナノ粒子合成を可能にする。その技術により、DNAとBSAはナノ粒子製造の鋳型として使用でき、金属ナノ粒子をDNAとBSAにおいて合成することができる(非特許文献4)。
【0008】
従来技術における様々な製剤や方法の開発は、金属ナノ粒子がより高い収率で、より速く、より高い寸法安定性での合成を可能にすると考えられている。
【0009】
光開始剤は、光を吸収して反応開始剤ラジカルを形成する化学システムで、1つの或いはそれ以上の補助分子を必要とし、単独で使用される分子であり、UV重合システムの最も重要な成分である(非特許文献5、6)。
【0010】
銀ナノ粒子の合成は、様々な分野で数多くの応用があるため、非常に一般的である。銀ナノ粒子は、生成されたナノ粒子の寸法と形状に応じて光学特性と触媒特性を所有する。したがって、現在は、医学など様々な分野で異なる方法で使用の異なる形の銀ナノ粒子が合成される。
【0011】
先行技術で知られている銀ナノ粒子の合成の例として、特許出願TR2010 09273を与えることができる。本発明は、広範囲の微生物に作用することができる天然の生物的還元剤を使用して、銀ナノ粒子を合成する方法に関する。本発明により、長時間安定したままであり得、創傷治癒特性が増加で、環境への悪影響を減少された銀ナノ粒子が取得できる。
【0012】
従来技術では、長時間のUV照射の結果として、DNA及びBSAにおける銀ナノクラスターの光化学形成が実現する。ただし、長時間の照射はDNA及びBSAの変質を引き起こす可能性がある。さらに、この長時間の照射は、銀ナノ粒子の安定性に好ましくない影響を与える可能性がある。
【0013】
その結果、上記のすべての問題のために、関連する技術分野での改善が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】TR2010 09273
【非特許文献】
【0015】
【文献】McFarland,A.D.and Van Duyne,R.P.,“Single Silver Nanoparticles as Real-Time Optical Sensors with Zeptomole Sensitivity”,Nano Lett.,2003,3(8),p.1057-1062
【文献】Nie,S.and Emory,S.R.,“Probing Single Molecules and Single Nanoparticles by Surface-Enhanced Raman Scattering”,Science,1997,275(5303),p.1102-1106
【文献】Prasanth,S.,et al.,“Exploring the interaction of L-cysteine capped CuS nanoparticles with bovine serum albumin (BSA) a spectroscopic study”,RSC Advances,2016,6,p.58288-58289
【文献】Kundu,S.,“Formation of self-assembled Ag nanoparticles on DNA chains with enhanced catalytic activity”,Phys.Chem.Chem.Phys,2013,15(33),p.14107-14119
【文献】Cokbaglan,L.,Arsu,N.,Yagci,Y.,Jockusch,S.&Turro,N.J.,“2-Mercaptothioxanthone as a novel photoinitiator for free radical polymerization”,Macromolecules,2003,36,p.2649-2653
【文献】Aydin M.,Arsu N.and Yagci Y.,“Thioxanthone acetic acid derivatives as photoinitiators for free radical polymerization”,Macromolecular Rapid Communications,2003,24,p.718-723
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記の要件を満たし、すべての欠点を排除し、いくつかの追加の利点をもたらす、ct-DNA及びBSAにおける自己組織化した銀ナノ粒子の光化学合成及び特性評価に関する。
【0017】
本発明の目的は、銀ナノ粒子(AgNP)及びナノクラスター(AgNC)の光化学合成を実施することである。
【0018】
本発明の目的は、安定剤及び光還元剤として2-メルカプトチオキサントンの使用することにより、銀ナノ粒子の合成速度、収率及びナノ粒子の寸法の安定性を高めることである。
