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特許7197604冷却セグメント及びその製造方法、非燃焼加熱喫煙物品、並びに非燃焼加熱喫煙システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】冷却セグメント及びその製造方法、非燃焼加熱喫煙物品、並びに非燃焼加熱喫煙システム
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/17 20200101AFI20221220BHJP
   A24D 1/20 20200101ALI20221220BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20221220BHJP
【FI】
A24D3/17
A24D1/20
A24F40/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020555714
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2019044305
(87)【国際公開番号】W WO2020100884
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2018213392
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】本溜 哲也
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特許第5771338(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/162934(WO,A1)
【文献】特開2012-065633(JP,A)
【文献】特表2013-532953(JP,A)
【文献】国際公開第2017/207585(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/17
A24D 1/20
A24F 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙と、前記紙上に設けられたポリマーを含むポリマー層と、を含むポリマー塗工紙を含む非燃焼加熱喫煙物品用の冷却セグメントであって、
前記ポリマー層が前記ポリマー塗工紙の一方の面にのみ形成されており、前記ポリマー塗工紙の前記ポリマー層形成面が、前記冷却セグメントの軸方向1mm当たり100から150mmの表面積を有する冷却セグメント。
【請求項2】
前記ポリマー層が、さらに揮発性香料成分及びエアロゾル生成基材の少なくとも一方を含む請求項1に記載の冷却セグメント。
【請求項3】
紙と、前記紙上に設けられたポリマーを含むポリマー層と、を含むポリマー塗工紙を含む非燃焼加熱喫煙物品用の冷却セグメントであって、
前記ポリマー層が、さらに揮発性香料成分及びエアロゾル生成基材の少なくとも一方を含み、
前記揮発性香料成分及び前記エアロゾル生成基材の少なくとも一方が前記ポリマー層内に保持されている、冷却セグメント。
【請求項4】
前記ポリマーのガラス転移温度が400℃以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の冷却セグメント。
【請求項5】
前記ポリマー層が多孔質構造を有する請求項1からのいずれか一項に記載の冷却セグメント。
【請求項6】
前記ポリマー塗工紙がギャザーされて前記冷却セグメント内に配置されており、前記ギャザーにより形成された溝が前記冷却セグメントの軸方向に延びている請求項1からのいずれか一項に記載の冷却セグメント。
【請求項7】
前記ポリマー塗工紙の一方又は両方の面に前記ポリマー層が設けられている請求項に記載の冷却セグメント。
【請求項8】
矩形状の前記ポリマー塗工紙を複数含み、
前記矩形状のポリマー塗工紙の長手方向の長さが、前記冷却セグメントの径よりも長く、
前記矩形状のポリマー塗工紙の長手方向が、前記冷却セグメントの軸方向と略平行となるように配置されている請求項1からのいずれか一項に記載の冷却セグメント。
【請求項9】
ストランド状の前記ポリマー塗工紙を複数含み、
前記ストランド状のポリマー塗工紙の長手方向の長さが、前記冷却セグメントの径よりも短く、
前記複数のストランド状のポリマー塗工紙が、前記冷却セグメント内に充填されている請求項1からのいずれか一項に記載の冷却セグメント。
【請求項10】
たばこ含有セグメントと、請求項1からのいずれか一項に記載の冷却セグメントと、を備える非燃焼加熱喫煙物品。
【請求項11】
請求項10に記載の非燃焼加熱喫煙物品と、前記たばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、を備える非燃焼加熱喫煙システム。
【請求項12】
前記加熱装置による加熱温度が400℃以下である請求項11に記載の非燃焼加熱喫煙システム。
【請求項13】
前記紙上に前記ポリマーを含む塗工液を塗布して前記ポリマー塗工紙を製造する工程を備える請求項1からのいずれか一項に記載の冷却セグメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却セグメント及びその製造方法、非燃焼加熱喫煙物品、並びに非燃焼加熱喫煙システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼を利用して喫煙を行う通常の燃焼喫煙物品(たばこ)は、1mm程度の幅に刻まれたたばこ乾燥葉に、香料、保湿剤及び適度な水分等が添加されたたばこ充填物を、紙製のラッパーで円柱状に巻装したたばこ含有セグメントと、酢酸セルロース等からなる繊維又はひだ付けした紙を、紙製のラッパーで円柱状に巻装したマウスピースセグメントとを有する。前記たばこ含有セグメントと前記マウスピースセグメントとはライニングペーパーで接続されている。使用者が前記たばこ含有セグメント端部にライター等で着火し、前記マウスピースセグメント端部から吸引することで喫煙が行われる。前記たばこ含有セグメント先端は800℃を超える温度で燃焼する。
【0003】
このような通常の燃焼喫煙物品の代替として、燃焼の代わりに加熱を利用した非燃焼加熱喫煙物品及び非燃焼加熱喫煙システムが開発されている(例えば特許文献1~6)。加熱温度は燃焼喫煙物品における燃焼温度よりも低く、例えば400℃以下で加熱される。非燃焼加熱喫煙物品では、たばこ含有セグメントのたばこ充填物は、グリセリン、プロピレングリコール(PG)、トリエチルシトレート(TEC)、トリアセチン等のエアロゾル生成基材を含む。エアロゾル生成基材は加熱により気化し、吸引によりマウスピースセグメント内の冷却セグメントに移動し、冷却されてエアロゾルの生成をより確実にする。吸引時、該エアロゾルも一緒に吸引されるため、使用者の満足感を確保することができる。
【0004】
非燃焼加熱喫煙システムは一般的に、通常の燃焼喫煙物品と類似した形状を有する円柱状の非燃焼加熱喫煙物品と、電池、コントローラー、ヒーター等を含む加熱装置とを備える。ヒーターは、電気抵抗によるヒーターや、IHによるヒーターが挙げられる。電気抵抗によるヒーターの加熱方法としては、非燃焼加熱喫煙物品の外側からヒーターで加熱する方法、針状やブレード状のヒーターを非燃焼加熱喫煙物品の先端からたばこ充填物を含むたばこ含有セグメント内に挿入して加熱する方法等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5292410号
【文献】特許第5771338号
【文献】特表2013-507906号公報
【文献】国際公開第2017/198838号
【文献】特許第5877618号
【文献】特表2016-506729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、加熱により気化したエアロゾル生成基材(以下、エアロゾル気化成分とも示す)は、冷却セグメントにおいて主に冷却されて蒸気から粒子への凝縮が起こり、エアロゾルとなる。ここで、通常の燃焼喫煙物品のように煙成分の濾過機能や吸口の硬さを担保するために繊維や紙を多量に充填したフィルターセグメントを冷却セグメントとしてそのまま用いると、エアロゾル気化成分の冷却は十分に行われるが、充填密度が高いためエアロゾルが濾過されてしまい、使用者の満足感を十分に確保することができない。また、たばこ含有セグメントに揮発性香料成分が含まれる場合、非燃焼加熱喫煙物品では加熱温度が低いため、揮発性香料成分の揮発量が少ないものもある。同じように繊維や紙の充填密度が高いと揮発性香料成分も濾過されてしまい、揮発性香料成分の供給量が不十分となる。