【0019】
本発明の目的は、1秒の短い光照射時間に、DNA及びBSAにおいて、2-メルカプトチオキサントンにより、銀塩が銀ナノ粒子に還元された結果として、銀ナノクラスターの自己組織化を可能にすることである。
【0020】
本発明の目的は、光化学合成により得られた銀ナノクラスターの特性を調べることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するために、本発明は、DNA及びBSAにおいて銀ナノ粒子を形成する、したがって銀ナノクラスターを形成するために使用される方法に関連し、光還元剤として、2-メルカプトチオキサントンが使用されることを特徴とする。
【0022】
本発明の構造的特徴及びすべての利点は、以下に示す詳細な説明によってより明確に理解され、したがって、この詳細な説明を考慮して評価を行わなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この詳細な説明では、1秒の短い光照射時間に、DNA及びBSAにおいて、2-メルカプトチオキサントンにより、銀塩が銀ナノ粒子に還元されて自己組織化した銀ナノクラスターが有する特性の調査を、主題をよりよく理解するために例を参照して説明するが、限定的な効果をもたらすことはない。
【0024】
本発明は、安定剤及び光還元剤として2-メルカプトチオキサントンを使用することにより、光化学合成による銀ナノ粒子(AgNP)及びナノクラスター(AgNC)を得ることに関する。本発明では、1秒の短い光照射時間に、DNA及びBSAにおいて、2-メルカプトチオキサントンにより、銀塩が銀ナノ粒子に還元され、自己組織化した銀ナノクラスターが調査される。
【0025】
本発明の一つの実施形態は、DNA及び/或いはBSAにおいて銀ナノ粒子(AgNP)及び銀ナノクラスターを形成する方法に関し、前記方法の特徴は、2-メルカプトチオキサントンが光還元剤として使用されることである。
【0026】
DNA及びBSAにおける選択的ナノ粒子(金、銀など)の自己組織化は、ナノ電子デバイスの開発を可能にする。一部のチオキサントンの化合物は、抗腫瘍活性のために、抗癌治療に使用されている。ここでは、光化学照射によって銀塩を銀ナノ粒子に還元するための光還元剤として選択されている2-メルカプトチオキサントンは、その構造内のチオール基により、ナノ粒子の安定化にも効果的である。さらに、照射の結果として形成されたセチルラジカルは、非常に優れた光還元剤の挙動を示す。
【0027】
別の局面において、本発明は、ct-DNAにおいて自己組織化した銀ナノ粒子を合成する方法に関し、前記方法は、以下のステップを含む:
a.ct-DNA溶液、2-メルカプトチオキサントン溶液、及びTris-HCl溶液をAgNO3溶液に加えるステップ、
b.均質になるまで、混合物を混合するステップ、
c.混合物をUVキュベットに移し、1~10cmの距離でUV光源を照射するステップ、
d.光源を照射する間、同時にUV-Vis吸収スペクトル及び蛍光発光スペクトルを取得するステップ、
e.UV-Visスペクトルで400~450nmの間にピークが観察された時に、銀ナノ粒子及び/或いは銀ナノクラスターが形成されたと結論付けるステップ。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、ステップaで使用されるAgNO3溶液は、0.5×10-3M~3×10-3Mの濃度であり、好ましくは1×10-3Mの濃度を有する。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、ステップaで使用されるct-DNA溶液は、1×10-5M~10×10-5Mの濃度であり、好ましくは5×10-5Mの濃度を有する。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、ステップaで使用される2-メルカプトチオキサントン溶液は、0.5×10-3M~3×10-3Mの濃度であり、好ましくは1×10-3Mの濃度を有する。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、ステップaで使用されるAgNO3溶液、ct-DNA溶液、2-メルカプトチオキサントン溶液、及びTris-HCl溶液は、2:2:0.1:0.95の体積比で使用される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、ステップcで、UV光源として、浜松ライトニングキュアLC8スポットUV光が使用される。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、ステップcで、混合物に、7cmの距離でUV光源を照射する。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、ステップcで、混合物に、1秒~150秒、好ましくは30秒~120秒、例えば30秒、40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、90秒、100秒、110秒、120秒間UV光源を照射する。