【0007】
非燃焼加熱喫煙物品用の冷却セグメントとして、例えば特許文献2には、ポリ乳酸シート等のポリマーからなるシートをギャザー等した低抵抗支持要素を含む構成が開示されている。また、特許文献4には、空洞の円柱部の外周に穿孔を設け、吸引時に穿孔から外気を導入し、エアロゾル気化成分と外気とを接触させて冷却する構成が開示されている。しかしながら、エアロゾル気化成分の高冷却性と、エアロゾルの低濾過性とをより両立できる非燃焼加熱喫煙物品用の冷却セグメントの開発が望まれている。
【0008】
本発明は、エアロゾル気化成分の冷却性能が高く、かつ、エアロゾルの濾過性が低い冷却セグメント、該冷却セグメントを備える非燃焼加熱喫煙物品及び非燃焼加熱喫煙システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る冷却セグメントは、紙と、前記紙上に設けられたポリマーを含むポリマー層と、を含むポリマー塗工紙を含む非燃焼加熱喫煙物品用の冷却セグメントである。
【0010】
本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品は、たばこ含有セグメントと、本発明に係る冷却セグメントと、を備える。
【0011】
本発明に係る非燃焼加熱喫煙システムは、本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品と、たばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、を備える。
【0012】
本発明に係る冷却セグメントの製造方法は、前記紙上に前記ポリマーを含む塗工液を塗布して前記ポリマー塗工紙を製造する工程を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エアロゾル気化成分の冷却性能が高く、かつ、エアロゾルの濾過性が低い冷却セグメント、該冷却セグメントを備える非燃焼加熱喫煙物品及び非燃焼加熱喫煙システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るポリマー塗工紙の一例を示す断面図である。
図2】本発明に係る多孔質構造を有するポリマー層の一例の断面を撮影したSEM像である。
図3】本発明に係る冷却セグメントの第一の実施形態の1を示す(a)斜視図及び(b)断面図である。
図4】本発明に係る冷却セグメントの第一の実施形態の2を示す(a)斜視図及び(b)断面図である。
図5】本発明に係る冷却セグメントの第二の実施形態を示す(a)斜視図及び(b)断面図である。
図6】本発明に係る冷却セグメントの第三の実施形態を示す(a)斜視図及び(b)断面図である。
図7】本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品の第一の実施形態の一例を示す断面図である。
図8】本発明に係る非燃焼加熱喫煙システムの一例であって、(a)非燃焼加熱喫煙物品を加熱装置に挿入する前の状態、(b)非燃焼加熱喫煙物品を加熱装置に挿入して加熱する状態を示す模式図である。
図9】実施例1及び比較例1におけるパフ毎のグリセリン量を示すグラフである。
図10】実施例1及び比較例1におけるパフ毎のメンソール量を示すグラフである。
図11】本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品の第二の実施形態の一例を示す断面図である。
図12】実施例2及び3、並びに比較例2~4における蒸気温度の最高温度を示すグラフである。
図13】実施例2及び3、並びに比較例3及び4におけるパフ数に対するグリセリン量を示すグラフである。
図14】実施例2及び3、並びに比較例3及び4におけるパフ数に対するニコチン量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[冷却セグメント]
本発明に係る冷却セグメントは、ポリマー塗工紙を含む非燃焼加熱喫煙物品用の冷却セグメントである。前記ポリマー塗工紙は、紙と、前記紙上に設けられたポリマーを含むポリマー層と、を含む。冷却セグメントとは、非燃焼加熱喫煙物品において、たばこ含有セグメントより吸い口端側に位置し、エアロゾル気化成分を冷却するセグメントを示す。
【0016】
本発明では、冷却セグメントが、紙と、前記紙上に設けられたポリマー層とを含むポリマー塗工紙を含み、前記ポリマー塗工紙はポリマーからなるシートよりも成形性が良好である。具体的には、所定の硬さ及び厚みを有する紙の土台上にポリマー層が形成されているため、ポリマーからなるシート(フィルム)とは異なり、少量でも折りたたんで所望の形状とすることができる。そのため、前記ポリマー塗工紙にギャザーを施す等してまとめて冷却セグメント内に配置した場合にも、冷却セグメント内において高い空隙率を保持することができる。これにより、エアロゾルの低濾過性を実現することができる。また、前記ポリマー塗工紙は成形性が良好であるため、エアロゾル気化成分の冷却効率を高める構造を冷却セグメント内に形成することができる。さらに、ポリマー塗工紙に設けられたポリマー層のポリマーが、エアロゾル気化成分と接触して相転移し、吸熱を生じるため、単位面積当たりの冷却効果が高い。また、単独ではシート(フィルム)に成形できない吸熱性に優れる材料であっても、紙上に薄く塗工することで使用することができ、冷却効果を向上させることができるため、その分シートの使用量を低減でき、結果としてエアロゾルの低濾過性を実現できる。以下、本発明の詳細について説明する。
【0017】
(ポリマー塗工紙)
本発明に係るポリマー塗工紙は、紙と、前記紙上に設けられたポリマーを含むポリマー層と、を含む。本発明に係るポリマー塗工紙の一例を図1に示す。図1に示されるポリマー塗工紙3は、紙1上にポリマー層2が設けられている。なお、図1ではポリマー層はポリマー塗工紙の一方の面にのみ設けられているが、ポリマー層はポリマー塗工紙の両方の面に設けられていてもよい。
【0018】
紙は支持体として機能するものであれば特に限定されないが、フィルター巻上適性の観点から、紙の坪量は35g/m以上であることが好ましく、35~70g/mであることがより好ましい。また紙の通気性は低いことが好ましく、通気度0がより好ましい。紙の厚さは特に限定されないが、例えば30~70μmであることができる。
【0019】
ポリマー層は、ポリマーを含む。ポリマーの種類は特に限定されないが、生分解性ポリマーや、可食性ポリマーが好ましい。また、冷却セグメント内の温度においてポリマーが相転移し、吸熱を生じるようにできる観点から、ポリマーのガラス転移温度(Tg)は400℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。ポリマーのTgの下限は特に限定されないが、例えば40℃以上であることができる。なお、ポリマーのTgは、具体的には示差走査熱量計(商品名:「DSC7000」、日立ハイテクサイエンス製)で測定される値である。このようなポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロースアセテート、トレハロース、マルトース、スクロース、マルチトール、グルコース、WAX、蝋、硬化油等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、紙への塗工性が良好である観点から、ポリマーとしてはPVAもしくはポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(POVACOAT)が好ましい。特にPVAはTgが低いため相転移による吸熱効果が得られやすく、また水との親和性が高いためエアロゾル中の水蒸気を吸着し、冷却効果が得られやすい。
【0020】
ポリマーがPVAである場合、PVAの平均重合度は1500以下であることが好ましい。PVAの平均重合度が1500以下であることにより、紙への塗工性が向上し、紙上に均一にポリマー層を形成することができる。PVAの平均重合度は100以上1300以下であることがより好ましく、300以上1200以下であることがさらに好ましく、500以上1000以下であることが特に好ましい。なお、PVAの平均重合度はJISK6726-1994ポリビニルアルコール試験方法に準拠して測定される値である。
【0021】
また、ポリマーがPVAである場合、PVAのけん化度は70モル%以上99モル%以下であることが好ましい。後述するようにポリマー層が揮発性成分を含む場合、PVAのけん化度が99モル%以下であることにより、水への溶解性が向上し、揮発性成分の放出性能が向上する。PVAのけん化度は75モル%以上99モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上99%モル%以下であることがさらに好ましい。なお、PVAのけん化度はJISK6726-1994ポリビニルアルコール試験方法に準拠して測定される値である。
【0022】
ポリマー層は、さらに揮発性香料成分及びエアロゾル生成基材の少なくとも一方(以下、揮発性成分とも示す)を含むことが好ましい。通常の燃焼喫煙物品では、高温の燃焼部が燃え進むにつれて、たばこ含有セグメントのうち燃焼部近傍のみが加熱され、その部分に存在する揮発性成分が揮発して使用者に吸引される。すなわち、燃焼喫煙物品のたばこ含有セグメント長手方向に存在する揮発性成分は、吸引の終始にわたってほぼ均一に揮発して供給される。一方、非燃焼加熱喫煙物品では、ヒーターによりたばこ含有セグメントの長手方向全体が加熱されるため、たばこ含有セグメントに含まれる揮発性成分は、前半の吸引でその多くが揮発してしまう場合がある。一方、揮発性成分をたばこ含有セグメントに続く冷却セグメント内に含ませる場合、使用前に揮発性成分が揮発して外部へ放出される可能性がある。
【0023】
冷却セグメント内に配置されたポリマー塗工紙のポリマー層が揮発性成分を含むことにより、揮発性成分はポリマー層内に保持されているため、使用前での揮発性成分の揮発を抑制することができる。また、エアロゾル気化成分を冷却する際にポリマー層の一部がゴム状態になる又は溶解し、徐々にポリマー層から揮発性成分が放出される。これにより、吸引の終始にわたって安定的に揮発性成分を供給することができる。また、揮発性成分が冷却セグメント内に含まれることで、揮発性成分の気化、昇華等により、煙中の熱量が吸収され、冷却効果が見込める。
【0024】
揮発性香料成分の種類は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、2-アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス-アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、2,3-ブタンジオン、2-ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブソリュート、β-カロテン、ニンジンジュース、L-カルボン、β-カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミル油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、DL-シトロネロール、クラリセージエキストラクト、ココア、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ-デカラクトン、γ-デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2-メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリン酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、2-エチル-3,(5または6)-ジメチルピラジン、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、2-エチル-3-メチルピラジン、ユーカリプトール、フェネグリークアブソリュート、ジェネアブソリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ-ヘプタラクトン、γ-ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス-3-ヘキセン-1-オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-1-ブテニル)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、4-(パラ-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブソリュート、β-イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、コーラナッツティンクチャー、ラブダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナリル、ロベージ根油、マルトール、メープルシロップ、メンソール、メントン、酢酸L-メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル-2-ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、4’-メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、3-メチル吉草酸、ミモザアブソリュート、トウミツ、ミリスチン酸、ネロール、ネロリドール、γ-ノナラクトン、ナツメグ油、δ-オクタラクトン、オクタナール、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス根油、パルミチン酸、ω-ペンタデカラクトン、ペパーミント油、プチグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、3-プロピリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ティーディスティレート、α-テルピネオール、酢酸テルピニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、1,5,5,9-テトラメチル-13-オキサシクロ(8.3.0.0(4.9))トリデカン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、2-トリデカノン、クエン酸トリエチル、4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)2-ブテン-4-オン、2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン、4-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)2-ブテン-4-オン、2,3,5-トリメチルピラジン、γ-ウンデカラクトン、γ-バレロラクトン、バニラエキストラクト、バニリン、ベラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュート、たばこ植物(たばこ葉、たばこ茎、たばこ花、たばこ根、およびたばこ種)の抽出物が挙げられ、特に好ましくはメンソールである。また、これらの揮発性香料成分は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。また、エアロゾル生成基材は加熱によりエアロゾルを生成し得る材料であり、特に限定されないが、例えばグリセリン、プロピレングリコール(PG)、トリエチルシトレート(TEC)、トリアセチン、1,3-ブタンジオール等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0025】