【0035】
別の局面において、本発明は、BSAにおいて自己組織化した銀ナノ粒子を合成する方法に関し、前記方法は、以下のステップを含む:
a.BSA溶液、2-メルカプトチオキサントン溶液、及びTris-HCl溶液をAgNO3溶液に加えるステップ、
b.均質になるまで、混合物を混合するステップ、
c.混合物をUVキュベットに入れ、1~10cmの距離でUV光源を照射するステップ、
d.光源を照射する間、同時にUV-Vis吸収スペクトル及び蛍光発光スペクトルを取得するステップ、
e.吸収グラフからAgナノ粒子(AgNP)の形成を観察し、その後、Agナノクラスター(AgNC)の形成を観察するステップ。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、ステップaで使用されるAgNO3溶液は、0.5×10-3M~3×10-3Mの濃度であり、好ましくは1×10-3Mの濃度を有する。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、ステップaで使用されるBSA溶液は、0.5×10-5M~3×10-5Mの濃度であり、好ましくは1×10-5Mの濃度を有する。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、ステップaで使用される2-メルカプトチオキサントン溶液が0.5×10-3M~3×10-3Mの濃度であり、好ましくは1×10-3Mの濃度を有する。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、ステップaで使用されるAgNO3溶液、ct-DNA溶液、2-メルカプトチオキサントン溶液、及びTris-HCL溶液は、2:2:0.1:0.95の体積比で使用される。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、ステップcで、UV光源として、浜松ライトニングキュアLC8スポットUV光が使用される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、ステップcで、混合物に、7cmの距離でUV光源を照射する。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、ステップcで、混合物は1秒~150秒、好ましくは30秒~120秒、例えば30秒、40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、90秒、100秒、110秒、120秒間UV光源を照射する。
【0043】
前述の2つの光化学合成において、金属塩をナノ粒子とナノクラスターに還元する光還元剤として、2-メルカプトチオキサントンが使用され、DNAやBSAを損傷することなくナノクラスターを形成するため、光源として光化学照射が使用される。
【0044】
DNAとBSAは、生物学的システムの診断に不可欠である。
【0045】
UV-Visライトによる照射は、2-メルカプトチオキサントンの物質を刺激することにより、還元粒子を作成するのに効果的である。
【0046】
本発明により、診断及び治療において非常に重要である銀ナノ粒子及びナノクラスターの合成は、従来技術と比較して、寸法制御された方法及びはるかに短い時間で達成された。
【0047】
本発明は、主題をよりよく理解するために、例を用いて説明されるが、限定的な効果をもたらすことはない。
【実施例1】
【0048】
ct-DNAにおける自己組織化銀ナノ粒子の光化学合成
-1mlの5×10-5Mのct-DNA溶液、0.05mlの1×10-3Mの2-メルカプトチオキサントン(TXSH)溶液、及び0.95mlのTris-HCl溶液を、1mlの1×10-3MのAgNO3溶液に加え、
-均一な分布を提供するために、総溶液量が3mlの混合物をビーカーで10分間混合し、
-ビーカーから石英製のキュベットに移した溶液に、浜松ライトニングキュアLC8スポットUV光を7cmの距離から照射し、
-照射時間に応じて、UV-Vis吸収スペクトルと蛍光発光スペクトルを同時に取得し、
-照射時間に応じて、吸収グラフからAgナノ粒子(AgNP)の形成を観察し、その後、Agナノクラスター(AgNC)の形成を観察する。