ポリマー層中の揮発性成分の含有量は、ポリマー層100質量%に対して20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。前記含有量が20質量%以上であることにより、揮発性成分を吸引の終始にわたってより安定的に供給することができる。また、前記含有量が60質量%以下であることにより、揮発性成分のポリマー層からの染み出しを十分に抑制することができる。前記含有量は10質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
ポリマー層の厚さは30μm以下が好ましい。ポリマー層の厚さが30μm以下であることにより、揮発性成分が放出されやすくなり、揮発性成分を吸引の終始にわたってより安定的に供給することができる。ポリマー層の厚さは5μm以上25μm以下がより好ましく、10μm以上25μm以下がさらに好ましい。
【0027】
ポリマー層は多孔質構造を有することが好ましい。例えば、揮発性成分が多孔質構造の孔の内部に存在することで、加熱により該多孔質構造の一部が破壊され、内部の揮発性成分が徐々に放出される。これにより、吸引の終始にわたって揮発性成分を均一に供給することができる。本発明に係る多孔質構造を有するポリマー層の一例の断面を1500倍で撮影したSEM像を図2に示す。図2において、紙1上に形成されたポリマー層2は複数の微細な孔を有し、孔の内部に揮発性成分が存在する。
【0028】
ポリマー層が多孔質構造を有する場合、多孔質構造の平均孔径は、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましい。なお、多孔質構造の平均孔径はCD-SEMにより測定される値である。
【0029】
多孔質構造の形成方法は特に限定されないが、例えば後述するように、ポリマー層用の塗工液の調製時に、ポリマーと、揮発性成分とを乳化剤により乳化するとミセルが形成されるため、該ミセル由来の多孔質構造を形成することができる。この場合、多孔質構造の平均孔径及び空孔率は、前記乳化剤の使用量により調整することができる。
【0030】
(冷却セグメントの構成)
本発明に係る冷却セグメントは、前述した本発明に係るポリマー塗工紙を含めば特に限定されない。以下、具体的な実施形態を示すが、本発明に係る冷却セグメントはこれらに限定されない。
【0031】
本発明に係る冷却セグメントの第一の実施形態の1及び2の(a)斜視図及び(b)断面図を図3及び図4に示す。図3及び図4に示される冷却セグメント5は、ポリマー塗工紙3と、ポリマー塗工紙3を包むラッパー4とを備える。ポリマー塗工紙3は、紙と、前記紙上に設けられたポリマーを含むポリマー層と、を含み、ギャザーされて冷却セグメント5のラッパー4内に配置されている。前記ギャザーにより形成された溝は、冷却セグメント5の軸方向、すなわち図3及び図4の水平方向に延びている。冷却セグメント5内においてポリマー塗工紙3がこのような構造を有することで、冷却セグメント5の軸方向におけるエアロゾルの通過性を維持しつつ、ポリマー塗工紙3の表面積を増加させることができるため、エアロゾルの濾過性が低くなり、かつ、エアロゾル気化成分の冷却性能が高くなる。なお、ギャザーにより形成される溝の数は特に限定されない。図3では、ポリマー塗工紙3がギャザーされて冷却セグメント5のラッパー4内に配置される前に、予め冷却セグメント5の軸方向に折れ線(クリンプ又はクレープとも呼ばれる)が複数設けられている。一方、図4では、ポリマー塗工紙3に前記折れ線は設けられていない。図3のポリマー塗工紙3は、図4のポリマー塗工紙3と比較して、冷却セグメント5の軸方向に折れ線が複数設けられているため、ポリマー塗工紙3の折れ曲がりがシャープである。
【0032】
前記第一の実施形態において、ポリマー塗工紙3のポリマー層形成面は、冷却セグメント5の軸方向1mm当たり100から280mmの表面積を有することが好ましい。ポリマー層形成面の表面積が前記範囲内であることにより、エアロゾルの低濾過性を維持しつつ、エアロゾル気化成分の冷却効率を向上させることができる。なお、ポリマー塗工紙3のポリマー層形成面の、冷却セグメント5の軸方向1mm当たりの表面積とは、冷却セグメント5内に配置されたポリマー塗工紙3のポリマー層形成面の表面積(mm)を、冷却セグメント5の軸方向の長さ(mm)で割った値である。
【0033】
ポリマー層はポリマー塗工紙3の一方の面にのみ形成されていてもよく、両方の面に形成されていてもよいが、ポリマー層がポリマー塗工紙3の一方の面にのみ形成されている場合、前記表面積は100から150mmの範囲内であることが好ましく、120から150mmの範囲内であることがより好ましく、130から150mmの範囲内であることがさらに好ましい。一方、ポリマー層がポリマー塗工紙3の両方の面に形成されている場合、前記表面積は200から300mmの範囲内であることが好ましく、240から300mmの範囲内であることがより好ましく、260から300mmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明に係る冷却セグメントの第二の実施形態の(a)斜視図及び(b)断面図を図5に示す。図5では、冷却セグメント5のラッパー4内に矩形状のポリマー塗工紙3が複数含まれる。ポリマー塗工紙3の長手方向の長さは、冷却セグメント5の径(冷却セグメント5の軸方向と垂直な面における断面の差し渡し長さ)よりも長い。また、ポリマー塗工紙3の長手方向は、冷却セグメント5の軸方向、すなわち図5の水平方向と略平行となるように配置されている。ここで、「略平行」とは、対象となる方向に対して±10°以内の方向を示す。冷却セグメント5内においてポリマー塗工紙3がこのような構造を有することで、ポリマー塗工紙3の表面積を増加させつつ、冷却セグメント5の軸方向におけるエアロゾルの通過性を維持することができるため、エアロゾル気化成分の冷却性能が高くなり、かつ、エアロゾルの濾過性が低くなる。ポリマー塗工紙3の短手方向の長さ(幅)は特に限定されないが、0.2mm以上5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上3mm以下であることがより好ましい。
【0035】
本発明に係る冷却セグメントの第三の実施形態の(a)斜視図及び(b)断面図を図6に示す。図6では、冷却セグメント5のラッパー4内にストランド状(ひも状)のポリマー塗工紙3が複数含まれる。ポリマー塗工紙3は冷却セグメント5内に充填されている。ポリマー塗工紙3の長手方向の方向は特に限定されず、図6(b)に示されるように冷却セグメント5の軸方向に対して不特定の方向であることができる。冷却セグメント5内においてポリマー塗工紙3がこのような構造を有することで、ポリマー塗工紙3が短いことにより、ポリマー塗工紙3の表面積を増加させつつ、エアロゾルの通過性を維持することができるため、エアロゾル気化成分の冷却性能が高くなり、かつ、エアロゾルの濾過性が低くなる。ポリマー塗工紙3の長手方向の長さは特に限定されないが、冷却セグメント5の径よりも短いことができ、例えば1mm以上10mm以下であることができる。また、ポリマー塗工紙3の短手方向の長さは特に限定されないが、例えば0.5mm以上2mm以下であることができる。
【0036】
冷却セグメントの形状は特に限定されないが、例えば柱状であることができる。冷却セグメントが柱状である場合、冷却セグメントの周の長さは16~25mmであることが好ましく、20~24mmであることがより好ましく、21~23mmであることがさらに好ましい。また、冷却セグメントの軸方向の長さは、5~70mmであることが好ましく、5~50mmであることがより好ましく、5~30mmであることがさらに好ましい。冷却セグメントの断面の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、多角形等であることができる。また、穿孔があってもよい。
【0037】
[冷却セグメントの製造方法]
本発明に係る冷却セグメントの製造方法は、紙上にポリマーを含む塗工液を塗布してポリマー塗工紙を製造する工程を備える。前記方法によれば、本発明に係る冷却セグメントを好適に製造することができる。
【0038】
前記塗工液の調製方法は特に限定されないが、例えば、ポリマーと、必要に応じて添加される揮発性成分とが水系分散媒に分散している分散液を調製することができる。揮発性香料成分としてメンソール等の常温において固体の成分を用いる場合、前記固体の成分をエタノール等に予め溶解させることが好ましい。具体的には、例えば前記固体の成分を、エタノールに溶解させ、あらかじめ水に分散させたポリマー液に添加する。必要に応じて乳化剤やグリセリンのようなエアロゾル生成基材等を添加して、分散液を調製することができる。乳化剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0039】
前記分散液では、前記固体の成分はエタノール中に溶解しており、溶解物とポリマーが分散液(エタノール水溶液)に分散している。前記分散液を塗布して乾燥すると、エタノールと水は揮発して除去されるため、エタノールと水が存在していた部分は孔となる。したがって、形成されるポリマー層は多孔質構造を有し、孔の内部には前記固体の成分が存在すると考えられる。また、乳化剤を用いる場合には、エタノール、乳化剤及び前記固体の成分を含むミセルが形成される。エタノール及び水が除去されるとミセル部分には孔が形成され、該孔の内部には前記固体の成分が残留する。したがって、形成されるポリマー層は多孔質構造を有し、孔の内部には前記固体の成分が存在すると考えられる。多孔質構造の孔径は乳化剤の使用量等により調節することができ、例えば乳化剤の使用量が少ないほど孔径は大きくなる。孔内に揮発性成分を十分に保持して加熱により徐々に放出させる観点から、孔径は大きい方が好ましい。すなわち、乳化剤の使用量は少ない方が好ましい。分散液中の乳化剤の濃度は0質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また、分散液中のポリマーの濃度は10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。また、エタノールを用いる場合、分散液中のエタノール濃度は、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。分散液中の揮発性成分の濃度は5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0040】
次に、前記塗工液を紙上に塗布して乾燥することができる。前記塗工液の紙への塗布量は、形成されるポリマー層の厚さに応じて適宜選択することができる。乾燥時の温度は例えば60℃以上200℃以下であることができる。これにより、紙上にポリマー層が形成されたポリマー塗工紙が得られる。
【0041】
得られたポリマー塗工紙は、ラッパー内に配置することができる。ポリマー塗工紙の形状及びラッパー内での配置は特に限定されず、例えば前述した第一から第三の実施形態の冷却セグメントにおけるポリマー塗工紙の形状及び配置が挙げられる。
【0042】
第一の実施形態では、例えばポリマー塗工紙をクレープ等の処理によりじゃばら状に折り畳むことでポリマー塗工紙を所望の形状に成形することができる。具体的には、ポリマー塗工紙をクレープロールでクレープ加工した後、トランスポートジェットでギャザーし始めて、トングで仕上がり円柱サイズまでギャザーする。その後、ラッパーで巻装し、ラッパーの端(巻装した際に重なり合う部分)にラップ糊ガンでホットメルトを塗布し、クーラーバーで冷却する。最後に、カッターで所定の長さに切断することで、冷却セグメントが得られる。クレープを形成しない場合には、クレープロール部でのクレープ加工を省略することができる。
【0043】
また、第二の実施形態では、ポリマー塗工紙を短冊状に切断し、複数の短冊状のポリマー塗工紙を筒状のラッパー内に入れる、又はラッパーで巻くことにより、冷却セグメントを得ることができる。
【0044】
また、第三の実施形態では、ポリマー塗工紙をストランド状(ひも状)に切断し、複数のストランド状のポリマー塗工紙を筒状のラッパー内に入れる、又はラッパーで巻くことにより、冷却セグメントを得ることができる。
【0045】
[非燃焼加熱喫煙物品]
本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品は、たばこ含有セグメントと、本発明に係る冷却セグメントと、を備える。前記非燃焼加熱喫煙物品は本発明に係る冷却セグメントを備えるため、エアロゾル気化成分の冷却性能が高く、かつ、エアロゾルの濾過性が低い。本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品は、たばこ含有セグメント及び冷却セグメント以外にも、他のセグメントを有していてもよい。
【0046】
(第一の実施形態)
本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品の第一の実施形態の一例を図7に示す。図7に示される非燃焼加熱喫煙物品30は、たばこ含有セグメント10と、マウスピースセグメント11とを備える。マウスピースセグメント11は、本発明に係る冷却セグメント5と、センターホールセグメント12と、フィルターセグメント13とを備える。喫煙時、たばこ含有セグメント10が加熱され、フィルターセグメント13の端部より吸引が行われる。なお、冷却セグメント5の位置は図7に示される位置に限定されず、マウスピースセグメント11のいずれのセグメントであってもよい。
【0047】
たばこ含有セグメント10は、たばこ及びエアロゾル生成基材を含むたばこ充填物14と、たばこ充填物14を覆う筒状のラッパー15とを有する。たばこ充填物14は、さらに揮発性香料成分、水等を含んでもよい。充填物として用いるたばこの大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。前記幅に刻んだ場合、刻の長さは、おおよそ、5~20mm程度となる。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。前記幅に刻んだ場合、刻の長さは、おおよそ、5~20mm程度となる。さらに、上記のシート加工したものについて刻まずにギャザー加工したものを充填物として用いてもよい。乾燥したたばこ葉を刻んで使用する場合であっても、粉砕して均一化したシートとして用いる場合でも、たばこ充填物に含まれるたばこの種類は、様々なものを用いることができる。黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、および、その他のニコチアナ・タバカム系品種やニコチアナ・ルスチカ系品種を、目的とする味となるように適宜ブレンドして用いることができる。前記たばこの品種の詳細は、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。たばこを粉砕して均一化シートに加工する方法は従来の方法が複数存在している。1つは抄紙プロセスを用いて作られる抄造シートであり、2つは水等の適切な溶媒を混ぜて均一化したのちに金属製板もしくは金属製板ベルトの上に均一化物を薄くキャスティングし、乾燥させて作られるキャストシートであり、3つは水等の適切な溶媒を混ぜて均一化したものをシート状に押し出し成型した圧延シートがある。前記均一化シートの種類については、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。たばこ充填物14の充填密度は、特に限定されないが、非燃焼加熱喫煙物品30の性能を担保し、良好な喫味の付与の観点から、通常250mg/cm以上であり、好ましくは320mg/cm以上であり、また、通常520mg/cm以下であり、好ましくは420mg/cm以下である。具体的には、たばこ含有セグメント10中のたばこ充填物14の含有量の範囲は、円周22mm、長さ20mmのたばこ含有セグメント10の場合、たばこ含有セグメント10あたり200~400mgを挙げることができ、250~320mgが好ましい。エアロゾル生成基材及び揮発性香料成分は、本発明に係るポリマー塗工紙のポリマー層に含まれることができる揮発性成分と同様のものを用いることもできるし、異なるものを用いることもできる。たばこ充填物14に含まれるエアロゾル生成基材の量は、たばこ充填物14 100質量%に対して例えば10~30質量%であることができる。
【0048】