【0049】
照射時間に応じて、照射時間0~30秒でct-DNAにおいて形成されたAgNPのUV-Vis吸収スペクトルで428nm付近の銀ナノ粒子における特性ピークが観察され、溶液の変色により、銀ナノ粒子の形成を確認する。照射時間が長くなると、450nmの吸光度値が増加する。照射時間0~30秒でct-DNAにおいて形成されたAgNPのUV-Vis吸収スペクトルで観察されるように、照射前は無色であった溶液は、照射1秒後でも色の変化を示す。照射時間が長くなると、428nmのピークがより明確に現れる。
【0050】
照射時間に応じて、照射時間0~120秒でct-DNAにおいて形成されたAgNPのUV-Vis吸収スペクトルで428nm付近の銀ナノ粒子における特性なピークが現れ、溶液には照射時間30秒と比較して変色がある。照射時間が長くなると、428nmの吸光度値が増加する。照射時間0~120秒でct-DNAにおいて形成されるAgNPのUV-VIS吸収スペクトルで観察されるように、最初は無色であった溶液には、は、照射後に色の変化を示し始める。照射時間が長くなると、428nmのピークがより明確に現れる。照射時間と銀ナノ粒子形成の関係は120秒後に最適レベルに達し、吸収スペクトルはほぼ一定のままである。
【0051】
cT-DNA+TXSH+AgNO3溶液の照射時間に応じて、取得された蛍光発光をスペクトルでは、照射時間10秒後、20秒後、及び30秒後に増加するAgNPの濃度に応じて、表面プラズモン共鳴の影響により、380nmで刺激された溶液から蛍光発光の減少が観察される。
【0052】
同様に、照射時間が120秒まで長くなると、120秒間照射された溶液の蛍光発光スペクトルで、AgNPが溶液の蛍光発光を強く減少させ、120秒後には、蛍光発光がほとんど残っていないことが観察される。
【0053】
照射時間30秒で形成されたAgNPの寸法は40~60nmの間で変化し、形成されたAgNCの寸法はそれぞれ600nmと測定される。120秒間照射された溶液では、AgNPの寸法が縮小し、AgNPの寸法が30~50nmであることが観察される。
【実施例2】
【0054】
BSAの存在下での単分散銀ナノ粒子の光化学合成
-1mlの1×10-5MのBSA溶液、0.05mlの1×10-3Mの2-メルカプトチオキサントン(TXSH)溶液、及び0.95mlのTris-HCl溶液を、1mlの1×10-3MのAgNO3溶液に加え、
-均一な分布を提供するために、総溶液量3mlの混合物をビーカーで10分間混合し、
-ビーカーから石英製のキュベットに移した溶液に、浜松ライトニングキュアLC8スポットUV光を7cmの距離から照射し、
-照射時間に応じて、UV-Vis吸収スペクトルと蛍光発光スペクトルを同時に取得し、
-照射時間に応じて、吸収グラフからAgナノ粒子(AgNP)の形成を観察し、その後、Agナノクラスター(AgNC)の形成を観察する。
【0055】
照射時間0~180秒でBSAにおいて形成されたAgNPのUV-Vis吸収スペクトルで観察されるように、AgNPに還元されたAg+イオンの表面プラズモン共鳴(SPR)が1秒の照射後に発生する。照射時間に応じて、SPRの強度は180秒後に増加し、0から1.04の光学濃度値まで増加する。照射前は無色であった溶液は、3分間の照射後、薄茶色に変わる。この変化は、BSAで形成されたAgNP及びAgNCの存在を示している。
【0056】
180秒間照射された溶液の蛍光発光スペクトルでは、390nmで刺激されたサンプルの照射前の刺激グラフでTX-SHの発光スペクトルには、観察される。1秒間の照射の結果、発光強度が2倍に増加したことが観察される。この変化は、形成されたナノ粒子に繋がるTX-SHの発光強度に対する影響を示している。このことは、照射時間の増加によって形成されたAgNP及びAgNCが、TX-SHの発光を消滅させることにより、蛍光発光強度を減少させることを示している。
【0057】
30秒間照射された溶液の蛍光発光スペクトルでは、465nmの励起波長に発光が取得されたサンプルの強度が、最初の1秒の照射の結果として、390nmのものと強度が増加したことが観察され、照射時間を30秒に増やすと、発光強度が増加するものの、1秒間照射した場合の値よりも低いことが観察される。
【0058】
SEM画像から得られた寸法分析では、AgNPの寸法が21~49nmであることがわかる。ナノクラスターの寸法は122~564nmであることが観察される。
【0059】
本発明の方法によって、BSA及びDNA上に自己組織化銀ナノクラスターが形成され、それらが単分散寸法を有することは、使用された2-メルカプトチオキサントンによるものであり、1秒という短い照射時間で銀ナノ粒子を形成できることが明らかになった。