たばこ充填物14をラッパー15内に充填する方法は特に限定されないが、例えばたばこ充填物14をラッパー15で包んでもよく、筒状のラッパー15にたばこ充填物14を充填してもよい。たばこの形状が矩形状のように長手方向を有する場合、たばこは該長手方向がラッパー15内でそれぞれ不特定の方向となるように充填されていてもよく、たばこ含有セグメント10の軸方向又は該軸方向に対して垂直な方向となるように整列させて充填されていてもよい。たばこ含有セグメント10が加熱されることにより、たばこ充填物14に含まれるたばこ成分、エアロゾル生成基材が気化し、吸引によりこれらはマウスピースセグメント11へ移行する。
【0049】
センターホールセグメントは1つまたは複数の中空部を有する充填層と、充填層を覆うインナープラグラッパーとで構成される。例えば、センターホールセグメント12は、中空部を有する第一の充填層16と、第一の充填層16を覆う第一のインナープラグラッパー17とで構成される。センターホールセグメント12は、マウスピースセグメント11の強度を高める機能を有する。第一の充填層16は、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されトリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロース質量に対して、6~20質量%添加されて硬化された内径φ5.0~φ1.0mmのロッドとすることができる。第一の充填層16は繊維の充填密度が高いため、吸引時は、空気やエアロゾルは中空部のみを流れることになり、第一の充填層16内はほとんど流れない。非燃焼加熱喫煙物品30において、フィルターセグメント13でのエアロゾル成分の濾過による減少を少なくしたいときに、フィルターセグメント13の長さを短くしてセンターホールセグメント12で置き換えることはエアロゾル成分のデリバリー量を増大させるために有効である。センターホールセグメント12内部の第一の充填層16が繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることが少ない。
【0050】
フィルターセグメント13は、第二の充填層18と、第二の充填層18を覆う第二のインナープラグラッパー19とで構成される。フィルターセグメント13では吸い口端まで第二の充填層18が存在するため、該吸い口端は通常の燃焼喫煙物品と同様の外観を有する。吸引時は空気及びエアロゾルが第二の充填層18内を通過し、エアロゾルの一部が濾過される。第二の充填層18は例えば酢酸セルロース繊維の充填層であることができる。
【0051】
センターホールセグメント12と、フィルターセグメント13とはアウタープラグラッパー20で接続されている。アウタープラグラッパー20は、例えば円筒状の紙であることができる。また、たばこ含有セグメント10と、冷却セグメント5と、接続済みのセンターホールセグメント12及びフィルターセグメント13とは、マウスピースライニングペーパー21により接続されている。これらの接続は、例えばマウスピースライニングペーパー21の内側面に酢酸ビニル系糊等の糊を塗り、前記3つのセグメントを入れて巻くことで接続することができる。
【0052】
本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品の第一の実施形態の軸方向、すなわち図7における水平方向の長さは特に限定されないが、40mm~90mmであることが好ましく、50mm~75mmであることがより好ましく、50mm~60mmであることがさらに好ましい。また、該非燃焼加熱型喫煙物品の周の長さは16mm~25mmであることが好ましく、20mm~24mmであることがより好ましく、21mm~23mmであることがさらに好ましい。例えば、たばこ含有セグメント10の長さは20mm、冷却セグメント5の長さは20mm、センターホールセグメント12の長さは8mm、フィルターセグメント13の長さは7mmである態様を挙げることができる。これら個々のセグメント長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。さらには、センターホールセグメント12を用いずに、冷却セグメント5の下流側にフィルターセグメント13のみを配置しても、非燃焼加熱喫煙物品30として機能することもできる。また、冷却セグメント5とセンターホールセグメント12の順序を入れ替えてもよい。また、エアロゾルの濾過性の観点から、フィルターセグメント13の代わりにセンターホールセグメントを設けてもよい。
【0053】
(第二の実施形態)
本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品の第二の実施形態の一例を図11に示す。図11に示される非燃焼加熱喫煙物品30は、たばこ含有セグメント10と、マウスピースセグメント11とを備える。マウスピースセグメント11は、第一の冷却セグメント22と、本発明に係る第二の冷却セグメント5と、センターホールセグメント12とを備える。本実施形態では中空部を有さないフィルターセグメント(第一の実施形態におけるフィルターセグメント13)が存在しないため、エアロゾルの濾過性をより低減することができる。たばこ含有セグメント10及びセンターホールセグメント12は、第一の実施形態におけるたばこ含有セグメント及びセンターホールセグメントと同様であることができる。
【0054】
第一の冷却セグメント22は筒状部材23で構成される。筒状部材23は例えば厚紙を円筒状に加工した紙管であることができる。筒状部材23及びマウスピースライニングペーパー21には、両者を貫通する穿孔24が設けられている。穿孔24の存在により、吸引時に外気が第一の冷却セグメント22内に導入される。これにより、たばこ含有セグメント10が加熱されることで気化した揮発性成分が外気と接触し、その温度を低下させることができる。穿孔24の径(差し渡し長さ)は特に限定されないが、例えば0.5~1.5mmであることができる。穿孔24の数は特に限定されず、1つでも2つ以上でもよい。例えば穿孔24は第一の冷却セグメント22の周上に複数設けられていてもよい。
【0055】
本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品の第二の実施形態の軸方向、すなわち図11における水平方向の長さは特に限定されないが、40mm~90mmであることが好ましく、50mm~75mmであることがより好ましく、50mm~60mmであることがさらに好ましい。また、該非燃焼加熱型喫煙物品の周の長さは16mm~25mmであることが好ましく、20mm~24mmであることがより好ましく、21mm~23mmであることがさらに好ましい。例えば、たばこ含有セグメント10の長さは20mm、第一の冷却セグメント22の長さは20mm、第二の冷却セグメント5の長さは8mm、センターホールセグメント12の長さは7mmである態様を挙げることができる。これら個々のセグメント長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。
【0056】
[非燃焼加熱喫煙システム]
本発明に係る非燃焼加熱喫煙システムは、本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品と、たばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、を備える。前記非燃焼加熱喫煙システムは本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品を備えるため、エアロゾル気化成分の冷却性能が高く、かつ、エアロゾルの濾過性が低い。本発明に係る非燃焼加熱喫煙システムは、本発明に係る非燃焼加熱喫煙物品と、前記加熱装置とを備えれば特に限定されず、他の構成を有していてもよい。
【0057】
本発明に係る非燃焼加熱喫煙システムの一例を図8に示す。図8に示される非燃焼加熱喫煙システムは、本発明の第一の実施形態に係る非燃焼加熱喫煙物品30と、非燃焼加熱喫煙物品30のたばこ含有セグメントを外側から加熱する加熱装置31とを備える。図8(a)は非燃焼加熱喫煙物品30を加熱装置31に挿入する前の状態を示し、図8(b)は非燃焼加熱喫煙物品30を加熱装置31に挿入して加熱する状態を示す。図8に示される加熱装置31は、ボディ32と、ヒーター33と、金属管34と、電池ユニット35と、制御ユニット36とを備える。ボディ32は筒状の凹部37を有し、凹部37の内側側面であって、凹部37に挿入される非燃焼加熱喫煙物品30のたばこ含有セグメントと対応する位置に、ヒーター33及び金属管34が配置されている。ヒーター33は電気抵抗によるヒーターであることができ、温度制御を行う制御ユニット36からの指示により電池ユニット35より電力が供給され、ヒーター33の加熱が行われる。ヒーター33から発せられた熱は、熱伝導度の高い金属管34を通じて非燃焼加熱喫煙物品30のたばこ含有セグメントへ伝えられる。図8(b)においては、模式的に図示しているため、非燃焼加熱喫煙物品30の外周と金属管34の内周との間に隙間があるが、実際は、熱を効率的に伝達する目的で非燃焼加熱喫煙物品30の外周と金属管34の内周との間に隙間は無い方が望ましい。なお、加熱装置31は非燃焼加熱喫煙物品30のたばこ含有セグメントを外側から加熱するが、内側から加熱するものであってもよい。
【0058】
加熱装置による加熱温度は特に限定されないが、400℃以下であることが好ましく、150℃以上400℃以下であることがより好ましく、200℃以上350℃以下であることがさらに好ましい。なお、加熱温度とは加熱装置のヒーターの温度を示す。
【実施例
【0059】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
(ポリマー塗工紙の作製)
メンソール21gをエタノール9gに溶解した液を用意した(以下、液Aと示す)。PVA(Tg:58℃、平均重合度:500、けん化度:85~89モル%)45gを80℃に加熱した水116gに分散混合した。この中にスターラーにて十分撹拌しながら液Aを添加して分散液を調製した。該分散液を紙(商品名:50NFB、日本製紙パピリア製、坪量:50g/m、通気度:0CU、耐油紙)上に片面塗布し、60~90℃で乾燥することで、紙上に厚さ20~30μmのポリマー層が形成されたポリマー塗工紙を得た。該ポリマー層の断面をSEMで観察したところ、該ポリマー層は多孔質構造を有することが確認された。該ポリマー塗工紙を棒状に絞り込むために、皺付けし成形した。
【0061】
(評価用の非燃焼加熱喫煙物品の作製)
市販の非燃焼加熱喫煙物品(商品名:IQOS regular、フィリップ・モリス社製)を準備した。該非燃焼加熱喫煙物品は、図7に示される非燃焼加熱喫煙物品30において、冷却セグメント5とセンターホールセグメント12の順序が入れ替わっている以外は、図7に示される非燃焼加熱喫煙物品30と同様のセグメント構成を有する。該非燃焼加熱喫煙物品のたばこ含有セグメントに相当する部分は、たばこ、エアロゾル生成基材としてのグリセリンを含む。また、該非燃焼加熱喫煙物品の冷却セグメントに相当する部分には、ポリ乳酸からなるフィルムがギャザーされたものが配置されている。
【0062】
該非燃焼加熱喫煙物品の冷却セグメントに相当する部分内に配置されたポリ乳酸からなるフィルムを取り出し、代わりに作製した成形後のポリマー塗工紙を配置して、評価用の非燃焼加熱喫煙物品を得た。前記ポリマー塗工紙のポリマー層形成面の、冷却セグメントに相当する部分の軸方向1mm当たりの表面積は、106mmであった。
【0063】
(冷却性能の評価)
前記評価用の非燃焼加熱喫煙物品の、冷却セグメントに相当する部分の直前及び直後に熱電対(商品名:Type K 0.5mmΦ、(株)チノー製)を挿入した。冷却セグメントに相当する部分の直前に挿入された熱電対により検出される温度を冷却セグメント入口温度、冷却セグメントに相当する部分の直後に挿入された熱電対により検出される温度を冷却セグメント出口温度とそれぞれ示す。前記市販の非燃焼加熱喫煙物品に対応した加熱装置(商品名:IQOS2.4、フィリップ・モリス社製)を用いて、前記評価用の非燃焼加熱喫煙物品のたばこ含有セグメントに相当する部分を約350℃で加熱し、吸引を行った。吸引は1パフ当たり55ml/2秒とし(1パフは30秒間隔、すなわち2秒間吸引して28秒間待機すること)、計10パフ行った。パフ毎に冷却セグメント入口温度と冷却セグメント出口温度を測定し、10回の平均値をそれぞれ算出した(それぞれ平均入口温度、平均出口温度と示す)。平均出口温度は63.6℃であった。また、冷却により低下した温度(ΔT(℃))をポリマー塗工紙のポリマー層形成面の表面積(cm)で割って算出される、単位面積当たりの冷却効率は、0.43℃/cmであった。なお、ΔT(℃)は、平均入口温度から平均出口温度を差し引いた値である。
【0064】
(エアロゾルの濾過性の評価)
前記評価用の非燃焼加熱喫煙物品の吸い口端の直後に、Glass Fiber Filter(ガラス繊維フィルター)(商品名:Cambridge Filter 44mm、Borgwaldt社製)を配置した。前記市販の非燃焼加熱喫煙物品に対応した加熱装置(商品名:IQOS2.4、フィリップ・モリス社製)を用いて、前記評価用の非燃焼加熱喫煙物品のたばこ含有セグメントに相当する部分を350℃で加熱し、吸引を行った。吸引は、CIR法(カナダ強制喫煙条件法)に基づき、1パフ当たり55ml/2秒とし(1パフは30秒間隔、すなわち2秒間吸引して28秒間待機すること)、計10パフ行った。パフ毎にCambridge Filter Padで捕集されたグリセリン及びメンソールの量を定量した。具体的には、捕集された成分をイソプロパノール(IPA) 10mlを抽出溶媒とし、20分間、200rmpの条件で振とう抽出した。得られた抽出液を以下の条件でGC分析し、パフ毎にグリセリン及びメンソール量を定量した。
注入口温度:240℃
オーブン温度:150℃で1.3分間保持後、70℃/minで240℃まで昇温し、5分間保持
カラム:商品名:DB-WAX 10m×0.18mm×0.18μm、Agilent社製
検出器:FID
パフ毎のグリセリン量を図9に、メンソール量を図10にそれぞれ示す。
【0065】
[比較例1]
市販の非燃焼加熱喫煙物品(商品名:IQOS Menthol、フィリップ・モリス社製)を準備した。該非燃焼加熱喫煙物品は、図7に示される非燃焼加熱喫煙物品30において、冷却セグメント5とセンターホールセグメント12の順序が入れ替わっている以外は、図7に示される非燃焼加熱喫煙物品30と同様のセグメント構成を有する。該非燃焼加熱喫煙物品のたばこ含有セグメントに相当する部分は、たばこ、エアロゾル生成基材としてのグリセリン、及び揮発性香料成分としてのメンソールを含む。また、該非燃焼加熱喫煙物品の冷却セグメントに相当する部分には、ポリ乳酸からなるフィルムがギャザーされたものが配置されている。前記ポリ乳酸からなるフィルムのポリマー層形成面の、冷却セグメントに相当する部分の軸方向1mm当たりの表面積は、220mmである。なお、該非燃焼加熱喫煙物品に含まれるメンソール量(6mg/1本)は、実施例1で作製した評価用の非燃焼加熱喫煙物品に含まれるメンソール量(12mg/1本)よりも少ない。
【0066】
前記非燃焼加熱喫煙物品を用いた以外は、実施例1と同様に加熱して吸引を行い、冷却性能及びエアロゾルの濾過性を評価した。平均出口温度は59.2℃であった。また、前記単位面積当たりの冷却効率は、0.26℃/mmであった。また、パフ毎のグリセリン量を図9に、メンソール量を図10にそれぞれ示す。なお、前記単位面積当たりの冷却効率の算出において、ポリ乳酸からなるフィルムは、ポリマー層が片面に形成されていると仮定してその表面積を算出した。
【0067】
冷却性能の評価において、ポリマー塗工紙を用いた実施例1では、ポリ乳酸からなるフィルムが用いられている比較例1と、平均出口温度はほぼ同等であった。しかしながら、ポリ乳酸からなるフィルムよりもポリマー塗工紙の方が、前記表面積が小さいため、実施例1の方が、前記単位面積当たりの冷却効率が高かった。
【0068】
また、実施例1では前記表面積が小さいため、冷却セグメント内において空隙率が高く、図9に示されるようにグリセリンの供給量が多い、すなわちエアロゾルの濾過性が低かった。さらに、実施例1では使用前にメンソールが揮発することなく、図10に示されるように吸引の終始にわたって安定的にメンソールが供給された。
【0069】
[実施例2]
(評価用の非燃焼加熱喫煙物品の作製)
市販の非燃焼加熱喫煙物品(商品名:Ploom S、日本たばこ産業株式会社製)を準備した。該非燃焼加熱喫煙物品は、図11に示される非燃焼加熱喫煙物品30において、第二の冷却セグメント5がセンターホールセグメントで置換され、センターホールセグメント12が酢酸セルロース繊維の充填されたフィルターセグメントで置換されている。該非燃焼加熱喫煙物品において、前記センターホールセグメントを、実施例1で作製されたポリマー塗工紙が充填された冷却セグメントで置換した。また、前記フィルターセグメントを、径が1.5mmの中空部を有するセンターホールセグメントで置換した。これにより、第二の冷却セグメント5内に実施例1で作製されたポリマー塗工紙が充填された、図11に示される非燃焼加熱喫煙物品30を作製した。たばこ含有セグメント10の長さは20mm、第一の冷却セグメント22の長さは20mm、第二の冷却セグメント5の長さは8mm、センターホールセグメント12の長さは7mmであった。
【0070】
(冷却性能の評価)
前記評価用の非燃焼加熱喫煙物品の吸口端面から7mm下流側(使用者側)の位置に熱電対を設け、蒸気温度を測定した。前記市販の非燃焼加熱喫煙物品に対応した加熱装置(商品名:Ploom S、日本たばこ産業株式会社製)を用いて、前記評価用の非燃焼加熱喫煙物品のたばこ含有セグメントに相当する部分を230℃で加熱し、吸引を行った。吸引は1パフ当たり55ml/2秒とし(1パフは30秒間隔、すなわち2秒間吸引して28秒間待機すること)、計8パフ行った。前記熱電対により測定される蒸気温度の最高温度を図12に示す。
【0071】
(エアロゾルの濾過性の評価)
前記評価用の非燃焼加熱喫煙物品の吸口端の直後に、Glass Fiber Filter(ガラス繊維フィルター)(商品名:Cambridge Filter 44mm、Borgwaldt社製)を配置した。前記市販の非燃焼加熱喫煙物品に対応した加熱装置(商品名:Ploom S、日本たばこ産業株式会社製)を用いて、前記評価用の非燃焼加熱喫煙物品のたばこ含有セグメントに相当する部分を230℃で加熱し、吸引を行った。吸引は、CIR法(カナダ強制喫煙条件法)に基づき、1パフ当たり55ml/2秒とし(1パフは30秒間隔、すなわち2秒間吸引して28秒間待機すること)、計8パフ行った。パフ毎にCambridge Filter Padで捕集されたグリセリン及びニコチンの定量を行った。グリセリン及びニコチンの定量は、実施例1と同様の方法により行った。パフ毎のグリセリン量を図13に、ニコチン量を図14にそれぞれ示す。
【0072】
[実施例3]
メンソールを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にポリマー塗工紙を作製した。該ポリマー塗工紙を用いた以外は、実施例2と同様に評価用の非燃焼加熱喫煙物品を作製し、冷却性能及びエアロゾルの濾過性の評価を行った。評価結果を図12図14に示す。
【0073】
[比較例2]
ポリマー塗工紙の代わりに、実施例1のポリマー塗工紙の作製において使用した紙をそのまま用いた以外は、実施例2と同様に評価用の非燃焼加熱喫煙物品を作製し、冷却性能の評価を行った。評価結果を図12に示す。
【0074】
[比較例3]
市販の非燃焼加熱喫煙物品(商品名:Ploom S、日本たばこ産業株式会社製)を準備した。該非燃焼加熱喫煙物品は、図11に示される非燃焼加熱喫煙物品30において、第二の冷却セグメント5がセンターホールセグメントで置換され、センターホールセグメント12が酢酸セルロース繊維の充填されたフィルターセグメントで置換されている。該非燃焼加熱喫煙物品において、前記センターホールセグメントを、径が1.5mmの中空部を有するセンターホールセグメントで置換した。また、前記フィルターセグメントを、径が4.5mmの中空部を有するセンターホールセグメントで置換した。得られた評価用の非燃焼加熱喫煙物品を用いて、実施例2と同様に冷却性能及びエアロゾルの濾過性の評価を行った。評価結果を図12図14に示す。
【0075】
[比較例4]
市販の非燃焼加熱喫煙物品(商品名:Ploom S、日本たばこ産業株式会社製)を評価用の非燃焼加熱喫煙物品としてそのまま用いて、実施例2と同様に冷却性能及びエアロゾルの濾過性の評価を行った。評価結果を図12図14に示す。
【0076】
図12に示されるように、ポリマー塗工紙を含む冷却セグメントを用いた実施例2及び3では、ポリマー塗工紙を含む冷却セグメントを用いていない比較例2~4よりも蒸気温度が低く、冷却性能が高かった。
【0077】
また、図13及び図14に示されるように、ポリマー塗工紙を含む冷却セグメントと、その下流に中空部を有するセンターホールセグメントとを設けた実施例2及び3では、十分なグリセリン量及びニコチン量が供給され、エアロゾルの濾過性が低いことがわかった。一方、比較例4ではグリセリン量及びニコチン量が少なく、中空部を有さないフィルターセグメントが存在するとエアロゾル等の濾過性が増加することがわかった。なお、比較例3では十分なグリセリン量及びニコチン量が供給されているが、図12に示されるようにこの場合十分な冷却性能が得られなかった。
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]紙と、前記紙上に設けられたポリマーを含むポリマー層と、を含むポリマー塗工紙を含む非燃焼加熱喫煙物品用の冷却セグメント。
[2]前記ポリマー層が、さらに揮発性香料成分及びエアロゾル生成基材の少なくとも一方を含む[1]に記載の冷却セグメント。
[3]前記ポリマーのガラス転移温度が400℃以下である[1]又は[2]に記載の冷却セグメント。
[4]前記ポリマー層が多孔質構造を有する[1]から[3]のいずれかに記載の冷却セグメント。
[5]前記ポリマー塗工紙がギャザーされて前記冷却セグメント内に配置されており、前記ギャザーにより形成された溝が前記冷却セグメントの軸方向に延びている[1]から[4]のいずれかに記載の冷却セグメント。
[6]前記ポリマー塗工紙の前記ポリマー層形成面が、前記冷却セグメントの軸方向1mm当たり100から280mm の表面積を有する[5]に記載の冷却セグメント。
[7]前記ポリマー塗工紙の一方又は両方の面に前記ポリマー層が設けられている[1]から[6]のいずれかに記載の冷却セグメント。
[8]矩形状の前記ポリマー塗工紙を複数含み、
前記矩形状のポリマー塗工紙の長手方向の長さが、前記冷却セグメントの径よりも長く、
前記矩形状のポリマー塗工紙の長手方向が、前記冷却セグメントの軸方向と略平行となるように配置されている[1]から[7]のいずれかに記載の冷却セグメント。
[9]ストランド状の前記ポリマー塗工紙を複数含み、
前記ストランド状のポリマー塗工紙の長手方向の長さが、前記冷却セグメントの径よりも短く、
前記複数のストランド状のポリマー塗工紙が、前記冷却セグメント内に充填されている[1]から[7]のいずれかに記載の冷却セグメント。
[10]たばこ含有セグメントと、[1]から[9]のいずれかに記載の冷却セグメントと、を備える非燃焼加熱喫煙物品。
[11][10]に記載の非燃焼加熱喫煙物品と、前記たばこ含有セグメントを加熱する加熱装置と、を備える非燃焼加熱喫煙システム。
[12]前記加熱装置による加熱温度が400℃以下である[11]に記載の非燃焼加熱喫煙システム。
[13]前記紙上に前記ポリマーを含む塗工液を塗布して前記ポリマー塗工紙を製造する工程を備える[1]から[9]のいずれかに記載の冷却セグメントの製造方法。
【符号の説明】
【0078】
1 紙
2 ポリマー層
3 ポリマー塗工紙
4 ラッパー
5 冷却セグメント(第二の冷却セグメント)
10 たばこ含有セグメント
11 マウスピースセグメント
12 センターホールセグメント
13 フィルターセグメント
14 たばこ充填物
15 ラッパー
16 第一の充填層
17 第一のインナープラグラッパー
18 第二の充填層
19 第二のインナープラグラッパー
20 アウタープラグラッパー
21 マウスピースライニングペーパー
22 第一の冷却セグメント
23 筒状部材
24 穿孔
30 非燃焼加熱喫煙物品
31 加熱装置
32 ボディ
33 ヒーター
34 金属管
35 電池ユニット
36 制御ユニット
37 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14